以下、本発明の好ましい電磁誘導加熱装置の実施形態について、添付図面を参照しながら説明する。なお、従来例として図7に示した構成と同一部分には同一符号を付し、共通する部分の説明は極力省略する。
図1〜図5は、本発明の第一実施形態における定着装置に組み込まれた複写機用の電磁誘導加熱装置を示している。回路構成を示す図1において、本実施形態の電磁誘導加熱装置を構成するインバータ11はシングルエンド形式のものであり、電磁誘導加熱装置に電力を供給する交流電源1、交流電源1から供給される交流電圧を、整流回路となるダイオードブリッジ3と、平滑回路となるチョークコイル4及び平滑コンデンサとにより整流平滑する電源としての整流平滑回路2、被加熱負荷を誘導加熱するための加熱手段としての加熱コイル7、加熱コイル7と共に共振回路を構成する共振コンデンサ8、スイッチング手段を構成する単一のスイッチング素子9、スイッチング素子9のオン・オフ動作を制御する制御回路15、及び加熱コイル7の消費電力を検出する電力検出回路25については、従来例と同様である。制御回路15は、従来例で示したマイクロコンピュータ(マイコン)の他、所定の制御シーケンスを組み込んだASICにより構成してもよい。
本実施形態では、従来例で示したゼロクロス検知手段21に代わり、インバータ11の発振タイミングに同期してトリガ信号を出力するトリガ検出回路31が設けられる。このトリガ検出回路31は、加熱コイル7に高周波電流が流れていると、この高周波電流に同期したトリガ信号を制御回路15に出力するもので、交流電源1からの交流電圧がゼロクロス付近で加熱コイル7の電流がゼロ近辺になり、インバータ11が自励発振の状態になると、一時的にトリガ信号が出力されなくなる。
上記電力検出回路25やトリガ検出回路31の他に、制御回路15には、ドライブ回路33、不揮発性メモリとしてのEEPROM(Electrically Erasable Programmable Read-Only Memory)34、各種安全回路35、及びインターフェイス回路36が各々接続される。また図1において、41は交流電源1のコンセント(図示せず)に着脱可能な電磁誘導加熱装置の電源プラグ、42はダイオードブリッジ3の入力側に接続する保護回路、43はダイオードブリッジ3の整流出力から例えば20Vや5Vの直流動作電圧を生成して、電磁誘導加熱装置の各部に供給する電源回路である。保護回路42は、過電流保護用のヒューズ44、過電圧保護用のバリスタ45、及びバリスタ45に並列接続されるコンデンサ46により構成される。
ドライブ回路33は、制御回路15からの例えば20〜40kHzのパルス制御信号を受けて、スイッチング素子9がオン・オフ動作し得るパルス駆動信号を、スイッチング素子9の制御端子(ゲート)に生成出力するもので、ここでのパルス制御信号とパルス駆動信号は実質的に同一の信号と見ることができる。
記憶手段としてのEEPROM34は、各種の設定値や、制御回路15を後述するゼロクロスタイミング生成手段51やインバータ発振制御手段52として機能させるためのプログラムなどを記録保持するものである。なお、EEPROM34以外の各種の記憶手段を代わりに用いてもよい。
各種安全回路35は、例えば定着装置のヒートローラが、意図しない温度以上に加熱されたときに、スイッチング素子9へのパルス駆動信号の供給を強制的に停止させる強制停止信号を、制御回路15に送出する機能などを備える。それ以外に各種安全回路35は、電磁誘導加熱装置の安全性を高める機能を具備してもよい。
インターフェイス回路36は、図示しない定着装置との間で様々な信号のやり取りを行なうもので、ここでは制御回路15からの出力信号OUTPUTが、第1フォトカプラ37Aにより電気的に絶縁された状態で定着装置に送出される一方で、定着装置からの入力信号INPUTが、別な第2フォトカプラ37Bにより電気的に絶縁された状態で制御回路15に取り込まれる。ここでの入力信号INPUTは、加熱コイル7の消費電力を設定する電力設定信号などが含まれる。
制御回路15は、何れもEEPROM34から読み取ったプログラムを実行することで機能するゼロクロスタイミング生成手段51と、インバータ発振制御手段52と、を主な構成としている。ゼロクロスタイミング生成手段51は、トリガ検出回路31で検出されたインバータ11の自励発振の発生タイミングを、トリガ検出回路31からの測定結果としてその都度取り込み、そこから交流電源1の交流電圧のゼロクロス毎に起動するタイマを、制御回路15の内部で生成するものであり、ここでは2つのタイマ、すなわちインバータ11の自励発振が発生する毎に、次の自励発振が発生するまでの周期(時間)を計測する第1タイマ51Aと、第1タイマ51Aで計測された自励発振の複数回の周期の平均値が、交流電圧のゼロクロス付近の周期としてセットされると、そのセットされた周期毎に起動する第2タイマ51Bと、を各々内蔵している。
またインバータ発振制御手段52は、第2タイマ51Bが起動するのに同期して、スイッチング素子9のオン・オフ動作が行われるように、スイッチング素子9のゲートに適切なパルス駆動信号を送出するものである。特に本実施形態のインバータ発振制御手段52は、電力検出回路25で検出した消費電力が、定着装置からの電力設定信号に対応した設定した値になるように、交流電源1からの交流電圧の半周期毎に、その全期間に渡ってスイッチング素子9をオン・オフ動作させるか否かを判断することで、加熱コイル7の通電率制御を行なう構成となっている。したがって、ここでの加熱コイル7の通電率とは、交流電圧の複数の半周期に対する加熱コイル7へ高周波電流を供給する時間の割合となり、交流電圧の半周期を基本単位として、加熱コイル7の通電率が可変調節される。
そしてインバータ発振制御手段52は、スイッチング素子9をオン・オフ動作させると判断した場合に、第2タイマ51Bが起動する言わば交流電圧のゼロクロスのタイミングで、スイッチング素子9へのパルス駆動信号の出力を開始し、スイッチング素子9をオン・オフ動作させないと判断するまで、交流電圧の半周期の全期間に渡って、スイッチング素子9にパルス駆動信号を繰り返し出力する一方で、スイッチング素子9をオン・オフ動作させないと判断したら、第2タイマ51が再起動するタイミングで、スイッチング素子9へのパルス駆動信号の出力を停止する構成を備えている。
次に、上記構成について、その作用を図2のフローチャートや図3〜図5の波形図を参照しながら説明する。図3及び図4は何れも電磁誘導加熱装置の開始直後において、上段から交流電源1からの交流電圧波形、ダイオードブリッジ3からの全波整流波形、加熱コイル7の電流波形、スイッチング素子9の両端電圧波形、及びトリガ検出回路31からの出力信号波形の時間変化をそれぞれ示している。また、図5は交流電源1からの交流電圧波形(図中「電源電圧」)と、スイッチング素子9のゲート電圧波形(図中「IGBTゲート電圧」)の時間変化を示している。例として、各図に示す交流電圧の周波数は50Hz、すなわち交流電圧の半周期は10ミリ秒とする。
交流電源1からの正弦波状の交流電圧が電源である整流平滑回路2に投入されると、整流平滑回路2はその交流電圧を整流平滑して、インバータ11への直流電圧に変換出力する。また、電源回路43は電磁誘導加熱装置の各部の直流動作電圧を供給する。
ここで定着装置からの入力信号として、インターフェイス回路36を通して制御回路15に電磁誘導加熱装置の開始信号が送出されると、制御回路15のゼロクロスタイミング生成手段51が起動して、交流電圧のゼロクロスの周期を第2タイマ51Bにセットするための初期動作が開始する。これを受けて、制御回路15からのパルス制御信号により、ドライブ回路33からスイッチング素子9のゲートにパルス駆動信号が与えられると、スイッチング素子9がオン・オフを繰り返して、加熱コイル7と共振コンデンサ8からなる並列回路に直流電圧が断続的に印加され、インバータ11が発振して、加熱コイル7に図3や図4に示すようなピーク値が正弦波状に変化する高周波電流が流れる。それにより、加熱コイル7から交番磁界が発生して、負荷である定着装置のヒートローラに渦電流が発生し、ヒートローラが電磁誘導加熱される。
また、発振中のインバータ11内では、スイッチング素子9により加熱コイル7を流れる電流が断続されるため、スイッチング素子9のオン時に交流電圧に相応する電流が加熱コイル7に流れる。また、インバータ11が発振しているときには、スイッチング素子9のオフ時に加熱コイル7の電流に相応した共振電圧がスイッチング素子9の両端間に発生する。このときトリガ検出回路31は、スイッチング素子9の両端間に発生する電圧から、インバータ11の発振タイミングを取るためのパルス波形をトリガ信号として制御回路15に送り出す。
こうして、スイッチング素子9のオン・オフ動作に伴うインバータ11の発振に同期して、トリガ検出回路31から制御回路15にトリガ信号が出力されると、制御回路15はこのトリガ信号でタイミングを取りつつ、所定の幅と周波数のパルス制御信号を発振信号としてドライブ回路33に送出する。つまり制御回路15は、ヒートローラを加熱する際に、トリガ検出回路31からのトリガ信号を利用して電磁誘導加熱の制御を行なう。
一方、交流電源1からの交流電圧のゼロクロス付近では、加熱コイル7に流れる電流が少なくなり、トリガ検出回路31はトリガ信号の出力ができなくなる。このため、トリガ信号が一定期間検出されない間は、トリガ信号が無くてもインバータ11が発振する自励発振の状態となる。本実施形態のトリガ検出回路31は、インバータ11の自励発振が発生したのを検出測定する測定手段としての機能も有している。
図2は、ゼロクロスタイミング生成手段51の動作手順をフローチャートで示したものである。同図において、ゼロクロスタイミング生成手段51を起動した状態でインバータ11を発振させて、トリガ検出回路31からのトリガ信号が一時的に出力されなくなると、ゼロクロスタイミング生成手段51はステップS1で、そのタイミングが前回の自励発振の発生タイミングから第1時間である12ms以上を経過したか否かを判別する。ここで、ゼロクロスタイミング生成手段51を起動してから、最初に自励発振が発生した場合は、トリガ検出回路31からトリガ信号が出力されなくなるタイミングと前回の自励発振の発生タイミングが第1時間以上経過しているので、最初の自励発振の発生であると判断して、ステップS2〜ステップS5の各手順に進む。それ以外の場合は、ステップS11〜ステップS21の各手順に進む。
ステップS2において、ゼロクロスタイミング生成手段51は、インバータ11の自励発振の間隔を計測する自励間隔カウンタをリセットし、次のステップS3で第1タイマ51Aを停止させ、その後で第1タイマ51Aを開始して、第1タイマ51Aのカウントをリセットした状態から開始させる。そしてゼロクロスタイミング生成手段51は、ステップS4で別な周期カウント回数をリセットし、さらにステップS5で取得した周期をリセットして、次にゼロクロス検出手段31からトリガ信号が出力されなくなるのを待機する。このように本実施形態では、ゼロクロスタイミング生成手段51を起動してから、最初にインバータ11の自励発振が発生したのをトリガ検出回路31で検出し、ゼロクロスタイミング生成手段51で判断したら、第1タイマ51Aが起動してカウント開始するようになっている。
その後、前回の自励発振の発生から12ms未満の間隔で、再びゼロクロス検出手段31からトリガ信号が出力されなくなると、ゼロクロスタイミング生成手段51はステップS11において、そのタイミングが前回の自励発振の発生タイミングから第2時間である7ms以上を経過したか否かを判別する。
ここでもし7ms以上経過していれば、ゼロクロスタイミング生成手段51は再びインバータ11の自励発振が発生したと判断してステップS12に移行し、自励間隔カウンタをリセットして、次のステップS13で第1タイマ51Aを停止させる。そして、続くステップS14において、それまで第1タイマ51Aがカウントした値、すなわち前回の自励発振の発生タイミングから今回の自励発振の発生タイミングまでの周期を取得する。さらにステップS15において、第1タイマ51Aのカウントをリセットした状態から開始させ、次のステップS16で、周期カウント回数の数を1増加させた後、その周期カウントの回数が、予め設定した数(=n)以上であるか否かをステップS17で判別する。なお、ステップS14で取得した周期や、ステップS16でインクリメントされた周期カウント回数の値は、何れもEEPROM34に記憶される。
一方、前記ステップS11で7ms以上経過していなければ、ゼロクロスタイミング生成手段51はインバータ11の自励発振以外の要因であると判断して、ステップS12〜ステップS21の各手順を行なうことなく、次にゼロクロス検出手段31からトリガ信号が出力されなくなるのを待機する。
前記ステップS17において、周期カウントの回数がn未満であれば、次にゼロクロス検出手段31からトリガ信号が出力されなくなるのを待機する。その後、前回の自励発振の発生から7ms以上〜12ms未満の間隔で、再びゼロクロス検出手段31からトリガ信号が出力されなくなると、ゼロクロスタイミング生成手段51はそれがインバータ11の自励発振によるものと判断して、ステップS12〜ステップS17の各手順を繰り返し行なう。そしてステップS17において、周期カウントの回数がn以上に達すると、ステップS18に移行して、それまで取得したn回分の周期の平均値を、交流電圧のゼロクロス付近の周期として計算し、ステップS19でその値を第2タイマ51Bのカウンタにセットする。この後にゼロクロスタイミング生成手段51は、ステップS20で第2タイマ51Bを停止させ、次のステップS21で第2タイマ51Bを開始して、第2タイマ51Bを起動させることにより、交流電圧のゼロクロス毎に再起動する第2タイマ51Bを完成させる。
こうして本実施形態のゼロクロスタイミング生成手段51は、インバータ11の自励発振が発生する毎に、第1タイマ51Aでそれまでカウントされた値を取得して、第1タイマ51Aを再起動させ、この動作を複数回繰り返し行なうことにより、第1タイマ51Aからその都度取得した値の平均を、交流電圧のゼロクロス付近の周期として第2タイマ51Bにセットする。そして、この第2タイマ51Bを起動することで、交流電圧のゼロクロス毎に再起動する第2タイマ51Bを、従来のようなゼロクロス検知手段21を設けることなく、追加のコストがかからないプログラムにより生成できる。
なお上記一連の手順で、第1時間は第2時間よりも大きく、その値は交流電圧の周波数やインバータ11の自励発振の持続時間などを考慮して適宜設定すればよい。また、交流電圧の周波数が途中で変動した場合でも、正しく交流電圧のゼロクロス毎に第2タイマ51Bを起動できるように、インバータ11の発振中にゼロクロスタイミング生成手段51を所定時間毎に起動させ、上述した一連の手順をその都度行なわせてもよい。
次に、上述の第2タイマ51Bを利用したインバータ発振制御手段52の動作について、図5を参照して説明する。
ゼロクロスタイミング生成手段51によって、交流電圧のゼロクロス毎に起動する第2タイマ51Bが生成されると、インバータ発振制御手段52は、電力検出回路25で検出した消費電力が、定着装置からの電力設定信号に対応した設定した値になるように、交流電源1からの交流電圧の半周期毎に、加熱コイル7の通電率に応じてスイッチング素子9のゲート出力を制御するために、その半周期の全期間に渡ってスイッチング素子9をオン・オフ動作させるか否かを判断する。ここでもし、スイッチング素子9をオン・オフ動作させると判断した場合は、第2タイマ51Bが起動するタイミングで、スイッチング素子9へのパルス駆動信号の出力を開始することで、加熱コイル7を含む共振回路の発振を開始させる。すなわち、スイッチング素子9へのパルス駆動信号の出力が開始されることで、これと同じタイミングで整流平滑回路2により交流から変換された直流がパルスとして加熱コイル5へ印加される。
図5に示すように、スイッチング素子9のオン・オフ動作開始タイミングt1は、スイッチング素子9のターンオン時の短絡エネルギーが最小となる交流電圧のゼロクロスとなるため、スイッチング素子9のオン・オフ動作開始時における騒音を低減し、スイッチング損失を低減することができる。すなわち、ゼロクロスのタイミング以外でパルス駆動信号の出力を開始した場合は、スイッチング素子9の動作前に平滑コンデンサ5に蓄えられた電荷と交流電源1からの電力とが同時に印加されてスイッチング素子9に大きな電流が流れるため、騒音(ノイズ)やスイッチング損失が大きく、スイッチング素子9を破損する可能性もあるが、ゼロクロスのタイミングでパルス駆動信号の出力を開始した場合はそのようなことはない。
なお、スイッチング素子9へのパルス駆動信号の出力開始時に、そのパルス駆動信号の幅を通常時より狭い2.5マイクロ秒程度とし、その後、通常時の5マイクロ秒程度まで徐々に広くする、いわゆるソフトスタートと組み合わせることにより、さらに効果的にスイッチング素子9のオン・オフ動作開始タイミングにおけるノイズを低減し、スイッチング損失を低減することができる。
また本実施形態では、スイッチング素子9をオン・オフ動作させる加熱コイル7の通電期間Aと、スイッチング素子9をオン・オフ動作させない加熱コイル7の非通電期間Bが、何れも交流電圧の半周期の全期間に渡って継続する。そのため、スイッチング素子9のオン・オフ動作開始タイミングt1のみならず、スイッチング素子9のオン・オフ動作終了タイミングt2も、交流電圧のゼロクロスに同期し、加熱コイル7の通電を停止する際の異音の発生も防止できる。
加熱コイル7への供給電力は、制御回路15によって、ゼロクロスに同期して交流電圧の半周期毎に、その半周期の全期間に渡ってスイッチング素子9をオン・オフ動作させるか否かを判断することで調節される。したがって、ここでの加熱コイル7の通電率は、交流電圧における複数の半周期、すなわち複数のゼロクロス周期Sに対する加熱コイル7の通電期間Aの割合となる。
例えば、交流電圧の周波数が50Hzのときにその半周期であるゼロクロス周期は10ミリ秒であり、複数(この例では3つ)のゼロクロス周期Sの全範囲にわたってパルス駆動信号を繰り返し送ったとき、すなわち加熱コイル7の通電率が100%のときに加熱コイル7への供給電力が600Wとなる場合に、その中でインバータ発振制御手段52が2つのゼロクロス周期の全範囲にわたって加熱コイル7の通電期間Aを設定し、1つのゼロクロス周期の全範囲にわたって加熱コイル7の非通電期間Bを設定したとすると、加熱コイル7の通電率は100×2/3%となって、加熱コイル7への供給電力は平均で400Wに制御される。
このように本実施形態においては、交流電源1からの交流電圧の半周期ごとに、その全期間に渡ってスイッチング素子9をオン・オフ動作させるか否かを判断することで、加熱コイル7の通電率を制御して加熱コイル7への供給電力を調節するため、加熱コイル5への供給電力を小さくする際に、スイッチング素子9をオン動作させるパルス駆動信号の幅を狭くする必要がない。したがって、スイッチング素子9の両端間電圧であるエミッタ−コレクタ間の電圧がゼロ値になったタイミングで、確実に次のパルス駆動信号を供給することができ、スイッチング素子9のエミッタ−コレクタ間に過大な電流が流れることが防止される。
また、交流電圧の半周期ごとという非常に短いサイクルで、半周期毎にその全期間に渡ってスイッチング素子9をオン・オフ動作させるか否かを判断して、加熱コイル7の通電率を制御するので、通電率を小さくした場合には、恰もハーフブリッジ形式のインバータのごとく小電力で連続通電している場合と等価になる。したがって、シングルエンド形式の共振形高周波インバータ11を用いているにも拘らず、消費電力が小さい領域においても、加熱コイル7への供給電力を安定して制御できる。
本実施形態において、加熱コイル7への供給電力は、電力検出回路25により検出された電力に基づいて、インバータ発振制御手段52によりフィードバック制御されることによって、目標となる電力設定信号に応じた設定値に保たれる。ここでの供給電力は、上述のとおり、スイッチング素子9へ印加されるパルス駆動信号の通電率を調節することによって制御される。
通電期間Aの終了時には、スイッチング素子9へ印加されるパルス駆動信号をいきなり止めるのではなく、制御回路15によって、パルス駆動信号の幅を徐々に狭くすることによって終了する。これにより、終了時の騒音がさらに防止される。
以上のように、本実施形態の電磁誘導加熱装置は、交流電圧を直流電圧に変換する電源としての交流電源1と、スイッチング手段となるスイッチング素子9を備えたインバータ11と、インバータ11の共振コンデンサ8と並列に接続して、その共振コンデンサ8と共振回路を構成する加熱手段としての加熱コイル7と、を備え、スイッチング素子9のオン・オフ動作により、交流電源1からの直流を加熱コイル7に断続的に印加して、負荷である例えば定着装置のヒートローラを電磁誘導加熱する構成を有し、ここでは特にインバータ11の自励発振の発生タイミングを測定する測定手段としてのトリガ検出回路31と、トリガ検出回路31からの測定結果を受けて、交流電源1からの交流電圧のゼロクロス毎に起動するタイマとして、ゼロクロスタイミング生成手段51により第2タイマ51Bを生成し、当該第2タイマ51Bの起動に同期して、スイッチング素子9のオン・オフ動作をインバータ発振制御手段52により制御する制御手段としての制御回路15と、を備えている。
この場合、交流電源1からの交流電圧のゼロクロス付近で、インバータ11の自励発振が発生したタイミングを、トリガ検出回路31の測定結果から制御回路15に取り込み、交流電圧のゼロクロス毎に起動する第2タイマ51Bを制御回路15で生成することにより、ゼロクロスのタイミングに同期してスイッチング素子9のオン・オフ動作、ひいては負荷であるヒートローラの加熱動作を、従来のゼロクロス検知回路21を用いることなく、追加のコストを掛けずにプログラムで行なうことが可能になる。
また、本実施形態のインバータ11は、単独のスイッチング素子7を備えたシングルエンド形式のインバータ11であり、制御回路15は、交流電源1からの交流電圧の半周期毎に、その全期間に渡ってスイッチング素子9をオン・オフ動作させるか否かを判断することで、加熱コイル7の通電率制御を行なう構成としている。
この場合、交流電圧の半周期という非常に短いサイクルを基本単位として、半周期毎にその全期間に渡ってスイッチング素子9をオン・オフ動作させるか否かを判断して、加熱コイル7の通電率制御を行なうため、恰もハーフブリッジ形式のインバータのように小電力で連続通電しているのと等価にすることが可能となり、シングルエンド形式のインバータ11を用いて、消費電力が小さい領域においても、加熱コイル7への供給電力を安定して制御することが可能となる。
また、本実施形態の制御回路15は、交流電圧のゼロクロスのタイミングで、スイッチング素子9のオン・オフ動作、ひいては加熱コイル7の通電を開始する構成となっている。
この場合、交流電圧のゼロクロスのタイミングで、インバータ11の発振が開始するので、スイッチング素子9のオン・オフ動作開始時における物理的や電気的なショック(騒音発生,素子破損)がない。また、スイッチング素子9のオン・オフ動作の開始だけでなく、オン・オフ動作の終了も交流電圧のゼロクロスと同期させることができ、異音の発生しない電磁誘導加熱装置を提供できる。
また、本実施形態の電磁誘導加熱装置は、加熱コイル7の消費電力を検出する電力検出手段としての電力検出回路25をさらに備え、制御回路15は、電力検出回路25で検出した消費電力が設定した値になるように、交流電源1からの交流電圧の半周期毎に、その全期間に渡ってスイッチング素子9をオン・オフ動作させるか否かを判断することで、加熱コイル7の通電率制御を行なう構成としている。
この場合、加熱コイル7の消費電力が所定の値になるように加熱コイル7の通電率制御を行うため、加熱コイル7の消費電力が小さい領域においても、加熱コイル7の消費電力を所定の値に維持することが可能となる。