JP5067765B2 - 卵膜由来細胞の細胞外マトリクスを用いた多能性幹細胞の培養方法 - Google Patents
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Description
(2)脱落膜由来細胞が、間葉系細胞である、上記(1)記載の方法。
(3)脱落膜由来細胞と多能性幹細胞の両方が同種の哺乳動物に由来するものである、上記(1)記載の方法。
(4)哺乳動物がヒトである、上記(3)記載の方法。
(5)多能性幹細胞が、ヒトES細胞又はヒトiPS細胞である、上記(1)記載の方法。
(6)脱落膜由来細胞又は該細胞由来の細胞外マトリクスを含有してなる、多能性幹細胞の培養剤。
(7)脱落膜由来細胞が、間葉系細胞である、上記(6)記載の剤。
(8)脱落膜由来細胞と多能性幹細胞の両方が同種の哺乳動物に由来するものである、上記(6)記載の剤。
(9)哺乳動物がヒトである、上記(8)記載の剤。
(10)多能性幹細胞が、ヒトES細胞又はヒトiPS細胞である、上記(6)記載の剤。
(11)脱落膜由来細胞の細胞外マトリクスでコーティングされた、多能性幹細胞培養用の培養器。
(12)脱落膜由来細胞が、間葉系細胞である、上記(11)記載の培養器。
(13)脱落膜由来細胞と多能性幹細胞の両方が同種の哺乳動物に由来するものである、上記(11)記載の培養器。
(14)哺乳動物がヒトである、上記(13)記載の培養器。
(15)多能性幹細胞が、ヒトES細胞又はヒトiPS細胞である、上記(11)記載の培養器。
(16)以下の(i)及び(ii)を含む、多能性幹細胞の培養用キット;
(i)脱落膜由来細胞又は該細胞由来の細胞外マトリクスを含有してなる、多能性幹細胞の培養剤、
(ii)多能性幹細胞の培養に使用すべき、又は使用され得ることを記載した説明書。
(17)以下の(i)及び(ii)を含む、多能性幹細胞の培養用キット;
(i)脱落膜由来細胞の細胞外マトリクスでコーティングされた、多能性幹細胞培養用の培養器、
(ii)多能性幹細胞の培養に使用すべき、又は使用され得ることを記載した説明書。
ヒト卵膜は、羊膜(上皮組織及び間葉系;内層)、絨毛膜(中層)及び脱落膜(外層)の主として3つの層で構成されている(図1参照)。羊膜及び絨毛膜は胎児由来であり、脱落膜は母体由来である。卵膜に由来する細胞としては、例えば羊膜上皮細胞(AEC)、羊膜(一部絨毛膜を含む)間質細胞(AMC)並びに脱落膜間葉系細胞(DMC)等が挙げられる。本発明では、大量に採取・調製でき、高い増殖能を有することから脱落膜由来細胞を用いる。また、後述するが、多能性幹細胞の維持培養支持活性の点からみても、より高い活性を有する脱落膜間葉系細胞が特に好ましい。
ここで、細胞の「維持培養」とは、多能性幹細胞を未分化な状態で増殖させ、継代を可能とする培養を意味する。
脱落膜は、自体公知の方法により調製できる。通常、分娩時の胎盤附属組織の脱落膜組織を入手し、ハサミ等で剪断し、リン酸緩衝生理的食塩水(PBS)や生理食塩水で洗浄し、血液成分や余分な組織を除去した後、適当な大きさに切り分け、適当な緩衝液中で保存する。尚、脱落膜を採取する被検体は、感染症(例えば、B型肝炎、C型肝炎、梅毒、ヒト免疫不全ウイルス)が陰性であることが好ましい。感染症の有無は、自体公知の方法、例えば、血清検査により確認できる。
得られた細胞が所望する脱落膜由来細胞であるか否かは、当該細胞に特異的な表現型の有無を調べることによって確認できる。例えば脱落膜由来間葉系細胞であれば、アクチンの細胞内での発現様式やビメンチンの発現によって確認することができる。アクチンの発現様式はファロイジンを用いた蛍光染色により、ビメンチンの発現は抗ビメンチン抗体を用いた免疫染色により調べることができる。さらに、羊膜組織のマーカーであるHLA−Gが陰性であることを確認することによって、AMCでないこと、AMCの混入がないことを確認することが好ましい。上皮細胞でないことの確認は上皮細胞のマーカーであるCK19が陰性であることを確認することによって行うことができる。ビメンチンは間葉系細胞に特有の中間径フィラメントである。間葉系細胞をファロイジンを用いて蛍光染色するとストレスファイバー構造を呈する。
より具体的には、脱落膜由来細胞の存在下で多能性幹細胞を培養する方法としては、多能性幹細胞を適切な培地(上述)に懸濁し、別途調製しておいた脱落膜由来細胞のフィーダー層上に、3000〜16000細胞/cm2の細胞密度で播種し、2〜7日間、20〜40℃、好ましくは37℃で数%、好ましくは5%の二酸化炭素を通気したCO2インキュベーター内にて培養する方法が挙げられる。脱落膜由来細胞のフィーダー層は、通常、4000〜40000細胞/cm2の細胞密度で脱落膜由来細胞を播種し、1〜7日間、20〜40℃、好ましくは37℃で数%、好ましくは5%の二酸化炭素を通気したCO2インキュベーター内にてコンフルエントな状態になるまで培養したものが用いられる。予めマイトマイシンC処理により不活性化しておくことが望ましい。
細胞外マトリクスは脱落膜由来細胞(上述)を原料として、自体公知の方法により調製できる。通常、EDTA溶液や、界面活性剤(デオキシコール酸、ドデシル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル等)等で細胞成分を除去し、培養器上に残存する成分を回収することによって得ることができる。簡便には、培養器上で培養した脱落膜由来細胞から上述のようにして細胞成分を除去し、培養器上に細胞外マトリクス成分を残すことによって、細胞外マトリクスの回収と該マトリクスの培養器上へのコーティングを同時に行うことができる。かかる操作は、ロスなく、また、該マトリクスを変性させることなく回収し得る点で好ましい。
1.脱落膜由来間葉系細胞(DMC)の調製
母親から事前に得たインフォームドコンセントをもとに、分娩時の胎盤付属組織のうちヒト卵膜を入手し、それから脱落膜部分の組織を用手的に回収した。ヒト脱落膜組織はハサミで剪断後、PBSに0.1%のコラゲナーゼ I液、0.01% DNase I、0.1% ディスパーゼ(すべてInvitrogen/Gibco-BRL)を添加した溶液の中で、シェーカー付き恒温槽を用いて37℃、60分間加温し、細胞を分離し、培養を行った。回収された細胞は、その形状の観察(図2)、及びファロイジンによるアクチンの染色や抗ビメンチン抗体によるビメンチンの免疫染色により間葉系細胞であることを確認した。また羊膜組織や胎児組織のマーカーであるHLA-Gが陰性であることも免疫染色で確認し、脱落膜由来成分であることを確かめた。さらに上皮細胞のマーカーCK19が陰性であることも抗CK19抗体による免疫染色で確認した。培養には、10%牛胎児血清(FBS)を添加したD-MEM-F12培地(Sigma D8437)を用いて、プラスチック培養デッシュを用いて、37℃、5%CO2下で行った。1週間に2回培地交換を行いtrypsin-EDTA(0.05% Invitrogen)を用いて継代培養した。
卵膜から別途、羊膜上皮細胞(AEC)及び羊膜間質細胞(AMC)を調製した。AEC、AMC、及びDMCについてその細胞増殖能を調べた。各細胞種あたり3系統を用いた。これらの細胞をパッセージの度に2×105細胞/100mmの濃度で培養デッシュに播種し、コンフルエントになるまで培養した。パッセージの際に細胞を再懸濁し細胞数を計測し、同じ密度で新しい培養デッシュに蒔き直した。計測した細胞数から増殖した全細胞数を算出した(図3)。結果、DMCはAECやAMCに比べて高い増殖能を有することが示された。かかる特性はより大量の細胞を確保し得る点で有利である。
2.ヒトES細胞の調製
実験に供したヒトES細胞(KhES1,KhES3)は京都大学再生医科学研究所中辻憲夫研究室で樹立したヒト胚盤胞由来の胚性幹細胞を、ヒトES細胞に関する政府指針に従い分与を受け、実験に供した。中辻研究室の方法(Biochem Biophys Res Commun 2006;345:926-932)に従い、フィーダー細胞としてマウス胎児線維芽細胞(マイトマイシン処理で不活性化;MEF)を蒔いたプラスチック培養デッシュの上で未分化ヒトES細胞を維持培養した。具体的には、培養液は、D-MEM-F12(Sigma D6421)に最終20%のKSR(Invitrogen/Gibco-BRL)、0.1 mM NEAA(non-essential amino acids; Invitrogen/Gibco-BRL)、2 mM L-グルタミン、5 ng/ml ヒトbasic FGF(Wako)及び0.1 mMの2−メルカプトエタノールを添加したものを用い、37℃、2%CO2下に培養した。
パッセージは3〜4日毎におこない、解離液(PBSに0.25%トリプシン、0.1 mg/ml コラゲナーゼ IV液、1 mM CaCl2、最終20%のKSRを添加したもの;すべてInvitrogen/Gibco-BRL)を用いて、ヒトES細胞のコロニーをフィーダー層から解離し、ピペット操作で20個程度の小塊にしたのち、新しいフィーダー層の上に蒔いた。実験に供するまでのヒトES細胞の培養はMEFをフィーダー細胞として用いた従来の方法(Science 1998;282:1145-1147、Nat Biotechnol 2000;18:399-404、Cell 2007;131:861-872)と同様にして行った。
3.DMC上でのヒトES細胞の維持培養
DMCのフィーダー活性を解析する実験としては、DMCを40万細胞/6 cm培養デッシュの濃度で播種し、マイトマイシンC処理(10 μg/ml)後にフィーダー細胞として、ヒトES細胞の培養に用いた。その他の培養操作は、MEFをフィーダーとして用いた、上記、従来の維持培養と同様に行った。
DMCのフィーダー上でヒトES細胞は良く増殖し、40日間で2800倍に細胞数を増した。DMCフィーダー上で形成されたES細胞のコロニーは未分化マーカーであるOct3/4、SSEA4、TRA-1-60、Nanog等をほぼ均一に発現しており、未分化ES細胞の維持培養が効率よく行われたことが示された。
未分化マーカーの発現は、該マーカーの特異抗体を用いて確認した。いずれも商業的に入手可能であり、製造元の取扱説明書に従って用いた。
(方法)
ヒト脱落膜由来の間葉系細胞を実施例1の通り調製した。ヒト脱落膜由来間葉系細胞を0.1%ゼラチンでコーティングしたプラスチック培養デッシュに3.5×104細胞/cm2の濃度で播種し、3日間コンフルエントな状態を維持した状態で培養した。培養細胞をPBSで洗浄した後、その細胞を、デオキシコール酸処理(0.5% sodium deoxycholate/10 mM Tris-HCl, pH8.0を培養デッシュに加えて、4℃で30分間処理)することにより、細胞成分を融解した。培養デッシュ上に残った細胞外マトリクス成分をPBSで洗浄した。ヒト脱落膜由来間葉系細胞の培養には10%牛胎児血清を添加したD-MEM-F12培地あるいはD-MEM-F12培地にN2 supplement(Invitrogen)+20 ng/ml human recombinant FGF-2(Peprotech)+20 ng/ml human recombinant EGF(Peprotech)+5 μg/ml heparinを添加したもの(維持培養液)
を用いた。以下、便宜上、前者の、血清を含有する維持培養液を血清含有維持培養液と、血清を含まない維持培養液を血清不含維持培養液と称する。
この細胞外マトリクスが表面上に残された培養デッシュに、実施例1の要領でヒトES細胞塊を播種し、維持培養を行った。この際の培養液として、上記の維持培養液をマウス胎児線維芽細胞(MEF)で定法の通りにして馴化した培養上清(Nat Biotechnol 2001;19:971-974)を用いた。
対照としては、ゼラチン(Sigma, 0.1%)、フィブロネクチン(Invitrogen, 5μg/cm2)またはマトリゲル(BD, 1:30)を室温で1時間インキュベートしてコーティングした培養デッシュを用いた。
細胞外マトリクスが表面上に残された培養デッシュ、即ち、細胞外マトリクスでコーティングされた培養デッシュを、半乾燥した状態で使用時まで4℃で保存した。
細胞外マトリクスを調製する手順を模式的に図4に示す。
(結果)
ヒト脱落膜由来間葉系細胞の細胞外マトリクス上でヒトES細胞は良く増殖し、59日後には当初の1500万倍の細胞数に増加した。一方、マトリゲル上では59日後に当初の150万倍に増加した。一方、ゼラチン上での細胞増殖はほとんど認められなかった。フィブロネクチン上では細胞増殖は僅かに認められたものの脱落膜由来間葉系細胞の細胞外マトリクス上での細胞増殖に比べるとその程度は著しく低かった。
血清含有維持培養液及び血清不含維持培養液の、どちらの培地を用いて調製した細胞外マトリクスとも、ヒトES細胞の維持培養支持活性を強く有していた。
ヒト脱落膜由来間葉系細胞の細胞外マトリクス上で培養したヒトES細胞は高い核/細胞質比を示し、その大きさは小さく、そしてフラットで細胞密度の高いコロニーを形成した。さらに、未分化マーカーであるOct3/4、SSEA4、TRA-1-60、Nanog、アルカリフォスファターゼなどに強陽性であった。
これらのことは、ヒト脱落膜由来間葉系細胞の細胞外マトリクスは、マトリゲルと同等あるいはそれ以上の維持培養支持活性をヒトES細胞に対して有することを示している。また、MEFの培養上清の代わりに、ヒト脱落膜由来の間葉系細胞の培養上清を用いた場合も、ヒト脱落膜由来間葉系細胞の細胞外マトリクスはマトリゲルと同等あるいはそれ以上の維持培養支持活性を示した。
(方法)
ヒト脱落膜由来間葉系細胞の細胞外マトリクスの調製やヒトES細胞の維持培養は培養液を除き、実施例2と同様に行った。培養液には、MEFの培養上清の代わりに、化学合成培地であるSTEMPRO hESC SFM培養液(Invitrogen社)を用いて培養した。
さらに、冷蔵庫(4℃)で3週間及び8ヶ月間保存した、ヒト脱落膜由来間葉系細胞の細胞外マトリクスがコーティングされた培養デッシュを用いて同様にヒトES細胞の維持培養を行った。
(結果)
ヒト脱落膜由来間葉系細胞の細胞外マトリクス上でSTEMPRO hESC SFM培養液を用いた培養で、ヒトES細胞は良く増殖し、44日後には当初の3400万倍の細胞数に増加した。このように培養されたヒトES細胞は未分化マーカーであるOct3/4、SSEA4、TRA-1-60、Nanog、アルカリフォスファターゼ等に強陽性であった。
これらの結果より、ヒト脱落膜由来間葉系細胞の細胞外マトリクスは化学合成培地を用いた場合でも優れた多能性幹細胞の維持培養支持活性を有することがわかる。
多能性幹細胞の維持培養支持活性について、冷蔵庫(4℃)で3週間保存した培養デッシュを用いた場合と8ヶ月間保存した培養デッシュを用いた場合とを比較したところ、差は
なかった。この結果より、本発明の、脱落膜由来間葉系細胞の細胞外マトリクスは、少なくとも8ヶ月間冷蔵庫で保存してもその維持培養支持活性を保持していることがわかる。
(方法)
実施例3のように維持培養を行い、ヒトES細胞を10代継代した後、免疫染色、試験管内分化誘導と奇形腫形成法で多能性を確認した。
免疫染色に用いた抗体等の試薬は、いずれも商業的に入手可能であり、製造元の取扱説明書に従って使用した。
試験管内分化誘導には、接着培養による血清処理法(Nat Biotechnol 2007;25:681-686.)あるいはPA6細胞上での接着培養によるSDIA法(Neuron 2000;28:31-40)を用いた。
奇形腫形成法では、ヒトES細胞をSCIDマウス精巣に50万細胞移植し、腫瘍形成を観察した。
(結果)
10代継代後も、ヒトES細胞は未分化マーカーであるOct3/4、SSEA4、TRA-1-60、Nanog、アルカリフォスファターゼ等に強陽性であった。また、試験管内分化誘導では、接着培養法で内胚葉由来の上皮であるHNF3s/E-cadherin陽性の細胞、及び中胚葉由来の細胞であるBrachyury陽性の細胞、SDIA法でNestin/Pax6陽性の神経前駆細胞への分化を確認した。また、精巣への移植により12週間後に脳組織、軟骨組織、分泌粘膜組織などを含む奇形腫の発生を確認した。これらの結果より、繰り返し継代した後でも、ヒト脱落膜由来の間葉系細胞の細胞外マトリクス上で維持培養されたヒトES細胞は多能性を有していることが示された。
(方法)
実施例3のように、ヒト脱落膜由来の間葉系細胞の細胞外マトリクスとSTEMPRO hESC SFMあるいはMEF培養上清を維持培養液として用いて、単一分散したヒトES細胞を培養した。ヒトES細胞は、以前の記載の通りに単一分散し(Nat Biotechnol 2007;25:681-686.)、24ウェルプレート(ヒト脱落膜由来間葉系細胞の細胞外マトリクスがコーティングされている)の1ウェルあたり2000細胞播種し7日間培養した。最初の2日間は、ROCK阻害剤Y-27632 (10μM; Mol Pharmacol 2000;57:976-983.)を添加した培養液中で培養した。
(結果)
ヒト脱落膜由来間葉系細胞の細胞外マトリクス上でSTEMPRO hESC SFMあるいはMEF培養上清を用いて培養したものは、7日後にそれぞれ65倍、25倍に細胞数を増加させた。これらの細胞はコロニーを形成し、該コロニーは未分化マーカーであるアルカリフォスファターゼに強陽性であった。
(方法)
実施例3のように、ヒト脱落膜由来の間葉系細胞の細胞外マトリクスとSTEMPRO hESC SFMあるいはMEF培養上清を維持培養液として用いて、ヒトiPS細胞(253G4; Nat Biotechnol 2008;26:101-106.)を細胞塊で継代培養した。6ウェルプレート(ヒト脱落膜由来間葉系細胞の細胞外マトリクスがコーティングされている)の1ウェルあたり、33000細胞を播種し、16日間継代維持培養を行った。
(結果)
ヒト脱落膜由来の間葉系細胞の細胞外マトリクス上でSTEMPRO hESC SFMあるいはMEF培養上清を用いた維持培養で、ヒトiPS細胞は良く増殖し、16日間でそれぞれ200倍、60倍に細胞数が増加した。また。細胞は未分化マーカーであるOct3/4、SSEA3、TRA-1-60、アルカリフォスファターゼ等に強陽性であった。これらのことは、化学合成培地とヒト脱落膜由来の間葉系細胞の細胞外マトリクスでヒトiPS細胞もヒトES細胞と同様に維持培養可能であることを示す。
(方法)
ヒト脱落膜細胞由来の細胞外マトリクス(PCM-DM)は実施例2の通り調製した。
遺伝子導入用のレトロウイルス(pMXs-hOct3/4,pMXs-hSox2,pMXs-hKlf4,pMXs-hc-Myc)は、常法に則って作成した(Takahashiら, Cell, vol.131, pp.861-872, 2007)。pUMVC及びpCMV-VSV-Gと共に、LipofectAMINE2000を用いて293T細胞にトランスフェクションしたのち、2〜3日後の培養上清を0.45mmフィルターで濾過した。濾液(レトロウイルス溶液)をウイルス感染に用いた。
(ヒト細胞への感染による遺伝子導入)
1.ヒト成人皮膚由来線維芽細胞(網膜色素変性患者よりインフォームドコンセント下に供与されたもの)をゼラチンコートした6穴培養プレート(BD:353046)の1穴あたり1x105個ずつ細胞を播き、MF-medium(TOYOBO:TMMFM-001)中で培養した。
2.翌日、培地を除去し、レトロウイルス溶液(上記の293T細胞の培養上清)をそれぞれ1穴あたり3mlずつ4種類、合計12ml加えた(感染1回目)。
3.翌日、前日のウイルス溶液を除去し、新たなウイルス溶液を3mlずつ合計12ml加えた(感染2回目)。
(PCM-DM上でのiPS細胞樹立)
4.翌日、新しいDMEM + 10%FBS + penicillin-streptomycinに培地交換した。Valproic acid sodium salt(以下VPA,CALBIOCHEM:676380)を終濃度1mMとなるように添加した。
5.更に翌日、PBS(Invitrogen:10010-023)で1回細胞を洗浄した後0.25% Trypsin-EDTA(Invitrogen: 25200-056)で細胞を剥がし、1x106個の細胞をDMEM + 10% FBS + penicillin-streptomycin + 1mM VPAに懸濁してφ10cmのPCM-DMデッシュ上に播き直した。
6.翌日、StemPro hESC SFM (Invitrogen: A10007-01) + 2.5ng/ml human recombinant basic FGF (Wako: 064-04541) + 1mM VPA + 10mM Y-27632 dihydrochloride (TOCRIS: 1254)に培地交換した。
7.コロニーが出現するまで、1日おきに同培地で培地交換を繰り返し、2〜3週間培養した。
(結果)
PCM-DMデッシュ上で増殖した線維芽細胞の中に、やや隆起した多数(1プレート当たり>50コロニー)のコロニーの形成が認められ(図5)、PCM-DM上での培養開始16日後にこれらのコロニーをマイクロピペットチップでピックアップして新しいPCM-DMデッシュ上に播き直したところ、8割以上のコロニーがヒトES細胞様の扁平な形態を示した(図6)。これらのヒト多能性幹細胞様コロニーをヒト多能性幹細胞マーカーであるNanog, SSEA-4に対する抗体(anti-Nanog: ReproCELL, RCAB0004, anti-SSEA-4: CHEMICON, MAB4304)で免疫染色をおこなったところ、共染色されるコロニーが多数見られた(図7)。以上より、これらの遺伝子導入されたヒト線維芽細胞から、PCM-DM上でヒトiPS細胞が効率よく樹立できることが示された。
Claims (17)
- 脱落膜由来細胞由来の細胞外マトリクスの存在下で多能性幹細胞を培養することを特徴とする、多能性幹細胞の培養方法。
- 脱落膜由来細胞が、間葉系細胞である、請求項1記載の方法。
- 脱落膜由来細胞と多能性幹細胞の両方が同種の哺乳動物に由来するものである、請求項1記載の方法。
- 哺乳動物がヒトである、請求項3記載の方法。
- 多能性幹細胞が、ヒトES細胞又はヒトiPS細胞である、請求項1記載の方法。
- 脱落膜由来細胞由来の細胞外マトリクスを含有してなる、多能性幹細胞の培養剤。
- 脱落膜由来細胞が、間葉系細胞である、請求項6記載の剤。
- 脱落膜由来細胞と多能性幹細胞の両方が同種の哺乳動物に由来するものである、請求項6記載の剤。
- 哺乳動物がヒトである、請求項8記載の剤。
- 多能性幹細胞が、ヒトES細胞又はヒトiPS細胞である、請求項6記載の剤。
- 脱落膜由来細胞の細胞外マトリクスでコーティングされた、多能性幹細胞培養用の培養器。
- 脱落膜由来細胞が、間葉系細胞である、請求項11記載の培養器。
- 脱落膜由来細胞と多能性幹細胞の両方が同種の哺乳動物に由来するものである、請求項11記載の培養器。
- 哺乳動物がヒトである、請求項13記載の培養器。
- 多能性幹細胞が、ヒトES細胞又はヒトiPS細胞である、請求項11記載の培養器。
- 以下の(i)及び(ii)を含む、多能性幹細胞の培養用キット;
(i)脱落膜由来細胞由来の細胞外マトリクスを含有してなる、多能性幹細胞の培養剤、(ii)多能性幹細胞の培養に使用すべき、又は使用され得ることを記載した説明書。 - 以下の(i)及び(ii)を含む、多能性幹細胞の培養用キット;
(i)脱落膜由来細胞の細胞外マトリクスでコーティングされた、多能性幹細胞培養用の培養器、
(ii)多能性幹細胞の培養に使用すべき、又は使用され得ることを記載した説明書。
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