JP6528012B1 - 近距離無線通信機能を備えた筆記具 - Google Patents

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Abstract

【課題】高級感があり且つ安全性の高い、近距離無線通信機能を備えた筆記具を提供する。【解決手段】筆記具1は、非電源で近距離無線通信が可能な筆記具であり、金属から構成される軸筒9(後軸4)と、後軸4内に収納される基板ユニット10と、を備える。基板ユニット10は、基板11と、基板11上に実装されるICチップ12と、近距離無線通信を行うためのアンテナ13とを有する。アンテナ13は、ICチップ12に接続され、基板11上において巻き回されるようにその上に実装される。軸筒9の後軸4には、基板11に面する領域の少なくとも一部に切欠き4aが形成され、切欠き4aに樹脂から成る窓部8が設けられる。【選択図】図3

Description

本発明は、近距離無線通信機能を備えた筆記具に関する。
特許文献1では、近距離無線通信機能を備えた筆記具の一例が提案されている。この筆記具では、軸筒の後端から突出する複数の支柱の間に無線機を保持させ、またアンテナ線を軸筒等に埋設したり又は巻き付けたりしてアンテナ機能を付与し、これにより、近距離無線通信機能を備えた筆記具を構成している。
特開2017−154271号公報
ボールペン等の筆記具では、商品としての高級感を醸し出すため、軸筒等の外観部品を金属で構成することがある。しかしながら、そのような構成の筆記具に近距離無線通信機能を搭載しようとすると、金属によって通信が遮断されてしまうことから通信アンテナ等を軸筒内に配置することが困難である。一方、特許文献1のように無線機等を軸筒の外(後端)に取り付ける構成とすると、識別情報や電子マネー用の金銭情報などが格納されたICチップを含む無線機等が容易に取り外されてしまったり又は紛失してしまったりする虞がある。
本発明は、上述した課題を解決するために為されたものであり、高級感があり且つ安全性の高い、近距離無線通信機能を備えた筆記具を提供することを目的とする。
本発明に係る筆記具は、近距離無線通信が可能な筆記具であって、金属から構成される軸筒と、軸筒内に収納される近距離無線通信用基板ユニットと、を備える。近距離無線通信用基板ユニットは、基板と、基板上に実装されるICチップと、近距離無線通信を行うためのアンテナとを有する。アンテナは、ICチップに接続され、基板上において巻き回されるようにその上に実装される。この筆記具では、軸筒には、基板に面する領域の少なくとも一部に切欠きが形成され、当該切欠きに樹脂から成る窓部が設けられる。
この筆記具では、軸筒を金属から構成すると共に、その軸筒内に、ICチップとアンテナとが基板上に実装された近距離無線通信用基板ユニットを収納するようにしている。この場合、軸筒を金属から構成することで商品としての高級感を醸し出すことができ、また軸筒内にICチップを含む近距離無線通信用基板ユニットを収納させることから、ICチップ等を筆記具から容易に取り外すことも防止できる。しかも、この金属製の軸筒では、基板に面する領域の少なくとも一部に切欠きを形成し、その切欠きに樹脂から成る窓部を設けており、これにより、近距離無線通信用基板ユニットでの外部通信を可能としている。従って、上記構成によれば、高級感があり且つ安全性の高い、近距離無線通信機能を備えた筆記具を実現することが可能となる。なお、軸筒を金属製とすることにより、筆記具としての丈夫さ(強度)を向上させることも可能となる。また、この筆記具では、近距離無線通信用基板ユニットを用いているため、当該筆記具の製造を簡素化することも可能である。
上記の筆記具において、基板上に実装されたアンテナは、基板の両縁を結ぶ線に対して直交する方向において、軸筒の窓部の縁に重なる、又は、軸筒の窓部の外側に位置してもよい。この場合、外部のリーダ/ライター装置からの磁界等を近距離無線通信用基板ユニットのアンテナの内側領域により確実に通せるため、当該アンテナ等による無線通信をより確実に実現させることができる。
上記の筆記具において、基板上で巻き回されたアンテナの内側領域は、基板の両縁を結ぶ線に対して直交する方向において、窓部に重なることが好ましい。この場合、外部のリーダ/ライター装置からの磁界等を近距離無線通信用基板ユニットのアンテナの内側領域により確実に通せるため、当該アンテナ等による無線通信をより確実に実現させることができる。
上記の筆記具は、軸筒に取り付けられたクリップを更に備えてもよい。このクリップは、その平面方向の内側に空間を有するように形成され、この空間は、基板の両縁を結ぶ線に対して直交する方向において、軸筒の窓部及びアンテナの内側領域に重なることが好ましい。この場合、近距離無線通信が可能な筆記具に更にクリップ機能を付与することができる。しかも、クリップが金属等から構成された場合であっても、近距離無線通信用基板ユニットのアンテナによる通信機能を阻害することがなく、安定した通信機能を発揮することが可能となる。
上記の筆記具において、窓部は、基板の一方の面に面する第1の窓部と基板の他方の面に面する第2の窓部とを含むことが好ましい。この場合、近距離無線通信用基板ユニットのアンテナの内側を外部磁界等がより確実に通るため、当該アンテナ等による通信をより一層、安定させることができる。また、上記の構成において、軸筒は、その断面が扁平形状であり、第1及び第2の窓部は、軸筒の扁平形状の長手方向の周面であって互いに対向する周面それぞれに設けられてもよい。この場合も、近距離無線通信用基板ユニットのアンテナの内側を外部磁界等がより確実に通るため、当該アンテナ等による通信をより一層、安定させることができる。
上記の筆記具において、近距離無線通信用基板ユニットは、第1の窓部よりは第2の窓部に近接するように又は接するように軸筒の中心軸を避けて内部空隙に収納されてもよい。この場合、近距離無線通信用基板ユニットを軸筒内に収納する構成であっても筆記具の中芯を一般的な筆記具と略同様な配置とすることができ、より実用性の高い筆記具とすることができる。なお、本構成によれば、ノック式の筆記具に近距離無線通信機能を付与することも容易に実現可能となる。
上記の筆記具において、基板は、短手方向及び長手方向を有する矩形状のフレキシブル基板であり、近距離無線通信用基板ユニットは、基板の短手方向において曲線状に曲げられて軸筒内に収納されてもよい。この場合、近距離無線通信用基板ユニットを曲線状に曲げて収納することにより、軸筒の外径を小さくするといったことが可能となる。つまり、当該ユニットを内蔵することにより大型化されやすい筆記具をスリムな形状として、筆記具としての高級感を更に醸し出すことが可能となる。また、フレキシブル基板を用いていることから、軸筒内に収納する際、基板やアンテナ、ICチップの各種性能に対する曲げの影響を低減することが可能となる。即ち、近距離無線通信用基板ユニットを曲線状に曲げた場合であっても所定の通信機能を確保することができる。
上記の筆記具において、近距離無線通信用基板ユニットは、曲率半径Rが10mm以上となるように緩やかに曲げられて軸筒内に収納されてもよい。この場合、近距離無線通信用基板ユニットにおけるアンテナ機能をできるだけ阻害せずに曲げて小型化を図ることができる。特に近距離無線通信用基板ユニットは、曲率半径Rが15mm以上となるように緩やかに曲げられて軸筒内に収納されるのが好ましい。この場合、筆記具の小型化と通信の安定性をより確実に両立することができる。なお、近距離無線通信用基板ユニットは曲げられない状態で軸筒内に収納されていてもよい。
上記の筆記具において、近距離無線通信用基板ユニットは、基板、ICチップ及びアンテナを全体的に覆う樹脂シートを更に有することが好ましい。この場合、かかる樹脂シートにより、電気的性能を有する基板、ICチップ及びアンテナに対して防水・防滴機能を付与することができる。その結果、近距離無線通信用基板ユニットの通信機能を長期にわたって安定化させることができる。なお、筆記具全体に対して防水・防滴機能を付与することも可能であるが、その場合、筆記具全体の構成がより複雑になりやすく、また経年劣化による防水・防滴機能の一部劣化により水漏れが発生し近距離無線通信用基板ユニットの通信機能を阻害してしまう可能性がある。これに対し、上述した樹脂シートを設けた構成によれば、より効率的に筆記具に防水・防滴機能を付与することができる。
本発明によれば、高級感があり且つ安全性の高い、近距離無線通信機能を備えた筆記具を提供することができる。
図1は、本発明の一実施形態に係る筆記具の一例を示す外観図であり、(a)は上面図であり、(b)は側面図である。 図2は、図1の(a)に示す筆記具のII−II線に沿った縦断面図である。 図3は、図1の(b)に示す筆記具のIII−III線に沿った横断面図である。 図4は、図1に示す筆記具に収納される近距離無線通信用の基板ユニットの一例を示す図であり、(a)は樹脂シートなしの基板ユニットの平面図であり、(b)は樹脂シート付の基板ユニットの平面図であり、(c)は、(b)に示す基板ユニットの断面図である。 図5は、筆記具本体と近距離無線通信用の基板ユニットとの関係を示す図であり、(a)は、比較例を示す模式的な平面図であり、(b)は、本発明の一実施形態を示す模式的な平面図であり、(c)は、本発明の一実施形態を示す模式的な側面図である。 図6は、図1に示す筆記具による近距離無線通信の概要を説明するための模式断面図である。
以下、図面を参照しつつ、本発明に係る、近距離無線通信機能を備える筆記具について説明する。説明において、同一要素又は同一機能を有する要素には、同一符号を用いる場合があり、重複する説明は省略する。
筆記具1は、図1〜図3に示すように、筆記具本体として、略円錐状の先口部材2と、前軸3及び後軸4からなる軸筒9と、後軸4の後端に嵌め込まれる尾栓5と、U字形状のクリップ6と、軸筒9内に収納され前軸3の後軸4に対する相対的な回転により前後方向に出没可能な中芯7と、を備えて構成されている。図1は、本発明の一実施形態に係る筆記具の一例を示す外観図であり、(a)は上面図であり、(b)は側面図である。図2は、図1の(a)に示す筆記具のII−II線に沿った縦断面図である。図3は、図1の(b)に示す筆記具のIII−III線に沿った横断面図である。筆記具1の前軸3及び後軸4は、例えば金属製の軸部から構成されている。また、後軸4の一部には切欠き4aが設けられており、そこに樹脂製の窓部8が設けられている。窓部8を構成する樹脂としては、ポリカーボネート(PC)又はABS樹脂を用いることが好ましい。
また、筆記具1では、図2及び図3に示すように、軸筒9の後軸4の内部空隙4b内に、近距離無線通信機能を有する基板ユニット10(近距離無線通信用基板ユニット)を収納している。筆記具1は、詳細は後述するが、このような基板ユニット10を備えることにより、Felica(登録商標)等の近距離無線通信(NFC)を行うことが可能となっている。筆記具1は、例えば、回転式のボールペンであるが、これに限定されるものではなく、キャップ式やノック式のボールペンであってもよいし、シャープペンシルであってもよい。
筆記具1に収納される基板ユニット10は、図4の(a)に示すように、基板11と、ICチップ12と、アンテナ13と、一対の接続線14と、を有している。基板11は、長手方向X11と短手方向Y11とを有する矩形形状の基板であり、例えば、長手方向X11に沿った長さが23mm〜27mmであり、短手方向Y11に沿った幅が15mm〜19mmである小型の基板である。一例として、基板11は、長さ25mm×幅17mmの矩形基板である。また、基板11は、例えばフレキシブル基板から構成されており、長手方向X11及び短手方向Y11の何れに沿っても曲げることが可能になっている。ICチップ12は、所定の情報を記憶可能なメモリを有し、アンテナ13を介して当該メモリに対して所定の情報の読み書きを実行することができるように構成されている。アンテナ13は、一対の接続線14を介してICチップ12に接続されると共に、ICチップ12の周りをアンテナ線が螺旋状に巻き回す構成になっている。図4の(a)では、説明を容易にするため、アンテナ13を構成するアンテナ線が螺旋状になっている点は省略している。なお、アンテナ13では、アンテナ線は略一周程度巻き回されていればよい。
基板ユニット10では、上述した構成により、外部のリーダ/ライターからの磁力線がアンテナ13の内側を通るようにすることで電磁誘導が起こり、これにより、基板ユニット10内に電流が流れ、ICチップ12が起動する。また、基板ユニット10では、アンテナ13に電流を流すことにより、リーダ/ライターから受けた磁束とは逆向きに磁界を生成し、これにより、所定の情報をリーダ/ライター側に伝達する。基板ユニット10では、このような仕組みにより、非電源の近距離(非接触)無線通信を実現している。なお、基板ユニット10は、非電源の通信ユニットであることが小型化の観点からは好ましいが、筆記具としての使い勝手を損なわない大きさであれば、電源付きの通信ユニットであってもよい。
また、基板ユニット10には、図4の(b)及び(c)に示すように、基板11、ICチップ12及びアンテナ13をその内部に封止して防水・防滴機能を付与する樹脂シート15が設けられていてもよい。樹脂シート15は、上下両面から基板11、ICチップ12及びアンテナ13を全体的に覆い、周縁である縁部15a,15bをヒートシールすることによって、内部に水・水滴等が浸入しないように構成されたものである。樹脂シート15は、例えば、PP合成紙(ユポ紙;商品名)から構成される。図4の(b)では、樹脂シート15の内部に収納される基板11及びICチップ12については点線で示し、アンテナ13についてはその記載を省略している。樹脂シート15を含む基板ユニット10全体の大きさとしては、長手方向X11に沿った長さは27mm〜31mmであり、短手方向に沿った幅は18mm〜22mmである。一例として、樹脂シート15を含む基板ユニット10の大きさは、長さ29mm×幅20mmである。
図2及び図3に戻り、筆記具1の説明を続ける。図2及び図3に示すように、筆記具1では、上述した基板ユニット10が基板11の短手方向Y11において曲線状に緩やかに曲げられて筆記具1の後軸4の内部空隙4b内に収納されている。この際、基板ユニット10は、アンテナ13が存在しない最外周部(樹脂シート15の縁部15a)を更に内側に折り曲げた状態で後軸4の内部空隙4b内に収納される。基板ユニット10では、このように短手方向Y11の両縁部15aが後軸4の内周壁4cに押しつけられた状態で収納されるため、基板ユニット10が横方向にずれない。後軸4の内側に一対のカード止部4dを設け、基板ユニット10がずれないようにしてもよい。基板ユニット10の前後方向については、尾栓5により押さえ付けられて固定される。なお、基板ユニット10は、下方の窓部8に近接するように後軸4の内周壁4cに沿い、後軸4の中心軸を避けて収納されている。この中心軸付近には、例えば尾栓5の軸部などが挿入される。また、基板ユニット10は、下方の窓部8に接するように収納されてもよい。
また、軸筒9(後軸4)は、その断面形状が略楕円形のような扁平形状であり、長手方向X4に沿った長さと短手方向Y4に沿った幅(高さ)が異なっている。基板ユニット10は、基板11の短手方向Y11が後軸4の扁平形状の長手方向X4に略沿うように後軸4内に収納される。後軸4の断面形状が扁平形状である場合、後軸4の軸高さは、その短手方向Y4に沿った高さが15mm以下であることが筆記具の操作性等の観点からは好ましい。
ここで、図5を参照して、基板ユニット10を曲げて軸筒9(後軸4)内に収納することによる筆記具1の細径化について説明する。図5の説明では、基板ユニット10の一例として、長さ29mm×幅20mmの大きさの基板ユニットを用いる。まず、図5の(a)に示すように、基板ユニット10をそのまま曲げずにその長手方向X11が軸筒9aの中心軸方向に沿うように軸筒9a内に収納した場合、軸筒9aの厚み分(2mm)もあることから、軸径(外径)は22mm程度になってしまう。一方、図5の(b)に示すように、基板ユニット10を曲率半径Rが15mmになるように緩やかに曲げて収納すると、通信機能は維持したままで、軸筒9bの軸径(外径)を18.5mm程度まで減少させることができる。つまり、図5の(a)の軸筒9aに比べて、図5の(b)の軸筒9bでは、軸筒の断面積を30%程度減少させて軸筒を細径化し、筆記具としての使い勝手を向上させることができる。
更に、図5の(c)に示すように、本実施形態に係る筆記具1では、軸筒9の断面形状を扁平形状にしてもよい。即ち基板ユニット10が延びる方向(短手方向Y11)においては軸筒9の径はそのままにする一方、基板ユニット10が延びる方向(短手方向Y11と長手方向X11)と直交する方向(図示の上下方向、軸高さともいう)においては軸筒9の径を短くするようにしてもよい。この場合、軸筒9の軸高さを11mm程度(15mm以下)と更に小さくして、軸筒9の断面積を更に小さく(例えば軸筒9bの断面積から約40%小さく)することができる。これにより、筆記具としての使い勝手を更に向上させることができる。
次に、基板ユニット10と後軸4の樹脂製の窓部8及びクリップ6との位置関係について、図2及び図3を参照して説明する。筆記具1では、高級感を醸し出したり又は強度を上げたりするために、前軸3及び後軸4の大部分を金属から構成するようにしている。しかしながら、軸筒9全体を金属から構成した場合、軸筒9の内部に収納されている基板ユニット10(アンテナ13)による通信が遮断されてしまう。そこで、筆記具1では、図2及び図3に示すように、後軸4のうち上下方向において基板ユニット10に略対応する領域、すなわち基板11に面する領域に切欠き4a(図1参照)を設け、そこに樹脂製の窓部8を設けている。筆記具1では、曲げられた基板11の両縁を結ぶ線に直交する方向(図示の上下方向)において、基板ユニット10の両面それぞれに面する窓部8が設けられている。そして、アンテナ13の内側領域は、図示の上下方向において、その大部分がこれら窓部8と重なるようになっている。これにより、窓部8内を磁界が通過可能となり、内部に収納される基板ユニット10のアンテナ13による通信が可能とされる。窓部8は、緩やかに曲げられた基板ユニット10の水平方向の広さに対応する大きさであってもよいが、通信機能を確保できる範囲であれば、図3に示すように、基板ユニット10の当該広さよりもやや狭い水平方向の広さであってもよい。なお、基板11上に実装されたアンテナ13は、図示の上下方向において、後軸4の窓部8の縁に重なるように又は後軸4の窓部8の外側に位置するように、配置されていてもよい。
また、筆記具1は、金属製のクリップ6を更に有している。クリップ6の形状が基板ユニット10等を完全に覆う構成であると、上記同様に基板ユニット10の通信を阻害してしまう。そこで、本実施形態では、クリップ6をU字形状とし、一対の棒6aと、一対の棒6aの先端同士を略円形に繋ぐ曲がり部6bとを含む構成にして、一対の棒6aの間に空間6cを設けるようにしている。この空間6cは、図示の上下方向において、後軸4の窓部8やアンテナ13の内側領域と重なるように位置しており、金属製のクリップ6による通信の遮断を抑制する。なお、筆記具1は、クリップ6を有しない構成であってももちろんよい。
ここで、図6を参照して、上述した構成を有する筆記具1での近距離無線通信の概要についてより詳細に説明する。図6では、リーダ/ライター装置S側からの磁力線F1が筆記具1の基板ユニット10のアンテナ13の内側領域を通過する状態が模式的に示されている。基板ユニット10では、これにより、基板ユニット10内に電流が流れ、ICチップ12が起動する。その後、ICチップ12からの所定の情報がアンテナ13を介して磁力線F2としてリーダ/ライター装置Sに伝えられる。これにより、筆記具1(基板ユニット10)からの所定の情報が、近距離無線通信によりリーダ/ライター装置Sに伝達される。なお、リーダ/ライター装置Sから基板ユニット10のICチップ12に所定の情報が伝達されてもよい。このように、本実施形態に係る筆記具1では、金属製の後軸4に樹脂製の窓部8が設けられ、また金属製のクリップ6の内側には空間6cが設けられているため、基板ユニット10とリーダ/ライター装置Sとの間の通信は阻害されない。
以上、本実施形態に係る筆記具1では、軸筒9(後軸4等)を金属から構成すると共に、その後軸4内に、ICチップ12とアンテナ13とが基板11上に実装された基板ユニット10を収納している。このように軸筒9を金属から構成することで商品としての高級感を醸し出すことができ、また軸筒9の後軸4内にICチップ12を含む基板ユニット10を収納させることから、ICチップ12等を筆記具から容易に取り外すことも防止できる。しかも、この金属製の後軸4では、基板11に面する領域の少なくとも一部に切欠き4aを形成し、これら切欠き4aに樹脂から成る窓部8を設けており、これにより、基板ユニット10での外部通信を可能としている。従って、本実施形態によれば、高級感があり且つ安全性の高い、近距離無線通信機能を備えた筆記具を実現することが可能となる。なお、軸筒9を金属製とすることにより、筆記具としての丈夫さ(強度)を向上させることも可能となる。また、この筆記具1では、基板ユニット10を用いているため、当該筆記具の製造を簡素化することも可能である。
また、筆記具1では、基板11上に実装されたアンテナ13は、基板11の両縁を結ぶ線に対して直交する方向において、後軸4の窓部8の縁に重なる、又は、後軸4の窓部8の外側に位置している。この場合、外部のリーダ/ライター装置Sからの磁界等を基板ユニット10のアンテナ13の内側領域により確実に通せるため、当該アンテナ13等による無線通信をより確実に実行させることができる。
また、筆記具1では、基板11上で巻き回されたアンテナ13の内側領域は、基板11の両縁を結ぶ線に対して直交する方向において、窓部8に重なっている。このため、外部のリーダ/ライター装置Sからの磁界等を基板ユニット10のアンテナ13の内側領域により確実に通せるため、当該アンテナ13等による無線通信をより確実に実行させることができる。
また、筆記具1は、軸筒9に取り付けられたクリップ6を更に備えている。このクリップ6は、その平面方向の内側に空間6cを有するように形成され、この空間6cは、基板11の両縁を結ぶ線に対して直交する方向において、後軸4の窓部8及びアンテナ13の内側領域に重なる。このため、近距離無線通信が可能な筆記具に更にクリップ機能を付与することができる。しかも、クリップ6が金属等から構成された場合であっても、基板ユニット10のアンテナ13による通信機能を阻害することがなく、安定した通信機能を発揮することが可能となる。
また、筆記具1は、基板11の一方の面に面する窓部8と基板11の他方の面に面する窓部8の2つの窓部を含む。このため、基板ユニット10のアンテナ13の内側を外部磁界等がより確実に通るため、当該アンテナ13等による通信をより一層、安定させることができる。また、上記の構成において、後軸4は、その断面が扁平形状であり、両窓部8は、後軸4の扁平形状の長手方向の周面であって互いに対向する周面それぞれに設けられている。これにより、基板ユニット10のアンテナ13の内側を外部磁界等がより確実に通るため、当該アンテナ13等による通信をより一層、安定させることができる。
また、筆記具1では、基板ユニット10は、上方の窓部8よりは下方の窓部8に近接するように又は接するように後軸4の中心軸を避けて後軸4内に収納される。このため、基板ユニット10を後軸4内に収納する構成であっても筆記具の中芯を一般的な筆記具と略同様な配置とすることができ、より実用性の高い筆記具とすることができる。なお、本構成によれば、ノック式の筆記具に近距離無線通信機能を付与することも容易に実現可能となる。
また、筆記具1では、基板11は、短手方向及び長手方向を有する矩形状のフレキシブル基板であり、基板ユニット10は、基板11の短手方向において曲線状に曲げられて後軸4内に収納されている。このように、基板ユニット10を曲線状に曲げて収納することにより、軸筒9の外径を小さくするといったことが可能となる。つまり、基板ユニット10を内蔵することにより大型化されやすい筆記具をスリムな形状として、筆記具としての高級感を更に醸し出すことが可能となる。また、フレキシブル基板を用いていることから、後軸4内に収納する際、基板11やアンテナ13、ICチップ12の各種性能に対する曲げの影響を低減することが可能となる。即ち、基板ユニット10を曲線状に曲げた場合であっても所定の通信機能を確保することができる。
また、筆記具1では、基板ユニット10は、曲率半径Rが10mm以上となるように緩やかに曲げられて軸筒内に収納されてもよい。この場合、基板ユニット10におけるアンテナ機能をできるだけ阻害せずに曲げて小型化を図ることができる。特に基板ユニット10は、曲率半径Rが15mm以上となるように緩やかに曲げられて後軸4内に収納されるのが好ましい。この場合、筆記具の小型化と通信の安定性をより確実に両立することができる。なお、基板ユニット10は曲げられない状態で軸筒内に収納されていてもよい。
また、筆記具1では、基板ユニット10は、基板11、ICチップ12及びアンテナ13を全体的に覆う樹脂シート15を更に有している。このような樹脂シートにより、電気的性能を有する基板11、ICチップ12及びアンテナ13に対して防水・防滴機能を付与することができる。その結果、基板ユニット10の通信機能を長期にわたって安定化させることができる。なお、筆記具全体に対して防水・防滴機能を付与することも可能であるが、その場合、筆記具全体の構成がより複雑になりやすく、また経年劣化による防水・防滴機能の一部劣化により水漏れが発生し、基板ユニット10の通信機能を阻害してしまう可能性がある。これに対し、上述した樹脂シート15を設けた構成によれば、より効率的に筆記具に防水・防滴機能を付与することができる。
以上、本発明の実施形態について詳細に説明してきたが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく様々な実施形態に適用することができる。例えば、上記実施形態では、軸筒9の大部分が金属製の軸部であり、一部に樹脂製の窓部8を設ける構成としたが、軸筒9の通信用の窓部8以外の箇所に切欠きを設け、そこを樹脂部としてもよい。
1…筆記具、2…先口部材、3…前軸、4…後軸、4a…切欠き、4b…内部空隙、4c…内周壁、4d…カード止部、5…尾栓、6…クリップ、6a…棒、6b…曲がり部、6c…空間、7…中芯、8…窓部、9,9a,9b…軸筒、10…基板ユニット、11…基板、12…ICチップ、13…アンテナ、14…接続線、15…樹脂シート、15a,15b…縁部、F1,F2…磁力線、X4…扁平形状の長手方向、Y4…扁平形状の短手方向、X11…基板の長手方向、Y11…基板の短手方向、S…リーダ/ライター装置。

Claims (10)

  1. 金属から構成される軸筒と、
    前記軸筒内に収納される近距離無線通信用基板ユニットと、
    前記軸筒に取り付けられたクリップと、
    を備え、
    前記近距離無線通信用基板ユニットは、基板と、前記基板上に実装されるICチップと、近距離無線通信を行うためのアンテナであって、前記ICチップに接続され前記基板上において巻き回されるようにその上に実装されるアンテナと、を有し、
    前記軸筒には、前記基板に面する領域の少なくとも一部に切欠きが形成され、当該切欠きに樹脂から成る窓部が設けられ、
    前記クリップは、その平面方向の内側に空間を有するように形成され、当該空間は、前記基板の両縁を結ぶ線に対して直交する方向において、前記軸筒の前記窓部及び前記アンテナの内側領域に重なる、筆記具。
  2. 前記窓部は、前記基板の一方の面に面する第1の窓部と前記基板の他方の面に面する第2の窓部とを含む、請求項1に記載の筆記具。
  3. 金属から構成される軸筒と、
    前記軸筒内に収納される近距離無線通信用基板ユニットと、
    を備え、
    前記近距離無線通信用基板ユニットは、基板と、前記基板上に実装されるICチップと、近距離無線通信を行うためのアンテナであって、前記ICチップに接続され前記基板上において巻き回されるようにその上に実装されるアンテナと、を有し、
    前記軸筒には、前記基板に面する領域の少なくとも一部に切欠きが形成され、当該切欠きに樹脂から成る窓部が設けられ、
    前記窓部は、前記基板の一方の面に面する第1の窓部と前記基板の他方の面に面する第2の窓部と、を含む、筆記具。
  4. 前記軸筒は、その断面が扁平形状であり、
    前記第1及び第2の窓部は、前記軸筒の扁平形状の長手方向の周面であって互いに対向する周面それぞれに設けられる、請求項2又は3に記載の筆記具。
  5. 前記近距離無線通信用基板ユニットは、前記第1の窓部よりは前記第2の窓部に近接するように又は接するように前記軸筒の中心軸を避けて前記軸筒内に収納される、請求項2〜4の何れか一項に記載の筆記具。
  6. 前記基板上に実装された前記アンテナは、前記基板の両縁を結ぶ線に対して直交する方向において、前記軸筒の前記窓部の縁に重なる、又は、前記軸筒の前記窓部の外側に位置する、請求項1〜5の何れか一項に記載の筆記具。
  7. 前記基板上で巻き回された前記アンテナの内側領域は、前記基板の両縁を結ぶ線に対して直交する方向において、前記窓部に重なる、請求項1〜6の何れか一項に記載の筆記具。
  8. 前記基板は、短手方向及び長手方向を有する矩形状のフレキシブル基板であり、
    前記近距離無線通信用基板ユニットは、前記基板の前記短手方向において曲線状に曲げられて前記軸筒内に収納される、請求項1〜7の何れか一項に記載の筆記具。
  9. 前記近距離無線通信用基板ユニットは、曲率半径Rが10mm以上となるように緩やかに曲げられて前記軸筒内に収納される、請求項8に記載の筆記具。
  10. 前記近距離無線通信用基板ユニットは、前記基板、前記ICチップ及び前記アンテナを全体的に覆う樹脂シートを更に有する、請求項1〜9の何れか一項に記載の筆記具。
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