JP6528278B2 - ナノファイバーの製造方法及びエレクトロスピニング用ドープ - Google Patents

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Description

本発明は、ナノファイバーの製造方法及びその製造方法に用いるエレクトロスピニング用ドープに関する。
ナノファイバーは、繊維径がナノメートルオーダーの極細の繊維であり、医療用途、バッテリー用セパレーターをはじめとする電池用途、フィルター用途、分離膜用途等、幅広い分野の産業への利用が期待される材料である。
ナノファイバーを得る手法としては、セルフアッセンブリー法、フェイズセパレーション法、エレクトロスピニング法等が知られている。
これらのうち、エレクトロスピニング法は、高分子等の溶液(ドープ)を高電圧印加しながらノズル等から吐出させ、吐出したドープ間の静電反発を利用することにより、ドープからナノファイバーを製造する方法である。
エレクトロスピニング法に利用可能な素材としては、ポリビニルアルコール、ポリ乳酸等の合成高分子、コラーゲン、フィブロイン等のたんぱく質などが挙げられる。
たんぱく質から形成されるナノファイバーは、表面積が大きく、生体親和性に優れるため、医療用途への応用が期待されている。
エレクトロスピニング法でフィブロインを原料とするナノファイバー(以下、「フィブロインナノファイバー」ともいう)を製造する方法に関してはいくつか報告がある。
具体的には、フィブロインをヘキサフルオロイソプロパノール(以下、「HFIP」ともいう)、ヘキサフルオロアセトン(以下「HFA」ともいう)等に溶解した溶液(ドープ)を用いてエレクトロスピニングする方法(特許文献1)、フィブロインを臭化リチウム(LiBr)、塩化カルシウム(CaCl)等の中性塩溶液に溶解した後、脱塩して得たフィブロイン水溶液の凍結乾燥物を蟻酸に溶解した溶液(ドープ)を用いてエレクトロスピニングする方法(特許文献2)、フィブロインをLiBr、CaCl等の中性塩溶液に溶解した後、脱塩して得たフィブロイン水溶液に非イオン性界面活性剤及び水溶性高分子を加えた溶液(ドープ)を用いてエレクトロスピニングする方法(特許文献3)などが挙げられる。
また、フィブロインに加え、ポリエチレンオキサイド等の生体適合性高分子を添加した溶液(ドープ)を用いてエレクトロスピニングすることにより、生体親和性に優れるシルク複合ナノファイバーを得られることが報告されている(特許文献3)。
しかしながら、これらの方法で得られるナノファイバーは、水、湿気等で容易に溶解してしまうため、多くの用途で、その利用に制約が生じていた。そこで、フィブロインナノファイバーを水に対して不溶化する検討がなされている。
水に不溶なフィブロインナノファイバーを得る方法としては、上記の方法で製造したナノファイバーを、メタノール、エタノール、プロパノール、メチルエーテル、エチルエーテル及びプロピルエーテルからなる群から選ばれる低級アルコール又は低級エーテルに浸漬する方法(特許文献3及び非特許文献1)、及びエタノール雰囲気下で紡糸する方法(非特許文献2)等が知られている。
特開2004−68161号公報 特開2011−208286号公報 特開2010−150712号公報
繊維と工業,Vol. 71, No.3(2015),P. 117-122 日本シルク学会誌,Vol. 16 (2007),P. 150-151
しかしながら、特許文献1に記載の方法は、使用する溶媒(HFIP、HFA等)が人体に有害な上に、非常に高価であることが問題であった。
また、特許文献2に記載の方法は、溶解、脱塩、凍結乾燥、再溶解等の工程が煩雑であること、高コストの凍結乾燥工程が必須であること、皮膚腐食性の蟻酸を溶媒に用いるため、作業環境及び得られるナノファイバーの安全性に問題があることなどが問題であった。
特許文献3に記載の方法は、工程が簡便であり、作業環境及び得られるナノファイバーの安全性にも問題はないが、前述したとおり特許文献1〜3に記載の方法は、いずれも得られるナノファイバーが水に溶解してしまうことが問題であった。
また、非特許文献1に記載の方法は、不溶化処理後に、使用した溶媒の乾燥が必要である上、特に製造したナノファイバーを医療用途に用いる場合には、溶媒が残留すると、安全上に問題があった。また、ナノファイバーの形状を保ったまま不溶化するためには、高純度の低級アルコールをさらに十分に脱水して純度を高めてから用いる必要があるため、工業的には低級アルコールをこの純度に常時保つことは困難であった。
非特許文献2に記載の方法は、エタノールが充満した環境で高電圧を印加する必要があるため、発火、爆発等の危険があり、安全性に問題があった。また、前述の通り、ナノファイバーの形状を保ったまま不溶化するためには、水分を厳密に除去した環境下でエタノールに暴露する必要があるため、紡糸チャンバー内のエタノールの濃度及び湿度を厳密に制御する必要があり、工業的な応用は困難であった。
そこで、本発明は、不溶化処理を行わずとも水に不溶であるフィブロインナノファイバーを、安全かつ簡便に製造する方法及びその製造方法に用いるエレクトロスピニング用ドープを提供することを目的とする。
本発明者らは鋭意検討を行った結果、フィブロイン水溶液に炭素数2〜8の多価アルコールを加えて得たドープを、エレクトロスピニング法により紡糸する方法により、不溶化処理を行わずとも水に不溶であるナノファイバーが得られることを見出した。
すなわち、本発明は、以下の[1]〜[10]を提供するものである。
[1]フィブロイン、炭素数2〜8の多価アルコール及び水を含有するドープを、エレクトロスピニング法により紡糸する、ナノファイバーの製造方法。
[2]前記ドープが、さらに無機塩を含有する、上記[1]に記載のナノファイバーの製造方法。
[3]前記無機塩が、塩化ナトリウム及び塩化カルシウムからなる群から選ばれる少なくとも1種である、上記[2]に記載のナノファイバーの製造方法。
[4]前記ドープが、さらに水溶性高分子を含有する、上記[1]〜[3]のいずれかに記載のナノファイバーの製造方法。
[5]前記水溶性高分子が、ポリエチレンオキサイド及びポリビニルアルコールからなる群から選ばれる1種以上である、上記[4]に記載のナノファイバーの製造方法。
[6]前記ポリエチレンオキサイドの数平均分子量が、100,000〜700,000である、上記[5]に記載のナノファイバーの製造方法。
[7]前記ドープ中の水溶性高分子とフィブロインとの質量比(水溶性高分子/フィブロイン)が、0.05〜1である、上記[4]〜[6]のいずれかに記載のナノファイバーの製造方法。
[8]前記ドープ中の炭素数2〜8の多価アルコールの容量(mL)とフィブロインの質量(g)との比(炭素数2〜8の多価アルコール(mL)/フィブロイン(g))が、0.25〜1.0である、上記[1]〜[7]のいずれかに記載のナノファイバーの製造方法。
[9]前記炭素数2〜8の多価アルコールが、グリセリンである、上記[1]〜[8]のいずれかに記載のナノファイバーの製造方法。
[10]フィブロイン、炭素数2〜8の多価アルコール及び水を含有するエレクトロスピニング用ドープ。
本発明によると、不溶化処理を行わずとも水に不溶であるフィブロインナノファイバーを、安全かつ簡便に製造する方法及びその製造方法に用いるエレクトロスピニング用ドープを提供することができる。
実施例9で製造したナノファイバーの走査型電子顕微鏡像である。 実施例9で製造したナノファイバーを水に浸漬後、凍結乾燥して得たナノファイバーの走査型電子顕微鏡像である。
[ナノファイバーの製造方法]
本発明の製造方法は、フィブロイン、炭素数2〜8の多価アルコール及び水を含有するドープを、エレクトロスピニング法により紡糸するナノファイバーの製造方法である。
本発明の製造方法により得られるナノファイバーは、フィブロイン及び炭素数2〜8の多価アルコールを含み、低級アルコール等に浸漬する不溶化処理を行わずとも水に不溶である。ここで、本発明において、「水に不溶」なナノファイバーとは、実施例に記載の方法に従ってエレクトロスピニング法によって紡糸した4cm角に切削したナノファイバーの堆積物を超純水中に1時間浸漬した後、目視観察によって溶解した様子が確認できないナノファイバーのことをいう。
また、本発明の製造方法に用いる炭素数2〜8の多価アルコールは、沸点が180℃以上、引火点が90℃以上と高いため、作業工程上で引火、爆発等が発生する危険が、上記したエタノール雰囲気下で紡糸する方法よりも格段に低く、安全性に優れている。
また、本発明の製造方法で得られるナノファイバーは、炭素数2〜8の多価アルコールを含むことで、保湿性及び質感が良好となる傾向があり、例えば、創傷被覆材、スキンケアシート等に好適である。
さらに、本発明の製造方法に用いるドープが含有する物質は、安全性の高いものを用いることができるため、本発明の製造方法によると、安全性の高いナノファイバーを得ることができる。具体的には、必須成分であるフィブロインは、外科手術において縫合糸としても使用される安全性の高い素材であり、炭素数2〜8の多価アルコールも食品、医薬品、化粧品等に使用される安全性の高い素材を選択することができる。
<ドープ>
本発明の製造方法に用いるドープは、フィブロイン、炭素数2〜8の多価アルコール及び水を含有する溶液である。
以下、本発明の製造方法に用いるドープが含有する各成分について説明する。
(フィブロイン)
本発明の製造方法に用いるフィブロインとしては、例えば、家蚕、野蚕、天蚕等の天然蚕、トランスジェニック蚕等から産生されるシルクフィブロインなどが挙げられ、その製造方法に特に制限はない。これらの中でも、大量調達が可能であることから、家蚕の繭から産生されたものが好ましい。
フィブロインは、前述の繭を精練し、セリシンを除去することで得られる。
本発明の製造方法に用いるドープを調製するために、フィブロインを水に溶解させ、フィブロイン水溶液を調製することが好ましい。
フィブロイン水溶液を得る方法としては、公知のいかなる方法を用いてもよい。例えば、フィブロインを、臭化リチウム水溶液、硝酸カルシウム水溶液、塩化カルシウムの水/エタノール混合溶液等の中性塩溶液に溶解した溶液を透析膜に入れ、水中で透析により脱塩することでフィブロイン水溶液を得る方法、蚕の絹糸腺に蓄積されたフィブロイン水溶液をそのまま使用する方法などが挙げられる。これらの中でも、前者の方法、つまりフィブロインを中性塩溶液に溶解した溶液を透析膜に入れ、水中で透析により脱塩する方法が、大量のフィブロイン水溶液を製造可能であるため好ましい。また、フィブロインを中性塩溶液に溶解する方法としては、例えば、塩化カルシウムの水/エタノール混合溶液を用いて50〜95℃の温度で加熱溶解する方法が、中性塩残留時の安全性の観点からより好ましい。
本発明の製造方法に用いるフィブロインの分子量は、ドープが良好なジェットとなり、水に不溶なナノファイバーが得られる条件であれば特に制限はなく、エレクトロスピニングの条件に合わせて適宜選択すればよい。例えば、タンパク質換算分子量が、100,000〜1,000,000、好ましくは200,000〜700,000、より好ましくは300,000〜500,000のフィブロインを含むドープを用いることにより、良好な紡糸性が得られる。
本明細書において、タンパク質換算分子量とは、高速液体クロマトグラフ(HPLC)を用いて得られる評価試料のクロマトグラムにおけるピークトップを、分子量マーカーとしてグルタミン酸脱水素酵素(分子量:290,000)、豚心筋乳酸脱水素酵素(分子量:142,000)、酵母エノラーゼ(分子量:67,000)を使用して作成した較正曲線を用いて、タンパク質の分子量に換算した分子量を意味し、実施例に記載の方法により測定することができる。
本発明の製造方法に用いるドープ中におけるフィブロインの濃度(ドープの体積を基準とするフィブロインの質量(mass)/体積(volume)パーセント濃度を意味し、単位を「%(m/v)」と表す)は、3〜30%(m/v)であることが好ましく、5〜20%(m/v)であることがより好ましく、7〜15%(m/v)であることがさらに好ましい。フィブロインの濃度をこの範囲に設定することで、ドープが短時間でゲル化することを抑制できると共に、ドープをナノファイバーの紡糸に適した粘度とすることができるため、ナノファイバーが得られやすくなる。
特に、ドープが水溶性高分子を含有する場合は、ドープ中におけるフィブロインの濃度は、3〜20%(m/v)が好ましく、4〜20%(m/v)がより好ましく、5〜15%(m/v)がさらに好ましい。ドープが水溶性高分子を含有する場合に、ドープ中のフィブロインの濃度をこの範囲に設定することで、ドープが短時間でゲル化することを抑制でき、後述する水溶性高分子の効果を十分に発現させながら、生産性(単位時間あたりに製造可能なナノファイバーの量)も一定量確保できる。
ドープ中におけるフィブロインの濃度調整が必要な場合には、風乾により濃縮してもよく、水を加えて希釈してもよい。
(炭素数2〜8の多価アルコール)
本発明の製造方法に用いるドープは、炭素数2〜8の多価アルコール(以下、単に「多価アルコール」ともいう)を含有する。
多価アルコールの炭素数は、経済性、生産性、安全性及び得られるナノファイバーの質感の観点から、2〜8であり、2〜5が好ましく、2〜4がより好ましい。
炭素数2〜8の多価アルコールとしては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ブチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,8−オクタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、シクロヘキサンジオール等のジオール;グリセリン、ペンタエリスリトール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ソルビトール、マンニトール等の3価以上の多価アルコールなどが挙げられる。3価以上の多価アルコールとしては、特に、3価のアルコールが好ましい。これらの中でも、3価のアルコールが好ましく、食品、医薬品、化粧品等に使用される安全性の高い素材であり、得られるナノファイバーの質感が優れる観点から、グリセリンが好ましい。
グリセリンの種類に特に制限はなく、植物性のもの、動物性のもの等が使用可能である。
多価アルコールの沸点に特に制限はないが、経済性、生産性及び安全性の観点から、150℃以上であることが好ましく、200℃以上であることがより好ましく、250℃以上であることがさらに好ましい。多価アルコールの沸点の上限は、高いほど好ましいが、入手容易性の観点からは、400℃以下であることが好ましく、350℃以下であることがより好ましく、300℃以下であることがさらに好ましい。
また、多価アルコールの引火点に特に制限はないが、経済性、生産性及び安全性の観点から、100℃以上であることが好ましく、130℃以上であることがより好ましく、150℃以上であることがさらに好ましい。多価アルコールの引火点の上限は、高いほど好ましいが、入手容易性の観点からは、250℃以下であることが好ましく、220℃以下であることがより好ましく、200℃以下であることがさらに好ましい。
多価アルコールの含有量は、ドープ中のフィブロインの質量(g)を1とした場合における多価アルコールの体積(mL)(多価アルコール(mL)/フィブロイン(g))が、0.25〜1.0となる量であることが好ましく、0.3〜0.8となる量であることがより好ましく、0.3〜0.6となる量であることがさらに好ましい。多価アルコール(mL)/フィブロイン(g)が0.25以上であると、ナノファイバーを十分に不溶化することができ、1.0以下であると、良好なジェットを得ることができると共に、過剰に存在する多価アルコールが電極へ付着すること等を防止することができる。
本発明の製造方法に用いるドープは、前述した比率でフィブロイン水溶液、多価アルコール及び水を混合することで簡便に作製することができる。
ドープに含まれる水の量に特に制限はなく、ドープ中に含まれる他の成分の比率を考慮して調整することができる。
このドープには、さらに水溶性高分子及び無機塩からなる群から選ばれる少なくとも1種を添加してもよい。これらを加えることで、ドープの導電性、表面張力、粘度等を調整可能なため、ナノファイバーの生産性が向上すると共に、ナノファイバーの形状の調節を容易にすることができる。
(水溶性高分子)
水溶性高分子としては、特に限定されないが、例えば、医薬品にも使用される、ポリエチレンオキサイド(以下、「PEO」ともいう)、ポリビニルアルコール(以下、「PVA」ともいう)、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリエチレングリコール及びゼラチンからなる群から選ばれる少なくとも1種が好ましく挙げられ、これらの中でも、ポリエチレンオキサイド及びポリビニルアルコールからなる群から選ばれる1種以上であることがより好ましく、ポリエチレンオキサイドであることがさらに好ましい。これらの水溶性高分子を用いることにより、ナノファイバーの安全性を損なうことなく生産性を向上させることができる共に、ナノファイバーの形状を容易に調節することができる。
ここで、水溶性高分子とは、25℃において、高分子0.5gを100gの水に溶解した際に、不溶分が0.5質量%未満の高分子をいう。
水溶性高分子の分子量及び含有量は、ドープが良好なジェットとなり、水に不溶なナノファイバーが得られる条件であれば特に制限はなく、エレクトロスピニングの方式(ノズル式、シリンダー式、ワイヤー式等)、電極の形状、印加電圧、目的とするナノファイバーの形状及び繊維径などによって好ましいドープの特性(粘度、導電性等)が異なるため、目的に応じて適宜選択すればよい。
水溶性高分子の分子量は、上記のとおり目的に応じて適宜選択すればよいが、ナノファイバーの生産性を向上する観点及びナノファイバーの形状を容易に調節する観点からは、数平均分子量が、10,000〜800,000であることが好ましく、30,000〜800,000であることがより好ましく、50,000〜600,000であることがさらに好ましい。
特に、水溶性高分子としてポリエチレンオキサイドを用いる場合、ポリエチレンオキサイドの分子量は、例えば、ポリエチレンオキサイドの含有量を最小化したい場合には、数平均分子量が、100,000〜700,000であることが好ましく、300,000〜600,000であることがより好ましい。この範囲の分子量のポリエチレンオキサイドを使用することで、より少ない含有量でナノファイバーの生産性を高めることができる。
水溶性高分子としてポリビニルアルコールを用いる場合、ポリビニルアルコールの分子量は、ナノファイバーの生産性を向上する観点及びナノファイバーの形状を容易に調節する観点から、数平均分子量が、10,000〜500,000であることが好ましく、30,000〜100,000であることがより好ましい。
なお、数平均分子量は、水系移動層を用いたゲル浸透クロマトグラフィー(GFC)を用いて標準ポリエチレンオキシドの検量線を使用して換算することによって求めることができる。
ドープが水溶性高分子を含有する場合、水溶性高分子の含有量は、上記のとおり目的に応じて適宜選択すればよいが、ナノファイバーの生産性を向上する観点及びナノファイバーの形状を容易に調節する観点からは、ドープ中の水溶性高分子とフィブロインとの質量比(水溶性高分子/フィブロイン)が、0.05〜1であることが好ましく、0.06〜0.5であることがより好ましく、0.07〜0.3であることがさらに好ましい。ドープ中の水溶性高分子とフィブロインとの質量比(水溶性高分子/フィブロイン)が前記範囲内であると、フィブロインが有する安全性、細胞培養時の分化の誘導等の特徴を最大限発揮する必要のある用途に好適なナノファイバーを得ることができる。
水溶性高分子は、ドープに直接添加してもよく、水溶液としてから添加してもよい。ここで、固形の水溶性高分子を水に溶解する際、ドープを激しく攪拌する必要がある。その際にフィブロインが析出することを抑制する観点から、水溶性高分子は、水溶液としてからドープに添加することが好ましい。
(無機塩)
本発明の製造方法に用いるドープが含有する無機塩の種類としては、特に制限はないが、安全性及び価格の観点から、アルカリ金属塩及びアルカリ土類金属塩からなる群から選ばれる少なくとも1種が好ましく、塩化ナトリウム及び塩化カルシウムからなる群から選ばれる少なくとも1種であることがより好ましく、食品及び医薬品としても使用される塩化ナトリウムであることがさらに好ましい。
これらの無機塩を用いることにより、ナノファイバーの安全性を損なうことなく、ナノファイバーの生産性が向上すると共に、ナノファイバーの形状を容易に調節することができる。
ドープが無機塩を含有する場合、無機塩の含有量は、ドープが良好なジェットとなり、水に不溶なナノファイバーが得られる条件であれば、特に制限はない。前述のとおり、好ましいドープの特性は、エレクトロスピニングの条件、目的とするナノファイバーの形状及び繊維径等によって異なるため、目的に応じて適宜選択すればよい。
例えば、ドープが良好なジェットとなり、水に不溶なナノファイバーが得られやすい観点からは、ドープ中の無機塩とフィブロインとの質量比(無機塩/フィブロイン)が、0.001〜0.05であることが好ましく、0.002〜0.03であることがより好ましく、0.003〜0.01であることがさらに好ましい。
<エレクトロスピニングの条件>
本発明の製造方法は、前記ドープをエレクトロスピニング法により紡糸することで、水に不溶なナノファイバーを簡便に得ることができる。
エレクトロスピニング法は、電気の力を利用した繊維化方法として公知の方法であり、ドープに高電圧を印加することにより、ドープを電極に向かって噴出させ、噴出によって溶媒が蒸発し、簡便に極細のナノファイバーを得ることができる方法である。エレクトロスピニング法は、多種多様な材料が適用でき、繊維形状のコントロールも容易である。
本発明の製造方法で用いるエレクトロスピニング装置に特に制限はなく、公知の装置を利用することができる。例えば、エレクトロスピニング装置の方式としては、電極等の構造が異なる、ノズル式、ワイヤー式、シリンダー式等が挙げられるが、いずれの方式を用いても、前記ドープを用いることにより、水に不溶なナノファイバーが得られる。
ただし、ドープが水溶性高分子を含有しない場合は、紡糸可能な条件の幅を広くする観点から、ノズル式のエレクトロスピニング装置を用いることが好ましい。
ノズル式のエレクトロスピニング装置とは、シリンジに充填したドープを一定速度で吐出させると同時に、シリンジに充填したドープとアースされた陰極板(コレクター)との間に高電圧を印加することで、シリンジのノズル先端からドープ溶液がジェットとなり噴射され、陰極板上にナノファイバーを堆積させる装置である。
ドープの組成は、前記各方式に適した、粘度、濃度、導電性、表面張力等になるように適宜調整すればよい。
ドープの粘度としては、特に制限はなく、目的とするナノファイバーの繊維径等に応じて適宜調整すればよいが、例えば、10〜1,000mPa・sが好ましい。ドープの粘度が10mPa・s以上であると、ドープの流量制御が容易となり、1,000mPa・s以下であると、ナノファイバーの生産性に優れると共に、細い繊維が得られやすくなる。
本発明の製造方法において、ドープの組成以外にも得られるナノファイバーの形状及び紡糸の可否に影響するファクターとしては、エレクトロスピニング装置の電極間距離、装置内湿度、印加電圧等がある。
エレクトロスピニング装置の電極間距離は、吐出したドープが良好なジェットとなり、水に不溶なナノファイバーが得られる条件であれば特に制限はないが、例えば、10〜25cmである。
エレクトロスピニング装置の装置内湿度は、吐出したドープが良好なジェットとなり、水に不溶なナノファイバーが得られる条件であれば特に制限はないが、例えば、40%以下であることが好ましく、35%以下であることがより好ましく、30%以下であることがさらに好ましい。装置内湿度を、前記範囲内に調節することにより、ドープがコレクターに到達するまでの間に乾燥が十分に進み、コレクター上の堆積物がフィルム状になったり、液状になったりすることを抑制することができる。
エレクトロスピニング装置の印加電圧は、吐出したドープが良好なジェットとなり、水に不溶なナノファイバーが得られる条件であれば特に制限はなく、装置、電極形状等に応じて適宜選択すればよいが、例えば、10〜30kVの範囲で選択することができる。
前述のとおり、形成されたナノファイバーは、エレクトロスピニング装置のコレクターに集積されるが、コレクターにナノファイバーが付着し、剥がれ難くなる場合がある。この場合、必要に応じてコレクター上又はコレクターよりも陽極よりに、基材シート等を設置して、該基材シート上にナノファイバーを堆積させてもよい。
基材シートの素材及び形状に特に制限はないが、例えば、あまりにも導電性に乏しく、分厚い基材シートを用いると、ジェットが歪む等の不都合が生じ得るため、ある程度の導電性を有するものを使用することが好ましい。また、基材シートからナノファイバーを剥離して用いる場合には、剥離のしやすさから、平滑な構造の基材シートを用いることが好ましい。例えば、アルミホイルを、基材シートとして好適に使用することができる。
本発明の製造方法により得られるナノファイバーは、エレクトロスピニングに用いたドープが含有する物質を含有してなるものである。
すなわち、フィブロインと多価アルコールとを含有するドープを用いる場合には、フィブロインと多価アルコールとを含有してなるナノファイバーが得られる。
同様に、フィブロインと多価アルコールと水溶性高分子とを含有するドープを用いる場合には、フィブロインと多価アルコールと水溶性高分子とを含有してなるナノファイバーが得られる。
同様に、フィブロインと多価アルコールと無機塩とを含有するドープを用いる場合には、フィブロインと多価アルコールと無機塩とを含有してなるナノファイバーが得られる。
同様に、フィブロインと多価アルコールと水溶性高分子と無機塩とを含有するドープを用いる場合には、フィブロインと多価アルコールと水溶性高分子と無機塩とを含有してなるナノファイバーが得られる。
また、本発明の製造方法で得られたナノファイバー中に含まれる、多価アルコール、水溶性高分子、無機塩等の除去が必要な場合には、ナノファイバーを水洗することで適宜除去することができる。
本発明の製造方法により得られるナノファイバーの平均繊維径は、特に制限はなく、ナノファイバーの用途に応じて適宜調整すればよいが、例えば、10〜900nmであってもよく、50〜700nmであってもよく、200〜600nmであってもよい。
ナノファイバーの平均繊維径は、電子顕微鏡(5000倍)を用いて、任意の箇所に存在するナノファイバー20本の繊維の幅(直径)を測定し、得られた各測定結果の値を平均することで測定することができる。
以下に、本発明を実施例によりさらに具体的に説明するが、本発明は、これらの実施例によってなんら限定されるものではない。
[評価方法及び分析方法]
(1)紡糸可否
実施例及び比較例で得られたナノファイバーについて、走査型電子顕微鏡(SEM)による観察を行い、下記の基準で判定した。
○:繊維径1,000nm以下の繊維が観察された。
×:繊維は見られなかった。
(2)不溶化可否
4cm角に切削したナノファイバーの堆積物を超純水中に1時間浸漬した後、目視観察し、下記の基準で判定を行った。
○:溶解は見られなかった。
×:完全に溶解した。
(3)ナノファイバーの定性分析
実施例及び比較例で得られたナノファイバーについて、以下の方法により定性分析を行った。
<フィブロインの分析>
ナノファイバーをクロロホルムで抽出し、抽出液と抽出残渣を得た。次に、得られた抽出残渣をVarian社製のフーリエ変換型赤外分光光度計「3100FT−IR」を用いてATR法で分析した。抽出残渣のIRスペクトルが高圧精練済み切繭(ながすな繭株式会社製)のIRスペクトルと同様のパターンを示した場合をフィブロインが含まれていると判定し、そうでない場合をフィブロインが含まれないと判定した。
<グリセリン及びPEOの分析>
ナノファイバーをクロロホルムで抽出し、抽出液と抽出残渣を得た。次に、得られた抽出液を用いて下記構成及び条件でダブルショット熱分解ガスクロマトグラフ質量分析(GC/MS分析)を行った。280℃の熱抽出ガスクロマトグラムからグリセリンのピークが確認された場合をグリセリンが含まれていると判定し、そうでない場合をグリセリンが含まれていないと判定した。
また、590℃の熱分解GC/MSのクロマトグラムからPEOのピークが確認された場合をPEOが含まれていると判定し、そうでない場合をPEOが含まれていないと判定した。グリセリン及びPEOのピーク位置は、それぞれドープに添加したグリセリン及びPEOのクロロホルム溶液を用いて測定したピーク位置を使用した。
・熱分解装置:EGA/PY−3030D(フロンティアラボ株式会社製)
・熱抽出条件:280℃
・熱分解条件:590℃
・分析装置:GC/MS 5973N MSD
(Agilent Technologies社製)
・カラム:HP−5MS 5%Phenyl−95%Metylpolysiloxane(0.25mm I.D.×30mm,・0.25μm)
・オーブン温度:40℃で5min保持した後、15℃/minで320℃に昇温
・イオン化法:EI法
・質量範囲:m/z29〜800
・カラム流量:He 1.0mL/min
<塩化ナトリウムの分析>
ナノファイバーをオックスフォード・インスツルメンツ株式会社製のエネルギー分散型X線装置「INCA Energy350」を用いて分析した。ナトリウムイオン、塩化物イオンが検出され、他のカウンターイオンが検出されなかった場合に塩化ナトリウムが含まれていると判定した。反対に、ナトリウムイオン及び塩化物イオンが未検出だった場合に塩化ナトリウムが含まれないと判定した。
なお、製造例及び実施例で使用した試薬等は、表1に記載の通りである。
[フィブロイン水溶液の調製]
製造例1
フィブロイン水溶液を調製するために、まず、高圧精練済み切繭(ながすな繭株式会社製)60gを塩化カルシウムの水/エタノール混合溶液(塩化カルシウム:水:エタノール=1:8:2(モル比))400mLに投入し、80℃で加熱しながら1時間攪拌して溶解した。次いで、遠心分離(回転速度:12,000min−1、5分間)して、デカンテーションで沈殿物を除去した後、透析チューブ(Spectra/Por(登録商標)1 Dialysis Membrane、MWCO6,000−8,000、Spectrum Laboratories,Inc.社製)に注入し、超純水製造装置(PRO−0500及びFPC−0500(型番)、オルガノ株式会社製)から採水した超純水5Lに対して12時間の透析を5回繰り返し、フィブロイン水溶液を得た。
得られたフィブロイン水溶液2mLをポリスチレン製容器に分取し、秤量した後、庫内温度をあらかじめ−20℃程度に調整しておいたノンフロン冷蔵冷凍庫(「R−Y370(型番)」、株式会社日立製作所製)の冷凍室で12時間かけて凍結し、凍結乾燥機(「FDU−1200(型番)」、東京理化器械株式会社製)中で7時間凍結乾燥した。得られた乾燥物を凍結乾燥機から取り出して30秒以内に秤量し、質量減少からフィブロイン水溶液中のフィブロイン濃度(%(m/v))を定量した。また、以下の方法で調製した移動層を用いてHPLCでフィブロイン水溶液中のフィブロインのタンパク質換算分子量を測定した。
(移動相の調製)
ガラスビーカーに超純水を700mL入れ、そこに硫酸ナトリウム(無水物、和光純薬工業株式会社製、試薬特級)14.2gと尿素(和光純薬工業株式会社製、試薬特級)120.1gを加えて得た溶液をビーカーごと超音波洗浄機に漬けて超音波処理し、硫酸ナトリウムと尿素を実質的に完全に溶解させた。この溶液に、さらにリン酸緩衝剤粉末(1.15mol/L、pH7.0、和光純薬工業株式会社製、生化学用)20gを加え、再度超音波処理をして溶解した。次いで、溶解後の溶液をメスフラスコに移し、1Lにメスアップした後に攪拌して均一な溶液とした。この溶液を分子量測定に使用する移動相とした。
(フィブロインのタンパク質換算分子量の測定)
上記で得たフィブロイン水溶液にフィブロイン濃度が10g/Lになるよう超純水を加えて混合し、続いてそこに移動相を加えて5倍に希釈し、得られた溶液を0.45μmのフィルター(東洋濾紙株式会社製、商品名:25HP045AN)に通してろ過し、クロマトグラフ評価試料とした。
測定には高速液体クロマトグラフ(HPLC)本体(株式会社日立ハイテクノロジーズ製、商品名:Chromaster(登録商標))、とそのオプションであるUV検出器(株式会社日立ハイテクノロジーズ製、型番:5410)、ポンプ(株式会社日立ハイテクノロジーズ製、型番:5110)、オートサンプラ(株式会社日立ハイテクノロジーズ製、型番:5210)、カラムオーブン(株式会社日立ハイテクノロジーズ製、型番:5310)に加え、カラム(昭和電工株式会社製、商品名:SHODEX(登録商標) PROTEIN KW−804)を組み合わせたHPLC装置を使用した。測定条件は移動相流量0.5mL/sec、カラム温度30℃、検出波長UV220nmとした。
得られたクロマトグラムをタンパク質分子量に換算するための較正曲線の作成には、分子量マーカーとしてHPLC用分子量マーカータンパク質である酵母由来グルタミン酸脱水素酵素(分子量:290,000、OrientalYeast Co., Ltd.製、商品名:MW−Marker(HPLC))、豚心筋由来乳酸脱水素酵素(分子量:142,000、Oriental Yeast Co., Ltd.製、商品名:MW−Marker(HPLC))、酵母由来エノラーゼ(分子量:67,000、OrientalYeast Co., Ltd.製、商品名:MW−Marker(HPLC))を使用した。
HPLC装置に移動相を1時間流しベースラインが安定するのを待った。ベースライン安定後に、各分子量マーカーが水溶液中でそれぞれ0.05質量%となるように溶解した分子量マーカー水溶液を22μL注入して、得られるクロマトグラムのピークトップと分子量マーカーの分子量から較正曲線を作成した。次いで、クロマトグラフ評価試料を22μL注入して得られるクロマトグラムのピークトップの位置から較正曲線を使用してフィブロインのタンパク質換算分子量を測定した。
その結果、フィブロイン水溶液のタンパク質換算分子量は386,000であった。
[水溶性高分子水溶液の調製]
製造例2
表2に示す水溶性高分子100gを、超純水1Lに激しく攪拌しながら加え、実質的に完全に溶解させて、各水溶性高分子水溶液を調製した。
[ナノファイバーの製造]
実施例1
(1)ドープの調製
製造例1で得たフィブロイン水溶液に、水及びグリセリンを加え、22℃で3分間、スターラーにより撹拌し、ドープの調製を行った。ここで、ドープ中のフィブロイン濃度は10%(m/v)、グリセリン濃度は4%(v/v)(グリセリン(mL)/フィブロイン(g)比=0.4)とした。
(2)エレクトロスピニング法による紡糸
上記で得たドープをプラスチックシリンジに充填し、プラスチックシリンジの先端にノズルを取り付けた。次に、ノズルを取り付けたシリンジをエレクトロスピニング装置にセットし、陰極板(アースされた金属板)には基材シートであるアルミホイルを貼付し、以下に示す条件でエレクトロスピニング法により紡糸を行い、ナノファイバーを製造した。エレクトロスピニング装置及びその使用条件は以下のとおりである。
・エレクトロスピニング装置:MECC Co. Ltd.製「NANON−3」
・ノズル:テルモ株式会社製、ノンベベル針18G
・ドープ吐出速度:1mL/h
・電極間距離:18cm
・印加電圧:20kV
なお、実施例1で使用したエレクトロスピニング装置は、装置がシリンジのプランジャー部を押してドープを一定速度で吐出させると同時にノズル内のドープとアースされた陰極板の間に高電圧を印加することで、ドープがジェットとして噴射され、陰極板上にナノファイバーが堆積するという仕組みを有するものである。
上記で得られたナノファイバーをアルミホイルから剥離し、ナノファイバーの紡糸可否と不溶化可否を前述の方法で評価した。結果を表2に示す。
実施例2〜15
実施例1において、ドープの組成及びエレクトロスピニングの条件を表2に記載のものとした以外は実施例1と同様にしてナノファイバーの製造を行った。得られたナノファイバーの評価結果を表2に示す。
なお、実施例15では、ワイヤー式のエレクトロスピニング装置として、ELMARCO s.r.o.社製「NS プロダクションライン NS 1WS500U」を使用した。
ワイヤー式のエレクトロスピニング装置は、ドープを充填したタンクを装着したキャリッジと呼ばれる稼動部が、紡糸チャンバー下部に設置された陽極ワイヤーにドープを塗りつけると同時に、高電圧を印加することで、紡糸チャンバー下部に設置された陽極ワイヤーから紡糸チャンバー上部に設置された陰極ワイヤーに向けてドープのジェットが噴出されるという仕組みである。基材シートであるアルミホイルを陰極ワイヤーの下部に設置することで、アルミホイル上にナノファイバーを堆積させることができる。
比較例1〜3
実施例1において、ドープの組成及びエレクトロスピニングの条件を表2に記載のものとした以外は、実施例1と同様にしてナノファイバーの製造を行った。得られたナノファイバーの評価結果を表2に示す。
実施例1〜15より、ドープがグリセリンを含有することで、いずれのドープ組成においても、安全かつ簡易にナノファイバーが得られ、得られたナノファイバーは水に不溶であることが分かった。
一方、比較例1〜3から、グリセリンを添加しない場合にはナノファイバーが不溶化しないことが分かった。
[ナノファイバーの観察]
実施例9で製造したナノファイバーを走査型電子顕微鏡(SEM)で観察した。走査型電子顕微鏡は、日本電子株式会社製の「Neo Scope JCM−5000」を使用し、高真空Pt蒸着モード、加速電圧10kVの条件で観察した。結果を図1に示す。
図1から、実施例9では繊維径150〜800nm(平均繊維径:294nm)のナノファイバーが得られることが分かった。
次いで、実施例9で製造したナノファイバーを24℃の超純水中に1時間浸漬した後に、凍結乾燥したナノファイバーについて、上記と同様の条件でSEMによる観察を行った。結果を図2に示す。
図2から、実施例9で製造したナノファイバーは水に浸漬後も図1と同様の構造を保っており、水に不溶であることが分かった。
図1及び図2の結果から、本発明の製造方法により得られたフィブロインとグリセリンを含むナノファイバーは、ナノオーダーの繊維径を有する繊維であり、かつ水に不溶であることが分かった。
[ナノファイバーの定性分析]
次に、実施例1、6、9及び10で製造したナノファイバーについて、前述の方法により、定性分析を行った。結果を表3に示す。
なお、表3において、各実施例で用いたドープ中に含まれる成分及び各実施例で得られたナノファイバー中に含まれる成分を○、含まれない成分を×として記入した。ただし、ドープに添加しなかった成分については、定性分析を行わず、ナノファイバーにも含まれないものとした。
表3の結果から、本発明の製造方法により得られるナノファイバーはエレクトロスピニングで用いたドープが含有する物質を含むことが分かった。
本発明の製造方法で得られるナノファイバーは、水に不溶であり、生体親和性に優れ、微細な構造で表面積が大きいなどの特徴を活かし、創傷被覆材、再生医療用足場材料等として好適に使用することができる。また、ナノファイバーの表面積の大きさとフィブロインの特異な吸着能を活かした吸着材、ナノファイバーのファイバー間の微細な空孔を活かしたフィルター及び分離膜、質感の良さを活かしたスキンケアシートなどへの応用も期待される。

Claims (10)

  1. フィブロイン、炭素数2〜8の多価アルコール及び水を含有するドープを、エレクトロスピニング法により紡糸する、ナノファイバーの製造方法。
  2. 前記ドープが、さらに無機塩を含有する、請求項1に記載のナノファイバーの製造方法。
  3. 前記無機塩が、塩化ナトリウム及び塩化カルシウムからなる群から選ばれる少なくとも1種である、請求項2に記載のナノファイバーの製造方法。
  4. 前記ドープが、さらに水溶性高分子を含有する、請求項1〜3のいずれか1項に記載のナノファイバーの製造方法。
  5. 前記水溶性高分子が、ポリエチレンオキサイド及びポリビニルアルコールからなる群から選ばれる1種以上である、請求項4に記載のナノファイバーの製造方法。
  6. 前記ポリエチレンオキサイドの数平均分子量が、100,000〜700,000である、請求項5に記載のナノファイバーの製造方法。
  7. 前記ドープ中の水溶性高分子とフィブロインとの質量比(水溶性高分子/フィブロイン)が、0.05〜1である、請求項4〜6のいずれか1項に記載のナノファイバーの製造方法。
  8. 前記ドープ中の炭素数2〜8の多価アルコールの容量(mL)とフィブロインの質量(g)との比(炭素数2〜8の多価アルコール(mL)/フィブロイン(g))が、0.25〜1.0である、請求項1〜7のいずれか1項に記載のナノファイバーの製造方法。
  9. 前記炭素数2〜8の多価アルコールが、グリセリンである、請求項1〜8のいずれか1項に記載のナノファイバーの製造方法。
  10. フィブロイン、炭素数2〜8の多価アルコール及び水を含有するエレクトロスピニング用ドープ。
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