前記課題を解決するためになされた第1の発明は、放送用素材データを無線伝送するFPUとしての移動局装置および基地局装置と、複数の前記基地局装置間のハンドオーバを制御する制御局装置と、を有する移動通信システムであって、前記基地局装置は、他の通信システムとの干渉状況を複数のチャネルごとに測定する干渉測定部を備え、前記制御局装置は、ハンドオーバ元およびハンドオーバ先の2つの前記基地局装置から、複数のチャネルごとの干渉測定結果を取得して、干渉が発生していない空きチャネルのうちで2つの前記基地局装置で共通するものを選択するチャネル選択部と、ハンドオーバに先だって、2つの前記基地局装置および前記移動局装置に、前記チャネル選択部で選択された前記空きチャネルへの切り替えを指示して、その空きチャネルを利用した前記放送用素材データの無線伝送を実施させる切り替え制御部と、を備えた構成とする。
これによると、ハンドオーバ元およびハンドオーバ先の2つの基地局装置の双方で、他の通信システムと干渉が発生していない空きチャネルを探してこれを利用するため、各基地局装置のチャネル割当の自由度を確保してチャネルの利用効率を低下させることなく、ハンドオーバを実行した際に、ハンドオーバ先の基地局装置で干渉が発生することを避けることができる。さらに、ハンドオーバに先だって、2つの基地局装置の双方で、空きチャネルを利用した放送用素材データの無線伝送を実施させるようにしたため、ハンドオーバを実行した際の放送用素材データの無線伝送の瞬断を回避して、放送用素材データの安定した無線伝送を実現することができる。
また、第2の発明は、前記チャネル選択部は、2つの前記基地局装置で共通する前記空きチャネルを必要数だけ選択することができない場合に、2つの前記基地局装置から、前記チャネルの周波数帯を分割した複数の分割チャネルごとの干渉測定結果を取得して、干渉が発生していない空き分割チャネルのうちで2つの前記基地局装置で共通するものを選択し、前記切り替え制御部は、ハンドオーバに先だって、2つの前記基地局装置および前記移動局装置に、前記チャネル選択部で選択された前記空き分割チャネルへの切り替えを指示して、その空き分割チャネルを利用した前記放送用素材データの無線伝送を実施させる構成とする。
これによると、ハンドオーバ元およびハンドオーバ先の2つの基地局装置で共通する空きチャネルが必要数だけ見つからない場合でも、空き分割チャネルを利用することで、ハンドオーバを実行した際に、ハンドオーバ先の基地局装置で干渉が発生することを避けることができるため、放送用素材データのより一層安定した無線伝送を実現することができる。
また、第3の発明は、前記チャネル選択部は、2つの前記基地局装置で共通する前記空き分割チャネルを必要数だけ選択することができない場合に、その2つの前記基地局装置で共通する前記空き分割チャネルを選択するとともに、2つの前記基地局装置で共通しない前記空き分割チャネルを必要数選択し、前記切り替え制御部は、ハンドオーバに先だって、2つの前記基地局装置および前記移動局装置に、前記チャネル選択部で選択された前記空き分割チャネルへの切り替えを指示し、ハンドオーバタイミングが到来すると、ハンドオーバ先の前記基地局装置および前記移動局装置に、2つの前記基地局装置で共通しない前記空き分割チャネルの切り替えを指示する構成とする。
これによると、ハンドオーバ時に必要最小限の分割チャネルだけ切り替えればよいため、チャネル切り替え時のタイムラグを短縮することができ、放送用素材データのより一層安定した無線伝送を実現することができる。
また、第4の発明は、さらに、2つの前記基地局装置をそれぞれ経由した前記放送用素材データを合成するダイバーシチ合成部を備えた構成とする。
これによると、2つの基地局装置をそれぞれ経由した放送用素材データを合成するようにしたため、放送用素材データのより一層安定した無線伝送を実現することができる。
また、第5の発明は、放送用素材データを無線伝送するFPUとしての移動局装置および基地局装置と、複数の前記基地局装置間のハンドオーバを制御する制御局装置と、を有する移動通信システムにおけるハンドオーバ制御方法であって、他の通信システムとの干渉状況を複数のチャネルごとに測定するステップと、ハンドオーバ元およびハンドオーバ先の2つの前記基地局装置から、複数のチャネルごとの干渉測定結果を取得して、干渉が発生していない空きチャネルのうちで2つの前記基地局装置で共通するものを選択するステップと、ハンドオーバに先だって、2つの前記基地局装置および前記移動局装置に、2つの前記基地局装置で共通する前記空きチャネルへの切り替えを指示して、その空きチャネルを利用した前記放送用素材データの無線伝送を実施させるステップと、を備えた構成とする。
これによると、第1の発明と同様に、各基地局のチャネル割当の自由度を確保してチャネルの利用効率を低下させることなく、ハンドオーバを実行した際に、ハンドオーバ先の基地局装置で干渉が発生することを避けることができ、さらに、ハンドオーバを実行した際の放送用素材データの無線伝送の瞬断を回避して、放送用素材データの無線伝送の安定性を高めることができる。
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照しながら説明する。
(第1実施形態)
図1は、本実施形態に係る移動通信システムの全体構成図である。
この移動通信システムは、移動局装置1と、複数の基地局装置2と、制御局装置3と、を備えている。
移動局装置1および基地局装置2は、カメラによる映像およびマイクによる音声などの放送用素材データを無線伝送するFPU(Field Pickup Unit、無線中継伝送装置)であり、移動局装置1は、移動中継車に搭載され、基地局装置2は、移動中継車が走行する経路の近傍の適所に設置される。
制御局装置3は、移動局装置1および複数の基地局装置2を制御するものであり、IP網などのネットワークを介して基地局装置2と接続されて、基地局装置2との間で制御情報が送受信され、また、通信中の基地局装置2を介して移動局装置1との間で制御情報が送受信される。また、制御局装置3では、各基地局装置2から送信される放送用素材データを受信して、その放送用素材データを放送機器に送信する処理が行われる。
特に本実施形態では、制御局装置3において、移動局装置1と基地局装置2との間の通信状態を監視して、移動局装置1が移動するのに応じて移動局装置1との間で放送用素材データを無線伝送する基地局装置2を切り替えるハンドオーバ制御が行われる。
このような移動通信システムでは、他の通信システムとの干渉が発生すると、放送用素材データの無線伝送に利用されるチャネル(周波数)を、干渉が発生していないチャネルに切り替えることで、他の通信システムとの干渉を避けることができる。
一方、ハンドオーバ元およびハンドオーバ先の2つの基地局装置2では、他の通信システムとの干渉状況が異なる、すなわち、2つの基地局装置2の各々で干渉が発生しているチャネルが異なる場合がある。このような場合、チャネルを変更しないまま、ハンドオーバを実行すると、ハンドオーバ先の基地局装置2において、他の通信システムとの干渉が発生する。
そこで、本実施形態では、ハンドオーバ元およびハンドオーバ先の2つの基地局装置2で共通して他の通信システムとの干渉が発生していないチャネルを選択して、ハンドオーバに先だって、2つの基地局装置2の双方で、共通して干渉のないチャネルに切り替えて、放送用素材データの無線伝送を開始した上で、ハンドオーバを実行するようにしている。
次に、図1に示した移動局装置1および基地局装置2の概略構成について説明する。図2は、移動局装置1および基地局装置2の概略構成を示す機能ブロック図である。
移動局装置1は、送信信号処理部11と、無線通信部12と、受信信号処理部13と、干渉測定部14と、を備えている。
送信信号処理部11では、カメラ15による映像およびマイク16による音声などの放送用素材データおよび制御情報などに対してOFDM変調などの信号処理が行われ、この送信信号処理部11から出力される信号が無線通信部12から基地局装置2に送信される。また、無線通信部12では、基地局装置2から送信される制御情報などの信号が受信され、受信信号処理部13では、無線通信部12で受信した信号に対してOFDM復調などの信号処理が行われる。
干渉測定部14は、無線通信部12および受信信号処理部13から出力される信号に基づいて、他の通信システムとの干渉状況を複数のチャネルごとに測定する。
基地局装置2は、無線通信部21と、受信信号処理部22と、通信部23と、送信信号処理部24と、干渉測定部25と、を備えている。
無線通信部21では、移動局装置1から送信される放送用素材データおよび制御情報などの信号を受信し、受信信号処理部22では、無線通信部21で受信した信号に対してOFDM復調などの信号処理が行われる。通信部23では、移動局装置1から受信した放送用素材データおよび制御情報などが制御局装置3に送信され、また、制御局装置3から送信される制御情報などが受信される。送信信号処理部24では、移動局装置1に送信する制御情報などに対してOFDM変調などの信号処理が行われ、送信信号処理部24から出力される信号が無線通信部21から基地局装置2に送信される。
干渉測定部25は、無線通信部21および受信信号処理部22から出力される信号に基づいて、他の通信システムとの干渉状況を複数のチャネルごとに測定する。
次に、図1に示した制御局装置3の概略構成について説明する。図3は、制御局装置3の概略構成を示す機能ブロック図である。
制御局装置3は、通信部31と、チャネル制御部32と、通信状態監視部33と、ハンドオーバ制御部34と、ダイバーシチ合成部35と、を備えている。
通信部31は、基地局装置2から送信される放送用素材データおよび制御情報を受信し、また、各種の制御情報を基地局装置2に送信する。本実施形態では、干渉測定の実施などを指示する制御情報を送信し、干渉測定結果などに関する制御情報を受信する。
チャネル制御部32は、通常時のチャネル制御、すなわち、現在通信中(ハンドオーバ元)の基地局装置2および移動局装置1に、干渉測定部14,25による干渉測定を実施させ、その干渉測定結果に基づいて、適切なチャネル、すなわち、他の通信システムとの干渉が発生していないチャネルに切り替える制御を行う。
なお、このチャネル制御部32を基地局装置2に設ける、すなわち、基地局装置2自体が通常時のチャネル制御を実施するようにしてもよい。
通信状態監視部33では、移動局装置1と基地局装置2との間の通信品質レベルを、移動局装置1の周辺の複数の基地局装置2から取得して、その基地局装置2の通信品質レベルに基づいて、ハンドオーバが間近であるか否かを判定するとともに、ハンドオーバ先の基地局を選択する。また、通信状態監視部33では、ハンドオーバ元およびハンドオーバ先の2つの基地局装置2と移動局装置1との間の通信品質レベルに基づいて、ハンドオーバタイミングが到来したか否かを判定する。
ハンドオーバ制御部34は、干渉測定指示部36と、チャネル選択部37と、切り替え制御部38と、を備えている。
干渉測定指示部36は、通信状態監視部33によりハンドオーバが間近であると判定された場合に、ハンドオーバ先の基地局装置2に対して、干渉測定部25による干渉測定の実施を指示する。なお、ハンドオーバ元の基地局装置2および移動局装置1については、通常時のチャネル制御により干渉測定が既に実施されている。
チャネル選択部37は、干渉測定指示部36による指示に応じてハンドオーバ先の基地局装置2から送信される干渉測定結果を取得し、また、通常時のチャネル制御によりハンドオーバ元の基地局装置2から干渉測定結果を取得し、その干渉測定結果に基づいて、干渉が発生していない空きチャネルのうちで2つの基地局装置2で共通するものを選択する。
切り替え制御部38は、ハンドオーバに先だって、ハンドオーバ元およびハンドオーバ先の2つの基地局装置2および移動局装置1に、チャネル選択部37で選択された空きチャネルへの切り替えを指示して、その空きチャネルを利用した放送用素材データの無線伝送を開始させる。
また、切り替え制御部38は、通信状態監視部33においてハンドオーバタイミングが到来したものと判定されると、ハンドオーバ元の基地局装置2に、放送用素材データの無線伝送を終了させる制御を行う。このとき、ハンドオーバ元およびハンドオーバ先の2つの基地局装置2の通信チャネルが同一である場合には、移動局装置1での通信チャネルの切り替えは不要であるが、2つの基地局装置2の通信チャネルが異なる場合には、移動局装置1で通信チャネルの切り替えを実施させる。
ダイバーシチ合成部35は、2つの基地局装置2をそれぞれ経由した放送用素材データを合成する処理を行う。この処理は、ハンドオーバ元およびハンドオーバ先の2つの基地局装置2の双方に放送用素材の無線伝送を開始させてから、ハンドオーバ元の基地局装置2に放送用素材の無線伝送を終了させるまでの期間で実施される。このダイバーシチ合成部35から出力される放送用素材データは放送機器に送信される。なお、このダイバーシチ合成は、2つの基地局装置2からの受信データの選択合成、すなわち、信頼度の高い受信データを選択する処理も含まれる。
次に、図3に示した制御局装置3のハンドオーバ制御部34で行われるチャネル制御について説明する。図4は、制御局装置3のハンドオーバ制御部34で行われるチャネル制御の概要を説明する説明図であり、図4(A)に、共通の空きチャネルがあるケースを示し、図4(B)に、共通の空きチャネルがないケースを示す。
本実施形態では、基地局装置2の干渉測定部25および移動局装置1の干渉測定部14において、他の通信システムとの干渉状況を複数のチャネルごとに測定する処理が行われる。
図4に示す例では、FPUに割り当てられた1.2GHz帯(1240MHz〜1300MHz)および2.3GHz帯(2330MHz〜2370MHz)に、所定の帯域幅(例えば18MHz)の4つのチャネルCh1〜Ch4が設定され、この4つのチャネルCh1〜Ch4ごとに干渉測定が行われる。
ハンドオーバ制御部34のチャネル選択部37では、2つの基地局装置2から干渉測定結果を取得して、その2つの基地局装置2の干渉測定結果に基づいて、干渉が発生していない空きチャネルのうちで2つの基地局装置2で共通するものを選択する。このとき、干渉が発生していない場合を真(1)、干渉が発生している場合を偽(0)として、2つの基地局装置2の干渉測定結果のAND(論理積)を求めればよい。
図4(A)に示すように、ハンドオーバ元およびハンドオーバ先の2つの基地局装置2で共通する空きチャネルがある場合には、その空きチャネルがチャネル選択部37で選択される。そして、切り替え制御部38において、ハンドオーバに先だって、2つの基地局装置2および移動局装置1に、チャネル選択部37で選択された空きチャネルへの切り替えを指示して、その空きチャネルを利用した放送用素材データの無線伝送を開始させる。このとき、ハンドオーバ元の基地局装置2と移動局装置1との間の通信を停止しないまま、ハンドオーバ先の基地局装置2と移動局装置1との間の通信を開始させることで、2つの基地局装置2が同時に移動局装置1と通信を行うソフトハンドオーバ的な動作となる。
一方、図4(B)に示すように、ハンドオーバ元およびハンドオーバ先の2つの基地局装置2で共通する空きチャネルがない場合には、各チャンネルの周波数帯を分割した分割チャネル単位で他の通信システムとの干渉状況を測定して、干渉が発生していない空き分割チャネルを利用してデータ伝送を行う分割チャネル制御に移行する。
なお、図4(B)に示すように、2つの基地局装置2で共通する空きチャネルがない場合に、ハンドオーバに先だって、利用する空きチャネルをハンドオーバ先の基地局装置2および移動局装置1に通知しておき、ハンドオーバと同時に、通知した空きチャネルへの切り替えをハンドオーバ先の基地局装置2および移動局装置1に実施させるようにしてもよい。この場合、ハンドオーバ元の基地局装置2と移動局装置1との間の通信を停止させると略同時に、ハンドオーバ先の基地局装置2と移動局装置1との間の通信を開始させることで、ハードハンドオーバ的な動作となる。
また、図4に示した例は、1つのチャネルで所要の通信量を確保することができる場合であり、この場合、2つの基地局装置2で共通する空きチャネルが1つあればよいが、複数のチャネルで所要の通信量を確保する場合もある。この場合、共通する空きチャネルが十分にある、すなわち、共通する空きチャネルを通信量に見合う数だけ確保することができるか否かを判定し、共通する空きチャネルが十分にある場合には、前記のソフトハンドオーバ的な動作を行わせ、共通する空きチャネルが十分にない場合には、分割チャネル制御に移行するようにすればよい。
次に、図3に示した制御局装置3のハンドオーバ制御部34で行われる分割チャネル制御について説明する。図5は、制御局装置3のハンドオーバ制御部34で行われる分割チャネル制御の概要を説明する説明図であり、図5(A)に、共通の空き分割チャネルが十分にあるケースを示し、図5(B)に、共通の空き分割チャネルが十分にないケースを示す。
図4に示したように、チャネル単位では干渉が発生していると判定される場合でも、実際にはチャネルの周波数帯の一部のみで干渉が発生している。そこで、本実施形態では、各チャンネルの周波数帯を所定数の分割チャネルに分割して、その分割チャネルごとに他の通信システムとの干渉状況を測定し、干渉が発生していない空き分割チャネルが見つかると、通信量を確保することができる数だけ空き分割チャネルを選択して、その空き分割チャネルを利用してデータ伝送を行う。
すなわち、本実施形態では、ハンドオーバ制御部34のチャネル選択部37において、2つの基地局装置2で共通する空きチャネルを必要数だけ選択することができない場合に、干渉測定指示部36において、ハンドオーバ元およびハンドオーバ先の2つの基地局装置2および移動局装置1に、分割チャネルごとの干渉測定の実施を指示する。
そして、チャネル選択部37において、2つの基地局装置2から干渉測定結果を取得して、その2つの基地局装置2の干渉測定結果に基づいて、干渉が発生していない空き分割チャネルのうちで2つの基地局装置2で共通するものを選択する。このとき、前記のチャネルごとの干渉測定結果の処理と同様に、2つの基地局装置2の干渉測定結果のAND(論理積)を求めればよい。
図5に示す例では、4つのチャネルCh1〜Ch4の各々の周波数帯が、4つの分割チャネルSCh1〜SCh4に分割されている。また、図5に示す例は、1つのチャネルで所要の通信量を確保することができる場合であり、空き分割チャネルが4つ存在すると、この4つの空き分割チャネルをまとめて利用することで、1つのチャネル分の通信量を確保することができる。
図5(A)に示すように、ハンドオーバ元およびハンドオーバ先の2つの基地局装置2で共通する空き分割チャネルが十分にある、すなわち、2つの基地局装置2で共通する空きチャネルで通信量に見合うチャネル数(キャリアアグリゲーション数)を確保することができる場合には、その空き分割チャネルがチャネル選択部37で必要数選択される。そして、切り替え制御部38において、ハンドオーバに先だって、2つの基地局装置2および移動局装置1に、チャネル選択部37で選択された空き分割チャネルへの切り替えを指示して、その空き分割チャネルを利用した放送用素材データの無線伝送を開始させる。
一方、図5(B)に示すように、ハンドオーバ元およびハンドオーバ先の2つの基地局装置2で共通する空き分割チャネルが十分にない、すなわち、共通する空き分割チャネルがあるものの、通信量に見合うチャネル数を確保することができない場合には、ハンドオーバに先だって、利用する空きチャネルをハンドオーバ先の基地局装置2および移動局装置1に通知しておき、ハンドオーバと同時に、通知した空きチャネルへの切り替えをハンドオーバ先の基地局装置2および移動局装置1に実施させる。この場合、ハンドオーバ元の基地局装置2と移動局装置1との間の通信を停止させると略同時に、ハンドオーバ先の基地局装置2と移動局装置1との間の通信を開始させることで、ハードハンドオーバ的な動作となる。
なお、図5(B)に示したように、ハンドオーバ元およびハンドオーバ先の2つの基地局装置2で共通する空き分割チャネルが十分にない場合に、2つの基地局装置2で共通する空き分割チャネルを利用し、伝送レートを下げて放送用素材データの無線伝送を行うようにしてもよい。
なお、図5に示した例では、各チャネルの周波数帯を4つに分割して4つの分割チャネルを設定するようにしたが、このチャネルの分割数は4つに限定されない。FPUとしての移動局装置1および基地局装置2の間では、OFDM方式で放送用素材データが無線伝送され、このOFDM方式では、所定数のサブキャリアをまとめて1つのチャネルが構成され、この1つのチャネルが構成するサブキャリアは多数あるため、適宜な分割数でチャネルを分割することができる。
また、2つの基地局装置2で共通する空き分割チャネルを選択する際に、通信量に見合うチャネル数以上の空き分割チャネルが存在する場合には、同一のチャネル内にまとまって存在するものから順に選択する、すなわち、空き分割チャネルが多く存在するチャネルから順に空き分割チャネルを選択するようにするとよい。
次に、図3に示した制御局装置3で行われる処理の手順について説明する。図6および図7は、制御局装置3で行われる処理の手順を示すフロー図である。
図6に示すように、制御局装置3のチャネル制御部32では、通常時のチャネル制御、すなわち、現在通信中(ハンドオーバ元)の基地局装置2および移動局装置1における干渉状況に基づいて適切なチャネルに切り替える制御が実施される。
この通常時のチャネル制御では、まず、適宜なタイミングで現在通信中の基地局装置2および移動局装置1に対して、他の通信システムとの干渉をチャネルごとに測定するチャネル別干渉測定を指示する(ST101)。そして、現在通信中の基地局装置2から干渉測定結果を取得して、他の通信システムとの干渉が発生している場合には(ST102でYes)、干渉測定結果に基づいて、干渉が発生していない空きチャネルを選択して、その空きチャネルに切り替える指示を、現在通信中の基地局装置2および移動局装置に対して行う(ST103)。
なお、本実施形態では、制御局装置3からの指示に応じて現在通信中の基地局装置2および移動局装置1が干渉測定を実施して、制御局装置3において適切なチャネルを選択して、チャネルの切り替えを基地局装置2に指示するようにしたが、この干渉測定、チャネル選択および切り替えを、基地局装置2が自律的に実施するようにしてもよい。
次に、通信状態監視部33において、移動局装置1と各基地局装置2との間の通信品質レベルに基づいて、間もなくハンドオーバを実施する必要があるものと判定されると(ST104でYes)、通信品質レベルに基づいてハンドオーバ先の基地局装置2を選択して(ST105)、ハンドオーバ制御に移行する。
図7に示すように、ハンドオーバ制御では、まず、ハンドオーバ制御部34の干渉測定指示部36において、ハンドオーバ先の基地局装置2に対して、他の通信システムとの干渉をチャネルごとに測定するチャネル別干渉測定を指示する(ST201)。
そして、チャネル選択部37において、ハンドオーバ元およびハンドオーバ先の2つの基地局装置2からチャネル別干渉測定結果を取得して、その2つの基地局装置2のチャネル別干渉測定結果のAND(論理積)を求める(ST202)。そして、そのチャネル別干渉測定結果のANDに基づいて、2つの基地局装置2で共通する空きチャネルがある場合には(ST203でYes)、その空きチャネルの中から利用する空きチャネルを選択する(ST204)。
ついで、切り替え制御部38において、ハンドオーバ元およびハンドオーバ先の2つの基地局装置2および移動局装置1に、チャネル選択部37で選択された空きチャネルへの切り替えを指示して、その空きチャネルを利用した放送用素材データの無線伝送を開始させる(ST205)。
これにより、2つの基地局装置2では、移動局装置1から送信される放送用素材データを同時に受信し、その受信した放送用素材データが制御局装置3に送信され、制御局装置3のダイバーシチ合成部35において、2つの基地局装置2から受信した放送用素材データに対してダイバーシチ合成を行う(ST206)。このダイバーシチ合成は、通信状態監視部33においてハンドオーバタイミングが到来したものと判定されるまで(ST207でYes)、継続される。
そして、通信状態監視部33においてハンドオーバタイミングが到来したものと判定されると(ST207でYes)、切り替え制御部38において、ハンドオーバ元の基地局装置2に、放送用素材データの無線伝送を終了させる(ST208)。このとき、移動局装置1ではチャネルを切り替える必要はない。これにより、制御局装置3でのハンドオーバ制御が終了し、ハンドオーバ先の基地局装置2のみと移動局装置1との間で放送用素材データの無線伝送が行われる。
一方、ハンドオーバ元およびハンドオーバ先の2つの基地局装置2で共通する空きチャネルがない場合には(ST203でNo)、干渉測定指示部36において、2つの基地局装置2に対して、他の通信システムとの干渉を分割チャネルごとに測定する分割チャネル別干渉測定を指示する(ST209)。
そして、チャネル選択部37において、ハンドオーバ元およびハンドオーバ先の2つの基地局装置2から分割チャネル別干渉測定結果を取得して、その2つの基地局装置2の分割チャネル別干渉測定結果の論理積(AND)を求める(ST210)。そして、その分割チャネル別干渉測定結果の論理積に基づいて、2つの基地局装置2で共通する空き分割チャネルが十分にある場合には(ST211でYes)、その空き分割チャネルの中から利用する空き分割チャネルを選択する(ST212)。
ついで、切り替え制御部38において、ハンドオーバ元およびハンドオーバ先の2つの基地局装置2および移動局装置1に、チャネル選択部37で選択された空き分割チャネルへの切り替えを指示して、その空き分割チャネルを利用した放送用素材データの無線伝送を開始させる(ST213)。
これにより、2つの基地局装置2では、移動局装置1から送信される放送用素材データを同時に受信し、その受信した放送用素材データが制御局装置3に送信され、制御局装置3のダイバーシチ合成部35において、2つの基地局装置2から受信した放送用素材データに対してダイバーシチ合成を行う(ST214)。このダイバーシチ合成は、通信状態監視部33においてハンドオーバタイミングが到来したものと判定されるまで(ST215でYes)、継続される。
そして、通信状態監視部33においてハンドオーバタイミングが到来したものと判定されると(ST215でYes)、切り替え制御部38において、ハンドオーバ元の基地局装置2に、放送用素材データの無線伝送を終了させる(ST208)。このとき、移動局装置1では分割チャネルを切り替える必要はない。
一方、ハンドオーバ元およびハンドオーバ先の2つの基地局装置2で共通する空き分割チャネルが十分にない場合には(ST211でNo)、チャネル選択部37において、ハンドオーバ先の基地局装置2の空きチャネルを選択して(ST216)、その空きチャネルをハンドオーバ先の基地局装置2および移動局装置1に通知する(ST217)。
そして、通信状態監視部33においてハンドオーバタイミングが到来したものと判定されると(ST218でYes)、切り替え制御部38において、事前に通知した空きチャネルへの切り替えを、ハンドオーバ先の基地局装置2および移動局装置1に指示して、その空きチャネルを利用した放送用素材データの無線伝送を開始させ(ST219)、また、ハンドオーバ元の基地局装置2に、放送用素材データの無線伝送を終了させる(ST208)。
(第2実施形態)
次に、第2実施形態について説明する。なお、ここで特に言及しない点は前記の実施形態と同様である。
図8は、第2実施形態において制御局装置3のハンドオーバ制御部34で行われる分割チャネル制御の概要を説明する説明図である。
第1実施形態では、図5(B)に示したように、ハンドオーバ元およびハンドオーバ先の2つの基地局装置2で共通する空き分割チャネルが十分にない、すなわち、共通する空き分割チャネルがあるものの、通信量に見合うチャネル数を確保することができない場合に、ハードハンドオーバ的な動作を行わせるようにしたが、この第2実施形態では、共通する空き分割チャネルを利用して、部分的にソフトハンドオーバ的な動作を行わせるようにする。
すなわち、ハンドオーバ元およびハンドオーバ先の2つの基地局装置2で共通する空き分割チャネルを利用するとともに、不足分は2つの基地局装置2で共通しない空き分割チャネルを利用する。図8に示す例は、4つの空き分割チャネルで所要の通信量を確保することができる場合であり、2つの基地局装置2で共通する空き分割チャネルが3つしかなく、不足分は、2つの基地局装置2で共通しない分割チャネルを1つずつ利用する。
そして、2つの基地局装置2で共通する空き分割チャネルではソフトハンドオーバ的な動作を行わせ、2つの基地局装置2で共通しない空き分割チャネルではハードハンドオーバ的な動作を行わせる。
次に、第2実施形態において制御局装置3で行われる処理の手順について説明する。図9は、第2実施形態において制御局装置3で行われる処理の手順の要部を示すフロー図である。この図9では、図7に示した第1実施形態と異なる要部のみを示す。
この第2実施形態では、ハンドオーバ元およびハンドオーバ先の2つの基地局装置2で共通する空き分割チャネルが十分にない場合に(ST211でNo)、チャネル選択部37において、2つの基地局装置2で共通する空き分割チャネルを選択するとともに、不足分の分割チャネルを、2つの基地局装置2で共通しない空き分割チャネルの中から選択する(ST301)。そして、共通しない空き分割チャネルをハンドオーバ先の基地局装置2および移動局装置1に通知する(ST302)。
また、切り替え制御部38において、ハンドオーバ元およびハンドオーバ先の2つの基地局装置2および移動局装置1に、チャネル選択部37で選択された空き分割チャネルへの切り替えを指示して、その空き分割チャネルを利用した放送用素材データの無線伝送を開始させる(ST303)。
これにより、2つの基地局装置2では、移動局装置1から送信される放送用素材データを同時に受信し、その受信した放送用素材データが制御局装置3に送信され、制御局装置3のダイバーシチ合成部35において、2つの基地局装置2から受信した放送用素材データに対してダイバーシチ合成を行う(ST304)。このダイバーシチ合成は、通信状態監視部33においてハンドオーバタイミングが到来したものと判定されるまで(ST305でYes)、継続される。
そして、通信状態監視部33においてハンドオーバタイミングが到来したものと判定されると(ST305でYes)、切り替え制御部38において、事前に通知した空き分割チャネルへの切り替えを、ハンドオーバ先の基地局装置2および移動局装置1に指示して、その空き分割チャネルを利用した放送用素材データの無線伝送を開始させ(ST306)、また、ハンドオーバ元の基地局装置2に、放送用素材データの無線伝送を終了させる(ST208)。
なお、図4に示したように、空きチャネルを選択する際に、2つの基地局装置2で共通する空きチャネルが十分にない、すなわち、共通する空きチャネルがあるものの、通信量に見合うチャネル数を確保することができない場合、例えば、2つのチャネルを確保する必要があるのに、共通する空きチャネルが1つしかない場合に、この第2実施形態と同様に、2つの基地局装置2で共通する空きチャネルを利用するとともに、不足分は2つの基地局装置2で共通しない空きチャネルを利用して、部分的にソフトハンドオーバ的な動作を行わせるようにしてもよい。
以上、本発明を特定の実施形態に基づいて説明したが、これらの実施形態はあくまでも例示であって、本発明はこれらの実施形態によって限定されるものではない。また、上記実施形態に示した本発明に係る移動通信システムおよびハンドオーバ制御方法の各構成要素は、必ずしも全てが必須ではなく、少なくとも本発明の範囲を逸脱しない限りにおいて適宜取捨選択することが可能である。
例えば、本実施形態では、複数の基地局装置2間のハンドオーバを制御する制御局装置3を、基地局装置2から離れた遠隔地に設置して、IP網などのネットワークを介して基地局装置2と接続するようにしたが、制御局装置3を複数の基地局装置2の各々に併設して、ハンドオーバ元およびハンドオーバ先の各基地局装置2に併設された制御局装置3で、ハンドオーバを制御するようにしてもよい。
また、本実施形態では、ハンドオーバ制御で、チャネル制御および分割チャネル制御を段階的に実施する、すなわち、最初にチャネル別干渉測定に実施し、ハンドオーバ元およびハンドオーバ先の2つの基地局装置2で共通する空きチャネルが見つからない場合に、分割チャネル制御に移行するようにしたが、最初から分割チャネル制御を実施するようにしてもよい。もっとも、空きチャネルが見つからない場合はさほど多くはなく、制御局装置3の負荷を軽減する上では、チャネル制御および分割チャネル制御を段階的に実施する方が望ましい。