JP6528651B2 - 繊維構造体 - Google Patents

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Description

本発明は、複数の積層体が、強化繊維糸同士、及び補助糸同士の糸主軸方向が直交する状態で配置された繊維構造体に関する。
軽量、高強度の材料として繊維強化複合材料が使用されている。繊維強化複合材料は、強化繊維が樹脂や金属等のマトリックス中に複合化されることにより、マトリックス自体に比べて力学的特性(機械的特性)が向上するため、構造部品として好ましい。特にマトリックスとして樹脂を使用した場合は、構造部品の軽量化が図れるため好ましい。
繊維強化複合材料の基材として用いられる繊維構造体としては、強化繊維糸の糸主軸方向が0度と90度の2方向に延び、繊維強化複合材料としたときに2方向への力学的特性を高めるものがある。0度と90度の二軸配向の繊維構造体は、強化繊維糸が一軸配向された繊維層を、互いの強化繊維糸の糸主軸方向が直交するように積層して製造される場合がある。
強化繊維糸が一軸配向された繊維層としては、例えば、特許文献1に開示の織物基材がある。この織物基材は、繊維層が2層積層されて構成されており、各繊維層は、一方向に互いに平行に配列された複数の強化繊維用経糸と、配列方向に隣り合う強化繊維用経糸の間に設けられるとともに強化繊維用経糸と同方向に延びる補助糸と、を備える。また、異なる繊維層同士では、強化繊維用経糸同士は同方向に延びるとともに、一部が重なり合う状態で配列方向にずれている。一つの繊維層では、強化繊維用経糸と補助糸とは層内組織糸によって結合されている。そして、繊維層同士が中間組織糸によって結合され、一軸配向の織物基材が構成されている。
そして、特許文献1に開示の織物基材を積層して、二軸配向の繊維構造体を製造する場合は、一つの織物基材の強化繊維用経糸の糸主軸方向に対し、別の織物基材の強化繊維用経糸の糸主軸方向を直交させ、織物基材同士を積層方向に別に用意した結合用糸で結合する。その結果、製造された繊維構造体においては、0度と90度の2方向に強化繊維用経糸の糸主軸方向が延び、二軸配向となる。
特開2013−133555号公報
ところが、0度と90度の二軸配向の繊維構造体を製造するには、少なくとも2枚の織物基材を製造し、それら織物基材を別の糸で結合しなければならず、積層方向への結合に手間がかかり、製造コストが嵩む。
本発明は、前記の問題に鑑みてなされたものであって、その目的は、二軸配向の繊維構造体を容易に製造することができる繊維構造体を提供することにある。
上記問題点を解決するための繊維構造体は、強化繊維糸と補助糸とが交互に配列され、該強化繊維糸と補助糸が層内組織糸によって配列方向に結合された繊維層が複数積層された積層体を複数有し、各積層体は、前記複数の繊維層同士の前記強化繊維糸及び前記補助糸の糸主軸方向が同じであり、かつ前記繊維層の積層方向において前記強化繊維糸同士が互いに重なり合う状態で相対的に位置ずれし、前記補助糸同士が相対的に位置ずれしているとともに、前記繊維層同士が前記積層方向の両端に位置する前記補助糸に係合した中間組織糸によって結合されており、複数の前記積層体は、前記強化繊維糸同士、及び前記補助糸同士の糸主軸方向が直交する状態で配置されるとともに、一方向に前記糸主軸方向が延びる前記積層体の前記層内組織糸及び前記中間組織糸の少なくとも一つと、他方向に前記糸主軸方向が延びる前記積層体の前記層内組織糸及び前記中間組織糸の少なくとも一つと、の係合によって前記積層体同士が積層方向に結合されていることを要旨とする。
これによれば、複数の積層体は、それら積層体の結合構造を形成する層内組織糸、及び中間組織糸の少なくとも一つを用いて積層方向に結合されている。よって、積層体を織機で製造する際、層内組織糸及び中間組織糸の少なくとも一つの送り方を制御することで、積層体を製造していくのに合わせて積層体同士を積層方向に結合できる。したがって、例えば、積層体を製造した後、別工程で、複数の積層体同士を別の糸で積層方向に結合する場合と比べると、繊維構造体の製造が容易となる。
また、繊維構造体について、一方向に前記糸主軸方向が延びる前記積層体の前記中間組織糸と、他方向に前記糸主軸方向が延びる前記積層体の前記中間組織糸との係合により、前記積層体同士が結合されていてもよい。
これによれば、各積層体において中間組織糸によって繊維層同士を積層方向に結合しつつ、積層体同士を積層方向に結合することができる。
また、繊維構造体について、一方向に前記糸主軸方向が延びる前記積層体の前記層内組織糸と、他方向に前記糸主軸方向が延びる前記積層体の前記層内組織糸との係合により、前記積層体同士が結合されていてもよい。
これによれば、積層体同士を、積層方向に隣り合う繊維層の層内組織糸を用いて結合することができ、積層体同士の結合を強くすることができる。
また、繊維構造体について、一方向に前記糸主軸方向が延びる前記積層体の前記中間組織糸と、他方向に前記糸主軸方向が延びる前記積層体の前記中間組織糸との係合、及び一方向に前記糸主軸方向が延びる前記積層体の前記層内組織糸と、他方向に前記糸主軸方向が延びる前記積層体の前記層内組織糸との係合により、前記積層体同士が結合されていてもよい。
これによれば、中間組織糸同士の係合と、層内組織糸同士の係合の2種類の係合によって、積層体同士の結合を強固なものにできる。
本発明によれば、二軸配向の繊維構造体を容易に製造することができる。
第1の実施形態の繊維構造体を模式的に示す部分斜視図。 第1の実施形態の繊維構造体を部分的に示す図1の2−2線断面図。 第1の実施形態の繊維構造体を部分的に示す図1の3−3線断面図。 第1の実施形態の繊維構造体を部分的に示す正面図。 第2の実施形態の繊維構造体を模式的に示す部分斜視図。 第2の実施形態の繊維構造体を部分的に示す図5の6−6線断面図。 第2の実施形態の繊維構造体を部分的に示す図5の7−7線断面図。 第2の実施形態の繊維構造体を部分的に示す正面図。 第3の実施形態の繊維構造体を模式的に示す部分斜視図。 第3の実施形態の繊維構造体を部分的に示す図9の10−10線断面図。 第3の実施形態の繊維構造体を部分的に示す図9の11−11線断面図。 第3の実施形態の繊維構造体を部分的に示す正面図。
(第1の実施形態)
以下、繊維構造体を具体化した第1の実施形態を図1〜図4にしたがって説明する。
図1〜図3に示すように、繊維構造体10は、第1積層体13と第2積層体20が積層され、かつそれら第1積層体13と第2積層体20が積層方向に結合されて構成されている。
第1積層体13は、2枚の第1繊維層14の積層体であり、2枚の第1繊維層14を第1中間組織糸16で積層方向に結合した構造である。
各第1繊維層14は、強化繊維糸としての複数本の第1強化繊維糸11と、補助糸としての複数本の第1補助糸12と、それら第1強化繊維糸11と第1補助糸12を配列方向に結合する複数本の第1層内組織糸15と、を有する。各第1繊維層14では、第1強化繊維糸11と第1補助糸12が交互に配列されるとともに、第1強化繊維糸11同士、第1補助糸12同士、及び第1強化繊維糸11と第1補助糸12は互いに平行に配列されている。
第1繊維層14では、各第1層内組織糸15は、第1強化繊維糸11の上面又は下面に係合しつつ、第1補助糸12の下面又は上面に係合し、配列方向に沿って第1強化繊維糸11と第1補助糸12に対し交互に折り返されている。なお、第1強化繊維糸11の「強化繊維」とは、繊維構造体10を繊維強化複合材料の強化基材として使用した際に、繊維強化複合材料のマトリックスを強化する役割を担う繊維束を意味する。本実施形態では、第1強化繊維糸11は同じ太さである。また、第1補助糸12は、第1強化繊維糸11より細い繊維束からなる。
図1又は図4に示すように、第1積層体13は、2枚の第1繊維層14が積層されるとともに、2枚の第1繊維層14が複数本の第1中間組織糸16によって積層方向に結合されている。
図2又は図3に示すように、各第1中間組織糸16は、第1強化繊維糸11の糸主軸方向に隣り合う第1層内組織糸15同士の間に配置され、複数本の第1中間組織糸16は、互いに平行に配列されている。図4に示すように、各第1中間組織糸16は、積層方向一端に位置する上側の第1繊維層14の第1補助糸12の上面に係合して折り返され、2枚の第1繊維層14の積層方向に延びた後、積層方向他端に位置する下側の第1繊維層14の第1補助糸12に対し下面で係合して折り返されている。そして、各第1中間組織糸16は、配列方向に沿って第1補助糸12への係合を繰り返し、2枚の第1繊維層14を積層方向に結合している。
上記構成の第1積層体13では、第1強化繊維糸11同士が、平面視において幅方向の一部で重なり合っている。そして、第1積層体13では、複数本の第1強化繊維糸11は第1積層体13の積層方向にジグザグ状に配列され、第1強化繊維糸11同士は積層方向において相対的に位置ずれしている。また、第1積層体13では、複数本の第1補助糸12は、第1積層体13の積層方向において相対的に位置ずれしており、ジグザグ状に配列されている。
図1〜図3に示すように、第2積層体20は、2枚の第2繊維層24の積層体であり、2枚の第2繊維層24を第2中間組織糸26で積層方向に結合した構造である。
各第2繊維層24は、強化繊維糸としての複数本の第2強化繊維糸21と、補助糸としての複数本の第2補助糸22と、それら第2強化繊維糸21と第2補助糸22を配列方向に結合する複数本の第2層内組織糸25と、を有する。各第2繊維層24では、第2強化繊維糸21と第2補助糸22が交互に配列されるとともに、第2強化繊維糸21同士、第2補助糸22同士、及び第2強化繊維糸21と第2補助糸22は互いに平行に配列されている。
第2繊維層24では、各第2層内組織糸25は、第2強化繊維糸21の上面又は下面に係合しつつ、第2補助糸22の下面又は上面に係合し、配列方向に沿って第2強化繊維糸21と第2補助糸22に対し交互に折り返されている。なお、第2強化繊維糸21は、第1強化繊維糸11と同じ糸であり、第2補助糸22は、第1補助糸12と同じ糸である。
図3又は図4に示すように、第2積層体20は、2枚の第2繊維層24が積層されるとともに、2枚の第2繊維層24が複数本の第2中間組織糸26によって積層方向に結合されている。各第2中間組織糸26は、第2強化繊維糸21の糸主軸方向に隣り合う第2層内組織糸25同士の間に配置され、複数本の第2中間組織糸26は、互いに平行に配列されている。各第2中間組織糸26は、積層方向一端に位置する上側の第2繊維層24の第2補助糸22上の第1中間組織糸16の上面に係合して折り返され、2枚の第2繊維層24の積層方向に延びた後、積層方向他端に位置する下側の第2繊維層24の第2補助糸22に対し下面で係合して折り返されている。そして、各第2中間組織糸26は、配列方向に沿って第1中間組織糸16及び第2補助糸22への係合を繰り返し、2枚の第2繊維層24を積層方向に結合している。
上記構成の第2積層体20では、第2強化繊維糸21同士が、平面視において幅方向の一部で重なり合っている。そして、第2積層体20では、複数本の第2強化繊維糸21は積層方向へジグザグ状に配列され、第2強化繊維糸21同士は積層方向において相対的に位置ずれしている。また、第2積層体20では、複数本の第2補助糸22は、積層方向において相対的に位置ずれしており、ジグザグ状に配列されている。
図1に示すように、繊維構造体10において、第1積層体13での第1強化繊維糸11の糸主軸の延びる方向を第1糸主軸方向Y1とする。また、繊維構造体10において、第1強化繊維糸11の配向角度を0度とする。第2積層体20での第2強化繊維糸21の主軸軸の延びる方向を第2糸主軸方向Y2とする。繊維構造体10において、第1積層体13での第1糸主軸方向Y1に対し、第2積層体20での第2糸主軸方向Y2は90度で交差し、直交しており、繊維構造体10は0度と90度の二軸配向である。そして、繊維構造体10では、一方向に第1糸主軸方向Y1が延びる第1積層体13と、他方向に第2糸主軸方向Y2が延びる第2積層体20とが積層方向に結合されている。
また、繊維構造体10は、第1積層体13と第2積層体20とが積層方向に結合されている。第1積層体13と第2積層体20とは、第1積層体13の第1中間組織糸16と、第2積層体20の第2中間組織糸26との係合により積層方向に結合されている。
図3又は図4に示すように、第1積層体13の第1中間組織糸16は、下側(第2積層体20寄り)の第1繊維層14の第1強化繊維糸11よりも第2積層体20寄りの位置まで延びて折り返されている。また、第2積層体20の第2中間組織糸26は、上側(第1積層体13寄り)の第2繊維層24の第2強化繊維糸21よりも第1積層体13寄りの位置まで延びて折り返されている。そして、第1積層体13の第1中間組織糸16と、第2積層体20の第2中間組織糸26とは、両積層体13,20の間で互いに直交する状態で係合している。
上記構成の繊維構造体10は、賦形されてプリフォームに形成された後、例えば、RTM法で硬化前の液状の熱硬化性樹脂(マトリックス)が含浸硬化されて繊維強化複合材料が形成される。
次に、繊維構造体10の作用を記載する。
繊維構造体10において、第1積層体13と第2積層体20とは、第1積層体13が有する第1中間組織糸16と、第2積層体20が有する第2中間組織糸26とを使用して積層方向に結合されている。
上記実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)繊維構造体10では、織機による製造時、第1中間組織糸16及び第2中間組織糸26の送り方を制御することで、第1中間組織糸16と第2中間組織糸26を係合させ、第1積層体13と第2積層体20を積層方向に結合することができる。よって、第1積層体13における第1強化繊維糸11の第1糸主軸方向Y1と、第2積層体20における第2強化繊維糸21の第2糸主軸方向Y2とが直交した二軸配向の繊維構造体10であっても、織機を用いて容易に製造することができる。したがって、例えば、第1積層体13と第2積層体20を別々に製造した後、別工程で別の糸によって第1積層体13と第2積層体20を積層方向に結合する場合と比べると、二軸配向の繊維構造体10を容易に製造することができる。
(2)繊維構造体10では、第1強化繊維糸11及び第2強化繊維糸21は直進性を有し、湾曲したり、屈曲したりしていない。このため、繊維構造体10を強化基材とした繊維強化複合材料では、第1糸主軸方向Y1及び第2糸主軸方向Y2への力学的特性が低下しない。
(3)第1積層体13の第1中間組織糸16は、第1積層体13における第1繊維層14同士の積層方向への結合機能も有し、第2積層体20の第2中間組織糸26は、第2積層体20における第2繊維層24同士の積層方向への結合機能も有している。このため、各中間組織糸16,26により、使用する糸を増やさずに、2種類の結合を行うことができる。
(4)各積層体13,20における繊維層14,24同士の積層方向への結合は、各繊維層14,24の補助糸12,22と、中間組織糸16,26との係合で行うことができる。また、第1積層体13と第2積層体20の積層方向への結合は、第1中間組織糸16と第2中間組織糸26との係合で行うことができる。
よって、繊維構造体10での積層方向への結合は、第1強化繊維糸11及び第2強化繊維糸21以外の糸の係合で行うことができる。したがって、例えば、繊維構造体10での積層方向への結合のために、第1強化繊維糸11や第2強化繊維糸21が屈曲したり、湾曲したりせず、繊維構造体10を用いた繊維強化複合材料では、各糸主軸方向Y1,Y2への力学的特性が低下することが抑制される。
(第2の実施形態)
次に、繊維構造体10を具体化した第2の実施形態を図5〜図8にしたがって説明する。なお、第2の実施形態は、第1の実施形態の構成と同様の部分についてはその詳細な説明を省略する。
図5に示すように、第2の実施形態の繊維構造体10は、第1積層体13と第2積層体20とが、第1積層体13の第1層内組織糸15と、第2積層体20の第2層内組織糸25との係合により、積層方向に結合されている。
図6又は図7に示すように、第1積層体13の第1繊維層14のうち、第2積層体20寄りの第1繊維層14の第1層内組織糸15を第1係合用層内組織糸15aとする。また、第2積層体20の第2繊維層24のうち、第1積層体13寄りの第2繊維層24の第2層内組織糸25を第2係合用層内組織糸25aとする。
第1積層体13と第2積層体20の境界付近では、第2係合用層内組織糸25aは、第2繊維層24の第2強化繊維糸21に重なり合った第1係合用層内組織糸15aに対し、上側から係合し、さらに、配列方向に隣り合う第2補助糸22に下側から係合している。よって、第2係合用層内組織糸25aは、第1係合用層内組織糸15aとともに、第2繊維層24を配列方向に結合している。
そして、図8に示すように、第1積層体13では、2枚の第1繊維層14が第1中間組織糸16によって積層方向に結合され、第2積層体20では、2枚の第2繊維層24が第2中間組織糸26によって積層方向に結合されている。よって、第1係合用層内組織糸15aと第2係合用層内組織糸25aとの係合により、第1積層体13と第2積層体20が積層方向に結合されている。
従って、第2の実施形態によれば、第1の実施形態に記載の(1)及び(2)の効果に加えて以下の効果を得ることができる。
(5)第2の実施形態では、第1積層体13と第2積層体20において、積層方向に隣り合う第1繊維層14と第2繊維層24とで、互いの係合用層内組織糸15a,25aを用いて結合されている。よって、第1積層体13と第2積層体20を積層方向に近い位置で結合することができ、積層体同士の結合を強化なものにできる。
(第3の実施形態)
次に、繊維構造体10を具体化した第3の実施形態を図9〜図12にしたがって説明する。なお、第3の実施形態は、第1の実施形態の構成と同様の部分についてはその詳細な説明を省略する。
図9又は図12に示すように、第3の実施形態の繊維構造体10は、第1積層体13と第2積層体20とが、第1層内組織糸15と第2層内組織糸25との係合、及び第1中間組織糸16と第2中間組織糸26との係合により、積層方向に結合されている。
図10又は図11に示すように、第1積層体13の第1繊維層14のうち、第2積層体20寄りの第1繊維層14の第1層内組織糸15を第1係合用層内組織糸15aとする。また、第2積層体20の第2繊維層24のうち、第1積層体13寄りの第2繊維層24の第2層内組織糸25を第2係合用層内組織糸25aとする。
図9又は図12に示すように、第1積層体13と第2積層体20の境界付近では、第2係合用層内組織糸25aは、第2繊維層24の第2強化繊維糸21に重なり合った第1係合用層内組織糸15aに対し、上側から係合し、配列方向に隣り合う第2補助糸22に下側から係合している。よって、第2係合用層内組織糸25aは、第1係合用層内組織糸15aとともに、第2繊維層24を配列方向に結合している。
また、第1積層体13の第1中間組織糸16は、下側(第2積層体20寄り)の第1繊維層14の第1強化繊維糸11よりも第2積層体20寄りの位置まで延びて折り返されている。また、第2積層体20の第2中間組織糸26は、上側(第1積層体13寄り)の第2繊維層24の第2強化繊維糸21よりも第1積層体13寄りの位置まで延びて折り返されている。そして、第1積層体13の第1中間組織糸16と、第2積層体20の第2中間組織糸26とは、両積層体13,20の間で互いに直交する状態で係合している。
従って、第3の実施形態によれば、第1の実施形態に記載の(1)及び(2)の効果に加えて以下の効果を得ることができる。
(6)第3の実施形態では、第1積層体13と第2積層体20は、層内組織糸15a,25a同士の係合と、中間組織糸16,26同士の係合により積層方向に結合されている。よって、第1積層体13と第2積層体20の積層方向への結合をより強化にできる。
なお、上記実施形態は以下のように変更してもよい。
○ 第1の実施形態において、第2積層体20の第2層内組織糸25の係合の向きを第1の実施形態と逆になるように、第2補助糸22の上面で係合させつつ、第2強化繊維糸21の下面で係合するようにし、第2層内組織糸25が、第1層内組織糸15と積層方向に対向しない配置とする。なお、第2積層体20の第2繊維層24のうち、第1積層体13寄りの第2繊維層24の第2層内組織糸25を第2係合用層内組織糸25aとする。
そして、第1積層体13の第1中間組織糸16と、第2積層体20の第2係合用層内組織糸25aとを係合し、第1積層体13と第2積層体20を積層方向に結合してもよい。なお、第1積層体13の第1係合用層内組織糸15aと、第2積層体20の第2中間組織糸26とを係合し、第1積層体13と第2積層体20を積層方向に結合してもよい。
○ 第1積層体13と第2積層体20とは、第1積層体13の第1係合用層内組織糸15aと、第2積層体20の第2係合用層内組織糸25aとの係合、及び第1積層体13の第1係合用層内組織糸15aと、第2積層体20の第2中間組織糸26との係合により結合されていてもよい。
また、第1積層体13と第2積層体20とは、第1積層体13の第1中間組織糸16と、第2積層体20の第2中間組織糸26との係合、及び第1積層体13の第1中間組織糸16と、第2積層体20の第2係合用層内組織糸25aとの係合により結合されていてもよい。
さらに、第1積層体13と第2積層体20とは、第1積層体13の第1中間組織糸16と、第2積層体20の第2中間組織糸26との係合、及び第1積層体13の第1係合用層内組織糸15aと、第2積層体20の第2中間組織糸26との係合により結合されていてもよい。
加えて、第1積層体13と第2積層体20とは、第1積層体13の第1中間組織糸16と、第2積層体20の第2係合用層内組織糸25aとの係合、及び第1積層体13の第1係合用層内組織糸15aと第2積層体20の第2係合用層内組織糸25aとの係合により結合されていてもよい。
○ 各実施形態では、第1積層体13を構成する繊維層を第1繊維層14の2枚とし、第2積層体20を構成する繊維層を第2繊維層24の2枚としたが、これに限らない。積層体を構成する繊維層は3枚以上であってもよい。
○ 各実施形態では、繊維構造体10を、第1積層体13と第2積層体20の2枚を重ねて配置する構造としたが、これに限らず、繊維構造体10は、積層体を3枚以上重ねて配置する構造であってもよい。
○ 実施形態では、第1強化繊維糸11及び第2強化繊維糸21を同じ断面形状で同じ太さのものを使用したが、断面形状及び太さは適宜変更してもよい。
○ 繊維構造体10を繊維強化複合材料の強化基材として使用する場合、マトリックス樹脂の種類や繊維強化複合材料の製造方法に、特に規制はない。
○ 第1強化繊維糸11及び第2強化繊維糸21を構成する繊維束は、繊維強化複合材料に要求される物性に対応して、アラミド繊維、ポリ−p−フェニレンベンゾビスオキサゾール繊維、超高分子量ポリエチレン繊維等の高強度の有機繊維、ガラス繊維やセラミック繊維等の無機繊維を使用してもよい。
次に、上記実施形態及び別例から把握できる技術的思想について以下に追記する。
(イ)前記中間組織糸は、前記強化繊維糸及び前記補助糸の糸主軸方向に隣り合う前記層内組織糸同士の間に配置されている繊維構造体。
(ロ)繊維構造体にマトリックス樹脂が含浸している繊維強化複合材料であって、前記繊維構造体は、強化繊維糸と補助糸とが交互に配列され、該強化繊維糸と補助糸が層内組織糸によって配列方向に結合された繊維層が複数積層された積層体を複数有し、各積層体は、前記複数の繊維層同士の前記強化繊維糸及び前記補助糸の糸主軸方向が同じであり、かつ前記繊維層の積層方向において前記強化繊維糸同士が互い重なり合う状態で相対的に位置ずれし、前記補助糸同士が相対的に位置ずれしているとともに、前記繊維層同士が前記積層方向の両端に位置する前記補助糸に係合した中間組織糸によって結合されており、複数の前記積層体は、前記強化繊維糸同士、及び前記補助糸同士の糸主軸方向が直交する状態で配置されるとともに、一方向に前記糸主軸方向が延びる前記積層体の前記層内組織糸及び前記中間組織糸の少なくとも一つと、他方向に前記糸主軸方向が延びる前記積層体の前記層内組織糸及び前記中間組織糸の少なくとも一つと、の係合によって前記積層体同士が積層方向に結合されている繊維強化複合材料。
Y1…第1糸主軸方向、Y2…第2糸主軸方向、10…繊維構造体、11…第1強化繊維糸、12…第1補助糸、13…第1積層体、14…第1繊維層、15…第1層内組織糸、16…第1中間組織糸、20…第2積層体、21…第2強化繊維糸、22…第2補助糸、24…第2繊維層、25…第2層内組織糸、26…第2中間組織糸。

Claims (4)

  1. 強化繊維糸と補助糸とが交互に配列され、該強化繊維糸と補助糸が層内組織糸によって配列方向に結合された繊維層が複数積層された積層体を複数有し、
    各積層体は、前記複数の繊維層同士の前記強化繊維糸及び前記補助糸の糸主軸方向が同じであり、かつ前記繊維層の積層方向において前記強化繊維糸同士が互いに重なり合う状態で相対的に位置ずれし、前記補助糸同士が相対的に位置ずれしているとともに、前記繊維層同士が前記積層方向の両端に位置する前記補助糸に係合した中間組織糸によって結合されており、
    複数の前記積層体は、前記強化繊維糸同士、及び前記補助糸同士の糸主軸方向が直交する状態で配置されるとともに、
    一方向に前記糸主軸方向が延びる前記積層体の前記層内組織糸及び前記中間組織糸の少なくとも一つと、他方向に前記糸主軸方向が延びる前記積層体の前記層内組織糸及び前記中間組織糸の少なくとも一つと、の係合によって前記積層体同士が積層方向に結合されていることを特徴とする繊維構造体。
  2. 一方向に前記糸主軸方向が延びる前記積層体の前記中間組織糸と、他方向に前記糸主軸方向が延びる前記積層体の前記中間組織糸との係合により、前記積層体同士が結合されている請求項1に記載の繊維構造体。
  3. 一方向に前記糸主軸方向が延びる前記積層体の前記層内組織糸と、他方向に前記糸主軸方向が延びる前記積層体の前記層内組織糸との係合により、前記積層体同士が結合されている請求項1に記載の繊維構造体。
  4. 一方向に前記糸主軸方向が延びる前記積層体の前記中間組織糸と、他方向に前記糸主軸方向が延びる前記積層体の前記中間組織糸との係合、及び一方向に前記糸主軸方向が延びる前記積層体の前記層内組織糸と、他方向に前記糸主軸方向が延びる前記積層体の前記層内組織糸との係合により、前記積層体同士が結合されている請求項1に記載の繊維構造体。
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