[卵殻および容器]
以下、本発明の実施形態に係る卵殻形状物およびそれを用いた卵殻形状容器について図面に基づいて詳細に説明する。
図1は、卵殻形状物としての卵殻20にて形成された容器10を示す斜視図である。容器10は、例えば、フランス料理、日本料理などの多様な料理文化における料理用の容器や、洋菓子等の食品用の容器、植物栽培用のポット、微生物や細胞等を培養するための培地用シャーレ、ローソク用の容器、エッグアート用の素材、小物入れ等の日用品等として用いられる卵殻形状容器である。図1に示すように、容器10は、内容物が充填される本体部11と、本体部11を支える台座部12と、を有する。
本体部11および台座部12は、鶏卵等の殻である卵殻20を切断して得られた卵殻21および卵殻22にて形成されている。容器10の基本的な形状は、素材としての卵殻20の形状をそのまま利用したものであり、容器10には、自然の造形美を活かした意匠が表現されている。なお、ここでは容器10の素材として卵殻20を用いているが、卵殻20以外の卵殻形状をしたその他の中空な卵殻形状物であっても良い。
図2(A)は、容器10の平面図である。図2(B)は、容器10の縦断面図であり、図2(A)に示すA−A線に沿った断面を示している。図2(C)は、容器10の底面図である。図2(A)および図2(B)に示すように、本体部11は、一部が円形状に切り取られて切除されて開口された卵殻21から構成されており、略カップ状の形態を成す。本体部11の上部には、平面視略円形状の開口部14が形成されている。
図2(B)および図2(C)に示すように、台座部12は、卵殻22から形成され、略リング状に形成されている。具体的に、台座部12は、下部の外径寸法よりも上部の外径寸法が小さく、略円錐台状の筒状に形成されている。台座部12の上部に形成された開口部15の径寸法は、本体部11の長軸方向に直交する最大径寸法より小さい。開口部14を上側に向けた状態で本体部11の下部を台座部12の開口部15に挿入させて載置させることにより、本体部11は、台座部12の上部に支持される。すなわち、台座部12は、本体部11を自立させるために用いられる自立リングとしての機能を有している。
図3は、コーティング後の容器10の縦方向断面図を示している。図3に示すように、卵殻21の外表面21a、および切断された開口部14の端面21cは、卵殻21を補強するための補強材となるコーティング層16にて覆われている。これにより、卵殻21の強度および耐久性が高められ、本体部11の抗菌性が高められる。
ここで、コーティング層16は、卵殻21の外表面21aおよび端面21cに被覆されて固着しており、卵殻21の気孔に入り込んでいる。すなわち、卵殻21の気孔は、コーティング層16によって覆われて塞がれている。これにより、コーティング層16で覆われた卵殻21は、気孔が塞がれる状態となることから優れた強度が得られる。
コーティング層16で補強されて強化された卵殻21からなる容器10の本体部11は、食品用の容器等としての使用に耐え得る十分な強度を有する。具体的に、本体部11は、内部に充填された内容物を食する時に加えられる外力や輸送時等に加えられる外力に対する耐久性を有している。これにより、本体部11が破損することによる内容物の漏れや品質の劣化等を防止できる。また、卵殻21の強度が高められることにより、食品用の容器等として容器10を繰り返し使用できる。また、容器10は、食品用の容器等として用いられた後、栽培用プランターや他の物品等を収納する容器等として使用されても良い。
また、本体部11は、食品等の製造過程における加熱調理による温度上昇や、内部に充填された食品等が膨張する圧力にも耐えることができる。そのため、本体部11の内部に食品等の素材を充填して加熱調理することも可能であり、容器10を用いて販売等される加工食品等の調理効率を高めることができる。
台座部12は、コーティング層16と同様に形成されたコーティング層17にて覆われている。詳しくは、台座部12を構成する卵殻22の外表面22aおよび開口部15の端面22cには、コーティング層16と同等のコーティング層17が積層されて固着している。コーティング層17は、卵殻22の気孔に入り込んで塞いでいる。台座部12の卵殻22にコーティング層17が形成されることにより、卵殻22の強度が高められ、卵殻22が壊れ難くなる。これにより、台座部12は、本体部11を好適に支えることができる。なお、これらコーティング層16,17は、本体部11および台座部12の少なくとも一部が覆われていることにより、これら本体部11および台座部12のコーティング層16,17にて覆われた部分を補強できる。
次に、コーティング層16についてさらに詳しく説明する。なお、上記のとおり、台座部12に形成されるコーティング層17は、コーティング層16と同等である。コーティング層16を形成するコーティング剤としては、種々の材料を利用可能である。
さらに、コーティング層16は、例えばセルロースナノファイバー等の1層であっても良いが、複数の層、例えば2層で構成してもよい。具体的に、コーティング層16としては、卵殻21の外表面21aや切断された端面21c上に直接積層される第1の層18と、この第1の層18上に積層される第2の層19とで構成している。第1の層18は、水溶性多糖類であるプルランを主成分とした層であり、水とプルランとを含有し、プルランの含有率が水に対し12.5重量%以上17.5重量%以下、より好ましくは15重量%とされている。
ここで、プルラン(pllulan)は、分子式C6H10O5であり、無色透明な化合物であって、グルコースのみからなる多糖類の一種である。そして、プルランは、グルコース3分子がα1−4結合したマルトトリオースがα1−6結合で繋がった構造を有している。また、プルランは、溶性に優れ、速やかに水に溶解する性質を有しており、増粘性、接着性、付着性、粘着性、造膜性、被膜性などに優れ、可食性である。よって、プルランは、一定の水を加えて加熱成型すると、可食水溶性の成型物、具体的な層状の膜を形成できる物質である。さらに、プルランは、急性毒性、亜急性毒性、慢性毒性、変異原性において安全性が確認されており、日本では使用制限のない添加物として扱われている。なお、第1の層18としてプルランを用いることにより、卵20の卵殻20,21,22に対する第1の層18の付着性や被膜性が向上する。なお、第1の層18は、プルランの他、例えばアラビアガム等の水溶性多糖類である植物性樹脂など、種々の成分を主成分として用いることもできる。
また、第2の層19は、熱可塑性樹脂であるシェラックを主成分とした層とされている。シェラック(shellac)は、ラックカイガラムシ(Laccifer lacca)等の数種のカイガラムシが分泌する虫体被覆物を精製して得られた樹脂状物質である。そして、シェラックは、透明な無味無臭の人体に無害な物質であって、一般的に食品のコーティング材として利用されている鮮度保持効果を有する光沢剤製剤である。また、シェラックは、例えばエタノール等のアルコール系溶剤のみに溶ける性質を有しており、シェラックのアルコール溶液を乾燥させてアルコールを蒸発させることにより透明な皮膜を形成できる防湿材である。
したがって、卵30の卵殻20,21,22にプルラン水溶液を塗布してから乾燥させて第1の層18とし、この第1の層18上にシェラック液を塗布してアルコール分を揮発させて硬化させることにより、一部を切り取ると強度が極端に低下する卵殻20,21,22であっても強固に補強できるとともに、卵殻21,22にて構成された容器10を食品の容器等として用いた場合に、誤って口を付けてしまった際の人的被害を防止できる。また同時に、表面に水が付着した場合における第1の層18の溶け出しを第2の層19にて防止できる。
また、容器10は、植物栽培用のポット等として用いられても良い。したがって、コーティング層16を天然成分にて形成していることにより、容器10は、土壌に埋められることで土壌に還元される。そのため、容器10は、植物とともに土壌に埋め込まれても良く、育苗用の容器等としても有用である。このとき、栽培用の培土より先に卵殻23を容器10へ入れることにより、容器10内の培土へ空気が入りやすくなり、栽培する植物の根張りを良くできる。
土壌中に埋められた容器10は、土壌に還元されるため、従来の合成樹脂製のポットのように容器10を掘り起こして回収し、洗浄、保管、管理等する必要がない。また、酸性の土壌では、卵殻20からなる容器10が埋められることによって、土壌が中和されてPh値が高くなり、土壌を改良できる。また、容器10内に植えられた植物は、芽が伸びる上部以外が容器10によって包まれる。これにより、容器10は、養分流出の防止や保湿に優れた効果を発揮する。また、根の成長を阻害したくない場合には、容器10の下部のみを割って植え付ければ良い。
また、容器10としては、iPS細胞やミューズ細胞などを培養するための培養空間用の容器として用いることもできる。
さらに、容器10を食用として用いた場合には、匙(スプーン)が付属されていることが多い。この場合、この匙を、食後の容器10を植物栽培用の容器として利用する際の、培土用のスコップ、すなわち栽培用シャベルとして用いることができる。また、この匙に、種子の種類や栽培履歴等を表示できる部位を設けたり、文字や絵などが描きやすい素材で形成したりコーティングを施したりして、食後に匙を、栽培用の立て札として用いることができる。また、この匙に、土壌の保湿・乾燥度合いを示す機能性を付加することもできる。ゆえに、スマートフォンなどの情報端末と専用アプリとが連動する栽培センターにより、栽培状況や栽培環境を可視化して愉しむ園芸文化を創出することもできる。
また、容器10をプリン用とし、この容器10に、カラメルソースを入れたじょうろ型容器を付属させることにより、このじょうろ型容器を栽培用のじょうろとして使用できる。そして、このじょうろ用容器の注ぎ口の先をつまみ切ったり、ねじって蓋を外す等することにより、じょうろ型容器内のカラメルソースが開封され、このじょうろ型容器を押しつぶしてスポイトのように用いることにより、じょうろ型容器からカラメルソースを取りだすことができる。
次いで、図4(A)は、容器10の素材となる卵30の平面図である。図4(B)は、卵30の正面図である。なお、卵30のやや太く形成される気室側を上とし、その反対側のやや尖っている端部側を下として説明する。また、図4(A)および図4(B)に示す一点鎖線は、容器10を形成する際に、卵30が切断される箇所を示している。ここで、卵30は、炭酸カルシウムが主成分であり、多くの気孔を有することから、外力を作用させると略塑性変形せず砕ける性質を有する脆性材である。
図4(A)および図4(B)に示すように、卵30は切断部31にて切断され、これにより本体部11となる卵殻21が形成される。切断部31は、卵30の中心軸に対して略垂直であり、平面視において略円形状である。なお、切断部31は、容器10の意匠性を高めるために、例えば、略波状等に形成されても良い。卵30の上端から切断部31までの距離L2は、卵30の高さL1の3分の1以下が望ましい。すなわち、本体部11となる卵殻21の高さL3は、卵30の高さL1の3分の2以上である。これにより、卵殻21は容器10として好適な大きさになる。
また、切断部31で切除された卵30が台座本体13となり、この台座本体13の上部がさらに切断部32で切断されることにより、台座部12となる卵殻22が形成される。すなわち、台座本体13は、卵殻22と、切断部32にて切断された卵殻23とで構成された蓋体としての小片部である。切断部32は、卵30において切断部31よりも上方であり、切断部31の外形寸法より小さな外径寸法を有しており、切断部31と切断部32とは略平行となっている。よって、卵30の卵殻20から容器10の本体部11および台座部12が形成されることにより、従来は廃棄されていた卵殻20を容器10として有効に再利用できる。これにより、卵30の卵殻20の廃棄量を減少できる。また、食品用等の容器としてガラス製やプラスチック製等の容器や台座を別途購入する必要がなくなるので、ガラスやプラスチック等の消費量および廃棄量を削減できる。ゆえに、フランス料理、日本料理をはじめ、特に欧米の料理文化に絶大なる演出効果のみならず、サスティナブル意識を提供できる。
また、一つの容器10を構成する本体部11と台座部12とは、それぞれ別々の卵30から得られた卵殻21,22から形成することもできる。すなわち、一の卵殻20を切除して得られた卵殻21は、他の卵殻20を切除して得られた卵殻22と組み合わせて容器10が構成される。これにより、容器10の生産効率が高められるとともに、卵殻21,22の選択が可能となり、容器10の意匠性が高められる。ただし、卵殻20を切断部32にて開口したものであっても、容器10に比べて保湿性に優れ強度が増した容器として用いることができる。
なお、卵30は、自然物であるため、個体毎に大きさが異なる。そのため、卵30の高さL1に応じて、切断部31の位置を適宜変更することにより、本体部11の高さL3を調整しても良い。また、上記の例では卵30の上部が切除されて本体部11が形成されるとしたが、本体部11の構成はこれに限定されず、例えば、卵30の下部が切除されて、卵30の気室側の卵殻20が本体部11として使用されても良い。また、例えば、本体部11は、卵30を上下方向、即ち中心軸方向に切断することにより形成されても良い。
さらに、卵殻21,22の外表面21a,22aに形成されるコーティング層16,17は、上記の例に限定されず、これら卵殻21,22の外表面21a,22aの少なくとも一部に形成されていてもよい。具体的には、コーティング層16,17は、強度が弱い箇所、例えば卵殻21の切断部31の端面21cや、卵殻22の切断部31,32それぞれの端面21c,22cを覆うように形成されても良い。
また、卵殻21,22は、それぞれの内表面21b,22bに卵殻膜が残された状態で容器10に用いても良い。これにより、卵殻21,22は、卵殻膜にて保護され、容器10の強度が高められ補強される。また、内表面21bの卵殻膜の内側にコーティング層16が形成されても良い。これにより、卵殻21は、卵殻膜およびコーティング層16にて保護され強度が高められ補強される。卵殻22についても、卵殻21と同様に、卵殻膜の上にコーティング層17が形成されても良い。また、これらコーティング層16,17の厚さを調整することによって、これらコーティング層16,17にて外表面21a,22aが覆われた卵殻21,22の大きさを等しくし、これら卵殻21,22の個体差を吸収してもよい。
また、卵殻21,22は、卵殻膜が除去された状態で容器10に用いられても良い。具体的には、エタノールや水等によって、卵殻21,22の卵殻膜が洗浄等されて剥離しても良い。これにより、卵殻膜の腐敗等の恐れがなくなるため、容器10の保存性が高められる。また、卵殻膜が剥離された内表面21b,22bにコーティング層16,17を形成しても良い。すなわち、これらコーティング層16,17等のコーティング剤で覆われていない卵殻21,22であってもよい。
以上により、本発明に係る容器10は、一つの生の卵30を例として考えると、目前や冷蔵庫に卵30が一つ存在するのではなく、一個分の卵黄、および一個分の卵白のみならず、それに加え一個の本体部11の素材と、その本体部11を自立させる台座部12の素材とを創出する素材があるという世界観が創造される。また、本発明を、生の卵30を中心とした卵殻形状物で実施するということは、食文化・滋養といった側面に加え、サスティナブル社会に向けたエコロジカル性、さらには、イースターエッグをはじめとした生命・誕生・復活・再生・財産等の象徴でもある卵30を、エシカルな消費文化およびイノベーションの象徴・多様な場面でのアイコンとして営為に世界観を据え直すことこそが、その産業性をもった真のコロンブスの卵の真骨頂であり、例え、千年の時が経とうとも廃れることなき自然の意匠美によりもたらされた、ユニバーサルデザインによる包摂的文化創造なものである。
[容器の製造方法]
次に、図5を参照して、卵殻形状容器である容器10の製造方法について詳細に説明する。なお、以下の説明では、適宜図1ないし図4を参照するものとする。
図5は、本発明の実施形態に係る容器10の製造工程を示すフローチャートである。図5に示すように、容器10の製造工程は、消毒工程S10と、第1コーティング工程S20と、第1割卵工程S30と、第1洗浄工程S40と、縁部コーティング工程S50と、第2割卵工程S60と、第2洗浄工程S70と、第2コーティング工程S80と、印刷工程S90と、を備える。
まず、必要に応じ、消毒工程S10が行われる。消毒工程S10では、食品用エタノール等にて卵30の表面が消毒される。その後、卵30は、所定時間放置されて、表面を自然乾燥させる。
次に、必要に応じ、第1コーティング工程S20が行われる。第1コーティング工程S20では、卵30の卵殻20の表面全体にコーティング層16,17が形成されて補強される。このとき、これらコーティング層16,17に、色付きのコーティング剤を用いることにより、天然物であるが所以の卵殻20の色むら、すなわち下地むらを抑制できる。また、この第1コーティング工程S20を行うことによって、後述する第1割卵工程S30での割卵を安定して行うことが可能となる。
例えば、これらコーティング層16,17が、プルランを主成分とする第1の層18の表面に、シェラックを主成分とする第2の層19を積層させて形成される場合、水とプルランとの混合物であるプルラン水溶液に卵30を浸漬させて、プルラン水溶液が卵30の表面に塗布される。次いで、プルラン水溶液が塗布された卵30を、オーブン等の加熱装置で加熱したり、ドライヤー等で熱風を吹き付けたり、自然乾燥させたりして乾燥させて、プルラン水溶液を硬化させて卵30の表面に第1の層18を形成する。
その後、第1の層18が表面に積層されて形成された卵30を、シェラック液(シェラックとエタノール等のアルコールを混合した溶液)に浸漬させて、卵30の第1の層18上にシェラック液を塗布させる。次いで、シェラック液が塗布された卵30を、オーブン等の加熱装置で加熱したり、ドライヤー等で熱風を吹き付けたり、自然乾燥させたりして、シェラック液中のアルコール成分を蒸発させて、シェラックを硬化させて卵30の第1の層18上に第2の層19を積層させて形成する。
このとき、図示しない超音波機構やマイクロバブル発生装置を用いて、プルラン水溶液やシェラック液等のコーティング剤を卵30の卵殻20に塗布するようにして、この卵殻20を殺菌すると同時に、この卵殻20の気孔やバリをコーティング剤で埋めて、卵殻20をより強固にしてもよい。
なお、コーティング層16,17として用いるコーディング剤を自然乾燥させる際には、後述する乾燥用治具900が用いられる。各卵殻21は、開口部14を下方に向けた状態として、これら各卵殻21の開口部14に乾燥用治具900の支柱902を挿入していき、これら各卵殻21の開口部14に対向する内表面21bが、支柱902の先端部に取り付けられた緩衝部材903上に載置するように設置される。また、台座本体13は、切断部31側を下方に向けた状態として、これら台座本体13の端部側の内表面が乾燥用治具900の緩衝部材903上に載置するように設置される。
次に、第1割卵工程S30が行われる。第1割卵工程S30では、卵30は、切断部31にて後述する割卵機100A等にて切断される。割卵機100A等は、例えば略円板状の切削刃本体102Aを有しており、この切削刃本体102Aを超音波振動させたり回転させたりして、この切削刃本体102Aの刃112Aを卵30の卵殻20の所定位置に接触させることによって、この卵30の卵殻20の一部が切断部31にて部分的に切り取られて本体部11となる卵殻21と台座本体13とに切断される。そして、卵30は、中身と卵殻21,22,23とに分離される。卵30の中身は、例えば、洋菓子等の材料として使用される。
ここで、第1コーティング工程S20にて卵30の表面にコーティング層16,17を形成した後に第1割卵工程S30を行うことにより、卵30の卵殻20はコーティング層16,17にて保護されて補強されるため、割卵工程S30での割卵時の卵殻20のひび割れ等が防止される。また、割卵機100A等にて卵30の卵殻20が切断されることにより、卵30の卵殻20を手作業で割る場合に比べ、卵30の卵殻20のひび割れが少なくなるとともに強度が高くなる。また、割卵機100A等を用いることにより、容器10の生産性を高めることができる。
次に、必要に応じ、第1洗浄工程S40が行われる。第1洗浄工程S40では、本体部11となる卵殻21および台座本体13の外表面および内表面を水で洗浄する等してすすぎ洗いし、これら卵殻21および台座本体13に付着している切削片や卵黄、卵白、卵殻膜等を徐々する。
その後、必要に応じ、縁部コーティング工程S50が行われる。縁部コーティング工程S50では、第1コーティング工程S20と同様の方法によって、卵殻21および台座本体13それぞれの縁部にコーティング層16,17をそれぞれ形成する。なお、縁部コーティング工程S50においては、卵殻21および台座本体13のそれぞれを、プルラン水溶液やシェラック液に浸漬させて塗布する方法のほか、これら卵殻21の端面21cや、台座本体13の切断部31側を部分的にプルラン水溶液やシェラック液等に浸漬させて、これら卵殻21の端面21cおよび台座本体13の切断部31の端部を部分的にコーティングしてもよい。
次に、第2割卵工程S60が行われる。第2割卵工程S60では、台座本体13を切断部32にて後述する割卵機100B等にて切断する。具体的には、割卵機100Bの円板状の切削刃本体102Bを超音波振動させたり回転させたりして、この切削刃本体102Bの刃112Bを台座本体13の端部側の中心位置に接触させることによって、この台座本体13の端部が切断部32にて部分的に切り取られて切断されて、卵殻22,23に分離される。
次に、必要に応じ、第2洗浄工程S70が行われる。第2洗浄工程S70では、卵殻22の外表面22aおよび内表面22bを水で洗浄する等してすすぎ洗いし、この卵殻22に付着している切削片等を徐々する。
この後、必要に応じ、第2コーティング工程S80が行われる。第2コーティング工程S80では、第1コーティング工程S20にて説明した方法と同様の方法によって、卵殻21,22それぞれの外表面21a,22aにコーティング層16,17形成されて、これら卵殻21,22から本体部11および台座部12が形成される。なお、第2コーティング工程S80では、卵殻21,22それぞれの内表面21b,22bにコーティング層16,17が形成されても良い。この場合において、これら卵殻21,22を、プルラン水溶液やシェラック液に浸漬させ、その全面にコーティング層16,17を形成する。
上記のように、第1コーティング工程S20および第2コーティング工程S80が行われることにより、コーティング層16,17は、それぞれ複数の層状となって厚く形成される。そのため、卵殻21,22の強度を高めることができる。
その後、容器10の外表面、例えば卵殻21の外表面21aに不可逆性の示温剤を塗布する印刷工程S90が行われてもよい。印刷工程S90では、容器10の外表面に、その容器10が何℃で何時間、例えば蒸された、すなわち加熱処理されたかを確認できる示温剤が印刷されていてもよい。これにより、例えば食品用の容器10として用いる場合においては、所定温度以上で所定時間の加熱で反応する不可逆性の示温剤とすることにより、サルモネラ菌をはじめとする種々の微生物の殺菌対策等として用いることができるから、食中毒等の発生を適切に防止でき、すなわち調理管理を容易に行うことができ、安全性を高めることができる。また同時に、例えば食品用の容器10として用いた場合における保温管理を容易にできる。
なお、この印刷工程S90の代わりに、予め示温剤が塗布されたシール材を、容器10の外表面21aの所定位置に張り付けるようにしてもよい。また、示温剤は、容器10のいずれかの位置に塗布等されていればよく、例えばコーティング層16,17に用いられるコーディング剤に示温剤を混ぜて用いてもよい。また、卵30の内容物、すなわち卵黄や卵白が、生、半熟、完熟の状態のいずれであるかを判別することができる示温剤としてもよい。さらに、示温剤の反応により、トレーサビリティーを可能にするシリアルナンバーや、シリアルバーコード、QRコード(登録商標)、バーコード、識別子などの表示を浮き出させることもできる。また、これらトレーサビリティーを可能にするシリアルナンバーや、シリアルバーコード、QRコード(登録商標)、バーコード、識別子などの種々の表示については、容器10のいずれかの位置に、例えばインクジェットプリンタ等を用いて印刷してもよい。
このとき、容器10のそれぞれに、固有の識別コードを付けることもできる。この場合は、栽培する作物の栽培管理や、品評会、スマホアプリとの連動、IoT、AIを活用した養鶏、鶏卵の品質管理、鮮度管理が可能になるとともに、「CalaGARDEN」、「EGGGARDEN」、「たまご庭」などといった名称の食後の容器10の再活用を案内するサブカルチャーのHP等にアクセスさせたり、水やりや施肥のタイミングや分量を調整などする栽培用ゲーム等にアクセスさせたりできる。
また、第1コーティング工程S20、縁部コーティング工程S50、および第2コーティング工程S80は、それぞれ複数回行われても良い。これにより、コーティング層16,17を多層状に厚く形成でき、卵殻21,22の強度を高くできる。また、第1コーティング工程S20、縁部コーティング工程S50、および第2コーティング工程S80は、コーティング剤の種類を変えてそれぞれ複数回行われても良い。すなわち、コーティング層16,17は、それぞれ異なる種類のコーティング剤にて多層状に形成されても良い。
さらに、第1割卵工程S30および第2割卵工程S60は、第1割卵工程S30より先に第2割卵工程S60を行い、卵殻20から卵殻23を切り取った後、第1割卵工程S30を行って、卵殻23が切り取られた卵殻20から卵殻22を切り取って卵殻21を形成して、本体部11および台座部12を設けても良い。
[製品の製造方法]
次に、図6を参照して、容器10を用いた製品の製造方法について詳細に説明する。なお、以下の説明では、適宜図1ないし図4を参照する。
図6は、卵殻形状容器である容器10を用いた製品の製造方法を示すフローチャートである。図6に示すように、容器10を用いた製品の製造工程は、充填工程S100と、加熱調理工程S101と、第3コーティング工程S102と、梱包工程S103と、を備える。
初めに、充填工程S100が行われ、容器10の内部に内容物が充填される。内容物としては、例えば、調理不要な食品、調理済の食品または購入者によって加熱調理される食材等である。また、例えば、容器10がプリン等の洋菓子用の容器として用いられる場合は、容器10の内部に調合された液体状の材料が内容物として充填される。
次に、必要に応じ、加熱調理工程S101が行われる。加熱調理工程S101では、容器10に充填された内容物が加熱調理される。このとき、容器10および内容物が、示温剤が反応する加熱温度および加熱時間で加熱処理された場合には、示温剤が反応して、適切な加熱処理が行われたことを目視にて確認することが可能となる。そして、加熱調理が行われた後、容器10およびその内容物は冷却される。
その後、必要に応じ、第3コーティング工程S102が行われる。第3コーティング工程S102では、容器10の外表面にコーティング層16が形成される。これにより、容器10の強度をさらに高くできる。なお、加熱調理工程S101の加熱と第3コーティング工程S102の乾燥を同時に行うことも可能である。
次に、梱包工程S103が行われ、容器10が所定の箱等に収納される。なお、容器10は、オブラート紙等にて包まれた状態で箱等に収納されても良い。これにより、容器10が外気から遮断されて内容物の品質劣化が抑制されるとともに、容器10が補強される。そして、内部に内容物が充填されて梱包された容器10は、その後、出荷される。
また、卵30の卵殻20から形成した卵殻21,22,23のそれぞれの端部にコーティング剤等を塗布し、これら卵殻21,22,23を組み合わせて接着等させて、元の卵殻20形状とした状態で出荷させてもよい。この場合においては、卵殻23の外表面および内表面のそれぞれにコーティング層を設けておくことが好ましい。さらに、水やエタノールに浸した卵殻膜を容器10の開口部14の蓋として用いてもよい。
[割卵機]
次に、図7ないし図10を参照して、卵30の卵殻20を切断部31または切断部32にて切断するため割卵機100A,100Bについて詳細に説明する。なお、以下の説明では、適宜図1ないし図4を参照する。
(超音波割卵機:別個型)
図7ないし図10に示す本実施形態に係る割卵機100Aは、例えば卵30の卵殻20を切断部31にて切断するための切断機であり、この卵殻20の一部を切り取って開口部14を形成するための切削装置である。割卵機100Aは、作業者が把持する円柱状の把持本体101Aと、この把持本体101Aに取り付けられた円筒状の切削刃本体102Aと、切削刃本体102Aに超音波を付与して超音波振動させる超音波発生装置103Aと、超音波発生装置103Aへ電力を供給するための電源104Aとを備える。
図9に示すように、把持本体101Aは、円柱状に形成されており、この把持本体101Aの一端側に切削刃本体102Aが同心状に設けられている。これら把持本体101Aと切削刃本体102Aとは同一の外径寸法を有し一体に設けられている。切削刃本体102Aは、所定の厚さ寸法を有する円筒状の筒状部111Aとされ、この筒状部111の一端部に、複数、例えば125個の刃112Aが設けられている。これら刃112Aは、周方向に亘って連続して並べられて鋸状に形成されている。また、これら各刃112Aは、軸方向断面略三角形状に形成されており、図8に示すように、各刃112Aの外周側に傾斜面としての刃面113Aが形成されている。
ここで、刃面113Aが切削刃本体102Aの外周側に設けられているため、切削刃本体102Aの刃面113Aを卵30の卵殻20に食い込ませた際に生じる切削屑である切削片を、切削刃本体102Aの外周側に生じさせることができる。よって、卵30の卵殻20を開口する際における卵殻20の内部への切削片の侵入を防止できるため、開口部14を形成した後に卵殻20の内部から切削片を取り除く作業を簡略化でき、卵30の内容物、すなわち卵黄および卵白の利用を容易にできる。
なお、切削刃本体102Aの刃112Aは、円筒状でなくてもよく、卵30の卵殻20に形成する開口部14の形状に対応させて、例えば断面が三角形型、ハート型、ひし型、貯金箱口型(卵殻の外表面に沿った弓なり型の長方形)、葉型、波線で囲った波型、折れ線で囲ったギザギザ型、三日月(ムーン)型、十字架型等の筒状とすることにより、開口部14の形状を様々な形状とすることができる。この場合、切削刃本体102Aの刃112Aの形状に対応させて、超音波発生装置103Aから付与する超音波の周波数を変化させる必要がある。
さらに、切削刃本体102Aの刃112Aの周方向の一部を切り欠いた形状とし、卵殻20の切断時に卵殻21の一部が残るようにし、この卵殻21の残った部分をコーティング剤で強化したりシール溶剤で接合したりして、蓋として用いることもできる。
各刃面113Aは、周方向に連続して形成されており、筒状部111Aの先端部に一体に設けられている。また、これら刃面113Aは、例えば35.5°の傾斜角度であって、これら各刃面113Aの根元部分の厚さ寸法が筒状部111Aの厚さ寸法より小さく形成されている。さらに、これら各刃面113Aの根元側である基端側には、周方向に連続した平面状のエッジ部114Aが形成されている。このエッジ部114Aは、刃面113Aの傾斜角度よりも小さな傾斜角度であって、エッジ部114Aの根元部分の厚さ寸法が刃面113Aの根元部分の厚さ寸法より大きく形成されている。
エッジ部114Aの他端側、すなわち各刃面113Aの根元側には、周方向に連続した軸方向断面凹状である薄肉状の逃げ部115Aが設けられている。この逃げ部115Aは、各刃面113Aの根元部分からエッジ部114Aを介して離間した位置に周方向に亘って連続して設けられている。また、逃げ部115Aは、筒状部111Aの基端側に進むに連れて、エッジ部114Aの根元部分の厚さ寸法と同一の厚さ寸法から、このエッジ部114Aの根元部分の厚さ寸法より厚さ寸法を小さくし、さらに筒状部111Aの厚さ寸法と同一の厚さ寸法となるまでに亘って連続した滑らかな凹弧面状に形成されている。
すなわち、逃げ部115Aは、切削刃本体102Aの刃面113Aを卵殻20の表面に押し付けて食い込ませた際に、卵殻20への切削刃本体102Aの刃面113Aからの衝撃や応力を逃げ部115Aへ逃がすことができ、これら刃面113Aが卵殻20の食い込んだ部分に与える反力を分散させることができるから、卵殻20へ食い込んだ部分における径方向への亀裂の発生、すなわちひび割れの発生を抑制でき、卵殻20に開口部14を形成する作業を精度良く容易にできる。
また、把持本体101Aの基端側には、超音波発生装置103Aが取り付けられている。超音波発生装置103Aは、切削刃本体102Aの刃面113Aを卵殻20の表面に押し付けて食い込ませ、卵殻20に円形状の切断部31を形成することに適した20kHz以上の所定の周波数の超音波を切削刃本体102Aの少なくとも刃112Aに付与する。なお、超音波発生装置103Aから付与する超音波の周波数は、切削刃本体102Aの刃112Aの厚さ寸法や外径寸法に起因して変化させる必要がある。さらに、超音波発生装置103Aは、把持本体101Aの外径寸法に等しい円柱状に形成されており、この把持本体101Aの基端側に同心状に取り付けられている。
さらに、超音波発生装置103Aの上側、すなわち基端側に電源104Aが取り付けられている。この電源104Aもまた、超音波発生装置103Aの外形寸法に等しい円柱状に形成されており、この超音波発生装置103Aの基端側に同心状に取り付けられている。また、この電源104Aの基端側には、電源104Aから超音波発生装置103Aへの電力の供給をオンオフさせるスイッチ105Aが設けられている。ここで、この電源104Aとしては、リチウムイオン電池等の充電池や、乾電池のほか、AC電源,ソーラー充電、非接触充電などの動力源としてもよい。
そして、割卵機100Aにて卵30の卵殻20の一部を切り取って切断部31にて開口する際には、図7に示す保持具200Aが用いられる。保持具200Aは、卵30の卵殻20の長軸方向を上下方向に向けた状態として保持し、割卵機100Aにて卵殻20に開口部14を形成する際の卵30の位置決めのために用いられるセンタリング用治具である。具体的に、保持具200Aは、卵30の最大径寸法より大きな内径寸法を有する円筒状の筒状部201Aと、筒状部201Aの一端部である底部を閉塞する円盤状の底面部202Aと、筒状部201A内に同心状に取り付けられた略円筒状の位置決め部203Aとを有する。
筒状部201Aは、卵30の長軸方向の長さ寸法に略等しい高さ寸法を有している。そして、この筒状部201の内側に略円環状の位置決め部203Aが取り付けられている。位置決め部203Aは、外周面を筒状部201Aの内周面に密着させた状態で取り付けられており、筒状部201Aの高さ寸法より小さな高さ寸法を有している。位置決め部203Aは、例えばスポンジ・ゴム・内部に空気が充填された中空なバルーン等の弾性変形可能な弾性体にて形成されており、卵30の長軸方向を上下方向に沿わせた状態での水平方向の最大外径寸法より小さな内径寸法に形成されている。また、位置決め部203Aは、筒状部201Aの内周面における軸方向の略中間位置、すなわち筒状部201Aの底部側の端部より上方に離間させた位置に取り付けられている。さらに、位置決め部203Aの上部には、中心軸方向に向けて下方に傾斜した傾斜面204Aが形成されている。
そして、この傾斜面204Aの下端に連続して案内部205Aが設けられている。この案内部205Aは、傾斜面204Aの傾斜角度より大きな傾斜角度で中心軸方向に向けて傾斜している。また、案内部205Aは、卵30の端部を下方に向けて位置決め部203Aの中心位置に卵30を挿入して位置決めさせる際の、卵30の適切な挿入、すなわち卵30の長軸方向を上下方向に向けて位置決め部203Aの内周面206Aで卵30を保持させて位置決めさせるための卵30の案内を行う誘導面である。このことから、保持具200Aにて卵30の卵殻20の長軸方向を上下方向に向けて保持し正確に位置決めできるから、卵30の卵殻20の気室側の中心位置へ切削刃本体102Aの刃面113Aを押し当てる作業を精度良く正確に行うことができる。よって、卵30の卵殻20に開口部14を形成する作業を精度良く行うことができる。
さらに、底面部202Aの上面側の中心位置には、断面凹状の位置合わせ部としての窪み207Aが設けられている。この窪み207Aは、平面視円形状に形成されており、卵30の卵殻20の端部を下方に向け、この卵殻20の長軸方向を上下方向に沿わせた状態で、この卵殻20の端部が嵌合するように、この卵殻20の端部の形状に略等しい形状とされている。また、この窪み207Aは、底面部202Aの中心位置に同心状に形成されている。
次いで、図10に示す割卵機100Bは、切断部31にて切断した台座本体13の一部を、切断部32にて切断して開口し卵殻22、すなわち台座部12を形成するための切削装置である。割卵機100Bは、主として切削刃本体102Bの外形寸法が異なる点が、上述した割卵機100Aと相違するものの、その他の構成は同様である。
割卵機100Bの切削刃本体102Bは、切削刃本体102Aの外形寸法より小さく、
卵殻22の切断部32の外径寸法に等しい外径寸法を有している。すなわち、切削刃本体102Bの筒状部111Bの一端部に設けられた刃112Bは、切断部32の径寸法に等しい外径寸法となっている。超音波発生装置103Bは、切削刃本体102Bの刃面113Bを台座本体13の表面に押し付けて食い込ませ、台座本体13に円形状の切断部32を形成することに適した所定の周波数の超音波を切削刃本体102Bの少なくとも刃112Bに付与する構成となっている。
なお、割卵機100A,100Bのそれぞれにおいて、超音波発生装置103A,103Bから把持本体101A,101Bおよび切削刃本体102A,102Bを取り外し可能とすることにより、これら把持本体101A,101Bおよび切削刃本体102A,102Bの丸洗いが可能となるため、これら把持本体101A,101Bおよび切削刃本体102A,102Bのメンテナンスが容易となる。そして、これら把持本体101A,101Bの取り外し可能な取付構造としては、例えばねじ込み式のほか、2点または3点の爪で係止させる構成、嵌合構造のほか、電磁力を電子制御して取り付ける構造などが可能である。また、これら割卵機100A,100Bから切削刃本体102A,102Bを取り外し、これら切削刃本体102A,102Bの代わりに、工作用のカッター、美顔器、染み抜き器、包丁(ケーキ用、魚用、冷凍食品切断用など)の、超音波振動を用いた種々のアタッチメントを取り付けることもできる。
そして、割卵機100Bにて台座本体13を切断部32にて開口する際には、図14に示す保持具200Bが用いられる。この保持具200Bもまた、主として筒状部201Bおよび位置決め部203Bの径寸法が異なる点が、上述した保持具200Aと相違するものの、その他の構成は同様である。保持具200Bの筒状部201Bは、台座本体13の外形寸法、すなわち切断部32の径寸法に等しい内径寸法に形成されている。底面部202Bは、筒状部201Bの底部に対して取り外し可能に取り付けられており、筒状部201Bから取り外した底面部202B上に台座本体13を載置させた状態で、筒状部201Bの底部側に底面部202Bを取り付けることによって、保持具200Bの底面部202B上に台座本体13が保持される構成となっている。
また、位置決め部203Bは、割卵機100Bの切削刃本体102Bの外径寸法に略等しい内径寸法とされている。よって、位置決め部203Bは、この位置決め部203Bの中心位置に割卵機100Bの切削刃本体102Bを挿入して位置決めさせることにより、この切削刃本体102Bの刃112Bの中心が台座本体13の中心に位置するように切削刃本体102Bを案内するためのものである。
次に、このように構成された割卵機100A,100B、および保持具200A,200Bを用いた容器10の製造方法について説明する。
まず、卵30の端部を下方に向けた状態とし、この状態で、卵30を保持具200Aの位置決め部203Aの中心位置に挿入していく。このとき、保持具200Aの位置決め部203Aの案内部205Aによって、卵30の位置決め部203Aへの挿入が案内され、図7に示すように、卵30の長軸方向を上下方向に向けた状態として保持具200Aの位置決め部203Aにて卵30が保持されて位置決めされる。このことから、卵30の卵殻20の気室側の中心と切削刃本体102Aの刃112Aの中心との位置合わせを容易にでき、この卵30の卵殻20の気室側の中心位置への切削刃本体102Aの刃112Aの押し当てを精度良く正確に行うことができる。よって、卵30の卵殻20に開口部14を形成する開口作業を精度良く行うことができる。
次いで、割卵機100Aのスイッチ105Aをオンして超音波発生装置103Aにて切削刃本体102Aを超音波振動させる。この状態で、作業者が割卵機100Aの把持本体101Aを把持し、この割卵機100Aの切削刃本体102Aの刃112Aの中心を、図7に示すように、卵30の気室側の中心に合わせるようにして、この切削刃本体102Aをゆっくりと周方向に回しながら、この切削刃本体102Aの刃面113Aを卵30の卵殻20の表面に押し付けて食い込ませていき、切削刃本体102Aの超音波振動にて卵殻20を切断部31で切断する。
このとき、切削刃本体102Aの刃面113Aが卵殻20に食い込んだ際には、これら刃面113Aの根元部分に設けた逃げ部115Aにより、卵殻20に食い込んだ箇所での切削部分の開きが抑えられ、刃面113Aが卵殻20へ食い込んだ部分に与える反力が分散され、卵殻20へ刃面113Aが食い込んだ部分での卵殻20の割れが抑制される。
この結果、割卵機100Aによる卵30の卵殻20の切削作業により、短時間、長くても数秒で卵30の卵殻20から本体部11と台座本体13とが形成される。
さらに、保持具200Bの底面部202Bを筒状部201Bから取り外し、この筒状部201Bから取り外した底面部202B上に、切断部31側を下方に向けた状態として台座本体13を載置させる。この後、図10に示すように、台座本体13を載置させた底面部202Bを筒状部201Bの底部側に取り付ける。
そして、割卵機100Bのスイッチ105Bをオンして超音波発生装置103Bにて切削刃本体102Bを超音波振動させるとともに、作業者が割卵機100Bの把持本体101Bを把持し、この割卵機100Bの切削刃本体102Bの刃112Bを、図10に示すように、保持具200Bの位置決め部203Bに挿入していく。
このとき、保持具200Bの位置決め部203Bの案内部205Bによる案内によって、切削刃本体102Bの刃112Bの中心が台座本体13の中心上となるように位置合わせされる。そして、保持具200Bの位置決め部203Bにて位置合わせされた状態で、切削刃本体102Bの刃面113Bを台座本体13の表面に押し付けて食い込ませていき、切削刃本体102Bの超音波振動にて台座本体13を切断部32で切断する。このとき、切削刃本体102Bの刃面113Bが台座本体13に食い込んだ際には、これら刃面113Bの根元部分に設けた逃げ部115Bによって、刃面113Bが食い込んだ部分での台座本体13の割れが抑制される。
この結果、割卵機100Bによる台座本体13の切削作業により、短時間、長くても数秒で卵殻23と台座部12が形成される。
したがって、例えば飲食店や家庭等であっても、各割卵機100A,100Bの把持本体101A、101Bを把持して切削刃本体102A,102Bを押し当てるという簡単な作業で、卵30の卵殻20を切断部31,32にて容易に開口させることができる。よって、一部を開口した卵殻20を気軽に容器10として用いることができるため、卵殻20を開口して容器10として用いるための割卵機100A,100Bの使い勝手を向上できる。
なお、まず割卵機100Bにて卵30の卵殻20の気室側の中心位置を切断部32にて切断して卵殻23を切除してから、この卵殻20の切断部32が設けられた側を割卵機100Aにて切断部31にて切断して、台座本体13を形成することなく、本体部11および台座部12を形成してもよい。
さらに、ハンディタイプの割卵機100A,100Bをより高い耐久性にすることによって、商業用利用(洋菓子店・学校教育など)を実現し、それを複数配置することで産業用割卵(菓子業務・卵液業務・マヨネーズ業務)の、サスティナビリティな割卵および容器10となる本体部11と台座部12とを、同時に大量生産が実現でき、廃棄される卵殻20を極限まで減らし、また、卵30の持つ自然の意匠美を容器10の本体部11および台座部12として産業用に再活用できる。産業用は、卵30の卵殻20の上側から割卵機100A、100Bを当てて吸引するなどして卵液を取り出すだけでなく、これら割卵機100A、100Bを卵殻20の下方からを当てて、重力にて卵液を落とし、卵黄と卵白とを分離するための機構とすることもできる。産業用においては、もう一つの吸引機構によって、卵液そのものや、卵液と卵黄との分離機への投入を実施する導線ともなり得る。
(超音波割卵機:二重型)
次に、図11を参照して、本発明のさらに他の実施形態の割卵機100Cについて詳細に説明する。なお、以下の説明においても、適宜図1ないし図4を参照する。
本実施形態に係る割卵機100Cは、上述した割卵機100A,100Bとは異なり、切断部31用の大径な切削刃本体102Aと、切断部32用の小径な切削刃本体102Bとが二重に取り付けられた構成となっている。すなわち、切削刃本体102Aの内側に切削刃本体102Bが同心状に取り付けられている。切削刃本体102Aは、切削刃本体102Bの長さ寸法より大きな長さ寸法とされており、切削刃本体102Aの刃面113Aよりも内側に、切削刃本体102Bの刃面113Bが隠れるように、これら刃面113A,113Bの高さ位置が調整されている。
超音波発生装置103Cは、切削刃本体102Aによる切断部31の形成に適した所定の周波数の超音波を切削刃本体102Aに付与する第1超音波発生部131と、切削刃本体102Bによる切断部32の形成に適した所定の周波数の超音波を切削刃本体102Bに付与する第2超音波発生部132とを備えている。そして、電源104Cは、第1超音波発生部131および第2超音波発生部132への電力の供給が可能とされている。電源104cの上面には、電源104Cから第1超音波発生部131および第2超音波発生部132への電力の供給をオンオフさせるスイッチ105Cと、これら第1超音波発生部131および第2超音波発生部132のいずれかへの電力の供給を切り換える切換スイッチ133が設けられている。
したがって、割卵機100Cのスイッチ105Cをオンするとともに切換スイッチ133を操作して第2超音波発生部132へ電力を供給し、この第2超音波発生部132にて切削刃本体102Bを超音波振動させてから、作業者が割卵機100Cの切削刃本体102A側の把持本体101Aを把持する。そして、切削刃本体102Aの刃112Aの中心を、卵30の気室側の中心に位置合わせし、この状態で、内側の切削刃本体102Bの刃面113Bを卵30の卵殻20の表面に押し付けて食い込ませていき、切削刃本体102Bの超音波振動にて卵殻20を切断部32で切断する。
次いで、切断部32にて卵殻20が切断された後、切換スイッチ133を操作して第2超音波発生部132への電力の供給を停止させ切削刃本体102Bの超音波振動を停止させるとともに、第1超音波発生部131へ電力を供給し、この第1超音波発生部131にて切削刃本体102Aを超音波振動さる。そして、切削刃本体102Bを卵殻20内にさらに食い込ませていき、外側の切削刃本体102Aの刃面113Aを卵30の卵殻20の表面に押し付けて食い込ませ、切削刃本体102Aの超音波振動にて卵殻20を切断部32で切断する。
この結果、割卵機100Cの切削刃本体102A,102Bによる卵殻20の切削作業によって、本体部11および台座部12が形成される。したがって、割卵機102Cの切削刃本体102Aを用いることで卵殻20から本体部11および台座本体13を形成でき、この割卵機100Cの切削刃本体102Bを用いることで台座本体13から台座部12を形成できる。よって、外径寸法の異なる切削刃本体102A,102Bを有した複数、例えば2台の割卵機を用いることなく、1台の割卵機100Cのみで、卵20の卵殻20から本体部11、台座本体13および台座部12のそれぞれを形成できるので、割卵機100Cの使い勝手を向上できる。
(超音波割卵機:ケース型)
次に、図12を参照して、さらに他の実施形態の割卵機100Dについて詳細に説明する。なお、以下の説明においても、適宜図1ないし図4を参照する。
本実施形態に係る割卵機100Dは、上述した割卵機100Aとは異なり、切削刃本体102Aの外周に把持本体となるケース体101Dが取り付けられた構成となっている。ケース体101Dは、切削刃本体102Aの外周を覆うように、この切削刃本体102Aの同心状に取り付けられている。そして、ケース体101Dは、切削刃本体102Aの外径寸法より大きく、卵30の長軸方向に直交する径方向の最大外径寸法より大きな内径寸法を有している。また、ケース体101Dは、切削刃本体102Aの長さ寸法より小さな長さ寸法を有した円筒状に形成されている。したがって、切削刃本体102Aの刃112Aは、ケース体101Dの一端部よりも一端側に突出した状態として取り付けられている。
すなわち、切削刃本体102Aをケース体101Dで覆う構成としたことにより、切削刃本体102Aを超音波振動させた際の振動がケース体101Dを把持する作業者の手に伝わりにくくなる。したがって、割卵機100Dを長時間に亘って連続して使用した場合に生じ得る、人体への悪影響を防止できる。
超音波発生装置103Dは、ケース体101Dの外径寸法に等しい外径寸法を有する円柱状に形成されており、このケース体101Dの基端側に同心状に取り付けられている。電源104Dは、超音波発生装置103Dの外形寸法に等しい円柱状に形成されており、この超音波発生装置103Dの基端側に同心状に取り付けられている。また、この電源104Dの基端側には、電源104Dから超音波発生装置103Dへの電力の供給をオンオフさせるスイッチ105Aが設けられている。
したがって、割卵機100Dのスイッチ105Aをオンし超音波発生装置103Dにて切削刃本体102Aを超音波振動させてから、作業者が割卵機100Dのケース体101Dを把持し、切削刃本体102Aの刃112Aの中心を、卵30の気室側の中心に位置合わせし、この状態で、切削刃本体102Aの刃112Aを卵30の卵殻20の表面に押し付けて食い込ませていくことにより、切削刃本体102Aの超音波振動にて卵殻20を切断部31で切断できる。このことから、割卵機100Dの切削刃本体102Aによる卵殻20の切削作業によって、本体部11と台座本体13とが形成される。
なお、割卵機100Dの切削刃本体102Aの代わりに、切断部32用の切削刃本体102Bとしても良い。この場合は、割卵機100Dによる台座本体13の切断作業によって、台座本体13を切断部32にて切断でき、台座部12を形成できる。
(超音波割卵機:刃のみ別個型)
次に、図13を参照して、さらに他の実施形態の割卵機100Eについて詳細に説明する。なお、以下の説明においても、適宜図1ないし図4を参照する。
本実施形態に係る割卵機100Eは、切削刃本体102A,102Bをそれぞれ有し、第1超音波発生部131および第2超音波発生部132を有する超音波発生装置103Eが切削刃本体102A,102Bと別体とされた構成となっている。各切削刃本体102A,102Bの基端側には円盤状の把持本体101A,101Bが同心状に取り付けられている。これら把持本体101A,101Bには、それぞれコード134が接続されており、これらコード134を介して、各切削刃本体102A,102Bが超音波発生装置103Eに接続されている。
そして、超音波発生装置103Eには、電源104Eから第1超音波発生部131および第2超音波発生部132への電力の供給をオンオフさせるスイッチ105Eと、これら第1超音波発生部131および第2超音波発生部132のいずれかへの電力の供給を切り換える切換スイッチ133Eが設けられている。
よって、超音波発生装置103Eのスイッチ105Eをオンするとともに切換スイッチ133Eを操作して第1超音波発生部131へ電力を供給し、この第1超音波発生部131からの切削刃本体102Aの超音波振動によって、卵30の卵殻20を切断部31にて切断することができる。また、超音波発生装置103Eのスイッチ105Eをオンした状態で切換スイッチ133Eを操作して第2超音波発生部132へ電力を供給し、この第2超音波発生部132からの切削刃本体102Bの超音波振動によって、卵殻20または台座本体13を切断部32にて切断できる。したがって、割卵機100Eによる卵殻20の切断作業によって、本体部11および台座部12を形成できる。
(超音波割卵機:上下型)
次に、図14を参照して、さらに他の実施形態の割卵機100Fについて詳細に説明する。なお、以下の説明においても、適宜図1ないし図4を参照する。
本実施形態に係る割卵機100Fは、超音波発生装置103Fの一端側に切削刃本体102Aが取り付けられ、超音波発生装置103Fの他端側に電源104Fが取り付けられ、この電源104Fの他端側に切削刃本体102Bが取り付けられた構成となっている。これら切削刃本体102A,102Bは、同軸状となるように相対する方向に突出するように取り付けられている。切削刃本体102Bの外周には、この切削刃本体102Bを覆うように把持本体となるケース体101Fが同心状に取り付けられている。このケース体101Fは、切断部31の径寸法より小さな外径寸法に形成されている。
そして、超音波発生装置103Fは、第1超音波発生部131および第2超音波発生部132を有しており、電源104Fには、電源104Eから第1超音波発生部131および第2超音波発生部132への電力の供給をオンオフさせるスイッチ105Fと、これら第1超音波発生部131および第2超音波発生部132のいずれかへの電力の供給を切り換える切換スイッチ133Fとが設けられている。
したがって、切削刃本体102Aの超音波振動によって、卵30の卵殻20を切断部31にて切断でき、割卵機100Fの上下を反転させることにより、切削刃本体102Bの超音波振動によって、卵殻20または台座本体13を切断部32にて切断できるため、割卵機100Fによる卵殻20の切断作業によって、本体部11および台座部12を形成できる。
(超音波割卵機:産業用)
次に、図15を参照して、さらに他の実施形態の割卵機100Gについて詳細に説明する。なお、以下の説明においても、適宜図1ないし図4を参照する。
本実施形態に係る割卵機100Gは、図15に示すように、複数、例えば計8本の切削刃本体102Aを有する切削刃群140と、この切削刃群140のすべての切削刃本体102Aを超音波振動させる超音波発生装置103Gとを備えている。切削刃群140は矩形平板状の支持板141を有しており、この支持板141の下面に切削刃本体102Aが等間隔に格子状に取り付けられている。これら各切削刃本体102Aは、それぞれの切削刃本体102Aの軸方向を平行にして並べた状態とされて支持板141の下面に突出した状態で取り付けられている。
切削刃群140の支持板141の長手方向の両側部には、この支持板141を水平な状態で上下動、すなわち昇降駆動させる一対のフレーム142が取り付けられている。このフレーム142には、切削刃群140の支持板141を昇降駆動させるための駆動装置であるモータ143と、超音波発生装置103Gと、これらモータ143および超音波発生装置103Gに電力を供給するための電源104Gと、が取り付けられている。
一方、切削刃群140の下面に対応する位置には、複数、例えば計8個の卵30を並べて位置決め保持する保持装置としての保持具200Gが設置されている。この保持具200Gは、切削刃群140の支持板141とほぼ同じ大きさの矩形平板状の保持板145を備え、保持板145の上面に卵30が等間隔に格子状に位置決め保持可能な構成となっている。すなわち、この保持具200Gは、この保持具200Gにて保持した各卵30の中心に、切削刃群140の各切削刃本体102Aの刃112Aが食い込むように、これら複数の切削刃本体102Aの刃112Aの中心に対向する位置に、各卵30の長軸方向を上下方向に沿わせた状態で保持できるように構成されている。そして、この保持具200Gは、一対のフレーム142間に取り付けられている。
したがって、保持具200Gの保持板145上に、卵30の長軸方向を上下方向に沿わせた状態で卵30を並べて保持させる。そして、電源104Gから超音波発生装置103Gに電力を供給して、この超音波発生装置103Gにて各切削刃本体102Aのそれぞれを超音波振動させた状態とする。次いで、電源104Gからモータ143に電力を供給して駆動させて切削刃群140の支持板141を降下させていくことにより、各切削刃本体102Aの刃112Aを卵30の卵殻20の表面に食い込ませることができ、これら切削刃本体102Aの超音波振動によって各卵殻20を切断部31にて切断できる。よって、割卵機100Gの各切削刃本体102Aによる卵殻20の切削作業によって、同時に複数、例えば8個の本体部11および台座本体13が形成される。
このことから、一度の超音波発生装置103Gからの各切削刃本体102Aの超音波振動によって、保持具200Gの保持板145上に位置決めされて保持されている複数、例えば8個の卵30の卵殻20のそれぞれに精度良く開口部14を形成できるから、これら複数の卵30の卵殻20の開口作業を精度良く容易にできる。よって、複数の卵30の卵殻20を開口するための割卵機100Gの使い勝手を向上できる。
なお、本割卵機100Gの切削刃本体102Aに代えて切削刃本体102Bを取り付けることにより、同時に複数の卵殻20または台座本体13を切断部32にて切断する割卵機とすることも可能である。
(ホールソー割卵機:吸気型)
次に、図16を参照して、さらに他の割卵機100Hについて詳細に説明する。なお、以下の説明では、適宜図1ないし図4を参照する。
本実施形態に係る割卵機100Hは、上述した割卵機100A〜100Gとは異なり、切削刃本体102Hを周方向に回転駆動させて卵30の卵殻20の一部を切削にて切り取って開口部14を形成する、いわゆるホールソー型の構成となっている。具体的に、割卵機100Hは、図16に示すように、作業者が把持するための把持本体101Hと、把持本体101Hに周方向に回転可能に取り付けられた円筒状の切削刃本体102Hと、切削刃本体102Hを回転駆動させるための駆動装置であるモータ301と、を備えている。
切削刃本体102Hは、本体部11の切断部31の径寸法に等しい外径寸法を有する円筒状の筒状部111Hを備え、この筒状部111Hの先端側に切削用の両刃タイプの刃112Hが周方向に亘って設けられている。この刃112Hは、筒状部111Hの先端部に周方向に亘って設けられ、先端側の角部が面取りされて断面円弧状に形成されている。また、筒状部111Hの先端部には、刃112Hを覆うようにコーティング層302が設けられている。コーティング層302は、例えば微細なダイヤモンド粒子の層にて構成されたダイヤモンドコーティングが電着されて施されており、刃112Hの全体、すなわち刃112Hの外側から先端および内面までを覆うように周方向に亘って設けられている。ここで、切削刃本体102Hは、把持本体101Hに対して取り外し可能に取り付けられており、この切削刃本体102Hが丸洗いできる構成となっている。
なお、切削刃本体102Hの刃112Hの構成については、図17に示すように、先端側に進むに連れて薄肉状となる傾斜面113Hが外周側に設けられている構成とすることもできる。この場合、傾斜面113Hは、筒状部111Hの先端部の外周側に周方向に連続して設けられ、刃112Hの全体を覆うようにコーティング層302を周方向に亘って形成する。また、図18に示すように、切削刃本体102Iの刃112Iの外周側を薄肉状にして平坦な刃面113Iとし、この刃面113Iの根元部分に傾斜したエッジ部114Iを連続して周方向に亘って形成した構成とすることもできる。この場合においては、刃112Iの全体、すなわち刃面113Iから刃112Iの先端および内面までを覆うようにコーティング層302を周方向に亘って形成する。
さらに、把持本体101Hは、円筒状のケース体303を備えており、このケース体303の先端側にモータ301が収容されている。また、このケース体303の基端側には、モータ301を駆動させるための電源104Hが収容されており、このケース体303の外周面には、電源104Hからモータ301への電力の供給をオンオフさせるスイッチ304が設けられている。さらに、ケース体303の先端側には、切削刃本体102Hでの卵殻20の切削時に切削刃本体102Hの内部に生じた卵殻20の切削屑を吸気するための吸気機構400が同心状に取り付けられている。ここで、この吸気機構400もまた、把持本体101Hの一部を構成している。
切削刃本体102Hの筒状部111Hの基端側は閉塞されており、この筒状部111Hの基端側には円筒状の回転軸305が同心状に取り付けられている。筒状部111Hの基端側の中心位置には、切削刃本体112Hでの卵30の卵殻20の切削時に切削刃本体102H内に生じた卵殻20の切削屑を吸込むための吸気口306が設けられている。回転軸305は、吸気口306に連通するように中心位置に吸気路307を有する円筒状に形成されている。回転軸305の周面には、吸気口306から吸気路307に吸込んだ切削屑を排気するため排気口308が設けられている。
そして、切削刃本体102Hの回転軸305は、吸気機構400に挿通されて回転可能に取り付けられている。吸気機構400は、円筒状の吸気機構本体401を有し、この吸気機構本体401に切削刃本体112Hの回転軸305が周方向に回転可能に挿通されている。吸気機構本体401には、切削刃本体112Hの回転軸305の排気口308に連通可能な排気路402が設けられている。排気路402は、回転軸305の排気口308に連通するように、吸気機構本体401の径方向に沿って直接状に設けられている。また、吸気機構本体401と回転軸305との間には、ボールベアリング403が取り付けられており、このボールベアリング403は、回転軸305の排気口308からずらした位置、すなわち排気路402を挟んだ両側に設けられている。
さらに、吸気機構本体401の排気路402の基端には、例えばホース等の吸気管404の端部が取り外し可能に挿入されるカップ状の接続部としての吸気接続部405が設けられている。この吸気接続部4056は、排気路402より大きな内径寸法に形成されており、吸気機構本体401の径方向に沿って開口した吸塵ホース取付口となっている。なお、この吸気接続部405に一端が接続された吸気管404の他端には、図示しない吸気装置が接続される。
また、切削刃本体112Hの回転軸305の基端側には、円柱状の駆動軸309が同心状に取り付けられており、吸気機構400の基端側に取り付けられたモータ301によって周方向に回転駆動される構成となっている。
次に、このように構成された割卵機100Hを用いた容器10の製造方法について説明する。
まず、吸気管404の一端を割卵機100Hの吸気接続部405に接続するとともに、この吸気管404の他端を吸気装置に接続する。次いで、吸気装置を駆動させるとともに、割卵機100Hのスイッチ304をオンして電源104Hから電力をモータ301へ供給し、切削刃本体102Hを回転駆動させる。このとき、吸気装置の吸気によって、割卵機100Hの切削刃本体102H内の空気が吸気口306から吸い込まれ、この空気が回転軸305の吸気路307、排気口308、吸気機構400の排気路402、吸気接続部405、および吸気管404へと流れ吸気装置へ吸気されていく。
この状態で、作業者が割卵機100Hのケース体303を把持する。そして、切削刃本体102Hの刃112Hの中心を、卵30の気室側の中心に位置合わせし、この状態で、切削刃本体102Hの刃112Hを卵30の卵殻20の表面に押し付けていき、切削刃本体102Hの刃112Hの回転にて卵殻20を研削していき切断部31で切削する。
このとき、切削刃本体102Hでの卵30の卵殻20の切削時に生じた卵殻20の切削片が、切削刃本体102H内の吸気口306から吸い込まれ、回転軸305の吸気路307、排気口308、吸気機構400の排気路402、吸気接続部405、および吸気管404を介して吸気装置へ吸気されて排気される。よって、切削刃本体102Hにて卵30の卵殻20を切削する時に生じ得る卵殻20内への切削片の侵入を防止できる。したがって、卵30の内容物、すなわち卵黄および卵白への切削片の混入を防止できるから、これら卵黄および卵白の利用を容易にできる。
この結果、割卵機100Hによる卵30の卵殻20の切削作業により、卵30の卵殻20から本体部11と台座本体13とが形成される。したがって、例えば飲食店や家庭等であっても、把持本体101Hを把持した状態で切削刃本体102Hを卵30の卵殻20に押し当てるという簡単な作業で、卵30の卵殻20に開口部14を形成できるから、一部を開口した卵殻20を気軽に容器10として用いることができる。このため、卵30の卵殻20を開口して容器10として用いるための割卵機100Hの使い勝手を向上できる。
なお、割卵機100Hの切削刃本体102Hを、台座部12の切断部32の径寸法に等しい外径寸法としても良い。この場合は、割卵機100Hによる台座本体13の切断作業によって、台座本体13を切断部32にて切断でき、台座部12を形成できる。またさらに、割卵機100Hの切削刃本体102Hを交換可能とし、台座部12の切断部32の外径寸法に等しい外径寸法の切削刃本体に付け替えることによって、1台の割卵機100Hにて、本体部11および台座部12を形成できる。
さらに、割卵機100Hの切削刃本体102Hを交換可能とし、この切削刃本体102Hの代わりに、エッグアートやイースターエッグ作成用の錐や、泡立て器等をアタッチメントとして取り付け可能としてもよい。
(ホールソー割卵機:スタンド型)
次に、図19を参照して、さらに他の実施形態の割卵機100Jについて詳細に説明する。なお、以下の説明においても、適宜図1ないし図4を参照する。
本実施形態に係る割卵機100Jは、図19に示すように、上述した割卵機100Hと同様の、いわゆるホールソー型の構成であるが、切削刃本体102Jを昇降駆動可能な構成となっている。具体的に、割卵機100Jは、把持本体101Jのケース体303の内部に、切削刃本体102Jを軸方向に進退駆動、すなわち昇降駆動させるための昇降機構406が取り付けられている。この昇降機構406は、モータ301と電源104Jとの間に収容されており、切削刃本体102Jの駆動軸309を軸方向に進退移動させる構成となっている。そして、把持本体101Jのケース体303の外周面には、昇降機構406を駆動させるための昇降スイッチ407と、電源104Jからモータ301への電力の供給量を調整して切削刃本体102Jの回転速度を調整するための変速スイッチ408とが並べて設けられている。
昇降スイッチ407は、基端側を押すことにより、昇降機構406にて切削刃本体102Jを退避、すなわち上昇でき、先端側を押すことにより、昇降機構406にて切削刃本体102Jを進出、すなわち下降できる構成となっている。変速スイッチ408は、この変速スイッチ108を押す圧力に応じて、電源104Jからモータ301への電力の供給量を調整して切削刃本体102Jの回転速度を調整する。要するに、変速スイッチ408を押す力を大きくしていくと、電源104Jからモータ301への電力の供給量が増大していき、切削刃本体102Jの回転速度が高くなっていく。逆に、変速スイッチ408を押す力を小さくしていくと、電源104Jからモータ301への電力の供給量が減少していき、切削刃本体102Jの回転速度が低くなっていく。
また、把持本体101Jのケース体303の先端側には、先端側に向けて徐々に縮径した先細状の係止面部409が形成されている。よって、切削刃本体102Jは、係止面部409の先端側から切削刃本体102Jの駆動軸309が同心状に突出した構成となっている。また、把持本体101Jの係止面部409は、保持具200Jに係止されて、この保持具200Jにて保持した卵30に対する割卵機100Jの位置を位置決め保持するための傾斜面となっている。
具体的に、保持具200Jは、保持具200Aとほぼ同様の構成であるものの、割卵機100Jを位置決め固定するための位置決め機構500を備えている。位置決め機構500は、保持具200Jの筒状部201Jの一部を上方に突出させた形状の支持片501を有している。この支持片501は、幅方向が面凹弧状に形成された細長矩形状とされており、長手方向を上下方向に沿わせた状態で、この支持片501の下端部を筒状部201Jの上端部に一体的に接続されて取り付けられている。また、支持片501の上端部には、周方向の一部が切り欠かれた略円環状の受け部502が設けられている。この受け部502は、軸方向を上下方向に向けた状態で、この受け部502の周方向の一部が筒状部201Jの上端部に一体的に接続されて取り付けられている。
そして、受け部502には、周方向の一部を軸方向に沿って切り欠いた切欠溝部503が形成されている。切欠溝部503は、割卵機100Jの駆動軸309の径寸法より若干大きな幅寸法に形成されている。そして、受け部502の内周面は、割卵機100Jの係止面部507の傾斜角度に等しい傾斜角度を有する被係止面部504とされている。この被係止面部504は、下端側に向けて徐々に縮径した形状に形成されている。したがって、被係止面部504は、割卵機100Jの先端側である、切削刃本体102J側を下方に向けた状態で、この割卵機100Jの駆動軸309を受け部502の切欠溝部503に挿通させることにより、この割卵機100Jの係止面部507を係止し、図19に示すように、割卵機100Jを位置決め保持する構成となっている。
次に、このように構成された割卵機100Jを用いた容器10の製造方法について説明する。
まず、割卵機100Jの先端側を下方に向けた状態としてから、割卵機100Jの駆動軸309を保持具200Jの切欠溝部503に挿通させて、この割卵機100Jの係止面部409を保持具200Jの被係止面部504に載置させて係止させ位置決め保持させる。次いで、卵30の端部を下方に向けた状態とし、この卵30を保持具200Jの位置決め部203Jの中心位置に挿入していき、この卵30の端部を保持具200Jの窪み207Jに嵌合させ、位置決め部203Jにて卵30の長軸方向を上下方向に向けた状態で位置決め保持させる。
この状態で、作業者が割卵機100Jの把持本体101Jのケース体303を把持し、割卵機100Jの昇降スイッチ407を操作して、切削刃本体102Jを下降させていくとともに、割卵機100Jの変速スイッチ408を操作して、切削刃本体102Jを回転駆動させ、この切削刃本体102Jの回転速度を調整する。
そして、割卵機100Jの切削刃本体102Jの刃112Jを、卵30の卵殻20の表面に押し付けていくことにより、切削刃本体102Jの刃112Jの回転にて卵30の卵殻20を研削していき、卵30の卵殻20が切断部31にて切削される。その後、割卵機100Jの変速スイッチ408の操作を止め、切削刃本体102Jの回転駆動を停止させるとともに、割卵機100Jの昇降スイッチ407を操作して、切削刃本体102Jを上昇させる。
次いで、切断部31にて切断された卵30の卵殻21、すなわち本体部11を保持具200Jから取り出し、卵30の卵殻20から切削された台座本体13を、切削刃本体102J内から取り出す。この結果、割卵機100Jによる卵30の卵殻20の切削作業により、卵30の卵殻20から本体部11と台座本体13とが形成される。
この場合においても、割卵機100Jの切削刃本体102Jを、台座部12の切断部32の径寸法に等しい外径寸法とすることにより、卵殻20や台座本体13を切断部32にて切断でき、台座部12を形成できる。また、切削刃本体102Jの代わりに、エッグアートやイースターエッグ作成用の錐や、泡立て器等をアタッチメントとして取り付けてもよい。
(ホールソー割卵機:一体型)
次に、図20を参照して、さらに他の実施形態の割卵機100Kについて詳細に説明する。なお、以下の説明においても、適宜図1ないし図4を参照する。
本実施形態に係る割卵機100Kは、図20に示すように、上述した割卵機100Hと同様の、いわゆるホールソー型の構成であるが、切断部31用の切削刃本体102Kと、切断部32用の切削刃本体102Lとを備えた構成となっている。具体的に、割卵機100Kは、把持本体101Kのケース体303内には、このケース体303の基端側から電源104K、吸気機構400K、およびモータ301Kが同心状に収容されて取り付けられている。ケース体303の基端面、すなわち上端面には、電源104Kから吸気機構400Kおよびモータ301Kへの電力の供給をオンオフするスイッチ105Kと、これら吸気機構400Kおよびモータ301Kの駆動を制御するモードスイッチ106と、が取り付けられている。
そして、ケース体303の周面には、このケース303体内の空気を排気するための複数の排気口601が設けられている。これら排気口601は、ケース体303内に収容されている吸気機構400Kに連通するように形成されている。したがって、吸気機構400Kは、この吸気機構400Kの駆動により、ケース体303の先端側の開口部から吸い込んだ空気を排気口601からケース体303の外部に排気させる構成となっている。さらに、ケース体303の内部には、このケース体303の先端部よりも切削刃本体102K,102Lの刃112K,112Lが基端側に位置するように、これら切削刃本体102K,102Lの刃112K,112Lよりもケース体303の先端部が先端側に向けて突出した状態とされて切削刃本体102K,102Lが取り付けられている。よって、割卵機100Kにて卵30の卵殻20を割卵する際に、卵30が破卵した場合や、例えば子供等の作業者の指等が不用意にケース体303内に入ってしまう等の危険性を防止できる構成となっている。
次いで、モータ301Kには、切削刃本体112K,112Lのそれぞれを同時に連動して回転駆動させる回転軸305Kが回転駆動可能に同心状に取り付けられている。この回転軸305Kは、円筒状に形成されており、ケース体303の同心状に取り付けられている。そして、回転軸305Kの内側には、卵30の卵殻20の外表面に負圧状態を形成して真空吸着して位置決め保持する位置決め機構としての吸着機構602が設けられている。この吸着機構602は、管状の吸着管本体603と、この吸着管本体603の先端部に取り付けられた略円筒状の吸着体604とを、備えている。
吸着機構602の吸着管本体603は、回転軸305Kの内径寸法より小さな外径寸法を有しており、この回転軸305Kの内部に同心状に取り付けられている。さらに、吸着管本体603の基端部は、モータ301Kを挿通して吸気機構400Kに固定されており、この吸気機構400Kの駆動により、吸着管本体603の他端部から吸着管本体603内へ外気を吸気して吸気機構400Kを介してケース体303の排気口601から排気する構成となっている。また、吸着管本体603は、回転軸305Kの長さ寸法より大きな長さ寸法を有しており、この吸着管本体603の先端部が回転軸305Kの先端部より先端側に突出した構成となっている。そして、吸着機構602の吸着体604は、弾性変形可能なゴム材等の弾性材にて構成されており、先端側が徐々に拡径したカップ状に形成されている。そして、この吸着体604は、基端側を吸着管本体603の先端側に外嵌合させて同心状に取り付けられている。なお、吸着体604としては、例えばバネ等の、他の弾性材であってもよい。
また、吸着機構602の吸着管本体603の中心には、先端が尖った錐材602Kが切削刃本体102K,102Lに対して同心状に進退可能に取り付けられている。錐材602Kは、切削刃本体102K,102Lにて卵30の卵殻20や台座本体13を切削する際に用いるのではなく、この錐材602Kを卵30の卵殻20等に貫通させて、例えばエッグアート用の素材を形成する際に用いるものである。すなわち、錐材602Kは、モータ301Kの駆動により、錐材602Kの先端部が吸着管本体603内に収容される位置から、この錐材602Kの先端部を卵30の卵殻20の種々の位置に突き刺すことができる位置、例えば切削刃本体102Kの刃112Kよりも先端側に突出する位置までに亘って進退可能な構成となっている。
一方、回転軸305Kには、卵30の卵殻20を切断部31にて切断するための切削刃本体102Kが同心状に取り付けられている。切削刃本体102Kは、筒状部111Kの基端側が閉塞されて平面状の閉塞部605とされており、この閉塞部605に回転軸305Kが同心状に挿通されて、この回転軸305Kの軸方向における略中間位置に固定されている。また、切削刃本体102Kは、この切削刃本体102Kの刃112Kを、吸着機構602の吸着体604の先端部よりも先端側に突出させた状態で取り付けられている。さらに切削刃本体102Kの刃112Kは、ケース体303の先端部よりも内側に収容されるように取り付けられている。
さらに、回転軸305Kには、卵殻20や台座本体13を切断部32にて切断するための切削刃本体102Lが同心状に取り付けられている。切削刃本体102Lの刃面113Lは、切削刃本体102Kの刃面113Kの外径寸法より小さな外径寸法を有している。また、切削刃本体102Lは、筒状部111Lの基端側が閉塞されて平面状の閉塞部606とされ、この閉塞部606に回転軸305Kが同心状に挿通されて、切削刃本体102Kの閉塞部605が固定された位置よりも回転軸305Kの先端側に固定されている。そして、切削刃本体102Lは、この切削刃本体102Lの刃112Lよりも、吸着機構602の吸着体604の先端部が先端側に突出するように構成されている。
回転軸305Kの基端側には、切削刃本体102K,102Lが受ける圧力を感知するための感圧センサ607が取り付けられている。この感圧センサ607は、略円筒状に形成され回転軸305Kに挿通させた状態でモータ301Kの先端側に取り付けられている。具体的に、感圧センサ607は、切削刃本体102K,102Lが卵30の卵殻20や台座本体13から受ける反力を感知して、これら切削刃本体102K,102Lにて卵30の卵殻20や台座本体13を切削する際における、これら卵殻20または台座本体13のひび割れやつぶれ等の損傷を防止するための圧力感知装置である。さらに、感圧センサ607は、割卵機100Kにて卵30の卵殻20を割卵する際に、卵30が破卵した場合や、例えば子供等の作業者の指等が不用意にケース体303内に入ってしまう等の危険性を防止するものでもある。そして、感圧センサ607には、切削刃本体102K,102Lが卵30の卵殻20や台座本体13から受ける反力が、予め定めた所定の値を超えた場合に、例えばアラーム音を発生させて作業者に認識させる機能を有する制御部609に接続されている。
ここで、モードスイッチ106は、このモードスイッチ106を周方向に回転させることにより、制御部609による制御によって、切削刃本体120Kでの卵30の卵殻20の切削に適した回転速度で切削刃本体120K,120Lを回転させつつ吸気機構400Kを駆動させる大径モードと、切削刃本体120Lでの台座本体13の切削に適した回転速度で切削刃本体120K,120Lを回転させつつ吸気機構400Kを駆動させる小径モードと、錐材602Kを卵30の卵殻20に突き刺す際等に用いる、錐材602Kを進退させる錐モードと、を切り替え可能な構成となっている。
さらに、吸気機構400Kの内部には、この吸気機構400Kの下端側の面から吸い込んだ切削片を空気から分離して回収するためのダストボックスとなる集塵装置107が取り外し可能に取り付けられている。この集塵装置107は、略円環状に形成されており、吸気機構400Kの内部に同心状に取り付けられている。また、この集塵装置107は、吸着機構602の吸着体604から吸着管本体603内へ吸い込んだ切削片についても空気から分離して回収できる構成となっている。なお、集塵装置107にて回収した卵30の卵殻20の切削片については、例えば植物の肥料等として用いることができる。
また、制御部609は、切削刃本体102K,102Lにて卵30の卵殻20や台座本体13の切削時に受ける圧力を感圧センサ607にて感知している状態から、感圧センサ607が感知する圧力が瞬時に小さくなった場合に、モータ301Kへの電力の供給を停止させ切削刃本体102K,102Lの回転駆動を停止させる自動停止機能を有している。この結果、割卵機100Kによる割卵作業で、卵30が破卵した場合等に生じる、ケース体303を把持している作業者の手等の損傷を防止できる。
さらに、制御部609としては、感圧センサ607が感知する圧力に応じて切削刃本体102K,102Lの回転速度を制御してもよい。例えば、切削刃本体102K,102Lにて卵30の卵殻20や台座本体13の切削が進むに連れて回転速度を徐々に高くしていき、これら卵30の卵殻20や台座本体13の切削が完了すると、これら切削刃本体102K,102Lの回転速度を徐々に低くして、その後停止させ、例えば「ぴよぴよ」等の雛のなぎ声を発生させて作業の完了を作業者に伝えるようにする。この結果、割卵機100Kの安全性を高めることができ、作業者が切削刃本体102K,102Lに触れ怪我等することを防止できる。
なお、この感圧センサ607としては、例えばMEMSを用いた圧力センサなどの、受ける圧力を感知できるセンサであれば種々のセンサを用いることができる。
さらに、ケース体303の内周面には、各切削刃本体102K,102Lの刃112K,112Lに対する卵30の卵殻20または台座本体13の向きを検出する向き検出装置としての位置センサ608が取り付けられている。この位置センサ608は、ケース体303の内周面のモータ301Kに対向する位置に取り付けられており、ケース体303の内周面に周方向に向けて等間隔に離間した位置に、複数、例えば3個ほど取り付けられている。そして、位置センサ608には、各切削刃本体102K,102Lの刃112K,112Lの中心軸上に、卵殻20または台座本体13の中心軸が位置した場合に、例えばアラーム音を発生させて作業者に認識させる機能を有する制御部609が接続されている。
このことから、切削刃本体102K,102Lを卵30の卵殻20または台座本体13に押し当てた際における、これら卵30の卵殻20または台座本体13の向きを精度良く合わせることができる。よって、これら卵30の卵殻20または台座本体13を切削する際における位置合わせを容易にできるから、これら卵30の卵殻20または台座本体13を切断部31,32にて切断する作業を精度良く容易にできる。
なお、この位置センサ608としては、三点測量を行うための赤外線センサ、可視光レーザ、傾斜角センサ、水平儀、レーザダイオード、ジャイロ機構、線形変位センサ、小型な測距センサ、小型なレーザ三角測量式の変位センサ、MEMSを用いた光スイッチなど、卵30の卵殻20や台座本体13の向きを確認できるものであれば、種々のセンサを用いることができる。
また、制御部609としては、位置センサ608による検出により、切削刃本体102K,102Lに対する卵30の卵殻20の位置が基準位置(中心軸が一致している位置)から一定以上ずれでいる場合に、ブザー音を出し、かつ切削刃本体102K,102Lの回転を停止させることで、卵30の卵殻20に対する切削刃本体102K,102Lの適切な位置への誘導が可能となる。
さらに、制御部609は、位置センサ608による検出により、切削刃本体102K,102Lに対する卵30の卵殻20の位置が基準位置から一定の範囲内に位置する場合にのみ、吸気機構402Kを駆動させるとともに、切削刃本体102K,102Lを回転駆動させ、卵30の卵殻20の吸着機構602の吸着体604への吸着を可能とし、切削刃本体102K,102Lによる切削作業を行い得る構成としてもよい。このことから、切削刃本体102K,102Lによる切削時に生じる切削片の極小化のみならず、台座本体13から台座部12を作成する切削刃本体102Lによる切削作業をより精度良く行うことが可能となる。
また、制御部609は、作業者が把持本体101Hを把持した状態での自然な位置で、割卵機100Hを斜めに向け、この状態で割卵機100Hの切削刃本体102K,102Lを卵30の卵殻20に当てた場合に、位置センサ608による検出により正確な位置を誘導する手振れ補正機能を有していてもよい。
そして、割卵機100Kの切削刃本体102Lにて台座本体13を切断部32で切り取って開口する際には、保持具200Kが用いられる。この保持具200Kは、台座本体13の基端側の外径寸法、すなわち切断部31の径寸法に等しい外径寸法を有している。また、保持具200Kは、割卵機100Kの軸方向において、ケース体303の先端部と切削刃本体102Lの先端部との間の間隔寸法よりも大きな高さ寸法を有している。さらに、保持具200Kは、台座本体13の外径寸法より小さな内径寸法を有する筒状部201Kと、この筒状部201Kの底部側を閉塞する底面部202Kとで構成された有底円筒状に形成されている。
なお、割卵機100Kの構成は、切削刃本体102K,102Lにより、一つの卵30の卵殻20から、本体部11となる卵殻21と、台座部12となる卵殻22のそれぞれを形成できる構成であれば、どのような構成であってもよい。
次に、このように構成された割卵機100Kを用いた容器10の製造方法について説明する。
まず、割卵機100Kのスイッチ105Kをオンしてモードスイッチ106を大径モードにして吸気機構400Kを駆動させる。すると、回転軸305Kの回転駆動により切削刃本体112K,112Lが連動して回転駆動する。また同時に、吸気機構400Kによる吸気によって、吸着機構602の吸着体604の先端側から吸着管本体603内に空気が吸い込まれていくとともに、ケース体303と切削刃本体112Kとの間の空気が吸い込まれていき、これら吸い込まれた空気がケース体303の排気口601からケース体303の外部に排気される。
この状態で、作業者が割卵機100Kのケース体303を把持し、この割卵機100Kの吸着機構602の吸着体604の中心に卵30の気室側の中心が位置するように、割卵機110Kを卵30に近づけていく。このとき、切削刃本体102K,102Lの刃112K,112Lの中心軸上に卵30の卵殻20の中心軸が位置すると、基準位置と判断されて位置センサ608が作用して、例えばアラーム音が発生し、これら切削刃本体112K,112Lに対する卵30の精度の良い位置合わせが可能となる。
その後、割卵機110Kをさらに卵30に近づけていき、割卵機100Kの吸着機構602の吸着体604を卵30の気室側の中心位置に吸着させる。このとき、吸気機構400Kによる吸気によって、ケース体303と切削刃本体112Kとの間の空気が吸い込まれていき、これら吸い込まれた空気がケース体303の排気口601からケース体303の外部に排気される。
この後、割卵機100Kの吸着機構602の吸着体604を卵30に押し付けていくと、この吸着機構602の吸着体604が弾性変形して、切削刃本体102Kの刃112Kが卵30の卵殻20の表面に接触する。このとき、吸着機構602の吸着体604の中心に卵30の卵殻20気室側の中心が位置した状態とされて位置決め保持されるため、切削刃本体102Kを卵30の卵殻20に押し当てた際における卵殻20の向きや位置を精度良く合わせできるから、卵30の卵殻20に開口部14を形成する際の位置合わせの最適化や、最適位置以外での誤侵入、すなわち誤った位置での切断を防止できる。したがって、卵30の卵殻20に開口部14を形成する作業を精度良く容易に行うことができる。
さらに、この割卵機100Kを卵30に押し付けていくと、切削刃本体102Kの刃122Kにて卵30の卵殻20の表面が切断部31にて切断される。このとき、この切削刃本体102Kによる卵30の卵殻20の切断時に生じる切削片は、ケース体303と切削刃本体112Kとの間に吸い込まれていき、吸気機構400K内の集塵装置107にて回収される。
この結果、吸着機構602の吸着体604に台座本体13が吸着された状態となり、卵殻21、すなわち本体部11が形成される。このとき、切削刃本体102Kが卵30の卵殻20から受ける圧力が感圧センサ607にて感知され、この圧力が予め定めた所定の値を超えた場合に、例えばアラーム音が発生し、切削刃本体102Kにて卵30の卵殻20を切削する際における、卵殻20のひび割れやつぶれ等が防止される。
そして、本体部11を割卵機100Kから取り除いた後、モードスイッチ106を操作して小径モードとしてから、この割卵機100Kの吸着機構602に吸着されている台座本体13の中心に保持具200Kの中心が位置するように、この割卵機100Kを保持具200Kに近づけていく。このとき、切削刃本体102K,102Lの中心軸上に保持具200Kの中心軸が位置すると位置センサ608が作用して、例えばアラーム音が発生し、これら切削刃本体112K,112Lに対する保持具200Kの精度の良い位置合わせが可能となる。
さらに、割卵機100Kの吸着機構602に吸着されている台座本体13を保持具200Kの上面に近づけていくと、吸着機構602の吸着体604がさらに弾性変形して、切削刃本体102Lの刃112Lが台座本体13の表面に接触する。この状態から割卵機100Kを保持具200Kに押し付けていくと、切削刃本体102Lの刃122Lにて台座本体13の表面が切断部32にて切断される。この結果、吸着機構602の吸着体604に卵殻23が吸着された状態となり、卵殻22、すなわち台座部12が形成される。このとき、切削刃本体102Lが台座本体13から受ける圧力が感圧センサ607にて感知され、この圧力が予め定めた所定の値を超えた場合に、例えばアラーム音が発生し、切削刃本体102Lにて台座本体13を切削する際における、台座本体13のひび割れやつぶれ等が防止される。
この結果、割卵機100Kによる卵30の卵殻20の切削作業により、卵30の卵殻20から本体部11および台座部12が形成される。したがって、外径寸法の異なる刃112K、112Lを有する複数台の割卵機を用いることなく、1台の割卵機100Kのみで、卵30の卵殻20から本体部11および台座部12を製造することができる。
さらに、割卵機100Kにて卵30の卵殻20の一部に小さな穴をあけてエッグアートの素材を形成する場合には、割卵機100Kのスイッチ105Kをオンしてモードスイッチ106を錐モードにする。すると、モータ301Kの駆動により、吸着管本体603内に収容された位置から切削刃本体102Kの刃112Kよりも先端側に突出する位置まで錐材602Kが進出していく。この状態で、錐材602Kを卵30の卵殻20の気室側の中心位置等に貫通させることにより、この卵30の卵殻20に小さな穴を空けることができる。そして、この小さな穴から卵殻20内の卵液を取り出すことにより、この卵殻20をエッグアート用の素材として用いることができる。
その後、割卵機100Kのスイッチ105Kをオフする。すると、モータ301Kの駆動により、切削刃本体102Kの刃112Kよりも先端側に突出した位置から吸着管本体603内に収容される位置へ錐材602Kが後退していき、この吸着管本体603内に錐材602Kが収容される。したがって、錐材602Kを使用するとき以外は、吸着管本体603内に錐材602Kが収容されるため、この錐材602Kが突出していることに伴う、作業者の損傷等を防止することができる。
なお、割卵機100Kにおいては、切削刃本体102K,102Lの中心に対する卵30の卵殻20の中心を位置決めする位置決め機構として吸着機構602を用いているが、図21に示すさらに他の実施形態のように、細長いコアドリル602Mを切削刃本体102Mの中心に同心状に取り付けて、位置決め機構として用いることもできる。この場合は、コアドリル602Mを卵30の卵殻20の中心位置に貫通させることにより、切削刃本体102Mの中心に対する卵30の卵殻20の中心を位置決めできる。
また、図22に示すさらに他の実施形態のように、先端が尖った錐材602Nのみを切削刃本体102Nの中心に同心状に取り付けて、位置決め機構として用いることもできる。この場合においても、切削刃本体102Nにて卵30の卵殻20を切削する前に、錐材602Nを卵30の卵殻20の中心位置に貫通させることにより、切削刃本体102Nの中心に対する卵30の卵殻20の中心を位置決めできる。なお、位置決め機構としては、円盤状の弾性を有するシート体の中心位置に放射線状の複数の切れ込みが入った構成としてもよい。
さらに、割卵機100Kでは、吸気機構400による吸気によって、切削刃本体102Kでの卵30の卵殻20の切断時に生じる切削片を、ケース体303と切削刃本体112Kとの間へ吸い込んでケース体303の排気口601から外部へ排出させる構成としている。ただし、この構成に限らず、図23に示すさらに他の実施形態のように、切削刃本体102Pの内側に、この切削刃本体102Pの内面に沿った吸気用壁面部701を設け、この切削刃本体102Pでの卵30の卵殻20の切断時に生じる切削片を、切削刃本体102Pと吸気用壁面部701との間へ吸い込んで排出させる構成にしても良い。
この場合、吸気用壁面部701は、切削刃本体102Pの筒状部111Pより外径寸法が小さな円筒状の内周面部702と、この内周面部702の基端側を閉塞する平板状の閉塞面部703と、この閉塞面部703の中心位置に開口した循環口704と、この循環口704に連通して基端側に突出した円筒状の循環路705とで構成されている。そして、吸気用壁面部701の内周面部702は、この内周面部702の先端部を切削刃本体102Pの先端部よりも基端側にずらした位置として、切削刃本体102Pの内部の中心位置に同心状に設置されている。閉塞面部703は、切削刃本体102Pの閉塞部605Pとの間に所定の空間ができるように、この切削刃本体102Pの閉塞部605Pから所定の間隔を先端側に離した位置に、この閉塞部605Pの中心位置に同心状に取り付けられている。循環路705は、切削刃本体102Pの回転軸305Pの内部に挿通されており、この回転軸305Pの内部に同心状に取り付けられている。
そして、切削刃本体102Pは、吸着機構602Pの吸着管本体603Pと吸気用壁面部701の循環路705との間から吸気用壁面部701の内部へ外気が吸気される構成とされている。したがって、図23に示すように、切削刃本体102Pの吸着機構602Pの吸着体604Pを卵30の卵殻20に吸着させ、切削刃本体102Pの刃112Pを卵30の卵殻20に押し当てて切削する際には、吸気用壁面部701の内部へ吸気された空気が、吸気用壁面部701の内周面部702の先端部と卵30の卵殻20の表面との間の隙間が集塵口となり、この集塵口から切削刃本体102Pの筒状部111Pと吸気用壁面部701の内周面部702との間の空間へ吸い込まれていく。そして、切削刃本体102Pの閉塞部605Pと吸気用壁面部701の閉塞面部703との間の空間を介して、切削刃本体102Pの回転軸305Pと吸気用壁面部701の循環路705との間の空間から外部へ排気されていく。
したがって、切削刃本体102Pにて卵30の卵殻20を切削する際に生じる切削片を、切削刃本体102Pの内部から外部へ排出でき、切削時に生じる切削片の切断部31から卵殻20の内部への侵入を効率良く防止できる。よって、卵殻20内の卵黄および卵白への切削片の混入を防止できるから、これら卵黄および卵白の利用が容易になる。
なお、切削刃本体102Pの先端部に対する、吸気用壁面部701の内周面部702の先端部との位置をより先端側にずらすことによって、これら切削刃本体102Pと内周面部702との間への吸込み角度を鋭角にでき吸気圧を高くできる。一方、切削刃本体102Pの先端部に対する、吸気用壁面部701の内周面部702の先端部との位置をより基端側にずらすことによって、切削刃本体102Pと内周面部702との間への吸込み角度を鈍角にでき吸気圧を低くできる。
(ホールソー割卵機:産業用)
次に、図24を参照して、さらに他の実施形態の割卵機100Qについて詳細に説明する。なお、以下の説明においても、適宜図1ないし図4を参照する。
本実施形態に係る割卵機100Qは、基本的には上述した割卵機100Gと同様の構成であるが、いわゆるホールソー型の切削刃本体102Qを複数、例えば計8本を備えた構成となっている。具体的に、割卵機100Qは、複数、例えば計8本の切削刃本体102Qを有する切削刃群140Qと、この切削刃群140のすべての切削刃本体102Qを同時に連動して回転駆動させる駆動機構801とを備えている。切削刃群140Qは、矩形平板状の支持板141Qを有し、この支持板141Qの下面に各切削刃本体102Qの刃112Qを下方に向けた状態として等間隔に格子状に並べて取り付けられている。
また、切削刃群140Qの各切削刃本体102Qは、切断部31の径寸法に等しい外径寸法を有している。そして、切削刃群140Qの支持板141Q上に駆動機構801が取り付けられている。駆動機構801は、各切削刃本体102Qを回転駆動させるための駆動装置となるモータ802を備えている。さらに、支持板141Qは、一対のフレーム142Q間に昇降可能に取り付けられている。このフレーム142Qには、切削刃群140を昇降駆動させるモータ143Qと、モータ143Q,802に電力を供給する電源104Qと、が取り付けられている。
また、切削刃群140Qの支持板141Qの下面に対応する位置には、複数、例えば計8個の卵30を位置決め保持する保持具200Qが設置されている。この保持具200Qは、支持板141Qとほぼ同じ大きさの保持板145Qを備え、この保持板145Qの上面に卵30が等間隔に格子状に位置決め保持される構成となっている。すなわち、保持具200Qは、保持した各卵30の中心に、各切削刃本体102Qの刃112Qが接触し、これら各切削刃本体102Qの刃112Qの中心に対向する位置に、各卵30の長軸方向を上下方向に沿わせた状態として保持する構成とされている。
したがって、保持具200Qの保持板145Q上に、卵殻20の長軸方向を上下方向に沿わせた状態で計8個の卵30を並べて保持させる。そして、電源104Qからモータ802に電力を供給して各切削刃本体102Qのそれぞれを回転駆動させる。この状態で、電源104Qからモータ143Qに電力を供給して支持板141Qを降下させていくことにより、各切削刃本体102Qの刃112Qが各卵30の卵殻20の表面に接触し、これら各切削刃本体102Qの回転駆動により各卵30の卵殻20を切断部31にて切断できる。よって、割卵機100Qによる卵30の卵殻20の切削作業により、複数、例えば8個の本体部11および台座本体13を同時に形成できる。このことから、複数の卵30の卵殻20の開口作業を容易に行うことができ、複数の卵30の卵殻20に開口部14を形成するための割卵機100Qの使い勝手を向上することができる。
なお、本割卵機100Qの切削刃本体102Qを、切断部32の径寸法に等しい外径寸法にすることにより、同時に複数の卵殻20または台座本体13を切断部32にて切断する構成にすることもできる。
[乾燥用治具]
次に、図25および図26(A)を参照して、本発明の実施形態に係る容器10の製造工程に用いる乾燥用治具900について詳細に説明する。なお、以下の説明においても、適宜図1ないし図4を参照する。
本実施形態に係る乾燥用治具900は、複数、例えば計12個の本体部11となる卵殻21を乾燥させるための乾燥用トレイであり、主として、これら卵殻21の外表面21a等に塗布されたコーティング剤を自然乾燥させるために用いられる。具体的に、乾燥用治具900は、矩形平板状のプレート901を備えている。プレート901には、複数、例えば計12本の細長円柱状である棒状の支柱902が垂直に取り付けられている。これら支柱902は、これら支柱902の軸方向を鉛直方向に沿わせた状態とし、これら支柱902の一端部である下端部を、プレート901上に挿入させる等して固定されている。
また、これら支柱902は、プレート901上に等間隔に格子状に並べて配置されており、これら各支柱902は、図25に示すように、これら各支柱902の上端側に、卵殻21の開口部14から、これら卵殻21内へ各支柱902の先端部を挿入させて、これら各支柱902に卵殻21を係止させた状態で、これら各卵殻21の外表面21a同士が接触、すなわち擦れ合わない、例えば25mm〜30mm程度の間隔を空けて取り付けられている。すなわち、これら支柱902は、卵30の長軸方向に直交する径方向における最大径寸法の2倍程度の間隔を空けて取り付けられている。
さらに、これら支柱902の先端部には、これら支柱902に係止された卵殻21の割れやひびの発生、すなわち損傷を防止するための緩衝部材903がそれぞれ取り外し可能に取り付けられている。これら緩衝部材903は、例えばスポンジやゴム等の弾性を有する素材にて、例えば直径15mm程度の半球状に形成されている。また、これら緩衝部材903は、卵殻21の開口部14の径寸法より小さく、かつ卵殻22の開口部15の径寸法より大きな外径寸法に形成されている。そして、これら緩衝部材903は、平面部904側を下方に向けた状態とし、この平面部904側の中心位置に支柱902の上端部が挿入される等して、これら支柱902の上端部に同心状に固定されている。これら緩衝部材903の球面部905は、支柱902にて卵殻21を係止している状態で、これら支柱902の上端部を回転中心とする、各卵殻21の回転や揺れを防止する形状、すなわち、卵殻21の端部側の内表面21bの形状に略等しい形状の球面状に形成されている。
したがって、本体部11となる卵殻21の外表面21a等に塗布されたコーディング剤を自然乾燥させる際には、まず、各卵殻21の開口部14を下方に向けた状態とする。その後、これら各卵殻21の開口部14に乾燥用治具900の支柱902の上端部を挿入させるようにして、これら各卵殻21の内表面21bのうちの開口部14に対向する部分に、緩衝部材903の球面部905を同心状に位置させて載置させる。この状態で、予め定めた所定の時間に亘って自然放置することによって、乾燥用治具900にて保持されている各卵殻21の外表面21a等に塗布されているコーティング剤を自然乾燥させることができる。
この自然乾燥の際に、何等かの衝撃や風等の影響により、各支柱902にて保持されている卵殻21が各支柱902の先端部を中心として回転したり揺れてしまった場合であっても、卵殻21の外表面21a同士が接触しない程度の間隔を空けて各支柱902が取り付けられているため、これら卵殻21の外表面21a同士が接触しない。したがって、これら卵殻21の外表面21a同士が接触することで生じ得る、これら卵殻21の割れや欠け等の破損を適切に防止できる。同時に、これら卵殻21の外表面21aに塗布されたコーティング剤同士が接触することで生じ得る、コーティング剤の剥がれや表面の波打ち等を防止できる。よって、これら卵殻21の外表面21aに塗布されたコーティング剤を均一な厚さでなめらかな表面のまま乾燥させることができるから、このコーティング剤の適切な乾燥処理を容易に行うことができる。
さらに、台座部12となる卵殻22の開口部15を上方に向けた状態とし、この状態で、卵殻22の切断部31側に乾燥用治具900の支柱902の上端部を挿入させるようにすることによって、これら各卵殻22の開口部14に対して同心状となるように、これら各卵殻22の内表面22bに緩衝部材903の球面部905を対向させて位置させて載置させることができる。したがって、この状態で、予め定めた所定の時間に亘って自然放置することにより、乾燥用治具900にて保持されている各卵殻22の外表面22a等に塗布されているコーティング剤を適切に自然乾燥させることができる。したがって、台座部12であっても、台座部12となる卵殻22の外表面22a等に塗布されているコーティング剤の適切な乾燥処理を容易に行うことができる。
なお、図25および図26(A)に示す乾燥用治具900では、緩衝部材903の形状を半球状としているが、例えば図26(B)に示す緩衝部材903Rのように平面視正方形の平板状としてもよい。すなわち、緩衝部材903,903Rの形状は、本体部11や台座部12を適切に自然乾燥できる形状であれば、例えば、図27(A)に示すような使用時に開くことができる傘のような形状の緩衝部材903Sや、図27(B)に示すような先端側に向けて徐々に縮径したコイル状の緩衝部材903T、図27(C)に示すような支柱の先端部から複数、例えば3本の係止片906Aが等間隔に斜め上方に突出した形状の緩衝部材903Uなど、どのような形状であってもよい。そして、この緩衝部材903Uにおいては、これら3本の係止片を連結する平面視三角形状の連結片906Bが設けられている。この連結片906Bは水平な直線状に設けられており、計3本の係止片906Aのそれぞれを水平位置で連結している。また、乾燥用治具900を、例えばスチームコンベクションオーブンレンジ等の加熱装置に入れて、乾燥用治具900にて保持した卵殻21,22を加熱乾燥させることもできる。
次に、図28を参照して、さらに他の乾燥用治具900Vについて詳細に説明する。なお、以下の説明においても、適宜図1ないし図4を参照する。
本実施形態に係る乾燥用治具900Vは、基本的には上述した乾燥用治具900と同様の構成であるが、本体部11となる卵殻21を乾燥させるための各支柱902の間に、台座部12となる卵殻22を乾燥させるための支柱907が等間隔に格子状に設けられている。そして、これら各支柱907の先端部には、二股に分れた係止片部908が設けられ、これら各係止片部908のいずれか一方の先端部を卵殻22の切断部31側から挿入して、この卵殻22の内表面22bを係止させて、この卵殻22を乾燥できる構成となっている。
すなわち、各支柱902は、支柱907より長く形成されており、これら支柱907の係止片部908のいずれか一方に卵殻22を係止させた状態であっても、各支柱902の緩衝部材903にて保持している各卵殻21が、これら各卵殻22に接触しない程度の長さ寸法に形成されている。さらに、各支柱907の係止片部908の間には、これら係止片部908に卵殻22を係止させた際の、この卵殻22の支柱907への接触を防止して、この卵殻の損傷を防止する連結片部909が取り付けられている。
この連結片部909は、中心部が上方に突出した側面視逆Vの字状に形成されており、この連結片部909の両端部が各係止片部908の長さ方向の略中心位置に接続されて取り付けられている。そして、連結片部909は、係止片部908のいずれか一方の先端部を卵殻22の切断部31側から挿入し、この卵殻22の内表面22bを係止させた際に、この卵殻22の内表面22bに連結片部909の屈曲した頂点部909Aが接触して係止し、この頂点部909Aと係止片部908との2点の係止により、仮に卵殻22が揺れたとしても支柱907に接触したり引っ掛かったりしないように卵殻22を係止する構成となっている。なお、連結片部909は、仮に卵殻22が揺れたとしても支柱907に接触したり引っ掛かったりしない形状であれば、例えば上方に突出する円弧状などといった、どのような形状であっても良い。
したがって、乾燥用治具900Vの各支柱902の緩衝部材903のそれぞれに卵殻21を保持させるとともに、この乾燥用治具900Vの各支柱907のいずれか一方の係止片部908および連結片部909に卵殻22を係止させることによって、本体部11となる卵殻21と同時に、台座部12となる卵殻22を乾燥させることができるから、乾燥用治具900Vの使い勝手を向上できる。
[実施例]
次に、本発明に係る容器10の製造工程において、コーティング層16,17として用いられるコーティング剤の実施例について詳細に説明する。なお、以下の説明においても、適宜図1ないし図4を参照する。
(実施例1:7.5重量%プルラン水溶液)
まず、コーティング層16の第1の層18のコーティング剤として用いるプルラン水溶液として、プルラン(株式会社林原製)の含有率が純水に対し7.5重量%のプルラン試験液1を用意し、試験用容器に入れて保存した。同時に、シェラックとエタノールとが重量比で32:68の割合で混合されたシェラック液(ラックグレース32E:日本シェラック工業株式会社製)を用意した。このとき、外気温25℃で、湿度65%であった。
次いで、切断部31にて切断した卵殻21を複数、例えば2個用意して卵殻A,Bとし、これら卵殻A,Bの開口部14を下方に向け、各卵殻A,Bの開口部14の開口縁に、約5〜10mm程度の幅ほどプルラン試験液1が付着するように、これら卵殻A,Bの開口部14をプルラン試験液1に5秒間浸漬させた。
この後、各卵殻A,Bの開口部14に付着しているプルラン試験液1の付着程度を目視にて確認し、プルラン試験液1が過剰に付着している場合には、卵殻A,Bの開口部14に付着しているプルラン試験液1を拭き取る等して、これら卵殻A,Bの開口部14に付着しているプルラン試験液1の量を調整した。
この状態で、各卵殻A,Bの開口部14を下方に向けた状態で、これら各卵殻A,Bを支柱(図示しない)にて係止し、例えばオーブン(製菓用オーブン:株式会社ワールド精機製)を用いて120℃の温度で、各卵殻A,Bの開口部14に付着しているプルラン試験液1を加熱乾燥させた。このとき、プルラン試験液1自身の自重により、卵殻A,Bの外表面21aに付着しているプルラン試験液1が下方へ移動していき、各卵殻A,Bの端面21cでのプルラン試験液1の厚みが厚くなることから、卵殻A,Bの外表面21aに薄く付着しているプルラン試験液1は約2分程度の加熱乾燥で乾燥するものの、各卵殻A,Bの端面21cに厚く付着しているプルラン試験液1は、乾燥するまでに、卵殻Aが6分30秒、および卵殻Bが7分30秒の時間を要した。
そして、プルラン試験液1が乾燥し開口部14の開口縁に第1の層18が形成された各卵殻A,Bの開口部14を下方に向け、各卵殻A,Bの開口部14の開口縁に、約5〜10mm程度の幅ほどシェラック液が付着するように、これら卵殻A,Bの開口部14をシェラック液に5秒間浸漬させた。よって、各卵殻A,Bの開口部14の開口縁に形成した第1の層18の表面全体にシェラック液が付着した状態となる。
この後、各卵殻A,Bの第1の層18上に付着しているシェラック液の付着程度を目視にて確認し、シェラック液が過剰に付着している場合には、卵殻A,Bの第1の層18上に付着しているシェラック液を拭き取る等して、各卵殻A,Bの第1の層18上に付着しているシェラック液の量を調整した。
この状態で、各卵殻A,Bの開口部14を下方に向けた状態で、これら各卵殻A,Bを支柱(図示しない)にて係止し、例えばオーブン(製菓用オーブン:株式会社ワールド精機製)を用いて120℃の温度で加熱して、各卵殻A,Bの第1の層18上のシェラック液を乾燥させた。このときもまた、シェラック液自身の自重により、卵殻A,Bの外表面21a部分に付着しているシェラック液が下方へ移動していき、各卵殻21の端面21cでのシェラック液の厚みが厚くなることから、卵殻21の外表面21aに薄く付着しているシェラック液は約1〜2分程度の加熱乾燥で乾燥するものの、各卵殻A,Bの端面21cに厚く付着しているシェラック液は、乾燥するまでに5分間の時間を要した。この結果、各卵殻A,Bの開口部14の開口縁に第1の層18と第2の層19とが形成されコーティング層16となる。
(実施例2〜5:12.5〜25重量%プルラン水溶液)
次に、第1の層18のコーティング剤として用いるプルラン水溶液として、プルランの含有率が純水に対し12.5重量%、15.0重量%、17.5重量%、および25重量%と変化させたプルラン試験液2ないし5を用意した。そして、これらプルラン試験液2ないし5について、上記実施例1と同様の方法で、これらプルラン試験液2ないし5の乾燥に要する時間を、実施例2ないし5として行った。
この結果、表1に示すように、プルラン含有率を純水に対し12.5重量%としたプルラン試験液2の場合は、プルラン試験液2が乾燥するまでに、卵殻Aが9分、および卵殻Bが9分30秒の時間を要した(実施例2)。また、プルラン含有率が15重量%のプルラン試験液3では、乾燥までに、卵殻Aが12分、および卵殻Bが12分30秒の時間を要した(実施例3)。さらに、プルラン含有率を17.5重量%としたプルラン試験液4では、乾燥までに、卵殻Aが14分、および卵殻Bが15分30秒の時間を要し(実施例4)、プルラン含有率を25重量%としたプルラン試験液5では、乾燥までに、卵殻Aが19分、および卵殻Bが18分の時間を要した(実施例5)。
なお、卵殻A,Bの外表面21aに形成した第1の層18の表面に積層させたシェラック液が乾燥するまでの時間は、上記実施例1ないし5のいずれにおいても5分であり、一定の時間であった。
上記実施例1ないし5の結果、純水に対するプルランの含有率を17.5重量%より高くすると、卵殻21に対するプルランの付着量が多くなり過ぎ、卵殻21の端面21c部分にプルラン水溶液の液だまりができやすくなるため、卵殻21に付着させたプルラン水溶液の乾燥時間が長くなってしまう。これに対し、純水に対するプルランの含有率を12.5重量%より低くすると、卵殻21に対するプルランの付着性が低くなり過ぎてしまい、卵殻21の外表面21a等から第1の層18が剥がれやすくなってしまう。
したがって、卵殻21に対する付着性および乾燥時間の観点から、純水に対するプルランの含有率は12.5重量%以上17.5重量%以下が好ましいことが分かった。さらに、純水に対するプルランの含有率を15重量%とすると、卵殻21に対して適切な付着性を確保でき比較的短時間で乾燥できるから、特に好ましいことが分かった。