JP6521488B2 - 車両用挙動制御装置 - Google Patents

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Description

本発明は、車両用挙動制御装置に係わり、特に、駆動輪を駆動するためのトルクを出力する駆動手段を備え前輪が操舵される車両の挙動を制御する車両用挙動制御装置に関する。
従来、スリップ等により車両の挙動が不安定になった場合に安全方向に車両の挙動を制御するもの(横滑り防止装置等)が知られている。具体的には、車両のコーナリング時等に、車両にアンダーステアやオーバーステアの挙動が生じたことを検出し、それらを抑制するように車輪に適切な減速度を付与するようにしたものが知られている。
一方、上述したような車両の挙動が不安定になるような走行状態における安全性向上のための制御とは異なり、日常運転領域から稼動するハンドル操作に連係した加減速を自動的に行い、限界運転領域で横滑りを低減させるようにした車両運動制御装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
特許第5193885号明細書
しかしながら、上記の特許文献1に記載された技術のように、加減速を制御装置からの指示により自動的に制御すると、ドライバの意図に必ずしも一致しない加減速が行われることになり、強い制御介入感をドライバに与えることになる。一方で、制御介入感を抑制するために制御ゲインを下げると、加減速制御による効果も低減してしまう。
また、特許文献1に記載されたような従来技術は、ドライバが旋回のための操舵をするだけで、エキスパートドライバと同様の車両運動を実現することに主眼を置いており、必ずしも通常のステアリング操作に対する車両挙動の応答性やリニア感の向上が得られるものではない。
本発明は、上述した従来技術の問題点を解決するためになされたものであり、強い制御介入感をドライバに与えることなく、ステアリング操作に対する車両挙動の応答性やリニア感を向上できると共に、車両姿勢の安定感や乗り心地も向上するように車両の挙動を制御することができる、車両用挙動制御装置を提供することを目的とする。
上記の目的を達成するために、本発明の車両用挙動制御装置は、駆動輪を駆動するためのトルクを出力する駆動手段を備え前輪が操舵される車両の挙動を制御する、車両用挙動制御装置であって、ドライバにより操作されるステアリングホイールと、ステアリングホイールの操舵角を検出する操舵角センサと、操舵角センサの検出値に基づく操舵速度を取得する操舵速度取得手段と、操舵速度取得手段によって取得された操舵速度に応じて、車両に付加すべき付加減速度を、操舵速度が大きくなるほど増大するように設定する付加減速度設定手段と、付加減速度が実現されるように、駆動手段を制御する駆動制御手段と、ステアリングホイールの切り込み操作を判定したときに、車両の横ジャークの発生とほぼ同時に減速ジャークを発生させるように基礎低減量を設定する基礎低減量設定手段と、付加減速度を実現するために必要となる駆動手段のトルク低減量を決定し、そのトルク低減量に、基礎低減量を加えることにより、要求トルク低減量を決定するトルク低減量決定手段と、を備え、駆動制御手段は、操舵角センサの検出値に基づきステアリングホイールの切り込み操作が判定されたとき、要求トルク低減量に基づき駆動手段が出力するトルクを低減させるように、駆動手段を制御する。
このように構成された本発明においては、トルク低減量決定手段は、駆動手段のトルク低減量に基礎低減量を加えることにより要求トルク低減量を決定し、駆動制御手段は、ヨーレート関連量が所定の閾値を超えた場合、駆動手段が出力するトルクを要求トルク低減量だけ低減するように、駆動手段を制御するので、ヨーレート関連量が閾値を超えるのとほぼ同時に要求トルク低減量を基礎低減量の分だけかさ上げすることができ、駆動手段から駆動輪までのトルク伝達経路に存在する遅れ要素を打ち消し、ヨーレート関連量が閾値を超えるのとほぼ同時に駆動手段のトルク低減を駆動輪まで伝達させ、車両に減速度を付加することができる。
これにより、車両の旋回初期においてステアリング操作に応じて直ちに減速ジャークを発生させ減速度を増大させることにより前輪の垂直荷重を増大させ、ドライバによるステアリング操作に対して良好な応答性・リニア感で車両の挙動を制御することができる。
また、旋回初期の横加速度の立ち上がりに同期して減速度も立ち上がり、横加速度と減速度とがリニアな関係を維持して遷移するように車両の挙動を制御することができ、車両姿勢の安定感や乗り心地も向上するように車両の挙動を制御することができる。
また、旋回初期において、要求トルク低減量を基礎低減量の分だけかさ上げすることにより、横ジャークの発生とほぼ同時に減速ジャークを発生させ、ローリングとピッチングとを同期して発生させることができる。これにより、旋回初期にダイアゴナルロール姿勢を生じさせることができ、これから旋回挙動が発生・継続することをドライバに的確に認知させることができる。
さらに、本発明によれば、要求トルク低減量を基礎低減量の分だけかさ上げすることにより、車両の旋回初期においてステアリング操作に応じて直ちに減速度を増大させ、車両に前傾姿勢を生じさせるので、操舵開始直後から、車両の旋回方向内側に位置する左胸鎖乳突筋の活動量を増大させることができる。これにより、その後車両の横加速度が増大した場合、頭部の姿勢をより安定して保持することができるので、乗員が感じる車両姿勢の安定感や乗り心地を向上することができる。
このように、本発明によれば、ドライバによるステアリング操作に対して良好な応答性で車両の挙動を制御することができ、強い制御介入感をドライバに覚えさせることなく、ステアリング操作に対する車両挙動の応答性やリニア感を向上できる。また、ドライバに与える車両姿勢の安定感や乗り心地も向上することができる。
また、別の観点では、本発明の車両用挙動制御装置は、駆動輪を駆動するためのトルクを出力する駆動手段を備え前輪が操舵される車両の挙動を制御する、車両用挙動制御装置であって、ドライバにより操作されるステアリングホイールと、ステアリングホイールの操舵角を検出する操舵角センサと、操舵角センサの検出値に基づく操舵速度を取得する操舵速度取得手段と、操舵速度取得手段によって取得された操舵速度に応じて、車両に付加すべき付加減速度を、操舵速度が大きくなるほど増大するように設定する付加減速度設定手段と、付加減速度が実現されるように、駆動手段を制御する駆動制御手段と、ステアリングホイールの切り込み操作を判定したときに、車両の減速ジャークの発生のピークが横ジャークのピーク以前となるように基礎低減量を設定する基礎低減量設定手段と、付加減速度を実現するために必要となる駆動手段のトルク低減量を決定し、そのトルク低減量に、基礎低減量を加えることにより、要求トルク低減量を決定するトルク低減量決定手段と、を備え、駆動制御手段は、操舵角センサの検出値に基づきステアリングホイールの切り込み操作が判定されたとき、要求トルク低減量に基づき駆動手段が出力するトルクを低減させるように、駆動手段を制御する。
また、本発明において、好ましくは、付加減速度の上限値は、0.5m/s2である。
このように構成された本発明においては、付加減速度は制御介入があったとドライバが感じない程度の減速度に設定されるので、強い制御介入感をドライバに覚えさせることなく、ステアリング操作に対する車両挙動の応答性やリニア感を向上できる。
本発明による車両用挙動制御装置によれば、強い制御介入感をドライバに与えることなく、ステアリング操作に対する車両挙動の応答性やリニア感を向上できると共に、車両姿勢の安定感や乗り心地も向上するように車両の挙動を制御することができる。
本発明の実施形態による車両用挙動制御装置を搭載した車両の全体構成を示すブロック図である。 本発明の実施形態による車両用挙動制御装置の電気的構成を示すブロック図である。 本発明の実施形態による車両用挙動制御装置がエンジンを制御するエンジン制御処理のフローチャートである。 本発明の実施形態による車両用挙動制御装置がトルク低減量を決定するトルク低減量決定処理のフローチャートである。 本発明の実施形態による車両用挙動制御装置が決定する目標付加減速度と操舵速度との関係を示したマップである。 本発明の実施形態による車両用挙動制御装置を搭載した車両が旋回を行う場合における、エンジン制御に関するパラメータの時間変化を示したタイムチャートであり、図6(a)は右旋回を行う車両を概略的に示す平面図、図6(b)は右旋回を行う車両の操舵角の変化を示す線図、図6(c)は右旋回を行う車両の操舵速度の変化を示す線図、図6(d)は操舵速度に基づき設定されたトルク低減フラグの値を示す線図、図6(e)は操舵速度及びトルク低減フラグに基づき決定された付加減速度の変化を示す線図、図6(f)はエンジンに要求する要求トルク低減量の変化を示す線図、図6(g)は基本目標トルクと要求トルク低減量とに基づき決定された最終目標トルクの変化を示す線図である。 本発明の実施形態による車両用挙動制御装置を搭載した車両が旋回を行ったときの前後加速度及び横加速度の変化を示す線図である。 本発明の実施形態による車両用挙動制御装置を搭載した車両と搭載していない車両のそれぞれに旋回走行を行わせたときの車両挙動の測定結果を示す線図であり、図8(a)は車両の操舵角の変化を示す線図、図8(b)はトルク低減フラグの値を示す線図、図8(c)は要求トルク低減量の変化を示す線図、図8(d)は駆動輪に働くモーメントの変化を示す線図、図8(e)は車両に発生した減速ジャークの変化を示す線図、図8(f)は車両に発生した横ジャークの変化を示す線図、図8(g)は車両のピッチ角の変化を示す線図である。 本発明の実施形態による車両用挙動制御装置を搭載した車両と搭載していない車両のそれぞれに旋回走行を行わせたときの乗員状態の測定対象を示す図である。 本発明の実施形態による車両用挙動制御装置を搭載した車両と搭載していない車両のそれぞれに旋回走行を行わせたとき、乗員の頭部のピッチ角及び頭部を支える関係筋の筋活動がどのように変化するかを示した線図である。
以下、添付図面を参照して、本発明の実施形態による車両用挙動制御装置を説明する。
まず、図1により、本発明の実施形態による車両用挙動制御装置を搭載した車両について説明する。図1は、本発明の実施形態による車両用挙動制御装置を搭載した車両の全体構成を示すブロック図である。
図1において、符号1は、本実施形態による車両用挙動制御装置を搭載した車両を示す。車両1の車体前部には、駆動輪(図1の例では左右の前輪2)を駆動する駆動力源として、エンジン4が搭載されている。エンジン4は、ガソリンエンジンやディーゼルエンジンなどの内燃エンジンである。
また、車両1は、ステアリングホイール6の回転角度を検出する操舵角センサ8、アクセルペダルの開度(アクセル開度)を検出するアクセル開度センサ10、及び、車速を検出する車速センサ12を有する。これらの各センサは、それぞれの検出値をPCM(Power-train Control Module)14に出力する。
次に、図2により、本発明の実施形態による車両用挙動制御装置の電気的構成を説明する。図2は、本発明の実施形態による車両用挙動制御装置の電気的構成を示すブロック図である。
本発明の実施形態によるPCM14は、上述したセンサ8〜12の検出信号の他、エンジン4の運転状態を検出する各種センサが出力した検出信号に基づいて、エンジン4の各部(例えば、スロットルバルブ、ターボ過給機、可変バルブ機構、点火装置、燃料噴射弁、EGR装置等)に対する制御を行うべく、制御信号を出力する。
PCM14は、アクセルペダルの操作を含む車両1の運転状態に基づき基本目標トルクを決定する基本目標トルク決定部16と、車両1のヨーレートに関連する量(ヨーレート関連量)に基づき車両1に減速度を付加するためのトルク低減量を決定するトルク低減量決定部18と、基本目標トルクやトルク低減量に基づき最終目標トルクを決定する最終目標トルク決定部20と、最終目標トルクを出力させるようにエンジン4を制御するエンジン制御部22とを有する。本実施形態では、トルク低減量決定部18は、ヨーレート関連量として車両1の操舵速度を用いる場合を説明する。
これらのPCM14の各構成要素は、CPU、当該CPU上で解釈実行される各種のプログラム(OSなどの基本制御プログラムや、OS上で起動され特定機能を実現するアプリケーションプログラムを含む)、及びプログラムや各種のデータを記憶するためのROMやRAMの如き内部メモリを備えるコンピュータにより構成される。
詳細は後述するが、PCM14は本発明における車両用挙動制御装置に相当し、ヨーレート関連量取得手段、付加減速度取得手段、トルク低減量決定手段、駆動制御手段として機能する。
次に、図3乃至図5により、車両用挙動制御装置が行う処理について説明する。
図3は、本発明の実施形態による車両用挙動制御装置がエンジン4を制御するエンジン制御処理のフローチャートであり、図4は、本発明の実施形態による車両用挙動制御装置がトルク低減量を決定するトルク低減量決定処理のフローチャートであり、図5は、本発明の実施形態による車両用挙動制御装置が決定する目標付加減速度と操舵速度との関係を示したマップである。
図3のエンジン制御処理は、車両1のイグニッションがオンにされ、車両用挙動制御装置に電源が投入された場合に起動され、繰り返し実行される。
エンジン制御処理が開始されると、図3に示すように、ステップS1において、PCM14は車両1の運転状態に関する各種情報を取得する。具体的には、PCM14は、操舵角センサ8が検出した操舵角、アクセル開度センサ10が検出したアクセル開度、車速センサ12が検出した車速、車両1の変速機に現在設定されているギヤ段等を含む、上述した各種センサが出力した検出信号を運転状態に関する情報として取得する。
次に、ステップS2において、PCM14の基本目標トルク決定部16は、ステップS1において取得されたアクセルペダルの操作を含む車両1の運転状態に基づき、目標加速度を設定する。具体的には、基本目標トルク決定部16は、種々の車速及び種々のギヤ段について規定された加速度特性マップ(予め作成されてメモリなどに記憶されている)の中から、現在の車速及びギヤ段に対応する加速度特性マップを選択し、選択した加速度特性マップを参照して現在のアクセル開度に対応する目標加速度を決定する。
次に、ステップS3において、基本目標トルク決定部16は、ステップS2において決定した目標加速度を実現するためのエンジン4の基本目標トルクを決定する。この場合、基本目標トルク決定部16は、現在の車速、ギヤ段、路面勾配、路面μなどに基づき、エンジン4が出力可能なトルクの範囲内で、基本目標トルクを決定する。
また、ステップS2及びS3の処理と並行して、ステップS4において、トルク低減量決定部18は、ステアリング操作に基づき車両1に減速度を付加するためのトルク低減量を決定するトルク低減量決定処理を実行する。このトルク低減量決定処理について、図4を参照して説明する。
図4に示すように、トルク低減量決定処理が開始されると、ステップS21において、トルク低減量決定部18は、ステップS1において取得した操舵角に基づき操舵速度を算出する。
次に、ステップS22において、トルク低減量決定部18は、操舵速度が所定の閾値TS1より大きいか否かを判定する。
その結果、操舵速度が閾値TS1より大きい場合、ステップS23に進み、トルク低減量決定部18は、車両1に減速度を付加するためにエンジン4の出力トルクを低減させる条件が満たされているか否かを示すトルク低減フラグを、トルクを低減させる条件が満たされている状態を示すTrue(真値)に設定する。
次に、ステップS24において、トルク低減量決定部18は、操舵速度に基づき目標付加減速度を取得する。この目標付加減速度は、ドライバの意図した車両挙動を正確に実現するために、ステアリング操作に応じて車両1に付加すべき減速度である。
具体的には、トルク低減量決定部18は、図5のマップに示した目標付加減速度と操舵速度との関係に基づき、ステップS21において算出した操舵速度に対応する目標付加減速度を取得する。
図5における横軸は操舵速度を示し、縦軸は目標付加減速度を示す。図5に示すように、操舵速度が閾値TS1以下である場合、対応する目標付加減速度は0である。
一方、操舵速度が閾値TS1を超えている場合には、操舵速度が増大するにしたがって、この操舵速度に対応する目標付加減速度は、所定の上限値Dmaxに漸近する。即ち、操舵速度が増大するほど目標付加減速度は増大し、且つ、その増大量の増加割合は小さくなる。この上限値Dmaxは、ステアリング操作に応じて車両1に減速度を付加しても、制御介入があったとドライバが感じない程度の減速度に設定される(例えば0.5m/s2≒0.05G)。
さらに、操舵速度が閾値TS1よりも大きい閾値TS2以上の場合には、目標付加減速度は上限値Dmaxに維持される。
次に、ステップS25において、トルク低減量決定部18は、付加減速度の変化率が閾値Rmax(例えば0.5m/s3)以下となる範囲で今回の処理における付加減速度(今回付加減速度)を決定する。
具体的には、トルク低減量決定部18は、前回の処理において決定した付加減速度から今回の処理のステップS24において取得した目標付加減速度への変化率がRmax以下である場合、ステップS24において取得した目標付加減速度を今回の処理における付加減速度として決定する。
一方、前回の処理において決定した付加減速度から今回の処理のステップS24において取得した目標付加減速度への変化率がRmaxより大きい場合、トルク低減量決定部18は、前回の処理において決定した付加減速度から今回の処理時まで変化率Rmaxにより変化させた値を今回の処理における付加減速度として決定する。
次に、ステップS26において、トルク低減量決定部18は、ステップS25において決定した今回の付加減速度に基づき、トルク低減量を決定する。具体的には、トルク低減量決定部18は、今回の付加減速度を実現するために必要となるトルク低減量を、ステップS1において取得された現在の車速、ギヤ段、路面勾配等に基づき決定する。
次に、ステップS27において、トルク低減量決定部18は、ステップS26において決定したトルク低減量に、所定の基礎低減量を加えることにより、エンジン4に要求するトルク低減量である要求トルク低減量を決定する。基礎低減量は、例えば車両1の特性に応じて予め設定された値(例えば1Nm)であり、メモリなどに記憶されている。
また、ステップS22において、操舵速度が閾値TS1より大きくない(閾値TS1以下である)場合、ステップS28に進み、トルク低減量決定部18は、車両1に減速度を付加するためにエンジン4の出力トルクを低減させる条件が満たされているか否かを示すトルク低減フラグを、トルクを低減させる条件が満たされていない状態を示すFalse(偽値)に設定する。
ステップS27又はS28の後、トルク低減量決定部18はトルク低減量決定処理を終了し、メインルーチンに戻る。
図3に戻り、ステップS2及びS3の処理及びステップS4のトルク低減量決定処理を行った後、ステップS5において、最終目標トルク決定部20は、トルク低減フラグがTrueの場合、ステップS3において決定した基本目標トルクから、トルク低減量決定処理のステップS28において決定した要求トルク低減量を減算することにより、最終目標トルクを決定する。また、トルク低減フラグがFalseの場合には、最終目標トルク決定部20は基本目標トルクを最終目標トルクとして決定する。
次に、ステップS6において、エンジン制御部22は、ステップS5において設定した最終目標トルクを出力させるようにエンジン4を制御する。具体的には、エンジン制御部22は、ステップS5において設定した最終目標トルクと、エンジン回転数とに基づき、最終目標トルクを実現するために必要となる各種状態量(例えば、空気充填量、燃料噴射量、吸気温度、酸素濃度等)を決定し、それらの状態量に基づき、エンジン4の各構成要素のそれぞれを駆動する各アクチュエータを制御する。この場合、エンジン制御部22は、状態量に応じた制限値や制限範囲を設定し、状態値が制限値や制限範囲による制限を遵守するような各アクチュエータの制御量を設定して制御を実行する。
ステップS6の後、PCM14は、エンジン制御処理を終了する。
次に、図6により、本発明の実施形態による車両用挙動制御装置のエンジン制御の例を説明する。図6は、本発明の実施形態による車両用挙動制御装置を搭載した車両1が旋回を行う場合における、エンジン制御に関するパラメータの時間変化を示したタイムチャートである。
図6(a)は、右旋回を行う車両1を概略的に示す平面図である。この図6(a)に示すように、車両1は、位置Aから右旋回を開始し、位置Bから位置Cまで操舵角一定で右旋回を継続する。
図6(b)は、図6(a)に示したように右旋回を行う車両1の操舵角の変化を示す線図である。図6(b)における横軸は時間を示し、縦軸は操舵角を示す。
この図6(b)に示すように、位置Aにおいて右向きの操舵が開始され、ステアリングの切り足し操作が行われることにより右向きの操舵角が徐々に増大し、位置Bにおいて右向きの操舵角が最大となる。その後、位置Cまで操舵角が一定に保たれる(操舵保持)。
図6(c)は、図6(b)に示したように操舵角が変化する場合の操舵速度の変化を示す線図である。図6(c)における横軸は時間を示し、縦軸は操舵速度を示す。
車両1の操舵速度は、車両1の操舵角の時間微分により表される。即ち、図6(c)に示すように、位置Aにおいて右向きの操舵が開始された場合、右向きの操舵速度が生じ、位置Aと位置Bとの間において操舵速度がほぼ一定に保たれる。その後、右向きの操舵速度は減少し、位置Bにおいて右向きの操舵角が最大になると、操舵速度は0になる。更に、位置Bから位置Cまで右向きの操舵角が保持される間、操舵速度は0のままである。
図6(d)は、操舵速度に基づき設定されたトルク低減フラグの真偽値を示す線図である。図6(d)における横軸は時間を示し、縦軸はトルク低減フラグの真偽値を示す。
図6(d)に示すように、位置Aにおいて右向きの操舵が開始される前においては、トルク低減フラグはFalseに設定されている。そして、位置Aにおいて右向きの操舵が開始されると、操舵速度が閾値TS1を超えたときにトルク低減フラグはFalseからTrueに変化する。その後、位置Bに接近するにつれて操舵速度が低下し、閾値TS1以下になると、トルク低減フラグはTrueからFalseに変化する。
図6(e)は、操舵速度及びトルク低減フラグに基づき決定された付加減速度の変化を示す線図である。図6(e)における横軸は時間を示し、縦軸は付加減速度を示す。
図4を参照して説明したように、トルク低減量決定部18は、ステップS22において操舵速度が閾値TS1より大きい場合(すなわちトルク低減フラグがTrueである場合)、ステップS24において操舵速度に基づき目標付加減速度を取得する。続いて、ステップS25において、トルク低減量決定部18は、付加減速度の増大率が閾値Rmax以下となる範囲で各処理サイクルにおける付加減速度を決定する。
図6(e)に示すように、付加減速度は、トルク低減フラグがFalseからTrueに切り替わったときから増大し始め、位置Aと位置Bとの間においてほぼ一定に保たれ、その後操舵速度の減少に応じて減少し、トルク低減フラグがTrueからFalseに切り替わったときに0になる。
図6(f)は、エンジン4に要求するトルク低減量であるトルク低減量の変化を示す線図である。図6(f)における横軸は時間を示し、縦軸はトルク低減量を示す。
上述したように、トルク低減量決定部18は、付加減速度を実現するために必要となるトルク低減量を、現在の車速、ギヤ段、路面勾配等のパラメータに基づき決定し、そのトルク低減量に基礎低減量を加えることにより、要求トルク低減量を決定する。
即ち、図6(f)に示すように、要求トルク低減量は、付加減速度の変化と同様に変化するトルク低減量TDDに基礎低減量TDBをかさ上げした値となっており、トルク低減フラグがFalseからTrueに切り替わったときに基礎低減量TDBの分だけステップ的に増大する。
図6(g)は基本目標トルクと要求トルク低減量とに基づき決定された最終目標トルクの変化を示す線図である。図6(g)における横軸は時間を示し、縦軸はトルクを示す。また、図6(g)における破線は基本目標トルクを示し、実線は最終目標トルクを示す。
図3を参照して説明したように、最終目標トルク決定部20は、トルク低減フラグがTrueの場合、基本目標トルクから要求トルク低減量を減算することにより、最終目標トルクを決定し、トルク低減フラグがFalseの場合には、基本目標トルクを最終目標トルクとする。
すなわち、図6(g)に示すように、トルク低減フラグがFalseからTrueに切り替わるのとほぼ同時に最終目標トルクは基礎低減量TDBの分だけステップ的に低減され、位置Aと位置Bとの間においてトルク低減フラグがTrueに設定されている間、最終目標トルクが基本目標トルクから要求トルク低減量の分だけ低減され、そのトルク低減に応じた減速度が車両1に生じる。その結果、前輪2への荷重移動が生じ、前輪2と路面との間の摩擦力が増加するので、前輪2のコーナリングフォースが増大する。
次に、図7により、本発明の実施形態による車両用挙動制御装置の制御によって車両に生じる前後加速度及び横加速度の変化を説明する。図7(a)は、本発明の実施形態による車両用挙動制御装置を搭載した車両が図6(a)に示したように直進から右旋回を開始し定常円旋回に至るまでの前後加速度及び横加速度の変化を示す線図であり、図7(b)は、図7(a)における微小加速度領域(すなわち旋回初期)を拡大した線図である。図7における横軸は横加速度(車幅方向右側への加速度が正)を示し、縦軸は前後加速度(進行方向の加速度が正、減速度が負)を示している。
また、図7において、実線は本発明の実施形態による車両用挙動制御装置を搭載した車両における前後加速度及び横加速度の変化を示し、一点鎖線は特許文献1に記載されたような従来の車両運動制御装置を搭載した車両における前後加速度及び横加速度の変化を示し、破線はこれらの制御装置による制御を行わない場合の前後加速度及び横加速度の変化を示している。
図7(a)において一点鎖線により示すように、特許文献1に記載されたような従来の車両運動制御装置では、ドライバが旋回のための操舵をするだけで、横加速度と前後加速度を合成した加速度が左回りの円弧を描くように、横加速度の増大に応じて減速度を増減させる。すなわち、エキスパートドライバが行うような、合成加速度が一定値を保って左回りの円弧を描く車両運動を実現するため、制御装置は、ドライバの操舵に応じて車両に生じる横加速度と同程度の減速度を発生させたのち、その減速度を減少させる。合成加速度が一定値を保って変化していることをドライバが感じられるよう、制御によって発生させる減速度の大きさは0.5Gに達することもある。この0.5Gという減速度は、例えばバスにおいて立っている乗客が倒れてしまうような、緊急時の強いブレーキ操作により生じる減速度であり、減速のための操作を行っていないドライバは強い制御介入感を覚えることになる。
一方、図7(a)において実線により示すように、本発明の実施形態による車両用挙動制御装置の制御によって発生する減速度は、0.001G〜0.01G程度、最大でも0.05G(目標付加減速度の上限値Dmax)に制限されている。この0.05Gという減速度は、図7(a)において破線により示した、制御装置による制御を行わない場合において旋回中に生じる減速度(すなわち路面と車輪との摩擦力により生じるコーナリングドラッグに起因する減速度)とほぼ同程度である。したがって、ドライバは、減速度を付加する制御が行われていることに気が付かない。
特に、図7(b)に拡大して示したように、本実施形態のPCM14は、車両の旋回初期において操舵速度が閾値TS1以上になりトルク低減フラグがTrueに切り替わるのとほぼ同時にエンジン4のトルクをステップ的に低減させ、横加速度が微小な領域において減速度を急速に増大させる。これにより、減速度を付加する制御を行わない場合と比較して減速度が迅速に立ち上がる。したがって、ドライバがステアリング操作を開始したときに直ちに前輪の垂直荷重を増大させてコーナリングフォースを増大させることができ、ステアリング操作に対する車両挙動の応答性やリニア感を向上することができる。
次に、図8により、本発明の実施形態による車両用挙動制御装置を搭載した車両に旋回走行を行わせたときの車両挙動を説明する。
本発明者らは、エンジン4が出力するトルクを旋回初期の操舵入力に応じて低減させることにより、車両の挙動がどのように変化するのかを評価するために、上述の実施形態による車両用挙動制御装置を搭載した車両に直進から定常円旋回に至る単一コーナーを一定車速で走行させ、そのときの車両挙動に関わる各種パラメータを測定した。
図8は、本実施形態による車両用挙動制御装置を搭載した車両に旋回走行を行わせたときの車両挙動の測定結果を示す線図であり、図8(a)は車両の操舵角の変化を示す線図、図8(b)はトルク低減フラグの値を示す線図、図8(c)は要求トルク低減量の変化を示す線図、図8(d)は駆動輪に働くモーメントの変化を示す線図、図8(e)は車両に発生した減速ジャークの変化を示す線図、図8(f)は車両に発生した横ジャークの変化を示す線図、図8(g)は車両のピッチ角の変化を示す線図である。図8(g)においては、車両の前部が沈み込む方向のピッチ角が負値で表されている。図8(d)から図8(g)において、実線は本実施形態の車両用挙動制御装置を搭載した車両の結果を示し、破線は車両用挙動制御装置を搭載していない従来の車両の結果を示している。
図8(a)に示すように操舵角が増大し、それに伴って操舵速度が閾値TS1以上になりトルク低減フラグがTrueに切り替わると、PCM14は、要求トルク低減量に従って出力トルクを低減させるようにエンジン4を制御する。
エンジン4と駆動輪である前輪2のタイヤとの間には、トルク伝達経路としてトランスミッション、デファレンシャルギヤ、ジョイント、ドライブシャフト、ハブ、ホイールが介在しており、これらの各部品自体の剛性や部品間の遊びがトルク伝達の遅れ要素となり得る。また、エンジン4のマウントの剛性や、サスペンションのアーム、ブッシュ、マウント等の剛性により、エンジン4の出力トルクの低減が車両1の車体の減速や姿勢変化等の挙動として表れるまでにも遅れが生じ得る。
しかしながら、本実施形態の車両用挙動制御装置は、図8(c)に示すように、トルク低減フラグがTrueに切り替わるのとほぼ同時に要求トルク低減量を基礎低減量の分だけステップ的に増大させることにより、エンジン4の出力トルクを瞬時に低減させる。この要求トルク低減量における基礎低減量分のかさ上げにより、トルク伝達経路上の遅れ要素を打ち消すことができる。これにより、図8(d)に示すように、トルク低減フラグがTrueに切り替わるのとほぼ同時に、駆動輪である前輪2のモーメントの減少を発生させることができる。
操舵角の増大に応じて前輪2のスリップ角が増大すると、路面と前輪の接地面との間の摩擦力によりコーナリングドラッグが発生し、これにより、車両の前後方向後向きのジャーク(減速ジャーク)が発生する。コーナリングドラッグにより車両に減速ジャークが生じるまでの間には、サスペンションのコンプライアンス要素等に起因して僅かな遅れが存在するので、本実施形態の車両用挙動制御装置を搭載していない車両では、図8(e)において破線により示すように、操舵角が増大し始めたときからやや遅れて減速ジャークが発生する。
また、操舵角の増大に伴って前輪のスリップ角が増大すると、路面と前輪の接地面との間の摩擦力によりコーナリングフォースも発生する。これにより、図8(f)に示すように、操舵角が増大し始めるのとほぼ同時に横ジャークが発生する。この横ジャークは、操舵角を時間微分した操舵速度とほぼ同じように変化する。
したがって、本実施形態の車両用挙動制御装置を搭載していない車両では、図8(e)、図8(f)に示すように、横ジャークよりも遅れて、コーナリングドラッグのみによる減速ジャークが発生する。
これに対し、本実施形態の車両用挙動制御装置を搭載した車両では、操舵速度が閾値TS1以上になりトルク低減フラグがTrueに設定されるのとほぼ同時に要求トルク低減量を基礎低減量の分だけかさ上げし、直ちに前輪2のモーメントの減少を発生させることにより、図8(e)において実線により示すように、コーナリングドラッグのみによる減速ジャークよりも早いタイミングで、横ジャークの発生とほぼ同時に減速ジャークを発生させ、減速ジャークのピークが横ジャークのピーク以前に現れるようにしている。したがって、横ジャークが生じたときに直ちに前輪の垂直荷重を増大させ、ドライバによるステアリング操作に対して良好な応答性で車両の挙動を制御することができる。
また、本実施形態の車両用挙動制御装置を搭載していない車両では、操舵角の増大に伴い前輪のコーナリングフォースが発生し始めると、まず車体前部に横ジャークが発生し車幅方向に荷重移動が生じることにより、旋回方向外側の前輪を中心に車体前部がロールする。その結果、図8(g)において破線により示すように、操舵角が増大し始めた直後において車両のピッチ角が増大する(即ち、車両の前部が浮き上がり後傾姿勢になる)。その後、コーナリングドラッグにより車両に減速度が生じると、減速度の増大に応じて車両の前後方向に荷重移動が発生し、ピッチ角が減少する(即ち、車両の前部が沈み込み前傾姿勢になる)。
これに対し、本実施形態の車両用挙動制御装置を搭載した車両では、上述したとおり、操舵速度が閾値TS1以上になりトルク低減フラグがTrueに設定されるのとほぼ同時に要求トルク低減量を基礎低減量の分だけかさ上げすることにより、横ジャークの発生とほぼ同時に減速ジャークを発生させ、減速ジャークのピークが横ジャークのピーク以前に現れるようにしている。これにより、図8(g)において実線により示すように、操舵角が増大し始めた直後から車両のピッチ角は減少する(即ち、車両の前部が沈み込み前傾姿勢になる)。
即ち、旋回初期において、ローリングと車両の前部が沈み込むピッチングとが同期して発生することにより、いわゆるダイアゴナルロール姿勢が生じる。このように、ドライバがステアリング操作を開始したときに車両姿勢がダイアゴナルロール姿勢にスムーズに移行するので、前輪のコーナリングフォースを増大させて旋回挙動の応答性を向上させるとともに、これから旋回挙動が発生・継続することをドライバに的確に認知させることができる。
次に、図9及び図10により、本発明の実施形態による車両用挙動制御装置を搭載した車両と搭載していない車両のそれぞれに旋回走行を行わせたとき、乗員の状態がどのように異なっているのかを説明する。
図9は、本発明の実施形態による車両用挙動制御装置を搭載した車両と搭載していない車両のそれぞれに旋回走行を行わせたときの乗員状態の測定対象を示す図であり、図10は、本発明の実施形態による車両用挙動制御装置を搭載した車両と搭載していない車両のそれぞれに旋回走行を行わせたとき、乗員の頭部のピッチ角及び頭部を支える関係筋の筋活動がどのように変化するかを示した線図である。
本発明者らは、本発明の実施形態による車両用挙動制御装置を搭載した車両と搭載していない車両のそれぞれに旋回走行を行わせたとき、乗員の状態がどのように異なっているのかを明らかにするために、上述の実施形態による車両用挙動制御装置を搭載した車両と搭載していない車両のそれぞれに、直進から定常円旋回に至る単一コーナーを一定車速で走行させ、そのときの乗員の身体状態に関わる各種パラメータを測定した。
具体的には、助手席に着座した乗員の後頭部にマーカを配置し、頭部モーションキャプチャにより後頭部マーカの位置変化を画像処理することにより、頭部重心の併進位置及び頭部重心回りの回転位置を取得した(図9におけるxn、yn、zn及びロール角、ピッチ角、ヨー角)。
また、乗員の頭部を支える筋肉として胸鎖乳突筋32及び僧帽筋34に着目し、これら胸鎖乳突筋32及び僧帽筋34の筋電位を筋電位計測計により計測した。
計測結果を図10に示す。図10(a)−(c)は車両用挙動制御装置を搭載していない車両における乗員の状態変化を示し、図10(d)−(f)は車両用挙動制御装置を搭載した車両における乗員の状態変化を示す。
図10(a)−(f)において、横軸は車両の直進状態においてステアリング操作が開始されたときからの経過時間を表している。
また、図10(a)及び(d)の縦軸は操舵角(左旋回方向が正)及び要求トルク低減量を表し、図10(b)及び(e)の縦軸は頭部重心回りのピッチ角(前傾方向が正)を表し、図10(c)及び(f)の縦軸は最大随意収縮(Maximum Voluntary Contraction, MVC [%])を表している。
車両用挙動制御装置を搭載していない車両では、図10(a)に示すように、操舵角が増大してもエンジンの出力トルクは低減されない。そして、図8(g)を参照して説明したように、操舵角の増大に伴い前輪のコーナリングフォースが発生し始めると、まず車体前部に横ジャークが発生し車幅方向に荷重移動が生じることにより、旋回方向外側の前輪を中心に車体前部がロールする。その結果、操舵角が増大し始めた直後において車両は後傾姿勢になる。このように操舵開始直後(図10では操舵開始後0.5秒〜1.5秒前後)において車両が後傾姿勢となることに伴い、図10(b)に示すように、乗員の頭部のピッチ角は負値に減少する。即ち、乗員の頭部も後傾する。
図9に示したように、鎖骨近傍と後頭部とを結ぶ胸鎖乳突筋32は、収縮すると頭部を後傾させる方向に働くので、車両が後傾姿勢となることにより外的要因で頭部が後傾すると、胸鎖乳突筋は僅かに弛緩する。したがって、操舵開始直後に乗員の頭部が後傾している間(図10では操舵開始後0.5秒〜1.5秒前後)の胸鎖乳突筋の活動量は、図10(c)に示すように、車両の旋回方向内側に位置する左胸鎖乳突筋で約30%MVC以下、旋回方向外側に位置する右胸鎖乳突筋では約5%MVC以下と比較的低い水準に留まっている。
その後、操舵角が増大し車幅方向の加速度(横加速度)が大きくなると、遠心力に対向して頭部を支えるために旋回方向内側に位置する左胸鎖乳突筋の活動量が約30%MVCまで増大する。
また、僧帽筋34に関しては、操舵角が増大し車幅方向の加速度(横加速度)が大きくなるにしたがって、遠心力に対向して頭部を支えるために旋回方向内側に位置する左僧帽筋の活動量が約20%MVCまで増大する。
一方、本実施形態の車両用挙動制御装置を搭載した車両では、図10(d)に示すように、操舵速度が閾値TS1以上になりトルク低減フラグがTrueに設定されるのとほぼ同時に(図10(d)では操舵開始後約0.9秒)要求トルク低減量を基礎低減量の分だけかさ上げすることにより、横ジャークの発生とほぼ同時に減速ジャークを発生させる。これにより、図8(g)を参照して説明したように、操舵角が増大し始めた直後から車両車両の前部が沈み込み前傾姿勢になる。それに伴い、図10(e)に示すように、乗員の頭部のピッチ角は正値に増大する(図10(e)では操舵開始直後〜約2.8秒)。即ち、乗員の頭部も前傾する。
胸鎖乳突筋32は、車両が前傾姿勢となることにより外的要因で頭部が前傾すると、頭部を後方へ引っ張るように緊張することにより活動量が増大する。したがって、操舵開始後0.5秒〜1.5秒前後における胸鎖乳突筋の活動は、図10(f)に示すように、車両の旋回方向内側に位置する左胸鎖乳突筋で約35%MVC、旋回方向外側に位置する右胸鎖乳突筋でも約8%MVCと、本実施形態の車両用挙動制御装置を搭載していない車両の場合と比較して高い水準になっている。
その後、操舵角が増大し車幅方向の加速度(横加速度)が大きくなると、遠心力に対向して頭部を支えるために旋回方向内側に位置する左胸鎖乳突筋の活動は約50%MVCまで増大する。
また、僧帽筋34に関しては、操舵角が増大し車幅方向の加速度(横加速度)が大きくなるにしたがって、遠心力に対向して頭部を支えるために旋回方向内側に位置する左僧帽筋の活動が約20%MVCまで増大する。これは、本実施形態の車両用挙動制御装置を搭載していない車両の場合と同等である。
このように、本実施形態の車両用挙動制御装置を搭載した車両では、車両用挙動制御装置を搭載していない車両の場合と比較して、操舵開始直後の期間(本実施形態では操舵開始から約2秒間)、特に旋回方向内側に位置する左胸鎖乳突筋の活動量が高くなっている。これにより、その後車両の横加速度が増大した場合、助手席の乗員は特に意識することなく頭部の姿勢をより安定して保持することができるので、乗員が感じる車両姿勢の安定感や乗り心地が向上する。
次に、本発明の実施形態のさらなる変形例を説明する。
上述した実施形態においては、トルク低減量決定部18は、操舵速度に基づき目標付加減速度を取得し、この目標付加減速度に基づいてトルク低減量を決定すると説明したが、アクセルペダルの操作以外の車両1の運転状態(操舵角、横加速度、ヨーレート、スリップ率等)に基づきトルク低減量を決定するようにしてもよい。
例えば、トルク低減量決定部18は、操舵速度に代えて、加速度センサから入力された横加速度や、横加速度を時間微分することにより得られる横ジャークに基づき目標付加減速度を取得して、トルク低減量を決定するようにしてもよい。
また、上述した実施形態においては、車両用挙動制御装置を搭載した車両1は、駆動輪を駆動する駆動力源としてエンジン4を搭載すると説明したが、バッテリやキャパシタから供給された電力により駆動輪を駆動するモータを搭載した車両についても、本発明による車両用挙動制御装置を適用することができる。この場合、PCM14は、車両1の操舵速度に応じてモータのトルクを低減させる制御を行う。
次に、上述した本発明の実施形態及び本発明の実施形態の変形例による車両用挙動制御装置の効果を説明する。
まず、PCM14は、トルク低減量に基礎低減量を加えることにより要求トルク低減量を決定し、ヨーレート関連量が所定の閾値を超えた場合、エンジン4が出力するトルクを要求トルク低減量だけ低減するように、エンジン4を制御するので、ヨーレート関連量が閾値を超えるのとほぼ同時に要求トルク低減量を基礎低減量の分だけかさ上げすることができ、エンジン4から駆動輪までのトルク伝達経路に存在する遅れ要素を打ち消し、ヨーレート関連量が閾値を超えるのとほぼ同時にエンジン4のトルク低減を駆動輪まで伝達させ、車両1に減速度を付加することができる。
これにより、車両1の旋回初期においてステアリング操作に応じて直ちに減速ジャークを発生させ減速度を増大させることにより前輪2の垂直荷重を増大させ、ドライバによるステアリング操作に対して良好な応答性・リニア感で車両の挙動を制御することができる。
また、旋回初期の横加速度の立ち上がりに同期して減速度も立ち上がり、横加速度と減速度とがリニアな関係を維持して遷移するように車両1の挙動を制御することができ、車両姿勢の安定感や乗り心地も向上するように車両1の挙動を制御することができる。
また、旋回初期において、要求トルク低減量を基礎低減量の分だけかさ上げすることにより、横ジャークの発生とほぼ同時に減速ジャークを発生させ、ローリングとピッチングとを同期して発生させることができる。これにより、旋回初期にダイアゴナルロール姿勢を生じさせることができ、これから旋回挙動が発生・継続することをドライバに的確に認知させることができる。
さらに、PCM14が、要求トルク低減量を基礎低減量の分だけかさ上げすることにより、車両1の旋回初期においてステアリング操作に応じて直ちに減速度を増大させ、車両1に前傾姿勢を生じさせるので、操舵開始直後から、車両1の旋回方向内側に位置する左胸鎖乳突筋の活動量を増大させることができる。これにより、その後車両1の横加速度が増大した場合、頭部の姿勢をより安定して保持することができるので、乗員が感じる車両姿勢の安定感や乗り心地を向上することができる。
このように、本発明によれば、ドライバによるステアリング操作に対して良好な応答性で車両1の挙動を制御することができ、強い制御介入感をドライバに覚えさせることなく、ステアリング操作に対する車両挙動の応答性やリニア感を向上できる。また、ドライバに与える車両姿勢の安定感や乗り心地も向上することができる。
また、ヨーレート関連量は、車両1の操舵速度であるので、ドライバによるステアリング操作の開始に応じて直ちにエンジン4の出力トルクを低減して減速度を増大させることができ、ドライバによるステアリング操作に対してより良好な応答性で車両1の挙動を制御することができる。
また、付加減速度の上限値は、制御介入があったとドライバが感じない程度の減速度0.5m/s2に設定されるので、強い制御介入感をドライバに覚えさせることなく、ステアリング操作に対する車両挙動の応答性やリニア感を向上できる。
1 車両
2 前輪
4 エンジン
6 ステアリングホイール
8 操舵角センサ
10 アクセル開度センサ
12 車速センサ
14 PCM
16 基本目標トルク決定部
18 トルク低減量決定部
20 最終目標トルク決定部
22 エンジン制御部

Claims (2)

  1. 駆動輪を駆動するためのトルクを出力する駆動手段を備え前輪が操舵される車両の挙動を制御する、車両用挙動制御装置であって、
    ドライバにより操作されるステアリングホイールと、
    上記ステアリングホイールの操舵角を検出する操舵角センサと、
    上記操舵角センサの検出値に基づく操舵速度を取得する操舵速度取得手段と、
    上記操舵速度取得手段によって取得された操舵速度に応じて、上記車両に付加すべき付加減速度を、操舵速度が大きくなるほど増大するように設定する付加減速度設定手段と、
    上記付加減速度が実現されるように、上記駆動手段を制御する駆動制御手段と、
    上記ステアリングホイールの切り込み操作を判定したときに、上記車両の横ジャークの発生とほぼ同時に減速ジャークを発生させるように基礎低減量を設定する基礎低減量設定手段と、
    上記付加減速度を実現するために必要となる上記駆動手段のトルク低減量を決定し、そのトルク低減量に、上記基礎低減量を加えることにより、要求トルク低減量を決定するトルク低減量決定手段と、
    を備え、
    上記駆動制御手段は、上記操舵角センサの検出値に基づき上記ステアリングホイールの切り込み操作が判定されたとき、上記要求トルク低減量に基づき上記駆動手段が出力するトルクを低減させるように、上記駆動手段を制御する、
    両用挙動制御装置。
  2. 駆動輪を駆動するためのトルクを出力する駆動手段を備え前輪が操舵される車両の挙動を制御する、車両用挙動制御装置であって、
    ドライバにより操作されるステアリングホイールと、
    上記ステアリングホイールの操舵角を検出する操舵角センサと、
    上記操舵角センサの検出値に基づく操舵速度を取得する操舵速度取得手段と、
    上記操舵速度取得手段によって取得された操舵速度に応じて、上記車両に付加すべき付加減速度を、操舵速度が大きくなるほど増大するように設定する付加減速度設定手段と、
    上記付加減速度が実現されるように、上記駆動手段を制御する駆動制御手段と、
    上記ステアリングホイールの切り込み操作を判定したときに、上記車両の減速ジャークの発生のピークが横ジャークのピーク以前となるように基礎低減量を設定する基礎低減量設定手段と、
    上記付加減速度を実現するために必要となる上記駆動手段のトルク低減量を決定し、そのトルク低減量に、上記基礎低減量を加えることにより、要求トルク低減量を決定するトルク低減量決定手段と、
    を備え、
    上記駆動制御手段は、上記操舵角センサの検出値に基づき上記ステアリングホイールの切り込み操作が判定されたとき、上記要求トルク低減量に基づき上記駆動手段が出力するトルクを低減させるように、上記駆動手段を制御する、
    車両用挙動制御装置。
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