JP6526395B2 - 水中作業装置及び水中作業方法 - Google Patents

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Description

本発明は水中作業装置及び水中作業方法に関するものであり、特に、クレーンから延びるワイヤーにより吊荷を水中に吊り下げて所定の位置に設置するための水中作業装置及び水中作業方法に関するものである。
従来、陸上での高所における吊荷の吊り下ろし作業は、吊荷に直接取り付けられた介錯ロープ又は棒によって周囲の作業者が人力で吊荷を旋回させて、下方の障害物と接触しないようにして行っていた。しかし、この作業は、吊荷が重量物の場合、又は高所作業である場合等には、吊荷が旋回時に揺動して作業者の安全を十分に確保できないという問題があった。そこで、ジャイロ装置を旋回装置に組み込み、吊荷と共に旋回装置をクレーンで吊り上げて吊荷の旋回時に吊荷が揺動するのを抑えるような技術も提案されている(例えば、特許文献1、特許文献2参照)。
一方、護岸工事等で行われる水中でのコンクリート製ブロックの設置作業や、ケーソン基礎部の張石作業では、設置箇所付近においてコンクリート製ブロック等の資材(以下、これを「吊荷」という)を船上のクレーンで吊して水中に投下すると共に、水中作業員(潜水士)が水中に潜って、吊荷を手作業で設置場所まで誘導していた。このような、水中作業員による水中での吊荷の誘導作業は、地上とは異なり浮力の影響で反力を取り難く、また、潮流の影響を受けることから難作業となっている。そのため、作業時間が増加し、施工効率が悪い等の問題点があった。
そこで、水中作業員が水中に潜って手作業で吊荷を設置位置まで直接誘導する方法に変えて、吊荷を吊して、その吊荷と共に水中に入れて建設作業を行う水中作業機械と、この水中作業機械を水中作業員が水中に潜って操作する作業員用機器(以下、「リモコン」という)とを備え、水中作業員が水中に潜ってリモコンで水中作業機械を操作し、吊荷を設置位置まで誘導するようにした水中作業支援装置も知られている(例えば、特許文献3参照)。
特開2012−111570号公報。 特開2013−35651号公報。 特開2013−238002号公報。
特許文献3記載の発明は、水中作業員が吊荷を設置位置まで直接誘導せずに、水中に潜ってリモコンで水中作業機械を操作し、吊荷を水中作業機械と共に設置まで誘導するようにしているので、水中作業員に与える労力は軽減される。しかしながら、水中作業員が水中に潜って行う作業は依然として変わっていない。したがって、水中作業員は水中に潜って作業を行うので、1回毎の作業時間が限られる。また、潮流の影響や水圧を身体に受けるので、水中作業員に与える疲労も大きく、作業性が悪いという問題点があった。
そこで、水中作業員による作業を無くして、吊荷を吊り下げて水中の所定の位置及び向きに設置することができる、水中作業装置及び水中作業方法を提供するために解決すべき技術的課題が生じてくるのであり、本発明はこの課題を解決することを目的とする。
本発明は上記目的を達成するために提案されたものであり、請求項1記載の発明は、クレーンから延びるワイヤーにより吊荷を水中に吊り下げて所定の位置に設置するための水中作業装置において、前記ワイヤーと前記吊荷との間に設けられて、該吊荷を着脱自在に保持して該吊荷と一体に移動する吊枠と、少なくとも一部が大気中に露出された状態で前記吊荷の位置及び絶対方位を計測する第1のコンパスと、前記吊枠を水没させた状態で所定の基準方位に対する前記吊枠の相対方位を計測して前記吊枠の水中向きを計測する第2のコンパスと、を備えた検出手段と、前記水中において前記吊枠を旋回させる推力発生器と、前記第2のコンパスが計測した前記吊枠の水中向きを予め設定された設置方向に一致させるように前記推力発生器による動作を制御する制御手段と、を備えている水中作業装置を提供する。
この構成によれば、クレーンから延びるワイヤーにより吊枠と一緒に吊荷を水中に吊り下げるとともに、水中における吊枠の向きを検出手段で検出し、さらに制御手段が検出手段の検出結果に基づいて推力発生器の動作を制御し、その推力発生器が吊枠を旋回させて、その吊枠の向きが所望の方向と一致するように制御する。したがって、水中に潜って作業をする水中作業員を配置することなく、また、例え配置しても単に確認をする程度で水中作業を進めることが可能になる。また、水中での吊枠の向きをセンサで計測するので、簡単な構造で装置を構築できる。さらに、検出手段に、大気中に露出された状態で吊枠の向きを計測する第1のコンパスと、吊荷と共に水没されて吊枠の向きを計測する第2のコンパスの、2つのコンパスを使用して、水中における吊枠の向きを正確に計測することができるので、作業精度の向上に寄与できる。
この構成によれば、水中での吊枠の向きをセンサで計測するので、簡単な構造で装置を構築できる。
請求項記載の発明は、請求項に記載の構成において、前記第2のコンパスは、吊枠の角速度を検出する、水中作業装置を提供する。
この構成によれば、検出手段が吊枠と共に水中に入り、吊枠の向きが第1のコンパスにより計測できなくなると、水没させた状態で吊枠の向きを計測することが可能な第2のコンパスにより、水中における吊枠の角速度を検出するので、吊枠の向きをより正確に計測することができ、作業精度の更なる向上に寄与できる。
請求項3記載の発明は、クレーンから延びるワイヤーにより吊荷を水中に吊り下げて所定の位置に設置するための水中作業装置において、前記ワイヤーと前記吊荷との間に設けられて、該吊荷を着脱自在に保持して該吊荷と一体に移動する吊枠と、少なくとも一部が大気中に露出された状態で前記吊荷の位置及び絶対方位を計測する第1のコンパスと、前記吊枠を水没させた状態で所定の基準方位に対する前記吊枠の相対方位を計測して前記吊枠の水中向きを計測する第2のコンパスと、を備えた検出手段と、前記水中において前記吊枠を旋回させる推力発生器と、前記吊枠の向きを予め設定された設置方向と前記第2のコンパスによって計測された前記吊枠の水中向きとを表示するとともに、前記推力発生器による前記吊枠の旋回操作を外部より指示するためのアイコンを表示するディスプレイと、前記吊枠の水中向きと前記吊枠の旋回操作を指示する入力手段からの入力指示に基づいて、前記水中向きを前記設置方向に一致させるように前記推力発生器による動作と前記ディスプレイ上の表示を制御する制御手段と、を備える水中作業装置を提供する。
この構成によれば、クレーンから延びるワイヤーにより吊枠と一緒に吊荷を水中に吊り下げるとともに、水中における吊枠の向きを検出手段で検出する。制御手段は、検出手段が計測した向きと前記吊荷の所望の向きとをディスプレイ上に表示するとともに、吊枠の向きを変えるための旋回操作を外部より指示するためのアイコンを表示する。また、オペレータ等がディスプレイ上に表示されたアイコンを使用して入力指示を行うと、制御手段が、推力発生器の動作を制御する。同時に、推力発生器で制御される吊枠の向きの変化を検出手段から受けてリアルタイムにアイコン等でディスプレイ上に表示する。これにより、オペレータは、ディスプレイを見ながらアイコンを操作すると吊枠の向きが変えられ、吊荷を所定の位置に設置することができる。また、水中での吊枠の向きをセンサで計測するので、簡単な構造で装置を構築できる。さらに、検出手段に、大気中に露出された状態で吊枠の向きを計測する第1のコンパスと、吊荷と共に水没されて吊枠の向きを計測する第2のコンパスの、2つのコンパスを使用して、水中における吊枠の向きを正確に計測することができるので、作業精度の向上に寄与できる。
請求項4記載の発明は、クレーンから延びるワイヤーにより吊荷を水中に吊り下げて所定の位置に設置するための水中作業方法において、吊枠を介して前記吊荷を前記ワイヤーに吊す吊荷吊り下げ工程と、少なくとも一部が大気中に露出された状態で前記吊荷の位置及び絶対方位を計測する第1のコンパスを用いて前記吊枠の位置及び向きを計測する吊り下げ位置決定工程と、前記吊枠を水没させた状態で所定の基準方位に対する前記吊枠の相対方位を計測して前記吊枠の水中向きを計測する第2のコンパスを用いて前記吊枠の水中向きを検出する吊枠の向き検出工程と、前記吊枠の向き検出工程で検出された前記吊枠の水中向きを予め設定された設置方向に一致するように該吊枠を回転させる推力発生器を駆動する推力発生器駆動工程と、を含む水中作業方法を提供する。
この方法によれば、クレーンから延びるワイヤーにより吊枠と一緒に吊荷を水中に吊り下げるとともに、水中における吊枠の向きを検出手段等で検出し、その検出結果に基づいて推力発生器の動作を制御し、その推力発生器の推力により吊枠を旋回させて、その吊枠の向きが所望の方向と一致するように制御する。これにより、水中に潜って作業をする水中作業員を配置することなく、また、例え配置しても単に確認をする程度で水中作業を進めることが可能になる。さらに、吊荷を吊り下げて水没させるとともに、吊枠上面を、水面から露出させた状態で、吊枠の向きを吊荷と共に検出及び調整してから沈めることができる。したがって、水没させる前に、吊荷の向きはある程度定まり、後は向きの微調整だけをすれば良い。そのため、作業が容易になり、精度の良い設置が可能になる。
本発明によれば、水中に潜って作業をする水中作業員を配置することなく、吊荷を容易に水中の所定の位置に設置することができる。
本発明の第1実施例として示す水中作業装置の概略図である。 同上第1実施例の水中作業装置における制御系の構成ブロック図である。 同上第1実施例の吊荷を吊り下げて水没される吊枠と推力発生器の概略を示す図である。 同上第1実施例のディスプレイ上に表示される一表示例を示す図である。 同上第1実施例の水中作業装置の一動作例を説明する図である。 本発明の第2実施例として示す水中作業装置の概略図である。 同上第2実施例の水中作業装置における制御系の構成ブロック図である。 同上第2実施例の吊荷を吊り下げて水没される吊枠と推力発生器の概略を示す図である。 同上第2実施例のディスプレイ上に表示される一表示例を示す図である。 同上第2実施例の同上水中作業装置の一動作例を説明する図である。
本発明は水中作業員による作業を無くして、吊荷を吊り下げて水中の所定の位置及び向きに設置することができる水中作業装置を提供するという目的を達成するために、クレーンから延びるワイヤーにより吊荷を水中に吊り下げて所定の位置に設置するための水中作業装置において、前記ワイヤーと前記吊荷との間に設けられて、該吊荷を着脱自在に保持して該吊荷と一体に移動する吊枠と、少なくとも一部が大気中に露出された状態で前記吊荷の位置及び絶対方位を計測する第1のコンパスと、前記吊枠を水没させた状態で所定の基準方位に対する前記吊枠の相対方位を計測して前記吊枠の水中向きを計測する第2のコンパスと、を備えた検出手段と、前記水中において前記吊枠を旋回させる推力発生器と、前記第2のコンパスが計測した前記吊枠の水中向きを予め設定された設置方向に一致させるように前記推力発生器による動作を制御する制御手段と、を備えている構成として実現した。
また、本発明は水中作業員による作業を無くして、吊荷を吊り下げて水中の所定の位置及び向きに設置することができる水中作業装置を提供するという目的を達成するために、クレーンから延びるワイヤーにより吊荷を水中に吊り下げて所定の位置に設置するための水中作業装置において、前記ワイヤーと前記吊荷との間に設けられて、該吊荷を着脱自在に保持して該吊荷と一体に移動する吊枠と、少なくとも一部が大気中に露出された状態で前記吊荷の位置及び絶対方位を計測する第1のコンパスと、前記吊枠を水没させた状態で所定の基準方位に対する前記吊枠の相対方位を計測して前記吊枠の水中向きを計測する第2のコンパスと、を備えた検出手段と、前記水中において前記吊枠を旋回させる推力発生器と、前記吊枠の向きを予め設定された設置方向と前記第2のコンパスによって計測された前記吊枠の水中向きとを表示するとともに、前記推力発生器による前記吊枠の旋回操作を外部より指示するためのアイコンを表示するディスプレイと、前記吊枠の水中向きと前記吊枠の旋回操作を指示する入力手段からの入力指示に基づいて、前記水中向きを前記設置方向に一致させるように前記推力発生器による動作と前記ディスプレイ上の表示を制御する制御手段と、を備える構成として実現した。
また、本発明は水中作業員による作業を無くして、吊荷を吊り下げて水中の所定の位置及び向きに設置することができる水中作業方法を提供するという目的を達成するために、クレーンから延びるワイヤーにより吊荷を水中に吊り下げて所定の位置に設置するための水中作業方法において、吊枠を介して前記吊荷を前記ワイヤーに吊す吊荷吊り下げ工程と、少なくとも一部が大気中に露出された状態で前記吊荷の位置及び絶対方位を計測する第1のコンパスを用いて前記吊枠の位置及び向きを計測する吊り下げ位置決定工程と、前記吊枠を水没させた状態で所定の基準方位に対する前記吊枠の相対方位を計測して前記吊枠の水中向きを計測する第2のコンパスを用いて前記吊枠の水中向きを検出する吊枠の向き検出工程と、前記吊枠の向き検出工程で検出された前記吊枠の水中向きを予め設定された設置方向に一致するように該吊枠を回転させる推力発生器を駆動する推力発生器駆動工程と、を含むようにして実現した。
以下、本発明の実施形態による水中作業装置及び水中作業方法を、図面を参照しながら好適な実施例について詳細に説明する。
図1乃至図5は、本発明に係る実施形態の第1実施例を示す。図1に示すように、水中作業装置10は、クレーン船11のクレーン12からワイヤー13で、吊荷14を吊枠15と共に水中に投下して所定の位置(川底または海底等)の直前まで沈め、その沈めた位置で吊枠15を吊荷14と一緒に水中で旋回させて、当該吊荷14の旋回角度(方向)及び位置を調整し、調整後に前記所定の位置に沈めて、更に吊荷14を吊枠15からリリースして川底や海底等に設置する機械である。すなわち、作業をする水中作業員を配置することなく、吊荷14を所定の位置に設置することができるようにした機械である。なお、吊荷14は、例えば波消しブロックや被覆ブロック等のコンクリート製ブロックである。
図2は、図1に示す水中作業装置10の制御系の構成ブロック図である。図1と図2を用いて、更に水中作業装置10の構成を説明する。同図において、クレーン船11上には、前記クレーン12に加えて、制御手段としての制御装置16、及び検出手段としてのGPS(全地球測位システム)センサ17(以下、「GPS17」という)等を備えている。
前記制御装置16は、例えばパーソナルコンピュータ(パソコン)であり、ディスプレイ16a、及び外部入力手段としてのキーボード、マウス等を備えている。
前記GPSセンサ17は、前記ワイヤー13が垂れ下がるクレーン12の先端部分に取り付けられている検出手段であり、そのGPSセンサ17では図1及び図3に示すようにしてワイヤー13の下側に垂れ下がる吊枠35の中心位置(この中心位置Cは吊荷14の中心位置と略同じである。)を計測し、その位置情報を制御装置16に逐次入力するようになっている。
前記吊枠15は、ワイヤー13の先端(下端)にスイベル19、及び吊り下げ用ワイヤーロープ20を介して略水平に吊り下げられ、更にその下側にリリース可能な玉掛け用ワイヤーロープ21を介して前記吊荷14が略水平に吊り下げられている。
前記吊枠15は、図3に示すように、例えば四角形の枠形に形成されており、その四隅が前記吊り下げ用ワイヤーロープ20で水平に支えられている。また、吊枠15における互いに対向している1対の平行な桟15a、15bの外側面には、それぞれ向きを同じにして推力発生器22a、22bが取り付けられている。さらに、前記1対の平行な桟15a、15bと直角に交差して、互いに対向している1対の平行な桟15c、15dのうちの、一方の桟15dの上面には、吊枠15の向き及び位置を計測するための検出手段としてのセンサ18(例えば、トランスポンダ)が取り付けられている。また、それら推力発生器22a、22b、及びセンサ18は、信号ケーブル24を介して制御装置16と電気的に接続されている。
前記1対の推力発生器22a、22bは、例えばポンプジェット推進器であり、尾部に設けたプロペラで吊枠15の周辺の海水等を後方へ押し出すことにより、前記吊枠15を前記吊荷14と共に旋回及び移動するための推力を発生させることができるようになっている。そして、前記制御装置16からの指示で、その1対の推力発生器22a、22bにおける互いの推力のバランスを調整することにより、前記吊枠15を旋回させる方向、及びX、Y方向の位置移動等の調整を可能にする。
前記センサ18は、水没された状態で、吊枠15の向きを計測する機能を有しており、そのセンサ18で計測された吊枠15の向きの情報は制御装置16に順次送られる。すなわち、ここでのセンサ18は、水中において吊枠15の向きを計測する機能を有している。
そのセンサ18で計測された値を受け取る制御装置16では、吊枠15の実際の向きと所望する向きのずれとの差を無くすように、その値に応じた制御信号を推力発生器22a、22bにそれぞれ送り、推力発生器22a、22bの駆動(動作)を各々制御する。
前記ディスプレイ16aは、制御装置16の出力表示装置であり、例えば図4に示すように、吊枠15の所望する向きを表す吊枠アイコン25aと実際の吊枠15の向きを表す吊枠アイコン25bの他に、吊枠アイコン25aに対して吊枠アイコン25bを左右どちらの方向に何度回転させる必要があるか等の旋回を指示する旋回指示情報25cと、推力発生器22a、22bの駆動を制御して吊枠15の向きを変えるための旋回操作を外部より指示するためのアイコン、すなわち左回り旋回を外部から指示するための「左旋回」アイコン25d、右回り旋回を外部から指示するための「右旋回」アイコン25e等が表示可能になっている。
図5は、この様に構成された水中作業装置10の一動作工程を示すもので、この動作工程は制御装置16に組み込まれたソフトウェアの指示によって順に実行される。
次に、上記のように構成された水中作業装置10の動作を、図5のフローに従って説明する。
まず、本実施例のようにクレーン船11の船上において、クレーン船11から延びるクレーン12の先端部分より垂れ下がっているワイヤー13の先端に、吊荷14を吊枠15と共に吊り下げる。そして、吊荷14を吊枠15と共に吊り下げた状態で、クレーン12を旋回及び伸縮させ、GPSセンサ17の位置情報から吊荷14の中心位置Cを知り、その中心位置Cが所望する位置と合致したところでクレーン12の旋回及び上下を停止し、吊り下げ位置を概略的に決定する(吊り下げ位置決定工程S1)。
次いで、吊荷吊り下げ工程S2に移行する。なお、吊荷吊り下げ工程S2と前記吊り下げ位置決定工程S1とは、1つの工程として処理する場合もある。そして、吊荷吊り下げ工程S2では、ワイヤー13を更に延ばして吊荷14と吊枠15とを一体に水中に投下し、その吊荷14及び吊枠15を、当該吊荷14が設置される直前の位置までに水中に沈める。また、その設置される直前の位置での吊枠15の位置及び向き、すなわち吊荷14の向きをセンサ18からの情報で計測する(吊荷の向き検出工程S3)。
前記制御装置16では、基準となる吊枠のデータとセンサ18で計測された吊枠15のデータとを比較して、その差を求める。そして、制御装置16は、図3に示すようにディスプレイ16a上に、所望する吊枠15の向きを表す吊枠アイコン25aと計測した実際の向きを表す吊枠アイコン25b、及び、その調整を必要とする向き(本例では右回りで13°の補正を要する旨)と、その向きを調整するための旋回操作を外部から指示するためのアイコン25d、25eを表示する。
続いて、制御装置16では、吊枠15の向きを調整する推力発生器駆動工程S4に移行する。その推力発生器駆動工程S4では、吊荷の向き検出工程S3で検出された、基準となる吊枠のデータとセンサ18で計測された吊枠15のデータとの差に基づいて、推力発生器22a、22bの動作を自動で制御する自動制御モードと、ディスプレイ16a上の旋回指示アイコン25d、25eの動作をオペレータが手動で操作する手動制御モードに切り替え可能である。
そして、いずれの場合であっても、制御装置16からは、1対の推力発生器22a、22bを駆動する信号が出力され、その1対の推力発生器22a、22bを個々に駆動制御する。また、1対の推力発生器22a、22b間の推力のバランスをとりながら、吊枠15の回転方向の向きを調整して、所望する吊枠15の向きを表す吊枠アイコン25aの上に実際の向きを表す吊枠アイコン25bが重なるようにする。この2つアイコン25a、25bの重なりにより、実際の吊荷14の位置、及び、吊荷14の向きが所望する位置にそれぞれ配置される。
このようにして、吊荷14の位置及び向きが調整されたら、最終設置工程S5に入り、クレーン12からワイヤー13を更に延ばし、吊荷14を最終位置に設置する。これにより、吊荷14は、所定の川底、又は、海底等に、所定の向きで設置される。その設置が終了したら、制御装置16からの信号により、吊枠15上に設けられている図示しないリリース装置を操作し、吊荷14から玉掛け用ワイヤーロープ21を遠隔操作により自動的に取り外す。そして、吊荷14だけを海底等に残し、吊枠15をワイヤー13で吊り上げる。これにより、吊荷14が所定の位置に所定の向きで設置される。以下、この動作を繰り返すことにより、所定量の吊荷14を、所定の状態で水中に設置することができる。
したがって、第1実施例による水中作業装置10によれば、クレーン12から延びるワイヤー13により吊枠15と一緒に吊荷14を水中に吊り下げるとともに、水中における吊枠14の向きをセンサ18で検出し、さらに制御手段としての制御装置16がセンサ18の検出結果に基づいて推力発生器22a、22bの動作(駆動)を制御し、その推力発生器22a、22bが吊枠15を旋回させて、その吊枠15の向きが所望の方向と一致するように制御するので、水中に潜って作業をする水中作業員の配置をすることなく、また、例え配置しても単に確認をする程度で簡単に作業を進めることが可能になる。
図6乃至図10は、本発明に係る実施形態の第2実施例を示す。なお、第1の実施例の構成と第2実施例の構成とが互いに同一の構成となっている部分は、同一符号を付して重複説明を省略する。
図6は本発明の第2実施例に係る水中作業装置の概略を示す図である。図6に示すように、水中作業装置30は、クレーン船31のクレーン32からワイヤー13で、吊荷14を吊枠35と共に水中に吊り下げ、所定の位置(川底または海底等)に沈める前に、水面上で吊枠35を吊荷14と一緒に旋回させて、当該吊荷14の旋回角度(方向)を調整し、調整後に前記所定の位置に沈めて、更に吊荷14を吊枠35からリリースして川底や海底等に設置する機械である。すなわち、この第2実施例の場合も水中に潜って作業をする水中作業員を配置することなく、吊荷14を所定の位置に設置することができるようにした機械である。なお、前記吊荷14は、例えば波消しブロックや被覆ブロック等のコンクリート製ブロックである。
図7は、図6に示す水中作業装置30の制御系の構成ブロック図である。図6と図7を用いて、更に水中作業装置30の構成を説明する。同図において、クレーン船31上には、前記クレーン32に加えて、制御手段としての制御装置36等を備えている。
前記制御装置36は、例えばパーソナルコンピュータ(パソコン)であり、ディスプレイ36a、及び外部入力手段としてのキーボード、マウス等を備えている。
前記吊枠35は、ワイヤー13の先端(下端)にスイベル19、及び吊り下げ用ワイヤーロープ20を介して略水平に吊り下げられ、更にその下側にリリース可能な玉掛け用ワイヤーロープ21を介して前記吊荷14が略水平に吊り下げられている。
前記吊枠35は、図8に示すように、例えば四角形の枠形に形成されており、その四隅が前記吊り下げ用ワイヤーロープ20で水平に支えられている。また、吊枠35における互いに対向している1対の平行な桟35a、35bの外側面には、それぞれ向きを同じにして推力発生器22a、22bが取り付けられている。さらに、前記1対の平行な桟35a、35bと直角に交差して、互いに対向している1対の平行な桟35c、35dのうちの、一方の桟35dの上面には、吊枠35の位置及び向きを計測するための検出手段としてのセンサ37が取り付けられている。また、それら推力発生器22a、22b、及びセンサ37は、信号ケーブル24を介して制御装置36と電気的に接続されている。
前記1対の推力発生器22a、22bは、例えばポンプジェット推進器であり、第1の実施例の場合と同様に、尾部に設けたプロペラで吊枠35の周辺の海水等を後方へ押し出すことにより、前記吊枠35を前記吊荷14と共に旋回及び移動するための推力を発生させることができるようになっている。そして、前記制御装置36からの指示で、その1対の推力発生器22a、22bにおける互いの推力のバランスを調整することにより、前記吊枠35を旋回させる方向、及びX、Y方向の位置移動等の調整を可能にする。
前記センサ37は、少なくとも一部が大気中に露出されて吊枠35の位置及び向きを計測する第1のコンパス37aと、吊枠35を水没させた状態で吊枠35の向きを計測する第2のコンパス37bと、を備えている。なお、第1のコンパス37aには、例えばトランスポンダーやGPS(全地球測位システム)コンパス(以下、これらを含めて「GPS37a」という)を使用し、第2のコンパス37bには、磁北に対して吊枠35の向きのずれを計測する磁気コンパス、又は吊枠35の角速度を計測して吊枠35の真北に対する向きのずれを計測するジャイロコンパス等が使用される。そして、センサ37で計測された第1のコンパス37aと第2コンパス37bのそれぞれの値は、制御装置36に順次送られる。
前記ディスプレイ36aは、制御装置36の出力表示装置であり、例えば図9に示すように、吊枠35の所望する向きを表す吊枠アイコン25aと実際の吊枠35の向きを表す吊枠アイコン25bの他に、吊枠アイコン25aに対して吊枠アイコン25bを左右どちらの方向に何度回転させる必要があるか等の旋回を指示する旋回指示情報25cと、推力発生器22a、22bの駆動を制御して吊枠35の向きを変えるための旋回操作を外部より指示するためのアイコン、すなわち左回り旋回を外部から指示するための「左旋回」アイコン25d、右回り旋回を外部から指示するための「右旋回」アイコン25e等が表示可能になっている。
図10は、この様に構成された水中作業装置30の一動作工程を示すもので、この動作工程は制御装置36に組み込まれたソフトウェアの指示によって順に実行される。
次に、上記のように構成された水中作業装置30の動作を、図10のフローに従って説明する。
まず、本実施例のようにクレーン船31の船上において、クレーン船31から延びるクレーン32の先端部分より垂れ下がっているワイヤー13の先端に、吊荷14を吊枠35と共に吊り下げる。また、吊荷14と共に吊枠35を水没させる前、すなわち吊枠15の一部であるセンサ37を水面から露出させた状態でクレーン32を旋回及び上下させ、GPSセンサ(第1のコンパス)37aの位置情報から吊荷14の中心位置C及び向きを知り、その中心位置Cが所望する位置と合致したところでクレーン32の旋回及び上下を停止し、吊り下げ位置を決定する(吊り下げ位置決定工程S6)。
次いで、吊荷吊り下げ工程S7に移行する。なお、吊荷吊り下げ工程S7と前記吊り下げ位置決定工程S6とは、1つの工程として処理する場合もある。そして、吊荷吊り下げ工程S7では、ワイヤー13を更に延ばして吊荷14と吊枠35と一体に水中に投下し、その吊荷14及び吊枠35を、当該吊荷14が設置される直前の位置までに水中に沈める。また、その設置される直前の位置での吊枠35の向き、すなわち吊荷14の向きを、センサ37における第2コンパス37bからの情報で計測する(吊荷の向き検出工程S8)。
前記制御装置36では、基準となる吊枠のデータとセンサ37で計測された吊枠35のデータとを比較して、その差を求める。そして、制御装置36は、図8に示すようにディスプレイ36a上に、所望する吊枠35の向きを表す吊枠アイコン25aと計測した実際の向きを表す吊枠アイコン25b、及び、その調整を必要とする向き(本例では右回りで13°の補正を要する旨)と、その向きを調整するための旋回操作を外部から指示するためのアイコン25d、25eを表示する。
続いて、制御装置36では、吊枠35の向きを調整する推力発生器駆動工程S9に移行する。その推力発生器駆動工程S9では、吊荷の向き検出工程S8で検出された、基準となる吊枠のデータとセンサ37で計測された吊枠35のデータとの差(ずれ)に基づいて、推力発生器22a、22bの動作を自動で制御する自動制御モードと、ディスプレイ36a上の旋回指示アイコン25d、25eの動作をオペレータが手動で操作する手動制御モードに切り替え可能である。
そして、いずれの場合であっても、制御装置36からは、1対の推力発生器22a、22bを駆動する信号が出力され、その1対の推力発生器22a、22bを個々に駆動制御する。また、1対の推力発生器22a、22b間の推力のバランスをとりながら、吊枠35の回転方向の向きを調整して、所望する吊枠35の向きを表す吊枠アイコン25aの上に実際の向きを表す吊枠アイコン25bが重なるようにする。この2つアイコン25a、25bの重なりにより、実際の吊荷14の位置、及び、吊荷14の向きが所望する位置にそれぞれ配置される。
このようにして、吊荷14の位置及び向きが調整されたら、吊り下げ工程S10に移行して、再度、ワイヤー13を延ばし、吊荷14と吊枠35とを一体に海底付近まで吊下ろす。また、その設置される海底付近の位置での吊枠35の向き、すなわち吊荷14の向きを、センサ37における第2コンパス37bからの情報で計測する(吊荷の向き検出工程S11)。
続いて、制御装置36では、吊枠35の向きを調整する推力発生器駆動工程S12に移行する。その推力発生器駆動工程S12では、吊荷の向き検出工程S11で検出された、基準となる吊枠のデータとセンサ37で計測された吊枠35のデータとの差(ずれ)に基づいて、推力発生器22a、22bの動作を個々に制御する。そして、推力発生器22a、22b間の推力のバランスをとりながら、吊枠35の回転方向の向きを微調整して、所望する吊枠35の向きを表す吊枠アイコン25aの上に実際の向きを表す吊枠アイコン25bが重なるようにする。
次いで、最終設置工程S13に入り、クレーン32からワイヤー13を更に延ばし、吊荷14を最終位置に設置する。これにより、吊荷14は、所定の川底、又は、海底等に、所定の向きで設置される。その設置が終了したら、制御装置36からの信号により、吊枠35上に設けられている図示しないリリース装置を操作し、吊荷14から玉掛け用ワイヤーロープ21を遠隔操作により自動的に取り外す。そして、吊荷14だけを海底等に残し、吊枠35をワイヤー13で吊り上げる。これにより、吊荷14が所定の位置に所定の向きで設置される。以下、この動作を繰り返すことにより、所定量の吊荷14を、所定の状態で水中に設置することができる。
したがって、本発明の第2実施例による水中作業装置の場合でも、クレーン32から延びるワイヤー13により吊枠35と一緒に吊荷14を水中に吊り下げるとともに、水中における吊枠35の向きをセンサ37で検出し、さらに制御手段としての制御装置36がセンサ37の検出結果に基づいて推力発生器22a、22bの動作(駆動)を制御し、その推力発生器22a、22bが吊枠35を旋回させて、その吊枠35の向きが所望の方向と一致するように制御するので、水中に潜って作業をする水中作業員の配置をすることなく、また、例え配置しても単に確認をする程度で簡単に作業を進めることが可能になる。
なお、上記第2の実施例において、前記センサ37における第1のコンパス37aとは別に、ワイヤー13が垂れ下がるクレーン32の先端部分等に、前記第1実施例の場合と同様に、すなわち図6(及び図7)中に点線で描くようにGPSセンサ17等を取り付け、そのGPSセンサ17の位置情報を制御装置36に逐次入力するようにしてもよい。このようにする、制御装置36では、第1コンパス37aからの位置情報とGPSセンサ17からの位置情報を使用して、吊り下げている吊枠35の位置をより正確に認識することができる。そして、吊り下げ位置決定工程S6の処理作業を簡略化することができる。
なお、本発明は、本発明の精神を逸脱しない限り種々の改変を為すことができ、そして、本発明が該改変されたものに及ぶことは当然である。
本発明は、波消しブロックや被覆ブロック等のコンクリート製ブロックを水中に設置する場合について説明したが、これに限定されることなく、金属製構築物、機械装置等を設置する場合にも応用できる。
10 水中作業装置
11 クレーン船
12 クレーン
13 ワイヤー
14 吊荷
15 吊枠
15a〜15d 桟
16 制御装置(制御手段)
16a ディスプレイ
17 GPSセンサ
18 センサ(検出手段)
19 スイベル
20 吊り下げ用ワイヤーロープ
21 玉掛け用ワイヤーロープ
22a、22b 推力発生器
24 信号ケーブル
25a 所望する向きを表す吊枠アイコン
25b 実際の向きを表す吊枠アイコン
25c 旋回指示情報(外部入力手段)
25d、25e 旋回指示アイコン
30 水中作業装置
31 クレーン船
32 クレーン
35 吊枠
35a〜35d 桟
36 制御装置(制御手段)
36a ディスプレイ
37 センサ(検出手段)
37a 第1のコンパス
37b 第2のコンパス
C 中心位置
S1 吊り下げ位置決定工程
S2 吊荷吊り下げ工程
S3 吊荷の向き検出工程
S4 推力発生器駆動工程
S5 最終設置工程
S6 吊り下げ位置決定工程
S7 吊荷吊り下げ工程
S8 吊荷の向き検出工程
S9 推力発生器駆動工程
S10 吊荷吊り下げ工程
S11 吊荷の向き検出工程
S12 推力発生器駆動工程
S13 最終設置工程

Claims (4)

  1. クレーンから延びるワイヤーにより吊荷を水中に吊り下げて所定の位置に設置するための水中作業装置において、
    前記ワイヤーと前記吊荷との間に設けられて、該吊荷を着脱自在に保持して該吊荷と一体に移動する吊枠と、
    少なくとも一部が大気中に露出された状態で前記吊荷の位置及び絶対方位を計測する第1のコンパスと、前記吊枠を水没させた状態で所定の基準方位に対する前記吊枠の相対方位を計測して前記吊枠の水中向きを計測する第2のコンパスと、を備えた検出手段と、
    前記水中において前記吊枠を旋回させる推力発生器と、
    前記第2のコンパスが計測した前記吊枠の水中向きを予め設定された設置方向に一致させるように前記推力発生器による動作を制御する制御手段と、
    を備えていることを特徴とする水中作業装置。
  2. 前記第2のコンパスは、前記吊枠の角速度を検出する、ことを特徴とする請求項1に記載の水中作業装置。
  3. クレーンから延びるワイヤーにより吊荷を水中に吊り下げて所定の位置に設置するための水中作業装置において、
    前記ワイヤーと前記吊荷との間に設けられて、該吊荷を着脱自在に保持して該吊荷と一体に移動する吊枠と、
    少なくとも一部が大気中に露出された状態で前記吊荷の位置及び絶対方位を計測する第1のコンパスと、前記吊枠を水没させた状態で所定の基準方位に対する前記吊枠の相対方位を計測して前記吊枠の水中向きを計測する第2のコンパスと、を備えた検出手段と、
    前記水中において前記吊枠を旋回させる推力発生器と、
    前記吊枠の向きを予め設定された設置方向と前記第2のコンパスによって計測された前記吊枠の水中向きとを表示するとともに、前記推力発生器による前記吊枠の旋回操作を外部より指示するためのアイコンを表示するディスプレイと、
    前記吊枠の水中向きと前記吊枠の旋回操作を指示する入力手段からの入力指示に基づいて、前記水中向きを前記設置方向に一致させるように前記推力発生器による動作と前記ディスプレイ上の表示を制御する制御手段と、
    を備えることを特徴とする水中作業装置。
  4. クレーンから延びるワイヤーにより吊荷を水中に吊り下げて所定の位置に設置するための水中作業方法において、
    吊枠を介して前記吊荷を前記ワイヤーに吊す吊荷吊り下げ工程と、
    少なくとも一部が大気中に露出された状態で前記吊荷の位置及び絶対方位を計測する第1のコンパスを用いて前記吊枠の位置及び向きを計測する吊り下げ位置決定工程と、
    前記吊枠を水没させた状態で所定の基準方位に対する前記吊枠の相対方位を計測して前記吊枠の水中向きを計測する第2のコンパスを用いて前記吊枠の水中向きを検出する吊枠の向き検出工程と、
    前記吊枠の向き検出工程で検出された前記吊枠の水中向きを予め設定された設置方向に一致するように該吊枠を回転させる推力発生器を駆動する推力発生器駆動工程と、
    を含むことを特徴とする水中作業方法。
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