以下、実施の形態について図面を参照しながら説明する。ただし、実施の形態は多くの異なる態様で実施することが可能であり、趣旨及びその範囲から逸脱することなくその形態及び詳細を様々に変更し得ることは当業者であれば容易に理解される。従って、本発明は、以下の実施の形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。
(実施の形態1)
本実施の形態では、本発明の一態様に係る蓄電装置に用いる負極、電解液の電解質及び溶媒について説明する。また負極の製造方法について説明する。
[負極構造1]
図1(A)は負極を俯瞰した図であり、図1(B)は図1(A)の破線で囲んだ部分の断面を示す図である。負極100は、負極集電体101上に負極活物質層102が設けられた構造である。なお、図では負極集電体101の両面に負極活物質層102が設けられているが、負極集電体101の片面のみに負極活物質層102が設けられていてもよい。また、負極活物質層102は、負極活物質を有する。
負極集電体101には、金、白金、亜鉛、鉄、銅、チタン、タンタル、マンガン等の金属、及びこれらの合金(ステンレスなど)など、導電性の高く、リチウムイオン等のキャリアイオンと合金化しない材料を用いることができる。また、シリコンと反応してシリサイドを形成する金属元素で形成してもよい。シリコンと反応してシリサイドを形成する金属元素としては、ジルコニウム、チタン、ハフニウム、バナジウム、ニオブ、タンタル、クロム、モリブデン、タングステン、コバルト、ニッケル等がある。負極集電体101は、箔状、板状(シート状)、網状、円柱状、コイル状、パンチングメタル状、エキスパンドメタル状等の形状を適宜用いることができる。負極集電体101は、例えば、厚みが5μm以上30μm以下、より望ましくは、厚みが8μm以上15μm以下のものを用いるとよい。なお、負極集電体101は、一例としては、全域にわたって、厚さが、5μm以上30μm以下、より望ましくは、厚みが8μm以上15μm以下であることが望ましい。ただし、本発明の実施形態の一態様は、これに限定されない。例えば、負極集電体101は、少なくとも一部において、厚さが、5μm以上30μm以下、より望ましくは、厚みが8μm以上15μm以下の領域を有していてもよい。または、負極集電体101は、望ましくは、負極集電体101の50%以上の領域において、より望ましくは、厚さが、5μm以上30μm以下、より望ましくは、厚みが8μm以上15μm以下の領域を有していてもよい。
負極活物質には、キャリアイオンとの合金化、脱合金化反応により充放電反応を行うことが可能な金属を用いることができる。キャリアイオンがリチウムイオンである場合、該金属として、例えば、Mg、Ca、Al、Si、Ge、Sn、Pb、As、Sb、Bi、Ag、Au、Zn、Cd、Hg等を用いることができる。このような金属は黒鉛に対して容量が大きく、特にSi(シリコン)は理論容量が4200mAh/gと飛躍的に高い。このため、負極活物質にシリコンを用いることが好ましい。このような元素を用いた化合物材料としては、例えば、SiO、Mg2Si、Mg2Ge、SnO、SnO2、Mg2Sn、SnS2、V2Sn3、FeSn2、CoSn2、Ni3Sn2、Cu6Sn5、Ag3Sn、Ag3Sb、Ni2MnSb、CeSb3、LaSn3、La3Co2Sn7、CoSb3、InSb、SbSn等が挙げられる。
また、負極活物質として、二酸化チタン(TiO2)、リチウムチタン酸化物(Li4Ti5O12)、リチウム−黒鉛層間化合物(LixC6)、五酸化ニオブ(Nb2O5)、酸化タングステン(WO2)、酸化モリブデン(MoO2)等の酸化物を用いることができる。
また、負極活物質として、リチウムと遷移金属の窒化物である、Li3N型構造を持つLi3−xMxN(M=Co、Ni、Cu)を用いることができる。例えば、Li2.6Co0.4N3は大きな充放電容量(900mAh/g)を示し好ましい。
リチウムと遷移金属の窒化物を用いると、負極活物質中にリチウムイオンを含むため、正極活物質としてリチウムイオンを含まないV2O5、Cr3O8等の材料と組み合わせることができ好ましい。なお、正極活物質にリチウムイオンを含む材料を用いる場合でも、あらかじめ正極活物質に含まれるリチウムイオンを脱離させておくことで、負極活物質としてリチウムと遷移金属の窒化物を用いることができる。
本実施の形態では、負極活物質にシリコンを用いる。シリコンは、非晶質(アモルファス)シリコン、微結晶シリコン、多結晶シリコン又はこれらの組み合わせを用いることができる。一般に結晶性が高い程シリコンの電気伝導度が高いため、導電率の高い電極として、蓄電装置に利用することができる。一方、シリコンが非晶質の場合には、結晶質に比べてリチウムイオン等のキャリアイオンを吸蔵することができるため、放電容量を高めることができる。
負極活物質層102は、導電助剤を有すると好ましい。負極活物質層102が導電助剤を有することで、負極活物質層102の電子伝導性が向上する。該導電助剤としては、アセチレンブラック粒子、ケッチェンブラック粒子、カーボンナノファイバー等のカーボン粒子、グラフェンなど、様々な導電助剤を用いることができる。
また、負極活物質層102は、結着剤(バインダ)を有してもよい。該結着剤(バインダ)を用いることにより、負極活物質と導電助剤等の結着性や、負極活物質と集電体との結着性を向上させることができる。結着剤には、代表的なポリフッ化ビニリデン(PVDF)の他、ポリイミド、ポリテトラフルオロエチレン、ポリビニルクロライド、エチレンプロピレンジエンポリマー、ブタジエンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、ブチルゴム、アクリロニトリル−ブタジエンゴム、フッ素ゴム、ポリ酢酸ビニル、ポリメチルメタクリレート、ポリエチレン、ポリプロピレン、ニトロセルロース等を用いることができる。特に、負極活物質に充放電に伴う体積変化の顕著なシリコン等を用いた場合、結着性に優れるポリイミドを用いることで、負極活物質どうし、負極活物質と導電助剤、負極活物質と集電体、及びグラフェンと集電体それぞれの結着性を向上させることができる。これにより、負極活物質の剥脱や微粉化を抑制して良好な充放電サイクル特性を得ることができる。
シリコンを活物質に用いた負極は、電極電位が非常に低いために還元力が強い。したがって、有機溶媒を電解液に用いた場合、充放電の際にシリコンの表面で還元分解が起こる場合がある。分解反応は不可逆反応であるため、充放電効率が低下し、容量の低下を招くことが問題となっている。
ここで、シリコンの粒径について述べる。導電助剤に対してシリコン粒子が大きい場合には、導電助剤と均一に混ぜることが難しく、良好な導電パスを形成することができない。そのため、充放電に伴うシリコンの膨張および収縮により導電パスを失ってしまい容量が低下する。また、粒径が大きい場合には、体積膨張に対して表面積が小さいために表面に生じる応力が大きくなり、粒子にクラックなどが発生しやすい。一方、シリコンの粒径が小さすぎる場合には、シリコンの表面積が増大して電解液の分解反応が増大するため、充放電効率が低下し、やはり容量が低下する。よって、シリコンの粒径はある最適値を有する。例えば、シリコンの粒径は好ましくは0.001μm以上7μm以下、より好ましくは0.1μm以上3μm以下、さらに好ましくは0.3μm以上3μm以下のものを用いるとよい。
また、フレキシブルな表示装置や電子機器などに適用する際、可撓性を有する部位(筐
体の全部または一部)に二次電池などの蓄電装置を設け、その部位と共に蓄電装置を曲げる場合においても、蓄電装置に曲げなどの変形を繰り返すことで、蓄電装置内部の集電体と活物質との間で剥がれが生じ、蓄電装置の劣化が促進される恐れもある。シリコンの粒径を最適化し、シリコンと導電助剤を均一に混ぜることにより、良好な導電パスを形成し、変形の繰り返しの後においても良好な導電パスを保つことができる。
また、不純物を添加してシリコンの導電率を高めることにより、電極内の電池反応の不均一を減らすことができる。添加する不純物として、例えば、n型を付与する不純物としては、リン(P)、ヒ素(As)などが挙げられ、p型を付与する不純物としては、ホウ素(B)、アルミニウム(Al)、ガリウム(Ga)などが挙げられる。例えば、ここでシリコンの抵抗率は、好ましくは10−4[Ω・cm]以上50[Ω・cm]以下、より好ましくは10−3[Ω・cm]以上20[Ω・cm]以下である。不均一な反応の例としては、局所的に充放電深度が高くなりリチウム析出が生じることが挙げられる。析出したリチウムが再度、溶出してイオン化できない場合には容量の低下を招いてしまう。
本発明の一態様である蓄電装置には、上記の負極を用いることができる。
[負極構造1の製造方法]
本実施の形態では、活物質としてシリコンを用いる。
上述の粒径のシリコンは、例えばシリコンウェハなどの粒状ではないシリコンを粉砕することによって得ることもできる。または、大きい粒径のシリコンを粉砕し、所望の粒径のシリコンを得てもよい。粉砕方法としては例えば、乳鉢による粉砕や、ボールミルを用いた粉砕などがあげられる。また、あらかじめ乳鉢を用いて粉砕した後に、ボールミルを用いて粉砕してもよい。ここで例として、ボールミル処理の場合について説明する。秤量した各化合物に溶媒を添加し、金属製またはセラミック製のボールを用いて、混合物を回転させる。ボールミル処理を行うことにより、化合物を混合するのと同時に、化合物の微粒子化を行うことができ、作製後の電極用材料の微粒子化を図ることが可能となる。また、ボールミル処理を行うことにより、原料となる化合物を均一に混合することができる。
導電助剤と、粒子状の負極活物質と、結着剤とを溶媒に添加して混合する。これらの混合比は、所望する電池特性に応じて適宜調整すればよい。
溶媒は、原料が溶解せず、原料が溶媒に分散する液体を用いることができる。また、溶媒は極性溶媒であることが好ましく、例えば、水、メタノール、エタノール、アセトン、テトラヒドロフラン(THF)、ジメチルホルムアミド(DMF)、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)及びジメチルスルホキシド(DMSO)のいずれか一種又は二種以上の混合液を用いることができる。
また、結着剤として、耐熱性の高い結着剤、例えばポリイミドを用いる。ただし、当該混合工程において混合される物質は、ポリイミドの前駆体であり、後の加熱工程にて当該前駆体がイミド化され、ポリイミドとなるものである。
上述の各化合物を混合する方法としては、例えば混練機などを用いればよい。結着剤と活物質と溶媒とを合わせ、混練機を用いて撹拌し、スラリー(混合物)を作製する。
次に、負極集電体101上にスラリーを塗布し、当該スラリーが塗布された負極集電体を乾燥して、溶媒を除去する。当該乾燥工程は、例えば、室温において、乾燥雰囲気中に保持することにより行えばよい。なお、後の加熱工程により溶媒を除去することが可能な場合には、必ずしも当該乾燥工程を行う必要はない。
次いで、当該スラリーが塗布された負極集電体を加熱する。加熱温度は200℃以上400℃以下、好ましくは概略300℃とし、これを1時間以上2時間以下、好ましくは概略1時間行う。当該加熱によりスラリーが焼成され、上記ポリイミドの前駆体がイミド化されポリイミドとなる。
本実施の形態では、スラリー焼成のための加熱工程を、結着剤が分解されない温度、例えば200℃以上400℃以下の温度、好ましくは300℃で行う。これにより、結着剤の分解を防ぐことができ、蓄電装置の信頼性の低下を防止することができる。
以上のような製造工程により、負極集電体101上に負極活物質層102を有する負極100を製造することができる。
[負極構造2]
次に、蓄電装置の負極に、負極集電体と、該負極集電体上に、粒子状の合金系材料と併せて、グラフェン及び結着剤(バインダともいう。)を有する負極活物質層について説明する。
グラフェンは、活物質及び集電体間の電子伝導経路を形成する導電助剤としての機能を有する。本明細書において、グラフェンは単層のグラフェン、又は2層以上100層以下の多層グラフェンを含むものである。単層グラフェンとは、π結合を有する1原子層の炭素分子のシートのことをいう。このグラフェンを、酸化グラフェンを還元して形成する場合には、酸化グラフェンに含まれる酸素は全て脱離されずに、一部の酸素はグラフェンに残存する。グラフェンに酸素が含まれる場合、酸素の割合は、XPS(X線光電子分光法)で測定した場合に、例えば、グラフェン全体の2原子%以上20原子%以下、好ましくは3原子%以上15原子%以下である。なお、酸化グラフェンとは、上記グラフェンが酸化された化合物のことをいう。
また、結着剤(バインダ)には、先に記載の結着剤で述べた材料を用いることができる。特に、負極活物質となる合金系材料に充放電に伴う体積変化の顕著なシリコン等を用いた場合、結着性に優れるポリイミドを用いることで、粒子状の合金系材料どうし、粒子状の合金系材料とグラフェン、粒子状の合金系材料と集電体、及びグラフェンと集電体それぞれの結着性を向上させることができる。これにより、合金系材料の剥脱や微粉化を抑制して良好な充放電サイクル特性を得ることができる。
このように、粒子状の合金系材料、グラフェン及び結着剤を有する負極活物質層を用いると、シート状のグラフェンが粒子状の合金系材料を包み込むように二次元的に接触し、さらにグラフェンどうしも重なるように二次元的に接触するため、負極活物質層内において、巨大な三次元の電子伝導経路のネットワークが構築される。このような理由から、導電助剤として一般的に用いられる粒子状のアセチレンブラック(AB)やケッチェンブラック(KB)を用いた場合に電気的に点接触となるのに対し、高い電子伝導性を有する負極活物質層を形成することができる。
また、グラフェン同士が結合することにより、網目状のグラフェン(以下グラフェンネットと呼ぶ)を形成することができる。負極活物質をグラフェンネットが被覆する場合に、グラフェンネットは粒子間を結合する結着剤(バインダ)としても機能することができる。よって、結着剤の量を少なくすることができる、または使用しないことができるため、電極体積や電極重量に占める活物質の比率を向上させることができる。すなわち、蓄電装置の容量を増加させることができる。
図2(A)は負極を俯瞰した図であり、図2(B)は図2(A)の破線で囲んだ部分の断面を示す図である。負極200は、負極集電体201上に負極活物質層202が設けられた構造である。なお、図では負極集電体201の両面に負極活物質層202が設けられているが、負極集電体201の片面にのみ負極活物質層202が設けられていてもよい。
負極集電体201には、負極集電体101で示した集電体を用いることができる。
図2(C)は、負極活物質203と、当該負極活物質203の複数を覆うシート状のグラフェン204と、結着剤(図示せず)とを有する負極活物質層202の上面図である。複数個の負極活物質203の表面を異なるグラフェン204が覆う。また、一部において、負極活物質203が露出していてもよい。
グラフェン204は炭素分子の単層又は多層の厚みを有する薄膜である。複数のグラフェン204は、複数の粒状の負極活物質203を包むように、覆うように、あるいは複数の粒状の負極活物質203の表面上に張り付くように形成されているため、互いに面接触している。また、グラフェン204どうしも互いに面接触することで、複数のグラフェン204により三次元的な電気伝導のネットワークを形成している。
これは後述する通り、グラフェン204の形成に、極性溶媒中での分散性が極めて高い酸化グラフェンを用いるためである。均一に分散した酸化グラフェンを含有する分散媒から溶媒を揮発除去し、酸化グラフェンを還元してグラフェンとするため、負極活物質層202に残留するグラフェン204は部分的に重なり合い、互いに面接触する程度に分散していることで電気伝導の経路を形成している。
従って、活物質と点接触するアセチレンブラック等の従来の粒状の導電助剤と異なり、グラフェン204は接触抵抗の低い面接触を可能とするものであるから、導電助剤の量を増加させることなく、粒状の負極活物質203とグラフェン204との電気伝導性を向上させるができる。よって、負極活物質203の負極活物質層202における比率を増加させることができる。これにより、蓄電装置の容量を増加させることができる。負極活物質層202に用いるグラフェン204の重量は、例えば、負極活物質203の重量の30%以下が好ましく、15%以下がより好ましく、3%以下がさらに好ましい。なお、酸化グラフェンは還元後、グラフェンの重量はほぼ半減する。
上述したように、負極活物質層202における電子伝導経路の特性向上のため導電助剤として、負極活物質層202はグラフェンを含有しているが、これに加えてアセチレンブラック粒子、ケッチェンブラック粒子、カーボンナノファイバー等のカーボン粒子など、様々な導電助剤を含有していてもよい。
負極活物質203にはシリコンを用いる。シリコンは、非晶質(アモルファス)シリコン、微結晶シリコン、多結晶シリコン又はこれらの組み合わせを用いることができる。一般に結晶性が高い程シリコンの電気伝導度が高いため、導電率の高い電極として、蓄電装置に利用することができる。一方、シリコンが非晶質の場合には、結晶質に比べてリチウムイオン等のキャリアイオンを吸蔵することができるため、放電容量を高めることができる。
図2(D)は負極活物質層202の一部における断面図である。負極活物質203、及び該負極活物質203を覆うグラフェン204を有する。グラフェン204は断面図においては線状で観察される。複数負極活物質203は、同一のグラフェン204または複数のグラフェン204の間に挟まれるように設けられる。なお、グラフェン204は袋状になっており、複数の負極活物質203を内包する場合がある。また、グラフェン204に覆われず、一部の負極活物質203が露出している場合がある。
グラフェン204は、三次元のネットワークを形成している。よって、導電助剤として機能する他に、グラフェンのネットワークはキャリアイオンの吸蔵及び放出が可能な負極活物質203を保持する機能を有する。このため、結着剤としての役割を兼ねることもできる。よって、用いる結着剤の配合を減らすことができ、負極活物質層202当たりの負極活物質量の割合を増加させることが可能であり、蓄電装置の放電容量を高めることができる。
また、キャリアイオンの吸蔵により体積が膨張する負極活物質203では、充放電により負極活物質層202が脆くなり、負極活物質層202の一部が崩落してしまうおそれがある。負極活物質層202の一部が崩落してしまうと、蓄電装置の信頼性が低下する。しかしながら、負極活物質203が充放電により体積が増減しても、当該周囲をグラフェン204が覆うため、グラフェン204は負極活物質203の分散や負極活物質層202の崩落を妨げることが可能である。すなわち、グラフェン204は、充放電にともない負極活物質203の体積が増減しても、負極活物質203同士の結合を維持する機能を有する。
また、フレキシブルな表示装置や電子機器などに適用する際、可撓性を有する部位(筐
体の全部または一部)に二次電池などの蓄電装置を設け、その部位と共に蓄電装置を曲げる場合においても、蓄電装置に曲げなどの変形を繰り返すことで、蓄電装置内部の集電体と活物質との間
で剥がれが生じ、蓄電装置の劣化が促進される恐れもある。
ここで、グラフェンは、グラフェンどうしも互いに面接触することで、複数のグラフェンにより三次元的な電気伝導のネットワークを形成している。また、グラフェンは柔軟でありかつ強度も高く、曲げなどの変形に対してもネットワークが崩れにくい利点がある。よって、変形の繰り返しの後においても良好な導電パスを保つことができる。特に、グラフェンが袋状であり活物質を内包する場合は、曲げによる活物質の脱離が生じにくく、電極層が崩壊しにくい。
ここで、シリコンの粒径について述べる。シリコンの粒径が大きい場合には、導電助剤とシリコン粒子の分散が不充分となり、充放電に伴うシリコンの膨張および収縮により導電パスを失ってしまい容量が低下する。一方、シリコンの粒径が小さすぎる場合には、シリコンの表面積が増大して電解液の分解反応が増大するため、充放電効率が低下し、やはり容量が低下する。よって、シリコンの粒径はある最適値を有する。例えば、シリコンの粒径は好ましくは0.001μm以上7μm以下、より好ましくは0.1μm以上3μm以下、さらに好ましくは0.3μm以上3μm以下のものを用いるとよい。
また、不純物を添加してシリコンの導電率を高めることにより、電極内の電池反応の不均一を減らすことができる。添加する不純物として、例えば、n型を付与する不純物としては、リン(P)、ヒ素(As)などが挙げられ、p型を付与する不純物としては、ホウ素(B)、アルミニウム(Al)、ガリウム(Ga)などが挙げられる。ここでシリコンの抵抗率は、例えば、好ましくは10−4[Ω・cm]以上50[Ω・cm]以下、より好ましくは10−3[Ω・cm]以上20[Ω・cm]以下である。不均一な反応の例としては、局所的に充放電深度が高くなりリチウム析出が生じることが挙げられる。析出したリチウムが再度、溶出してイオン化できない場合には容量の低下を招いてしまう。
本発明の一態様である蓄電装置には、上記の負極を用いることができる。
[負極構造2の製造方法]
本発明の一態様に係る負極200における負極活物質層202は、上記のようにグラフェン204を含む。グラフェンは、例えばグラフェンの原材料となる酸化グラフェンと、負極活物質と、結着剤とを混練した後に熱還元することで得ることができる。以下に、このような負極の製造方法の一例を説明する。
まず、グラフェンの原材料となる、酸化グラフェンを作製する。酸化グラフェンは、Hummers法、Modified Hummers法、又は黒鉛類の酸化等、種々の合成法を用いて作製することができる。
例えば、Hummers法は、鱗片状グラファイト等のグラファイトを酸化して、酸化グラファイトを形成する手法である。形成された酸化グラファイトは、グラファイトがところどころ酸化されることでカルボニル基、カルボキシル基、ヒドロキシル基等の官能基が結合したものであり、グラファイトの結晶性が損なわれ、層間の距離が大きくなっている。このため超音波処理等により、容易に層間を分離して、酸化グラフェンを得ることができる。なお、作製する酸化グラフェンの一辺の長さ(フレークサイズともいう)は数μm以上、数十μm以下であることが好ましい。
次に、上記の方法等によって得られた酸化グラフェンと、粒子状の負極活物質と、結着剤とを溶媒に添加して混合する。これらの混合比は、所望する電池特性に応じて適宜調整すれば良いが、例えば、粒子状の負極活物質、酸化グラフェン、結着剤の添加する比率を、重量パーセントで80:5:15の比率となるように秤量することができる。
溶媒は、原料が溶解せず、原料が溶媒に分散する液体を用いることができる。また、溶媒は極性溶媒であることが好ましく、例えば、水、メタノール、エタノール、アセトン、テトラヒドロフラン(THF)、ジメチルホルムアミド(DMF)、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)及びジメチルスルホキシド(DMSO)のいずれか一種又は二種以上の混合液を用いることができる。
また、結着剤として、耐熱性の高い結着剤、例えばポリイミドを用いる。ただし、当該混合工程において混合される物質は、ポリイミドの前駆体であり、後の加熱工程にて当該前駆体がイミド化され、ポリイミドとなるものである。
本実施の形態では、負極活物質としてシリコンを用いる。シリコンは、例えばシリコンウェハなどの粒状ではないシリコンを粉砕することによって所望の粒径のシリコンを得ることもできる。または、大きい粒径のシリコンを粉砕し、所望の粒径のシリコンを得てもよい。粉砕方法としては例えば、乳鉢による粉砕や、ボールミルを用いた粉砕などがあげられる。また、あらかじめ乳鉢を用いて粉砕した後に、ボールミルを用いて粉砕してもよい。
なお、酸化グラフェンは極性を有する溶液中においては、酸化グラフェンの有する官能基によりマイナスに帯電するため、異なる酸化グラフェンどうしで凝集しにくい。このため、極性を有する液体においては、均一に酸化グラフェンが分散しやすい。酸化グラフェンは、特に混合工程の初期に溶媒に加えて混合することで、溶媒中において、より均一に分散させることができる。その結果、負極活物質中でグラフェンが均一に分散し、電気伝導性の高い負極活物質を製造することができる。
上述の各化合物を混合する方法としては、例えば混練機などを用いればよい。混練機としては、例えば遊星型混練機などが挙げられる。結着剤と活物質と溶媒とを合わせ、混練機を用いて撹拌し、スラリー(混合物)を作製する。
ここで、酸化グラフェン、粒子状の負極活物質及び結着剤の溶媒への添加の順番については、特に限定されるものではない。例えば、溶媒に粒子状の負極活物質を添加して混合した後、酸化グラフェンを加えて混合し、さらに結着剤を加えて混合することができる。それぞれの混合工程において、混合物の粘度を調整するために適宜溶媒を添加してもよい。
混合方法の一例を述べる。まず、活物質に溶媒を添加し、混練機で混合する。溶媒としては、例えばNMPを用いればよい。次に、酸化グラフェンを添加して固練りを行う。固練りとは、高粘度による混練のことであり、固練りを行うことで酸化グラフェンの凝集をほどくことができ、活物質と酸化グラフェンをより均一に分散させることができる。また、固練りの際に溶媒を加えてもよい。固練り工程までの間に加える溶媒量の和は、例えば活物質重量1gあたり0.46ml以上、0.80ml以下であることが好ましい。次に、バインダを添加して混練機で混合する。バインダとしては、例えばポリイミドを用いればよい。さらに溶媒を添加し、混練機で混合する。
以上の工程にて、粒子状の負極活物質、酸化グラフェン、結着剤、及び溶媒が混合されたスラリー(混合物)を形成する。
次に、負極集電体201上にスラリーを塗布し、当該スラリーが塗布された負極集電体を乾燥して、溶媒を除去する。当該乾燥工程は、例えば、室温において、乾燥雰囲気中に保持することにより行えばよい。なお、後の加熱工程により溶媒を除去することが可能な場合には、必ずしも当該乾燥工程を行う必要はない。
次いで、当該スラリーが塗布された負極集電体を加熱する。加熱温度は200℃以上400℃以下、好ましくは概略300℃とし、これを1時間以上2時間以下、好ましくは概略1時間行う。当該加熱によりスラリーが焼成され、上記ポリイミドの前駆体がイミド化されポリイミドとなる。同時に、酸化グラフェンが還元され、グラフェンを形成することができる。このように、一回の加熱により、スラリー焼成の加熱と、酸化グラフェン還元のための加熱とを併せて行うことができるため、加熱工程を二回行う必要がない。このため、負極の製造工程を削減することが可能である。
本実施の形態では、スラリー焼成及び酸化グラフェン還元のための加熱工程を、結着剤が分解されない温度、例えば200℃以上400℃以下の温度、好ましくは300℃で行う。これにより、結着剤の分解を防ぐことができ、蓄電装置の信頼性の低下を防止することができる。なお、酸化グラフェンは還元処理により、重量がほぼ半減する。
また、還元した酸化グラフェンは官能基が脱離しているために分散性が低く、活物質や結着剤と混合する前の段階で還元した酸化グラフェン(すなわち、グラフェン)を用いた場合、活物質などと均一に混合されず、その結果電気特性の低い蓄電装置となるおそれがある。これは、酸化グラフェンが、酸化グラフェンの表面に酸素を含む官能基が結合することで負に帯電し、酸化グラフェンどうしや極性溶媒と反発しあうことで分散するものであるのに対して、還元されたグラフェンは還元によりこれら官能基の多くを失ったものであるから、その分散性が低下していることに由来する。
そこで、酸化グラフェンと活物質とを混合した後に、当該混合物を加熱して形成した負極活物質層においては、還元により官能基が減少する前に酸化グラフェンが分散されているため、還元後のグラフェンは負極活物質層中において均一に分散されている。このため、酸化グラフェンを分散させた後に還元処理を行うことで、電気伝導性の高い蓄電装置を得ることができる。
以上のような製造工程により、負極集電体201上に負極活物質層202を有する負極200を製造することができる。
なお、上記の負極を用いて、様々な蓄電装置を構成させることができる。蓄電装置の一例としては、電池、二次電池、リチウムイオン二次電池などがあげられる。さらに、蓄電装置の別の例として、キャパシタに適用することもできる。例えば、本発明の一態様の電極部材を負極に用い、これと電気二重層の正極とを組み合わせて、リチウムイオンキャパシタなどのようなキャパシタを構成することも可能である。
本実施の形態は、他の実施の形態と適宜組み合わせて実施することが可能である。
(実施の形態2)
本実施の形態では、実施の形態1で示した製造方法により製造した負極を用いた蓄電装置の構造について、図11乃至図14を参照して説明する。また、蓄電装置(蓄電池)の構造例について、図15乃至図19を用いて説明する。また、電気機器の一例について、図20を用いて説明する。
[コイン型蓄電池]
図11(A)は、コイン型(単層偏平型)の蓄電池の外観図であり、図11(B)は、その断面図である。
コイン型の蓄電池300は、正極端子を兼ねた正極缶301と負極端子を兼ねた負極缶302とが、ポリプロピレン等で形成されたガスケット303で絶縁シールされている。ここで、負極307には、実施の形態1で示した蓄電装置用負極を用いる。
正極304は、正極集電体305と、これと接するように設けられた正極活物質層306により形成される。正極活物質層306は、正極活物質の他、正極活物質の密着性を高めるための結着剤(バインダ)、正極活物質層の導電性を高めるための導電助剤等を有してもよい。導電助剤としては、導電助剤としては比表面積が大きい材料が望ましく、アセチレンブラック(AB)等を用いることができる。また、カーボンナノチューブ、グラフェン、フラーレンといった炭素材料を用いることもできる。
また、負極307は、負極集電体308と、これに接するように設けられた負極活物質層309により形成される。負極307には実施の形態1で示した蓄電装置用負極を用いる。
正極活物質層306と負極活物質層309との間には、セパレータ310と、電解質(図示せず)とを有する。
セパレータ310は、セルロース(紙)、または空孔が設けられたポリプロピレン、ポリエチレン等の絶縁体を用いることができる。
電解液は、電解質として、キャリアイオンイオンを有する材料を用いる。電解質の代表例としては、LiPF6、LiClO4、LiAsF6、LiBF4、LiCF3SO3、Li(CF3SO2)2N、Li(C2F5SO2)2N等のリチウム塩がある。これらの電解質は、一種を単独で用いてもよく、二種以上を任意の組み合わせ及び比率で用いてもよい。
なお、キャリアイオンが、リチウムイオン以外のアルカリ金属イオンや、アルカリ土類金属イオンの場合、電解質として、上記リチウム塩において、リチウムの代わりに、アルカリ金属(例えば、ナトリウムやカリウム等)、アルカリ土類金属(例えば、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、ベリリウム、マグネシウム等)を用いてもよい。
また、電解液の溶媒としては、キャリアイオンの移動が可能な材料を用いる。電解液の溶媒としては、非プロトン性有機溶媒が好ましい。非プロトン性有機溶媒の代表例としては、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート(DEC)、γーブチロラクトン、アセトニトリル、ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン等があり、これらの一つまたは複数を用いることができる。また、電解液の溶媒としてゲル化される高分子材料を用いることで、漏液性等に対する安全性が高まる。また、蓄電池の薄型化及び軽量化が可能である。ゲル化される高分子材料の代表例としては、シリコーンゲル、アクリルゲル、アクリロニトリルゲル、ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイド、フッ素系ポリマー等がある。
また、電解液の溶媒として、難燃性及び難揮発性であるイオン液体(常温溶融塩)を一つまたは複数用いることで、蓄電池の内部短絡や、過充電等によって内部温度が上昇しても、蓄電池の破裂や発火などを防ぐことができる。イオン液体は、カチオンとアニオンからなり、有機カチオンとアニオンとを含む。電解液に用いる有機カチオンとして、四級アンモニウムカチオン、三級スルホニウムカチオン、及び四級ホスホニウムカチオン等の脂肪族オニウムカチオンや、イミダゾリウムカチオン及びピリジニウムカチオン等の芳香族カチオンが挙げられる。また、電解液に用いるアニオンとして、1価のアミド系アニオン、1価のメチド系アニオン、フルオロスルホン酸アニオン、パーフルオロアルキルスルホン酸アニオン、テトラフルオロボレート、パーフルオロアルキルボレート、ヘキサフルオロホスフェート、またはパーフルオロアルキルホスフェート等が挙げられる。
特に脂肪族四級アンモニウムカチオンを用いた場合には、耐還元性が高いため、蓄電装置の充放電に伴う電解液の分解を抑える効果が特に高い。よって、充放電に伴う容量の低下を抑えることができ、良好なサイクル特性を得ることができる。また、蓄電装置の容量を高めることができる。
また、電解液の代わりに、硫化物系や酸化物系等の無機物材料を有する固体電解質や、PEO(ポリエチレンオキシド)系等の高分子材料を有する固体電解質を用いることができる。固体電解質を用いる場合には、セパレータやスペーサの設置が不要となる。また、電池全体を固体化できるため、漏液のおそれがなくなり安全性が飛躍的に向上する。
正極缶301、負極缶302には、電解液に対して耐腐食性のあるニッケル、アルミニウム、チタン等の金属、又はこれらの合金やこれらと他の金属との合金(例えばステンレス鋼等)を用いることができる。また、電解液による腐食を防ぐため、ニッケルやアルミニウム等で被覆することが好ましい。正極缶301は正極304と、負極缶302は負極307とそれぞれ電気的に接続する。
これら負極307、正極304及びセパレータ310を電解質に含浸させ、図11(B)に示すように、正極缶301を下にして正極304、セパレータ310、負極307、負極缶302をこの順で積層し、正極缶301と負極缶302とをガスケット303を介して圧着してコイン形の蓄電池300を製造する。
ここで図11(C)を用いて蓄電装置の充電時の電流の流れを説明する。リチウムイオンを用いた二次電池を一つの閉回路とみなした時、リチウムイオンの動きと電流の流れは同じ向きになる。なお、リチウムイオンを用いた二次電池では、充電と放電でアノード(陽極)とカソード(陰極)が入れ替わり、酸化反応と還元反応とが入れ替わることになるため、反応電位が高い電極を正極と呼び、反応電位が低い電極を負極と呼ぶ。したがって、本明細書においては、充電中であっても、放電中であっても、逆パルス電流を流す場合であっても、充電電流を流す場合であっても、正極は「正極」または「+極(プラス極)」と呼び、負極は「負極」または「−極(マイナス極)」と呼ぶこととする。酸化反応や還元反応に関連したアノード(陽極)やカソード(陰極)という用語を用いると、充電時と放電時とでは、逆になってしまい、混乱を招く可能性がある。したがって、アノード(陽極)やカソード(陰極)という用語は、本明細書においては用いないこととする。仮にアノード(陽極)やカソード(陰極)という用語を用いる場合には、充電時か放電時かを明記し、正極(プラス極)と負極(マイナス極)のどちらに対応するものかも併記することとする。
図11(C)に示す2つの端子には充電器が接続され、蓄電池400が充電される。蓄電池400の充電が進めば、電極間の電位差は大きくなる。図11(C)では、蓄電池400の外部の端子から、正極402の方へ流れ、蓄電池400の中において、正極402から負極404の方へ流れ、負極から蓄電池400の外部の端子の方へ流れる電流の向きを正の向きとしている。つまり、充電電流の流れる向きを電流の向きとしている。
[円筒型蓄電池]
次に、円筒型の蓄電池の一例について、図12を参照して説明する。円筒型の蓄電池600は図12(A)に示すように、上面に正極キャップ(電池蓋)601を有し、側面及び底面に電池缶(外装缶)602を有している。これら正極キャップと電池缶(外装缶)602とは、ガスケット(絶縁パッキン)610によって絶縁されている。
図12(B)は、円筒型の蓄電池の断面を模式的に示した図である。中空円柱状の電池缶602の内側には、帯状の正極604と負極606とがセパレータ605を間に挟んで捲回された電池素子が設けられている。図示しないが、電池素子はセンターピンを中心に捲回されている。電池缶602は、一端が閉じられ、他端が開いている。電池缶602には、電解液に対して耐腐食性のあるニッケル、アルミニウム、チタン等の金属、又はこれらの合金やこれらと他の金属との合金(例えば、ステンレス鋼等)を用いることができる。また、電解液による腐食を防ぐため、ニッケルやアルミニウム等を被覆することが好ましい。電池缶602の内側において、正極、負極及びセパレータが捲回された電池素子は、対向する一対の絶縁板608、609により挟まれている。また、電池素子が設けられた電池缶602の内部は、非水電解液(図示せず)が注入されている。非水電解液は、コイン型の蓄電池と同様のものを用いることができる。
負極606には、実施の形態1で示した蓄電装置用負極を用いる。正極604及び負極606は、上述したコイン型の蓄電池の正極及び負極と同様に製造すればよいが、円筒型の蓄電池に用いる正極及び負極は捲回するため、集電体の両面に活物質を形成する点において異なる。正極604には正極端子(正極集電リード)603が接続され、負極606には負極端子(負極集電リード)607が接続される。正極端子603及び負極端子607は、ともにアルミニウムなどの金属材料を用いることができる。正極端子603は安全弁機構612に、負極端子607は電池缶602の底にそれぞれ抵抗溶接される。安全弁機構612は、PTC素子(Positive Temperature Coefficient)611を介して正極キャップ601と電気的に接続されている。安全弁機構612は電池の内圧の上昇が所定の閾値を超えた場合に、正極キャップ601と正極604との電気的な接続を切断するものである。また、PTC素子611は温度が上昇した場合に抵抗が増大する熱感抵抗素子であり、抵抗の増大により電流量を制限して異常発熱を防止するものである。PTC素子には、チタン酸バリウム(BaTiO3)系半導体セラミックス等を用いることができる。
[薄型蓄電池]
次に、薄型の蓄電池の一例について、図13を参照して説明する。薄型の蓄電池は、可撓性を有する構成とすれば、可撓性を有する部位を少なくとも一部有する電子機器に実装すれば、電子機器の変形に合わせて蓄電池も曲げることもできる。
図13は薄型の蓄電池500の外観図を示す。また、図14(A)および図14(B)は、図13に一点鎖線で示すA1−A2断面およびB1−B2断面を示す。薄型の蓄電池500は、正極集電体501および正極活物質層502を有する正極503と、負極集電体504および負極活物質層505を有する負極506と、セパレータ507と、電解液508と、外装体509と、を有する。外装体509内に設けられた正極503と負極506との間にセパレータ507が設置されている。また、外装体509内は、電解液508で満たされている。負極506には、実施の形態1で示した蓄電装置用負極を用いる。
セパレータ507は袋状に加工し、正極503または負極506のいずれか一方を包むように配置することが好ましい。例えば、図15(A)に示すように、正極503を挟むようにセパレータ507を2つ折りにし、正極503と重なる領域よりも外側で封止部514により封止することで、正極503をセパレータ507内に確実に担持することができる。そして、図15(B)に示すように、セパレータ507に包まれた正極503と負極506とを交互に積層し、これらを外装体509内に配置することで薄型の蓄電池500を形成するとよい。
図16(B)は、リード電極に集電体を溶接する例を示す。例として、正極集電体501を正極リード電極510に溶接する例を示す。正極集電体501は、超音波溶接などを用いて溶接領域512で正極リード電極510に溶接される。また、正極集電体501は、図16(B)に示す湾曲部513を有することにより、蓄電池500の作製後に外から力が加えられて生じる応力を緩和することができ、蓄電池500の信頼性を高めることができる。
図13および図14に示す薄型の蓄電池500において、正極リード電極510および負極リード電極511を用いて正極集電体501、或いは負極集電体504と超音波接合させて正極リード電極510および負極リード電極511を外側に露出している。また、外部との電気的接触を得る端子の役割を正極集電体501および負極集電体504で兼ねることもできる。その場合は、リード電極を用いずに、正極集電体501および負極集電体504の一部を外装体509から外側に露出するように配置してもよい。
薄型の蓄電池500において、外装体509には、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、アイオノマー、ポリアミド等の材料からなる膜上に、アルミニウム、ステンレス、銅、ニッケル等の可撓性に優れた金属薄膜を設け、さらに該金属薄膜上に外装体の外面としてポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂等の絶縁性合成樹脂膜を設けた三層構造のフィルムを用いることができる。
また図13では、一例として、電極層数を3としているが、勿論、電極層数は3に限定されず、多くてもよいし、少なくてもよい。電極層数が多い場合には、より多くの容量を有する蓄電池とすることができる。また、電極層数が少ない場合には、薄型化でき、可撓性に優れた蓄電池とすることができる。
なお、本実施の形態では、蓄電池として、コイン型、円筒型および薄型の蓄電池を示したが、その他の封止型蓄電池、角型蓄電池等様々な形状の蓄電池を用いることができる。また、正極、負極、及びセパレータが複数積層された構造、正極、負極、及びセパレータが捲回された構造であってもよい。
本実施の形態で示す蓄電池300、蓄電池500、蓄電池600の負極には、本発明の一態様に係る負極活物質層が用いられている。そのため、蓄電池300、蓄電池500、蓄電池600の放電容量を高めることができる。またはサイクル特性を向上させることができる。
薄型の蓄電池は図13に限定されない。他の薄型の蓄電池の例を図17に示す。図17(A)に示す捲回体993は、負極994と、正極995と、セパレータ996と、を有する。
捲回体993は、セパレータ996を挟んで負極994と、正極995とが重なり合って積層され、該積層シートを捲回したものである。この捲回体993を角型の封止容器などで覆うことにより角型の二次電池が作製される。
なお、負極994、正極995及びセパレータ996からなる積層の積層数は、必要な容量と素子体積に応じて適宜設計すればよい。負極994はリード電極997及びリード電極998の一方を介して負極集電体(図示せず)に接続され、正極995はリード電極997及びリード電極998の他方を介して正極集電体(図示せず)に接続される。
図17(B)及び(C)に示す蓄電装置990は、フィルム981と、凹部を有するフィルム982とを熱圧着などにより貼り合わせて形成される空間に上述した捲回体993を収納したものである。捲回体993は、リード電極997及びリード電極998を有し、フィルム981と、凹部を有するフィルム982との内部で電解液に含浸される。
フィルム981と、凹部を有するフィルム982は、例えばアルミニウムなどの金属材料や樹脂材料を用いることができる。フィルム981及び凹部を有するフィルム982の材料として樹脂材料を用いれば、外部から力が加わったときにフィルム981と、凹部を有するフィルム982を変形させることができ、可撓性を有する蓄電池を作製することができる。
また、図17(B)及び(C)では2枚のフィルムを用いる例を示しているが、1枚のフィルムを折り曲げることによって空間を形成し、その空間に上述した捲回体993を収納してもよい。
また、薄型の蓄電池のみが可撓性を有する蓄電装置ではなく、外装体や、封止容器を樹脂材料などにすることによって可撓性を有する蓄電装置を作製することができる。ただし、外装体や、封止容器を樹脂材料にする場合、外部に接続を行う部分は導電材料とする。
例えば、可撓性を有する角型蓄電池の例を図18に示す。図18(A)の捲回体993は、図17(A)に示したものと同一であるため、詳細な説明は省略することとする。
図18(B)及び(C)に示す蓄電装置990は、外装体991の内部に上述した捲回体993を収納したものである。捲回体993は、リード電極997及びリード電極998を有し、外装体991、992の内部で電解液に含浸される。外装体991、992は、例えばアルミニウムなどの金属材料や樹脂材料を用いることができる。外装体991、992の材料として樹脂材料を用いれば、外部から力が加わったときに外装体991、992を変形させることができ、可撓性を有する角型蓄電池を作製することができる。
また、蓄電装置(蓄電体)の構造例について、図19、図20、図21を用いて説明する。
図19(A)及び図19(B)は、蓄電装置の外観図を示す図である。蓄電装置は、回路基板900と、蓄電体913と、を有する。蓄電体913には、ラベル910が貼られている。さらに、図19(B)に示すように、蓄電装置は、端子951と、端子952と、を有し、ラベル910の裏にアンテナ914と、アンテナ915と、を有する。
回路基板900は、端子911と、回路912と、を有する。端子911は、端子951、端子952、アンテナ914、アンテナ915、及び回路912に接続される。なお、端子911を複数設けて、複数の端子911のそれぞれを、制御信号入力端子、電源端子などとしてもよい。
回路912は、回路基板900の裏面に設けられていてもよい。なお、アンテナ914及びアンテナ915は、コイル状に限定されず、例えば線状、板状であってもよい。また、平面アンテナ、開口面アンテナ、進行波アンテナ、EHアンテナ、磁界アンテナ、誘電体アンテナ等のアンテナを用いてもよい。又は、アンテナ914若しくはアンテナ915は、平板状の導体でもよい。この平板状の導体は、電界結合用の導体の一つとして機能することができる。つまり、コンデンサの有する2つの導体のうちの一つの導体として、アンテナ914若しくはアンテナ915を機能させてもよい。これにより、電磁界、磁界だけでなく、電界で電力のやり取りを行うこともできる。
アンテナ914の線幅は、アンテナ915の線幅よりも大きいことが好ましい。これにより、アンテナ914により受電する電力量を大きくできる。
蓄電装置は、アンテナ914及びアンテナ915と、蓄電体913との間に層916を有する。層916は、例えば蓄電体913による電磁界を遮蔽することができる機能を有する。層916としては、例えば磁性体を用いることができる。
なお、蓄電装置の構造は、図19に限定されない。
例えば、図20(A−1)及び図20(A−2)に示すように、図19(A)及び図19(B)に示す蓄電体913のうち、対向する一対の面のそれぞれにアンテナを設けてもよい。図20(A−1)は、上記一対の面の一方側方向から見た外観図であり、図20(A−2)は、上記一対の面の他方側方向から見た外観図である。なお、図19(A)及び図19(B)に示す蓄電装置と同じ部分については、図19(A)及び図19(B)に示す蓄電装置の説明を適宜援用できる。
図20(A−1)に示すように、蓄電体913の一対の面の一方に層916を挟んでアンテナ914が設けられ、図20(A−2)に示すように、蓄電体913の一対の面の他方に層917を挟んでアンテナ915が設けられる。層917は、例えば蓄電体913による電磁界を遮蔽することができる機能を有する。層917としては、例えば磁性体を用いることができる。
上記構造にすることにより、アンテナ914及びアンテナ915の両方のサイズを大きくすることができる。
又は、図20(B−1)及び図20(B−2)に示すように、図19(A)及び図19(B)に示す蓄電体913のうち、対向する一対の面のそれぞれに別のアンテナを設けてもよい。図20(B−1)は、上記一対の面の一方側方向から見た外観図であり、図20(B−2)は、上記一対の面の他方側方向から見た外観図である。なお、図19(A)及び図19(B)に示す蓄電装置と同じ部分については、図19(A)及び図19(B)に示す蓄電装置の説明を適宜援用できる。
図20(B−1)に示すように、蓄電体913の一対の面の一方に層916を挟んでアンテナ914及びアンテナ915が設けられ、図20(A−2)に示すように、蓄電体913の一対の面の他方に層917を挟んでアンテナ918が設けられる。アンテナ918は、例えば、外部機器とのデータ通信を行うことができる機能を有する。アンテナ918には、例えばアンテナ914及びアンテナ915に適用可能な形状のアンテナを適用することができる。アンテナ918を介した蓄電装置と他の機器との通信方式としては、NFCなど、蓄電装置と他の機器の間で用いることができる応答方式などを適用することができる。
又は、図21(A)に示すように、図19(A)及び図19(B)に示す蓄電体913に表示装置920を設けてもよい。表示装置920は、端子919を介して端子911に電気的に接続される。なお、表示装置920が設けられる部分にラベル910を設けなくてもよい。なお、図19(A)及び図19(B)に示す蓄電装置と同じ部分については、図19(A)及び図19(B)に示す蓄電装置の説明を適宜援用できる。
表示装置920には、例えば充電中であるか否かを示す画像、蓄電量を示す画像などを表示してもよい。表示装置920としては、例えば電子ペーパー、液晶表示装置、エレクトロルミネセンス(ELともいう)表示装置などを用いることができる。例えば、電子ペーパーを用いることにより表示装置920の消費電力を低減することができる。
又は、図21(B)に示すように、図19(A)及び図19(B)に示す蓄電体913にセンサ921を設けてもよい。センサ921は、端子922を介して端子911に電気的に接続される。なお、センサ921は、ラベル910の裏側に設けられてもよい。なお、図19(A)及び図19(B)に示す蓄電装置と同じ部分については、図19(A)及び図19(B)に示す蓄電装置の説明を適宜援用できる。
センサ921としては、例えば、力、変位、位置、速度、加速度、角速度、回転数、距離、光、液、磁気、温度、化学物質、音声、時間、硬度、電場、電流、電圧、電力、放射線、流量、湿度、傾度、振動、におい又は赤外線を測定する機能を含むものを用いることができる。センサ921を設けることにより、例えば、蓄電装置が置かれている環境を示すデータ(温度など)を検出し、回路912内のメモリに記憶しておくこともできる。
また、図13、図17、及び図18に示した可撓性を有する蓄電池を電子機器に実装する例を図22に示す。フレキシブルな形状を備える蓄電装置を適用した電子機器として、例えば、テレビジョン装置(テレビ、又はテレビジョン受信機ともいう)、コンピュータ用などのモニタ、デジタルカメラ、デジタルビデオカメラ、デジタルフォトフレーム、携帯電話機(携帯電話、携帯電話装置ともいう)、携帯型ゲーム機、携帯情報端末、音響再生装置、パチンコ機などの大型ゲーム機などが挙げられる。
また、フレキシブルな形状を備える蓄電装置を、家屋やビルの内壁または外壁や、自動車の内装または外装の曲面に沿って組み込むことも可能である。
図22(A)は、携帯電話機の一例を示している。携帯電話機7400は、筐体7401に組み込まれた表示部7402の他、操作ボタン7403、外部接続ポート7404、スピーカ7405、マイク7406などを備えている。なお、携帯電話機7400は、蓄電装置7407を有している。
図22(B)は、携帯電話機7400を湾曲させた状態を示している。携帯電話機7400を外部の力により変形させて全体を湾曲させると、その内部に設けられている蓄電装置7407も湾曲される。また、その時、曲げられた蓄電装置7407の状態を図22(C)に示す。蓄電装置7407は薄型の蓄電池である。蓄電装置7407は曲げられた状態で固定されている。なお、蓄電装置7407は集電体7409と電気的に接続されたリード電極7408を有している。例えば、集電体7409は銅箔であり、一部ガリウムと合金化させて、集電体7409と接する活物質層との密着性を向上し、蓄電装置7407が曲げられた状態での信頼性が高い構成となっている。
図22(D)は、バングル型の表示装置の一例を示している。携帯表示装置7100は、筐体7101、表示部7102、操作ボタン7103、及び蓄電装置7104を備える。また、図22(E)に曲げられた蓄電装置7104の状態を示す。蓄電装置7104は曲げられた状態で使用者の腕への装着時に、筐体が変形して蓄電装置7104の一部または全部の曲率が変化する。なお、曲線の任意の点における曲がり具合を相当する円の半径の値で表したものを曲率半径であり、曲率半径の逆数を曲率と呼ぶ。具体的には、曲率半径Rが40mm以上150mm以下の範囲内で筐体または蓄電装置7104の主表面の一部または全部が変化する。蓄電装置7104の主表面における曲率半径Rが40mm以上150mm以下の範囲であれば、高い信頼性を維持できる。なお、蓄電装置7104は集電体7106と電気的に接続されたリード電極7105を有している。例えば、集電体7106は銅箔であり、一部ガリウムと合金化させて、集電体7106と接する活物質層との密着性を向上し、蓄電装置7104が曲率を変化させて曲げられる回数が多くとも高い信頼性を維持できる構成となっている。
図22(F)は、腕時計型の携帯情報端末の一例を示している。携帯情報端末7200は、筐体7201、表示部7202、バンド7203、バックル7204、操作ボタン7205、入出力端子7206などを備える。
携帯情報端末7200は、移動電話、電子メール、文章閲覧及び作成、音楽再生、インターネット通信、コンピュータゲームなどの種々のアプリケーションを実行することができる。
表示部7202はその表示面が湾曲して設けられ、湾曲した表示面に沿って表示を行うことができる。また、表示部7202はタッチセンサを備え、指やスタイラスなどで画面に触れることで操作することができる。例えば、表示部7202に表示されたアイコン7207に触れることで、アプリケーションを起動することができる。
操作ボタン7205は、時刻設定のほか、電源のオン、オフ動作、無線通信のオン、オフ動作、マナーモードの実行及び解除、省電力モードの実行及び解除など、様々な機能を持たせることができる。例えば、携帯情報端末7200に組み込まれたオペレーションシステムにより、操作ボタン7205の機能を自由に設定することもできる。
また、携帯情報端末7200は、通信規格された近距離無線通信を実行することが可能である。例えば無線通信可能なヘッドセットと相互通信することによって、ハンズフリーで通話することもできる。
また、携帯情報端末7200は入出力端子7206を備え、他の情報端末とコネクターを介して直接データのやりとりを行うことができる。また入出力端子7206を介して充電を行うこともできる。なお、充電動作は入出力端子7206を介さずに無線給電により行ってもよい。
携帯情報端末7200の表示部7202には、本発明の一態様の電極部材を備える蓄電装置を有している。例えば、図22(E)に示した蓄電装置7104を、筐体7201の内部に湾曲した状態で、またはバンド7203の内部に湾曲可能な状態で組み込むことができる。
[電気機器の一例:車両に搭載する例]
次に、蓄電池を車両に搭載する例について示す。蓄電池を車両に搭載すると、ハイブリッド車(HEV)、電気自動車(EV)、又はプラグインハイブリッド車(PHEV)等の次世代クリーンエネルギー自動車を実現できる。
図23において、本発明の一態様を用いた車両を例示する。図23(A)に示す自動車8100は、走行のための動力源として電気モーターを用いる電気自動車である。または、走行のための動力源として電気モーターとエンジンを適宜選択して用いることが可能なハイブリッド自動車である。本発明の一態様を用いることで、航続距離の長い車両を実現することができる。また、自動車8100は蓄電装置を有する。蓄電装置は電気モーター8106を駆動するだけでなく、ヘッドライト8101やルームライト(図示せず)などの発光装置に電力を供給することができる。
また、蓄電装置は、自動車8100が有するスピードメーター、タコメーターなどの表示装置に電力を供給することができる。また、蓄電装置は、自動車8100が有するナビゲーションゲーションシステムなどの半導体装置に電力を供給することができる。
図23(B)に示す自動車8100は、自動車8100が有する蓄電装置にプラグイン方式や非接触給電方式等により外部の充電設備から電力供給を受けて、充電することができる。図23(B)に、地上設置型の充電装置8021から自動車8100に搭載された蓄電装置に、ケーブル8022を介して充電を行っている状態を示す。充電に際しては、充電方法やコネクタの規格等はCHAdeMO(登録商標)やコンボ等の所定の方式で適宜行えばよい。充電装置8021は、商用施設に設けられた充電ステーションでもよく、また家庭の電源であってもよい。例えば、プラグイン技術によって、外部からの電力供給により自動車8100に搭載された蓄電装置を充電することができる。充電は、ACDCコンバータ等の変換装置を介して、交流電力を直流電力に変換して行うことができる。
また、図示しないが、受電装置を車両に搭載し、地上の送電装置から電力を非接触で供給して充電することもできる。この非接触給電方式の場合には、道路や外壁に送電装置を組み込むことで、停車中に限らず走行中に充電を行うこともできる。また、この非接触給電の方式を利用して、車両どうしで電力の送受信を行ってもよい。さらに、車両の外装部に太陽電池を設け、停車時や走行時に蓄電装置の充電を行ってもよい。このような非接触での電力の供給には、電磁誘導方式や磁界共鳴方式を用いることができる。
本発明の一態様によれば、蓄電装置のサイクル特性が良好となり、信頼性を向上させることができる。また、本発明の一態様によれば、蓄電装置の特性を向上することができ、よって、蓄電装置自体を小型軽量化することができる。蓄電装置自体を小型軽量化できれば、車両の軽量化に寄与するため、航続距離を向上させることができる。また、車両に搭載した蓄電装置を車両以外の電力供給源として用いることもできる。この場合、電力需要のピーク時に商用電源を用いることを回避することができる。
本実施の形態は、他の実施の形態と適宜組み合わせて実施することが可能である。
以下の実施例では、実施の形態1で示した負極を用いてハーフセルを作製し、評価を行った。
(シリコンの粉砕)
シリコンウェハの粉砕を行った。粉砕後に得られたシリコンを表1の試料A乃至試料H、および比較試料Iとして示す。シリコンウェハは、表1に示す条件の極性(p型またはn型)および抵抗率のものを用いた。また、表1に記載のシリコンウェハの面方位は、いずれも(100)面であった。まずシリコンウェハを6cm角に切断した後、乳鉢で粉砕した。その後、ボールミルを用いてさらに粉砕を行った。ボールミルの粉砕条件は、直径3mmのボールを用い、表1に示す回転数および処理時間で行った。また、ボールミルの容器は54mlのものを用い、ボールおよび乳鉢で粉砕したシリコンを入れた。ボールの分量は22g、シリコンの分量は試料A、試料Eおよび試料Hは2g、試料B乃至試料D、試料Fおよび試料Gは4g、比較試料Iは8gとした。また、溶剤としてアセトンを用いた。得られたシリコン粒子の粒径をレーザー回折粒度分布測定装置(SALD−2200形,
島津製作所製)を用いて測定した。粒度の算出方式は、レーザ回折・散乱法を用いた。
その平均粒径、およびD90(粒度分布測定結果の累積粒度曲線において、その積算量が90%を占めるときの粒子径)の値を表1に示す。
(負極の作製)
得られた試料A乃至試料Hおよび比較試料Iを負極活物質として、以下の方法により負極を作製した。すなわち、負極集電体として厚さ18μmの銅箔を用い、粒子状の負極活物質である試料A乃至試料Hおよび比較試料I、酸化グラフェン、及び結着剤であるポリイミド(より正確には、ポリイミドの前駆体)の混合比率を、80:5:15(重量%)としたものを遊星型混練機を用いて混合し、スラリーを作製した。溶媒は、NMPを用いた。まず、負極活物質に溶媒を添加し、混練機で混合を行った。次に、酸化グラフェンおよびNMPを添加して固練りを行った。次に、ポリイミドの前駆体およびNMPを添加して混練機で混合を行った。最後に、NMPを再び加えて混練機で混合し、スラリーを得た。混練条件は、回転数2000rpm、5分として、固練りを含めて16回の混練を行った。なお、ポリイミドの前駆体は、全体の13.7%が加熱工程後にイミド化してポリイミドとなる。
次に、スラリーの焼成と酸化グラフェンの還元とを兼ねる加熱処理を行った。該加熱処理は、160℃で0.5時間加熱した後、250℃まで昇温し、250℃で0.5時間加熱した。さらにその後370℃まで昇温し、370℃で1時間の加熱を行った。
以上のようにして、試料A乃至試料Hおよび比較試料Iを用いて作製した負極を、負極A乃至負極H、および比較用負極Iとする。
図3は、表1の試料Dを用いて作製した電極Dの断面をSEM(Scanning Electron Microscope)により観察した結果である。また、図4に試料Dを用いて作製した電極DのSEM−EDX(Energy Dispersive X−ray Spectroscopy)による元素分析結果を示す。図4(A)は、SEM像を示し、図4(B)はシリコンのマッピング像、図4(C)は炭素のマッピング像を示す。図3および図4に示す通り、活物質151の間にグラフェン152が観測された。このことから、活物質151とグラフェン152は良好に分散していることがわかった。
また、図8に試料Dを用いて作製した電極Dを上面方向からSEMにより観察した結果を示す。図8(A)は10,000倍、図8(B)は30,000倍で観察した結果である。図8からわかるように、粉砕後のシリコンは角ばった形状をしていた。これは、シリコンには劈開しやすい面があり、粉砕の際に劈開しやすい面から優先的に割れるためと考えられる。よって、粉砕後のシリコンは、劈開面が端面あるいは表面に露出しやすいと考えられる。シリコンの劈開しやすい面としては、第1に{111}面が挙げられ、第2に{110}面が挙げられる。
(セルの作製)
次に上記のように作製した負極A乃至負極Hおよび比較用負極Iを用いて、ハーフセルを作製した。特性の評価は、CR2032タイプ(直径20mm高さ3.2mm)のコイン形蓄電池を用いた。対極には金属リチウム、セパレータにはポリプロピレンを用いた。また、電解液には、電解液Aとしてエチレンカーボネート(EC)とジエチルカーボネート(DEC)とを体積比で3:7の割合で混合した混合溶液中へ六フッ化リン酸リチウム(LiPF6)を1モル/リットルの濃度で溶解したものを用いた。
(セルの測定)
ここで、シリコン電極を用いたハーフセルの充電および放電を、式を用いて説明する。図7に、シリコン電極と対極Liを用いたハーフセルを放電する場合における、ハーフセル121と、負荷123との接続構成を示す。ハーフセルの放電を行う場合、シリコン電極では式(1)の反応が起こる。
Si + xLi+ + e− → SiLix (1)
また、Li極では、式(2)の反応が起こる。
xLi → xLi+ + xe− (2)
図6に、シリコン電極と対極Liを用いたハーフセルを充電する場合における、ハーフセル121と、充電器122との接続構成を示す。ハーフセルに充電を行う場合、シリコン電極では、式(3)の反応が起こる。
SiLix → Si + xLi+ + xe− (3)
また、Li極では、式(4)の反応が起こる。
xLi+ + xe− → xLi (4)
ここで、式(1)乃至式(4)において、xはx≦4.4を満たす。
式(1)乃至式(4)が示す通り、放電でLiがシリコンに挿入され、充電でシリコンからLiが脱離する。すなわち、ハーフセルの評価は、放電動作から開始する。
次に、ハーフセルの測定条件について説明する。ハーフセルの放電(Li挿入)は0.1Cのレートで0.01Vを下限として定電流放電を行った後、0.01Vの電圧で0.01Cに相当する電流値を下限として定電圧放電を行った。充電(Li脱離)は、0.1Cのレートで1Vを上限として定電流充電を行った。
表2に、充放電の結果得られた初回の充放電効率を示す。
表2に示す通り、負極A乃至負極F、および負極Hを用いたセルでは、初回の充放電効率は80%以上を示し良好な結果が得られた。一方、比較用負極Iを用いたセルでは、初回充放電効率が56.5%と低い値を示した。比較用負極Iは、平均粒径が7μm以上(D90が30μm以上)の比較試料Iを用いて作製しており、シリコンの平均粒径が大きいために、導電助剤とシリコン粒子の分散が不充分となり、充放電に伴うシリコンの膨張および収縮により導電パスを失い容量が低下したと考えられる。また負極Hを用いたセルでは、負極Gよりも粒径が大きいにもかかわらず、および負極Gと比較してやや充放電効率が高い結果となった。負極Gではシリコンの抵抗率が1900Ω・cmであり、一方負極A乃至負極F、および負極Hではシリコンの抵抗率は10−4Ω・cm以上12Ω・cm以下の範囲であった。このことからシリコンの抵抗率を低くすることにより、さらに充放電効率を高めることができると考えられる。
本実施例では、実施例1で作製した負極を用いてフルセルを作製し、サイクル特性の評価を行った。
特性の評価は、CR2032タイプ(直径20mm高さ3.2mm)のコイン形蓄電池を用いて行った。正極にはLiFePO4を活物質とする電極を用いた。また、電解液として前述の電解液Aと、電解液Bおよび電解液Cとしてイオン液体を非水溶媒として用いたものを準備した。電解液Bは、非水溶媒として一般式(G1)に示す1,3−ジメチル−1−プロピルピペリジニウムビス(フルオロスルホニル)アミド(略称:3mPP13−FSA)を用い、電解質としてリチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)アミド(Li(CF3SO2)2N,略称:LiTFSA)を用い、LiTFSAを3mPP13−FSAに溶解させ、1mol/Lの濃度に調整したものを準備した。電解液Cは、非水溶媒に一般式(G2)に示す1−メチル−1−プロピルピロリジニウムビス(フルオロスルホニル)アミド(略称:P13−FSA)を用い、電解質としてLiTFSAを用い、LiTFSAをP13−FSAに溶解させ、1mol/Lの濃度に調整したものを準備した。また、セパレータとして、セル1乃至セル3ではWhatman製のガラス繊維濾紙であるGF/Cを用いた。厚さは260μmであった。また、セル4ではポリプロピレンのセパレータを用いた。また、用いた正極の活物質量、負極の種類および活物質量を表3に示す。
ここで、正極にLiFePO4、負極にシリコン電極を用いたフルセルの充電および放電を、式を用いて説明する。図9に、フルセルを充電する場合における、フルセル125と、充電器126との接続構成を示す。フルセルに充電を行う場合、正極では、式(5)の反応が起こる。
z(LiFePO4) → z(Li1−yFePO4 + yLi+ + ye−) (5)
また、負極では、式(6)の反応が起こる。
Si + xLi+ + xe− → SiLix (6)
図10に、フルセルを放電する場合における、フルセル125と、負荷127との接続構成を示す。フルセルの放電を行う場合、正極では式(7)の反応が起こる。
z(Li1−yFePO4 + yLi+ + ye−) → z(LiFePO4) (7)
また、負極では、式(8)の反応が起こる。
SiLix → Si + xLi+ + xe− (8)
ここで、式(5)乃至式(8)において、xはx≦4.4を満たす。また、yとzの積はxと等しい。
充放電は、0.1Cのレートで定電流充放電した。充放電の上限電圧を4.0V、下限電圧は2Vとした。また、測定温度は25℃で行った。なお、レートはLiFePO4の理論容量である170mAh/gを基準として算出している。
得られた初回の放電容量は、セル1が109.8mAh/g,セル2が116.7mAh/g,セル3が106.5mAh/g,セル4が110.7mAh/gであった。図5に初回放電容量を100%とした場合の容量維持率の推移を示す。セル1の結果は実線で、セル2の結果は破線で、セル3の結果は一点鎖線で、セル4の結果は二点鎖線で表す。セル1およびセル2においては、100サイクルにおける容量維持率は約60%を示し、セル3は約50%を示し、いずれも良好な特性が得られることがわかった。また、負極Aを用いたものに比べて負極Bで、容量維持率がより高かった理由は、より粒径が大きくより表面積が小さいことにより、表面における電解液の分解反応が少なかったためと考えられる。また、電解液Aを用いたセル4では、100サイクルにおける容量維持率は12%であった。電解液Aでは溶媒としてECとDECを用いており、それに対し電解液Bは溶媒として3mPP13−FSA、電解液CではP13−FSAを用いている。これらイオン液体は、ECやDECのような有機溶媒と比較して、充放電に伴う溶媒の分解反応が少なく、より優れた特性が得られたと考えられる。