以下に添付図面を参照して、本発明の好適な実施形態を詳細に説明する。なお、この実施形態により本発明が限定されるものではなく、また、実施形態が複数ある場合には、各実施例を組み合わせて構成するものも含むものである。
図1は、実施形態1の三次元積層装置1を示す模式図である。ここで、実施形態1では、水平面内の一方向をX軸方向、水平面内においてX軸方向と直交する方向をY軸方向、X軸方向及びY軸方向のそれぞれと直交する方向(すなわち鉛直方向)をZ軸方向とする。
図1に示す三次元積層装置1は、基台部100に三次元形状物を製造する装置である。基台部100は、三次元形状物が形成される土台となる部材であり、三次元積層装置1で所定の位置に搬送され、表面に三次元形成物が形成される。実施形態1の基台部100は、板状の部材である。なお、基台部100は、これに限定されない。基台部100は、三次元形状物の土台となる部材を用いてもよいし、三次元形状物を付加する部材を用いてもよい。所定の位置に三次元形成物が形成されることで、部品、製品となる部材を基台部100として用いてもよい。
三次元積層装置1は、三次元積層室2と、予備室3と、積層ヘッド収納室4と、機械加工部収納室5と、ベッド10と、テーブル部11と、積層部としての積層ヘッド12と、機械加工部13と、ベローズ18と、ベローズ19と、制御装置20と、形状計測部30と、加熱ヘッド31と、機械加工部計測部32と、工具交換部33と、ノズル交換部34と、粉末導入部35と、基台移動部36と、気体排出部37と、気体導入部38と、粉末回収部39と、を有する。
三次元積層室2は、接続された配管等の設計された連通部分以外が外部から密封されている筐体(チャンバー)である。なお、設計された連通部分は、密閉状態と開放状態を切り換えるバルブ等が設けられており、必要に応じて、三次元積層室2を密閉状態とすることができる。三次元積層室2は、ベッド10と、テーブル部11と、積層ヘッド12の一部と、機械加工部13の一部と、加熱ヘッド31の一部と、機械加工部計測部32と、工具交換部33と、ノズル交換部34とが内部に配置されている。
予備室3は、三次元積層室2に隣接して設けられている。予備室3は、接続された配管等の設計された連通部分以外が外部及び三次元積層室2から密封されている。予備室3は、外部と三次元積層室2とを接続する減圧室となっている。予備室3内には、基台移動部36が設けられている。ここで、予備室3は、三次元積層室2との接続部に例えば気密性を有する扉6が設けられている。また、予備室3は、気密性を有する扉7により外部と接続されている。また、予備室3には、予備室3から空気等の気体を排出する予備室気体排出部25が設けられている。予備室3は、扉7を開くことで、外部から必要な部材を内部に搬入することができる。また、予備室3は、扉6を開くことで、三次元積層室2との間で部材の搬入、搬出を行うことができる。すなわち、予備室3は、扉7を閉じることにより、外部から隔離されて、外部から密封される。また、予備室3は、扉6が閉じられることにより、三次元積層室から隔離される。
積層ヘッド収納室4は、三次元積層室2のZ軸方向上側の面に設けられている。積層ヘッド収納室4は、Z軸スライド部4aで三次元積層室2に対してZ軸方向(矢印102の方向)に移動可能な状態で支持されている。図2は、積層ヘッド収納室4の図1におけるA−A断面における要部断面図である。図3は、積層ヘッド収納室4を図2における方向Lから見た場合の図面である。図2に示すように、積層ヘッド収納室4は、Z軸方向下側の面41において、三次元積層室2のZ軸方向上側の面42の開口部43と、開口部43の外周に沿って設けられた伸縮部としてのベローズ18により接続されている。
図2及び図3に示すように、積層ヘッド収納室4は、面41のベローズ18よりも放射方向内側に、開口部44,45を有する。積層ヘッド収納室4は、積層ヘッド12と、形状計測部30と、加熱ヘッド31と、を支持している。積層ヘッド収納室4は、積層ヘッド12のノズル23を含む一部を、開口部44を介して三次元積層室2に向けて突出させている。また、積層ヘッド収納室4は、加熱ヘッド31の先端部24を含む一部を、開口部45を介して三次元積層室2に向けて突出させている。開口部44と積層ヘッド12とは固定されており、開口部44と積層ヘッド12とは、三次元積層室2を密封する状態で互いに接続されている。開口部45と加熱ヘッド31とは固定されており、開口部45と積層ヘッド12とは、三次元積層室2を密封する状態で互いに接続されている。
次に、ベローズ18について説明する。ベローズ18は、ベローズ部51と、ガイド部53とを有する。ベローズ部51は、三次元積層室2の面42の開口部43の外周に沿って設けられ、三次元積層室2の面42から積層ヘッド収納室4の面41まで、Z軸方向に沿って延在する。ベローズ部51は、放射方向外側へ向かう山部55と放射方向内側へ向かう谷部56とをZ軸方向に沿って交互に繰り返している形状となっている。従って、ベローズ部51は、Z軸方向に沿って伸縮可能である。
ガイド部53は、ベローズ部51の外周に沿って設けられている。ガイド部53は、ベローズ部51を保護する機能を有する。ガイド部53は、サブガイド部53a,53b,53cを有する。サブガイド部53aは、積層ヘッド収納室4の面41からZ軸方向下方に向かって延在し、Z軸方向下方の先端の可動部58aにおいて、ベローズ部51の山部55aに取付けられている。サブガイド部53bは、Z軸方向上部の端部における可動部59bにおいてサブガイド部53aの可動部58aに取付けられ、Z軸方向下部に向かって延在する。サブガイド部53bは、Z軸方向下部の端部における可動部58bにおいて、ベローズ部51の山部55bに取付けられている。なお、山部55bは、山部55aよりもZ軸方向下部に位置する。サブガイド部53cは、Z軸方向上方の端部における可動部59cにおいてサブガイド部53bの可動部58bに取付けられ、Z軸方向下部の端部において三次元積層室2の面42に取付けられる。
サブガイド部53a,53b,53cの可動部58a,58b,59b,59cは、それぞれ変形可能である。従って、サブガイド部53a,53b,53cは、ベローズ部51の伸縮に伴って伸縮する。なお、ガイド部53は、ベローズ部51の外周に設けられ、ベローズ部51の伸縮に伴って伸縮するものであれば、この構造に限られない。また、例えばベローズ部51を保護する必要がない場合、ベローズ18は、ガイド部53を有さなくてもよい。
上述のように、積層ヘッド収納室4の開口部44,45と積層ヘッド12とは、互いに密封されている。また、ベローズ18は、ベローズ部51が三次元積層室2の面42の開口部43の外周に沿って設けられている。従って、ベローズ部51の内周と積層ヘッド収納室4の面41とで囲まれた空間50は、三次元積層室2の開口部43により三次元積層室2と繋がり、三次元積層室2とともに密閉されている。
積層ヘッド収納室4は、Z軸スライド部4aでZ軸方向に移動することで、保持している積層ヘッド12と、形状計測部30と、加熱ヘッド31とをZ軸方向に移動させる。また、積層ヘッド収納室4は、ベローズ18を介して三次元積層室2と接続していることで、Z軸方向の移動に伴い、ベローズ18をZ軸方向に伸縮させる。この際、ベローズ18は、三次元積層室2を密封しながら、Z軸方向に伸縮する。なお、積層ヘッド収納室4は、積層ヘッド12と、形状計測部30と、加熱ヘッド31とを、X軸方向及びY軸方向に移動させてもよい。
なお、ベローズ部51は、Z軸方向に沿って伸縮可能であり、三次元積層室2内を密封可能なものであれば、実施形態1で説明した形状に限られない。例えば、ベローズ部51は、径の異なる複数の筒状部材を軸方向に連結したものであって、径の大きい筒状部材内に、それよりも径が小さい他の筒状部材を収納するものであってもよいし、例えば筒状の弾性部材であってもよい。
機械加工部収納室5は、三次元積層室2のZ軸方向上側の面に設けられている。また、機械加工部収納室5は、積層ヘッド収納室4に隣接して配置されている。機械加工部収納室5は、Z軸スライド部5aで三次元積層室2に対してZ軸方向(矢印104の方向)に移動可能な状態で支持されている。機械加工部収納室5は、Z軸方向下側の面がベローズ19により三次元積層室2と繋がっている。ベローズ19は、機械加工部収納室5のZ軸方向下側の面と三次元積層室2と繋げ、機械加工部収納室5のZ軸方向下側の面を三次元積層室2の一部とする。また、三次元積層室2は、ベローズ19で囲われた領域に開口が形成されている。機械加工部収納室5のZ軸方向下側の面とベローズ19とで囲まれた空間は、三次元積層室2と繋がり、三次元積層室2とともに密閉されている。機械加工部収納室5は、機械加工部13を支持している。また、機械加工部収納室5は、機械加工部13の工具22を含む一部がZ軸方向下側の面から三次元積層室2に向けて突出している。なお、ベローズ19の構造は、ベローズ18の構造と同じであるため、説明を省略する。
機械加工部収納室5は、Z軸スライド部5aでZ軸方向に移動することで、保持している機械加工部13をZ軸方向に移動させる。また、機械加工部収納室5は、ベローズ19を介して三次元積層室2と接続していることで、Z軸方向の移動に伴い、ベローズ19をZ軸方向に伸縮させる。この際、ベローズ19は、三次元積層室2を密封しながら、Z軸方向に伸縮する。なお、機械加工部収納室5は、機械加工部13をX軸方向及びY軸方向に移動させてもよい。
ベッド10は、三次元積層室2内のZ軸方向の底部に設けられている。ベッド10は、テーブル部11を支持している。ベッド10は、各種配線や配管や駆動機構が配置されている。
テーブル部11は、ベッド10の上面に配置され、基台部100を支持する。テーブル部11は、Y軸スライド部15と、X軸スライド部16と、回転テーブル部17と、を有する。テーブル部11は、基台部100を取り付けて基台部100をベッド10上で移動させる。
Y軸スライド部15は、ベッド10に対してX軸スライド部16をY軸方向(矢印106の方向)に沿って移動させる。X軸スライド部16は、Y軸スライド部15の稼働部となる部材に固定されており、Y軸スライド部15に対して回転テーブル部17をX軸方向(矢印108の方向)に沿って移動させる。回転テーブル部17は、X軸スライド部16の稼働部となる部材に固定されており、基台部100を支持している。回転テーブル部17は、例えば傾斜円テーブルであり、固定台17aと、回転テーブル17bと、傾斜テーブル17cと、回転テーブル17dと、を有する。固定台17aは、X軸スライド部16の稼働部となる部材に固定されている。回転テーブル17bは、固定台17aに支持されており、Z軸方向と平行な回転軸110を回転軸として回転する。傾斜テーブル17cは、回転テーブル17bに支持されており、回転テーブル17bの支持されている面に直交する回転軸112を軸として回動される。回転テーブル17dは、傾斜テーブル17cに支持されており、傾斜テーブル17cの支持されている面に直交する回転軸114を軸として回転される。回転テーブル17dは、基台部100を固定している。このように、回転テーブル部17は、回転軸110、112、114を軸として各部を回転させることで、基台部100を直交する3軸周りに回転させることができる。テーブル部11は、回転テーブル部17に固定されている基台部100を、基台部100は、Y軸スライド部15及びX軸スライド部16により、Y軸方向及びX軸方向に移動させる。また、テーブル部11は、回転テーブル部17により回転軸110、112、114を軸として各部を回転させることで、基台部100を直交する3軸周りに回転させる。テーブル部11は、さらにZ軸方向に沿って基台部100を移動させてもよい。
積層ヘッド12は、基台部100に向けて粉末材料を噴射し、さらに噴射した粉末材料にレーザ光を照射することにより粉末を溶融させて、溶融した粉末を基台部100上で固化させて成形層を形成する。積層ヘッド12に導入される粉末は、三次元形状物の原料となる材料の粉末である。実施形態1において、粉末は、例えば鉄、銅、アルミニウム又はチタン等の金属材料などを用いることができる。なお、粉末としては、セラミック等の金属材料以外の材料を用いてもよい。積層ヘッド12は、ベッド10のZ軸方向の上側の面に対面する位置に設けられており、テーブル部11と対面している。積層ヘッド12は、Z軸方向の下部にノズル23が設置されている。積層ヘッド12は、本体66にノズル23が装着されている。
図4は、積層ヘッド12のノズル23の一例を示す断面図である。図4に示すように、ノズル23は、外管61と、外管61の内部に挿入された内管62とを有する二重管である。外管61は、管状の部材であり、先端(Z軸方向下側)に向かって径が小さくなっている。内管62は、外管61の内部に挿入されている。内管62も、管状の部材であり、先端(Z軸方向下側)に向かって径が小さくなる形状である。外管61は、その内周と内管62の外周との間において、粉末材料(粉末)Pの通過する粉末流路63を構成する。内管62は、その内周面側にレーザ光の通過するレーザ経路64を構成する。ここで、ノズル23が装着されている本体66は、ノズル23と同様に二重管であり、粉末流路63とレーザ経路64も同様に形成されている。積層ヘッド12は、レーザ経路64の周囲を囲うように粉末流路63が配置されている。実施形態1では、粉末流路63が、粉末を噴射する粉末噴射部となる。積層ヘッド12は、粉末導入部35から導入された粉末Pが粉末流路63を流れ、外管61と内管62との間の先端の開口部である粉末噴射口部65aから噴射される。
また、実施形態1においては、レーザ経路64が光照射部となる。積層ヘッド12は、レーザ経路64に、光源67と光ファイバ68と集光部69とを有する。光源67は、レーザ光を出力する。光ファイバ68は、光源67から出力されたレーザをレーザ経路64に案内する。集光部69は、レーザ経路64に配置され、光ファイバ68から出力されたレーザの光路に配置されている。集光部69は、光ファイバ68から出力されたレーザ光Lを集光する。集光部69で集光されたレーザ光Lは、内管62の先端の開口部であるレーザ照射口部65bから出力される。積層ヘッド12は、集光部69を本体66に配置したが、集光部69の一部または全部をノズル23に配置してもよい。ノズル23に集光部69の一部または全部を配置した場合、ノズル23を交換することで、焦点位置を異なる位置とすることができる。
積層ヘッド12は、粉末流路63から粉末Pを噴射し、レーザ経路64からレーザ光Lを出力する。積層ヘッド12から噴射された粉末Pは、積層ヘッド12から出力されたレーザ光Lが照射される領域に侵入し、レーザ光Lによって加熱される。レーザ光Lが照射された粉末Pは溶融した後、基台部100上に到達する。溶融した状態で基台部100上に到達した粉末Pは、冷却されて固化する。これにより、基台部100上に成形層を形成する。
ここで、実施形態1の積層ヘッド12は、光源67から出力されたレーザ光Lを光ファイバ68で案内した光ファイバはなくてもよい。また、集光部69は、本体66に設けてもノズル23に設けても、両方に設けてもよい。実施形態1の積層ヘッド12は、効果的に加工ができるため、粉末Pを噴射する粉末流路63と、レーザ光Lを照射するレーザ経路64とを同軸に設けたがこれに限定されない。積層ヘッド12は、粉末Pを噴射する機構とレーザ光Lを照射する機構とを別体としてもよい。実施形態1の積層ヘッド12は、粉体材料にレーザ光Lを照射したが、粉体材料を溶解または焼結させることができればよく、レーザ光以外の光ビームを照射してもよい。
機械加工部13は、例えば成形層等を機械加工する。図1に示すように、機械加工部13は、ベッド10のZ軸方向の上側の面に対面する位置に設けられており、テーブル部11と対面している。機械加工部13は、Z軸方向の下部側の端部に工具22が装着されている。なお、機械加工部13は、ベッド10よりもZ軸方向上側で、テーブル部11による基台部100の移動可能範囲に設けられていればよく、配置位置は実施形態1の位置に限られない。
図5は、制御装置20の構成を示す模式図である。制御装置20は、三次元積層装置1の各部と電気的に接続されており、三次元積層装置1の各部の動作を制御する。制御装置20は、三次元積層室2や予備室3の外部に設置されている。制御装置20は、図5に示すように、入力部71と、制御部72と、記憶部73と、出力部74と、通信部75と、を有する。入力部71と、制御部72と、記憶部73と、出力部74と、通信部75と、の各部は電気的に接続されている。
入力部71は、例えば操作パネルである。作業者は、入力部71に情報や指令等を入力する。制御部72は、例えばCPU(Central Processing Unit)及びメモリである。制御部72は、三次元積層装置1の各部に、三次元積層装置1の各部の動作を制御する指令を出力する。また、制御部72には、三次元積層装置1の各部からの情報等が入力される。記憶部73は、例えば、例えばRAM(Random Access Memory)又はROM(Read Only Memory)等の記憶装置である。記憶部73には、制御部72で実行されることで各部の動作を制御する三次元積層装置1の運転プログラムや、三次元積層装置1の情報、又は三次元形状物の設計情報等が記憶される。出力部74は、例えばディスプレイである。出力部74は、例えば三次元積層装置1の各部からの情報等を表示する。通信部75は、例えばインターネット又はLAN(Local Area Network)等のような通信回線と通信して、通信回線との間で情報をやり取りする。なお、制御装置20は、少なくとも制御部72及び記憶部73を有していればよい。制御装置20は、制御部72及び記憶部73を有していれば、三次元積層装置1の各部に指令を出力することができる。
形状計測部30は、積層ヘッド収納室4に固定されている。形状計測部30は、積層ヘッド12に隣接して配置されている。形状計測部30は、基台部100上に形成された成形層の表面形状を計測する。形状計測部30は、例えば3Dスキャナや相対距離を計測する装置を用いることができる。形状計測部30は、例えば基台部100上の成形層の表面にレーザ光をスキャニング(走査)させ、その反射光から成形層の表面の位置情報を算出することにより、成形層の表面形状を計測する。また、実施形態1において、形状計測部30は、積層ヘッド収納室4に取付けられているが、基台部100上に形成された成形層の表面形状を計測できればよく、別の位置に取り付けられてもよい。
加熱ヘッド31は、基台部100上の成形層又は溶融した粉末P等を加熱する。加熱ヘッド31は、積層ヘッド収納室4に固定されている。加熱ヘッド31は、積層ヘッド12に隣接して配置されている。加熱ヘッド31は、例えば、レーザ光、赤外光や電磁波を照射し、成形層又は溶融した粉末Pを加熱する。加熱ヘッド31で成形層又は溶融した粉末Pを加熱することで、成形層又は溶融した粉末Pの温度を制御することができる。これにより、成形層又は溶融した粉末Pの急激な温度低下を抑制したり、粉末Pが溶融しやすい雰囲気(高い温度環境)を形成したりすることができる。なお、加熱ヘッド31は、例えば成形層表面の温度を計測する温度センサをさらに設け、温度センサの計測結果に基づいて、加熱を制御してもよい。
機械加工部計測部32は、機械加工部13の工具22の先端の位置を計測する。機械加工部計測部32は、撮像によって機械加工部13の工具22の先端の位置を計測する。従って、機械加工部計測部32は、機械加工部13を作動させながら工具22の先端の位置を計測することができる。ただし、機械加工部計測部32は、撮像によるものに限られず、例えばレーザ光によって機械加工部13の工具22の先端位置を計測するものであってもよい。
工具交換部33は、三次元積層室2の内部に配置されている。工具交換部33は、機械加工部13に装着される工具22を交換する。工具交換部33は、工具22を保持していない部分を機械加工部13と対面する位置に移動させる。その後、工具交換部33は、機械加工部13と対面する位置に工具22を把持していない部分に移動させる。その後、機械加工部13に装着されている工具22を取り外す処理を実行する。その後、機械加工部13に装着する別の工具22を把持している部分を機械加工部13に対面する位置に移動させ、機械加工部13に別の工具22を取り付ける。このように、工具交換部33は、機械加工部13の工具22を着脱することにより、機械加工部13の工具22を交換することができる。なお、工具交換部33は、機械加工部13の工具22を交換することができれば、この構成に限られない。
ノズル交換部34は、三次元積層室2の内部に配置されている。ノズル交換部34は、積層ヘッド12に装着されるノズル23を交換する。ノズル交換部34は、工具交換部33と同様の構造を用いることができる。
粉末導入部35は、積層ヘッド12に三次元形状物の原料となる粉末材料を積層ヘッド12に導入する。図6A及び図6Bは、それぞれ粉末導入部の一例を示す模式図である。図6Aに示すように、実施形態1において、粉末はカートリッジ83に封入された状態で管理される。すなわち、粉末は、例えば材料の種類毎にカートリッジ83内に封入されて出荷される。カートリッジ83には材料表示部84が設けられる。材料表示部84は、例えば材料の種類などの粉末の情報を示す表示である。材料表示部84は、目視で確認できる情報に限定されず、ICチップ、二次元コード又はマーク等、読み取り器で読み取ることで情報を取得できる表示であってもよい。材料表示部84は、粉末の材料の種類を示すことができれば、これらに限られない。材料表示部84は、粉末の材料の種類以外にも、例えば粉末の粒度、重量、純度又は酸化物被膜等の、三次元形状物製造の上で必要な粉末の情報を示すことができる。また、材料表示部84は、粉末が正規品であるか否かを示す情報を含んでいてもよい。
粉末導入部35は、粉末収納部81及び粉末識別部82を有する。粉末収納部81は、例えば箱状の部材であり、内部にカートリッジ83を収納する。粉末収納部81は、粉末を搬出するための搬送空気供給部や、粉末を積層ヘッド12に搬送する搬送経路が接続されている。粉末収納部81は、カートリッジ83が収納された場合、カートリッジ83に貯留されている粉末を積層ヘッド12に導入する。粉末識別部82は、粉末収納部81にカートリッジ83が収納されたことを検出したら、カートリッジ83の材料表示部84を読み取り、カートリッジ83に貯留されている粉末の情報を読み取る。粉末導入部35は、粉末識別部82で粉末の情報を取得することで、積層ヘッド12に既知の粉末を供給することができる。
ここで、粉末導入部35は、カートリッジ83内に封入された状態で管理されていない粉末を積層ヘッド12に供給するようにしてもよい。図6Bは、粉末がカートリッジに封入されない場合の粉末導入部35Aを示している。粉末導入部35Aは、粉末収納部81Aと、粉末識別部82Aと、粉末収納部81Aと粉末識別部82Aとを繋げる粉末案内管89とを有する。粉末収納部81Aは、例えば箱状の部材であり、内部に粉末Pを収納する。粉末識別部82Aは、粉末案内管89を介して供給された粉末を分析し、粉末の材料の種類、粒度、重量、純度又は酸化物被膜等の、三次元形状物製造の上で必要な粉末の情報を計測する。粉末識別部82としては、分光分析により粉末の材料を識別する分光分析装置、粒度分析により粉末の粒度を計測する粒度分析装置、粉末の重量を計測する重量計等を用いることができる。粉末識別部82Aは、例えば計測した粉末の材料の種類、粒度及び重量等から、粉末の純度を計測する。また、粉末識別部82Aは、例えば導電率により、粉末の酸化物被膜を計測する。粉末導入部35Aも、粉末識別部82Aで粉末の情報を取得することで、積層ヘッド12に既知の粉末を供給することができる。
基台移動部36は、予備室3に配置されている。基台移動部36は、基台部100aを予備室3内から三次元積層室2内に移動させ、三次元積層室2内の基台部100を予備室3内に移動させる。基台移動部36は、外部から予備室3内に搬入された基台部100aが取付けられる。基台移動部36は、取付けられた基台部100aを予備室3から三次元積層室2内に搬入する。より詳しくは、基台移動部36は、基台移動部36に取付けられた基台部100aを、三次元積層室2内に移動させて、回転テーブル部17に取付ける。基台移動部36は、例えばロボットアームや直交軸搬送装置により、基台部100を移動させる。
気体排出部37は、例えば真空ポンプであり、三次元積層室2内の空気を排出する。気体導入部38は、三次元積層室2内に所定成分のガス、例えばアルゴン、窒素等の不活性ガスを導入する。三次元積層装置1は、気体排出部37により三次元積層室2の空気を排出し、気体導入部38により三次元積層室2に所定成分の気体、例えばアルゴン、窒素等の不活性ガスを導入する。これにより、三次元積層装置1は、三次元積層室2内を所望するガス雰囲気にすることができる。ここで、実施形態1において、気体導入部38は、気体排出部37よりもZ軸方向下方に設けられる。三次元積層装置1は、気体導入部38を気体排出部37よりもZ軸方向下方に設けることで、空気中の酸素等の気体よりも比重が高いアルゴン等を導入するガスとして用いた場合、三次元積層室2内に好適にアルゴンガスを満たすことができる。なお、導入するガスを空気よりも軽いガスとする場合、配管の配置を逆にすればよい。また、気体排出部37は、三次元積層室2内の空気以外の気体を排出してもよい。
粉末回収部39は、積層ヘッド12の粉末噴射口部65aから噴射された粉末Pであって、成形層を形成しなかった粉末Pを回収する。粉末回収部39は、三次元積層室2内の気体を吸引して、気体に含まれる粉末Pを回収する。積層ヘッド12から噴射された粉末Pは、レーザ光Lにより溶融固化して、成形層を形成する。しかし、粉末Pの一部は、例えばレーザ光Lが照射されないことで、そのまま三次元積層室2内に残る場合がある。また、機械加工部13により切削されて成形層から排出された切粉が三次元積層室2に残る。粉末回収部39は、三次元積層室2に残った粉末Pや切粉を回収する。粉末回収部39は、ブラシ等機械的に粉末を回収する機構を備えていてもよい。
図7は、粉末回収部39の一例を示す模式図である。図7に示すように、粉末回収部39は、導入部85と、サイクロン部86と、気体排出部87と、粉末排出部88とを有する。導入部85は、例えば管状の部材であり、一方の端部が例えば三次元積層室2内に接続されている。サイクロン部86は、例えば中空の円錐台形状の部材であり、例えば鉛直方向下方に向かって径が小さくなる。導入部85の他方の端部は、サイクロン部86の外周の接線方向に沿って、サイクロン部86に接続されている。気体排出部87は、管状の部材であり、一方の端部がサイクロン部86の鉛直方向上方の端部に接続されている。粉末排出部88は、管状の部材であり、一方の端部がサイクロン部86の鉛直方向下方の端部に接続されている。
気体排出部87の他方の端部には、例えば気体を吸引するポンプが接続されている。従って、気体排出部87は、サイクロン部86から気体を吸引して、サイクロン部86を負圧にする。サイクロン部86は負圧になるため、導入部85は、三次元積層室2から気体を吸引する。導入部85は、三次元積層室2内の気体と共に、成形層を形成しなかった粉末Pを吸引する。導入部85は、サイクロン部86の外周の接線方向に沿って、サイクロン部86に接続されている。従って、導入部85に吸引された気体及び粉末Pは、サイクロン部86の内周に沿って旋回する。粉末Pは、気体よりも比重が高いため、サイクロン部86の内周の放射方向外側に遠心分離される。粉末Pは、自重により延伸方向下方の粉末排出部88に向かい、粉末排出部88から排出される。また、気体は気体排出部87により排出される。
粉末回収部39は、このようにして成形層を形成しなかった粉末Pを回収する。また、実施形態1における粉末回収部39は、粉末Pを比重毎に分けて回収してもよい。例えば比重が低い粉末は、自重が小さいため、粉末排出部88に向かわずに、気体排出部87に吸引される。従って、粉末回収部39は、比重毎に粉末Pを分別して回収することができる。なお、粉末回収部39は、成形層を形成しなかった粉末Pを回収することができれば、このような構成に限られない。
次に、三次元積層装置1による三次元形状物の製造方法について説明する。図8は、実施形態1に係る三次元積層装置1による三次元形状物の製造方法を示す模式図である。また、図8に示す製造方法は、制御装置20が各部の動作を制御することで実行することができる。実施形態1においては、台座91上に三次元形状物を製造する場合として説明する。台座91は、例えば金属製の板状部材であるが、上部に三次元形状物が製造されるものであれば、形状及び材料は任意である。台座91は、基台部100上に取付けられる。基台部100は、台座91と共に、テーブル部11の回転テーブル部17に固定される。なお、台座91を基台部100とすることもできる。
制御装置20は、ステップS1に示すように、テーブル部11により、基台部100上の台座91が積層ヘッド12のZ軸方向下方に配置されるように、基台部100を移動させる。
次に、制御装置20は、ステップS2に示すように、粉末導入部35から積層ヘッド12に粉末を導入し、積層ヘッド12から気体と共に粉末Pを噴射しつつ、レーザ光Lを照射する。粉末Pは、所定の収束径をもって、基台部100上の台座91に向かって噴射される。レーザ光Lは、積層ヘッド12と台座91との間において、所定のスポット径をもって粉末Pに照射される。ここで、粉末Pの収束径のZ軸方向での位置に対するレーザ光Lのスポット径のZ軸方向での位置および粉末Pの収束径のZ軸方向での位置におけるスポット径は、例えば集光部49の位置を動かすことにより制御することができる。
制御装置20は、積層ヘッド12によりレーザ光Lを照射しつつ粉末Pを噴射することで、ステップS3に示すように、粉末Pがレーザ光Lの照射により溶融する。溶融した粉末Pは、溶融体Aとして、基台部100上の台座91に向かってZ軸方向下方へ落下する。
Z軸方向下方へ落下した溶融体Aは、基台部100上の台座91の所定の位置に到達する。台座91上の溶融体Aは、台座91上の所定の位置で、例えば放冷されることにより冷却される。冷却された溶融体Aは、ステップS4に示すように、台座91上で固化体Bとして固化される。
制御装置20は、テーブル部11で基台部100上を所定の位置に移動させつつ、ステップS2からステップS4に示す手順で積層ヘッド12により固化体Bを基台部100上に形成する。これらの手順を繰り返すことにより、ステップS5に示すように、固化体Bは、台座91上で所定の形状を有する成形層92を形成する。
制御装置20は、ステップS6に示すように、台座91に形成された成形層92が機械加工部13のZ軸方向下方に配置されるように、テーブル部11により基台部100の台座91を移動させる。さらに、制御装置20は、機械加工部13により、成形層92を機械加工する。制御装置20は、機械加工部13による機械加工を実施するか否かを選択し、不要な場合は実行しなくてもよい。従って、ステップS6に示す機械加工は、制御装置20の指令によっては、実施されない場合がある。
次に、制御装置20は、ステップS7に示すように、台座91に形成された成形層92が積層ヘッド12のZ軸方向下方に配置されるように、テーブル部11により基台部100の台座91を移動させる。そして、ステップS2からステップS6に示す手順を繰り返し、成形層92の上に成形層93が順次積層され、三次元形状物が製造される。
以上を纏めると、実施形態1に係る三次元積層装置1は、次のように三次元形状物を製造する。積層ヘッド12の粉末噴射部63は、粉末Pを基台部100上の台座91に向かって噴射する。また、積層ヘッド12の粉末流路63は、積層ヘッド12と台座91との間において、粉末Pにレーザ光Lを照射する。レーザ光Lが照射された粉末Pは、溶融され、基台部100上の台座91上で固化されて、成形層92を形成する。三次元積層装置1は、成形層92上に順次成形層93を積層し、機械加工部13により成形層92,93に適宜機械加工を加えて、三次元形状物を製造する。
実施形態1において、三次元形状物は、台座91上に製造されたが、三次元形状物は、台座91上に製造されなくてもよい。三次元形状物は、例えば基台部100上に直接製造されてもよい。また、三次元積層装置1は、既存の造形物上に成形層を積層することにより、いわゆる肉盛り溶接を行ってもよい。
次に、実施形態1に係る三次元積層装置1による三次元形状物の製造の詳細な工程について説明する。図9は、実施形態1に係る三次元積層装置1による三次元形状物の製造工程を示すフローチャートである。制御装置20は、例えば記憶部73内に記憶された三次元形状物の設計情報を読み出す。
次に、制御装置20は、気体排出部37により三次元積層室2内の空気を排出する(ステップS11)。ここで、三次元積層室2は、扉6が閉じており、予備室3と分離されている。また、三次元積層室2は、他の外気と連通している部分も閉じられ、密封されている。制御装置20は、例えば、気体排出部37により空気を排出することで、三次元積層室2内の酸素濃度が100ppm以下、好ましくは10ppm以下とする。制御装置20は、三次元積層室2内の酸素濃度が100ppm以下とすることで、不活性状態とすることができ、10ppm以下とすることで、より確実に不活性状態とすることができる。
次に、台座91を有する基台部100を予備室3内の基台移動部36に取付ける(ステップS12)。なお、三次元積層装置1は、ステップS12の処理を、ステップS11の処理よりも先に行ってもよい。
制御装置20は、予備室3内の基台移動部36が取付けられたら、予備室3の扉7を閉じ、予備室気体排出部25により、予備室3内の空気を排出する(ステップS13)。制御装置20は、予備室気体排出部25で空気を排出することで、予備室3内の酸素濃度を低下させる。予備室3内の酸素濃度は、例えば三次元積層室2内と同じ酸素濃度になることが好ましい。
制御装置20は、予備室3の空気の排出が完了したら、三次元積層室2の扉6を開き、基台移動部36により三次元積層室2内の回転テーブル部17に基台部100を取付ける(ステップS14)。基台部100は、回転テーブル部17に固定される。制御装置20は、基台部100を回転テーブル部17に取り付けたら、基台移動部36を予備室3内に戻し、扉6を閉じる。
制御装置20が、基台部100を回転テーブル部17にセットしたら、気体導入部38により三次元積層室2内にガスを導入する(ステップS15)。制御装置20は、気体導入部38により、三次元積層室2内を、導入したガス雰囲気にする。実施形態1において、気体導入部38が導入するガスは、窒素若しくはアルゴン等の不活性ガスである。気体導入部38は、三次元積層室2内の残留酸素濃度が100ppm以下となるように、不活性ガスを導入する。
また、三次元積層装置1は、粉末材料の種類によっては、ステップS11,ステップS13,ステップS15を省略してもよい。例えば粉末材料の酸化によっても三次元形状物の品質等が問題にならない場合は、これらのステップを省略し、三次元積層室2及び予備室3を大気雰囲気にしてもよい。また、ステップS13及びステップS15は、ステップS16以降においても継続して行われていてもよい。すなわち、気体排出部37は、三次元形状物を製造している間、三次元積層室2から空気を適宜排出してもよい。また気体導入部38は、三次元形状物を製造している間、三次元積層室2内に適宜不活性ガスを導入してもよい。
制御装置20は、三次元積層室2への不活性ガスの導入が完了したら、基台部100上の台座91について機械加工を行うかを判断する(ステップS16)。例えば、制御装置20は、形状計測部30に台座91の表面形状を計測させる。制御装置20は、形状計測部30の計測結果に基づき、台座91について機械加工を行うかを判断する。制御装置20は、例えば、台座91の表面粗さが所定の値より大きかった場合、台座91の機械加工を行うと判断する。ただし、制御装置20による台座91の機械加工の要否判断は、これに限られず、形状計測部30の計測結果によらなくてもよい。制御装置20は、例えば、記憶部73内に台座91の情報を記憶させておき、台座91の情報と三次元形状物の設計情報とから、台座91の加工要否を判断してもよい。また、制御装置20は、常に台座91を加工する設定としてもよい。
制御装置20は、台座91の機械加工が必要であると判断した場合(ステップS16でYes)、機械加工部13により、所定の条件で台座91の機械加工を行う(ステップS17)。制御装置20は、例えば形状計測部30による台座91の形状計測結果、又は台座91の情報と三次元形状物の設計情報と等に基づき、台座91の機械加工の条件を決定する。
制御装置20は、台座91の加工が必要でないと判断した場合(ステップS16でNo)、または、所定の条件で台座91の機械加工を行った場合、例えば記憶部73から読み出した三次元形状物の設計情報に基づき、成形層の形成条件を決定する(ステップS18)。成形層の形成条件とは、例えば、成形層の各層の形状、粉末Pの種類、粉末Pの噴射速度、粉末Pの噴射圧力、レーザ光Lの照射条件、粉末Pの収束径とレーザ光Lのスポット径と成形層表面との位置関係、気中で溶融した粉末Pの寸法、温度、形成中の成形層表面に形成される溶融プールの寸法、冷却速度、又はテーブル部11による基台部100の移動速度等、成形層を形成する上で必要な条件である。
制御装置20は、成形層の形成条件を決定したら、積層ヘッド12により、粉末Pを基台部100上の台座91に向かって噴射し、レーザ光Lの照射を開始する(ステップS19)。制御装置20は、粉末Pを噴射しつつ、レーザ光Lを照射することで、レーザ光Lにより粉末Pを溶融し、溶融した粉末Pを固化することができ、台座91上に固化体Bが形成する。
制御装置20は、粉末Pを噴射しつつ、レーザ光Lを照射し、テーブル部11により基台部100を移動させることで、台座91上に成形層92を形成する(ステップS20)。制御装置20は、加熱ヘッド31により、成形層92を加熱したり、固化体Bが付着する前の部分を加熱したりしてもよい。
制御装置20は、成形層92を形成したら、成形層92に機械加工が必要かを判断する(ステップS21)。制御装置20は、例えば形状計測部30に、成形層92の表面形状を計測させる。制御装置20は、形状計測部30の計測結果に基づき、成形層92の機械加工の要否を判断する。例えば、制御装置20は、成形層92の表面粗さが所定の値より大きかった場合、成形層92の機械加工を行うと判断する。ただし、成形層92の機械加工の要否判断の基準は、これに限られない。制御装置20は、例えば三次元形状物の設計情報と成形層の形成条件とから、成形層92の機械加工の要否を判断してもよい。例えば、制御装置20は、成形層の形成条件から算出された成形層92の表面粗さが三次元形状物の設計情報に基づく必要な表面粗さよりも大きい場合、成形層92に機械加工が必要であると判断するようにしてもよい。
制御装置20は、成形層92の機械加工が必要ではないと判断した場合(ステップS21でNo)、ステップS24に進む。制御装置20は、成形層92の機械加工が必要である(ステップS21でYes)と判断した場合、成形層92の機械加工の加工条件を決定する(ステップS22)。例えば、制御装置20は、形状計測部30の計測結果、又は三次元形状物の設計情報と成形層の形成条件と等に基づき、加工条件を決定する。制御装置20は、成形層加工条件を決定したら、機械加工部13により、決定した加工条件に基づいて成形層92を機械加工する(ステップS23)。
制御装置20は、成形層92の機械加工を行った場合、または、成形層92の機械加工が必要ではないと判断した場合、成形層92の上に更に成形層93を積層する必要があるかを判断する(ステップS24)。制御装置20は、例えば記憶部73から読み出した三次元形状物の設計情報に基づき、成形層92の上に更に成形層93を積層する必要があるかを判断する。
制御装置20は、成形層93の積層が必要であると判断した場合(ステップS24でYes)、ステップS18に戻って、成形層92上に成形層93を積層する。制御装置20は、成形層93の積層が不要である(ステップS24でNo)と判断した場合、三次元形状物の製造が完了となる。
三次元積層室2内において例えば酸素又は窒素等の気体濃度が高い場合、粉末Pは、例えば酸化又は窒化等の変質を生じる可能性がある。しかし、実施形態1においては、気体排出部37は、三次元積層室2内の空気を排出し、気体導入部38は、三次元積層室2内に不活性ガスを導入する。従って、実施形態1に係る三次元積層装置1は、粉末Pの変質を抑制し、三次元形状物の品質の低下を抑制することができる。さらに、気体導入部38は、任意の気体を導入することができる。従って、実施形態1に係る三次元積層装置1は、例えば粉末の種類に応じて、最適な気体雰囲気下で、三次元形状物を製造することができる。
また、実施形態1に係る三次元積層装置1は、積層ヘッド12により成形層を形成する。従って、実施形態1においては、積層ヘッド12の粉末噴射口部65a及びレーザ照射口部65bを含むノズル23を三次元積層室2内に配置している。ここで、積層ヘッド12はZ軸方向に可動する機械である。実施形態1に係る三次元積層装置1は、積層ヘッド12の移動に伴い伸縮しつつ、三次元積層室2内を密封するベローズ18を有する。従って、三次元積層装置1は、三次元積層室2内に積層ヘッド12等の可動する機械を収納する場合においても、三次元積層室2内の気密低下を抑制し、三次元形状物の品質の低下を抑制することができる。さらに、三次元積層装置10は、本実施形態のように、積層ヘッド12を一軸方向にのみ移動する機構とすることで、ベローズ18を一軸方向に伸縮可能に配置すればよくなる。これにより、ベローズ18に係る負荷を少なくしつつ移動に追従して伸縮させることができ、より好適に三次元積層室2内を密封することができる。これにより、積層ヘッド12を多軸方向に移動させる構造にする場合に比べ、装置構成を小さくすることができ、かつ、密閉性をより維持しやすくすることができる。さらに、ベローズ18は、積層ヘッド12のノズル23のみを三次元積層室2内に配置することができる。従って、三次元積層装置1は、積層ヘッド12の全てを三次元積層室2内に配置させるよりも、三次元積層室2の容積を小さくすることができる。そのため、三次元積層装置1は、三次元積層室2内の気体の排出と所定の気体の導入を容易に行うことができる。また、ベローズ19と機械加工部13との関係も同様である。
さらに、三次元積層装置1は、予備室3を有する。予備室3は、三次元積層室2と外部とが直接接続されることを抑制する。従って、予備室3は、例えば三次元積層室2内に基台部100を出し入れする際に、外部から三次元積層室2内に空気が流入したり、三次元積層室2内の不活性ガスが外部に流出したりすることを抑制することができる。そのため、三次元積層装置1は、三次元積層室2内の気体を排出したり、三次元積層室2内に所定の気体を導入したりする時間を短縮することができる。また、基台移動部36は、三次元積層室2の内部に基台部100を移動させる。三次元積層室2は、内部の空気が排出されている場合がある。基台移動部36は、例えば作業者が三次元積層室2の内部に入らなくても、三次元積層室2の内部に基台部100を移動させることができる。
(実施形態2)
次に、本発明の実施形態2について、図面を参照に説明する。実施形態2に係る三次元積層装置1Aは、積層ヘッド12にカバー部120を有する点で、実施形態1に係る三次元積層装置1と異なる。実施形態2に係る三次元積層装置1Aは、他の点において実施形態1に係る三次元積層装置1と同じ構成であるため、重複する部分の説明を省略する。
図10は、実施形態2に係るカバー部120の一例を示す断面図である。カバー部120は、内部に空間121を形成する箱状の部材である。カバー部120は、基台部100の三次元形状物が製造される箇所を覆う。カバー部120は、カバー部120に接続されるカバー部気体排出部122及びカバー部気体導入部124により、積層ヘッド12から噴射される粉末Pの周囲の気体雰囲気を調整する。
図10に示すように、カバー部120は、取付部132と、壁部134と、気体排出用開口部136と、気体導入用開口部138と、開口部140とを有する。
取付部132は、積層ヘッド12が取り付けられる板状の部材であり、開口部133を有する。壁部134は、取付部132の周方向に沿って設けられる。壁部134は、取付部132の外周から、取付部132の面と交差する方向に向かって端部135まで延在する。壁部134は、端部135の内周において、開口部140を形成する。取付部132と壁部134とに囲まれる部分は、空間121を形成する。
気体排出用開口部136は、壁部134に設けられ、空間121とカバー部120の外部とを導通させる。気体導入用開口部138は、壁部134に設けられ、空間121とカバー部120の外部とを導通させる。気体排出用開口部136は、気体導入用開口部138よりも取付部132側に設けられている。ただし、気体排出用開口部136と気体導入用開口部138とは、空間121とカバー部120の外部とを導通させるものであれば、これらの位置に限られない。気体排出用開口部136は、気体導入用開口部138よりも開口部140側に設けられてもよい。また、気体排出用開口部136と気体導入用開口部138とは、例えば取付部132に設けられてもよい。
気体排出用開口部136は、排出管142を介して、カバー部気体排出部122と接続されている。カバー部気体排出部122は、例えば真空ポンプである。カバー部気体排出部122は、制御装置20によって制御され、カバー部120の空間121内の空気を排出する。カバー部気体排出部122は、制御装置20によって制御される。カバー部気体排出部122は、三次元積層室2の外部に設けられているが、例えば三次元積層室2内に設けられていてもよい。また、カバー部気体排出部122は、カバー部120の空間121内の空気以外の気体を排出してもよい。
気体導入用開口部138は、導入管144を介して、カバー部気体導入部124と接続されている。カバー部気体導入部124は、制御装置20によって制御され、カバー部120の空間121内に所定成分の気体、例えばアルゴン、窒素等の不活性ガスを導入する。実施形態2においては、カバー部気体導入部124は、三次元積層室2内に導入される気体と同じ気体が導入される。カバー部気体導入部124は、三次元積層室2の外部に設けられているが、例えば三次元積層室2内に設けられていてもよい。なお、カバー部120の空間121内には、三次元積層室2内に導入される気体と異なる気体が導入されてもよい。
カバー部120は、積層ヘッド12に取付けられる。より詳しくは、カバー部120は、取付部132の開口部133を介して、空間121に積層ヘッド12のノズル23を収納するように、積層ヘッド12に取付けられる。積層ヘッド12と取付部132の開口部133とは、互いに密封されている。カバー部120は、積層ヘッド12に取付けられることにより、Z軸方向下部に向かって、開口部140を開口させる。次に、カバー部120により粉末Pの周囲の気体雰囲気を調整する方法について説明する。
図11は、実施形態2に係るカバー部120により粉末Pの周囲の気体雰囲気を調整する工程を示すフローチャートである。制御装置20は、三次元積層室2内の空気を排出し、三次元積層室2内に不活性ガスを導入する。次に、制御装置20は、テーブル部11により、カバー部120が基台部100上の台座91を覆うように、基台部100を移動させる(ステップS31)。カバー部120の端部135は、基台部100のZ軸方向上方に位置する。カバー部120は、積層ヘッド12とともに移動するため、制御装置20は、カバー部120の端部135と基台部100とを互いに接触せずに、空間137を形成させている。なお、カバー部120は、基台部100の三次元形状物が製造される箇所を覆えば、台座91の全体を覆わなくてもよい。例えば、カバー部120は、台座91のZ軸方向上方の面のみを覆ってもよい。なお、ステップS31において、制御装置20は、カバー部120が基台部100上の台座91を覆うように、積層ヘッド12をZ軸方向に移動させてもよい。
制御装置20が、カバー部120が台座91を覆うように基台部100を移動させたら、制御装置20は、カバー部気体排出部122によりカバー部120内の空間121内の空気を排出する(ステップS32)。制御装置20は、例えば、カバー部気体排出部122によりにより空気を排出することで、カバー部120内の酸素濃度が100ppm以下、好ましくは10ppm以下とする。制御装置20は、カバー部120内の酸素濃度を100ppm以下とすることで、不活性状態とすることができ、10ppm以下とすることで、より確実に不活性状態とすることができる。
制御装置20がカバー部120の空間121内の空気を排出させたら、制御装置20は、カバー部気体導入部124により、カバー部120内の空間121内に不活性ガスを導入する(ステップS33)。制御装置20は、カバー部気体導入部124により、カバー部120内の空間121内を、導入した不活性ガス雰囲気にする。実施形態2において、カバー部気体導入部124が導入するガスは、気体導入部38により三次元積層室2内に導入されるガスと同じ窒素もしくはアルゴン等の不活性ガスである。気体導入部38は、三次元積層室2内の残留酸素濃度が100ppm以下となるように、不活性ガスを導入する。
制御装置20がカバー部120の空間121内に不活性ガスを導入したら、制御装置20は、積層ヘッド12により、三次元形状物を製造する(ステップS34)。すなわち、制御装置20は、制御装置20がカバー部120の空間121内に不活性ガスを導入した後に、三次元形状物の製造を開始する。台座91が空間121内に収納されているため、成形層92は、不活性ガス雰囲気下の空間121内で形成される。三次元形状物の製造が完了すれば、この工程は終了する。なお、ステップS32及びステップS33は、ステップS34においても継続して行われる。すなわち、制御装置20は、三次元形状物を製造している間、カバー部気体排出部122によりカバー部120内の空間121内の空気を排出し続ける。また、制御装置20は、三次元形状物を製造している間、カバー部120内の空間121内に適宜不活性ガスを導入し続ける。ただし、制御装置20は、例えば空間121内の酸素濃度及び不活性ガス濃度に応じて、空間121内の空気を適宜排出させ、空間121内に不活性ガスを適宜導入してもよい。
このように、実施形態2に係る三次元積層装置1Aは、カバー部120を有する。カバー部120は、台座91を覆い、台座91が収納される空間121内の空気を排出し、空間121内に不活性ガスを導入する。すなわち、実施形態2に係る三次元積層装置1Aは、三次元積層室2内を不活性ガス雰囲気下にした上で、さらに、成形層92が形成される箇所から、空気を排出して不活性ガスを導入する。従って、実施形態2に係る三次元積層装置1Aは、成形層92の周囲をより好適に不活性ガス雰囲気下にすることができる。そのため、実施形態2に係る三次元積層装置1Aは、粉末Pの変質を抑制し、三次元形状物の品質の低下を抑制することができる。さらに、カバー部気体導入部124は、任意の気体を導入することができる。従って、実施形態2に係る三次元積層装置1Aは、例えば粉末の種類に応じて、最適な気体雰囲気下で、三次元形状物を製造することができる。
また、実施形態2に係る三次元積層装置1Aは、三次元形状物を製造している間、カバー部120内の空気を排出し、不活性ガスを導入させる。従って、実施形態2に係る三次元積層装置1Aは、カバー部120の端部135と基台部100との間に空間137が形成されていても、カバー部120内を好適に不活性ガス雰囲気下にすることができる。
また、気体導入用開口部138は、気体排出用開口部136よりもZ軸方向下方に設けられる。三次元積層装置1Aは、気体導入用開口部138を気体排出用開口部136よりもZ軸方向下方に設けることで、空気中の酸素等の気体よりも比重が高いアルゴン等を導入するガスとして用いた場合、カバー部120内に好適にアルゴンガスを満たすことができる。なお、導入するガスを空気よりも軽いガスとする場合、気体導入用開口部138と気体排出用開口部136との配置を逆にすればよい。
カバー部120内に空気中の酸素等の気体よりも比重が高いアルゴンガスなどを導入する場合、気体導入用開口部138は台座91よりZ軸方向上方に形成されていることが望ましい。空気中の酸素等の気体よりも比重が高いアルゴンガスは、Z軸方向下方に移動しやすい。気体導入用開口部138が台座91よりZ軸方向上方に設けられていることにより、実施形態2に係る三次元積層装置1Aは、導入したアルゴンガスを成形層92の周囲により好適に移動させることができる。なお、導入するガスを空気よりも軽いガスとする場合、気体導入用開口部138は台座91よりZ軸方向下方に形成されていることが望ましい。
以上、本発明の実施形態を説明したが、これらの実施形態の内容によりこれらの実施形態が限定されるものではない。また、前述した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のもの、いわゆる均等の範囲のものが含まれる。さらに、前述した構成要素は適宜組み合わせることが可能である。さらに、前述した実施形態等の要旨を逸脱しない範囲で構成要素の種々の省略、置換又は変更を行うことができる。さらに、前述した実施形態等の要旨を逸脱しない範囲で構成要素の種々の省略、置換又は変更を行うことができる。例えば、本実施形態に係る三次元積層装置1は、積層ヘッド12により粉末Pを噴射して、粉末Pにレーザ光Lを照射する構成に限られない。三次元積層装置1は、粉末Pを供給して粉末Pにレーザ光Lを照射することにより成形層を形成し、成形層に適宜機械加工を加えることができればよい。例えば、三次元積層装置1は、粉末供給部により粉末層を形成し、粉末層の一部にレーザ光Lを照射して粉末を焼結させることにより、成形層を形成するものであってもよい。また、例えば、三次元積層装置は、制御装置20をインターネット等の通信回線を通じて外部の機器と接続され、外部の機器から入力される指示に基づいて加工条件、例えば成形層の形成条件を変更、設定してもよい。つまり、三次元積層装置は、通信回線を用いて通信し、外部の機器から加工条件を変更できるようにしてもよい。