[概要]
本実施形態の運転曲線作成装置は、予測制御を実現する運転曲線を作成する装置である。予測制御とは、ダイヤの列車間隔が数分程度であるような高密度線区において、駅に接近する列車が当該駅に停車中の先行列車の発遅れによって信号の制約を受けるため、できるだけ短い運転時隔を確保するとともに、駅間での不要な停車を回避する列車の制御方法である。具体的には、先行列車に接近し過ぎないようにするために、位置及び速度を指定する接近点を与え、この接近点を指定時刻に通過するような列車制御を行う。
図1は、予測制御の概要を説明する図である。図1は、先行列車12が停車中の駅に接近する対象列車10についての接近点20を示している。図1(a)は、横方向を時刻、縦方向を位置として、時刻と位置との関係を示し、図2(b)は、横方向を位置、縦方向を速度として、位置と速度との関係を示している。
先行列車12が駅に停車中は、後続の対象列車10は、場内に進入することができず、場内進路に対する場内停止パターンに従うことになる。発車時刻となって先行列車12が発車し駅から進出すると、場内停止パターンが解除されて、対象列車10は場内に進入することができる。つまり、対象列車10は加速を開始し、駅進路に対する駅停止パターンに従って場内に進入して停車する。先行列車12に係る場内停止パターンの解除時刻は、先行列車12の発車時刻及び走行性能によって決まり、対象列車10に係る場内停止パターン、駅停止パターン、及び、加速パターンは、対象列車10の走行性能によって決まる。このため、場内停止パターンが解除された時刻における対象列車10の位置及び速度であって、この場内停止パターンの解除時刻から対象列車10が場内に進入して停止するまでの所要時間が最小となるような位置及び速度は、場内停止パターン上に一意に決まる。この位置及び速度が指定位置及び指定時刻とされる接近点20であり、この接近点20を通過すべき時刻、この場合、場内停止パターンの解除時刻が指定時刻である。指定時刻は、先行列車12の発時刻に応じて決まる所与の指定時刻ということができる。
[原理]
本実施形態における予測制御のための運転曲線の作成について、詳細に説明する。予測制御のための運転曲線のことを「予測制御運転曲線」という。予測制御運転曲線の作成にあたり、接近点20及び指定時刻Tsは与えられるものとする。
図2は、予測制御運転曲線の作成の概要図である。図2(a)に示すように、対象列車10が発駅に停車中であり、先行列車12が次駅に停車中である。対象列車10及び先行列車12の走行性能に応じて接近点20の位置及び速度が決まり、先行列車12の次駅の予測される発車時刻に応じて指定時刻Tsが決まる。この接近点20を指定時刻Tsで通過するように、予測制御運転曲線24aを作成する。対象列車10は、発駅を発車すると、この予測制御運転曲線24aに沿って走行する。
そして、図2(b)に示すように、対象列車10が駅間を走行中に、先行列車12の発車時刻の変更によって指定時刻Tsが変更されると、対象列車10の現在の位置及び速度から、接近点20を変更後の指定時刻Tsに通過する予測制御運転曲線24bを再作成して更新する。
また、図3(a)に示すように、先行列車12が駅間に在線しているときに対象列車10の運転曲線を作成する場合は、予測制御運転曲線は作成されず、先行列車12の外方所定位置に停止するための最速運転曲線26を作成する。対象列車10は、この最速運転曲線26に沿って走行する。
そして、図3(b)に示すように、先行列車12が次駅に停車すると、先行列車12の次駅の予測される発車時刻に応じて指定時刻Tsが決まる。このため、予測制御運転曲線を作成する。接近点20の位置及び速度は、図1と同じである。対象列車10の現在の位置及び速度から、接近点20を指定時刻Tsに通過する予測制御運転曲線24cを作成する。対象列車10は、以降は、この予測制御運転曲線24cに沿って走行する。
その後、図3(c)に示すように、先行列車12の次駅の予測される発車時刻の変更によって指定時刻Tsが変更されると、同様に、対象列車10の現在の位置及び速度から、接近点20を変更後の接近時刻Tsに通る予測制御運転曲線24dを再作成する。対象列車10は、以降は、この予測制御運転曲線24dに沿って走行する。
このような予測制御運転曲線の作成及び再作成について、詳細に説明する。但し、指定時刻Tsによっては予測制御運転曲線の作成が不可能な場合もあり得るため、予測制御運転曲線の作成が可能か否かの判断方法も併せて説明する。また、予測制御運転曲線の作成にあたり、力行、及び、ブレーキは、常用最大ノッチを用いる。
接近点20は、上述のように、場内停止パターン上に定められる(図1参照)。従って、図4に示すように、先行列車12が停車中の次駅の外方に停止するための運転曲線であって、所要時間が最短となる最速運転曲線RC1を作成すると、この最速運転曲線RC1上に接近点20は存在する。
先ず、対象列車10が発駅に停車中であり、先行列車12が次駅に停車中の場合の、予測制御運転曲線の作成を説明する。図2(a)に示す場合に相当する。この場合、図5に示すように、接近点20にだ行で到達する運転曲線であって、所要時間が最短となる運転曲線RC2を作成する。だ行運転は少なくとも所定の最短時間或いは最短距離継続する必要がある。このため、接近点20に到達するだ行の継続時間が所定の最短時間となる、或いは、継続距離が所定の最短距離となる開始位置及び開始速度(以下、「案内点22」という)は一意に決まる。すなわち、最速運転曲線RC1に対して、接近点20から、だ行運転で進行方向の逆方向(発駅に向かう方向)に延長した逆引き曲線30を生成し、だ行運転の継続時間が所定の最短時間となる、或いは、継続距離が所定の最短距離となる位置及び速度を案内点22として決定する。次いで、この案内点22から、ブレーキ運転で進行方向の逆方向に延長した逆引き曲線を生成し、この逆引き曲線と最速運転曲線RC1との交点以降については逆引き曲線に沿って走行するように最速運転曲線RC1を変更して、運転曲線RC2を作成する。
そして、運転曲線RC2における接近点20の到達時刻T2を求め、到達時刻T2を接近点の指定時刻Tsと比較する。到達時刻T2が指定時刻Tsより遅い(T2>Ts)ならば、予測制御運転曲線の作成は不可能と判断する。この場合、最速運転曲線RC1に沿って走行することとする。
一方、到達時刻T2が指定時刻Tsと同じ或いは早い(T2≦Ts)ならば、予測制御運転曲線の作成は可能である。すなわち、図6に示すように、最速運転曲線RC1(図4参照)に対して、接近点20から、だ行運転で進行方向の逆方向に延長した逆引き曲線を生成し、この逆引き曲線と最速運転曲線RC1との交点以降については逆引き曲線に沿って走行するように最速運転曲線RC1を変更することで、運転曲線RC3を作成する。そして、この運転曲線RC3における接近点20の到達時刻T3を指定時刻Tsと比較する。到達時刻T3が指定時刻Tsと一致(T3=Ts)ならば、運転曲線RC3が予測制御運転曲線となる。また、到達時刻T3が指定時刻Tsより遅い(T3>Ts)ならば、図7に示すように、運転曲線RC2(図5参照)に対して“山をつぶす”ようにして、接近点20の到達時刻が指定時刻Tsとなる運転曲線RC4を作成し、予測制御運転曲線とする。
“山”とは、図8(a)に示すように、力行曲線部分とブレーキ曲線部分とが続いたり、或いは、図8(b)に示すように、力行曲線部分とだ行曲線部分とブレーキ曲線部分とが続く“山形状の運転曲線部分”である。“山をつぶす”とは、図9に示すように、“山形状の運転曲線部分”を構成するブレーキ曲線部分の開始位置を、進行方向とは逆方向(発駅に向かう方)へ移動させ、力行曲線部分又はだ行曲線部分の長さを減らすことである。つまり、図7において、運転曲線RC2におけるブレーキ開始位置を所定距離ずつ進行方向と逆方向の位置に変更していくことで、接近点20の到達時刻が指定時刻Tsとなる運転曲線RC4に変更する。
また、図6において、到達時刻T3が指定時刻Tsより早い(T3<Ts)ならば、図10に示すように、運転曲線RC3(図6参照)に対して“谷を追加”して、接近点20の到達時刻が指定時刻Tsとなる運転曲線RC5を作成し、予測制御運転曲線とする。“谷”とは、図11に示すように、ブレーキ曲線部分とだ行曲線部分と力行曲線部分とが続く“谷形状の運転曲線部分”である。“谷を追加する”とは、運転曲線の一部を“谷形状の運転曲線部分”に置き換えることである。すなわち、案内点22から力行運転で逆引きした逆引き曲線32と、この逆引き曲線32の速度がゼロとなる機外停止点34からブレーキ運転で逆引きした逆引き曲線36とを生成する。そして、“谷形状の運転曲線部分”を構成する力行曲線部分の終了点が案内点22に一致するとともに、ブレーキ曲線部分が逆引き曲線36に重なるように、運転曲線の一部を“谷形状の運転曲線部分”に置き換える。
つまり、図10において、運転曲線RC3に対して、運転曲線RC3と逆引き曲線36との交点を求め、この交点を“谷”の開始位置すなわち“谷形状の運転曲線部分”を構成するだ行曲線部分の開始位置とするとともに、案内点22を“谷”の終了位置すなわち“谷形状の運転曲線部分”を構成する力行曲線部分の終了位置とする。そして、“谷形状の運転曲線部分”を構成するだ行曲線部分の開始位置を逆引き曲線36に沿って、所定距離ずつ進行方向に変化させていくことで、接近点20の到達時刻が指定時刻Tsとなる運転曲線RC5に変更する。
従って、予測制御運転曲線としては、“山”が形成された運転曲線RC4(図7参照)、或いは、“谷”が形成された運転曲線RC5(図10参照)が作成されることになる。
このように作成した予測制御運転曲線に沿った駅間の走行中に、指定時刻Tsが変更された場合の、予測制御運転曲線の再作成を説明する。図2(b),図3(c)に示す場合に相当する。先ず、指定時刻Tsが早くなるように変更された場合、対象列車10が走行している予測制御運転曲線が運転曲線RC4,RC5の何れであるかによって場合分けされる。
対象列車10が運転曲線RC4に沿って走行中の場合には、図12に示すように、対象列車10の現在の位置及び速度から、接近点20にだ行で到達する最速の運転曲線RC6、すなわち案内点22に最速で到達する運転曲線RC6を作成する。そして、この運転曲線RC6における接近点20の到達時刻T6を、変更後の指定時刻Tsと比較する。到達時刻T6が指定時刻Tsより遅い(T6>Ts)ならば、予測制御運転曲線の作成は不可能である。この場合、現在の位置及び速度から最速運転曲線を作成し、以降は、この最速運転曲線に沿って走行する。また、到達時刻T6が指定時刻Tsと同じ或いは早い(T6≦Ts)ならば、測制御運転曲線の作成は可能である。すなわち、図13に示すように、運転曲線RC6に対して“山をつぶす”ことで、接近点20の到達時刻が指定時刻Tsとなる運転曲線RC8を作成し、予測制御運転曲線とする。
また、対象列車10が運転曲線RC5(図10参照)に沿って走行中の場合には、図14に示すように、対象列車10の現在の位置及び速度から、接近点20にだ行で到達する最速の運転曲線RC10、すなわち案内点22に最速で到達する運転曲線RC10を作成する。そして、この運転曲線RC10における接近点20の到達時刻T10を、変更後の指定時刻Tsと比較する。到達時刻T10が指定時刻Tsより遅い(T10>Ts)ならば、予測制御運転曲線の作成は不可能と判断する。この場合、現在の走行位置及び走行速度から最速運転曲線を作成し、以降は、この最速運転曲線に沿って走行する。また、到達時刻T10が指定時刻Tsと同じ或いは早い(T10≦Ts)ならば、予測制御運転曲線の作成は可能と判断する。
すなわち、図15に示すように、対象列車10が現在走行中の運転曲線RC5のうち、現在の位置及び速度以降の運転曲線部分について、“谷を埋めた”運転曲線RC11を作成する。“谷を埋める”とは、該当する“谷形状の運転曲線部分”の開始点から終了点までの間、すなわちブレーキ曲線部分の開始点から力行曲線部分の終了点までの間を、だ行運転曲線に置き換えることである。運転曲線RC5(図10参照)は、運転曲線RC3(図6参照)に対して“谷を追加”することで作成されているため(図10参照)、運転曲線RC11は、接近点20からだ行運転で逆引きした逆引き曲線に相当する。
この運転曲線RC11における接近点の到達時刻T11を、指定時刻Tsと比較する。到達時刻T11が指定時刻Tsより遅い(T11>Ts)ならば、図16に示すように、運転曲線RC11に対して“山を追加する”ことで、接近点20の到達時刻が新たな指定時刻Tsとなる運転曲線RC12を作成し、予測制御運転曲線とする。“山を追加する”とは、運転曲線の一部を、“山形状の運転曲線部分”(図8参照)に置き換えることである。より具体的には、まずは、対象列車10の現在の位置及び速度から最速で案内点22に到達する運転曲線部分を作成する。これが“山形状の運転曲線部分”となる。この“山形状の運転曲線部分”に対して、図7を参照して説明したように“山をつぶす”ようにして、接近点20の到達時刻が指定時刻Tsとなる運転曲線RC12を作成し、新たな予測制御運転曲線とする。
また、図15において、到達時刻T11が指定時刻Tsと同じ或いは早い(T11≦Ts)ならば、図17に示すように、運転曲線RC11に対して“谷を追加する”ことで、接近点の到達時刻が指定時刻Tsとなる運転曲線RC13を作成し、予測制御運転曲線とする。つまり、運転曲線RC11に対して、運転曲線RC13と逆引き曲線36との交点を“谷”の開始点とするとともに、案内点22を“谷”の終了点とし、“谷形状の運転曲線部分”を構成するだ行曲線部分の開始位置を、“谷”の開始位置から逆引き曲線36に沿って所定距離ずつ進行方向へ変化させて、接近点20の到達時刻が指定時刻Tsとなる運転曲線RC13を作成し、新たな予測制御運転曲線とする。
指定時刻Tsが遅くなるように変更された場合には、先ず、図18に示すように、対象列車10の現在の位置及び速度から、案内点22の外方で“機外停止”となる運転曲線RC17を作成する。“機外停止”の位置は、案内点22から力行運転で逆引きした逆引き曲線において、速度がゼロとなる位置である。“機外停止”となる運転曲線が作成可能ならば、予測制御運転曲線の作成は可能と判断する。
このとき、対象列車10の位置によっては、“機外停止”となる運転曲線RC17を作成できないこともある。つまり、図19に示すように、対象列車10の現在位置が、逆引き曲線30,36の交点を越えていた場合である。この場合には、対象列車10の現在の位置及び速度からブレーキ運転で順引きした順引き曲線を生成し、この順引き曲線が逆引き曲線32と交差する交点を求めることで、“谷の深さが最大となる”運転曲線RC19を作成する。そして、この運転曲線RC19における接近点の到達時刻T19を、指定時刻Tsと比較する。到達時刻T19が指定時刻Tsより早い(T19<Ts)ならば、予測制御運転曲線の作成は不可能と判断する。この場合、現在の位置及び速度から、最速運転曲線を作成し、以降は、この最速運転曲線に沿って走行する。また、到達時刻T19が指定時刻Tsと同じ或いは遅い(T19≧Ts)ならば、予測制御運転曲線の作成は可能と判断する。
予測制御運転曲線の作成は、対象列車10が走行している予測制御運転曲線が運転曲線RC4,RC5の何れであるかによって場合分けされる。
対象列車10が運転曲線RC4(図7参照)に沿って走行中の場合には、更に、対象列車10の現在の走行位置に応じて場合分けされる。すなわち、図20に示すように、運転曲線RC4における現在の位置から接近点20までの間に“山”が存在すると判定される範囲を対象列車10が現在走行中である場合、例えば運転曲線RC4の力行部分を走行中の場合には、図21に示すように、接近点20からだ行運転で逆引きした逆引き曲線30と、現在の走位置及び速度からブレーキ運転で順引きした順引き曲線38とを生成し、現在の位置から、逆引き曲線30と順引き曲線38との交点までは順引き曲線38に沿って走行し、交点以降は逆引き曲線30に沿って走行する運転曲線RC14を作成する。そして、この運転曲線RC14における接近点の到達時刻T14を、指定時刻Tsと比較する。
到達時刻T14が指定時刻Tsより遅い(T14>Ts)ならば、図22に示すように、運転曲線RC14に対して“山を追加する”ことで、接近点20の到達時刻が指定時刻Tsとなる運転曲線RC15を作成し、予測制御運転曲線とする。つまり、対象列車10の現在の位置及び速度から最速で案内点22に到達する運転曲線部分を作成する。これが追加する“山(=山形状の運転曲線部分)”となる。この“山形状の運転曲線部分”に対して、図7を参照して説明したように“山をつぶす”ようにして、接近点20の到達時刻が指定時刻Tsとなる運転曲線RC15を作成し、新たな予測制御運転曲線とする。
また、図21において、到達時刻T14が指定時刻Tsと同じ或いは早い(T14≦Ts)ならば、図23に示すように、運転曲線RC14に対して“谷を追加する”ことで、接近点20の到達時刻が指定時刻Tsとなる運転曲線RC16を作成し、予測制御運転曲線とする。つまり、運転曲線RC14に対して、逆引き曲線30,36の交点を“谷”の開始点とするとともに、案内点22を“谷”の終了点とし、“谷形状の運転曲線部分”を構成するだ行曲線部分の開始位置を“谷”の開始位置から逆引き曲線36に沿って所定距離ずつ進行方向へ変化させて、接近点20の到達時刻が指定時刻Tsとなる運転曲線RC16を作成し、新たな予測制御運転曲線とする。
また、対象列車10が運転曲線RC4(図7参照)に沿って走行中の場合で、図24に示すように、運転曲線RC4における対象列車10の現在の位置から接近点20までの間に“山”が存在しないと判定される範囲を対象列車10が現在走行中である場合、例えば“山”のブレーキ部分を走行中の場合には、図18に示したように、対象列車10の現在の位置及び速度から、案内点22の外方で“機外停止”となる運転曲線RC17を作成する。
そして、この運転曲線RC17における接近点の到達時刻T17を、指定時刻Tsと比較する。到達時刻T17が指定時刻Tsより遅い(T17>Ts)ならば、図25に示すように、運転曲線RC17に対して“谷を埋める”ことで、接近点20の到達時刻が指定時刻Tsとなる運転曲線RC18を作成し、予測制御運転曲線とする。また、到達時刻T17が指定時刻Tsと同じ或いは早い場合(T17≦Ts)には、運転曲線RC17において、機外停止で時間調整することで、接近点20の到達時刻が指定時刻Tsとなるようにし、予測制御運転曲線とする。
また、対象列車が運転曲線RC5(図10参照)に沿って走行中の場合には、更に、対象列車10の現在の走行位置に応じて場合分けされる。すなわち、図26に示すように、運転曲線RC5における“谷”の手前と判定される範囲を対象列車10が現在走行中の場合、つまり運転曲線RC5における“谷形状の運転曲線部分”を形成するだ行開始位置(或いは力行開始位置)以前を走行中の場合には、図27に示すように、対象列車10の現在の位置及び時刻から、案内点22の外方で“機外停止”する運転曲線RC20を作成する。そして、この運転曲線RC20における接近点の到達時刻T20を、指定時刻Tsと比較する。到達時刻T20が指定時刻Tsより遅い(T20>Ts)ならば、図28に示すように、運転曲線RC20に対して“谷を埋める”ことで、接近点20の到達時刻が指定時刻Tsとなる運転曲線RC21を作成し、予測制御運転曲線とする。また、到達時刻TC20が指定時刻Tsと同じ或いは早い場合(T20≦Ts)には、運転曲線RC20において、機外停止で時間調整することで、接近点の到達時刻が指定時刻Tsとなるようにし、予測制御運転曲線とする。
また、対象列車が運転曲線RC5(図10参照)に沿って走行中の場合で、図29に示すように、“谷”が存在しないと判定される範囲を対象列車10が走行中の場合、つまり、対象列車10の位置が“運転曲線RC5における“谷形状の運転曲線部分”を形成するブレーキ終了位置(だ行開始位置とも言える)を越えた場合には機外停止する運転曲線RC20を作成できない。この場合、図30に示すように、対象列車10の現在の位置及び速度から、ブレーキ運転で順引きした順引き曲線を生成し、この順引き曲線と逆引き曲線32との交点を求めて、“谷の深さが最大となる”運転曲線RC22を作成する。そして、この運転曲線RC22における接近点20の到達時刻T22を、指定時刻Tsと比較する。到達時刻T22が指定時刻Tsより早い(T22<Ts)ならば、予測制御運転曲線の作成は不可能と判断する。この場合、現在の位置及び速度から、最速運転曲線を作成し、以降は、この最速運転曲線に沿って走行する。また、到達時刻T22が指定時刻Tsと同じ或いは遅い(T22≧Ts)ならば、予測制御運転曲線の作成は可能と判断する。すなわち、運転曲線RC22に対して“谷を埋める”ことで、接近点の到達時刻が指定時刻Tsとなる運転曲線を作成し、予測制御運転曲線とする。
[機能構成]
図31は、運転曲線作成装置1の機能構成図である。運転曲線作成装置1は、予測制御運転曲線を作成することが可能であるため、予測制御運転曲線作成装置ということもできる。図31によれば、運転曲線作成装置1は、操作入力部102と、表示部104と、通信部106と、処理部200と、記憶部300とを備えて構成される一種のコンピュータである。
操作入力部102は、例えばキーボードやマウス、タッチパネル、各種スイッチ等で構成される入力装置であり、ユーザの操作入力に応じた操作信号を処理部200に出力する。表示部104は、例えば液晶ディスプレイ(LCD)や有機ELディスプレイ等で構成される表示装置であり、処理部200からの表示信号に基づく各種表示を行う。通信部106は、例えば無線通信モジュール、ルータ、モデム、有線用の通信ケーブルのジャックや制御回路等で構成される通信装置であり、外部装置との間でデータ通信を行う。
処理部200は、例えばCPUやFPGA等の演算装置や演算回路で構成され、記憶部300に記憶されたプログラムやデータ、操作入力部102からの入力データ等に基づいて各種演算処理を行うとともに、運転曲線作成装置1を構成する各部への指示やデータ転送を行う。本実施形態では、処理部200は、最速運転曲線作成部202と、案内点算出部204と、作成可否判定部206と、予測制御運転曲線作成部208と、更新可否判定部210と、予測制御運転曲線更新部212とを有し、運転曲線作成プログラム302に従った運転曲線作成処理(図32参照)を行う。
運転曲線の作成対象となる対象列車や先行列車、接近点や指定時刻Tsについての情報は、随時、操作入力部102や通信部106を介して外部装置から与えられる。対象列車についての情報は、対象列車情報308として記憶され、先行列車についての情報は、先行列車情報310として記憶される。対象列車情報308は、対象列車の現在の位置及び速度と、加速度や減速度といった走行性能とを含む。先行列車情報310は、先行列車の現在の位置及び速度と、最大加速度や最大減速度といった走行性能とを含む。接近点の位置及び速度と、指定速度Tsとは、接近点情報304として記憶される。接近点及び指定時刻Tsは、先行列車12が次駅に停車中の場合にのみ与えられる。接近点の位置及び速度は、次駅の構造や、対象列車10及び先行列車12の走行性能によって決まり、指定時刻Tsは、この先行列車12の次駅の発車時刻に応じて決まる。
最速運転曲線作成部202は、対象列車10の現在の位置及び速度から、所定の停止目標位置に停止するための運転曲線であって、最短で走行する最速運転曲線を作成する。停止目標位置は、先行列車12が次駅に停車していなければ次駅の停車位置に定められ、先行列車12が次駅に停車中の場合には、例えば次駅の駅構内への進入端の位置に定められる。また、先行列車12が次駅の手前を走行中の場合には、先行列車12の最後尾位置から所定の安全距離外方の位置に定めることができる。
案内点算出部204は、接近点20が与えられた場合に、この接近点20にだ行で到達するための案内点22の位置及び速度を算出する。具体的には、接近点20から、だ行運転で進行方向の逆方向(発駅に向かう方向)に延長した逆引き曲線を生成し、この逆引き曲線に沿って走行した場合にだ行運転の継続時間が所定の最短時間となる、或いは、継続距離が所定の最短距離となる位置及び速度を案内点22として決定する(図5参照)。算出した案内点の位置及び速度は、案内点情報306として記憶される。
作成可否判定部206は、予測制御運転曲線が作成されていない場合に、予測制御運転曲線を作成可能か否かを判定する。具体的には、対象列車10の現在の位置及び速度から、案内点22から接近点20までをだ行運転とする運転曲線であって、走行時間が最短となる運転曲線を作成する。この運転曲線を、以下「予測制御最速運転曲線」という。次いで、この運転曲線に沿って走行した場合の接近点20の到達時刻を算出する。そして、この到達時刻が指定時刻Tsと同じ或いは早いならば可能と判定し、到達時刻が指定時刻Tsより遅いならば不可能と判定する(図5参照)。
予測制御運転曲線作成部208は、作成可否判定部206が作成可能と判定した場合に、対象列車10の現在の位置及び速度から、指定時刻Tsに接近点20を通過する予測制御運転曲線を作成する。具体的には、最速運転曲線に対して、接近点20からだ行運転で進行方向の逆方向に延長した逆引き曲線を生成し、この逆引き曲線と最速運転曲線との交点以降については逆引き曲線に沿って走行するように変更した仮の運転曲線を作成する(図6参照)。
そして、この仮の運転曲線における接近点の到達時刻が指定時刻Tsと一致するならば、仮の運転曲線を予測制御運転曲線とする。また、到達時刻が指定時刻Tsより早いならば、仮の運転曲線に対して“谷を追加”することで、接近点20の到達時刻を遅らせて指定時刻Tsとなるように調整し、予測制御運転曲線とする(図10参照)。この機能が、第2の延着調整手段に相当する。また、到達時刻が指定時刻Tsより遅いならば、作成可否判定部206が判定に用いた、対象列車の現在の位置及び速度から、案内点から接近点までをだ行運転とする運転曲線であって、走行時間が最短となる運転曲線(予測制御最速運転曲線)を仮の運転曲線とし、この仮の運転曲線に対して“山をつぶす”ことで、接近点20の到達時刻が指定時刻Tsとなるように調整し、予測制御運転曲線とする(図7参照)。この機能が、第1の延着調整手段に相当する。
更新可否判定部210は、対象列車が予測制御運転曲線に従って駅間を走行中であって、指定時刻Tsが変更された場合に、予測制御運転曲線の更新が可能か否かを判定する。具体的には、指定時刻Tsが早まるように変更された場合には、対象列車10の現在の位置及び速度から、案内点22から接近点20までをだ行運転とする運転曲線であって、走行時間が最短となる運転曲線を作成し、この運転曲線に沿って走行した場合の接近点20の到達時刻を算出する。そして、この到達時刻が変更後の指定時刻Tsと同じ或いは早いならば可能と判定し、到達時刻が指定時刻Tsより遅いならば不可能と判定する(図12,14参照)。
一方、指定時刻Tsが遅まるように変更された場合には、対象列車10が走行中の予測制御運転曲線において、対象列車の現在の位置及び速度から、案内点の外方で“機外停止”する運転曲線を作成し、作成できたならば、予測制御運転曲線の更新が可能と判定する(図18、図26参照)。“機外停止”する運転曲線が作成できないならば、“谷が最大の深さ”となる運転曲線を作成し、この運転曲線における接近点の到達時刻を算出する(図19,図29,30参照)。そして、この到達時刻が指定時刻と同じ或いは遅いならば可能と判定し、到達時刻が指定時刻Tsより早いならば不可能と判定する。
予測制御運転曲線更新部212は、更新可否判定部210が更新可能と判定した場合に、予測制御運転曲線を更新する。具体的には、指定時刻Tsが早まるように変更された場合には、対象列車10が走行中の予測制御運転曲線において、対象列車の現在の位置から接近点20までの間に“谷”が有るかを判断する。
“谷”が有るならば、走行中の予測制御運転曲線のうち、現在の位置及び速度以降の運転曲線部分に対して“谷を埋めた”運転曲線を作成し、仮の運転曲線とする(図15参照)。そして、この仮の運転曲線における接近点20の到達時刻が指定時刻Tsと同じならば、仮の運転曲線を予測制御運転曲線とする。また、仮の運転曲線における接近点20の到達時刻が指定時刻Tsより遅いならば、仮の運転曲線に対して“山を追加する”ことで、接近点の到達時刻が指定時刻Tsとなるように調整し、予測制御運転曲線とする(図16参照)。この機能が、第1の早着調整手段に相当する。また、仮の運転曲線における接近点20の到達時刻が指定時刻Tsより早いならば、仮の運転曲線RC11に対して“谷を追加する”ことで、接近点20の到達時刻が指定時刻Tsとなるように調整し、予測制御運転曲線とする(図17参照)。この機能が、第2の延着調整手段に相当する。
走行中の予測制御運転曲線において、対象列車10の現在の位置から接近点20までの間に“谷”が無いならば、更新可否判定部210が判定に用いた、対象列車10の現在の位置及び速度から、案内点22から接近点20までをだ行運転とする運転曲線であって、走行時間が最短となる運転曲線(予測制御最速運転曲線)を仮の運転曲線とし、この仮の運転曲線に対して、“山をつぶす”ことで接近点の到達時刻が指定時刻Tsとなるように調整し、予測制御運転曲線とする(図13参照)。この機能が、第1の延着調整手段に相当する。
一方、指定時刻Tsが遅まるように変更された場合には、対象列車10が走行中の予測制御運転曲線において、対象列車10の現在の位置から接近点20までの間に“山”が有るかを判断する。
“山”があるならば、接近点20からだ行運転で逆引きした逆引き曲線と、現在の走位置及び速度からブレーキ運転で順引きした順引き曲線とを生成し、現在の位置から、逆引き曲線と順引き曲線との交点までは順引き曲線に沿って走行し、交点以降は逆引き曲線に沿って走行する運転曲線を作成し、仮の運転曲線とする(図20参照)。そして、この仮の運転曲線における接近点20の到達時刻が指定時刻Tsと同じならば、仮の運転曲線を予測制御運転曲線とする。また、仮の運転曲線における接近点20の到達時刻が指定時刻Tsより遅いならば、仮の運転曲線に対して“山を追加する”ことで、接近点20の到達時刻が指定時刻Tsとなるように調整し、予測制御運転曲線とする(図22参照)。この機能が、第1の早着調整手段に相当する。また、仮の運転曲線における接近点20の到達時刻が指定時刻Tsより早いならば、仮の運転曲線に対して“谷を追加する”ことで、接近点20の到達時刻が指定時刻Tsとなるように調整し、予測制御運転曲線とする(図23参照)。この機能が、第2の延着調整手段に相当する。
走行中の予測制御運転曲線において、対象列車10の現在の位置から接近点20までの間に“山”が無い場合には、対象列車10の現在の位置及び速度から、案内点22の外方で“機外停止”となる運転曲線を作成し、仮の運転曲線する(図18,図27参照)。そして、この仮の運転曲線における接近点20の到達時刻が指定時刻Tsと同じならば、仮の運転曲線を予測制御運転曲線とする。また、仮の運転曲線における接近点20の到達時刻が指定時刻Tsより遅いならば、仮の運転曲線に対して“谷を埋める”ことで、接近点20の到達時刻が指定時刻Tsとなるように調整し、予測制御運転曲線とする(図25,図28参照)。この機能が、第2の早着調整手段に相当する。また、仮の運転曲線における接近点20の到達時刻が指定時刻Tsより早いならば、仮の運転曲線において、機外停止で時間調整することで、接近点20の到達時刻が指定時刻Tsとなるようにし、予測制御運転曲線とする。この機能が、第3の延着調整手段に相当する。
記憶部300は、処理部200が運転曲線作成装置1を統合的に制御するための諸機能を実現するためのシステムプログラムや、本実施形態を実現するためのプログラムやデータ等を記憶するとともに、処理部200の作業領域として用いられ、処理部200が各種プログラムに従って実行した演算結果や、操作入力部102からの入力データ等が一時的に格納される。本実施形態では、記憶部300には、運転曲線作成プログラム302と、接近点情報304と、案内点情報306と、対象列車情報308と、先行列車情報310とが記憶される。
[処理の流れ]
図32は、運転曲線作成処理を説明するためのフローチャートである。この処理は、対象列車10が駅の停車中に開始される処理であり、処理部200が運転曲線作成プログラム302を実行することで実現される。
先ず、外部装置等から、接近点20の位置及び速度と、指定時刻Tsとが与えられているかを判断する。与えられているならば(ステップA1:YES)、作成可否判定部206が、予測制御運転曲線作成可否判定処理(図33参照)を実行して、予測制御運転曲線の作成が可能であるかを判断する(ステップA3)。作成可能と判断したならば(ステップA5:YES)、予測制御運転曲線作成部208が、予測制御運転曲線作成処理(図34参照)を実行して、対象列車10の現在の位置及び速度から次駅までの予測制御運転曲線を作成する(ステップA7)。その後、対象列車10は、作成した予測制御運転曲線に沿った走行を開始する。
そして、次駅までの駅間を走行中に、指定時刻Tsが変更となったならば(ステップA9:YES)、更新可否判定部210が、予測制御運転曲線更新可否判定処理(図35参照)を実行して、予測制御運転曲線の更新が可能かを判断する(ステップA11)。更新可能と判断したならば(ステップA13:YES)、予測制御運転曲線更新部212が、予測制御運転曲線更新処理(図36参照)を実行して、接近点20を変更後の指定時刻Tsに通過する予測制御運転曲線を再作成して更新する(ステップA15)。以降は、対象列車10は、更新後の予測制御運転曲線に従って走行する。一方、更新不可能と判断したならば(ステップA13:NO)、最速運転曲線作成部202が、対象列車10の現在の位置及び速度から、停止目標位置に最短で到達する最速運転曲線を作成する(ステップA17)。以降は、対象列車10は、作成した最速運転曲線に従って走行する。以上の処理を対象列車10が次駅に到着するまで繰り返し、次駅に到着したならば(ステップA19:YES)、ステップA1に戻る。
一方、対象列車10の駅停車中に、接近点20の位置及び速度と、指定時刻Tsとが与えられていない場合には(ステップA1:NO)、或いは、予測制御運転曲線の作成を不可能と判定した場合には(ステップA5:NO)、最速運転曲線作成部202が、対象列車10の現在の位置及び速度から、停止目標位置に最短で到達する最速運転曲線を作成する(ステップA21)。その後、対象列車10は、作成した最速運転曲線に従った走行を開始する。
そして、次駅までの駅間を走行中に、接近点20の位置及び速度と、指定時刻Tsとが与えられたならば(ステップA23:YES)、作成可否判定部206が、予測制御運転曲線作成可否判定処理(図33参照)を実行して予測制御運転曲線の作成が可能であるかを判定する(ステップA25)。作成可能と判定したならば(ステップA27:YES)、予測制御運転曲線作成部208が、予測制御運転曲線作成処理(図34参照)を実行して対象列車10の現在の位置及び速度から次駅までの予測制御運転曲線を作成する(ステップA29)。その後、対象列車は、作成した予測制御運転曲線に従って走行する。一方、予測制御運転曲線の作成を不可能と判定したならば(ステップA27:NO)、対象列車10は、そのまま、最速運転曲線に従った走行を継続する。以上の処理を次駅に到着するまで繰り返し、次駅に到着したならば(ステップA19,A31:YES)、ステップA1に戻る。
図33は、予測制御運転曲線作成可否判定処理を説明するフローチャートである。作成可否判定部206は、対象列車10の現在の位置及び速度から、接近点20にだ行で到達する最速の運転曲線RC2を作成し(ステップB1)、この運転曲線RC2における接近点20の到達時刻T2を算出する(ステップB3)。そして、到達時刻T2が指定時刻Tsと同じ或いは早い(T2≦Ts)ならば(ステップB5:YES)、予測制御運転曲線の作成を可能と判断する(ステップB7)。一方、到達時刻T2が指定時刻Tsより遅い(T2>Ts)ならば(ステップB5:NO)、予測制御運転曲線の作成を不可能と判断する(ステップB8)。以上の処理を行うと、予測制御運転曲線作成可否判定処理を終了する。
図34は、予測制御運転曲線作成処理を説明するためのフローチャートである。予測制御運転曲線作成部208は、最速運転曲線に対して、接近点20からだ行運転で逆引きした逆引き曲線を適用することで、仮の運転曲線RC3を作成する(ステップC1)。次いで、この仮の運転曲線RC3における接近点20の到達時刻T3を算出する(ステップC3)。そして、到達時刻T3が指定時刻Tsと同じならば(ステップC5:YES)、仮の運転曲線RC3を予測制御運転曲線とする(ステップC7)。また、到達時刻T3が指定時刻Tsより遅いならば(ステップ5:NO〜C9:YES)、接近点20にだ行で到達する最速の運転曲線RC2を仮の運転曲線とし、この仮の運転曲線RC2に対して“山をつぶす”ことで、接近点20の到達時刻が指定時刻Tsとなるように調整し、予測制御運転曲線とする(ステップC11)。また、到達時刻T3が指定時刻Tsより早い(T3<T1)ならば(ステップC9:NO)、仮の運転曲線RC3に対して“谷を追加”することで、接近点20の到達時刻が指定時刻Tsとなるように調整し、予測制御運転曲線とする(ステップC11)。以上の処理を行うと、予測制御運転曲線作成処理を終了する。
図35は、予測制御運転曲線更新可否判定処理を説明するフローチャートである。更新可否判定部210は、接近点20の指定時刻Tsが早まるように変更されたならば(ステップD1:YES)、対象列車10の現在の位置及び速度から、接近点20にだ行で到達する最速の運転曲線RC6を作成し(ステップD3)、この運転曲線RC6における接近点20の到達時刻T6を算出する(ステップD5)。そして、この到達時刻T6が変更後の指定時刻Tsと同じ或いは早いならば(ステップD7:YES)、予測制御運転曲線の再作成を可能と判断する(ステップD9)。到達時刻T6が指定時刻Tsより遅いならば(ステップD7:YES)、予測制御運転曲線の更新は不可能と判断する(ステップD11)。
接近点20の指定時刻Tsが遅まるように変更されたならば(ステップD1:NO)、対象列車10の現在の位置及び速度から、“機外停止”する運転曲線RC17,RC20を作成する(ステップD25)。“機外停止”する運転曲線RC17,RC20を作成できたならば(ステップD27:YES)、予測制御運転曲線の再作成を可能と判断する(ステップD35)。
“機外停止”する運転曲線RC17,RC20を作成できないならば(ステップD27:NO)、対象列車10の現在の位置及び速度から、“谷が最も深い”運転曲線RC19,RC22を作成し(ステップD29)、この運転曲線RC19,RC22における接近点20の到達時刻T19,T22を算出する(ステップD31)。そして、この到達時刻T19,T22が指定時刻Tsと同じ或いは遅いならば(ステップD33:YES)、予測制御運転曲線の作成を可能と判断する(ステップD35)。到達時刻T19,T22が指定時刻Tsより早いならば(ステップD33:NO)、予測制御運転曲線の再作成を不可能と判断する(ステップD37)。以上の処理を行うと、予測制御運転曲線更新可否判定処理を終了する。
図36,図37は、予測制御運転曲線更新処理を説明するフローチャートである。予測制御運転曲線更新部212は、接近点20の指定時刻Tsが早まるように変更されたならば(ステップE1:YES)、対象列車10が走行中の予測制御運転曲線において、現在の位置から接近点20の指定位置までの間に、“谷”が有るかを判断する。“谷”が有るならば(ステップE3:YES)、対象列車10が走行中の予測制御運転曲線について、現在の位置から接近点20の指定位置までの間の運転曲線部分に対して“谷を埋めた”運転曲線RC11を作成し、仮の運転曲線とする(ステップE5)。次いで、この運転曲線RC11における接近点20の到達時刻T11を算出する(ステップE7)。そして、到達時刻T11が変更後の指定時刻Tsと同じならば(ステップE9:YES)、仮の運転曲線を、新たな予測制御運転曲線として更新する(ステップE11)。到達時刻T11が変更後の指定時刻Tsより遅いならば(ステップE9:NO〜E13:YES)、仮の運転曲線RC11に対して、対象列車10の現在の位置及び速度から“山を追加”して、接近点20の到達時刻が指定時刻Tsとなるように調整し、新たな予測制御運転曲線として更新する(ステップE15)。到達時刻T11が指定時刻Tsより早いならば(ステップE13:NO)、仮の運転曲線RC11に対して“谷を追加”して、接近点20の到達時刻が指定時刻Tsとなるように調整し、新たな予測制御運転曲線として更新する(ステップE17)。
一方、対象列車10が走行中の予測制御運転曲線において、現在の位置から接近点20の指定位置までの間に“谷”が無いと判定されるならば(ステップE3:NO)、対象列車10の現在の位置及び速度から、接近点20にだ行で到達する最速の運転曲線RC6を仮の運転曲線とし、この仮の運転曲線RC6に対して“山をつぶす”ことで、接近点20の到達時刻が指定時刻Tsとなるように調整し、新たな予測制御運転曲線として更新とする(ステップE19)。
また、接近点の指定時刻Tsが遅まるように変更されたならば(ステップE1:NO)、対象列車10が走行中の予測制御運転曲線において、現在の位置から接近点20の指定位置までの間に、“山”が有るかを判断する。“山”が有るならば(ステップE19:YES)、対象列車10の現在の位置及び速度からブレーキ運転で順引きした順引き曲線と、接近点20からだ行運転で逆引きした逆引き曲線とに基づく運転曲線RC14を作成し、仮の運転曲線とする(ステップE21)。次いで、仮の運転曲線RC14における接近点20の到達時刻T14を算出する(ステップE23)。そして、この到達時刻T14が指定時刻Tsと同じならば(ステップE25:YES)、仮の運転曲線RC14を、新たな予測制御運転曲線として更新する(ステップE27)。到達時刻T14が指定時刻Tsより遅いならば(ステップE25:NO〜E29:YES)、仮の運転曲線RC14に対して“山を追加”することで、接近点20の到達時刻が指定時刻Tsとなるように調整し、新たな予測制御運転曲線として更新する(ステップE31)。到達時刻T14が指定時刻Tsより早いならば(ステップE29:NO)、仮の運転曲線RC15に対して“谷を追加”することで、接近点20の到達時刻が指定時刻Tsとなるように調整し、新たな予測制御運転曲線として更新する(ステップE33)。
一方、対象列車10が走行中の予測制御運転曲線において、現在の位置から接近点の指定位置までの間に“山”が無いと判定されるならば(ステップE19:NO)、対象列車10の現在の位置及び速度から、“機外停止”する運転曲線RC17,RC20を作成可能かを判断し、作成可能ならば(ステップE35:YES)、この運転曲線RC17,RC20における接近点20の到達時刻T17,T20を算出する(ステップE37)。そして、この到達時刻T17,T20が指定時刻Tsより遅いならば(ステップE39:YES)、運転曲線RC17,RC20に対して“谷を埋める”ことで、接近点20の到達時刻が指定時刻Tsとなるように調整し、新たな予測制御運転曲線として更新する(ステップE41)。一方、到達時刻T17,T20が指定時刻Tと同じ或いは早いならば(ステップE39:NO)、運転曲線RC17,RC20において機外停止で時間調整することで、接近点20の到達時刻が指定時刻Tsとなるようにし、新たな予測制御運転曲線として更新する(ステップE43)。
一方、“機外停止”する運転曲線RC17,RC20が作成できないならば(ステップE35:NO)、対象列車10の現在の位置及び速度から、“谷が最も深い”運転曲線RC19,RC22を作成して仮の運転曲線とし、この仮の運転曲線RC19,RC22における“谷を埋める”ことで、接近点20の到達時刻が指定時刻Tsとなるように調整し、新たな予測制御運転曲線として更新する(ステップE45)。以上の処理を行うと、予測制御運転曲線更新処理を終了する。
[作用効果]
このように、本実施形態によれば、予測制御に用いられる対象列車10の運転曲線(予測制御運転曲線)を、様々な状況に応じて作成することができる。また、予測制御運転曲線を、だ行運転を増やすように作成することで省エネ運転を実現することができる。また、ブレーキ開始位置をできるだけ次駅に近い位置にした予測制御運転曲線とすることで、対象列車10の更に後続列車への影響を抑制することが可能となる。
より具体的な特徴の1つとして、本実施形態では、接近点にだ行運転で到達する予測制御運転曲線を作成する、ということが挙げられる。一見、接近点にだ行運転で到達するという運転曲線作成上の1つの指針に過ぎないように思われるが、それ以上の作用効果が期待できる。すなわち、接近点にだ行運転で到達するため、接近点開通時刻において、仮に場内進路の開通が指定時刻よりも遅くなった場合には、接近点付近で急にブレーキをかけて場内手前で停止することもできるし、仮に場内進路が開通した場合には、力行運転に切り替えて最短時間で駅に進入することもできるなど、機動的な運転が可能となる。また、少なくとも案内点から接近点までをだ行運転とすることで、接近点を最大ブレーキで通過するといった運転曲線に比べて、消費電力を低減させた省エネ運転となる運転曲線の作成を促進させることができる。
なお、本発明の適用可能な実施形態は上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能なのは勿論である。
例えば、上述の実施形態で作成される運転曲線(予測制御運転曲線を含む)は、無人運転による自動運行の列車制御に適用することとしてもよいし、有人操作による列車制御の基準として利用することとしてもよい。また、列車制御をコンピュータシミュレーションする際の運転曲線として利用することも可能である。