JP6506317B2 - ペプチドおよびその使用 - Google Patents

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Description

本発明は、概して抗菌ペプチドおよびその使用法に関する。
前世紀において生活水準とバイオ医薬技術が顕著に改善したにも関わらず、感染症の負担は世界的に極めて高いままであり、公衆衛生、経済的および社会的問題の主要な原因となっている。世界保健機関(WHO)の統計によると、感染症および寄生虫病(例、肺炎、結核、髄膜炎、下痢疾患、HIV、およびマラリア)は全世界における第二番目の死亡原因である。先進国における抗生物質の広範囲且つしばしば乱雑な使用が、薬剤耐性病原体がすぐに出現することに寄与することにより、それら問題に油を注ぎ、感染症を既存クラスの抗生物質を用いて制御することをますます難しくさせている。新規小分子抗生物質の開発での継続的不足と結びつく抗生物質耐性感染の危機が爆発的に拡大していることが、既存のものに代わるクラスの抗菌剤としての膜に作用する抗菌ペプチド(AMP)の創薬と開発に向けた取り組みに拍車をかけている。天然の抗菌ペプチド(「生体防御ペプチド」としても知られるもの)は、自然免疫の構成要素として最初に発見され、あらゆる生物において侵入してくる病原体に対する防御の第一線となっている。特異的生合成経路(例、細胞壁合成またはタンパク質合成)を阻害する従来の抗生物質と違い、カチオン性抗菌ペプチドの大部分は、より負に帯電した微生物脂質二重膜を物理的に破壊することを介してその活性を発揮し、細胞質成分の漏れを誘導して細胞死を導く。膜破壊という物理的性質を考慮すると、薬剤耐性の発生の確率はより低くなる。なぜなら、その損傷が与えられるのと同じ速度で変異を起こしたり又は微生物の膜成分を修復するのはその微生物にとって代謝的に「よりコストがかかる」ものとなるからである。
多様な供給源(微生物、植物、および動物を含むもの)由来の1700より多い天然抗菌ペプチドが過去30年で単離および特徴解析されてきたが、ほんの少数のAMP(例、ポリミキシンおよびグラミシジン)しか臨床で使用されていない。そして、それらが全身投与で高い毒性があるために、局所製剤として主に使用されている。治療剤として抗菌ペプチドを適用することで同定された主な難題は、長いペプチド配列を合成することにおけるコストが高いこと、安定性が良くないこと、および全身投与後の知られていない毒性にある。抗菌活性を増強し非特異的毒性を最小化する取り組みにおいて、より多くの研究者が、化学修飾(例、環化)、配列トランケーション、D−、β−、またはフッ素化−アミノ酸で置換を実施する鋳型としての天然抗菌ペプチドまたはタンパク質配列をますます利用して、体内の局所的または全身性感染により広範囲に適用できる新規ペプチド類似体を作製している。しかしながら、天然の抗菌ペプチド配列を最適化するための現状のアプローチは、良くて大部分は経験にたよるものとなっていて、特に配列と構造の多様性が非常に大きいことを背景として、一般的構造−活性関係を記述することは極めて難しい。さらにまた、新規ペプチド類似体の多くは、長い(20アミノ酸以上)ので、有意な免疫原性を誘導し、最終的には大規模製造のコストを増加する場合がある。より重要なことには、生体防御抗菌ペプチドに近すぎる配列を有する抗菌ペプチドの使用が生来のAMPに対する耐性の発生(感染に対する自然な防御を必然的に弱める可能性のあるもの)を惹起する可能性があり、重大な健康および環境リスクを引き起こしている。
同時に、院内と地域環境の両者における抗生物質耐性細菌および真菌の迅速な出現は、世界中のヘルスケアシステムに重い負担を作り出した。抗生物質耐性病原体(例、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)、バンコマイシン耐性エンテロコッカス(VRE)、多剤耐性肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae)、およびアシネトバクター種(Acinetobacter spp.))の全世界的な発生頻度は流行のレベルに到達した一方で、臨床開発パイプラインに入った新規抗生物質の数はみじめなものである。たった3種類の構造クラスの抗生物質(オキサゾリジノン(リネゾリド(linezolid))、リポペプチド(ダプトマイシン(daptomycin))、およびプロイロムチリン(レタパムリン(retapamulin)))が、2000年以降市場に登場しただけである。この開発は特に警報を発するレベルにある。というのも、病原性細菌(例、黄色ブドウ球菌、エンテロバクター、およびクレブシエラ)がバンコマイシンやカルバペネム(carbapenem)(これらは強力な抗生物質であって、従来は、病院内の弱った患者に対する最終防御線として取っておいたもの)に耐性を発生しているからである。小分子抗生物質の開発の継続的不足と共に、薬剤耐性メカニズムを効果的に克服可能な新規作用機序を有する既存のものに代わるクラスの抗菌剤の設計と同定は、かつてないほど切迫している。
大部分の抗菌ペプチドは、迅速かつ直接的な膜溶解メカニズムを介してその抗菌活性を発揮する。従って、抗菌ペプチドは、特異的生合成経路を標的とする小分子抗生物質に対して微生物によって獲得される抗生物質耐性の従来メカニズム(例、薬剤排出ポンプの発現上昇、薬剤分解酵素の生産、または薬剤相互作用部位の変化)を克服するのに、固有の利点を持っている。しかしながら、抗菌ペプチドの臨床応用の成功を制限する重大な障害には、微生物膜選択性が良くない結果としての高い全身性毒性、(長鎖ペプチド配列の)製造コストが相対的に高いこと、および生体体液(例、血液の血清、創傷浸出液、涙液)に存在するプロテアーゼによる分解への感受性が含まれる。
角膜炎は眼の病的状態の重要な原因となり続けていて、失明を導く主要な眼疾患でもある。角膜炎の症状には、眼の痛みと発赤、霧視、光への感受性、および過剰な涙またはその分泌が含まれる。それらは、重度の視力喪失と角膜の傷を導く場合がある。さらに、角膜炎の発生頻度が過去30年に渡り増加してきたのは、主に、角膜炎患者の治療に局所コルチコステロイドと抗菌剤を頻繁に使用したことと共に、免疫不全患者数の増加が原因となっている。
角膜炎の原因には、1型単純ヘルペスウイルス、水痘帯状疱疹ウイルス、アデノウイルス、細菌、寄生虫、真菌、およびビタミンA欠乏症が含まれる。角膜炎の突発が、2005年および2006年に、米国と共にフランス、香港、およびシンガポールで報告された。米国の症例のほとんどが、ソフトコンタクトレンズの着用と関連していて、真菌感染が主な原因となっていた。
いくつかの理由によって、角膜炎は眼科医にとって診断および治療上の難題のままである。主な難題は、迅速かつ正確な診断である。角膜炎の診断は、一般に、培養または角膜生検により実施される。しかしながら、検査室で生物種を単離および同定することは時間がかかり、しばしば、診断は遅れることになる。さらに、角膜炎は各種微生物によって引き起こされるので、互いに異なる型の角膜炎が、しばしば別のものと誤診される。例えば、真菌性角膜炎は、しばしば、細菌性角膜炎と誤診される。というのも、臨床医は、抗生物質治療中、推定された細菌性角膜炎が悪化した後にのみ真菌性角膜炎を考慮するのがよくあるからである。さらにまた、抗真菌感受性テストの信頼性は低く、臨床効力との関連性も乏しい。たとえ診断が正確に行われるとしても、症状の管理には難題が残る。なぜなら、角膜炎を治療するのに有用な薬剤の角膜通過能は乏しく、そして、その市販は制限されているからである。
ほとんどの市販医薬は単に静真菌的または殺細菌的であるだけである。そして、それら医薬は、その症状の解決に成功するために、インタクトな免疫系と長期治療過程を必要とする。そのような微生物特異的医薬が不利なのは、治療が提供可能となる前に角膜炎の原因の具体的診断が必要だからである。さらにまた、市販の抗真菌医薬は、真菌性角膜炎感染が、しばしば、バイオフィルム(それは、除去するのが特に難しい。なぜなら、真菌菌体が防御的および非透過性菌体外マトリックス(ECM)でカプセル化されているからである)として存在するという事実に取り組んでいない。従って、一般的には、治療は、バイオフィルムを除去しようとすると、有意に高用量の抗真菌剤を必要とする。
さらにまた、現状の市販治療薬には、アゾール化合物(例、フンコナゾール(funconazole))とポリエン類(例、アムホテリシンB、ニスタチン、およびナタマイシン)が含まれる。アゾール化合物は、静真菌的であり、酵素阻害によって機能し、薬剤耐性の発生を生じる傾向がある。当該技術分野で利用可能なアゾール化合物は、しかしながら、極めて不安定である。それらの局所製剤溶液はせいぜい48時間しか冷蔵保存できず、光から遮蔽して保存しなければならない。当該技術分野で既知の別の抗真菌治療剤はポリエン類(イオンが細胞膜を通過する透過性を妨害することを介して機能するもの)であり、かなり高価で、水溶性が乏しく、そして、水性、酸性、またはアルカリ性媒体中あるいは光と過剰な熱に暴露される場合に非常に不安定である。これらの全てが、それらの臨床応用を制限する。
してみると、各種微生物が原因の角膜炎を治療するために有用な、既存のものに代わる薬剤を提供する必要性がある。また、使用するために安定かつ安全な、角膜炎を治療するために有用な、既存のものに代わる薬剤を提供する必要性もある。
一つの観点において提供されるのは、(X(式I)を含む両親媒性ペプチドであって、前記ペプチドのC末端がアミド化され;XおよびXが互いに独立して疎水性アミノ酸であり;YおよびYが互いに独立してカチオン性アミノ酸であり;ならびにnが少なくとも1.5であるものであって、前記ペプチドがβシート構造に自己集合することができるものの、被験体の角膜炎を治療するための医薬の製造における使用である。
別の観点で提供されるのは、被験体の角膜炎を治療するための、本明細書中で記載されるペプチドである。
別の観点で提供されるのは、被験体の角膜炎を治療する方法である。前記方法は、医薬的有効量の本明細書中に記載されるペプチドを投与する工程を含む。
別の観点で提供されるのは、被験体の角膜からバイオフィルムを除去する方法である。前記方法は、本明細書中に記載されるペプチドを投与する工程を含む。
詳細な説明を参照し、以下の非限定例と添付した図面とを合わせて考慮すると、本発明はよりよく理解される。
図1は、βシート形成合成ペプチドの設計特徴を示す。A)は、本開示の例示的ペプチドを示す。B)は、本開示のペプチドが直鎖分子として提示される例である。C)は、本開示のペプチドにより引き起こされ得る膜破壊の模式図である。手短に言うと、水溶液中では、前記ペプチドは、プロトン化Argおよび/またはLys残基間の静電反発力によって単量体のランダムコイルとして存在する。しかしながら、微生物細菌膜の存在下では、そのペプチドはその正に帯電した残基と負に帯電したリン脂質との間の静電相互作用により安定化されたβシート二次構造に容易に組み立てられ、その後、その疎水性残基が脂質二重膜に挿入されて膜破壊を媒介する。 図2は、脱イオン水と25mMのSDSミセル溶液中の以下のものの円二色性スペクトルである:(a)(VRVK)−NH(配列番号:11);(b)(IRIR)−NH(配列番号:12);(c)(IKIK)−NH(配列番号:13);(d)(IRIK)−NH(配列番号:17);(e)(IRVK)−NH(配列番号:14);(f)(FRFK)−NH(配列番号:15)。図2は、微生物膜を模倣した条件(25mMのSDS溶液)中で、本開示のペプチドが如何に容易にβシート二次構造に自己集合したかを実証する。 図2は、脱イオン水と25mMのSDSミセル溶液中の以下のものの円二色性スペクトルである:(g)(VRVK)−NH(配列番号:20);(h)(IRIK)−NH(配列番号:21);(i)(IRVK)−NH(配列番号:22)。図2は、微生物膜を模倣した条件(25mMのSDS溶液)中で、本開示のペプチドが如何に容易にβシート二次構造に自己集合したかを実証する。 図3は、合成抗菌ペプチドの溶血活性を示す。図3は、本開示のペプチドが、各種最小発育阻止濃度(MIC)値でのラット赤血球に対する溶血の誘導が最小限であるか、全く無いかを示す。 図4は、各種濃度(すなわち、0、0.5×最小発育阻止濃度(MIC)、MIC、および2×MIC)での代表的ペプチド(IRIK)−NH(配列番号:17)を用いた処理後の生菌コロニー形成単位(CFU)をプロットしたものを示す。図4は、本開示のペプチドがMIC値以上で殺細菌性があることを示す。 図5は、2時間、10(容量)%の水(コントロールとして)と代表的ペプチド(IRIK)−NH(配列番号:17)および(IRVK)−NH(配列番号:22)を含む培養液で処理した(a)大腸菌(Escherichia coli)と(b)黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)のFE−SEM像を示す。図5は、本開示のペプチドが大腸菌と黄色ブドウ球菌で膜溶解を引き起こすことができることを示す。 図6は、24時間、各種濃度の(IRIK)−NH(配列番号:17)と(IRVK)−NH(配列番号:22)で処理したバイオフィルム中の黄色ブドウ球菌の菌体生存率をXTTアッセイを使用して測定したものを示す。*(IRVK)−NHに比較した場合、P<0.01。図6は、本開示のペプチドが、バイオフィルに住む黄色ブドウ球菌を用量依存的に殺傷することができたことの実証を示す。 図7は、24時間、各種濃度の(IRIK)−NH(配列番号:17)と(IRVK)−NH(配列番号:22)で処理した、既に形成された黄色ブドウ球菌バイオフィルムのバイオマスの変化を、クリスタルバイオレット染色により測定したものを示す。図7は、本開示のペプチドを用いてバイオフィルムを除去可能であることを実証する。 図8は、(a)2個の反復単位(n=2)と(b)3個の反復単位(n=3)を有する本開示のペプチドの、FITC標識LPS凝集物の安定性への効果を示す。図8は、本発明のペプチドがリポポリサッカリド(LPS)凝集物を破壊するのに効果的であることを実証する。 図9は、NR8383ラットマクロファージ細胞株におけるLPS刺激後のNO生産への本開示のペプチドの阻害効果を示す。図9は、本発明のペプチドがLPSの作用を中和するのに効果的であることを実証する。 図10は、本開示のペプチドを各種濃度で18時間インキュベーション後のNR8383ラットマクロファージ細胞株の細胞生存率を示す。図10は、本開示のペプチドの抗炎症特性が細胞生存率への効果と独立していて、そして、そのペプチドが抗菌および抗炎症活性に必要な濃度で細胞毒性がなかったことを示す。 図11は、微生物膜を模倣する条件(25mMのSDSミセル溶液)中の以下のものの円二色性スペクトルを示す:(a)IK8エナンチオマー(鏡像異性体);(b)IK12エナンチオマー;(c)IK8ステレオイソマー(立体異性体);および(d)コントロールペプチド。図11は、微生物膜を模倣した条件中で、本開示のペプチドが容易に自己集合してβシート二次構造を形成することを示す。 図12は、ウサギ赤血球における、(a)IK8ステレオイソマー、(b)IK12エナンチオマー、および(c)IK8のβシート非形成ペプチドコントロールの溶血活性を示す。図12は、本開示のD−ステレオイソマーがMIC値で最小限または全く溶血を示さず、微生物膜に対する高い選択性を有することを示す。 図13は、プロテアーゼ(a)トリプシンと(b)プロテイナーゼKで処理6時間後の黄色ブドウ球菌、大腸菌、および緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)に対するIK8−オールLとIK8−オールDの抗菌活性を示す。図13は、本開示のペプチドのD−エナンチオマーの全てがプロテアーゼ抵抗性であることを示す。 図14は、各種濃度(すなわち、0、0.5×最小発育阻止濃度(MIC)、MIC、および2×MIC)でIK8−オールDを用いて18時間処理後の(a)表皮ブドウ球菌(Staphylococcus epidermidis)、(b)黄色ブドウ球菌、(c)大腸菌、(d)緑膿菌および(e)カンジダ・アルビカンス(Candida albicans)の生菌コロニー形成単位のプロットを示す。本設計ペプチドは、MICおよび2×MIC値で各微生物に関して、コロニー数が3対数分より多く減少する(>99.9%殺傷)のを実現した。これは、殺菌作用機序を示すものである。図14は、本L−エナンチオマーと同様に、本開示のペプチドのD−エナンチオマーが殺菌メカニズムを有することを確認する。 図15は、125mg L−1のIK8−オールDと10(容量)%のHPLC水を含むMHBIIとで2時間処理した(a)黄色ブドウ球菌および(b)緑膿菌のFE−SEM像を示す。図15は、本開示のペプチドのD−エナンチオマーが黄色ブドウ球菌および緑膿菌の膜溶解を引き起こすことができることを示す。 図16は、最小発育阻止濃度(MIC)以下のIK8−オールDと臨床使用でされる各種抗生物質に暴露された(a)大腸菌と(b)黄色ブドウ球菌の薬剤耐性発生プロフィールを示す。図16は、本開示のペプチドが試験した時間枠内で薬剤耐性の発生を全く誘導しないことを示唆する。 図17は、(MOI10で)感染させたマウスマクロファージ細胞株RAW264.7におけるIK8−オールDにより媒介される黄色ブドウ球菌細胞内殺傷を示す。図17は、本開示のペプチドが感染細胞内に存在する細菌に対する強力な抗菌特性を有することを実証する。 図18は、脱イオン水中の(a)IK8エナンチオマー、(b)IK8ステレオイソマー、(c)IK12エナンチオマーおよび(d)コントロールペプチドの円二色性スペクトルを示す。図18は、本開示のペプチドのエナンチオマーとステレオイソマーの両者がランダムコイルのまま残り、脱イオン水中で二次構造を採らなかったことを実証する。 図19は、トリプシンとプロテイナーゼKの(a)(IRIK)−NH(配列番号:17)に対するタンパク質分解活性を実証するMALDI−TOF質量スペクトルを示す。矢印は、主要酵素切断部位を示す。図19は、L−エナンチオマーと対照的に、本開示のD−エナンチオマーペプチドに対するプロテアーゼ処理がD−エナンチオマーペプチドの分解につながらないことを示す。 図19は、トリプシンとプロテイナーゼKの(b)(irik)−NH(配列番号:18)に対するタンパク質分解活性を実証するMALDI−TOF質量スペクトルを示す。矢印は、主要酵素切断部位を示す。図19は、L−エナンチオマーと対照的に、本開示のD−エナンチオマーペプチドに対するプロテアーゼ処理がD−エナンチオマーペプチドの分解につながらないことを示す。 図20は、合成抗菌ペプチドIK8−オールDで18時間処理した(a)シプロフロキサシン耐性大腸菌と(b)ゲンタマイシン耐性大腸菌の最小発育阻止濃度(MIC)の測定を示す。図20は、本開示のペプチドのD−エナンチオマーが、野生型(非薬剤耐性)大腸菌のものと同じ濃度で、ゲンタマイシン耐性大腸菌およびシプロフロキサシン耐性大腸菌を阻害することができることを実証する。 図21は、IK8−オールDのマウス肺胞マクロファージRAW264.7細胞株とヒト胎児肺線維芽細胞WI−38細胞株に対する細胞毒性試験を示す。図21は、本開示のペプチドのD−エナンチオマーが、抗菌作用のある濃度よりかなり高い濃度でのみ細胞毒性があることを実証する。 図22は、本開示のペプチドががん細胞(HeLa)を選択的に死滅させ、非がん性のラット肺胞マクロファージ細胞株(NR8383)とヒト皮膚線維芽細胞株に対して細胞毒性が弱いことを示す。 図23は、ペプチド(IKIK)−NHのC.アルビカンスに対する殺傷動力学を説明するグラフを示す。図23は、MICレベルで治療2時間後にC.アルビカンスの数が有意に減少したことを示す。ほとんどの真菌は、MICで4時間後に殺傷され、2×MICまたは4×MICで1時間で死滅した。従って、図23は、本開示のペプチドがC.アルビカンスに対して有用な抗真菌剤となることを説明する。 図24は、24時間、ペプチド(IKIK)−NHで治療後のC.アルビカンスの菌体生存率パーセンテージを示すグラフを示す。図24Aは、90%のC.アルビカンス細胞が、500mg/Lのペプチド(IKIK)−NHで単回治療24時間後に殺傷されたことを示す。図24Bは、同じ濃度の同じペプチド治療後のC.アルビカンスバイオマスが有意に減少したことを示す。従って、図24は、本開示のペプチドが、C.アルビカンスの死を誘導するのとC.アルビカンスのバイオマスを減少させるのに有用であることを示す。 図25は、ペプチド(IKIK)−NHで治療前後のC.アルビカンスバイオフィルムの形態状態の電界放出型走査電子顕微鏡写真を示す。C.アルビカンスの菌体形態は変形し、そして、バイオマスは24時間の治療後に有意に減少した。従って、図25は、本開示のペプチドが、C.アルビカンスの形態を変形するのとC.アルビカンスのバイオマスを減少させるのに有用であることを示す。 図26は、ペプチド(IKIK)−NH(つまり、ペプチド1)とペプチド(IRIK)−NH(つまりペプチド2)の局所投与後の角膜の組織像を示す。それらペプチドの局所投与後にヘマトキシリン&エオシンで染色したマウス角膜の組織切片。スケールバー:200μm。3000mg/Lのペプチド1および2の局所投与後の角膜の組織像では、角膜上皮浸食の有意な徴候を示すことはなかった。そして、ペプチドの適用はその下層の角膜実質における明らかな病理的変化を導かなかった。従って、図26は、本開示のペプチドが、点眼薬として使用される場合に眼に非毒性であることを示す。 図27は、HO(コントロール)、アムホテリシンB(amphotericin B)(AMB)(1000mg/L)、ペプチド(IKIK)−NH(つまり、ペプチド1)(3000mg/L)、およびペプチド(IRIK)−NH(つまり、ペプチド2)(3000mg/L)で治療後のC.アルビカンス性角膜炎のマウスの眼の写真を示す。治療後に、角膜炎感染が有意に解消されたことが観察され、コントロール群と比較すると角膜はより透明になり、そして、虹彩が視認できた。従って、図27は、本開示のペプチドの治療効率がアムホテリシンBのものに相当したことを示す。 図28は、以下の4種類の局所点眼液(HO(コントロール)、アムホテリシンB(amphotericin B)(AMB)(1000mg/L)、ペプチド(IKIK)−NH(つまり、ペプチド1)(3000mg/L)、およびペプチド(IRIK)−NH(つまり、ペプチド2)(3000mg/L))で治療前後の角膜炎に関するスリットランプ臨床スコア(±標準偏差)を図示した棒グラフを示す。アムホテリシンB治療後およびペプチド治療後の眼の臨床スコアは、コントロール群の眼のものよりも有意に低かった(P<0.01)。従って、図28は、アムホテリシンB治療後および本ペプチド治療後の眼のスコアに有意差が無かったことを示す。 図29は、特定の溶液で治療した角膜の組織像を示す。角膜サンプルをパラフィンに包埋し、連続切片を作製し、PAS染色した。真菌はピンクに染色された。スケールバー:200μm。菌糸はコントロール群の角膜実質中に伸展した一方で、アムホテリシンB(AMB)、ペプチド1、およびペプチド2を用いた治療は角膜中への菌糸侵入の最大深さを減少させた。従って、図29は、本開示のペプチドが角膜炎に罹患した角膜中へ真菌が入り込むのを有意に減少させたことを確認した。 図30は、アムホテリシンB(AMB)、ペプチド(IKIK)−NH(つまり、ペプチド1)、およびペプチド(IRIK)−NH(つまり、ペプチド2)で治療後のマウス角膜中のC.アルビカンスの微生物学的計数を図示した棒グラフを示す。各群由来の6つの角膜サンプル(各マウスからは一つの眼)を回収し、そして解析した。眼球中のC.アルビカンスのコロニー数を減少させるのに、それらペプチドはアムホテリシンBと同等に効果的であった。そして、非治療コントロール群と比較して、約90%の真菌菌体が治療後にバイオフィルムから死滅した。従って、図30は、本開示のペプチドが、マウス眼中の角膜炎関連固着性真菌とそのバイオフィルムを死滅させるのに効果的であったことを示す。
表の簡単な説明
表1は、本開示のペプチドの特徴解析を示す。
表2は、本開示のペプチドの最小発育阻止濃度(MIC)と選択性インデックスを示す。
表3は、本開示のペプチドの設計と特徴解析を示す。
表4は、本開示のペプチドの最小発育阻止濃度(MIC)と選択性インデックスを示す。
表5は、臨床現場で単離された薬剤耐性微生物に対する、本開示のペプチドの最小殺菌濃度(MBC)を示す。
表6は、臨床現場で単離された結核菌(Mycobacterium tuberculosis)に対する、本開示のペプチドの最小発育阻止濃度(MIC)を示す。
表7は、インビボの角膜炎治療の臨床格付とスコア化を示す。
表8は、本開示のペプチドの最小発育阻止濃度(MIC)を示す。
発明の詳細な説明
天然のペプチド配列と相同性が最小限である短鎖合成ペプチドの設計と最適化は、安全かつ効力のある抗菌ペプチドを臨床で使用するために開発する有用な戦略である。総電荷が+2と+9の間のカチオン性特性を有し、約30〜50%が疎水性アミノ酸残基からなることに加え、各種天然および合成抗菌ペプチドの一つの共通点は、微生物膜と接触するとしばしば、両親媒性ペプチドが折り畳まれて二次構造を形成することにある。二種類の主要な折りたたみ構造形態(αへリックスペプチド(例、カテリシジン、セクロピン、マガイニン)とβシートペプチド(例、デフェンシンおよびプロテグリン)を含むもの)の間では、両親媒性βシートペプチドは、同等の電荷と疎水性を有するαへリックス対応ペプチドに相当する抗菌活性を有する一方で、溶血性がより少ないことが判明している。従って、本開示の目的は、抗菌活性があるが溶血性がより少ない、βシートに折り畳まれる構造を有する短鎖合成ペプチドを提供することである。
角膜炎は、眼の病的状態の最たる原因である。角膜炎の互いに異なる原因は、しばしば互いに誤診されていて、従って、適切な治療の遅れを引き起こしている。さらにまた、臨床で使用するための安全かつ効果的な抗角膜炎剤が無いので、角膜炎の治療には難題が残っている。最近では、抗菌ペプチド(AMP)が、抗生物質耐性を克服する潜在能力を有する強力で幅広い効力範囲の抗菌剤としてかなり注目を集めている。本開示において、本発明者らは、βシート形成合成ペプチドが、βシート非形成ペプチドと市販のアムホテリシンBとに比べて、インビボでの角膜炎治療に有用であることを見出した。
従って、一つの観点において提供されるのは、(X(式I)を含む両親媒性ペプチドであって、式中、前記ペプチドのC末端がアミド化され;XおよびXが独立して疎水性アミノ酸からなる群より選択される場合があり;YおよびYが独立してカチオン性アミノ酸からなる群より選択される場合があり;ならびにnが少なくとも1.5である場合があるものであって、前記ペプチドがβシート構造に自己集合することができるものの、被験体の角膜炎を治療するための医薬の製造における使用である。一つの例では、本開示の発明者らが設計したのは、βシートに折り畳まれる短鎖合成ペプチドであって、短鎖繰り返し配列(X−NHからなり、βシートに折り畳まれる天然のAMP由来の以下のいくつかの基本的設計原理に基づいている:1)膜貫通βシート中に両親媒性であって2個一組のリピートがしばしば起こること、2)疎水性残基(例、限定はされないが、Val、Ile、Phe、およびTrp)およびカチオン性のもの(例、限定はされないが、ArgおよびLys)が微生物細胞壁および膜と相互作用し、および、それらを撹乱させるための要件、ならびに、3)Val、Ile、Phe、およびTrpの有する強力なβシート折り畳み特性。
本明細書中で使用される用語「両親媒性ペプチド」は、親水性と親油性(疎水性アミノ酸に結合されるカチオン性アミノ酸を有するペプチドにより付与されるもの)の両方を所持するペプチドを指す。本明細書中で使用される用語「疎水性アミノ酸」は、水に不溶なアミノ酸残基を指す。一つの例では、用語「疎水性アミノ酸」には、限定はされないが、アラニン(A)、バリン(V)、ロイシン(L)、イソロイシン(I)、フェニルアラニン(F)、メチオニン(M)、トリプトファン(W)、システイン(C)、チロシン(Y)、ヒスチジン(H)、スレオニン(T)、セリン(S)、プロリン(P)、およびグリシン(G)が含まれる。一つの例では、その疎水性アミノ酸はアラニン(A)、バリン(V)、ロイシン(L)、イソロイシン(I)、フェニルアラニン(F)、メチオニン(M)、トリプトファン(W)、およびシステイン(C)であってもよい。一つの例では、その疎水性アミノ酸はイソロイシン(I)またはバリン(V)である場合がある。
本明細書中で使用される用語「カチオン性アミノ酸」は、水に可溶なアミノ酸残基を指す。一つの例では、カチオン性アミノ酸には、限定はされないが、アルギニン(R)、リジン(K)、およびヒスチジン(H)が含まれる場合がある。
一つの例では、両親媒性ペプチドは単離ペプチドである。本明細書中で使用される用語「単離」は、例えば、タンパク質、脂質、核酸(それらは、自然には会合しているが)から遊離または実質的に遊離しているペプチドを指す。
一つの例では、両親媒性ペプチドは、(X(式I)であって、式中、XおよびXが互いに独立して疎水性アミノ酸である場合があり;YおよびYが互いに独立してカチオン性アミノ酸である場合があるものからなっていてもよい。従って、XおよびXは同じ又は異なるアミノ酸である場合があり、そして、YおよびYも同じ又は異なるアミノ酸である場合がある。
本開示では、nは1でなくてもよい。なぜなら、本明細書中に記載される4つのアミノ酸を有するペプチド(例、X(配列番号:1))は、抗菌活性がなく、微生物膜環境中でβシートを形成しないからである。従って、nは、約1.5〜5の間である場合がある。一つの例では、nは、1.5、2、2.5、3、3.5、4、4.5、または5であってもよい。
一つの例では、両親媒性ペプチドには、限定はされないが、X(配列番号:2)、X(配列番号:3)、X(配列番号:4)、X(配列番号:5)、X(配列番号:6)、X(配列番号:7)、X(配列番号:8)、およびX1010(配列番号:9)が含まれる場合がある。一つの例では、X、X、X、X、X、X、X、およびXは同じ又は異なるアミノ酸である場合があり、そして、Y、Y、Y、Y、Y、Y、YおよびYも同じ又は異なるアミノ酸である場合がある。
一つの例では、本開示のペプチドは、アミド化されているC末端を有している場合がある。用語「C末端」は、当該技術分野でよく知られた定義に沿って本明細書中で使用する。つまり、以下の用語(例、カルボキシル末端、カルボキシ末端、C末端、C末、またはCOOH末端(これらはアミノ酸鎖の末端であって、遊離カルボキシル基(−COOH)で末端修飾されている))のいずれともと互換的に使用可能である。本明細書に記述するように、本明細書中で説明されるペプチドは、右側をC末端とし、左側をN末端として提示される。従って、本明細書中で使用される句「C末端がアミド化される」は、本開示のペプチドのC末端のヒドロキシル基を一級または二級アミン基で置換することを指す。一つの例では、本明細書中に記載されるペプチドは、(Xである場合もあり、(X−NHである場合もある。一つの例では、本開示のペプチドを、当該技術分野でよく知られる方法でアミド化してもよい。理論に拘束されることを望んではいないが、C末端のアミド化は抗菌活性を増強すると考えられている。それはおそらく、カチオン性状を補強するからである。本試験のために設計されたペプチドを、C末端でアミド化して、高い総正電荷を付与した。
本開示のペプチドは、二次構造安定化要素を必要としない。句「二次構造安定化要素」は、その側鎖の立体構造に関わらず、ペプチド主鎖の原子の局所的空間配置を保持可能とする分子を指す。本明細書中で使用される二次構造安定化要素には、限定はされないが、疎水性作用、静電相互作用、および化学的架橋(例、ポリペプチド鎖内および間のジスルフィド結合内部架橋または金属イオン内部架橋)が含まれる場合がある。一つの例では、本開示のペプチドは、当該技術分野で既知の既存βシートペプチドとは異なっていて、二次構造を安定化するためのジスルフィド架橋または他の共有結合による制約を必要としない。水溶液中では、本開示のペプチドは、プロトン化したArgとLys残基間の静電反発力のためにモノマーとして存在することが期待される。微生物菌体膜の存在下では、本開示のペプチドはその正に帯電した残基と負に帯電したリン脂質との間の静電相互作用により安定化されたβシート二次構造に容易に折り畳まれ、その後、その疎水性残基が脂質二重膜に挿入される。従って、一つの例では、本ペプチドはβシート構造に自己集合可能である。本明細書中で使用される用語「自己集合」は、既存構成要素がきちんと配置されていないシステムが、外的指導なしに、構成要素それ自体の間の特異的で局所的な相互作用の結果として組織化された構造またはパターンを形成するようなプロセスのタイプを指す。本開示では、ペプチドは微生物膜環境中でβシート構造を自発的に形成可能である。本明細書中で使用される句「微生物膜環境」は、標的微生物の膜中の微小環境を指す。一つの例では、この環境を、アニオン性界面活性剤SDSの存在下でシミュレーションする場合がある。一つの例では、本ペプチドは脱イオン水または水溶液中でβシート構造を自発的には形成することができない。
本明細書中で使用される「βシート」または「βプリーツシート構造」は、ペプチドの通常の二次構造であって、少なくとも一つのβストランド(ほぼ完全に伸長されて形成される、主鎖に典型的には3〜12アミノ酸長のポリペプチド鎖のストレッチのもの)を含む場合があるものを指す。一つの例では、本開示のβシート構造は少なくとも一つのβストランドからなる。さらにまた、カチオン性アミノ酸と疎水性アミノ酸のβシート形成配列内の配置は変化しない場合がある。
一つの例では、本開示のペプチドには、1)カチオン性アミノ酸残基の選択(すなわち、Argにするか、Lysにするか、その両者の組合せにするか)、2)極性度および疎水性側鎖の大きさ、ならびに3)ペプチド配列の特異的長さが関与する場合がある。本開示では、本開示のペプチドの各種可能な構成を、抗菌活性と溶血活性への効果に関して体系的に検証した。いくつかの例では、Arg含有ペプチドは、Lys含有のものより強力な抗菌特性を有することが判明した。理論に拘束されることを望むわけではないが、本開示のArgが豊富なペプチドがより強い抗菌特性を有するのは、グアニジウム側鎖の電荷密度がより大きいためである可能性があると考えられた。しかしながら、ペプチド配列内に多数のアルギニン残基が存在することはより高度の溶血と細胞毒性に相関すると、当該技術分野では一般的に考えられている。従って、より毒性の低いLys残基を使用して合成ペプチドの毒性を調整しながら抗菌作用を改善するためにArgの高電荷密度を利用するようなペプチド設計において、ArgとLysの両者を取り込んだ。
同時に、生体体液中で本開示のペプチドの安定性を増強する取り組みにおいて、本開示の発明者らは、合成ペプチドの抗菌活性への立体化学の効果を検証した。従って、一つの例で提供されるのは、本開示のペプチドであって、式Iの各反復単位nが互いに独立に1、2、3、または4個のD−アミノ酸を含み、残りのアミノ酸がL−アミノ酸である場合があるものである。一つの例では、式Iの各反復単位nが、それぞれ独立に1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、または19個のD−アミノ酸を含み、残りのアミノ酸がL−アミノ酸であってもよい。一つの例では、式Iの各反復単位nが、それぞれ独立に2、4、または8個のD−アミノ酸を含み、残りのアミノ酸がL−アミノ酸であってもよい。本明細書中で使用される「L−アミノ酸」と「D−アミノ酸」は、各アミノ酸に起こり得る二種類の異性体を指す。本明細書中に記載される、小文字の下線残基は、D−アミノ酸を示す一方、大文字の非下線部はL−アミノ酸を示す。「L−アミノ酸」は、細胞で生産されてタンパク質中に取り込まれるアミノ酸異性体を指す。「D−アミノ酸」は、本開示のペプチドのアミノ酸へ異性体化修飾したものを指す。有利なことには、「D−アミノ酸」はヒトおよび微生物のプロテアーゼにより認識不能である。従って、図13と19で説明されるように、本開示のペプチドは、インビボでの早期タンパク質分解を回避できる。しかしながら、本開示の発明者らにより見いだされたのは、4つの位置での選択的D−アミノ酸置換により、二次構造が完全に消失してしまうことである。従って、一つの例では、式Iの各反復単位nが、それぞれ独立に1または2個のD−アミノ酸を含み、残りのアミノ酸がL−アミノ酸である場合がある。一つの例では、式Iの各反復単位n中のD−アミノ酸分布は、同じでも互いに異なっていてもよい。一つの例では、本明細書中に記載される本ペプチドは、nが2である場合があり、そして、4位および6位のアミノ酸がD−アミノ酸であって、残りのアミノ酸がL−アミノ酸である場合がある。実験セクションで解説されるように、4位と6位での選択的D−アミノ酸置換は、二次構造形成特性の保持を可能とする(図11cを参照されたい)。
一つの例では、本明細書中に記載されるペプチドは、配列(IYIY−NHを含むかそれのみからなっていてもよい。一つの例では、本明細書中に記載されるペプチドは、配列(IRXK)−NHを含むかそれのみからなっていてもよい。
一つの例では、本明細書中に記載されるペプチドが一般式X(配列番号:2)で表された場合、限定はされないが、そのペプチドにはirikir−NH(配列番号:10)(小文字の下線部分の残基はD−アミノ酸を示す)が含まれる場合がある。一つの例では、本明細書中に記載されるペプチドが一般式X(配列番号:3)で示される場合、限定はされないが、そのペプチドには、VRVKVRVK−NH(配列番号:11)、IRIRIRIR−NH(配列番号:12)、IKIKIKIK−NH(配列番号:13)、IRVKIRVK−NH(配列番号:14)、FRFKFRFK−NH(配列番号:15)、WRWKWRWK−NH(配列番号:16)、IRIKIRIK−NH(配列番号:17)、irikirik−NH(配列番号:18)、およびIRIIK−NH(配列番号:19)が含まれる場合がある(小文字の下線残基はD−アミノ酸を示す一方、大文字の非下線部はL−アミノ酸を示す)。一つの例では、本明細書中に記載されるペプチドが一般式X(配列番号:5)で示される場合、限定はされないが、そのペプチドにはVRVKVRVKVRVK−NH(配列番号:20)、IRIKIRIKIRIK−NH(配列番号:21)、IRVKIRVKIRVK−NH(配列番号:22)、およびirvkirvkirvk−NH(配列番号:23)が含まれる場合がある(小文字の下線残基はD−アミノ酸を示す一方、大文字の非下線部はL−アミノ酸を示す)。一つの例では、本明細書中に記載されるペプチドは、VRVKVRVK−NH(配列番号:11)、VRVKVRVKVRVK−NH(配列番号:20)、IRIRIRIR−NH(配列番号:12)、IKIKIKIK−NH(配列番号:13)、IRVKIRVK−NH(配列番号:14)、FRFKFRFK−NH(配列番号:15)、WRWKWRWK−NH(配列番号:16)、IRIKIRIK−NH(配列番号:17)、IRIKIRIKIRIK−NH(配列番号:21)、irikir−NH(配列番号:10)、irikirik−NH(配列番号:18)、IRIIK−NH(配列番号:19)、IRVKIRVKIRVK−NH(配列番号:22)、およびirvkirvkirvk−NH(配列番号:23)からなる群より選択される場合がある(小文字の下線残基はD−アミノ酸を示す一方、大文字の非下線部はL−アミノ酸を示す)。
別の観点で提供されるのは、被験体の角膜炎を治療するための両親媒性ペプチドであって、前記ペプチドは(X(式I)を含み、前記ペプチドのC末端がアミド化され;XおよびXが互いに独立して疎水性アミノ酸であり;YおよびYが互いに独立してカチオン性アミノ酸であり;ならびにnが少なくとも1.5であるものであって、前記ペプチドがβシート構造に自己集合することができるペプチドである。
本開示の発明者らは、本開示に開示される両親媒性ペプチドが、様々な微生物が原因の角膜炎を治療するのに使用可能な効力範囲が広い抗菌剤として使用可能であることを見出した。本明細書中で使用される用語「微生物類」または「微生物」は、最も広い意味で使用され、従って、原核生物の範囲に限定されない。むしろ、用語「微生物」には、その範囲に、細菌、古細菌、ウイルス、酵母、真菌、原生動物、および藻類が含まれる。従って、一つの例では、本開示に開示される角膜炎は、真菌性角膜炎、ウイルス性角膜炎、または細菌性角膜炎である。
一つの例では、前記細菌はグラム陽性細菌またはグラム陰性細菌である場合がある。従って、治療可能な細菌感染には、限定はされないが、以下の属の細菌が原因のものが含まれる:アセトバクター(Acetobacter)、アシネトバクター(Acinetobacter)、アクチノミセス(Actinomyces)、アグロバクテリウム種(Agrobacterium spp.)、アゾリゾビウム(Azorhizobium)、アゾトバクター(Azotobacter)、アナプラズマ種(Anaplasma spp.)、バチルス種(Bacillus spp.)、バクテロイデス種(Bacteroides spp.)、バルトネラ種(Bartonella spp.)、ボルデテラ種(Bordetella spp.)、ボレリア(Borrelia)、ブルセラ種(Brucella spp.)、バークホルデリア種(Burkholderia spp.)、カリマトバクテリウム(Calymmatobacterium)、カンピロバクター(Campylobacter)、クラミジア種(Chlamydia spp.)、クラミドフィラ種(Chlamydophila spp.)、クロストリジウム種(Clostridium spp.)、コリネバクテリウム種(Corynebacterium spp.)、コクシエラ(Coxiella)、エーリキア(Ehrlichia)、エンテロバクター(Enterobacter)、エンテロコッカス種(Enterococcus spp.)、エシェリキア(Escherichia)、フランシセラ(Francisella)、フソバクテリウム(Fusobacterium)、ガードネレラ(Gardnerella)、ヘモフィルス種(Haemophilus spp.)、ヘリコバクター(Helicobacter)、クレブシエラ(Klebsiella)、ラクトバチルス種(Lactobacillus spp.)、ラクトコッカス(Lactococcus)、レジオネラ(Legionella)、リステリア(Listeria)、メタノバクテリウム・エクストロケンス(Methanobacterium extroquens)、ミクロバクテリウム・マルチフォルメ(Microbacterium multiforme)、ミクロコッカス・ルテウス(Micrococcus luteus)、モラクセラ・カタラーリス(Moraxella catarrhalis)、マイコバクテリウム種(Mycobacterium spp.)、マイコプラズマ種(Mycoplasma spp.)、ナイセリア種(Neisseria spp.)、パスツレラ種(Pasteurella spp.)、ペプトストレプトコッカス(Peptostreptococcus)、ポルフィロモナス(Porphyromonas)、シュードモナス(Pseudomonas)、リゾビウム(Rhizobium)、リケッチア種(Rickettsia spp.)、ロシャリメア種(Rochalimaea spp.)、ロチア(Rothia)、サルモネラ種(Salmonella spp.)、セラチア(Serratia)、シゲラ(Shigella)、ブドウ球菌種(Staphylococcus spp.)、ステノトロホモナス(Stenotrophomonas)、ストレプトコッカス種(Streptococcus spp.)、トレポネーマ種(Treponema spp.)、ビブリオ種(Vibrio spp.)、ボルバキア(Wolbachia)、およびエルシニア種(Yersinia spp)。一つの例では、前記細菌には、限定はされないが、アセトバクター・オーランチウス(Acetobacter aurantius)、アシネトバクター・バウマンニー(Acinetobacter baumannii)、アクチノミセス・イスラエリー(Actinomyces Israelii)、アグロバクテリウム・ラジオバクター(Agrobacterium radiobacter)、アグロバクテリウム・ツメファシエンス(Agrobacterium tumefaciens)、アゾリゾビウム・カウリノダンス(Azorhizobium caulinodans)、アゾトバクター・ビネランディー(Azotobacter vinelandii)、アナプラズマ・ファゴサイトフィリルム(Anaplasma phagocytophilum)、アナプラズマ・マルギナーレ(Anaplasma marginale)、バチルス・アントラシス(Bacillus anthracis)、バチルス・ブレビス(Bacillus brevis)、セレウス菌(Bacillus cereus)、紡錘菌(Bacillus fusiformis)、バチルス・リケニフォルミス(Bacillus licheniformis)、巨大菌(Bacillus megaterium)、バチルス・マイコイデス(Bacillus mycoides)、バチルス・ステアロサーモフィルス(Bacillus stearothermophilus)、枯草菌(Bacillus subtilis)、バクテロイデス・フラジリス(Bacteroides fragilis)、ジンジバリス菌(Bacteroides gingivalis)、バクテロイデス・メラニノゲニカス(Bacteroides melaminogenicus)(プレボテラ・メラニノゲニカ(Prevotella melaminogenica))、ヘンセラ菌(Bartonella henselae)、塹壕熱菌(Bartonella quintana)、気管支敗血症菌(Bordetella bronchiseptica)、百日咳菌(Bordetella pertussis)、ライム病菌(Borrelia burgdorferi)、ウシ流産菌(Brucella abortus)、マルタ熱菌(Brucella melitensis)、ブタ流産菌(Brucella suis)、鼻疽菌(Burkholderia mallei)、類鼻疽菌(Burkholderia pseudomallei)、セパシア菌群(Burkholderia cepacia complex)、バークホルデリア・セノセパシア(Burkholderia cenocepacia)、肉芽腫カリマトバクテリウム(Calymmatobacterium granulomatis)、カンピロバクター・コリ(Campylobacter coli)、カンピロバクター・フィータス(Campylobacter fetus)、ジェジュニ菌(Campylobacter jejuni)、ピロリ菌(Campylobacter pylori)、トラコーマクラミジア(Chlamydia trachomatis)、クラミドフィラ(Chlamydophila)(例、肺炎クラミジア、オウム病クラミジア(Chlamydophila psittaci)、ボツリヌス菌(Clostridium botulinum)、ディフィシル菌(Clostridium difficile)、ウェルシュ菌(Clostridium perfringens)、破傷風菌(Clostridium tetani))、ジフテリア菌(Corynebacterium diphtheriae)、コリネバクテリウム・フジフォルメ(Corynebacterium fusiforme)、コクシエラ・ブメティー(Coxiella bumetii)、エーリキア・シャフェンシス(Ehrlichia chaffeensis)、エンテロバクター・クロアカ(Enterobacter cloacae)、エンテロコッカス・アビウム(Enterococcus avium)、エンテロコッカス・デューランス(Enterococcus durans)、エンテロコッカス・フェカリス(Enterococcus faecalis)、エンテロコッカス・フェシウム(Enterococcus faecium)、エンテロコッカス・ガリナーラム(Enterococcus galllinarum)、エンテロコッカス・マロラタス(Enterococcus maloratus)、大腸菌(Escherichia coli)、野兎病菌(Francisella tularensis)、フソバクテリウム・ヌクレアタム(Fusobacterium nucleatum)、ガードネレラ菌(Gardnerella vaginalis)、軟性下疳菌(Haemophilus ducreyi)、インフルエンザ菌(Haemophilus influenzae)、パラインフルエンザ菌(Haemophilus parainfluenzae)、百日咳菌(Haemophilus pertussis)、ヘモフィルス・ワギナリス(Haemophilus vaginalis)、ピロリ菌(Helicobacter pylori)、肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae)、ラクトバチルス・アシドフィルス(Lactobacillus acidophilus)、ラクトバチルス・カゼイ(Lactobacillus casei)、ラクトコッカス・ラクチス(Lactococcus lactis)、レジオネラ・ニューモフィラ(Legionella pneumophila)、リステリア菌(Listeria monocytogenes)、メタノバクテリウム・エクストロケンス(Methanobacterium extroquens)、ミクロバクテリウム・マルチフォルメ(Microbacterium multiforme)、ミクロコッカス・ルテウス(Micrococcus luteus)、モラクセラ・カタラーリス(Moraxella catarrhalis)、マイコバクテリウム・アビウム(Mycobacterium avium)、マイコバクテリウム・ボビス(Mycobacterium bovis)、マイコバクテリウム・ジフテリアエ(Mycobacterium diphtheriae)、イントラセルラーレ菌(Mycobacterium intracellulare)、ライ菌(Mycobacterium leprae)、鼠らい菌(Mycobacterium lepraemurium)、マイコバクテリウム・フレイ(Mycobacterium phlei)、スメグマ菌(Mycobacterium smegmatis)、結核菌(Mycobacterium tuberculosis)、マイコプラズマ・ファーメンタンス(Mycoplasma fermentans)、マイコプラズマ・ゲニタリウム(Mycoplasma genitalium)、マイコプラズマ・ホミニス(Mycoplasma hominis)、マイコプラズマ・ペネトランス(Mycoplasma penetrans)、肺炎マイコプラズマ(Mycoplasma pneumoniae)、淋菌(Neisseria gonorrhoeae)、髄膜炎菌(Neisseria meningitidis)、パスツレラ・マルトシダ(Pasteurella multocida)、野兎病菌(Pasteurella tularensis)、ペプトストレプトコッカス(Peptostreptococcus)、ジンジバリス菌(Porphyromonas gingivalis)、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)、リゾビウム・ラジオバクター(Rhizobium Radiobacter)、発疹チフスリケッチア(Rickettsia prowazekii)、リケッチア・プシタッシ(Rickettsia psittaci)、リケッチア・クインターナ(Rickettsia quintana)、リケッチア・リケッチィー(Rickettsia rickettsii)、リケッチア・トラコーマエ(Rickettsia trachomae)、ロシャリメア・ヘ
ンセラ(Rochalimaea henselae)、ロシャリメア・クインターナ(Rochalimaea quintana)、ロチア・デントカリオーサ(Rothia dentocariosa)、腸炎菌(Salmonella enteritidis)、チフス菌(Salmonella typhi)、ネズミチフス菌(Salmonella typhimurium)、霊菌(Serratia marcescens)、志賀赤痢菌(Shigella dysenteriae)、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)、表皮ブドウ球菌(Staphylococcus epidermidis)、ステノトロホモナス・マルトフィリア(Stenotrophomonas maltophilia)、ストレプトコッカス・アガラクチア(Streptococcus agalactiae)、ストレプトコッカス・アビウム(Streptococcus. avium)、ストレプトコッカス・ボビス(Streptococcus bovis)、ストレプトコッカス・クリセタス(Streptococcus cricetus)、ストレプトコッカス・フェシウム(Streptococcus faceium)、ストレプトコッカス・フェカリス(Streptococcus faecalis)、ストレプトコッカス・フェラス(Streptococcus ferus)、ストレプトコッカス・ガリナーラム(Streptococcus gallinarum)、ストレプトコッカス・ラクチス(Streptococcus lactis)、ストレプトコッカス・ミチオア(Streptococcus mitior)、ストレプトコッカス・ミチス(Streptococcus mitis)、ストレプトコッカス・ミュータンス(Streptococcus mutans)、ストレプトコッカス・オラリス(Streptococcus oralis)、肺炎球菌(Streptococcus pneumoniae)、化膿性連鎖球菌(Streptococcus pyogenes)、ストレプトコッカス・ラッタス(Streptococcus rattus)、ストレプトコッカス・サリバリウス(Streptococcus salivarius)、ストレプトコッカス・サングイス(Streptococcus sanguis)、ストレプトコッカス・ソブリナス(Streptococcus sobrinus)、梅毒トレポネーマ(Treponema pallidum)、トレポネーマ・デンチコラ(Treponema denticola)、コレラ菌(Vibrio cholerae)、コレラ菌(Vibrio comma)、腸炎ビブリオ菌(Vibrio parahaemolyticus)、ビブリオ・バルニフィカス(Vibrio vulnificus)、ボルバキア(Wolbachia)、エンテロコリチカ菌(Yersinia enterocolitica)、ペスト菌(Yersinia pestis)、および偽結核菌(Yersinia pseudotuberculosis)が含まれる。一つの例では、前記細菌には、限定はされないが、大腸菌(Escherichia coli)、表皮ブドウ球菌(Staphylococcus epidermidis)、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)、エンテロコッカス種(Enterococcus spp.)、肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae)、アシネトバクター・バウマンニー(Acinetobacter baumanni)、緑膿菌、および結核菌が含まれる。
一つの例では、前記細菌感染は、以下の症状(例、限定はされないが、肺炎、結核、髄膜炎、下痢症、バイオフィルムの形成、敗血症、リステリア症、胃腸炎、毒素性ショック症候群、出血性大腸炎;溶血性尿毒症症候群、ライム病、胃と十二指腸潰瘍、ヒトエーリキア症、偽膜性大腸炎、コレラ、サルモネラ症、ネコひっかき熱、壊死性筋膜炎(GAS)、ストレプトコッカス毒素性ショック症候群、院内感染症と地域関連感染症、アテローム性動脈硬化、乳児突然死症候群(SIDS)、耳感染症、気道感染症、尿路感染症、皮膚と軟部組織感染症、爪床感染症、創傷感染、敗血症、胃腸管疾患、院内心内膜炎、および血流感染症)を引き起こす可能性がある。一つの例では、前記細菌は薬剤耐性細菌である場合がある。
本開示に開示される両親媒性ペプチドは、緑膿菌、肺炎球菌、黄色ブドウ球菌、または表皮ブドウ球菌が原因の可能性のある細菌性角膜炎の治療用である場合がある。
一つの例では、ウイルス性感染疾患がウイルスが原因である場合があり、それには、限定はされないが、アデノウイルス、ヘルペスウイルス、ポックスウイルス、パルボウイルス、レオウイルス、ピコルナウイルス、トガウイルス、オルソミクソウイルス、ラブドウイルス、パラミクソウイルス、パピローマウイルス、レトロウイルス(例、ヒト免疫不全ウイルス)、およびヘパドナウイルスが原因の感染症や感染疾患が含まれる。一つの例では、前記ウイルス性感染疾患には、限定はされないが、一般的な風邪、インフルエンザ、水痘、口唇ヘルペス、エボラ、AIDS、鳥インフルエンザ、SARS、デング熱、ヘルペス、帯状疱疹、はしか、おたふくかぜ、風疹、狂犬病、ヒトパピローマウイルス、ウイルス性肝炎、コクサッキーウイルス、およびエプスタイン・バーウイルス等が含まれる。
本開示に開示される両親媒性ペプチドは、また、水痘帯状疱疹ウイルス、アデノウイルス、1型単純ヘルペスウイルス(HSV−1)が原因の可能性があるウイルス性角膜炎の治療用に使用可能である。
本明細書中で使用される用語「真菌(およびそれに由来するもの(例、「真菌感染」))」には、限定はされないが、以下の属の生物(またはその生物による感染症)への言及が含まれる:アブシディア(Absidia)、アジェロミセス(Ajellomyces)、アルスロデルマ(Arthroderma)、アスペルギルス(Aspergillus)、ブラストミセス(Blastomyces)、カンジダ(Candida)、クラドフィアロフォーラ(Cladophialophora)、コクシジオイデス(Coccidioides)、クリプトコッカス(Cryptococcus)、クスダマカビ(Cunninghamella)、エピデルモフィトン(Epidermophyton)、エクソフィアラ(Exophiala)、フィロバジエラ(Filobasidiella)、フォンセセア(Fonsecaea)、フサリウム(Fusarium)、ゲオトリクム(Geotrichum)、ヒストプラスマ(Histoplasma)、ホルタエア(Hortaea)、イッサチェンキア(Issatschenkia)、マヅレラ(Madurella)、マラセチア(Malassezia)、ミクロスポルム(Microsporum)、微胞子虫(Microsporidia)、ケカビ(Mucor)、ネクトリア(Nectria)、ペシロマイセス(Paecilomyces)、パラコクシジオイデス(Paracoccidioides)、ペニシリウム(Penicillium)、ピキア(Pichia)、ニューモシスチス(Pneumocystis)、シュードアレシェリア(Pseudallescheria)、リゾプス(Rhizopus)、ロドトルラ(Rhodotorula)、スケドスポリウム(Scedosporium)、シゾフィラム(Schizophyllum)、スポロトリクス(Sporothrix)、トリコフィトン(Trichophyton)、およびトリコスポロン(Trichosporon)。例えば、真菌性感染は、以下の種(例、限定はされないが、アブシジア・コリムビフェラ(Absidia corymbifera)、アジェロミセス・カプスラタス(Ajellomyces capsulatus)、アジェロミセス・ダーマチチディス(Ajellomyces dermatitidis)、アルトロデルマ・ヘンハミエ(Arthroderma benhamiae)、アルスロデルマ・フルブム(Arthroderma fulvum)、アルスロデルマ・ジプセウム(Arthroderma gypseum)、アルスロデルマ・インキュアベータム(Arthroderma incurvatum)、アルスロデルマ・オータエ(Arthroderma otae)およびアルスロデルマ・バンブロセゲミー(Arthroderma vanbreuseghemii)、黄色コウジ菌(Aspergillus flavus)、アスペルギルス・フミガータス(Aspergillus fumigatus)およびクロコウジカビ(Aspergillus niger)、ブラストミセス・デルマチチジス(Blastomyces dermatitidis)、カンジダ・アルビカンス(Candida albicans)、カンジダ・グラブラタ(Candida glabrata)、カンジダ・ギリエルモンジィ(Candida guilliermondii)、カンジダ・クルセイ(Candida krusei)、カンジダ・パラプローシス(Candida parapsilosis)、カンジダ・トロピカリス(Candida tropicalis)およびカンジダ・ペリキュローザ(Candida pelliculosa)、クラドフィアロフォーラ・カリオーニー(Cladophialophora carrionii)、コクシジオイデス・イミチス(Coccidioides immitis)およびコクシジオイデス・ポサダシ(Coccidioides posadasii)、クリプトコッカス・ネオフォルマンス(Cryptococcus neoformans)、クスダマカビ種(Cunninghamella Sp)、有毛表皮糸状菌(Epidermophyton floccosum)、エキソフィアラ・デルマチチジス(Exophiala dermatitidis)、フィロバジエラ・ネオフォルマンス(Filobasidiella neoformans)、フォンセカ・ペドロソイ(Fonsecaea pedrosoi)、フザリウム・ソラニ(Fusarium solani)、ゲオトリクム・カンジドゥム(Geotrichum candidum)、ヒストプラズマ・カプスラーツム(Histoplasma capsulatum)、ホルタエア・ヴェルネキー(Hortaea werneckii)、イッサチェンキア・オリエンタリス(Issatschenkia orientalis)、マズレラ・グリサエ(Madurella grisae)、癜風菌(Malassezia furfur)、マラセチア・グロボーサ(Malassezia globosa)、マラセチア・オブツーサ(Malassezia obtusa)、マラセチア・パチデルマチス(Malassezia pachydermatis)、マラセチア・レストリクタ(Malassezia restricta)、マラセチア・スロオフィアエ(Malassezia slooffiae)、マラセチア・シムポジアリス(Malassezia sympodialis)、イヌ小胞子菌(Microsporum canis)、ミクロスポルム・フルブム(Microsporum fulvum)、ミクロスポルム・ギプセウム(Microsporum gypseum)、微胞子虫(Microsporidia)、ムコア・シルシネロイデス(Mucor circinelloides)、ネクトリア・ヘマトココア(Nectria haematococca)、パエシロマイセス・バリオッティ(Paecilomyces variotii)、パラコクシジオイデス・ブラジリエンシス(Paracoccidioides brasiliensis)、ペニシリウム・マルネッフェイ(Penicillium marneffei)、ピキア・アノマラ(Pichia anomala)、ピキア・ギリエアモンディー(Pichia guilliermondii)、ニューモシスチス・ジロベシ(Pneumocystis jiroveci)、カリニ肺炎菌(Pneumocystis carinii)、シュードアレシェリア・ボイディー(Pseudallescheria boydii)、リゾプス・オリーゼ(Rhizopus oryzae)、ロドトルラ・ルーブラ(Rhodotorula rubra)、スケドスポリウム・アピオスペルマム(Scedosporium apiospermum)、スエヒロタケ(Schizophyllum commune)、スプロトニクス・シェンキイ(Sporothnx schenckii)、毛瘡菌(Trichophyton mentagrophytes)、紅色菌(Trichophyton rubrum)、トリコフィトン・ベルコーズム(Trichophyton verrucosum)、およびトリコフィトン・ビオラセウム(Trichophyton violaceum)、ならびに、トリコスポロン・アサヒイ(Trichosporon asahii)、トリコスポロン・クタネウム(Trichosporon cutaneum)、トリコスポロン・インキン(Trichosporon inkin)、およびトリコスポロン・ムコイデス(Trichosporon mucoides))が原因である。一つの例では、本明細書中に記載される真菌性感染はC.アルビカンスが原因である場合がある。一つの例では、前記真菌性感染は薬剤耐性真菌が原因である場合がある。真菌を阻害、処理、または除去するための本明細書中に記載されるペプチドの例示的使用を、表2および4に提供する。
本開示の発明者らは、本明細書中に開示される両親媒性ペプチドが、糸状菌および/または酵母様真菌が原因の可能性のある真菌性角膜炎の治療用に使用可能であることも見出した。一つの例では、その酵母様真菌はカンジダ・アルビカンスである場合がある。別の例では、その糸状菌には、黄色コウジ菌、アスペルギルス・フミガータス、フサリウム種(Fusarium spp.)、アルテルナリア種(Alternaria spp.)、およびペシロマイセス・リラシヌス(Paecilomyces lilacinus)が含まれる場合がある。
敗血症は、集中治療室における世界的な主要死亡原因となっているものを指し、グラム陰性細菌の外壁からのリポポリサッカリド分子放出によって惹起される。現状では、広い効力範囲の抗生物質の静脈内投与の他には、敗血症性ショック症候群の悪化を阻止するために、補助療法が与えられるだけである。微生物のエンドトキシン(免疫応答の有害媒介物)に対する効果的療法はない。ポリミキシンBは、エンドトキシンの結合と中和のための「ゴールド」スタンダードである。しかしながら、その細胞毒性が高いために、全身投与には実用的適用が否定されている。そのようなので、哺乳類細胞に対する細胞毒性活性を有しないが、エンドトキシンを中和し、同時に原因微生物を全滅することができる既存のものに代わる抗菌剤を提供する必要性がある。従って、一つの例では、本開示のペプチドが敗血症を予防するために使用可能である。
リポポリサッカリド(LPS)エンドトキシン(強力な免疫刺激特性を有するもの)は、グラム陰性細菌の外膜部分にある必須構造要素である。LPSは微生物の菌増殖と分裂中に継続して脱げ落ち、そして、細菌感染に対する抗生物質療法の結果としてしばしば起こる菌死中に大量に放出される。血流中に放出されると、LPS凝集物はLPS結合血漿タンパク質(LBP)により解離されてLPS−LBP複合体を形成する。その複合体が宿主の単球やマクロファージを刺激して、各種サイトカイン(例、TNF−α、IL−6、IL−8)および炎症を促進する媒介物(例、NOおよび活性酸素種)を分泌させる。この自然免疫系の活性化が、不自然な免疫応答カスケードを惹起して、敗血症ショック(もし未治療のまま放置されると、多臓器不全または死を迅速に引き起こす可能性があるもの)として知られる重症な臨床症候群に至る。アニオン性両親媒性脂質Aドメイン(グラム陰性属間で構造的に保存されているもの)が、LPSの活性部分としてよく認識されている。本開示の発明者らは、本明細書中に記載されるカチオン性抗菌ペプチドで両親媒性のものが、カチオン性リジンまたはアルギニン残基によってLPSのアニオン性頭部と静電相互作用を介してLPSと結合および中和するため、ならびに、LPSのアルキル鎖と非極性アミノ酸側鎖との間の疎水性相互作用を介してLPS凝集物を解離させるための特に有用な候補として提示されることを確認する。一つの例で提供されるのは、エンドトキシンの中和方法であって、医薬的有効量の本開示のペプチドを投与する工程を含む方法である。一つの例では、前記エンドトキシンは、細菌性エンドトキシンまたは真菌性エンドトキシンであってもよい。一つの例では、前記エンドトキシンは、ポリサッカライド、リポテイコ酸、リポポリサッカリド、または、リポオリゴ糖である場合がある。図9は、本発明のペプチドがマクロファージへのLPSの作用を効果的に減少させることを実証する。
細菌がヒトを困らせる可能性のある別の問題は、バイオフィルムの形成である。バイオフィルムの形成は、各種医療分野と非医療分野の両方に関係する重要な問題である。バイオフィルム形成は、微生物菌体が、相互に接着したり、表面の菌体外ポリマー物質(EPS)のマトリクスに埋め込まれる場合に起こる。生体高分子(例、ポリサッカライド、核酸、およびタンパク質)と栄養素とが豊富なそのような保護環境中での微生物の増殖が微生物間のクロストークと毒性の増加を可能にする。その結果、特に、バイオフィルム内に封入された微生物の増殖速度と遺伝子転写パターンに生理学的および表現型変化が起こることが広く記載されている。抗生物質が菌体外ポリマー物質を通過できないこと及び/又は細胞外ポリマー物質の成分による抗生物質の不活性化が、抗生物質が通常の用量でバイオフィルの微生物を阻害または殺傷する効果がないことの原因となっていると考えられている。この現象が、薬剤耐性遺伝子のアップレギュレーションと連動して、バイオフィルム中の抗生物質耐性の速やかな発生をしばしば導き、うまく菌を死滅させることを医療現場で非常に大きな難題とさせている。従って、バイオフィルムを除去する方法を提供する必要性がある。
してみると、別の観点で提供されるのは、バイオフィルムを除去する方法であって、医薬的有効量の本開示のペプチドを投与する工程を含む方法である。一つの例では、前記バイオフィルムは表面上で発生する。本明細書中で使用される用語「表面」が指すのは、流体(例、液体または空気)と固体との間の界面を提供する任意の表面であって、医療用または工業用のいずれであってもよい。流体と固体の間の界面は、間欠的であってもよいし、流動もしくは非流動の流体、エアゾール、または空気を介して流体を暴露する他の手段によって生じるものであってもよい。いくつかの例では、表面は、細菌または真菌の接着と相性の良い力学的構造の面を指す。本明細書中で記載されるペプチドと方法の文脈では、用語「表面」は、各種機器およびデバイス(使い捨てと非使い捨ての両者、医療用と非医療用の両者)の内面と外面を含む。非医療用途の例には、船体、造船所、フードプロセッサー、ミキサー、機器、容器、水槽、水ろ過装置、精製システム、食品工業での保存剤、介護用品(例、シャンプー、クリーム、保湿剤、手指消毒薬、せっけん等)が含まれる。医療用途の例には、全範囲の医療デバイスが含まれる。そのような「表面」には、各種機器やデバイスの内面と外面が含まれ、使い捨てであってもよいし、繰り返して使用されることを意図するものであってもよい。例には、医療用途に適応する物品の全範囲(例、メス、針、ハサミ、および侵襲性の外科手術、治療または診断過程に使用される他のデバイス);埋め込み可能な医療デバイス(例、人工血管、カテーテルと患者から流体を除去または患者に送達するための他のデバイス、人工心臓、人工肝臓、整形外科のピン、プレート、インプラント);カテーテルと他のチューブ(例、泌尿器科と胆汁用チューブ、気管内チューブ、末梢に挿入可能な中心静脈カテーテル、透析カテーテル、長期トンネル型中心静脈カテーテル、末梢静脈カテーテル、短期中心静脈カテーテル、人工カテーテル、肺カテーテル、Swan−Ganzカテーテル、尿カテーテル、腹腔内カテーテル)、尿デバイス(例、長期尿デバイス、組織結合尿デバイス、人工尿括約筋、尿拡張筋)、シャント(例、心室または動脈−静脈シャント);人工補装具(例、乳房インプラント、ペニスインプラント、血管移植用人工補装具、心臓弁、人工関節、人工喉頭、耳鼻科用インプラント)、血管カテーテルポート、創傷ドレインチューブ、水頭症用シャント、ペースメーカーと移植可能除細動器、歯科用インプラント、充填材、総義歯等が含まれる。他の例は、当該技術分野の従事者には明白である。医療環境中で見られる表面はまた、医療機器の部品、医療現場の人員が着用または保持する医療用具の内面と外面をも含む。そのような表面には、医療措置に使用されたり医療器具を準備するために使用されるカウンタートップや備品、呼吸器の治療(酸素、液体を霧状にするディスペンサー中の可溶化済み薬剤、および麻酔薬の投与を含むもの)に使用されるチューブや缶が含まれる。また、医療現場で感染起炎菌への生物学的バリアとして意図されるもの(例、手袋、エプロン、およびフェースシールド)の表面が含まれる。生物学的バリア用の一般的に使用される材料は、ラテックス系または非ラテックス系のものである場合がある。非ラテックス系生物学的バリアの例には、ビニルが含まれる場合がある。他のそのような表面には、滅菌されていることが意図されない医療または歯科用機器のハンドルおよびケーブルが含まれる。さらに、そのような表面には、血液もしくは体液または他の有害生体材料と一般的に接触する場所内に見られるチューブや他の器具の非滅菌外表面が含まれる。一つの例では、前記バイオフィルムがカテーテルおよび医療用インプラント上に構成される場合がある。
別の観点で提供されるのは、被験体の角膜炎を治療する方法であって、医薬的有効量の本開示のペプチドを投与する工程を含む方法である。用語「治療(処理)する」、「治療(処理)」およびその文法的な変形は、医療的処理と予防的または防御的措置の両者を指し、その目的は、望ましくない生理学的状態、疾患、または病気を阻止または遅延(減弱)するか、あるいは、有益または所望の臨床成績を得ることである。そのような有益または所望の臨床成績には、限定はされないが、症状の緩和;状態、疾患、または病気の程度の減少;状態、疾患、または病気の状況の安定化(すなわち、悪化させないこと);状態、疾患、または病気の進行の遅延または減速;(検出可能もしくは検出不能のいずれかの)状態、疾患、または病状の改良、(部分的もしくは全体的)鎮静化;あるいは、状態、疾患、または病気の向上または改善が含まれる。治療には、副作用のレベルが過剰でないが、臨床的に有意な細胞応答を誘起することが含まれる。治療にはまた、治療を受けない場合に予期される生存期間に比較した場合の生存期間の延長も含まれる。
してみると、別の観点で提供されるのは、被験体の角膜からバイオフィルムを除去する方法であって、医薬的有効量の本開示のペプチドを投与する工程を含む方法である。
用語「減少させる」、「減った」、「削減」、「減少」、「除去」、または「阻害する」は、全て、統計学的に有意な量の減少を一般的に意味するように本明細書中で使用される。しかしながら、疑義を避けるため、「減った」、「削減」もしくは「減少」、「除去」、または「阻害する」は、参照レベルと比較して少なくとも10%の減少(例、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、100%減少を含むそれ以上の減少)(例、参照サンプルと比較して欠けているレベル)を意味するか、あるいは、参照レベル(例、本明細書中のペプチドの非存在下)と比較して10〜100%の間の任意の減少を意味する。
本開示の発明者らは、本明細書中に記載されるペプチドががん細胞株で細胞死を誘導可能なことも見出した。従って、別の観点で提供されるのは、増殖性疾患を治療する方法であって、医薬的有効量の本明細書中に記載されるペプチドを投与する工程を含む方法である。一つの例では、前記増殖性疾患には、限定はされないが、腫瘍、がん、悪性腫瘍、またはその組み合わせが含まれる場合がある。一つの例では、前記増殖性疾患には、限定はされないが、結腸直腸がん、線維肉腫、筋肉腫、脂肪肉腫、軟骨肉腫、骨肉腫、脊索腫、血管肉腫、血管内皮肉腫、リンパ管肉腫、リンパ管−血管内皮肉腫滑膜腫、中皮腫、Ewing肉腫、平滑筋肉腫、横紋筋肉腫、大腸がん、胃がん、膵臓がん、乳がん、卵巣がん、前立腺がん、頭頸部の扁平上皮がん、基底細胞がん、腺がん、汗腺がん、脂腺がん、乳頭がん、乳頭腺がん、嚢胞腺がん、髄様がん、気管支原性がん、腎細胞がん、肝がん、肝臓転移、胆管がん、絨毛がん、精上皮腫、胚性がん腫、甲状腺がん(例、甲状腺未分化がん)、ウィルムス腫瘍、子宮頸がん、精巣腫瘍、肺がん、肺の小細胞がん、肺の非小細胞がん、膀胱がん、上皮がん、グリオーマ、星状細胞腫、髄芽腫、頭蓋咽頭腫、上衣腫、松果体腫、血管芽腫、聴神経腫、乏突起膠腫、髄膜腫、メラノーマ、神経芽細胞腫、および網膜芽腫が含まれる場合がある。がん細胞に死を誘導するための本明細書中に記載されるペプチドの例示的使用を、図22に提供する。
別の観点で提供されるのは、細菌感染を治療するため、細菌を除去するため、エンドトキシンを中和するため、ウイルス性感染疾患を治療するため、真菌感染もしくは寄生を治療するため、真菌を除去するため、または増殖性疾患を治療するための医薬の製造における本開示のペプチドの使用である。一つの例では、前記使用はさらに、治療の必要のある被験体に投与するために本開示のペプチドを提供する工程を含む。一つの例では、その医薬はそれを必要とする被験体に投与される。
一つの例では、被験体または患者は、動物、哺乳類、ヒト(限定はされないが、ウシ、ブタ、ウマ、イヌ、オオカミ、ネコ、ネズミ、ヒツジ、トリ、サカナ、ヤギ、カラス、アクリネ(acrine)、またはイルカの綱の動物を含むもの)であってもよい。一つの例では、患者はヒトである。
一つの例では、本明細書中に記載されるペプチドは組成物または医薬組成物として提供可能である。本明細書中に記載される組成物は、局所または全身治療が所望されるかどうかによって多種多様なやり方で投与可能である。投与は、局所、肺性(例、パウダーまたはエアゾールの吸入または吹送(噴霧吸入器によるものを含む)による;気管内、鼻腔内、表皮性、および経皮性のもの)、あるいは全身性(例、経口および/または非経口のもの)のものであってもよい。非経口投与には、静脈内、動脈内、皮下、腹腔内、または筋肉内の注射または点滴;頭蓋内(例、髄腔内もしくは脳室内)投与が含まれる。一つの例では、投与経路は、全身投与、経口投与、静脈内投与、および非経口投与からなる群より選択可能である。
本開示は、眼性角膜炎の治療に関するので、一つの例では、組成物を局所治療用に投与する場合がある。従って、その例では、組成物は、局所投与用組成物(例、点眼薬、クリーム、フォーム剤、ゲル、ローション、および軟膏剤)として提供してもよい。
本開示は、眼性角膜炎の治療に関するので、一つの例では、組成物を局所性または局所治療用に投与する場合がある。局所投与用の組成物および製剤は、バッファー、希釈剤、および他の適する添加物(例、限定はされないが、浸透性増強剤、担体化合物、及び他の医薬的に許容可能な担体または賦形剤)を含む場合がある滅菌水溶液を含む場合がある。
本明細書中に記載される組成物には、限定はされないが、溶液、ペースト、軟膏、クリーム、ハイドロゲル、乳剤、リポソーム含有製剤、フォーム剤、点眼薬、およびコーティングが含まれる。これらの組成物は、各種成分(限定はされないが、既製液体、自己乳化固形物、および自己乳化半固形物を含むもの)から作製可能である。
本明細書中に記載される製剤(従来、単位用量形態で提供される場合があるもの)は、製薬業界で周知の従来手法に従って調製可能である。そのような手法には、活性成分を医薬担体(複数可)または賦形剤(複数可)と混合する工程を含む。一般には、前記製剤は、活性成分に液状担体または微細に分割した固形担体あるいは両者を均一且つ均質に混合し、次いで必要ならばその生成物を付形することによって調製される。
本明細書中に記載される組成物は、多数ある可能な投与形態(例、限定はされないが、錠剤、カプセル、液体シロップ、ソフトゲル、坐薬、および浣腸剤)の任意のものへと処方可能である。本明細書中に記載される組成物はまた、水性媒体、非水性媒体、または混合媒体中での懸濁液としても処方可能である。水性懸濁液はさらに、その懸濁液の粘度を増加させる物質(例、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ソルビトール、および/またはデキストラン)を含んでもよい。前記懸濁液はまた、安定化剤を含む場合がある。
一つの例では、医薬組成物をフォーム剤として処方して使用してもよい。医薬フォーム剤には、製剤(例、限定はされないが、乳剤、ミクロエマルジョン、クリーム、ゼリー、およびリポソーム)が含まれる。性質は基本的に似ているが、これらの製剤は、最終製品の成分と濃度が異なっている。
本明細書中に記載の組成物は、さらに、医薬組成物に従来的に見られる他の補助成分を含んでいてもよい。従って、例えば、組成物は、追加的で相溶性の医薬活性物質(例、かゆみ止め、収斂剤、局所麻酔薬、または抗炎症剤)を含む場合があるし、本発明の組成物を各種投与形態で物理的に処方するのに有用な追加的物質(例、緩衝液、染料、防腐剤、抗酸化剤、乳白剤、増粘剤、および安定化剤またはその合剤(点眼薬に使用するのに適する任意の濃度で溶液に添加可能な医薬活性剤と共に使用するのに適するもの))を含む場合もある。しかしながら、そのような物質は、添加する場合、本開示の組成物に成分の生物学的活性と過度に干渉しないことが期待される。製剤は滅菌可能であり、望むならば、助剤(例、潤滑剤、防腐剤、安定化剤、湿潤剤、乳化剤、浸透圧に影響を与える塩、緩衝液、着色剤、香味料、および/またはアロマを発する物質等(本製剤のペプチドと有害に相互作用しないもの))と混合してもよい。
本明細書中で使用される用語「医薬的有効量」は、所望の効果を提供するための、本明細書中に記載の化合物の、その意味の範囲内で十分であるが毒性のない量を含む。つまり、その量は、微生物の数が少なくとも1.0対数分減少することを生じ、それが意味するのは、10個の内1個未満の微生物が生き残ることを意味する。本開示の改変ペプチドは、微生物数の対数分の減少が少なくとも約2.0、少なくとも約3.0、少なくとも約4.0、少なくとも約5.0、少なくとも約6.0、または少なくとも約7.0である場合がある。必要とされる正確な量は、因子(例、処理される種、被験体の年齢と全身状態、治療される状態の重症度、投与される特定の薬剤、投与形態等)に依存して被験体ごとに異なる。従って、正確な「有効量」を特定することはできない。しかしながら、任意の所定のケースに関して、適切な「有効量」は、当業者による日常的な実験を使用することによってのみ決定可能である。
投薬は、治療される病状の重症度と応答性に依存し、治療過程は、数日から数か月あるいは治癒が実効化されるまで又は病状の減少が実現されるまで続く。最適な投薬スケジュールは、患者の体内の治療剤蓄積を測定することから計算可能である。投与を行う医師は、最適な投与量、投薬方法、および繰返し数を容易に決定することができる。最適な投与量は、組成物の相対的力価に依存して異なり、そして、インビトロおよびインビボの動物モデルにおいて効果的であることが判明したEC50に基づくか、または、本明細書中に記載される実施例に基づいて、一般的に推定可能である。一般的には、投与量は16mg/ml〜5000mg/mlであり、そして、一日一回もしくは複数回、週に一回もしくは複数回、月に一回もしくは複数回、または一年に一回もしくは複数回与えてもよい。
一つの実施例では、眼性角膜炎の症状を治療または緩和するため得られた点眼薬の使用プロトコルは、症状の程度が合格レベルまで減少するまで一日3回、罹患した眼に点眼する工程を含む。特に重度の症例では、さらに回数を増やして適用することが必要となる場合があり、より重度の低い症例では、一日一回の投薬が十分である場合もある。
一つの例では、組成物の投与量は、約1mg、1.5mg、2mg、2.5mg、3mg、3.5mg、4mg、5mg、10mg、11mg、12mg、13mg、14mg、15mg、16mg、17mg、18mg、19mg、20mg、25mg、30mg、35mg、40mg、45mg、50mg、75mg、100mg、125mg、150mg、175mg、200mg、225mg、250mg、300mg、350mg、400mg、450mg、500mg、550mg、600mg、650mg、700mg、750mg、800mg、850mg、900mg、950mg、1000mg、1050mg、1100mg、1150mg、1200mg、1250mg、1300mg、1350mg、1400mg、1450mg、1500mg、1550mg、1600mg、1650mg、1700mg、1750mg、1800mg、1850mg、1900mg、1950mg、2000mg、2050mg、2100mg、2150mg、2200mg、2250mg、2300mg、2350mg、2400mg、2450mg、2500mg、2550mg、2600mg、2650mg、2700mg、2750mg、2800mg、2850mg、2900mg、2950mg、3000mg、3050mg、3100mg、3150mg、3200mg、3250mg、3300mg、3350mg、3400mg、3450mg、3500mg、3550mg、3600mg、3650mg、3700mg、3750mg、3800mg、3850mg、3900mg、3950mg、4000mg、4050mg、4100mg、4150mg、4200mg、4250mg、4300mg、4350mg、4400mg、4450mg、4500mg、4550mg、4600mg、4650mg、4700mg、4750mg、4800mg、4850mg、4900mg、4950mg、5000mg/mlの任意の一つのものの間であってもよい。
一つの例では、投与組成物の濃度は、約1〜約100mg/Kg患者体重、約5〜約100mg/Kg患者体重、約10〜約100mg/Kg患者体重、約20〜約100mg/Kg患者体重、約30〜約100mg/Kg患者体重、約1〜約50mg/Kg患者体重、約5〜約50mg/Kg患者体重、および約10〜約50mg/Kg患者体重である。
製剤の成分の量または濃度の文脈において本明細書中で使用される用語「約」は、典型的には言及した値の±5%、より典型的には言及した値の±4%、より典型的には言及した値の±3%、より典型的には言及した値の±2%、さらに典型的には言及した値の±1%、そして、さらに典型的には言及した値の±0.5%を意味する。
本明細書中で解説的に記載される発明は、本明細書中では具体的に開示されない任意の要素(複数可)、制限(複数可)が無くても適切に実施可能である。従って、例えば、用語「含む(comprising)」、「含む(including)」、「含む(containing)」等は、広くおよび制限なしに読解されたい。また、本明細書中で採用される用語および表現は、説明のための用語として使用され、限定するためのものではない。そして、示され且つ記載される特徴またはその部分の任意の等価物を除外するような用語および表現を使用する意図はない。しかし、請求項の発明の範囲内で各種改変が可能であることが認識される。従って、理解されるべきは、本発明が好ましい実施形態と任意選択の特徴によって具体的に開示されたが、本明細書中やその他の開示中で実体化された発明の改変および変形は当業者によって復元可能であって、そして、そのような改変および変形が本発明の範囲内であると考えられることである。
本明細書中で使用される用語「基本的にからなる」は、所定の例に要求される要素を指す。この用語は、本発明のその例の基本的かつ新規の特徴(複数可)または機能的特徴(複数可)に物質的に影響を与えない追加的要素の存在を許容する。
用語「のみからなる」は、その所定の例で記載されない任意の要素を排除した、本明細書中に記載される組成物、方法、および各成分を指す。
本発明を、本明細書中で広く且つ一般的に記載した。本一般開示内に収まるそれより狭い種および下位属のグループもまた、本発明の部分を形成する。これは、取り上げた材料が本明細書中に具体的に記載されているか否かに関わらず、その属から任意の主題要素を除去する仮定的または否定的限定を有する本発明の一般的記載を含む。
他の実施形態は、以下の請求項と非限定的実施例内である。また、本発明の特徴または観点がマーカッシュ群の言葉で記載されている場合、当業者は、本発明がまた、マーカッシュ群の任意の個々のメンバーまたはメンバーの下位群に関してそれにより記載されていることを認識する。
実験セクション
実施例1 本開示のペプチド(L−ペプチド)の抗菌特性の検証
材料
本試験で使用されたペプチドは、GL Biochem(上海、中国)によって合成され、分析用逆相(RP)HPLCを使用して95%より高く精製した。ペプチドの分子量を、マトリックスとしてα−シアノ−4−ヒドロキシケイ皮酸(4−HCCA)を使用するマトリックス支援レーザー脱離イオン化飛行時間型質量分析法(MALDI−TOF MS、Autoflex IIモデル、Bruker Daltonics社、米国)を用いてさらに確認した。4−HCCAは、Sigma−Aldrich(シンガポール)から購入し、そして、再結晶化後に飽和アセトニトリル/水(1:1の体積比)中で使用した。リン酸緩衝生理食塩水(10×PBS)は、1st Base(シンガポール)から購入し、そして、使用前に目的濃度へと希釈した。Mueller−Hinton培養液II(MHBII)とイーストモルドブロス(YMB)は、BD Diagnostics(シンガポール)から購入し、そして、製造事業者の取扱説明書に従って再構成した。表皮ブドウ球菌(ATCC番号12228)、黄色ブドウ球菌(ATCC番号29737)、大腸菌(ATCC番号25922)、緑膿菌(ATCC番号9027)、および酵母カンジダ・アルビカンス(ATCC番号10231)は、ATCC(米国)から取得し、そして、推奨されるプロトコルに従って培養した。リポポリサッカリド(LPS)とFITC結合LPS(大腸菌0111:B4由来のもの)をSigma−Aldrichから購入した。Griess試薬システムは、Promega(米国)から取得し、そして、製造事業者のプロトコルに従って使用した。
円二色性(CD)分光法
各ペプチドを、脱イオン(DI)水単独または25mMのSDS界面活性剤含有DI水中に、0.5mg mL−1でまず溶解した。CDスペクトルを、1.0mmの経路長の石英セルを使用するCD分光偏光計(JASCO社、J−810)を用いて室温で記録した。CDスペクトルを、10nm/minのスキャン速度で、190〜240nmのものから溶媒分を差し引いて取得し、各ペプチドサンプル当たり5つの実測を平均した。得られたCDスペクトルを、次の等式を使用して平均残基楕円率へと変換した。
式中、θは平均残基楕円率(deg・cm・dmol−1)を指し、θobsは、所定の波長(mdeg)で観察された楕円率であって、DI水用に補正したものである。MRWは残基分子量(M/アミノ残基数)であり、cはペプチド濃度(mg・mL−1)であり、および、lは経路長である。
溶血テスト
ラットの新鮮な赤血球をPBSで25×希釈して、約4(容量)%の懸濁液をこの実験に使用するために得た。300μLの赤血球懸濁液を、PBS中に等量(300μL)のペプチド溶液を含む各チューブに加えた。そのチューブを1時間37℃でインキュベートし、その後、5分間1000×gで遠心分離した。上澄みのアリコート(100μL)を96穴プレートの各ウェルに移し、そして、マイクロプレートリーダー(TECAN、スイス)を使用して576nmでヘモグロビン放出の解析を行った。PBSとインキュベートした赤血球懸濁液をネガティブコントロールとして使用した。0.1%(v/v)Triton X−100で溶解した赤血球の吸光度をポジティブコントロールとして使用し、それを100%の溶血のものとした。溶血パーセンテージを次の式を使用して計算した。溶血(%)=[(処理サンプルのO.D.576nm−ネガティブコントロールのO.D.576nm)/(ポジティブコントロールのO.D.576nm−ネガティブコントロールのO.D.576nm)]×100。データを、4回リピートしたものの平均±標準偏差として表した。
最小発育阻止濃度(MIC)測定
グラム陽性の表皮ブドウ球菌と黄色ブドウ球菌、グラム陰性の大腸菌と緑膿菌、および酵母のC.アルビカンスに対する本ポリマーの抗菌活性を、微量液体希釈法(broth microdilution method)を使用して検証した。300rpmで常に振とうしながら、対数増殖中期に達するまで、37℃、MHBII中で細菌菌体を培養し、室温、YMB中で酵母細胞を増殖させた。微生物懸濁液を適切な培養液で希釈調整して、マイクロプレートリーダー(TECAN、スイス)上で600nmの波長での初期吸光度(O.D.)の測定値が約0.07(McFarland基準No.1(約3×10CFU mL−1)に相当)となった。ペプチドを0.2μmフィルタを通したHPLCグレードの水中に溶解し、適切な培養液を使用して2倍系列希釈した。100μLの微生物懸濁液で、初期負荷量が3×10CFU mL−1となるものを、等量(100μL)のペプチド溶液に加えて、終濃度が3.9〜500mg L−1の範囲になることを達成した。また、水分の濃度は、96穴プレートの各ウェル中、10(容量)%で固定した。細菌と酵母のそれぞれに関し、37℃または室温で振とうしながら18時間または42時間インキュベーションした後、MICは、微生物増殖が目視されず、0時間からのO.D.測定値の変化がない最も低いポリマー濃度とした。10(容量)%のHPLCグレード水を含む培養液と共に純粋な培養液単独のものの中での微生物菌体を、ネガティブコントロールとして使用した。無菌状態で取り扱いしたことを確認するために、微生物を入れていない純粋培養液を含むウェルを各実験中に含めた。各テストを、少なくとも2回独立した日時に、6回反復して実施した。
殺傷効率の測定
0.5×MIC、MIC、および2×MICでの各種ペプチド濃度で微生物を18時間処理後、各サンプルを10倍系列希釈し、そして、LB寒天プレート上に蒔いた。そのプレートをその後、一晩インキュベートし、そして、コロニー形成単位を数えた。10容量%の水で処理した微生物を含むサンプルをネガティブコントロールとして使用した。結果は、対数(CFU/mL)および殺傷% = [(コントロールの細胞数 − ポリマー処理後の微生物の生存数)/コントロールの細胞数]×100として表される。
電界放出型走査電子顕微鏡(FE−SEM)イメージング
約3×10CFU ml−1(100μL)の大腸菌懸濁液を、20(容量)%の水と致死量(250mg L−1)の代表的ペプチドを含む等量の培養液と、96穴プレート中で2時間インキュベートした。各条件を8回反復したものをプールしてマイクロチューブに入れ、5000×gで5分間ペレット化し、そして、PBSで二度濯いだ。サンプルをその後、15分間室温にて4%ホルムアルデヒドで固定し、次に、DI水で濯いだ。菌体の脱水を、様々な濃度系列のエタノール溶液(35、50、75、90、95、および100%)を使用して実施した。サンプルを風乾し、炭素テーブル状に載せ、FE−SEM(JEOL JSM−7400F、日本)装置でイメージングするために、白金でスパッタコーティングした。
バイオフィルム増殖阻害とバイオマスアッセイ
3×10CFU ml−1に希釈した黄色ブドウ球菌のオーバーナイト培養物を、1ウェル当たり100μLの容量で96穴プレートの各ウェル中に加えた。そして、100rpmで穏やかに振とうしながら37℃で一晩接着させた。ウェルをその後、100μLのPBSで一度濯いで、浮遊性菌体とゆるく着いている菌体を除去し、そして、100μLの新鮮な培養液を補充した。一日一回濯いで実験に使用する前に培地交換しながら、6〜8日間までバイオフィルム形成を進行させた。バイオフィルム中の黄色ブドウ球菌の生存率へのペプチド処理の効果を決定するために、MIC、4×MIC、および8×MICレベルの100μLの(IRIK)−NH(配列番号:17)と(IRVK)−NH(配列番号:22)溶液を各ウェルに加え、そして、24時間インキュベートした。次に、その溶液を取り除き、そして、120μLの活性化XTT溶液を各ウェル中に加えた。4時間インキュベーションした後、各ウェルからの100μLのアリコートを新しい96穴プレートに移して、それぞれ490nmと660nmの測定波長と参照波長でマイクロプレートリーダー(TECAN、スイス)を使用して吸光度を測定した。相対的菌体生存率を、[(A490 − A660サンプル/(A490 − A660コントロール]×100%として表した。データを、各濃度当たり4回リピートしたものの平均±標準偏差として表した。
バイオフィルムのバイオマスを、クリスタルバイオレット染色アッセイによって推定した。手短には、形成したバイオフィルムを、まず、上記のように24時間本ペプチドで処理した。培養培地を吸い取った後、バイオフィルムをPBSで一回洗浄し、室温で15分間メタノールで固定し、そして、10分間0.1(容量重量(weight by volume))%のクリスタルバイオレット100μLで染色した。過剰なクリスタルバイオレット色素を、5回DI水でウェルを濯いで除去した。バイオフィルムと結合している色素を、各ウェル当たり100μLの33%氷酢酸を使用して抽出し、そして、マイクロプレートリーダー(TECAN、スイス)を使用して、570nmの波長での吸光度を測定することによって定量化した。ペプチド処理後に残った相対バイオマス量を、10(容量)%の水を含む培養液で処理したコントロールのパーセンテージとして表した。データは、各濃度当たり4回リピートしたものの平均±標準偏差を示す。
FITC−LPS結合アッセイ
50μLのPBS中の1μg mL−1のFITC−LPSを、底が透明な黒色96穴プレートの各ウェル中にある等量のペプチド溶液(50μL)で処理した。FITC結合LPSとペプチドとの相互作用の試験は、480nmでFITC−LPSを励起し、0時間と2時間で、蛍光マイクロプレートリーダー(TECAN、スイス)を使用して、ペプチド濃度を増加(3.9、7.8、15.6、31.3、62.5、125、250、500mg L−1)させたものの存在下での516nmのFITCの発光をモニターすることにより行った。10容量%の水を含む100μLのPBSをブランクとして含めた。100μLのPBS中のFITC−LPS(0.5μg mL−1)の蛍光強度をネガティブコントロールとして使用した。蛍光強度の変化のパーセンテージを以下のように計算した:%ΔF(AU)=[((Fサンプル − Fブランク)/(Fコントロール−Fブランク))×100] − 100。結果を、4回リピートしたものの平均±標準偏差として表した。
細胞培養
ラットマクロファージ細胞株NR8383を、10%FBS、100U mL−1のペニシリンおよび100mg mL−1のストレプトマイシンを添加したFK15増殖培地中で維持し、そして、5%COと95%加湿空気の環境下、37℃で培養した。
エンドトキシン中和アッセイ
NR8383細胞を、4×10の密度で蒔き、そして、37℃で18時間、96穴プレートの各ウェル中のペプチドの存在下(3.9、7.8、15.6、31.3、62.5、125、250、500mg L−1)または非存在下で、大腸菌0111:B4由来のLPS(100ng mL−1)を用いて刺激した。非処理細胞とLPS単独で刺激した細胞を、それぞれポジティブコントロールおよびネガティブコントロールとして用いた。製造事業者のプロトコルに従ってGriess試薬(1%スルファニルアミド、0.1%N−1−ナフチルエチレンジアミンジヒドロクロリド、5%リン酸)を使用して、単離上澄み画分中の安定なNO代謝産物である亜硝酸塩の濃度を定量することによって、NO生産量を推定する。吸光度を540nmで測定し、そして、亜硝酸塩濃度を、既知濃度のNaNO溶液から作成した検量線を使用して決定した。
細胞毒性テスト
ラットマクロファージ細胞株NR8383を、96穴プレートの各ウェル当たり4×10の細胞密度で播種し、そして、37℃で18時間、ペプチドの濃度を増加(3.9、7.8、15.6、31.3、62.5、125、250、500mg L−1)させたもので処理した。次に、20μLのCellTitre−Blue(登録商標)試薬を各ウェルに加え、そして、プレートをさらに4時間インキュベートした。ウェルの蛍光強度の測定値を、560nmの励起波長と590nmの発光波長で、マイクロプレートリーダーを使って決定した。細胞非存在下のペプチド溶液を含むコントロールウェルを、バックグラウンドの蛍光を測定するために含めた。細胞生存率%=[(F処理サンプル−F対応バックグラウンド)/(F10%水コントロール−F10%水コントロールバックグラウンド)]×100。データを、4回リピートしたものの平均±標準偏差として表した。
結果
この試験では、8〜12アミノ酸残基の短鎖両親媒性ペプチドを、カチオン性リジンおよび/またはアルギニンアミノ酸を極性面にし、各種疎水性アミノ酸を反対側の非極性面に分離することによって設計した。合成ペプチドの分子量は、MALDI−TOF質量分析法により確認し、観察された分子量を表1に一覧にした。分かるのは、実験的に決定された分子量が計算上の質量とよく一致していたことであり、このことは、生産物が設計配列に対応することを示している。
脱イオン水中では、各ペプチドはランダムコイル構造を採り、その構造の特徴は、プロトン化リジンおよび/またはアルギニン残基間の分子間静電反発力に起因して、水溶液中での最小値が約195nmであることである。微生物膜を模倣する疎水性環境(25mMのSDSミセル溶液を使用するもの)下では、しかしながら、本合成ペプチドは、容易にβシート二次構造に自己集合して、その特徴CDスペクトルは約200nmで最大値と218nmで最小値を示す(図2)。
臨床的に妥当な代表的セットである微生物(グラム陽性表皮ブドウ球菌と黄色ブドウ球菌、グラム陰性大腸菌と緑膿菌、および酵母C.アルビカンス)に対する合成ペプチドの抗菌活性をテストした。表2に示すように、本設計ペプチドは、試験微生物の一団に対する広い範囲の抗菌活性を呈し、13.3〜162.7mg L−1の範囲の幾何平均(GM)最小発育阻止濃度(MIC)を有していた。全体的に見れば、全てのカチオン性残基がArgであるペプチド(IRIR)−NH(配列番号:12)が最良の抗菌活性を示し、最小GM MIC値は13.3mg L−1であった。この次に近いのは、(IRIK)−NH(配列番号:17)と(IKIK)−NH(配列番号:13)であり、GM MIC値はそれぞれ23.4と38.3mg L−1であった。この結果から分かるように、2つのArg残基と2つのLys残基を有するペプチドには、4つのArgを有する対応ペプチドまたは4つのLysを有する対応ペプチドの間の抗菌作用が生じていた。2つのArgと2つのLysカチオン性残基の組合せを保持しながら、疎水性と大きさの程度を増加させることを基本として、体系的に、非極性アミノ酸(高いβシート形成特性を持つことが報告されているもの)を変化させた(表1)。Val、Ile、Phe、およびTrpを取り込んだペプチドの中で、(IRIK)−NH(配列番号:17)が5つの試験微生物の一団に対して最も効果的な抗菌作用を示した。ペプチド反復単位の二番目の疎水性Ile残基をValで置換して得た(IRVK)−NH(配列番号:14)の抗菌活性はわずかに減少した。この結果は、Ile残基が、観察された強力な抗菌作用に必須であったことを強く示唆する。n=3の反復単位を有するペプチドの抗菌作用を、ValとIleを含む配列を用いて検証した。表2から、(VRVK)−NH(配列番号:20)が全体で最良の抗菌作用を示し、その次は(IRVK)−NH(配列番号:22)と(IRIK)−NH(配列番号:21)であった。臨床で使用されるリポペプチドであるポリミキシンBに比較すると、βシート形成ペプチドのいくつか(例、(IRIR)−NH(配列番号:12)、(IKIK)−NH(配列番号:13)、(IRIK)−NH(配列番号:17)、および(VRVK)−NH(配列番号:20))はより広い範囲の抗菌活性を有することが判明し、それらのGM MIC値(13.3〜34.6対41.4)がより少ないことからも分かる。
βシート形成ペプチドが適切な治療薬候補としての基準を満たすためには、哺乳類細胞に対する毒性を最小化するための微生物菌体膜への選択性を鑑みて、ペプチドの抗菌活性を考慮に入れることが望ましい。図3に示すように、本合成ペプチドは各種MIC値でのラット赤血球に対する溶血の誘導が最小限であるか全くなかった。ペプチドの選択性インデックス(SI)を、様々なペプチド配列の安全性と効力の比較としてさらに評価した(表2)。各種ペプチドのSIを、GM(5つの試験微生物株の幾何平均MIC)に対するHC10値(10%以上の溶血を誘導する最小ペプチド濃度として定義されるもの)の比として計算した。(IRIK)−NH(配列番号:21)を除いては、全ての試験ペプチドのSIは10より大きいことが判明した。このことは、それらペプチドが、身体への外用薬用途と全身投与用途の両者に適切な非常に魅力的な候補となることを示している。特に、本開示は、(IRIK)−NH(配列番号:17)中のArgとlys残基両者の組み合わせが、カチオン性アミノ酸が一種類のペプチド配列(IRIR)−NH(配列番号:12)および(IKIK)−NH(配列番号:13)のSIをそれぞれ11.3および18.3から44.8の値へと顕著な改善を導いたことを示す。急性インビボ毒性テストを、反復単位がn=2[(IRIK)−NH(配列番号:17)]とn=3[(IRVK)−NH(配列番号:22)]の代表的ペプチド含有溶液をマウスへと尾静脈内注射を介して実施した。前者のペプチドが選択された理由は、n=2の反復単位を有するペプチドの中でSIが優れていたからである。一方、後者のペプチドが選ばれた理由は、n=3の反復単位を有するペプチドの中で抗菌活性、選択性、およびエンドトキシン中和特性(後に議論するもの)がより良かったからである。(IRIK)−NH(配列番号:17)と(IRVK)−NH(配列番号:22)の50%致死量(LD50;特定の試験期間後にマウスの50%を殺傷するのに必要な用量)の値がそれぞれ、35.2mg/kgであったことが判明した。本設計ペプチドのLD50値は、報告されたポリミキシンB(5.4mg/kg)およびグラミシジン(1.5mg/kg)のものと対比して有利であった。
抗菌メカニズムを明らかにするために、コロニー数を計数する実験を、前記微生物一団を互いに異なる濃度の(IRIK)−NH(配列番号:17)で処理した後に実施した。5つの試験微生物の各々に関して、本ペプチドは各MIC値で100%に近い殺傷効率を達成した。従って、このことは細菌殺傷メカニズムを支持する(図4)。(IRIK)−NH(配列番号:17)と(IRVK)−NH(配列番号:22)で処理後の大腸菌の表面形態を、電界放出型走査電子顕微鏡(FE−SEM)下で検証した。図5に示すように、10(容量)%の水を含む培養液で処理したコントロールサンプルの表面が相対的に滑らかであったのに比較して、本ペプチドで処理した大腸菌と黄色ブドウ球菌の表面は凸凹で不均一に見えた。この観察は、文献中に報告された各種天然AMPおよび合成AMPの膜溶解メカニズムと一貫している。微生物の生合成経路内の各種標的を阻害する従来の抗生物質と比較して、本ペプチドによる微生物菌体膜の物理的破壊が臨床現場で固有の利点を提供するのは、多剤耐性を付与する変異の発生の確率が減少するからである。
抗バイオフィルム能
既に形成されたバイオフィルムへの本合成抗菌ペプチドの抗バイオフィルム能(これは、バイオフィルム形成を阻止するよりも本質的に難題となる)を次に検証した。図6に示すように、ペプチド(IRIK)−NH(配列番号:17)と(IRVK)−NH(配列番号:22)が、バイオフィルムに住む黄色ブドウ球菌を用量依存的に殺傷したことを実証した。(IRIK)−NHは、試験した3種類の濃度に渡って、有意に高いレベルの殺傷を誘導したことが判明し(P<0.01)、菌体生存率は、24時間以内に4×MICレベルでは10%未満に劇的に減少した。本ペプチドで処理後に残ったバイオマスの相対量を測定するために、バイオフィルムをクリスタルバイオレット染色および可溶化した。黄色ブドウ球菌の菌体生存率の減少と一致して、処理後バイオフィルム中のバイオマス量が、用量依存的様式で減少したことを観察した(図7)。これらの結果を合わせると、8と12アミノ酸長ペプチドがバイオフィルム内の微生物を殺傷するのに非常に効果的で、バイオフィルムマトリックスの離散を効率的に媒介できたことの直接的証拠を提供する。
LPSおよびエンドトキシンの中和
LPS凝集物に結合し、そして、それを解離させる本合成ペプチドの能力を評価するために、FITC結合LPSを各種ペプチドと抱合し、蛍光強度の変化を2時間に渡りモニターした。水溶液中では、LPS凝集物内に隔離されたFITCは、自己消光し、その結果蛍光強度は低くなる。逆に、FITC−LPS凝集物が解離する場合、その蛍光は発光(dequenching)効果により増加する。図8aに見られるように、n=2のβシート形成ペプチドは、FITC−LPS凝集物の識別可能な破壊を誘導しないように見えた。これは、ペプチド濃度が500mg L−1まで、蛍光強度の変化がないことから明白である。3つの反復単位を有する本対応ペプチドでは、しかしながら、FITC−LPSの蛍光強度が用量依存的に強く増加した(図8b)。3種類のペプチド配列の中で、(IRIK)−NH(配列番号:21)と(IRVK)−NH(配列番号:22)が低濃度で蛍光強度のより大きな変化パーセンテージを誘導し、それに続いて最後に、(VRVK)−NH(配列番号:20)であった。
100ng mL−1のLPSと各種ペプチドとラットマクロファージ細胞株NR8383とを共にインキュベーション後、細胞培養培地に存在する安定的NO代謝産物である亜硝酸塩の濃度を定量することを介して炎症増強性窒素酸化物の放出量を推定することによって、本合成ペプチドのエンドトキシン中和能を立証した。本ペプチドは、LPS刺激の結果のNO生産を効率的に阻害することが判明し、ペプチド濃度が15.6mg L−1と低い場合であってさえも、ペプチド非処理コントロールと比較して亜硝酸塩の濃度が有意に減少した(図9)。各種ペプチドが媒介するLPS中和の程度は、(IRIK)−NH(配列番号:21)>(IRVK)−NH(配列番号:22)>(VRVK)−NH(配列番号:20)の順であり、FITC−LPS相互作用アッセイで先に観察された傾向と近似していた。重要なことには、125mg L−1の(IRIK)−NH(配列番号:21)と(IRVK)−NH(配列番号:22)では、亜硝酸塩濃度はコントロールレベルまで減少した。NR8383細胞株に対する本ペプチドの細胞毒性をさらに評価した。そして、(VRVK)−NH(配列番号:20)、(IRVK)−NH(配列番号:22)、および(IRIK)−NH(配列番号:21)の濃度が、それぞれ62.5、125、および125mg L−1となるまで、細胞生存率が80%を超えていたことが分かった(図10)。これらの結果は、本合成ペプチドの良好な抗炎症特性が、細胞生存率への効果と独立していたことと、本ペプチドが抗菌および抗炎症性用量で細胞毒性がなかったことを確認し、本ペプチドが全身投与に適することを示した。(IRIK)−NH(配列番号:21)はこれら3種類のペプチドの中で最も強力な抗炎症活性を持っているが、その抗菌活性が相対的に弱いこと(GM MIC値=162.7mg L−1)と選択性インデックスが低いこと(SI=3.1)は、二番目に良い抗炎症性ペプチド(IRVK)−NH(配列番号:22)(その幾何平均MIC値が47.3とずっと低く、その選択性インデックスが26.4とより高い(表2))が血流感染の安全かつ効力のある治療のためのより適した候補となることを示唆する。
本開示において、本発明者らは、一連のβシート形成短鎖合成ペプチドを、自然なβシート膜貫通タンパク質において両親媒性であって2個一組のリピートがしばしば起こることに基づいて設計した。本設計βシート形成ペプチドは、グラム陽性表皮ブドウ球菌と黄色ブドウ球菌、グラム陰性大腸菌と緑膿菌、および酵母C.アルビカンスに対する広い範囲の抗菌活性を示した。n=2とn=3の反復単位の最適ペプチド配列、つまり、(IRIK)−NH(配列番号:17)と(IRVK)−NH(配列番号:22)が、それぞれ、44.8と26.4の高い選択性インデックスを持っていたことが分かった。マウス中での急性インビボ毒性テストは、臨床で使用されているポリミキシンBやグラミシジンに比較して、最適な合成ペプチドの静脈内投与によるLD50値が高いことを明らかにした。浮遊性菌体の殺傷効率が高いことに加え、本合成ペプチドはまた、バイオフィルム内での細菌増殖に対する強力な阻害剤となることも実証された。また、各種本ペプチドでバイオフィルムを処理することで、バイオマスが劇的に減少した。このことは、本ペプチドがバイオフィルムマトリックス中を通り移動してそのマトリックスの離散を引き起こすことを示している。また、3つの反復単位を有する合成ペプチド((VRVK)−NH(配列番号:20)、(IRVK)−NH(配列番号:22)、および(IRIK)−NH(配列番号:21))は、機能的効果に必要な濃度で細胞毒性の誘導が最小限または全くないが、エンドトキシンへの結合とそれを中和する能力を実証した。まとめると、我々の発見が明らかに実証したのは、合理的に設計された本合成βシート形成ペプチドが、非常に選択的で、そして、幅広い範囲の細菌または真菌ベースの感染症関連用途において蔓延する多剤耐性問題を克服するための、広い効力範囲の抗菌剤としての使用に潜在能力を有することである。そして、その用途には、限定はされないが、開いた創傷、カテーテル、またはインプラント上の治療することが困難なバイオフィルムを予防および死滅させること、ならびに、血流感染の治療を改善するために微生物エンドトキシンを中和することが含まれる。
実施例2 本開示のペプチド(D−ペプチド)の抗菌特性の検証
材料
本試験で使用されたペプチドは、GL Biochem(上海、中国)によって合成され、分析用逆相(RP)HPLCを使用して95%より高く精製した。ペプチドの分子量を、マトリックスとしてα−シアノ−4−ヒドロキシケイ皮酸(4−HCCA)を使用するマトリックス支援レーザー脱離イオン化飛行時間型質量分析法(MALDI−TOF MS、Autoflex IIモデル、Bruker Daltonics社、米国)を用いてさらに確認した。4−HCCAは、Sigma−Aldrich(シンガポール)から購入し、そして、再結晶化後に飽和アセトニトリル/水(1:1の体積比)中で使用した。リン酸緩衝生理食塩水(10×PBS)は、1st Base(シンガポール)から購入し、そして、使用前に目的濃度へと希釈した。陽イオンを調整したMueller−Hinton培養液II(MHBII)とイーストモルドブロス(YMB)は、BD Diagnostics(シンガポール)から購入し、そして、製造事業者の取扱説明書に従って再構成した。表皮ブドウ球菌(ATCC番号12228)、黄色ブドウ球菌(ATCC番号6538)、大腸菌(ATCC番号25922)、緑膿菌(ATCC番号9027)、および酵母カンジダ・アルビカンス(ATCC番号10231)は、ATCC(米国)から取得し、そして、推奨されるプロトコルに従って培養した。シプロフロキサシン、ゲンタマイシン硫酸塩、およびペニシリンGを、Sigma−Aldrichから入手した。
円二色性(CD)分光法
各ペプチドを、脱イオン(DI)水単独または24mMのSDS界面活性剤含有DI水中に、0.5mg mL−1でまず溶解した。CDスペクトルを、1.0mmの経路長の石英セルを使用するCD分光偏光計(JASCO社、J−810)を用いて室温で記録した。CDスペクトルを、10nm min−1のスキャン速度で、190〜240nmのものから溶媒分を差し引いて取得し、ペプチドサンプル当たり5つの実測を平均した。得られたCDスペクトルを、次の等式を使用して平均残基楕円率へと変換した。
式中、θは平均残基楕円率(deg cm dmol−1)を指し、θobsは、所定の波長(mdeg)で観察された楕円率であって、DI水用に補正したものである。MRWは残基分子量(M アミノ残基数−1)であり、cはペプチド濃度(mg mL−1)であり、および、lは経路長である。
最小発育阻止濃度(MIC)測定
表皮ブドウ球菌と黄色ブドウ球菌(グラム陽性)、大腸菌と緑膿菌(グラム陰性)、およびC.アルビカンス(酵母)に対する本βシート形成ペプチドの抗菌活性を、微量液体希釈法(broth microdilution method)を使用して検証した。常に300rpmで一晩振とうしながら、対数増殖中期に至るまで37℃、MHB II中で細菌菌体を培養し、室温、YMB中で酵母細胞を増殖させた。微生物懸濁液を適切な培養液で希釈調整して、マイクロプレートリーダー(TECAN、スイス)上で600nmの波長での初期吸光度(O.D.)の測定値が約0.07となった。そのO.D.測定値は、McFarland基準No.1(約3×10CFU mL−1)に相当する。ペプチドをHPLCグレードの水中に溶解し、適切な培養液を使用して2倍系列希釈した。次に、100μLの微生物懸濁液で、初期負荷量が3×10CFU mL−1となるものを、等量(100μL)のペプチド溶液に加えて、3.9〜500mg L−1の範囲のポリマー終濃度を達成した。そして、水分含量を、96穴プレートの各ウェル中、10(容量)%で固定した。37℃または室温で振とうしながら18時間インキュベーションした後、MICは、微生物増殖が目視されず、0時間からのO.D.測定値の変化がない最も低いポリマー濃度とした。10(容量)%の水を含む培養液と共に純粋な培養液単独のものの中での微生物菌体を、ネガティブコントロールとして使用した。無菌状態で取り扱いしたことを保証するために、微生物を入れていない純粋培養液を含むウェルを各実験中に含めた。各テストを、少なくとも2回独立した日時に、6回反復して実施した。
殺傷効率テスト
(0.5×MIC、MIC、および2×MICでの)各種ペプチド濃度で微生物を18時間処理後、各サンプルを10倍系列希釈し、そして、LB寒天プレート上に蒔いた。そのプレートをその後一晩インキュベートし、そして、コロニー形成単位を数えた。10容量%の水で処理した微生物を含むサンプルをコントロールとして使用した。結果は、対数(CFU/mL)および殺傷% = [(コントロールの細胞数 − ペプチド処理後の微生物の生存数)/コントロールの細胞数]×100として表される。
電界放出型走査電子顕微鏡(FE−SEM)解析
約3×10CFU ml−1(100μL)の黄色ブドウ球菌と緑膿菌の懸濁液を、終濃度が10(容量)%のHPLC水または125mg L−1のIK8−オールDを含む等量の培養液と、96穴プレート中で2時間別々にインキュベートした。各条件を8回反復したものをプールしてマイクロチューブに入れ、4000rpmで5分間ペレット化し、そして、PBSで二度濯いだ。サンプルをその後、20分間室温にて4%ホルムアルデヒドで固定し、次に、脱イオン水で濯いだ。菌体の脱水を、様々な濃度系列のエタノール溶液(35、50、75、90、95、および100%)を使用して実施した。サンプルを銅テープ上に載せ、風乾し、FE−SEM(JEOL JSM−7400F、日本)装置を使用してイメージングするために、白金でスパッタコーティングした。
溶血活性テスト
ウサギの新鮮な赤血球をRPMI1640で25×希釈して、約4(容量)%の懸濁液をこの実験に使用するために得た。300μLの赤血球懸濁液を、RPMI1640中の等量(300μL)のペプチド溶液を含む各チューブに加えた。そのチューブを、1時間37℃でインキュベートし、その後、5分間1000×gで遠心分離した。上澄みのアリコート(100μL)を96穴プレートの各ウェルに移し、そして、マイクロプレートリーダー(TECAN、スイス)を使用して576nmでヘモグロビン放出を解析した。RPMI1640とインキュベートした赤血球懸濁液をネガティブコントロールとして使用した。0.1%(v/v)Triton X−100で溶解した赤血球の吸光度をポジティブコントロールとして使用し、それを100%の溶血のものとした。溶血パーセンテージを次の式を使用して計算した。溶血(%)=[(処理サンプルのO.D.576nm−ネガティブコントロールのO.D.576nm)/(ポジティブコントロールのO.D.576nm−ネガティブコントロールのO.D.576nm)]×100。データを、4回リピートしたものの平均±標準偏差として表した。
薬剤耐性試験と薬剤耐性細菌に対する抗菌活性
大腸菌と黄色ブドウ球菌(初期負荷レベルは3×10CFU mL−1)を、20回継代するまで各種濃度のペプチドIK8−オールDと臨床で使用されているシプロフロキサシン、ゲンタマイシン、およびペニシリンG抗生物質を用いて、前記した微量液体希釈法に従って繰り返し処理した。各継代の18時間のインキュベーションが終わった後、(1/4 MICでの特定継代の)細菌菌体を継代し、そして、対数増殖中期に到達するように増殖させて、その後、引き続くMICテストで使用した。各継代のMICの変化、すなわち、継代開始時のMICに対して標準化した継代数nでのMIC(MIC/MIC)を記録することにより、薬剤耐性の発生はモニター可能である。このアッセイの終わりに、発生したシプロフロキサシンとゲンタマイシン耐性大腸菌を、各種濃度のIK8−オールDで処理して、それが抗生物質薬剤耐性を効果的に克服できるかどうかを決定した。
細胞培養
マウス肺胞マクロファージ細胞株RAW264.7とヒト胎児肺線維芽細胞WI−38を、2mMのL−グルタミン、1.5g L−1の炭酸水素ナトリウム、および10%FBSを添加した、それぞれDMEM培地とRPMI培地中で維持し、そして、5%COと95%加湿空気の環境下、37℃で培養した。
細胞内細菌殺傷
RAW264.7細胞を、12穴プレートの各ウェル当たり4×10の密度で播種した。一晩インキュベーションした後、細胞に13.3μLの加工細菌(3.0×10CFU mL−1)を、感染多重度が10:1となるように1時間感染させた。細胞をその後、1×PBSで二度濯ぎ、そして、50μg mL−1のゲンタマイシンを含む1mLの新鮮な培地で45分間インキュベートして細胞外の細菌を死滅させた。各ウェルの培地を除去し、そして、感染細胞を、10(容量)%の水または各種濃度のIK8−オールD(2、3.9、7.8、15.6、および31.3mgL−1)を含む新鮮な培地で4および8時間までインキュベートした。各時点で、感染細胞をトリプシン処理し、PBSで二度濯ぎ、そして10分間室温で800μLの滅菌水でインキュベートして溶解させ、その後、5分間超音波処理した。細胞内細菌数を、系列希釈した培養物をLB寒天上に蒔いて、24時間後に計数することによって決定した。
細胞毒性テスト
RAW264.7細胞とWI−38細胞を、それぞれ、96穴プレートの各ウェル当たり1.5×10と1×10密度で播種した。一晩インキュベーション後、細胞を1.0〜125mg L−1のIK8−オールDで48時間処理した。次に、各ウェルのインキュベーション培地を、100μLの増殖培地および10μLのMTT溶液(PBS中で5mg ml−1)で置き換えた。そして、細胞を、製造事業者の指示に従って、37℃で4時間インキュベートした。各ウェル中に形成されて生じたホルマザン結晶を、増殖培地を除去する際に150μLのDMSOを使って可溶化した。各ウェルからの100μLのアリコートを、その後、新しい96穴プレートに移して、550nmと690nmの波長でマイクロプレート分光光度計を使用して吸光度を測定した。相対的菌体生存率を、[(A550 − A690サンプル/(A550−A690コントロール]×100%として表した。データを、各濃度当たり4回反復実施するのを2回独立して実験したものの平均±標準偏差として表した。
結果
ペプチド設計と特徴解析
上記実施例1は、天然L−アミノ酸から構成されるβーシート形成短鎖合成ペプチドの設計を記載し、そして、臨床的に妥当な微生物に対するその広い範囲と高い選択性の抗菌活性を確認した。この試験では、それぞれn=1.5、2、または3の反復単位の最適なβシートに折り畳まれるペプチド(IRIK)−NH(配列番号:17)(IK8−オールL)、および(IRVK)−NH(配列番号:22)(IK12−オールL)(これらは、抗菌活性、選択性、エンドトキシン中和特性に関して既に最適化されたもの)をD−アミノ酸で置換した。全ての本設計ペプチドをC末端でアミド化して、高い総正電荷を付与して、抗菌活性を増強した。表3に示すように、MALDI−TOF質量分析法を使用して決定された本合成ペプチド配列の観察分子量は、理論値と近似していた。このことは、生成物が設計組成物とよく一致することを示している。
本設計ペプチドの二次構造形成を、微生物膜模倣環境で、CD分光法を使用して検証した。IK8−オールLおよびIK12−オールLは、25mMのSDSミセル溶液中で容易に自己集合して、βシート二次構造を形成した。これは、特性最大値が約200nmで最小値が約218nmであること(図11aと11b)から明らかである。対応エナンチオマーIK8−オールDおよびIK12−オールDの楕円率は、そのL型対応ペプチドのものと比較して、ほぼ同等であるが符号が逆である正確なミラーイメージであった。興味深いことには、最適なIK8−オールL配列中の2、4、6、および8位を選択的にD−アミノ酸で置換(IK8−4D)すると二次構造が完全に消失する一方で、4と6位でのみ置換(IK8−2D)するとβシート形成特性は保持可能であった(図11c)。βシート形成は、所定のペプチドの側鎖官能基間の分子間水素結合によって支配される。従って、IK8−4DへD−アミノ酸が広く取り込まれることにより、ペプチド構造内の官能基の空間配置が影響をおそらく受けて、隣り合うペプチド分子間の相互作用が喪失して、βシート形成を邪魔したのだろう。βシート形成配列であるIK8−オールL内のカチオン性アミノ酸と疎水性アミノ酸を再構成して得られたコントロールペプチド(IIRK)−NH(コントロール−オールL;配列番号:25)、(iirk)−NH(コントロール−オールD;配列番号:26)、および(IirK)−NH(コントロール−4D;配列番号:275)(表3)は二次構造が消失し、それら分子の総電荷と疎水性は変化がないままであったが、テスト条件下ではランダムコイルとして存在していた(図11d)。この結果は従って、交互に疎水性アミノ酸と親水性アミノ酸となる空間配置が、膜条件中でのβシート形成に必須であることを示す。図18に示すように、本設計ペプチドが脱イオン水中ではランダムコイルのままであったことは、従って、両親媒性微生物膜模倣物に対しての各βシート形成ペプチドの選択性を実証する。
抗菌活性と選択性
臨床的に妥当な微生物の一団(表皮ブドウ球菌と黄色ブドウ球菌(グラム陽性)、大腸菌と緑膿菌(グラム陰性)、およびC.アルビカンス(酵母))に対する本設計ペプチドの抗菌活性を評価した。
表4から分かるのは、微生物膜模倣条件下でβシートに集合したペプチド配列が、立体化学を問わず、βシート非形成ペプチドと比較して、全ての試験微生物に対して実質的により強力かつ広範囲の活性を示したことである(表4)。例えば、各種βシート形成ペプチドの幾何平均(GM)最小発育阻止濃度(MIC)は、4.3〜113.3mg L−1の範囲である一方、βシート非形成コントロールペプチドとIK8−4Dでは、抗菌活性が全くないか又は顕著に減少した。この観察は従って、本設計AMPが自己集合してβシート二次構造を形成することがその強力な抗菌特性に必要不可欠であることを実証する。この発見は、脂質二重膜の膜破壊につながる二次構造の形成の際に、カチオン性アミノ酸残基と疎水性アミノ酸残基が逆側の面に分離することと、AMPの生理活性はしばしば相関するという文献報告と一貫している。興味深いことには、βシート非形成IIRKモチーフ(コントロール−オールL)の2位および3位をD−アミノ酸で選択的に置換して得た(IirK)−NH(コントロール−4D)が、表皮ブドウ球菌、大腸菌、緑膿菌、およびC.アルビカンスに対する抗菌活性を部分的に回復した(表4)。特に、大腸菌に対するMIC値は、約16倍増加して、>500から31.3mg L−1となった。このペプチドの抗菌活性は、しかしながら、同じ長さ、電荷、および疎水性のβシート形成ペプチド(つまり、IK8−オールLまたはIK8−オールD)よりも低いままであった。
さらに、Dアミノ酸で置換することにより、反復数(n=2または3)またはペプチド長に関わらず、βシート形成ペプチドの抗菌活性がかなり改善することも判明した。この効果は、n=2の反復単位の短鎖IK8−オールDペプチドで特に顕著であり、各種細菌に対するMIC値は、そのL−エナンチオマーより2〜16倍低かった。対照的に、IK12−オールDは、その対応L−エナンチオマーと比較すると、C.アルビカンスに対する抗真菌活性が増強して、MIC値が2〜4倍減少した。各種ペプチドの中で、IK8−オールDが最も強力な抗菌活性を示し、各種タイプの微生物に対して幾何平均(GM)MIC値が4.3mg L−1と非常に低かった。これは、同一テスト条件下で、臨床で使用されているリポペプチド抗生物質のポリミキシンBに関して得られた値(41.4mg L−1)よりも優れている。ペプチド長をさらに減少させて6個のD−アミノ酸(n=1.5)とすると、抗菌活性の減少を導き、GM MIC値が113.3mg L−1とより高くなった。これは、n=2の反復単位を有するβシート形成ペプチドが、抗菌活性に対する最適な構造を提供したことを示している。
本合成ペプチドの溶血活性を、4(容量)%のウサギ血液を使用して評価した。既に報告されたように、全てがL−アミノ酸を含むβシート形成ペプチドでは、MIC値で最低限の溶血を呈するかまたは全く示さず、微生物膜に対する選択性が高かった(図2と表2にも示される)。この本試験では、n=2の反復単位のβシート形ペプチドのエナンチオマー型間での溶血活性の差は小さく、HC10値は、IK8−オールLおよびIK8−オールDに対して、それぞれ2000および1750mg L−1と高かった(表4)。抗菌活性の強い改善が先に観察されたが、この結果は、双性イオン性の哺乳類細胞膜よりもアニオン性の微生物膜に対する本D−エナンチオマーの選択性が優れていることを明らかに実証し、非常に高いSI値を生じた(IK8−オールDとIK12−オールDに対して、それぞれ407.0と>>9.8mg L−1)(表4)。まとめると、これらの結果は、n=2の本合成βシート形成ペプチドのD−エナンチオマーIK8−オールD(広範囲かつ高選択的な抗菌活性を有するもの)は、薬剤耐性微生物感染の治療用の強力な治療薬候補となる可能性があることを示唆する。
抗菌活性が乏しいことと一貫して、βシート非形成ペプチドであるコントロール−オールLとコントロール−オールDは、2500mg L−1まで溶血を最小限しか誘導しないか、または全く誘導しなかった(図12c)。このことは、赤血球膜とも同様に相互作用が弱いことを示している。同様に、D−アミノ酸で置換したβシート非形成ペプチドであるコントロール−4Dは、いくつかの微生物に対してある程度の抗菌活性を示し、また、溶血の誘導は最小限であり、従って、>23.3の高い選択性インデックス(SI)を生じさせた(表4)。これらの結果は、D−アミノ酸で置換する際に得られたペプチド立体構造の変化が、二次構造形成の非存在下で、真核生物膜に影響を与えることなくある種の微生物膜組成物と中程度の相互作用をそれでも許容する可能性があることを示唆する(図11d)。
プロテアーゼによる分解に対する耐性
AMPの臨床利用を制限する主要な因子の一つは、生体体液に豊富に存在および/または微生物により分泌されるプロテアーゼによる迅速な分解に起因する不安定性にある。本設計βシート形成ペプチドのタンパク質分解に対する安定性を評価するために、n=2のペプチド配列のD−とL−アイソフォーム(それぞれ、IK8−オールDとIK8−オールL)を、広効力範囲のセリンプロテアーゼ(トリプシンおよびプロテイナーゼK)で6時間処理し、そして、黄色ブドウ球菌、大腸菌、および緑膿菌に対するその抗菌活性を評価した。図13に見られるように、非処理IK8−オールDとIK8−オールLは、18時間インキュベーション後に3種類すべての微生物の増殖を効果的に阻害した。プロテアーゼでIK8−オールLを処理すると、しかしながら、細菌阻害活性が完全に消失した。これは、存在するプロテアーゼによって分解されたことを示唆する。他方、IK8−オールDは、各種微生物に対する抗細菌活性を保持していた。また、両プロテアーゼで処理後の合成ペプチドの構造完全性を、MALDI−TOF質量分析法を使用して評価した。MALDI−TOF質量スペクトルから分かるように、両プロテアーゼを用いたIK8−オールDの処理は、インタクトなペプチドの分解を導き、その結果、複数の低分子量ピークが生じた(図19a)。従って、これは、先に観察された抗細菌活性の消失を説明する。IK8−オールLペプチドに関する両酵素の切断部位を、質量スペクトルを主要な断片に帰属させて図19a中で図解する。一方、IK8−オールDは、プロテアーゼ処理後もインタクトのままであり、低分子量産物は観察されなかった(図19b)。酵素分解に対する感受性のこの減少は、先に観察された優れた抗菌活性と選択性と合わされて、IK8−オールDが治療用途に関する有望な候補となることを強く示唆する。
膜溶解活性と薬剤耐性軽減
AMPの主要作用機序は、微生物膜を迅速に撹乱および破壊して、細部質内容物の漏れと最終的な細胞死を導くことにある。微生物が広範囲の菌体膜損傷を修復することは非常に難しいので、この細菌殺菌作用機序は、薬剤耐性メカニズムを予防および克服するための非常に魅力的な手段を提供することが提案されてきている。本試験は、まず、そのL−エナンチオマーと同様に、IK8−オールDが細菌殺傷作用機構を媒介して、本試験で試験した5つの各微生物に関して、各MIC値での生コロニー数が3対数分より多くの減少(>99.9%の殺傷効率)を生じたことを立証した(図14)。10(容量)%の水を含む培養液で処理した各コントロールの表面が滑らかだったのに比較して、125mg L−1のIK8−オールDで2時間処理後、グラム陽性黄色ブドウ球菌とグラム陰性緑膿菌の表面に、FE−SEM下で、有意な膜損傷と波形が、観察された(表15)。
微生物を非致死量の抗生物質に長期に渡り繰り返して暴露することが、薬剤耐性の獲得を促進することが知られている。IK8−オールDが媒介する膜破壊が十分に薬剤耐性の発生を阻止できるかどうかを検証するために、MIC量以下のAMPで処理した大腸菌と黄色ブドウ球菌を毎日継代して、そして、20継代数までMIC測定のために使用した。各種クラスの臨床使用抗生物質(菌体壁合成阻害剤ペニシリンG、細菌トポイソメラーゼ阻害剤シプロフロキサシン、および、タンパク質合成阻害剤ゲンタマイシン硫酸塩)を、この試験のコントロールとして含めた。図16に示すように、低用量の本設計AMPで処理を繰り返したのにも関わらず、大腸菌黄色とブドウ球菌に対するIK8−オールDのMIC値は、3.9mg L−1のままであった(MIC/MIC=1)。ゲンタマイシン硫酸塩を用いた大腸菌の処理は、早くて継代数2から薬剤耐性を誘導した(MIC値が二倍になること(MIC/MIC=2)から分かる)が、引き続いて、継代数6までに元のMIC値の4倍にまで(MIC/MIC=4)増加した(図16a)。シプロフロキサシンでは、薬剤耐性の発生時期はやや遅く、MICが二倍になるのは継代数4で遅れて起こった。これに引き続いて、継代数7までにMICが四倍になり、その後、実験の終了時には32倍MIC値が劇的に増加した。同様の傾向が黄色ブドウ球菌に対しても観察された。薬剤耐性が早期獲得され、そして、継代数20までに、ペニシリンGおよびシプロフロキサシンに関して、それぞれ32倍および4倍MICが増加した(図16b)。これらの結果をまとめると、各種抗生物質によって媒介される多様な抗細菌作用機構が、様々な程度で薬剤耐性発生プロファイルに影響したことを強く示唆する。尚、本βシート形成合成ペプチドで大腸菌と黄色ブドウ球菌を繰り返し処理しても、本試験の過程内で薬剤耐性発生を全く誘導しなかった。
薬剤耐性発生を阻止できることに加え、本試験由来のゲンタマイシンおよびシプロフロキサシン耐性大腸菌をIK8−オールDを用いて処理すると、本合成ペプチドが野生型(非薬剤耐性)細菌中での濃度と同じ濃度(つまり、3.9mg L−1)で細菌増殖を効率的に阻害したことも明らかにした(図20)。この結果は、本βシート形成ペプチドの膜破壊能が従来的抗生物質耐性メカニズムを効果的に克服し細菌増殖を阻害できたことの強い証拠を提供する。薬剤耐性微生物の臨床での単離株に対する本設計βシート形成ペプチドの活性をさらに検証した。表5に見られるように、本設計AMPは、MRSA、VRE、多剤耐性のA.バウマンニ(A.baumanni)、緑膿菌、および酵母C.ネオフォルマンス(C.neoformans)に対する広範囲の抗菌活性を示した。先に観察された結果と一貫して、IK8−オールDはより強い抗細菌活性を誘導し、そのL−エナンチオマーと比較してMBCが4〜8倍減少した。さらに、IK8−オールD、IK8−2D、およびIK12−オールLもまた、臨床で単離された結核菌に対する優れた活性を示し、MICは15.6〜125mg L−1の範囲であった(表6)。
感染マウスマクロファージ中の黄色ブドウ球菌の細胞内殺傷
肺胞マクロファージによる微生物の貪食作用が継続する感染源を作り出す可能性がある理由は、細胞中への浸透が不良な多数の細胞外抗生物質から細菌が保護されて生存するからである。黄色ブドウ球菌は肺胞マクロファージ内で生存することができる日和見病原体の臨床で妥当な例であり、そして、地域や院内で獲得される肺感染症例にしばしば関与する。そのように、細胞内黄色ブドウ球菌を死滅させる本合成AMPの能力を次に検証した。感染RAW264.7マウス肺胞マクロファージを、各種用量のIK8−オールDで4および8時間処理した。図17に見られるように、10(容量)%の水を含む培地で処理したコントロールに関して得られたものと比較する場合、IK8−オールDで4および8時間処理後の細胞内黄色ブドウ球菌コロニー数に有意な減少(P<0.01)があった。例えば、本設計ペプチドは、コントロールと比較した場合、8時間でのコロニー数が1.2〜1.5対数分減少することを効果的に媒介した(図17)。重要なことには、IK8−オールDにより媒介された黄色ブドウ球菌の細胞内殺傷は、ペプチドの細胞毒性とは独立することが判明し、80%より高い細胞生存率が細菌殺傷用量で観察された(図21)。IK8−オールDの細胞毒性を、ヒト胎児肺線維芽細胞であるWI−38細胞株でも検証し、そして、77%より高い細胞生存率が62.5mg L−1までで示された。この値はその抗菌濃度よりかなり上である。まとめると、これらの結果は、その強力な細胞外細菌殺傷活性に加えて、本設計βシート形成ペプチドがまた、効果的に感染細胞に侵入して、細胞毒性は最小限であるが細胞内細菌負荷を減少することができたことを実証した。
実施例2では、抗菌活性と選択性に対する二次構造形成の重要性と立体化学の効果を検証した。確認されたのは、微生物膜模倣条件下で本合成ペプチドがβシートへと自己集合することがその強力な抗菌活性にとって必須であったことである。各種ペプチドの中で、IK8−オールDが最も強力な抗菌活性を示し、選択性インデックスが407.0と非常に高かった。本D−エナンチオマーはまた、広い効力範囲のプロテアーゼ(トリプシンおよびプロテイナーゼK)の存在下で安定性が増強することを示した。さらに、IK8−オールDの膜溶解活性は、薬剤耐性発生を阻止する効果的手段を提供し、そして、臨床で単離された各種多剤耐性微生物の殺傷を効果的に媒介した。細胞外の微生物に対するその潜在能力に加え、本βシート形成合成ペプチドであるIK8−オールDはまた、細胞内黄色ブドウ球菌の効率的殺傷を示した。まとめると、これらの結果は、その抗菌活性が増強しプロテアーゼに対する安定性が改善している、D−アミノ酸で置換したβシート形成ペプチドIK8−オールDを使用して、各種臨床用途において抗生物質耐性微生物と闘うことが可能であることを示す。
実施例3 本開示のペプチドの抗増殖特性の検証
細胞培養
ヒト子宮頸がんHeLa細胞株、ヒト皮膚線維芽細胞HDF細胞株、およびラットマクロファージNR8383細胞株を、10%FBS、100U mL−1のペニシリン、および100mg mL−1のストレプトマイシンを添加した、それぞれRPMI、DMEM、およびFK15増殖培地中で維持し、そして、5%COと95%加湿空気の環境下、37℃で培養した。
細胞生存率テスト
HeLa、HDF、およびNR8383細胞を、96穴プレートの各ウェル当たり、それぞれ、1×10、1×10、および4×10細胞の密度で播種した。一晩インキュベーション後、細胞を3.9〜500mg L−1の(IRIK)−NH(配列番号:21)と(VRVK)−NH(配列番号:20)で24時間処理した。接着性HeLaとHDF細胞株に関しては、各ウェルのインキュベーション培地を、100μLの増殖培地および10μLのMTT溶液(PBS中で5mg ml−1)で置き換えた。細胞を、製造事業者の指示に従って、37℃で4時間さらにインキュベートした。各ウェル中に形成されて生じたホルマザン結晶を、増殖培地を除去する際に150μLのDMSOを使って可溶化した。各ウェルからの100μLのアリコートを、その後、新しい96穴プレートに移して、550nmと690nmの波長でマイクロプレート分光光度計を使用して吸光度を測定した。相対的菌体生存率を、[(A550 − A690サンプル/(A550−A690コントロール]×100%として表した。データを、各濃度当たり4回反復実施するのを2回独立して実験したものの平均±標準偏差として表した。
半接着性NR8383細胞に関しては、20μLのCellTitre−Blue(登録商標)試薬を、処理後に各ウェルに加え、そして、プレートをさらに4時間インキュベートした。ウェルの蛍光強度の測定値を、560nmの励起波長と590nmの発光波長で、マイクロプレートリーダーを使って決定した。細胞非存在下のペプチド溶液を含むコントロールウェルを、バックグラウンドの蛍光を測定するために含めた。=[(F処理サンプル−F対応バックグラウンド)/(F10%水コントロール―F10%水コントロールバックグラウンド)]×100。データを、4回リピートしたものの平均±標準偏差として表した。
結果
図22に見られるように、(IRIK)−NH(配列番号:21)でHeLa子宮頸がん細胞株を処理すると、細胞生存率が濃度依存的に、125mg/L以降は70%未満に減少した。他方、80%より多くの非がん性HDFとNR8383細胞は、125mg/Lで生存していた。同様に、(VRVK)−NH(配列番号:20)でHeLa細胞を処理すると、250mg/Lでの細胞生存率がたった30%であった一方、HDFとNR8383細胞の細胞生存率は53%より高かった。これらの結果は、従って、本βシート形成ペプチドは、正常細胞膜よりも、よりアニオン性のがん細胞膜に対する選択性が大きいことを実証する。
実施例4 角膜炎への本開示のペプチドの効果の検証
材料および方法
ペプチドの特徴解析
本試験で使用されたペプチドは、GL Biochem(上海、中国)によって合成され、分析用逆相(RP)HPLCを使用して95%より高く精製した。ペプチドの分子量を、マトリックスとしてα−シアノ−4−ヒドロキシケイ皮酸(4−HCCA)を使用するマトリックス支援レーザー脱離イオン化飛行時間型質量分析法(MALDI−TOF MS、Autoflex IIモデル、Bruker Daltonics社、米国)を用いてさらに確認した。4−HCCAは、Sigma−Aldrich(シンガポール)から購入し、そして、再結晶化後に飽和アセトニトリル/水(1:1の体積比)中で使用した。リン酸緩衝生理食塩水(10×PBS)は、1st Base(シンガポール)から購入し、そして、使用前に目的濃度へと希釈した。Mueller−Hinton培養液II(MHBII)とイーストモルドブロス(YMB)は、BD Diagnostics(シンガポール)から購入し、そして、製造事業者の取扱説明書に従って再構成した。表皮ブドウ球菌(ATCC番号12228)、黄色ブドウ球菌(ATCC番号29737)、大腸菌(ATCC番号25922)、緑膿菌(ATCC番号9027)、および酵母カンジダ・アルビカンス(ATCC番号10231)は、ATCC(米国)から取得し、そして、推奨される方法に従って培養した。リポポリサッカリド(LPS)とFITC結合LPS(大腸菌0111:B4由来のもの)をSigma−Aldrichから購入した。Griess試薬システムは、Promega(米国)から取得し、そして、製造事業者のプロトコルに従って使用した。
最小発育阻止濃度(MIC)の測定
真菌C.アルビカンス(アメリカ培養細胞系統保存機関ATCC)とF.ソラニ(F.solani)(ATCC)に対するペプチドのMICを、微量液体希釈法によって測定した。300rpmで常に振とうして、対数増殖中期に達するまで、室温、イーストモルドブロス(YMB)中でC.アルビカンスを増殖させた。微生物懸濁液を適切な培養液で希釈調整して、マイクロプレートリーダー(TECAN、スイス)上で600nmの波長での初期吸光度(O.D.)の測定値が約0.07(McFarland基準No.1(約3×10CFU mL−1)に相当)となった。ペプチドを0.2μmフィルタを通したHPLCグレードの水中に溶解し、適切な培養液を使用して2倍系列希釈した。100μLの微生物懸濁液で、初期負荷量が3×10CFU mL−1となるものを、等量(100μL)のペプチド溶液に加えて、終濃度が3.9〜500mg L−1の範囲になることを達成した。また、水分の濃度を、96穴プレートの各ウェル中、10(容量)%で固定した。室温で振とうしながら42時間インキュベーションした後、MICは、微生物増殖が目視されない最も低いペプチド濃度とした。10(容量)%のHPLCグレード水を含む培養液と共に純粋な培養液単独のものの中での酵母細胞を、ネガティブコントロールとして使用した。F.ソラニを、37℃のインキュベーター中で、サブローデキストロース寒天プレート上で培養した。インキュベーション後に分生子を回収するために、F.ソラニ種の分生子を採取して、実験実施前に1×10胞子/mlへと標準化した。サブローデキストロース培養液(90μL)を、培養プレートのウェルへと加えた。各種濃度のペプチドを2倍希釈法によってウェル中に調製し、そして、これらのウェルに10μLの1×10胞子含有胞子懸濁液を植菌した。プレートを37℃でインキュベートして、そして、24時間後にF.ソラニの増殖を肉眼で調べた。全く処理していない適切なコントロールウェルを試験に含めた。ウェルがF.ソラニの目で見える増殖がなく透明に見える場合に、ペプチドは活性があると考えて、そして、結果をMICとして表した。アッセイを、各濃度に関して4回反復して実施した。
インビトロ殺傷動力学
殺傷動力学テストを実施して、C.アルビカンスに対するペプチドの抗菌活性を評価した。酵母溶液を、YMB(Difco社)に再懸濁して、10〜10CFU mL−1となった。初期植菌物に、ペプチド1を1×、2×、および4×MICの濃度で0、1、2、4、および24時間暴露し、そして、これらの時点で、サンプルを各種希釈倍率で希釈した。各希釈物(20μL)を、寒天プレート上に蒔き、2日間インキュベートした。生存コロニーをインキュベーション後に計数した。非処理植菌群をネガティブコントロールとして使用した。テストは3回リピートして実施し、その結果を殺傷効率(%)として提示した。
安定性テスト
ペプチド1および2は、2mg/mLでHPLCグレード水中に溶解し、121℃で15分間の標準的蒸気滅菌オートクレーブサイクルに掛け、そして、6週間室温に放置した。ペプチドの完全性を、MALDI−TOF MSを介して処理前後の分子量を評価することによって確認した。
C.アルビカンスバイオフィルムに関する抗真菌試験(インビトロ角膜炎治療モデル)
C.アルビカンスは、ペプチド1の抗真菌機能をテストするための代表的真菌として使用した。C.アルビカンス懸濁液を、−80℃で凍結されたストック培養物を使ったYMB中の新鮮なオーバーナイト培養物から調製した。これらの培養物のサンプルの一部をさらに3時間増殖させて、そして、10〜10CFU/mLの密度が得られる、600nmでの吸光度である約0.1へと調節した。
インビトロでのC.アルビカンスバイオフィルムの調製
3×10CFU ml−1に希釈したC.アルビカンスのオーバーナイト培養物を、1ウェル当たり100μLの容量で96穴プレートの各ウェル中に加えた。そして、100rpmで穏やかに振とうしながら37℃で5時間接着させた。ウェルをその後、100μLのPBSで一度濯いで、浮遊性菌体とゆるく着いている菌体を除去し、そして、100μLの新鮮な培養液を補充した。毎日濯いで実験に使用する前に培地交換して、2日までバイオフィルム形成を進行させた。
バイオフィルムでの感受性
バイオフィルム中のC.アルビカンスの生存率へのペプチド処理の効果を測定するために、互いに異なる濃度の100μLのペプチド1溶液を、各ウェルへと加えて、24時間インキュベートした。次に、その溶液を取り除き、そして、100μLのPBSで一回濯ぎ、その後、120μLの活性化XTT溶液を各ウェル中に加えた。4時間インキュベーションした後、各ウェルからの90μLのアリコートを新しい96穴プレートに移して、それぞれ490nmと660nmの測定波長と参照波長でマイクロプレートリーダー(TECAN、スイス)を使用して吸光度を測定した。10容量%の水を含む培養液で処理したバイオフィルムをコントロールとして使用した。相対的菌体生存率を、[(A490 − A660)サンプル/(A490−A660)コントロール]×100%として表した。データを、各濃度当たり4回リピートしたものの平均±標準偏差として表した。
バイオマスアッセイ
バイオフィルムのバイオマスを、クリスタルバイオレット染色アッセイによって推定した。手短には、形成したバイオフィルムを、まず、上記のように、24時間、前記ペプチドで処理した。培養培地を吸い取った後、バイオフィルムをPBSで一回濯ぎ、室温で15分間メタノールで固定し、そして、10分間0.1(容量重量(weight by volume))%のクリスタルバイオレット100μLで染色した。過剰なクリスタルバイオレット色素を、5回DI水でウェルを濯いで除去した。バイオフィルムと結合している色素を、各ウェル当たり100μLの33%氷酢酸を使用して抽出し、そして、各ウェルからの60μLのアリコートを新しい96穴プレートに移して、マイクロプレートリーダー(TECAN、スイス)を使用して、570nmの波長での吸光度を定量化した。ペプチド処理後に残った相対バイオマス量を、10容量%の水を含む培養液で処理したコントロールのパーセンテージとして表した。データは、各濃度当たり4回リピートしたものの平均±標準偏差として表した。
バイオフィルムの走査電子顕微鏡試験
ペプチド1で処理したC.アルビカンスバイオフィルムの形態を、加速電圧が4.0〜6.0keVで動作させた電界放出型走査電子顕微鏡(FESEM)(JEOL JSM−7400F)を使用して観察した。C.アルビカンスバイオフィルムを、1000mg/Lのペプチドと24時間インキュベートした。そのフィルムをPBSで3回洗浄し、その後、2.5%のグルタルアルデヒド含有PBS中で一晩固定した。菌体をさらにDI水で洗浄し、そして、エタノール洗浄液系列を使用して脱水した。数滴の懸濁液を銅テープ上に載せ、そして、室温で放置して乾燥させた。FESEM解析前に、サンプルを白金でコーティングした。
インビボマウス角膜炎治療モデル
マウスの供給源
成体C57BL/6マウス(8週齢、18〜22g)を、動物試験のために使用した。実験開始前に、全てのマウスの眼に眼の病理症状が無いかどうかを検査した。実験プロトコルは、シンガポール科学技術研究省(A*STAR)の生物資源センター(Biological Resource Centre)の機関動物実験委員会によって承認された。
ペプチドのインビボ毒性評価
本ペプチドをマウスの眼でテストした。最初の一時間は5分ごとに、そして、次の7時間は30分ごとに3000mg/Lの用量で、本ペプチドをマウスに投与した。16時間の休みの後、さらに8時間の時間間隔で、点眼薬を投与した。全てのマウスを、最後の点眼薬の投与16時間後に屠殺した。治療した眼球を即座に回収した。固定した眼球を、標準的方法によってパラフィンに包埋し、切片を作製し、そして、ヘマトキシリン&エオシンで染色した。
コンタクトレンズ関連角膜炎モデル
本試験で使用したLotrafilconAコンタクトレンズは、CIBA Visionから購入したもので、+1.50の倍率の度数を有していた。そのコンタクトレンズをPBSで洗浄し、そして、直径2mmの小片に打ち抜いて、その後、一晩YMB中に浸した。C.アルビカンスバイオフィルムを増殖させるために、そのレンズを、4mLの酵母懸濁液(10CFU/mL)と共に6穴組織培養プレートに入れて、そして、22℃で3時間インキュベートした。そのコンタクトレンズをPBSで穏やかに洗浄して、非接着酵母細胞を除去し、そして、100rpmで振とうしながら22℃で48時間YMB中に浸した。
ブラックマウス角膜炎モデルは、コンタクトレンズのバイオフィルム感染を利用することで確立された(Goldblum D,Frueh BE,Sarra GM,Katsoulis K,Zimmerli S.Topical caspofungin for treatment of keratitis caused by Candida albicans in a rabbit model.Antimicrob Agents Chemother 2005年、49:1359−63;Li P,Poon YF,Li W,Zhu HY,Yeap SH,Cao Yら、Apolycationic antimicrobial and biocompatible hydrogel with microbe membrane suctioning ability.Nat Mater 2011年、10:149−56;Prakash G,Sharma N,Goel M,Titiyal JS,Vajpayee RB.Evaluation of intrastromal injection of voriconazole as a therapeutic adjunctive for the management of deep recalcitrant fungal keratitis.Am J Ophthalmol 2008年;146:56−9;およびSun Y,Chandra J,Mukherjee P,Szczotka−Flynn L,Ghannoum MA,Pearlman E.A murine model of contact lens−associated fusarium keratitis.Invest Ophthalmol Vis Sci 2010年、51:1511−6に記載されている)。マウスを腹腔内注射(I.P.)を介して、ケタミン(150mg/kg)およびキシラジン(10mg/mL)によって麻酔した。また、0.5%テトラカイン塩酸塩点眼薬(Bausch&Lomb、Tampa、Florida)形態の追加的局所麻酔薬も投与した。
この試験では、合計29匹のマウスを使用した。99%の1−ヘプタノール(Sigma−Aldrich、Lausanne、スイス)で湿潤化した1mmのろ紙ディスクを、角膜の中心に40秒間載せた。角膜上皮を外傷を与えるようしてぬぐい落とし、そして、その眼をPBSで濯いで1−ヘプタノールの残りが全くないように除去した。C.アルビカンスバイオフィルムを有するコンタクトレンズからの直径2mmの打ち抜き物を、その後、表面が露出された角膜表面上に載せた。絹縫合糸でまぶたを閉じることによって、コンタクトレンズを眼の内部に維持した。C.アルビカンス菌体を植菌後18時間眼球上で増殖させた。がさがさで硬く盛り上がった表面を有する眼の潰瘍が観察された。0(疾患なし)〜4(重症疾患)の疾患格付を、治療効力を評価するために確立した(表7)。シクロホスファミド(Sigma−Aldrich、180g/kg)の皮下注射によって、マウスの免疫を抑制した。
本ペプチドを使用する角膜炎治療効力の評価
以下の4種類の局所点眼薬溶液を用いて、動物を無作為に治療した:水溶液(コントロール)、3000mg/Lのペプチド1とペプチド2、および1000mg/LのアムホテリシンB。点眼薬(各20μl)を、最初の一時間は5分ごと、そして、次の7時間は30分ごとに、マウスに投与した。16時間の休みの後、さらに8時間の時間間隔で、点眼薬を投与した。全てのマウスを、最後の点眼薬の投与16時間後に屠殺した。治療した眼球を即座に回収した。各群から3個の眼球を、組織学解析のため回収し、そして、残りの6個の眼球を、定量的真菌リカバリー試験のためにホモジェナイズした。固定した眼球を、標準的方法によってパラフィンに包埋し、切片を作製し、そして、グローコットのメテマミン銀で染色した。
結果
角膜炎関連真菌(C.アルビカンスとF.ソラニを含むもの)に対するβシート形成ペプチド(IKIK)−NH(すなわち、ペプチド1)およびペプチド(IRIK)−NH(すなわち、ペプチド2)の活性をβシート非形成ペプチド(IIRK)−NH(すなわち、ペプチド3)と比較して検証した。表8から分かるように、本設計βシート形成ペプチド1および2は、強力な抗真菌活性を示し、MIC値の範囲は、C.アルビカンスに対しては2〜3.9mg/L、F.ソラニに関しては31.3mg/Lであった。対照的に、βシート非形成ペプチド3は、C.アルビカンスに対する活性はほんの少ししか示さず、MICは劇的に高く>500mg/Lであった。そして、F.ソラニに対しては全く効果がないことが判明した。この結果は、微生物膜と相互作用する際のβシート二次構造の形成が、本設計ペプチドの抗真菌作用に重要であることを実証した。C.アルビカンスに対する活性が優れていたので、殺傷動力学試験を、ペプチド1を用いて実行した。図23に示すように、C.アルビカンス菌体数は、MICレベルで2時間治療後に有意に減少した。ほとんどの真菌は、MICで4時間後に殺傷され、2×MICまたは4×MICで1時間で殺傷された。これらの結果は、時間および用量依存的な真菌殺傷作用機構を示した。ペプチド濃度がより高いと、より短い時間内にすべての真菌を死滅させるのに効果的であった。
ほとんどの抗真菌試薬が真菌性角膜炎に対して効果的でない理由は、真菌性角膜炎感染が、真菌菌体が一緒に貼りついて、自己が生産したECM内に囲い込まれるバイオフィルムとしてしばしば存在するからである。ペプチド1を使用して、インビトロで増殖したC.アルビカンスバイオフィルムを治療した。図24Aに示すように、90%の菌体が、500mg/Lのペプチド単回治療24時間後に殺傷された。同一ペプチド濃度で治療後に、C.アルビカンスバイオフィルムのバイオマスも有意に減少した(図24B)。ペプチド濃度が増加すると、さらにバイオマスは減少した。また、1000mg/Lで24時間の本ペプチド治療後に、C.アルビカンス菌体の形態が変形し、そして、バイオマスが有意に減少したことを、SEM試験はさらに確認した(図25)。
また、ペプチド1の安定性をテストした。ペプチド1溶液をオートクレーブし、そして、光から保護せずに室温で6週間保存した。ペプチド1の分子量は変化せず、分解産物は観察されなかった。このことは、このペプチドがオートクレーブをかけて滅菌可能であることと水中で安定であったことを確認する。ペプチド1および2(各3000mg/L)の毒性をマウスの眼で評価した。これらペプチドの局所投与後の角膜の組織像は、角膜上皮浸食の有意な徴候を示すことはなかった。そして、高濃度のペプチドの適用はその下層の角膜実質における明らかな病理的変化を導かなかった(図26)。まとめると、これらの結果は、ペプチド1および2が浮遊性角膜炎関連真菌とそのバイオフィルムの両方に対して高い力価を有すると共に優れた安定性を有することを確認した。また、これらペプチドは点眼薬として使用した場合も眼に非毒性であった。
真菌性角膜炎治療における本ペプチドの適用可能性を検証するために、C.アルビカンス角膜炎モデルをマウスで確立した。C.アルビカンスをまず、バイオフィルム形成のためにコンタクトレンズ上で培養した。C.アルビカンスバイオフィルムの層を含むコンタクトレンズを、その後、上皮を剥がしたマウス角膜表面上へと移した。18時間の植菌後、C.アルビカンスバイオフィルムが角膜にうつされ、その結果、がさがさで硬く盛り上がった表面を有する眼の潰瘍が形成された。ペプチド1溶液(3000mg/L)、ペプチド2溶液(3000mg/L)、アムホテリシンB(1000mg/L)、および水(コントロール)を、20μLの量で、角膜表面上に点眼薬として局所適用した。治療後に、角膜炎感染が有意に解消されたことが観察され、コントロール群と比較すると角膜はより透明になり、そして、虹彩が視認できた。本ペプチドの治療効力は、アムホテリシンBのものに相当した(図27)。治療前後の真菌性角膜炎の臨床スコアを、臨床基準に従って評価した。図28に示すように、全治療群でのマウス角膜の臨床スコアは、コントロール群でのものよりも有意に低かった。また、治療後の眼球を固定し、そして、過ヨウ素酸シッフ(PAS)染色した。菌糸はコントロール群の角膜実質中に伸展した一方で、ペプチド1、ペプチド2、およびアムホテリシンBを用いた治療は角膜中への菌糸侵入の最大深さを減少させた(図29)。組織学的試験は、本ペプチドとアムホテリシンBを用いた治療が角膜炎に罹患した角膜中への真菌侵入を有意に減少させたことをさらに確認した。
治療後の眼球中の真菌数を定量するために、治療後の眼球をホモジェナイズして、そして、各眼球でのC.アルビカンス菌体数を、寒天プレートに蒔いて測定した。眼球中のC.アルビカンスコロニー数を減少させるのに、本ペプチドはアムホテリシンBと同じだけ効果的であった。そして、非治療コントロール群と比較して、約90%の真菌菌体が治療後にバイオフィルムから死滅した(図30)。まとめると、これらβシート形成合成ペプチドは、マウス眼中の角膜炎関連固着性真菌とそのバイオフィルムを死滅させるのに効果的であった。
従って、本開示において、本開示の発明者らは、本βシート形成ペプチドが強力な抗真菌活性を有していて、そして、眼に有意な毒性を引き起こすこと無しに、インビトロと真菌バイオフィルム誘導角膜炎マウスモデル中の両方で形成される真菌バイオフィルムを除去することができることを実証した。本ペプチドは水溶性で、オートクレーブ処置においても安定である。これらペプチドは真菌性角膜炎を治療するための有用な抗真菌剤となる。

Claims (21)

  1. 被験体の角膜炎を治療するための医薬の製造における両親媒性ペプチドの使用であって、前記ペプチドが(X(式I)を含み、式中、
    前記ペプチドのC末端がアミド化され;
    およびXが互いに独立して疎水性アミノ酸であり;
    およびYが互いに独立してカチオン性アミノ酸であり;ならびに
    nが2、2.5、3、3.5、4、4.5、または5であり、
    前記ペプチドがβシート構造に自己集合することができ、
    前記角膜炎が真菌性角膜炎、または細菌性角膜炎である、
    使用。
  2. (Xが(X−NHである、請求項1に記載の使用。
  3. 前記疎水性アミノ酸がアラニン(A)、バリン(V)、イソロイシン(I)、ロイシン(L)、メチオニン(M)、フェニルアラニン(F)、トリプトファン(W)、およびシステイン(C)からなる群より選択される、請求項1または2に記載の使用。
  4. 前記疎水性アミノ酸がイソロイシン(I)またはバリン(V)である、請求項3に記載の使用。
  5. 前記カチオン性アミノ酸がリジン(K)、アルギニン(R)、およびヒスチジン(H)からなる群より選択される、請求項1〜4のいずれか一項に記載の使用。
  6. 式Iの各反復単位(X が、それぞれ独立に1、2、3、4、6、または8個のD−アミノ酸を含み、残りのアミノ酸がL−アミノ酸である、請求項1〜5のいずれか一項に記載の使用。
  7. 式Iの各反復単位(X が、それぞれ独立に2、4、6、または8個のD−アミノ酸を含み、残りのアミノ酸がL−アミノ酸である、請求項1〜5のいずれか一項に記載の使用。
  8. 式Iの各反復単位(X 中のD−アミノ酸分布が同一または互いに異なる、請求項6または7に記載の使用。
  9. nが2であって、ならびに、4位および6位のアミノ酸がD−アミノ酸である一方、残りのアミノ酸がL−アミノ酸である、請求項6〜8のいずれか一項に記載の使用。
  10. 配列(IYIY−NHを含む、請求項1〜9のいずれか一項に記載の使用。
  11. 配列(IRXK)−NHを含む、請求項1〜9のいずれか一項に記載の使用。
  12. 前記ペプチドがVRVKVRVK−NH(配列番号:11)、VRVKVRVKVRVK−NH(配列番号:20)、IRIRIRIR−NH(配列番号:12)、IKIKIKIK−NH(配列番号:13)、IRVKIRVK−NH(配列番号:14)、FRFKFRFK−NH(配列番号:15)、WRWKWRWK−NH(配列番号:16)、IRIKIRIK−NH(配列番号:17)、IRIKIRIKIRIK−NH(配列番号:21)、irikir−NH(配列番号:10)、irikirik−NH(配列番号:18)、IRIkIrIK−NH(配列番号:19)、IRVKIRVKIRVK−NH(配列番号:22)、およびirvkirvkirvk−NH(配列番号:23)からなる群より選択され、式中、小文字の下線残基はD−アミノ酸を示す一方、大文字の非下線部はL−アミノ酸を示す、請求項1〜11のいずれか一項に記載の使用。
  13. 前記細菌性角膜炎が緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)、肺炎球菌(Streptococcus pneumonia)、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)、または表皮ブドウ球菌(Staphylococcus epidermidis)により引き起こされる、請求項1〜12のいずれか一項に記載の使用。
  14. 前記真菌性角膜炎が糸状菌および/または酵母様真菌により引き起こされる、請求項1〜12のいずれか一項に記載の使用。
  15. 前記酵母様真菌がカンジダ・アルビカンス(Candida albicans)である、請求項14に記載の使用。
  16. 前記糸状菌が黄色コウジ菌(Aspergillus flavus)、アスペルギルス・フミガータス(Aspergillus fumigatus)、フサリウム種(Fusarium spp.)、アルテルナリア種(Alternaria spp.)、およびペシロマイセス・リラシヌス(Paecilomyces lilacinus)からなる群より選択される、請求項14に記載の使用。
  17. 被験体の角膜からバイオフィルムを除去するための医薬の製造における有効量の両親媒性ペプチドの使用であって、前記ペプチドが(X(式I)を含み、式中、
    前記ペプチドのC末端がアミド化され;
    およびXが互いに独立して疎水性アミノ酸であり;
    およびYが互いに独立してカチオン性アミノ酸であり;ならびに
    nが2、2.5、3、3.5、4、4.5、または5であり、
    前記ペプチドがβシート構造に自己集合することができる、使用。
  18. 前記バイオフィルムが真菌性角膜炎によって生じる、請求項17に記載の使用。
  19. 真菌寄生が糸状菌および/または酵母様真菌により引き起こされる、請求項18に記載の使用。
  20. 前記酵母様真菌がカンジダ・アルビカンス(Candida albicans)である、請求項19に記載の使用。
  21. 前記糸状菌が黄色コウジ菌(Aspergillus flavus)、アスペルギルス・フミガータス(Aspergillus fumigatus)、フサリウム種(Fusarium spp.)、アルテルナリア種(Alternaria spp.)、およびペシロマイセス・リラシヌス(Paecilomyces lilacinus)からなる群より選択される、請求項19に記載の使用。
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