JP6533850B2 - 計時器用機構 - Google Patents

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Description

本発明は、計時器の分野に関する。本発明は、特に、数学的演算を行うことができる計時器用機構に関する。
互いの倍数でない別個の期間か関わる少なくとも2つの自然現象の収束に依存するような特定の事象がある。例として、日の出と日没時間が挙げられる。この日の出と日没時間は、所与の時点において、時刻と日付、又は潮時間と潮の係数に依存している。この潮時間と潮の係数は、これらに加えて、月の位置に依存している。機械的手段のみを用いてこのような事象を表すことはいくらか難しい。
第1の機械的な手法は、2つの時間関数に依存する事象を表すためのものであり、三次元カムを用いることを伴うことができる。この三次元カムは、例えば、摺動ピボットの2つの自由度で独立して動くことができる。フィーラーは、回転軸のまわりを回転し軸に沿って平行移動するように、カム表面に基づいて動く。2つの運動のそれぞれは、前記2つの時間関数にしたがって独立して決められる。しかし、この種の手法は、三次元カムによって大きな空間を占められるために、計時器用機構に組み込むためには適していない。
国際特許出願WO2016/029296は、乗算を含む様々な数学的演算を行うことを提案しているが、その目的の達成を可能にする実施形態については詳細に説明していない。
本発明は、腕時計に組み入れることが容易な乗算機構を提案することによって、従来技術の課題を克服することを目的とする。
より正確には、本発明は、第1のレバーを有する計時器用機構に関し、前記第1のレバーは、レバー軸のまわりを回転可能であり、前記第1のレバーの角位置は、第1の値を表し、前記第1の値のゼロ値は、基準方向に対応している。また、当該機構は、さらに、前記第1のレバーの前記レバー軸に実質的に垂直な方向に平行移動するように動くように前記第1のレバーにマウントされた摺動ブロックを有し、前記第1のレバーに対して平行移動する軌道が前記レバー軸に交差するようなガイドマーク要素を有し、前記レバー軸に対する前記ガイドマーク要素の半径方向の位置は、第2の値を表す。当該機構は、さらに、前記レバー軸に垂直な平面内における変形可能な平行四辺形によって形成されている出力デバイスを有し、前記平行四辺形には、レバー軸に対して固定されており前記基準方向に垂直な第1の辺と、前記第1の辺の対辺であり前記基準方向に垂直な方向に平行移動するように前記ガイドマーク要素にリンクされている第2の辺とがある。
この構成によって、乗算演算を行うことが可能になる。平行四辺形の第1の辺に隣接している第3の辺と第4の辺の角位置が第1の値と第2の値の積に実質的に比例するからである。
本発明の好ましい実施形態によると、前記第1の値と前記第2の値は、時間関数である。
本発明の別の好ましい実施形態によると、前記第1のレバーは、計時器用ムーブメントに運動学的に接続されるように意図された第1の車セットによって角度的に位置が決まる。
別の好ましい実施形態によると、前記第1の車セットは、前記第1のレバーと一体化されたカム従動子と連係するように構成している第1のカムであり、
当該機構は、第1のカムに接する前記カム従動子を保持する弾性戻し手段を有する。
別の好ましい実施形態によると、前記摺動ブロックは、平行移動する方向に延在しているラックを有し、当該機構は、前記レバー軸と同軸であり前記ラックと噛み合うピニオンを有し、前記ピニオンは、計時器用ムーブメントに運動学的に接続されるように意図された第2の車セットとも噛み合う。
別の好ましい実施形態によると、前記第2の車セットは、計時器用ムーブメントに運動学的に接続されるように意図された第2のカムによって角度的に位置が決められる第2のレバーである。
別の好ましい実施形態によると、前記ガイドマーク要素は、前記変形可能な平行四辺形の前記第2の辺にあるオブロング状の開口内に少なくとも部分的に収容されるピンであり、前記オブロング状の開口は、前記基準方向に延在している。
別の好ましい実施形態によると、前記ピニオンの半径は、オブロング状の開口の長さの1/10以下であり、理想的には、1/20以下である。
別の好ましい実施形態によると、前記第1のレバーの角位置は、[−π/4,+π/4]の範囲内であり、好ましくは、[−π/8,+π/8]の範囲内である。
添付の図面を参照しながら以下の説明を読むことで、本発明の他の詳細について、より明確に理解することができるであろう。
第2の入力値がゼロである乗算機構についての図である。 当該機構の運動学的な図である。 異なる位置の1つにある機構を示している。 異なる位置の1つにある機構を示している。 異なる位置の1つにある機構を示している。 異なる位置の1つにある機構を示している。
図1は、ムーブメントに組み入れられ又はムーブメントにモジュール的な形態で付加されるように意図されている本発明に係る乗算機構を示している。この計時器用機構は、2つの入力車セット及び1つの出力車セットを有し、この出力車セットの位置は、2つの入力車セットの位置が表す値の積に比例する値を表す。乗算機能を行うために、当該機構は、レバー軸Xのまわりを回転可能な第1のレバー1を有し、レバー軸Xは、ムーブメントに垂直である。レバー1は、計時器用ムーブメントに運動学的に接続されるように意図された第1の車セットによって角位置が決まる。図示している実施形態において、第1の車セットは、計時器用ムーブメントによって回転駆動されるように意図された第1のカム3である。当該機構は、レバー1と一体化されているフィーラー2が第1のカム3に接するように保持するように構成している戻し手段(図示せず)を有する。レバー1についてのそのレバー軸Xのまわりの角位置は、第1の値に対応している。この第1の値は、正であることができ、また、負であることができる。第1の値のゼロ値は、レバー1の基準方向に対応している。代わりに、第1の車セットは、レバー1と一体化されておりレバー軸Xを中心とする歯付き区画と噛み合うピニオンであることができる。
摺動ブロック4は、レバー軸Xに実質的に垂直な平面内にてレバー1に摺動可能にマウントされている。摺動ブロック4は、平行移動するようにレバー1に対して運動可能であり、軸Xのまわりの回転運動をするレバー1に追従する。摺動ブロック4と一体化されたガイドマーク要素は、レバー1に対する平行移動を行うこのガイドマーク要素の軌道がレバー軸Xに交差するように配置されている。図示した実施形態において、ガイドマーク要素は、ピン5の形態である。図1では、レバー軸Xと同一直線上にある特定の位置にピン5を示している。レバー1の角位置は、摺動ブロック4の摺動ガイド軸の角位置である。
ピニオン6は、レバー軸Xに回転可能にマウントされており、摺動ブロック4が備えるラック7と噛み合っている。ピニオン6がレバー1と同軸であるので、ピニオン6は、レバー1の角位置にかかわらず、ラック7と噛み合い続ける。なお、ガイドマーク要素からラック7への距離は、ピニオン6の半径と等しい。また、ピニオン6は、計時器用ムーブメントに運動学的に接続されるように意図された第2の車セットとも噛み合う。
図示した実施形態において、第2の車セットは、ピニオン6と噛み合う歯付き区画9を有する第2のレバー又は振動アーム8である。振動アーム8は、計時器用ムーブメントに接続されるように意図された第2のカム10によって角位置が決まる。第2のカム10の位置によって、レバー軸Xに対する、振動アーム8の位置、ピニオン6の位置、そして結果的に、摺動ブロック4の半径方向の位置が決まり、したがって、ピン5によって形成されるガイドマーク要素の位置が決まる。レバー軸Xに対するピン5の半径方向の位置は、第2の値に対応している。これは、正であることができ、また、負であることができる。図1に示している位置では、ピン5はレバー軸Xと同一直線上にある。これは、第2の値のゼロ値に対応している。
また、乗算機構は、レバー軸Xに垂直な平面内にある変形可能な平行四辺形によって形成される出力デバイスを有する。この変形可能な平行四辺形には、レバー軸Xに対して固定されており基準方向に垂直である第1の辺のABと、第1の辺のABの反対側にあり平行移動ができるように基準方向に垂直な方向にてピン5にリンクしている第2の辺CDとがある。このために、第2の辺には、基準方向に延在している、すなわち、平行四辺形の第1の辺ABと第2の辺CDに垂直に延在している、オブロング状の開口11がある。ピン5は、少なくとも部分的に、幅がピン5の直径と実質的に等しいオブロング状の開口11内に収容される。
図2は、本発明の機構の運動学的な図である。レバー1は、摺動ブロック4の摺動ガイドリンクの方向とここでは鉛直方向である基準方向の間に傾斜角度があるように表されている。角度aは、第1の値に比例する。ピン5は、レバー軸Xから半径方向の距離rがある位置に位置している。これは、第2の値を表している。基準方向に垂直な水平方向におけるピン5の側方運動dは、以下の式によって与えられる。
d=r・sin(a)
ピン5が水平方向の平行移動ができるように第2の辺CDに運動学的にリンクされるので、点C及びDは、角度的な基準方向に垂直な方向に値dの分、動く。Rが平行四辺形の対辺AC及びBDの長さである場合、基準方向に対するこれらの対辺の角位置bは、以下の式によって得られる。
d=R・sin(b)
レバーの角位置を表す第1の値の範囲がいずれであっても、角度aは、範囲[−π/4,+π/4]、好ましくは、範囲[−π/8,+π/8]、内に残るように、第1の値に比例するように選ぶことができる。ここで、角度aのサインは、角度aの値によって近似することができる。また、角度bが角度aより閉じているように維持されるように、すなわち、距離rが平行四辺形の対辺の長さRを超えないように、当該機構を構成することができる。サインをそれらの対応する角度に置き換えることによって以下を得る。
b=a・r/R
すなわち、角度bが与える対辺の角位置は、第1の値と第2の値の積a・rに比例する。
平行四辺形の第1の辺ABに隣接している第3の辺ACと第4の辺BDの角位置によって決まる出力値は、変形可能な平行四辺形の側方の辺の一方と一体化されたディスプレー針によって直接的に、又はピニオン又はラックを駆動する歯付き区画12によって間接的に、得ることができる。また、乗算機構の出力は、別の乗算機構の入力に運動学的に接続して、2よりも大きい値の乗算を行うことができる。また、値自身を何回か掛け合わせることによって階乗演算を行うことができる。
図3〜4は、第2の値のバリエーションに応じた異なる位置にある機構を示している。これによって、摺動ブロック4が運動することとなる。図5及び6は、第1の値のバリエーションに応じてレバー1が回転するような機構を示している。
提案している実施形態において、摺動ブロック4の半径方向の運動がラック7と噛み合うピニオン6の回転によって実現することがわかるであろう。第1の値が変化すると、レバー軸Xのまわりのレバー1の回転を発生させ、ラック7がピニオン6上を転がり、レバー1に対する摺動ブロック4の望まない運動を発生させて、これによって、第2の値を表すピン5の半径方向の位置を変える。この影響を抑えるために、ピニオン6の半径は、可能な限り小さいように選ばれ、好ましくは、摺動ブロックの最大のトラベルを表すオブロング状の開口の長さの1/10以下であり、理想的には、この長さの1/20以下であるように選ばれる。ピニオン6の半径が小さくても、図1の場合のように第2の値が0の近くである場合、当該問題は顕著なままである。このため、乗算されるべき2つの値の一方がゼロにはならないように変わったときに、レバー1に対する摺動ブロック4の半径方向の運動を決める第2の値として割り当てられることが好ましい。このようにして、摺動ブロック4の位置に対するレバー1の位置の影響が弱められる。
このようにして、本発明によって提案される機構によって、2つの独立した入力値どうしの乗算演算を行うことが可能になる。当該機構の本質的に平坦な構成によって、この構成をムーブメントないし独立したモジュールに容易に組み入れることができる。
入力値は、非常に異なる周期を有する周期的な時間関数であることができる。例えば、地球の軸の傾斜、1日のうちの時刻、太陰月などである。本発明の機構によって可能になるこのデータを乗算する演算によって、様々な自然現象の表現ないしインジケーションを得ることができる。例えば、地球の薄明帯、日の出と日没時間の計算、及び潮時間及び潮の係数の計算のディスプレーである。
1 第1のレバー
2 カム従動子
3 第1のカム
4 摺動ブロック
5 ピン
6 ピニオン
7 ラック
8 第2のレバー
10 第2のカム
11 オブロング状の開口
X レバー軸

Claims (11)

  1. 第1のレバー(1)と、摺動ブロック(4)と、及び出力デバイスとを有する計時器用機構であって、
    前記第1のレバー(1)は、レバー軸(X)のまわりを回転可能であり、
    前記第1のレバー(1)の角位置は、第1の値aを表し、
    前記第1の値のゼロ値は、基準方向に対応しており、
    前記摺動ブロック(4)は、前記第1のレバー(1)の前記レバー軸に実質的に垂直な方向に平行移動するように動くように前記第1のレバー(1)にマウントされ、
    前記第1のレバー(1)に対して平行移動する軌道が前記レバー軸(X)に交差するようなガイドマーク要素を有し、
    前記レバー軸(X)に対する前記ガイドマーク要素の半径方向の位置は、第2の値bを表し、
    前記出力デバイスは、前記レバー軸(X)に垂直な平面内における変形可能な平行四辺形によって形成されており、
    前記平行四辺形には、レバー軸(X)に対して固定されており前記基準方向に垂直な第1の辺(AB)と、前記第1の辺(AB)の対辺であり前記基準方向に垂直な方向に平行移動するように前記ガイドマーク要素にリンクされている第2の辺(CD)とがあり、
    前記第1の辺(AB)に隣接している前記平行四辺形の第3の辺(AC)と第4の辺(BD)の角位置は、
    r・sin(a)=R・sin(b)
    を満たし、ここで、rは、前記レバー軸(X)からの前記ガイドマーク要素の半径方向の距離であり、
    Rは、前記平行四辺形の前記第3の辺(AC)と前記第4の辺(BD)の長さである
    ことを特徴とする計時器用ムーブメント。
  2. 前記第1の値と前記第2の値は、時間関数である
    ことを特徴とする請求項1に記載の計時器用ムーブメント。
  3. 前記第1のレバー(1)は、計時器用ムーブメントに運動学的に接続されるように意図された第1の車セットによって角度的に位置が決まる
    ことを特徴とする請求項1又は2に記載の計時器用機構。
  4. 前記第1の車セットは、前記第1のレバー(1)と一体化されたカム従動子(2)と連係するように構成している第1のカム(3)であり、
    当該機構は、第1のカム(3)に接する前記カム従動子(2)を保持する弾性戻し手段を有する
    ことを特徴とする請求項3に記載の計時器用機構。
  5. 前記摺動ブロック(4)は、平行移動する方向に延在しているラック(7)を有し、
    当該機構は、前記第1のレバー(1)の軸と同軸であり前記ラック(7)と噛み合うピニオン(6)を有し、
    前記ピニオン(6)は、計時器用ムーブメントに運動学的に接続されるように意図された第2の車セットとも噛み合う
    ことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の計時器用機構。
  6. 前記第2の車セットは、計時器用ムーブメントに運動学的に接続されるように意図された第2のカム(10)によって角度的に位置が決められる第2のレバー(8)である
    ことを特徴とする請求項5に記載の計時器用機構。
  7. 前記ガイドマーク要素は、前記変形可能な平行四辺形の前記第2の辺(CD)にあるオブロング状の開口(11)内に少なくとも部分的に収容されるピン(5)であり、
    前記オブロング状の開口(11)は、前記基準方向に延在している
    ことを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の計時器用機構。
  8. 前記ピニオン(6)の半径は、オブロング状の開口(11)の長さの1/10以下である
    ことを特徴とする請求項5又は7に記載の計時器用機構。
  9. 前記ピニオン(6)の半径は、前記オブロング状の開口(11)の長さの1/20以下である
    ことを特徴とする請求項8に記載の計時器用機構。
  10. 前記第1のレバー(1)の角位置は、[−π/4,+π/4]の範囲内である
    ことを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載の計時器用機構。
  11. 前記第1のレバー(1)の角位置は、[−π/8,+π/8]の範囲内である
    ことを特徴とする請求項10に記載の計時器用機構。
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