JP6508568B2 - タービンブレード用素材の形状矯正方法及びタービンブレード用素材の製造方法 - Google Patents
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Description
このタービンブレードは、荒地と呼ばれる棒状の素材を例えば1000℃程度の高温に加熱し、タービンブレード形状の型彫り面を有する上型と下型とで熱間や恒温での鍛造やプレス(以下、熱間鍛造)によってタービンブレード用素材の形状に塑性加工が行われ、その後、最終形状への機械加工が施されて製造されている。例えば、火力発電所に設置されるタービンは、高温流体の流れをタービンブレードでタービンの回転運動に効率よく変換するため、タービンブレードの形状は極めて重要である。
ところで、タービンブレード用素材は熱処理を施されると変形が生じる。そのため、例えば特開平9−157739号公報(特許文献1)では熱処理時に変形を防止する熱処理方法の発明が開示されている。しかし、実際には熱処理時に確実に変形を防止するのは極めて困難であり、熱処理後のタービンブレード用素材に生じた変形を所望の形状に矯正することが行われている。例えば、特開平8−276216号公報(特許文献2)ではタービンブレード用素材の根部を固定し、翼部の上下方向から加圧機構によって加圧して形状の矯正が行われている。
上述した特許文献2の方法では、根部(翼根)が当て金によるクランプ機構により把持されている。例えば、上記のTi合金を矯正しようとすると、タービンブレード用素材を加熱したとしても根部を把持する当て金への熱伝導が生じて、タービンブレード用素材の温度が低下し、スプリングバックにより所望の形状に矯正することは困難である。また、大型のタービンブレード用素材の矯正には熱間で大きな荷重を加えないとならないが、上述したように、特許文献2の方法では熱間での形状矯正に課題が残っている。
本発明の目的は、熱処理後のタービンブレード用素材に生じた捻じれと反りをより確実に矯正可能なタービンブレード用素材の形状矯正方法及びタービンブレード用素材の製造方法を提供することである。
すなわち本発明は、少なくとも根部と翼部とを有するタービンブレード用素材の形状矯正方法であって、このタービンブレード用素材の形状矯正は、根部を固定する根部固定部と、翼部の捻じれ又は反りの矯正時に翼部を支持するための第1と第2の少なくとも2つの支点を備える翼部支点部と、翼部の先端を押圧する押圧手段と、を有する形状矯正装置を用いて、この形状矯正装置の根部固定部に加熱されたタービンブレード用素材の根部を挿入して固定する根部固定工程と、翼部の捻じれを矯正する部分と第1の支点とを接触させ、押圧手段を用いて翼部の先端を押圧することにより捻じれを矯正する捻じれ矯正工程と、押圧手段を用いて翼部の先端を更に押圧して、翼部を第2の支点に接触させ、更に翼部の先端を押圧することにより翼部の反りを矯正する反り矯正工程と、を含むタービンブレード用素材の形状矯正方法である。
好ましくは、押圧手段はプレス機である。
好ましくは、押圧手段はプレス機である。
図1はタービンブレード用素材1の一例を示す模式図である。タービンブレード用素材1は、根部2と翼部3を備える。翼部3はその先端方向に向かって徐々に捻じれた形状を有するものである。このタービンブレード用素材の熱処理後の形状の一例を図3に示す。
図3に示すように、熱処理後のタービンブレード用素材は過度に捻じれを生じて、翼部先端方向に向かって反りが生じている。この複雑な変形を所望の形状とするには、矯正する順序が重要となる。
図2は本発明のタービンブレード用素材1の形状矯正装置11の一例を示す模式図である。この形状矯正装置11は、根部2を挿入して固定するための根部固定部12と、翼部3の捻じれ又は反りの矯正時に翼部を支持するための第1の支点(以下、支点Aともいう)と第2の支点(以下、支点Bともいう)とを備える翼部支点部13と、翼部の先端を押圧する押圧手段(押圧装置)14と、を有するものである。なお、この形状矯正装置を用いて形状矯正されるタービンブレード用素材は、予め加熱装置(図示せず)により加熱されたものを用いる。加熱装置は図2の形状矯正装置11とは別に、通常の加熱炉であれば良い。また、前記押圧装置はプレス機であることが好ましい。これは、タービンブレード用素材が50インチ以上の大型化となると、反りの矯正に大きな荷重を加えるのに容易なためである。
本発明では、例えば50インチ以上のタービンブレード用素材の形状矯正を容易とすることを目的として、所望の温度に加熱を行う。加熱の温度は、材質によって異なるが、例えば、Ti合金であれば、200℃を下限とし、焼鈍または時効処理の温度未満を上限とするのが良い。これは、前述する下限の温度未満では、スプリングバックによって形状矯正が不十分となる場合があるためである。また、上限温度を超えると、後に行う焼鈍や時効処理でも所望の金属組織が得られない場合があるためである。
加熱したタービンブレード用素材1は、その根部を図2に示す根部固定部12に挿入する。根部固定部は、前記した特許文献2のような当て金によるクランプ機構は避けて、2つで一対の柱状の根部固定部の間に根部を挿入する。加熱したタービンブレード用素材1の温度をできるだけ低下させないようにする必要がある。そのため、図2では根部2は形状矯正装置11に設けられた2つの柱状部分の間に挟まされるように挿入する構造として根部固定部12を示している。それぞれの柱状部分の間隔は、加熱して膨張した根部の厚さよりも1〜5mm程度広い間隔とする。また、熱間鍛造後の根部の形状は、前記特許文献2の図面で示される根部(翼根)の形状とは異なり、立方体である。その立方体の根部を若干傾斜させて、立方体(根部)の下辺、左右の何れかの辺を柱状部分に接触させ、できるだけ根部をとおしてタービンブレード用素材の温度を低下させないようにするのが好ましい。
次に、翼部3の捻じれを矯正する部分と翼部支点部13に設けられた支点Aとを接触させ、翼部の先端を押圧して支点Aと対角位置に力が加わることにより捻じれを矯正する。タービンブレード用素材の変形は、経験上、ほぼ同じ傾向を示している。支点Aとする場所は、タービンブレード用素材1のボス部4から見て翼部の先端方向である
図2に示す翼部支点部13に設けられた凸状の位置決め部17は、タービンブレード用素材1を翼部支点部13上の所定の位置に載置可能なように位置決めを行う部分であり、形状矯正中(押圧中)にタービンブレード用素材の位置ずれを防止するものある。支点Aは、形状矯正中にタービンブレード用素材1と翼部支点部13とが最初に接触する部分であり、その接触する部分の支点Aの形状は平坦としている。
この翼部支点部13の高さは、タービンブレード用素材1のスプリングバックを考慮して、本来の製品形状の位置よりも若干多めに矯正可能なように設定すると良い。また、タービンブレード用素材1の長さによって、翼部支点部13の高さは変更すべきであり、翼部支点部13を組立て体(積層体)としておけば、高さの調整が容易になる。また、翼部支点部13を設ける場所はタービンブレード用素材1の長さに応じて変化させることが必要なため、形状矯正装置11に翼部支点部13の位置を変化させるスライド機構を設けておくのが好ましい。
そして、支点Aに接触したタービンブレード用素材1の翼部の先端を押圧し続けることにより捻じれが徐々に矯正され、やがて支点Bにタービンブレード用素材表面が接触する。すると、今度は、支点Bが反りの矯正を行う支点となって、更に翼部の先端を押圧して翼部の反りを矯正する。反りの矯正の終了は図2に示す押圧停止部15に翼部の先端が接触することで終了する。前記の支点Bはタービンブレード用素材に接触することから、その接触面の形状は矯正によって支点Bの形状がタービンブレード用素材に転写しにくい曲面形状とするのが好ましい。
また、この押圧停止部15の高さは、タービンブレード用素材1のスプリングバックを考慮して、本来の製品形状の位置よりも若干多めに矯正可能なように設定すると良い。また、タービンブレード用素材1の長さによって、押圧停止部15の高さは変更すべきであり、押圧停止部15はタービンブレード用素材1の長さに応じて、押圧停止部15を組立て体(積層体)としておけば、高さの調整が容易になる。また、押圧停止部15を設ける場所はタービンブレード用素材1の長さに応じて変化させることが必要なため、形状矯正装置11に押圧停止部15の位置を変化させるスライド機構を設けておくのが好ましい。
熱間鍛造と固溶化熱処理を行ったTi合金製タービンブレード用素材を用意した。用意したタービンブレード用素材には捻じれと反りが見られるものであった。
形状矯正を行う前にタービンブレード用素材を650℃で加熱した。加熱温度は後に行う焼鈍温度マイナス60℃である。加熱したタービンブレード用素材の形状矯正を図2に示す形状矯正装置11を用いて行った。
そして、根部2を根部固定部12に挿入して固定して、更に、翼部支点部13に設けられた凸状の位置決め部17にタービンブレード用素材1を接触させて支点Aとなる場所を確保した。次に、最大荷重1000トンの油圧プレス機(押圧手段14)を用いて翼部の先端を押圧した。このとき、油圧プレス機(押圧手段14)と翼部の先端の間にスペーサ16を挟めてプレス機の押圧部分の形状が翼部の先端に転写されるのを防止した。
徐々に荷重を加えて翼部3の捻じれと反りを矯正した。このとき、翼部の捻じれを矯正する支点Aに翼部が最初に接触し、続いて翼部の反りを矯正する支点Bに接触し、続いて支点Bによって反りの矯正が行えたことを確認した。形状矯正の終了は押圧停止部15に翼部3が接触し、1000トンの荷重を加えたところで終了した。
以上の結果から、熱処理後のタービンブレード用素材に生じた捻じれと反りをより確実に矯正することが可能となることが分かる。また、熱間で形状矯正の作業が行えるため、特に冷間では形状矯正が困難なスプリングバックの大きなTi合金製タービンブレード用等に効果を奏することが確認された。
2 根部
3 翼部
4 ボス部
11 形状矯正装置
12 根部固定部
13 翼部支点部
14 押圧手段(押圧装置)
15 押圧停止部
16 スペーサ
17 位置決め部
Claims (4)
- 少なくとも根部と翼部とを有するタービンブレード用素材の形状矯正方法であって、
前記タービンブレード用素材の形状矯正方法は、
前記根部を固定する根部固定部と、
前記翼部の捻じれ又は反りの矯正時に前記翼部を支持するための第1と第2の少なくとも2つの支点を備える翼部支点部と、
前記翼部の先端を押圧する押圧手段と、を有する形状矯正装置を用いて、
前記形状矯正装置の根部固定部に加熱されたタービンブレード用素材の根部を固定する根部固定工程と、
前記翼部の捻じれを矯正する部分と前記第1の支点とを接触させ、前記押圧手段を用いて前記翼部の先端を押圧することにより捻じれを矯正する捻じれ矯正工程と、
前記押圧手段を用いて前記翼部の先端を更に押圧して、前記翼部を前記第2の支点に接触させ、更に前記翼部の先端を押圧することにより前記翼部の反りを矯正する反り矯正工程と、
を含むことを特徴とするタービンブレード用素材の形状矯正方法。 - 前記押圧手段はプレス機であることを特徴とする請求項1に記載のタービンブレード用素材の形状矯正方法。
- 棒状の素材を加熱し、タービンブレード形状の型彫り面を有する上型と下型とで熱間鍛造して少なくとも根部と翼部とを有するタービンブレード用素材を形成し、
前記タービンブレード用素材の翼部の捻じれ又は反りを矯正して、タービンブレード用素材を得るタービンブレード用素材の製造方法であって、
前記タービンブレード用素材の翼部の捻じれ又は反りを矯正する矯正方法は、
前記根部を固定する根部固定部と、
前記翼部の捻じれ又は反りの矯正時に前記翼部を支持するための第1と第2の少なくとも2つの支点を備える翼部支点部と、
前記翼部の先端を押圧する押圧手段と、を有する形状矯正装置を用いて、
前記形状矯正装置の根部固定部に加熱されたタービンブレード用素材の根部を固定する根部固定工程と、
前記翼部の捻じれを矯正する部分と前記第1の支点とを接触させ、前記押圧手段を用いて前記翼部の先端を押圧することにより捻じれを矯正する捻じれ矯正工程と、
前記押圧手段を用いて前記翼部の先端を更に押圧して、前記翼部を前記第2の支点に接触させ、更に前記翼部の先端を本来の製品形状の位置よりも下方側に押圧することにより前記翼部の反りを矯正する反り矯正工程と、
を含むことを特徴とするタービンブレード用素材の製造方法。 - 前記押圧手段はプレス機であることを特徴とする請求項3に記載のタービンブレード用素材の製造方法。
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