JP6522293B2 - 化学洗浄方法及び化学洗浄装置 - Google Patents
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Description
また、配管や特許文献3の金属製フィルタの表面に、自然酸化スケールであるマグネタイト層が形成されている。特許文献3の方法では付着した鉄酸化物スケールを全て溶解させることなくマグネタイト層だけを溶解させてスケールを剥離させることになる。従って、特許文献3に開示される方法を用いれば、スラッジが発生する。
このため、従来の化学洗浄では洗浄液からスラッジを除去する必要があった。スラッジを除去する方法としては、洗浄液が通過する部分の途中にフィルタを設けて洗浄液中に浮遊するスラッジを捕集する方法や、化学洗浄後に洗浄対象機器の配管等の一部を切断して管内部を点検して、吸引清掃など物理的方法により除去してから再度配管を溶接する方法などがある。
更に、中性の除錆剤を含む洗浄液を用いるため、洗浄対象機器の下流側にステンレス製部品を有する機器が配置される場合でも、部材の腐食を防止するための水張等を実施する必要が無く、水張のための設備が不要となり、装置構成が簡略化する。また、洗浄時に水素が発生しないので火気を用いる機械工事や電気工事と並行して化学洗浄を実施することができるとともに、各部の点検やメンテナンス作業を並行して実施することができることから、メンテナンス工期を短縮することができる。
このように本発明の化学洗浄方法及び化学洗浄装置を用いれば、設備費や薬品代などのメンテナンスに要するコストを大幅に削減することができるので有利である。
そこで本態様の化学洗浄方法及び化学洗浄装置では、洗浄中に洗浄対象機器から一旦排出された洗浄液中の鉄濃度を用いて化学洗浄の終了を判定している。こうすることによって鉄濃度の計測が容易になるばかりでなく、洗浄対象機器から排出されることによって洗浄液が撹拌され鉄濃度が均一化するので、計測精度が向上する。本発明に依れば、確実に化学洗浄によりヘマタイトを除去することができ、メンテナンス効率が向上するという効果を得ることができる。
更に本態様に依れば、付着したヘマタイトの残量有無を判断するという簡易な方法により化学洗浄の終了を判定することができるので作業効率が向上するという効果を奏する。
また本態様では、ヘマタイト付着面と反対側の面から超音波計測または交流電気特性計測を実施することにより取得した計測値がヘマタイトの付着状況に対応して変化することに着目した。本態様は洗浄液を採取する必要がなく、付着したヘマタイトの残量有無を判断するという簡易な方法で迅速に化学洗浄の終了を判定することが可能であるという利点を有する。
上記化学洗浄装置は、前記洗浄液を、銀−塩化銀電極基準で酸化還元電位が−0.8V以上−0.4V以下の還元状態に調整する還元雰囲気調整部を備える。この場合、前記還元雰囲気調整部が、前記洗浄対象機器に還元雰囲気ガスを供給しても良い。
上記化学洗浄方法において、前記部材に供給された前記洗浄液の温度が、前記部材の周辺の環境温度以上前記環境温度よりも10℃高い温度以下の範囲内であることが好ましい。
洗浄液を環境温度より10℃高い温度以下に昇温すれば、更に洗浄力を高めることも可能である。例えばポンプ運転時に発生する熱を利用して、洗浄液を容易に昇温することができる。本発明の構成は積極的な冷却がないので長時間に亘り洗浄液の温度を環境温度よりも高く維持することが可能である。
本発明に依れば酸性洗浄液を用いた従来法よりも低温で洗浄を行うことができる結果、設備費及び洗浄コストを削減することが可能である。
また、本発明では他の機器に洗浄液が送給されず、洗浄時に水素が発生しないため、化学洗浄と同時に他の作業を行うことが可能である。このため本発明は、従来技術と比較してメンテナンス工期が短縮するという有利な効果を奏する。
更に本発明は、洗浄工程中に計測されるパラメータを用いてヘマタイトの除去状況をモニタリングして洗浄工程終了のタイミングを判定しているので、ヘマタイトを部材表面から確実に除去できる。
中性の除錆剤は、キレート剤、還元剤、またはキレート剤と還元剤の混合剤である。キレート剤は、例えばEDTA、BAPTA、DOTA、EDDS、INN、NTA、DTPA、HEDTA、TTHA、PDTA、DPTA−OH、HIDA、DHEG、GEDTA、CMGA、EDDSなどのアミノカルボン酸やこれらの塩などのアミノカルボン酸系キレート剤、クエン酸、グルコン酸、ヒドロキシ酢酸などのオキシカルボン酸やこれらの塩などのオキシカルボン酸系キレート剤、ATMP、HEDP、NTMP、PBTC、EDTMP等の有機リン酸やこれらの塩などの有機リン系キレート剤である。還元剤は、例えば、Fe2+、Sn2+などの各種金属イオン、亜硫酸ナトリウムなどの亜硫酸塩、シュウ酸、蟻酸、アスコルビン酸、ピロガロールなどの有機化合物、ヒドラジン、水素などである。中性の除錆剤を含む洗浄液は、pHが4〜8であり、好ましくはpHが5〜7である。
図1は第1実施形態に係る化学洗浄装置を説明する概略図である。図1は、メンテナンス時において火力発電システム1に化学洗浄装置100が設置された場合を示す。火力発電システム1の構成は図20と同じである。火力発電システム1では、貫流ボイラ10の火炉壁管などの伝熱配管内部に粉状スケールであるヘマタイトが付着して伝熱配管の熱伝導率が低下している。従って、伝熱性能の回復のために、貫流ボイラ10が洗浄対象機器となっている。
燃焼室11bの下部に下部管寄せ14bが設置され、複数の火炉壁管13bの下端部が下部管寄せ14bに接続する。燃焼室11bの上部に上部管寄せが設置され、複数の火炉壁管13bの上端部が上部管寄せ15bに接続する。
薬液供給ライン102には、ポンプ105及びバルブV1が設置される。薬液排出ライン103にはバルブV2が設置される。ポンプ105、バルブV1,V2は制御部104に連絡する。
本実施形態の化学洗浄方法は例えば、火力発電システムの定期点検時において、炉内足場を架設する工程や洗浄対象機器(貫流ボイラ10)以外の機器を工事する工程の期間中に実施される。
本実施形態の化学洗浄方法を実施するに当たり、貫流ボイラ10と節炭器26とを連結する配管に設置されるバルブは閉鎖される。
制御部104はバルブV2,V3を開放する。還元雰囲気ガス(窒素ガスなど)が、還元雰囲気ガス貯留部111から給気ライン112を介して貫流ボイラ10の火炉壁管13a,13bに送給される。火炉壁管13a,13b内の空気が薬液排出ライン103を介して系外に排出される。この工程により、貫流ボイラ10内の火炉壁管13a,13b内の空気が薬液排出ライン103を介して排出される。ガス供給工程により、火炉壁管13a,13b内が還元雰囲気ガスで充填される。
ガスの置換に十分な時間が経過した後、制御部104はバルブV2,V3を閉鎖する。
制御部104はポンプ105を起動させるとともにバルブV1を開放する。制御部104はバルブV4を開放する。薬液タンク101内の洗浄液が薬液供給ライン102を介して貫流ボイラ10に送給される。これにより、火炉壁管13a,13b内面が洗浄液に浸漬し、供給された洗浄液に相当する体積の窒素など火炉壁管13a,13b内のパージガスが排気ライン113を介して系外に排出される。
ヘマタイトが付着した領域が洗浄液に浸漬されると、制御部104はポンプ105を停止するとともにバルブV1,V4を閉鎖する。洗浄液が静置された状態で、ヘマタイトが洗浄液に漬け置きされて洗浄工程が実施される。
漬け置き時間(洗浄時間)はヘマタイトの発生量にも依るが、例えば24時間以上である。この洗浄工程中は、火炉壁管13a,13b内の圧力はほとんど変化することがなく、一定である。
酸化還元電位が所定値から外れた場合に、洗浄液中に上述の還元剤を追加してもよい。具体的に、上記と同様に薬液タンク101に洗浄液を戻し、薬液タンク101内で還元剤が添加された後に、洗浄液が貫流ボイラ10に送給される。
酸化還元電位の維持は、酸化還元電位をモニタリングする制御部104からの指示に基づいて自動化されていても良いし、作業員が酸化還元電位の検出と維持とを手動で実施しても良い。
洗浄液浸漬前の火炉壁管内面は赤色であり、SEM写真(図5)では自己酸化スケール(マグネタイト(Fe3O4))とヘマタイトとが確認された。一方、化学洗浄後の火炉壁管内面は黒色であり、SEM写真(図6)では自己酸化スケールのみが確認できた。
洗浄工程において、所定の時間周期でバルブV2,V3が開放される。還元雰囲気ガスが、還元雰囲気ガス貯留部111から給気ライン112を介して貫流ボイラ10の火炉壁管13a,13bに送給され、火炉壁管13a,13b内の洗浄液が下部管寄せ14a,14bから薬液排出ライン103を介して薬液タンク101に送給される。全ての洗浄液が薬液タンク101に収容されると、バルブV2,V3が閉鎖される。
薬液タンク101に回収された洗浄液の一部が採取される。採取された洗浄液を用いて、JIS B8224にて規定される定量分析により、洗浄液中の鉄濃度が計測される。所定の時間周期で取得された鉄濃度が、制御部104の判定部に入力される。
洗浄液中の鉄濃度の数値は時間とともに増加し、ヘマタイトが完全に火炉壁管13a,13bから除去されると濃度は略一定値へと飽和することとなる。判定部は、鉄濃度の時間変化からヘマタイトが溶出して除去される状況を判定する。
判定部は、時間Ttと時間Tt−1との間の鉄濃度の単位時間当たりの濃度勾配ΔCt(=(Ct−Ct−1)/(Tt−Tt−1))を取得する。判定部は、前回取得した鉄濃度の単位時間当たりの濃度勾配ΔCt−1(=(Ct−1−Ct−2)/(Tt−1−Tt−2))を格納している。
判定部は、今回取得した濃度勾配ΔCtと前回取得した濃度勾配ΔCt−1の変化量Δdtを取得する。判定部は、取得したΔdtが予め格納された判定基準の範囲内である場合に、判定基準に到達したと判定する。例えば、判定基準は±20%とする。洗浄対象機器10内でのヘマタイトの析出が比較的均一である場合には、判定基準を±10%とすることにより、判定精度を向上させることができる。
本判定方法では、(A)ヘマタイトが付着した試験片、(B)火炉壁管、のいずれかの色変化を観測することによって判定される。
ヘマタイトが付着した試験片が準備される。
試験片は、図7に示すように軸方向に沿って二分割に切断された火炉壁管であり、内壁面にヘマタイトが付着している。この試験片(切断試験片120)は、洗浄されている貫流ボイラ10(洗浄対象機器)と同程度のヘマタイトが付着しているものである。例えば、以前のメンテナンス時に同一位置から採取された火炉壁管や、類似条件で運用された別のプラントから採取された火炉壁管を切断して試験片が作製される。
試験片は、火炉壁管と同じ材質の板材(板状試験片)であって、一表面に火炉壁管と同程度のヘマタイトが付着したものであっても良い。
また試験片は、上記のように採取された火炉壁管(筒状の試験片であって、上記切断試験片のように軸方向に沿って切断していないもの)であっても良い。
浸漬方法としては、洗浄開始と同時に、複数個の切断試験片または板状試験片が薬液タンク101に貯留されている洗浄液中に浸漬される。
この場合、薬液タンク101内部に還元雰囲気ガスが送給可能な構成とされて、試験片が浸漬されている間、薬液タンク101内部の洗浄液が火炉壁管13a,13bと同等の酸化還元電位に調整されることが好ましい。
この場合、還元雰囲気ガスにより、切断試験片120内に注入された洗浄液の酸化還元電位が火炉壁管13a,13bと同等の酸化還元電位に調整されることが好ましい。
この場合、ガス供給工程において還元雰囲気ガスがバイパス部130にも到達するように供給して、筒状試験片132が浸漬されている間の筒状試験片132内の洗浄液が火炉壁管13a,13bと同等の酸化還元電位に調整されることが好ましい。
洗浄工程中に、薬液タンク101内の洗浄液に浸漬された試験片の1つが、所定の時間間隔で洗浄液から取り出される。取り出された試験片のヘマタイトが付着した面の色が観測される。観測は、オペレータの目視またはCCDカメラを用いて行われる。目視観察の場合、オペレータは判定部に色変化の判定結果を入力する。CCDカメラによる観測の場合、計測データが判定部に送信される。
ヘマタイトは凡そ赤色であるが、ヘマタイトの除去が進行すると下地である自然酸化層(マグネタイト:凡そ黒色)または下地金属層(凡そ銀色)が露出するので、色調が変化する。
判定部は、ヘマタイト由来の色が観測されない場合に、ヘマタイトが除去されたと判定する。判定部は、制御部104に洗浄工程を終了させ、後述の排出工程を実施させる。判定部は、ヘマタイト由来の色が観測された場合に、制御部104に洗浄工程を継続させる。
判定部が初期値に対するR成分値の比、または、初期値に対するR成分/B成分の値の比が判定基準以下である場合に、ヘマタイト由来の色が観測されないと判定する。判定部は、ヘマタイト由来の色が観測されない場合に、ヘマタイトが溶出して除去されたとして、制御部104に洗浄工程を終了させ、後述の排出工程を実施させる。
洗浄工程において、所定の時間周期でバルブV2,V3が開放される。還元雰囲気ガスが、還元雰囲気ガス貯留部111から給気ライン112を介して貫流ボイラ10の火炉壁管13a,13bに送給され、火炉壁管13a,13b内の洗浄液が下部管寄せ14a,14bから薬液排出ライン103を介して薬液タンク101に送給される。全ての洗浄液が薬液タンク101に収容されると、バルブV2,V3が閉鎖される。
火炉壁管13a,13bのヘマタイトが付着した領域17の近傍において、観察孔が穿設される。観察孔は、火炉壁管13a,13bの燃焼室11a,11bと反対側の面に形成される。観察孔にCCDカメラ用のビューポートが挿入され、内壁面が観測される。
(2−A)での説明と同様の工程で、判定部がヘマタイト由来の色からヘマタイトの除去状況を判定し、制御部104に洗浄工程の継続または終了を実施させる。
本方法では、超音波による肉厚計測または交流電気特性計測によって火炉壁管内部の状態が分析される。
化学洗浄実施前に、ヘマタイトが付着した領域の火炉壁管外側に超音波探触子が取り付けられる。ヘマタイトが付着する領域は、前回のメンテナンス時に火炉壁管を採取して内壁面を観察することにより特定される。または、化学洗浄実施前に火炉壁管外側で探触子を水流通方向にスキャンさせてヘマタイトが付着した火炉壁管の肉厚を計測することにより特定される。
洗浄工程中に所定の時間間隔で火炉壁管の超音波計測が実施される。計測工程で取得された計測値(火炉壁管の厚さ)は、判定部に送信される。
ヘマタイトが溶出し除去が進行すると計測値は減少し、ヘマタイトが完全に除去されると超音波による計測値はヘマタイトの付着がない火炉壁管の肉厚として一定になる。判定部は、超音波による計測値の時間変化からヘマタイトの除去状況を判定する。
化学洗浄実施前に、ヘマタイトが付着した領域の火炉壁管外側に電気特性評価装置140が図10に示すように設置される。2本の端子141が火炉壁管13(13a,13b)の軸方向に離間して設置され、端子141間にLCRメータ142が設置される。端子141先端間の距離は、火炉壁管13(13a,13b)の直流電気抵抗分と区別しやすいように、1m〜5m程度に設定される。LCRメータ142に変えてネットワークアナライザが設置されても良い。
洗浄工程中に所定の時間間隔で火炉壁管の交流電気特性計測が実施される。
図11は図10に示すように電気特性評価装置140を設置した場合の回路図である。火炉壁管13及び火炉壁管内部の洗浄液は、それぞれ抵抗R1及びR3と表される。ヘマタイトが付着した領域17は、抵抗R2a,R2b及びコンデンサ容量C1,C2で表される。
ヘマタイトの除去が進行するとリアクタンスの計測値は減少し、ヘマタイトが完全に除去されると計測されるリアクタンスは一定になる。判定部は、リアクタンスの時間変化からヘマタイトが溶出する除去状況を判定する。
制御部104はバルブV2を開放する。火炉壁管13a,13b内の洗浄液は下部管寄せ14a,14bから薬液排出ライン103を介して薬液タンク101に送給されて回収される。これにより、本実施形態の化学洗浄方法が終了する。
回収された洗浄液は除錆剤が残存していれば、洗浄成分(除錆剤の濃度)を再調整して次の化学洗浄に再利用しても良い。
図5,6を用いて説明したように、本実施形態では自然酸化スケールであるマグネタイトの層を溶出させてヘマタイトを剥離除去する方法ではないので、スラッジの発生が抑制される。特に火力発電システム1では、貫流ボイラ10の火炉壁管の配管形状が長く複雑なために、スラッジが発生すると配管の途中にスラッジが集積して配管内を閉塞する場合がある。本実施形態のように洗浄液にヘマタイトを溶解させて火炉壁管13a,13bから除去すれば、化学洗浄後に洗浄液の排出とともに溶出したヘマタイトを排出することができる。従って、例えば本実施形態を採用した火力発電システム1では、フィルタ等のスラッジを除去する設備が不要であるし、スラッジを除去するための別の洗浄などの工程も不要である。
図12は第2実施形態に係る化学洗浄装置を説明する概略図である。
第2実施形態の化学洗浄装置200は、第1実施形態と同様に、薬液供給ライン202及び薬液排出ライン203が貫流ボイラ10の下部管寄せ14a,14bに接続する。薬液供給ライン202及び薬液排出ライン203は薬液タンク201に接続する。貫流ボイラの上部管寄せ15a,15bに排気ライン213が接続する。
制御部204はバルブV2を閉鎖する。制御部204はポンプ205及び還元雰囲気ガス供給部210を起動するとともにバルブV1を開放する。薬液タンク201内の洗浄液は薬液供給ライン202を介して還元雰囲気ガス供給部210に搬送される。還元雰囲気ガス供給部210は、洗浄液中に還元雰囲気ガスの気泡を注入する。気泡を含む洗浄液が薬液供給ライン202を介して貫流ボイラ10の火炉壁管13a,13bに供給される。
少なくともヘマタイトが付着した領域(特にヘマタイトが他部よりも多く付着した領域17)が洗浄液に浸漬されると、制御部204はポンプ205及び還元雰囲気ガス供給部210を停止するとともにバルブV1,V4を閉鎖する。洗浄液が静置された状態で、ヘマタイトの漬け置き洗浄処理が実施される。本実施形態においても、火炉壁管13a,13b内の洗浄液は火炉壁管13a,13bの周辺の環境温度と同程度であり、酸化還元電位が銀−塩化銀電極基準で−0.8V以上−0.4V以下に維持される。
第1実施形態と同様の工程で火炉壁管13a,13b内の洗浄液が薬液タンク201に回収される。これにより、本実施形態の化学洗浄方法が終了する。
図13は第3実施形態に係る化学洗浄装置を説明する概略図である。
第3実施形態の化学洗浄装置300は、第1実施形態と同様に、薬液供給ライン302及び薬液排出ライン303が貫流ボイラ10の下部管寄せ14a,14bに接続する。薬液供給ライン302及び薬液排出ライン303は薬液タンク301に接続する。
還元雰囲気調整剤供給部310はポンプ305の下流側で薬液供給ライン302に接続する。還元雰囲気調整剤供給ライン312にバルブV5が設置される。バルブV5は制御部304に接続する。
制御部304はバルブV2を閉鎖する。制御部304はポンプ305を起動するとともにバルブV1,V5を開放する。薬液タンク301内の洗浄液が薬液供給ライン302を通過する間に、還元雰囲気調整剤供給部310から洗浄液中に還元雰囲気調整剤が投入される。還元雰囲気調整剤が投入された洗浄液が貫流ボイラ10の火炉壁管13a,13bに送給される。
少なくともヘマタイトが付着した領域が洗浄液に浸漬されると、制御部304はポンプ305を停止するとともにバルブV1,V5を閉鎖する。洗浄液が静置された状態で、ヘマタイトの漬け置き洗浄処理が実施される。
第1実施形態と同様の工程で火炉壁管13a,13b内の洗浄液が薬液排出ライン303を介して薬液タンク301に回収される。これにより、本実施形態の化学洗浄方法が終了する。
図14は第4実施形態に係る化学洗浄装置を説明する概略図である。
第4実施形態に係る化学洗浄装置400は第1実施形態の化学洗浄装置と同様に、薬液タンク401、薬液供給ライン402、薬液排出ライン403、制御部404、ポンプ405、還元雰囲気ガス供給部410として還元雰囲気ガス貯留部411及び給気ライン412、排気ライン413を備える。
化学洗浄装置400において、薬液供給ライン402のポンプ405を跨いで循環ループ406が設置される。
なお、第2実施形態及び第3実施形態の化学洗浄装置に対しても循環ループを設けることができる。
図15は参考実施形態に係る化学洗浄装置を説明する概略図である。
参考実施形態に係る化学洗浄装置500は第1実施形態の化学洗浄装置と同様に、薬液タンク501、薬液供給ライン502、薬液排出ライン503、制御部504、ポンプ505、還元雰囲気ガス供給部510として還元雰囲気ガス貯留部511及び給気ライン512、排気ライン513を備える。
化学洗浄装置500は、更に水供給部520を備える構成である。水供給部520は、水タンク521及び水供給ライン522を備える。水タンク521は内部に水を収容する。水供給ライン522には水張ポンプ523及びバルブV6が設置される。水供給ライン522は、下部管寄せ14a,14bに接続する。
第1実施形態と同様の工程で、還元雰囲気ガス貯留部511から給気ライン512を介して火炉壁管13a,13b内に還元雰囲気ガスが供給され、火炉壁管13a,13b内が還元雰囲気ガスで充填される。
制御部504はポンプ505を起動するとともにバルブV1,V4を開放する。薬液タンク501内の洗浄液が薬液供給ライン502を介して貫流ボイラ10に送給される。
ヘマタイトが他部よりも多く付着した領域17が洗浄液に浸漬されると、制御部504は水張ポンプ523を停止するとともにバルブV4,V6を閉鎖する。洗浄液が静置された状態で、ヘマタイトの漬け置き洗いが実施される。本実施形態においても、洗浄工程中の洗浄液温度は火炉壁管13a,13bの周辺の環境温度と同程度であり、洗浄工程中の洗浄液の酸化還元電位が−0.8V以上−0.4V以下(銀−塩化銀電極基準)に維持される。
第1実施形態と同様の工程で火炉壁管13a,13b内の洗浄液が薬液タンク501に送給される。これにより、本実施形態の化学洗浄方法が終了する。
薬液タンク501に回収された洗浄液は除錆剤濃度が低下している。このため、新たな洗浄液を追加して洗浄液を再利用するか、薬液タンク501から洗浄液を排出して廃棄する。
第6実施形態の化学洗浄装置は、洗浄液がマイクロカプセルが収容される以外は、第1実施形態と同じ構成である。
マイクロカプセルは、上述の洗浄液が水溶性のカプセルに包装されたものである。マイクロカプセルのカプセル材質は、例えばデキストリン、加工でんぷん、ゼラチン、アラビアガム、アルギン酸ソーダ、カラギーナン等の水溶性の高分子である。マイクロカプセルの大きさは例えば直径0.5mm〜2mm程度である。マイクロカプセルは、例えば噴霧乾燥法、スプレークーリング法等により作製される。
第7実施形態に係る化学洗浄方法を、図1の化学洗浄装置100を用いて説明する。第7実施形態の化学洗浄方法では、洗浄工程以外は第1実施形態と同様にして、ガス供給工程、洗浄液供給工程及び排出工程が実施される。
また、洗浄液の排出と送給とを繰り返す期間と、静置期間とを周期的に交互に実施されてもよい。
(4)圧力変化に基づく判定
圧力変化信号に基づく判定では、図16に示すように、薬液排出ライン103の途中位置に圧力計150が設置される。
上記の洗浄工程における排出工程で、圧力計150は薬液排出ライン103を通過する洗浄液の圧力を計測する。圧力値は判定部に送信される。
送給工程により洗浄液の液面が振動すると、排出工程で圧力計150で計測される圧力は液面の振動状況を反映して周期的に変化する。この圧力の変化は、ヘマタイトの付着状況により変動する。すなわち、洗浄によりヘマタイトの除去が進行すると、洗浄液とヘマタイトとの摩擦係数が変化するために、圧力変化が経時的に変動する。ヘマタイトが火炉壁管から除去されると、送給工程での洗浄液送給の周波数と、排出工程での圧力変化の周波数とが一致する。このため、送給工程時の周期的な洗浄液送給の位相と、排出工程時の圧力変化の位相との差が一定になる。
(ステップ4−A)
判定部は、図17に例示されるように、送給工程時における送給量の波形、及び、計測工程で取得された圧力値の変化の波形を取得する。判定部は、送給量の波形と圧力変化の波形とを比較してヘマタイトが溶出する除去状況を判定する。
判定部は、計測工程で取得された圧力値の変化の波形を取得し、波形の周期や振幅などの経時変化からヘマタイトの除去状況を判定する。
図18は第8実施形態に係る化学洗浄装置を説明する概略図である。
第8実施形態に係る化学洗浄装置600は第1実施形態の化学洗浄装置と同様に、薬液タンク601、薬液供給ライン602、薬液排出ライン603、制御部604、ポンプ605、還元雰囲気ガス供給部610として還元雰囲気ガス貯留部611及び給気ライン612、排気ライン613を備える。化学洗浄装置600は更に、薬液排出ライン603にポンプ606を備える。薬液排出ライン603には、薬液排出ライン603を流通する洗浄液の圧力を計測する圧力計が設置されていても良い。
第8実施形態に係る化学洗浄方法を、図18を用いて説明する。第8実施形態の化学洗浄方法では、洗浄工程以外は第1実施形態と同様にして、ガス供給工程、洗浄液供給工程及び排出工程が実施される。
図19は第9実施形態に係る化学洗浄装置を説明する概略図である。
第9実施形態に係る化学洗浄装置700は第1実施形態の化学洗浄装置と同様に、薬液タンク701、薬液供給ライン702、薬液排出ライン703、制御部704、ポンプ705、還元雰囲気ガス供給部710として還元雰囲気ガス貯留部711及び給気ライン712、排気ライン713を備える。化学洗浄装置700は更に循環ライン720を備える。
なお、第2実施形態〜第4実施形態の化学洗浄装置に対しても同様の循環ラインを設置することが可能である。
循環ポンプ721の下流側に抜出し部722が設置される。
制御部704はポンプ705を起動させるとともにバルブV1,V4を開放する。薬液タンク701内の洗浄液が薬液供給ライン702を介して貫流ボイラ10に送給される。第9実施形態では、貫流ボイラ10内の下部管寄せ、火炉壁管、上部管寄せ、及び循環ライン720の全てに洗浄液が供給される。制御部704は下部管寄せ、火炉壁管、上部管寄せ、及び循環ライン720の全てを浸漬できる洗浄液量を格納しており、洗浄液供給工程で所定量の洗浄液を貫流ボイラ10に送給する。
所定量の洗浄液が貫流ボイラ10に送給されると、制御部704はポンプ705を停止するとともにバルブV1,V4を閉鎖する。次いで制御部704は循環ポンプ721を起動する。循環ポンプ721の起動により、洗浄液が下部管寄せ14a,14b、火炉壁管13a,13b、上部管寄せ15a,15a及び循環ライン720を通過する。すなわち、本実施形態では貫流ボイラ10に隣接する他の機器(節炭器26、気水分離器30)に洗浄液が流入することなく循環される。循環は、洗浄工程期間中に洗浄液が貫流ボイラ10〜循環ライン720の間を少なくとも1周回るだけの流量で実施される。
(1)洗浄液中の鉄濃度による判定の場合は、第1実施形態のように薬液タンク701に洗浄液が回収されて鉄濃度が測定されても良い。または、循環ライン720を通過する洗浄液の一部が抜出し部722から採取されて、鉄濃度測定に供されてもよい。
10,10a,10b 貫流ボイラ
11a,11b 燃焼室
12a,12b 壁面
13,13a,13b 火炉壁管
14a,14b 下部管寄せ
15a,15b 上部管寄せ
16 分岐部
100,200,300,400,500,600,700 化学洗浄装置
101,201,301,401,501,601,701 薬液タンク
102,202,302,402,502,602,702 薬液供給ライン
103,203,303,403,503,603,703 薬液排出ライン
104,204,304,404,504,604,704 制御部
105,205,305,405,505,605,606,705 ポンプ
110,210,410,510,610,710 還元雰囲気ガス供給部
111,411,511,611,711 還元雰囲気ガス貯留部
112,412,512,612,712 給気ライン
113,213,413,513,613,713 排気ライン
120 切断試験片
121 透明板
122 空間
130 バイパス部
131 バイパス管
132 筒状試験片
140 電気特性評価装置
150 圧力計
310 還元雰囲気調整剤供給部
311 還元雰囲気調整剤貯留部
312 還元雰囲気調整剤供給ライン
406 循環ループ
520 水供給部
521 水タンク
522 水供給ライン
523 水張ポンプ
720 循環ライン
721 循環ポンプ
722 抜出し部
Claims (12)
- 貫流ボイラの火炉壁管内部を洗浄対象機器とし、中性の除錆剤を含むpH4〜8の洗浄液が、ヘマタイトが付着した部材を有する前記洗浄対象機器に供給される洗浄液供給工程と、
前記部材中の少なくとも前記ヘマタイトが付着した領域が前記洗浄液に浸漬され、前記洗浄液の酸化還元電位が前記洗浄液に前記ヘマタイトが溶出する値に維持されて、前記ヘマタイトが前記部材から除去される洗浄工程と、
前記洗浄液中の鉄濃度が計測される計測工程と、
前記鉄濃度に基づいて前記部材からの前記ヘマタイトの除去状況が判定される判定工程とを有し、
前記洗浄工程中に前記洗浄液が前記洗浄対象機器から排出され、前記計測工程で排出された前記洗浄液中の鉄濃度が計測され、
前記判定工程において前記鉄濃度が所定濃度以上と判定された場合、または、濃度勾配の変化量が所定範囲内の値であると判定された場合に、前記洗浄工程が終了される化学洗浄方法。 - 前記洗浄工程において所定の時間周期で前記洗浄液が前記洗浄対象機器から排出され、
前記判定工程において前記鉄濃度が所定濃度未満と判定された場合、または、濃度勾配の変化量が所定範囲内よりも大きい値であると判定された場合に、前記洗浄液が前記洗浄対象機器に戻される請求項1に記載の化学洗浄方法。 - 前記洗浄工程中に、前記洗浄液が前記部材に通過して前記部材の一端側端部から排出され、排出された前記洗浄液が、前記部材の他端側端部に直接的に循環され、
前記計測工程において前記排出された前記洗浄液の一部を用いて前記鉄濃度が計測される請求項1に記載の化学洗浄方法。 - 前記値が銀−塩化銀電極基準で−0.8V以上−0.4V以下の範囲に維持されて前記洗浄工程が実施される請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の化学洗浄方法。
- 前記洗浄対象機器に還元雰囲気ガスが供給されることによって前記値が調整される請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の化学洗浄方法。
- 前記洗浄工程中の前記洗浄液の温度が、前記部材の周辺の環境温度以上前記環境温度よりも10℃高い温度以下の範囲内である請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の化学洗浄方法。
- 貫流ボイラの火炉壁管内部を洗浄対象機器とし、ヘマタイトが付着した部材を有する前記洗浄対象機器を化学洗浄するための化学洗浄装置であって、
中性の除錆剤を含むpH4〜8の洗浄液を収容する薬液タンクと、
前記洗浄対象機器と前記薬液タンクとを連結し、前記部材に前記洗浄液を供給する薬液供給ラインと、
前記薬液供給ラインに設置されるポンプと、
前記洗浄対象機器と前記薬液タンクとを連結し、前記洗浄液を前記部材から排出する薬液排出ラインと、
前記洗浄対象機器の前記洗浄液の酸化還元電位を前記洗浄液に前記ヘマタイトが溶出する値に維持して前記洗浄対象機器を洗浄している間に、前記洗浄対象機器から排出された前記洗浄液中の鉄濃度に基づいて前記部材からの前記ヘマタイトが溶出する除去状況を判定し、前記鉄濃度が所定濃度以上と判定した場合、または、濃度勾配の変化量が所定範囲内の値であると判定した場合に前記洗浄対象機器の洗浄を終了させる判定部と、を備える化学洗浄装置。 - 前記判定部が、前記洗浄対象機器から排出され前記薬液タンクに貯留された前記洗浄液中の前記鉄濃度を用いて前記ヘマタイトの除去状況を判定する請求項7に記載の化学洗浄装置。
- 前記部材の一端側端部と他端側端部とを直接的に連絡する循環ラインと、前記循環ラインに設置される循環ポンプとを備える循環部を有し、洗浄中に前記循環ラインを通じて、前記一端側端部から排出された前記洗浄液を前記他端側端部に循環させ、
前記循環ラインに抜出し部が設置され、
前記判定部が、前記抜出し部から採取された前記洗浄液中の前記鉄濃度を用いて前記ヘマタイトの除去状況を判定する請求項7に記載の化学洗浄装置。 - 洗浄中の前記洗浄液の酸化還元電位を、銀−塩化銀電極基準で−0.8V以上−0.4V以下の範囲内の値に調整する還元雰囲気調整部を備える請求項7乃至請求項9のいずれかに記載の化学洗浄装置。
- 前記還元雰囲気調整部が、前記洗浄対象機器に還元雰囲気ガスを供給する請求項10に記載の化学洗浄装置。
- 前記部材に供給された前記洗浄液の温度が、前記部材の周辺の環境温度以上前記環境温度よりも10℃高い温度以下の範囲内である請求項7乃至請求項11のいずれかに記載の化学洗浄装置。
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