以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
(1.本発明に想到した背景と本発明の基本原理)
本発明の好適な一実施形態について詳細に説明するに先立ち、本発明をより明確なものとするために、本発明者らが本発明に想到した背景と、本発明の基本原理について説明する。なお、本発明は、粒子状物質の中でも、特にPM2.5の分析を対象としている。従って、以下では、分析対象である粒子状物質がPM2.5である場合について説明を行う。以下の説明において、「微粒子」又は「粒子」との表現は、特に記載のない限り、PM2.5のことを意味することとする。ただし、本発明はかかる例に限定されず、例えば、粒子径が10μm以下であるような他の粒子状物質に対しても好適に適用可能である。
(1−1.本発明に想到した背景)
上記特許文献1に示すように、本願出願人は、微粒子の1粒子解析を行うために、微粒子に電子ビーム(EB:Electron Beam)を照射する電子ビーム照射器と、その電子ビームの照射により当該微粒子から発生する二次電子を検出する検出器と、当該微粒子に集束イオンビーム(FIB:Focused Ion Beam)を照射する集束イオンビーム照射器と、集束イオンビームの照射により当該微粒子から発生する二次イオンを検出する質量分析器と、を備える分析装置を開発している。当該分析装置は、FIB−TOF−SIMS(FIB−Time of Flight−Secondary Ion Mass Spectrometry)装置に電子ビーム照射器を併載したものに対応する。以下では、当該分析装置のことを、FIB−EB−TOF−SIMS装置と呼称することとする。
FIB−EB−TOF−SIMS装置によれば、電子ビームの照射により得られるSEM(Scanning Electron Microscope)像によって分析対象とする微粒子を特定するとともに、当該微粒子に対して集束イオンビームを用いたSIMS分析を行うことにより、当該微粒子の成分を分析することができる。このように、FIB−EB−TOF−SIMS装置は、1粒子解析に適した分析装置であると言える。そこで、本発明者らは、特許文献1に記載の技術にならい、FIB−EB−TOF−SIMS装置を用いてPM2.5の1粒子解析を行うこととした。
ただし、FIB−EB−TOF−SIMS装置では、解析可能な元素が限定される恐れがある。そこで、本発明者らは、FIB−EB−TOF−SIMS装置による分析とともに、又は、FIB−EB−TOF−SIMS装置による分析に代えて、SEM−EDX(SEM−Energy Dispersive X−ray Spectroscopy)装置による分析を行うこととした。SEM−EDX装置では、SEM像の観察と、特性X線による成分分析を行うことができる。このように、SEM−EDX装置においても、SEM像による分析対象である微粒子の特定と、当該微粒子についての成分分析をともに行うことができるため、当該SEM−EDX装置も1粒子解析に好適であると言える。FIB−EB−TOF−SIMS装置による1粒子解析と、SEM−EDX装置による1粒子解析と、を組み合わせることにより、それぞれの装置において検出することが困難な元素についての検出結果を互いに補完し合うことができ、1粒子解析の精度をより向上させることができる。
このように、本発明者らは、FIB−EB−TOF−SIMS装置及び/又はSEM−EDX装置を用いてPM2.5の1粒子解析を試みた。
ここで、本発明者らによる分析は、工場等の固定発生源由来のPM2.5を、その他の発生源由来のPM2.5と切り分けることを目的としている。そこで、まず、工場から排出されるPM2.5の粒子径、成分及び濃度の特徴を把握するために、工場の煙道において排出ガス中のPM2.5を捕集し、その捕集したPM2.5に対して1粒子解析を行うことを試みた。
この際、工場のように煤塵量が多い発生源において、PM2.5の微粒子を分級する分級器としては、バーチャルインパクタが好適である。本発明者らは、工場からの排出ガスをバーチャルインパクタによって吸引し、PM2.5を分級するとともに、当該バーチャルインパクタ内に設けたフィルタによって分級したPM2.5を捕集した。そして、PM2.5が捕集されたフィルタを試料台の上に載せ、FIB−EB−TOF−SIMS装置及び/又はSEM−EDX装置を用いて1粒子解析を行った。
ここで、バーチャルインパクタによる微粒子の捕集においては、シリカフィルタが一般的に広く用いられている。そこで、本発明者らは、まず、一般的な方法にならい、シリカフィルタを用いて、上記の手順で1粒子解析を行った。しかしながら、シリカフィルタを用いた場合には、1粒子解析を円滑に行うことが困難であった。その理由としては、シリカフィルタでは、表面の平滑性が低いため捕集した微粒子とフィルタ表面の凹凸とをSEM像において区別し難いこと、導電性が低いためチャージアップしてしまい分析の対象としている微粒子が観測像において測定箇所から移動してしまうこと、及び集束イオンビームにより分析中にフィルタ表面が損傷してしまうことが挙げられる。
そこで、本発明者らは、シリカフィルタに代えてテフロン(登録商標)フィルタを用いて、同様に1粒子解析を行った。なお、テフロンフィルタは、陽子ビームを照射して特性X線を測定するPIXE(Particle Induced X−ray Emission)等の分析に広く用いられているフィルタである。しかしながら、テフロンフィルタでは、上述した平滑性については問題なかったものの、チャージアップによる分析困難性や、集束イオンビームに対する耐久性では、シリカフィルタと同様の問題が生じ、やはり1粒子解析を円滑に行うことができなかった。
このように、本発明者らによる検討の結果、微粒子を捕集するために従来広く用いられているフィルタをそのまま1粒子解析に適用することは、必ずしも適切でないことが判明した。本発明者らは、当該検討結果から、微粒子の1粒子解析を円滑に行うためには、当該微粒子を捕集するためのフィルタの特性が重要であるとの知見を得た。
ここで、特許文献1に記載の技術では、基板をポータブルインパクタ等の分級器の内部に設置することにより、当該基板上に解析対象である微粒子を捕集している。そして、当該基板としては、シリコンウエハが用いられている。シリコンウエハは、表面の平滑性が高く、導電性が低く、集束イオンビームに対する耐久性も高いため、1粒子解析に好適であると言える。従って、本発明者らは、特許文献1に記載の技術にならって、シリコンウエハによってPM2.5を捕集し、1粒子解析を行うことを考えた。
しかしながら、バーチャルインパクタ内にシリコンウエハを設置してPM2.5の捕集を試みたものの、十分な量を捕集することが困難であった(後述する図1を参照)。捕集されるPM2.5の量が少なければ、1粒子解析を行う対象となる微粒子の数も制限されるため、微粒子群についての粒子径、成分及び濃度の代表値を正確に求めることができなくなり、当該微粒子群に対する発生源の影響の切り分けの精度も低下してしまう恐れがある。
本発明者らによる検討の結果、カスケードインパクタ等他の分級器ではシリコンウエハ上に十分な量のPM2.5を捕集できたことから、このような現象は、装置の特性に起因する、バーチャルインパクタに固有の現象であると考えられる。このように、特許文献1に記載の技術では、分級器の種類によっては、微粒子の捕集を適切に行えないことが判明した。
そこで、本発明者らは、バーチャルインパクタにおいてフィルタで捕集したPM2.5をシリコンウエハ上に転写し、そのシリコンウエハ上のPM2.5に対して、FIB−EB−TOF−SIMS装置及び/又はSEM−EDX装置を用いて1粒子解析を行う方法を開発した。当該方法によれば、十分な量の微粒子をシリコンウエハ上に採取できるとともに、1粒子解析も円滑に行うことが可能となる。
図1は、シリコンウエハによるPM2.5の捕集について説明するための説明図である。図1では、上段に、バーチャルインパクタ内に設置したシリコンウエハによるPM2.5の捕集状況を示し、下段に、バーチャルインパクタ内に設置したフィルタによって捕集したPM2.5をシリコンウエハに転写した場合における、当該シリコンウエハ上のPM2.5の捕集状況を示している。図1では、シリコンウエハ上のPM2.5に対して成分分析を行った結果を、S、K、Ca、Feの元素ごとに視覚的に示している。各画像において、黒色の部分は、該当する元素が存在しない部分を意味している。
図1に示すように、転写作業を行った場合と比較すると、バーチャルインパクタ内にシリコンウエハを設置してPM2.5を捕集した場合には、十分な量をシリコンウエハ上に捕集できていないことが分かる。この結果から、バーチャルインパクタ内にシリコンウエハを設置してPM2.5を捕集しようとしても、1粒子解析に十分な量を捕集することは困難であり、より適切に1粒子解析を行うためには、上記のようなフィルタからシリコンウエハへの転写作業を行う必要があると考えられる。
しかしながら、フィルタからシリコンウエハへの微粒子の転写作業は、人手によるものであるため、相応の時間を要する。微粒子を捕集する度に転写作業を行っていては、効率が悪く、1粒子解析を数多く実行することができなくなってしまう。
以上、本発明者らが、1粒子解析について検討した結果について説明した。以上説明したように、本発明者らによる検討の結果、1粒子解析について以下の事実が判明した。すなわち、バーチャルインパクタを用いて、従来用いられているフィルタ(シリカフィルタやテフロンフィルタ)によってPM2.5を捕集した場合には、そのフィルタの特性から、1粒子解析を円滑に行うことができない。これに対して、シリコンウエハ上にPM2.5を捕集すれば1粒子解析を円滑に行うことができるが、バーチャルインパクタ内にシリコンウエハを設置してPM2.5を捕集しようとしても、装置の特性から、当該シリコンウエハ上に十分な量を捕集することができない。バーチャルインパクタ内に設置したフィルタによってPM2.5を捕集し、それをシリコンウエハ上に転写することにより、十分な量の微粒子を確保しつつ1粒子解析を円滑に行うことが可能になるが、当該転写作業を行う分、分析の効率が低下する。
このように、これまで、1粒子解析を行うために適切な、すなわち、電子ビーム及び/又は集束イオンビームを用いた分析に対応し得るような、PM2.5の捕集方法については、十分に検討されていなかった。つまり、以上の検討結果に鑑みれば、より容易にPM2.5を捕集するとともに、その捕集したPM2.5に対して1粒子解析を円滑に行うことが可能な、微粒子分析方法が求められていた。特に、バーチャルインパクタを用いたPM10やPM2.5等の微粒子の捕集については、JIS Z 7152−2013で規定されているが、上記のように、バーチャルインパクタを用いたPM2.5の捕集方法について、1粒子解析に適した方法は、必ずしも確立されているとは言えない。従って、1粒子解析のためのPM2.5の捕集技術の確立が必要とされていた。これを受けて、本発明者らは、1粒子解析により適したPM2.5の捕集方法について鋭意検討した結果、本発明に想到したものである。
(1−2.本発明の基本原理)
本発明の基本原理について説明する。上記のように、工場からの排出ガスのように粒子の濃度が高いガスからPM2.5を捕集するためには、バーチャルインパクタを利用することが好ましい。しかしながら、バーチャルインパクタでは、シリコンウエハ上にPM2.5を捕集することは難しい。そこで、本発明者らは、従来同様、フィルタによってPM2.5を捕集することにした。
ただし、当該フィルタとしては、FIB−EB−TOF−SIMS装置及び/又はSEM−EDX装置による1粒子解析(すなわち、電子ビーム及び/又は集束イオンビームを用いた分析)に適したものを用いる。これにより、バーチャルインパクタにおいてフィルタによってPM2.5を捕集した後、転写等を行うことなく、そのフィルタを用いて1粒子解析を行うことが可能になる。
本発明者らは、1粒子解析に適したフィルタの要件について詳細に検討した結果、以下の6つの要件(1)〜(6)を満たすフィルタを用いてPM2.5を捕集すれば、1粒子解析を円滑に行うことができるとの考えに至った。
(1)フィルタ表面の平滑性が高いこと
SEM像において解析対象の微粒子を特定するために、フィルタ上の微粒子と、フィルタ表面の凹凸との峻別を付けるためである。
(2)フィルタの耐熱温度が高いこと
煙道の排出ガスを直接吸引し、分級及び捕集することが想定されるため、高温の排出ガスによって損傷しないことが求められるからである。具体的には、約160〜170℃程度までの温度に耐え得ることが好ましい。
(3)フィルタが適切な大きさの空孔を有すること
分析対象である粒子径の微粒子を捕集可能であるとともに、ガスが通過し得るような、適切な大きさの空孔を有することが必要となるからである。
(4)SEMの反射電子像において、フィルタ表面と分析対象の微粒子との組成コントラストの差が十分に得られ、微粒子の認識が容易なこと
1粒子解析では、SEM像によって分析対象の微粒子を特定するため、SEM像において微粒子とフィルタ表面とを区別可能である必要があるからである。
(5)基板を構成する元素と、分析対象の微粒子における目的とする元素との特性X線のエネルギー準位が十分に離れていること
特性X線分析において、基板を構成する元素と、分析対象の粒子における目的とする元素との特性X線のエネルギー準位が近い場合には、微粒子における当該元素を精度良く検出することができないからである。
(6)集束イオンビームに対する耐久性が高いフィルタであること
SIMS分析においては、集束イオンビームがフィルタにも照射されることとなるため、集束イオンビームによってフィルタが大きく損傷してしまうと、分析を継続することが困難になるからである。
本発明では、上記の要件(1)〜(6)を満たすフィルタを用いて微粒子を捕集し、当該フィルタをFIB−EB−TOF−SIMS装置及び/又はSEM−EDX装置の試料台に載置して、当該フィルタ上の微粒子に対して1粒子解析を行う。このように、本発明によれば、転写等の煩雑な作業を行うことなく、より容易に、1粒子解析に適した微粒子の捕集を行うことが可能になる。
なお、チャージアップ防止の観点から、フィルタには、上記(1)〜(6)の要件に加えて、導電性が高いことも求められる。しかしながら、導電性については、例えばフィルタに対して金属蒸着を施すこと等により調整することが可能である。従って、本発明者らは、1粒子解析を円滑に行うためには、フィルタ自体の特性としては、上記(1)〜(6)の要件を満たせば十分であると考えた。
ここで、上記(1)〜(6)において、(1)〜(4)は、FIB−EB−TOF−SIMS装置による分析及びSEM−EDX装置による分析のいずれにおいても必要となる要件である。また、(5)は、SEM−EDX装置による分析において必要となる要件である。また、(6)は、FIB−EB−TOF−SIMS装置による分析において必要となる要件である。従って、本発明では、微粒子の捕集に用いられるフィルタは、必ずしも上記(1)〜(6)を全て満たすものである必要はなく、当該フィルタは、1粒子解析に用いる装置の種類に応じた所定の要件を満たすものが、適宜選択されてよい。例えば、FIB−EB−TOF−SIMS装置を用いて1粒子解析を行う場合には、上記(1)〜(4)、(6)を満たすフィルタが用いられる。また、例えば、SEM−EDX装置を用いて1粒子解析を行う場合には、上記(1)〜(5)を満たすフィルタが用いられる。
以下、本発明者らが想到した、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。
(2.本発明の好適な実施形態)
本発明の一実施形態では、さまざまな粒子径の粒子を含むガスを分級器によって吸引し、粒子径に応じてその粒子を分級する。そして、当該分級器内に設置したフィルタによってPM2.5を捕集する。その後、PM2.5が捕集されたフィルタを分析装置のチャンバー内の試料台に載置し、当該分析装置によって当該フィルタ上のPM2.5に対して1粒子解析を行う。以下では、分級器によるPM2.5の捕集、及び分析装置によるPM2.5に対する1粒子解析について、順に説明する。なお、以下の説明では、一例として、FIB−EB−TOF−SIMS装置による1粒子解析及びSEM−EDX装置による1粒子解析をともに行う場合について説明する。従って、フィルタとしては、上記要件(1)〜(6)を全て満たすものが用いられる。ただし、上記のように、フィルタに求められる要件は、必ずしも上記(1)〜(6)全てではなく、1粒子解析に用いる装置の種類に応じて適宜決定され得る。
(2−1.分級器の構成)
図2を参照して、本実施形態に係る分級器の構成について説明する。図2は、本実施形態に係る分級器の概略構成を示す図である。なお、本実施形態では、工場からの排出ガスに含まれる微粒子を対象としているため、分級器としては、好適にバーチャルインパクタが用いられる。図2では、本実施形態に係る分級器として、バーチャルインパクタの概略構成を図示している。
図2を参照すると、分級器10は、筐体110と、粒子150を含むガスを吸引し加速して吹き出す粒子加速ノズル120と、加速された粒子150のうち所定の大きさ以上の粒子径を有する粗大粒子を捕集する粒子捕集ノズル130と、を備える。粒子加速ノズル120及び粒子捕集ノズル130は、筐体110内において粒子加速ノズル120の吹き出し口(出口)と粒子捕集ノズル130の入口とが互いに向かい合うように設置される。
粒子加速ノズル120は、その一側が外部に向かって開放され、他側である加速されたガスの出口が筐体110の内部に位置するように配設される。外部に向かって開放された一側から、分析対象である粒子150を含むガスが吸引されると、当該ガスが粒子加速ノズル120によって加速され、出口から吹き出される。本実施形態では、粒子加速ノズル120によって、工場の煙道において採取された排出ガスが吸引される。当該排出ガスの中には、様々な粒子径の粒子150が混ざり合っている。
粒子加速ノズル120によって加速された粒子群を含むガスは、対向して配設される粒子捕集ノズル130の入口に向かって吹き出される。ここで、粒子径が比較的大きい粒子150は、慣性によりそのまま直進し、粒子捕集ノズル130の内部に向かう。一方、粒子径が比較的小さい粒子150は、粒子がガスの流れの中で加速又は減速するときに慣性によってガスの流線から逸脱する原理により、粒子捕集ノズル130の外部に向かう。なお、図1では、分級について説明するために、粒子150の大きさを誇張して模擬的に図示しているが、実際には、粒子150の粒子径は、粒子加速ノズル120の出口及び粒子捕集ノズル130の入口に比べて十分に小さく、これらのノズルを自由に通過することができる。
このように、バーチャルインパクタでは、2つのノズルを向かい合わせて配設することにより、あたかも仮想的な衝突面140が存在するかのように、一方のノズルから他方のノズルに対して吹き出されたガス中の粒子150を、その粒子径に応じて分級することが可能になる。この際、粒子加速ノズル120及び粒子捕集ノズル130の配設位置や形状等を適宜調整することにより、所望の大きさの粒子径を基準として、粒子を分級することが可能になる。本実施形態では、粒子加速ノズル120及び粒子捕集ノズル130は、粒子径が2.5μm以下の粒子が粒子捕集ノズル130の外部に向かって進むように構成されている。これにより、排出ガスに含まれる粒子群の中から、粒子径が2.5μm以下の粒子、すなわちPM2.5を分離することが可能になる。
粒子捕集ノズル130の外部に向かったPM2.5は、筐体110内に設けられる流路に沿って進む。本実施形態では、当該流路にフィルタ1を設けることにより、当該フィルタ1によってPM2.5を捕集する。
ここで、フィルタ1としては、上述した要件(1)〜(6)を満たすものが用いられる。本発明者らは、様々なフィルタを試行した結果、銀フィルタ(Agフィルタ)であれば、上記要件(1)〜(6)を全て満たし得ることを見い出した。ここで、Agフィルタは、材質の99.97%が銀によって構成され、親水性で、表面の平滑性が高いことを特徴とする多孔性メンブレンである。また、Agフィルタは、原子同士が強固に金属結合することにより形成されているため、他の材質による多孔性メンブレンのようにメンブレン繊維が溶出することがないことを特徴としている。
本実施形態では、Agフィルタとしては、上記要件(1)〜(6)を満たし得る、市販の各種のものを用いることができる。また、上記要件(3)に関して、フィルタ1は、PM2.5を捕集しつつ、ガスを通過させる必要があるため、フィルタ1としては、好適にその空孔が約0.1〜2.0μmのものが用いられる。なお、フィルタ1としてAgフィルタを用いる場合には、Agフィルタ自身が高い導電性を有しているため、上述したようなチャージアップ対策のための金属蒸着を行う必要はない。
以上、分級器10の構成、及び分級器10によるPM2.5の捕集について説明した。なお、本実施形態に係る分級器10は、PM2.5を捕集するためのフィルタ1としてAgフィルタを用いること以外は、一般的なバーチャルインパクタと同様の構成を備えていてよい。従って、分級器10の構成は図示するものに限定されず、分級器10は、図示する構成に加えて、又は図示する構成に代えて、一般的なバーチャルインパクタが有する各種の構成を適宜備えてよい。
(2−2.分析装置の構成)
図3を参照して、1粒子解析を行うための分析装置の構成について説明する。図3は、本実施形態に係る分析装置の概略構成を示す図である。なお、本実施形態では、上記のように、1粒子解析を行うための分析装置として、FIB−EB−TOF−SIMS装置及びSEM−EDX装置が用いられる。図3では、本実施形態に係る分析装置の一例として、FIB−EB−TOF−SIMS装置の概略構成を図示している。
図3を参照すると、分析装置20は、チャンバー210と、試料台215と、電子ビーム照射器220と、集束イオンビーム照射器230と、質量分析計240と、二次電子検出器250と、を備える。試料台215は、チャンバー210内に設けられる。試料台215は、その高さ及び水平面内での位置が調整できるように、互いに直交する3方向(鉛直方向、前後方向及び左右方向)に移動可能に構成されてよい。
1粒子解析実行時には、図示するように、PM2.5の微粒子260が表面上に捕集されたフィルタ1が試料台215の上に固定される。この際、捕集に用いたフィルタ1の大きさが適当であれば、分級器10に設置したフィルタ1をそのまま試料台215上に載置してもよいし、必要に応じてフィルタ1の一部を適宜切り取ったものを試料台215上に載置してもよい。
試料台215の略鉛直上方に、質量分析計240が配設される。また、電子ビーム照射器220及び集束イオンビーム照射器230は、試料台215の任意の高さにおいて、微粒子260の表面の同一地点に電子ビーム及び集束イオンビームをそれぞれ照射できるように、質量分析計240を挟んで、試料台215に対して左右対称な関係となる位置に配設される。例えば、電子ビーム照射器220及び集束イオンビーム照射器230は、水平に設置された試料台215に対して、伏角が45°となる方向から、微粒子260にビームを照射するように配設される。
なお、電子ビーム照射器220及び集束イオンビーム照射器230としては、一般的にFIB−EB−TOF−SIMS装置において用いられ得るものが用いられてよい。例えば、集束イオンビーム照射器230としては、Gaイオン源からイオンビームを取り出し照射するものが用いられ得る。
1粒子解析を行う際には、まず、チャンバー210内が真空にされる。そして、フィルタ1上の微粒子260に対して電子ビーム照射器220から電子ビームを走査しながら照射する。電子ビームの照射により微粒子260から発生した二次電子が、二次電子検出器250によって検出され、当該微粒子260のSEM像が生成される。
分析装置20には、SEMの反射電子像におけるフィルタ1の表面と分析対象の微粒子260との組成コントラストの差等に基づいて、当該微粒子260を自動的に認識する機能が搭載されている。SEM像が生成されると、当該SEM像に基づいて、当該機能によって自動的に、フィルタ1上の複数の微粒子260の中から、分析対象である1つの微粒子260が特定される。このとき、SEM像に基づいて、特定した分析対象である微粒子260の粒子径が測定され得る。なお、ユーザがSEM像を観察しながら試料台215を適宜移動させることにより、分析対象である1つの微粒子260が手動で特定されてもよい。
そして、特定した微粒子260に対して、SIMS分析が行われる。すなわち、集束イオンビーム照射器230から集束イオンビームを照射し、当該集束イオンビームの照射により微粒子260から発生した二次イオンを、質量分析計240により検出する。
質量分析計240は、飛行時間型質量分析計であり、加速した二次イオンを内部に設けられる二次イオン検出器241で検出することにより、その飛行時間から、当該二次イオンの質量電荷比を測定することができる。当該測定結果に基づいて、微粒子260の表面の成分分析を行うことができる。
1つの微粒子260に対して質量分析計240による分析が終了したら、SEM像に基づいてフィルタ1上の他の微粒子260を選択し、当該他の微粒子260に対して、同様に、SIMS分析を行う。当該処理を繰り返し行うことにより、捕集した微粒子260の粒子群に対して、粒子ごとの粒子径、成分及び濃度を求めることができる。
以上、分析装置20の構成、及び分析装置20による1粒子解析の手順について説明した。なお、本実施形態に係る分析装置20は、Agフィルタであるフィルタ1上に捕集されたPM2.5に対して1粒子解析を行うこと以外は、一般的なFIB−EB−TOF−SIMS装置と同様の構成を備えていてよい。従って、分析装置20の構成は図示するものに限定されず、分析装置20は、図示する構成に加えて、又は図示する構成に代えて、一般的なFIB−EB−TOF−SIMS装置が有する各種の構成を適宜備えてもよい。
ここで、分析装置20における1粒子解析では、上述した分析だけでなく、FIB−EB−TOF−SIMS装置を用いた分析において一般的に行われている、各種の公知の分析が行われてもよい。例えば上記特許文献1に記載されているように、集束イオンビームの照射により微粒子260から発生した二次電子を検出することにより、SIM(Scanning Ion Microscopy)像が得られてもよい。あるいは、集束イオンビームの照射により微粒子260から発生した全二次イオンを検出することにより、全二次イオン像が得られてもよい。この場合には、当該SIM像又は全二次イオン像に基づいて微粒子260の粒子径が測定されてもよい。
また、上述したSIMS分析の方法では、微粒子260の表面の成分分析しか行うことができない。従って、同じく上記特許文献1に記載されているように、試料台215が鉛直方向を回転軸方向として回転可能に構成されてもよく、集束イオンビームにより微粒子260を切断した後、その切断面に対して略垂直に集束イオンビームが照射されるように試料台215を上記回転軸まわりに180度回転させ、当該微粒子260の内部に対してSIMS分析が行われてもよい。当該分析方法によれば、微粒子260の表面だけでなく、内部の成分も分析することが可能になる。また、微粒子260の内部にある空隙の大きさ(体積)を測定することも可能になる。更に、当該空隙の大きさから、微粒子260が球であると仮定して、空隙の体積を微粒子260の体積で割ることにより微粒子260の空隙率が求められてもよい。
ここで、本実施形態では、上記のように、図示する分析装置20による1粒子解析に加えて、SEM−EDX装置による1粒子解析が行われる。SEM−EDX装置による1粒子解析でも、分析装置20による解析と同様に、チャンバー内の試料台の上にPM2.5の微粒子260が捕集されたフィルタ1が載置され、そのフィルタ1上の微粒子260に対して、1粒子解析が行われる。具体的には、SEM−EDX装置による1粒子解析では、SEM像を取得し、当該SEM像に基づいて分析対象である1つの微粒子260を特定する処理、及び特定した分析対象である微粒子260の粒子径を測定する処理までは、上述した分析装置20による1粒子解析と同様の処理が行われる。
SEM−EDX装置では、その後、特定した微粒子260に対して、特性X線分析を行う。すなわち、微粒子260に対する電子ビームの照射により発生した特性X線を検出することにより、当該微粒子260の成分分析を行う。以上の一連の処理により、当該微粒子260についての、粒子径、成分及び濃度を求めることができる。SEM像に基づいてフィルタ1上の他の微粒子260を選択し、当該特性X線分析を繰り返し行うことにより、捕集した微粒子260の粒子群に対して、粒子ごとの粒子径、成分及び濃度を求めることができる。
このように、FIB−EB−TOF−SIMS装置による1粒子解析と、SEM−EDX装置による1粒子解析と、を併用し、それぞれの装置における微粒子についての成分分析の結果を互いに補完し合うことにより、1粒子解析の精度をより向上させることができる。
なお、本実施形態において用いられるSEM−EDX装置の構成は、Agフィルタであるフィルタ1上に捕集されたPM2.5に対して1粒子解析を行うこと以外は、一般的なSEM−EDX装置と同様である。従って、ここでは、その構成について、図面を用いた詳細な説明は省略する。
以上説明したように、本実施形態によれば、フィルタ1を分級器10に設置することにより、当該フィルタ1上に微粒子260(例えば、PM2.5)を捕集する。そして、当該微粒子260が捕集されたフィルタ1を分析装置20又はFIB−EB−TOF−SIMS装置の試料台の上に載置し、当該微粒子260に対して1粒子解析を行う。このとき、本実施形態では、フィルタ1として、Agフィルタが用いられる。当該フィルタ1は、上記要件(1)〜(6)を満たすため、シリコンウエハ上への転写等の煩雑な作業を行うことなく、重なりがなく、均一に、直接微粒子を捕集することができる。また、当該フィルタ1をそのまま分析装置20又はFIB−EB−TOF−SIMS装置の試料台の上に載置して、SEM像の観察、SIMS分析及び特性X線分析を適切に行うことが可能になる。このように、本実施形態によれば、より容易に微粒子を捕集するとともに、その捕集した微粒子に対して1粒子解析を円滑に行うことが可能になる。1粒子解析によって、粒子ごとに、元素組成の測定や空隙の評価、更には、それらから比重を測定することが可能であるので、平均的な元素組成の分析では得られない発生源固有の情報、すなわち、発生源の特定に有力な情報を取得することが可能になる。
また、従来、固定発生源のような煤塵量が多いガスに対する分級に好適に用いられるバーチャルインパクタにおいては、シリコンウエハ等の基板に直接微粒子を捕集することは困難であった。これに対して、本実施形態に係るフィルタ1によれば、上記のように、バーチャルインパクタにおいても、1粒子解析に適した様態で、容易に微粒子を捕集することができる。このように、本実施形態に係る分析方法は、固定発生源から発生する微粒子の分析において、特に大きな効果を奏することができる。
(3.その他のフィルタについての考察)
1粒子解析に好適なフィルタについて検討する過程で、本発明者らは、Agフィルタ以外にも、トラックエッチング法によって作製されたフィルタ(トラックエッチドメンブレンフィルタ)が、上記要件(1)〜(6)を満たし得ることを見い出した。ここで、トラックエッチドメンブレンフィルタとは、ポリカーボネート等の平滑な表面を有する合成樹脂膜に対して、中性子線や重イオンを照射し、その後ウェットエッチング処理を施すことにより作製されるフィルタのことである。なお、トラックエッチドメンブレンフィルタ自体は高い導電性を有するとは限らないが、上述したように、導電性に関しては、微粒子の捕集前及び/又は捕集後に適宜金属蒸着を行うことにより、調整することが可能である。従って、本実施形態において、Agフィルタに代えて金属蒸着を施したトラックエッチドメンブレンフィルタを用いることでも、1粒子解析を円滑に実行することができる可能性がある。
しかしながら、トラックエッチドメンブレンフィルタとしては、例えばポリカーボネート、ポリエステル又はポリイミドからなるものが広く知られている。これらの材質からなるトラックエッチドメンブレンフィルタを用いた場合には、当該トラックエッチドメンブレンフィルタによって捕集した微粒子に対する1粒子解析を行う際に、当該トラックエッチドメンブレンフィルタに含まれる炭素原子も同時に検出されてしまい、当該微粒子に含まれる炭素原子のみを正確に検出することができない恐れがある。また、本発明者らによる検討の結果、ある種のトラックエッチドメンブレンフィルタでは、SIMS分析における硫黄系分子に対する質量干渉も大きいため、微粒子に含まれる硫黄系分子を精度良く検出することも困難であることが判明した。このように、本実施形態においてトラックエッチドメンブレンフィルタを用いた場合には、微粒子についての成分分析を正確に行えない可能性がある。
一方、本実施形態において適用したAgフィルタは、このような炭素原子や硫黄系分子の検出に対する干渉の少ないフィルタである。つまり、本実施形態のように、フィルタ1としてAgフィルタを用いて、微粒子の捕集、及び捕集された当該微粒子に対する1粒子解析を行うことにより、トラックエッチドメンブレンフィルタを用いた場合に比べて、微粒子に含まれる炭素原子及び硫黄系分子をより正確に検出することが可能になる。このように、より正確に微粒子の成分分析を行うことが可能となるため、本実施形態に係るAgフィルタは、上記要件(1)〜(6)を満たすフィルタの中でも、1粒子解析により好適なフィルタであると言える。
本発明の効果を確認するために、第1の実施例として、上述した実施形態において用いたAgフィルタと、微粒子の捕集に従来用いられているテフロンフィルタとの比較を行った。具体的には、本発明の一実施例として、上述した実施形態と同様の方法によって、PM2.5の捕集、及び捕集したPM2.5に対する1粒子解析を行った。すなわち、本実施例では、フィルタとしてAgフィルタを用いて、図2に示す分級器10と同様の構成を有する分級器によってPM2.5を捕集し、図3に示す分析装置20と同様の構成を有する分析装置(すなわち、FIB−EB−TOF−SIMS装置)によって当該フィルタ上のPM2.5に対するSIMS分析を行った。一方、比較例として、フィルタを従来用いられているテフロンフィルタに変更したこと以外は上記実施例と同様の装置、方法を用いて、PM2.5の捕集、及び捕集したPM2.5に対する1粒子解析を行った。
フィルタの1粒子解析に対する適正を確認するために、上記実施例及び比較例について、1粒子解析を行った前後におけるフィルタ表面の様子を観察し、比較した。その結果、フィルタとしてテフロンフィルタを用いた場合には、分析前後でフィルタの表面の形状が大きく変化してしまうことが確認できた。これは、SIMS分析時に集束イオンビームが照射されることにより、フィルタの表面が損傷していることを示している。フィルタの表面が損傷すると、表面上の凹凸が大きくなり、SEM像においてフィルタの表面上のPM2.5を捉え難くなるため、1粒子解析を円滑に行うことができなくなる恐れがある。
一方、フィルタとしてAgフィルタを用いた場合には、分析前後でフィルタの表面の形状がほぼ変化していないことが確認できた。これは、Agフィルタが、集束イオンビームに対して高い耐久性を有していることを示している。このようにフィルタの表面の損傷が少なければ、SEM像においてフィルタの表面上のPM2.5を容易に捉えることができるため、1粒子解析を円滑に行うことが可能になる。
以上の結果から、少なくとも集束イオンビームに対する耐久性の観点から、従来のテフロンフィルタに比べて、Agフィルタの方が、1粒子解析により適したフィルタであることが確認できた。
本発明の更なる効果を確認するために、第2の実施例として、上述した実施形態において用いたAgフィルタと、一参考例として上述したトラックエッチドメンブレンフィルタとの比較を行った。具体的には、本発明の一実施例として、上述した実施形態と同様の方法によって、PM2.5の捕集、及び捕集したPM2.5に対する1粒子解析を行った。すなわち、フィルタとしてAgフィルタを用いて、図2に示す分級器10と同様の構成を有する分級器によってPM2.5を捕集し、図3に示す分析装置20と同様の構成を有する分析装置(すなわち、FIB−EB−TOF−SIMS装置)によって当該フィルタ上のPM2.5に対するSIMS分析を行った。一方、参考例として、フィルタとしてトラックエッチドメンブレンフィルタの一種であるニュークリポア(登録商標)フィルタを用いて、同様の装置、方法によって、PM2.5の捕集、及び捕集したPM2.5に対する1粒子解析を行った。ただし、参考例におけるニュークリポアフィルタには、チャージアップを防止するために、PM2.5捕集前のAuの蒸着(20nm)及びPM2.5捕集後の追加のAuの蒸着(10nm)を行っている。
1粒子解析の結果を図4に示す。図4は、第2の実施例についての結果を示す図であり、フィルタ上のC−イオン及びSO−イオンを可視化して示す図である。図4では、ニュークリポアフィルタ及びAgフィルタの1粒子解析に対する適正を確認するために、上記の2つの実施例のそれぞれについて1粒子解析によりフィルタ上の微粒子群の成分を分析した結果から、当該フィルタの表面上の特定のイオン(C−イオン及びSO−イオン)を可視化して示している。各画像において、黒色の部分は、該当するイオンが存在しない部分を意味している。図4では、上段にニュークリポアフィルタを用いた実施例についての結果を示し、下段にAgフィルタを用いた実施例についての結果を示している。
図4を参照すると、ニュークリポアフィルタを用いた場合には、フィルタの表面のほぼ全面において、C−イオン及びSO−イオンが検出されている。これは、本来検出したい、フィルタの表面上のPM2.5に含まれるC−イオン及びSO−イオンだけでなく、フィルタ自体に含まれるこれらのイオンも検出されてしまっているからである。このように、ニュークリポアフィルタを用いた場合には、イオン種によっては、PM2.5に含まれる当該イオン種を正確に検出することが困難となる。
一方、Agフィルタを用いた場合には、フィルタの表面上において、一部でのみC−イオン及びSO−イオンが検出されている。これは、本来検出したい、フィルタの表面上のPM2.5に含まれるC−イオン及びSO−イオンだけが好適に検出されていることを示している。
以上の結果から、フィルタとしてAgフィルタを用いることにより、ニュークリポアフィルタを用いた場合には正確に検出することができないイオン種も検出することが可能になることが確認できた。当該結果は、上記要件(1)〜(6)を満たすフィルタの中でも、Agフィルタを用いることにより、より精度良く1粒子解析を実行可能であることを示している。
(4.補足)
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる例に限定されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
例えば、上記の実施形態では、分級器10として、バーチャルインパクタを用いていたが、本発明はかかる例に限定されない。本発明は、基板(例えば、シリコンウエハ)によって直接微粒子を捕集することが困難であるという、バーチャルインパクタが有する課題を好適に解決し得るものである。従って、バーチャルインパクタと同様の課題を有する分級器であれば、本発明を適用することにより、本発明と同様の効果を得ることができる。
あるいは、分級器10としては、例えばポータブルインパクタやサイクロン式分級器等の他の分級器が用いられてもよい。上記のように、ポータブルインパクタ等の他の分級器では、基板によって直接微粒子を捕集することが可能ではあるものの、分級器を正常に動作させつつ微粒子を捕集するために、基板の設置位置や大きさ等を適宜調整する作業が必要となることがある。一方、本発明によれば、フィルタによって微粒子を捕集するため、より容易に微粒子を捕集することが可能となる。このように、ポータブルインパクタ等、バーチャルインパクタ以外の他の分級器に対して本発明を適用した場合であっても、より容易に微粒子を捕集できるという効果を奏することが可能である。