JP6516280B2 - iPS細胞の樹立方法および幹細胞の長期維持方法 - Google Patents

iPS細胞の樹立方法および幹細胞の長期維持方法 Download PDF

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Description

本発明は、人工多能性幹細胞(iPS細胞)の樹立方法ならびに幹細胞の未分化状態および分化多能性の長期維持方法に関する。詳細には、本発明は、フィーダー細胞を用いずに、無血清培養条件下でiPS細胞を誘導する方法、ならびに培地中に腫瘍増殖因子−β(TGF−β)を添加して幹細胞を継代培養することを特徴とする、幹細胞の未分化状態および分化多能性の長期維持方法に関する。
近年、発生生物学や再生医学研究、創薬・疾患研究の分野において、胚性幹細胞(embryonic stem cell : 以下ES細胞という)や人工多能性幹細胞(induced pluripotent stem cell :以下 iPS細胞という)が注目されている。幹細胞は自己複製能と多分化能を有する細胞であり、様々な細胞系列へと分化する能力を持つ。2006年に京都大学の山中らがマウスiPS細胞の樹立を報告して以来、受精卵を用いるという倫理問題の残るES細胞の代替手段として、大きな注目を浴びている。iPS細胞は誘導多能性幹細胞とも訳され、皮膚などの最終分化した細胞に、ウイルスやプラスミドベクター等を用いて初期化遺伝子(Oct3/4、Sox2、Klf4、c−Myc)を導入し、リプログラムさせることで、胚体外組織を除く、全ての細胞種への分化可能な万能細胞となる。
これら幹細胞は一般的に、血清あるいは動物由来成分を含む代替血清添加培地を用い、不活性化したマウス胎児線維芽細胞(Mouse Embryonic Fibroblast : MEF)といったフィーダー細胞をディッシュ上に増やし、それを支持細胞として培養されている。iPS細胞の継代前日までに、MEF細胞にあらかじめマイトマイシンC処理やγ線照射などを行い、増殖を抑えた(不活化した)フィーダー細胞を調整後、ゼラチンコートディッシュ上に播種し、フィーダー細胞がディッシュ上に十分接着伸展したのち、その上に、iPS細胞を播種し、共培養を行う。また、継代の際にはできるだけフィーダー細胞とES細胞やiPS細胞などの幹細胞を分離する必要がある。このように、幹細胞を培養するだけでなく、フィーダー細胞の調整も必要なため、大変煩雑な操作が必要である。また、iPS細胞に誘導される前の体性分化細胞(体細胞)も牛胎児血清、ヒト血清やヒト自己血清が添加された培地で培養されている。さらに、このような培養条件では、血清あるいは動物由来成分を含む代替血清中の未知の成分の存在や、病原体混入の可能性もあり、ロット差が大きく、常に一定条件での培養は難しい。また、用いるフィーダー細胞も、種類や処理の仕方、ロット差も大きく、幹細胞の状態がかなり左右されるため、安定した条件で幹細胞を培養することは不可能であった。
このように不定要素が多い条件で培養された幹細胞では、培地中に未知の因子が多く含まれるため、組織・臓器発生や再生などの、基礎研究の標準化が困難で、未分化性の維持に必要な増殖因子・分化誘導因子の機能を比較検討する事が難しい。また培地中に含まれる様々な成分の作用により、特定の細胞への分化誘導が難しく、さらには再生医療への臨床応用を考慮すると、未知因子や病原体などの危険因子の混入など安全性が問題となる。そこで、これらの要素を排除するため、組成の明らかな培養条件による培養法の標準化が必要である。特に、組成の明らかな無血清培地を用いるiPS細胞の製造方法の開発が望まれていた。
さらに、未分化状態および分化多能性を長期間にわたり保持したままiPS細胞などの幹細胞を継代・維持することも望まれていた。この点において、霊長類胚性幹細胞を未分化状態で維持するための培地組成について検討されている(特許文献1参照)。さらに、iPS細胞の未分化性を維持するために腫瘍(トランスフォーミング)増殖因子(TGF)を培地に添加することも行われている(非特許文献1参照)。しかしながら、特許文献1で用いられている無血清培地はTGFを含んでおらず、非特許文献1で用いられているのは血清含有培地であり、本発明とは異なる。
特表2009−542247号公報
Guokai Chen et al. Nature Methods, 2011 May; 8(5): 424-429
血清含有培地のような不定要素が多い条件で培養された幹細胞では、培地中に未知の因子が多く含まれるため、組織・臓器発生や再生などの、基礎研究の標準化が困難で、未分化性の維持に必要な増殖因子・分化誘導因子の機能を比較検討することが難しい。また培地中に含まれる様々な成分の作用により、特定の細胞への分化誘導が難しく、さらには再生医療への臨床応用を考慮すると、安全面から未知因子や病原体などの危険因子を排除する必要がある。そこで、これらの問題を解消するためには、組成が明らかで、危険因子を含まない培地を用いる培養法の確立および標準化が必要である。
したがって、本発明が解決すべき具体的課題は、不確定要素および危険因子を含まない条件でiPS細胞への誘導前の体細胞を培養し、かつ不確定要素および危険因子を含まない条件でiPS細胞を製造すること、さらにiPS細胞などの幹細胞を培養維持することであった。具体的には、本発明が解決すべき具体的課題は、体細胞を無血清培養条件下で培養し、フィーダー細胞を用いずに、無血清培養条件下でiPS細胞を製造すること、ならびにフィーダー細胞を用いずに、無血清培養条件下でiPS細胞などの幹細胞の未分化性および分化多能性を長期間維持できる培養法を提供することであった。
本発明者らは、上記課題を解決せんと鋭意研究を重ね、iPS細胞への誘導前の体細胞の無血清培養方法、および無血清培地中でフィーダー細胞を用いずに培養することによるiPS細胞の樹立方法を確立した。特に、フィブロネクチンを接着因子として用いることが好ましいことが判明した。本発明の方法によれば、ヒトiPS細胞の誘導効率は、従来法(血清添加培養条件)に比べて10倍以上となった。また本発明者らは、上記培養系において幹細胞の未分化性と多分化能を長期間継代後も維持可能とする細胞増殖因子としてTGF−βを同定した。これらのことに基づいて本発明が完成された。
したがって、本発明は、下記のものを提供する:
(1)リプログラミング処理を施した体細胞を、無血清培地中でフィーダー細胞を用いずに培養することにより人工多能性幹細胞(iPS細胞)を誘導することを特徴とする、iPS細胞の製造方法。
(2)フィブロネクチンを接着因子として用いる、(1)に記載の方法。
(3)体細胞のリプログラミング処理が無血清培地中で行われる、(1)または(2)に記載の方法。
(4)リプログラミング前の体細胞が初代培養から無血清培地中で培養されたものである、(1)〜(3)のいずれかに記載の方法。
(5)iPS細胞がヒトiPS細胞である(1)〜(4)のいずれかに記載の方法。
(6)フィブロネクチンを接着因子として含む、iPS細胞を誘導するための無血清培養基材(ただし該培養基材はフィーダー細胞を含まない)。
(7)無血清培地成分およびフィブロネクチンを構成成分として含む、iPS細胞を誘導するための無血清培養基材を製造するためのキット(ただし該培養基材はフィーダー細胞を含まない)。
(8)フィーダー細胞を用いずに、無血清培地中に腫瘍増殖因子−β(TGF−β)ファミリーに属する蛋白を添加して幹細胞を継代培養することを特徴とする、幹細胞の未分化状態および分化多能性を維持する方法。
(9)継代培養が、フィブロネクチンを接着因子として用いて行われる(8)に記載の方法。
(10)幹細胞がiPS細胞である(8)または(9)に記載の方法。
(11)(1)〜(5)のいずれかに記載の方法により得られたiPS細胞を、TGF−βファミリーに属する蛋白を添加した無血清培地において、フィーダー細胞を用いずに継代培養することを特徴とする、iPS細胞の未分化状態および分化多能性を維持する方法。
(12)TGF−βファミリーに属する蛋白を含む、幹細胞の未分化状態および分化多能性を維持するための継代培養用無血清培養基材(ただし該培養基材はフィーダー細胞を含まない)。
(13)さらにフィブロネクチンを接着因子として含む、(12)に記載の培養基材。
(14)幹細胞がiPS細胞である(12)または(13)に記載の培養基材。
(15)無血清培地成分およびTGF−βファミリーの蛋白を含む、幹細胞の未分化状態および分化多能性を維持するための継代培養用無血清培養基材を製造するためのキット(ただし該培養基材はフィーダー細胞を含まない)。
(16)さらにフィブロネクチンを接着因子として含む、(15)に記載のキット。
(17)幹細胞がiPS細胞である(15)または(16)に記載のキット。
本発明によれば、成分の明らかな無血清培地を用いて体細胞を培養し、フィーダー細胞を用いずに、成分の明らかな無血清培地を用いた培養環境下で、体細胞に山中4因子などの遺伝子導入および誘導を行い、iPS細胞を製造する方法、ならびにES細胞やiPS細胞などの幹細胞を、未分化状態および分化多能性を保持したまま維持・培養可能な培養基質材および培養液を用いた幹細胞の培養方法が提供される。本発明のiPS細胞の製造方法によれば、血清含有培地を用いる従来法に比べて10倍以上の効率でiPS細胞を誘導できることがわかった。
したがって、本発明において高い効率でiPS細胞を誘導することができる。そして長期間にわたって幹細胞の未分化状態および分化多能性を維持することができる。しかも培地中には未知の因子が殆ど存在せず、組織・臓器発生や再生などの、基礎研究の標準化が容易で、未分化性の維持に必要な増殖因子・分化誘導因子の機能を比較検討することも容易である。また本発明においては、培地中に含まれる成分の種類が比較的少なく既知であるから、特定の細胞への分化誘導が容易であり、再生医療への臨床応用を考慮すると安全性が高い細胞が得られる。
図1は、無血清培地hESF9を用いて各種細胞外マトリックス上で誘導したTIG−3細胞由来hiPS細胞の形態を示す顕微鏡像である。 図1Aは、無血清培地を用いてヒトiPS細胞を誘導する際の接着因子の影響を検討した結果を示す。 図1Bは、無血清培地hESF9を用いて、各細胞外マトリックス上に播種2日後のヒトiPS細胞(hiPS細胞)形態を示す。 図1Cは、各細胞外マトリックス上のhiPS細胞のALP染色像(感染36日後)である。図1A〜Cのスケールバーは200μmである。 図2は、誘導後の各種細胞外マトリックス上での細胞形態を示す顕微鏡像である。 上段は、各種細胞外マトリックス上にて誘導したTIG−3細胞由来ヒトiPS細胞のコロニー回収前の細胞形態像である。 下段は、無血清培地hESF9を用いて、各細胞外マトリックス上に播種後の細胞形態像である。スケールバーは200μmである。 図3は、ウイルス感染成立時における無血清培養条件の検討結果を示す顕微鏡像およびウイルス感染効率を示すグラフである。EGFPを用いたPLAT−AへのトランスフェクションおよびTIG−3細胞への感染結果を示す。 上段は、DMEM培地に10%FBSを加えた血清培養条件(左)あるいはhESF9無血清培養条件(右)の各条件にてpMXs−(EGFP)遺伝子導入した2日後の細胞形態を示す。 下段は、TIG−3細胞へのウイルス感染効率を示す。スケールバーは200μmである。 図4は、フィーダー細胞を用いない無血清培養条件下での、歯髄由来細胞を用いたhiPS細胞の誘導を示すスキームおよび顕微鏡像である。 図4Aは、hiPS細胞誘導までの概略を示すスキームである。 Day −7〜0 :無血清培地RD6Fを用いたタイプIコラーゲンコートディッシュ上での歯髄細胞の初代培養。 Day 0〜4:無血清培地hESF9を使用した、レトロウイルス感染による初期化遺伝子導入(Oct3/4,Sox2,KLF−4,c−Myc)。 Day 5: 無血清培地hESF9培地を用いたフィブロネクチンコートディッシュ上でのヒトiPS細胞誘導。 Day6〜30: 隔日での培地交換。 図4Bは、初期化遺伝子導入前の無血清培地RD6Fでの歯髄細胞の位相差顕微鏡像である。 図4Cは、無血清培地RD6Fを用いてタイプIコラーゲンコートディッシュ上で4継代した歯髄細胞の位相差顕微鏡像である。図4Dは、感染43日後のALP染色像である。スケールバーは200μmである。 図5は、フィーダー細胞を用いないで、無血清培地hESF9を用いた培養条件下で歯髄由来細胞から誘導したヒトiPS細胞の特性を解析した結果を示す。 図5Aは、無血清培地hESF9あるいはhESF9T培地(hESF9にTGF−β1を加えた無血清培地)で維持したヒトiPS細胞の位相差像である。 DP−A−iPS−CL1:無血清培地hESF9を使用し、フィブロネクチンコートディッシュ上で2代(passage 2)あるいは21代維持(passage 21)した細胞の位相差像。なお、右側はヒトES細胞用血清添加培地を使用しフィーダー細胞上で5代維持(passage 5)した細胞の位相差像を示す。 DP−F−iPS−CL4、−CL6、−CL16:無血清培地hESF9Tを使用し、フィブロネクチンコートディッシュ上で58代(passage 58)、59代(passage 59)あるいは21代維持(passage 21)した細胞の位相差像。なお、右側はヒトES細胞用血清添加培地を使用し、フィーダー細胞上で19代維持(passage 19)した細胞(CL31)の位相差像を示す。 スケールバーは200μmである。 図5Bは、無血清培地hESF9あるいはhESF9Tを用いてフィブロネクチンコートディッシュ上で長期継代・維持した細胞を用いて、未分化マーカーであるOct3/4およびSSEA−4に対する各抗体を用いてフローサイトメトリーによる解析を行った結果を示す。 図5Cは、網羅的遺伝子発現解析結果を示す。マイクロアレイを用いたクラスター解析を行った。DP cell(歯髄細胞)、無血清培地hESF9あるいはhESF9Tを使用しフィブロネクチンコートディッシュ上で維持したDP−iPS細胞(歯髄細胞由来ヒトiPS細胞)、ヒトES細胞用血清添加培地を用いてフィーダー細胞上で維持したヒトiPS細胞(Tic)について解析を行った。図中のレーン1〜7は以下のとおり。1. DP cell (DP-A) : passage 2 = before infection 2. DP cell (DP-F) : passage 4 = before infection 3. DP-A-iPS-CL1: passage 14 = serum-free condition (hESF9/on FN)4. DP-F-iPS-CL12: passage 36 = KSR-based condition (KSR/on MEF)5. DP-F-iPS-CL6: passage 37 = serum-free condition (hESF9T/on FN)6. DP-F-iPS-CL8: passage 35 = serum-free condition (hESF9T/on FN)7. Tic (hiPSC : JCRB1331): passage 58 = KSR-based condition (KSR/on MEF) 図6は、網羅的遺伝子発現解析(scatter plot解析)の結果を示す。 図7は、無血清培養条件におけるTGF−β1の影響を調べた結果を示す。 図7Aは、各種濃度のTGF−β1(0,0.1,1,2,5,10ng/ml)添加時の細胞形態を示す。 図7Bは、Droplet Digital-PCRを用いたTGF−β1添加時におけるヒトiPS細胞の遺伝子発現解析の結果を示す。各発現強度はGAPDHにて補正した。 図7Cは、無血清培養条件下にて誘導・維持したヒトiPS細胞の未分化マーカー遺伝子発現解析の結果を示す。#1 : DP cell (DP-A) : passage 2 = before infection #2 : DP cell (DP-F) : passage 4 = before infection #3 : DP-A-iPS-CL1: passage 14 = serum-free condition (hESF9/on FN)#4 : DP-F-iPS-CL4: passage 37 = serum-free condition (hESF9T/on FN)#5 : DP-F-iPS-CL6: passage 35 = serum-free condition (hESF9T/on FN)#6 : DP-F-iPS-CL8: passage 35 = serum-free condition (hESF9T/on FN)#7 : DP-A-iPS-CL1: passage 8 = KSR-based condition (KSR/on MEF)#8 : DP-F-iPS-CL12: passage 36 = KSR-based condition (KSR/on MEF) #9 : Tic (hiPSC : JCRB1331): passage 103 = KSR-based condition (KSR/on MEF) 図7Dは、無血清培養条件下にて誘導し、hESF9T培地にて継代・維持したヒトiPS細胞の未分化マーカー蛋白の発現解析の結果を示す。 スケールバーは100μmである。 図8は、無血清培養条件下にて誘導・維持したヒトiPS細胞の分化多能性解析の結果を示す。 図8Aは各種分化マーカー発現の検討結果を示す。 図8Bはテラトーマ形成能の検討結果を示す。 スケールバーは100μmである。 図9は、細胞増殖能および核型解析の結果を示す。 図9Aは、無血清培養条件にて誘導し、hESF9Tにて21代継代・維持したヒトiPS細胞の細胞倍加時間(population doubling time)を調べた結果を示す。 図9Bは、無血清培養条件にて誘導し、無血清培地hESF9Tにて20代継代維持したヒトiPS細胞の核型簡易解析を行った結果を示す。 図10は、無血清培養条件を用いたヒトiPS細胞の継代・維持における普遍性の検討結果を示す。スケールバーは200μmである。図10上段はhESF9T培地を用いてフィブロネクチン上で維持したヒトiPS細胞の位相差顕微鏡像を示す。また下段はDF8T培地を用いてフィブロネクチン上で維持したヒトiPS細胞の位相差顕微鏡像を示す。両無血清培地においてもヒトES細胞様の形態を維持していることが示される。
本発明は、第1の態様において、リプログラミング処理を施した体細胞を、無血清培地中でフィーダー細胞を用いずに培養することにより人工多能性幹細胞(iPS細胞)を誘導することを特徴とする、iPS細胞の製造方法を提供する。なお、iPS細胞とは、以下に説明するように、体細胞に複数の遺伝子を導入してリプログラミングを行い、分化多能性と自己複製能を持たせた細胞をいう。本発明において、iPS細胞はあらゆる動物の体細胞に由来するものであってよく、ヒト、サル、マウス、ラット、イヌ、ネコ、ウマ、ブタ等の体細胞に由来するiPS細胞が例示されるが、これらのものに限定されない。
リプログラミングとは、分化した体細胞を脱分化させて未分化な細胞に変化させることであり、初期化ともいわれる。リプログラミング処理によって分化細胞がiPS細胞になる。一般的には、4種の遺伝子(Oct3/4、Sox2、Klf4、c−Myc(またはL−Myc))、あるいはこれらにいくつかの遺伝子(例えばNanog、Lin28など)を加えたものを分化細胞に導入することによってリプログラミング処理が行われる。遺伝子の導入にはベクターを使用することが一般的であり、例えばレトロウイルスベクターなどが用いられる。リプログラミング処理は上記の方法に限定されず、当業者に公知の方法を用いて行うことができる。リプログラミング処理を行う培地は特に限定されないが、本発明においては無血清培地中でリプログラミング処理を行うことが好ましい。
本発明の特徴は、リプログラミング処理を施した体細胞を、無血清培地中で培養することによりiPS細胞を誘導することである。無血清培地を用いることで、培地中に不確定要素や未知因子あるいは危険因子が存在する懸念が払拭され、様々な解析を再現性よく、容易に行うことができる。また、無血清培地を用いることで、血清含有培地に由来する有害因子を排除できるので、得られるiPS細胞の安全性が確保される。
また、継代の際にiPS細胞とフィーダー細胞を分離することが必要であり操作が煩雑になること、フィーダー細胞に由来する様々な因子が培養に影響すること、フィーダー細胞自体のばらつきが大きくiPS細胞誘導の再現性が良くないことなどの問題も、フィーダー細胞を用いない本発明によって解決される。
無血清培地とは血清を含まない培地をいう。具体的には、無血清培地とは、アミノ酸、無機塩類、ビタミン、微量元素、糖、などを含む基礎培養液に、インスリンや鉄結合蛋白などの既知のホルモンや蛋白因子などの成分の明らかな因子のみ含まれた培地で、細胞の増殖や分化やホルモン分泌能等の機能を生体内と同様に維持することが可能な培地をいう。このような血清を含まない動物細胞培養用の基礎培地としては、例えば、ダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)、最小必須培地(MEM)、イーグル基礎培地(BME)、RPMI1640培地、F12培地、MCDB培地、ならびにそれらの混合培地などが知られている。
本発明のiPS細胞の誘導方法に用いる好ましい無血清培地としては、hESF9培地、hESF9T培地、RD8F培地、DME/F12−8F培地、RDF8F培地などの培地、ならびにそれらの改変培地が例示される。本発明に用いる無血清培地はこれらの培地に限定されず、当業者は公知の無血清培地から適宜選択して用いることができ、あるいは公知の無血清培地を適宜改変して用いることもできる。
好ましくは、フィーダー細胞不含の無血清培地中でのiPS細胞の誘導において、フィブロネクチンを接着因子として用いる。フィブロネクチンを接着因子として用いることにより、iPS細胞の誘導効率を飛躍的に高めることができ、従来法(血清含有培地中、フィーダー細胞使用)によりiPS細胞を誘導する場合に比べて、iPS細胞誘導効率は約10倍に上昇する。
フィブロネクチンは当業者に公知の蛋白である。各種生物起源のフィブロネクチンが公知であり、本発明に使用可能である。本発明にて使用されるフィブロネクチンは、細胞から単離されたものであってもよく、組み換え法などの遺伝子工学的方法により製造されたものであってもよい。また、本発明にて使用されるフィブロネクチンは全長のものであってもよく、その断片であってもよい。
リプログラミング処理を施した体細胞を、フィブロネクチンをコートした培養容器に播種し、iPS細胞を誘導するために培養を行う。無血清培地以外の培地中でリプログラミング処理を行った場合は、体細胞を当該培地とともにフィブロネクチンをコートした培養容器に播種し、その後、無血清培地に培地交換しながら培養を続け、iPS細胞を誘導することができる。無血清培地中でリプログラミング処理を行った場合は、体細胞を当該無血清培地とともにフィブロネクチンをコートした培養容器に播種し、その後、同一または異なる無血清培地に培地交換しながら培養を続け、iPS細胞を誘導することができる。播種や培地交換の手法、iPS細胞の誘導のための培養条件は当業者に公知である。例えば、培養温度としては30〜40℃、好ましくは約37℃とすることができ、例えば5〜10%の二酸化炭素を含む空気を満たしたインキュベーター内で培養することができる。
フィブロネクチンを培養容器にコートする方法は当業者に公知である。例えば、ポリ−L−オルニチンやポリ−L−リジンで培養容器の表面を処理した後、洗浄し、次いで、フィブロネクチンを含む緩衝液で培養容器の表面を処理することにより、フィブロネクチンを培養容器にコートすることができる。使用するフィブロネクチン量も当業者が容易に定めうる。また、本発明の上記方法において、フィブロネクチン以外の接着因子をフィブロネクチンと併用してもよい。
フィブロネクチンでの培養容器のコート方法は公知である。好ましいコート方法の一例は以下のようなものである。フィブロネクチンを2μg/cmの濃度で培養容器をコーティングし、37℃3時間以上、一晩までの時間で静置する。なお、直ちに使用しない場合にはコーティング液が乾かないようにパラフィルムで密封し、4℃で保存し、1週間以内に使用する。使用時は、フィブロネチン溶液を吸引し、PBSで一度洗浄後、使用する。
本発明のiPS細胞の製造方法において、リプログラミングされるべき体細胞の継代培養を初代培養から無血清培地中で行い、かつ、体細胞のリプログラミング処理を無血清培地中で行ってもよい。体細胞の継代培養を初代培養から行うことにより、かかる実施態様は本願明細書の実施例に記載されている。体細胞の初代培養および継代培養は、当業者が体細胞の種類に応じて培地組成や培養条件を適宜選択して行うことができる。
本発明は、第2の態様において、フィブロネクチンを接着因子として含む、iPS細胞を誘導するための無血清培養基材を提供する。本発明のこの態様の培養基材は、無血清培地およびフィブロネクチンを含む。したがって、本発明のこの態様の培養基材の一具体例はフィブロネクチンを含む無血清培地である。本発明のこの態様の培養基材さらなる具体例は、フィブロネクチンをコートした培養容器およびそれに入った無血清培地を含むものであってもよい。ただし該培養基材はフィーダー細胞を含まない。培養容器の形状は皿、ボトル、チューブ、フラスコ、バッグ等があり、特に限定されない。
本発明は第3の態様において、無血清培地成分およびフィブロネクチンを必須構成成分として含む、iPS細胞を誘導するための無血清培養基材を製造するためのキットを提供する。ただし当該培養基材はフィーダー細胞を含まない。
無血清培地としては上で例示したものや、それらを改変したものが挙げられる。その成分も公知であるか、あるいは当業者が適宜選択することができるものである。キットに含まれる無血清培地成分の形態は特に限定されない。例えばそのまま培養容器に移して使用可能な液体であってもよく、濃縮液の形態であってもよく、あるいは粉末のごとき固体であってもよい。キットに含まれる無血清培地成分は、例えばビタミン類、ミネラル類、アミノ酸類、糖類などに分けてキットに含まれていてもよい。
本発明のキットに含まれるフィブロネクチンの形態も特に限定されない。例えばフィブロネクチンは粉末のごとき固体であってもよく、適切なバッファーを含有するフィブロネクチン水溶液のごとき液体であってもよい。
所望により本発明のキットに培養容器が含まれていてもよい。培養容器はガラス、プラスチック等いずれの材質であってもよい。その形状も皿、ボトル、チューブ、フラスコ、バッグ等があり、特に限定されない。本発明のキットに含まれる培養容器は、予めフィブロネクチンにてコートされていてもよい。
通常は、キットには取扱説明書が添付される。
本発明は第4の態様において、フィーダー細胞を用いずに、無血清培地中に腫瘍(トランスフォーミング)増殖因子−β(TGF−β)スーパーファミリーの蛋白を添加して幹細胞を継代培養することを特徴とする、幹細胞の未分化状態および分化多能性を維持する方法を提供する。本発明において、TGF−βスーパーファミリーに属する蛋白、とりわけTGF−βファミリーに属する蛋白を無血清培地に添加することにより、幹細胞の未分化状態および分化多能性を維持しつつ長期間にわたって継代培養することが可能となる。
TGF−βスーパーファミリーに属する蛋白は、TGF−βファミリー、アクチビンファミリー、および骨形成タンパク質(BMP)ファミリーの蛋白を包含する。本発明において好ましいのはTGF−βファミリーに属する蛋白である。TGF−βファミリーに属する蛋白は当業者に公知であり、TGF−βは、アクチビンやBMPとファミリーを形成し、現在ヒトにおいて、33種類のファミリー分子から構成されており、TGF−β1、Activin−A、BMP−2等が例示される。本発明の上記方法に用いられる特に好ましいTGF−βに属する蛋白はTGF−β1である。
本発明のこの態様の方法において、無血清培地中のTGF−βファミリーの蛋白の濃度は、通常1ng/ml〜10ng/ml、好ましくは1ng/ml〜5ng/mlであるが、適宜変更することができる。使用するTGF−βファミリーの蛋白は1種類であってもよく、2種類以上であってもよい。
TGF−βファミリーの蛋白は当業者に公知である。各種生物起源のTGF−βファミリーの蛋白が公知であり、本発明に使用可能である。本発明にて使用されるTGF−βファミリーの蛋白は、細胞から単離されたものであってもよく、組み換え法などの遺伝子工学的方法により製造されたものであってもよい。また、本発明にて使用されるTGF−βファミリーの蛋白は全長のものであってもよく、その断片であってもよい。
本発明の幹細胞の未分化状態および分化多能性を維持する方法に用いる好ましい無血清培地としては、hESF9培地、hESF9T培地、RD8F培地、DME/F12−8F培地、RDF8F培地、ESF7培地などの培地、ならびにそれらの改変培地が例示される。
本発明の上記方法において、フィブロネクチンを接着因子として用いることが好ましい。培養容器へのフィブロネクチンのコート方法その他フィブロネクチンに関する説明は上記のとおりである。
本発明の上記方法を適用できる幹細胞は特に制限はなく、以下に例示する幹細胞を含めてあらゆる幹細胞が包含される。
幹細胞は、複数系統の細胞に分化できる能力(分化多能性)と、 細胞分裂を経ても分化多能性を維持できる能力(自己複製能)を併せ持つ細胞である。幹細胞には受精卵から作られる胚性幹細胞(ES細胞)、生体内組織に存在する体性幹細胞、および特定の遺伝子を導入して作成される誘導多能性幹細胞(iPS細胞)がある。ES細胞、iPS細胞はあらゆる種類の細胞に分化できる性質(全能性)を有する。体性幹細胞の例としては、造血幹細胞、神経幹細胞、肝幹細胞、皮膚幹細胞、生殖幹細胞などがある。本発明において、幹細胞はあらゆる動物に由来するものであってよく、ヒト、サル、マウス、ラット、イヌ、ネコ、ウマ、ブタ等に由来する幹細胞が例示されるが、これらのものに限定されない。これらの幹細胞の製造、取得方法は当業者に公知であり、研究機関に保存されているもの、市販されているものもある。ES細胞は、対象動物の受精卵の胚盤胞から内部細胞塊を取り出し、これを線維芽細胞のごときフィーダー細胞上で培養することにより樹立することができる。iPS細胞の作成法については上述のとおりである。
継代培養は、培養細胞を新たな培養容器へと移し替えて増殖、維持することをいう。幹細胞の継代培養方法は当業者に公知である。一般的には、細胞がコンフルエントになる前に、その一部をトリプシン等の消化酵素を用いて培養容器から剥離させ、新しい培養容器を用いて培養することにより、継代培養を行うことができる。培地成分その他の培養条件の選択、培地交換のタイミング、剥離条件、1代あたりの培養時間など、継代培養の手技、手法については、継代培養すべき細胞に応じて当業者が適宜決定、選択することができる。
本発明の上記方法において、フィーダー細胞を用いずに、無血清培地中にTGF−βファミリーの蛋白を添加して幹細胞を継代培養することが特徴である。無血清培地の作成、選択は当業者が容易に為すところである。本発明の方法によれば、培地中にTGF−βファミリーの蛋白を添加することにより、長期間にわたり多数の継代を繰り返した場合であっても、安定して幹細胞の未分化状態および分化多能性を維持することができる。
幹細胞の未分化状態の確認は、形態観察のほか、Oct3/4、Nanog、Sox2、SSEA−4などの未分化マーカーの発現を調べることによって行われ得る。幹細胞の未分化状態の確認方法は上記方法に限定されず、当業者に公知の方法にて行うことができる。
幹細胞の分化多能性の確認は、継代、維持されている幹細胞から胚樣体を形成させ、分化誘導を行って、各種分化マーカーの発現を調べることによって行われ得る。幹細胞の分化多能性の確認方法は上記方法に限定されず、当業者に公知の方法にて行うことができる。
本発明のこの態様の一具体例において、本発明のiPS細胞の製造方法により得られたiPS細胞を、TGF−βファミリーに属する蛋白を添加した無血清培地において、フィーダー細胞を用いずに継代培養することにより、iPS細胞の未分化状態および分化多能性を維持することができる。なお、本発明のiPS細胞の製造方法において、TGF−βファミリーの蛋白を含有する無血清培地を用いてiPS細胞を誘導すると、誘導効率が低下する場合があるので、iPS細胞誘導時にTGF−βファミリーの蛋白を用いないことが好ましい。
本発明は第5の態様において、TGF−βファミリーの蛋白を含む、幹細胞の未分化状態および分化多能性を維持するための継代培養用無血清培養基材を提供する。本発明のこの態様の培養基材は、TGF−βファミリーの蛋白を含有する無血清培地を含む。したがって、本発明のこの態様の一具体例はTGF−βファミリーの蛋白を含有する無血清培地である。TGF−βファミリーの蛋白を含有する無血清培地は、そのまま培養容器に添加して使用可能な液体として提供されてもよく、使用時に調製可能な濃縮液あるいは粉末のごとき固体として提供されてもよい。本発明のこの態様の培養基材のさらなる具体例は、培養容器およびそれに入ったTGF−βファミリーの蛋白を含有する無血清培地を含むものであってもよい。TGF−βファミリーの蛋白の種類および無血清培地中の濃度は上で説明したとおりである。培養容器の形状は皿、ボトル、チューブ、フラスコ、バッグ等があり、特に限定されない。好ましくは、上記培養基材において、培養容器はフィブロネクチンにてコートされている。ただし該培養基材はフィーダー細胞を含まない。
本発明は第6の態様において、無血清培地成分およびTGF−βファミリーの蛋白を含む、幹細胞の未分化状態および分化多能性を維持するための継代培養用無血清培養基材を製造するためのキットを提供する。該培養基材中の培地に含まれるTGF−βファミリーの蛋白の濃度は上で説明したとおりである。ただし該培養基材はフィーダー細胞を含まない。
無血清培地としては上で例示したものや、それらを改変したものが挙げられる。その成分も公知であるか、あるいは当業者が適宜選択することができるものである。キットに含まれる無血清培地成分の形態は特に限定されない。例えばそのまま培養容器に移して使用可能な液体であってもよく、濃縮液の形態であってもよく、あるいは粉末のごとき固体であってもよい。キットに含まれる無血清培地成分は、例えばビタミン類、ミネラル類、アミノ酸類、糖類などに分けてキットに含まれていてもよい。
本発明の上記キットにて作成される培養基材において、フィブロネクチンが接着因子として含まれていることが好ましい。本発明のキットに含まれるフィブロネクチンの形態も特に限定されない。例えばフィブロネクチンは粉末のごとき固体であってもよく、適切なバッファーを含有するフィブロネクチン水溶液のごとき液体であってもよい。
所望により本発明の上記キットに培養容器が含まれていてもよい。培養容器はガラス、プラスチック等いずれの材質であってもよい。その形状も皿、ボトル、チューブ、フラスコ、バッグ等があり、特に限定されない。本発明のキットに含まれる培養容器は、予めフィブロネクチンにてコートされていてもよい。
通常は、キットには取扱説明書が添付される。
特に説明した用語を除き、本明細書にて使用される用語は、当業者が刊行物や教科書、辞書などを通じて通常理解している意味に解される。
以下に実施例を示して本発明をさらに詳細かつ具体的に説明するが、実施例は本発明を限定するものではない。
全組成が明らかな無血清培地hESF9(Furue MK, Na J, Okamoto T, et al. (2008) Heparin promotes the growth of human embryonic stem cells in a defined serum-free medium. Proc Natl Acad Sci USA 105: 13409-13414)を用いて、iPS細胞の誘導までの各過程を無血清培養条件で検討を行った。さらに、ヒト歯髄由来細胞を用いて、初代培養からウイルス感染さらにiPS細胞の樹立までの全過程を完全無血清培養系にて行うことでhiPS樹立および維持を試みた。
1. 細胞培養法
1−1 細胞培養液
1)無血清培地
使用した無血清培地はヒトES細胞用に開発されたhESF−GRO培地(Nipro)(L−アスコルビン酸−2−ホスフェート(100μg/ml)含有)(表1)に添加因子としてヒト組み換え型インスリン(10μg/ml)(CSTI 0105, Japan)、ヒトトランスフェリン(5μg/ml)(Sigma T-1147)、2−エタノールアミン(10 μM)(Sigma E-0135)、2−メルカプトエタノール(10μM)(Sigma M-7522)、セレン酸ナトリウム(20nM)(Sigma S-9133)、およびヒト組み換え型アルブミン(0.5mg/ml)(Cell Prime Albumin : Millipore 9301)に包含されたオレイン酸(4.7μg/ml)(Sigma O-1383)を加えたhESF6培地に、ヘパラン硫酸ナトリウム塩(100ng/ml)(Sigma H-7640)およびヒト組み換え型線維芽細胞増殖因子−2(10ng/ml)(FGF-2:R&D, 3718FB)を添加したhESF9培地(表2)を使用し、ウシ血漿由来フィブロネクチン(2μg/cm)(Sigma F-1141)でコートしたディッシュ上にて培養を行った。
また、歯髄細胞の培養に使用した無血清培地RD6Fは、RPMI1640培地(Sigma)とDMEM培地(Sigma)を1:1で混合し、ビクシリン(90mg/ml)(Meiji, Japan)、カナマイシン(90mg/ml)(GIBCO)、ピルビン酸ナトリウム(110mg/ml)(Sigma)、15mM HEPES(Dojindo)、重炭酸ナトリウム(2g/L)(Sigma)を添加したRD培地を基礎培地として、6種類の添加因子(6F)つまり、ヒト組み換え型インスリン(10μg/ml)(CSTI 0105, Japan)、ヒトトランスフェリン(5μg/ml)(Sigma T-1147)、2−エタノールアミン(10μM)(Sigma E-0135)、2−メルカプトエタノール(10μM)(Sigma M-7522)、セレン酸ナトリウム(20nM)(Sigma S-9133)、およびヒト組み換え型アルブミン(500μg/ml)(Cell Prime Albumin : Millipore 9301)に包含されたオレイン酸(4.7μg/ml)(Sigma O-1383)を加えた培地であり、本培地を用いてタイプIコラーゲンコートディッシュ上で歯髄細胞の培養を行った。
2)ヒトES細胞用血清添加培地
DMEM−F12(GIBCO 12660-012)培地に20% Knock Out Serum Replacement : KSR (Invitrogen 12828-028)、0.1mM 2−メルカプトエタノール(GIBCO 21985-023)、MEM non-essential amino acids (GIBCO 11140-050)、組み換え型ヒトFGF−2(4ng/ml)(R&D 3718FB)を添加した培地を用い、マイトマイシンC(10ug/ml)処理にて不活化したC57/BL6マウス胎仔線維芽細胞上(Millipore: EmbryoMax(R) PMEF-H)に播種し、培養を行った。
1−2 培養細胞株ならびに樹立ヒトiPS細胞株とその培養方法
1)ヒト胎児肺由来正常線維芽細胞(TIG−3細胞)
地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター研究所にて樹立された日本人胎児肺由来線維芽細胞であるTIG−3細胞に、レトロウイルスを用いて4遺伝子(Oct3/4,Sox2,Klf4,c−Myc)を遺伝子導入し、ヒトiPS細胞の誘導を試みた。TIG−3細胞はDMEM培地(Sigma)に10% ウシ胎児血清(Hyclone(R) Thermo Scientific, US)および1% ペニシリン−ストレプトマイシン(GIBCO)を添加した培地を用い、2〜3日毎に1:4のスプリット比(split ratio)にて10cmディッシュ(Falcon)上に細胞を播種し、5%CO/95%気相下、37℃インキュベーター内で培養を行った。
2)PLAT−Aウイルスパッケージング細胞株
哺乳類への感染指向性を持ち、長期間安定してレトロウイルスの構造タンパク質(gag, pol, env)を産生可能なウイルスパッケージング細胞株Platinum-A Retroviral Packaging Cell, amphotropic (PLAT-A : Cell Biolabs Inc. CA, USA)を使用し、レトロウイルスの産生を行った。DMEM培地(Sigma)に10% FBS、1μg/ml ピューロマイシン(Sigma)および10μg/ml ブラスチシジン(Funakoshi, Tokyo, Japan)、1% ペニシリン−ストレプトマイシン(GIBCO)を添加した培地を用いて、2日毎に1:4のスプリット比(split ratio)にて10cmディッシュ(Falcon)上に細胞を播種し、5%CO/95%気相下、37℃のCOインキュベーター内で培養を行った。
なお、トランスフェクションを行う際には、前日にDMEM培地に10% FBSを添加した培地を使用し、コラーゲンコートした25cmフラスコ(BioCoat Collagen I Cellware, Falcon)に2x10個の細胞を播種し、16〜24時間後に細胞が70%〜80%コンフルエントになったところで遺伝子導入(トランスフェクション)に使用し、トランスフェクション開始48〜72時間後のウイルス上清を回収し、標的細胞に感染させた。
3)樹立ヒトiPS細胞株(Tic)とその培養方法
コントロールのiPS細胞として、国立成育医療研究センターの梅澤らが樹立し、医薬基盤研究所より供与されたTic(JCRB1331)を用いた。Ticをあらかじめ0.1%ゼラチンにてコートしたフラスコに、フィーダー細胞として播種した不活化マウス胎仔線維芽細胞(Millipore: PMEF-H)上に播種し、血清添加ES細胞用培地を用いて培養を行った。なお、細胞分散はデスパーゼII(1mg/ml)(Roche 4942078, Basel, Switzerland)を用いて継代を行った。
2.TIG−3細胞からのヒトiPS誘導における無血清培養条件の検討
ヒト胎児肺線維芽細胞TIG−3細胞を用いて、Oct3/4、Sox2、Klf4、c−Mycの4遺伝子を、レトロウイルス(PLAT−Aパッケージング細胞)を用いて感染させ、ヒトiPS細胞を誘導した。
1)レトロウイルスの作製
1−2 2)の方法に準じて継代維持したPLAT−A細胞に初期化4遺伝子を導入し、レトロウイルスを作成した。使用したプラスミドは京都大学 山中研究室にて作成されたpMXs−(hOct3/4)、pMXs−(hSox2)、pMXs−(hKlf4)、pMXs−(hc−Myc)(Cell Biolabs Inc. CA,USA)を用いた。
トランスフェクション前日に、PLAT−A細胞をタイプIコラーゲン処理した25cmフラスコ(BioCoat Collagen I Cellware, Falcon)に2x10個の密度で細胞を播種し、16〜24時間経過後に70%〜80%コンフルエントになったところで、4μgのプラスミド溶液とトランスフェクション試薬をDMEM培地にて希釈した混合液を加えて、この複合体溶液をPLAT−A細胞を播種したフラスコに添加し、トランスフェクションした。さらに、4時間後に血清添加培地を加えて、翌日に10%FBS添加DMEM培地に交換し、トランスフェクション開始24〜48時間後のウイルス上清を回収後、標的細胞に感染させた。なお、プラスミド毎にトランスフェクションするため計4枚の25cmフラスコを用意した。
2)リプログラミング過程における無血清培養条件の検討
(1)ウイルス感染および細胞外マトリックス上への播種
10%FBS添加DMEM培地で培養したPDL(集団細胞倍加数)24〜40のTIG−3細胞に、レトロウイルスを感染させ4遺伝子を導入した。その後、無血清培地hESF9に培地交換し、各種細胞外マトリックス上に播種し、リプログラミング過程における無血清培養条件の検討を行った。
ウイルス感染の前日(Day−1)に10%FBS添加DMEM培地で培養したTIG−3細胞を、3x10個の細胞数で6cmディッシュ上に播種した。翌日(Day0)、各ウイルス上清を等量混合したpMXs−(4F)を最終濃度8μg/mlとなるようにポリブレンを加えて、0.45μmフィルターで濾過した後、血清添加培地にて維持したTIG−3細胞へ感染させた。感染4時間後にポリブレンの毒性を弱めるため、ウイルス上清と等量の培地を加えた。感染24時間後(Day1)に培地交換し、4日間(Day4まで)培養を行った。なお、培地交換は2日毎に行った。感染4日後(Day4)にTIG−3細胞を0.05%トリプシン/EDTA処理により単一細胞に分散した。続いて、あらかじめ0.1%ゼラチン(Millipore ES-006B)あるいはタイプIコラーゲン(0.3mg/ml)(Nitta gelatin)あるいはフィブロネクチン(2μg/cm)(Sigma)の各種細胞外マトリックスにてコートした10cmディッシュ上に1x10/ディッシュの細胞数となるよう播種した。再播種翌日(Day5)に無血清培地hESF9に培地交換し、フィーダー細胞を用いず、各種細胞外マトリックス上に播種することでヒトiPS細胞の誘導を試み、リプログラミング過程における無血清培養条件の及ぼす影響について検討を行った(図1)。再播種後の培地交換は2日毎に行った。
ゼラチン、タイプIコラーゲン、フィブロネクチンのいずれの細胞外マトリックス上においても、感染13日前後より、細胞質と比較して大きな核を持つ、小型で細胞境界が不明瞭なヒトES細胞様のコロニー形成を認めた(図1)。感染20日後より、顕微鏡下でピペットを用いてコロニーを回収し、あらかじめ各細胞外マトリックスでコートした4ウェルマルチディッシュ上に播種し、継代した。ゼラチン上に播種したディッシュでは細胞接着が弱く、接着したとしてもコロニーが著しい分化傾向にあった。さらにタイプIコラーゲン上に播種したディッシュではコロニーは接着するものの、辺縁より著しい分化傾向を示した。一方でフィブロネクチン上に播種したディッシュでは細胞接着後、ヒトiPS細胞の形態を保持し維持することが可能であった(図2)。また、感染36日後に未分化性の指標であるALP染色を行い、いずれのディッシュ上のコロニーも陽性反応を示した。フィブロネクチンおよびコラーゲン上に播種した細胞が、最も形態的にヒトiPS細胞に類似していた。
コントロールとして、ウイルス感染4日後(Day4)のTIG−3細胞を、あらかじめマイトマイシンC(10μg/ml)にて不活性化したフィーダー細胞を播種した10cmディッシュ上で培養し、翌日(Day5)からヒトES細胞用血清培地に交換し、以後2日毎に培地交換を行った。本培養条件でもコロニーは出現したが、初期化が不完全なコロニーが多く、またフィーダー細胞を用いない無血清培養条件に比べてコロニー出現時期は遅延した(図1)。
(2)感染効率の評価(FACS解析)
4遺伝子の感染と同時に、使用したレトロウイルスパッケージング細胞PLAT−Aの感染効率の評価のため、EGFPを用いFACS解析にて評価した。
(i)1因子感染効率
前述 2−1 1)および2)の方法に準じて、PLAT−A細胞にpMXs−(EGFP)あるいはpMXs−(−)をトランスフェクションし、各ウイルス上清を回収した後、各々TIG−3細胞に感染させ、4日後にTIG−3細胞をセルストレーナー付FACS用チューブ(BD Falcon)に回収し、フローサイトメーター(FACS CaliburTM, Beckton Dickinson)にて解析を行った。
(ii)4因子感染効率
前述 2−1 1)および2)の方法に準じて、PLAT−A細胞にpMXs−(hOct3/4)、pMXs−(hSox2)、pMXs−(hKlf4)、pMXs−(hc−Myc)を各々トランスフェクションしたウイルス上清の等量混合液(以後pMXs−(4F)と表記)、あるいはpMXs−(4F)とpMXs−(EGFP)のウイルス上清を3:1の割合で混合したウイルス混合液を、各々TIG−3細胞に感染させ、4日後にTIG−3細胞をセルストレーナー付FACS用チューブ(BD Falcon)に回収し、フローサイトメーターにて解析を行い、便宜的に4因子感染効率とした。
1因子感染効率をFACSにて評価したところ、平均43.4%であった。次に4因子感染効率として評価したところ、26.6%とやや感染効率は低下したが、平均的な効率が得られたため、本システムを用いてヒトiPS細胞(hiPS細胞)の誘導を試みた。
3)ウイルス感染成立時における無血清培養条件の検討
レトロウイルス上清を無血清培地hESF9にて回収し、ウイルス感染が成立する24時間を無血清培地hESF9として、ウイルス感染成立時における無血清培地の影響について検討を行った(図3)。
DMEM培地に10%FBSを加えた血清添加培養条件下にてPLAT−A細胞にpMXs−(EGFP)あるいはpMXs−(−)をトランスフェクションし、DMEM培地に10%FBSを加えた血清培地条件(以後条件Aと表記)あるいはhESF9無血清培地条件(以後条件Bと表記)の各条件にてトランスフェクションの24〜48時間後のウイルス上清を回収し、標的細胞であるTIG−3細胞に感染させた。ウイルス感染の成立する24時間を上記AあるいはB条件にて行い、以後は両条件とも血清添加培地A条件にて培養を行い、3日後にTIG−3細胞をセルストレーナー付FACS用チューブに回収し、フローサイトメーター(FACS CaliburTM, Beckton Dickinson)にて解析を行った。
血清添加培養条件Aでは感染効率は62.6%、無血清培養条件Bでは感染効率は46.4%であった。条件Aに比べて、無血清培養条件Bは効率がやや低値を示したものの、一般的にhiPS誘導に必要なタイター(力価)は維持されていると考えられた。
3. フィーダー細胞を用いない無血清培養条件での歯髄由来細胞からのヒトiPS細胞誘導
これまでのTIG−3細胞を用いた実験結果をもとに、無血清培養条件下にてレトロウイルス上清を用いて、初代培養からウイルス感染を経てヒトiPS細胞誘導までの全過程を完全無血清培養系にて行い、ヒトiPS細胞が誘導可能であるか検討を行った(図4)。
1)歯髄由来細胞の初代培養
広島大学ヒトゲノム・遺伝子解析研究倫理審査委員会にて承認を得た研究計画に基づき、広島大学病院顎・口腔外科を受診し、同意の得られた患者の抜歯後の歯髄組織から歯髄由来細胞を分離し、explant培養法にて無血清培地を用いて初代培養を行った。
下顎埋伏智歯の抜去歯牙より分離した歯髄を70%エタノールに浸漬後、細切し、以下に記載したRD6F培地を用い、タイプIコラーゲン(0.15mg/ml)(Nitta gelatin)にてコートしたディッシュ上に、5%CO/95%気相下、37℃下、COインキュベーター内で培養を行った。培地交換は2〜3日毎に行い、サブコンフルエントまで増殖した段階で0.05% trypsin/EDTA処理により細胞分散後、0.1%trypsin inhibitorを加えてtrypsin作用を中和し、ディッシュ上に細胞を播種し、3〜4日毎に継代を行った。
無血清培地として以下に示すRD6Fを用いた。すなわち、DMEM培地(Sigma)とRPMI1640培地(Sigma)を1:1で混合し、ビクシリン(90mg/ml)(Meiji, Japan)、カナマイシン(90mg/ml)(GIBCO)、ピルビン酸ナトリウム(110mg/ml)(Sigma)、15mM HEPES(Dojindo)、重炭酸ナトリウム(2g/L)(Sigma)を添加したRD培地を基礎培地として、6種類の添加因子インスリン(10μg/ml)(CSTI 0105)、トランスフェリン(5μg/ml)(Sigma T-1147)、2−エタノールアミン(10μM)(Sigma E-0135)、2−メルカプトエタノール(10μM)(Sigma M-7522)、セレン酸ナトリウム(10nM)(Sigma S-9133)、および脂肪酸不含ウシ血清アルブミン(Sigma O-3008)に抱合されたオレイン酸(4.7μg/ml)を加えた培地をRD6Fとし、培養を行った。
2)レトロウイルス感染およびヒトiPS細胞誘導
無血清培地RD6Fにて初代培養を行った歯髄由来細胞に、全過程を通して無血清条件下にてウイルス感染させ、フィブロネクチン上に播種し、誘導を行った。
初代培養開始から2週間程度継代培養を行った細胞を、ウイルス感染の前日(Day−1)に、3x10の細胞数で60mmディッシュ上に播種した。翌日(Day0)、無血清培地hESF9にて回収したレトロウイルス上清pMXs−(4F)にポリブレン(8μg/ml)を添加したのち、歯髄由来細胞に感染させた。感染4時間後に等量の無血清培地hESF9を追加し、24時間後に培地交換を行い、感染5日後(Day5)に各細胞を0.05%トリプシン−EDTA処理により単一細胞に分散し、あらかじめフィブロネクチン(2μg/cm)にてコートしたディッシュ上に、細胞数1.0x10個/10cmディッシュとなるよう播種した。再播種後は2日毎に無血清培地hESF9培地を用いて培地交換を行った(図4)。感染15日後よりiPS様のコロニーが出現し、感染20日後のコロニーを回収し、フィブロネクチンコートしたディッシュ上に播種し、無血清培地hESF9あるいはhESF9にTGF−β1(2ng/ml)を添加した培地hESF9Tを用いて継代培養を行った。完全無血清培養系ではALP活性陽性コロニー数が多く(図4D)、iPS細胞誘導効率が0.39%と高い誘導効率を示した。また、同一のベクターを使用した文献と比較しても高い誘導効率を示した(表3)。さらに、ウイルス感染5日後に再播種せず、培地のみhESF9に交換した条件についても検討を行ったが、細胞形態の変化が乏しく、コロニーは全く形成されなかった。なお、KSR添加培養条件にて誘導されたヒトiPS細胞様のコロニーは、マイトマイシンCにて不活性化したフィーダー細胞上に播種し、ヒトES細胞用血清培地を用いて培養を行い、分化前に顕微鏡下でコロニーを回収し、継代を行った。
3)歯髄細胞由来ヒトiPS細胞の未分化性の維持
(1)ヒトiPS細胞の増殖能および未分化性の維持に及ぼすTGF−β1の影響
歯髄由来細胞から樹立したhiPS細胞を、マイクロピペットを用いて機械的に小さくした後、無血清培地hESF9あるいはTGF−β1を加えたhESF9T培地を用いてフィブロネクチンコートしたディッシュ上に播種した(図5A)。無血清培地hESF9で維持したhiPS細胞はディッシュに接着するものの、長期継代培養とともに未分化性を十分に維持することが困難となり、辺縁から次第に分化した細胞の遊走が観察された。一方、TGF−β1を含む無血清培地hESF9Tで維持したヒトiPS細胞は、未分化性を維持したまま継代培養することが可能であった(図7A)。また、hESF9培地に各種濃度(0、0.1、1、2、5、10ng/ml)のTGF−β1を添加し、培養4日後に全RNAを回収し、cDNA合成後、QX100TM Droplet DigitalTM PCR system (Bio-RAD)を用いて遺伝子発現解析を行った。Droplet DigitalTM PCRはddPCRTM supermix (Bio Rad)を用いて添付のプロトコールに準じ、QX100TMDroplet Generator (Bio Rad)にて液滴を作成しPCR反応にて増幅後、QX100TM Droplet Reader(Bio Rad)を用いて解析を行った。TGF−β1濃度依存的に未分化性を保持した細胞数は増加し、Oct3/4およびNanogの未分化マーカー遺伝子発現が増強した(図7B)。なお、TGF−β1濃度は2〜10ng/mlでもっとも未分化マーカーが高発現していたが、TGF−β1非存在下では著しく未分化マーカー遺伝子の発現が低下するとともに、中胚葉分化マーカーのプラスミノーゲンアクチベーターインヒビター−1(PAI−1)および心筋などの内胚葉分化マーカーであるGATA結合タンパク質4(GATA4)といった分化マーカーの発現を認めた。また、無血清培地hESF9あるいはhESF9Tを用いて30代継代・維持されたヒトiPS細胞をフローサイトメトリーにて解析したところ、SSEA4陽性細胞率はhESF9T培地で91.7%でありhESF9培地での割合(12%)と比較し有意に高かった。また、Oct3/4陽性細胞率はhESF9T培地で67.5%であったが、hESF9培地では0.6%と低下していた(図5B)。無血清培地hESF9を用いることで、iPS細胞の樹立および短期間では未分化性を維持したヒトiPS細胞の継代・維持が可能であるが、TGF−β1を添加することで、未分化性を保持した細胞の長期継代・維持が可能となることが示された。
(2)TGF−β1添加培地hESF9Tにて継代したヒトiPS細胞の特性解析
無血清培地hESF9あるいはhESF9Tを用いて、フィブロネクチン上で継代・維持したヒトiPS細胞からRNAを抽出し、Agilent Sure Print G3 Human GE 8x60K v2 MicroarrayにてGenespring12.0 (Agilent Technologies, Santa Clara, CA)を使用し遺伝子の網羅的発現解析(genome-wide gene expression profiling analysis)を行ったところ、ヒトES細胞用血清培地を用いてフィーダー細胞上で維持したヒトiPS細胞と比較して、概ね同一の遺伝子発現パターンを示した(図5C、図6)。一方でこれらのパスウェイ解析において、hESF9培地で継代・維持した細胞はhESF9T添加培地で培養した細胞と比較し、TGF−βシグナリングパスウェイ(WP560)、WNTシグナリングおよび多能性パスウェイ(WP399)、WNTシングナリングパスウェイ(WP428)およびアポトーシスモジュレーションおよびシグナリングパスウェイ(WP1772)において有意に異なる発現パターンを示していた。
以上より、無血清培地hESF9Tを用いてフィブロネクチン上で継代・維持したヒトiPS細胞は、従来の血清添加培地を用いてフィーダー細胞上で維持したヒトiPS細胞培養と同様の遺伝子発現を示しており、未分化性が保持されていることが確証された。
4)歯髄細胞由来ヒトiPS細胞の特性解析
(1)未分化性の検討
(i)蛍光免疫染色を用いた未分化マーカー蛋白発現解析
無血清培地hESF9を使用しフィブロネクチンコートディッシュ上で誘導後、TGF−β1添加培地にて継代維持した細胞(DP-F-iPS-CL16 passage19)について、各種未分化マーカー抗体(Nanog、Oct3/4、SSEA−4、Tra−1−60およびTra−1−81)を使用して蛍光免疫染色を行うことにより未分化マーカーの発現解析を行った。各抗体はAlexa Fluor(R) 488にて可視化し、併せてDAPIにて核染色を行った。ヒトES細胞やiPS細胞の未分化マーカーであるOct3/4、Nanog、SSEA−4、TRA−1−60、TRA−1−81のすべてが発現していることを確認した(図7D)。
(ii)RT−PCR法を用いた未分化マーカー遺伝子発現の検討
同培養条件にて継代維持した細胞からRNAを抽出し、各種未分化マーカー遺伝子の発現をRT−PCRにて解析した。RNA抽出は、illustra RNA spin Mini Isolation kit(GE Healthcare UK Ltd, England)を用いて添付のプロトコールに準じ、上記で培養した細胞の全RNAを抽出した。核酸の定量はNano Drop(R)(Nano Drop Technologies, Inc., USA)を使用した。細胞より抽出した各全RNA(1μg)をHigh Capacity RNA-to-cDNA Master Mix(Applied Biosystems, CA, USA)を用い、サーマルサイクラー(PTC-0220 DNA Engine Dyad : MJ Japan, Tokyo)を使用し、25℃下5分間、42℃下30分間、85℃下5分間インキュベーションし逆転写反応を行い、cDNAを合成した。RT−PCRはKOD FX Neo(Toyobo, Osaka, Japan)を用いて、変性反応98℃、10秒、アニーリング62℃、30秒、伸長反応68℃、30秒の条件で行い、これを1サイクルとして35サイクル行い、PCR産物を得た。このPCR産物を1.5%アガロースゲル(Invitrogen)にて電気泳動後、SYBR Safe DNA gel stain(Invitrogen)にて可視化した。ヒトES細胞の未分化マーカー遺伝子であるSox2、Nanog、Oct3/4、Esg1、Rex−1(Reduced- expression 1; Zfp42)の発現を検討した。対照として、グリセルアルデヒド−3−リン酸デヒドロゲナーゼ(GAPDH)遺伝子の発現を検討した(図7C)。無血清培養条件下にて誘導・維持したヒトiPS細胞は未分化マーカーであるSox2、Nanog、Oct3/4、Esg1、Rex−1を発現していた。一方で、遺伝子導入前の歯髄由来細胞においては、これらの未分化マーカーは発現していなかった(図7C)。
(iii)ALP染色
ヒトiPS細胞をALP固定液(4.5mMクエン酸、2.25mMクエン酸三ナトリウム、3mM塩化ナトリウム、65%メタノール、3%ホルムアルデヒド)にて固定後、アルカリフォスファターゼ基質キット(ヒストファイン ファーストレッドII基質キット Nichirei, Tokyo, Japan)にて遮光下、室温で15分間反応させた後、数回洗浄後、位相差顕微鏡(Nikon ECLIPSE TE300)にて観察を行った。
(2)多分化能の検討
(i)胚様体を用いた分化誘導
無血清培養条件にてhESF9培地あるいはhESF9T培地にて継代・維持したヒトiPS細胞(hESF9培地で維持したDP−A−iPS細胞あるいはhESF9T培地で維持したDP−F−iPS細胞)から胚様体と呼ばれる疑似胚を形成させ分化誘導を行った。分化誘導培地としてDMEM培地に10%FBSを添加し、96穴細胞低吸着プレート(SUMILON Prime Surface(R) U plate, 住友ベークライト)に播種し、4日間浮遊培養を行い、胚様体を形成させた後、ゼラチンコートしたプレートに細胞を播種し、さらに10日間分化誘導を行った。誘導14日後の細胞に対して各種分化マーカー抗体を用いて蛍光免疫染色を行った。各抗体はAlexa Fluor(R) 594にて可視化し、併せてDAPIにて核染色を行った。その結果、神経幹細胞系のマーカーであるネスチンや神経細胞のマーカーであるβIII−チューブリン、中胚葉マーカーであるα−平滑筋アクチン(SMA)、内胚葉マーカーであるα−フェトプロテイン(AFP)に対して発現を認めた。一方、未分化マーカーのOct3/4は発現していなかった(図8A)。
(ii)免疫不全マウスを用いたテラトーマ(奇形腫)形成能の評価
無血清培地、hESF9培地あるいはhESF9T培地にて継代・維持したヒトiPS細胞を、免疫不全マウス(CB17/Icr−Prkdcscid/CrlCrlj)の背部皮下に移植し、テラトーマの形成能を検討した。コントロールとしてヒトiPS細胞をKSR添加ES細胞培養用標準培地にてフィーダー細胞上にて誘導した細胞を用いた。各条件において、1×10個の細胞を50μlのPBSに懸濁し、同量のタイプIコラーゲンと混合し、50μlを免疫不全マウスの背部皮下に移植した。移植約10週間後に両条件とも腫瘤を形成したため、摘出した腫瘤を4%パラホルムアルデヒドにて4℃下一晩固定後、通法に従い脱脂、パラフィン包埋し、6μmの連続切片を作成し、2つのグループに分け、一方に対しては通法に従いヘマトキシリン・エオジン染色(HE染色)を行った。また、一方に対してアルシアンブルー/PAS染色を行った。脱パラフィン後、3%酢酸にて3分間処理し、pH2.5アルシアンブルー溶液(和光純薬、Osaka、Japan)にて30分間処理を行った。染色後水洗し、0.5%過ヨウ素酸溶液(和光純薬)にて5分間、コールドシッフ液(和光純薬)にて30分間処理を行い、亜硫酸水(和光純薬)で3分間処理を3回繰り返した後、水洗した。核染色をマイヤー・ヘマトキシリン溶液にて行い、脱水・封入後、顕微鏡にて観察を行った。切片では表皮や神経といった外胚葉の組織、軟骨や筋肉・結合組織といった中胚葉の組織、消化管や肝臓などの内胚葉に分化した組織を認め、摘出した腫瘤がテラトーマであることが示された(図8B)。なお、KSR添加ES細胞培養用標準培地にてフィーダー細胞上にて継代維持した細胞においても三胚葉へと分化した組織を認めた。
(3)STR(Short Tandem Repeat)解析
患者より採取した歯髄由来細胞および、無血清培養条件下にて初期化遺伝子を導入し作製したヒトiPS細胞からゲノムDNAを抽出し、Powerplex 16 system (Promega Corporation, Madison, WI)を用いてABI PRISM (R)3100 Genetic analyzer(Applied Biosystems)およびGene Mapper v3.5を使用しSTR解析を行ったところ16遺伝子座のアレルパターンがすべて一致した。
(4)細胞増殖能および核型解析
無血清培養条件にて誘導し、hESF9Tにて21代継代・維持したヒトiPS細胞の細胞倍加時(population doubling time)は16.6±0.8時間であった(図9A)。
無血清培地hESF9Tにて20代継代維持したヒトiPS細胞の核型解析を行った。培養中の細胞に対して、コルセミド溶液(Karyo Max(R), GIBCO)を最終濃度0.06μg/mlとなるように加え、6時間培養継続後、細胞を回収し、10μM Rockインヒビター(Y−27632:和光純薬)を添加したのち、細胞を分散した。続いて、37℃下10分間0.075M塩化カリウム溶液にて低張液処理し、カルノア固定液にて固定後、遠心し、再度カルノア固定液にて固定を繰り返したのち、細胞懸濁液をスライドガラス上に滴下し、風乾後、4%ギムザ染色液(武藤化学、Tokyo、Japan)にて染色後、光学顕微鏡にて検鏡し、核型解析を行った。無血清培地hESF9Tにて20代継代維持したヒトiPS細胞の核型簡易解析を行った結果、正常染色体数を示した。2n=46,XX(図9B)。
4.本発明の無血清培養条件を用いたヒトiPS細胞の継代・維持における普遍性の検討
上記の研究結果をもとに、無血清培地hESF9Tを用いて維持されたヒトiPS細胞を用いて、hESF−GROのかわりに基礎培地としてDulbecco’s Modified Eagle’s Medium/Nutrient Mixture F-12 Ham培地(1:1の比率で混合)を使用し、前述の6種類の添加因子にFGF−2、Heparin、TGF−β1を添加した、DF8FT培地による、未分化性の維持に関して検討を行った。無血清培地DF8FTを用いて、フィブロネクチン上にヒトiPS細胞を播種したところ、形態の変化なく、未分化性を保持したまま継代・維持が可能であった(図10)。
5.まとめ
一般的に、ES細胞やiPS細胞などの幹細胞は、不活性化したフィーダー細胞や血清などの動物由来成分を含む条件で培養されている。このような培養系では各種異種抗原の混入の恐れがあり、再生医療への応用は困難であり、さらにこれら幹細胞の増殖・分化制御機構やその制御因子を明らかにすることも非常に困難である。本発明によって、無血清培地培地を用いて、フィーダー細胞を用いず正常ヒト歯髄由来細胞から、ヒトiPS細胞を誘導することが可能となった。ヒトiPSコロニーは感染後約2週間で出現し、未分化性および多分化能を有していた。また、初代培養からウイルス感染を経てヒトiPS細胞樹立までの全過程を完全無血清培養系にて行い、初めてヒトiPS細胞を誘導できることも明らかとなった。また、本発明の未分化性および分化多能性を維持しつつ継代培養する方法は、ヒトiPS細胞のみならず、あらゆる動物の幹細胞に適用可能である。
従来のヒトiPS細胞培養系を用いると、フィーダー細胞や動物由来成分の使用により、種々の既知および未知因子が混在し、培養法の標準化は難しく、未分化性の維持や特定組織・臓器への分化制御も困難である。さらに、動物由来蛋白等の混入により、感染症等の恐れもある。これに対し、本発明の無血清培養系では既知の因子のみから成るため、幹細胞の未分性の維持や増殖・分化を制御する各種因子の同定や検討が容易となり、発生・組織・臓器再生メカニズムの解明や、創薬スクリーニングへの応用、さらに安全で確実な再生医療の実現が可能となる。
本発明は、医薬品や医用材料の開発、生化学の研究分野、畜産業などにおいて利用可能である。

Claims (4)

  1. HEPES、インスリン、トランスフェリン、2−エタノールアミン、2−メルカプトエタノール、セレン酸ナトリウム、及びアルブミンに包含されたオレイン酸を含む体細胞培養用無血清培地中で、初代培養から培養されたヒト歯髄由来細胞に、前記体細胞培養用無血清培地中で初期化遺伝子を導入し、かかる初期化遺伝子が導入されたヒト歯髄由来細胞を、インスリン、トランスフェリン、2−エタノールアミン、2−メルカプトエタノール、セレン酸ナトリウム、アルブミンに包含されたオレイン酸、FGF−2、アスコルビン酸、及びヘパラン硫酸を含むiPS細胞誘導用無血清培地中で、接着因子としてフィブロネクチンを用いて、培養することにより、ヒト人工多能性幹細胞(hiPS細胞)を誘導する、フィーダー細胞を用いないことを特徴とするhiPS細胞の製造方法。
  2. HEPES、インスリン、トランスフェリン、2−エタノールアミン、2−メルカプトエタノール、セレン酸ナトリウム、及びアルブミンに包含されたオレイン酸を含む、ヒト歯髄由来細胞を培養するための無血清培養基材と、インスリン、トランスフェリン、2−エタノールアミン、2−メルカプトエタノール、セレン酸ナトリウム、アルブミンに包含されたオレイン酸、FGF−2、アスコルビン酸、及びヘパラン硫酸を含み、接着因子としてフィブロネクチンを含む、hiPS細胞を誘導するための無血清培養基材とを含む、請求項1に記載のhiPS細胞の製造方法のためのキット(ただし該培養基材はフィーダー細胞を含まない)。
  3. HEPES、インスリン、トランスフェリン、2−エタノールアミン、2−メルカプトエタノール、セレン酸ナトリウム、及びアルブミンに包含されたオレイン酸を含む、ヒト歯髄由来細胞を培養するための無血清培養基材と、
    インスリン、トランスフェリン、2−エタノールアミン、2−メルカプトエタノール、セレン酸ナトリウム、アルブミンに包含されたオレイン酸、FGF−2、アスコルビン酸、及びヘパラン硫酸を含み、接着因子としてフィブロネクチンを含む、hiPS細胞を誘導するための無血清培養基材と、
    TGF−βファミリーの蛋白を含む、幹細胞の未分化状態及び分化多能性を維持するための継代培養用無血清培養基材とを含む、請求項1に記載のhiPS細胞の製造方法のためのキット。
  4. 請求項1に記載の方法によりhiPS細胞を得て、かかるhiPS細胞を、TGF−βファミリーに属する蛋白を添加した無血清培地において、フィーダー細胞を用いずに継代培養することを特徴とする、hiPS細胞の未分化状態及び分化多能性を維持する方法。
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