JP6510809B2 - 乳酸菌類食品の乾燥方法及び乳酸菌類食品の乾燥装置、並びに乾燥乳酸菌類食品 - Google Patents
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Description
食品の乾燥のための処理方法としては、様々な方法が知られているが、例えば、天日乾燥、高温加熱する場合にはマイクロ波や遠赤外線、熱風を利用した乾燥があり、また、減圧(真空)乾燥、凍結乾燥等がある。
また、高温加熱下での乾燥は、食品に含まれるビタミン類や蛋白質の破壊又は熱変性が生じ、また、食品の表面のみが急激に乾燥硬化しやすく、均質に乾燥されない場合もあり、栄養価の大幅な低減のみならず、色や香り、食味も損なわれる等の課題を有していた。
一方、減圧(真空)乾燥は装置内の密閉性が要求され、使用する装置が高コストである。また、凍結乾燥は、上記のような高温加熱による栄養価の低減を抑制することができるものの、装置自体が高価であり、装置の稼働コストも高く、更に凍結による細胞組織の破壊により、香りや食味が損なわれるという課題を有していた。
特許文献1に記載された方法は、従来の熱風乾燥方法であり、具体的には60℃〜90℃の熱風を一定時間吹き付けることで、乳酸菌類食品を乾燥する方法である。尚、特許文献1には、食品を−20℃以下で凍結させ、真空乾燥する凍結真空乾燥方法についても開示されている。また、特許文献2、3に記載された方法は、凍結乾燥する方法である。
しかしながら、乳酸菌類食品の乾燥方法として熱風乾燥方法を用いる場合には、従来からの課題、即ち、食品に含まれるビタミン類や蛋白質の破壊又は熱変性が生じ、また、食品の表面のみが急激に乾燥硬化しやすく、均質に乾燥されない場合もあり、栄養価の大幅な低減のみならず、色や香り、食味も損なわれる等の課題を有していた。
特に、乳酸菌類食品の乾燥方法として熱風乾燥方法を用いることは、前記熱風により、乾燥前に乳酸菌類が大幅に死滅する虞があるという技術的課題があった。
その結果、熱風乾燥方法で用いられる温度よりも低い温度条件下、及び所定の湿度条件下で、除湿乾燥することにより、乳酸菌類の死滅を抑制できることを知見し、本発明の乳酸菌類食品の乾燥方法を想到した。
このような雰囲気下での常温乾燥によれば、乳酸菌類の死滅を抑制しつつ食品を乾燥できる。尚、本発明においては、50℃以下でのほぼ一定した温度での乾燥を常温乾燥と言う。尚、温度が50℃を超えると乾燥時間は短くなるが、乳酸菌類の死滅数が多くなり好ましくない。また相対湿度30%を超える場合には、除湿乾燥するのに時間がかかり好ましくない。
また、本発明に係る乳酸菌類食品の乾燥方法にあっては、前記乾燥庫の雰囲気を除湿する除湿機からの排熱により前記乾燥庫内の雰囲気を加熱し、前記乾燥庫内に設けられたダクトファンにより該乾燥庫内の雰囲気を循環させて、除湿乾燥する。
このように、前記乾燥庫の雰囲気を除湿する除湿機からの排熱を用いて、乾燥庫内の雰囲気を加熱することにより、エネルギー効率を向上させることができ、いわゆる省エネになる。また、前記乾燥庫内の雰囲気を循環させることにより、該乾燥庫内の雰囲気の温度及び湿度が均一になりやすく、乳酸菌類食品を均質かつ短時間で乾燥させることができる。
前記食品の含水率が16%を超える場合には、粉砕して粉化(粉末化)ことが困難になり、また場合によっては腐食する期間が早まるため、好ましくない。
40℃前後の温度が発酵に適した温度であり、乳酸菌類が増殖するため、前記乾燥庫内の温度が50℃以下、より好ましくは、35℃乃至50℃で乾燥するのが良い。
このように、前記乾燥庫内の雰囲気を水平方向に循環させることにより、該乾燥庫内の雰囲気の温度及び湿度が均一になりやすく、乳酸菌類食品を均質かつ短時間で乾燥させることができる。
本発明に係る乳酸菌類食品の乾燥方法は、乳酸菌類を含む食品を乾燥庫内に配置し、前記乾燥庫内を大気圧下とし、温度50℃以下、相対湿度30%以下で除湿乾燥することを特徴とするものである。
即ち、温度及び湿度が、前記した所定条件下の雰囲気下における乾燥であれば、乳酸菌類の死滅を抑制しつつ乾燥を行うことができる。その結果、乳酸菌類を著しく失うことなく乾燥乳酸菌類食品を得ることができ、乳酸菌類を生かしたままさまざまな加工品を製造することができる。
また、乳酸菌類とは、ビフィズス菌、ガゼリ菌、ブルガリア菌、サーモフィラスキン、L.ガゼイシロタ株、クレモス菌、ラブレ菌等、あるいはまた前記微生物が混合したものであって、人体に有益な微生物をいう。
この常温乾燥によれば、乳酸菌類を死滅させず、凍結乾燥のような高価な設備や稼働コストを要することなく、栄養価も凍結乾燥と同等程度に保持することができ、乳酸菌類食品と同様な色や香り、凝縮された味を有する乾燥乳酸菌類食品を得ることができる。
前記乾燥温度は、35℃乃至50℃であることが好ましい。40℃前後の温度が発酵に適した温度であり、乳酸菌類が増殖する。そのため、乾燥庫内の雰囲気の温度は50℃以下、より好ましくは、35℃乃至50℃とするのが良い。
前記常温乾燥の方法は、特に限定されるものではないが、満遍なく、効率的に乳酸菌類食品を乾燥させるためには、温度、湿度をできる限り一定に保ちながら、雰囲気を循環させることにより除湿乾燥する。
このように、前記乾燥庫内の雰囲気が循環することにより、該乾燥庫内の雰囲気の温度及び湿度が均一になりやすく、乳酸菌類食品を均質かつ短時間で乾燥させることができる。
また、前記乾燥庫の雰囲気を除湿する除湿機からの排熱を用いて、前記乾燥庫内の雰囲気を加熱するのが省エネの観点からも好ましい。
一方、含水率が16%を超える場合には、粉砕して粉化(粉末化)ことが困難になり、また場合によっては腐食する期間が早まるため、好ましくない。
乳酸菌類食品の含水率が10%乃至16%となるまでの乾燥時間は、20時間以内、通常、6〜20時間程度である。
図1に示す乳酸菌類食品の乾燥装置は、筐体1の中に、ダクトファン10及び水平方向に風を発生する複数のファン3を内部側面に備えた乾燥庫2と、乾燥庫2内に除湿した乾燥空気(除湿空気)Aを送り込む除湿機4とを備えている。
また、前記乾燥庫2内には、試料(乳酸菌類食品)Sの乾燥の経過を測定するための計測器として、温湿度計5と、重量計6とが設けられている。
このようなに乾燥庫2内において、水平方向に雰囲気を循環させることにより、試料Sの上面に風が直接当たるのを抑制できる。即ち、試料Sの上面全体に風が当たるように、送風の均一化が図られ、試料Sの配置による乾燥具合のムラを抑制することができ、乾燥時間の短縮化が図られる。
尚、乾燥庫2内の水平方向の風速は、送風口の近傍が速く、離れるにしたがって、流速が落ちる。そのため、乾燥庫2内の流速は、3.4m/s〜0.8m/sの範囲に制御されるのが好ましく。平均流速が1m/S〜2m/sの範囲に制御されるのが好ましい。
この流速が速くなりすぎると、乾燥時間は短くなるが、試料(乳酸菌類食品)Sの表面のみが乾燥するという弊害が生じる。一方、流速が遅すぎると、乾燥時間が長くなるという弊害がある。
更に、試料Sの乾燥具合のムラを抑制するために、試料Sをフロート状態で載置し、試料Sが落下しないように回転させる等の手段を用いても良い。
そして、除湿乾燥する際、除湿機4から導入された雰囲気は、ダクトファン10、ファン3によって、試料Sに対して水平方向から当たり、その後、乾燥庫2と筐体1の間の空間に排出され、前記除湿機4から再び乾燥庫2内に導入される。
前記試料Sは、前記した所定温度、所定湿度の雰囲気に曝されることによって乾燥する。このとき、除湿機4からの排熱により乾燥庫2と筐体1の間の空間の雰囲気が昇温するため、加熱手段(例えば、ヒータ)の容量を下げることができ(あるいは、加熱手段を省略でき)、稼動コストを低減することができる。
この他の実施形態の乾燥装置は、乾燥庫2内に除湿機4を設けた点に特徴がある。また、ダクト上部に吸気口、ダクト中央部にファン11を備え、かつ、屈曲したダクトの下部から乾燥庫2内に水平方向に送風する送風口を備えたダクトファン10が設けられている点に特徴がある。
このように乾燥庫2内に除湿機4を設けることにより、除湿機4からの排熱を乾燥庫2内の雰囲気の昇温に、より有効に利用することができる。
また、ファン11が中央部あるいは図1に示す送風口に設けられている場合には、ダクト上部の吸気口に設けられている場合に比べて、乾燥庫2内の雰囲気の循環を制御し易く、より効率的に除湿乾燥を行うことができる。
乳酸菌類食品として、ガセリ菌SP株5億以上、ビフィズス菌SP株10億以上を含有する、雪印メグミルク製のヨーグルト、商品名「雪印ナチュレ恵」を用いて、乾燥後の菌数及び含水率の測定を行った。尚、商品名「雪印ナチュレ恵」の成分は、成分規格:無脂乳固形分:9.5%/乳脂肪分:3.0%であり、またパッケージ記載された栄養成分は、100g当たり/エネルギー:63kcal/たんぱく質:3.6g/脂質:3.1g/炭水化物:5.2g/ナトリウム:45mg/カルシウム:110mg/ガラクトオリゴ糖:0.5gである。
そして、トレイから試料を取り出し、20時間経過後の菌数及び含水率を測定した。尚、菌数はMSR寒天平板嫌気培養法により計測し、含水率は赤外線水分計で測定した。その結果を表1に示す。
尚、表1の重量変化(乾燥後)は、乾燥後の重量を、乾燥前の重量を100%とし、パーセント表示している。
同様に、実施例2における時間経過に伴う、乾燥庫内温度、乾燥庫内湿度、試料温度、含水率の変化を図4に、実施例3における時間経過に伴う、乾燥庫内温度、乾燥庫内湿度、試料温度、含水率の変化を図5に、実施例4における時間経過に伴う、乾燥庫内温度、乾燥庫内湿度、試料温度、含水率の変化を図6に示す。
また、実施例1〜4にあっては、乾燥前の乳酸菌類食品と同様な色や香り、凝縮された味を有していたが、比較例1〜3にあっては、濃いクリーム色で味が香ばしく,焦げ臭さが残っていた。
実験1で用いた乳酸菌類食品、図2に示した装置を用い、温度35℃(実施例5)、40℃(実施例6)、45℃(実施例7)、50℃(実施例8)、65℃(比較例4)と種々変化せて、20時間除湿乾燥した。このときの乾燥庫内の湿度は30%以下になるようにした。
また、50℃よりも高い温度65℃(比較例4)の場合は、静岡精機製の乾燥機ドッピーを用いて、縦40cm×横55cmのトレイに前記乳酸菌類食品(試料)を収容し、前記乾燥庫内を大気圧下とし、熱風を送風して20時間除湿乾燥した。
そして、トレイから試料を取り出し、板状の乾燥乳酸菌類食品をミルで10秒攪拌し粉末状にし、前記粉末状の試料の菌数及び含水率を測定した。同様に、菌数はMSR寒天平板嫌気培養法により計測し、含水率は赤外線水分計で測定した。尚、前記ミルで粉末状になす際、加工熱が生じるが、温度が50℃以下の状態を維持しつつ、加工処理した。
まず、上記商品を8時間かけて、常温から−40℃まで冷却し、−40℃で40分維持する。一方、20分かけて常圧から20Pa以下まで減圧する。
更に、4時間かけて−40℃から−10℃へ昇温させ、−10℃、20Pa以下で1時間維持する。
その後、4時間かけて−10℃から−20℃へ昇温させ、20℃、20Pa以下で5時間維持し、圧力、温度を常圧、常温に戻し、乾燥を終了した。尚、この凍結乾燥方法に要した時間は、全体で約23時間であった。
そして、凍結乾燥方法により得られた前記粉末状の乾燥乳酸菌類食品の菌数及び含水率を、同様な方法により測定した。その測定結果を表2に示す。
また、実施例5〜実施例8にあっては、乾燥前の乳酸菌類食品と同様な色や香り、凝縮された味を有していたが、比較例4にあっては、濃いクリーム色で味が香ばしく,焦げ臭さが残っていた。
他の乳酸菌類に対する効果を確認するため、乳酸菌類食品として、ブルガリア菌2038株10億以上、サーモフィラス菌1131株100億以上を含有する、明治乳業製のヨーグルト、商品名「ブルガリア」を用いた。
この実験は、実験1と同様に、前記乾燥庫内を大気圧下とし、表3に記載するように、温度35℃(実施例9)、40℃(実施例10)、50℃(実施例11)と種々変化せて、20時間除湿乾燥した。このときの乾燥庫内の湿度は30%以下になるようにし、20時間経過後の菌数及び含水率を測定した。
また、実験2と同様に、温度40℃で乾燥した板状の乾燥乳酸菌類食品をミルで10秒攪拌し粉末状にし、前記粉末状の試料(実施例12)の菌数及び含水率を測定した。これらの結果を表3に示す。
表3に示すように、実施例9〜実施例12に示すように、ブルガリア菌2038株10億以上、サーモフィラス菌1131株にも有効であることが確認された。
この実験は、実験1と同様に、前記乾燥庫内を大気圧下とし、表3に記載するように、温度40℃(実施例13)で、20時間除湿乾燥した。このときの乾燥庫内の湿度は30%以下になるようにし、20時間経過後の菌数及び含水率を測定した。
また、実験2と同様に、温度40℃で乾燥した板状の乾燥乳酸菌類食品をミルで10秒攪拌し粉末状にし、前記粉末状の試料(実施例14)の菌数及び含水率を測定した。これらの結果を表3に示す。
表3に示すように、実施例13、実施例14に示すように、Lカセイシロタ株にも有効であることが確認された。
この実験は、実験1と同様に、前記乾燥庫内を大気圧下とし、表3に記載するように、温度40℃(実施例15)で、20時間除湿乾燥した。このときの乾燥庫内の湿度は30%以下になるようにし、20時間経過後の菌数及び含水率を測定した。
また、実験2と同様に、温度40℃で乾燥した板状の乾燥乳酸菌類食品をミルで10秒攪拌し粉末状にし、前記粉末状の試料(実施例16)の菌数及び含水率を測定した。これらの結果を表3に示す。
表3の実施例15、実施例16に示すように、乾燥前の菌数は不明であるものの、他の実施例と同様な菌数を有しているため、クレモス菌FC株にも有効であることが確認された。
尚、前記食品は例示であって、当然、乳酸菌類が必要な他の食品にも適用することができる。
2 乾燥庫
3,11 ファン
4 除湿機
5 温湿度計
6 重量計
Claims (3)
- 乳酸菌類を含む食品を乾燥庫内に配置し、前記乾燥庫内を大気圧下とし、前記乾燥庫の雰囲気を除湿する除湿機からの排熱により前記乾燥庫内の雰囲気を加熱し、前記乾燥庫内に設けられたダクトファンにより該乾燥庫内の雰囲気を循環させて、
温度50℃以下、相対湿度30%以下で除湿乾燥し、前記食品の含水率が10%以上、16%以下となるまで乾燥することを特徴とする乳酸菌類食品の乾燥方法。 - 前記温度が35℃乃至50℃であることを特徴とする請求項1記載の乳酸菌類食品の乾燥方法。
- 請求項1または請求項2に記載の乳酸菌類食品の乾燥方法に用いられる乾燥装置であって、
前記乾燥庫内に、該乾燥庫内の雰囲気を除湿する除湿機が設けられ、かつ、該乾燥庫内
にダクトファンが設けられ、
前記ダクトファンにより乾燥庫内に水平方向の流れが形成されることを特徴とする乳酸
菌類食品の乾燥装置。
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