JP6532248B2 - 微生物の増殖方法 - Google Patents

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Description

本発明は、糖化処理物を含む糖化溶液における微生物の増殖方法に関する。
近年、地球温暖化の一因と考えられている二酸化炭素の排出量削減が求められており、バイオマス由来のディーゼル燃料や、ガソリン等の液体炭化水素とバイオマス由来のエタノールとの混合燃料を自動車燃料に用いることが検討されている。前記エタノールとしては、サトウキビ、トウモロコシ等の農作物等の植物性物質の発酵により得られたエタノールを用いることができる。
かかる植物性物質から得られたエタノールにおいては、原料となる植物自体が既に光合成により二酸化炭素を吸収しているので、該エタノールを燃焼したときに排出される二酸化炭素の量は、該植物自体が吸収した二酸化炭素の量に等しい。即ち、総計としての二酸化炭素の排出量は理論的にはゼロになるという、所謂カーボンニュートラル効果を得ることができる。
ところが、前記サトウキビ、トウモロコシ等の農作物は、本来食糧とされるものであるので、エタノールの原料として大量に消費されると、食糧として供給される量が減少するという問題がある。
そこで、原料として、サトウキビ、トウモロコシ等の農作物に代えて、食用ではないリグノセルロース系バイオマス(以下、バイオマスと略記することがある)を用いてエタノールを製造する技術が検討されている。リグノセルロース系バイオマスは、セルロースとヘミセルロース(以下、セルロース類と略記することがある)を含んでおり、セルロース類を糖化酵素によってグルコースやキシロース等の糖に分解し、得られた糖を発酵させることによりエタノールを得ることができる。
リグノセルロース系バイオマスとしては、例えば、木材、稲藁、麦藁、バガス、竹、トウモロコシの茎や葉や芯、パルプ、及びこれらから生じる廃棄物、例えば古紙等を挙げることができる。
ところが、リグノセルロース系バイオマスは、セルロースの他にヘミセルロース及びリグニンを主な構成成分としており、通常セルロース及びヘミセルロースは、リグニンに強固に結合しているため、そのままではセルロースに対する糖化反応を行うことが難しい。
そこで、従来、リグノセルロース系バイオマス由来のエタノールは、次のようにして製造される。まず、リグノセルロース系バイオマスを前処理することにより、リグノセルロース系バイオマスからリグニンを解離し、又はリグノセルロース系バイオマスを膨潤させた前処理物を得る。本明細書において、解離とは、リグノセルロース系バイオマスのセルロース又はヘミセルロースに結合しているリグニンの結合部位のうち、少なくとも一部の結合を切断することをいう。また、膨潤とは、液体の浸入により結晶性セルロースを構成するセルロース又はヘミセルロースに空隙が生じ、又は、セルロース繊維の内部に空隙が生じて膨張することをいう。
次に、前記前処理物を前記糖化酵素を用いて糖化処理することにより、糖化溶液を得る。次に、前記糖化溶液に添加した微生物を増殖させて該糖化溶液を発酵させることによりエタノールを生成し、該エタノールを蒸留することにより、バイオエタノールを製造する。このとき、前記発酵における発酵効率が低いことがあるという問題がある。
前記問題を解決するために、従来、前記糖化溶液にサトウキビの廃糖蜜を混合して糖濃度を高くし、得られた混合液を発酵させる技術が提案されている(例えば特許文献1参照)。前記従来技術によれば、前記発酵における発酵効率を向上できるとされている。
しかし、前記従来技術においても、前記発酵効率を向上させることができない場合があるという問題がある。
本発明者らは、前記発酵効率を向上させることができない原因について検討した。その結果、前記糖化溶液が、前記前処理及び前記糖化処理の際に副生成物として生成した酢酸、蟻酸、p−クマル酸等の化合物を含み、該化合物によって前記発酵の際に前記微生物の増殖が阻害されていることを見出した。本願では、前記微生物の増殖を阻害する化合物を「増殖阻害物質」と言う。
前記増殖阻害物質は、前記糖化溶液を発酵させてバイオエタノールを生成する場合に限らず、バイオディーゼル等の有用物質を得る場合においても同様に、微生物の増殖を阻害する。
そこで、前記増殖阻害物質の影響を低減するために、前記糖化溶液と前記廃糖蜜とを混合した混合液を、ナノ透過膜又は逆浸透膜を用いて濾過することにより、該混合液から前記増殖阻害物質を除去する技術が提案されている(例えば特許文献2参照)。
特開2012−170443号公報 国際公開第2012/118171号
しかしながら、前記糖化溶液に対して前記ナノ透過膜又は逆浸透膜を用いて濾過する場合には、濾過工程が増えるので、製造工程が煩雑になる上にバイオエタノール製造に要する時間が長くなり、さらには濾過を行うための設備が必要となるという不都合がある。
本発明は、かかる不都合を解消して、糖化溶液から増殖阻害物質を除去することなく微生物の増殖を増進させることができる微生物の増殖方法を提供することを目的とする。前記除去とは、濾過、中和、吸着等により糖化溶液に含まれる増殖阻害物質を取り除いたり、その効力を失わせたりすることをいう。
本発明は、糖化処理物を含む糖化溶液における微生物の増殖方法において、該微生物の増殖を阻害する増殖阻害物質を含む該糖化溶液を、該糖化溶液よりも増殖阻害物質濃度が小さい糖液によって該増殖阻害物質濃度が低下するように希釈することにより、混合糖化溶液を得る工程と、該混合糖化溶液に微生物を添加し該微生物を増殖させる工程とを備えることを特徴とする。
本願において、「糖化溶液」とは、糖化処理物と溶媒としての液体との混合物であることを意味し、その形態がスラリー状であってもよく、液状であってもよい。
本発明の微生物の増殖方法では、まず、微生物の増殖を阻害する増殖阻害物質を含む糖化溶液を、該糖化溶液よりも増殖阻害物質濃度が小さい糖液によって希釈することにより、増殖阻害物質濃度が低下された混合糖化溶液を得る。次に、前記混合糖化溶液に微生物を添加して該微生物を増殖させる。このとき、前記混合糖化溶液は増殖阻害物質濃度が低下されているので、前記増殖阻害物質によって前記微生物の増殖が阻害されることを防ぐことができる。
したがって、本発明の微生物の増殖方法によれば、増殖阻害物質を除去することなく微生物の増殖を増進させることができる。
本発明の微生物の増殖方法において、前記糖化溶液として、例えば、リグノセルロース系バイオマスを前処理した前処理物を糖化酵素によって糖化処理して得られた糖化処理物を含む糖化溶液を用いることができる。
ところで、前記増殖阻害物質としては、例えば酢酸、フルフラール、p−クマル酸を挙げることができる。本発明の微生物の増殖方法において、前記糖化溶液を、前記酢酸の非解離分の濃度が700mg/L以下となり、前記フルフラールの濃度が700mg/L以下となり、且つ前記p−クマル酸の濃度が500mg/L以下となるように希釈することが好ましい。各増殖阻害物質濃度が前記範囲である前記混合糖化溶液とすることにより、前記微生物の増殖をより増進させることができる。
各増殖阻害物質濃度が前記範囲を上回る場合には、前記微生物を十分に増殖させることができないことがある。
また、本発明の微生物の増殖方法において、前記糖液としては、例えば、サトウキビの廃糖蜜、サトウキビの絞り汁、該サトウキビの絞り汁の濃縮液、米を糖化した液、麦を糖化した液、トウモロコシを糖化した液からなる群から選択される1種以上の液体を用いることができる。前記廃糖蜜とは、サトウキビの絞り汁から砂糖を結晶化させた後に残る残液であり、モラセス又は糖蜜と呼ばれることがある。以下、サトウキビの廃糖蜜を「廃糖蜜」と略記することがある。
前記糖液として前記液体を用いることにより、低コストで前記増殖阻害物質濃度を低下させることができる。
また、本発明の微生物の増殖方法では、次のようにして、前記微生物の増殖を増進させることができる糖化溶液率を備える混合糖化溶液を得ることができる。本願では、「糖化溶液率」とは、糖化溶液を糖液で希釈して混合糖化溶液を得るときの該混合糖化溶液の全質量に対する該糖化溶液の質量の割合を意味する。この方法では、前記糖化溶液に含まれる増殖阻害物質の濃度に着目して前記糖化溶液率を決定するが、はじめに、1種類の増殖阻害物質に着目する方法について説明する。
まず、第1の工程として、試験用糖液に、前記増殖阻害物質をそれぞれ異なる増殖阻害物質濃度で添加してなる複数の培養液を調製する。そして、前記複数の培養液を用いて前記微生物を培養し、各培養液に含まれる該増殖阻害物質濃度毎の微生物増殖数を測定する。
次に、第2の工程として、前記増殖阻害物質を無添加の前記試験用糖液を培養液に用いて前記微生物を培養し、該無添加の試験用糖液における微生物増殖数を測定して標準微生物増殖数とする。
次に、第3の工程として、前記第1の工程で得られた前記増殖阻害物質濃度毎の微生物増殖数を、前記第2の工程で得られた前記標準微生物増殖数で除することにより、各培養液の増殖阻害物質濃度における微生物増殖率を算出する。
次に、第4の工程として、前記第3の工程で得られた各培養液の前記増殖阻害物質濃度と前記微生物増殖率との関係から、第1の増殖阻害曲線を作成する。
次に、第5の工程として、前記微生物の増殖に用いる前記糖化溶液に含まれる増殖阻害物質濃度を測定する。
次に、第6の工程として、前記第4の工程で得られた前記第1の増殖阻害曲線から、前記第5の工程で得られた前記糖化溶液に含まれる増殖阻害物質濃度に対応する微生物増殖率を求める。
次に、第7の工程として、まず、未希釈の前記糖化溶液の糖化溶液率を1とする。次に、前記未希釈の糖化溶液を、前記微生物の増殖に用いる前記糖液によってそれぞれ異なる量で希釈することにより得られる各混合糖化溶液について、前記第4の工程で得られた前記第1の増殖阻害曲線から、各混合糖化溶液の糖化溶液率に対応する微生物増殖率を求める。このとき、前記糖液の増殖阻害物質濃度は、前記糖化溶液の増殖阻害物質濃度よりも非常に小さく実質的に無視できるとして、ゼロとみなすこととする。
次に、第8の工程として、前記第7の工程で得られた各混合糖化溶液における前記糖化溶液率と前記微生物増殖率との関係から、第2の増殖阻害曲線を作成する。
次に、第9の工程として、前記第8の工程で得られた前記第2の増殖阻害曲線から、所望の微生物増殖率に対応する糖化溶液率を求める。
次に、第10の工程として、第9の工程で得られた前記糖化溶液率となるように、前記糖化溶液を、前記微生物の増殖に用いる前記糖液によって希釈することにより、混合糖化溶液を得る。
以上により、前記増殖阻害物質を除去することなく微生物の増殖を増進させることができる前記混合糖化溶液を得ることができる。
前記糖化溶液に含まれる増殖阻害物質の濃度に着目して前記糖化溶液率を決定する方法によれば、前記微生物の増殖阻害に最も大きい影響を与える増殖阻害物質に着目して前記希釈を行うことができる。
また、次のようにすることにより、前記糖化溶液に含まれる複数の増殖阻害物質に着目して前記糖化溶液率を決定することが可能である。
まず、第1の工程として、前記微生物の増殖に用いる前記糖化溶液に含まれる複数の増殖阻害物質の各増殖阻害物質毎に、試験用糖液に該増殖阻害物質をそれぞれ異なる増殖阻害物質濃度で添加してなる複数の培養液を調製する。そして、各増殖阻害物質毎に前記複数の培養液を用いて前記微生物を培養し、各増殖阻害物質毎の各培養液に含まれる該増殖阻害物質濃度毎の微生物増殖数を測定する。
次に、第2の工程として、各増殖阻害物質を無添加の前記試験用糖液を培養液に用いて前記微生物を培養し、該無添加の試験用糖液における微生物増殖数を測定して標準微生物増殖数とする。
次に、第3の工程として、前記第1の工程で得られた各増殖阻害物質毎の各増殖阻害物質濃度毎の微生物増殖数を、前記第2の工程で得られた前記標準微生物増殖数で除することにより、各増殖阻害物質毎に、各培養液の増殖阻害物質濃度における微生物増殖率を算出する。
次に、第4の工程として、前記第3の工程で得られた各増殖阻害物質毎の各培養液の前記増殖阻害物質濃度と前記微生物増殖率との関係から、各増殖阻害物質毎に第1の増殖阻害曲線を作成する。
次に、第5の工程として、前記糖化溶液に含まれる各増殖阻害物質濃度を測定する。
次に、第6の工程として、前記第4の工程で得られた各増殖阻害物質毎の第1の増殖阻害曲線から、前記第5の工程で得られた各増殖阻害物質毎の前記糖化溶液に含まれる増殖阻害物質濃度に対応する微生物増殖率を求める。
次に、第7の工程として、まず、未希釈の前記糖化溶液の糖化溶液率を1とする。次に、前記未希釈の糖化溶液を、前記微生物の増殖に用いる前記糖液によってそれぞれ異なる量で希釈することにより得られる各混合糖化溶液について、前記第4の工程で得られた各増殖阻害物質毎の前記第1の増殖阻害曲線から、各混合糖化溶液の糖化溶液率に対応する微生物増殖率を求める。次に、前記糖化溶液率が同一である混合糖化溶液における各増殖阻害物質の微生物増殖率をそれぞれ乗じることにより、各混合糖化溶液の糖化溶液率に対応する微生物増殖率を算出する。
次に、第8の工程として、前記第7の工程で得られた各混合糖化溶液における前記糖化溶液率と前記微生物増殖率との関係から、第2の増殖阻害曲線を作成する。
次に、第9の工程として、前記第8の工程で得られた前記第2の増殖阻害曲線から、所望の微生物増殖率に対応する糖化溶液率を求める。
次に、第10の工程として、前記第9の工程で得られた前記糖化溶液率となるように、前記糖化溶液を前記微生物の増殖に用いる前記糖液によって希釈することにより、混合糖化溶液を得る。
以上により、前記増殖阻害物質を除去することなく微生物の増殖を増進させることができる前記混合糖化溶液を得ることができる。
前記複数種類の増殖阻害物質に着目して前記糖化溶液率を決定する方法によれば、1種類の増殖阻害物質のみに着目する方法と比較して、該糖化溶液率をより正確に決定することができる。
ところで、上記2つの方法では、前記糖液の増殖阻害物質濃度は、前記糖化溶液の増殖阻害物質濃度よりも非常に小さく実質的に無視できるのでゼロとみなして、該糖化溶液の増殖阻害物質濃度のみを考慮して前記糖化溶液率を決定する。そこで、次のようにして、前記糖化溶液の増殖阻害物質濃度だけでなく、前記糖液の増殖阻害物質濃度も考慮するようにしてよい。
まず、前記糖液に含まれる増殖阻害物質濃度を測定する。次に、前記第1の工程において、前記試験用糖液として前記糖液を用いて、該糖液に前記増殖阻害物質を添加した複数の培養液を用いて前記微生物を培養する。そして、前記糖液について測定された前記増殖阻害物質濃度と、前記試験用糖液としての前記糖液に添加された増殖阻害物質濃度との和を、前記培養液に含まれる増殖阻害物質濃度として、該増殖阻害物質濃度毎の微生物増殖数を測定する。
その後は、前記糖化溶液の増殖阻害物質濃度のみを考慮する上記の方法と同様にして、前記第2の工程〜前記第9の工程を行って前記糖化溶液率を決定する。次に、前記第10の工程において、前記第9の工程で得られた前記糖化溶液率となるように前記糖化溶液を前記糖液によって希釈することにより前記混合糖化溶液を得る。
前記糖化溶液の増殖阻害物質濃度と前記糖液の増殖阻害物質濃度との両方を考慮する方法によれば、該糖化溶液の増殖阻害物質濃度のみを考慮する方法と比較して、前記糖化溶液率をさらに正確に決定することができる。
また、前記糖液に含まれる前記増殖阻害物質としては、例えば、有機酸、アルデヒド基を有する化合物、フェノール基を有する化合物、ケトン基を有する化合物、メラノイジンからなる群から選択される1又は複数の化合物を挙げることができる。
本実施形態の微生物増殖方法における糖化溶液率の決定方法を示すフローチャート。 増殖阻害曲線Lα1を示すグラフであり、図2(a)は増殖阻害曲線Lα1の作成状態を示すグラフ、図2(b)は増殖阻害曲線Lα1の使用状態を示すグラフ。 総合増殖阻害曲線Lα2を示すグラフであり、図3(a)は増殖阻害曲線Lα2の作成状態を示すグラフ、図3(b)は増殖阻害曲線Lα2の使用状態を示すグラフ。 増殖阻害曲線Lβ1を示すグラフであり、図4(a)は増殖阻害曲線Lβ1の作成状態を示すグラフ、図4(b)は増殖阻害曲線Lβ1の使用状態を示すグラフ。 総合増殖阻害曲線Lαβ2を示すグラフであり、図5(a)は増殖阻害曲線Lαβ2の作成状態を示すグラフ、図5(b)は増殖阻害曲線Lαβ2の使用状態を示すグラフ。 実施例1〜4の総合増殖阻害曲線Lαβ…λ2を示すグラフ。
次に、本発明の実施の形態についてさらに詳しく説明する。本実施形態では、リグノセルロース系バイオマスを前処理した前処理物を糖化酵素によって糖化処理して得られた糖化処理物を含む糖化溶液における微生物の増殖方法について説明する。
前記糖化溶液は、次のようにして準備することができる。まず、リグノセルロース系バイオマスを前処理することにより、リグノセルロース系バイオマスからリグニンを解離し、又はリグノセルロース系バイオマスを膨潤させた前処理物を得る。前記リグノセルロース系バイオマスとしては、木材、稲藁、麦藁、バガス、竹、トウモロコシの茎や葉や芯、パルプ、及びこれらから生じる廃棄物、例えば古紙等を挙げることができる。前記前処理としては、湿式粉砕、乾式粉砕、爆砕、水蒸気処理、酸又はアルカリによる処理等を挙げることができる。
次に、得られた前処理物を酵素を用いて糖化処理することにより、糖化処理物を含む糖化溶液を得る。前記糖化処理は、例えば、前記前処理物に糖化酵素及び水を添加して撹拌することにより行うことができる。得られた糖化溶液は、糖化処理物と水とが混合したスラリー状となっていて、20〜300g/L、好ましくは50〜200g/Lの糖を含むとともに、副生成物として前記微生物の増殖を阻害する増殖阻害物質を含んでいる。
前記糖としては、グルコース、キシロース、アラビノースを挙げることができる。
前記増殖阻害物質としては、例えば、酢酸、蟻酸、p−クマル酸、フェルラ酸、安息香酸等の有機酸、フルフラール、5−ヒドロキシメチルフルフラール(HMF)、バニリン、シリンガアルデヒド、4−ヒドロキシアセトフェノン等のアルデヒド基を有する化合物、フェノール、グアイアコール等のフェノール基を有する化合物、ケトン基を有する化合物、メラノイジンからなる群から選択される1又は複数の化合物を挙げることができる。
次に、得られた前記糖化溶液を、前記糖化溶液よりも増殖阻害物質濃度が小さい糖液によって該増殖阻害物質濃度が低下するように希釈することにより、混合糖化溶液を得る。前記糖液としては、例えば、サトウキビの絞り汁を濃縮させて結晶を分離した後に副産物として生じる廃糖蜜(モラセス)、サトウキビの絞り汁、該サトウキビの絞り汁の濃縮液、米を糖化した液、麦を糖化した液、トウモロコシを糖化した液等を用いることができる。
前記希釈は、例えば、前記混合糖化溶液において、酢酸の非解離分の濃度が700mg/L以下となり、フルフラールの濃度が700mg/L以下となり、且つ該p−クマル酸の濃度が500mg/L以下となるように行う。
得られた前記混合糖化溶液は、前記糖液によって希釈されたことにより、前記増殖阻害物質濃度が前記糖化溶液よりも低下されている。
次に、前記混合糖化溶液を必要に応じて所定のpHに調整した後に、該混合糖化溶液に微生物を添加して該微生物を増殖させる。
前記微生物としては、細菌類等を含む原核原生生物;真菌類、藻類等を含む真核原生生物;前記微生物の遺伝子改変体を挙げることができる。
前記細菌類としては、Zymomonas mobilis、Zymobacter palmae、Clostridium sp. (Clostridium phytofermentans, Clostridium thermocellum, Clostridium beijerinckii, Clostridium acetobutylicum)、Moorella thermoacetica、Escherichia coli、Klebsiella oxytoca、Thermoanaerobacterium saccharolyticum、Bacillus subtilis、Corynebacterium glutamicum等を挙げることができる。
前記真菌類としては、Saccharomyces sp. (Saccharomyces cerevisiae, Saccharomyces monacensis, Saccharomyces bayanus, Saccharomyces pastorianus, Saccharomyces carlsbergensis, Saccharomyces pombe)、Kluyveromyces sp. (Kluyveromyces marxiamus, Kluyveromyces lactis, Kluyveromyces fragilis)、Pichia stipitis、Candida shehatae, Candida tropicalis、Meyerozyma guilliermondii、Rhodosporidium toruloides、Lipomyces starkyei、Yarrowia lipolytica、Sporotrichum thermophile、Myceliophthora thermophila、Neurospora crassa、Cryptococcus curvatus等の酵母;糸状菌を挙げることができる。
前記藻類としては、Aurantiochytrium、Nannochloropsis、Schizochytrium、Nannochloris、Stichococcus、Neochloris oleoabundans、Chlorella、Dunaliella、Botryococcus braunii、Scenedesmus、Hantzschia等を挙げることができる。
前記糖化溶液を前記糖液で希釈した前記混合糖化溶液を用いて微生物を増殖させる際、該混合糖化溶液は増殖阻害物質濃度が低下されているので、前記増殖阻害物質によって前記微生物の増殖が阻害されることを低減することができる。
したがって、本実施形態の微生物の増殖方法によれば、増殖阻害物質を濾過、中和、吸着等の除去を行うことなく、前記微生物の増殖を増進させることができる。
また、前記糖液として、前記廃糖蜜を用いる場合には、低コストで前記増殖阻害物質濃度を低下させることができる。
また、本実施形態の微生物の増殖方法によれば、前記微生物の増殖に伴って種々の生成物を得ることができる。このような生成物として、例えば、発酵産物であるエタノールを挙げることができる。また、増殖させた微生物が油脂を含む場合には、前記生成物として、例えばバイオディーゼルとして用いられる脂肪酸メチルエステルを得ることができる。
次に、図1を参照しながら、前記微生物の増殖を増進させることができる糖化溶液率を備える混合糖化溶液の調製方法について説明する。前記糖化溶液率は、前記糖化溶液に含まれる増殖阻害物質α,β,γ,δ,ε,…のうちの1種類又は複数種類の増殖阻害物質の濃度に着目して決定することができる。
はじめに、前記糖化溶液に含まれる増殖阻害物質α,β,γ,δ,ε,…のうちの1種の増殖阻害物質αに着目する方法について説明する。前記糖化溶液として稲藁を糖化した溶液を用い、前記糖液としてサトウキビの廃糖蜜を用いる。前記廃糖蜜は、増殖阻害物質を含むものの、その濃度は、前記稲藁を糖化した溶液と比較して非常に小さく実質的に無視できるので、ゼロとみなすことができる。
まず、糖としてのグルコース及びキシロースと、微生物の栄養源としてのペプトンとを水に溶解することにより、試験用糖液を調製する。前記試験用糖液は、糖濃度が100〜150g/Lである一方、増殖阻害物質を全く含んでおらず、前記糖液を実験的に調製したものである。
次に、前記試験用糖液に、増殖阻害物質αとしての例えばフルフラールを、それぞれ異なる増殖阻害物質濃度C,C,C,…で添加することにより、複数の培養液を調製する。次に、得られた各培養液を用いて前記微生物を培養する。前記培養は、例えば、前記培養液に、微生物として酵母(Meyerozyma属、guilliermondii種)を添加し、pH4〜7で温度30℃で20時間撹拌、振盪することにより行うことができる。前記酵母は、例えば、濁度0.05〜5の範囲で前記培養液に添加することができる。
そして、各培養液に含まれる増殖阻害物質αの濃度C,C,C,…毎に、前記培養によって増殖された前記微生物の数を測定して、微生物増殖数Nα1,Nα2,Nα3,…とする(ステップ(以下、STと略記する)1)。前記微生物の数の測定は、前記培養液の濁度を測定することにより行うことができ、該濁度は前記微生物の数に比例する。
次に、増殖阻害物質を全く添加しない以外は、ST1と全く同一にして前記微生物を培養し、該無添加の試験用糖液における微生物増殖数を測定して標準微生物増殖数Nとする(ST2)。
次に、ST1で得られた微生物増殖数Nα1,Nα2,Nα3,…をST2で得られた標準微生物増殖数Nで除すことにより、各増殖阻害物質濃度C,C,C,…における微生物増殖率Gα1(Gα1=Nα1/N),Gα2,Gα3,…を算出する(ST3)。
次に、各増殖阻害物質濃度C,C,C,…と、ST3で得られた微生物増殖率Gα1,Gα2,Gα3,…との関係から、図2(a)に示す第1の増殖阻害曲線としての増殖阻害曲線Lα1を作成する(ST4)。図2(a)に示すグラフは、横軸が増殖阻害物質濃度を示し、縦軸が微生物増殖率を示す。微生物増殖率は、糖化溶液における微生物増殖係数を表し、1に近づくほど微生物が増殖し易いことを示している。
次に、微生物の増殖に用いる前記糖化溶液に含まれる阻害物質濃度Cαaを測定する(ST5)。前記測定には、高速液体クロマトグラフィーを用いることができる。
次に、図2(b)に示すように、ST4で得られた増殖阻害曲線Lα1から、前記糖化溶液に含まれる増殖阻害物質濃度Cαaに対応する微生物増殖率Gαaを求める(ST6)。
次に、全く希釈していない糖化溶液の糖化溶液率をS=1とする。そして、全く希釈していない糖化溶液を糖液としてのサトウキビの廃糖蜜によってそれぞれ異なる添加量で希釈することにより得られる各混合糖化溶液について、増殖阻害曲線Lα1から、各混合糖化溶液の糖化溶液率S,S,S,…に対応する各増殖阻害物質濃度Cαb,Cαc,Cαd…を求める。
上述したように前記糖液における増殖阻害物質濃度はゼロとみなされるので、例えば、糖化溶液率をS=0.75とするとき、この糖化溶液率は増殖阻害物質濃度Cαaの前記糖化溶液0.75質量部を前記糖液0.25質量部で希釈することを意味する。糖化溶液率S=0.75のときに得られる混合糖化溶液の増殖阻害物質濃度Cαbは0.75Cαa(=0.75×Cαa)である。
同様に、糖化溶液率をS=0.5として前記糖化溶液0.5質量部を前記糖液0.5質量部で希釈するとき、得られる混合糖化溶液の増殖阻害物質濃度Cαcは0.5Cαa(=0.5×Cαa)である。同様に、糖化溶液率をS=0.25として前記糖化溶液0.25質量部を前記糖液0.75質量部で希釈するとき、得られる混合糖化溶液の増殖阻害物質濃度Cαdは0.25Cαa(=0.25×Cαa)である。
すなわち、所定の糖化溶液率となるように前記糖化溶液を前記糖液によって希釈することにより得られる混合糖化溶液の増殖阻害物質濃度は、該糖化溶液の増殖阻害物質濃度Cαaに該糖化溶液率を乗じた値と等しくなる。
そして、図2(b)において、ST4で得られた増殖阻害曲線Lα1から、糖化溶液率がS,S,S,S,…であって増殖阻害物質濃度がCαa,Cαb,Cαc,Cαd,…である各混合糖化溶液における微生物増殖率Gαa,Gαb,Gαc,Gαd,…を求める(ST7)。
次に、図2(b)の増殖阻害曲線Lα1の横軸について、増殖阻害物質濃度Cαa,Cαb,Cαc,Cαd,…を糖化溶液率S,S,S,S,…に読み替えることにより、該糖化溶液率S,S,S,S,…と、微生物増殖率Gαa,Gαb,Gαc,Gαd,…との関係から、図3(a)に示す第2の増殖阻害曲線としての総合増殖阻害曲線Lα2を作成する(ST8)。
次に、図3(b)に示すように、ST8で得られた総合増殖阻害曲線Lα2から、所望の微生物増殖率Gに対応する糖化溶液率Sを求める(ST9)。ここで、前記所望の微生物増殖率Gは、前記糖液の価格、必要な微生物量、微生物増殖に要する時間、エネルギー及びコスト等を考慮して決定される。
次に、ST9で得られた糖化溶液率Sとなるように、前記糖化溶液を前記糖液としてのサトウキビの廃糖蜜によって希釈することにより、混合糖化溶液を得る(ST10)。
以上により、増殖阻害物質を除去することなく微生物の増殖を増進させることができる前記混合糖化溶液を得ることができる。前記混合糖化溶液を用いて微生物を増殖させるとき、前記微生物の増殖率はGとなる。
ところで、前記増殖阻害物質αが酢酸、蟻酸等の弱酸の有機酸である場合には、該増殖阻害物質の酸解離定数を考慮して、前記糖化溶液に含まれる阻害物質濃度Cαaを補正することにより、増殖阻害物質濃度Cαaをより正確に求めることができる。
前記補正は、前記ST5で測定された前記糖化溶液に含まれる阻害物質濃度Cαaに、該糖化溶液のpHにおける非解離度を乗ずることにより行うことができる。前記非解離度は、次の式に従うことが知られている。
前記式において、pKaは、前記糖化溶液における前記増殖阻害物質の酸解離定数である。例えば、酢酸の酸解離定数pKaは4.56であり、蟻酸の酸解離定数pKaは3.55である。
また、次のようにすることにより、前記糖化溶液に含まれる1種類の増殖阻害物質αのみではなく、複数の増殖阻害物質α,βに着目して前記糖化溶液率を決定することも可能である。以下、増殖阻害物質αについての説明は省略し、主に、増殖阻害物質βについて説明する。
まず、ST1において、増殖阻害物質αのときと同様にして、増殖阻害物質βとしての例えばフェルラ酸を、それぞれ異なる増殖阻害物質濃度C,C,C,…で添加した複数の培養液を調製し、前記微生物を培養する。そして、各培養液に含まれる増殖阻害物質濃度C,C,C,…毎の微生物増殖数Nβ1,Nβ2,Nβ3,…を測定する。
次に、ST2において、標準微生物増殖数Nを測定する。
次に、ST3において、増殖阻害物質αのときと同様にして、各培養液の増殖阻害物質濃度C,C,C,…毎の微生物増殖率Gβ1(Gβ1=Nβ1/N),Gβ2,Gβ3,…を算出する。
次に、ST4において、増殖阻害物質αのときと同様にして、各増殖阻害物質濃度C,C,C,…と各微生物増殖率Gβ1,Gβ2,Gβ3,…との関係から、図4(a)に示す増殖阻害物質βの増殖阻害曲線Lβ1を作成する。
次に、ST5において、増殖阻害物質αのときと同様にして、前記糖化溶液に含まれる増殖阻害物質βの濃度Cβaを測定する。
次に、ST6において、増殖阻害物質αのときと同様にして、図4(b)に示すように、前記糖化溶液に含まれる増殖阻害物質濃度Cβaに対応する微生物増殖率Gβaを求める。
次に、ST7において、まず、増殖阻害物質αのときと同様にして、増殖阻害曲線Lβ1から、糖化溶液率がS,S,S,S,…であって増殖阻害物質濃度がCβa,Cβb,Cβc,Cβd,…である各混合糖化溶液における微生物増殖率Gβa,Gβb,Gβc,Gβd,…を求める。
次に、前記糖化溶液率が同一である混合糖化溶液における増殖阻害物質α,βの各微生物増殖率をそれぞれ乗じることにより、各混合糖化溶液の糖化溶液率に対応する微生物増殖率を算出する。例えば、糖化溶液率Sにおける微生物増殖率Gαβaは、Gαa×Gβaにより算出され、糖化溶液率Sにおける微生物増殖率Gαβbは、Gαb×Gβbにより算出される。
次に、ST8において、得られた各混合糖化溶液における糖化溶液率S,S,S,S,…と微生物増殖率Gαβa,Gαβb,Gαβc,Gαβd,…との関係から、図5(a)に示す総合増殖阻害曲線Lαβ2を作成する。
次に、ST9において、図5(b)に示すように、総合増殖阻害曲線Lαβ2から、所望の微生物増殖率Gに対応する糖化溶液率Sを求める。
次に、ST10において、ST9で得られた糖化溶液率Sとなるように、前記糖化溶液を前記糖液としてのサトウキビの廃糖蜜によって希釈することにより、混合糖化溶液を得る。
上記複数種類の増殖阻害物質α,βに着目して糖化溶液率Sを決定する方法によれば、1種類の増殖阻害物質αのみに着目する方法と比較して、該糖化溶液率Sをより正確に決定することができる。
また、上記2つの方法では、前記糖液の増殖阻害物質濃度は、前記糖化溶液の増殖阻害物質濃度よりも非常に小さく実質的に無視できるのでゼロとみなして、該糖化溶液の増殖阻害物質濃度のみを考慮して前記糖化溶液率Sを決定している。これに対して、次のようにして、前記糖化溶液の増殖阻害物質濃度だけでなく、前記糖液の増殖阻害物質濃度も考慮するようにしてもよい。ここでは、1種類の増殖阻害物質αのみに着目する方法を用いて説明する。
まず、ST1において、前記試験用糖液として前記糖液を用いて、該糖液に前記増殖阻害物質αをそれぞれ異なる増殖阻害物質濃度C,C,C,…で添加した複数の培養液を用いて前記微生物を培養する。次に、前記糖液に含まれる増殖阻害物質αの濃度Cα0を測定する。
次に、測定された前記増殖阻害物質濃度Cα0と、前記試験用糖液としての前記糖液に添加された増殖阻害物質αの濃度C,C,C,…との和を、前記培養液に含まれる増殖阻害物質濃度C´(C´=Cα0+C),C´,C´,…とする。そして、前記培養液に含まれる増殖阻害物質濃度C´,C´,C´,…毎の微生物増殖数Nα1,Nα2,Nα3,…を測定する。
その後は、前記糖化溶液の増殖阻害物質濃度のみを考慮する方法におけるST2〜ST9と全く同一にして、前記糖化溶液率Sを決定する。次に、ST10において、ST9で得られた糖化溶液率Sとなるように前記糖化溶液を前記糖液によって希釈することにより前記混合糖化溶液を得る。
前記糖化溶液の増殖阻害物質濃度Cαaと前記糖液の増殖阻害物質濃度Cα0との両方を考慮する方法によれば、該糖化溶液の増殖阻害物質濃度Cαaのみを考慮する方法と比較して、前記糖化溶液率Sをさらに正確に決定することができる。
また、本実施形態では、前記微生物を培養したときの各微生物増殖数Nα1,Nα2,Nα3,…,Nβ1,Nβ2,Nβ3,…から作成した増殖阻害曲線Lα1,Lβ1に、前記糖化溶液の増殖阻害物質濃度Cαaを当てはめて総合増殖阻害曲線Lαβ2を作成する。総合増殖阻害曲線Lαβ2は、各糖化溶液率を備える混合糖化溶液を用いて微生物を増殖させるときの微生物増殖数を示している。
次に、本実施形態の微生物の増殖方法について、実施例を示す。
まず、リグノセルロース系バイオマスを前処理することにより、リグノセルロース系バイオマスからリグニンを解離し、又はリグノセルロース系バイオマスを膨潤させた前処理物を得た。本実施例では、リグノセルロース系バイオマスとして、粉砕された乾燥コーンストーバを用い、該乾燥コーンストーバに希硫酸を含浸させて150℃以上の温度で5分間保持した後で大気開放することにより、前処理を行った。
次に、得られた前処理物に、水を添加した後に至適pHに調整し、セルロース及びヘミセルロース分解酵素を所定量添加した後に、温度50℃に保持して72時間撹拌し、その後、遠心分離により固形分を除去することにより、糖化溶液を得た。
次に、得られた糖化溶液について、増殖阻害物質αとしての酢酸、増殖阻害物質βとしての蟻酸、増殖阻害物質γとしてのフルフラール、増殖阻害物質δとしてのHMF、増殖阻害物質εとしてのバニリン、増殖阻害物質ζとしてのシリンガアルデヒド、増殖阻害物質ηとしての4−ヒドロキシアセトフェノン、増殖阻害物質θとしてのフェノール、増殖阻害物質ιとしてのグアイアコール、増殖阻害物質κとしてのフェルラ酸、増殖阻害物質λとしてのp−クマル酸の各増殖阻害物質濃度を測定した。結果を表1に示す。尚、酢酸の増殖阻害物質濃度Cα0及び蟻酸の増殖阻害物質濃度Cβ0は、非解離度による補正はしていない値である。
一方、目的とする混合糖化溶液の糖化溶液率を決定するために、試験用糖液に、上記11種類の増殖阻害物質を種々の濃度で添加することにより、培養液を調製した。前記試験用糖液は、糖としてのグルコース80g/L及びキシロース40g/Lと、微生物の栄養源としてのイーストエクストラクト10g/Lとペプトン20g/Lとを水に溶解してなり、糖液としてのサトウキビの廃糖蜜を実験的に調製したものである。
次に、得られた培養液をpH6に調整した後、微生物を添加し、温度30℃で20時間撹拌、振盪することにより、該微生物を培養した。前記微生物の添加量は、濁度0.5であった。微生物としては、実施例1では酵母(Meyerozyma属、guilliermondii種)を用い、実施例2では酵母(Saccharomyces属、cerevisiae種)を用い、実施例3では細菌(Escherichia属coli種)を用い、実施例4では細菌(Zymomonas属、mobilis種)を用いた。
次に、前記培養によって増殖した微生物増殖数を、前記11種類の各増殖阻害物質の各増殖阻害物質濃度毎に測定して増殖阻害曲線Lα1,Lβ1,…Lλ1を作成した。
次に、得られた各増殖阻害曲線Lα1,Lβ1,…Lλ1から、総合増殖阻害曲線Lαβ…λ2を作成した。得られた総合増殖阻害曲線Lαβ…λ2を図6に示す。
次に、前記糖化溶液を糖液としての試験用糖液によって希釈し、糖化溶液率が1,0.75,0.5,0.25である混合糖化溶液を得た。前記試験用糖液は、糖液としてのサトウキビの廃糖蜜と作用が同一とみなすことができるので、前記糖化溶液を該試験用糖液で希釈した混合糖化溶液は、該糖化溶液をサトウキビの廃糖蜜で希釈した混合糖化溶液と同一とみなすことができる。
次に、得られた混合糖化溶液をpH6に調整した後に、前記酵母を濁度0.5で添加し、温度30℃に保持して20時間撹拌して培養することにより、前記微生物を増殖させた。そして、培養前後において、前記混合糖化溶液の濁度を測定し、微生物増殖率を算出した。図6に、各混合糖化溶液の糖化溶液率に対応する微生物増殖率を、実施例1では●印で示し、実施例2では○印で示し、実施例3では▲印で示し、実施例4では▽印で示す。
表2に、糖化溶液率が1,0.75,0.5,0.25である混合糖化溶液の増殖阻害物質濃度、微生物増殖率を示す。
図6から、各総合増殖阻害曲線Lαβ…λ2は、それぞれ●印、○印、▲印、▽印にほぼ対応しており、前記糖化溶液率の決定に用いることが可能であることが明らかである。また、総合増殖阻害曲線Lαβ…λ2は、混合糖化溶液の糖化溶液率が小さいほど微生物増殖率が大きいことから、前記糖化溶液を前記糖液で希釈した混合糖化溶液は、微生物の増殖を増進させることができることが明らかである。
α0…糖液の増殖阻害物質濃度、 C,C,C…試験用糖液の増殖阻害物質濃度、 Cαa,Cβa…糖化溶液の増殖阻害物質濃度、 Cαb,Cαc,Cαd,Cβb,Cβc,Cβd,…混合糖化溶液の増殖阻害物質濃度、 S,S,S,S,S…糖化溶液率、G…所望の微生物増殖率、 Gα1,Gα2,Gα3,Gβ1,Gβ2,Gβ3…試験用糖液における微生物増殖率、 Gαa,Gαb,Gαc,Gαd,Gβa,Gβb,Gβc,βd,Gαβa,Gαβb,Gαβc,αβd…混合糖化溶液における微生物増殖率、Lα1,Lβ1…第1の増殖阻害曲線、Lα2,Lαβ2,αβ…λ2…第2の増殖阻害曲線、 N…標準微生物増殖数、 Nα1,Nα2,Nα3,Nβ1,Nβ2,Nβ3…微生物増殖数、 α,β,γ,δ,ε…増殖阻害物質。

Claims (7)

  1. 糖化処理物を含む糖化溶液における微生物の増殖方法において、
    試験用糖液に、前記糖化溶液に含まれる増殖阻害物質をそれぞれ異なる増殖阻害物質濃度で添加してなる複数の培養液を用いて前記微生物を培養し、各培養液に含まれる該増殖阻害物質濃度毎の微生物増殖数を測定する第1の工程と、
    該増殖阻害物質を無添加の該試験用糖液を培養液に用いて該微生物を培養し、該無添加の試験用糖液における微生物増殖数を測定して標準微生物増殖数とする第2の工程と、
    該増殖阻害物質濃度毎の微生物増殖数を該標準微生物増殖数で除することにより、各培養液の増殖阻害物質濃度における微生物増殖率を算出する第3の工程と、
    各培養液の該増殖阻害物質濃度と該微生物増殖率との関係から第1の増殖阻害曲線を作成する第4の工程と、
    前記糖化溶液に含まれる増殖阻害物質濃度を測定する第5の工程と、
    該第1の増殖阻害曲線から、該糖化溶液に含まれる増殖阻害物質濃度に対応する微生物増殖率を求める第6の工程と、
    未希釈の前記糖化溶液の糖化溶液率を1とし、該未希釈の糖化溶液をそれぞれ異なる量の前記試験用糖液によって希釈した各混合糖化溶液について、該第1の増殖阻害曲線から各混合糖化溶液の糖化溶液率に対応する微生物増殖率を求める第7の工程と、
    各混合糖化溶液における該糖化溶液率と該微生物増殖率との関係から第2の増殖阻害曲線を作成する第8の工程と、
    該第2の増殖阻害曲線から所望の微生物増殖率に対応する糖化溶液率を求める第9の工程と、
    該第9の工程で得られた糖化溶液率となるように前記糖化溶液を前記糖化溶液よりも増殖阻害物質濃度が小さい糖液によって希釈することにより微生物増殖用の混合糖化溶液を得る第10の工程と
    前記微生物増殖用の混合糖化溶液に微生物を添加し該微生物を増殖させる第11の工程と
    を備えることを特徴とする微生物の増殖方法。
  2. 糖化処理物を含む糖化溶液における微生物の増殖方法において、
    試験用糖液に、前記糖化溶液に含まれる複数の増殖阻害物質の各増殖阻害物質毎に、該増殖阻害物質をそれぞれ異なる増殖阻害物質濃度で添加してなる複数の培養液を用いて前記微生物を培養し、各増殖阻害物質毎に、各培養液に含まれる該増殖阻害物質濃度毎の微生物増殖数を測定する第1の工程と、
    各増殖阻害物質を無添加の該試験用糖液を培養液に用いて該微生物を培養し、該無添加の試験用糖液における微生物増殖数を測定して標準微生物増殖数とする第2の工程と、
    各増殖阻害物質毎に、該増殖阻害物質濃度毎の微生物増殖数を該標準微生物増殖数で除することにより、各増殖阻害物質毎に、各増殖阻害物質濃度における微生物増殖率を算出する第3の工程と、
    各増殖阻害物質毎に、各培養液の該増殖阻害物質濃度と該微生物増殖率との関係から第1の増殖阻害曲線を作成する第4の工程と、
    前記糖化溶液に含まれる各増殖阻害物質濃度を測定する第5の工程と、
    各増殖阻害物質毎の該第1の増殖阻害曲線から、各増殖阻害物質毎に該糖化溶液に含まれる該増殖阻害物質濃度に対応する微生物増殖率を求める第6の工程と、
    未希釈の前記糖化溶液の糖化溶液率を1とし、該未希釈の糖化溶液をそれぞれ異なる量の前記試験用糖液によって希釈した各混合糖化溶液について、各増殖阻害物質毎の該第1の増殖阻害曲線から各混合糖化溶液の糖化溶液率に対応する微生物増殖率を各増殖阻害物質毎に求めた後に、
    該糖化溶液率が同一である混合糖化溶液における各増殖阻害物質の微生物増殖率をそれぞれ乗じることにより、各混合糖化溶液の糖化溶液率に対応する微生物増殖率を算出する第7の工程と、
    各混合糖化溶液における該糖化溶液率と該微生物増殖率との関係から第2の増殖阻害曲線を作成する第8の工程と、
    該第2の増殖阻害曲線から所望の微生物増殖率に対応する糖化溶液率を求める第9の工程と、
    該第9の工程で得られた糖化溶液率となるように前記糖化溶液を前記糖化溶液よりも増殖阻害物質濃度が小さい糖液によって希釈することにより微生物増殖用の混合糖化溶液を得る第10の工程と
    前記微生物増殖用の混合糖化溶液に微生物を添加し該微生物を増殖させる第11の工程と
    を備えることを特徴とする微生物の増殖方法。
  3. 請求項又は請求項記載の微生物の増殖方法において、
    前記第1の工程は、前記試験用糖液として前記糖化溶液よりも増殖阻害物質濃度が小さい糖液を用いるとともに、該糖液に含まれる増殖阻害物質濃度を測定し、測定された該増殖阻害物質濃度と、該試験用糖液としての該糖液に添加された増殖阻害物質濃度との和を、前記培養液に含まれる増殖阻害物質濃度とすることを特徴とする微生物の増殖方法。
  4. 請求項1〜請求項3のいずれか1項記載の微生物の増殖方法において、
    前記糖化溶液は、リグノセルロース系バイオマスを前処理した前処理物を糖化酵素によって糖化処理して得られた糖化処理物を含む糖化溶液であることを特徴とする微生物の増殖方法。
  5. 請求項1〜請求項4のいずれか1項記載の微生物の増殖方法において、
    前記増殖阻害物質は、酢酸、フルフラール、p−クマル酸であり、
    前記糖化溶液を、該酢酸の非解離分の濃度が700mg/L以下となり、該フルフラールの濃度が700mg/L以下となり、且つ該p−クマル酸の濃度が500mg/L以下となるように希釈することを特徴とする微生物の増殖方法。
  6. 請求項1〜請求項5のいずれか1項記載の微生物の増殖方法において、
    前記糖化溶液よりも増殖阻害物質濃度が小さい糖液は、サトウキビの廃糖蜜、サトウキビの絞り汁、該サトウキビの絞り汁の濃縮液、米を糖化した液、麦を糖化した液、トウモロコシを糖化した液からなる群から選択される1種以上の液体であることを特徴とする微生物の増殖方法。
  7. 請求項1〜請求項のいずれか1項記載の微生物の増殖方法において、
    前記増殖阻害物質は、有機酸、アルデヒド基を有する化合物、ケトン基を有する化合物、フェノール基を有する化合物、メラノイジンからなる群から選択される1又は複数の化合物であることを特徴とする微生物の増殖方法。
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