JP6519062B2 - セラミック製品の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、樹脂ワイヤを用いた熱溶解積層法を利用して、表面に立体模様を有するセラミックス製品を製造するための製造方法に関するものである。
例えばタイルや陶磁器等のセラミックス製品の表面に立体模様を形成する場合、あらかじめ焼成前の生地に手作業で立体模様を形成したり、生地を型押しして立体模様を形成したりしたのち生地ごと焼成するのが一般的である。
しかし手作業で立体模様を形成する場合は作業に手間がかかる上、例えば全く同一形状の立体模様を有するセラミックス製品を大量に生産するのが実質的に不可能であるといった問題もある。
一方、型押しによれば同一形状の立体模様を有するセラミックス製品を連続して大量に生産できるものの、立体模様が異なるごとに違う型を用意しなければならないため逆に一品もの、あるいは多品種で少量のセラミックス製品の生産には適していないという問題がある。
特許文献1には粉体材料を所定の厚みに堆積させてその一部の領域にバインダ材料を導入したのち、バインダ材料を導入していない他の領域の粉体材料を除去する工程を繰り返すことで立体形状を形成する方法が記載されている。
この方法を利用して、セラミックス系の粉体材料によって、セラミックス製品のもとになる基材の表面に立体模様を形成したのち基材ごと焼成してセラミックス製品を生産することが考えられる。
その場合、粉体へのバインダ材料の導入は例えばプロッタ等の技術を利用して、コンピュータからのデータに基づいてオンデマンドで制御できるため、一品ものや多品種の少量生産から同一形状を有する製品の大量生産までニーズに応じた種々の態様による生産が可能になると推測される。
特開2000−234104号公報 特開平3−158228号公報
ところが、特許文献1に記載の方法では1つの立体模様を形成するのに上記の工程を数回繰り返さなければならず1つの立体模様の形成に長時間を要するため、セラミックス製品を高い生産性でもよって効率よく製造できないという問題がある。
近年、コンピュータ上の3Dデータをもとに樹脂ワイヤ(樹脂フィラメント、樹脂スプール等とも呼ばれる)を必要な位置に必要な量だけ溶融させながら積層して、上記3Dデータに対応した立体物を造形する熱溶解積層法(Fused Deposition Modeling:FDM法)を利用した3Dプリンタが急速に普及しつつある(例えば特許文献2等)。
FDM法によれば、上記のようにコンピュータ上の3Dデータをもとにオンデマンドで立体模様を形成でき、一品ものや多品種の少量生産から、同一形状を有する製品の大量生産までが可能である。その上FDM法によれば、先の特許文献1に記載の方法に比べてごく短時間で効率よく立体物を形成できる。
そのため発明者は、上記FDM法を応用してセラミックス製品の表面に立体模様を形成することを検討したが、通常の3Dプリンタ用の造形材料は焼成を考慮しない、任意の色に着色した単なる樹脂のワイヤであるため、焼成するとほとんど失われてしまって立体模様を形成することはできない。
本発明の目的は、樹脂ワイヤを用いたFDM法を利用して、焼成後の表面に立体模様を有するセラミックス製品を製造するための製造方法を提供することにある。
本発明は、少なくともガラスフリットを含む無機分、およびバインダ樹脂を含むFDM法用の樹脂ワイヤを用いてセラミックス製の基材の表面にFDM法によって立体模様を形成したのち、前記基材ごと焼成するセラミックス製品の製造方法である。
本発明によれば、少なくともガラスフリットを含み焼成によって焼失しない無機分をFDM用の樹脂ワイヤに含有させることにより、当該樹脂ワイヤを用いたFDM法を利用して、焼成後の表面に立体模様を有するセラミックス製品を製造することができる。
《樹脂ワイヤ》
本発明の製造方法には、樹脂ワイヤとして、少なくともガラスフリットを含む無機分、およびバインダ樹脂を含むものを用いる。
かかる樹脂ワイヤは、無機分とバインダ樹脂を溶融混錬しながら押出成形する等して製造される。
〈バインダ樹脂〉
バインダ樹脂としては、使用する3Dプリンタに設定された溶解温度で熱溶解可能な種々の熱可塑性樹脂が使用可能である。かかるバインダ樹脂としては、例えばアクリロニトリルブタジエンスチレン樹脂(ABS)、エチレン酢酸ビニル樹脂(EVA)、ポリ乳酸樹脂(PLA)、ハイインパクトポリスチレン樹脂(HIPS)等が挙げられる。
特に通常のFDM法でも樹脂ワイヤの形成材料として好適に使用されている、熱変形温度が120℃以上のABS、PLA、HIPS等が好ましい。また無機分リッチの場合は可撓性を維持してワイヤを作製したり使用したりしやすくするためにゴム弾性を有するEVAが好ましい。
〈無機分〉
無機分としては少なくともガラスフリットを用いる。また無機分としては、例えばガラスフリットの溶融温度を低下させるための焼結助剤(融剤)や立体模様を着色するための無機顔料等を併用してもよい。
上記無機顔料を配合した場合には着色された立体模様を形成できる。かかる着色された立体模様のみで、あるいは基材の表面にあらかじめ形成した下絵または上絵と組み合わせることによって、これまでにない新規な意匠を有するセラミックス製品が得られる。
また無機顔料を配合しない場合は、セラミックス製の基材の表面に透明な立体模様を形成できる。かかる透明な立体模様のみで、あるいは基材の表面にあらかじめ形成した下絵または上絵と組み合わせることによって、やはりこれまでにない新規な意匠を有するセラミックス製品が得られる。
(ガラスフリットおよび焼結助剤)
ガラスフリットとしては例えばホウケイ酸ガラスや、あるいは酸化ホウ素、酸化アルミニウム、酸化ケイ素、酸化亜鉛、酸化鉛、酸化ビスマス等を含有するガラス等の1種または2種以上等の種々のガラスからなり、焼成により互いに溶融して一体化するとともに基材とも一体化して当該基材の表面に立体模様を形成しうる、例えば粉末状、鱗片状等の粒子が挙げられる。
なおガラスフリットとしては、焼成時のバインダ樹脂の溶融流動やガラスフリットの溶融流動等を抑制して、焼成前の立体模様の形状をできるだけ維持することを考慮すると、その溶融温度がバインダ樹脂の熱分解温度および焼成温度にできるだけ近いものを用いるのが理想的である。
特にガラスフリットとしては溶融温度が400℃以上、900℃以下であるものを用いるのが好ましい。
ガラスフリットの溶融温度を調整するには、当該ガラスフリットとして溶融温度の異なるものを選択して使用したり、前述した焼結助剤を添加したりすればよい。また、あらかじめ焼結助剤を添加して溶融温度を調整したガラスフリットも供給されており、かかるガラスフリットを溶融温度に応じて選択して使用してもよい。
焼結助剤としては例えばホウ酸ナトリウム、メタホウ酸リチウム等のホウ酸塩系化合物;炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸カルシウム等の炭酸塩系化合物;硝酸ナトリウム、硝酸カリウム等の硝酸塩系化合物;フッ化リチウム、フッ化ナトリウム等のフッ化物系化合物;鉛系化合物、さらには過酸化ナトリウム、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、塩化ナトリウム、塩化アンモニウム等の1種または2種以上が挙げられる。
なお環境への負荷を極力低減することを考慮すると、ガラスフリットや焼結助剤としては鉛を含まないものを選択して用いるのが好ましい。
(無機顔料)
無機顔料としては、焼成工程後も何らかの色味を維持しうる種々の無機顔料がいずれも使用可能である。特にセラミックス製品において絵付け用として使用され、焼成によって所定の色味に発色する焼成顔料(セラミックス顔料、複合酸化物顔料等)が好ましい。
焼成顔料としては例えば酸化鉄(II)、酸化亜鉛、酸化銅、酸化コバルト(II)、酸化マンガン(II)、酸化クロム(II)等の2価の金属酸化物や、酸化アルミニウム、酸化コバルト(III)、酸化クロム(III)、酸化鉄(III)等の3価の金属酸化物等から誘導される複合酸化物などが挙げられる。
(配合割合)
無機顔料の配合割合は、無機分の総量の70質量%以下、特に50質量%以下であるのが好ましい。
この範囲より無機顔料が多い場合には相対的にガラスフリットの割合が少なくなって立体模様の定着性が低下したり、焼成時の熱対流に影響したりするおそれがある。また焼成後の立体模様の表面の光沢が失われるおそれもある。
なお無機顔料の配合割合の下限は先述したように0質量%である。すなわち無機顔料によって着色されない立体模様も形成可能である。
ただし立体模様を着色する場合は十分な着色効果を得るために無機顔料の配合割合を、上記の範囲でも無機分の総量の0.5質量%以上、特に5質量%とするのが好ましい。
また無機顔料は焼成によって溶融しないため、上記の範囲で無機顔料を配合することによってガラスフリットの溶融流動に伴う立体模様の面方向への拡がりを抑制できる。
また上記のようにガラスフリットが多いほど立体模様の表面の光沢が向上し、逆に無機顔料が多いほど立体模様の表面は艶消しになることから、当該立体模様に求める意匠に応じて上記の範囲で無機顔料の配合割合を任意に変更して、立体模様の表面の光沢を調整することもできる。
なお基材の表面に任意の方法であらかじめガラスフリットからなる受容層を形成しておき、焼成時にかかる受容層に無機顔料を受容させるようにすれば、樹脂ワイヤを構成する無機分中の無機顔料の配合割合を上記の範囲内で、あるいは範囲を超えて多めに設定することができる。
また無機顔料としてはあらかじめガラスフリットを含むものも供給されており、かかる無機顔料を使用すれば、その配合割合を上記の範囲内で、あるいは範囲を超えて多めに設定することができる。
樹脂ワイヤの総量、すなわち無機分とバインダ樹脂の合計量に対する無機分全体の配合割合は5質量%以上、特に30質量%以上であるのが好ましく、80質量%以下、特に75質量%以下であるのが好ましい。
この範囲より無機分が少ない場合には焼成後に十分な高さを有する立体模様を維持できないおそれがある。
一方、上記範囲より無機分が多い場合には相対的にバインダ樹脂の割合が少なくなるため、樹脂ワイヤを前述した押出成形等によって製造するのが容易でなくなるおそれがある。また樹脂ワイヤが脆くなったり柔軟性が低下したりして、FDM法によって立体模様を形成する工程の途中で破損したりしやすくなるおそれもある。
なおバインダ樹脂として例えばABS、PLA、HIPS等を用いる場合には、上記破損等が生じるのをできるだけ防止するために、無機分全体の配合割合を上記の範囲でも58質量%未満とするのが好ましい。
一方、柔軟なEVA等を使用する場合には前述したように上記の範囲を超えて無機分リッチとすることができる。すなわち無機分全体の配合割合を58質量%以上とすることができ、かかる無機分の増加により、焼成後により一層十分な高さを有する立体模様を形成できる。
《セラミックス製品の製造方法
本発明のセラミックス製品の製造方法は、上記樹脂ワイヤを用いてセラミックス製の基材の表面にFDM法によって立体模様を形成したのち、前記基材ごと焼成することを特徴とするものである。
〈基材〉
基材としては例えばタイル、プレート、皿その他、種々のセラミックス製の基材が使用可能である。
基材は素焼きのままでもよいし釉をかけて焼成したものでもよい。
ただし素焼きの基材は釉をかけて焼成したものよりも比表面積が大きくかつ多孔質で、溶融したバインダ樹脂やガラスフリットの濡れ性が良いため立体模様が面方向に僅かに拡がる傾向がある。そのため素焼きのままでも実用上差支えはないものの、かかる拡がりをさらに良好に抑制するためには釉をかけて焼成した基材を用いるのがベターである。
また、基材にはあらかじめ絵付けを施してもよい。すなわち釉をかける前の素焼の表面に下絵を施したり、釉をかけて焼成した後の表面に上絵を施したりできる。下絵は釉をかけて焼成することで定着され、上絵はさらに、上述した、少なくともガラスフリットを含む無機分、およびバインダ樹脂を含む樹脂ワイヤを用いて立体模様を形成した後の焼成によって定着される。
絵付けは基材の表面に直接に手作業で施してもよい。また前述した焼成顔料等の無機顔料を用いて、例えばスクリーン印刷法、インクジェット印刷法等の種々の印刷法を利用して転写層上に形成した下絵または上絵を基材の表面に転写して形成してもよい。
また、例えば特許第5363197号公報に記載の方法で絵付けすることもできる。
すなわち転写層上に無機顔料を含むトナーを用いて電子写真法によって絵付けをし、その上に釉の前駆体を含むカバーシートを積層したのち、全体を基材の表面に転写して焼成することで、釉で保護された絵付けをすることができる。
あるいはカバーシートを省略し、前述した、少なくともガラスフリットを含む無機分、およびバインダ樹脂を含む樹脂ワイヤを用いて立体模様を形成してカバーシートの機能を兼ねさせることもできる。
〈焼成〉
焼成温度や時間、昇温速度、降温速度等の条件は、バインダ樹脂の熱分解温度やガラスフリットの溶融温度等に応じて適宜設定できる。
例えば昇温速度を遅くしてバインダ樹脂をしっかり熱分解させると立体模様の表面を滑らかにできる。
また昇温速度をできるだけ速くするとバインダ樹脂の熱分解とガラスフリットの溶融をほぼ同時に進行させて立体模様の形状維持をし易く、特に面方向の拡がりを抑制できる。ただしバインダ樹脂が残ると表面が粗く、脆くなるためバインダ樹脂を十分に熱分解できるように焼成時間には注意するのが望ましい。
〈実施例1〉
(樹脂ワイヤの作製)
ガラスフリット(溶融温度:700〜800℃)と黒色の焼成顔料とを混合し、バインダ樹脂としてのABSに配合して、押出機を用いて溶融混錬しながら押出成形して樹脂ワイヤを作製した。
焼成顔料の配合割合は、無機分(ガラスフリット+焼成顔料)の総量の10質量%とした。また上記無機分の配合割合は、樹脂ワイヤ(無機分+バインダ樹脂)の総量の40質量%とした。
(セラミックス製品の製造)
セラミックス製のプレートの釉をかけて焼成した表面に、FDM法による3Dプリンタを用いて、上記樹脂ワイヤによって立体模様を形成した。
次いで上記プレートを電気炉中に入れ、室温から800℃まで5時間かけて昇温し、次いで800℃で20分間維持したのち室温まで自然冷却させて電気炉から取り出してセラミックス製品を製造した。
〈実施例2〉
バインダ樹脂としてEVAを用いるとともに、無機分の配合割合を樹脂ワイヤの総量の60質量%としたこと以外は実施例1と同様にして樹脂ワイヤを作製し、セラミックス製品を製造した。
〈実施例3〉
表面に立体模様を形成したプレートを電気炉中に入れ、室温から800℃まで実施例1の2倍の10時間かけて昇温し、次いで800℃で20分間維持したのち室温まで自然冷却させて電気炉から取り出したこと以外は実施例1と同様にしてセラミックス製品を製造した。
〈実施例4〉
焼成顔料の配合割合を無機分の総量の33.5質量%としたこと以外は実施例1と同様にして樹脂ワイヤを作製し、セラミックス製品を製造した。
〈実施例5〉
無機分の配合割合を樹脂ワイヤの総量の25質量%としたこと以外は実施例1と同様にして樹脂ワイヤを作製し、セラミックス製品を製造した。
〈実施例6〉
無機分の配合割合を樹脂ワイヤの総量の57.1質量としたこと以外は実施例1と同様にして樹脂ワイヤを作製し、セラミックス製品を製造した。
〈実施例7〉
(樹脂ワイヤの作製)
焼成顔料を配合せず、ガラスフリットのみをバインダ樹脂としてのABSに配合して、押出機を用いて溶融混錬しながら押出成形して樹脂ワイヤを作製した。
無機分としてのガラスフリットの配合割合は、樹脂ワイヤ(無機分+バインダ樹脂)の総量の40質量%とした。
(絵付け)
カバー層を省略したこと以外は特許第5363197号公報の実施例に準じて絵付けのもとになる転写シートを作製した。
すなわち台紙上にデキストリン溶液を塗布して厚み2μmの糊層を形成し、その上にアルキルアセタール化ポリビニルアルコールからなる厚み17μmの転写層を形成したのち、シアン、マゼンタ、イエローおよびブラックの焼成顔料を含むトナーを用いて上記転写層上に電子写真法で絵付けをして転写シートを作製した。
(セラミックス製品の製造)
上記転写シートを、セラミックス製のプレートの、釉をかけて焼成した表面に転写して絵付けをし、次いでその上に、FDM法による3Dプリンタを用いて、上記樹脂ワイヤによって立体模様を形成した。
そして実施例1と同条件で焼成してセラミックス製品を製造した。
〈比較例1〉
ガラスフリットを配合せず、焼成顔料のみをバインダ樹脂としてのABSに配合して、押出機を用いて溶融混錬しながら押出成形して樹脂ワイヤを作製した。
無機分としての焼成顔料の配合割合は、樹脂ワイヤ(無機分+バインダ樹脂)の総量の40質量%とした。
上記樹脂ワイヤを用いて実施例1と同様にしてセラミックス製品を製造したが、基材の表面に立体模様を形成することはできなかった。
〈樹脂ワイヤの評価〉
上記各実施例、比較例において樹脂ワイヤの作製の様子、および作製した樹脂ワイヤを観察して、下記の基準で評価をした。
◎:可撓性にすぐれ、曲げても全く折れなかった。
○:可撓性があり、曲げても折れにくかった。
△:可撓性が小さく曲げると折れやすかったが、3Dプリンタにはなんとか使用できた。
×:樹脂ワイヤを作製できなかった。
〈成形性評価〉
上記各実施例、比較例で作製した樹脂ワイヤを3Dプリンタに用いて立体模様を形成した際の状態を観察して、下記の基準で評価をした。
◎:無機物を含まない通常の樹脂ワイヤと同等の細かい立体模様を形成できた。
○:細かい立体模様の形成は難しかったが、所定の立体模様を形成することはできた。
△:大まかな立体模様は形成できた。
×:立体模様を形成できなかった。
〈焼成後の状態評価〉
(立体模様の有無)
上記各実施例、比較例で作製した樹脂ワイヤを用いて、前述した焼成の工程を経て製造したセラミックス製品を観察して、立体模様の有無を下記の基準で評価した。
あり:基材と一体化した立体模様を形成できた。
なし:立体模様を形成できなかった。あるいは立体模様の痕跡は見られたが、こすると基材の表面から脱落して失われてしまった。
(表面状態)
前項で立体模様ありと評価されたものに対して、その表面が光沢ありか艶消しかを観察した。
(拡がりの有無)
前々項で立体模様ありと評価されたものに対して、焼成後の立体模様が面方向に拡がっていたか否かを下記の基準で評価した。なお評価には平面形状が円形の立体模様を用い、その直径で評価をした。
○:焼成前の直径の1.2倍以下の範囲で拡がりが見られた。
△:焼成前の直径の1.2倍超、1.5倍以下の範囲で拡がりが見られた。
×:焼成前の直径の1.5倍超の範囲で拡がりが見られた。
以上の結果を表1、表2に示す。
Figure 0006519062
Figure 0006519062
表1、表2の実施例1〜7、比較例1の結果より、バインダ樹脂に無機分として少なくともガラスフリットを配合した樹脂ワイヤを用いてセラミックス製の基材の表面に立体模様を形成したのち焼成することにより、当該基材と一体化された立体模様を有するセラミックス製品を製造できることが判った。
実施例1〜6、実施例7の結果より、樹脂ワイヤには焼成顔料等の無機顔料を配合してもよいし、しなくてもよいことが判った。
実施例1、2の結果より、バインダ樹脂として柔軟なEVAを使用することにより、無機分リッチの状態でも柔軟性に優れた樹脂ワイヤを作製できることが判った。
実施例1、3の結果より、立体模様を形成した基材の昇温速度を速くすることで、立体模様の面方向への拡がりを抑制できることが判った。
また実施例1、4の結果より、焼成顔料の配合割合を増加させると立体模様をつや消しにできることが判った。
さらに実施例1、5、6の結果より、無機分の配合割合を少なくすると立体模様の面方向への拡がりが大きくなるものの立体模様の成形性を向上でき、逆に多くすると立体模様の面方向への拡がりを抑制しながらその表面をつや消しにできることが判った。

Claims (4)

  1. 少なくともガラスフリットを含む無機分、およびバインダ樹脂を含む熱溶解積層法用の樹脂ワイヤを用いてセラミックス製の基材の表面に熱溶解積層法によって立体模様を形成したのち、前記基材ごと焼成するセラミックス製品の製造方法。
  2. 前記基材の前記立体模様を形成する表面にはあらかじめ絵付けが施されている請求項に記載のセラミックス製品の製造方法。
  3. 前記樹脂ワイヤは、前記無機分としてさらに無機顔料を含んでいる請求項1または2に記載のセラミックス製品の製造方法。
  4. 前記樹脂ワイヤは、前記無機顔料を、前記無機分の総量の70質量%以下の割合で含んでいる請求項3に記載のセラミックス製品の製造方法。
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