JP2014077213A - ジョイント用繊維基材及びジョイント用繊維強化複合材 - Google Patents
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Abstract
【課題】繊維束層の積層数を増加させることなく機械的特性を得ることができるジョイント用繊維基材及びジョイント用繊維強化複合材を提供すること。
【解決手段】ジョイント用繊維基材30及びジョイント用繊維強化複合材は、積層体11の一部に、積層体11の積層方向に沿った平面視で外方に凸となる湾曲状をした外周形状を有するとともにロッドと連結されるジョイント部21を有している。ジョイント部21は、第1〜第4の強化繊維束層11a〜11d間の境界線Rが延びる方向に沿って延びる補強材37によって外周形状を形成する外周面20aが覆われている。
【選択図】図6
【解決手段】ジョイント用繊維基材30及びジョイント用繊維強化複合材は、積層体11の一部に、積層体11の積層方向に沿った平面視で外方に凸となる湾曲状をした外周形状を有するとともにロッドと連結されるジョイント部21を有している。ジョイント部21は、第1〜第4の強化繊維束層11a〜11d間の境界線Rが延びる方向に沿って延びる補強材37によって外周形状を形成する外周面20aが覆われている。
【選択図】図6
Description
本発明は、積層体の少なくとも一部に、積層体の積層方向に沿った平面視で外方に凸となる湾曲状をした外周形状を有するとともに他部材と連結されるジョイント部を有するジョイント用繊維基材、及びジョイント用繊維強化複合材に関する。
軽量、高強度の材料として繊維強化複合材が使用されている。繊維強化複合材は、複数の繊維束層を積層して形成された繊維基材がマトリックス樹脂中に複合化されることにより、マトリックス樹脂自体に比べて力学的特性(機械的特性)が向上するため、構造部品として好ましい。また、このような繊維強化複合材は、ラグジョイント(ジョイント用繊維強化複合材)などと呼ばれて他部材とのジョイントとして用いられるものがある。
ジョイント用繊維強化複合材においては、ジョイント部の他部材との干渉を避けるために、ジョイント部は外方に凸となる湾曲状をした外周形状を有するとともに、ジョイント部には他部材と機械的に連結するためにボルトやピンが挿通される。このため、ジョイント部には、ボルトやピンからの引張荷重が局所的に作用するため、機械的特性の向上が要求されている。
機械的特性を向上させるために、特許文献1に開示の3次元繊維強化複合材ラグにおいては、互いに異なる配向パターンを有する複数の二次元配列糸層を必要強度に応じ、かつ各応力分担領域における繊維配向率が相互に均等になるように選択的に積層している。
しかし、特許文献1においては、必要とされる機械的特性に応じて二次元配列糸層の積層数が決定されており、必要強度が大きければ二次元配列糸層の積層数が増加してしまい、厚みが厚く、重量化してしまう。
本発明は、繊維束層の積層数を増加させることなく機械的特性を得ることができるジョイント用繊維基材及びジョイント用繊維強化複合材を提供することにある。
上記問題点を解決するために、請求項1に記載の発明は、複数の繊維束層が積層された積層体を有し、前記積層体の少なくとも一部に、前記積層体の積層方向に沿った平面視で外方に凸となる湾曲状をした外周形状を有するとともに他部材と連結されるジョイント部を有するジョイント用繊維基材であって、前記ジョイント部は、前記繊維束層間の境界線が延びる方向に沿って延びる繊維束によって前記外周形状を形成する外周面が覆われていることを要旨とする。
また、請求項5に記載の発明は、請求項1〜請求項4のうちいずれか一項に記載のジョイント用繊維基材にマトリックス樹脂を含浸させて形成されるものである。
これによれば、繊維束でジョイント部の外周面を覆うことで、ジョイント部の外周面に向けてジョイント部を引張る引張荷重は、繊維束層の積層体と、外周面を覆う繊維束に分散して受け止められる。このため、ジョイント部の機械的特性を、繊維束層の積層体だけで発現させる場合と比べて向上させることができる。よって、同じ引張荷重を受け止めるために必要とされる繊維束層の積層数は、外周面を覆う繊維束が無い場合と比べると減らすことができる。
これによれば、繊維束でジョイント部の外周面を覆うことで、ジョイント部の外周面に向けてジョイント部を引張る引張荷重は、繊維束層の積層体と、外周面を覆う繊維束に分散して受け止められる。このため、ジョイント部の機械的特性を、繊維束層の積層体だけで発現させる場合と比べて向上させることができる。よって、同じ引張荷重を受け止めるために必要とされる繊維束層の積層数は、外周面を覆う繊維束が無い場合と比べると減らすことができる。
また、前記積層体は、全ての前記繊維束層が積層されて形成された積層体本体と、該積層体本体から屈曲して延設される一対の延設部とを有し、前記積層体本体は前記ジョイント部を備え、かつ前記繊維束層の積層方向における一端側に第1面を有するとともに他端側に第2面を有し、一対の前記延設部は、全ての前記繊維束層を複数層ずつに2つに割いて形成され、前記積層体本体から屈曲して前記第1面及び前記第2面のいずれか一方側から他方側に向かって互いに逆方向に延び、前記第1面側に延設された一方の前記延設部の屈曲部における凸側の表面を形成する湾曲面と、前記第2面側に延設された他方の前記延設部の屈曲部における凸側の表面を形成する湾曲面との間の空間には、前記ジョイント部の外周面を覆う前記繊維束が延長して配設されていてもよい。
これによれば、ジョイント用繊維基材を用いてジョイント用繊維強化複合材を製造する際、2つの湾曲面の間の空間に樹脂溜りが形成されることを防止することができる。その結果、ジョイント用繊維強化複合材において、樹脂リッチな部分が形成されることを防止して、ジョイント用繊維強化複合材の機械的特性の低下を防止することができる。そして、空間を埋めるフィラーとしての機能を、外周面を覆う繊維束に兼用させることができる。よって、空間を埋めるフィラーと、ジョイント部の外周面を覆う繊維束とを別々の部材とする場合と比べると、ジョイント用繊維基材の製造を簡単に行うことができる。
また、前記ジョイント部には、前記積層体を積層方向に貫通するジョイント孔が形成されていてもよい。
これによれば、ジョイント部にジョイント孔が形成されることで、ジョイント孔から、ジョイント部の外周面までの距離が短くなり、ジョイント部の機械的特性の向上が必然となる。そして、繊維束でジョイント部の外周面を覆うことで、ジョイント孔が形成されていてもジョイント部の機械的特性を向上させ、ジョイント孔に挿通された部材を介してジョイント部が引張られても、ジョイント部が変形等することを防止することができる。
これによれば、ジョイント部にジョイント孔が形成されることで、ジョイント孔から、ジョイント部の外周面までの距離が短くなり、ジョイント部の機械的特性の向上が必然となる。そして、繊維束でジョイント部の外周面を覆うことで、ジョイント孔が形成されていてもジョイント部の機械的特性を向上させ、ジョイント孔に挿通された部材を介してジョイント部が引張られても、ジョイント部が変形等することを防止することができる。
また、前記繊維束層を構成する繊維束と、前記ジョイント部の外周面を覆う繊維束は同じ材料からなる繊維束であってもよい。
これによれば、ジョイント用繊維基材にマトリックス樹脂を含浸させてジョイント用繊維強化複合材を製造した場合、その繊維束と他の材料が混在することによるジョイント用繊維強化複合材の機械的特性の低下を防止できる。
これによれば、ジョイント用繊維基材にマトリックス樹脂を含浸させてジョイント用繊維強化複合材を製造した場合、その繊維束と他の材料が混在することによるジョイント用繊維強化複合材の機械的特性の低下を防止できる。
本発明によれば、繊維束層の積層数を増加させることなく機械的特性を得ることができる。
以下、本発明を具体化した一実施形態を図1〜図6にしたがって説明する。なお、図1及び図2では、説明を簡略するためのマトリックス樹脂Jの図示を省略している。
ジョイント用繊維強化複合材10は、所定形状に形成されたジョイント用繊維基材30にマトリックス樹脂Jを含浸させて形成されている。また、ジョイント用繊維基材30は、積層体11を備え、この積層体11は、シート状をなす第1〜第4の強化繊維束層11a〜11dを積層し、積層方向に隣り合う繊維束層同士をバインダ等で結合して形成されている。
ジョイント用繊維強化複合材10は、所定形状に形成されたジョイント用繊維基材30にマトリックス樹脂Jを含浸させて形成されている。また、ジョイント用繊維基材30は、積層体11を備え、この積層体11は、シート状をなす第1〜第4の強化繊維束層11a〜11dを積層し、積層方向に隣り合う繊維束層同士をバインダ等で結合して形成されている。
図4(a)及び図4(b)に示すように、第1〜第4の強化繊維束層11a〜11dは、複数の経糸15a(第1の糸)と、複数の緯糸15b(第2の糸)とを一本ずつ交互に組み合わせた平織りによって形成されている。また、複数の経糸15aは、繊維束からなり互いに平行に真っ直ぐに配列され、複数の緯糸15bも繊維束からなり互いに平行にかつ経糸15aと交差(直交)する方向に真っ直ぐに配列されている。そして、経糸15a及び緯糸15bの繊維束は、それぞれ炭素繊維によって形成されている。
第1の強化繊維束層11aは、その長さ方向に対して経糸15aが0度、緯糸15bが90度となる状態に経糸15aと緯糸15bが織られて形成されている。第2の強化繊維束層11bは、その長さ方向に対して経糸15aが+45度、緯糸15bが−45度となる状態に経糸15aと緯糸15bが織られて形成されている。第3の強化繊維束層11cは、その長さ方向に対して経糸15aが0度、緯糸15bが90度となる状態に経糸15aと緯糸15bが織られて形成されている。第4の強化繊維束層11dは、その長さ方向に対して経糸15aが+45度、緯糸15bが−45度となる状態に経糸15aと緯糸15bが織られて形成されている。
積層体11は、第1〜第4の強化繊維束層11a〜11dの積層物を、図4(b)の2点鎖線に示す位置から積層方向に切断し、所定形状に成形することで形成されている。よって、積層体11は、各経糸15aと緯糸15bの配列方向により、全体で4軸配向となっている。なお、積層体11の厚み方向であり、第1〜第4の強化繊維束層11a〜11dが積層された方向を、積層体11の積層方向とする。
図2(a)及び図3に示すように、積層体11において、積層方向の一端部に配設された第1の強化繊維束層11aの表面を、積層体11の第1面M1とし、積層方向の他端部に配設された第4の強化繊維束層11dの表面を、積層体11の第2面M2とする。
図5に示すように、積層体11は、第1〜第4の強化繊維束層11a〜11dを全て備える細長板状の積層体本体20を備える。積層体本体20の面に沿う方向に対し直交し、かつ連続する面であり、積層体11の積層方向に沿った平面視で外方に凸となる湾曲状をなす面を、外周面20aとする。積層体本体20における外周面20aは、第1〜第4の強化繊維束層11a〜11dの積層面によって形成されており、四層構造になっている。
図2(a)及び図2(b)に示すように、積層体本体20は、長さ方向の一端部にジョイント孔20bが積層方向に貫通して形成されている。また、積層体本体20の長さ方向一端部は、ジョイント孔20bを囲む円弧状に形成されたジョイント部21となっている。ジョイント部21は、積層体11の積層方向に沿った平面視で、積層体本体20の外周面20aが外方に凸となる湾曲状に形成されている。すなわち、ジョイント部21は、積層体11の積層方向に沿った平面視で外方に凸となる湾曲状をした外周形状を有する。よって、ジョイント部21は、平面視で凹んで外周面20aが曲線状になっているものではない。また、ジョイント部21は、外周面20aが円弧状のもののほか、若干直線状のものを含んでいたり弧状のものであってもよい。
積層体本体20の面に沿う方向で、かつ長さ方向に直交する方向を積層体本体20の幅方向とし、積層体本体20の幅方向に延び、かつジョイント孔20bの中心を通過する直線を基準線Hで示す。この場合、基準線Hよりも積層体本体20の長さ方向一端側では、ジョイント孔20bからジョイント部21での外周面20aまでの距離Kは、ジョイント孔20bの周方向に一定となっている。一方、基準線Hよりも積層体本体20の長さ方向他端側では、ジョイント孔20bから外周面20aまでの距離Kが周方向に異なっている。ジョイント部21では、ジョイント孔20bから外周面20aまでの距離Kが、ジョイント部21以外での距離Kより短くなっている。そして、距離Kが短いジョイント部21が、他部材であるロッド12と連結される。
図5に示すように、ジョイント部21での外周面20aには、積層方向に隣り合う強化繊維束層11a〜11d同士の間に形成される境界線Rが積層方向に3本形成されている。積層体11は、積層体本体20の長さ方向の他端から屈曲して延設される第1延設部31及び第2延設部35を一体に備える。第1延設部31は、第1〜第4の強化繊維束層11a〜11dを、第3の強化繊維束層11cと第4の強化繊維束層11dに割いて形成された2層構造であり、第2延設部35は、第1の強化繊維束層11aと第2の強化繊維束層11bに割いて形成された2層構造である。
図3(b)に示すように、第1延設部31は、積層体本体20の第1面M1側から第2面M2側に向かう方向に延びて形成されている。第1延設部31は、積層体本体20から屈曲する第1屈曲部32を含むとともに、第1屈曲部32において、凸側の表面を形成する湾曲面32aは円弧状に形成されている。第1延設部31は、第1屈曲部32を除いて板状に形成され、第2面M2に対し直交する方向に延びている。
第2延設部35は、積層体本体20の第2面M2側から第1面M1側に向かう方向に延びて形成され、第1延設部31と第2延設部35は互いに逆方向に延びている。第2延設部35は、積層体本体20から屈曲する第2屈曲部36を含むとともに、第2屈曲部36において、凸側の表面を形成する湾曲面36aは円弧状に形成されている。第2延設部35は、第2屈曲部36を除いて板状に形成され、第1面M1に対し直交する方向に延びている。
図5に示すように、第1延設部31と第2延設部35を、積層体11を割いて形成している関係上、第1屈曲部32と第2屈曲部36の裂目Qは、ジョイント部21での外周面20aの延長線上に位置している。よって、第1屈曲部32と第2屈曲部36の間に形成される裂目Qは、ジョイント部21の外周面20aに形成された境界線Rの延長線上に位置し、ジョイント部21の外周面20a(境界線R)、積層体本体20の外周面20a(境界線R)、及び裂目Qは同一直線上に位置している。
図2に示すように、積層体11において、ジョイント部21及び積層体本体20の外周面20aには、補強材37が接合されている。補強材37は、複数本の強化繊維を束ねてなる強化繊維束を用いて形成されている。なお、「強化繊維」とは補強材37を、ジョイント用繊維強化複合材10の繊維基材として使用した際に、ジョイント用繊維強化複合材10のマトリックス樹脂Jを強化する役割を担う繊維束を意味する。そして、本実施形態では、強化繊維として炭素繊維が使用されている。
図3(a)に示すように、補強材37は、繊維束の延びる方向に直交する断面形状が扁平状をなすとともに、繊維束の延びる方向に長尺状の帯状に形成されている。そして、補強材37において、断面形状の長手方向を補強材37の幅方向とし、断面形状の短手方向を補強材37の厚み方向とする。補強材37の幅方向への長さ(幅)は、積層体本体20の積層方向に沿った外周面20aの長さと同じに設定されている。
補強材37は、積層体本体20及びジョイント部21の外周面20aを覆う状態でバインダによって接合されている。補強材37は、幅方向が積層体本体20の積層方向に沿って延びる状態で、外周面20aを積層方向全体に亘って覆う状態に接合されている。また、補強材37は、繊維束が、外周面20aでの境界線Rの延びる方向に沿って延びる状態で外周面20aに接合されている。
図3(b)に示すように、第1屈曲部32の湾曲面32aと、第2屈曲部36の湾曲面36aとの間の空間には、ジョイント部21の外周面20aを覆う補強材37が延長して配設されるとともに、両湾曲面32a,36aの間の空間の全体が補強材37によって覆われている。すなわち、補強材37は、繊維束が第1屈曲部32と第2屈曲部36の裂目Qの延びる方向に沿って延びている。
図2に示すように、補強材37は、第1屈曲部32の湾曲面32aと、第2屈曲部36の湾曲面36aとの間の空間に入り込んだ状態に設けられ、その空間を埋めている。よって、補強材37は、ジョイント部21から積層体本体20を跨いで第1延設部31と第2延設部35の間にも設けられ、積層体本体20を全周に亘って囲む状態に設けられている。そして、ジョイント用繊維基材30は、積層体11を、積層体本体20と、第1屈曲部32と、第2屈曲部36とを含む形状に成形するとともに、積層体本体20にジョイント部21を設け、さらに、補強材37を設けて形成されている。
ジョイント用繊維強化複合材10は、上記構成のジョイント用繊維基材30(積層体11)にマトリックス樹脂Jが含浸硬化されて形成されている。マトリックス樹脂Jは、積層体本体20、ジョイント部21、第1延設部31、第2延設部35、及び補強材37に含浸し、一体に硬化している。また、ジョイント部21に形成されたジョイント孔20bの内周面はマトリックス樹脂Jに覆われている。ジョイント用繊維強化複合材10のジョイント孔20bには、他部材から延びるロッド12を連結するために連結ピンPが挿通されている。
次に、ジョイント用繊維強化複合材10の製造方法について説明する。
図4(a)に示すように、第1〜第4の強化繊維束層11a〜11dを積層し、その積層物を図4(b)の2点鎖線に示す位置から切断する。そして、切り出された積層物を所定形状に成形して積層体11を形成する。
図4(a)に示すように、第1〜第4の強化繊維束層11a〜11dを積層し、その積層物を図4(b)の2点鎖線に示す位置から切断する。そして、切り出された積層物を所定形状に成形して積層体11を形成する。
次に、積層体11の外周面20aに補強材37を接合する。補強材37の外周面20aへの接合は、まず、積層体本体20及びジョイント部21の外周面20aと、第1屈曲部32の湾曲面32a及び第2屈曲部36の湾曲面36aにバインダを散布する。このバインダとしては熱可塑性樹脂を粉末状にしたもの、あるいは液状の接着剤(樹脂))が使用される。
図6に示すように、ボビン40に予め巻装された補強材37を、加熱・加圧ローラ41で外周面20aに押し付けながらバインダを加熱溶融させ、硬化したバインダによって接合させる。そして、積層体11からジョイント用繊維基材30を形成し、そのジョイント用繊維基材30を、マトリックス樹脂Jに含浸するとともに、マトリックス樹脂Jが硬化することでジョイント用繊維強化複合材10が形成される。このマトリックス樹脂Jの含浸処理は、レジントランスファーモールディング(RTM)法が採用される。そして、第1〜第4の強化繊維束層11a〜11dがマトリックス樹脂Jの硬化に伴い一体化されている。なお、マトリックス樹脂Jとしては、例えばエポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、フェノール樹脂、ビニルエステル樹脂等の熱硬化性樹脂の他、ナイロンやABS樹脂等の熱可塑性樹脂が使用される。また、熱硬化性樹脂と熱可塑性樹脂の混合樹脂も使用可能である。そして、ジョイント用繊維強化複合材10において、積層体本体20の長さ方向一端側にジョイント孔20bを形成する。
次に、ジョイント用繊維基材30及びジョイント用繊維強化複合材10の作用を記載する。
ロッド12が、ジョイント用繊維強化複合材10(ジョイント用繊維基材30)から離間する方向へ移動すると、連結ピンPもジョイント用繊維強化複合材10から離間する方向へ移動する。このとき、図2の矢印Yに示すように、ジョイント部21においては、その外周面20aに向かう方向へ連結ピンPから引張荷重が掛かる。ジョイント部21においては、引張荷重が掛かる方向の外周面20aに補強材37が接合され、ジョイント部21の機械的特性が向上している。そして、引張荷重はジョイント部21だけでなく、補強材37によっても受け止められる。
ロッド12が、ジョイント用繊維強化複合材10(ジョイント用繊維基材30)から離間する方向へ移動すると、連結ピンPもジョイント用繊維強化複合材10から離間する方向へ移動する。このとき、図2の矢印Yに示すように、ジョイント部21においては、その外周面20aに向かう方向へ連結ピンPから引張荷重が掛かる。ジョイント部21においては、引張荷重が掛かる方向の外周面20aに補強材37が接合され、ジョイント部21の機械的特性が向上している。そして、引張荷重はジョイント部21だけでなく、補強材37によっても受け止められる。
上記実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)ジョイント用繊維基材30において、積層体11のジョイント部21での外周面20aに補強材37を接合し、ジョイント部21の機械的特性を向上させた。そして、このジョイント用繊維基材30から得られたジョイント用繊維強化複合材10において、ジョイント部21に挿通された連結ピンPを介してジョイント部21に引張荷重が掛かったとき、ジョイント部21による引張荷重の受け止め力は小さいが、補強材37でも引張荷重を受け止めることができる。よって、引張荷重がジョイント部21と補強材37に分散され、引張荷重によるジョイント部21の変形を防止できる。したがって、強化繊維束層の積層数を増やすことなくジョイント部21での機械的特性を上げることができる。よって、同じ引張荷重を受け止めるために必要とされる強化繊維束層の積層数は、補強材37が無い場合と比べると減らすことができ、ジョイント用繊維基材30及びジョイント用繊維強化複合材10の厚みを薄くし、かつ軽量化を図ることができる。
(1)ジョイント用繊維基材30において、積層体11のジョイント部21での外周面20aに補強材37を接合し、ジョイント部21の機械的特性を向上させた。そして、このジョイント用繊維基材30から得られたジョイント用繊維強化複合材10において、ジョイント部21に挿通された連結ピンPを介してジョイント部21に引張荷重が掛かったとき、ジョイント部21による引張荷重の受け止め力は小さいが、補強材37でも引張荷重を受け止めることができる。よって、引張荷重がジョイント部21と補強材37に分散され、引張荷重によるジョイント部21の変形を防止できる。したがって、強化繊維束層の積層数を増やすことなくジョイント部21での機械的特性を上げることができる。よって、同じ引張荷重を受け止めるために必要とされる強化繊維束層の積層数は、補強材37が無い場合と比べると減らすことができ、ジョイント用繊維基材30及びジョイント用繊維強化複合材10の厚みを薄くし、かつ軽量化を図ることができる。
(2)ジョイント孔20bを囲むように繊維束を、外方に凸となる湾曲状にするとともに、その湾曲させた繊維束を積層してジョイント部21を形成する方法がある。この場合は、繊維束の内周側と外周側とで繊維長さに差が生じ、内周側の繊維束は緩んだり、蛇行したりしてしまい、引張荷重等の力を受け止める力が低下してしまう。しかし、本実施形態のジョイント用繊維基材30及びジョイント用繊維強化複合材10においては、積層体11を切断してジョイント部21を形成し、そのジョイント部21の外周面20aに補強材37を接合しているため、繊維束を湾曲させたときのような繊維束の緩みや蛇行が生じず、繊維束による機械的強度を発揮させることができる。
(3)積層体11は、第1〜第4の強化繊維束層11a〜11dを積層したものを所定形状に切断して形成され、その切断面となる積層体本体20及びジョイント部21の外周面20aには補強材37が接合されている。このため、切断面を補強材37で覆って切断面からの繊維の解れを防止することができる。したがって、マトリックス樹脂Jを含浸して得られるジョイント用繊維強化複合材10においては、繊維が解れた部位に樹脂リッチな部分が形成されることを防止することができ、ジョイント用繊維強化複合材10の機械的特性の低下を防止することができる。
(4)第1延設部31における第1屈曲部32の湾曲面32aと、第2延設部35における第2屈曲部36の湾曲面36aとの間の空間には、補強材37が設けられている。このため、上記空間が補強材37によって埋められ、ジョイント用繊維強化複合材10において、樹脂溜りが形成されることが防止される。
(5)第1延設部31における第1屈曲部32の湾曲面32aと、第2延設部35における第2屈曲部36の湾曲面36aとの間の空間を埋めるために、ジョイント部21の外周面20aを覆う補強材37を延長して配設した。補強材37は、ジョイント部21を補強する機能と、空間を埋めるフィラーとしての機能を有し、フィラーとしての機能を発揮する部材を別に設ける場合と比べると、ジョイント用繊維基材30及びジョイント用繊維強化複合材10の部品点数を減らすことができ、また、製造も簡素化することができる。
(6)補強材37は、ジョイント部21だけでなく、積層体本体20の外周面20a全体を覆っている。このため、積層体11を積層方向に補強することができ、得られるジョイント用繊維基材30及びジョイント用繊維強化複合材10を全体に亘って機械的特性を向上させることができる。
(7)補強材37は、バインダによって積層体本体20及びジョイント部21の外周面20a、さらには第1及び第2屈曲部32,36に接合されている。よって、マトリックス樹脂Jを積層体11に含浸させるとき、補強材37が積層体11から剥がれることを防止することができ、補強材37が剥がれないように押さえる必要がなく、ジョイント用繊維強化複合材10を簡単に製造することができる。
(8)補強材37は、繊維束の延びる方向が、外周面20aでの境界線Rの延びる方向に沿っている。また、補強材37は、幅がジョイント部21の外周面20aの積層方向への長さと同じになっている。このため、補強材37を積層体本体20の周方向に沿って接合しやすく、また、ジョイント部21の外周面20aを積層方向全体に亘って補強材37で覆い、ジョイント部21の機械的特性を確実に向上させることができる。
(9)ジョイント部21には、ジョイント孔20bが形成されている。このため、ジョイント部21において、ジョイント孔20bから外周面20aまでの距離Kが短くなり、ジョイント部21の機械的特性の向上が必然となる。そして、補強材37でジョイント部21の外周面20aを覆うことで、ジョイント孔20bが形成されていてもジョイント部21の機械的特性を向上させることができる。よって、ジョイント孔20bに挿通された連結ピンPを介してジョイント部21が引張られても、ジョイント部21が変形等することを防止することができる。
(10)第1〜第4の強化繊維束層11a〜11dと、補強材37をそれぞれ炭素繊維で形成した。このため、ジョイント用繊維強化複合材10においては、炭素繊維以外の材料が混在することによる強度低下を無くすことができる。
なお、上記実施形態は以下のように変更してもよい。
○ 図7に示すように、ジョイント用繊維基材30及びジョイント用繊維強化複合材10の形状は、第1延設部31及び第2延設部35が無い形状でもよく、積層体本体20の長さ方向他端側がテーパ状に形成されていてもよい。
○ 図7に示すように、ジョイント用繊維基材30及びジョイント用繊維強化複合材10の形状は、第1延設部31及び第2延設部35が無い形状でもよく、積層体本体20の長さ方向他端側がテーパ状に形成されていてもよい。
○ 実施形態では、第1〜第4の強化繊維束層11a〜11dを平織りで形成した織物としたが、織り方は、朱子織りや綾織りであってもよい。
○ 実施形態では、第1〜第4の強化繊維束層11a〜11dを織物としたが、繊維束を一方向に配列したものであってもよい。
○ 実施形態では、第1〜第4の強化繊維束層11a〜11dを織物としたが、繊維束を一方向に配列したものであってもよい。
○ 実施形態では、ジョイント用繊維基材30及びジョイント用繊維強化複合材10にジョイント孔20bを形成し、ジョイント孔20bに挿通した連結ピンPを介してロッド12と連結したが、ジョイント用繊維基材30及びジョイント用繊維強化複合材10のジョイント部21は、ジョイント孔20bが無い状態で他部材と連結されていてもよい。
○ 実施形態では、補強材37は一層としたが、複数層としてもよい。
○ 補強材37の幅を、ジョイント部21での外周面20aの積層方向長さより長くしてもよいし、短くしてもよい。
○ 補強材37の幅を、ジョイント部21での外周面20aの積層方向長さより長くしてもよいし、短くしてもよい。
○ 実施形態では、補強材37をジョイント部21だけでなく積層体本体20全体と、第1屈曲部32と第2屈曲部36の湾曲面32a,36aを覆うようにしたが、ジョイント部21の外周面20aだけを覆ってもよいし、ジョイント部21と積層体本体20の外周面20aだけを覆ってもよい。
○ 実施形態では、補強材37をバインダを用いて外周面20aに接合したが、補強材37は外周面20aを覆っていれば、接合されていなくてもよい。
○ 実施形態では、補強材37を帯状(断面扁平状)としたが、補強材37は帯状でなくてもよい。
○ 実施形態では、補強材37を帯状(断面扁平状)としたが、補強材37は帯状でなくてもよい。
○ 実施形態では、積層体11において、積層体本体20の一部にジョイント部21を形成したが、積層体11を円盤状に形成するとともに、その積層体11にジョイント孔20bを形成し、積層体11全体をジョイント部としてもよい。
○ 実施形態では、第1〜第4の強化繊維束層11a〜11dと、補強材37をそれぞれ炭素繊維で形成したが、別々の繊維材料で形成されていてもよい。この場合、補強材37を形成する繊維材料の方が強度が高いのが好ましい。
○ 実施形態では、積層体11における強化繊維束層を4層で形成したが、2層、3層、5層以上であってもよい。
○ ジョイント用繊維基材30にマトリックス樹脂Jを含浸、硬化させてジョイント用繊維強化複合材10を製造する方法はRTM法に限らない。
○ ジョイント用繊維基材30にマトリックス樹脂Jを含浸、硬化させてジョイント用繊維強化複合材10を製造する方法はRTM法に限らない。
次に、上記実施形態及び別例から把握できる技術的思想について以下に追記する。
(イ)前記繊維束層及び前記補強材は炭素繊維から形成されている請求項1〜請求項4のうちいずれか一項に記載のジョイント用繊維基材。
(イ)前記繊維束層及び前記補強材は炭素繊維から形成されている請求項1〜請求項4のうちいずれか一項に記載のジョイント用繊維基材。
J…マトリックス樹脂、R…境界線、M1…第1面、M2…第2面、10…ジョイント用繊維強化複合材、11…積層体、11a〜11d…繊維束層としての第1〜第4の強化繊維束層、12…他部材としてのロッド、20…積層体本体、20a…外周面、20b…ジョイント孔、21…ジョイント部、30…ジョイント用繊維基材、31…第1延設部、32…第1屈曲部、32a,36a…湾曲面、35…第2延設部、36…第2屈曲部、37…外周面を覆う繊維束としての補強材。
Claims (5)
- 複数の繊維束層が積層された積層体を有し、
前記積層体の少なくとも一部に、前記積層体の積層方向に沿った平面視で外方に凸となる湾曲状をした外周形状を有するとともに他部材と連結されるジョイント部を有するジョイント用繊維基材であって、
前記ジョイント部は、前記繊維束層間の境界線が延びる方向に沿って延びる繊維束によって前記外周形状を形成する外周面が覆われているジョイント用繊維基材。 - 前記積層体は、全ての前記繊維束層が積層されて形成された積層体本体と、該積層体本体から屈曲して延設される一対の延設部とを有し、前記積層体本体は前記ジョイント部を備え、かつ前記繊維束層の積層方向における一端側に第1面を有するとともに他端側に第2面を有し、一対の前記延設部は、全ての前記繊維束層を複数層ずつに2つに割いて形成され、前記積層体本体から屈曲して前記第1面及び前記第2面のいずれか一方側から他方側に向かって互いに逆方向に延び、前記第1面側に延設された一方の前記延設部の屈曲部における凸側の表面を形成する湾曲面と、前記第2面側に延設された他方の前記延設部の屈曲部における凸側の表面を形成する湾曲面との間の空間には、前記ジョイント部の外周面を覆う前記繊維束が延長して配設されている請求項1に記載のジョイント用繊維基材。
- 前記ジョイント部には、前記積層体を積層方向に貫通するジョイント孔が形成されている請求項1又は請求項2に記載のジョイント用繊維基材。
- 前記繊維束層を構成する繊維束と、前記ジョイント部の外周面を覆う繊維束は同じ材料からなる繊維束である請求項1〜請求項3のうちいずれか一項に記載のジョイント用繊維基材。
- 請求項1〜請求項4のうちいずれか一項に記載のジョイント用繊維基材にマトリックス樹脂を含浸させて形成されるジョイント用繊維強化複合材。
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JP2012225166A JP2014077213A (ja) | 2012-10-10 | 2012-10-10 | ジョイント用繊維基材及びジョイント用繊維強化複合材 |
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JP2014077213A true JP2014077213A (ja) | 2014-05-01 |
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JP2012225166A Pending JP2014077213A (ja) | 2012-10-10 | 2012-10-10 | ジョイント用繊維基材及びジョイント用繊維強化複合材 |
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JP (1) | JP2014077213A (ja) |
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2012
- 2012-10-10 JP JP2012225166A patent/JP2014077213A/ja active Pending
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