以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。実施形態の頭部保護エアバッグ装置M1は、図1に示すように、膨張完了時に、車両Vの窓(サイドウィンド)W1,W2を覆い可能に、エアバッグ25を、窓W1,W2の上縁側の周縁、すなわち、フロントピラー部FPからルーフサイドレール部RRを経てリヤピラー部RPの上方付近までの範囲に、折り畳んで収納させている。なお、実施形態の場合、車両Vは、フロントピラー部FPとリヤピラー部RPとの間に、略上下方向に沿って配置される1つの中間ピラー部CPを配設させ、膨張完了時のエアバッグ25は、図1の二点鎖線に示すように、窓W1,W2とともに、中間ピラー部CPに配置される中間ピラーガーニッシュ7や、リヤピラー部RPに配置されるリヤピラーガーニッシュ8の一部の車内側も、覆うように構成されている。
なお、実施形態では、特に断らない限り、上下、前後の方向を、車両搭載時における車両Vの上下、前後の方向と一致させて、説明する。
頭部保護エアバッグ装置M1は、図1〜3に示すように、エアバッグ25、エアバッグ25に膨張用ガスを供給するインフレーター12、取付ブラケット13、取付クリップ17、折り畳まれたエアバッグ25(折り完了体44)を収納するケース50、及び、保持部材としての巻付バンド75を、備えて構成されている。折り畳まれたエアバッグ25(折り完了体44)、インフレーター12、及び、ケース50は、巻付バンド75を含めて、車両Vへの搭載時に、車内側Iをエアバッグカバー10に覆われて収納されている(図1〜3参照)。エアバッグカバー10は、実施形態の場合、フロントピラー部FPの車内側を覆うフロントピラーガーニッシュ5の下縁5aと、ルーフサイドレール部RRの車内側を覆うルーフヘッドライニング6の下縁6aと、から構成されている。
フロントピラーガーニッシュ5とルーフヘッドライニング6とは、中間ピラーガーニッシュ7,リヤピラーガーニッシュ8とともに、合成樹脂製として、図示しない取付手段によって、フロントピラー部FPやルーフサイドレール部RRにおけるボディ1側の部材であるインナパネル2の車内側Iに取り付けられている。そして、これらの下縁5a,6aから構成されるエアバッグカバー10は、展開膨張時のエアバッグ25を突出可能に、エアバッグ25に押されて、下縁5a,6aを車内側Iに開くように、構成されている(図2,3参照)。
インフレーター12は、エアバッグ25に膨張用ガスを供給するもので、図1に示すように、略円柱状のシリンダタイプとして、先端側に、膨張用ガスを吐出可能な図示しないガス吐出口を、配設させている。インフレーター12は、ガス吐出口付近を含めた先端側を、エアバッグ25の後述する接続口部28に挿入させ、接続口部28の後端側の外周側に配置されるクランプ15を利用して、エアバッグ25に対して連結されている。また、インフレーター12は、インフレーター12を保持する取付ブラケット13と、取付ブラケット13をボディ1側のインナパネル2に固定するためのボルト14と、を利用して、インナパネル2に取り付けられている。
エアバッグ25は、図1の二点鎖線に示すように、インフレーター12からの膨張用ガスを内部に流入させて、折畳状態から展開して、窓W1,W2や、中間ピラー部CP及びリヤピラー部RPにおける中間ピラーガーニッシュ7,リヤピラーガーニッシュ8の車内側を覆うように、展開膨張する構成とされている。エアバッグ25は、図2,3の二点鎖線や図15及び23に示すように、膨張用ガスGを流入させて車内側壁部26aと車外側壁部26bとを離すように膨張するガス流入部26と、車内側壁部26a,車外側壁部26b相互を結合させるように形成されて膨張用ガスを流入させない非流入部30と、を備えている。ガス流入部26は、実施形態の場合、保護膨張部27と接続口部28とを備え、非流入部30は、周縁部31、取付部33、板状部34,35、及び、閉じ部36を備える構成とされている。
ガス流入部26の保護膨張部27は、図15のAに示すように、エアバッグ25の膨張完了時に、前席の側方の窓W1を覆う前保護部27aと、後席の側方の窓W2を覆う後保護部27bと、を備えている。接続口部28は、エアバッグ25の上縁25a側の前後方向の中央付近に配置されるもので、実施形態の場合、後上がりに傾斜しつつエアバッグ25の上縁25a側から上方に突出するように形成されて、インフレーター12を接続可能に、後端側を開口させて構成されている。前保護部27aと後保護部27bとは、エアバッグ25の膨張完了時に、平らに展開した状態からの前後方向側の幅寸法を狭められ、また、厚さを規制されて前後方向に延びる板形状を維持できるように、内部領域に、閉じ部36を配置させている。
非流入部30における周縁部31は、ガス流入部26の外周縁を、接続口部28の後端側を除いて全域にわたって囲むように形成されている。実施形態では、周縁部31の上縁31a側の領域には、図15のAに示すように、各巻付バンド75に形成される後述する係止突起部95を挿入させるための係止孔32が、形成されている。
係止孔32は、エアバッグ25の上縁25a側となる周縁部31の上縁31a側の部位に形成されるもので、巻付バンド75に対応して、実施形態の場合、8箇所に、形成されている。この係止孔32は、巻付バンド75の係止突起部95を係止させるためのもので、係止突起部95の後述する係止軸部96を貫通させた際に、内周面32aの略全周により、係止軸部96の係止孔32の開口面に沿った移動を規制可能に、構成されている。具体的には、実施形態の場合、各係止孔32は、円形に開口して形成されるもので、内径寸法d1(図17のA参照)を、後述するごとく略楕円柱状とされる係止軸部96の断面における長軸方向側の幅寸法T1より小さくし、かつ、係止軸部96の断面における短軸方向側の幅寸法T2より大きく設定されて、変形されつつ、押し広げられるようにして係止軸部96を挿入させる構成とされている。そして、係止孔32は、内周面32aによって、係止軸部96の周囲を隙間なく覆いつつ、係止軸部96を貫通させて、係止軸部96の移動を規制する構成である(図17のB参照)。
板状部34は、前保護部27aと後保護部27bとの間に配置されるもので、略長方形板状とされている。板状部35は、エアバッグ25の前端側に配置されるもので、略長方形板状とされるとともに、下端側に、略帯状として前方に延びるベルト部35aを、配置させている。
取付部33は、板状部35におけるベルト部35aの前端側を含めて、エアバッグ25の膨張完了時の上縁25a側に配置されるもので、エアバッグ25の上縁25a側を、車両Vのボディ1側であるインナパネル2に取り付けるための部位である。取付部33は、前後方向に沿って複数個(実施形態の場合、7個)配置されるもので、それぞれ、ベルト部35aの前端側を含めたエアバッグ25の上縁25aから上方に突出して、形成されている。実施形態のエアバッグ25では、前側に配置される5個の取付部33Aが、取付クリップ17を利用してインナパネル2に取り付けられ、後側に配置される2個の取付部33Bは、詳細には説明しないが、取付ブラケット22とボルト23とを利用してインナパネル2に取り付けられる構成である(図1,20参照)。取付クリップ17を利用してインナパネル2に取り付けられる各取付部33Aには、取付クリップ17を挿通させるための取付孔33aが、略長方形状に開口して形成されている。さらに、実施形態の頭部保護エアバッグ装置M1では、ベルト部35aの前端側に配置される取付部33AAとその後ろに隣接して配置される取付部33ABとの部位には、ケースが配置されておらず(図20参照)、これらの取付部33AA,33ABは、図示しないが、ケースの取付座部を介さず、直接、インナパネル2に取り付けられている。
実施形態の場合、エアバッグ25は、図15のAに示すように、ポリアミド糸やポリエステル糸等を使用した袋織りによって形成される本体部38と、ポリアミド糸やポリエステル糸等からなる織布から形成されて本体部38に縫着される別体布39,40,41,42と、から構成されている。別体布39は、板状部34の部位を構成し、別体布40は、板状部35の部位を構成している。また、別体布41は、取付部33の部位を構成し、別体布42は、接続口部28の部位を構成している。本体部38は、略長方形状に形成されて、前保護部27a、後保護部27b、周縁部31、及び、板状部34の部位を構成している。なお、実施形態のエアバッグ25では、袋織りによって製造された本体部38において、板状部34の部位を切除し、この切除した部位が、接続口部28を構成する別体布42とされている。そして、本体部38において切除された領域には、別体布39が、この領域を塞ぐように配置されて、板状部34を形成している。
実施形態では、エアバッグ25は、上縁25a側の領域を蛇腹折りされ、下部側の領域を下縁25b側から車外側Oに向かって巻くようなロール折りにより、折り畳まれている。エアバッグ25を折り畳んで形成される折り完了体44は、図16に示すように、ロール折り部位44bの上側に、蛇腹折り部位44aを載せるように形成されるもので、蛇腹折り部位44aの上面(表面)側には、周縁部31の上縁31a側が露出され、巻付バンド75の係止突起部95を係止させるための係止孔32も、露出されている。
折り畳まれたエアバッグ25(折り完了体44)を収納するケース50は、熱可塑性エラストマー製とされて、実施形態の場合、ポリオレフィン系熱可塑性エラストマー(TPO)から形成されている。ケース50は、前後方向に延びた長尺状とされている。実施形態の頭部保護エアバッグ装置M1では、図1,20に示すように、ケース50は、折り完了体44の長手方向に沿って複数に分割されて構成されるもので、実施形態の場合、折り完了体44において、前保護部27aの部位を収納するケース50Fと、後保護部27bの部位を収納するケース50Rと、接続口部28付近の部位を収納するケース50Cと、の三つが、使用されている。前側に配置されるケース50Fは、窓W1の上縁側における前側の領域に対応して、前端側を下方に向けるように屈曲して形成され、ケース50C,50Rは、窓W1の上縁側における後側の領域から窓W2の上縁側に対応して、前後方向に沿って略直線状に延びるように、形成されている(図1参照)。実施形態では、中央に配置されるケース50Cを例に採り、詳細に説明する。ケース50F,50Rに関しても、外形形状が異なるものの、保持部材としての巻付バンド75を取り付ける構成や、取付クリップ17を使用してエアバッグ25の取付部33Aを取り付ける構成は、ケース50Cと同様の構成である。なお、ケース50は、折り畳まれたエアバッグ25(折り完了体44)を、運搬時や、車両搭載時、膨張時等において、保護したり、膨張時の展開方向の案内を行なうプロテクタの役目も果たし、折り完了体44を、周囲の干渉物からカバーするように、折り完了体44の周囲に配置されるものである。
ケース50Cは、図4〜9に示すように、折り完了体44を収納させる収納部位52と、巻付バンド75に形成される取付部としての係止クリップ90を係止させる被係止部58と、ボディ1側のインナパネル2に取り付けられる取付座部69と、を備える構成とされている。
収納部位52は、インフレーター12と接続される接続口部28付近の前側領域52aでは、この領域の上面側から車外側を経て下面側を覆うように構成されるとともに(図2参照)、インフレーター12の後側に配置される後側領域52bでは、折り完了体44の車外側を覆うように構成されている(図4,5参照)。すなわち、収納部位52は、前側領域52aでは、折り完了体44の車外側Oを覆う側壁部53と、側壁部53の前後の中央付近において側壁部53の上側から部分的に車内側上方に向かって延びる天井壁部54と、側壁部53の前後の中央付近において側壁部53の下端から部分的に車内側下方に向かって延びる底壁部55と、を備えており、後側領域52bでは、側壁部53のみから構成されている。折り完了体44の下面側を覆う底壁部55は、車両搭載時において、中間ピラー部CPの上側に配置される領域に、形成されている。中間ピラー部CPには、図2に示すように、前後の窓W1,W2よりも車内側に突出するようにして、中間ピラーガーニッシュ7が、配設されている。底壁部55は、膨張初期のエアバッグ25の車内側への突出をガイドするためのもので、膨張初期のエアバッグ25が、中間ピラーガーニッシュ7の上端側との干渉を抑制されて、円滑に車内側下方へ突出可能とするために、配設されている。具体的には、底壁部55は、車内側端部を下方に向けるように、車幅方向(左右方向)に対して傾斜して、配置されている。
巻付バンド75の係止クリップ90を取り付ける被係止部58は、収納部位52の上部側に配置されるもので、実施形態の場合、ケース50Cの前後両端側の2箇所に、形成されている(図4,5参照)。被係止部58は、図6〜9に示すように、側壁部53の上端側に配置される係止穴部59と、係止穴部59の周囲に配置される補強部64と、を備えている。
係止穴部59は、巻付バンド75の取付部としての係止クリップ90を挿入させるもので、実施形態の場合、長手方向を前後方向(折り完了体44の長手方向)に略沿わせた長方形状に開口して形成される穴本体60と、穴本体60の内周側における車内側Iの縁の上縁60a側と下縁60b側とに形成される係止凸部61U,61Dと、を備えている。
穴本体60は、係止クリップ90を挿入させるためのもので、実施形態の場合、係止クリップ90を挿入可能に、車両搭載状態において車内外方向に貫通されて構成されている。すなわち、穴本体60は、係止時の係止クリップ90の挿入方向を、窓W1の内側面と略直交する方向として、構成されている(図3参照)。実施形態の場合、穴本体60は、前後に幅広とした扁平な略長方形状に開口して、形成されている(図6参照)。
穴本体60の内周側における車内側Iの縁の上縁60a側と下縁60b側とに形成される係止凸部61U,61Dは、係止クリップ90の後述する係止爪部92U,92Dと対向する位置に、それぞれ、係止爪部92U,92Dを係止可能に、配設されている。各係止凸部61U,61Dは、穴本体60の車内側Iの縁の上縁60a側と下縁60b側とから、それぞれ延びて、先端61a側を車外側Oに向けつつ上下の中央側に向けるように、車内外方向(左右方向)に対して傾斜して、形成されている。この係止凸部61U,61Dの傾斜は、係止クリップ90の係止爪部92U,92Dを係止可能に形成されるもので、係止凸部61U,61Dは、係止クリップ90を穴本体60に挿入させた際に、係止クリップ90の各係止爪部92U,92Dの元部側(車内側I)に配置されて、各係止爪部92U,92Dを係止することとなる。各係止凸部61U,61Dは、前後方向側の幅寸法(折り完了体44の長手方向に沿った方向側の幅寸法)を、係止クリップ90の前後方向側の幅寸法と略一致させて構成されている。
補強部64は、折り完了体44を収納する車内側Iとなる内側面50a側に形成されるもので、図6に示すように、係止穴部59における穴本体60の前後両縁側と上縁側とを囲むように配置される上側補強部65と、穴本体60の下側の収納部位52の領域(側壁部53)に延びるように形成される下側補強部66と、を備えて構成されている。
上側補強部65は、穴本体60の周縁から車内側Iに向かって突出するように形成される略逆U字形の枠体状として構成されている(図5,6参照)。実施形態の場合、上側補強部65において、穴本体60の前縁60c側に配置される前側壁部65aと、後縁60d側に配置される後側壁部65bと、は、内周面65d,65eを、穴本体60の前縁60c,後縁60dから連ならせるようにして、構成されている(図9参照)。また、この前側壁部65aと後側壁部65bとは、車外側下方に向かって傾斜している下端側の端縁65aa,65baを、穴本体60の下縁60b近傍に位置させるように、構成されている(図6,7参照)。すなわち、上側補強部65における前側壁部65aと後側壁部65bとは、穴本体60の上下の全域において、前縁60c,後縁60dから立ち上がるように形成されていることから、穴本体60の上下方向側に拡開されるような変形を、的確に抑制することができる。上側補強部65において、前側壁部65aと後側壁部65bとの上端側を連結するように配置される上側壁部65cは、間に巻付バンド75の後述する被係合部84を挿入可能に(図22参照)、穴本体60の上縁60aより上方に離れた位置に、配置されている。そして、穴本体60の周縁部位62において、上側壁部65cとの間の領域が、折り完了体44に巻き付けられた巻付バンド75の係止クリップ90を係止穴部59(穴本体60)に押し込む際に、巻付バンド75における被係合部84の車外側面84aと当接して、巻付バンド75の車外側Oへの移動を規制する規制面62aを、構成している。
下側補強部66は、車内側Iへの突出量を、上側補強部65と比較して小さく設定されて、収納部位52(側壁部53)の内側面50aから車内側Iに向かって突出するように形成されるもので、収納部位52の下部52c付近にかけて、車内側から見て略U字形状に、連続的に形成されている(図6参照)。下側補強部66において、前側に配置される前側部位66aと、後側に配置される後側部位66bと、は、車内側Iから見た状態で、ともに、上側補強部65における前側壁部65a,後側壁部65bの前後方向の外方側に、配置されているが(図6参照)、これらの前側部位66a,後側部位66bは、上端側において、前側壁部65a,後側壁部65bの下端と前後方向側で重なるように、形成されている(図8参照)。すなわち、実施形態では、上側補強部65と下側補強部66とによって、係止穴部59の周囲が、実質的に全周にわたって囲まれることとなる。前側部位66aと後側部位66bとの下端側を連結するように配置される下側部位66cは、側壁部53の下端近傍において、前後方向(折り完了体の長手方向)に略沿うように、配置されている。この下側部位66cは、エアバッグ25の展開膨張時に、巻付バンド75のバンド本体(保持部本体)76を支持することとなる。また、穴本体60の周縁部位62において、下側補強部66によって囲まれる領域は、折り完了体44に巻き付けられた巻付バンド75の係止クリップ90を係止穴部59(穴本体60)に押し込む際に、巻付バンド75におけるバンド本体(保持部本体)76の車外側Oの面と当接して、巻付バンド75の車外側Oへの移動を規制する規制面62bを、構成している。
取付座部69は、折り完了体44から突出するように配置される取付部33Aに対応した位置に配置されるもので、実施形態のケース50Cでは、接続口部28の収納される領域の前側となる1箇所に、形成されている(図4参照)。取付座部69には、取付部33Aの取付孔33aに対応して、取付クリップ17の取付脚部20を貫通させる略四角形状に開口した取付孔69aが、車内外方向に貫通して形成されている。
取付部33Aを取付座部69とともにインナパネル2に取り付ける取付クリップ17は、図2に示すように、インナパネル2に形成される取付孔3に係止されるもので、合成樹脂製の拡張リベットタイプとして、取付ベース18と、取付ベース18内に配置される押しピン21と、を備える構成とされている(図2,21参照)。取付ベース18は、車内側Iに配置される基部19と、基部19からインナパネル2の取付孔3側(車外側O)に延びて取付孔3の周縁に取り付けられる取付脚部20と、を備えている。
基部19は、取付孔3周縁への取付前の状態で押しピン21を内部に収納させる押しピン収納部19aと、基部19の車外側端部において前後上下に幅広とした略長方形板状とされる押え板部19dと、を備えている。押え板部19dは、図21に示すように、取付クリップ17を、取付部33Aを介して、ケース50Cの取付座部69に仮止めした際に、取付部33Aを取付座部69側に押えるための部位である。押しピン収納部19aは、押しピン21を車外側Oに向かって押圧可能に、車内側Iを開口させて構成されるもので、押しピン21の上側を覆う部位と、下側を覆う部位と、に、押しピン21に形成される係合突起部21aの突起本体21cを係合可能な係合穴部19b,19cを、配設させている。これらの係合穴部19b,19cは、車内外方向(押しピン21の押し込み方向)に沿うようにして、2箇所に形成されるもので、車内側Iに配置される係合穴部19bは、図21に示すように、押し込み前の状態の押しピン21の突起本体21cを係合させるもので、車外側Oに配置される係合穴部19cは、図2に示すように、押し込み後の押しピン21の突起本体21cを係合させるためのものである。
取付脚部20は、エアバッグ25の取付部33Aと、ケース50Cの取付座部69と、に貫通される取付孔33a,69aに挿入されて、取付部33Aを取付座部69に仮止め可能とするとともに、車両Vのボディ1側のインナパネル2に形成される取付孔3に挿入されて、取付座部69と取付部33Aとをボディ1側に取付可能に、構成されている。取付脚部20内には、押しピン収納部19aと連通されるようにして、挿入凹部20aが、形成されている。この挿入凹部20aは、図2に示すように、押し込み時の押しピン21の拡張用軸部21dを挿入させるための部位である。また、取付脚部20には、一対の張出し鉤部20bが、形成されている。
押しピン21は、図2,21に示すように、元部側(車内側I)に、押しピン収納部19aに形成される係合穴部19b,19cに係合可能な係合突起部21aを配置させ、先端側(車外側O)に、押し込み時に張出し鉤部20b間に配置される拡張用軸部21dを、配置させて構成されている。元部側に形成される係合突起部21aは、上下で対向する2箇所に形成されるもので、車内外方向に沿って配置されるとともに上下方向の内側に撓み可能とされる撓み片21bと、撓み片21bの先端側(車内側端側)において上下の外方に向かって突出するように形成される突起本体21cと、を有し、突起本体21cは、押し込み前の状態では、押しピン収納部19aに形成される係合穴部19bに挿入されて、係合穴部19b周縁に係合される構成である。この係合突起部21aは、撓み片21bを上下方向の内側に撓ませれば、突起本体21cを係合穴部19bから取り外し可能に構成されるもので、撓み片21bを上下方向の内側に撓ませるようにして、突起本体21cを係合穴部19bから取り外しつつ、押しピン21を、拡張用軸部21dを挿入凹部20a内に挿入させるように押し込み、突起本体21cが車外側Oの係合穴部19cに到達したならば、撓み片21bが復元されて、突起本体21cが車外側Oの係合穴部19cに挿入されて、係合穴部19c周縁に係合されることとなる。そして、このとき、先端側に配置される拡張用軸部21dが、張出し鉤部20bの間に挿入されることとなる(図2参照)。
そして、この取付クリップ17では、エアバッグ25を折り畳んで形成される折り完了体44をケース50(50F,50C,50R)内に収納させてエアバッグ組付体AMを形成する際には、押しピン21を挿入凹部20a内に押し込んでいない状態(突起本体21cが係合穴部19b周縁に係合された状態)で、張出し鉤部20bが、取付座部69の取付孔69aの周縁部位69bに係止されることとなり、取付クリップ17が、取付部33Aを介して取付座部69に仮止めされることとなる(図21参照)。そして、取付部33Aをインナパネル2に取り付ける際には、エアバッグ組付体AMにおいて、ケース50(50F,50C,50R)の取付座部69から車外側Oに突出している取付クリップ17の取付脚部20を、インナパネル2の取付孔3に挿入させた状態で、押しピン21を、撓み片21bを上下方向の中央側に撓ませつつ、拡張用軸部21dを挿入凹部20a内に押し込めば、突起本体21cが、車外側Oの係合穴部19cに挿入されて(図2参照)、係合穴部19c周縁に係合されることとなり、拡張用軸部21dが、張出し鉤部20bの間に挿入されることとなって、この張出し鉤部20bが、取付孔3の車外側Oの周縁を係止して、取付部33Aを、ケース50(50F,50C,50R)の取付座部69とともに、車両Vのボディ1側のインナパネル2に対して取り付けることとなる。また、実施形態の頭部保護エアバッグ装置M1では、この取付部33Aと取付座部69とのボディ1側のインナパネル2に対する取り付けにより、保持部材としての巻付バンド75も、間接的にボディ1側に取り付けられることとなる。
保持部材としての巻付バンド75は、エアバッグ25を折り畳んで形成される折り完了体44の折り畳みを保持するための部材である。巻付バンド75は、熱可塑性エラストマー製とされて、実施形態の場合、ポリオレフィン系熱可塑性エラストマー(TPO)から形成されている。巻付バンド75は、実施形態の場合、図15のCに示すように、折り完了体44に対して、前後方向に沿った複数箇所(実施形態の場合、8箇所)に、巻き付けられている。巻付バンド75は、図10〜14に示すように、折り完了体44の周囲をくるむ保持部本体としてのバンド本体76と、バンド本体76の両端側に配置される係合爪部78,被係合部84と、ケース50側に取り付けられる取付部としての係止クリップ90と、エアバッグ25の上縁25a側に係止される係止突起部95と、を備えている。
バンド本体76は、折り完了体44の周囲に巻き付け可能な帯状とされている。実施形態の場合、バンド本体76は、一端側を、係合爪部78を配置させる爪側端部76aとし、他端側を、被係合部84を配置させる凹側端部76bとしている。
係合爪部78は、バンド本体76の爪側端部76aの端縁からバンド本体76の長さ方向に沿って突出するように形成される突出片部79と、突出片部79の先端79a側における下面側(折り完了体44への巻付時の内周面側)から下方に突出するように形成される爪片80と、を備えている。突出片部79は、折り完了体44の長手方向に沿わせて配置される略平板状として、折り完了体44の長手方向に沿った方向側(前後方向側)の幅寸法を、被係合部84における後述する係合用凹部85に挿入可能に、バンド本体76の幅寸法より小さく設定されている。また、突出片部79は、車両搭載状態において、車外側Oに向かって突出するように、形成されている。突出片部79の先端79a側に形成される爪片80は、突出片部79の幅方向(折り完了体44の長手方向)に略沿うように形成されるもので、先端80a側を突出片部79の元部79b側に向けるように、突出片部79に対して傾斜して形成されている。この爪片80は、被係合部84における係合用凹部85の内周面86に形成される爪片87に、係合される構成とされている。実施形態の場合、爪片80は、幅寸法を、突出片部79の幅寸法より若干小さく設定されて、構成されている。
バンド本体76の爪側端部76a側には、係合爪部78を被係合部84の係合用凹部85に押し込むための押圧部82が、形成されている。押圧部82は、平板状として、バンド本体76の爪側端部76aの端縁近傍において、係合爪部78における突出片部79の元部79bから立ち上がるように、形成されている。詳細には、押圧部82は、幅寸法を、バンド本体76と一致させて構成され、バンド本体76の外周面から外方に向かって突出するように、形成されている。そして、この押圧部82において、バンド本体76の外周面から連なるように配置される外側の面(車両搭載時における車内側Iの面)が、係合爪部78を係合用凹部85に押し込み可能な押圧操作面82aとされている。実施形態の場合、押圧部82は、押圧操作面82aを、係合爪部78の突出方向と略直交させるように、構成されている(図18参照)。詳細には、実施形態では、押圧部82(押圧操作面82a)は、図3に示すように、車両搭載時において、上下方向に略沿うように配置されることとなる。また、実施形態では、係合爪部78は、押圧部82と略直交するように配置されるものの、詳細には、押圧部82に対して、先端を上側に向けるように、わずかに傾斜して、配置されている(図3,18参照)。
被係合部84は、係合爪部78を挿入させて係合可能な係合用凹部85を備えた略箱形状とされている。被係合部84は、略直方体状として構成されて、下端側に、バンド本体76の凹側端部76bを連結させて構成されるもので、実施形態の場合、幅寸法をバンド本体76の幅寸法と一致させるように、構成されている。また、この箱形状の被係合部84は、巻付バンド75の折り完了体44への巻付作業時に、作業者が把持する部位でもある。係合用凹部85は、係合爪部78を挿入可能に、係合爪部78の突出方向に沿って、被係合部84を車外側に向かって凹ませるように、形成されている。実施形態の場合、係合用凹部85は、被係合部84を車内外方向に貫通して、形成されている。この係合用凹部85は、上下左右の開口幅寸法を、係合爪部78を挿入可能な寸法に、設定されている。係合用凹部85の内周面86において、折り完了体44側となる下面86aにおける車内側Iの端側には、係合爪部78の爪片80に対応して、この爪片80を係止可能な爪片87が、形成されている。爪片87は、係合爪部78に形成される爪片80に略沿うようにして、折り完了体44の長手方向に略沿って配置される。また、爪片87は、爪片80を係合可能に、係合用凹部85における内周面86の下面86aから先端87aを車外側Oに向けつつ上方に向かって、突出して形成されている。
すなわち、実施形態の頭部保護エアバッグ装置M1では、係合用凹部85の内周面86側における折り完了体44側の面(下面86a)と、係合爪部78の突出片部79と、の間に、係合用凹部85側から延びる爪片87と、突出片部79から延びる爪片80と、が、配設される構成である。そして、実施形態では、この爪片80,87相互を係合させることにより、係合爪部78は、被係合部84の係合用凹部85に係合される構成である。そして、これらの爪片80,87相互の係合力は、エアバッグ25の展開膨張時に、相互に撓んで、係合状態を解除可能で、かつ、折り完了体44の周囲に巻き付けた後に、押圧部82や被係合部84を手で引っ張っても、容易に係合を解除できないように、設定されている。実施形態では、爪片80は、長さ寸法を、爪片の長さ寸法より僅かに小さく設定されるように、構成されている。
取付部としての係止クリップ90は、折り完了体44をケース50に収納させる際に、ケース50の被係止部58に係止されるものである。係止クリップ90は、図10〜12に示すように、略箱形状の被係合部84における車外側面84aの下部側において、係合用凹部85の下側の領域から車外側Oに向かって突出するように、形成されている。係止クリップ90は、被係止部58(係止穴部59)への挿入時に、係止穴部59に係止される構成とされるもので、被係合部84の下端側の部位から車外側Oに向かって突出するように形成される略平板状の係止軸部91と、係止軸部91の上面91c側と下面91d側とに突出するように形成される係止爪部92U,92Dと、を備えている。
係止軸部91は、幅方向をバンド本体76の幅方向(折り完了体44の長手方向)に略沿わせた平板状として、被係合部84における係合用凹部85の貫通方向に略沿って突出するように、構成されている。また、この係止軸部91は、被係止部58における穴本体60に挿入可能に、車内外方向に沿って突出する構成であり、換言すれば、係止軸部91は、車両搭載時において、窓W1の内側面Waと略直交する方向に略沿って突出するように、構成されている(図3参照)。また、係止軸部91は、幅寸法を、被係合部84の幅寸法(バンド本体76の幅寸法)と一致させて構成されるとともに、係止クリップ90の被係止部58における係止穴部59周縁との係止強度を確保するために、被係合部84側となる元部91b側の部位を、被係合部84にかけて、厚さを増すように、構成されている。
各係止爪部92U,92Dは、係止軸部91の先端91a側から上下に突出するように形成されるもので、それぞれ、先端92a側を車内側Iに向けて拡開させるように、傾斜して、形成されている。各係止爪部92U,92Dは、係止軸部91の前後の全域にわたって形成されている。各係止爪部92U,92Dは、係止クリップ90をケース50の被係止部58に形成される係止穴部59に挿入させた際に、穴本体60の上縁60a側と下縁60b側とに形成される係止凸部61U,61Dに係止されるもので、係止凸部61U,61Dと対向するように、形成されている。
この係止クリップ90は、車両搭載状態において、突出方向(被係止部58への挿入方向、係止軸部91の軸方向X1)を、窓W1の内側面Waと略直交させるように、構成されている(図3参照)。また、実施形態の場合、この係止クリップ90は、巻付バンド75を折り完了体44の周囲に巻き付けた状態で、バンド本体76の爪側端部76a側に配設される押圧部82の車外側Oとなる位置において、突出方向(押し込み方向、係止軸部91の軸方向)を、押圧部82(押圧操作面82a)と略直交させるように、配置されることとなる(図19のA参照)。そのため、実施形態の係止クリップ90では、押圧操作面82aを押圧すれば、押圧部82の車外側面82bが被係合部84の車内側面84bと当接することとなり、被係合部84ごと係止クリップ90を押しこむことにより、係止クリップ90を係止穴部59に挿入させることができる。そして、各係止爪部92U,92Dを係止凸部61U,61Dに係止させるまで、係止クリップ90を係止穴部59に押し込めば、係止クリップ90を被係止部58に係止させることができる(図19参照)。
保持部材としての巻付バンド75に形成される係止突起部95は、エアバッグ25の上縁25a側において、折り完了体44の表面側に露出して形成される係止孔32に係止されるものである。係止突起部95は、車両搭載状態において、保持部本体としてのバンド本体76の内周側における上部側に配置されるもので(図3参照)、実施形態の場合、バンド本体76において、被係合部84と係止クリップ90とを配置させた凹側端部76b側に、形成されている。この係止突起部95は、バンド本体76の凹側端部76b側の部位において、内周面76c側から内方(車両搭載時における下方)に向かって突出するように、形成されている。係止突起部95は、図11〜14に示すように、エアバッグ25の上縁25a側に形成される係止孔32に貫通される係止軸部96と、係止軸部96の先端96a側に形成される係止鍔部97と、を備えている。
係止軸部96は、実施形態の場合、バンド本体76の幅方向側に長軸を配置させた略楕円柱状として、長手方向側の両端側に、肉盗み用の凹部(図符号省略)を、配設させている。この係止軸部96は、上述したごとく、長軸方向側の幅寸法T1を、係止孔32の内径寸法d1より大きく、かつ、短軸方向側の幅寸法T2を、係止孔32の内径寸法d1より小さく設定されるもので(図17のA参照)、係止孔32を変形させつつ押し広げるようにして、係止孔32に挿入される構成である。そして、この係止軸部96は、図17のBに示すように、外周面側を隙間なく係止孔32の内周面32aによって覆われることとなり、係止孔32の内周面32aの略全周により、係止孔32の開口面に沿った移動(前後左右方向側への移動)を規制される。
係止鍔部97は、係止軸部96の先端96a側において、係止軸部96の軸方向と略直交する方向側で対向する両側の位置から相互に離れて延びるように形成されている。具体的には、実施形態の場合、係止鍔部97は、図13,14に示すように、短手方向側(車内外方向側)の幅寸法を、係止軸部96の短手方向側の幅寸法と同一として、車両Vの前後方向側(折り完了体44の長手方向側)で対向して相互に離れて延びるように、係止軸部96から前方と後方とに延びるように、形成されている。各係止鍔部97は、外形形状を、それぞれ、係止軸部96側となる元部97a側から先端87b側にかけて狭幅となる略台形状として、構成されている。これらの係止鍔部97は、係止孔32を変形させつつ押し広げるようにすれば、係止孔32に挿通可能な構成とされ、係止軸部96を係止孔32に貫通させた状態で、係止孔32の裏面側周縁に係止される構成である(図13の二点鎖線参照)。
この係止突起部95は、巻付バンド75の折り完了体44の周囲への巻付時に、折り完了体44の表面側に露出している係止孔32に、上方から差し込むようにして係止軸部96を貫通させて配置させた際に、係止鍔部97における係止軸部96から離れた面の略全面を、折り完了体44に接触させた状態として、係止鍔部97を係止孔32の裏面側周縁に係止させることとなり、巻付バンド75の折り完了体44の周囲への巻付作業時(係合爪部78の被係合部84への係合時)に、折り完了体44が巻付バンド75に対して回転することを防止することができる。そのため、係止突起部95の係止鍔部97を係止孔32の裏面側周縁に係止させておけば、被係合部84を強く把持しなくとも、係合爪部78を係合用凹部85に収納させて、係合爪部78を被係合部84に容易に係合させることができ、巻付バンド75の折り完了体44の周囲への巻付作業が容易である。
次に、頭部保護エアバッグ装置M1の車両Vへの搭載について説明をする。まず、エアバッグ25を、図15のBに示すように、折り畳む。実施形態の場合、エアバッグ25を、平らに展開した状態から、上縁25a側の領域を、上縁25aと略平行な折目を付けて蛇腹折りして、蛇腹折り部位44aを形成し、下方の領域を、下縁25bを車外側壁部26b側で巻くロール折りにより折り畳んで、ロール折り部位44bを形成して、折り完了体44を形成する。実施形態の折り完了体44では、図16のAに示すように、蛇腹折り部位44aにおいて、上縁25a側に近く、かつ、係止孔32より下方となる位置に、車内側Iに位置させて折った折目VFが設けられ、係止孔32は、折り完了体44の表面(上面)側に、露出して配置されている。
次に、図15のCに示すように、折り完了体44の周囲に、各巻付バンド75を巻き付けて、折り完了体44を包み、折り完了体44の折り畳み状態を保持させる。具体的には、まず、図16のA,Bに示すように、巻付バンド75の係止突起部95を、係止孔32に挿入させ、係止突起部95の係止鍔部97を係止孔32の裏面側周縁に係止させる。次いで、押圧部82を把持して、図16のCに示すように、バンド本体76を折り完了体44の周囲に巻き付けるようにして、係合爪部78を被係合部84に接近させ、図18に示すように、押圧部82の押圧操作面82aを押圧して、係合爪部78を被係合部84の係合用凹部85内に押し込めば、図16のDに示すように、係合爪部78の爪片80が、係合用凹部85の内周面86に形成される爪片87と係合され、係合爪部78を被係合部84に係合させることができる。そして、図15のC及び図16のDに示すように、折り完了体44の周囲を、巻付バンド75によって、折り畳み状態を保持する(折り崩れを防止する)ように、くるむことができる。
次いで、折り完了体44を、ケース50(50F,50C,50R)に取り付ける。このとき、取付部33Aを取付座部69の車内側面69cに重ねた状態で、取付クリップ17の取付脚部20を、取付部33A及び取付座部69の取付孔33a,69aに、取付座部69の車内側面69c側から挿入させ、取付脚部20を、取付座部69における取付孔69aの周縁部位69bに係止させて、取付クリップ17を取付座部69に仮止めする(図21参照)。また、図19に示すように、巻付バンド75に形成される係止クリップ90を、被係止部58に接近させ、押圧部82の押圧操作面82aを押圧することにより、被係合部84を介して係止クリップ90を押圧し、係止クリップ90を被係止部58の係止穴部59に押し込めば、係止クリップ90の各係止爪部92U,92Dが、係止穴部59の穴本体60周縁に形成される係止凸部61U,61Dに係止されることとなり、取付部としての係止クリップ90を、被係止部58に係止させることができて、折り完了体44を保持させた状態の各巻付バンド75を、ケース50(50F,50C,50R)に取り付けることができる。また、取付部33Bには、取付ブラケット22を取り付けておき、さらに、折り完了体44から突出しているエアバッグ25の接続口部28に取付ブラケット13を取付済みのインフレーター12を挿入して、クランプ15により、接続口部28とインフレーター12とを連結すれば、図20に示すようなエアバッグ組付体AMを形成することができる。
そして、エアバッグ組付体AMから突出している取付クリップ17の取付脚部20を、インナパネル2に形成される取付孔3に挿入させ、取付クリップ17の拡張用軸部21dを張出し鉤部20b間に配置させるように押しピン21を押し込めば、図2に示すように、張出し鉤部20bを取付孔3の周縁に係止させることができて、取付部33Aを、ケース50の取付座部69とともに、ボディ1側のインナパネル2に取り付けることができる。このとき、保持部材としての巻付バンド75も、取付部としての係止クリップ90により、ケース50を介して、間接的に、ボディ1側に取り付けられることとなる。そして、同時に、インフレーター12の取付ブラケット13を、ボルト14を使用して、インナパネル2の所定位置に固定させ、取付部33Bに取り付けられた取付ブラケット22を、ボルト23を使用してインナパネル2の所定位置に固定させれば、エアバッグ組付体AMを車両Vに組み付けることができる。その後、インフレーター12に、インフレーター作動用の制御装置から延びる図示しないリード線を結線するとともに、フロントピラーガーニッシュ5,ルーフヘッドライニング6,中間ピラーガーニッシュ7,リヤピラーガーニッシュ8を、ボディ1側のインナパネル2に取り付ければ、頭部保護エアバッグ装置M1を車両Vに搭載することができる。
頭部保護エアバッグ装置M1の車両Vへの搭載後、制御装置からの作動信号を受けてインフレーター12が作動されれば、インフレーター12から吐出される膨張用ガスがエアバッグ25内に流入して、膨張するエアバッグ25が、巻付バンド75における係合爪部78と被係合部84との係合状態を解除しつつ、エアバッグカバー10を押し開いて、下方へ突出しつつ展開し、図1の二点鎖線、及び、図23に示すように、窓W1,W2や中間ピラー部CP及びリヤピラー部RPの車内側を覆うように、膨張を完了させることとなる。
そして、実施形態の頭部保護エアバッグ装置M1では、折り完了体44の折り畳み状態を保持する保持部材としての巻付バンド75において、折り完了体44の周囲をくるむ保持部本体としてのバンド本体76の内周面76c側に配置される係止突起部95が、折り完了体44の表面(上面)側に露出して形成される係止孔32に挿入可能な係止軸部96を、係止孔32に貫通させた際に、係止孔32の内周面32aの略全周により、係止孔32の開口面に沿った移動を規制されるように、構成されている。そのため、係止軸部96を係止孔32に貫通させることにより、巻付バンド75の、折り完了体44の外周面に沿うような移動や、折り完了体44の長手方向に沿うような移動を、規制できる。また、係止軸部96の先端96a側には、係止軸部96の軸方向と略直交する少なくとも一方側に延びる係止鍔部97が形成されていることから、この係止鍔部97を係止孔32の裏面側周縁に係止させることにより、係止鍔部97の係止孔32からの抜けも抑制することができる。そして、実施形態の頭部保護エアバッグ装置M1では、巻付バンド75は、取付部としての係止クリップ90を折り完了体44を収納させるケース50(50F,50C,50R)に取り付けることにより、間接的に、車両Vのボディ1側に取り付けられる構成である。そのため、バンド本体76によって折り完了体44の周囲をくるんだ状態で、係止クリップ90を、ケース50(50F,50C,50R)を介して、間接的に、車両Vのボディ1側に取り付ければ、係止突起部95により、巻付バンド75との相対的な移動を抑制された状態で、折り完了体44を、車両Vのボディ1側に取り付けることができ、換言すれば、折り完了体44の配置状態を一定として、折り完了体44を車両Vのボディ1側に取り付けることができる。
詳細には、実施形態の頭部保護エアバッグ装置M1では、前後方向に沿って多数(8個)配設される巻付バンド75に設けられる係止突起部95を、エアバッグ25の上縁25a側に係止させることにより、係止突起部95を貫通させる係止孔32の下側において車内側Iに位置させて折った折目VF(図16のA参照)の位置を、前後の略全域にわたって略一定として、折り完了体44を車両Vに搭載させることができる。
したがって、実施形態の頭部保護エアバッグ装置M1では、折り畳まれたエアバッグ25を、ボディ1側に対する折目VFの位置を、安定させて、車両Vのボディ1側に取り付けることができる。そして、実施形態の頭部保護エアバッグ装置M1では、ボディ1側に対する折目VFの位置を安定させることができることから、安定したエアバッグ25の展開膨張形態を確保することもできる。
また、実施形態の頭部保護エアバッグ装置M1では、係止鍔部97を、係止軸部96の軸方向と略直交する方向側で対向する両側の位置から相互に離れて延びるように形成していることから、係止鍔部97を、係止孔32の裏面側周縁に一層安定して係止させることができる。さらに、実施形態の頭部保護エアバッグ装置M1では、係止鍔部97は、車両Vの前後方向側で対向して相互に離れて延びるように形成されている。すなわち、実施形態の頭部保護エアバッグ装置M1では、係止鍔部97が、折り完了体44の長手方向に略沿って延びるように配置されることから、下縁25b側を上縁25a側に接近させるように折り畳まれるエアバッグ25において、係止鍔部97が、折り完了体44の短手方向側での断面において、折り畳まれた状態のエアバッグ25の膨張領域(ガス流入部26)に干渉する面積を少なくできる。なお、このような点を考慮しなければ、係止鍔部を、車内外方向側(左右方向側、すなわち、折り完了体の短手方向側)で対向して相互に離れて延びるように配設させてもよい。さらには、係止鍔部を、係止軸部の軸方向と直交する方向側で対向する両側の位置から相互に離れるように、二方に延びる構成としなくとも、係止軸部の軸方向と略直交する少なくとも一方側のみに延びる構成としてもよい。
上述の頭部保護エアバッグ装置M1では、保持部材として、巻付バンド75を使用し、この巻付バンド75を、ケース50(50F,50C,50R)を介して間接的にボディ1側に取り付ける構成であるが、図24,25に示す頭部保護エアバッグ装置M2のごとく、保持部材をケース100から構成してもよい。
この頭部保護エアバッグ装置M2は、巻付バンドを使用しない構成とされており、この頭部保護エアバッグ装置M2において、保持部材としてのケース100以外は、上述の頭部保護エアバッグ装置M1と同一の構成であることから、同一の部材には同一の図符号を付して、詳細な説明を省略する。また、この頭部保護エアバッグ装置M2においても、ケース100は、折り完了体44の長手方向に沿って複数に分割されて構成されるもので、実施形態では、前側に配置されるものを例にとり、説明をする。ケース100は、前述のケース50と同様に、熱可塑性エラストマー製、詳細には、ポリオレフィン系熱可塑性エラストマー(TPO)製とされている。
保持部材としてのケース100は、図24〜30,32に示すように、折り完了体44の周囲をくるんで折り完了体44を収納させる収納部位101と、収納部位101の内周面側から突出するように形成される係止突起部110と、ボディ1側のインナパネル2に取り付けられる取付部としての取付座部115と、を備える構成とされている。取付座部115は、前述のケース50と同様に、エアバッグ25の取付部33とともに、取付クリップ17を用いてボディ1側のインナパネル2に取り付けられるもので(図24参照)、このケース100では、図26に示すように、前後の中央より前端側の部位と、後端側と、の2箇所に、形成されている。各取付座部115は、後述する収納部位101の車外側壁部102から上方に突出するようにして形成されるもので、各取付座部115には、取付部33の取付孔33aに対応して、取付孔115aが、車内外方向に貫通して形成されている。
収納部位101は、保持部本体として、折り完了体44の周囲をくるむもので、折り完了体44の車外側Oを覆う車外側壁部102を前後の略全域にわたって配設させるとともに、取付座部115の配置エリアを除いた領域に、折り完了体44の上面側から車内側にかけてを覆う車内側カバー部105を、配設させて構成されている。車内側カバー部105は、図25,32に示すように、折り完了体44の上面側から車内側Iにかけてを覆い可能に断面略半円形状とされるもので、車外側壁部102の上端側に対して、ヒンジ部108によって連結されている。この車内側カバー部105の配置位置では、折り完了体44は、車内側カバー部105と車外側壁部102とによって、外周側を略全面にわたって覆われることとなる。このケース100では、車内側カバー部105は、前側の取付座部115Fの前方の領域と、この取付座部115Fと後側の取付座部115Rとの間の領域と、の2箇所に、形成されている。また、車外側壁部102の下端側と、各車内側カバー部105の下端側と、には相互に係合可能な係合爪部106と係合穴部103とが、形成されている。実施形態の場合、車内側カバー部105の下端側に、外周面側に突出する係合爪部106が、形成され、車外側壁部102の下端側に、この係合爪部106を挿入させて周縁で係合可能に開口した係合穴部103が、形成されている(図27,28参照)。この係合爪部106の係合穴部103への係合力は、エアバッグ25の展開膨張時に、相互の係合を解除可能で、かつ、折り完了体44の周囲に配置させた後に、車内側カバー部105や車外側壁部102を手で引っ張っても、容易に係合を解除できないように、設定されている。実施形態の場合、係合爪部106及び係合穴部103は、前側の車内側カバー部105Fの前後の略中央と、後側の車内側カバー部105Rの前後両端側と、の3箇所に、配置されている。
係止突起部110は、エアバッグ25の上縁25a側において、折り完了体44の表面側に露出して形成される係止孔32に係止されるものである。係止突起部110は、車両搭載状態において、車外側壁部102の上下の中央となる位置に配置されるもので、車外側壁部102の内周面102a側から内方(車両搭載時における内下方)に向かって突出するように、形成されている。実施形態のケース100では、係止突起部110は、前後方向に沿って、3箇所に、形成されている。各係止突起部110は、図29,30に示すように、エアバッグ25の上縁25a側に形成される係止孔32に貫通される係止軸部111と、係止軸部111の先端111a側に形成される係止鍔部112と、を備えている。
係止軸部111は、実施形態の場合、略四角柱状として、先端111a側から凹ませるようにして、肉盗み用の凹部(図符号省略)を、配設させている。この係止軸部111は、断面における対角線上の角部間の離隔距離T3(図32のA参照)を、係止孔32の内径寸法d1より大きく設定されて、係止孔32を変形させつつ押し広げるようにして、係止孔32に挿入される構成である。そして、この係止軸部111は、図32のBに示すように、外周面側を隙間なく係止孔32の内周面32aによって覆われることとなり、係止孔32の内周面32aの略全周により、係止孔32の開口面に沿った移動(前後左右方向側への移動)を規制される構成である。
係止鍔部112は、図29,30に示すように、係止軸部111の先端111a側において、係止軸部111の軸方向と略直交する方向側で対向する両側の位置から相互に離れて延びるように形成されている。具体的には、実施形態の場合、係止鍔部112は、短手方向側(車内外方向側)での幅寸法を、係止軸部111の短手方向側の幅寸法と同一として、車両Vの前後方向側(折り完了体44の長手方向側)で対向して相互に離れて延びるように、係止軸部111から前方と後方とに延びるように、形成されている。各係止鍔部112は、外形形状を、係止軸部111側となる元部112a側から先端112b側にかけての幅寸法を一定とした略長方形状として、構成されている。これらの係止鍔部112は、係止孔32を変形させつつ押し広げるようにすれば、係止孔32に挿通可能な構成とされ、係止軸部111を係止孔32に貫通させた状態で、係止孔32の裏面側周縁に係止される構成である(図29の二点鎖線参照)。
このような構成のケース100は、折り完了体44を、係止突起部110を係止孔32に挿入させ、係止鍔部112における係止軸部111から離れた面の略全面を、折り完了体44に接触させた状態として、係止突起部110の係止鍔部112を係止孔32の裏面側周縁に係止させた後に、車内側カバー部105に形成される係合爪部106を、車外側壁部102に形成される係合穴部103に挿入させて、周縁に係止させ、車内側カバー部105と車外側壁部102とによって、折り完了体44の周囲をくるむことにより、折り完了体44を収納させることができる。そして、ケース100に折り完了体44を収納させた後は、前述の頭部保護エアバッグ装置M1と同様にして、車両Vに搭載することができる。
保持部材として、このようなケース100を使用する場合にも、折り完了体44の折り畳み状態を保持する保持部材としてのケース100において、折り完了体44の周囲をくるむ保持部本体としての収納部位101の内周面側に配置される係止突起部110が、折り完了体44の外周面側に露出して形成される係止孔32に挿入可能な係止軸部111を、係止孔32に貫通させた際に、係止孔32の内周面の略全周により、係止孔32の開口面に沿った移動を規制されるように、構成されている。そのため、係止軸部111を係止孔32に貫通させることにより、ケース100の、折り完了体44の外周面に沿うような移動や、折り完了体44の長手方向に沿うような移動を、規制できる。また、係止軸部111の先端111a側には、係止軸部111の軸方向と略直交する少なくとも一方側に延びる係止鍔部112が形成されていることから、この係止鍔部112を係止孔32の裏面側周縁に係止させることにより、係止鍔部112の係止孔32からの抜けも抑制することができる。そして、上記構成のケース100を使用した頭部保護エアバッグ装置M2では、ケース100は、車両Vのボディ1側のインナパネル2に直接的に取り付けられる取付部としての取付座部115を有する構成であることから、収納部位101によって折り完了体44の周囲をくるんだ状態で、取付座部115を、直接的に、車両Vのボディ1側のインナパネル2に取り付ければ、係止突起部110により、ケース100との相対的な移動を抑制された状態で、折り完了体44を、車両Vのボディ1側に取り付けることができ、換言すれば、折り完了体44の配置状態を一定として、折り完了体44を車両Vのボディ1側に取り付けることができる。
このケース100を使用した頭部保護エアバッグ装置M2においても、前後方向に沿って多数(3個)配設される係止突起部110を、エアバッグ25の上縁25a側に係止させることにより、係止突起部110を貫通させる係止孔32の下側において車内側Iに位置させて折った折目VF(図31のA参照)の位置を、前後の略全域にわたって略一定として、折り完了体44を車両Vに搭載させることができる。
したがって、上記構成のケース100を使用した頭部保護エアバッグ装置M2においても、折り畳まれたエアバッグ25を、ボディ1側に対する折目VFの位置を、安定させて、車両Vのボディ1側に取り付けることができる。そして、この頭部保護エアバッグ装置M2においても、ボディ1側に対する折目VFの位置を安定させることができることから、安定したエアバッグ25の展開膨張形態を確保することもできる。
なお、頭部保護エアバッグ装置M1では、保持部材としての巻付バンド75は、ケース50を介して間接的にボディ1側に取り付けられる構成であるが、保持部材として巻付バンドを使用する場合、巻付バンドを直接ボディ側に取り付ける構成としてもよい。