JP6504192B2 - 繊維強化樹脂成形品の製造方法 - Google Patents
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Description
本発明は繊維強化樹脂成形品の製造方法に関する。
カーボン繊維は軽量で且つ高剛性を有するため繊維強化樹脂成形品の強化用繊維として用いられている。このような繊維強化樹脂成形品は射出成形で製造することができるが、強化用繊維を含有する樹脂ペレットの混練時や成形時にその強化用繊維が折損することが知られている。この折損により、得られる繊維強化樹脂成形品の物性(強度、弾性、導電性等)が低くなる。
これに対して、特許文献1には、混練や成形等の製造過程におけるカーボン繊維の折損を抑制するために、特定の結晶サイズを有する特定の結晶構造の柔軟性を有するカーボン繊維を用いることが記載されている。また、同文献には、必要に応じて、カーボン繊維に加えてガラス繊維をペレットに加えてもよいことが記載されている。
強化用繊維としてカーボン繊維を用いた繊維強化樹脂成形品は、ガラス繊維を用いた繊維強化樹脂成形品よりも曲げ弾性率が高いことから、高い剛性が要求される製品への適用が期待される。しかし、カーボン繊維強化樹脂成形品は、ガラス繊維強化樹脂成形品に比べて耐衝撃性に劣り、耐衝撃性が要求される製品への適用には不利である。
そこで、本発明は、高剛性で且つ耐衝撃性に優れた繊維強化樹脂成形品を得ることを課題とする。
本発明者は、強化用繊維としてカーボン繊維とガラス繊維を併用した繊維強化樹脂成形品の研究した。その研究において、カーボン繊維とガラス繊維の配合比率を様々に変えて得られる繊維強化樹脂成形品の強度及び耐衝撃性を調べた結果、ガラス繊維の少量配合により耐衝撃性が大きく向上することを見出した。
ここに開示する繊維強化樹脂成形品の製造方法は、カーボン繊維を含有するカーボン繊維樹脂ペレットと、ガラス繊維を含有するガラス繊維樹脂ペレットとを含む成形材料を用いた射出成形による繊維強化樹脂成形品の製造方法であって、
上記カーボン繊維樹脂ペレット及び上記ガラス繊維樹脂ペレット各々が含有する繊維の重量平均長さは10mm以上であり、
上記成形材料における上記カーボン繊維と上記ガラス繊維を合わせた含有率を20質量%以上50%質量以下とし、
上記カーボン繊維と上記ガラス繊維の総量に占める上記ガラス繊維の割合を5質量%以上15質量%以下とし、
上記射出成形に、スクリューの長さLと径Dの比L/Dが22以上であり、圧縮比が1.6以上1.8以下であるシングルフライトの低せん断型スクリューを備えた射出成形機を用いることを特徴とする。
上記カーボン繊維樹脂ペレット及び上記ガラス繊維樹脂ペレット各々が含有する繊維の重量平均長さは10mm以上であり、
上記成形材料における上記カーボン繊維と上記ガラス繊維を合わせた含有率を20質量%以上50%質量以下とし、
上記カーボン繊維と上記ガラス繊維の総量に占める上記ガラス繊維の割合を5質量%以上15質量%以下とし、
上記射出成形に、スクリューの長さLと径Dの比L/Dが22以上であり、圧縮比が1.6以上1.8以下であるシングルフライトの低せん断型スクリューを備えた射出成形機を用いることを特徴とする。
これにより、高強度で且つ耐衝撃性が高い繊維強化樹脂成形品が得られる。ガラス繊維の少量の配合(カーボン繊維及びガラス繊維の総量に占めるガラス繊維の割合が5質量%以上15質量%以下)によって耐衝撃性が大きく向上する点に大きな特徴がある。また、ガラス繊維の配合量が少ないから、強化用繊維をカーボン繊維のみとするケースからの強度の低下が抑えられ、カーボン繊維の配合量が相対的に低下するにも拘わらず、比較的高い強度が維持される。
ここに、圧縮比を小さくしたことにより、射出成形機の圧縮部で成形材料に加わるせん断力が小さくなり、カーボン繊維及びガラス繊維が受けるダメージが少なくなったと認められる。
シングルフライトの採用により、カーボン繊維及びガラス繊維に大きな力が加わる成形材料のフライト乗越えが少なくなり、また、狭いフライト間での成形材料のせん断が抑制され、その結果、カーボン繊維及びガラス繊維の折損が抑制されたと認められる。
L/Dを22以上として射出成形機の供給部を長くしたことにより、カーボン繊維及びガラス繊維の折損を抑制しながら、樹脂ペレットの可塑化及び解繊性を向上させることができたと認められる。
上記射出成形機の逆流防止リングは上記スクリューと共に回転する共回り型であることが好ましい。これにより、スクリューヘッドと逆流防止リングとの間で成形材料に強いせん断力が加わることが防止され、カーボン繊維及びガラス繊維の折損防止に有利になる。
本発明によれば、カーボン繊維樹脂ペレット及びガラス繊維樹脂ペレット各々が含有する繊維の重量平均長さを10mm以上とし、成形材料におけるカーボン繊維とガラス繊維を合わせた含有率を20質量%以上50%質量以下とし、カーボン繊維とガラス繊維の総量に占めるガラス繊維の割合を5質量%以上15質量%以下とし、射出成形に、スクリューの長さLと径Dの比L/Dが22以上であり、圧縮比が1.6以上1.8以下であるシングルフライトの低せん断型スクリューを備えた射出成形機を用いるから、高強度で且つ耐衝撃性が高い繊維強化樹脂成形品を得ることができる。
以下、本発明を実施するための形態を図面に基づいて説明する。以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
<射出成形機>
図1に示す射出成形機において、1は加熱シリンダ、2は加熱シリンダ1内に回転可能にかつ進退自在に配置された低せん断型スクリューである。射出成形機は、図示は省略しているが、スクリュー2を回転駆動する油圧モータ及びスクリュー2を進退駆動する射出シリンダを備えている。
図1に示す射出成形機において、1は加熱シリンダ、2は加熱シリンダ1内に回転可能にかつ進退自在に配置された低せん断型スクリューである。射出成形機は、図示は省略しているが、スクリュー2を回転駆動する油圧モータ及びスクリュー2を進退駆動する射出シリンダを備えている。
加熱シリンダ1の基端側には成形材料を投入するホッパ3が設けられ、加熱シリンダ1の先端には射出ノズル4が設けられている。加熱シリンダ1の外周には外部ヒータ5としてのバンドヒータが巻かれている。射出ノズル4は繊維強化樹脂成形品を成形する金型6のランナー7に接続されている。金型6はランナー7を有する固定型6aと可動型6bとによって構成されている。固定型6aと可動型6bによってキャビティ8が形成されている。
スクリュー2は、スクリュー本体11と、スクリュー本体11の先端に結合されたスクリューヘッド12とを備えている。スクリュー本体11は、フライト13が1条で形成されているシングルフライト型である。スクリュー本体11の長さ(材料供給口13からスクリュー先端までの長さ)Lとスクリュー本体11の直径Dの比L/Dは22以上である。L/D比の上限は例えば30程度とすればよい。
スクリュー本体11は、基端側(上流側)から先端側(下流側)に向かって順に供給部14、圧縮部15及び計量部16を備えている。供給部14は、直径Dの10倍以上15倍以下の長さを有する。図2に示すように、供給部14のスクリュー溝深さ(フライト13の高さ)dは供給部14の全長にわたって一定であり、その溝深さdは成形材料17のいずれのペレット長さよりも大きい。ホッパ3から供給部14に供給された成形材料17は、外部ヒータ5の熱を受けて軟化しながら、スクリュー2の回転によって、フライト13で区切られた空間内を圧縮部15に向かって送られる。
圧縮部15はスクリュー溝深さが漸減する区間である。成形材料17は、圧縮部15において、スクリュー2の回転によって圧縮されて大きなせん断力と熱を受けて可塑化して溶融し、溶融樹脂として計量部16に送られる。計量部16は、溶融樹脂をスクリュー2の前方の樹脂溜め部に貯えられるように、スクリュー溝深さが小さく形成されている。
スクリュー2の圧縮比(供給部14と計量部16の溝部の1ピッチ当たりの体積の比)は1.6以上1.8以下である。
図3に示すように、スクリューヘッド12の背部には共回り構造の逆流防止リング18が設けられている。逆流防止リング18は、スクリュー本体11とスクリューヘッド12とを結合する結合軸19に隙間を存して進退自在に嵌められている。スクリューヘッド12の基端部外周には、当該ヘッド12の基端面に開口した溝21が周方向に間隔をおいて形成されており、この溝21に逆流防止リング18より前方に突出した突起22が係合している。この係合により、逆流防止リング18は、スクリュー2と共に回転するようになっている。
<繊維強化樹脂成形品の成形>
−成形材料について−
繊維強化樹脂成形品の成形においては、成形材料17として、ペレット長さ方向に延びるカーボン繊維束に樹脂を含浸してなるカーボン繊維樹脂ペレット(長繊維ペレット)、並びにペレット長さ方向に延びるガラス繊維束に樹脂を含浸してなるガラス繊維樹脂ペレット(長繊維ペレット)を用いる。当該2種のペレットの長さは10mm以上とする。長繊維ペレットであるカーボン繊維樹脂ペレット及びガラス繊維樹脂ペレットは各々が含有する繊維の長さがペレット長さと同じであるから、当該繊維の重量平均長さは10mm以上となる。ペレット長さは15mm以下(当該繊維の重量平均長さは15mm以下)であることが好ましい。
−成形材料について−
繊維強化樹脂成形品の成形においては、成形材料17として、ペレット長さ方向に延びるカーボン繊維束に樹脂を含浸してなるカーボン繊維樹脂ペレット(長繊維ペレット)、並びにペレット長さ方向に延びるガラス繊維束に樹脂を含浸してなるガラス繊維樹脂ペレット(長繊維ペレット)を用いる。当該2種のペレットの長さは10mm以上とする。長繊維ペレットであるカーボン繊維樹脂ペレット及びガラス繊維樹脂ペレットは各々が含有する繊維の長さがペレット長さと同じであるから、当該繊維の重量平均長さは10mm以上となる。ペレット長さは15mm以下(当該繊維の重量平均長さは15mm以下)であることが好ましい。
上記カーボン繊維樹脂ペレット及びガラス繊維樹脂ペレット各々のマトリックス樹脂には、MFR(温度230℃,荷重2.16kg)が9g/10分以上65g/10分以下であるPP(ポリプロピレン)を採用することが好ましい。
上記カーボン繊維樹脂ペレット及びガラス繊維樹脂ペレットは、当該成形材料17におけるカーボン繊維とガラス繊維を合わせた含有率が20質量%以上50%質量以下(好ましくは30質量%以上50%質量以下)となり、カーボン繊維とガラス繊維の総量に占めるガラス繊維の割合が5質量%以上15質量%以下となるように混合してホッパ3に投入する。
−カーボン繊維とガラス繊維の総量に占めるガラス繊維の割合が成形品の強度及び耐衝撃性に及ぼす影響−
カーボン繊維樹脂ペレット及びガラス繊維樹脂ペレットによって、カーボン繊維の配合割合が異なる複数種の成形材料を調製した。各成形材料のカーボン繊維とガラス繊維を合わせた含有率はいずれも40質量%とした。それら成形材料による繊維強化樹脂成形品のMD(金型内を溶融樹脂が流れる方向)及びTD(MDの直角方向)各々のパンクチャーエネルギー吸収量、曲げ弾性率及び曲げ強度を測定した。
カーボン繊維樹脂ペレット及びガラス繊維樹脂ペレットによって、カーボン繊維の配合割合が異なる複数種の成形材料を調製した。各成形材料のカーボン繊維とガラス繊維を合わせた含有率はいずれも40質量%とした。それら成形材料による繊維強化樹脂成形品のMD(金型内を溶融樹脂が流れる方向)及びTD(MDの直角方向)各々のパンクチャーエネルギー吸収量、曲げ弾性率及び曲げ強度を測定した。
カーボン繊維樹脂ペレットとしては、カーボン長繊維/PP=40/60質量比のダイセル社製PP-CF40-11(L8)を用い、ガラス繊維樹脂ペレットとしては、ガラス長繊維/PP=40/60質量比の日本ポリプロ社製LR24Aを用いた。それら樹脂ペレットの物性を表1に示す。
射出成形機としては、表2に示す低せん断型スクリューのものを用いた。
測定結果を図4乃至図7に示す。なお、図4乃至図7において、「パンクチャーE」は「パンチャーエネルギー」の略号、「CF」は「カーボン繊維」の略号を、「GF」は「ガラス繊維」の略号である。
図4(MDでのパンクチャーエネルギー吸収量及び曲げ弾性率)及び図5(MDでのパンクチャーエネルギー吸収量及び曲げ強度)をみると、ガラス繊維の配合割合の増加に伴って、曲げ弾性率及び曲げ強度が略直線的に低下している。但し、ガラス繊維の配合割合が5質量%以上15質量%以下であるときは、ガラス繊維配合量零からの曲げ弾性率及び曲げ強度の低下率が5%未満であり、ガラス繊維の添加に拘わらず、高い強度が維持されていることがわかる。
これに対して、耐衝撃性はガラス繊維の少量の配合で大きく向上している。すなわち、ガラス繊維の配合割合が5質量%以上になると、ガラス繊維配合量零であるときに比べて、耐衝撃性が約1.4倍向上している。ガラス繊維の配合割合が20質量を超えると、その配合割合の増加に伴う耐衝撃性の向上は緩慢になっている。
次に、図6(TDでのパンクチャーエネルギー吸収量及び曲げ弾性率)をみると、TDでの曲げ弾性率は、ガラス繊維配合割合の増加に伴って緩やかに低下している。ガラス繊維の配合割合が15質量になっても、ガラス繊維配合量零からの曲げ弾性率の低下率は数%に過ぎない。図7(TDでのパンクチャーエネルギー吸収量及び曲げ強度)をみると、TDでの曲げ強度は、ガラス繊維の配合割合を増やしても、ほとんど変わらないという結果になっている。TDでのガラス繊維の配合割合の増加に伴う耐衝撃性の変化はMDでのケースと略同じ特性になっている。
以上の結果から、ガラス繊維の少量配合で繊維強化樹脂成形品の強度を大きく低下させることなく、その耐衝撃性を大きく高めることができることがわかる。
ここに、低せん断型スクリュー採用の効果は次のとおりである。シングルフライト13の採用により、カーボン繊維及びガラス繊維に大きな力が加わる成形材料のフライト乗越えが少なくなる。また、狭いフライト間でカーボン繊維及びガラス繊維に大きな力が加わることが防止される。圧縮比を小さくしたことにより、圧縮部で成形材料に加わるせん断力が小さくなり、カーボン繊維及びガラス繊維が受けるダメージが少なくなる。供給部14の溝深さdを大きくしたことにより、樹脂ペレットがスクリューに食い込む際のカーボン繊維及びガラス繊維の折損が抑制される。解繊を促進するミキシングヘッドがないため、カーボン繊維及びガラス繊維に強いダメージを与えることがない。L/D比が大きいため(供給部14が長いため)、カーボン繊維及びガラス繊維に強いダメージを与えることなく解繊が進む。逆流防止リング18がスクリューに共回りするため、カーボン繊維及びガラス繊維がスクリューヘッド12と逆流防止リング18の間の流路を通過するときに受けるダメージが小さくなる。スクリューヘッド12と逆流防止リング18の間の流路20を大きくしたため、該流路20を成形材料が通過し易くなり、カーボン繊維及びガラス繊維が受けるダメージが小さくなる。
1 加熱シリンダ
2 スクリュー
11 スクリュー本体
12 スクリューヘッド
14 供給部
15 圧縮部
16 計量部
17 成形材料
18 逆流防止リング
2 スクリュー
11 スクリュー本体
12 スクリューヘッド
14 供給部
15 圧縮部
16 計量部
17 成形材料
18 逆流防止リング
Claims (2)
- カーボン繊維を含有するカーボン繊維樹脂ペレットと、ガラス繊維を含有するガラス繊維樹脂ペレットとを含む成形材料を用いた射出成形による繊維強化樹脂成形品の製造方法であって、
上記カーボン繊維樹脂ペレット及び上記ガラス繊維樹脂ペレット各々が含有する繊維の重量平均長さは10mm以上であり、
上記成形材料における上記カーボン繊維と上記ガラス繊維を合わせた含有率を20質量%以上50%質量以下とし、
上記カーボン繊維と上記ガラス繊維の総量に占める上記ガラス繊維の割合を5質量%以上15質量%以下とし、
上記射出成形に、スクリューの長さLと径Dの比L/Dが22以上であり、圧縮比が1.6以上1.8以下であるシングルフライトの低せん断型スクリューを備えた射出成形機を用いることを特徴とする繊維強化樹脂成形品の製造方法。 - 請求項1において、
上記射出成形機の逆流防止リングが上記スクリューと共に回転する共回り型であることを特徴とする繊維強化樹脂成形品の製造方法。
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JP2017064567A JP6504192B2 (ja) | 2017-03-29 | 2017-03-29 | 繊維強化樹脂成形品の製造方法 |
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