JP6516645B2 - レーダ装置 - Google Patents
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Description
例えば、アンテナ正面方向(開口面の法線方向)が0度のアレーアンテナ、90度のアレーアンテナ、180度のアレーアンテナ、270度のアレーアンテナを用意している場合、4個の信号処理部を実装している。
なお、デジタルビームフォーミングによるアレーアンテナのビーム指向方位がアンテナ正面方向であるときに、アレーアンテナの利得が最大(信号の受信電力が最大)となるように、アレーアンテナが設置されるのが一般的である。
図1はこの発明の実施の形態1によるレーダ装置を示す構成図であり、図2はこの発明の実施の形態1によるレーダ装置のデジタル信号処理部5を示すハードウェア構成図である。
図1の例では、説明の便宜上、紙面左方向を0度、紙面上方向を90度、紙面右方向を180度としている。
図1及び図2において、アレーアンテナ1はN個(Nは2以上の整数)の素子アンテナ1aから構成されており、開口面が45度の方向に向けられている。
アレーアンテナ1のビーム指向方位は、デジタルビームフォーミングの実行によって制御され、アレーアンテナ1によって目標を観測することが可能な角度覆域(角度領域)は、素子アンテナ1aの個数や配置などによって異なるが、例えば、−15〜105度の範囲などが想定される。
ただし、アレーアンテナ1の2つの開口方位端では利得が低下するため、観測対象の目標を観測する上で必要十分な利得が得られる範囲は、概ね10〜80度の範囲に制限される。目標を観測する上で必要十分な利得が得られる範囲についても、素子アンテナ1aの配置や個数などで変化するとともに、後段のデジタル信号処理部5による目標の検出性能によって変化する。
アレーアンテナ1の利得が低下して、目標を観測する上で必要十分な利得が得られない場合、SNRの低下が起こる。このため、単体のアレーアンテナ1の受信信号を用いるだけでは、アレーアンテナ1の開口方位端付近に存在している目標を検出することができない場合もある。
アレーアンテナ2のビーム指向方位は、デジタルビームフォーミングの実行によって制御され、アレーアンテナ2によって目標を観測することが可能な角度覆域は、素子アンテナ2aの個数や配置などによって異なるが、例えば、75〜195度の範囲などが想定される。
ただし、アレーアンテナ2の2つの開口方位端では利得が低下するため、観測対象の目標を観測する上で必要十分な利得が得られる範囲は、概ね100〜170度の範囲に制限される。目標を観測する上で必要十分な利得が得られる範囲についても、素子アンテナ2aの配置や個数などで変化するとともに、後段のデジタル信号処理部5による目標の検出性能によって変化する。
アレーアンテナ2の利得が低下して、目標を観測する上で必要十分な利得が得られない場合、SNRの低下が起こる。このため、単体のアレーアンテナ2の受信信号を用いるだけでは、アレーアンテナ2の開口方位端付近に存在している目標を検出することができない場合もある。
この実施の形態1では、アレーアンテナ1,2の開口方位端の角度領域である80〜100度の範囲でも、目標を観測する上で必要十分な利得が得られるレーダ装置を例示する。
以下、アレーアンテナ1による目標観測で必要十分な利得が得られる範囲を観測可能角度領域(1)と称し、アレーアンテナ1の観測可能角度領域(1)は10〜80度の範囲である。
また、アレーアンテナ2による目標観測で必要十分な利得が得られる範囲を観測可能角度領域(2)と称し、アレーアンテナ2の観測可能角度領域(2)は100〜170度の範囲である。
また、観測可能角度領域(1)と観測可能角度領域(2)の間の領域を観測可能角度領域(3)と称し、観測可能角度領域(3)は80〜100度の範囲である。
アナログデジタル変換器(以下、「AD変換器」と称する)4はアレーアンテナ2を構成している素子アンテナ2a毎に設けられており、当該素子アンテナ2aのアナログの受信信号をデジタル信号に変換し、そのデジタル信号をデジタル信号処理部5の信号処理部12,13に出力する。
即ち、信号処理部11は複数のAD変換器3により変換されたデジタル信号を用いるデジタルビームフォーミングを実行することでマルチビームを形成して、そのマルチビームから目標に対応するビームを検出し、その検出したビームの角度範囲内でビームフォーマ測角を実施することで、観測対象の目標を測角する処理を実施する。
即ち、信号処理部12は複数のAD変換器4により変換されたデジタル信号を用いるデジタルビームフォーミングを実行することでマルチビームを形成して、そのマルチビームから目標に対応するビームを検出し、その検出したビームの角度範囲内でビームフォーマ測角を実施することで、観測対象の目標を測角する処理を実施する。
即ち、信号処理部13は複数のAD変換器3,4により変換されたデジタル信号を用いるデジタルビームフォーミングを実行することでマルチビームを形成して、そのマルチビームから目標に対応するビームを検出し、その検出したビームの角度範囲内でビームフォーマ測角を実施することで、観測対象の目標を測角する処理を実施する。
なお、制御部14が、観測対象の目標が存在している可能性が高い観測可能角度領域を判断する処理については、どのような処理でもよいが、例えば、図示せぬ追尾装置により推定された目標の推定位置を取得することで判断することができる。あるいは、デジタル信号処理部5による過去複数回の目標の検出結果から判断することもできる。
図3はデジタル信号処理部5がコンピュータで構成されている場合のハードウェア構成図である。
デジタル信号処理部5がコンピュータで構成されている場合、信号処理部11〜13及び制御部14の処理内容を記述しているプログラムをコンピュータのメモリ31に格納し、コンピュータのプロセッサ32がメモリ31に格納されているプログラムを実行するようにすればよい。
図4はデジタル信号処理部5を構成している信号処理部11〜13及び制御部14の処理内容を示すフローチャートである。
この実施の形態1では、アレーアンテナ1の観測可能角度領域(1)が10〜80度の範囲、アレーアンテナ2の観測可能角度領域(2)が100〜170度の範囲、観測可能角度領域(1)と観測可能角度領域(2)の間の領域内である観測可能角度領域(3)が80〜100度の範囲である例を説明するが、観測可能角度領域(3)において、アレーアンテナ1の受信信号又はアレーアンテナ2の受信信号だけを用いる場合の利得よりも、2つのアレーアンテナ1,2の受信信号を用いる場合の利得を高めて、目標を観測する上で必要十分な利得を得るには、下記の式(1)(2)の条件を満足するように、観測可能角度領域(3)の範囲を設定する必要がある。
式(1)(2)において、G1(θ1)はアレーアンテナ1における角度θ1での利得、G2(θ2)はアレーアンテナ2における角度θ2での利得、εは任意の所望の利得を示す設定値である。
一方、アレーアンテナ2の開口の正面方向から離れて、アレーアンテナ1の開口の正面方向に近づく角度ほど、アレーアンテナ2の利得が低下して、アレーアンテナ1の利得が高くなる。
このとき、2つのアレーアンテナ1,2の受信信号を用いる場合の利得は、一方のアレーアンテナ1(またはアレーアンテナ2)の利得が極端に低下している状況下では、他方のアレーアンテナ2(またはアレーアンテナ1)の利得が高くても、高めることができない。
つまり、一方のアレーアンテナ1(またはアレーアンテナ2)の利得と、他方のアレーアンテナ2(またはアレーアンテナ1)の利得とが極端に低下しておらず、ある程度の利得を持っている場合に、利得を高めることができる。
図1では、アレーアンテナの個数が2個であるため、アレーアンテナ1における一方の開口方位端の角度領域である−15〜10度の範囲での利得と、アレーアンテナ2における一方の開口方位端の角度領域である170〜195度の範囲での利得とを高めることができず、これらの範囲を観測可能角度領域(1)(2)から除外している例を示している。
しかし、上記の例では、利得が小さく目標の検出精度が低いものとなるが、−15〜10度の範囲でも、アレーアンテナ1によって目標を観測することが可能であるため、例えば、0〜10度の範囲を観測可能角度領域(1)に含めて、0〜80度の範囲を観測可能角度領域(1)としてもよい。
同様に、上記の例では、利得が小さく目標の検出精度が低いものとなるが、170〜195度の範囲でも、アレーアンテナ2によって目標を観測することが可能であるため、例えば、170〜180度の範囲を観測可能角度領域(2)に含めて、100〜180度の範囲を観測可能角度領域(2)としてもよい。
なお、アレーアンテナの個数を増やせば、−15〜10度の範囲や170〜195度の範囲でも、観測可能角度領域(3)と同様に、利得を高めることができる。
また、開口面が135度の方向に向けられているアレーアンテナ2は、M個(Mは2以上の整数)の素子アンテナ2aから構成されており、M個の素子アンテナ2aにより受信された信号であるアナログの受信信号のそれぞれが対応しているAD変換器4に出力される。
ここでは、アレーアンテナ1を構成している素子アンテナ1aの個数がN個で、アレーアンテナ2を構成している素子アンテナ2aの個数がM個である例を示しているが、素子アンテナ1aの個数と素子アンテナ2aの個数は、同一であってもよいし、異なっていてもよい。
このとき、送信アンテナは、アレーアンテナ1,2と別個のアンテナであってもよいが、アレーアンテナ1又はアレーアンテナ2のいずれかが送信アンテナを兼ねているものであってもよい。あるいは、アレーアンテナ1,2の双方が送信アンテナを兼ねているものであってもよい。
M個のAD変換器4は、対応している素子アンテナ2aからアナログの受信信号を受けると、そのアナログの受信信号をデジタル信号に変換し、そのデジタル信号をデジタル信号処理部5の信号処理部12,13に出力する。
あるいは、デジタル信号処理部5による過去複数回の目標の検出結果から、観測対象の目標の移動方向と速度を把握することで、現在、観測対象の目標が存在している可能性が高い観測可能角度領域を特定する。
制御部14は、観測可能角度領域(2)内に観測対象の目標が存在している可能性が高ければ(ステップST4:YESの場合)、信号処理部12に対して目標の検出処理の実行を指示する(ステップST5)。
制御部14は、観測可能角度領域(3)内に観測対象の目標が存在している可能性が高ければ(ステップST6:YESの場合)、信号処理部13に対して目標の検出処理の実行を指示する(ステップST7)。
なお、制御部14は、観測可能角度領域(1)〜(3)の中に、観測対象の目標が存在している可能性が高い領域がない場合、信号処理部11〜13のいずれにも、目標の検出処理の実行を指示しない。
ただし、観測対象の目標が存在している可能性が高い領域がない場合でも、観測対象の目標がいずれかの観測可能角度領域内に存在している可能性が少しでもあれば、全ての信号処理部11〜13に対して目標の検出処理の実行を指示するようにしてもよい。
信号処理部12は、制御部14から目標の検出処理の実行指令を受けると、M個のAD変換器4により変換されたデジタル信号を用いるデジタルビームフォーミングを実行して観測対象の目標を検出する(ステップST9)。
信号処理部13は、制御部14から目標の検出処理の実行指令を受けると、N個のAD変換器3及びM個のAD変換器4により変換されたデジタル信号を用いるデジタルビームフォーミングを実行して観測対象の目標を検出する(ステップST10)。
ただし、観測対象の目標を検出することができればよいため、信号処理部11〜13が異なる処理方法で目標を検出するものであってもよい。
以下、代表的に、信号処理部13による目標の検出処理の具体例を説明する。
図5において、ビーム検出部41はN個のAD変換器3及びM個のAD変換器4により変換されたデジタル信号を用いるデジタルビームフォーミングを実行することでマルチビームを形成し、そのマルチビームから目標に対応するビームを検出する処理を実施する。
測角処理部42はビーム検出部41により検出されたビームの角度範囲内でビームフォーマ測角を実施することで、観測対象の目標を測角する処理を実施する。
図6では、AD変換器3及びAD変換器4の合計個数がK個(=N+M)、マルチビームを構成するビームの個数がG個である例を示しており、K個のデジタル信号xk(t)と、デジタル信号xk(t)に対する荷重wg,k(位相重み)と、G個のビーム信号yg(t)との関係を示している。
nk(t)はK個の素子アンテナ(素子アンテナ1a、素子アンテナ2a)に付加される受信機雑音である。
なお、マルチビームの形成処理自体は公知の技術であり、マルチビームの形成処理の詳細は、例えば、下記の非特許文献2に開示されている。
[非特許文献2]
「マルチビーム形成とサイクリックシフト処理を用いた到来方向推定アルゴリズム」
電子情報通信学会論文誌 2013/3 Vol.J95−B No.3 p.425−432
ビーム検出部41は、最も信号電力が大きいビーム信号yg(t)maxを検出すると、観測対象の目標に対応するビーム信号として、最も信号電力が大きいビーム信号yg(t)maxを測角処理部42に出力する。
なお、ビームフォーマ測角の測角処理は公知技術であり、ビームフォーマ測角の測角処理の詳細は、例えば、下記の非特許文献3に開示されている。
[非特許文献3]
菊間信良,アダプティブアンテナ技術,オーム社,2003,p.126−127
ビーム検出部41は、最も信号電力が大きいビーム信号yg(t)maxを検出すると、観測対象の目標に対応するビーム信号として、最も信号電力が大きいビーム信号yg(t)maxを測角処理部42に出力する。
測角処理部42がモノパルス測角を実施する場合、ビーム検出部41は、さらに、G個のビーム信号yg(t)から2個のアレーアンテナ1,2におけるアンテナビームの和パターンであるΣ信号と差パターンであるΔ信号を求め、そのΣ信号とΔ信号を測角処理部42に出力する。
測角処理部42は、ビーム検出部41から観測対象の目標に対応するビーム信号yg(t)maxを受けると、そのビーム信号yg(t)maxの角度範囲内で、ビーム検出部41から出力されたΣ信号とΔ信号を用いて、モノパルス測角を実施することで、観測対象の目標を測角し、その測角結果を目標情報として出力する。
なお、Σ信号及びΔ信号を求める処理や、モノパルス測角の測角処理は公知技術であり、これらの処理の詳細は、例えば、上記の非特許文献1のp.262−263に開示されている。
なお、MUSIC法やESPRIT法は、上記の非特許文献3のp.137−151に開示されている。
即ち、ビーム検出部41が、各AD変換器(AD変換器3、AD変換器4)により変換されたデジタル信号xk(t)(k=1,2,・・・,K)と、位相重みである荷重wg,kと、アレーアンテナ1とアレーアンテナ1,2のアンテナ利得差に対応する振幅重みとをそれぞれ乗算して、それぞれの乗算結果の総和を求めるようにしてもよい。
アンテナ利得差に対応する振幅重みをつけることで、振幅を制御する具体的な方法としては、例えば、以下の非特許文献4に開示されている最大比合成技術を用いることができる。
最大比合成技術は、アレーアンテナ1,2の各開口でのSNRの相対関係で振幅重みをつける手法であり、各開口でのSNRの相対関係は、ビーム形成方位に対するアレーアンテナ1,2の素子パターンの利得で計算することが可能である。
[非特許文献4]
電子情報通信学会編 アンテナ工学ハンドブック第2版 オーム社 2008 p454−454
上記実施の形態1では、アレーアンテナ1,2を構成している素子アンテナ1a,2a毎にAD変換器3,4が設けられているものを示したが、アレーアンテナ1,2を構成している素子アンテナ1a,2aがグループ分けされており、グループ毎にAD変換器3,4が設けられているようにしてもよい。
アレーアンテナ1を構成しているN個の素子アンテナ1aがグループ分けされており、混合器51は同一グループ内の素子アンテナ1aの受信信号を合成して、それら受信信号の合成信号をAD変換器3に出力する。
アレーアンテナ2を構成しているM個の素子アンテナ2aがグループ分けされており、混合器52は同一グループ内の素子アンテナ2aの受信信号を合成して、それら受信信号の合成信号をAD変換器4に出力する。
図7では、図面の簡単化のために、N個の素子アンテナ1a及びM個の素子アンテナ2aが2つのグループに分けられて、同一のグループに属する素子アンテナ1a,2aの個数が2個である例を示しているが、実際には、同一のグループに属する素子アンテナ1a,2aの個数が3個以上である場合が想定され、同一のグループに属する素子アンテナ1a,2aの個数が多くなれば、AD変換器3,4の削減数が増加するため、レーダ装置の構成の簡略化を図ることができる。
また、AD変換器4は、複数の混合器52から出力されたアナログの合成信号をデジタル信号に変換し、そのデジタル信号をデジタル信号処理部5の信号処理部12,13に出力する。
ただし、AD変換器3,4の個数を削減して、構成の簡略化を図ることができるため、信号処理部11〜13による目標の測角精度が、所望の測角精度より高ければ、有効であると言える。
図8及び図9において、横軸は信号処理部13の測角結果である目標の方位の推定値φ、縦軸は測角誤差の発生頻度を示している。
図8と図9を比較すると明らかなように、上記実施の形態1のレーダ装置よりも、この実施の形態2のレーダ装置の目標の測角精度が低下している。
この実施の形態2のレーダ装置では、同一グループ内の素子アンテナ1a,2aの受信信号を合成しているため、デジタルビームフォーミングに用いるデジタル信号xk(t)の個数が減少している。この結果、上記実施の形態1のレーダ装置よりも、アレーアンテナ1,2を構成している素子アンテナ1a,2aの間隔が等価的に広がっており、この間隔の広がりに起因するグレーティングローブの影響で、信号処理部13の測角結果にあいまいさ(偽像)が生じるために、目標の測角精度が低下している。目標の方位の推定値φが1つであれば、偽像が生じていないと考えられるが、目標の方位の推定値φが複数あれば、偽像が生じており、目標の方位の推定値φの数が多いほど、より多くの偽像が生じている。
この実施の形態2によれば、上記実施の形態1よりも、AD変換器3,4の個数を削減して、構成の簡略化を図ることができる効果が得られる。
上記実施の形態1,2では、信号処理部13がビーム検出部41と測角処理部42から構成されているものを示したが、信号処理部13が、後述するデジタルビームフォーミング部と目標検出部から構成されているものであってもよい。
第1のデジタルビームフォーミング部であるDBF部61はアレーアンテナ1を構成しているN個の素子アンテナ1aに対応しているAD変換器3により変換されたデジタル信号xn(t)(n=1,2,・・・,N)を用いるデジタルビームフォーミングを実行することでマルチビームを形成する処理を実施する。
第2のデジタルビームフォーミング部であるDBF部62はアレーアンテナ2を構成しているM個の素子アンテナ2aに対応しているAD変換器4により変換されたデジタル信号xm(t)(m=1,2,・・・,M)を用いるデジタルビームフォーミングを実行することでマルチビームを形成する処理を実施する。
目標検出部63はDBF部61,62によるデジタルビームフォーミングの実行結果、即ち、DBF部61,62により形成されたマルチビームから観測対象の目標を検出する処理を実施する。
信号処理部13の構成以外は、上記実施の形態1と同様であるため、ここでは、信号処理部13を構成しているDBF部61,62及び目標検出部63の処理内容だけを説明する。
即ち、DBF部61は、N個のAD変換器3により変換されたデジタル信号xn(t)(n=1,2,・・・,N)と位相重みである荷重wg,nとをそれぞれ乗算し、それぞれの乗算結果の総和を求めるデジタルビームフォーミングを実行することで、マルチビームを形成する。
DBF部62は、M個のAD変換器4により変換されたデジタル信号xm(t)(m=1,2,・・・,M)と位相重みである荷重wg,mとをそれぞれ乗算し、それぞれの乗算結果の総和を求めるデジタルビームフォーミングを実行することで、マルチビームを形成する。
目標検出部63は、合成後のマルチビームに含まれている複数のビームの信号電力と、予め設定されている基準電力とを比較し、複数のビームの中に、信号電力が基準電力より大きいビームがあれば、観測対象の目標が観測可能角度領域(3)に存在していると判定する。
一方、複数のビームの中に、信号電力が基準電力より大きいビームがなければ、観測対象の目標が観測可能角度領域(3)に存在していないと判定する。
ここで、基準電力は、目標に対応するビームの最小信号電力を想定して事前に設定された閾値である。
上記実施の形態1〜3では、信号処理部11〜13が観測対象の目標を検出するものを示したが、信号処理部11〜13による目標の検出結果を用いて、観測対象の目標を追尾するようにしてもよい。
また、図12はこの発明の実施の形態4によるレーダ装置のデジタル信号処理部5を示すハードウェア構成図であり、図12において、図2と同一符号は同一または相当部分を示すので説明を省略する。
誤差分布算出部71は例えばCPUを実装している半導体集積回路や、ワンチップマイコンなどで構成される誤差分布算出処理回路25で実現されるものであり、アレーアンテナ1を構成しているN個の素子アンテナ1a及びアレーアンテナ2を構成しているM個の素子アンテナ2aの配置と、アレーアンテナ1,2の受信信号のSNR(信号対雑音比)とから、目標が存在している方位の誤差分布を算出する処理を実施する。
デジタル信号処理部5がコンピュータで構成されている場合、信号処理部11〜13、制御部14、誤差分布算出部71及び目標追尾部72の処理内容を記述しているプログラムを図3に示すコンピュータのメモリ31に格納し、図3に示すコンピュータのプロセッサ32がメモリ31に格納されているプログラムを実行するようにすればよい。
ただし、誤差分布算出部71及び目標追尾部72以外は、上記実施の形態1と同様であるため、ここでは、誤差分布算出部71及び目標追尾部72の処理内容だけを説明する。
そこで、この実施の形態4では、偽像を除去して、アレーアンテナ1,2の開口方位端の角度領域である観測可能角度領域(3)でのレーダの性能劣化を抑圧するとともに、レーダの空間分解能の向上及び測角精度の向上効果を図ることを目的とする。
具体的には、誤差分布算出部71は、下記の式(4)に示すように、誤差分布中の各分布(a番目の分布)が測角結果となる頻度を示す確率密度関数p(a)を計算する。ただし、式(4)では、アレーアンテナ1を構成している素子アンテナ1aの個数とアレーアンテナ2を構成している素子アンテナ2aの個数が共にH個(H=N=M)である例を示している。
式(4)において、λは波長、Dはアレーアンテナ1の開口とアレーアンテナ2の開口との間での位相中心の間隔、dはアレーアンテナ1(アレーアンテナ2)を構成している複数の素子アンテナ1a(素子アンテナ2a)の設置間隔である。
目標の測角結果に偽像が含まれている場合の目標の追尾処理は、例えば、下記の非特許文献5に開示されており、目標追尾部72は、下記の非特許文献5に開示されている目標の追尾処理を実施することで、観測対象の目標を追尾する。
目標追尾部72による目標の追尾結果は、外部出力されるほか、制御部14に与えられ、制御部14は、目標の追尾結果を用いて、観測対象の目標が存在している可能性が高い観測可能角度領域を判定し、信号処理部11〜13のうち、その観測可能角度領域に対応する信号処理部に対して目標の検出処理の実行を指示する。
[非特許文献5]
K. Li, et al., “Multitarget Tracking with Doppler Ambiguity,” IEEE Trans. on AES, vol.49, no.4, Oct. 2013.
上記実施の形態1〜4では、2つのアレーアンテナ1,2を有するレーダ装置を説明したが、レーダ装置が3つ以上のアレーアンテナを有するものであってもよい。
レーダ装置が有するアレーアンテナの個数が増えれば、その分だけ、各アレーアンテナの開口方位端でのレーダの性能劣化を抑圧することができるとともに、レーダの空間分解能の向上及び測角精度の向上効果を図ることができる。
図13において、アレーアンテナ101〜103は、図1のアレーアンテナ1,2と同様に複数の素子アンテナから構成されている。
例えば、アレーアンテナ101のアンテナ正面方向を基準方向とすると、アレーアンテナ102のアンテナ正面方向が基準方向から+120度の方向にずれており、また、アレーアンテナ103のアンテナ正面方向が基準方向から+240度の方向にずれている。
具体的には、アレーアンテナ101のアンテナ正面方向が30度であれば、アレーアンテナ102のアンテナ正面方向が150度、アレーアンテナ103のアンテナ正面方向が270度となる。
そして、観測可能角度領域(1)と観測可能角度領域(2)の間の領域である観測可能角度領域(4)が70〜110度の範囲、観測可能角度領域(2)と観測可能角度領域(3)の間の領域である観測可能角度領域(5)が190〜230度の範囲、観測可能角度領域(3)と観測可能角度領域(1)の間の領域である観測可能角度領域(6)が310〜350度の範囲となる。
ただし、観測可能角度領域(1)〜(6)の範囲については、上記実施の形態1と同様に、式(1)(2)の条件を満足するように設定される。即ち、観測可能角度領域(4)〜(6)において、単一のアレーアンテナの受信信号を用いる場合よりも利得を高めて、目標を観測する上で必要十分な利得が得られるように、式(1)(2)の条件を満足する範囲に設定される。
また、アレーアンテナ101〜103に対応する3個の信号処理部が設けられており、これらの信号処理部は、図1の信号処理部11,12と同様に、対応しているアレーアンテナ101〜103に係るAD変換器により変換されたデジタル信号を用いるデジタルビームフォーミングを実行して観測対象の目標を検出する。
即ち、観測可能角度領域(4)に対応する信号処理部は、アレーアンテナ101に係るAD変換器により変換されたデジタル信号とアレーアンテナ102に係るAD変換器により変換されたデジタル信号の全てを用いるデジタルビームフォーミングを実行して観測対象の目標を検出する。
観測可能角度領域(5)に対応する信号処理部は、アレーアンテナ102に係るAD変換器により変換されたデジタル信号とアレーアンテナ103に係るAD変換器により変換されたデジタル信号の全てを用いるデジタルビームフォーミングを実行して観測対象の目標を検出する。
観測可能角度領域(6)に対応する信号処理部は、アレーアンテナ103に係るAD変換器により変換されたデジタル信号とアレーアンテナ101に係るAD変換器により変換されたデジタル信号の全てを用いるデジタルビームフォーミングを実行して観測対象の目標を検出する。
図14において、アレーアンテナ101〜104は、図1のアレーアンテナ1,2と同様に複数の素子アンテナから構成されている。
例えば、アレーアンテナ101のアンテナ正面方向を基準方向とすると、アレーアンテナ102のアンテナ正面方向が基準方向から+90度の方向にずれており、アレーアンテナ103のアンテナ正面方向が基準方向から+180度の方向にずれている。また、アレーアンテナ104のアンテナ正面方向が基準方向から+270度の方向にずれている。
具体的には、アレーアンテナ101のアンテナ正面方向が45度であれば、アレーアンテナ102のアンテナ正面方向が135度、アレーアンテナ103のアンテナ正面方向が225度、アレーアンテナ104のアンテナ正面方向が315度となる。
そして、観測可能角度領域(1)と観測可能角度領域(2)の間の領域である観測可能角度領域(5)が75〜105度の範囲、観測可能角度領域(2)と観測可能角度領域(3)の間の領域である観測可能角度領域(6)が165〜195度の範囲、観測可能角度領域(3)と観測可能角度領域(4)の間の領域である観測可能角度領域(7)が255〜285度の範囲、観測可能角度領域(4)と観測可能角度領域(1)の間の領域である観測可能角度領域(8)が345〜15度の範囲となる。
ただし、観測可能角度領域(1)〜(8)の範囲については、上記実施の形態1と同様に、式(1)(2)の条件を満足するように設定される。即ち、観測可能角度領域(5)〜(8)において、単一のアレーアンテナの受信信号を用いる場合よりも利得を高めて、目標を観測する上で必要十分な利得が得られるように、式(1)(2)の条件を満足する範囲に設定される。
また、アレーアンテナ101〜104に対応する4個の信号処理部が設けられており、これらの信号処理部は、図1の信号処理部11,12と同様に、対応しているアレーアンテナ101〜104に係るAD変換器により変換されたデジタル信号を用いるデジタルビームフォーミングを実行して観測対象の目標を検出する。
即ち、観測可能角度領域(5)に対応する信号処理部は、アレーアンテナ101に係るAD変換器により変換されたデジタル信号とアレーアンテナ102に係るAD変換器により変換されたデジタル信号の全てを用いるデジタルビームフォーミングを実行して観測対象の目標を検出する。
観測可能角度領域(6)に対応する信号処理部は、アレーアンテナ102に係るAD変換器により変換されたデジタル信号とアレーアンテナ103に係るAD変換器により変換されたデジタル信号の全てを用いるデジタルビームフォーミングを実行して観測対象の目標を検出する。
観測可能角度領域(7)に対応する信号処理部は、アレーアンテナ103に係るAD変換器により変換されたデジタル信号とアレーアンテナ104に係るAD変換器により変換されたデジタル信号の全てを用いるデジタルビームフォーミングを実行して観測対象の目標を検出する。
観測可能角度領域(8)に対応する信号処理部は、アレーアンテナ104に係るAD変換器により変換されたデジタル信号とアレーアンテナ101に係るAD変換器により変換されたデジタル信号の全てを用いるデジタルビームフォーミングを実行して観測対象の目標を検出する。
Claims (14)
- 開口面が互いに異なる方向に向けられている複数のアレーアンテナと、
前記アレーアンテナ毎に設けられており、当該アレーアンテナを構成している複数の素子アンテナの受信信号を用いて、当該アレーアンテナによって目標を観測することが可能な角度領域のうち、2つの開口方位端における角度領域の内側の領域である観測可能角度領域内に存在している目標を検出する複数の第1の信号処理部と、
前記複数のアレーアンテナのうち、いずれか2つのアレーアンテナを構成している複数の素子アンテナの受信信号を用いて、前記2つのアレーアンテナの観測可能角度領域の間の領域内に存在している目標を検出する1つ以上の第2の信号処理部と
を備え、
前記2つのアレーアンテナの観測可能角度領域の間の領域は、当該2つのアレーアンテナのそれぞれのアレーアンテナが前記目標を観測する上で必要十分な利得が得られない範囲が設定されている
レーダ装置。 - 前記複数のアレーアンテナのうち、いずれかのアレーアンテナの観測可能角度領域内に目標が存在している可能性があれば、当該アレーアンテナに対応している第1の信号処理部に対して目標の検出処理の実行を指示し、前記いずれか2つのアレーアンテナの観測可能角度領域の間の領域内に目標が存在している可能性があれば、前記2つのアレーアンテナに対応している第2の信号処理部に対して目標の検出処理の実行を指示する制御部を備えたことを特徴とする請求項1記載のレーダ装置。
- 前記アレーアンテナを構成している素子アンテナの受信信号をデジタル信号に変換する複数のアナログデジタル変換器が設けられており、
前記複数のアナログデジタル変換器により変換されたデジタル信号が、前記アレーアンテナに対応している第1及び第2の信号処理部に与えられることを特徴とする請求項1または請求項2記載のレーダ装置。 - 前記アレーアンテナを構成している複数の素子アンテナがグループ分けされており、同一グループ内の素子アンテナの受信信号を合成する複数の混合器と、
前記混合器により合成された受信信号をデジタル信号に変換する複数のアナログデジタル変換器とが設けられており、
前記複数のアナログデジタル変換器により変換されたデジタル信号が、前記アレーアンテナに対応している第1及び第2の信号処理部に与えられることを特徴とする請求項1または請求項2記載のレーダ装置。 - 前記第2の信号処理部は、
前記2つのアレーアンテナのうち、一方のアレーアンテナを構成している複数の素子アンテナの受信信号を用いるデジタルビームフォーミングを実行する第1のデジタルビームフォーミング部と、
前記2つのアレーアンテナのうち、他方のアレーアンテナを構成している複数の素子アンテナの受信信号を用いるデジタルビームフォーミングを実行する第2のデジタルビームフォーミング部と、
前記第1及び第2のデジタルビームフォーミング部によるデジタルビームフォーミングの実行結果から前記目標を検出する目標検出部とから構成されていることを特徴とする請求項1または請求項2記載のレーダ装置。 - 前記第1及び第2の信号処理部は、前記目標を検出する処理として、前記目標の測角処理を実施するものであり、
前記2つのアレーアンテナの受信信号の信号対雑音比を用いて、前記目標が存在している方位の誤差分布を算出する誤差分布算出部と、
前記第1の信号処理部又は前記第2の信号処理部による目標の測角結果と前記誤差分布算出部により算出された誤差分布とを用いて、前記目標を追尾する目標追尾部と
を備えたことを特徴とする請求項1または請求項2記載のレーダ装置。 - 前記誤差分布算出部は、前記2つのアレーアンテナを構成している複数の素子アンテナの配置と、前記2つのアレーアンテナの受信信号の信号対雑音比とから、前記目標が存在している方位の誤差分布を算出することを特徴とする請求項6記載のレーダ装置。
- 前記誤差分布算出部は、前記2つのアレーアンテナの受信信号の信号対雑音比と前記目標が存在している方位の誤差分布との対応関係を示すテーブルを備えており、前記テーブルから、前記2つのアレーアンテナの受信信号の信号対雑音比に対応する誤差分布を読み出して、前記誤差分布を前記目標追尾部に出力することを特徴とする請求項6記載のレーダ装置。
- 前記第2の信号処理部は、前記目標を検出する処理として、前記目標の測角処理を実施するものであり、
前記第2の信号処理部は、
前記複数のアナログデジタル変換器により変換されたデジタル信号を用いるデジタルビームフォーミングを実行することでマルチビームを形成して、前記マルチビームから前記目標に対応するビームを検出するビーム検出部と、
前記ビーム検出部により検出されたビームの角度範囲内でビームフォーマ測角を実施することで、前記目標を測角する測角処理部とから構成されていることを特徴とする請求項3または請求項4記載のレーダ装置。 - 前記第2の信号処理部は、前記目標を検出する処理として、前記目標の測角処理を実施するものであり、
前記第2の信号処理部は、
前記複数のアナログデジタル変換器により変換されたデジタル信号を用いるデジタルビームフォーミングを実行することでマルチビームを形成して、前記マルチビームから前記目標に対応するビームを検出するビーム検出部と、
前記ビーム検出部により検出されたビームの角度範囲内でモノパルス測角を実施することで、前記目標を測角する測角処理部とから構成されていることを特徴とする請求項3または請求項4記載のレーダ装置。 - 前記ビーム検出部は、前記2つのアレーアンテナのアンテナ利得差に対応する振幅重み及び位相重みを前記複数のアナログデジタル変換器により変換されたデジタル信号に付加し、前記振幅重み及び位相重み付加後のデジタル信号を用いるデジタルビームフォーミングを実行することを特徴とする請求項9または請求項10記載のレーダ装置。
- 前記第2の信号処理部は、前記目標を検出する処理として、前記2つのアレーアンテナの観測可能角度領域の間の領域の角度範囲内で、前記複数のアナログデジタル変換器により変換されたデジタル信号を用いるビームフォーマ測角を実施することで、前記目標を測角することを特徴とする請求項3または請求項4記載のレーダ装置。
- 前記複数のアレーアンテナの個数が4個であり、
4個のアレーアンテナの中の1つのアレーアンテナのアンテナ正面方向を基準方向とすると、残りの3個のアレーアンテナのアンテナ正面方向が、前記基準方向からそれぞれ90度、180度、270度の方向にずれていることを特徴とする請求項1から請求項12のうちのいずれか1項記載のレーダ装置。 - 前記複数のアレーアンテナの個数が3個であり、
3個のアレーアンテナの中の1つのアレーアンテナのアンテナ正面方向を基準方向とすると、残りの2個のアレーアンテナのアンテナ正面方向が、前記基準方向からそれぞれ120度、240度の方向にずれていることを特徴とする請求項1から請求項12のうちのいずれか1項記載のレーダ装置。
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