JP6518336B2 - エレベータ装置 - Google Patents
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Description
本発明はエレベータ装置に係り、特に非常止め装置を動作させるガバナ装置を備えたエレベータ装置に関するものである。
一般的にエレベータ装置においては、乗かごの昇降速度が第1の設定値に達したとき電気的に乗かごの巻上装置を停止させ、乗かごの下降速度が第2の設定値に達したとき非常止め装置を動作させて機械的に乗かごを停止させるガバナ装置が設けられている。
そして、最近のガバナ装置においては、ラチェット式の小型のガバナ装置が用いられるようになってきている。例えば、特開2012−188260号公報(特許文献1)には、ラチェット式のガバナ装置が示されている。
このガバナ装置は、主にラチェットホイールと2個のフライウエイトとからなり、ロープが巻き掛けられたシーブと一緒に回転するフライウエイトが遠心力によって外側に開くように移動(以下、飛開という)すると、フライウエイトの先端に取り付けた爪部(ラチェット)がラチェットホイールのラチェット歯に噛み合うように構成されている。ラチェットホイールのラチェット歯にフライウエイトの爪部が噛み合うと、ラチェットホイールはシーブによって回転され、ラチェットホイールの回転によって駆動されるブレーキシューがシーブとの間のガバナロープに制動力を与えて非常止め装置を動作させるものである。
特許文献1にあるようなラチェット式のガバナ装置においては、ラチェットホイールの外周部にフライウエイトが配置され、フライウエイトの先端に爪部が取り付けられている。そして、フライウエイトの飛開によってフライウエイトの爪部がラチェットホイールの外周に形成した複数のラチェット歯の1つの根元部に入り込んで噛み合うことで、ラチェットホイールを回転させる構造である。
上述したように、ガバナ装置は小型化されてきており、ラチェットホイールも小径のものが使用され、ラチェットホールの慣性質量も小さくなる傾向にある。ところが、ラチェットホイールの慣性質量がフライウエイトの慣性質量よりも小さい場合、フライウエイトの飛開によって、ラチェットホイールのラチェット歯とフライウエイトの爪部が衝突した際に、フライウエイトの爪部によってラチェットホイールが弾かれてしまう現象が発生した。
このため、ラチェットホイールのラチェット歯とフライウエイトの爪部の噛み合いが良好にできなくなり、非常止め装置の動作が遅れるといった悪影響を生ずるようになる。したがって、ラチェットホイールのラチェット歯とフライウエイトの爪部との噛み合いを確実に行うことができるガバナ装置の開発が強く要請されている。
本発明の目的は、ラチェットホイールのラチェット歯とフライウエイトの爪部との噛み合いを確実に行うことができる新規なガバナ装置を備えたエレベータ装置を提供することにある。
本発明の特徴は、フライウエイトを飛開させるためにフライウエイトを回転可能に支持するウエイト支持軸を境として、フライウエイトの一方領域側に、ラチェットホイールのラチェット歯と噛み合う爪部を取り付けると共に、フライウエイトの他方領域側に、フライウエイトの慣性質量をラチェットホイールの慣性質量と同等、或いはこれより小さく調整するための形状を有する慣性質量調整部を備える、ところにある。
本発明によれば、フライウエイトの慣性質量をラチェットホイールの慣性質量と同等、或いはこれより小さくすることで、ラチェットホイールのラチェット歯とフライウエイトの爪部の噛み合いを確実に行うことができるようになる。これによって、非常止め装置の動作が遅れるといった悪影響をなくすことができる。
次に、本発明の実施形態について図面を用いて詳細に説明するが、本発明は以下の実施形態に限定されることなく、本発明の技術的な概念の中で種々の変形例や応用例をもその範囲に含むものである。
図1は本発明が適用されるガバナ装置10を示している。ガバナ装置10は、ガバナベース11の上に据えられたフレーム12を備え、このフレーム12の内側にシーブ軸13を介してシーブ14が回転自在に支持されている。シーブ14にはガバナロープ15が巻き掛けられ、このガバナロープ15がエレベータの乗りかごと一体的に走行し、その走行でシーブ14がシーブ軸13を中心に回転する。
シーブ14の一方の側面側にはラチェットホイール16が設けられている。このラチェットホイール16はシーブ軸13に支持され、シーブ14とは別にシーブ軸13を中心に回転することが可能となっている。ラチェットホイール16の外周には複数個のラチェット歯17が等角度に形成されており、ラチェット歯17は回転方向に傾斜されている。これによって、ラチェットホイール16は一方向に回転することができる。
また、ラチェットホイール16が配置されているシーブ14の同じ側面側には、一対のフライウエイト18A、18Bが設けられている。これらフライウエイト18A、18Bは、ラチェットホイール16を隔てて互いにほぼ対称的に向き合うように配置されて、それぞれウエイト支持軸(図示せず)を介してシーブ14の側面に回動自在に取り付けられている。
更に、フライウエイト18A、18Bの一方(本実施形態ではフライウエイト18A)には、ラチェットホイール16のラチェット歯17と噛み合い可能な爪部(ラチェット)28が設けられている。フライウエイト18A、18Bとラチェットホイール16については図2以降で詳細に説明する。
ラチェットホイール16はブレーキ機構19と連結されている。このブレーキ機構19は、ブレーキアーム20を備え、このブレーキアーム20の一端部がピン21を介してフレーム12に回動自在に取り付けられている。ブレーキアーム20の他端部には連結ロッド22が貫挿され、この連結ロッド22の一端部がラチェットホイール16の一側面にピン(図示せず)を介して回動自在に連結されている。
連結ロッド22の他端部とブレーキアーム20との間にはブレーキばね23が設けられ、またブレーキアーム20の中間部にはブレーキシュー24が取り付けられている。ブレーキシュー24は、シーブ14に巻き掛けられたガバナロープ15に対向するように配置されている。そして、ラチェットホイール16が図1における反時計方向に回転して連結ロッド22が引っ張られたときに、ブレーキばね23が圧縮し、その圧縮力でブレーキアーム20を介してブレーキシュー24がガバナロープ15に押圧され、この押圧力でブレーキシュー24とシーブ14とでガバナロープ15にブレーキ力が作用されるようになっている。
シーブ14の近傍には、図示しない巻上装置の制動機構を作動させるためのスイッチ信号を発生する乗りかご停止用スイッチ25が取り付けられている。乗りかご停止用スイッチ25は、乗かごの昇降速度が第1の設定値、例えば、定格速度の1.3倍に達したとき、フライウエイト18A、18Bの爪部とは反対側の先端に形成された凸部によって乗りかご停止用スイッチ25のスイッチ機構が作動するように構成されている。
また、ラチェットホイール16によって動作されるブレーキ機構19は、乗かごの下降速度が第2の設定値、例えば、定格速度の1.4倍に達したことをフライウエイト18A、18Bによって検出したときガバナロープ15に制動力を作用させ、非常止め装置を動作させて乗りかごを停止させるように構成されている。
以上のような構成のガバナ装置において、エレベータ装置の運転時には、乗りかごと一体的にガバナロープ15が走行し、この走行でシーブ14がシーブ軸13を中心に回転する。このとき、ラチェットホイール16は回転していない。乗りかごが下降するときには、シーブ14は反時計方向に回転する。そして、乗りかごが定格の速度を超えて下降すると、シーブ14の回転速度が増し、フライウエイト18A、18Bがその遠心力でウエイト支持軸を中心に回動して外側に飛開する。この飛開動作で一方のフライウエイト18Aの爪部28がラチェットホイール16のラチェット歯17に噛み合い、これによってラチェットホイール16がシーブ14と一体的にシーブ軸13を中心に反時計方向に回転する。
ラチェットホイール16の回転動作は、連結ロッド22を介してブレーキ機構19に伝達され、その伝達でブレーキ機構19が動作し、シーブ14に巻き掛けられているガバナロープ15がシーブ14に押し付けられ、ガバナロープ15の走行が停止される。そして、ガバナロープ15の停止で、下降中の乗りかごの非常止め装置が動作し、かごに制動力が加わって乗りかごの下降が停止し、安全が図られるものである。
そして、上述したように、ラチェットホイール16の慣性質量が爪部28を備えたフライウエイト18Aの慣性質量よりも小さい場合、フライウエイト18Aの飛開によって、ラチェットホイール16のラチェット歯17とフライウエイト18Aの爪部28が衝突した際に、フライウエイト18Aの爪部28によってラチェットホイール16が弾かれてしまう現象が発生する。このため、ラチェットホイール16のラチェット歯17とフライウエイト18Aの爪部28の噛み合いが良好にできなくなり、非常止め装置の動作が遅れるといった悪影響を生ずるようになる。
そこで、本実施形態では、爪部28を備えたフライウエイト18Aの慣性質量を低減するため、フライウエイト18Aの一方領域側に、ラチェットホイール16のラチェット歯17と噛み合う爪部28を取り付けると共に、フライウエイト18Aの他方領域側に、フライウエイト18Aの慣性質量をラチェットホイール16の慣性質量と同等、或いはこれより小さくする慣性質量調整部を形成する構成を提案するものである。
以下、本実施形態のガバナ装置に使用されるフライウエイトについて、図2〜図4Bを用いて詳細に説明する。
図2〜図4Bにおいて、シーブ14と一体的に連結された支持基台26がシーブ軸13に回転可能に支持されており、図示しないラチェットホイール16の外側に位置した部分の支持基台26の表面にウエイト支持軸27A、27Bが植立して設けられている。フライウエイト18A、18Bは、ほぼ同じ形状に形成されており、所定の位置で各ウエイト支持軸27A、27Bにそれぞれ回転可能に支持されている。
フライウエイト18A、18Bは、シーブ軸13を中心とする点対称位置に配置された細長い略扇状に形成され、各ウエイト支持軸27A、27Bから異なる腕の長さを有する領域を有している。すなわち図3に示しているように、フライウエイト18Aには、ウエイト支持軸27Aを境にして、腕長の短い領域SA(=一方領域)と腕長の長い領域LA(=他方領域)とが形成されている。これによって、フライウエイト18Aの腕長の長い領域LAが遠心力で外側に向けて移動し、逆にフライウエイト18Aの腕長の短い領域SAが内側に向けて移動するものである。尚、フライウエイト18Bもほぼ同じ構成となっており、同じ動作を行うものである。
フライウエイト18Aのウエイト支持軸27Aから腕長が短い領域SAの端部には、ラチェットホイール16のラチェット歯17と係脱可能に噛み合う爪部28が取り付けられている。また、フライウエイト18Aのウエイト支持軸27Aから腕長が長い領域LAの端部には、乗りかご停止用スイッチ25を作動させる突起部29Aが設けられている。ここで、腕長の短い領域SAは、爪部28を取り付ける爪部取り付け部を備え、腕長の長い領域LAは、フライウエイト18Aの慣性質量を小さくする慣性質量調整部を備えることなる。この慣性質量調整部については後述する。
尚、他方のフライウエイト18Bの腕長が短い領域SAには爪部28は取り付けられておらず、腕長が長い領域LAの端部には、乗りかご停止用スイッチ5を作動させる突起部29Bが設けられている。したがって、突起部29A、29Bのいずれか一方が乗りかご停止用スイッチ5を作動させることができる。
また、フライウエイト18A側の腕長が長い領域LAの中間部と、フライウエイト18B側の腕長が短い領域SAの中間部がピン30A、30Bによって連結部材31と連結されている。この連結部材31は、フライウエイト18Aとフライウエイト18Bの動きを連動させる働きを行なわせるものである。更に、フライウエイト18Aの腕長が短い領域SAの端部と支持基台26の中央付近に形成した端部は調整機能付きばね部材32が配置されており、フライウエイト18Aの爪部28の噛み込みを調整するようになっている。
図2、図3に示すように、正常な状態では、フライウエイト18Aの爪部28はラチェットホイール16から離れた位置にあり、ラチェット歯17と爪部28とは噛み合ってはいない。そして、乗かごの昇降速度が第1の設定値、例えば、定格速度の1.3倍に達すると、フライウエイト18A、18Bは遠心力を受けて、各ウエイト支持軸27A、27Bを中心にして腕長が長い領域LAが外側に向けて飛開して移動し、これとは反対に腕長が短い領域SAが内側に向けて移動する。
このようにして、フライウエイト18A、18Bの突起部29A、29Bがラチェットホイール16から離れる方向に回動する。これによって、突起部29A、29Bが正常な状態よりも外側に突出して、突起部29A、29Bのどちらか一方が図1に示した乗りかごかご停止用スイッチ5を作動させる。
同様に、乗かごの下降速度が第2の設定値、例えば、定格速度の1.4倍に達すると、フライウエイト18A、18Bはより大きな遠心力を受け、各ウエイト支持軸27A、27Bを中心にして、腕長が長い領域LAが更に外側に飛開して移動し、これとは反対に腕長が短い領域SAが内側に移動する。
これによって、フライウエイト18Aの腕長が短い領域SAの端部に設けられた爪部28は、ラチェットホイール163のラチェット歯17に噛み合い、ラチェットホイール16はフライウエイト18A、18B、及びシーブ14と同期して反時計方向に回転してブレーキ機構19を作動させる。
ところで、ラチェットホイール16の外周部にフライウエイト18A、18Bを配置してガバナ装置10を小形化しようとすると、図4Aに示しているように、フライウエイト18Aのウエイト支持軸27Aの中心から爪部28の噛み合い部までの距離aを短くしなければならない。
一方、乗りかごの昇降速度が第一の設定値に達したとき、シーブ14の外側にある乗りかご停止用スイッチ25を作動させるため、フライウエイト18Aのウエイト支持軸27Aの中心から突起部29Aまでの距離bを長くしなければならず、自ずと、腕長が長い領域LAの面積が大きくなり、これに伴って質量も増加する。このため、フライウエイト18Aの慣性モーメントが大きくなる。
ここで、フライウエイト18Aの慣性モーメントをIo、ウエイト支持軸27Aの中心から爪部28の先端までの距離をaとすると、フライウエイト18Aの慣性質量mはm=Io/a2の式で求められる。したがって、ウエイト支持軸27Aの中心から突起部29Aまでの距離bを長くし、更にウエイト支持軸27Aの中心から爪部28の噛み合い部までの距離aを短くすると、上述の式からフライウエイト18Aの慣性質量が大きくなる。したがって、ラチェットホイール16の慣性質量に比べてフライウエイト18Aの慣性質量が大きくなってしまうことになる。
このため、図3に示すように、フライウエイト18Aの飛開によって、ラチェットホイール16のラチェット歯17とフライウエイト18Aの爪部28が衝突した際に、フライウエイト18Aの爪部28によってラチェットホイール16が弾かれてしまう現象が発生する。
そこで、図2〜図4Bにある通り、本実施形態では、フライウエイト18Aのウエイト支持軸27Aを境にして、腕長が長い領域LAに慣性質量調整部33Aを形成し、この部分の慣性質量を低減するようにしている。
本実施形態において、慣性質量調整部33Aには、薄肉領域部34Aと貫通孔部35Aとが設けられている。図3にある通り、フライウエイト18Aには、ウエイト支持軸27Aが挿通される支持孔36Aを境に、腕長が短い領域SA(=一方領域)と、腕長が長い領域LA(=他方領域)とが形成されている。
そして、腕長が長い領域LAの一部には慣性質量調整部33Aが形成されている。慣性質量調整部33Aの厚さは、慣性質量調整部33A以外の腕長が長い領域LAと腕長が短い領域SAの厚さに比べて薄くなっている。このため、この薄くされた薄肉領域部34Aの分だけ質量が少ないものとなっている。また、薄肉領域部34Aには貫通孔35Aが形成されており、この貫通孔35Aの分だけ更に質量が少なくされている。このような薄肉領域部34Aや貫通孔35Aは、フライウエイト18Aの慣性質量を小さく調整するための調整形状として形成されているものである。
このように、腕長が長い領域LAの一部には慣性質量調整部33Aが形成されているので、フライウエイト18Aの慣性モーメントを小さくすることができ、ウエイト支持軸27Aの中心から突起部29Aまでの距離bを長くし、かつウエイト支持軸27Aの中心から爪部28の噛み合い部までの距離aを短くしても、フライウエイト18Aの慣性質量を低減することができる。
ここで、慣性質量調整部33Aによって低減される質量は、フライウエイト18Aの慣性質量がラチェットホイール16の慣性質量と同等か、或いはこれより小さくなるように決められている。尚、本実施形態では、フライウエイト18Aの慣性質量がラチェットホイール16の慣性質量より小さくなるように決められている。
また、フライウエイト18Bの腕長が長い領域LAの一部にも慣性質量調整部33Bが形成されている。これによって、フライウエイト18Aとの慣性質量の均衡を図ることができる。慣性質量調整部33Bには薄肉領域部34Bと貫通孔35Bが形成されており、フライウエイト18Aとフライウエイト18Bはほぼ同じ形状とされている。ただ、フライウエイト18Bには爪部28が取り付けられていないため、フライウエイト18Aとフライウエイト18Bは全く同じ形状ではない。
更に、薄肉領域部34A、34Bと貫通孔35A、35Bを含む慣性質量調整部33A、33Bについても全く同じ形状ではない。このように、フライウエイト18Aとフライウエイト18Bは、慣性質量の均衡を図れれば良いので、形状的に類似していれば良いものである。
このように、本実施形態では、フライウエイト18Aの慣性質量をラチェットホイールの慣性質量より小さくしたので、フライウエイト18Aの飛開によって、ラチェットホイール16のラチェット歯17とフライウエイト18Aの爪部28が衝突した際にも、フライウエイト18Aの爪部28によってラチェットホイール16が弾かれてしまうという現象を抑制することが可能となる。
このため、ラチェットホイールのラチェット歯とフライウエイトの爪部の噛み合いが良好にできるようになり、非常止め装置の動作が遅れるといった悪影響を生ずることがなくなるものである。
そして、慣性質量調整部33A、33Bの薄肉領域部34A、34Bの厚さは、慣性質量調整部33A、33B以外の腕長が長い領域LAと腕長が短い領域SAの厚さに比べて約2/3以下であれば、充分な慣性質量の低減が図れることが発明者等の検討によって確認できた。尚、本実施形態においては、慣性質量調整部33A、33Bの薄肉領域部34A、34Bの厚さは、慣性質量調整部33A、33B以外の腕長が長い領域LAと腕長が短い領域SAの厚さに比べて1/2程度に決められている。
ここで、シーブ14からの大きな回転力はウエイト支持軸27A、フライウエイト18Aの腕長が短い領域SAを介して爪部28に与えられるため、本実施例のように腕長が短い領域SAの厚さを厚くする方が有利である。一方、腕長が長い領域LAにはシーブ14からの大きな力が作用しないため、慣性質量を低減するため厚さを薄くしても問題が無いものである。
また、慣性質量調整部33Aの貫通孔35Aの直径は、約13mm以上であれば充分な慣性質量の低減が図れることが発明者等の検討によって確認できた。尚、貫通孔35Aの形状は円形を示したが、円形以外の多角形や楕円形等の形状であっても貫通孔35Aとして適用することができるものである。更に、貫通孔ではなく、有底の凹部のような形状であっても差し支えないものである。
また、慣性質量調整部33Aは、少なくとも連結部材31をフライウエイト18Aに連結するピン30Aが設けられている部分より先端側に形成されていると有利である。これによって、連結部材31の取付面をフライウエイト18A、18Bで同じ高さにできるようになる。仮にフライウエイト18Aの薄肉である慣性質量調整部33Aにピン30Aを設けると、フライウエイト18B側は厚さが厚い腕長が短い領域SAであるため、連結部材31が傾斜して取り付けられ、機構上不利な取付形態となるからである。
尚、本実施形態では、慣性質量調整部33Aを薄肉領域部34Aと貫通孔部35Aから構成したが、薄肉領域部34A、或いは貫通孔部35Aのどちらか一方だけを形成しても良いことはいうまでもない。
以上述べた通り本発明は、フライウエイトを飛開させるためにフライウエイトを回転可能に支持するウエイト支持軸を境として、フライウエイトの一方領域側に、ラチェットホイールのラチェット歯と噛み合う爪部を取り付けると共に、フライウエイトの他方領域側に、フライウエイトの慣性質量をラチェットホイールの慣性質量と同等、或いはこれより小さく調整するための形状を有する慣性質量調整部を備えるようにしたものである。
このように、フライウエイトの慣性質量をラチェットホイールの慣性質量と同等、或いはこれより小さくすることで、ラチェットホイールのラチェット歯とフライウエイトの爪部の噛み合いを確実に行うことができる。これによって、非常止め装置の動作が遅れるといった悪影響をなくすことができるようになる。
尚、本発明は上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
10…ガバナ装置、11…ベース、12…フレーム、13…シーブ軸、14…シーブ、15…ガバナロープ、16…ラチェットホイール、17…ラチェット歯、18A、18B…フライウエイト、19…ブレーキ機構、20…ブレーキアーム、21…ピン、22…連結ロッド、23…ブレーキばね、24…ブレーキシュー、25…乗りかご停止用スイッチ、26…支持基台、27A、27B…ウエイト支持軸、28…爪部、29A、29B…突起部、30A、30B…ピン、31…連結部材、32…調整機能付きばね部材、33A、33B…慣性質量調整部、34A、34B…薄肉領域部、35A、35B…貫通孔。
Claims (7)
- ガバナロープが巻き掛けられ、前記ガバナロープが乗りかごの昇降に応じて移動することによって回転されるシーブと、前記シーブの回転軸に回転可能に支持され外周部に複数のラチェット歯を有したラチェットホイールと、前記ラチェットホイールの外周に配置され、前記シーブの回転による遠心力で回動するフライウエイトと、前記フライウエイトの端部に取り付けられ、前記ラチェットホイールの前記ラチェット歯と係脱可能に噛み合う爪部と、前記ラチェットホイールと連結され、前記乗りかごが定格の速度を超えて下降すると前記フライウエイトの前記爪部が前記ラチェットホイールの前記ラチェット歯に係合されて前記ガバナロープに制動力を作用させるブレーキ機構とを有するガバナ装置を備えたエレベータ装置において、
前記フライウエイトは前記シーブと一体的に回転するウエイト支持軸に回転可能に支持されており、前記ウエイト支持軸を境として、前記フライウエイトの一方領域側に、前記ラチェットホイールの前記ラチェット歯と噛み合う前記爪部を取り付けると共に、前記フライウエイトの他方領域側に、前記フライウエイトの慣性質量を前記ラチェットホイールの慣性質量と同等、或いはこれより小さく調整するための形状を有する慣性質量調整部を備えることを特徴とするエレベータ装置。 - 請求項1に記載のエレベータ装置において、
前記慣性質量調整部は、前記フライウエイトの前記一方領域側の厚さより薄い薄肉領域部、或いは貫通孔、或いは前記薄肉領域部と前記貫通孔によって形成されていることを特徴とするエレベータ装置。 - 請求項2に記載のエレベータ装置において、
前記薄肉領域部は、前記フライウエイトの前記一方領域側の厚さに対して、約2/3以下の厚さに形成されていることを特徴とするエレベータ装置。 - 請求項2に記載のエレベータ装置において、
前記貫通孔は、直径が13mm以上の円形の貫通孔であることを特徴とするエレベータ装置。 - 請求項1に記載のエレベータ装置において、
前記フライウエイトは、前記ラチェットホイールを隔てて向き合うようにして配置された第1のフライウエイトと第2のフライウエイトとからなり、前記第1のフライウエイトと前記第2のフライウエイトの両方に前記慣性質量調整部が形成されていることを特徴とするエレベータ装置。 - 請求項5に記載のエレベータ装置において、
前記第1のフライウエイトと前記第2のフライウエイトの内で、前記第2のフライウエイトにだけ前記爪部が取り付けられていることを特徴とするエレベータ装置。 - 請求項5に記載のエレベータ装置において、
前記第1のフライウエイトと前記第2のフライウエイトは連結部材によって連結されており、前記連結部材は、前記第1のフライウエイトの前記一方領域に設けられたピンと、前記第2のフライウエイトの前記慣性質量調整部以外の前記他方領域に設けられたピンとを連結することを特徴とするエレベータ装置。
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
PCT/JP2015/078870 WO2017064745A1 (ja) | 2015-10-13 | 2015-10-13 | エレベータ装置 |
Publications (2)
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