JP6525121B1 - 耐食性皮膜、包装材料、包装材料の製造方法、耐食性皮膜付き金属材料、及び樹脂フィルム付き金属材料、電池用包装材料、電池用包装材料の製造方法、及び電池 - Google Patents

耐食性皮膜、包装材料、包装材料の製造方法、耐食性皮膜付き金属材料、及び樹脂フィルム付き金属材料、電池用包装材料、電池用包装材料の製造方法、及び電池 Download PDF

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Abstract

第1の開示の電池用包装材料は、少なくとも、基材層と、バリア層と、接着層と、熱融着性樹脂層とをこの順に備える積層体から構成されており、前記バリア層の前記接着層側の表面には、前記接着層と接面している耐食性皮膜を備えており、前記耐食性皮膜のX線光電子分光法による分析によって、287eVから290eVの範囲にO−C=O結合のC1sに由来するピークPOCOと、285eVにC−C結合のC1sに由来するピークPC-Cが検出され、前記ピークPOCOの高さをピークPC-Cの高さで除して得られるピーク高さ比の値PCOOH/C-Cが、0.10以上0.50以下の範囲にある。

Description

本開示は、耐食性皮膜、包装材料、包装材料の製造方法、耐食性皮膜付き金属材料、及び樹脂フィルム付き金属材料、電池用包装材料、電池用包装材料の製造方法、及び電池に関する。
従来、様々なタイプの電池が開発されている。これらの電池において、電極、電解質などにより構成される電池素子は、包装材料などにより封止される必要がある。電池用包装材料としては、金属製の包装材料が多用されている。
近年、電気自動車、ハイブリッド電気自動車、パーソナルコンピュータ、カメラ、携帯電話などの高性能化に伴い、多様な形状を有する電池が求められている。また、電池には、薄型化、軽量化なども求められている。しかしながら、従来多用されている金属製の包装材料では、電池形状の多様化に追従することが困難である。また、金属製であるため、包装材料の軽量化にも限界がある。
そこで、多様な形状に加工が容易で、薄型化や軽量化を実現し得る電池用包装材料として、基材層/バリア層/熱融着性樹脂層が順次積層されたフィルム状の積層体が提案されている(例えば、特許文献1を参照)。
このようなフィルム状の電池用包装材料においては、一般的に、成形により凹部が形成され、当該凹部によって形成された空間に電極や電解液などの電池素子を配し、熱融着性樹脂層同士を熱融着させることにより、電池用包装材料の内部に電池素子が収容された電池が得られる。
また、従来、食品、医薬品、化粧品、洗剤、電池素子(電解液、電極など)などを包装する材料として、金属などにより構成されたバリア層の一方面に基材層、他方面に熱融着性樹脂層が積層されたフィルム状の包装材料が知られている。例えば、特許文献2には、基材フィルム層と、バリア層と、シーラント層とが順次積層された加熱滅菌処理用包装材料が開示されている。
このようなフィルム状の積層体により構成された包装材料においては、熱融着性樹脂層同士が対向するようにして成形し、内容物を収容できる空間を設け、当該空間に内容物を収容し、熱融着性樹脂層同士を熱融着させることにより、内容物を密封することができる。
例えば、食品などを包装する食品用包装材料として、このようなバリア層を備えたフィルム状の包装材料を用いて、内容物である食品を密封することにより、内容物を光、酸素、水分、細菌などから保護することができる。内容物が、医薬品、化粧品、洗剤、電池素子などである場合にも同様に、包装材料で内容物を密封することにより、内容物を保護することができる。
特開2008−287971号公報 特開2008−94401号公報
(第1の開示)
電池の内部に水分が侵入すると、水分と電解質などとが反応して、酸性物質を生成することがある。例えば、リチウムイオン電池などに使用されている電解液には、電解質となるフッ素化合物(LiPF6、LiBF4など)が含まれており、フッ素化合物が水と反応すると、酸成分であるフッ化水素を発生することが知られている。
フィルム状の積層体によって形成された電池用包装材料のバリア層は、通常、金属箔などによって構成されており、バリア層に酸が接触すると腐食しやすいという問題がある。このような電池用包装材料の耐酸性を高める技術としては、化成処理によって表面に耐食性皮膜を形成したバリア層を用いる技術が知られている。
従来、耐食性皮膜を形成する化成処理としては、酸化クロムなどのクロム化合物を用いたクロメート処理、リン酸化合物を用いたリン酸処理など種々の方法が知られている。
バリア層の表面に耐食性皮膜を形成することによって、バリア層の腐食を抑制することができるが、バリア層の表面に位置する耐食性皮膜と、これに接面している層との密着性を高めることが求められている。例えば、バリア層と熱融着性樹脂層との間の密着性を向上させるために、バリア層と熱融着性樹脂層との間に接着層が設けられることがある。
近年、電池の用途は多岐に亘っており、苛酷な環境で長期間に亘って使用されることなどを考慮して、バリア層と熱融着性樹脂層との間の密着性は、より一層高いものが求められている。
このような状況下、第1の開示は、少なくとも、基材層と、バリア層と、接着層と、熱融着性樹脂層とをこの順に備える積層体から構成された電池用包装材料において、バリア層の表面に設けられた耐食性皮膜と、これに接面している接着層との密着性に優れた電池用包装材料を提供することを主な目的とする。さらに、第1の開示は、当該電池用包装材料の製造方法、及び当該電池用包装材料を用いた電池を提供することも目的とする。
(第2の開示)
また、バリア層の表面に耐食性皮膜を形成することによって、バリア層の腐食を抑制することができるが、あわせてバリア層の表面に位置する耐食性皮膜と、これに接面している層との密着性を高めることが求められている。例えば、バリア層と基材層との間の密着性を向上させるために、バリア層と基材層との間に接着剤層が設けられることがある。
近年、電池の用途は多岐に亘っており、苛酷な環境で長期間に亘って使用されることなどを考慮して、バリア層と基材層との間の密着性は、より一層高いものが求められている。
このような状況下、第2の開示は、少なくとも、基材層と、接着剤層と、バリア層と、熱融着性樹脂層とをこの順に備える積層体から構成された電池用包装材料において、バリア層の表面に設けられた耐食性皮膜と、これに接面している接着剤層との密着性に優れた電池用包装材料を提供することを主な目的とする。さらに、第2の開示は、当該電池用包装材料の製造方法、及び当該電池用包装材料を用いた電池を提供することも目的とする。
(第3の開示)
上記のようなフィルム状の包装材料によって密封される内容物の種類は多種多様なものが存在する。例えば、食品であれば、食酢などの酸成分や、アルコールなどのバリア層の腐食を誘発する成分が密封されることがある。また、レトルト殺菌用の包装材料として使用される場合には、内容物を含んだ状態で、100℃以上の高温環境に晒される。また、医薬品、化粧品、洗浄剤などにおいても、酸性やアルカリ性の内容物が存在している。
さらに、当該包装材料に電解液や電極などの電池素子を密封して電池として利用されることもある。例えば、リチウムイオン電池などに使用されている電解液には、電解質となるフッ素化合物(LiPF6、LiBF4など)が含まれており、フッ素化合物が水と反応すると、酸成分であるフッ化水素を発生することが知られている。
フィルム状の積層体によって形成された包装材料のバリア層は、通常、金属箔などによって構成されており、内容物に由来する酸成分やアルカリ成分がバリア層に接触すると腐食しやすいという問題がある。このような包装材料の耐食性を高める技術としては、化成処理によって表面に耐食性皮膜を形成したバリア層を用いる技術が知られている。
従来、耐食性皮膜を形成する化成処理としては、酸化クロムなどのクロム化合物を用いたクロメート処理、リン酸化合物を用いたリン酸処理など種々の方法が知られている。
バリア層の表面に耐食性皮膜を形成することによって、バリア層の腐食を抑制することができるが、バリア層の表面に位置する耐食性皮膜と、これに接面している層との密着性を高めることが求められている。例えば、バリア層と熱融着性樹脂層との間の密着性を向上させるために、バリア層と熱融着性樹脂層との間に接着層が設けられることがある。
近年、内容物の種類や包装材料の用途は多岐に亘っており、バリア層と熱融着性樹脂層との間の密着性は、より一層高いものが求められている。
また、幅広い分野において、金属材料が用いられている。金属材料の表面は、酸などによって腐食しやすいという問題を有しているため、金属材料の表面に前述のような耐食性皮膜を設ける技術が知られている。
さらに、金属材料には、保護性能や意匠性を向上させる目的で、表面を樹脂フィルムで被覆することがある。樹脂フィルムで被覆された金属材料は、自動車部品、家電部品、建築部材、飲料用容器等の分野に広く利用されている。金属材料に樹脂被覆層を形成する手段としては、塗装、フィルムラミネート加工及び印刷等の方法が挙げられる。
このような樹脂フィルムが積層された金属材料の表面にも、下地処理として、耐食性皮膜が設けられており、樹脂フィルムと金属材料との間の密着性は、より一層高いものが求められている。
このような状況下、第3の開示は、電解液などの金属材料の腐食を誘発する成分が存在する雰囲気における、金属材料(例えば、包装材料のバリア層など)と、その上に設けられる樹脂層(例えば、前述の接着層や樹脂フィルムなど)との間の密着性の低下を抑制する耐食性皮膜を提供することを主な目的とする。また、第3の開示は、少なくとも、基材層と、バリア層と、熱融着性樹脂層とをこの順に備える積層体から構成された包装材料であって、電解液などのバリア層の腐食を誘発する成分が存在する雰囲気における、バリア層の表面に設けられた耐食性皮膜と、これに接面している層との密着性の低下が抑制された包装材料及びその製造方法を提供することも目的とする。また、第3の開示は、金属材料の表面に耐食性皮膜を備える耐食性皮膜付き金属材料、さらに、当該耐食性皮膜の上に、さらに樹脂フィルムを備える樹脂フィルム付き金属材料を提供することも目的とする。
(第1の開示)
本発明者らは、上記のような第1の開示の課題を解決すべく鋭意検討を行った。その結果、少なくとも、基材層と、バリア層と、接着層と、熱融着性樹脂層とをこの順に備える積層体から構成されており、バリア層の接着層側の表面には、前記接着層と接面している耐食性皮膜を備えており、耐食性皮膜のX線光電子分光法(XPS)による分析によって、287eVから290eVの範囲にO−C=O結合に由来するピークPOCOと、285eVにC−C結合に由来するピークPC-Cが検出され、ピークPOCOの高さをピークPC-Cの高さで除して得られるピーク高さ比の値POCO/C-Cが、0.10以上0.50以下の範囲にある電池用包装材料は、バリア層の表面に設けられた耐食性皮膜と、これに接面している接着層との密着性に優れていることを見出した。
第1の開示は、これらの知見に基づいて、さらに検討を重ねることにより完成された発明である。
すなわち、第1の開示は、下記に掲げる態様の発明を提供する。
少なくとも、基材層と、バリア層と、接着層と、熱融着性樹脂層とをこの順に備える積層体から構成されており、
前記バリア層の前記接着層側の表面には、前記接着層と接面している耐食性皮膜を備えており、
前記耐食性皮膜のX線光電子分光法による分析によって、287eVから290eVの範囲にO−C=O結合のC1sに由来するピークPOCOと、285eVにC−C結合のC1sに由来するピークPC-Cが検出され、
前記ピークPOCOの高さを前記ピークPC-Cの高さで除して得られるピーク高さ比の値POCO/C-Cが、0.10以上0.50以下の範囲にある、電池用包装材料。
(第2の開示)
また、本発明者らは、上記のような第2の開示の課題を解決すべく鋭意検討を行った。その結果、少なくとも、基材層と、接着剤層と、バリア層と、熱融着性樹脂層とをこの順に備える積層体から構成されており、バリア層の接着剤層側の表面には、前記接着剤層と接面している耐食性皮膜を備えており、耐食性皮膜のX線光電子分光法(XPS)による分析によって、287eVから290eVの範囲にO−C=O結合に由来するピークPOCOと、285eVにC−C結合に由来するピークPC-Cが検出され、ピークPOCOの高さをピークPC-Cの高さで除して得られるピーク高さ比の値POCO/C-Cが、0.10以上0.50以下の範囲にある電池用包装材料は、バリア層の表面に設けられた耐食性皮膜と、これに接面している接着剤層との密着性に優れていることを見出した。
第2の開示は、これらの知見に基づいて、さらに検討を重ねることにより完成された発明である。
すなわち、第2の開示は、下記に掲げる態様の発明を提供する。
少なくとも、基材層と、接着剤層と、バリア層と、熱融着性樹脂層とをこの順に備える積層体から構成されており、
前記バリア層の前記接着剤層側の表面には、前記接着剤層と接面している耐食性皮膜を備えており、
前記耐食性皮膜のX線光電子分光法による分析によって、287eVから290eVの範囲にO−C=O結合のC1sに由来するピークPOCOと、285eVにC−C結合のC1sに由来するピークPC-Cが検出され、
前記ピークPOCOの高さを前記ピークPC-Cの高さで除して得られるピーク高さ比の値POCO/C-Cが、0.10以上0.50以下の範囲にある、電池用包装材料。
(第3の開示)
また、本発明者らは、上記のような第3の開示の課題を解決すべく鋭意検討を行った。その結果、X線光電子分光法による分析によって、287eVから290eVの範囲にO−C=O結合のC1sに由来するピークPOCOと、285eVにC−C結合のC1sに由来するピークPC-Cが検出され、ピークPOCOの高さを前記ピークPC-Cの高さで除して得られるピーク高さ比の値POCO/C-Cが、0.10以上0.50以下の範囲にある耐食性皮膜は、例えば、電解液などの金属材料の腐食を誘発する成分が存在する雰囲気において、包装材料のバリア層などの金属材料と、例えば、接着層や樹脂フィルムなどの樹脂層との間の密着性の低下を抑制できることを見出した。
第3の開示は、これらの知見に基づいて、さらに検討を重ねることにより完成された発明である。
すなわち、第3の開示は、下記に掲げる態様の発明を提供する。
X線光電子分光法による分析によって、287eVから290eVの範囲にO−C=O結合のC1sに由来するピークPOCOと、285eVにC−C結合のC1sに由来するピークPC-Cが検出され、
前記ピークPOCOの高さを前記ピークPC-Cの高さで除して得られるピーク高さ比の値POCO/C-Cが、0.10以上0.50以下の範囲にある、耐食性皮膜。
(第1の開示)
第1の開示によれば、少なくとも、基材層と、バリア層と、接着層と、熱融着性樹脂層とをこの順に備える積層体から構成された電池用包装材料において、バリア層の表面に設けられた耐食性皮膜と、これに接面している接着層との密着性に優れた電池用包装材料を提供することができる。また、第1の開示によれば、当該電池用包装材料の製造方法、及び当該電池用包装材料を用いた電池を提供することもできる。
(第2の開示)
第2の開示によれば、少なくとも、基材層と、接着剤層と、バリア層と、熱融着性樹脂層とをこの順に備える積層体から構成された電池用包装材料において、バリア層の表面に設けられた耐食性皮膜と、これに接面している接着剤層との密着性に優れた電池用包装材料を提供することができる。また、第2の開示によれば、当該電池用包装材料の製造方法、及び当該電池用包装材料を用いた電池を提供することもできる。
(第3の開示)
第3の開示によれば、電解液などの金属材料の腐食を誘発する成分が存在する雰囲気における、金属材料と、その上に設けられる樹脂層との間の密着性の低下を抑制する耐食性皮膜を提供することができる。また、第3の開示によれば、少なくとも、基材層と、バリア層と、熱融着性樹脂層とをこの順に備える積層体から構成された包装材料であって、電解液などの金属材料の腐食を誘発する成分が存在する雰囲気における、バリア層の表面に設けられた耐食性皮膜と、これに接面している層との密着性の低下が抑制された包装材料及びその製造方法を提供することもできる。また、第3の開示によれば、金属材料の表面に耐食性皮膜を備える耐食性皮膜付き金属材料、さらに、当該耐食性皮膜の上に、さらに樹脂フィルムを備える樹脂フィルム付き金属材料を提供することもできる。
第1の開示の電池用包装材料の断面構造の一例を示す模式図である。 第1の開示の電池用包装材料の断面構造の一例を示す模式図である。 第1の開示の電池用包装材料の断面構造の一例を示す模式図である。 第1の開示の電池用包装材料の断面構造の一例を示す模式図である。 第2の開示の電池用包装材料の断面構造の一例を示す模式図である。 第2の開示の電池用包装材料の断面構造の一例を示す模式図である。 第2の開示の電池用包装材料の断面構造の一例を示す模式図である。 第2の開示の電池用包装材料の断面構造の一例を示す模式図である。 第3の開示の包装材料の断面構造の一例を示す模式図である。 第3の開示の包装材料の断面構造の一例を示す模式図である。 第3の開示の包装材料の断面構造の一例を示す模式図である。 第3の開示の包装材料の断面構造の一例を示す模式図である。 第3の開示の耐食性皮膜付き金属材料の断面構造の一例を示す模式図である。 第3の開示の樹脂フィルム付き金属材料の断面構造の一例を示す模式図である。
本開示は、以下の第1の開示、第2の開示、及び第3の開示を包含している。以下、始めに第1の開示について詳述し、続いて第2の開示、第3の開示について、順に詳述する。なお、第2の開示及び第3の開示の説明において、第1の開示と重複する内容の説明については、適宜省略する。
なお、本明細書において、数値範囲については、「〜」で示される数値範囲は「以上」、「以下」を意味する。例えば、2〜15mmとの表記は、2mm以上15mm以下を意味する。
(第1の開示)
第1の開示の電池用包装材料は、少なくとも、基材層と、バリア層と、接着層と、熱融着性樹脂層とをこの順に備える積層体から構成されており、バリア層の前記接着層側の表面には、前記接着層と接面している耐食性皮膜を備えており、耐食性皮膜のX線光電子分光法(以下、XPSと表記することがある)による分析によって、287eVから290eVの範囲にO−C=O結合に由来するピークPOCOと、285eVにC−C結合に由来するピークPC-Cが検出され、ピークPOCOの高さをピークPC-Cの高さで除して得られるピーク高さ比の値POCO/C-Cが、0.10以上0.50以下の範囲にあることを特徴とする。以下、図1から図4を参照しながら、第1の開示の電池用包装材料、当該電池用包装材料の製造方法、及び当該電池用包装材料を用いた電池について、詳述する。
1−1.電池用包装材料の積層構造
第1の開示の電池用包装材料は、例えば図1から図4に示すように、少なくとも、基材層1、バリア層3、接着層5、及び熱融着性樹脂層4をこの順に有する積層体から構成されている。第1の開示の電池用包装材料において、基材層1が最外層側になり、熱融着性樹脂層4は最内層になる。即ち、電池の組み立て時に、電池素子の周縁に位置する熱融着性樹脂層4同士が熱融着して電池素子を密封することにより、電池素子が封止される。
図1から図4に示されるように、第1の開示の電池用包装材料においては、バリア層3の接着層5側の表面に、接着層5と接面している耐食性皮膜3aを備えている。図1は、バリア層3の接着層5側の表面にのみ耐食性皮膜3aを備えている模式図を示している。また、図2及び図4は、バリア層3の両面に、それぞれ、耐食性皮膜3a,3bを備える場合の模式図を示している。なお、後述の通り、第1の開示の電池用包装材料においては、バリア層3の接着層5側の表面のみに、後述のXPSによる分析によって検出されるピーク特性を有する耐食性皮膜3aを備えていてもよいし、バリア層3の両面に、それぞれ、後述のXPSによる分析によって検出されるピーク特性を有する耐食性皮膜3a,3bを備えていてもよい。
第1の開示の電池用包装材料は、図2から図4に示すように、基材層1とバリア層3との間に、これらの接着性を高める目的で、必要に応じて、接着剤層2を備えていてもよい。また、第1の開示の電池用包装材料は、図4に示すように、意匠性、耐電解液性、耐擦過性、成形性の向上などを目的として、必要に応じて、基材層1のバリア層3とは反対側に、必要に応じて、表面被覆層6を備えていてもよい。
第1の開示の電池用包装材料10を構成する積層体の厚さとしては、特に制限されないが、電池用包装材料の厚さを薄くして電池のエネルギー密度を高めつつ、成形性に優れた電池用包装材料とする観点からは、例えば180μm以下、好ましくは150μm以下、より好ましくは60〜180μm程度、さらに好ましくは60〜150μm程度が挙げられる。
1−2.電池用包装材料を形成する各層
[基材層1]
第1の開示の電池用包装材料において、基材層1は最外層側に位置する層である。基材層1を形成する素材については、絶縁性を備えるものであることを限度として特に制限されるものではない。基材層1を形成する素材としては、例えば、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、フッ素樹脂、ポリウレタン樹脂、珪素樹脂、フェノール樹脂、ポリカーボネート樹脂及びこれらの混合物や共重合物などの樹脂フィルムが挙げられる。これらの中でも、好ましくはポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂が挙げられ、より好ましくはポリアミド樹脂が挙げられる。ポリエステル樹脂としては2軸延伸ポリエステル樹脂が好ましく、ポリアミド樹脂としては2軸延伸ポリアミド樹脂が好ましい。ポリエステル樹脂としては、具体的には、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート、共重合ポリエステルなどが挙げられる。また、ポリアミド樹脂としては、具体的には、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン6とナイロン66との共重合体、ナイロン6,10、ポリメタキシリレンアジパミド(MXD6)などが挙げられる。
基材層1は、1層の樹脂フィルムから形成されていてもよいが、耐ピンホール性や絶縁性を向上させるために、2層以上の樹脂フィルムで形成されていてもよい。具体的には、ポリエステルフィルムとナイロンフィルムとを積層させた多層構造、ナイロンフィルムを複数積層させた多層構造、ポリエステルフィルムを複数積層させた多層構造などが挙げられる。基材層1が多層構造である場合、2軸延伸ナイロンフィルムと2軸延伸ポリエステルフィルムの積層体、2軸延伸ナイロンフィルムを複数積層させた積層体、2軸延伸ポリエステルフィルムを複数積層させた積層体が好ましい。例えば、基材層1を2層の樹脂フィルムから形成する場合、ポリエステル樹脂とポリエステル樹脂を積層する構成、ポリアミド樹脂とポリアミド樹脂を積層する構成、又はポリエステル樹脂とポリアミド樹脂を積層する構成にすることが好ましく、ポリエチレンテレフタレートとポリエチレンテレフタレートを積層する構成、ナイロンとナイロンを積層する構成、又はポリエチレンテレフタレートとナイロンを積層する構成にすることがより好ましい。また、ポリエステル樹脂は、例えば電解液が表面に付着した際に変色し難いことなどから、当該積層構成においては、ポリエステル樹脂が最外層に位置するように基材層1を積層することが好ましい。基材層1を多層構造とする場合、各層の厚さとして、好ましくは2〜25μm程度が挙げられる。
基材層1を多層の樹脂フィルムで形成する場合、2以上の樹脂フィルムは、接着剤又は接着性樹脂などの接着成分を有する層を介して積層させればよく、使用される接着成分の種類や量などについては、後述する接着剤層2の場合と同様である。なお、2層以上の樹脂を積層させる方法としては、特に制限されず、公知方法が採用でき、例えばドライラミネート法、サンドイッチラミネート法、共押し出しラミネート法などが挙げられ、好ましくはドライラミネート法が挙げられる。ドライラミネート法により積層させる場合には、接着層としてウレタン系接着剤を用いることが好ましい。このとき、接着層の厚さとしては、例えば2〜5μm程度が挙げられる。
第1の開示において、電池用包装材料の成形性を高める観点からは、基材層1の表面には、滑剤が付着していることが好ましい。滑剤としては、特に制限されないが、好ましくはアミド系滑剤が挙げられる。アミド系滑剤の具体例としては、後述の熱融着性樹脂層4で例示したものと同じものが挙げられる。
基材層1の表面に滑剤が存在する場合、その存在量としては、特に制限されないが、好ましくは約3mg/m2以上、より好ましくは4〜15mg/m2程度、さらに好ましくは5〜14mg/m2程度が挙げられる。
基材層1の中には、滑剤が含まれていてもよい。また、基材層1の表面に存在する滑剤は、基材層1を構成する樹脂に含まれる滑剤を滲出させたものであってもよいし、基材層1の表面に滑剤を塗布したものであってもよい。
基材層1の厚さについては、基材層としての機能を発揮すれば特に制限されないが、例えば、3〜50μm程度、好ましくは10〜35μm程度が挙げられる。
[接着剤層2]
第1の開示の電池用包装材料10において、接着剤層2は、基材層1とバリア層3を強固に接着させるために、必要に応じて、これらの間に設けられる層である。第1の開示の接着剤層2についても、後述の第2の開示の接着剤層2に示した構成と同じ構成を採用することができる。
接着剤層2は、基材層1とバリア層3とを接着可能である接着剤によって形成される。接着剤層2の形成に使用される接着剤は、2液硬化型接着剤であってもよく、また1液硬化型接着剤であってもよい。更に、接着剤層2の形成に使用される接着剤については、特に制限されず、化学反応型、溶剤揮発型、熱溶融型、熱圧型などのいずれであってもよい。
接着剤層2の形成に使用できる接着成分としては、具体的には、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート、ポリエチレンイソフタレート、共重合ポリエステルなどのポリエステル系樹脂;ポリカーボネート系樹脂;ポリエーテル系樹脂;ポリウレタン系樹脂;エポキシ系樹脂;フェノール樹脂系樹脂;ナイロン6、ナイロン66、ナイロン12、共重合ポリアミドなどのポリアミド系樹脂;ポリオレフィン、カルボン酸変性ポリオレフィン、金属変性ポリオレフィンなどのポリオレフィン系樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂;セルロース系接着剤;(メタ)アクリル系樹脂;ポリイミド系樹脂;尿素樹脂、メラミン樹脂などのアミノ樹脂;クロロプレンゴム、ニトリルゴム、スチレン−ブタジエンゴムなどのゴム;シリコーン系樹脂などが挙げられる。これらの接着成分は1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。また、これらの接着成分となる樹脂は適切な硬化剤を併用して接着強度を高めることができる。前記硬化剤は、接着成分の持つ官能基に応じて、ポリイソシアネート、多官能エポキシ樹脂、オキサゾリン基含有ポリマー、ポリアミン樹脂、酸無水物などから適切なものを選択する。これらの接着成分と硬化剤として、好ましくは各種ポリオール(前記接着成分で水酸基を有する物)とポリイソシアネートからなるポリウレタン系接着剤が挙げられる。さらに好ましくはポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、およびアクリルポリオール等のポリオールを主剤として、芳香族系又は脂肪族系のポリイソシアネートを硬化剤とした二液硬化型のポリウレタン接着剤が挙げられる。
接着剤層2には、顔料などの着色剤が含まれていてもよい。
接着剤層2の厚さについては、接着層としての機能を発揮すれば特に制限されないが、例えば、1〜10μm程度、好ましくは2〜5μm程度が挙げられる。
[バリア層3]
電池用包装材料において、バリア層3は、電池用包装材料の強度向上の他、電池内部に水蒸気、酸素、光などが侵入することを防止する機能を有する層である。バリア層3は、金属層、すなわち、金属で形成されている層であることが好ましい。バリア層3を構成する金属としては、具体的には、アルミニウム、ステンレス鋼、チタンなどが挙げられ、好ましくはアルミニウムが挙げられる。バリア層3は、例えば、金属箔や金属蒸着膜、これらの蒸着膜を設けたフィルムなどにより形成することができ、金属箔により形成することが好ましく、アルミニウム箔により形成することがさらに好ましい。
バリア層3がアルミニウム箔により構成されている場合、アルミニウム箔は、アルミニウム合金により形成されている。電池用包装材料の製造時に、バリア層3にしわやピンホールが発生することを防止する観点からは、バリア層は、例えば、焼きなまし処理済みのアルミニウム(JIS H4160:1994 A8021H−O、JIS H4160:1994 A8079H−O、JIS H4000:2014 A8021P−O、JIS H4000:2014 A8079P−O)など軟質アルミニウム箔により形成することがより好ましい。
また、ステンレス鋼箔としては、オーステナイト系のステンレス鋼箔、フェライト系のステンレス鋼箔などが挙げられる。ステンレス鋼箔は、オーステナイト系のステンレス鋼により構成されていることが好ましい。
ステンレス鋼箔を構成するオーステナイト系のステンレス鋼の具体例としては、SUS304、SUS301、SUS316Lなどが挙げられ、これら中でも、SUS304が特に好ましい。
バリア層3の厚さは、水蒸気などのバリア層としての機能を発揮すれば特に制限されないが、包装材料の厚さを薄くする観点からは、上限としては、好ましくは約100μm以下、より好ましくは約80μm以下が挙げられ、下限としては、好ましくは約10μm以上が挙げられ、当該厚みの範囲としては、好ましくは、10〜100μm程度、10〜80μm程度が挙げられる。この厚さは、バリア層3がアルミニウム合金箔により構成されている場合に、特に適している。なお、バリア層3がステンレス鋼箔により構成されている場合、ステンレス鋼箔の厚みとしては、好ましくは約85μm以下、より好ましくは約50μm以下、さらに好ましくは約40μm以下、さらに好ましくは約30μm以下、特に好ましくは約25μm以下が挙げられ、下限としては、約10μm以上が挙げられ、好ましい厚みの範囲としては、10〜85μm程度、10〜50μm程度、より好ましくは10〜40μm程度、より好ましくは10〜30μm程度、さらに好ましくは15〜25μm程度が挙げられる。
[耐食性皮膜3a、3b]
第1の開示の電池用包装材料においては、バリア層3の接着層5側の表面に、接着層5と接面している耐食性皮膜3aを備えている。
第1の開示の電池用包装材料においては、耐食性皮膜3aのX線光電子分光法(XPS)による分析によって、287eVから290eVの範囲にO−C=O結合に由来するピークPOCOと、285eVにC−C結合に由来するピークPC-Cが検出され、ピークPOCOの高さをピークPC-Cの高さで除して得られるピーク高さ比の値POCO/C-Cが、0.10〜0.50の範囲にあることを特徴としている。当該ピーク高さ比の値POCO/C-Cが、このような特定の範囲内にあることにより、バリア層3の表面に設けられた耐食性皮膜3aと、これに接面している接着層5との密着性に優れている。第1の開示の電池用包装材料は、耐食性皮膜3aと接着層5との密着性が高いため、例えば実施例で測定されているような、苛酷な剥離試験を行った場合にも、高い剥離強度を示し、長期間に亘って優れた密着性を発揮し得る。
耐食性皮膜3aと接着層5(さらには、後述の耐食性皮膜3bとこれに隣接する層)との密着性をより一層向上させる観点からは、当該ピーク高さ比の値POCO/C-Cとしては、下限は、好ましくは約0.10、より好ましくは0.15が挙げられ、上限は、好ましくは約0.50が挙げられる。また、ピーク高さ比の値POCO/C-Cの好ましい範囲としては、0.10〜0.50、より好ましくは0.15〜0.50程度が挙げられる。
第1の開示の電池用包装材料においては、耐食性皮膜3aと接着層5(さらには、後述の耐食性皮膜3bとこれに隣接する層)との密着性をより一層高める観点から、耐食性皮膜3aのXPSによる分析によって、576eVから581eVの範囲に、クロム化合物のCr2p3/2に由来するピークPCrが検出されることが好ましい。当該ピークが検出されることにより、化成処理により耐食性皮膜3aを形成するための組成物中に、クロム化合物が含まれていることを確認することができる。Cr原子は、皮膜中で−COOH基、−NH2基、−CN基等により配位結合される中心的な役割を持ち、このためポリカルボン酸やそのアンモニウム塩の様な他の配位子となり得る構造を有する官能基と架橋構造を形成し、耐食性、耐薬品性等の耐久性が発現する。
また、同様の観点から、第1の開示の電池用包装材料においては、耐食性皮膜3aのX線光電子分光法による分析によって、132eVから135eVの範囲に、リン酸化合物のP2pに由来するピークPPが検出されることが好ましい。当該ピークPPが検出されることにより、化成処理により耐食性皮膜3aを形成するための組成物中に、リン酸またはその塩が含まれていることを確認することができる。リン酸は化成処理において、金属表面をエッチングして金属表面にリン酸化合物皮膜などの高耐久性の皮膜を形成することが知られている。また、Crの様な配位数の高い金属原子の存在下では、上記の様な配位的な架橋構造にも取り込まれる為、金属表面と上記高耐久性の皮膜との密着に寄与すると考えられる。
また、同様の観点から、第1の開示の電池用包装材料においては、耐食性皮膜3aのXPSによる分析によって、685eVから689eVの範囲に、フッ素化合物のF1sに由来するピークが検出されることが好ましい。当該ピークPFが検出されることにより、化成処理により耐食性皮膜3aを形成するための組成物中に、フッ素化合物が含まれていることを確認することができる。バリア層がアルミニウムの場合、フッ素原子は、アルミニウムと結合して酸化アルミニウム皮膜よりも高耐久性のフッ化アルミニウム皮膜を形成する。
さらに、同様の観点から、第2の開示の電池用包装材料においては、耐食性皮膜3bのX線光電子分光法による分析によって、ピークPCr、ピークPP、ピークPFのうち、少なくともピークPCrが検出されることが好ましく、ピークPCrに加えて、ピークPP及びピークPFの少なくともいずれかが検出されることがより好ましく、ピークPCr、ピークPP、及びピークPFのすべてが検出されることが特に好ましい。
第1の開示の電池用包装材料においては、バリア層3の接着層5側の表面のみに、XPSによる分析によって検出される上記各種ピーク(すなわち、上記ピーク高さ比の値POCO/C-C、さらには、クロム化合物に由来するピークPCr、リン酸化合物に由来するピークPP、及びフッ素化合物に由来するピークPFのうち少なくとも1つ)を有する耐食性皮膜3aを備えていてもよいし、さらに、バリア層3の基材層1側の表面にも、当該各種ピークを有する耐食性皮膜3bを備えていてもよい。耐食性皮膜3bを備えていることにより、バリア層3表面の耐食性皮膜3bと、これに接面している層(例えば、接着剤層2)との密着性についても高めることができ、例えば高温高湿条件下に曝された場合に、基材層1とバリア層3のデラミネーションを防止する効果がある。
耐食性皮膜3a,3bについて、XPSを用いて分析する方法は、具体的には、X線光電子分光分析装置を用いて、次の測定条件で行うことができる。なお、X線光電子分光法の測定条件は、JIS K0162:2010を参考にすることができる。
(測定条件)
入射X線:Mg Kα(非単色化X線、hν=1253.6eV)
X線出力:10kV・20mA(200W)
光電子取込角度:90度(試料法線上にインプットレンズを配置)
測定領域:6mmφ
ピークシフト補正:C1sピークにおいて、ピーク強度が最大となる結合エネルギーが285eVとなるように補正。
電池用包装材料に積層されている耐食性皮膜について、XPSを用いピーク位置(結合エネルギー)を分析する場合、まず、分析すべき側のバリア層に積層されている層(熱融着性樹脂層、接着層など)を物理的に剥離する。この際、水や有機溶剤、酸やアルカリの水溶液などを利用せずに、物理的に剥離させる。バリア層と接着層との間を剥離した後、バリア層の表面に接着層が残存している場合、残存している接着層をAr−GCIBによるエッチングで除去する。このようにして得られたバリア層の表面について、XPSを用いて、耐食性皮膜の分析を行う。また、分析すべき側のバリア層に積層されている層が接着剤層などである場合も同様にして各層を物理的に剥離、エッチング除去して分析を行う。
なお、上記各種ピークの有無は、ピークが明らかな場合はX線光電子分光分析装置のモニタ画面上に表示された検出ピークとして容易に確認出来るが、ピークが小さくて曖昧な場合は、面積や半値幅、同原子の関連ピークの存在の有無に基づいて判断する。具体的には、下記の操作を行って判断する。まず、(1)シャーリー法によるバックグラウンドの差し引きとカーブフィッティング後に、ピーク面積から、その成分が0.1%以上含有されると判断できる場合、当該ピークが存在していると判断する。さらに、補足手段として、(2)フィッティングし出現したピークの半値幅が、装置のエネルギー分解能よりも大きな半値幅をもつこと、及び(3)メインのピーク以外に、メインピークより外殻軌道の光電子に由来するピークも確認されること、などを判断基準とする。なお、通常、X線光電子分光分析装置には解析ソフトが付随しており、実施例においては、装置メーカーであるKratos製の「Vision Processing」を使用した。
耐食性皮膜3a,3bは、バリア層3の表面を、化成処理することにより形成することができる。上記ピーク高さ比の値POCO/C-C、さらには、クロム化合物に由来するピークPCr、リン酸化合物に由来するピークPP、及びフッ素化合物に由来するピークPFのうち少なくとも1つを有する耐食性皮膜を好適に形成する観点から、耐食性皮膜3a,3bは、少なくともCOOH基を有するアクリル系樹脂、クロム化合物、及びリン酸化合物を含む組成物から形成することが好ましい。より具体的には、これらの成分を含む処理液を用いて、バリア層3の表面を化成処理することにより、耐食性皮膜3a,3bを好適に形成することができる。化成処理は、処理液をバリア層3の表面に塗布し、焼き付け処理することにより行うことができる。なお、処理液の組成、処理方法、及び処理条件を適宜調整することによって、上記ピーク高さ比の値POCO/C-Cを上記の範囲に調整することができる。
上記ピーク高さ比の値POCO/C-Cを上記の範囲として、耐食性皮膜3aと接着層5(さらには、耐食性皮膜3bとこれに隣接する層)との密着性をより一層高める観点から、アクリル系樹脂は、ポリアクリル酸、アクリル酸メタクリル酸エステル共重合体、アクリル酸マレイン酸共重合体、アクリル酸スチレン共重合体、またはこれらのナトリウム塩、アンモニウム塩、アミン塩等の誘導体であることが好ましい。特にポリアクリル酸のアンモニウム塩、ナトリウム塩、又はアミン塩等のポリアクリル酸の誘導体が好ましい。第1の開示において、ポリアクリル酸とは、アクリル酸の重合体を意味している。また、アクリル系樹脂は、アクリル酸とジカルボン酸又はジカルボン酸無水物との共重合体であることも好ましく、アクリル酸とジカルボン酸又はジカルボン酸無水物との共重合体のアンモニウム塩、ナトリウム塩、又はアミン塩であることも好ましい。アクリル系樹脂は、1種類のみを用いてもよいし、2種類以上を混合して用いてもよい。
同様の観点から、アクリル系樹脂の重量平均分子量としては、好ましくは1000〜100万程度、より好ましくは3000〜80万程度、さらに好ましくは1万〜80万程度が挙げられる。分子量が大きいほど耐久性は高くなるが、アクリル系樹脂の水溶性は低下し、コーティング液が不安定となり製造安定性に欠けるようになる。逆に分子量が小さいほど、耐久性は低下する。第1の開示においては、アクリル系樹脂の重量平均分子量が1000以上の場合は耐久性が高く、100万以下の場合は製造安定性が良好である。第1の開示において、アクリル系樹脂の重量平均分子量は、標準サンプルとしてポリスチレンを用いた条件で測定された、ゲル浸透クロマトグラフィ(GPC)により測定された値である。
また、アクリル系樹脂の酸価としては、COOH基が多い方が接着性に寄与する効果が高いと考えられるので大きい方が好ましいが、上記の様に塩となっている場合は、酸価ではO−C=O結合の量を反映出来ない場合があるので、第1の開示の様にO−C=O結合をXPSのスペクトルから分析した方が接着性を反映できると考えられる。
同様の観点から、クロム化合物は、フッ化クロム(III)及び硝酸クロム(III)の少なくとも一方であることが好ましい。前述したように、Cr原子を中心とした配位架橋構造や、フッ化アルミニウムによる高耐久性の皮膜構造を形成すると考えられる。
また、上記の様な耐食性皮膜3a,3bに架橋構造を付与して高耐久性の皮膜とする手法として、COOH基と反応する架橋剤を使用する方法もある。前記架橋剤としては、イソシアネート基を有する化合物、オキサゾリン基を有する化合物、アミノ基を有する化合物、及びエポキシ基を有する化合物などが好適に使用できる。
さらに、耐食性皮膜3a,3bを形成する組成物には、リン酸がさらに含まれることが好ましい。リン酸は、バリア層表面の洗浄効果(具体的には、バリア層表面の劣化した酸化皮膜や汚れを取り除く効果)や、焼き付け後の皮膜中でリン酸イオンとしてバリア層表面やクロムイオン等の金属イオンに配位して架橋構造を形成する効果を有する。第1の開示では、耐食性皮膜のカルボン酸イオンが同様の効果を奏すると考えられるため、リン酸は必須ではないが、バリア層の洗浄効果を高めて、電池用包装材料を安定的に量産する観点からは、リン酸を用いることが好ましい。
耐食性皮膜3aと接着層5(さらには、耐食性皮膜3bとこれに隣接する層)との密着性をより一層高める観点から、耐食性皮膜3a,3bを形成する組成物(処理液)の特に好ましい組成としては、ポリアクリル酸とフッ化クロム(III)とリン酸を含む組成物、ポリアクリル酸とフッ化クロム(III)を含む組成物、アクリル酸メタクリル酸エステル共重合体とフッ化クロム(III)とリン酸を含む組成物、アクリル酸メタクリル酸エステル共重合体と硝酸クロム(III)とリン酸を含む組成物、アクリル酸マレイン酸共重合体のナトリウム塩とフッ化クロム(III)とリン酸を含む組成物、アクリル酸スチレン共重合体とフッ化クロム(III)とリン酸を含む組成物、ポリアクリル酸の各種の塩(ナトリウム塩、アンモニウム塩、アミン塩など)とフッ化クロム(III)とリン酸を含む組成物が挙げられる。
耐食性皮膜を形成する処理液の固形分濃度としては、バリア層への処理液の塗布、焼き付けによって、上記ピーク高さ比の値POCO/C-C、さらには、クロム化合物に由来するピークPCr、リン酸化合物に由来するピークPP、及びフッ素化合物に由来するピークPFのうち少なくとも1つを有する耐食性皮膜が形成されれば、特に制限されないが、例えば1〜10質量%程度が挙げられる。
耐食性皮膜3a,3bの厚さとしては、特に制限されないが、耐食性皮膜3aと接着層5(さらには、耐食性皮膜3bとこれに隣接する層)との密着性を効果的に高める観点からは、好ましくは1nm〜10μm程度、より好ましくは1〜100nm程度、さらに好ましくは1〜50nm程度が挙げられる。なお、耐食性皮膜の厚さは、透過電子顕微鏡による観察、又は、透過電子顕微鏡による観察と、エネルギー分散型X線分光法もしくは電子線エネルギー損失分光法との組み合わせによって測定することができる。
同様の観点から、バリア層3の表面1m2当たりの耐食性皮膜3a,3b中のCr量としては、質量比で、好ましくは0.5〜30%程度、より好ましくは1〜20%程度、さらに好ましくは3〜10%程度が挙げられる。
耐食性皮膜3a,3bを形成する組成物をバリア層3の表面に塗布する方法としては、例えば、バーコート法、ロールコート法、グラビアコート法、浸漬法などが挙げられる。
上記ピーク高さ比の値POCO/C-Cを上記所定の範囲に設定して、耐食性皮膜3aと接着層5(さらには、耐食性皮膜3bとこれに隣接する層)との密着性を向上させる観点から、処理液を焼き付けして耐食性皮膜にする際の加熱温度としては、好ましくは120〜210℃程度、より好ましくは140〜190℃程度が挙げられる。また、同様の観点から、焼き付けする時間としては、好ましくは1〜30秒程度、より好ましくは5〜10秒程度が挙げられる。
バリア層3の表面の化成処理をより効率的に行う観点から、バリア層3の表面に耐食性皮膜を設ける前には、アルカリ浸漬法、電解洗浄法、酸洗浄法、電解酸洗浄法、酸活性化法などの公知の処理方法で脱脂処理を行うことが好ましい。
[接着層5]
第1の開示の電池用包装材料において、接着層5は、バリア層3と熱融着性樹脂層4との密着性を高めるために、これらの間に設けられる層である。より具体的には、接着層5は、バリア層3の表面の耐食性皮膜3aと接面するようにして設けられている。
一般に、バリア層と熱融着性樹脂層との密着性を高める観点からは、これらの間に接着層を有していることが好ましいが、バリア層の熱融着性樹脂層側の表面に耐食性皮膜を備えている場合には、耐食性皮膜と接着層との間で密着性が低下することがある。これに対して、第1の開示の電池用包装材料においては、耐食性皮膜3aが前述の特定のピーク高さ比の値POCO/C-Cを有しているため、耐食性皮膜3aと接着層5との間の密着性が効果的に高められている。すなわち、第1の開示の電池用包装材料において、バリア層3の表面の耐食性皮膜3aと内側の熱融着性樹脂層4とが、接着層5を介して積層されている態様において、耐食性皮膜を備えたバリア層と内側の層との密着性に優れるという効果を特に有効に発揮することができる。
接着層5は、耐食性皮膜3aと熱融着性樹脂層4とを接着可能である樹脂によって形成される。接着層5の形成に使用される樹脂としては、その接着機構、接着剤成分の種類などは、例えば、接着剤層2で例示した接着剤と同様のものが使用できる。また、接着層5の形成に使用される樹脂としては、ポリオレフィン、環状ポリオレフィン、酸変性ポリオレフィン、酸変性環状ポリオレフィンなどのポリオレフィン系樹脂も使用でき、後述の熱融着性樹脂層4で例示する樹脂成分も使用できる。また、接着層5を構成している樹脂は、ポリオレフィン骨格を含んでいても含んでいなくてもよく、ポリオレフィン骨格を含んでいることが好ましい。接着層5を構成している樹脂がポリオレフィン骨格を含むことは、例えば、赤外分光法、ガスクロマトグラフィー質量分析法などにより分析可能であり、分析方法は特に問わない。また、接着層5を構成している樹脂を赤外分光法で分析すると、無水マレイン酸に由来するピークが検出されることが好ましい。例えば、赤外分光法にて無水マレイン酸変性ポリオレフィンを測定すると、波数1760cm-1付近と波数1780cm-1付近に無水マレイン酸由来のピークが検出される。ただし、酸変性度が低いとピークが小さくなり検出されない場合がある。その場合は核磁気共鳴分光法にて分析可能である。
耐食性皮膜3aと接着層5(さらには、耐食性皮膜3bとこれに隣接する層)との密着性を向上させる観点から、接着層5は、酸変性ポリオレフィンを含むことが好ましい。酸変性ポリオレフィンは、ポリオレフィンをカルボン酸などの酸成分でブロック重合又はグラフト重合することにより変性したポリマーである。ポリオレフィンを変性する酸成分としては、例えば、マレイン酸、アクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、無水マレイン酸、無水イタコン酸などのカルボン酸又はその無水物が挙げられる。また、変性されるポリオレフィンとしては、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレンなどのポリエチレン;ホモポリプロピレン、ポリプロピレンのブロックコポリマー(例えば、プロピレンとエチレンのブロックコポリマー)、ポリプロピレンのランダムコポリマー(例えば、プロピレンとエチレンのランダムコポリマー)などのポリプロピレン;エチレン−ブテン−プロピレンのターポリマーなどが挙げられる。これらのポリオレフィンの中でも、好ましくはポリエチレン及びポリプロピレンが挙げられる。
前述の通り、耐食性皮膜3aには、O−C=O結合に由来するピークPOCOが検出される。耐食性皮膜3aに接面している接着層5に、カルボン酸などで変性された酸変性ポリオレフィンが含まれることにより、カルボン酸同士の親和性の高さから、耐食性皮膜3aと接着層5との密着性をより一層効果的に高めることができる。O−C=O結合は、例えば、カルボキシル基やカルボキシル基のアンモニウム塩、ナトリウム塩、アミン塩などの各種塩、エステル結合などに含まれている。耐食性皮膜3aと接着層5との密着性を特に効果的に高める観点からは、耐食性皮膜3aと接着層5との組み合わせとしては、耐食性皮膜のX線光電子分光法による分析によって、287eVから290eVの範囲にO−C=O結合のC1sに由来するピークPOCOと、285.0eVにC−C結合のC1sに由来するピークPC-Cが検出され、かつ、ピークPOCOの高さをピークPC-Cの高さで除して得られるピーク高さ比の値POCO/C-Cが0.10以上0.50以下の範囲にある耐食性皮膜3aと、赤外分光法で分析すると無水マレイン酸に由来するピークが検出される接着層5との組み合わせが挙げられる。
接着層5において、酸変性ポリオレフィンの中でも、特に無水マレイン酸変性ポリオレフィン、さらには無水マレイン酸変性ポリプロピレンが好ましい。
さらに、接着層5は、酸変性ポリオレフィンと硬化剤を含む樹脂組成物の硬化物であることがより好ましい。酸変性ポリオレフィンとしては、好ましくは、前記のものが例示できる。
また、接着層5は、酸変性ポリオレフィンと、イソシアネート基を有する化合物、オキサゾリン基を有する化合物、及びエポキシ基を有する化合物からなる群より選択される少なくとも1種とを含む樹脂組成物の硬化物であることが好ましく、酸変性ポリオレフィンと、イソシアネート基を有する化合物及びエポキシ基を有する化合物からなる群より選択される少なくとも1種とを含む樹脂組成物の硬化物であることが特に好ましい。また、接着層5は、ウレタン樹脂、エステル樹脂、及びエポキシ樹脂からなる群より選択される少なくとも1種を含むことが好ましく、ウレタン樹脂及びエポキシ樹脂を含むことがより好ましい。エステル樹脂としては、例えばアミドエステル樹脂が好ましい。アミドエステル樹脂は、一般的にカルボキシル基とオキサゾリン基の反応で生成する。接着層5は、これらの樹脂のうち少なくとも1種と前記酸変性ポリオレフィンを含む樹脂組成物の硬化物であることがより好ましい。なお、接着層5に、イソシアネート基を有する化合物、オキサゾリン基を有する化合物、エポキシ樹脂などの硬化剤の未反応物が残存している場合、未反応物の存在は、例えば、赤外分光法、ラマン分光法、飛行時間型二次イオン質量分析法(TOF−SIMS)などから選択される方法で確認することが可能である。
また、耐食性皮膜3aと接着層5との密着性をより高める観点から、接着層5は、酸素原子、複素環、C=N結合、及びC−O−C結合からなる群より選択される少なくとも1種を有する硬化剤を含む樹脂組成物の硬化物であることが好ましい。複素環を有する硬化剤としては、例えば、オキサゾリン基を有する硬化剤、エポキシ基を有する硬化剤などが挙げられる。また、C=N結合を有する硬化剤としては、オキサゾリン基を有する硬化剤、イソシアネート基を有する硬化剤などが挙げられる。また、C−O−C結合を有する硬化剤としては、オキサゾリン基を有する硬化剤、エポキシ基を有する硬化剤、ウレタン樹脂などが挙げられる。接着層5がこれらの硬化剤を含む樹脂組成物の硬化物であることは、例えば、ガスクロマトグラフ質量分析(GCMS)、赤外分光法(IR)、飛行時間型二次イオン質量分析法(TOF−SIMS)、X線光電子分光法(XPS)などの方法で確認することができる。
イソシアネート基を有する化合物としては、特に制限されないが、耐食性皮膜3aと接着層5との密着性を効果的に高める観点からは、好ましくは多官能イソシアネート化合物が挙げられる。多官能イソシアネート化合物は、2つ以上のイソシアネート基を有する化合物であれば、特に限定されない。多官能イソシアネート系硬化剤の具体例としては、ペンタンジイソシアネート(PDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、トリレンジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、これらをポリマー化やヌレート化したもの、これらの混合物や他ポリマーとの共重合物などが挙げられる。
接着層5における、イソシアネート基を有する化合物の含有量としては、接着層5を構成する樹脂組成物中、0.1〜50質量%の範囲にあることが好ましく、0.5〜40質量%の範囲にあることがより好ましい。これにより、耐食性皮膜3aと接着層5との密着性を効果的に高めることができる。
オキサゾリン基を有する化合物は、オキサゾリン骨格を備える化合物であれば、特に限定されない。オキサゾリン基を有する化合物の具体例としては、ポリスチレン主鎖を有するもの、アクリル主鎖を有するものなどが挙げられる。また、市販品としては、例えば、日本触媒社製のエポクロスシリーズなどが挙げられる。
接着層5における、オキサゾリン基を有する化合物の割合としては、接着層5を構成する樹脂組成物中、0.1〜50質量%の範囲にあることが好ましく、0.5〜40質量%の範囲にあることがより好ましい。これにより、耐食性皮膜3aと接着層5との密着性を効果的に高めることができる。
エポキシ基を有する化合物としては、例えば、エポキシ樹脂が挙げられる。エポキシ樹脂としては、分子内に存在するエポキシ基によって架橋構造を形成することが可能な樹脂であれば、特に制限されず、公知のエポキシ樹脂を用いることができる。エポキシ樹脂の重量平均分子量としては、好ましくは50〜2000程度、より好ましくは100〜1000程度、さらに好ましくは200〜800程度が挙げられる。なお、第1の開示において、エポキシ樹脂の重量平均分子量は、標準サンプルとしてポリスチレンを用いた条件で測定された、ゲル浸透クロマトグラフィ(GPC)により測定された値である。
エポキシ樹脂の具体例としては、トリメチロールプロパンのグリシジルエーテル誘導体、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、変性ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ノボラックグリシジルエーテル、グリセリンポリグリシジルエーテル、ポリグリセリンポリグリシジルエーテルなどが挙げられる。エポキシ樹脂は、1種類単独で使用してもよいし、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
接着層5における、エポキシ樹脂の割合としては、接着層5を構成する樹脂組成物中、0.1〜50質量%の範囲にあることが好ましく、0.5〜40質量%の範囲にあることがより好ましい。これにより、耐食性皮膜3aと接着層5との密着性を効果的に高めることができる。
ウレタン樹脂としては、特に制限されず、公知のウレタン樹脂を使用することができる。接着層5は、例えば、2液硬化型ウレタン樹脂の硬化物であってもよい。
接着層5における、ウレタン樹脂の割合としては、接着層5を構成する樹脂組成物中、0.1〜50質量%の範囲にあることが好ましく、0.5〜40質量%の範囲にあることがより好ましい。これにより、電解液などのバリア層の腐食を誘発する成分が存在する雰囲気における、耐食性皮膜3aと接着層5との密着性を効果的に高めることができる。
なお、第1の開示において、接着層5が、イソシアネート基を有する化合物、オキサゾリン基を有する化合物、及びエポキシ樹脂からなる群より選択される少なくとも1種と、前記酸変性ポリオレフィンとを含む樹脂組成物の硬化物である場合、酸変性ポリオレフィンが主剤として機能し、イソシアネート基を有する化合物、オキサゾリン基を有する化合物、及びエポキシ樹脂は、それぞれ、硬化剤として機能する。
耐食性皮膜3aと接着層5との密着性を特に効果的に高める観点からは、耐食性皮膜3aと接着層5との組み合わせとしては、耐食性皮膜3aが、アクリル系樹脂と、クロム化合物と、リン酸を含む処理液により形成されたものであり、かつ、接着層5が、酸変性ポリプロピレンとエポキシ樹脂又はイソシアネート基を有する化合物とを含む樹脂組成物の硬化物により構成されたものであることが好ましい。この組み合わせにおいて、アクリル系樹脂は、ポリアクリル酸もしくはその塩、アクリル酸メタクリル酸エステル共重合体、又はアクリル酸マレイン酸共重合体であることが好ましく、ポリアクリル酸であることが特に好ましい。ポリアクリル酸もしくはその塩の重量平均分子量は、好ましくは1万〜100万程度、より好ましくは50万〜100万程度が挙げられる。高分子量の方が耐久性は上がるが、処理液調合の際、水に溶解する事が困難になる。また、この組み合わせにおいて、酸変性ポリプロピレンとしては、無水マレイン酸変性ポリプロピレンが特に好ましい。無水マレイン酸変性ポリプロピレンの融解ピーク温度としては、50〜100℃程度が好ましい。エポキシ樹脂としては、トリメチロールプロパンのグリシジルエーテル誘導体、ビスフェノールFのノボラック型エポキシ樹脂が好ましい。また、この組み合わせにおいてイソシアネート基を有する化合物としては脂肪族イソシアネートのヌレート体が好ましく、PDI(ペンタメチレンジイソシアネート)のヌレート体が特に好ましい。
耐食性皮膜3aと接着層5との密着性を特に効果的に高める観点から、耐食性皮膜3aと接着層5との特に好ましい組み合わせの具体例としては、耐食性皮膜3aが、分子量50万〜100万程度、酸価500〜1000程度のポリアクリル酸と、フッ化クロム(III)と、リン酸とを含む処理液により形成されており、接着層5が、融解ピーク温度50〜100℃の無水マレイン酸変性ポリプロピレンと、トリメチロールプロパンのグリシジルエーテル誘導体であるエポキシ樹脂とを含む樹脂組成物の硬化物により構成されている組み合わせが挙げられる。
耐食性皮膜3aと接着層5との密着性を効果的に高める観点から、接着層5の厚みとしては、上限については、好ましくは約40μm以下、より好ましくは約30μm以下、さらに好ましくは約20μm以下が挙げられ、下限については、好ましくは約0.5μm以上、より好ましくは約1μm以上、さらに好ましくは約2μm以上が挙げられる。接着層5の厚みの範囲としては、好ましくは、0.5〜40μm程度、0.5〜30μm程度、0.5〜20μm程度、1〜40μm程度、1〜30μm程度、1〜20μm程度、2〜40μm程度、2〜30μm程度、2〜20μm程度が挙げられる。
[熱融着性樹脂層4]
第1の開示の電池用包装材料において、熱融着性樹脂層4は、最内層に該当し、電池の組み立て時に熱融着性樹脂層同士が熱融着して電池素子を密封する層である。
熱融着性樹脂層4に使用される樹脂成分については、熱融着可能であることを限度として特に制限されないが、例えば、ポリオレフィン、環状ポリオレフィン、酸変性ポリオレフィン、酸変性環状ポリオレフィンが挙げられる。すなわち、熱融着性樹脂層4を構成している樹脂は、ポリオレフィン骨格を含んでいても含んでいなくてもよく、ポリオレフィン骨格を含んでいることが好ましい。熱融着性樹脂層4を構成している樹脂がポリオレフィン骨格を含むことは、例えば、赤外分光法、ガスクロマトグラフィー質量分析法などにより分析可能であり、分析方法は特に問わない。例えば、赤外分光法にて無水マレイン酸変性ポリオレフィンを測定すると、波数1760cm-1付近と波数1780cm-1付近に無水マレイン酸由来のピークが検出される。ただし、酸変性度が低いとピークが小さくなり検出されない場合がある。その場合は核磁気共鳴分光法にて分析可能である。
前記ポリオレフィンとしては、具体的には、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレンなどのポリエチレン;ホモポリプロピレン、ポリプロピレンのブロックコポリマー(例えば、プロピレンとエチレンのブロックコポリマー)、ポリプロピレンのランダムコポリマー(例えば、プロピレンとエチレンのランダムコポリマー)などのポリプロピレン;エチレン−ブテン−プロピレンのターポリマーなどが挙げられる。これらのポリオレフィンの中でも、好ましくはポリエチレン及びポリプロピレンが挙げられる。
前記環状ポリオレフィンは、オレフィンと環状モノマーとの共重合体であり、前記環状ポリオレフィンの構成モノマーであるオレフィンとしては、例えば、エチレン、プロピレン、4−メチル−1−ペンテン、ブタジエン、イソプレンなどが挙げられる。また、前記環状ポリオレフィンの構成モノマーである環状モノマーとしては、例えば、ノルボルネンなどの環状アルケン;具体的には、シクロペンタジエン、ジシクロペンタジエン、シクロヘキサジエン、ノルボルナジエンなどの環状ジエンなどが挙げられる。これらのポリオレフィンの中でも、好ましくは環状アルケン、更に好ましくはノルボルネンが挙げられる。また、スチレンもポリオレフィンとして使用することができる。
前記酸変性ポリオレフィンとは、前記ポリオレフィンをカルボン酸などの酸成分でブロック重合又はグラフト重合することにより変性したポリマーである。ポリオレフィンを変性する酸成分としては、例えば、マレイン酸、アクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、無水マレイン酸、無水イタコン酸などのカルボン酸又はその無水物が挙げられる。
前記酸変性環状ポリオレフィンとは、環状ポリオレフィンを構成するモノマーの一部を、α,β−不飽和カルボン酸又はその無水物に代えて共重合することにより、或いは環状ポリオレフィンに対してα,β−不飽和カルボン酸又はその無水物をブロック重合又はグラフト重合することにより得られるポリマーである。カルボン酸変性される環状ポリオレフィンについては、前記と同様である。また、環状ポリオレフィンを変性するカルボン酸としては、前記酸変性ポリオレフィンを変性するものと同様である。
これらの樹脂成分の中でも、好ましくはポリプロピレンなどのポリオレフィン、カルボン酸変性ポリオレフィン;更に好ましくはポリプロピレン、酸変性ポリプロピレンが挙げられる。
熱融着性に優れる観点からは、熱融着性樹脂層4は、ポリプロピレンを含むことが好ましく、ポリプロピレンにより構成されていることがより好ましい。また、接着層5が変性ポリオレフィン樹脂を含む場合、熱融着性樹脂層4は、ポリプロピレンを含むことが好ましい。
熱融着性樹脂層4は、1種の樹脂成分単独で形成してもよく、また2種以上の樹脂成分を組み合わせたブレンドポリマーにより形成してもよい。更に、熱融着性樹脂層4は、1層のみで成されていてもよいが、同一又は異なる樹脂成分によって2層以上で形成されていてもよい。
第1の開示において、電池用包装材料の成形性を高める観点からは、熱融着性樹脂層の表面には、滑剤が付着していることが好ましい。滑剤としては、特に制限されないが、好ましくはアミド系滑剤が挙げられる。アミド系滑剤の具体例としては、例えば、飽和脂肪酸アミド、不飽和脂肪酸アミド、置換アミド、メチロールアミド、飽和脂肪酸ビスアミド、不飽和脂肪酸ビスアミドなどが挙げられる。飽和脂肪酸アミドの具体例としては、ラウリン酸アミド、パルミチン酸アミド、ステアリン酸アミド、ベヘン酸アミド、ヒドロキシステアリン酸アミドなどが挙げられる。不飽和脂肪酸アミドの具体例としては、オレイン酸アミド、エルカ酸アミドなどが挙げられる。置換アミドの具体例としては、N−オレイルパルミチン酸アミド、N−ステアリルステアリン酸アミド、N−ステアリルオレイン酸アミド、N−オレイルステアリン酸アミド、N−ステアリルエルカ酸アミドなどが挙げられる。また、メチロールアミドの具体例としては、メチロールステアリン酸アミドなどが挙げられる。飽和脂肪酸ビスアミドの具体例としては、メチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスカプリン酸アミド、エチレンビスラウリン酸アミド、エチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスヒドロキシステアリン酸アミド、エチレンビスベヘン酸アミド、ヘキサメチレンビスステアリン酸アミド、ヘキサメチレンビスベヘン酸アミド、ヘキサメチレンヒドロキシステアリン酸アミド、N,N’−ジステアリルアジピン酸アミド、N,N’−ジステアリルセバシン酸アミドなどが挙げられる。不飽和脂肪酸ビスアミドの具体例としては、エチレンビスオレイン酸アミド、エチレンビスエルカ酸アミド、ヘキサメチレンビスオレイン酸アミド、N,N’−ジオレイルアジピン酸アミド、N,N’−ジオレイルセバシン酸アミドなどが挙げられる。脂肪酸エステルアミドの具体例としては、ステアロアミドエチルステアレートなどが挙げられる。また、芳香族系ビスアミドの具体例としては、m−キシリレンビスステアリン酸アミド、m−キシリレンビスヒドロキシステアリン酸アミド、N,N’−ジステアリルイソフタル酸アミドなどが挙げられる。滑剤は、1種類単独で使用してもよいし、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
熱融着性樹脂層4の表面に滑剤が存在する場合、その存在量としては、特に制限されないが、好ましくは約3mg/m2以上、より好ましくは4〜15mg/m2程度、さらに好ましくは5〜14mg/m2程度が挙げられる。
熱融着性樹脂層4の中には、滑剤が含まれていてもよい。また、熱融着性樹脂層4の表面に存在する滑剤は、熱融着性樹脂層4を構成する樹脂に含まれる滑剤を滲出させたものであってもよいし、熱融着性樹脂層4の表面に滑剤を塗布したものであってもよい。
また、熱融着性樹脂層4の厚さとしては、熱融着性樹脂層としての機能を発揮すれば特に制限されないが、好ましい下限については、例えば、約15μm以上が挙げられ、好ましい上限については、例えば、約60μm以下、約45μm以下、約40μm以下、約35μm以下が挙げられ、好ましい範囲については、例えば、15〜60μm程度、15〜45μm程度、15〜40μm程度、15〜35μm程度が挙げられる。
[表面被覆層6]
第1の開示の電池用包装材料においては、意匠性、耐電解液性、耐擦過性、成形性の向上などを目的として、必要に応じて、基材層1の外側(基材層1のバリア層3とは反対側)に、表面被覆層6を設けてもよい。表面被覆層6を設ける場合、表面被覆層6は、電池用包装材料の最外層側に位置する層である。
表面被覆層6は、例えば、ポリ塩化ビニリデン、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂などにより形成することができる。表面被覆層6は、これらの中でも、2液硬化型樹脂により形成することが好ましい。表面被覆層6を形成する2液硬化型樹脂としては、例えば、2液硬化型ウレタン樹脂、2液硬化型ポリエステル樹脂、2液硬化型エポキシ樹脂などが挙げられる。また、表面被覆層には、添加剤を配合してもよい。
添加剤としては、例えば、粒径が0.5nm〜5μm程度の微粒子が挙げられる。添加剤の材質については、特に制限されないが、例えば、金属、金属酸化物、無機物、有機物などが挙げられる。また、添加剤の形状についても、特に制限されないが、例えば、球状、繊維状、板状、不定形、バルーン状などが挙げられる。添加剤として、具体的には、タルク,シリカ,グラファイト、カオリン、モンモリロイド、モンモリロナイト、合成マイカ、ハイドロタルサイト、シリカゲル、ゼオライト、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、酸化亜鉛,酸化マグネシウム,酸化アルミニウム,酸化ネオジウム,酸化アンチモン、酸化チタン、酸化セリウム、硫酸カルシウム,硫酸バリウム、炭酸カルシウム,ケイ酸カルシウム、炭酸リチウム、安息香酸カルシウム,シュウ酸カルシウム,ステアリン酸マグネシウム、アルミナ、カーボンブラック、カーボンナノチューブ類、高融点ナイロン、アクリレート樹脂、架橋アクリル、架橋スチレン、架橋ポリエチレン、ベンゾグアナミン、金、アルミニウム、銅、ニッケルなどが挙げられる。これらの添加剤は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。これらの添加剤の中でも、分散安定性やコストなどの観点から、好ましくはシリカ、硫酸バリウム、酸化チタンが挙げられる。また、添加剤には、表面に絶縁処理、高分散性処理などの各種表面処理を施しておいてもよい。また、表面被覆層6の表面及び内部の少なくとも一方には、該表面被覆層6やその表面に備えさせるべき機能性等に応じて、必要に応じて、滑剤、アンチブロッキング剤、マット化剤、難燃剤、酸化防止剤、光安定剤、粘着付与剤、耐電防止剤、エラストマー樹脂等の添加剤を含んでいてもよい。滑剤の具体例としては、例えば前述した滑剤が挙げられる。また、上述した微粒子は滑剤、アンチブロッキング剤、マット化剤として機能してもよい。
表面被覆層6中の添加剤の含有量としては、特に制限されないが、好ましくは0.05〜1.0質量%程度、より好ましくは0.1〜0.5質量%程度が挙げられる。
表面被覆層6を形成する方法としては、特に制限されないが、例えば、表面被覆層を形成する2液硬化型樹脂を基材層1の外側の表面に塗布する方法が挙げられる。添加剤を配合する場合には、2液硬化型樹脂に添加剤を添加して混合した後、塗布すればよい。
表面被覆層6の厚さとしては、表面被覆層6としての上記の機能を発揮すれば特に制限されないが、例えば、0.5〜10μm程度、好ましくは1〜5μm程度が挙げられる。
1−3.電池用包装材料の製造方法
第1の開示の電池用包装材料の製造方法については、所定の組成の各層を積層させた積層体が得られる限り、特に制限されず、少なくとも、基材層と、バリア層と、接着層と、熱融着性樹脂層とがこの順となるように積層して積層体を得る工程を備えており、
前記バリア層を積層する際に、前記バリア層の前記接着層側の表面には、前記接着層と接面するように耐食性皮膜が設けられており、耐食性皮膜3aとして、耐食性皮膜3aのXPSによる分析によって、287eVから290eVの範囲にO−C=O結合に由来するピークPOCOと、285eVにC−C結合に由来するピークPC-Cが検出され、ピークPOCOの高さをピークPC-Cの高さで除して得られるピーク高さ比の値POCO/C-Cが、0.10〜0.50の範囲にあるものを用いる方法が挙げられる。
第1の開示の電池用包装材料の製造方法の一例としては、以下の通りである。まず、基材層1、必要に応じて設けられる接着剤層2、バリア層3(耐食性皮膜3aを備える、以下省略)が順に積層された積層体(以下、「積層体A」と表記することもある)を形成する。積層体Aの形成は、具体的には、基材層1またはバリア層3に、接着剤層2の形成に使用される接着剤を、グラビアコート法、ロールコート法などの塗布方法で塗布・乾燥した後に、当該バリア層3又は基材層1を積層させて接着剤層2を硬化させるドライラミネート法によって行うことができる。このとき、バリア層3を積層する際に、バリア層3の少なくとも一方の表面には、予め前述の耐食性皮膜が形成されたものを用いる。なお、耐食性皮膜3a,3bの形成方法は、前述の通りである。
次いで、積層体Aのバリア層3上に、接着層5と熱融着性樹脂層4を積層させる。バリア層3上に接着層5を設ける方法としては、例えば、積層体Aのバリア層3上に、接着層5を構成する樹脂成分をグラビアコート法、ロールコート法、押出しラミネート法などの方法により塗布すればよい。また、バリア層3と熱融着性樹脂層4の間に接着層5を設ける方法としては、例えば、(1)積層体Aのバリア層3上に、接着層5及び熱融着性樹脂層4を共押出しすることにより積層する方法(共押出しラミネート法)、(2)別途、接着層5と熱融着性樹脂層4が積層した積層体を形成し、これを積層体Aのバリア層3上にサーマルラミネート法により積層する方法、(3)積層体Aのバリア層3上に、接着層5を形成させるための接着剤を押出し法や溶液コーティングし、高温で乾燥さらには焼き付ける方法などにより積層させ、この接着層5上に予めシート状に製膜した熱融着性樹脂層4をサーマルラミネート法により積層する方法、(4)積層体Aのバリア層3と、予めシート状に製膜した熱融着性樹脂層4との間に、溶融させた接着層5を流し込みながら、接着層5を介して積層体Aと熱融着性樹脂層4を貼り合せる方法(サンドイッチラミネート法)などが挙げられる。
表面被覆層6を設ける場合には、基材層1のバリア層3とは反対側の表面に、表面被覆層を積層する。表面被覆層は、例えば表面被覆層を形成する上記の樹脂を基材層1の表面に塗布することにより形成することができる。なお、基材層1の表面にバリア層3を積層する工程と、基材層1の表面に表面被覆層を積層する工程の順番は、特に制限されない。例えば、基材層1の表面に表面被覆層を形成した後、基材層1の表面被覆層とは反対側の表面にバリア層3を形成してもよい。
上記のようにして、必要に応じて設けられる表面被覆層/基材層1/必要に応じて設けられる接着剤層2/少なくとも一方の表面に耐食性皮膜を備えるバリア層3/接着層5/熱融着性樹脂層4からなる積層体が形成されるが、必要に応じて設けられる接着剤層2及び接着層5の接着性を強固にするために、更に、熱ロール接触式、熱風式、近赤外線式又は遠赤外線式などの加熱処理に供してもよい。
第1の開示の電池用包装材料において、積層体を構成する各層は、必要に応じて、製膜性、積層化加工、最終製品2次加工(パウチ化、エンボス成形)適性などを向上又は安定化するために、コロナ処理、ブラスト処理、酸化処理、オゾン処理などの表面活性化処理を施していてもよい。
1−4.電池用包装材料の用途
第1の開示の電池用包装材料は、正極、負極、電解質などの電池素子を密封して収容するための包装体に使用される。すなわち、第1の開示の電池用包装材料によって形成された包装体中に、少なくとも正極、負極、及び電解質を備えた電池素子を収容して、電池とすることができる。
具体的には、少なくとも正極、負極、及び電解質を備えた電池素子を、第1の開示の電池用包装材料で、前記正極及び負極の各々に接続された金属端子が外側に突出させた状態で、電池素子の周縁にフランジ部(熱融着性樹脂層同士が接触する領域)が形成できるようにして被覆し、前記フランジ部の熱融着性樹脂層同士をヒートシールして密封させることによって、電池用包装材料を使用した電池が提供される。なお、第1の開示の電池用包装材料により形成された包装体中に電池素子を収容する場合、第1の開示の電池用包装材料の熱融着性樹脂部分が内側(電池素子と接する面)になるようにして、包装体を形成する。
第1の開示の電池用包装材料は、一次電池、二次電池のいずれに使用してもよいが、好ましくは二次電池である。第1の開示の電池用包装材料が適用される二次電池の種類については、特に制限されず、例えば、リチウムイオン電池、リチウムイオンポリマー電池、鉛蓄電池、ニッケル・水素蓄電池、ニッケル・カドミウム蓄電池、ニッケル・鉄蓄電池、ニッケル・亜鉛蓄電池、酸化銀・亜鉛蓄電池、金属空気電池、多価カチオン電池、コンデンサー、キャパシターなどが挙げられる。これらの二次電池の中でも、第1の開示の電池用包装材料の好適な適用対象として、リチウムイオン電池及びリチウムイオンポリマー電池が挙げられる。
第1の開示の電池用包装材料において、当該耐食性皮膜を備えるバリア層は、高い密着性を保持することができる。このため、第1の開示の電池用包装材料は、例えばモバイル機器などに使用される小型の電池の包装材料として、特に有用である。
(第2の開示)
第2の開示の電池用包装材料は、少なくとも、基材層と、接着剤層と、バリア層と、熱融着性樹脂層とをこの順に備える積層体から構成されており、バリア層の前記接着剤層側の表面には、前記接着剤層と接面している耐食性皮膜を備えており、耐食性皮膜のX線光電子分光法(以下、XPSと表記することがある)による分析によって、287eVから290eVの範囲にO−C=O結合に由来するピークPOCOと、285eVにC−C結合に由来するピークPC-Cが検出され、ピークPOCOの高さをピークPC-Cの高さで除して得られるピーク高さ比の値POCO/C-Cが、0.10以上0.50以下の範囲にあることを特徴とする。以下、図5から図8を参照しながら、第2の開示の電池用包装材料、当該電池用包装材料の製造方法、及び当該電池用包装材料を用いた電池について、詳述する。
2−1.電池用包装材料の積層構造
第2の開示の電池用包装材料は、例えば図5から図8に示すように、少なくとも、基材層1、接着剤層2、バリア層3、及び熱融着性樹脂層4をこの順に有する積層体から構成されている。第2の開示の電池用包装材料において、基材層1が最外層側になり、熱融着性樹脂層4は最内層になる。即ち、電池の組み立て時に、電池素子の周縁に位置する熱融着性樹脂層4同士が熱融着して電池素子を密封することにより、電池素子が封止される。
図5から図8に示されるように、第2の開示の電池用包装材料においては、バリア層3の接着剤層2側の表面に、接着剤層2と接面している耐食性皮膜3bを備えている。図5は、バリア層3の接着剤層2側の表面にのみ耐食性皮膜3bを備えている模式図を示している。また、図6及び図8は、バリア層3の両面に、それぞれ、耐食性皮膜3a,3bを備える場合の模式図を示している。なお、後述の通り、第2の開示の電池用包装材料においては、バリア層3の接着剤層2側の表面のみに、後述のXPSによる分析によって検出されるピーク特性を有する耐食性皮膜3bを備えていてもよいし、バリア層3の両面に、それぞれ、後述のXPSによる分析によって検出されるピーク特性を有する耐食性皮膜3a,3bを備えていてもよい。
第2の開示の電池用包装材料は、図6から図8に示すように、バリア層3と熱融着性樹脂層4との間に、これらの密着性を高める目的で、必要に応じて、接着層5を備えていてもよい。また、第2の開示の電池用包装材料は、図8に示すように、意匠性、耐電解液性、耐擦過性、成形性の向上などを目的として、必要に応じて、基材層1のバリア層3とは反対側に、必要に応じて、表面被覆層6を備えていてもよい。
第2の開示の電池用包装材料10を構成する積層体の厚さとしては、特に制限されず、第1の開示で例示した厚みと同じ厚みが例示される。
2−2.電池用包装材料を形成する各層
[基材層1]
第2の開示の電池用包装材料において、基材層1の構成は、第1の開示の基材層1の構成と同様であり、説明を省略する。
[接着剤層2]
第2の開示の電池用包装材料10において、接着剤層2は、基材層1とバリア層3を強固に接着させるために、これらの間に設けられる層である。より具体的には、接着剤層2は、バリア層3の表面の耐食性皮膜3bと接面するようにして設けられている。
一般に、バリア層と基材層との密着性を高める観点からは、これらの間に接着剤層を有していることが好ましいが、バリア層の基材層側の表面に耐食性皮膜を備えている場合には、接着剤層と耐食性皮膜との間で密着性が低下することがある。これに対して、第2の開示の電池用包装材料においては、耐食性皮膜3bが後述の特定のピーク高さ比の値POCO/C-Cを有しているため、接着剤層2と耐食性皮膜3bとの間の密着性が効果的に高められている。すなわち、第2の開示の電池用包装材料において、バリア層3の表面の耐食性皮膜3bと外側の基材層1とが、接着剤層2を介して積層されている態様において、耐食性皮膜を備えたバリア層と内側の層との密着性に優れるという効果を特に有効に発揮することができる。
また、電池が高温環境又は高温高湿環境下に置かれた場合、バリア層と基材層との間の密着性が低下しやすくなることで、基材層とバリア層との間でデラミネーションを生じることがある。デラミネーションがバリア層と基材層との間で発生すると、耐突き刺し強度や耐ピンホール性が低下し、電池内部への水蒸気侵入の可能性が高まる。これに対して、第2の開示の電池用包装材料においては接着剤層2と耐食性皮膜3bとの間の密着性が効果的に高められていることで、高温環境又は高温高湿環境下に置かれた場合にも密着性の低下を抑制することができ、高温高湿環境下であっても基材層とバリア層との間のデラミネーションを抑制することができる。
接着剤層2は、基材層1と耐食性皮膜3bとを接着可能である接着剤によって形成される。接着剤層2の形成に使用される接着剤は、2液硬化型接着剤であってもよく、また1液硬化型接着剤であってもよい。更に、接着剤層2の形成に使用される接着剤については、特に制限されず、化学反応型、溶剤揮発型、熱溶融型、熱圧型などのいずれであってもよい。
基材層1とバリア層3との接着性を高める観点から、接着剤層2の形成に使用される樹脂としては、極性基を有している樹脂であることが好ましい。極性基は、炭素より電気陰性度が大きい少なくとも1つの原子を含む官能基であればよい。炭素より電気陰性度が大きい原子としては、窒素、酸素、及び硫黄等が挙げられる。極性基の具体例としては、含窒素結合基、アミノ基、イソシアネート基、オキサゾリン基、及びエポキシ基等が挙げられる。なお、含窒素結合基とは、窒素原子を有する二価の基を意味する。これらの極性基の中でも、接着剤層2と耐食性皮膜3bとの密着性をより高める観点から、含窒素結合基、イソシアネート基、オキサゾリン基、及びエポキシ基が好ましい。さらに、接着剤層2と耐食性皮膜3bとの密着性をより高め、且つ、電池用包装材料の成形性をより高める観点から、含窒素結合基がより好ましい。含窒素結合基としては、ウレタン結合基、チオウレタン結合基、尿素結合基、チオ尿素結合基、アミドエステル結合基、アミド結合基等が挙げられ、接着剤層2と耐食性皮膜3bとの密着性をより高める観点から、好ましくは、ウレタン結合基及びアミドエステル結合基が挙げられ、より好ましくは、ウレタン結合基が挙げられる。アミノ基としては、第一級アミノ基、第二級アミノ基及び第三級アミノ基等が挙げられる。
接着剤層2が極性基を含むことは、以下のように赤外分光法による赤外吸収スペクトルを測定することよって分析可能である。
<赤外分光法による赤外吸収スペクトル測定>
電池用包装材料を裁断してサンプルを作製する。サンプルは、100mm×100mmの正方形の大きさであればよいが、これより小さいサイズのサンプルであっても、測定器で測定可能な大きさであればよい。得られたサンプルの基材層1を剥離し、接着剤層2の表面を例えばサーモフィッシャーサイエンティフィック株式会社製:Nicolet iS10FT−IRのATR測定モードを用いて、温度25℃、相対湿度50%の環境下で赤外吸収スペクトル測定を行う。得られた吸収スペクトルから、ヒドロキシ基のO−H伸縮振動に由来する3650cm-1‐3580cm-1および3550cm-1‐3200cm-1のピークまたはカルボキシル基のO−H伸縮振動に由来する1300cm-1‐1000cm-1のピーク、C=O伸縮振動に由来する1720cm-1‐1700cm-1のピーク、O−H変角振動に由来する1000cm-1‐850cm-1のピーク、またはアミノ基のN−H伸縮振動に由来する3500cm-1および3400cm-1のピークを確認する。
手法:マクロATR法
波数分解能:8cm-1
積算回数:32回
検出器:DTGS検出器
ATRプリズム:Ge
入射角:45°
ベースライン:波数800cm-1から3700cm-1の範囲における強度の平均値
接着剤層2と耐食性皮膜3b(さらには、耐食性皮膜3bとこれに隣接する層)との密着性を向上させる観点から、接着剤層2は、極性基として、含窒素結合基、イソシアネート基、オキサゾリン基、又はエポキシ基を有する樹脂で構成されることが好ましく、含窒素結合基を有する樹脂で構成されることがより好ましい。
後述の通り、耐食性皮膜3bには、O−C=O結合に由来するピークPOCOが検出される。耐食性皮膜3bに接面している接着剤層2を構成する樹脂に、極性基として、含窒素結合基、イソシアネート基、オキサゾリン基、又はエポキシ基、より好ましくは含窒素結合基が含まれることにより、当該極性基との親和性が高められることで、接着剤層2と耐食性皮膜3bとの密着性をより一層効果的に高めることができる。O−C=O結合は、例えば、カルボキシル基やカルボキシル基のアンモニウム塩、ナトリウム塩、アミン塩などの各種塩、エステル結合などに含まれている。接着剤層2と耐食性皮膜3bとの密着性を特に効果的に高める観点からは、接着剤層2と耐食性皮膜3bとの組み合わせとしては、耐食性皮膜のX線光電子分光法による分析によって、287eVから290eVの範囲にO−C=O結合のC1sに由来するピークPOCOと、285.0eVにC−C結合のC1sに由来するピークPC-Cとが検出され、かつ、ピークPOCOの高さをピークPC-Cの高さで除して得られるピーク高さ比の値POCO/C-Cが0.10以上0.50以下の範囲にある耐食性皮膜3bと、赤外分光法による分析によって、3650cm-1‐3580cm-1および3550cm-1‐3200cm-1のヒドロキシ基のO−H伸縮振動に由来するピークまたは1300cm-1‐1000cm-1のカルボキシル基のO−H伸縮振動に由来するピーク、1720cm-1‐1700cm-1のC=O伸縮振動に由来するピーク、1000cm-1‐850cm-1のO−H変角振動に由来するピークが検出される接着剤層2と、の組み合わせが挙げられる。
接着剤層2の形成に使用できる極性基を有している樹脂の具体例としては、接着成分となる樹脂に硬化剤を併用した樹脂組成物の硬化物が挙げられる。接着成分としては、具体的には、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート、ポリエチレンイソフタレート、共重合ポリエステルなどのポリエステル系樹脂;ポリカーボネート系樹脂;ポリエーテル系樹脂;ポリウレタン系樹脂;エポキシ系樹脂;フェノール樹脂系樹脂;ナイロン6、ナイロン66、ナイロン12、共重合ポリアミドなどのポリアミド系樹脂;ポリオレフィン、酸変性ポリオレフィン、金属変性ポリオレフィンなどのポリオレフィン系樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂;セルロース系接着剤;(メタ)アクリル系樹脂;ポリイミド系樹脂;尿素樹脂、メラミン樹脂などのアミノ樹脂;クロロプレンゴム、ニトリルゴム、スチレン−ブタジエンゴムなどのゴム;シリコーン系樹脂;及びポリオール化合物などが挙げられる。これらの接着成分は1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
前記硬化剤は、接着成分の持つ官能基に応じて、例えば、硬化後に上記の含窒素結合基を極性基として生じさせる化合物、及び上記の極性基を有する化合物などから適切なものを選択する。接着剤層2と耐食性皮膜3bとの密着性をより高める観点から、硬化剤は、酸素原子、複素環、C=N結合、及びC−O−C結合からなる群より選択される少なくとも1種を有する硬化剤であることが好ましい。複素環を有する硬化剤としては、例えば、オキサゾリン基を有する硬化剤、エポキシ基を有する硬化剤などが挙げられる。また、C=N結合を有する硬化剤としては、オキサゾリン基を有する硬化剤、イソシアネート基を有する硬化剤などが挙げられる。また、C−O−C結合を有する硬化剤としては、オキサゾリン基を有する硬化剤、エポキシ基を有する硬化剤などが挙げられる。
これらの接着成分と硬化剤との組み合わせによる、極性基を有している樹脂の具体例としては、接着剤層2と耐食性皮膜3bとの密着性をより高める観点から、好ましくは、接着成分であるポリオール化合物(主剤)と硬化剤であるイソシアネート基を有する化合物とを含むポリウレタン系樹脂組成物の硬化物(極性基としてウレタン結合基を生じる);カルボキシル基を有する接着成分と硬化剤であるオキサゾリン基を有する化合物とを含む樹脂組成物の硬化物(極性基としてアミドエステル結合基を生じる);接着成分である酸変性ポリオレフィンと、硬化剤であるイソシアネート基を有する化合物、オキサゾリン基を有する化合物、及びエポキシ基を有する化合物からなる群より選択される少なくとも1種とを含む樹脂組成物の硬化物(極性基として、イソシアネート基、オキサゾリン基、及びエポキシ基からなる群より選択される少なくとも1種を有する)が挙げられる。
接着剤層2において、これらの極性基を有している樹脂の中でも、接着剤層2と耐食性皮膜3bとの密着性をより高め、且つ電池用包装材料の成形性をより高める観点からは、より好ましくは、ポリオール化合物とイソシアネート基を有する化合物とを含むポリウレタン系樹脂組成物の硬化物が挙げられる。
接着剤層2において、ポリウレタン系樹脂組成物に使用されるポリオール化合物としては、例えば、ポリエステルポリオール、ポリエステルポリウレタンポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリエーテルポリウレタンポリオール、アクリルポリオール等が挙げられる。これらのポリオール化合物の水酸基当量及び重量平均分子量としては、特に制限されないが、電池用包装材料の優れた成形性を得る観点から、例えば、水酸基当量(個/mol)として0.5〜2.5、好ましくは0.7〜1.9が挙げられ、重量平均分子量として500〜120000、好ましくは1000〜80000が挙げられる。これらのポリオール化合物の中でも、好ましくは、ポリエステルポリオール、ポリエステルポリウレタンポリオール、ポリエーテルポリウレタンポリオールが挙げられ、より好ましくは、ポリエステルポリオールが挙げられる。これらのポリオール化合物は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
また、前記ポリウレタン系樹脂組成物に使用されるイソシアネート系化合物としては、例えば、ポリイソシアネート、そのアダクト体、そのイソシアヌレート変性体、そのカルボジイミド変性体、そのアロハネート変性体、そのビュレット変性体等が挙げられる。前記ポリイソシアネートとしては、具体的には、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、ポリフェニルメタンジイソシアネート(ポリメリックMDI)、トルエンジイソシアネート(TDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、ビス(4−イソシアネートシクロヘキシル)メタン(H12MDI)、1,5−ナフタレンジイソシアネー(1,5−NDI)、3,3’−ジメチル−4,4’−ジフェニレンジイソシアネート(TODI)、キシレンジイソシアネート(XDI)等の芳香族ジイソシアネート;テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート;4,4’−メチレンビス(シクロヘキシイソシアネート)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)等の脂環族ジイソシアネート等が挙げられる。前記アダクト体としては、具体的には、前記ポリイソシアネートに、トリメチロールプロパン、グリコール等を付加したものが挙げられる。これらのイソシアネート系化合物の中でも、好ましくはポリイソシアネート及びそのアダクト体;更に好ましくは芳香族ジイソシアネート、そのアダクト体、及びそのイソシアヌレート変性体が挙げられる。これらのイソシアネート系化合物は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
前記ポリウレタン系樹脂組成物として、電池用包装材料の優れた成形性を得る観点から、好ましくは、ポリエステルポリオール、ポリエステルポリウレタンポリオール、ポリエーテルポリオール、及びポリエーテルポリウレタンポリオールよりなる群から選択される少なくとも1種のポリオール化合物と、芳香族ジイソシアネート、そのアダクト体、及びそのイソシアヌレート変性体よりなる群から選択される少なくとも1種のイソシアネート系化合物を含むポリウレタン系樹脂組成物が挙げられる。
また、前記ポリウレタン系樹脂組成物において、ポリオール化合物(主剤)とイソシアネート系化合物(硬化剤)との比率については、電池用包装材料の優れた成形性を得る観点から、例えば、ポリオール化合物の水酸基1モル当たり、イソシアネート系化合物のイソシアネート基の割合が、1〜30モル、好ましくは3〜20モルが挙げられる。
上述のポリウレタン系樹脂組成物の硬化物の他にも、接着剤層2における極性基を有している樹脂としては、水酸基を有するポリウレタン化合物とポリイソシアネート化合物との組み合わせ、イソシアネート基を有するポリウレタン化合物とポリオール化合物との組み合わせなどによるポリウレタン系樹脂組成物の硬化物、及び、イソシアネート基を有するポリウレタン化合物の空気中などの水分による硬化物等も挙げられる。
接着剤層2において、極性基を有している樹脂が、接着成分である酸変性ポリオレフィンと、硬化剤であるイソシアネート基を有する化合物、オキサゾリン基を有する化合物、及びエポキシ基を有する化合物からなる群より選択される少なくとも1種とを含む樹脂組成物の硬化物である場合、酸変性ポリオレフィンは、ポリオレフィンをカルボン酸などの酸成分でブロック重合又はグラフト重合することにより変性したポリマーである。変性に使用される酸成分としては、例えば、マレイン酸、アクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、無水マレイン酸、無水イタコン酸などのカルボン酸又はその無水物が挙げられる。また、変性されるポリオレフィンとしては、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレンなどのポリエチレン;ホモポリプロピレン、ポリプロピレンのブロックコポリマー(例えば、プロピレンとエチレンのブロックコポリマー)、ポリプロピレンのランダムコポリマー(例えば、プロピレンとエチレンのランダムコポリマー)などのポリプロピレン;エチレン−ブテン−プロピレンのターポリマーなどが挙げられる。これらのポリオレフィンの中でも、好ましくはポリエチレン及びポリプロピレンが挙げられる。酸変性ポリオレフィンの中でも、特に無水マレイン酸変性ポリオレフィン、さらには無水マレイン酸変性ポリプロピレンが好ましい。
酸変性ポリオレフィンとともに用いられるイソシアネート基を有する化合物としては、特に制限されないが、接着剤層2と耐食性皮膜3bとの密着性を効果的に高める観点からは、好ましくは多官能イソシアネート化合物が挙げられる。多官能イソシアネート化合物は、2つ以上のイソシアネート基を有する化合物であれば、特に限定されない。多官能イソシアネート系硬化剤の具体例としては、ペンタメチレンジイソシアネート(PDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、トリレンジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、これらをポリマー化やヌレート化したもの、これらの混合物や他ポリマーとの共重合物などが挙げられる。
接着剤層2において酸変性ポリオレフィンとともに用いられるイソシアネート基を有する化合物の含有量としては、接着剤層2を構成する樹脂組成物中、0.1〜50質量%の範囲にあることが好ましく、0.5〜40質量%の範囲にあることがより好ましい。これにより、接着剤層2と耐食性皮膜3bとの密着性を効果的に高めることができる。
オキサゾリン基を有する化合物は、オキサゾリン骨格を備える化合物であれば、特に限定されない。オキサゾリン基を有する化合物の具体例としては、ポリスチレン主鎖を有するもの、アクリル主鎖を有するものなどが挙げられる。また、市販品としては、例えば、日本触媒社製のエポクロスシリーズなどが挙げられる。
接着剤層2において酸変性ポリオレフィンとともに用いられるオキサゾリン基を有する化合物の割合としては、接着剤層2を構成する樹脂組成物中、0.1〜50質量%の範囲にあることが好ましく、0.5〜40質量%の範囲にあることがより好ましい。これにより、接着剤層2と耐食性皮膜3bとの密着性を効果的に高めることができる。
接着剤層2において酸変性ポリオレフィンとともに用いられるエポキシ樹脂としては、分子内に存在するエポキシ基によって架橋構造を形成することが可能な樹脂であれば、特に制限されず、公知のエポキシ樹脂を用いることができる。エポキシ樹脂の重量平均分子量としては、好ましくは50〜2000程度、より好ましくは100〜1000程度、さらに好ましくは200〜800程度が挙げられる。なお、第2の開示において、エポキシ樹脂の重量平均分子量は、標準サンプルとしてポリスチレンを用いた条件で測定された、ゲル浸透クロマトグラフィ(GPC)により測定された値である。
エポキシ樹脂の具体例としては、トリメチロールプロパンのグリシジルエーテル誘導体、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、変性ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ノボラックグリシジルエーテル、グリセリンポリグリシジルエーテル、ポリグリセリンポリグリシジルエーテルなどが挙げられる。エポキシ樹脂は、1種類単独で使用してもよいし、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
接着剤層2において酸変性ポリオレフィンとともに用いられるエポキシ樹脂の割合としては、接着剤層2を構成する樹脂組成物中、0.1〜50質量%の範囲にあることが好ましく、0.5〜40質量%の範囲にあることがより好ましい。これにより、接着剤層2と耐食性皮膜3bとの密着性を効果的に高めることができる。
接着剤層2と耐食性皮膜3bとの密着性を特に効果的に高める観点からは、接着剤層2と耐食性皮膜3bとの組み合わせとしては、接着剤層2が、極性基としてウレタン結合基、エポキシ基、又はイソシアネート基を有する樹脂により構成されたものであり、且つ、耐食性皮膜3bが、アクリル系樹脂と、クロム化合物と、リン酸を含む処理液により形成されたものであることが好ましい。この組み合わせにおいて、接着剤層2は、ポリオール化合物イソシアネート基を有する化合物とを含むポリウレタン系樹脂組成物の硬化物、又は、酸変性ポリオレフィンと、イソシアネート基を有する化合物、オキサゾリン基を有する化合物、及びエポキシ基を有する化合物からなる群より選択される少なくとも1種とを含む樹脂組成物の硬化物で構成されたものであることが好ましく、さらに電池用包装材料の成形性を高める観点から、ポリオール化合物イソシアネート基を有する化合物とを含むポリウレタン系樹脂組成物の硬化物により構成されたものであることが特に好ましい。ポリオール化合物としては、ポリエステル系ポリオールが特に好ましく、イソシアネート基を有する化合物としては芳香族ジイソシアネートが特に好ましい。酸変性ポリプロピレンとしては、無水マレイン酸変性ポリプロピレンが特に好ましい。無水マレイン酸変性ポリプロピレンの融解ピーク温度としては、50〜100℃程度が好ましい。エポキシ樹脂としては、トリメチロールプロパンのグリシジルエーテル誘導体、ビスフェノールFのノボラック型エポキシ樹脂が好ましい。また、この組み合わせにおいてイソシアネート基を有する化合物としては脂肪族イソシアネートのヌレート体が好ましく、PDI(ペンタメチレンジイソシアネート)のヌレート体が特に好ましい。また、この組み合わせにおいて、アクリル系樹脂は、ポリアクリル酸もしくはその塩、アクリル酸メタクリル酸エステル共重合体、又はアクリル酸マレイン酸共重合体であることが好ましく、ポリアクリル酸であることが特に好ましい。ポリアクリル酸もしくはその塩の重量平均分子量は、好ましくは1万〜100万程度、より好ましくは50万〜100万程度が挙げられる。高分子量の方が耐久性は上がるが、処理液調合の際、水に溶解する事が困難になる。
接着剤層2と耐食性皮膜3bとの密着性を特に効果的に高め、且つ、電池用包装材料の成形性を特に効果的に高める観点から、接着剤層2と耐食性皮膜3bとの特に好ましい組み合わせの具体例としては、接着剤層2が、分子量10000〜40000、水酸基等量0.7〜1.9個/molのポリエステル系ポリオールとトルエンジイソシアネート(TDI)のトリメチロールプロパン(TMP)アダクト体である芳香族ジイソシアネート化合物とを含むポリウレタン系樹脂組成物の硬化物により構成されており、耐食性皮膜3bが、分子量50万〜100万程度、酸価500〜1000程度のポリアクリル酸と、フッ化クロム(III)と、リン酸とを含む処理液により形成されている組み合わせが挙げられる。
接着剤層2のナノインデンテーション法による硬度としては、例えば、20〜400MPaが挙げられる。さらに、電池用包装材料に優れた成形性を備えさせる観点から、接着剤層2のナノインデンテーション法による硬度は、30〜400MPa程度であることが好ましく、40〜375MPa程度であることがより好ましく、50〜350MPa程度であることがさらに好ましく、50〜70MPa程度であることが特に好ましい。当該硬度は、以下のようにして測定することにより求められる。具体的には、装置としてナノインデンターを用い、ナノインデンターの圧子として三角錐形状のバーコビッチ(Berkovich)型圧子を用いる。まず、相対湿度50%、23℃環境において、当該圧子を、電池用包装材料の接着剤層2の表面に当て、10秒間かけて、当該表面から荷重40μNまで圧子を接着剤層2に押し込み、その状態で5秒間保持し、次に、10秒間かけて除荷する。最大荷重Pmax(μN)と最大深さ時の接触投影面積A(μm2)を用い、Pmax/Aにより、当該インデンテーション硬さ(MPa)を算出する。場所を変えて測定(N=5)して得られたインデンテーション硬さの平均値を、接着剤層2のナノインデンテーション法による硬度とする。なお、圧子を押し込む表面は、電池用包装材料の中心部を通るように厚み方向に切断して得られた、接着剤層2の断面が露出した部分である。切断は、市販品の回転式ミクロトームなどを用いて行う。
第2の開示において、上述の硬度を有する接着剤層2を構成する樹脂としては、例えば、極性基として含窒素結合基を有する樹脂が挙げられ、ポリオール化合物とイソシアネート基を有する化合物とを含むポリウレタン系樹脂組成物の硬化物が好ましく挙げられ、当該ポリオール化合物の水酸基当量(個/mol)として0.5〜2.5、好ましくは0.7〜1.9、重量平均分子量として500〜120000、好ましくは1000〜80000であるポリウレタン系樹脂組成物の硬化物がより好ましく挙げられる。また、上述の硬度を有する接着剤層2を構成する好ましい樹脂としては、具体的には、ポリエステルポリオール、ポリエステルポリウレタンポリオール、ポリエーテルポリオール、及びポリエーテルポリウレタンポリオールよりなる群から選択される少なくとも1種のポリオール化合物と、芳香族ジイソシアネート、そのアダクト体、及びそのイソシアヌレート変性体よりなる群から選択される少なくとも1種のイソシアネート系化合物を含むポリウレタン系樹脂組成物が挙げられる。さらに、上述の硬度を有する接着剤層2を構成するより好ましい樹脂としては、ポリオール化合物とイソシアネート系化合物との比率が、ポリオール化合物の水酸基1モル当たり、イソシアネート系化合物のイソシアネート基の割合が、1〜30モル、好ましくは3〜20モルであるポリウレタン系樹脂組成物が挙げられる。
接着剤層2の厚さについては、接着層としての機能を発揮すれば特に制限されないが、接着剤層2と耐食性皮膜3bとの密着性を効果的に高める観点、及び/又は電池用包装材料の成形性を効果的に高める観点から、上限については、好ましくは約10μm以下、より好ましくは約5μm以下、さらに好ましくは約4μm以下が挙げられ、下限については、好ましくは約0.5μm以上、より好ましくは約1μm以上、さらに好ましくは約2μm以上が挙げられる。接着剤層2の厚みの範囲としては、好ましくは、0.5〜10μm程度、0.5〜5μm程度、0.5〜4μm程度、1〜10μm程度、1〜5μm程度、1〜4μm程度、2〜10μm程度、2〜5μm程度、2〜4μm程度が挙げられる。
また、接着剤層2は、接着性を阻害しない限り他成分の添加が許容され、着色剤や熱可塑性エラストマー、粘着付与剤、フィラーなどを含有してもよい。接着剤層2が着色剤を含んでいることにより、電池用包装材料を着色することができる。着色剤としては、顔料、染料などの公知のものが使用できる。また、着色剤は、1種類のみを用いてもよいし、2種類以上を混合して用いてもよい。
顔料の種類は、接着剤層2の接着性を損なわない範囲である場合は特に限定されない。有機顔料としては、例えば、アゾ系、フタロシアニン系、キナクリドン系、アントラキノン系、ジオキサジン系、インジゴ系、チオインジゴ系、ペリノン系、ペリレン系、イソインドリノン系等が挙げられ、無機顔料としては、カーボンブラック系、酸化チタン系、カドミウム系、鉛系、酸化クロム系等が挙げられ、その他に、マイカ(雲母)の微粉末、魚鱗箔等が挙げられる。
着色剤の中でも、例えば電池用包装材料の外観を黒色とするためには、カーボンブラックが好ましい。
顔料の平均粒子径としては、特に制限されず、例えば、0.05〜5μm程度、好ましくは0.08〜2μm程度が挙げられる。なお、顔料の平均粒子径は、レーザ回折/散乱式粒子径分布測定装置で測定されたメジアン径とする。
接着剤層2における顔料の含有量としては、電池用包装材料が着色されれば特に制限されず、例えば5〜60質量%程度、好ましくは10〜40質量%が挙げられる。
接着剤層2による基材層1とバリア層3との密着性は、例えば、初期剥離強度、120℃剥離強度等を測定することで評価することができる。初期剥離強度及び120℃剥離強度は、以下のように測定することができる。
<密着性評価−初期剥離強度の測定>
電池用包装材料を、幅15mm×長さ100mmの短冊状に裁断して、試験片とする。試験片のバリア層と基材層との間を、長さ方向に数十mm程度剥離する。次に、試験片のバリア層側と、基材層側とを、標線間距離50mmとなるようにそれぞれ引張試験機に取り付ける。なお、試験中にチャックが外れないように試験片のチャック部をテープで補強してもよい。50mm/分の速度で180°方向に引張り、標線間距離が57mmとなったときの強度を測定する。3回測定した平均値を、バリア層−基材層間の初期剥離強度(N/15mm)とする。なお、サンプルが小さい等の事情により、上記の試験片の形状を用意できない場合は、測定が可能なサイズで測定し、15mm幅に換算して剥離強度を算出する。
<密着性評価−120℃剥離強度の測定>
JIS K7127:1999の規定に準拠して、それぞれ、120℃環境の各測定温度における電池用包装材料の剥離強度を次のようにして測定する。具体的には、電池用包装材料を、幅方向15mm幅×長さ方向100mmの短冊状に裁断して、試験片とする。切断片のバリア層と基材層との間を、長さ方向に数十mm程度剥離する。次に、試験片のバリア層側と、基材層側とを、標線間距離50mmとなるようにそれぞれ引張試験機に取り付ける。なお、試験中にチャックが外れないように試験片のチャック部をテープで補強してもよい。引張試験機に取り付けた状態で120℃環境で2分間放置し、その後、120℃環境において、50mm/分の速度で180°方向に引張り、標線間距離が57mmとなったときの強度を測定する。3回測定した平均値を、バリア層−基材層間の120℃剥離強度(N/15mm)とする。
[バリア層3]
第2の開示の電池用包装材料において、バリア層3の構成は、第1の開示のバリア層3の構成と同様であり、説明を省略する。
[耐食性皮膜3a、3b]
第2の開示の電池用包装材料においては、バリア層3の接着剤層2側の表面に、接着剤層2と接面している耐食性皮膜3bを備えている。
第2の開示の電池用包装材料においては、耐食性皮膜3bのX線光電子分光法(XPS)による分析によって、287eVから290eVの範囲にO−C=O結合に由来するピークPOCOと、285eVにC−C結合に由来するピークPC-Cが検出され、ピークPOCOの高さをピークPC-Cの高さで除して得られるピーク高さ比の値POCO/C-Cが、0.10〜0.50の範囲にあることを特徴としている。当該ピーク高さ比の値POCO/C-Cが、このような特定の範囲内にあることにより、バリア層3の表面に設けられた耐食性皮膜3bと、これに接面している接着剤層2との密着性に優れている。第2の開示の電池用包装材料は、耐食性皮膜3bと接着剤層2との密着性が高いため、例えば実施例で測定されているような、苛酷な剥離試験を行った場合にも、高い剥離強度を示し、長期間に亘って優れた密着性を発揮し得る。
耐食性皮膜3bと接着剤層2(さらには、後述の耐食性皮膜3aとこれに隣接する層)との密着性をより一層向上させる観点からは、当該ピーク高さ比の値POCO/C-Cとしては、下限は、好ましくは約0.10、より好ましくは0.15が挙げられ、上限は、好ましくは約0.50が挙げられる。また、ピーク高さ比の値POCO/C-Cの好ましい範囲としては、0.10〜0.50、より好ましくは0.15〜0.50程度が挙げられる。なお、POCO/C-Cが約0.10以上の場合、上述のようにより良好な密着性が得られるとともに、良好な耐電解液性を有する傾向も得られる。一方で、POCO/C-Cが約0.5を超える過剰なO−C=O結合の導入は、耐電解液性の向上効果が飽和する上、耐食性被膜を形成する処理液を構成する分子の凝集力が高くなりすぎるため、却って処理液の安定性に欠けるという問題を生じさせる。具体的には、POCO/C-Cが約0.5を超えると、処理液を構成する成分が水難溶性となるため処理液の作製が難しく、仮に処理液が作製できたとしても、当該成分(例えば、アクリル樹脂)同士の凝集によりゲル化や沈殿などの問題が生じ、均一で安定した、耐食性被膜の形成が困難となる。さらには、処理液が、より高濃度の処理液原液として予め調製され保存される場合にあっては、処理液原液の保管安定性、特に冷所保管安定性が低下する為、例えば冬場に保管安定性が低下しやすいといった問題も生じさせる。
第2の開示の電池用包装材料においては、耐食性皮膜3bと接着剤層2(さらには、後述の耐食性皮膜3aとこれに隣接する層)との密着性をより一層高める観点から、耐食性皮膜3bのXPSによる分析によって、576eVから581eVの範囲に、クロム化合物のCr2p3/2に由来するピークPCrが検出されることが好ましい。当該ピークが検出されることにより、化成処理により耐食性皮膜3bを形成するための組成物中に、クロム化合物が含まれていることを確認することができる。Cr原子は、皮膜中で−COOH基、−NH2基、−CN基等により配位結合される中心的な役割を持ち、このためポリカルボン酸やそのアンモニウム塩の様な他の配位子となり得る構造を有する官能基と架橋構造を形成し、耐食性、耐薬品性等の耐久性が発現する。
また、同様の観点から、第2の開示の電池用包装材料においては、耐食性皮膜3bのX線光電子分光法による分析によって、132eVから135eVの範囲に、リン酸化合物のP2pに由来するピークPPが検出されることが好ましい。当該ピークPPが検出されることにより、化成処理により耐食性皮膜3bを形成するための組成物中に、リン酸またはその塩が含まれていることを確認することができる。リン酸は化成処理において、金属表面をエッチングして金属表面にリン酸化合物皮膜などの高耐久性の皮膜を形成することが知られている。また、Crの様な配位数の高い金属原子の存在下では、上記の様な配位的な架橋構造にも取り込まれる為、金属表面と上記高耐久性の皮膜との密着に寄与すると考えられる。
また、同様の観点から、第2の開示の電池用包装材料においては、耐食性皮膜3bのXPSによる分析によって、685eVから689eVの範囲に、フッ素化合物のF1sに由来するピークが検出されることが好ましい。当該ピークPFが検出されることにより、化成処理により耐食性皮膜3bを形成するための組成物中に、フッ素化合物が含まれていることを確認することができる。バリア層がアルミニウムの場合、フッ素原子は、アルミニウムと結合して酸化アルミニウム皮膜よりも高耐久性のフッ化アルミニウム皮膜を形成する。
さらに、同様の観点から、第2の開示の電池用包装材料においては、耐食性皮膜3bのX線光電子分光法による分析によって、ピークPCr、ピークPP、ピークPFのうち、少なくともピークPCrが検出されることが好ましく、ピークPCrに加えて、ピークPP及びピークPFの少なくともいずれかが検出されることがより好ましく、ピークPCr、ピークPP、及びピークPFのすべてが検出されることが特に好ましい。
第2の開示の電池用包装材料においては、バリア層3の接着剤層2側の表面のみに、XPSによる分析によって検出される上記各種ピーク(すなわち、上記ピーク高さ比の値POCO/C-C、さらには、クロム化合物に由来するピークPCr、リン酸化合物に由来するピークPP、及びフッ素化合物に由来するピークPFのうち少なくとも1つ)を有する耐食性皮膜3bを備えていてもよいし、さらに、バリア層3の接着層5側の表面にも、当該各種ピークを有する耐食性皮膜3aを備えていてもよい。耐食性皮膜3aを備えていることにより、バリア層3表面の耐食性皮膜3aと、これに接面している層(例えば、接着層5)との密着性についても高めることができる。
第2の開示の耐食性皮膜3a,3bについて、XPSを用いて分析する方法は、第1の開示で説明した方法と同じである。
第2の開示においても、電池用包装材料に積層されている耐食性皮膜について、XPSを用いピーク位置(結合エネルギー)を分析する場合、まず、分析すべき側のバリア層に積層されている層(接着剤層)を物理的に剥離する。この際、水や有機溶剤、酸やアルカリの水溶液などを利用せずに、物理的に剥離させる。バリア層と接着剤層との間を剥離した後、バリア層の表面に接着剤層が残存している場合、残存している接着剤層をAr−GCIBによるエッチングで除去する。このようにして得られたバリア層の表面について、XPSを用いて、耐食性皮膜の分析を行う。また、分析すべき側のバリア層に積層されている層が熱融着性樹脂層、接着層などである場合も同様にして各層を物理的に剥離、エッチング除去して分析を行う。
なお、上記各種ピークの有無は、第1の開示と同じく、ピークが明らかな場合はX線光電子分光分析装置のモニタ画面上に表示された検出ピークとして容易に確認出来るが、ピークが小さくて曖昧な場合は、面積や半値幅、同原子の関連ピークの存在の有無に基づいて判断する。
第1の開示と同じく、耐食性皮膜3a,3bは、バリア層3の表面を、化成処理することにより形成することができる。上記ピーク高さ比の値POCO/C-C、さらには、クロム化合物に由来するピークPCr、リン酸化合物に由来するピークPP、及びフッ素化合物に由来するピークPFのうち少なくとも1つを有する耐食性皮膜を好適に形成する観点から、耐食性皮膜3a,3bは、少なくともCOOH基を有するアクリル系樹脂、クロム化合物、及びリン酸化合物を含む組成物から形成することが好ましい。より具体的には、これらの成分を含む処理液を用いて、バリア層3の表面を化成処理することにより、耐食性皮膜3a,3bを好適に形成することができる。化成処理は、処理液をバリア層3の表面に塗布し、焼き付け処理することにより行うことができる。なお、処理液の組成、処理方法、及び処理条件を適宜調整することによって、上記ピーク高さ比の値POCO/C-Cを上記の範囲に調整することができる。
上記ピーク高さ比の値POCO/C-Cを上記の範囲として、接着剤層2と耐食性皮膜3b(さらには、耐食性皮膜3aとこれに隣接する層)との密着性をより一層高める観点から、アクリル系樹脂としては、第1の開示で例示したものと同じものが例示される。アクリル系樹脂の重量平均分子量、酸価についても、第1の開示での例示と同じである。
同様の観点から、クロム化合物についても、第1の開示と同じである。
また、第1の開示と同じく、上記の様な耐食性皮膜3a,3bに架橋構造を付与して高耐久性の皮膜とする手法及び架橋剤についても、第1の開示と同じである。
さらに、耐食性皮膜3a,3bを形成する組成物には、リン酸がさらに含まれることが好ましい。リン酸については、第1の開示と同じである。
接着剤層2と耐食性皮膜3b(さらには、耐食性皮膜3aとこれに隣接する層)との密着性をより一層高める観点から、耐食性皮膜3a,3bを形成する組成物(処理液)の特に好ましい組成としては、ポリアクリル酸とフッ化クロム(III)とリン酸を含む組成物、ポリアクリル酸とフッ化クロム(III)を含む組成物、アクリル酸メタクリル酸エステル共重合体とフッ化クロム(III)とリン酸を含む組成物、アクリル酸メタクリル酸エステル共重合体と硝酸クロム(III)とリン酸を含む組成物、アクリル酸マレイン酸共重合体のナトリウム塩とフッ化クロム(III)とリン酸を含む組成物、アクリル酸スチレン共重合体とフッ化クロム(III)とリン酸を含む組成物、ポリアクリル酸の各種の塩(ナトリウム塩、アンモニウム塩、アミン塩など)とフッ化クロム(III)とリン酸を含む組成物が挙げられる。
耐食性皮膜を形成する処理液の固形分濃度は、第1の開示での例示と同じである。
耐食性皮膜3a,3bの厚さとしては、特に制限されないが、接着剤層2と耐食性皮膜3b(さらには、耐食性皮膜3aとこれに隣接する層)との密着性を効果的に高める観点からは、好ましくは1nm〜10μm程度、より好ましくは1〜100nm程度、さらに好ましくは1〜50nm程度が挙げられる。なお、耐食性皮膜の厚さは、透過電子顕微鏡による観察、又は、透過電子顕微鏡による観察と、エネルギー分散型X線分光法もしくは電子線エネルギー損失分光法との組み合わせによって測定することができる。
同様の観点から、バリア層3の表面1m2当たりの耐食性皮膜3a,3b中のCr量としては、第1の開示での例示と同じである。
耐食性皮膜3a,3bを形成する組成物をバリア層3の表面に塗布する方法についても、第1の開示と同じである。
上記ピーク高さ比の値POCO/C-Cを上記所定の範囲に設定して、接着剤層2と耐食性皮膜3b(さらには、耐食性皮膜3aとこれに隣接する層)との密着性を向上させる観点から、処理液を焼き付けして耐食性皮膜にする際の加熱温度としては、好ましくは120〜210℃程度、より好ましくは140〜190℃程度が挙げられる。また、同様の観点から、焼き付けする時間としては、好ましくは1〜30秒程度、より好ましくは5〜10秒程度が挙げられる。
第2の開示においても、バリア層3の表面の化成処理をより効率的に行う観点から、バリア層3の表面に耐食性皮膜を設ける前には、アルカリ浸漬法、電解洗浄法、酸洗浄法、電解酸洗浄法、酸活性化法などの公知の処理方法で脱脂処理を行うことが好ましい。
[接着層5]
第2の開示の電池用包装材料において、接着層5は、バリア層3と熱融着性樹脂層4との密着性を高めるために、必要に応じて、これらの間に設けられる層である。より具体的には、接着層5は、バリア層3の表面の耐食性皮膜3aと接面するようにして設けられている。第2の開示の接着層5についても、前述の第1の開示の接着層5に示した構成と同じ構成を採用することができる。
一般に、バリア層と熱融着性樹脂層との密着性を高める観点からは、これらの間に接着層を有していることが好ましいが、バリア層の熱融着性樹脂層側の表面に耐食性皮膜を備えている場合には、耐食性皮膜と接着層との間で密着性が低下することがある。これに対して、第2の開示の電池用包装材料においては、耐食性皮膜3aが前述の特定のピーク高さ比の値POCO/C-Cを有しているため、接着層5を設けることによって、耐食性皮膜3aと接着層5との間の密着性が効果的に高められる。
接着層5は、耐食性皮膜3aと熱融着性樹脂層4とを接着可能である樹脂によって形成される。接着層5の形成に使用される樹脂としては、その接着機構、接着剤成分の種類などは、例えば、接着剤層2で例示した接着剤と同様のものが使用できる。接着剤層2で例示した接着剤の中でも、耐食性皮膜3aと接着層5との密着性をより高める観点から、接着層5の形成に使用される樹脂としては、接着成分に、イソシアネート基、オキサゾリン基、又はエポキシ基を含む化合物を硬化剤として含む樹脂組成物の硬化物が好ましく、接着成分である酸変性ポリオレフィンと、硬化剤であるイソシアネート基を有する化合物、オキサゾリン基を有する化合物、及びエポキシ基を有する化合物からなる群より選択される少なくとも1種とを含む樹脂組成物の硬化物がより好ましい。
耐食性皮膜3aと接着層5との密着性を効果的に高める観点から、接着層5の厚みとしては、上限については、好ましくは約40μm以下、より好ましくは約30μm以下、さらに好ましくは約20μm以下が挙げられ、下限については、好ましくは約0.5μm以上、より好ましくは約1μm以上、さらに好ましくは約2μm以上が挙げられる。接着層5の厚みの範囲としては、好ましくは、0.5〜40μm程度、0.5〜30μm程度、0.5〜20μm程度、1〜40μm程度、1〜30μm程度、1〜20μm程度、2〜40μm程度、2〜30μm程度、2〜20μm程度が挙げられる。
[熱融着性樹脂層4]
第2の開示の電池用包装材料において、熱融着性樹脂層4の構成は、第1の開示の熱融着性樹脂層4の構成と同様であり、説明を省略する。
[表面被覆層6]
第2の開示の電池用包装材料において、表面被覆層6の構成は、第1の開示の表面被覆層6の構成と同様であり、説明を省略する。
2−3.電池用包装材料の製造方法
第2の開示の電池用包装材料の製造方法については、所定の組成の各層を積層させた積層体が得られる限り、特に制限されず、少なくとも、基材層と、接着剤層と、バリア層と、熱融着性樹脂層とがこの順となるように積層して積層体を得る工程を備えており、
前記バリア層を積層する際に、前記バリア層の前記接着剤層側の表面には、前記接着剤層と接面するように耐食性皮膜が設けられており、耐食性皮膜3bとして、耐食性皮膜3bのXPSによる分析によって、287eVから290eVの範囲にO−C=O結合に由来するピークPOCOと、285eVにC−C結合に由来するピークPC-Cが検出され、ピークPOCOの高さをピークPC-Cの高さで除して得られるピーク高さ比の値POCO/C-Cが、0.10〜0.50の範囲にあるものを用いる方法が挙げられる。
第2の開示の電池用包装材料の製造方法の一例としては、以下の通りである。まず、基材層1、必要に応じて設けられる接着剤層2、バリア層3(耐食性皮膜3bを備える、以下省略)が順に積層された積層体(以下、「積層体A」と表記することもある)を形成する。積層体Aの形成は、具体的には、基材層1またはバリア層3に、接着剤層2の形成に使用される接着剤を、グラビアコート法、ロールコート法などの塗布方法で塗布・乾燥した後に、当該バリア層3又は基材層1を積層させて接着剤層2を硬化させるドライラミネート法によって行うことができる。このとき、バリア層3を積層する際に、バリア層3の少なくとも一方の表面には、予め前述の耐食性皮膜が形成されたものを用いる。なお、耐食性皮膜3a,3bの形成方法は、前述の通りである。
次いで、積層体Aのバリア層3上に、接着層5と熱融着性樹脂層4を積層させる。バリア層3上に接着層5を設ける方法としては、例えば、積層体Aのバリア層3上に、接着層5を構成する樹脂成分をグラビアコート法、ロールコート法、押出しラミネート法などの方法により塗布すればよい。また、バリア層3と熱融着性樹脂層4の間に接着層5を設ける方法としては、例えば、(1)積層体Aのバリア層3上に、接着層5及び熱融着性樹脂層4を共押出しすることにより積層する方法(共押出しラミネート法)、(2)別途、接着層5と熱融着性樹脂層4が積層した積層体を形成し、これを積層体Aのバリア層3上にサーマルラミネート法により積層する方法、(3)積層体Aのバリア層3上に、接着層5を形成させるための接着剤を押出し法や溶液コーティングし、高温で乾燥さらには焼き付ける方法などにより積層させ、この接着層5上に予めシート状に製膜した熱融着性樹脂層4をサーマルラミネート法により積層する方法、(4)積層体Aのバリア層3と、予めシート状に製膜した熱融着性樹脂層4との間に、溶融させた接着層5を流し込みながら、接着層5を介して積層体Aと熱融着性樹脂層4を貼り合せる方法(サンドイッチラミネート法)などが挙げられる。
表面被覆層6を設ける場合には、基材層1のバリア層3とは反対側の表面に、表面被覆層を積層する。表面被覆層は、例えば表面被覆層を形成する上記の樹脂を基材層1の表面に塗布することにより形成することができる。なお、基材層1の表面にバリア層3を積層する工程と、基材層1の表面に表面被覆層を積層する工程の順番は、特に制限されない。例えば、基材層1の表面に表面被覆層を形成した後、基材層1の表面被覆層とは反対側の表面にバリア層3を形成してもよい。
上記のようにして、必要に応じて設けられる表面被覆層/基材層1/接着剤層2/少なくとも一方の表面に耐食性皮膜を備えるバリア層3/必要に応じて設けられる接着層5/熱融着性樹脂層4からなる積層体が形成されるが、接着剤層2及び必要に応じて設けられる接着層5の接着性を強固にするために、更に、熱ロール接触式、熱風式、近赤外線式又は遠赤外線式などの加熱処理に供してもよい。
第2の開示の電池用包装材料において、積層体を構成する各層は、必要に応じて、製膜性、積層化加工、最終製品2次加工(パウチ化、エンボス成形)適性などを向上又は安定化するために、コロナ処理、ブラスト処理、酸化処理、オゾン処理などの表面活性化処理を施していてもよい。
2−4.電池用包装材料の用途
第2の開示の電池用包装材料の用途に関する説明は、前述した第1の開示の電池用包装材料の用途の説明と同じであり、説明を省略する。
(第3の開示)
第3の開示の耐食性皮膜は、X線光電子分光法による分析によって、287eVから290eVの範囲にO−C=O結合のC1sに由来するピークPOCOと、285eVにC−C結合のC1sに由来するピークPC-Cが検出され、かつ、ピークPOCOの高さをピークPC-Cの高さで除して得られるピーク高さ比の値POCO/C-Cが、0.10以上0.50以下の範囲にあることを特徴とする。
また、第3の開示の包装材料は、少なくとも、基材層と、バリア層と、熱融着性樹脂層とをこの順に備える積層体から構成されており、バリア層の一方面に、第3の開示の耐食性皮膜を備えていることを特徴としている。また、第3の開示の包装材料が、少なくとも、基材層と、バリア層と、接着層と、熱融着性樹脂層とをこの順に備える積層体から構成されている場合には、バリア層の接着層側の表面には、接着層と接面するようにして、第3の開示の耐食性皮膜を備えていることを特徴とする。
さらに、第3の開示の耐食性皮膜付き金属材料は、金属材料と、金属材料の表面に形成された第3の開示の耐食性皮膜とを備えていることを特徴としている。また、第3の開示の樹脂フィルム付き金属材料は、金属材料と、金属材料の表面に設けられた第3の開示の耐食性皮膜と、耐食性皮膜の表面に設けられた樹脂フィルムとを備えていることを特徴とする。
以下、図9から図14を参照しながら、第3の開示の耐食性皮膜、包装材料及びその製造方法、耐食性皮膜付き金属材料、並びに樹脂フィルム付き金属材料について、詳述する。なお、図9〜図12においては、包装材料13において、バリア層3の接着層5側の表面に、接着層5と接面した状態で、第3の開示の耐食性皮膜3aが設けられた態様を示している。図11,12においては、包装材料13において、バリア層3の基材層1側の表面に、接着剤層2と接面した状態で、耐食性皮膜3bが設けられた態様を示している。また、図13においては、耐食性皮膜付き金属材料11の金属材料7の表面に、第3の開示の耐食性皮膜3aが設けられた態様を示している。さらに、図14においては、樹脂フィルム付き金属材料12の金属材料7の表面に、第3の開示の耐食性皮膜3aが設けられた態様を示している。
第3の開示において、耐食性とは、耐酸性、耐アルカリ性などを意味する。また、金属材料やバリア層の腐食を誘発する成分としては、酸成分(電解液を含む)、アルカリ成分などである。なお、前述のとおり、リチウムイオン電池などに使用されている電解液には、電解質となるフッ素化合物(LiPF6、LiBF4など)が含まれており、フッ素化合物が水と反応すると、酸成分であるフッ化水素を発生することが知られており、通常、電解液は環境中の水分と反応して酸性を示す。
3−1.耐食性皮膜
第3の開示の耐食性皮膜3aは、耐食性皮膜のX線光電子分光法による分析によって、287eVから290eVの範囲にO−C=O結合のC1sに由来するピークPOCOと、285eVにC−C結合のC1sに由来するピークPC-Cが検出され、かつ、ピークPOCOの高さをピークPC-Cの高さで除して得られるピーク高さ比の値POCO/C-Cが、0.10〜0.50の範囲にある。すなわち、第3の開示の耐食性皮膜3aは、皮膜としては、第1の開示の耐食性皮膜3aと同じものである。当該ピーク高さ比の値POCO/C-Cが、このような特定の範囲内にあることにより、第3の開示の耐食性皮膜3aは、電解液などの金属材料の腐食を誘発する成分が存在する雰囲気において、金属材料(例えば、後述の第3の開示の包装材料のバリア層、第3の開示の樹脂フィルム付き金属材料の金属材料など)と、その上に設けられる樹脂層(例えば、後述の第3の開示の包装材料の接着層、第3の開示の樹脂フィルム付き金属材料の樹脂フィルムなど)との間の密着性の低下を抑制することができる。
金属材料(以下、例えばバリア層3又は金属材料7)と樹脂層(以下、例えば接着層5又は樹脂フィルム8)との間の密着性の低下をより効果的に抑制する観点から、耐食性皮膜3aの当該ピーク高さ比の値POCO/C-Cとしては、下限は、好ましくは約0.15が挙げられ、上限は、好ましくは約0.45、より好ましくは0.30が挙げられる。また、ピーク高さ比の値POCO/C-Cの好ましい範囲としては、0.10〜0.45程度、0.10〜0.30程度、0.15〜0.50程度、0.15〜0.45程度、0.15〜0.30程度が挙げられる。
電解液などの金属材料の腐食を誘発する成分が存在する雰囲気における、耐酸性皮膜3aと樹脂層との密着性の低下をより効果的に抑制する観点から、耐食性皮膜3aのXPSによる分析によって、576eVから581eVの範囲に、クロム化合物のCr2p3/2に由来するピークPCrが検出されることが好ましい。当該ピークが検出されることにより、化成処理により耐食性皮膜3aを形成するための処理液中に、クロム化合物が含まれていることを確認することができる。Cr原子は、皮膜中で−COOH基、−NH2基、−CN基等により配位結合される中心的な役割を持ち、このためポリカルボン酸やそのアンモニウム塩の様な他の配位子となり得る構造を有する官能基と架橋構造を形成し、耐食性の耐久性が発現する。
また、同様の観点から、耐食性皮膜3aのX線光電子分光法による分析によって、132eVから135eVの範囲に、リン酸化合物のP2pに由来するピークPPが検出されることが好ましい。当該ピークPPが検出されることにより、化成処理により耐食性皮膜3aを形成するための処理液中に、リン酸またはその塩が含まれていることを確認することができる。リン酸は化成処理において、金属表面をエッチングして金属表面にリン酸化合物皮膜などの高耐久性の皮膜を形成することが知られている。また、Crの様な配位数の高い金属原子の存在下では、上記の様な配位的な架橋構造にも取り込まれる為、金属表面と上記高耐久性の皮膜との密着に寄与すると考えられる。
また、同様の観点から、耐食性皮膜3aのXPSによる分析によって、685eVから689eVの範囲に、フッ素化合物のF1sに由来するピークPFが検出されることが好ましい。当該ピークPFが検出されることにより、化成処理により耐食性皮膜3aを形成するための処理液中に、フッ素化合物が含まれていることを確認することができる。金属材料がアルミニウムの場合、フッ素原子は、アルミニウムと結合して酸化アルミニウム皮膜よりも高耐久性のフッ化アルミニウム皮膜を形成する。
耐食性皮膜3aについて、XPSを用いて分析する方法は、第1の開示で説明した方法と同じである。
なお、後述の包装材料13に積層されている耐食性皮膜について、XPSを用いて分析する場合、まず、バリア層に積層されている層(接着剤層、熱融着性樹脂層、接着層など)を物理的に剥離する。この際、水や有機溶剤、酸やアルカリの水溶液などを利用せずに、物理的に剥離させる。バリア層と、バリア層に積層されている層(例えば接着層など)との間を剥離した後、バリア層の表面に、バリア層に積層されている層(例えば接着層など)が残存している場合、残存している層をAr−GCIBによるエッチングで除去する。このようにして得られたバリア層の表面について、XPSを用いて、耐食性皮膜の分析を行う。後述の樹脂フィルム付き金属材料12に設けられている耐食性皮膜について、XPSを用いて分析する場合についても、同様に、金属材料に積層されている樹脂フィルムを物理的に剥離し、金属材料の表面について、XPSを用いて、耐食性皮膜の分析を行う。
なお、上記各種ピークの有無は、第1の開示と同じく、ピークが明らかな場合はX線光電子分光分析装置のモニタ画面上に表示された検出ピークとして容易に確認出来るが、ピークが小さくて曖昧な場合は、面積や半値幅、同原子の関連ピークの存在の有無に基づいて判断する。
耐食性皮膜3aは、金属材料の表面を、化成処理することにより形成することができる。上記ピーク高さ比の値POCO/C-C、さらには、クロム化合物に由来するピークPCr、リン酸化合物に由来するピークPP、及びフッ素化合物に由来するピークPFのうち少なくとも1つを有する耐食性皮膜を好適に形成する観点から、耐食性皮膜は、少なくともCOOH基を有するアクリル系樹脂、クロム化合物、及びリン酸化合物を含む組成物により形成されていることが好ましい。より具体的には、これらの成分を含む処理液を用いて、金属材料の表面を化成処理することにより、耐食性皮膜3aを好適に形成することができる。化成処理は、処理液を金属材料の表面に塗布し、焼き付け処理することにより行うことができる。
上記ピーク高さ比の値POCO/C-Cを上記の範囲として、耐食性皮膜3aと、これに隣接する層(例えば接着層5など)(さらには、耐食性皮膜3bとこれに隣接する層)との密着性の低下をより効果的に抑制する観点から、アクリル系樹脂としては、第1の開示で例示したものと同じものが例示される。アクリル系樹脂の重量平均分子量、酸価についても、第1の開示での例示と同じである。
同様の観点から、クロム化合物についても、第1の開示と同じである。
また、第1の開示と同じく、上記の様な耐食性皮膜3aに架橋構造を付与して高耐久性の皮膜とする手法及び架橋剤についても、第1の開示と同じである。
リン酸化合物は、金属材料表面の洗浄効果(具体的には、バリア層表面の劣化した酸化皮膜や汚れを取り除く効果)や、焼き付け後の皮膜中でリン酸イオンとしてバリア層表面やクロムイオン等の金属イオンに配位して架橋構造を形成する効果を有する。第3の開示では、耐食性皮膜のカルボン酸イオンが同様の効果を奏すると考えられるため、金属材料の洗浄効果を高めて、耐食性皮膜を安定的に形成する観点からは、リン酸化合物を用いることが好ましい。
電解液などの金属材料の腐食を誘発する成分が存在する雰囲気における、耐酸性皮膜3aと樹脂層との密着性をより一層向上させる観点から、耐食性皮膜3aを形成する組成物(処理液)の特に好ましい組成としては、ポリアクリル酸とフッ化クロム(III)とリン酸を含む組成物、ポリアクリル酸とフッ化クロム(III)を含む組成物、アクリル酸メタクリル酸エステル共重合体とフッ化クロム(III)とリン酸を含む組成物、アクリル酸メタクリル酸エステル共重合体と硝酸クロム(III)とリン酸を含む組成物、アクリル酸マレイン酸共重合体のナトリウム塩とフッ化クロム(III)とリン酸を含む組成物、アクリル酸スチレン共重合体とフッ化クロム(III)とリン酸を含む組成物、ポリアクリル酸の各種の塩(ナトリウム塩、アンモニウム塩、アミン塩など)とフッ化クロム(III)とリン酸を含む組成物が挙げられる。
耐食性皮膜3aを形成する処理液の固形分濃度としては、第1の開示での例示と同じである。
耐食性皮膜3aの厚さとしては、特に制限されないが、電解液などの金属材料の腐食を誘発する成分が存在する雰囲気における耐酸性皮膜3aと樹脂層との密着性をより一層向上させる観点からは、好ましくは1nm〜10μm程度、より好ましくは1〜100nm程度、さらに好ましくは1〜50nm程度が挙げられる。なお、耐食性皮膜の厚さは、透過電子顕微鏡による観察、又は、透過電子顕微鏡による観察と、エネルギー分散型X線分光法もしくは電子線エネルギー損失分光法との組み合わせによって測定することができる。
同様の観点から、金属材料の表面1m2当たりの耐食性皮膜3a中のCr量としては、第1の開示での例示と同じである。
耐食性皮膜3aを形成する処理液を金属材料の表面に塗布する方法についても、第1の開示と同じである。
上記ピーク高さ比の値POCO/C-Cを上記所定の範囲となるように処理液の組成を調整した上で、電解液などの金属材料の腐食を誘発する成分が存在する雰囲気における、耐酸性皮膜3aと樹脂層との密着性をより一層向上させる観点から、処理液を焼き付けして耐食性皮膜にする際の加熱温度としては、好ましくは120〜210℃程度、より好ましくは140〜190℃程度が挙げられる。また、同様の観点から、焼き付けする時間としては、好ましくは1〜30秒程度、より好ましくは5〜10秒程度が挙げられる。
金属材料の表面の化成処理をより効率的に行う観点から、金属材料の表面に耐食性皮膜を設ける前には、アルカリ浸漬法、電解洗浄法、酸洗浄法、電解酸洗浄法、酸活性化法などの公知の処理方法で脱脂処理を行うことが好ましい。
3−2.包装材料
包装材料の積層構造
第3の開示の包装材料は、例えば図9から図12に示すように、少なくとも、基材層1、バリア層3、及び熱融着性樹脂層4をこの順に有する積層体から構成されている。第3の開示の包装材料において、基材層1が最外層側になり、熱融着性樹脂層4は最内層になる。即ち、包装材料によって形成された包装体中に内容物を収容する際に、内容物の周縁に位置する熱融着性樹脂層4同士が熱融着して内容物を密封することにより、内容物が封止される。
図9から図12に示されるように、第3の開示の包装材料においては、バリア層3の一方面に、耐食性皮膜3aを備えている。第3の開示の包装材料が接着層5を備えている場合には、バリア層3の接着層5側の表面に、接着層5と接面している耐食性皮膜3aを備えている。図9,10は、バリア層3の接着層5側の表面にのみ耐食性皮膜3aを備えている模式図を示している。また、図11及び図12は、バリア層3の両面に、それぞれ、耐食性皮膜3a,3bを備える場合の模式図を示している。なお、後述の通り、第3の開示の包装材料においては、バリア層3の一方面側(接着層5を有する場合には、接着層5側)の表面のみに、前述のXPSによる分析によって検出されるピーク特性を有する耐食性皮膜3aを備えていてもよいし、バリア層3の両面に、それぞれ、前述のXPSによる分析によって検出されるピーク特性を有する耐食性皮膜3a,3bを備えていてもよい。
第3の開示の包装材料は、図10から図12に示すように、基材層1とバリア層3との間に、これらの接着性を高める目的で、必要に応じて、接着剤層2を備えていてもよい。第3の開示の包装材料は、図12に示すように、意匠性、耐溶剤性、耐擦過性、成形性の向上などを目的として、基材層1のバリア層3とは反対側に、必要に応じて、表面被覆層6を備えていてもよい。
第3の開示の包装材料13を構成する積層体の厚さとしては、特に制限されないが、包装材料の厚さを薄くしつつ、成形性に優れた包装材料とする観点からは、例えば約180μm以下、好ましくは約150μm以下、より好ましくは60〜180μm程度、さらに好ましくは60〜150μm程度が挙げられる。
包装材料を形成する各層
[基材層1]
第3の開示の包装材料において、基材層1は最外層側に位置する層である。第3の開示において、基材層1の構成は、第1の開示の基材層1の構成と同様であり、説明を省略する。
[接着剤層2]
接着剤層2は、基材層1とバリア層3とを接着可能である接着剤によって形成される。第3の開示において、接着剤層2の構成は、第1の開示の接着剤層2の構成と同様であり、説明を省略する。
[バリア層3]
包装材料13において、バリア層3は、包装材料の強度向上の他、内容物に水蒸気、酸素、光などが侵入することを防止する機能を有する層である。第3の開示において、バリア層3の構成は、第1の開示のバリア層3の構成と同様であり、説明を省略する。
[耐食性皮膜3a、3b]
第3の開示の包装材料においては、バリア層3の一方面側(好ましくは熱融着性樹脂層4側)の表面に、第3の開示の耐食性皮膜3aを備えている。第3の開示の包装材料が接着層5を有する場合には、バリア層3の接着層5側の表面に、接着層5と説明している第3の開示の耐食性皮膜3aを備えている。第3の開示の耐食性皮膜3aの詳細については、前述の「3−1.耐食性皮膜」の欄で説明したとおりである。また、包装材料13においては、バリア層3の基材層1側に、耐食性皮膜3bを備えていてもよい。耐食性皮膜3bについても、XPSによる分析によって検出される前述のピーク特性を備えていることが好ましい。
第3の開示の包装材料13においては、耐食性皮膜3aのX線光電子分光法(XPS)による分析によって、287eVから290eVの範囲にO−C=O結合に由来するピークPOCOと、285eVにC−C結合に由来するピークPC-Cが検出され、ピークPOCOの高さをピークPC-Cの高さで除して得られるピーク高さ比の値POCO/C-Cが、0.10〜0.50の範囲にあることを特徴としている。当該ピーク高さ比の値POCO/C-Cが、このような特定の範囲内にあることにより、電解液などのバリア層の腐食を誘発する成分が存在する雰囲気において、バリア層3の表面に設けられた耐食性皮膜3aと、これに接面している層(例えば、必要に応じて設けられる接着層5など)との密着性に優れている。第3の開示の包装材料は、耐食性皮膜3aと、これに接面している層との密着性が高いため、例えば実施例で測定されているような、苛酷な剥離試験を行った場合にも、高い剥離強度を示し、長期間に亘って優れた密着性を発揮し得る。
[接着層5]
第3の開示の包装材料13において、接着層5は、バリア層3と熱融着性樹脂層4との密着性を高めるために、必要に応じて、これらの間に設けられる層である。より具体的には、接着層5は、バリア層3の表面の耐食性皮膜3aと接面した状態で設けられている。第3の開示において、接着層5の構成は、第1の開示の接着層5の構成と同様であり、説明を省略する。
[熱融着性樹脂層4]
第3の開示の包装材料13において、熱融着性樹脂層4は、最内層に該当し、包装材料によって内容物を収容する際に、熱融着性樹脂層同士が熱融着して内容物を密封する層である。第3の開示において、熱融着性樹脂層4の構成は、第1の開示の熱融着性樹脂層4の構成と同様であり、説明を省略する。
[表面被覆層6]
第3の開示の包装材料13においては、意匠性、耐溶剤性、耐擦過性、成形性の向上などを目的として、必要に応じて、基材層1の外側(基材層1のバリア層3とは反対側)に、必要に応じて、表面被覆層6を設けてもよい。表面被覆層6を設ける場合、表面被覆層6は、包装材料13の最外層となる。第3の開示において、表面被覆層6の構成は、第1の開示の表面被覆層6の構成と同様であり、説明を省略する。
包装材料の製造方法
第3の開示の包装材料の製造方法については、所定の組成の各層を積層させた積層体が得られる限り、特に制限されず、少なくとも、基材層と、バリア層と、熱融着性樹脂層とがこの順となるように積層して積層体を得る工程を備えており、バリア層を積層する際に、前記バリア層の一方側の表面には、耐食性皮膜が設けられており、耐食性皮膜として、第3の開示の耐食性皮膜3aを用いる方法が挙げられる。第3の開示の包装材料が、バリア層と熱融着性樹脂層との間に接着層を積層する工程を備えている場合には、バリア層を積層する際に、バリア層の接着層側の表面には、接着層と接面した状態で耐食性皮膜が設けられている。第3の開示の耐食性皮膜3aについては、「3−1.耐食性皮膜」の欄に記載した通りである。
第3の開示の包装材料の製造方法の一例としては、以下の通りである。まず、基材層1、必要に応じて設けられる接着剤層2、バリア層3が順に積層された積層体(以下、「積層体A」と表記することもある)を形成する。積層体Aの形成は、具体的には、基材層1またはバリア層3(耐食性皮膜3aを備える場合には、耐食性皮膜3a、以下省略)に、接着剤層2の形成に使用される接着剤を、グラビアコート法、ロールコート法などの塗布方法で塗布・乾燥した後に、当該バリア層3又は基材層1を積層させて接着剤層2を硬化させるドライラミネート法によって行うことができる。このとき、バリア層3を積層する際に、バリア層3の少なくとも一方の表面には、予め前述の耐食性皮膜が形成されたものを用いる。なお、耐食性皮膜3a,3bの形成方法は、前述の通りである。
次いで、積層体Aのバリア層3上に、熱融着性樹脂層4を積層させる。バリア層3上に熱融着性樹脂層4を直接積層させる場合には、積層体Aのバリア層3上に、熱融着性樹脂層4を構成する樹脂成分をグラビアコート法、ロールコート法、押出しラミネート法などの方法により塗布すればよい。また、バリア層3と熱融着性樹脂層4の間に接着層5を設ける場合には、例えば、(1)積層体Aのバリア層3上に、接着層5及び熱融着性樹脂層4を共押出しすることにより積層する方法(共押出しラミネート法)、(2)別途、接着層5と熱融着性樹脂層4が積層した積層体を形成し、これを積層体Aのバリア層3上にサーマルラミネート法により積層する方法、(3)積層体Aのバリア層3上に、接着層5を形成させるための接着剤を押出し法や溶液コーティングし、高温で乾燥さらには焼き付ける方法などにより積層させ、この接着層5上に予めシート状に製膜した熱融着性樹脂層4をサーマルラミネート法により積層する方法、(4)積層体Aのバリア層3と、予めシート状に製膜した熱融着性樹脂層4との間に、溶融させた接着層5を流し込みながら、接着層5を介して積層体Aと熱融着性樹脂層4を貼り合せる方法(サンドイッチラミネート法)などが挙げられる。
表面被覆層6を設ける場合には、基材層1のバリア層3とは反対側の表面に、表面被覆層を積層する。表面被覆層は、例えば表面被覆層を形成する上記の樹脂を基材層1の表面に塗布することにより形成することができる。なお、基材層1の表面にバリア層3を積層する工程と、基材層1の表面に表面被覆層を積層する工程の順番は、特に制限されない。例えば、基材層1の表面に表面被覆層を形成した後、基材層1の表面被覆層とは反対側の表面にバリア層3を形成してもよい。
上記のようにして、必要に応じて設けられる表面被覆層/基材層1/必要に応じて設けられる接着剤層2/少なくとも一方の表面に耐食性皮膜を備えるバリア層3/必要に応じて設けられる接着層5/熱融着性樹脂層4からなる積層体が形成されるが、必要に応じて設けられる接着剤層2及び接着層5の接着性を強固にするために、更に、熱ロール接触式、熱風式、近赤外線式又は遠赤外線式などの加熱処理に供してもよい。
第3の開示の包装材料において、積層体を構成する各層は、必要に応じて、製膜性、積層化加工、最終製品2次加工(パウチ化、エンボス成形)適性などを向上又は安定化するために、コロナ処理、ブラスト処理、酸化処理、オゾン処理などの表面活性化処理を施していてもよい。
包装材料の用途
第3の開示の包装材料は、食品、医薬品、化粧品、洗剤、電池素子(電解液、電極など)などを密封して収容するための包装体に使用される。第3の開示の包装材料によって形成された包装体中に、これら内容物を収容して、これら内容物を保管、流通させることができる。
具体的には、包装材料を成形することによって形成された包装体の空間に、内容物を収容し、熱融着性樹脂層同士をヒートシールすることにより、内容物を密封することができる。包装材料を成形して空間を形成する方法としては、例えば、金型を用いて、フィルム状の包装材料の熱融着性樹脂層側から基材層側に向かう凹部を形成し、当該凹部を空間とすることができる。
また、フィルム状の包装材料の袋状に成形する方法も挙げられる。このような袋状の包装材料としては、四方袋、スタンド袋、ピロー袋、ピローガセット袋、四柱ピローガセット袋、変形四柱ピローガセット袋、角底袋、半折底ガセット袋、半折袋などが挙げられる。
第3の開示の包装材料は、少なくとも、基材層と、バリア層と、熱融着性樹脂層とをこの順に備えており、電解液などのバリア層の腐食を誘発する成分が存在する雰囲気における、バリア層の表面に設けられた耐食性皮膜と、これに接面している層との密着性に優れている。このため、第3の開示の包装材料は、例えば、食品用包装材料、医薬品用包装材料、化粧品用包装材料、洗剤用包装材料などとして好適に使用することができる。
3−3.耐食性皮膜付き金属材料
第3の開示の耐食性皮膜付き金属材料11は、図13に示されるように、金属材料7と、第3の開示の耐食性皮膜3aとを備えている。第3の開示の耐食性皮膜3aは、金属材料7の表面に設けられている。第3の開示の耐食性皮膜3aについては、「3−1.耐食性皮膜」の欄に記載した通りである。また、耐食性皮膜3aとしては、バリア層3の耐食性皮膜3aも使用できる。
金属材料7の表面に耐食性皮膜3aを形成する方法についても、「3−1.耐食性皮膜」の欄に記載した方法を採用することができる。
また、金属材料7としては、金属により構成される材料であれば特に制限されない。金属としては、例えば、アルミニウム、ステンレス鋼、ニッケル、銅、亜鉛、鉄鋼が挙げられ、さらに、これらの金属のうち少なくとも1種を含む合金であってもよい。
金属材料7の形状としては、特に制限されず、板状、箔状などが挙げられる。
金属材料7の厚さとしては、特に制限されず、例えば、0.005〜5mm程度が挙げられる。
第3の開示の耐食性皮膜付き金属材料11は、その表面に、金属材料7の表面を酸から保護する耐食性皮膜3aを備えているため、例えば、自動車部材、家電用部材、建築用部材、容器部材、電池部材等として、好適に使用することができる。例えば、電池部材の具体例としては、例えば電解液(環境中の水分と反応して、酸性を示す)に対する耐性が求められる金属端子や集電体などを、第3の開示の耐食性皮膜付き金属材料11によって構成することができる。
3−4.樹脂フィルム付き金属材料
第3の開示の樹脂フィルム付き金属材料12は、図14に示されるように、金属材料7と、第3の開示の耐食性皮膜3aと、樹脂フィルム8とを備えている。第3の開示の耐食性皮膜3aは、金属材料7の表面に設けられている。第3の開示の耐食性皮膜3aについては、「3−1.耐食性皮膜」の欄に記載した通りである。また、耐食性皮膜3aとしては、バリア層3の耐食性皮膜3aも使用できる。
金属材料7の表面に耐食性皮膜3aを形成する方法についても、「3−1.耐食性皮膜」の欄に記載した方法を採用することができる。
また、金属材料7としては、金属により構成される材料であれば特に制限されず、前述の「3−3.耐食性皮膜付き金属材料」の欄で例示したものと同じものが挙げられる。また、金属材料7の形状及び厚さについても、耐食性皮膜付き金属材料と同様である。
第3の開示の樹脂フィルム付き金属材料12は、その表面に、金属材料7の表面を酸から保護する耐食性皮膜3aと樹脂フィルム8とを備えており、さらに、電解液などのバリア層の腐食を誘発する成分が存在する雰囲気における、金属材料7と樹脂フィルム8との密着性が、耐食性皮膜3aによって好適に高められている。このため、樹脂フィルム付き金属材料12は、例えば、自動車部材、家電用部材、建築用部材、容器部材等として、好適に使用することができる。
樹脂フィルム8としては、用途に応じて任意に選択され、特に限定されるものではない。樹脂フィルム8を構成している樹脂としては、例えば、ポリエステル樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリアミド樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂等が挙げられる。
樹脂フィルム8の厚さについても、用途に応じて任意に選択され、特に限定されるものではない。樹脂フィルム8の厚さとしては、例えば、0.005〜0.25mm程度が挙げられる。
金属材料7に形成された耐食性皮膜3aの上に樹脂フィルム8を積層する方法としては、特に制限されず、接着剤を用いて積層する方法や、熱圧着により積層する方法などが挙げられる。
(第1の開示)
以下に、実施例及び比較例を示して第1の開示を詳細に説明する。ただし、第1の開示は、実施例に限定されない。
<電池用包装材料の製造>
実施例1A−18A及び比較例1A−2A
基材層として、表1Aに記載の厚みを有する2軸延伸ナイロンフィルムを用意した。また、バリア層としてアルミニウム箔(JIS H4160:1994 A8021H−O、厚さ35μm)を用意し、アルミニウム箔の両面に化成処理を施して、それぞれ、表1Aに記載の各XPSピークを備える耐食性皮膜(厚さ40nm)を形成した。耐食性皮膜の形成に用いた処理液の詳細については、それぞれ、後述のとおりである。次に、耐食性皮膜を両面に備えたバリア層を、基材層の表面にドライラミネート法により積層させた。具体的には、耐食性皮膜を備えたアルミニウム箔の一方面に、2液型ウレタン接着剤(ポリエステル系ポリオール化合物と芳香族イソシアネート系化合物)を塗布し、接着剤層(厚さ3μm)を形成した。次いで、耐食性皮膜を備えたバリア層上の接着剤層と、基材層とを積層した後、エージング処理を実施することにより、基材層/接着剤層/両面に耐食性皮膜を備えたバリア層の積層体を作製した。
次に、得られた積層体のバリア層に形成された耐食性皮膜の表面に、表1Aに記載の接着層を構成する樹脂組成物を、接着層の厚さが2μmとなるように塗布し、さらにその上から、熱融着性樹脂層として表1Aに記載の厚さを有する未延伸ポリプロピレンフィルム(CPP)を積層し、加熱した2つのロール間を通過させて接着することにより、耐食性皮膜の表面に接着層/熱融着性樹脂層を積層させた。次に、得られた積層体をエージング(接着層の硬化)することにより、基材層/接着剤層/両面に耐食性皮膜を備えたバリア層/接着層/熱融着性樹脂層がこの順に積層された電池用包装材料を得た。
実施例19A及び比較例3A
基材層として、表1Aに記載の厚みを有する2軸延伸ナイロンフィルムを用意した。また、バリア層としてアルミニウム箔(JIS H4160:1994 A8021H−O、厚さ35μm)を用意し、アルミニウム箔の両面に化成処理を施して、それぞれ、表1Aに記載の各XPSピークを備える耐食性皮膜(厚さ40nm)を形成した。耐食性皮膜の形成に用いた処理液の詳細については、それぞれ、後述のとおりである。次に、耐食性皮膜を両面に備えたバリア層を、基材層の表面にドライラミネート法により積層させた。具体的には、耐食性皮膜を備えたアルミニウム箔の一方面に、2液型ウレタン接着剤(ポリエステル系ポリオール化合物と芳香族イソシアネート系化合物)を塗布し、接着剤層(厚さ3μm)を形成した。次いで、耐食性皮膜を備えたバリア層上の接着剤層と、基材層とを積層した後、エージング処理を実施することにより、基材層/接着剤層/両面に耐食性皮膜を備えたバリア層の積層体を作製した。
次に、得られた積層体のバリア層に形成された耐食性皮膜の表面に、接着層(厚さ20μm)としての無水マレイン酸変性ポリプロピレン(PPa)と、熱融着性樹脂層(厚さ15μm)としてのランダムポリプロピレン(PP)を共押出しラミネート法により積層して、耐食性皮膜の表面に接着層/熱融着性樹脂層を積層させ、基材層/接着剤層/両面に耐食性皮膜を備えたバリア層/接着層/熱融着性樹脂層がこの順に積層された電池用包装材料を得た。
<X線光電子分光法(XPS)による分析>
耐食性皮膜の分析は、次のようにして行った。まず、バリア層と接着層との間を引き剥がした。この際、水や有機溶剤、酸やアルカリの水溶液などを利用せずに、物理的に剥離させた。バリア層と接着層との間を剥離した後には、バリア層の表面に接着層が残存していたため、残存している接着層をAr−GCIBによるエッチングで除去した。このようにして得られたバリア層の表面について、XPSを用いて、耐食性皮膜の分析を行い、以下のピークの観察を行った。ピークPOCOの高さをピークPC-Cの高さで除して得られるピーク高さ比の値POCO/C-C、さらに、クロム化合物に由来するピーク、リン酸化合物に由来するピーク、及びフッ素化合物に由来するピークの有無を表1Aに示す。
C-C:285eVのC−C結合のC1sに由来するピーク。測定条件に記載の通り、XPSデータ全体を本ピークの最大強度が285eVとなる様に補正。
OCO:287eVから290eVの範囲のO−C=O結合のC1sに由来するピーク
Cr:576eVから581eVのクロム化合物のCr2p3/2に由来するピーク
P:132eVから135eVの範囲のリン酸化合物のP2p由来するピーク
F:685eVから689eVの範囲のフッ素化合物のF1s由来するピーク
X線光電子分光法の測定装置及び測定条件の詳細は次の通りである。
測定装置:島津製作所(英国Kratos社製)「ESCA−3400」
入射X線:Mg Kα(非単色化X線、hν=1253.6ev)
X線出力:10kV・20mA(200W)
光電子取込角度:90度(試料法線上にインプットレンズを配置)
測定領域:6mmφ
ピークシフト補正:C1sピークにおいて、ピーク強度が最大となる結合エネルギーが285eVとなるように補正。
<密着性評価−初期剥離強度の測定>
上記で得られた各電池用包装材料を、幅15mm×長さ100mmの短冊状に裁断して、試験片とした。試験片のバリア層と熱融着性樹脂層との間を、長さ方向に20mm程度剥離した。次に、試験片のバリア層側と、熱融着性樹脂層側とを、それぞれ上下のチャックに挟み、引張試験機(島津製作所製の商品名AGS−XPlus)を用いて、50mm/分の速度で180°方向に引張り、試験片の初期剥離強度(N/15mm)を測定した。結果を表1Aに示す。
<電解液浸漬後の剥離強度の測定>
上記で得られた各電池用包装材料を、幅15mm×長さ100mmの短冊状に裁断し、次いでバリア層と熱融着性樹脂層との間を、長さ方向に20mm程度剥離し試験片とした。一方、100mlのスクリュー管瓶内に、電解液として1×103mol/m3のLiPF6溶液(エチレンカーボネート(EC)/ジメチルカーボネート(DMC)/ジエチルカーボネート(DEC)=1/1/1 体積比)を注ぎ、さらに電解液中の水分濃度が1000ppmとなるように水を添加した。次に、上記スクリュー管瓶に試験片を入れ試験片を85℃で24時間浸漬した。次に、試験片を電解液から取出して水に浸漬し充分に電解液を除いた後、試験片のバリア層側と、熱融着性樹脂層側とを、それぞれ上下のチャックに挟み、引張試験機(島津製作所製の商品名AGS−XPlus)を用いて、50mm/分の速度で180°方向に引張り、試験片の電解液浸漬後の剥離強度(N/15mm)を測定した。結果を表1Aに示す。
Figure 0006525121
表1Aにおいて、Nyは2軸延伸ナイロンフィルム、DLはドライラミネート法により形成された接着剤層、CPPは未延伸ポリプロピレン、PPaは無水マレイン酸変性ポリプロピレン、PPはランダムポリプロピレンを意味する。また、各層を構成している素材の後ろの数値は、各層の厚さ(μm)を意味しており、例えば、「Ny15」は、厚さ15μmの2軸延伸ナイロンフィルムを意味している。
処理液aは、アクリル系樹脂(ポリアクリル酸(分子量1万、酸価778))+フッ化クロム(III)+リン酸である。処理液bは、アクリル系樹脂(ポリアクリル酸(分子量1万、酸価778))+フッ化クロム(III)である。処理液cは、アクリル系樹脂(ポリアクリル酸(分子量10万、酸価764))+フッ化クロム(III)+リン酸である。処理液dは、アクリル系樹脂(ポリアクリル酸(分子量80万、酸価750))+フッ化クロム(III)+リン酸である。処理液eは、アクリル系樹脂(アクリル酸メタクリル酸エステル共重合体(分子量2万、酸価320))+硝酸クロム(III)+リン酸である。処理液fは、アクリル系樹脂(アクリル酸マレイン酸共重合体(分子量2万、酸価800))+フッ化クロム(III)+リン酸である。処理液gは、アクリル系樹脂(アクリル酸メタクリル酸エステル共重合体(分子量2万、酸価250)+フッ化クロム(III)+リン酸である。処理液hは、アクリル系樹脂(アクリル酸スチレン共重合体(分子量1.5万、酸価180))+フッ化クロム(III)+リン酸である。処理液iは、フェノール系樹脂(アミノ変性フェノール(分子量5千、酸価0))+フッ化クロム(III)+リン酸である。処理液jは、アクリル系樹脂(ポリアクリル酸アンモニウム塩(分子量2万、酸価0))+フッ化クロム(III)+リン酸である。また、接着層Aは、無水マレイン酸変性ポリプロピレン(PPa:融解ピーク温度68℃)+エポキシ樹脂A(TMP(トリメチロールプロパン)のグリシジルエーテル誘導体)である。接着層Bは、無水マレイン酸変性ポリプロピレン(PPa:融解ピーク温度87℃)+エポキシ樹脂B(ビスフェノールFのノボラック型エポキシ樹脂)である。接着層Cは、無水マレイン酸変性ポリプロピレン(PPa:融解ピーク温度75℃)+イソシアネート化合物A(PDI(ペンタメチレンジイソシアネート)のヌレート体)である。なお、分子量は重量平均分子量を用いた。
表1Aに示される結果から明らかなとおり、バリア層の接着層側の表面に、接着層と接面している耐食性皮膜を備えており、耐食性皮膜のX線光電子分光法による分析によって、287eVから290eVの範囲にO−C=O結合のC1sに由来するピークPOCOと、285eVにC−C結合のC1sに由来するピークPC-Cが検出され、ピークPOCOの高さをピークPC-Cの高さで除して得られるピーク高さ比の値POCO/C-Cが、0.10〜0.50の範囲にある実施例1〜19の電池用包装材料においては、バリア層と熱融着性樹脂層との間の初期剥離強度が高く、さらに、水分を多量に含む電解液に浸漬し、さらに水に浸漬した後における剥離強度も高く、耐食性皮膜と接着層との密着性に非常に優れていることが分かる。
<成形性評価>
上記で得られた各電池用包装材料を、幅80mm×長さ120mmの短冊状に裁断して、試験片とした。金型を用いて、押さえ圧0.4MPaで0.5mmの成形深さから0.5mm単位で成形深さを変えて、試験片の成形を行った。金型として、幅30mm×長さ50mmの矩形状の雄型[表面は、JIS B 0659−1:2002附属書1(参考) 比較用表面粗さ標準片の表2に規定される、最大高さ粗さ(Rzの呼び値)が1.6μmである]と、この雄型とのクリアランスが0.5mmの雌型[表面は、JIS B 0659−1:2002附属書1(参考) 比較用表面粗さ標準片の表2に規定される、最大高さ粗さ(Rzの呼び値)が3.2μmである]からなるストレート金型を用いた。それぞれ10個の試験片について、冷間成形を行い、冷間成形後の試験片にピンホールやクラックが10個全てにおいて発生しない最も深い成形深さ(限界成形深さ(mm))を求めた。以下の基準により成形性を評価した。その結果、実施例1A〜16A,19Aでは、評価Aであり、成形性が良好であった。また、実施例17A,18Aでは、評価A+であり、成形性が特に良好であった。
A+:限界成形深さが7.0mm以上である
A:限界成形深さが5.0mm以上、7.0mm未満である
B:限界成形深さが4.0mm以上、5.0mm未満である
C:限界成形深さが4.0mm未満である
<絶縁性評価>
上記で得られた各電池用包装材料について、万が一異物を噛み込んでシールした場合のバリア層と内部の絶縁性を、後述するワイヤを噛み込んでシールする方法で評価した。実施例15A,16A,18Aの電池用包装材料においては、短絡までの時間が30秒間以上であり、電池製造時のシール時間(数秒程度)では短絡の恐れの無い、特に優れた絶縁性(短絡防止機能)を有していた。また、実施例1A〜14A,17Aの電池用包装材料においても、短絡までの時間は20秒間以上30秒間未満であり、優れた絶縁性を有していた。なお、実施例19Aについては、接着層に硬化剤を使用していないため、このような優れた短絡防止機能は有していないが、実用上問題ないレベルであった。絶縁性の評価方法は次の通りである。まず、上記で得られた各電池用包装材料を幅40mm×長さ100mmの長方形に断裁し、試験片を作製した。また、厚さ100μm×幅30mm×長さ100mmのアルミニウム製の端子に、φ25.4μmの熱電対用ニッケル合金(クロメル)製ワイヤを、長さ方向の端から中央部に位置するように配置した。このとき、ワイヤは、端子の幅方向の中央部に配置し、端子にテープで固定した。次に、試験片の熱融着性樹脂層側を、端子に固定されたワイヤと接触するように重ね、上下から、7mm幅のアルミニウム製の金属板で挟み、温度190℃、面圧1.0MPaの条件で、当該金属板を用いてヒートシールした。このとき、試験片のバリア層及び端子は、それぞれテスターに接続しておき、ヒートシールによって、テスターで測定される抵抗値が100Vで200MΩ以下となるまでの時間を短絡までの時間とした。
<水蒸気バリア性評価>
また、上記で得られた各電池用包装材料の水蒸気バリア性を次の方法で評価したところ、実施例1A〜19Aの電池用包装材料においては、水分率が20〜30ppmであり、電池用包装材料の機能として充分に優れた水分バリア性を有していた。水蒸気バリア性は、次のようにして評価した。まず、上記で得られた各電池用包装材料を幅120mm×長さ120mmの短冊片に断裁し、試験片を作製した。次に、試験片の熱融着性樹脂層同士が対向するように、中央で2つ折りにした。次に、折り返した辺に対向している辺を、7mm幅(長さは120mm)でヒートシール(温度190℃、面圧1.0MPa、3秒間)し、ヒートシールした7mm幅を、残り3mm幅になる様に正確にトリミングした。次に、折り返し片の両側2辺のうち、一方を10mm幅でヒートシール(温度190℃、面圧2.0MPa、3秒間)し、開口部を1箇所有する包装体とした。次に、包装体の開口部から、エチレンカーボネート(EC)/ジメチルカーボネート(DMC)/ジエチルカーボネート(DEC)=1/1/1(体積比)の混合液3gを注ぎ、開口部を形成している辺をヒートシール(温度190℃、面圧2.0MPa、3秒間)して、混合液が封入された包装体を作製した。次に、得られた各包装体を、相対湿度90%、温度60℃の環境で7日間保存した後、カールフィッシャー法により、包装体の内部に封入していた電解液に含まれる水分量を測定して、電解液中の水分率を算出した。なお、保存前に、包装体内面および電解液に含まれる微量の水分について、カールフィッシャー法により事前に測定しバックグラウンドとして差し引いた。
(第2の開示)
以下に、実施例及び比較例を示して第2の開示を詳細に説明する。ただし、第2の開示は、実施例に限定されない。
<電池用包装材料の製造>
実施例1B−42B及び比較例1B−3B
基材層として、2軸延伸ナイロンフィルム(厚さ15μm)又はポリエチレンテレフタレートフィルム(厚さ25μm)を用意した。また、バリア層としてアルミニウム箔(JIS H4160:1994 A8021H−O、厚さ35μm)又はステンレス箔(SUS304、オーステナイト系ステンレス鋼、厚さ35μm)を用意し、バリア層の両面に化成処理を施して、それぞれ、表1B及び2Bに記載の各XPSピークを備える耐食性皮膜(厚さ40nm)を形成した。耐食性皮膜の形成に用いた処理液の詳細については、それぞれ、後述のとおりである。次に、耐食性皮膜を両面に備えたバリア層を、基材層の表面にドライラミネート法により積層させた。具体的には、耐食性皮膜を備えたアルミニウム箔の一方面に、表1B及び2Bに記載の接着剤層を構成する樹脂組成物を塗布し、接着剤層(厚さ3μm)を形成した。次いで、耐食性皮膜を備えたバリア層上の接着剤層と、基材層とを積層した後、エージング処理(接着剤層の硬化)を実施することにより、基材層/接着剤層/両面に耐食性皮膜を備えたバリア層の積層体を作製した。なお、エージング処理(接着剤の硬化)における条件として60℃数十時間(条件(i))及び120℃数十時間(条件(ii))の2通りの場合について試験を行った。
次に、得られた積層体のバリア層に形成された耐食性皮膜の表面に、接着剤Aを、接着層の厚さが2μmとなるように塗布し、さらにその上から、熱融着性樹脂層として未延伸ポリプロピレンフィルム(CPP)(厚さ30μm)を積層し、加熱した2つのロール間を通過させて接着することにより、耐食性皮膜の表面に接着層/熱融着性樹脂層を積層させた。次に、得られた積層体をエージング(接着層の硬化)することにより、基材層/接着剤層/両面に耐食性皮膜を備えたバリア層/接着層/熱融着性樹脂層がこの順に積層された電池用包装材料を得た。
<X線光電子分光法(XPS)による分析>
耐食性皮膜の分析は、次のようにして行った。まず、バリア層と接着剤層との間を引き剥がした。この際、水や有機溶剤、酸やアルカリの水溶液などを利用せずに、物理的に剥離させた。バリア層と接着剤層との間を剥離した後には、バリア層の表面に接着剤層が残存していたため、残存している接着剤層をAr−GCIBによるエッチングで除去した。このようにして得られたバリア層の表面について、XPSを用いて、耐食性皮膜の分析を行い、以下のピークの観察を行った。ピークPOCOの高さをピークPC-Cの高さで除して得られるピーク高さ比の値POCO/C-C、さらに、クロム化合物に由来するピーク、リン酸化合物に由来するピーク、及びフッ素化合物に由来するピークの有無を表1B及び2Bに示す。
C-C:285eVのC−C結合のC1sに由来するピーク。測定条件に記載の通り、XPSデータ全体を本ピークの最大強度が285eVとなる様に補正。
OCO:287eVから290eVの範囲のO−C=O結合のC1sに由来するピーク
Cr:576eVから581eVのクロム化合物のCr2p3/2に由来するピーク
P:132eVから135eVの範囲のリン酸化合物のP2p由来するピーク
F:685eVから689eVの範囲のフッ素化合物のF1s由来するピーク
X線光電子分光法の測定装置及び測定条件の詳細は、第1の開示と同じである。
<ナノインデンテーション法による硬度測定>
ナノインデンター(HYSITRON社製TI950 TriboIndenter)を用い、ナノインデンターの圧子として、先端がダイアモンドチップから成る正三角錐形状のバーコビッチ(Berkovich)型圧子(HYSITRON製TI−0037 Cube Corner 90° Total included angle、型番:AA11041012)を用いた。まず、相対湿度50%、23℃環境において、当該圧子を、上記で得られた電池用包装材料の接着剤層2の表面に当て、10秒間かけて、当該表面から荷重40μNまで圧子を接着剤層2に押し込み、その状態で5秒間保持し、次に、10秒間かけて除荷した。最大荷重Pmax(μN)と最大深さ時の接触投影面積A(μm2)を用い、Pmax/Aにより、当該インデンテーション硬さ(MPa)を算出した。場所を変えて測定(N=5)して得られたインデンテーション硬さの平均値を、接着剤層2のナノインデンテーション法による硬度とした。硬度は、上記条件(i)及び条件(ii)で硬化した場合それぞれについて測定した。なお、圧子を押し込む表面は、電池用包装材料の中心部を通るように厚み方向に切断して得られた、接着剤層2の断面が露出した部分である。切断は、市販品の回転式ミクロトームを用いて行った。
<密着性評価−初期剥離強度の測定>
上記で得られた各電池用包装材料を、幅15mm×長さ100mmの短冊状に裁断して、試験片とした。試験片のバリア層と基材層との間を、長さ方向に40mm程度剥離した。次に、試験片のバリア層側と、基材層側とを、標線間距離50mmとなるようにそれぞれ引張試験機(島津製作所製の商品名AGS−XPlus)に取り付け、50mm/分の速度で180°方向に引張り、標線間距離が57mmとなったときの強度を測定した。3回測定した平均値を、バリア層−基材層間の初期剥離強度(N/15mm)とした。結果を表1B及び2Bに示す。
<密着性評価−120℃剥離強度の測定>
JIS K7127:1999の規定に準拠して、それぞれ、120℃環境の各測定温度における電池用包装材料の剥離強度を次のようにして測定した。
上記で得られた各電池用包装材料を、幅方向15mm幅×長さ方向100mmの短冊状に裁断して、試験片とした。切断片のバリア層と基材層との間を、長さ方向に40mm程度剥離した。次に、試験片のバリア層側と、基材層側とを、標線間距離50mmとなるようにそれぞれ引張試験機(島津製作所製の商品名AGS−XPlus)に取り付け、120℃で2分間放置した。その後、120℃環境において、50mm/分の速度で180°方向に引張り、標線間距離が57mmとなったときの強度を測定した。3回測定した平均値を、バリア層−基材層間の120℃剥離強度(N/15mm)とした。結果を表1B及び2Bに示す。
<密着性評価−湿熱下デラミネーション試験>
上記で得られた各電池用包装材料を裁断して、80mm(TD)×120mm(MD)の短冊片を作製し、これを試験片とした。なお、試験片は、それぞれについて10枚ずつ作製した。電池用包装材料のMDが、バリア層の圧延方向(RD)に対応し、電池用包装材料のTDが、バリア層のTDに対応する。また、MD及びRDに同一平面垂直方向が、TDとなる。バリア層の圧延方向は、バリア層の圧延痕によって確認することができる。金型は、31.6mm(MD)×54.5mm(TD)の矩形状の雄型[表面は、JIS B 0659−1:2002附属書1(参考) 比較用表面粗さ標準片の表2に規定される、最大高さ粗さ(Rzの呼び値)が1.6μmである。コーナーR2.0mm、稜線R1.0mm。]と、この雄型とのクリアランスが0.5mmの雌型[表面は、JIS B 0659−1:2002附属書1(参考) 比較用表面粗さ標準片の表2に規定される、最大高さ粗さ(Rzの呼び値)が3.2μmである。コーナーR2.0mm、稜線R1.0mm。]からなる金型を用いた。雄型側に熱融着性樹脂層側が位置するように、雌型上に上記試験片を載置した。それぞれ所定の成形深さとなるようにして、当該試験片を0.25MPaの面圧で押えて、冷間成形(引き込み1段成形)した。成形深さとしては、浅い場合(A)と深い場合(B)との2通りであり、具体的には、実施例1B〜28B及び36B〜42B並びに比較例1B〜3Bについては5.0mm(A)及び6.0mm(B)とし、実施例29B〜35Bについては、2.5mm(A)及び3.5mm(B)とした。次に、冷間成形後のサンプルを温度65℃、相対湿度90%RH雰囲気下の恒温恒湿槽に入れ、72時間静置した。恒温恒湿槽から成形サンプルを取り出し、基材層とアルミニウム合金箔間で浮き(基材層のデラミネーション)が発生していないかを目視確認し、それぞれ10枚の試験片中の浮きの発生していたサンプルの割合を表1B及び2Bに示す。なお、本試験における65℃、相対湿度90%という条件は非常に過酷な条件であり、特に、成形深さが深い場合(B)において10セル中デラミネーションが生じる頻度が1セル程度であれば、優れた密着性が奏されていると評価できる。
<成形性評価>
上記で得られた各電池用包装材料を、幅80mm×長さ120mmの短冊状に裁断して、試験片とした。金型を用いて、押さえ圧0.4MPaで0.5mmの成形深さから0.5mm単位で成形深さを変えて、試験片の成形を行った。金型として、幅30mm×長さ50mmの矩形状の雄型[表面は、JIS B 0659−1:2002附属書1(参考) 比較用表面粗さ標準片の表2に規定される、最大高さ粗さ(Rzの呼び値)が1.6μmである]と、この雄型とのクリアランスが0.5mmの雌型[表面は、JIS B 0659−1:2002附属書1(参考) 比較用表面粗さ標準片の表2に規定される、最大高さ粗さ(Rzの呼び値)が3.2μmである]からなるストレート金型を用いた。それぞれ10個の試験片について、冷間成形を行い、冷間成形後の試験片にピンホールやクラックが10個全てにおいて発生しない最も深い成形深さ(限界成形深さ(mm))を求めた。
Figure 0006525121
Figure 0006525121
表1B及び2Bにおいて、Nyは2軸延伸ナイロンフィルム、PETはポリエチレンテレフタレートフィルム、ALMはアルミニウム箔、SUSはステンレス箔、CPPは未延伸ポリプロピレンを意味する。また、各層を構成している素材の後ろの数値は、各層の厚さ(μm)を意味しており、例えば、「Ny15」は、厚さ15μmの2軸延伸ナイロンフィルムを意味している。
処理液aは、アクリル系樹脂(ポリアクリル酸(分子量1万、酸価778))+フッ化クロム(III)+リン酸である。処理液bは、アクリル系樹脂(ポリアクリル酸(分子量1万、酸価778))+フッ化クロム(III)である。処理液cは、アクリル系樹脂(ポリアクリル酸(分子量10万、酸価764))+フッ化クロム(III)+リン酸である。処理液dは、アクリル系樹脂(ポリアクリル酸(分子量80万、酸価750))+フッ化クロム(III)+リン酸である。処理液eは、アクリル系樹脂(アクリル酸メタクリル酸エステル共重合体(分子量2万、酸価320))+硝酸クロム(III)+リン酸である。処理液fは、アクリル系樹脂(アクリル酸マレイン酸共重合体(分子量2万、酸価800))+フッ化クロム(III)+リン酸である。処理液gは、アクリル系樹脂(アクリル酸メタクリル酸エステル共重合体(分子量2万、酸価250)+フッ化クロム(III)+リン酸である。処理液hは、アクリル系樹脂(アクリル酸スチレン共重合体(分子量1.5万、酸価180))+フッ化クロム(III)+リン酸である。処理液iは、フェノール系樹脂(アミノ変性フェノール(分子量5千、酸価0))+フッ化クロム(III)+リン酸である。処理液jは、アクリル系樹脂(ポリアクリル酸アンモニウム塩(分子量2万、酸価0))+フッ化クロム(III)+リン酸である。また、接着剤層Aは、無水マレイン酸変性ポリプロピレン(PPa:融解ピーク温度68℃)+エポキシ樹脂A(TMP(トリメチロールプロパン)のグリシジルエーテル誘導体)である。接着剤層Bは、無水マレイン酸変性ポリプロピレン(PPa:融解ピーク温度87℃)+エポキシ樹脂B(ビスフェノールFのノボラック型エポキシ樹脂)である。接着剤層Cは、無水マレイン酸変性ポリプロピレン(PPa:融解ピーク温度75℃)+イソシアネート化合物A(PDI(ペンタメチレンジイソシアネート)のヌレート体)である。接着剤層Dは、ポリエステルポリオール化合物+芳香族ジイソシアネート化合物(ポリエステルポリオール化合物:分子量10000〜40000、水酸基等量0.7〜1.9個/mol、芳香族ジイソシアネート化合物:トルエンジイソシアネート(TDI)のトリメチロールプロパン(TMP)アダクト体、ポリオール化合物と芳香族ジイソシアネート化合物との重量混合比:1:3)である。なお、分子量は重量平均分子量を用いた。
表1B及び2Bに示される結果から明らかなとおり、バリア層の接着剤層側の表面に、接着剤層と接面している耐食性皮膜を備えており、耐食性皮膜のX線光電子分光法による分析によって、287eVから290eVの範囲にO−C=O結合のC1sに由来するピークPOCOと、285eVにC−C結合のC1sに由来するピークPC-Cが検出され、ピークPOCOの高さをピークPC-Cの高さで除して得られるピーク高さ比の値POCO/C-Cが、0.10〜0.50の範囲にある実施例1B〜42Bの電池用包装材料においては、バリア層と基材層との間の初期剥離強度が高く、さらに、120℃の環境下に曝された後における剥離強度も高く、高温高湿の環境下に曝された後における耐デラミネーション性に優れていることから、耐食性皮膜と接着剤層との密着性に非常に優れていることが分かる。
(第3の開示)
以下に、実施例及び比較例を示して第3の開示を詳細に説明する。ただし、第3の開示は、実施例に限定されない。
<包装材料の製造>
実施例1C−18C及び比較例1C−2C
実施例1A−18A及び比較例1A−2Aと同様にして、基材層/接着剤層/両面に耐食性皮膜を備えたバリア層/接着層/熱融着性樹脂層がこの順に積層された実施例1C−18C及び比較例1C−2Cの包装材料を得た。
実施例19C及び比較例3C
実施例19A及び比較例3Aと同様にして、基材層/接着剤層/両面に耐食性皮膜を備えたバリア層/接着層/熱融着性樹脂層がこの順に積層された実施例19C及び比較例3Cの包装材料を得た。
<X線光電子分光法(XPS)による分析>
耐食性皮膜の分析は、第1の開示と同様にして行った。ピークPOCOの高さをピークPC-Cの高さで除して得られるピーク高さ比の値POCO/C-C、さらに、クロム化合物に由来するピーク、リン酸化合物に由来するピーク、及びフッ素化合物に由来するピークの有無を表1Cに示す。
<密着性評価−初期剥離強度Aの測定>
上記で得られた各包装材料を、幅15mm×長さ100mmの短冊状に裁断して、試験片とした。試験片のバリア層と熱融着性樹脂層との間を、長さ方向に20mm程度剥離した。次に、試験片のバリア層側と、熱融着性樹脂層側とを、それぞれ上下のチャックに挟み、引張試験機(エー・アンド・デイ製の商品名テンシロン万能材料試験機RTG−1210)を用いて、50mm/分の速度で180°方向に引張り、試験片の初期剥離強度A(N/15mm)を測定した。結果を表1Cに示す。
[耐内容物性1]
<電解液浸漬後の剥離強度Bの測定>
上記で得られた各包装材料を、幅15mm×長さ100mmの短冊状に裁断し、次いでバリア層と熱融着性樹脂層との間を、長さ方向に20mm程度剥離し試験片とした。一方、100mlのスクリュー管瓶内に、電解液として1×103mol/m3のLiPF6溶液(エチレンカーボネート(EC)/ジメチルカーボネート(DMC)/ジエチルカーボネート(DEC)=1/1/1 体積比)を注ぎ、さらに電解液中の水分濃度が1000ppmとなるように水を添加した。次に、上記スクリュー管瓶に試験片を入れ試験片を85℃で24時間浸漬した。次に、試験片を電解液から取出して水に浸漬し充分に電解液を除いた後、試験片のバリア層側と、熱融着性樹脂層側とを、それぞれ上下のチャックに挟み、引張試験機(エー・アンド・デイ製の商品名テンシロン万能材料試験機RTG−1210)を用いて、50mm/分の速度で180°方向に引張り、試験片の電解液浸漬後の剥離強度B(N/15mm)を測定した。結果を表1Cに示す。
[耐内容物性2]
<9%アンモニア水溶液浸漬後の剥離強度の測定>
[耐内容物性1]で用いた電解液の代わりに、9%アンモニア水溶液を用いたこと以外は、[耐内容物性1]と同様にして、実施例1C,3C,4Cの各電池用包装材料について、試験片の9%アンモニア水溶液(アルカリ性水溶液)浸漬後の剥離強度B(N/15mm)を測定した。その結果、剥離強度は、実施例1Cが8.0N/15mm、実施例3Cが9.1N.15mm、実施例4Cが8.2N/15mmであった。
[剥離強度の維持率の算出]
[耐内容物性1]及び[耐内容物性2]で測定した、初期剥離強度Aと、電解液浸漬後の剥離強度Bの値を用いて、剥離強度の維持率(B/A)を算出した。結果を表1Cに示す。
Figure 0006525121
表1Cにおいて、Nyは2軸延伸ナイロンフィルム、DLはドライラミネート法により形成された接着剤層、CPPは未延伸ポリプロピレン、PPaは無水マレイン酸変性ポリプロピレン、PPはランダムポリプロピレンを意味する。また、各層を構成している素材の後ろの数値は、各層の厚さ(μm)を意味しており、例えば、「Ny15」は、厚さ15μmの2軸延伸ナイロンフィルムを意味している。
処理液aからjは、それぞれ、第1の開示の処理液aからjと同じである。
表1Cに示される結果から明らかなとおり、バリア層の接着層側の表面に、接着層と接面している耐食性皮膜を備えており、耐食性皮膜のX線光電子分光法による分析によって、287eVから290eVの範囲にO−C=O結合のC1sに由来するピークPOCOと、285eVにC−C結合のC1sに由来するピークPC-Cが検出され、ピークPOCOの高さをピークPC-Cの高さで除して得られるピーク高さ比の値POCO/C-Cが、0.10〜0.50の範囲にある実施例1C〜19Cの包装材料においては、バリア層と熱融着性樹脂層との間の初期剥離強度が高く、さらに、水分を多量に含む電解液に浸漬し、さらに水に浸漬した後における剥離強度も高く、電解液などのバリア層の腐食を誘発する成分が存在する雰囲気における、耐食性皮膜と接着層との密着性に非常に優れていることが分かる。
<成形性評価>
成形性評価は、第1の開示と同様にして行った。その結果、実施例1C〜16C,19Cでは、評価Aであり、成形性が良好であった。また、実施例17C,18Cでは、評価A+であり、成形性が特に良好であった。
<絶縁性評価>
上記で得られた各包装材料について、万が一異物を噛み込んでシールした場合のバリア層と内部の絶縁性を、後述するワイヤを噛み込んでシールする方法で評価した。実施例15C,16C,18Cの包装材料においては、短絡までの時間が30秒間以上であり、電池製造時のシール時間(数秒程度)では短絡の恐れの無い、特に優れた絶縁性(短絡防止機能)を有していた。また、実施例1C〜14C,17Cの包装材料においても、短絡までの時間は20秒間以上30秒間未満であり、優れた絶縁性を有していた。なお、実施例19Cについては、接着層に硬化剤を使用していないため、このような優れた短絡防止機能は有していないが、実用上問題ないレベルであった。絶縁性の評価方法は次の通りである。まず、上記で得られた各包装材料を幅40mm×長さ100mmの長方形に断裁し、試験片を作製した。また、厚さ100μm×幅30mm×長さ100mmのアルミニウム製の端子に、φ25.4μmの熱電対用ニッケル合金(クロメル)製ワイヤを、長さ方向の端から中央部に位置するように配置した。このとき、ワイヤは、端子の幅方向の中央部に配置し、端子にテープで固定した。次に、試験片の熱融着性樹脂層側を、端子に固定されたワイヤと接触するように重ね、上下から、7mm幅のアルミニウム製の金属板で挟み、温度190℃、面圧1.0MPaの条件で、当該金属板を用いてヒートシールした。このとき、試験片のバリア層及び端子は、それぞれテスターに接続しておき、ヒートシールによって、テスターで測定される抵抗値が100Vで200MΩ以下となるまでの時間を短絡までの時間とした。
<水蒸気バリア性評価>
また、上記で得られた各包装材料の水蒸気バリア性を次の方法で評価したところ、実施例1C〜19Cの包装材料においては、水分率が20〜30ppmであり、包装材料の機能として充分に優れた水分バリア性を有していた。水蒸気バリア性は、次のようにして評価した。まず、上記で得られた各包装材料を幅120mm×長さ120mmの短冊片に断裁し、試験片を作製した。次に、試験片の熱融着性樹脂層同士が対向するように、中央で2つ折りにした。次に、折り返した辺に対向している辺を、7mm幅(長さは120mm)でヒートシール(温度190℃、面圧1.0MPa、3秒間)し、ヒートシールした7mm幅を、残り3mm幅になる様に正確にトリミングした。次に、折り返し片の両側2辺のうち、一方を10mm幅でヒートシール(温度190℃、面圧2.0MPa、3秒間)し、開口部を1箇所有する包装体とした。次に、包装体の開口部から、エチレンカーボネート(EC)/ジメチルカーボネート(DMC)/ジエチルカーボネート(DEC)=1/1/1(体積比)の混合液3gを注ぎ、開口部を形成している辺をヒートシール(温度190℃、面圧2.0MPa、3秒間)して、混合液が封入された包装体を作製した。次に、得られた各包装体を、相対湿度90%、温度60℃の環境で7日間保存した後、カールフィッシャー法により、包装体の内部に封入していた電解液に含まれる水分量を測定して、電解液中の水分率を算出した。なお、保存前に、包装体内面および電解液に含まれる微量の水分について、カールフィッシャー法により事前に測定しバックグラウンドとして差し引いた。
以上の通り、第1の開示は、下記に掲げる態様の発明を提供する。
項1. 少なくとも、基材層と、バリア層と、接着層と、熱融着性樹脂層とをこの順に備える積層体から構成されており、
前記バリア層の前記接着層側の表面には、前記接着層と接面している耐食性皮膜を備えており、
前記耐食性皮膜のX線光電子分光法による分析によって、287eVから290eVの範囲にO−C=O結合のC1sに由来するピークPOCOと、285eVにC−C結合のC1sに由来するピークPC-Cが検出され、
前記ピークPOCOの高さを前記ピークPC-Cの高さで除して得られるピーク高さ比の値POCO/C-Cが、0.10以上0.50以下の範囲にある、電池用包装材料。
項2. 前記耐食性皮膜のX線光電子分光法による分析によって、576eVから581eVの範囲に、クロム化合物のCr2p3/2に由来するピークが検出される、項1に記載の電池用包装材料。
項3. 前記耐食性皮膜のX線光電子分光法による分析によって、132eVから135eVの範囲に、リン酸化合物のP2pに由来するピークが検出される、項1又は2に記載の電池用包装材料。
項4. 前記耐食性皮膜のX線光電子分光法による分析によって、685eVから689eVの範囲に、フッ素化合物のF1sに由来するピークが検出される、項1〜3のいずれかに記載の電池用包装材料。
項5. 前記耐食性皮膜が、少なくとも、COOH基を有するアクリル系樹脂、クロム化合物、及びリン酸化合物を含む組成物から形成されている、項1〜4のいずれかに記載の電池用包装材料。
項6. 前記アクリル系樹脂が、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸のアンモニウム塩、ポリアクリル酸のナトリウム塩、及びポリアクリル酸のアミン塩からなる群より選択される少なくとも1種である、項5に記載の電池用包装材料。
項7. 前記アクリル系樹脂が、アクリル酸とジカルボン酸又はジカルボン酸無水物との共重合体、前記共重合体のアンモニウム塩、前記共重合体のナトリウム塩、及び前記共重合体のアミン塩からなる群より選択される少なくとも1種である、項5に記載の電池用包装材料。
項8. 前記クロム化合物が、フッ化クロム(III)及び硝酸クロム(III)の少なくとも一方である、項5〜7のいずれかに記載の電池用包装材料。
項9. 前記接着層を構成している樹脂は、ポリオレフィン骨格を有している、項1〜8のいずれかに記載の電池用包装材料。
項10. 前記接着層が、酸変性ポリオレフィンを含む、項1〜9のいずれかに記載の電池用包装材料。
項11. 前記接着層を赤外分光法で分析すると、無水マレイン酸に由来するピークが検出される、項1〜10のいずれかに記載の電池用包装材料。
項12. 前記接着層の前記酸変性ポリオレフィンが、無水マレイン酸変性ポリプロピレンであり、
前記熱融着性樹脂層が、ポリプロピレンを含む、項10に記載の電池用包装材料。
項13. 前記接着層が、イソシアネート基を有する化合物、オキサゾリン基を有する化合物、及びエポキシ基を有する化合物からなる群より選択される少なくとも1種を含む樹脂組成物の硬化物である、項9〜12のいずれかに記載の電池用包装材料。
項14. 前記接着層が、酸素原子、複素環、C=N結合、及びC−O−C結合からなる群より選択される少なくとも1種を有する硬化剤を含む樹脂組成物の硬化物である、項9〜12のいずれかに記載の電池用包装材料。
項15. 前記接着層が、ウレタン樹脂、エステル樹脂、及びエポキシ樹脂からなる群より選択される少なくとも1種を含む、項1〜12のいずれかに記載の電池用包装材料。
項16. 少なくとも、基材層と、バリア層と、接着層と、熱融着性樹脂層とがこの順となるように積層して積層体を得る工程を備えており、
前記バリア層の前記接着層側の表面には、前記接着層と接面するように耐食性皮膜が設けられており、
前記耐食性皮膜として、前記耐食性皮膜のX線光電子分光法による分析によって、287eVから290eVの範囲にO−C=O結合に由来するピークPOCOと、285eVにC−C結合に由来するピークPC-Cが検出され、ピークPOCOの高さをピークPC-Cの高さで除して得られるピーク高さ比の値PCOOH/C-Cが、0.10以上0.50以下の範囲にあるものを用いる、電池用包装材料の製造方法。
項17. 少なくとも正極、負極、及び電解質を備えた電池素子が、項1〜15のいずれかに記載の電池用包装材料により形成された包装体中に収容されている、電池。
また、第2の開示は、下記に掲げる態様の発明を提供する。
項18. 少なくとも、基材層と、接着剤層と、バリア層と、熱融着性樹脂層とをこの順に備える積層体から構成されており、
前記バリア層の前記接着剤層側の表面には、前記接着剤層と接面している耐食性皮膜を備えており、
前記耐食性皮膜のX線光電子分光法による分析によって、287eVから290eVの範囲にO−C=O結合のC1sに由来するピークPOCOと、285eVにC−C結合のC1sに由来するピークPC-Cが検出され、
前記ピークPOCOの高さを前記ピークPC-Cの高さで除して得られるピーク高さ比の値POCO/C-Cが、0.10以上0.50以下の範囲にある、電池用包装材料。
項19. 前記耐食性皮膜のX線光電子分光法による分析によって、576eVから581eVの範囲に、クロム化合物のCr2p3/2に由来するピークが検出される、項18に記載の電池用包装材料。
項20. 前記耐食性皮膜のX線光電子分光法による分析によって、132eVから135eVの範囲に、リン酸化合物のP2pに由来するピークが検出される、項18又は19に記載の電池用包装材料。
項21. 前記耐食性皮膜のX線光電子分光法による分析によって、685eVから689eVの範囲に、フッ素化合物のF1sに由来するピークが検出される、項18〜20のいずれかに記載の電池用包装材料。
項22. 前記耐食性皮膜が、少なくとも、COOH基を有するアクリル系樹脂、クロム化合物、及びリン酸化合物を含む組成物から形成されている、項18〜21のいずれかに記載の電池用包装材料。
項23. 前記アクリル系樹脂が、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸のアンモニウム塩、ポリアクリル酸のナトリウム塩、及びポリアクリル酸のアミン塩からなる群より選択される少なくとも1種である、項22に記載の電池用包装材料。
項24. 前記アクリル系樹脂が、アクリル酸とジカルボン酸又はジカルボン酸無水物との共重合体、前記共重合体のアンモニウム塩、前記共重合体のナトリウム塩、及び前記共重合体のアミン塩からなる群より選択される少なくとも1種である、項22に記載の電池用包装材料。
項25. 前記クロム化合物が、フッ化クロム(III)及び硝酸クロム(III)の少なくとも一方である、項22〜24のいずれかに記載の電池用包装材料。
項26. ナノインデンターを用いて、前記積層体の断面から前記接着剤層に対して圧子を押し込んだ際の硬度が30〜400MPaである、項18〜25のいずれかに記載の電池用包装材料。
項27. 前記接着剤層の厚みが、0.5〜10μmである、項18〜26のいずれかに記載の電池用包装材料。
項28. 前記接着剤層を構成している樹脂が極性基を有している、項18〜27のいずれかに記載の電池用包装材料。
項29. 前記極性基が、含窒素結合基、イソシアネート基、オキサゾリン基、又はエポキシ基である、項28に記載の電池用包装材料。
項30. 前記含窒素結合基がウレタン結合基である、項29に記載の電池用包装材料。
項31. 前記接着剤層が、ポリオール化合物とイソシアネート系化合物を含むウレタン系樹脂組成物の硬化物である、項18〜30のいずれかに記載の電池用包装材料。
項32. 前記接着剤層が、酸変性ポリオレフィンと、イソシアネート基を有する化合物、オキサゾリン基を有する化合物、及びエポキシ基を有する化合物からなる群より選択される少なくとも1種とを含む樹脂組成物の硬化物である、項18〜31のいずれかに記載の電池用包装材料。
項33. 少なくとも、基材層と、接着剤層と、バリア層と、熱融着性樹脂層とがこの順となるように積層して積層体を得る工程を備えており、
前記バリア層の前記接着剤層側の表面には、前記接着剤層と接面するように耐食性皮膜が設けられており、
前記耐食性皮膜として、前記耐食性皮膜のX線光電子分光法による分析によって、287eVから290eVの範囲にO−C=O結合に由来するピークPOCOと、285eVにC−C結合に由来するピークPC-Cが検出され、ピークPOCOの高さをピークPC-Cの高さで除して得られるピーク高さ比の値PCOOH/C-Cが、0.10以上0.50以下の範囲にあるものを用いる、電池用包装材料の製造方法。
項34. 少なくとも正極、負極、及び電解質を備えた電池素子が、項18〜32のいずれかに記載の電池用包装材料により形成された包装体中に収容されている、電池。
また、第3の開示は、下記に掲げる態様の発明を提供する。
項35. X線光電子分光法による分析によって、287eVから290eVの範囲にO−C=O結合のC1sに由来するピークPOCOと、285eVにC−C結合のC1sに由来するピークPC-Cが検出され、
前記ピークPOCOの高さを前記ピークPC-Cの高さで除して得られるピーク高さ比の値POCO/C-Cが、0.10以上0.50以下の範囲にある、耐食性皮膜。
項36. 前記耐食性皮膜のX線光電子分光法による分析によって、576eVから581eVの範囲に、クロム化合物のCr2p3/2に由来するピークが検出される、項35に記載の耐食性皮膜。
項37. 前記耐食性皮膜のX線光電子分光法による分析によって、132eVから135eVの範囲に、リン酸化合物のP2pに由来するピークが検出される、項35又は36に記載の耐食性皮膜。
項38. 前記耐食性皮膜のX線光電子分光法による分析によって、685eVから689eVの範囲に、フッ素化合物のF1sに由来するピークが検出される、項35〜37のいずれかに記載の耐食性皮膜。
項39. 前記耐食性皮膜が、少なくとも、COOX基(ただし、Xは、水素原子であるか、COO-と塩を形成するイオンである)を有するアクリル系樹脂、クロム化合物、及びリン酸化合物を含む組成物から形成されている、項35〜38のいずれかに記載の耐食性皮膜。
項40. 前記アクリル系樹脂が、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸のアンモニウム塩、ポリアクリル酸のナトリウム塩、及びポリアクリル酸のアミン塩からなる群より選択される少なくとも1種である、項39に記載の耐食性皮膜。
項41. 前記アクリル系樹脂が、アクリル酸とジカルボン酸又はジカルボン酸無水物との共重合体、前記共重合体のアンモニウム塩、前記共重合体のナトリウム塩、及び前記共重合体のアミン塩からなる群より選択される少なくとも1種である、項39に記載の耐食性皮膜。
項42. 前記クロム化合物が、フッ化クロム(III)及び硝酸クロム(III)の少なくとも一方である、項39〜41のいずれかに記載の耐食性皮膜。
項43. 少なくとも、基材層と、バリア層と、熱融着性樹脂層とをこの順に備える積層体から構成されており、
前記バリア層の一方面には、項35〜42のいずれかに記載の耐食性皮膜を備えている、包装材料。
項44. 少なくとも、基材層と、バリア層と、接着層と、熱融着性樹脂層とをこの順に備える積層体から構成されており、
前記バリア層の前記接着層側の表面には、前記接着層と接面した状態で、項35〜42のいずれかに記載の耐食性皮膜を備えている、包装材料。
項45. 前記接着層を構成している樹脂は、ポリオレフィン骨格を有している、項44に記載の包装材料。
項46. 前記接着層が、酸変性ポリオレフィンを含む、項44又は45に記載の包装材料。
項47. 前記接着層を赤外分光法で分析すると、無水マレイン酸に由来するピークが検出される、項44〜46のいずれかに記載の包装材料。
項48. 前記接着層の前記酸変性ポリオレフィンが、無水マレイン酸変性ポリプロピレンであり、
前記熱融着性樹脂層が、ポリプロピレンを含む、項46に記載の包装材料。
項49. 前記接着層が、イソシアネート基を有する化合物、オキサゾリン基を有する化合物、及びエポキシ基を有する化合物からなる群より選択される少なくとも1種を含む樹脂組成物の硬化物である、項44〜48のいずれかに記載の包装材料。
項50. 前記接着層が、酸素原子、複素環、C=N結合、及びC−O−C結合からなる群より選択される少なくとも1種を有する硬化剤を含む樹脂組成物の硬化物である、項44〜48のいずれかに記載の包装材料。
項51. 前記接着層が、ウレタン樹脂、アミドエステル樹脂、及びエポキシ樹脂からなる群より選択される少なくとも1種を含む、項44〜48のいずれかに記載の包装材料。
項52. 食品用包装材料、医薬品用包装材料、化粧品用包装材料、または洗剤用包装材料である、項43〜51のいずれかに記載の包装材料。
項53. 少なくとも、基材層と、バリア層と、熱融着性樹脂層とがこの順となるように積層して積層体を得る工程を備えており、
前記バリア層を積層する際に、前記バリア層の一方面には、耐食性皮膜が設けられており、
前記耐食性皮膜として、項35〜42のいずれかに記載の耐食性皮膜を用いる、包装材料の製造方法。
項54. 金属材料と、
前記金属材料の表面に設けられた項35〜42のいずれかに記載の耐食性皮膜と、
を備えている、耐食性皮膜付き金属材料。
項55. 金属材料と、
前記金属材料の表面に設けられた項35〜42のいずれかに記載の耐食性皮膜と、
前記耐食性皮膜の表面に設けられた樹脂フィルムと、
を備えている、樹脂フィルム付き金属材料。
1…基材層
2…接着剤層
3…バリア層
3a,3b…耐食性皮膜
4…熱融着性樹脂層
5…接着層
6…表面被覆層
7…金属材料
8…樹脂フィルム
10…電池用包装材料
11…耐食性皮膜付き金属材料
12…樹脂フィルム付き金属材料
13…包装材料

Claims (55)

  1. 少なくとも、基材層と、バリア層と、接着層と、熱融着性樹脂層とをこの順に備える積層体から構成されており、
    前記バリア層の前記接着層側の表面には、前記接着層と接面している耐食性皮膜を備えており、
    前記耐食性皮膜のX線光電子分光法による分析によって、287eVから290eVの範囲にO−C=O結合のC1sに由来するピークPOCOと、285eVにC−C結合のC1sに由来するピークPC-Cが検出され、
    前記ピークPOCOの高さを前記ピークPC-Cの高さで除して得られるピーク高さ比の値POCO/C-Cが、0.10以上0.50以下の範囲にある、電池用包装材料。
  2. 前記耐食性皮膜のX線光電子分光法による分析によって、576eVから581eVの範囲に、クロム化合物のCr2p3/2に由来するピークが検出される、請求項1に記載の電池用包装材料。
  3. 前記耐食性皮膜のX線光電子分光法による分析によって、132eVから135eVの範囲に、リン酸化合物のP2pに由来するピークが検出される、請求項1又は2に記載の電池用包装材料。
  4. 前記耐食性皮膜のX線光電子分光法による分析によって、685eVから689eVの範囲に、フッ素化合物のF1sに由来するピークが検出される、請求項1〜3のいずれかに記載の電池用包装材料。
  5. 前記耐食性皮膜が、少なくとも、COOH基を有するアクリル系樹脂、クロム化合物、及びリン酸化合物を含む組成物から形成されている、請求項1〜4のいずれかに記載の電池用包装材料。
  6. 前記アクリル系樹脂が、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸のアンモニウム塩、ポリアクリル酸のナトリウム塩、及びポリアクリル酸のアミン塩からなる群より選択される少なくとも1種である、請求項5に記載の電池用包装材料。
  7. 前記アクリル系樹脂が、アクリル酸とジカルボン酸又はジカルボン酸無水物との共重合体、前記共重合体のアンモニウム塩、前記共重合体のナトリウム塩、及び前記共重合体のアミン塩からなる群より選択される少なくとも1種である、請求項5に記載の電池用包装材料。
  8. 前記クロム化合物が、フッ化クロム(III)及び硝酸クロム(III)の少なくとも一方である、請求項5〜7のいずれかに記載の電池用包装材料。
  9. 前記接着層を構成している樹脂は、ポリオレフィン骨格を有している、請求項1〜8のいずれかに記載の電池用包装材料。
  10. 前記接着層が、酸変性ポリオレフィンを含む、請求項1〜9のいずれかに記載の電池用包装材料。
  11. 前記接着層を赤外分光法で分析すると、無水マレイン酸に由来するピークが検出される、請求項1〜10のいずれかに記載の電池用包装材料。
  12. 前記接着層の前記酸変性ポリオレフィンが、無水マレイン酸変性ポリプロピレンであり、
    前記熱融着性樹脂層が、ポリプロピレンを含む、請求項10に記載の電池用包装材料。
  13. 前記接着層が、イソシアネート基を有する化合物、オキサゾリン基を有する化合物、及びエポキシ基を有する化合物からなる群より選択される少なくとも1種を含む樹脂組成物の硬化物である、請求項9〜12のいずれかに記載の電池用包装材料。
  14. 前記接着層が、酸素原子、複素環、C=N結合、及びC−O−C結合からなる群より選択される少なくとも1種を有する硬化剤を含む樹脂組成物の硬化物である、請求項9〜12のいずれかに記載の電池用包装材料。
  15. 前記接着層が、ウレタン樹脂、エステル樹脂、及びエポキシ樹脂からなる群より選択される少なくとも1種を含む、請求項1〜12のいずれかに記載の電池用包装材料。
  16. 少なくとも、基材層と、バリア層と、接着層と、熱融着性樹脂層とがこの順となるように積層して積層体を得る工程を備えており、
    前記バリア層の前記接着層側の表面には、前記接着層と接面するように耐食性皮膜が設けられており、
    前記耐食性皮膜として、前記耐食性皮膜のX線光電子分光法による分析によって、287eVから290eVの範囲にO−C=O結合に由来するピークPOCOと、285eVにC−C結合に由来するピークPC-Cが検出され、ピークPOCOの高さをピークPC-Cの高さで除して得られるピーク高さ比の値PCOOH/C-Cが、0.10以上0.50以下の範囲にあるものを用いる、電池用包装材料の製造方法。
  17. 少なくとも正極、負極、及び電解質を備えた電池素子が、請求項1〜15のいずれかに記載の電池用包装材料により形成された包装体中に収容されている、電池。
  18. 少なくとも、基材層と、接着剤層と、バリア層と、熱融着性樹脂層とをこの順に備える積層体から構成されており、
    前記バリア層の前記接着剤層側の表面には、前記接着剤層と接面している耐食性皮膜を備えており、
    前記耐食性皮膜のX線光電子分光法による分析によって、287eVから290eVの範囲にO−C=O結合のC1sに由来するピークPOCOと、285eVにC−C結合のC1sに由来するピークPC-Cが検出され、
    前記ピークPOCOの高さを前記ピークPC-Cの高さで除して得られるピーク高さ比の値POCO/C-Cが、0.10以上0.50以下の範囲にある、電池用包装材料。
  19. 前記耐食性皮膜のX線光電子分光法による分析によって、576eVから581eVの範囲に、クロム化合物のCr2p3/2に由来するピークが検出される、請求項18に記載の電池用包装材料。
  20. 前記耐食性皮膜のX線光電子分光法による分析によって、132eVから135eVの範囲に、リン酸化合物のP2pに由来するピークが検出される、請求項18又は19に記載の電池用包装材料。
  21. 前記耐食性皮膜のX線光電子分光法による分析によって、685eVから689eVの範囲に、フッ素化合物のF1sに由来するピークが検出される、請求項18〜20のいずれかに記載の電池用包装材料。
  22. 前記耐食性皮膜が、少なくとも、COOH基を有するアクリル系樹脂、クロム化合物、及びリン酸化合物を含む組成物から形成されている、請求項18〜21のいずれかに記載の電池用包装材料。
  23. 前記アクリル系樹脂が、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸のアンモニウム塩、ポリアクリル酸のナトリウム塩、及びポリアクリル酸のアミン塩からなる群より選択される少なくとも1種である、請求項22に記載の電池用包装材料。
  24. 前記アクリル系樹脂が、アクリル酸とジカルボン酸又はジカルボン酸無水物との共重合体、前記共重合体のアンモニウム塩、前記共重合体のナトリウム塩、及び前記共重合体のアミン塩からなる群より選択される少なくとも1種である、請求項22に記載の電池用包装材料。
  25. 前記クロム化合物が、フッ化クロム(III)及び硝酸クロム(III)の少なくとも一方である、請求項22〜24のいずれかに記載の電池用包装材料。
  26. ナノインデンターを用いて、前記積層体の断面から前記接着剤層に対して圧子を押し込んだ際の硬度が30〜400MPaである、請求項18〜25のいずれかに記載の電池用包装材料。
  27. 前記接着剤層の厚みが、0.5〜10μmである、請求項18〜26のいずれかに記載の電池用包装材料。
  28. 前記接着剤層を構成している樹脂が極性基を有している、請求項18〜27のいずれかに記載の電池用包装材料。
  29. 前記極性基が、含窒素結合基、イソシアネート基、オキサゾリン基、又はエポキシ基である、請求項28に記載の電池用包装材料。
  30. 前記含窒素結合基がウレタン結合基である、請求項29に記載の電池用包装材料。
  31. 前記接着剤層が、ポリオール化合物とイソシアネート系化合物を含むウレタン系樹脂組成物の硬化物である、請求項18〜30のいずれかに記載の電池用包装材料。
  32. 前記接着剤層が、酸変性ポリオレフィンと、イソシアネート基を有する化合物、オキサゾリン基を有する化合物、及びエポキシ基を有する化合物からなる群より選択される少なくとも1種とを含む樹脂組成物の硬化物である、請求項18〜31のいずれかに記載の電池用包装材料。
  33. 少なくとも、基材層と、接着剤層と、バリア層と、熱融着性樹脂層とがこの順となるように積層して積層体を得る工程を備えており、
    前記バリア層の前記接着剤層側の表面には、前記接着剤層と接面するように耐食性皮膜が設けられており、
    前記耐食性皮膜として、前記耐食性皮膜のX線光電子分光法による分析によって、287eVから290eVの範囲にO−C=O結合に由来するピークPOCOと、285eVにC−C結合に由来するピークPC-Cが検出され、ピークPOCOの高さをピークPC-Cの高さで除して得られるピーク高さ比の値PCOOH/C-Cが、0.10以上0.50以下の範囲にあるものを用いる、電池用包装材料の製造方法。
  34. 少なくとも正極、負極、及び電解質を備えた電池素子が、請求項18〜32のいずれかに記載の電池用包装材料により形成された包装体中に収容されている、電池。
  35. X線光電子分光法による分析によって、287eVから290eVの範囲にO−C=O結合のC1sに由来するピークPOCOと、285eVにC−C結合のC1sに由来するピークPC-Cが検出され、
    前記ピークPOCOの高さを前記ピークPC-Cの高さで除して得られるピーク高さ比の値POCO/C-Cが、0.10以上0.50以下の範囲にあり、金属材料の表面に設けられ、樹脂層と接面するように設けられる、耐食性皮膜。
  36. 前記耐食性皮膜のX線光電子分光法による分析によって、576eVから581eVの範囲に、クロム化合物のCr2p3/2に由来するピークが検出される、請求項35に記載の耐食性皮膜。
  37. 前記耐食性皮膜のX線光電子分光法による分析によって、132eVから135eVの範囲に、リン酸化合物のP2pに由来するピークが検出される、請求項35又は36に記載の耐食性皮膜。
  38. 前記耐食性皮膜のX線光電子分光法による分析によって、685eVから689eVの範囲に、フッ素化合物のF1sに由来するピークが検出される、請求項35〜37のいずれかに記載の耐食性皮膜。
  39. 前記耐食性皮膜が、少なくとも、COOX基(ただし、Xは、水素原子であるか、COO−と塩を形成するイオンである)を有するアクリル系樹脂、クロム化合物、及びリン酸化合物を含む組成物から形成されている、請求項35〜38のいずれかに記載の耐食性皮膜。
  40. 前記アクリル系樹脂が、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸のアンモニウム塩、ポリアクリル酸のナトリウム塩、及びポリアクリル酸のアミン塩からなる群より選択される少なくとも1種である、請求項39に記載の耐食性皮膜。
  41. 前記アクリル系樹脂が、アクリル酸とジカルボン酸又はジカルボン酸無水物との共重合体、前記共重合体のアンモニウム塩、前記共重合体のナトリウム塩、及び前記共重合体のアミン塩からなる群より選択される少なくとも1種である、請求項39に記載の耐食性皮膜。
  42. 前記クロム化合物が、フッ化クロム(III)及び硝酸クロム(III)の少なくとも一方である、請求項39〜41のいずれかに記載の耐食性皮膜。
  43. 少なくとも、基材層と、バリア層と、熱融着性樹脂層とをこの順に備える積層体から構成されており、
    前記金属材料が前記バリア層であり、
    前記バリア層の一方面には、請求項35〜42のいずれかに記載の耐食性皮膜を備えている、包装材料。
  44. 少なくとも、基材層と、バリア層と、接着層と、熱融着性樹脂層とをこの順に備える積層体から構成されており、
    前記金属材料が前記バリア層であり、
    前記樹脂層が前記接着層であり、
    前記バリア層の前記接着層側の表面には、前記接着層と接面した状態で、請求項35〜42のいずれかに記載の耐食性皮膜を備えている、包装材料。
  45. 前記接着層を構成している樹脂は、ポリオレフィン骨格を有している、請求項44に記載の包装材料。
  46. 前記接着層が、酸変性ポリオレフィンを含む、請求項44又は45に記載の包装材料。
  47. 前記接着層を赤外分光法で分析すると、無水マレイン酸に由来するピークが検出される、請求項44〜46のいずれかに記載の包装材料。
  48. 前記接着層の前記酸変性ポリオレフィンが、無水マレイン酸変性ポリプロピレンであり、
    前記熱融着性樹脂層が、ポリプロピレンを含む、請求項46に記載の包装材料。
  49. 前記接着層が、イソシアネート基を有する化合物、オキサゾリン基を有する化合物、及びエポキシ基を有する化合物からなる群より選択される少なくとも1種を含む樹脂組成物の硬化物である、請求項44〜48のいずれかに記載の包装材料。
  50. 前記接着層が、酸素原子、複素環、C=N結合、及びC−O−C結合からなる群より選択される少なくとも1種を有する硬化剤を含む樹脂組成物の硬化物である、請求項44〜48のいずれかに記載の包装材料。
  51. 前記接着層が、ウレタン樹脂、アミドエステル樹脂、及びエポキシ樹脂からなる群より選択される少なくとも1種を含む、請求項44〜48のいずれかに記載の包装材料。
  52. 食品用包装材料、医薬品用包装材料、化粧品用包装材料、または洗剤用包装材料である、請求項43〜51のいずれかに記載の包装材料。
  53. 少なくとも、基材層と、バリア層と、熱融着性樹脂層とがこの順となるように積層して積層体を得る工程を備えており、
    前記金属材料が前記バリア層であり、
    前記バリア層を積層する際に、前記バリア層の一方面には、耐食性皮膜が設けられており、
    前記耐食性皮膜として、請求項35〜42のいずれかに記載の耐食性皮膜を用いる、包装材料の製造方法。
  54. 前記金属材料と、
    前記金属材料の表面に設けられた請求項35〜42のいずれかに記載の耐食性皮膜と、
    を備えている、耐食性皮膜付き金属材料。
  55. 前記金属材料と、
    前記金属材料の表面に設けられた請求項35〜42のいずれかに記載の耐食性皮膜と、
    前記耐食性皮膜の表面に設けられた樹脂フィルムと、
    を備え
    前記樹脂層が前記樹脂フィルムである、樹脂フィルム付き金属材料。
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