JP6507535B2 - 低バイパス比ターボファンエンジンのためのバイパスダクトフェアリングおよびそれを備えたターボファンエンジン - Google Patents

低バイパス比ターボファンエンジンのためのバイパスダクトフェアリングおよびそれを備えたターボファンエンジン Download PDF

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Description

本発明は、バイパスダクトに設置されるフェアリングに関し、特に、低バイパス比ターボファンエンジンにおいてバイパス流を整流するためにバイパスダクトに設置されるフェアリングおよびそれを備えたターボファンエンジンに関する。
ターボジェットエンジンにおいて、燃焼器が生ずる高温ガスをそのまま後方に噴出すると、その速度は飛行速度に対して過大であり、それゆえ外気との間で多大な空気抵抗が生じ、特に低速飛行において高い推進効率が期待できない。かかる問題を解決するために、ファンないしコンプレッサが生み出す空気流の一部を、コアエンジンを迂回してバイパスダクトに導き、後方に噴出させることがある。かかる形式のエンジンはターボファンエンジンと呼ばれ、外気に対して適切な速度のバイパス流が推進効率を著しく改善することで広く知られている。
コアエンジンに流入する空気量に対するバイパスダクトに流入する空気量の比率は、バイパス比と呼ばれる。亜音速までの飛行に供するエンジンにおいては、バイパス比が4以上の、いわゆる高バイパス比が選択される。バイパス比を増大するほどに燃費の改善が期待できるため、近年ではバイパス比が8を越えるものが実用化されている。エネルギ損失を小さくするために、バイパスダクトは短く、バイパス流を直接に外気に噴出する構造が、通常選択される。
一方、超音速飛行を重視する場合においては、高速流を必要とするために、バイパス比が2未満に抑えられた低バイパス比ターボファンエンジンが利用される。高バイパス比のものと異なり、バイパス流は長いバイパスダクトを通ってタービン直後にまで導かれ、そこで高温ガスと混合された後にノズルから噴出される。すなわち一般的には、低バイパス比ターボファンエンジンは、高バイパス比のものと比較して、バイパス比の相違に留まらない構造上の本質的な相違点を有する。
特許文献1,2は、低バイパス比ターボファンエンジンに関する技術を開示する。
特開昭54−27613号 特開2005−113919号
低バイパス比ターボファンエンジンにおいて、バイパス比を下げ、バイパス流を高速化することは、高速飛行性能の改善に寄与する。ところがバイパスダクトが狭く、かつバイパス流が高速になるほど、バイパスダクトにおけるエネルギ損失は増大するので、燃費の悪化が見込まれる。超音速機は一般に余分な燃料を積載する余地に乏しいので、必然的に航続距離を犠牲にしなければならない問題があった。
本発明はかかる問題に鑑みて為されたものであって、その一の局面によれば、ターボファンエンジンの軸の周りに、アウタケーシングとインナケーシングとの間に画定されて、低圧コンプレッサからの圧縮気をバイパスする、バイパスダクトに設置されるフェアリングは、前記バイパスダクトの入口において前記インナケーシングから後方に延び、前記アウタケーシングの内面に沿う前方部と、前記前方部から連続して後方に延び、後方に向けて流路の面積を増大するべく前記内面から離れる方向に湾曲した後方部であって、その全体が湾曲している後方部と、を備える。
好ましくは、前記後方部は円弧に沿って湾曲している。また好ましくは、前記後方部は前記円弧を前記軸の周りに回転した円環面に沿う湾曲部を含む。さらに好ましくは、前記後方部は前記軸に平行な後端において終端となる。あるいは、前記後方部は前記バイパスダクトの後端にまで延長されて前記インナケーシングに連結し、以って前記インナケーシングの外面上の構造を覆う。また好ましくは、前記後端における流路面積の前記入口における流路面積に対する比は1.5ないし2.0である。あるいは好ましくは、前記前端から前記後端までの長さは、前記バイパスダクトの全長の0.25〜0.5倍である。またターボファンエンジンは、かかるフェアリングを備える。
高速なバイパス流がフェアリングに沿って流れることにより、バイパスダクト内における低速な空気と混合することによる圧力損失を抑制し、以ってエネルギ損失を抑制する。
図1は、本発明の一実施形態による低バイパス比ターボファンエンジンの立面部分断面図である。 図2は、バイパスダクトを主に見せる拡大立面断面図である。 図3は、アウタケーシング、フェアリングおよびインナケーシングの間の関係を模式的に表す立面断面図である。 図4は、圧力損失の分布を表すグラフである。 図5は、他の例によるバイパスダクトを図示する立面断面図である。
本発明の幾つかの実施形態を添付の図面を参照して以下に説明する。図面は必ずしも正確な縮尺により示されておらず、従って相互の寸法関係は図示されたものに限られないことに特に注意を要する。
図1及び2を参照するに、低バイパス比ターボファンエンジンは、その機首から機尾に向けた順に、低圧コンプレッサ1と、高圧コンプレッサ3と、燃焼器5と、高圧タービン7と、低圧タービン9とを備える。これらの全てがアウタケーシング17に格納されており、さらに低圧コンプレッサ1を除きインナケーシング19に格納されている。アウタケーシング17とインナケーシング19との間にはバイパスダクト21が画定され、その入口Iは低圧コンプレッサ1の直後に開口し、その出口Oはタービン出口11に開口している。
低圧タービン9の動翼と低圧コンプレッサ1の動翼とは、インナドライブシャフト13により連結しており、これはベアリングを介してアウタケーシング17ないしインナケーシング19に回転可能に支持される。高圧タービン7の動翼と高圧コンプレッサ3の動翼とは、アウタドライブシャフト15により連結しており、これはベアリングを介してインナドライブシャフト13に回転可能に支持される。あるいはアウタケーシング17ないしインナケーシング19に支持されていてもよい。インナドライブシャフト13とアウタドライブシャフト15は、エンジンの軸の周りに同軸であり、かつその周りにそれぞれ回転可能である。
燃料が燃焼器5において燃焼することにより、機尾に向けた高温ガスの流れが生じ、高圧タービン7がこれからエネルギの一部を取り出して高圧コンプレッサ3を駆動し、低圧タービン9が残りのエネルギの一部を取り出して低圧コンプレッサ1を駆動する。低圧コンプレッサ1はかかる駆動力により空気を圧縮して後方に噴出する。
バイパスダクト21の入口Iにおいて、圧縮気は主流Mとバイパス流B1とに分岐し、主流Mは高圧コンプレッサ3に流れ、高圧コンプレッサ3がこれをさらに圧縮して燃焼器5に供給する。バイパス流B1は高圧コンプレッサ3および燃焼器5を迂回してバイパスダクト21に流れる。
バイパスダクト21はインナケーシング19を隔てて高圧コンプレッサ3や燃焼器5と隣接している。それゆえそれらを稼働させるための構造、例えばベーン23,25を開閉するための可変装置31、燃焼器5に燃料を供給するノズル33、イグナイター35、また高圧コンプレッサ3から圧縮気の一部を抽出する抽気配管37等が、インナケーシング19の外面上において、バイパスダクト21内に露出している。
バイパス流B1を整流するべく、バイパスダクト21の入口Iにフェアリング41が設けられる。各図において、エンジンの軸を通るフェアリング41の断面のみを示すが、フェアリング41はかかる軸の周りの回転体である。軸の周りに連続する回転体であってもよく、あるいは部分的に切欠きや他の構造が付加されていてもよい。
フェアリング41は、インナケーシング19から後方に延び、またアウタケーシング17の内面に沿っている。以ってバイパス流B1は、アウタケーシング17の内面に沿って流れる(バイパス流B2)ように整流される。これは高速なバイパス流が上述の構造31,33,35,37に直接に当たることを防止し、以って圧力損失を低減するのに役立つ。
図2に組み合わせて図3を参照するに、フェアリング41の、少なくともその前方部41fは、アウタケーシング17の内面と平行にすることができる。ここで平行は、厳密である必要はなく、例えば数度程度の角度をなしていてもよい。また前方部41fの全体が平行でもよく、あるいは一部のみが平行でもよい。平行な部分においては流路の面積A1は略一定であって、バイパス流B1に減速や圧力低下を起こすことを予定していない。
フェアリング41は、後方に向けて徐々に流路の面積を増大し、以ってバイパス流B1を減速する構造を備える。例えば前方部41fから連続して後方に延びた後方部41aは、アウタケーシング17の内面から離れる方向に湾曲している。空気抵抗が生ずるのを防止する観点から湾曲は滑らかなほうがよく、例えば円弧に沿ったものとすることができる。円弧に沿う場合、かかる湾曲部は、かかる円弧をエンジンの軸の周りに回転した円環面とすることができる。空気抵抗を減ずる観点から湾曲部の曲率半径Rは大きいほうが有利であり、例えば1mの程度とすることができる。後方部41aは、その全体が湾曲部であってもよく、また一部に限られていてもよい。さらに前方部41fも湾曲していてもよく、その曲率半径は後方部41aと同一でもよく、あるいは異なってもよい。
後方部41aの後端はバイパスダクト21内の中途の位置において終端とすることができる。かかる後端において、後方部41aはエンジンの軸と平行であってもよい。その後端において流路の面積A2は入口における面積A1より大きく、以ってバイパス流B1は減速される。詳しくは後述するが、バイパスダクト21内の遅い空気流Sは、高速なバイパス流と混合するときに抵抗を生じ、以って圧力損失の大きな要因になりうる。本実施形態によれば、バイパス流B1と遅い空気流Sとの速度差が小さくなるために、抵抗が小さくなり、以って圧力損失が低減される。面積比A2/A1が大きければ圧力損失を抑制する効果が大きくなるが、面積比が過大になれば高速飛行性能を改善する効果が減ぜられるので、例えば面積比A2/A1は1.5ないし2.0である。
フェアリング41の前端から後端までの長さは、短すぎればもちろん効果が減じられるが、過度に長くしても整流作用の観点からは効果が飽和する。そこでバイパスダクト21の全長(入口Iから出口Oまでの長さ)をLとすると、前端から後端までの長さは、例えば0.25〜0.5Lの程度である。
あるいは後方部41aは、上述のごとく中途の位置において終端せずに、図5に示すごとくインナケーシング19に連結し、フェアリング41’が可変装置31等の構造を遮蔽していてもよい。また図5においては構造33,35,37はバイパスダクト21内に露出しているように描かれているが、フェアリング41’がバイパスダクト21の出口にまで延長され、これらの構造を遮蔽していてもよい。インナケーシング19の外面上の構造31,33,35,37が遮蔽されていれば、これらが圧力損失の原因となることが防止される。
バイパスダクト21は、その出口Oにおいて、タービン出口11に合流している。出口Oに達したバイパス流B3は、タービン出口11において高温ガスと混合し、図外の排気ノズルから後方に噴出する。
図4を参照して本実施形態がもたらす効果を説明する。図4は、実機における寸法と流速とを前提としたCFD解析結果の例であって、横軸は入口Iを基準とした軸方向の距離Dであり、縦軸は百分率で表した圧力損失Lである。従来例は、本実施形態によるフェアリングに代わり、湾曲部のない真直な整流板を設けた例である。実施例1は、曲率半径1mで湾曲した後方部を有し、長さ0.25Lである、本実施形態によるフェアリングを設けた例である。実施例2は、図5に示すごとくフェアリングが延長されてインナケーシングの外面上の構造を覆った例である。
従来例において、バイパスダクトの入口から0.3L程度の範囲において、3%に近い圧力損失が生じる。これは主に、高速なバイパス流が、バイパスダクト内における遅い空気流と混合することによる。その後方においてさらに圧力損失は増大し、バイパスダクトの出口においては3%を超える。
これと比べ、実施例1においては、バイパスダクトの入口から0.3L程度の範囲において、圧力損失は1%未満に抑制され、バイパスダクトの出口においても1%の程度である。すなわち従来例と比較して圧力損失は1/3以下に低減されている。さらにフェアリングが延長された実施例2においては、圧力損失は0.5%の程度であり、さらに圧力損失が低減されている。
以上の通り、本実施形態が圧力損失を低減する効果は明らかである。従来の技術常識によれば、バイパスダクト内の構造を避けるようにバイパス流を整流することが、圧力損失を低減するのに最も重要な要素と考えられていた。かかる考えに則れば、整流板はアウタケーシングの内面に向けられるべきである。本実施形態によれば、かかる技術常識に反し、アウタケーシングの内面から離れる方向に湾曲するフェアリングを採用し、圧力損失を低減することに成功している。
従来例のグラフより理解される通り、圧力損失の大部分は、バイパスダクトの入口付近における遅い空気流との混合によるものである。本実施形態は、かかる事実の発見に基づき、混合による圧力損失を低減するべく、バイパス流を僅かに減速する構成を採用することにより、想到し得たものである。
また圧力損失の大部分が入口付近で生じていることから、本実施形態によるフェアリングの長さを0.25〜0.5Lの程度とすることも妥当と言える。もちろんフェアリングをバイパスダクトの全長にまで延長すれば、圧力損失をさらに抑制できることが明らかである。
本実施形態によれば、圧力損失を低減することによりバイパス流のエネルギを有効に利用することができ、燃費の向上が期待できる。あるいは、圧力損失が増大しない分、バイパスダクトを狭めることができ、バイパス比をさらに低減して高速飛行性能を向上することができる。
好適な実施形態により本発明を説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。上記開示内容に基づき、当該技術分野の通常の技術を有する者が、実施形態の修正ないし変形により本発明を実施することが可能である。
バイパスダクト内における圧力損失の低減に寄与するフェアリングが提供される。
1 低圧コンプレッサ
3 高圧コンプレッサ
5 燃焼器
7 高圧タービン
9 低圧タービン
11 タービン出口
13 インナドライブシャフト
15 アウタドライブシャフト
17 アウタケーシング
19 インナケーシング
21 バイパスダクト
41,41’ フェアリング
41f 前方部
41a 後方部
A1 入口面積
A2 出口面積
B1 バイパス流
B2 バイパス流
B3 バイパス流
I バイパスダクト入口
O バイパスダクト出口
R 曲率半径
S 遅い空気流

Claims (8)

  1. ターボファンエンジンの軸の周りに、アウタケーシングとインナケーシングとの間に画定されて、低圧コンプレッサからの圧縮気をバイパスする、バイパスダクトに設置されるフェアリングであって、
    前記バイパスダクトの入口において前記インナケーシングから後方に延び、前記アウタケーシングの内面に沿う前方部と、
    前記前方部から連続して後方に延び、後方に向けて流路の面積を増大するべく前記内面から離れる方向に湾曲した後方部であって、その全体が湾曲している後方部と、
    を備えたフェアリング。
  2. 請求項1のフェアリングであって、前記後方部は円弧に沿って湾曲している、フェアリング。
  3. 請求項2のフェアリングであって、前記後方部は前記円弧を前記軸の周りに回転した円環面に沿う、フェアリング。
  4. 請求項1ないし3の何れか1項のフェアリングであって、前記後方部は前記軸に平行な後端において終端となる、フェアリング。
  5. 請求項1ないし3の何れか1項のフェアリングであって、前記後方部が延長されて前記インナケーシングに連結し、以って前記インナケーシングの外面上の構造を覆う、フェアリング。
  6. 請求項4のフェアリングであって、前記後端における流路面積の前記入口における流路面積に対する比は1.5ないし2.0である、フェアリング。
  7. 請求項4のフェアリングであって、フェアリングの前端から前記後端までの長さは、前記バイパスダクトの全長の0.25〜0.5倍である、フェアリング。
  8. 請求項1ないし7の何れか1項のフェアリングを備えたターボファンエンジン。
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