JP6502606B1 - ペースト状銀粒子組成物、接合方法および電子装置の製造方法 - Google Patents

ペースト状銀粒子組成物、接合方法および電子装置の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】加熱すると高温エージング試験後の接着強度が優れた焼結物となるペースト状銀粒子組成物、金属製部材同士を強固に接合する方法、半導体素子とリードフレームもしくは回路基板とが強固に接合している電子装置の製法を提供する。【解決手段】脂肪酸,高分子分散剤または有機アミンで表面被覆された平均粒径が0.01〜10μmである加熱焼結性銀粒子と揮発性分散媒と融点を有しないか250℃より高い樹脂粉末とからなり、100℃以上250℃以下で加熱すると該銀粒子同士が焼結するペースト状銀粒子組成物、金属製部材間で該ペースト状銀粒子組成物を加熱焼結することにより金属製部材同士を接合する方法、および、半導体素子とリードフレームもしくは回路基板間に該ペースト状銀粒子組成物を介在させ加熱焼結して半導体素子とリードフレームもしくは回路基板とを接合する、電子装置の製造方法。【選択図】図4

Description

本発明は、ペースト状銀粒子組成物、接合方法および電子装置の製造方法に関する。詳しくは、表面被覆剤により表面被覆された焼結性銀粒子と、分散媒と、融点を有しない樹脂粉末または融点が250℃より高い樹脂粉末とからなるペースト状銀粒子組成物であり、加熱により該被覆剤および該分散媒が揮発もしくは分解により揮散し、該焼結性銀粒子が焼結して、空隙を有する固形状銀となるペースト状銀粒子組成物、および、該ペースト状銀粒子組成物を使用して金属製部材を接合する方法、および、該ペースト状銀粒子組成物により、半導体素子とリードフレームもしくは配線基板とを接合する、電子装置の製造方法に関する。
特許文献1(国際公開第2007/034833号公報)には、銀の表面の少なくとも一部が高級脂肪酸若しくはその誘導体により被覆されている銀粒子と揮発性分散媒とからなるペースト状銀粒子組成物を複数の金属製部材間に介在させ、100℃以上400℃以下での加熱により該揮発性分散媒が揮散し該銀粒子同士が焼結して複数の金属製部材同士を接合させることを特徴とする、接合方法が記載されており、複数の金属製部材が、金属系基板もしくは電気絶縁性基板上の電極と、電子部品もしくは電気部品の金属部分である接合方法が記載されている。
しかしながら、接合する金属製部材の材質によっては高温エージング試験後の接着強さが不十分という問題がある。この原因は、高温の環境下に長時間置かれると、銀焼結体のおける銀の結晶成長が促進され、焼結状態が不均一になるためと推察される。
特許文献2(特開2016−162919号公報)には、高温の環境下に長時間置かれても、金属の結晶成長が抑制できる構造体として、金属粒子と金属粒子の結晶成長を抑制する抑制粒子とを含有する接合構造体が提案されている。そして、具体的な該抑制粒子として、実施例においてはセラミックスであるSiC粒子が採用されている。
しかしながら、セラミックスは非常に硬いものである。具体的には、SiCのモース硬度は9であり、最も固いダイヤモンド(モース硬度10)に匹敵するほどである。このため、SiCを含む組成物を調製する際に使用するミキサーでは、ステンレス製の本体の釜内面や撹拌羽が摩耗して削れてしまうという問題がある。
特許文献3(特開2016−148104)では、加熱焼結性金属粒子と揮発性分散媒と少量の熱硬化性樹脂組成物からなり、該加熱焼結性金属粒子と該熱硬化性樹脂組成物の質量比率が98.5:1.5〜99.9:0.1であるペースト状物であり、加熱により、該揮発性分散媒が揮散し、該加熱焼結性金属粒子同士が焼結し該熱硬化性樹脂組成物が硬化して、導電性と熱伝導性に優れた多孔質金属粒子焼結物となるペースト状金属粒子組成物が提案されている。
しかしながら、用いる該熱硬化性樹脂組成物が液状の場合(例えば、液状のエポキシ樹脂と液状の硬化剤からなる液状の場合)は、硬化反応性が高いため、常温(例えば25℃)で長時間保管すると、該ペースト状金属粒子組成物中で該エポキシ樹脂と該硬化剤が反応して、経時的に粘度が増大しゲル化するという問題、経時的に該ペースト状金属粒子組成物の接着力が低下するという問題がある。そのために、高価な包摂型硬化剤を用いざるを得ないという問題がある。用いる該熱硬化性樹脂組成物が固形状や半固形状の場合、分散性不良のため、ペースト状金属粒子組成物が不均一になるという問題がある。
国際公開第2007/034833号公報 特開2016−162919号公報 特開2016−148104号公報
本発明者らは、上記問題点のないペースト状銀粒子組成物を開発すべく鋭意研究した結果、表面被覆剤により表面被覆された焼結性銀粒子と揮発性分散媒と特定の樹脂粉末からなるペースト状銀粒子組成物は、その製造の際に使用されるミキサーの本体の釜内部や撹拌羽が摩耗することなく、保存安定が良好であり、また、接合する金属製部材間に介在させて加熱し該焼結性銀粒子を焼結すると、銀焼結体における銀の結晶成長が抑制され、接着強さ、特には高温エージング試験後の接着強さが優れ、安定することを見出して本発明に到達した。
本発明の目的は、保存安定が良好であり、接合する金属製部材間に介在させて加熱し該焼結性銀粒子を焼結すると、接着強さ、特には高温エージング試験後の接着強さが優れ、安定したペースト状銀粒子組成物を提供すること、金属製部材間で該ペースト状銀粒子組成物を加熱焼結することにより、接着強さ、特には高温エージング試験後の接着強さが優れ、安定した接合方法を提供すること、半導体素子とリードフレームもしくは回路基板とが強固に接合して信頼性の高い電子装置の製造方法を提供することにある。
この目的は、
[1] (A)脂肪酸、高分子分散剤および有機アミンからなる群から選択される被覆剤で表面被覆された平均粒径が0.01〜10μmである焼結性銀粒子と、
(B)揮発性分散媒と、
(C)融点を有しない樹脂粉末または融点が250℃より高い樹脂粉末とからなることを特徴とする、ペースト状銀粒子組成物。
[2] 該樹脂粉末(C)が、平均粒径0.1〜50μmであり、熱分解温度が250℃より高く、該焼結性銀粒子(A)100質量部に対し、0.01〜5質量部である、[1]に記載のペースト状銀粒子組成物。
[3] 前記ペースト状銀粒子組成物の100℃以上250℃以下での加熱焼結物の体積抵抗率が1×10-5Ω・cm以下であり、かつ、熱伝導率が100W/m・K以上である、[1]または[2]に記載のペースト状銀粒子組成物。
[4] (A)脂肪酸、高分子分散剤および有機アミンからなる群から選択される被覆剤で表面被覆された平均粒径が0.01〜10μmである焼結性銀粒子と、
(B)揮発性分散媒と、
(C)融点を有しない樹脂粉末または融点が250℃より高い樹脂粉末とからなる、ペースト状銀粒子組成物を、
金属製部材(D1)と金属製部材(D2)の間に介在させて、100℃以上250℃以下で加熱することにより、該焼結性銀粒子(A)同士の焼結物により、金属製部材(D1)と金属製部材(D2)を接合することを特徴とする、接合方法。
[5] 該樹脂粉末(C)が、平均粒径0.1〜50μmであり、熱分解温度が250℃より高く、該焼結性銀粒子(A)100質量部に対し、0.01〜5質量部である、[4]に記載の接合方法。
[6] 金属製部材(D1)の材質が、金、銀、銅、白金、パラジウムまたはそれらの合金であり、金属製部材(D2)の材質が、金または金の合金である、[4]または[5]に記載の接合方法。
[7] 金属製部材(D1)が、リードフレームまたは回路基板の金属部分であり、金属製部材(D2)が半導体素子の金属部分である、[4]から[6]のいずれかに記載の接合方法。
[8] 該焼結性銀粒子(A)同士の焼結物の体積抵抗率が1×10-5Ω・cm以下であり、かつ、熱伝導率が100W/m・K以上である、[4]から[7]のいずれかに記載の接合方法。
[9] (A)脂肪酸、高分子分散剤および有機アミンからなる群から選択される被覆剤で表面被覆された平均粒径が0.01〜10μmである焼結性銀粒子と、
(B)揮発性分散媒と、
(C)融点を有しない樹脂粉末または融点が250℃より高い樹脂粉末とからなる、ペースト状銀粒子組成物を、半導体素子の金属部分とリードフレームもしくは金属部分を有する回路基板間に介在させた後、100℃以上250℃以下で加熱することにより、該焼結性銀粒子(A)同士の焼結物として、半導体素子の金属部分とリードフレームもしくは回路基板の金属部分を接合することを特徴とする、電子装置の製造方法。
[10] 該樹脂粉末(C)が、平均粒径0.1〜50μmであり、熱分解温度が250℃より高く、該焼結性銀粒子(A)100質量部に対し、0.01〜5質量部である、[9]に記載の電子装置の製造方法。
[11] 該樹脂粉末(C)の融点が、ペースト状銀粒子組成物を半導体素子の金属部分とリードフレームもしくは金属部分を有する回路基板間に介在させた後、100℃以上250℃以下で加熱する際の温度よりも高い、[9]または[10]に記載の電子装置の製造方法。
[12] リードフレームまたは回路基板の金属部分の材質が、金、銀、銅、白金、パラジウム、またはそれらの合金であり、半導体素子の金属部分の材質が、金または金の合金である、[9]から[11]のいずれかに記載の電子装置の製造方法。
[13] 該焼結性銀粒子(A)同士の焼結物の体積抵抗率が1×10-5Ω・cm以下であり、かつ、熱伝導率が100W/m・K以上である、[9]から[12]のいずれかに記載の電子装置の製造方法。;により達成される。
本発明の請求項1で規定するペースト状銀粒子組成物は、例えば、ミキサーで調製時に該ミキサーを傷つけない。この組成物は、保存安定性が良好であり、加熱により、揮発性分散媒が揮発または分解によって揮散し、焼結性銀粒子(A)同士が焼結して、金属製部材への接着強さ、特には高温エージング試験後の接着強さが優れた、空隙を有する固形状銀となる。
本発明の請求項4で規定するペースト状銀粒子組成物による接合方法では、該ペースト状銀粒子組成物を金属製部材(D1)と金属製部材(D2)の間に介在させて加熱焼結することにより、接合される金属製部材の材質によらず、金属製部材(D1)と金属製部材(D2)を強固に接合し、高温エージング試験後の接着強さが優れ、安定している。
本発明の請求項9で規定する電子装置の製造方法によると、半導体素子とリードフレームもしくは回路基板が強固に接合し、高温エージング試験後の接着強さが優れ、安定しているので信頼性の高い電子装置を製造することができる。
実施例における接合強度測定用試験体についての平面図である。 図1に示した試験体のX−X線における断面図である。 実施例1における、高温エージング試験前の接合強度測定用試験体の断面写真である。写真の白い部分は銀粒子同士の焼結物であり、黒い部分は空隙またはポリイミド樹脂粉末である。 実施例1における、高温エージング試験後の接合強度測定用試験体の断面写真である。高温エージング前よりわずかに大きい空隙が散在するものの、大きな変化は見られない。すなわち、銀の結晶成長が抑制され、多孔質焼結物中の空隙の増大が抑制されている。 比較例1における、高温エージング試験前の接合強度測定用試験体の断面写真である。写真の白い部分は銀粒子同士の焼結物であり、黒い部分は空隙である。空隙は写真全体にほぼ均一に存在する。 比較例1における、高温エージング試験後の接合強度測定用試験体の断面写真である。銀の結晶成長が抑制されておらず、多孔質焼結物中の多数の大きな空隙が増大し、全体に不均一化している。
本発明のペースト状銀粒子組成物は、(A)脂肪酸、高分子分散剤および有機アミンからなる群から選択される被覆剤で表面被覆された平均粒径が0.01〜10μmである焼結性銀粒子と、
(B)揮発性分散媒と、
(C)融点を有しない樹脂粉末または融点が250℃より高い樹脂粉末とからなることを特徴とする。このペースト状銀粒子組成物は、100℃以上250℃以下で加熱すると、揮発性分散媒(B)が揮発または分解によって揮散し、該焼結性銀粒子(A)同士の焼結物、すなわち、樹脂粉末(C)と空隙を有する固形状銀となる。
(a)脂肪酸、(b)酸性官能基および/または塩基性官能基を有する高分子分散剤、(c)有機アミンからなる群から選択される被覆剤で表面被覆された平均粒径が0.01〜10μmである焼結性銀粒子(A)は、加熱焼結性を有する。該焼結性銀粒子(A)は、銀の合金粒子、あるいは、銀により表面が被覆された他の金属粒子であってもよいし、該銀粒子は2種類以上を併用してもよい。
該焼結性銀粒子(A)は、好ましくは、銀塩の還元法により製造されたものである。例えば、還元法では、通常、硝酸銀水溶液とアンモニア水とを混合して反応させ銀アンミン錯体水溶液を得て、これとヒドロキノンと無水亜硫酸カリウムもしくはアンモニウムとゼラチンの水溶液を接触反応させて銀粉を還元析出させ、濾過し、残渣を水で洗浄し、加熱下乾燥させて調製する方法が例示される。あるいは、硝酸銀水溶液とアンモニア水とを混合して反応させ銀アンミン錯体水溶液を得て、これと有機還元剤(ヒドロキノン、アスコルビン酸、グルコース等)、特にはヒドロキノンの水溶液を接触反応させて銀粉を還元析出させ、濾過し、洗浄し、乾燥させて調製する方法が例示される。この過程において、(a)脂肪酸、(b)酸性官能基および/または塩基性官能基を有する高分子分散剤、(c)有機アミンからなる群から選択される被覆剤が添加される。
濾過残渣はアンモニアとヒドロキノンと無水亜硫酸カリウムもしくはアンモニウムとゼラチンを含有しており、銀粒子表面にアンモニアとヒドロキノンと無水亜硫酸カリウムもしくはアンモニウムとゼラチンが付着しているため、通常、清浄な水で繰り返し洗浄して、平均粒径が好ましくは0.01〜10μmである焼結性銀粒子を得ることができる。あるいは、濾過残渣はアンモニアと有機還元剤、特にはヒドロキノンを含有しており、銀粒子表面にアンモニアと有機還元剤、特にはヒドロキノンが付着しているため、通常、清浄な水とメタノールで繰り返し洗浄して平均粒径が好ましくは0.01〜10μmである焼結性銀粒子を得ることができる。銀表面を被覆している、(a)脂肪酸、(b)酸性官能基および/または塩基性官能基を有する高分子分散剤、(c)有機アミンからなる群から選択される被覆剤は、銀表面と会合、イオン結合等により強固に接合しているため、通常、洗浄過程で除去されない。
このようにして製造された焼結性銀粒子(A)は通常、球状、粒状または涙滴状である。
フレーク状の焼結性銀粒子は、粉末状の焼結性銀粒子をセラミック製のボールとともにボールミルのような回転式ドラム装置で銀粒子を物理的にたたくことにより容易に製造できる。この際、銀粒子の凝集を低減、防止するため微量の脂肪酸、肪肪酸の金属塩、脂肪酸エステル等を添加してもよい。
該焼結性銀粒子(A)の平均粒径は、レーザ回折散乱式粒度分布測定装置を用いて測定した粒度分布の体積基準の積算分率50%値、すなわち、メジアン径(D50値)である。なお、該測定装置が使用できない場合は、電子顕微鏡写真による粒子径から計算される、メジアン径または単純平均値であってもよい。
該焼結性銀粒子(A)の平均粒径が10μmを越えると、該焼結性銀粒子(A)同士の焼結性が低下する恐れがあるので10μm以下であり、5μm以下であることが好ましい。また、0.01μm未満の場合、表面活性が強すぎてペースト状銀粒子組成物の保存安定性が低下する恐れがあるため、0.01μm以上であり、0.1μm以上であることが好ましい。
本発明のペースト状銀粒子組成物中の焼結性銀粒子(A)の形状は限定されず、球状、粒状、涙滴状、フレーク(片)状・針状・角状・樹枝状・不規則形状・板状・極薄板状・六角板状・柱状・棒状・多孔状・繊維状・塊状・海綿状・けい角状・丸み状等が例示されるが、球状、粒状、涙滴状であることが好ましい。形状は、例えば、JIS Z 2500、ISO/DIS 3252等の公的文書に記載された客観的な分類により確認できる。なお、通常、球状はアトマイズ製法に多く見られ、粒状、涙滴状は還元製法に多く見られる。
なお、これらの形状の焼結性銀粒子(A)は2種以上を併用してもよい。
併用例として、粒状の銀粒子と球状の銀粒子との併用(例えば、平均粒径の小さい粒状銀粒子と平均粒径の大きい球状銀粒子との併用、平均粒径の小さい球状銀粒子と平均粒径の大きい粒状銀粒子との併用)、平均粒径の小さい銀粒子と平均粒径の大きい銀粒子との併用(例えば、平均粒径の小さい球状銀粒子と平均粒径の大きい球状銀粒子との併用、平均粒径の小さい粒状銀粒子と平均粒径の大きい粒状銀粒子との併用)、が例示される。なお、本発明の目的に反しない限り、球状、粒状または涙滴状の銅粒子を添加してもよい。
配合比率は、限定されないが、金属製部材への接着強さ、特には高温エージング試験後の接着強さの点で、前記の前者と後者が、質量比で5:95〜90:10が好ましく、8:92〜70:30がより好ましい。
該焼結性銀粒子(A)は、焼結性銀粒子(A)同士の凝集を防ぐために、表面の少なくとも一部、好ましくは半分以上、より好ましくは全部が特定の表面被覆剤で被覆されている。そのような表面被覆剤は、(a)脂肪酸、(b)酸性官能基および/または塩基性官能基を有する高分子分散剤、(c)有機アミンからなる群から選択される。脂肪酸(a)は、25℃で固形状、半固形状もしくは液状であるが、粉末状であってもよい。
脂肪酸(a)は、通常、該焼結性銀粒子(A)の、例えば、還元法による製造工程の中において添加されるものであり、前記したように、該焼結性銀粒子(A)は、例えば、清浄な水とメタノールで繰り返し洗浄されて完成するため、該焼結性銀粒子(A)の表面に単に付着しただけの脂肪酸は除去されて残存せず、該表面に強固に付着もしくは該表面と会合またはイオン結合したものだけが残存する。よって、本発明のペースト状銀粒子組成物を製造する際の混合においては、該焼結性銀粒子(A)の表面から容易には離脱しない。
脂肪酸(a)として、炭素原子数が2以上である、エタン酸(酢酸)、プロパン酸(プロピオン酸)、ブタン酸(酪酸)、ペンタン酸(吉草酸)、ヘキサン酸(カプロン酸)、ヘプタン酸(エナント酸)、オクタン酸(カプリル酸)、ノナン酸(ペラルゴン酸)、デカン酸(カプリン酸)、ドデカン酸(ラウリン酸)、テトラデカン酸(ミリスチン酸)、ペンタデカン酸、ヘキサデカン酸(パルミチン酸)、ヘプタデカン酸(マルガリン酸)、オクタデカン酸(ステアリン酸)、12−ヒドロキシオクタデカン酸(12−ヒドロキシオレイン酸)、エイコサン酸(アラキン酸)、ドコサン酸(ベヘン酸)、テトラコサン酸(リグノセリン酸)、ヘキサコサン酸(セロチン酸)、オクタコサン酸(モンタン酸)等の1価の直鎖飽和脂肪酸;炭素原子数が14以上である2−ペンチルノナン酸、2−ヘキシルデカン酸、2−ヘプチルドデカン酸、イソオレイン酸等の1価の分枝飽和脂肪酸;パルミトレイン酸、オレイン酸、イソオレイン酸、エライジン酸、リノール酸、リノレン酸、リシノール酸、ガドレン酸、エルカ酸、セラコレイン酸等の1価の不飽和脂肪酸が例示される。
なお、狭義の脂肪酸に限らず、広義の脂肪酸である、炭素原子数が2以上のシュウ酸、マロン酸、コハク酸、マレイン酸、フマール酸、オキシジ酢酸(ジグリコール酸)、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スペリン酸、アゼライン酸、セバシン酸等の多価の脂肪族カルボン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸等の多価の芳香族カルボン酸を、脂肪酸(a)と併用してもよい。
多価の脂肪族カルボン酸や多価の芳香族カルボン酸の好ましい配合量は、脂肪酸(a)の10%質量以下である。
なお、脂肪酸のアルカリ金属塩や、脂肪酸のエステルを脂肪酸(a)と併用してもよい。脂肪酸のアルカリ金属塩として、脂肪酸のナトリウム塩とカリウム塩とリチウム塩が例示される。脂肪酸のエステルとして、脂肪酸のアルキルエステル(例えば、メチルエステル、エチルエステル)、脂肪酸のフェニルエステルが例示される。これらアルキルエステルのアルキル基は炭素原子数1〜6が好ましい。
好ましい配合量は、脂肪酸(a)の10%質量以下である。
(b)酸性官能基および/または塩基性官能基を有する高分子分散剤は、重量平均分子量が通常1,000以上である。重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(キャリア:テトラヒドロフラン)によって測定されるポリスチレン換算重量平均分子量である。
酸性官能基として、カルボキシル基、酸無水物基、リン酸基、酸性リン酸エステル基、ホスホン酸基が例示されるが、カルボキシル基、リン酸基または酸性リン酸エステル基であることが好ましい。酸性リン酸エステル基は、一部のリン結合水酸基がアルコキシ化されたものである。アルコキシ基としてメトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基などの低級アルコキシ基が例示される。低級アルコキシ基の炭素原子数は好ましくは1〜8である。
また、塩基性官能基として、アミノ基、イミノ基(=NH)、アンモニウム塩基、塩基性窒素原子を有する複素環基が例示されるが、アミノ基、アンモニウム塩基(例えば、第3級アンモニウム塩基、第4級アンモニウム塩基)であることが好ましい。アミノ基は、第1級アミノ基(-NH2)、第2級アミノ基(-NHR)、第3級アミノ基(-NRR')のいずれでもよい。前記RとR'はアルキル基、フェニル基、アラルキル基などであり、炭素原子数は好ましくは1〜8である。
酸性官能基および/または塩基性官能基を有する高分子分散剤の酸価は、5〜300mgKOH/gであることが好ましく、10〜200mgKOH/gであることがより好ましい。また、高分子分散剤のアミン価は、5〜300mgKOH/gであることが好ましく、10〜200mgKOH/gであることがより好ましい。
酸価とは、高分子分散剤固形分1gあたりの酸価を表し、JIS K 0070に準じ、電位差滴定法によって求めることができる。アミン価とは、高分子分散剤固形分1gあたりのアミン価を表し、0.1Nの塩酸水溶液を用い、電位差滴定法によって求めたのち、水酸化カリウムの当量に換算した値をいう。
市販の酸性官能基および/または塩基性官能基を有する高分子分散剤として、SOLSPERSE24000(酸価:24mgKOH/g、アミン価:47mgKOH/g),SOLSPERSE32000(酸価:15mgKOH/g、アミン価:180mgKOH/g)(Lubrizol,Ltd.製)(SOLSPERSEは、リューブリゾル リミテッドの登録商標である)等が例示される。
また、DISPERBYK-106(酸価:132mgKOH/g、アミン価:74mgKOH/g)、DISPERBYK-130(酸価:2mgKOH/g、アミン価:190mgKOH/g)、DISPERBYK-140(酸価:73mgKOH/g、アミン価:76mgKOH/g)、DISPERBYK-142(酸価:46mgKOH/g、アミン価:43mgKOH/g)、DISPERBYK-145(酸価:76mgKOH/g、アミン価:71mgKOH/g)、DISPERBYK-180(酸価:94mgKOH/g、アミン価:94mgKOH/g)、DISPERBYK-187(酸価:35mgKOH/g、アミン価:35mgKOH/g)、DISPERBYK-191(酸価:30mgKOH/g、アミン価:20mgKOH/g)、DISPERBYK-2001(酸価:19mgKOH/g、アミン価:29mgKOH/g)、DISPERBYK-2010(酸価:20mgKOH/g、アミン価:20mgKOH/g)、DISPERBYK-2020(酸価:37mgKOH/g、アミン価:36mgKOH/g)、DISPERBYK-2020N(酸価:36mgKOH/g、アミン価:36mgKOH/g)、DISPERBYK-2025(酸価:38mgKOH/g、アミン価:37mgKOH/g)、DISPERBYK-102(酸価:101mgKOH/g)、DISPERBYK-174(酸価:22mgKOH/g)、DISPERBYK-2096(酸価:40mgKOH/g)、DISPERBYK-2150(アミン価:57mgKOH/g)、などのディスパービックシリーズ品[ビックケミー・ジャパン株式会社販売品](DISPERBYKは、ビイク―ヘミー ゲゼルシヤフト ミツト ベシュレンクテル ハフツングの登録商標である)等が例示される。
また、BYK-9076(酸価:38mgKOH/g、アミン価:44mgKOH/g)、BYK-9077(アミン価:48mgKOH/g)、ANTI-TERRA-U(酸価:24mgKOH/g、アミン価:19mgKOH/g)、ANTI-TERRA-U100(酸価:50mgKOH/g、アミン価:35mgKOH/g)、ANTI-TERRA-204(酸価:41mgKOH/g、アミン価:37mgKOH/g)、ANTI-TERRA-205(酸価:40mgKOH/g、アミン価:37mgKOH/g)、ANTI-TERRA-250(酸価:46mgKOH/g、アミン価:41mgKOH/g)などのビックシリーズ品、アンチテラシリーズ品[ビックケミー・ジャパン株式会社販売品](BYKおよびANTI-TERRAは、ビイク―ヘミー ゲゼルシヤフト ミツト ベシュレンクテル ハフツングの登録商標である)等が例示される。
また、ディスパロンDA−234(酸価:16mgKOH/g、アミン価:20mgKOH/g)、ディスパロンDA−325(酸価:14mgKOH/g、アミン価:20mgKOH/g)などのディスパロンシリーズ品[楠本化成株式会社製]ディスパロンは、楠本化成株式会社の登録商標である);アジスパーPB−821(酸価:17mgKOH/g、アミン価:10mgKOH/g)、アジスパーPB−822(酸価:14mgKOH/g、アミン価:17mgKOH/g)、アジスパーPB−881(酸価:17mgKOH/g、アミン価:17mgKOH/g)、アジスパーPN−411(酸価:6mgKOH/g、アジスパーPA−111(酸価:35mgKOH/g)、などのアジスパーシリーズ品[味の素ファインテクノ株式会社製]が例示される(アジスパーは、味の素株式会社の登録商標である)。
(c)有機アミンは、1級、2級もしくは3級のアルキルアミン類、ジアミン類、トリアミン類、アルキルアミドアミン類、N-アルキルエタノールアミン類、N-アルキルモルホリン、その他の有機アミン化合物が例示される。
具体的には、有機アミン化合物として、ジプロピルアミン、ジブチルアミン、ヘキシルアミン、シクロヘキシルアミン、ヘプチルアミン、オクチルアミン、ノニルアミン、デシルアミン、ドデシルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン等のアルキルアミン類;エチレンジアミン、N,N−ジメチルエチレンジアミン、N,N´−ジメチルエチレンジアミン、N,N−ジエチルエチレンジアミン、1,2−プロパンジアミン、1,3−プロパンジアミン、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジアミン、N,N−ジメチル−1,3−ジアミノプロパン、N,N´−ジメチル−1,3−ジアミノプロパン、N,N−ジエチル−1,3−ジアミノプロパン、1,4−ジアミノブタン、1,5−ジアミノ−2−メチルペンタン、1,6−ジアミノヘキサン、N,N´−ジメチル−1,6−ジアミノヘキサン、1,7−ジアミノヘプタン、1,8−ジアミノオクタン等のジアミン類;ジエチレントリアミン、ジプロピレントリアミン、ジブチレントリアミン、N−アミノエチルピペラジン等のトリアミン類が例示される。
本発明のペースト状銀粒子組成物は、(a)脂肪酸、(b)酸性官能基および/または塩基性官能基を有する高分子分散剤、(c)有機アミンからなる群から選択される被覆剤で表面被覆された平均粒径が0.01〜10μmである焼結性銀粒子(A)、揮発性分散媒(B)および融点を有しない樹脂粉末または融点が250℃より高い樹脂粉末(C)からなる混合物であり、該焼結性銀粒子(A)および融点を有しない樹脂粉末かまたは融点が250℃より高い樹脂粉末(C)が揮発性分散媒(B)の作用によりペースト化している。ペースト化することによりニードルやノズルから容易に吐出でき、特にスクリーン印刷、メタルマスクによる印刷塗布に適する。印刷された後の該ペースト状銀粒子組成物の厚さは限定されないが、例えば2mm以下であり、好ましくは1mm以下であり、より好ましくは5〜500μmであり、特に好ましくは20〜200μmである。非揮発性分散媒ではなく、揮発性分散媒(B)を使用するのは、加熱により該焼結性銀粒子(A)が焼結する際に、分散媒が前もって揮散すると該焼結性銀粒子(A)が焼結しやすく、その結果、焼結物の電気伝導性、熱伝導性、接着性が向上するからである。
そのような揮発性分散媒(B)は、該焼結性銀粒子(A)表面を変質させないものが好ましく、その粘度は限定されないが、0.1〜1000mP・sであることが好ましく、1〜500mP・sであることがより好ましい。粘度が0.1mP・s未満であると揮発性が極めて高くなり、ペースト状銀粒子組成物の調製が困難となり、(a)脂肪酸、(b)酸性官能基および/または塩基性官能基を有する高分子分散剤、(c)有機アミンからなる群から選択される被覆剤で表面被覆された平均粒径が0.01〜10μmである焼結性銀粒子(A)同士の焼結性が低下することがある。
揮発性分散媒(B)として、エチルアルコール、プロピルアルコール、ブチルアルコール、ペンチルアルコール、ヘキシルアルコール、ヘプチルアルコール、オクチルアルコール、ノニルアルコール、デシルアルコール、ベンジルアルコール、シクロヘキサノール、ターピネオール等の揮発性一価アルコール;エチレングリコール、プロピレングリコール、ヘキサンジオール、オクタンジオール等の揮発性多価アルコール;低級n−パラフィン、低級イソパラフィン等の揮発性脂肪族炭化水素;トルエン、キシレン等の揮発性芳香族炭化水素;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイゾブチルケトン、シクロヘキサノン、ジアセトンアルコール(4−ヒドロキシ−4−メチル−2−ペンタノン)、2−オクタノン、イソホロン(3,5,5−トリメチル−2−シクロヘキセン−1−オン)、ジイブチルケトン(2,6−ジメチル−4−ヘプタノン)等の揮発性ケトン;酢酸エチル(エチルアセテート)、酢酸ブチルのような揮発性酢酸エステル;酪酸メチル、ヘキサン酸メチル、オクタン酸メチル、デカン酸メチルのような揮発性脂肪族カルボン酸エステル;テトラヒドロフラン、メチルセロソルブ、プロピレンブリコールモノメチルエーテル、メチルメトキシブタノール、ブチルカルビトール等の揮発性エーテル;揮発性シリコーンオイルおよび揮発性有機変成シリコーンオイルが例示され、更に、ポリブテン、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、シクロヘキサンジメタノール(シス、トランスの混合物)、ボルニルシクロヘキサノール、イソボルニルシクロヘキサノール、ボルニルフェノール、イソボルニルフェノールが例示される。揮発性分散媒(B)は2種類以上を併用しても良く、揮発性分散媒同士の相溶性は問わない。なお、水は、前記焼結性銀粒子(A)の表面を被覆している(a)脂肪酸により撥水しやすいため、ペースト化しにくく好ましくない。
本発明のペースト状銀粒子組成物が含む、融点を有しない樹脂粉末または融点が250℃より高い樹脂粉末(C)は、意図的に配合される成分である。該樹脂粉末(C)は、本発明のペースト状銀粒子組成物を加熱した際に、前記焼結性銀粒子(A)同士の焼結を妨げることがなく、しかも本発明のペースト状銀粒子組成物を金属製部材の接合に用いた場合、銀焼結体における銀の結晶成長を抑制する効果がある。このため、金属製部材の接合体の高温エージング試験前後において、接着強さが優れ、安定している。該樹脂粉末(C)は、加熱されたときに、それ自体が接着性を発現する必要はないが、接着性を発現しても良い。
該樹脂粉末(C)は、常温(25℃)においても粉末状であることは言うまでもなく、本発明のペースト状銀粒子組成物を加熱して焼結した多孔質焼結体中においても、固体の粒子状であることが好ましい。この際、該樹脂粉末(C)の平均粒径や形状は、該ペースト状銀粒子組成物を加熱する前のそれと異なっていてもよい。このため、該樹脂粉末(C)は、融点を有しないか、または、融点が250℃より高いことが必要であり、本発明のペースト状銀粒子組成物を加熱して焼結する際の温度において、融解、溶融しないことが必要である。該ペースト状銀粒子組成物を加熱して焼結する際に、該樹脂粉末(C)が融解、溶融すると、銀焼結体における銀の結晶成長を抑制するに十分な効果が得られず、金属製部材の接合体の高温エージング試験後における接着強さが安定しないことがある。
融点を有しない該樹脂粉末(C)は、実質的に硬化済みの熱硬化性樹脂粉末、または、非結晶性の熱可塑性樹脂粉末である。また、融点が250℃より高い該樹脂粉末(C)は、耐熱性の優れる結晶性の熱可塑性樹脂粉末であって、エンジニアリングプラスチック粉末またはスーパーエンジニアリングプラスチック粉末が例示される。なお、該樹脂粉末(C)の粒子形状は限定されず、球状、粒状、涙滴状、破砕状、棒状、フレーク状、不規則形状状等が例示される。
融点の測定は、例えば、示差熱分析(DTA)、示差走査熱量分析(DSC)において、該樹脂粉末(C)を一定の昇温速度(例えば10℃/分)で室温から昇温し、溶融による吸熱ピーク温度をもって融点とする方法でおこなうことができる。このような測定装置は多数市販されている。
また、該樹脂粉末(C)の熱分解温度は、250℃より高いことが好ましい。熱分解温度が250℃以下であると、本発明のペースト状銀粒子組成物の加熱温度である100以上250℃以下の加熱において該樹脂粉末が熱分解して分解ガスを発生し、該ペースト状銀粒子組成物中の銀粒子の焼結物および空隙が不均一な形状になる恐れがあるからである。該熱分解温度の上限は限定されず、550℃があり得る。
該熱分解温度は通常の方法で測定できる。例えば、大気雰囲気の熱重量分析(TGA)において、該樹脂粉末(C)を一定の昇温速度(例えば10℃/分)で室温から昇温し、加熱前の該樹脂粉末(C)の質量に対し、5%減量した時の温度をもって熱分解温度とする方法が例示される。このような測定装置は多数市販されている。
該樹脂粉末(C)の原料樹脂には、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、マレイミド樹脂、フェノール樹脂、アルキド樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、フラン樹脂、メラミン樹脂、シリコーン樹脂、等の熱硬化性樹脂;フッ素樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリイミド樹脂等の熱可塑性樹脂が例示されるが、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、シリコーン樹脂であることが好ましく、特には、熱分解温度が高く耐熱性が優れる点で、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂であることが好ましい。
熱硬化性樹脂を硬化させるための硬化剤は、例えば、エポキシ樹脂には有機酸無水物、ポリアミン類等;フェノール樹脂にはヘキサメチレンテトラミン;不飽和ポリエステル樹脂には、ベンゾイルパーオキサイド、メトルエチルケトンパーオキサイド等の有機過酸化物;ユリア樹脂、メラミン樹脂等のアミノ樹脂にはアンモニウム塩類、アルカノールアミン塩類、金属塩類、有機酸類がそれぞれ用いられる。
エポキシ樹脂は、通常、1分子中にエポキシ基を2個以上有する、多官能性エポキシ樹脂であり、エポキシ基はグリシジル基や2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチル基の一部として含まれる。
多官能性エポキシ樹脂は多数市販されており、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂などの芳香族系エポキシ樹脂が、耐熱分解性の点で好ましい。
ポリイミド樹脂とポリアミドイミド樹脂も、耐熱分解性の点で芳香族系ものが好ましい。
多官能性エポキシ樹脂は硬化剤と混合することにより硬化する。硬化剤として、脂肪族ポリアミン、ポリアミノアミド(ポリアミド樹脂)、脂環族ジアミン、芳香族ジアミン、イミダゾール、3級アミン)、酸無水物化合物、フェノール樹脂、アミノ樹脂、ジシアンジアミド、ルイス酸錯化合物等が例示される。なお、これらの硬化剤はエポキシ樹脂の硬化を促進する効果を併せ持っていてもよい。硬化剤量は該熱硬化性エポキシ樹脂粉末を加熱硬化させるのに十分な量である。硬化剤の種類によって該熱硬化性エポキシ樹脂粉末を加熱硬化させるのに十分な量は異なるので、一律に規定しにくいが、該熱硬化性エポキシ樹脂粉末の2〜15質量%である。
硬化樹脂粉末、硬化樹脂粒子の製造方法は、既に特許文献公知である。例えば、
(1)液状の熱硬化性樹脂に硬化剤を添加して、該樹脂を硬化させることによりバルク状熱硬化樹脂を製造し、それをハンマーミルにより粒径1mm以下に予備粉砕し、公知の微粉砕装置(例えば、ボールミル、サンドミル、アトライター、ジェット粉砕機、コロイドミル)により微粉砕し、微粉砕物を分級装置(例えば、篩、流体分級機)により分級してミクロンオーダーの硬化樹脂粉末を得るという方法(特開平8−259702)。
(2)非硬化性の液状オルガノポリシロキサン中に、このオルガノポリシロキサンに対して非相溶性の液状硬化性有機樹脂組成物(エポキシ樹脂組成物、ポリイミド樹脂組成物)を液体粒子状に分散させて硬化させることにより硬化有機樹脂粒子を形成し、しかる後、この粒子をこのオルガノポリシロキサンから分離することにより、硬化有機樹脂粒子を得るという方法(特開平10−212358)。
(3)液状のラジカル重合型熱硬化性樹脂(例えば、液状不飽和ポリエステル樹脂、液状エポキシ(メタ)アクリレート樹脂、液状ウレタン(メタ)アクリレート樹脂)を水相中に均一に分散させてなるO/W型熱硬化性樹脂水性分散体を、常温または加熱下に硬化させた後、乾燥させることにより硬化樹脂微粉末を得るという方法(特開2002−220473)。
(4)芳香族テトラカルボン酸二無水物と芳香族ジアミンを有機溶媒中で比較的低温で反応させて、ポリイミド前駆体であるポリアミド酸溶液とし、続いて、これを水などの貧溶媒中に投入して沈殿する重合体を回収した後、加熱閉環してイミド化するという方法(特公昭38−5997)
(5)(I)テトラカルボン酸二無水物、(II)酸無水物基を有さないテトラカルボン酸及びその誘導体から選択される1種類以上の化合物並びに(III)ジアミンを極性溶媒中で反応させ、ポリイミド樹脂粒子を形成させるという方法(特開平9−136958)。
(6) 乾燥窒素気流下、2,2−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン(0.067モル)、1,3−ビス(3−アミノプロプル)テトラメチルジシロキサン(0.02モル)、末端封止剤として3−アミノフェノール(0.02モル)をN−メチル−2−ピロリドン(以下、NMPとする)80gに溶解させ、ここにオキシジフタル酸二無水物(0.1モル)をNMP20gとともに加えて、25℃で1時間反応させ、次いで50℃で4時間撹拌し、その後、180℃で5時間撹拌し、撹拌終了後、溶液を水3Lに投入し、ろ過して沈殿を回収し、水で3回洗浄した後、真空乾燥機を用いて80℃20時間乾燥して、有機溶剤可溶性ポリイミド(白色粉体)を得るという方法(特開2009‐194054)。
(7)良溶媒中においてベンゾオキサゾール骨格を有する芳香族ジアミン類と芳香族テトラカルボン酸無水物類からなるポリイミド前駆体を重合し、分散重合法により粉末かするか、又は得られたポリイミド前駆体溶液を貧溶媒と混合し析出したポリイミド前駆体を濾過し、揮発成分が1〜45質量%となるまで乾燥した後、250〜550℃にて加熱処理を行ってポリイミド樹脂粉末を得るという方法(特開2007‐112927)。
(8)攪拌機、温度計、窒素ガス導入管を備えたガラス容器に、構造式1で示す4,4−オキシジアニリン(以下「4,4−ODA」と称す。)27.63g(0.138mol)を仕込み、ジメチルアセトアミド(以下、「DMAc」と称す。)300g、トリエチルアミン13.96g(0.138mol)を加え、一定時間攪拌して均一溶液を作成する。以上のようにして作成した均一溶液を、氷冷しながら、40℃を超えないように構造式2で示す無水シクロヘキサントリカルボン酸クロライド(以下「CHTAC」と称す。)30.00g(0.138mol)をゆっくり添加する。添加終了後、氷冷をやめ、室温にて2時間反応させた後、アニリン0.21g(0.002mol)を添加し、さらに30分攪拌し、粘度19psのポリアミド溶液を作成する。この様にして作成したポリアミド溶液に、無水酢酸26mL、ピリジン12mLを添加し、55℃にて2時間攪拌し、イミド化を行い、得られた反応溶液を、水/メタノール混合溶液に添加し、得られた粉末を水洗、乾燥することによりポリアミドイミド粉末を得るという方法。(特開2011‐213849)
(9)容積300mlのオートクレーブ(攪拌機、Nガス導入用バルブ付き、熱電対付き)に、4,4’−ジフルオロベンゾフェノン(0.150モル)、ヒドロキノン(0.150モル)、DPS (0.413モル)、KCO (0.008モル)、NaCO(0.144モル)を加えた。その後、Nガスを流速100ml/分で流しながら攪拌、加熱して、ポリエーテルエーテルケトンを重合した。温度条件は、30℃〜180℃までを3℃/分、180℃〜320℃までを1℃/分の昇温速度で昇温し、320℃で4時間保持した。重合反応終了後、常温に冷却したポリエーテルエーテルケトンを粉砕してポリエーテルエーテルケトン樹脂粉末を得るという方法(特開2012‐171981)。
このような樹脂粉末(C)の多くは市販されており、適宜選択することができる。なお、該樹脂粉末は、水、アルコール等に分散されたスラリー状で供されるものであってもよい。該樹脂粉末は固体状であるから、分散媒である、水、アルコールは容易に分離、除去できる。
該樹脂粉末(C)は、本発明のペースト状銀粒子組成物中における分散性のため、平均粒径が0.1〜50μmであることが好ましく、0.1〜25μmであることがより好ましい。平均粒径は、レーザ回折散乱式粒度分布測定装置を用いて測定した粒度分布の体積基準の積算分率50%値、すなわち、メジアン径(D50値)であるが、該測定装置を使用できない場合は、電子顕微鏡写真による粒子径から計算される、メジアン径または単純平均値であってもよい。
なお、このような樹脂粉末(C)を含有する該ペースト状銀粒子組成物は、粒径が過度に大きい粒子を含むことがあり得るので、100〜1000メッシュのフィルターでろ過することが好ましい。
該樹脂粉末(C)がこのように微細であると、該ペースト状銀粒子組成物を微細な吐出口であるニードルやノズルから容易に吐出でき、また、スクリーン印刷、メタルマスクによる印刷塗布では、印刷された表面の平坦性が優れる。
該樹脂粉末(C)の配合量は、前記焼結性銀粒子(A)100質量部に対し、0.01〜5質量部であることが好ましい。0.01質量部未満であると、該樹脂粉末(C)の添加の効果が小さく、このため0.1質量部以上であることが好ましい。一方、5質量部を越えると、該焼結性銀粒子(A)の焼結性を阻害する恐れがあるため、3質量部以下であることが好ましい。
該樹脂粉末(C)は、揮発性分散媒(B)により、膨潤しにくいことが好ましい。大きく膨潤すると、該ペースト状銀粒子組成物を、ニードル等の微細な吐出口から吐出しにくくなる。
本発明のペースト状銀粒子組成物には、本発明の目的に反せず、効果を損なわない限り、25℃で固体状の揮発性分散媒、例えば、ピロガロール、p−メチルベンジルアルコール、o−メチルベンジルアルコール、シル−3,3,5−トリメチルシクロヘキサノール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジオール、ピナコールなどのアルコール類;ビフェニル、ナフタレン、デュレンなどの炭化水素類;ジベンゾイルメタン、カルコン、アセチルシクロヘキサンなどのケトン類を少量配合してもよい。
また、該ペースト状銀粒子組成物には、本発明の目的に反せず、効果を損なわない限り、焼結性銀粒子(A)、揮発性分散媒(B)および融点を有しない樹脂粉末または融点が250℃より高い樹脂粉末(C)以外の、金属粒子または非金属系の粉体、金属酸化物、金属化合物、金属錯体、チクソ剤、安定剤、焼結促進剤等の添加物を少量添加してもよい。
本発明のペースト状銀粒子組成物は、焼結性銀粒子(A)、揮発性分散媒(B)および融点を有しない樹脂粉末または融点が250℃より高い樹脂粉末(C)を、例えば、遊星型ミキサーにて均一なペースト状になるまで撹拌混合して製造することができるが、ペースト状銀粒子組成物中における該樹脂粉末(C)の分散性向上のため、該焼結性銀粒子(A)と該揮発性分散媒(B)を予め混合してペースト化した後に、該樹脂粉末(C)を添加して混合することが好ましい。その際の混合温度は、該焼結性銀粒子(A)同士の焼結が進行しないように、30℃以下であることがより好ましい。なお、該ペースト状銀粒子組成物は、混入した粗大異物を除去するため、100〜1000メッシュのフィルターでろ過することが好ましい。
本発明のペースト状銀粒子組成物は、後記する雰囲気下で100℃以上250℃以下、好ましくは150℃以上250℃以下で加熱すると、(a)脂肪酸、(b)酸性官能基および/または塩基性官能基を有する高分子分散剤、(c)有機アミンからなる群から選択される被覆剤で表面被覆された平均粒径が0.01〜10μmである焼結性銀粒子(A)の表面被覆剤および揮発性分散媒(B)が揮発または分解により揮散して、焼結性銀粒子(A)同士が焼結して、該樹脂粉末(C)を含む空隙を有する固形状銀、詳しくは多孔質の固形状銀になる。
加熱時間は、該表面被覆剤および揮発性分散媒(B)が揮発または分解して、焼結性銀粒子(A)同士が焼結するのに充分な時間である。焼結性銀粒子(A)の種類や粒径、加熱温度、加熱時の雰囲気等によって焼結性銀粒子(A)同士が焼結するのに充分な時間は変動するので、規定しにくいが、例えば、5分ないし3時間である。かかる時間に限定されるものではない。
本発明のペースト状銀粒子組成物は、複数の金属製部材間の接合剤として使用することができる。該ペースト状銀粒子組成物を金属製部材(D1)に吐出、スクリーン印刷またはステンシル印刷等により塗布し、金属製部材(D2)を密接させた後、100℃以上250℃以下、好ましくは150℃以上250℃以下で加熱することにより、揮発性分散媒(B)が揮発または分解して揮散し、焼結性銀粒子(A)同士が焼結して、該樹脂粉末(C)を含む空隙を有する固形状銀、詳しくは多孔質の固形状銀となり、金属製部材(D1)と金属製部材(D2)を強固に接合することができる。脂肪酸(a)、高分子分散剤(b)および有機アミン(c)からなる群から選択される被覆剤で表面被覆された平均粒径が0.01〜10μmである焼結性銀粒子(A)同士が焼結する際には、該焼結性銀粒子(A)の該表面被覆剤も揮発または分解して揮散することが好ましい。
本発明のペースト状銀粒子組成物の、(a)脂肪酸、(b)酸性官能基および/または塩基性官能基を有する高分子分散剤、(c)有機アミン(含窒素有機化合物)からなる群から選択される被覆剤で表面被覆された平均粒径が0.01〜10μmである焼結性銀粒子(A)の表面被覆剤の量は、熱重量分析(TGA)等により容易に測定することができる。
金属製部材(D1)と金属製部材(D2)は、材質、形状、サイズ、表面処理等が同一であっても異なっていてもよく、そのような材質として、金、銀、銅、白金、パラジウム、またはそれらの合金が例示されるが、金、銀、またはそれらの合金であることが好ましい。金属製部材(D1)と金属製部材(D2)は、基材としての鉄、ニッケルなどのシートまたは板等の表面に、金、銀、銅、白金、パラジウム、またはそれらの合金がメッキ状に施されたものであってもよい。また、金属製部材(D1)と金属製部材(D2)の形状として、シート状、平板状、ブロック状、チップ状が例示される。
金属製部材(D1)がリードフレームまたは回路基板の金属部分であり、金属製部材(D2)が半導体素子の金属部分である場合には、このようにして接合した電子装置は、リードフレームもしくは回路基板の金属部分と半導体素子の金属部分間の接合層の熱伝導性、電気伝導性、接着強さ、特には、高温エージング試験後の接着強さが優れ、安定しているので、電子装置、特には半導体装置の特性の安定性が優れるという効果がある。
本発明のペースト状銀粒子組成物を加熱する際の雰囲気は、大気,空気のような充分量の酸素を含む酸化性ガスが好ましい。金属製部材(D1、D2)が酸化されやすい銅を含む場合は、水素ガスを含む還元性ガスが好ましく、また、大気等の酸化性ガス中で焼結性銀粒子(A)を焼結した後、還元性ガス中で還元してもよい。
(a)脂肪酸、(b)酸性官能基および/または塩基性官能基を有する高分子分散剤、(c)有機アミンからなる群から選択される被覆剤で表面被覆された平均粒径が0.01〜10μmである焼結性銀粒子(A)同士が焼結してできた焼結物、すなわち、空隙を有する固形状銀、詳しくは多孔質の固形状銀は、導電性および熱伝導性に優れている。具体的には、その体積抵抗率は1×10-5Ω・cm以下であることが好ましく、熱伝導性は100W/m・K以上であることが好ましい。
このように本発明のペースト状銀粒子組成物は、その焼結物が優れた導電性と熱伝導性(放熱性)を有し、さらには焼結途上で接触していた金属部材への優れた接着性、特には、高温エージング試験後でも安定した接着強さを有するので、半導体素子の金属部分、チップ部品の金属部分、リードフレーム、回路基板上の電極等金属部分での接合剤、被覆剤として好適に用いることができる。そのため電子部品、電子装置、電気部品、電気装置等の製造に有用であり、コンデンサ、抵抗等のチップ部品と回路基板との接合;発光ダイオード、レーザーダイオード、メモリ、IGBT、CPU等の半導体素子の金属部分とリードフレームもしくは回路基板の金属部分との接合;高発熱のCPUチップと冷却板との接合に有用である。
発光ダイオード素子はLEDチップとも称され、電子装置の一種である発光ダイオード装置は、LEDチップがリードフレームもしくは回路基板とボンディング(接合)されており、本発明のペースト状銀粒子組成物はボンディング材(接合剤)として使用できる。本発明のペースト状銀粒子組成物により接合する部分の発光ダイオード素子の金属部分、リードフレーム、回路基板の金属部分の材質は、耐光性、耐熱性等を有し接続信頼性が高い、金、銀、銅、パラジウム、白金、それら金属の合金であることが好ましく、または、それら金属またはそれら金属の合金によりメッキされていることが好ましい。発光ダイオード装置の形態は限定されず、砲弾型、フラット型、チップ型、アレイ等が例示される。
発光ダイオード素子を構成する化合物半導体として、目的とする発光ピーク波長により変わるが、GaAlAs、GaInP、GaAsP、AlGaInP、GaP、InGaN、GaN、AlN等を使用することができる。なお、発光ダイオード素子が発する光の波長には通常ある程度の幅があり、発光ピーク波長はその内で最も大きい発光強度を示す波長である。発光ピーク波長は、分光光度計により発光スペクトルを測定して容易に知ることができる。また、各成分の比率を選択することにより、発光量や発光ピーク波長を変えることができる。
また、本発明のペースト状銀粒子組成物の焼結物は、焼結時に接触していた金属製部材に対して優れた接着性を有し、しかも、極めて高い導電性および熱伝導性を有するため、高周波数で動作し発熱量の大きいCPUの他、数百ボルトから数千ボルトの高電圧で動作し発熱量が多く、動作温度も高温となる電力用半導体素子(パワー半導体素子)、例えば、MOSFET(電界効果トランジスタ)、IGBT(絶縁ゲートバイポーラトランジスタ)等のトランジスタ、LTT(光トリガサイリスタ)、GTO(ゲートターンオフサイリスタ)、トライアック等のサイリスタと、リードフレームまたは回路基板との接合に好適に用いることができる。
なお、上記パワー半導体素子は、通常、高温動作が可能な窒化アルミニウム、窒化ガリウム、窒化インジウム等の窒化物半導体素子が好適である。
本発明の実施例と比較例を掲げる。実施例と比較例中、部とあるのは質量部を意味し、平均粒径は、レーザ回折散乱式粒度分布測定装置を用いて測定した粒度分布の体積基準の積算分率50%値、すなわち、メジアン径(D50値)を意味する。実施例と比較例中での加熱は、強制循環式オーブン内での加熱であり、強制循環式オーブン内の雰囲気は、断りがない限りは大気である。その他の試験雰囲気、測定雰囲気も、断りがない限りは大気である。
実施例と比較例中の銀粒子は銀粒子メーカー品である。但し、実施例3および実施例4中の、平均粒径が1.2μmである粒状の銀粒子は、自社出願である特願2012−201391(特開2014−55332)の実施例に準じて自ら作製したものである。また、実施例と比較例中の樹脂粉末は、樹脂粉末メーカー品であり、特性等をまとめて下記している。
焼結性銀粒子の被覆剤量、樹脂粉末が粉末であることの確認、樹脂粉末の平均粒径、粒子形状、融点、ガラス転移点、比重および熱分解温度(5%質量減少)、ペースト状銀粒子組成物の吐出性兼保存安定性、加熱して生成した銀焼結物の体積抵抗率と熱伝導率、および、加熱して接合した接合体の接着強さおよび高温エージング試験後の接着強さは以下の方法により測定した。断りがない限り、加熱雰囲気は大気であり、測定は大気中で室温(約25℃)である。なお、該ペースト状銀粒子組成物は、その製造過程において混入しうる粗大異物を除去するため、製造直後に200メッシュのフィルターでろ過して用いた。
[実施例1と実施例2と実施例4のポリイミド樹脂粉末]
平均粒径6μm、粒子形状粒状、ガラス転移温度354℃、融点なし、熱分解温度530℃。メチルエチルケトン、N,N-ジメチルアセトイミド、γ-ブチルラクトンなどの双極性の非プロトン溶媒に可溶。非晶質、熱可塑性。融点を有しない熱可塑性樹脂粉末に該当。
[実施例3のエポキシ樹脂硬化物粉末]
平均粒径3μm、粒子形状球状、比重1.25、ガラス転移温度130℃、融点なし、熱分解温度300℃。融点を有しない樹脂硬化物粉末に該当。
[実施例5のポリアミドイミド樹脂粉末]
平均粒径0.4μm、粒子形状球状、ガラス転移温度285℃、融点なし、熱分解温度455℃、非晶質、熱可塑性。融点を有しない熱可塑性樹脂粉末に該当。
[実施例6のポリエーテルエーテルケトン樹脂粉末]
平均粒径20μm、粒子形状不規則形状、比重1.30、ガラス転移温度143℃、融点334℃、熱分解温度500℃以上、結晶質、熱可塑性。融点が250℃より高い熱可塑性樹脂粉末に該当。
[焼結性銀粒子の被覆剤量]
示差熱熱重量同時測定装置(島津製作所株式会社製DTG−60AH型)を用い、大気雰囲気にて、焼結性銀粒子を昇温速度20℃/分にて室温(約25℃)から500℃まで昇温して、加熱前の質量に対する減量率を被覆剤量とした。
[樹脂粉末が粉末であることの確認]
目視で粉末状であることを観察しておこなった。
[樹脂粉末の平均粒径、粒子形状、融点、ガラス転移点、比重および熱分解温度(5%質量減少)]
樹脂粉末メーカーの製品資料の特性値である。
熱分解温度の提示がない場合は、示差熱熱重量同時測定装置(島津製作所株式会社製DTG−60AH型)を用い、大気雰囲気にて、樹脂粉末を昇温速度20℃/分にて室温(約25℃)から500℃まで昇温して、加熱前の質量に対し、質量減少が5%に達した温度を熱分解温度とした。
[ペースト状銀粒子組成物の吐出性兼保存安定性]
3mlシリンジ(EFD,Inc.社製)にペースト状銀粒子組成物を1ml充填し、25℃で3日間静置した。次いで、該シリンジの先端に、内径0.14mmであり長さが13mmの金属ニードル(武蔵エンジニアリング株式会社製)を取り付け、1秒間隔で圧力200kPaの加圧有りと加圧なしを繰り返して吐出し、全量吐出するまでに、該金属ニードル内で詰まりが発生するか否かを調べた。全量吐出しても詰まりが発生しなかった場合は、詰まりなし(吐出性良好)、保存安定性良好と判断した。全量吐出する前に詰まりが発生した場合は、詰まりあり(吐出性不良)、保存安定性不良と判断した。
[加熱焼結物の体積抵抗率]
幅50mm×長さ50mm×厚さ2.0mmのガラス板上に、幅10mm×長さ10mmの開口部を有する2mm厚のメタルマスクを用いて、ペースト状銀粒子組成物を塗布し、200℃の強制循環式オーブン内で1時間加熱して板状の焼結物とした。
ガラス板からはがした該板状の焼結物について、JIS K 7194に準じた方法により体積抵抗率(単位;Ω・cm)を測定した。
[加熱焼結物の熱伝導率]
幅50mm×長さ50mm×厚さ2.0mmのガラス板上に、幅10mm×長さ10mmの開口部を有する2mm厚のメタルマスクを用いて、ペースト状銀粒子組成物を塗布し、200℃の強制循環式オーブン内で1時間加熱して板状の焼結物とした。
ガラス板からはがした該板状の焼結物について、レーザーフラッシュ法により熱伝導率(単位;W/m・K)を測定した。
[接合体の接着強さ]
幅25mm×長さ70mm×厚さ1.0mmの銀メッキ基板(銀純度99.99%)上に、10mmの間隔をおいて4つの幅2.5mm×長さ2.5mmの開口部を有する100μm厚のメタルマスクを用いて、ペースト状銀粒子組成物を塗布した。塗布したペースト状銀粒子組成物の上に、幅2.5mm×長さ2.5mm×厚さ1mmの金メッキしたシリコンチップ(金メッキチップ)をそれぞれ搭載した後、200℃の強制循環式オーブン内で1時間加熱して、該ペースト状銀粒子組成物中の焼結性銀粒子を焼結することにより、該銀メッキ基板と該金メッキチップを接合した。
かくして得られた接着強さ測定用試験体の幅2.5mm×長さ2.5mm×厚さ1mmの金メッキチップの側面を、接着強さ試験機により速度23mm/分で押圧し、接合部がせん断破壊したときの荷重をもって接着強さ(単位;MPa)とした。
[接合体の高温エージング試験後の接着強さ]
[接合体の接着強さ]において示した方法と同様にして作製した接着強さ測定用試験体を、200℃の強制循環式オーブン内に500時間放置する高温エージング試験を行った後、[接合体の接着強さ]において示した方法と同様にして接着強さを測定した。
[実施例1]
焼結性銀粒子(A)である、硝酸銀の還元法で製造され、平均粒径が1.2μmであり、表面がステアリン酸で被覆された(ステアリン酸量は0.5質量%である)粒状の銀粒子100部、揮発性分散媒(B)であるオクタンジオール(協和発酵ケミカル株式会社製)10部、および、樹脂粉末(C)である上記ポリイミド樹脂粉末0.5部、を室温(約25℃)で、ステンレス製の釜と撹拌羽を有するミキサーで撹拌して混合し、ペースト状銀粒子組成物を調製した。ミキサーの釜の内部、撹拌羽に擦り傷等の発生は見られなかった。
次いで、ペースト状銀粒子組成物の吐出性を試験し、200℃で1時間加熱して得た銀粒子の焼結物について体積抵抗率および熱伝導率を測定したところ、吐出性と保存安定性が良好であり、体積抵抗率は低く、熱伝導率は高かった。また、200℃で1時間加熱して得たこの組成物による接合体の接着強さおよび高温エージング試験後の接着強さを測定したところ、接着性は高く、高温エージング試験後の接着性も高かった。
以上の結果を表1にまとめて示した。このペースト状銀粒子組成物は、焼結物の導電性および熱伝導性が高く、しかも、金属製部材(D1)と金属製部材(D2)を強固に接合でき、高温エージング試験後の接着強さが優れ、安定している。
[実施例2]
焼結性銀粒子(A)である、硝酸銀の還元法で製造され、平均粒径が0.08μmであり、表面がオクタン酸で被覆された(オクタン酸量は1.0質量%である)球状の銀粒子100部、揮発性分散媒(B)であるオクタンジオール(協和発酵ケミカル株式会社製)14部、および、樹脂粉末(C)である上記ポリイミド樹脂粉末1.0部、を室温(約25℃)で、ステンレス製の釜と撹拌羽を有するミキサーで撹拌して混合し、ペースト状銀粒子組成物を調製した。ミキサーの釜の内部、撹拌羽に擦り傷等の発生は見られなかった。
次いで、ペースト状銀粒子組成物の吐出性を試験し、200℃で1時間加熱して得た銀粒子の焼結物について体積抵抗率および熱伝導率を測定したところ、吐出性と保存安定性が良好であり、体積抵抗率は低く、熱伝導率は高かった。また、200℃で1時間加熱して得たこの組成物による接合体の接着強さおよび高温エージング試験後の接着強さを測定したところ、接着性は高く、高温エージング試験後の接着性も高かった。
以上の結果を表1にまとめて示した。このペースト状銀粒子組成物は、焼結物の導電性および熱伝導性が高く、しかも、金属製部材(D1)と金属製部材(D2)を強固に接合でき、高温エージング試験後の接着強さも安定している。
[実施例3]
焼結性銀粒子(A)である、硝酸銀の還元法で製造され、平均粒径が1.2μmであり、表面が高分子分散剤であるビックケミー・ジャパン株式会社製のDISPERBYK-2020(酸価:37mgKOH/g、アミン価:36mgKOH/g)で被覆された(DISPERBYK-2020量は0.3量%である)粒状の銀粒子100部、揮発性分散媒(B)であるα-ターピネオール(和光純薬工業株式会社製)10部、および、樹脂粉末(C)である上記エポキシ樹脂硬化物粉末0.3部、を室温(約25℃)で、ステンレス製の釜と撹拌羽を有するミキサー内で撹拌して混合し、ペースト状銀粒子組成物を調製した。ミキサーの釜の内部、撹拌羽に擦り傷等の発生は見られなかった。
次いで、ペースト状銀粒子組成物の吐出性を試験し、200℃で1時間加熱して得た銀粒子の焼結物について体積抵抗率および熱伝導率を測定したところ、吐出性と保存安定性が良好であり、体積抵抗率は低く、熱伝導率は高かった。また、200℃で1時間加熱して得たこの組成物による接合体の接着強さおよび高温エージング試験後の接着強さを測定したところ、接着性は高く、高温エージング試験後の接着性も高かった。
以上の結果を表1にまとめて示した。このペースト状銀粒子組成物は、焼結物の導電性および熱伝導性が高く、しかも、金属製部材(D1)と金属製部材(D2)を強固に接合でき、高温エージング試験後の接着強さも安定している。
[実施例4]
焼結性銀粒子(A)である、硝酸銀の還元法で製造され、平均粒径が1.2μmであり、表面が有機アミンである1,2−プロパンジアミンで被覆された(1,2−プロパンジアミン量は0.2量%である)粒状の銀粒子100部、揮発性分散媒(B)であるα-ターピネオール(和光純薬工業株式会社製)10部、および、樹脂粉末(C)である上記ポリイミド樹脂粉末0.3部、を室温(約25℃)で、ステンレス製の釜と撹拌羽を有するミキサー内で撹拌して混合し、ペースト状銀粒子組成物を調製した。ミキサーの釜の内部、撹拌羽に擦り傷等の発生は見られなかった。
次いで、ペースト状銀粒子組成物の吐出を試験し、200℃で1時間加熱して得た銀粒子の焼結物について体積抵抗率および熱伝導率を測定したところ、吐出性と保存安定性が良好であり、体積抵抗率は低く、熱伝導率は高かった。また、200℃で1時間加熱して得たこの組成物による接合体の接着強さおよび高温エージング試験後の接着強さを測定したところ、接着性は高く、高温エージング試験後の接着性も高かった。
以上の結果を表2にまとめて示した。このペースト状銀粒子組成物は、焼結物の導電性および熱伝導性が高く、しかも、金属製部材(D1)と金属製部材(D2)を強固に接合でき、高温エージング試験後の接着強さも安定している。
[実施例5]
焼結性銀粒子(A)である、硝酸銀の還元法で製造され、平均粒径が1.2μmであり、表面がステアリン酸で被覆された(ステアリン酸量は0.5質量%である)粒状の銀粒子100部、揮発性分散媒(B)であるオクタンジオール(協和発酵ケミカル株式会社製)10部、および、樹脂粉末(C)である上記ポリアミドイミド樹脂粉末2.0部、を室温(約25℃)で、ステンレス製の釜と撹拌羽を有するミキサー内で撹拌して混合し、ペースト状銀粒子組成物を調製した。ミキサーの釜の内部、撹拌羽に擦り傷等の発生は見られなかった。
次いで、ペースト状銀粒子組成物の吐出性を試験し、200℃で1時間加熱して得た銀粒子の焼結物について体積抵抗率および熱伝導率を測定したところ、吐出性と保存安定性が良好であり、体積抵抗率は低く、熱伝導率は高かった。また、200℃で1時間加熱して得たこの組成物による接合体の接着強さおよび高温エージング試験後の接着強さを測定したところ、接着性は高く、高温エージング試験後の接着性も高かった。
以上の結果を表2にまとめて示した。このペースト状銀粒子組成物は、焼結物の導電性および熱伝導性が高く、しかも、金属製部材(D1)と金属製部材(D2)を強固に接合でき、高温エージング試験後の接着強さが優れ、安定している。
[実施例6]
焼結性銀粒子(A)である、硝酸銀の還元法で製造され、平均粒径が1.2μmであり、表面がステアリン酸で被覆された(ステアリン酸量は0.5質量%である)粒状の銀粒子100部、揮発性分散媒(B)であるオクタンジオール(協和発酵ケミカル株式会社製)10部、および、樹脂粉末(C)である上記ポリエーテルエーテルケトン樹脂粉末0.3部、を室温(約25℃)で、ステンレス製の釜と撹拌羽を有するミキサー内で撹拌して混合し、ペースト状銀粒子組成物を調製した。ミキサーの釜の内部、撹拌羽に擦り傷等の発生は見られなかった。
次いで、ペースト状銀粒子組成物の吐出性を試験し、200℃で1時間加熱して得た銀粒子の焼結物について体積抵抗率および熱伝導率を測定したところ、吐出性と保存安定性が良好であり、体積抵抗率は低く、熱伝導率は高かった。また、200℃で1時間加熱して得たこの組成物による接合体の接着強さおよび高温エージング試験後の接着強さを測定したところ、接着性は高く、高温エージング試験後の接着性も高かった。
以上の結果を表2にまとめて示した。このペースト状銀粒子組成物は、焼結物の導電性および熱伝導性が高く、しかも、金属製部材(D1)と金属製部材(D2)を強固に接合でき、高温エージング試験後の接着強さが優れ、安定している。
[比較例1]
実施例1において、樹脂粉末(C)である上記ポリイミド樹脂粉末を配合しないほかは同様にして、ペースト状銀粒子組成物を調製した。ミキサーの釜の内部、撹拌羽に擦り傷等の発生は見られなかった。
次いで、ペースト状銀粒子組成物の吐出性を試験し、200℃で1時間加熱して得た銀粒子の焼結物について体積抵抗率および熱伝導率を測定したところ、吐出性と保存安定性が良好であり、体積抵抗率は低く、熱伝導率は高かった。また、200℃で1時間加熱して得たこの組成物による接合体の接着強さおよび高温エージング試験後の接着強さを測定したところ、接着性は高かったが、高温エージング試験後の接着性が低かった。
以上の結果を表3にまとめて示した。このペースト状銀粒子組成物は、焼結物の導電性および熱伝導性が高く、金属製部材(D1)と金属製部材(D2)を強固に接合できるが、高温エージング試験後の接着強さが安定しない。
[比較例2]
焼結性銀粒子(A)である、硝酸銀の還元法で製造され、平均粒径が1.2μmであり、表面がステアリン酸で被覆された(ステアリン酸量は0.5質量%である)粒状の銀粒子100部、揮発性分散媒(B)であるオクタンジオール(協和発酵ケミカル株式会社製)10部、および、セラミックであるSIC粒子(平均粒径3μm、粒子形状不規則形状、融点なし、熱分解温度はなしである)1.0部、を室温(約25℃)で、ステンレス製の釜と撹拌羽を有するミキサーで撹拌して混合し、ペースト状銀粒子組成物を調製した。しかし、ミキサーの釜の内部、撹拌羽に擦り傷の発生が見られた。
次いで、ペースト状銀粒子組成物の吐出性を試験し、200℃で1時間加熱して得た銀粒子の焼結物について体積抵抗率および熱伝導率を測定したところ、吐出性と保存安定性が良好であり、体積抵抗率は低く、熱伝導率は高かった。また、200℃で1時間加熱して得たこの組成物による接合体の接着強さおよび高温エージング試験後の接着強さを測定したところ、接着性は高く、高温エージング試験後の接着性も高かった。
以上の結果を表3にまとめて示した。このペースト状銀粒子組成物は、焼結物の導電性および熱伝導性が高く、金属製部材(D1)と金属製部材(D2)を強固に接合でき、高温エージング試験後の接着強さも安定しているが、ミキサーの釜の内部と撹拌羽を傷つけるという問題がある。
[比較例3]
焼結性銀粒子(A)である、硝酸銀の還元法で製造され、平均粒径が1.2μmであり、表面がステアリン酸で被覆された(ステアリン酸量は0.5質量%である)粒状の銀粒子100部、揮発性分散媒(B)であるオクタンジオール(協和発酵ケミカル株式会社製)10部、および、樹脂粉末であるポリエチレン樹脂粉末(平均粒径10μm、融点は110℃、熱分解温度は270℃である)0.5部、を室温(約25℃)で、ステンレス製の釜と撹拌羽を有するミキサーで撹拌して混合し、ペースト状銀粒子組成物を調製した。ミキサーの釜の内部、撹拌羽に擦り傷等の発生は見られなかった。
次いで、ペースト状銀粒子組成物の吐出性を試験し、200℃で1時間加熱して得た銀粒子の焼結物について体積抵抗率および熱伝導率を測定したところ、吐出性と保存安定性が良好であり、体積抵抗率は低く、熱伝導率は高かった。また、200℃で1時間加熱して得たこの組成物による接合体の接着強さおよび高温エージング試験後の接着強さを測定したところ、接着性は高かったが、高温エージング試験後の接着性が低かった。
以上の結果を表3にまとめて示した。このペースト状銀粒子組成物は、焼結物の導電性および熱伝導性が高く、金属製部材(D1)と金属製部材(D2)を強固に接合できるが、高温エージング試験後の接着強さが安定しない。
[参考例]
[熱硬化性液状エポキシ樹脂組成物の調製]
遊星式ミキサー中で、三菱化学株式会社製多官能タイプエポキシ樹脂(商品名:jER152、粘度1.5Pa・s(52℃)、エポキシ当量177g)97部、硬化剤として三菱化学株式会社製の2−フェニル−4−メチル−5−ヒドロキシメチルイミダゾール3部を均一に混合することにより、25℃で液状の熱硬化性エポキシ樹脂組成物を調製した。このエポキシ樹脂組成物を200℃で1時間加熱して生成した硬化物のガラス転移温度は、178℃であった。
[比較例4]
遊星式ミキサー内で、硝酸銀の湿式還元法で製造され,平均粒径が1.2μmであり,表面がオレイン酸で被覆された(オレイン酸量は0.5質量%である)粒状の加熱焼結性銀粒子100.0部、揮発性分散媒としてオクタンジオール(協和発酵ケミカル株式会社製)12.0部、および、参考例で調製した25℃で液状の熱硬化性液状エポキシ樹脂組成物1.0部を均一に混合してペースト状銀粒子組成物を調製した。ミキサーの釜の内部、撹拌羽に擦り傷等の発生は見られなかった。
このペースト状銀粒子組成物の吐出性を試験し、200℃で1時間加熱して得た銀粒子の焼結物について、体積抵抗率、熱伝導率を測定したところ、体積抵抗率は低く、熱伝導率は高いが、吐出性と保存安定性は不良であった。また、このペースト状銀粒子組成物による接合体の接着強さおよび高温エージング試験後の接着強さを測定したところ、高温エージング試験後の接着性はほぼ高かった。
以上の結果を表4にまとめて示した。このペースト状銀粒子組成物は、銀粒子の焼結物の導電性、熱伝導性は高いものの、吐出性と保存安定性が不良であった。ペースト状銀粒子組成物の調製後、経時的に熱硬化性液状エポキシ樹脂組成物がシリンジ内でゲル化したものと思われる。
[比較例5]
遊星式ミキサー内で、硝酸銀の湿式還元法で製造され,平均粒径が1.2μmであり,表面がオレイン酸で被覆された(オレイン酸量は0.5質量%である)粒状の加熱焼結性銀粒子100.0部、揮発性分散媒としてオクタンジオール(協和発酵ケミカル株式会社製)12.0部、および、参考例で調製した25℃で液状の熱硬化性液状エポキシ樹脂組成物5.5部を均一に混合してペースト状銀粒子組成物を調製した。ミキサーの釜の内部、撹拌羽に擦り傷等の発生は見られなかった。
このペースト状銀粒子組成物の吐出性を試験し、200℃で1時間加熱して得た銀粒子の焼結物について、体積抵抗率、熱伝導率を測定したところ、体積抵抗率は低く、熱伝導率は高いが、吐出性は不良であった。また、このペースト状銀粒子組成物による接合体の接着強さおよび高温エージング試験後の接着強さを測定したところ、高温エージング試験後の接着性はほぼ高かった。
以上の結果を表4にまとめて示した。このペースト状銀粒子組成物は、銀粒子の焼結物の導電性、熱伝導性は高いものの、吐出性と保存安定性が不良であった。ペースト状銀粒子組成物の調製後、経時的に熱硬化性液状エポキシ樹脂組成物がシリンジ内でゲル化したものと思われる。
本発明のペースト状銀粒子組成物は、吐出性と保存安定性が良好であり、加熱すると揮発性分散媒(B)および被覆剤が揮発または分解によって揮散し、前記焼結性銀粒子(A)同士が焼結して金属製部材(D1)と金属製部材(D2)を強固に接合し、高温エージング試験後の接着強さが優れているので、複数の金属製部材間の接合に有用である。特には、半導体素子の金属部分とリードフレームもしくは回路基板の金属部分との接合に有用である。半導体素子とリードフレーム間の接合部分は高温エージング試験後の接着強さが優れているので、信頼性が高い電子部品と電子装置の製作に有用である。
A 接着強さ測定用試験体
1 銀基板
2 ペースト状銀粒子組成物(加熱して焼結後は空隙を有する固形状銀)
3 Auメッキしたシリコンチップまたは銀チップ

Claims (13)

  1. (A)脂肪酸、高分子分散剤および有機アミンからなる群から選択される被覆剤で表面被覆された平均粒径が0.01〜10μmである焼結性銀粒子と、
    (B)揮発性分散媒と、
    (C)融点を有しない樹脂粉末または融点が250℃より高い樹脂粉末とからなることを特徴とする、ペースト状銀粒子組成物。
  2. 該樹脂粉末(C)が、平均粒径0.1〜50μmであり、熱分解温度が250℃より高く、該焼結性銀粒子(A)100質量部に対し、0.01〜5質量部である、請求項1に記載のペースト状銀粒子組成物。
  3. 前記ペースト状銀粒子組成物の100℃以上250℃以下での加熱による焼結物の体積抵抗率が1×10-5Ω・cm以下であり、かつ、熱伝導率が100W/m・K以上である、請求項1または請求項2に記載のペースト状銀粒子組成物。
  4. (A)脂肪酸、高分子分散剤および有機アミンからなる群から選択される被覆剤で表面被覆された平均粒径が0.01〜10μmである焼結性銀粒子と、
    (B)揮発性分散媒と、
    (C)融点を有しない樹脂粉末または融点が250℃より高い樹脂粉末とからなる、ペースト状銀粒子組成物を、
    金属製部材(D1)と金属製部材(D2)の間に介在させて、100℃以上250℃以下で加熱することにより、該焼結性銀粒子(A)同士の焼結物により、金属製部材(D1)と金属製部材(D2)を接合することを特徴とする、接合方法。
  5. 該樹脂粉末(C)が、平均粒径0.1〜50μmであり、熱分解温度が250℃より高く、該焼結性銀粉末(A)100質量部に対し、0.01〜5質量部である、請求項4に記載の接合方法。
  6. 金属製部材(D1)の材質が、金、銀、銅、白金、パラジウムまたはそれらの合金であり、金属製部材(D2)の材質が、金または金の合金である、請求項4または請求項5に記載の接合方法。
  7. 金属製部材(D1)が、リードフレームまたは回路基板の金属部分であり、金属製部材(D2)が半導体素子の金属部分である、請求項4から請求項6のいずれか1項に記載の接合方法。
  8. 該焼結性銀粒子(A)同士の焼結物の体積抵抗率が1×10-5Ω・cm以下であり、かつ、熱伝導率が100W/m・K以上である、請求項4から請求項7のいずれか1項に記載の接合方法。
  9. (A)脂肪酸、高分子分散剤および有機アミンからなる群から選択される被覆剤で表面被覆された平均粒径が0.01〜10μmである焼結性銀粒子と、
    (B)揮発性分散媒と、
    (C)融点を有しない樹脂粉末または融点が250℃より高い樹脂粉末とからなる、ペースト状銀粒子組成物を、半導体素子の金属部分とリードフレームもしくは金属部分を有する回路基板間に介在させた後、100℃以上250℃以下で加熱することにより、該焼結性銀粒子(A)同士の焼結物として、半導体素子の金属部分とリードフレームもしくは回路基板の金属部分を接合することを特徴とする、電子装置の製造方法。
  10. 該樹脂粉末(C)が、平均粒径0.1〜50μmであり、熱分解温度が250℃より高く、該焼結性銀粒子(A)100質量部に対し、0.01〜5質量部である、請求項9に記載の電子装置の製造方法。
  11. 該樹脂粉末(C)の融点が、ペースト状銀粒子組成物を半導体素子の金属部分とリードフレームもしくは金属部分を有する回路基板間に介在させた後、100℃以上250℃以下で加熱する際の温度よりも高い、請求項9または請求項10に記載の電子装置の製造方法。
  12. リードフレームまたは回路基板の金属部分の材質が、金、銀、銅、白金、パラジウム、またはそれらの合金であり、半導体素子の金属部分の材質が、金または金の合金である、請求項9から請求項11のいずれか1項に記載の電子装置の製造方法。
  13. 該焼結性銀粒子(A)同士の焼結物の体積抵抗率が1×10-5Ω・cm以下であり、かつ、熱伝導率が100W/m・K以上である、請求項9から請求項12のいずれか1項に記載の電子装置の製造方法。
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