<ジホスホン酸化合物(A)>
まず、一般式(1)で用いられている各記号について説明する。
R1は、炭素数1〜20の脂肪族炭化水素基(水素と炭素以外に、酸素及び/又は窒素が含まれていてもよい)である。炭化水素基は飽和又は不飽和であってよく、置換基を有していてもよく、無置換であってもよい。前記炭化水素基としては、飽和脂肪族炭化水素、不飽和脂肪族炭化水素が挙げられ、飽和脂肪族炭化水素が好ましい。脂肪族炭化水素基を酸素及び/又は窒素を含む構造としては、脂肪族炭化水素基が結合基として−O−及び/又は−NRf−(Rfは水素原子又はメチル基を表し、水素原子が好ましい。)を含む構造が好ましい。また、−O−と−NRf−は、連続しない(すなわち、隣接しない)ことが好ましい。
R1で表される脂肪族炭化水素基が有する置換基の数及び種類は、本発明の目的を阻害しない限り特に限定されず、置換基の数は、1〜8個が好ましく、1〜5個がより好ましく、1〜3個がさらに好ましい。置換基としては、例えば、アミノ基、水酸基、オキソ基、アルコキシ基(例えば、炭素数1〜6)、アミド基、アシル基(例えば、炭素数1〜6)、アシルオキシ基(例えば、炭素数1〜6)、シアノ基、ニトロ基等が挙げられる。
R1の脂肪族炭化水素基の炭素数としては、2〜14が好ましく、5〜12がより好ましく、7〜11がさらに好ましい。R1としては、炭素数2〜14の脂肪族炭化水素基(水素と炭素以外に、酸素及び/又は窒素を含む)が好ましく、炭素数5〜12の脂肪族炭化水素基(水素と炭素以外に、酸素及び/又は窒素を含む)がより好ましく、炭素数7〜11の脂肪族炭化水素基(水素と炭素以外に、酸素及び窒素を含む)がさらに好ましく、ウレタン結合を有する炭素数7〜11の脂肪族炭化水素基が特に好ましい。
R2は、−O−又は−NH−を表し、−O−であることが好ましい。
R3は、水素又はメチル基を表し、加水分解等により化合物(A)の重合性部位が脱離した場合の生体に対する刺激性の観点から、メチル基であることが好ましい。
R4及びR5は、それぞれ同一又は異なって炭素数1〜3の脂肪族炭化水素基(水素と炭素以外に、酸素が含まれていてもよい)を表す。該炭化水素基は、飽和であっても不飽和であってもよい。また、R4及びR5は、共に−CH2−であることが好ましい。
化合物(A)としては、具体的には、以下の構造式の化合物が例示される。
また、より好ましい化合物(A)としては、以下の式(1’)で表される化合物が挙げられる。
(式中、R
3は前記と同義であり、R
6、R
7及びR
8はそれぞれ同一又は異なって、炭素数1〜6のアルキレン基又は炭素数1〜6のオキシアルキレン基である。)
R6、R7及びR8の炭素数1〜6のアルキレン基としては、例えば、メチレン基、エチレン基、n−プロピレン基、イソプロピレン基、n−ブチレン基、イソブチレン基、s−ブチレン基、t−ブチレン基、n−ペンチレン基、1−メチル−n−ブチレン基、2−メチル−n−ブチレン基、3−メチル−n−ブチレン基、1,1−ジメチル−n−プロピレン基、1,2−ジメチル−n−プロピレン基、2,2−ジメチル−n−プロピレン基、1−エチル−n−プロピレン基、n−ヘキシレン基等が挙げられる。
R6、R7及びR8の炭素数1〜6のオキシアルキレン基としては、例えば、オキシメチレン基、オキシエチレン基、オキシn−プロピレン基、オキシn−ブチレン基、オキシイソブチレン基、オキシs−ブチレン基、オキシt−ブチレン基、オキシn−ペンチレン基、オキシ1−メチル−n−ブチレン基、オキシ2−メチル−n−ブチレン基、オキシ3−メチル−n−ブチレン基、オキシ1,1−ジメチル−n−プロピレン基、オキシn−ヘキシレン基等が挙げられる。
R6としては、炭素数1〜5の直鎖状のオキシアルキレン基が好ましく、炭素数1〜3の直鎖状のオキシアルキレン基がより好ましい。
R7及びR8としては、それぞれ同一又は異なって、炭素数1〜5の直鎖状のアルキレン基又は炭素数1〜5の直鎖状のオキシアルキレン基が好ましく、炭素数1〜3の直鎖状のアルキレン基又は炭素数1〜3の直鎖状のオキシアルキレン基がより好ましい。R6、R7及びR8は、置換基を有していてもよく、無置換であってもよい。置換基の種類及び数は、R1の置換基と同一である。
式(1’)で表される化合物は、ウレタン結合を有することがさらに好ましい。特に好ましい化合物(A)としては、以下の化合物が例示される。
本発明の化合物(A)は公知方法を組み合わせることにより、製造することができる。一例としては、まず、下記一般式(4)で表される化合物と、ホスホン酸ジメチル及びパラホルムアルデヒドを反応させ、下記一般式(5)で表される化合物を得る。
続いて、下記一般式(5)で表される化合物と、下記一般式(6)で表される化合物を反応させ、下記一般式(7)で表される化合物を得る。
下記一般式(7)で表される化合物と、ブロモトリメチルシランを反応させ、下記一般式(8)で表される化合物を得る。
前記式(4)〜(8)において、R1〜R3は前記と同義であり、Z1はZ2と反応可能な官能基であり、Z2はZ1と反応可能な官能基であり、Aは炭素数1〜20の脂肪族炭化水素基(水素と炭素以外に、酸素及び/又は窒素が含まれていてもよい)である。Z1とZ2については、後述する。Aの脂肪族炭化水素基は、前記R1の脂肪族炭化水素基と同様である。
一般式(4)で表される化合物とホスホン酸ジメチル及びパラホルムアルデヒドを反応させることにより、一般式(5)で表される化合物を得る方法について、説明する。
ホスホン酸ジメチルの使用量は、特に制限されないが、一般式(4)で表される化合物に対して、2.0〜10.0倍モルが好ましく、2.0〜3.0倍モルがより好ましい。
パラホルムアルデヒドの使用量は、特に制限されないが、一般式(4)で表される化合物に対して、4.0〜20.0倍モルが好ましく、4.0〜6.0倍モルがより好ましい。
一般式(4)で表される化合物とホスホン酸ジメチル及びパラホルムアルデヒドとの反応は、酸の存在下に実施することが好ましい。かかる酸としては、例えば硫酸、塩酸等の鉱酸;p−トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸等の有機酸;アルミニウムトリイソプロポキシド、チタンアセチルアセトナート、バナジウムアセチルアセトナート等のルイス酸;ケイモリブデン酸、リンタングステン酸等のヘテロポリ酸;シリカ、シリカ−アルミナ、活性白土、酸性イオン交換樹脂等の固体酸等が挙げられる。これらの中でも、反応を円滑に進行させる観点からは有機酸又は鉱酸を用いることが好ましく、有機酸を用いることがより好ましい。酸の使用量には特に制限はないが、原料の一般式(4)の化合物に対して、通常、0.0001〜40重量%の範囲であることが好ましく、反応速度及び副反応や生成物の着色抑制の観点からは、0.001〜20重量%の範囲であることがより好ましく、0.01〜20重量%の範囲であることがより好ましく、0.1〜20重量%の範囲であることがより好ましい。
一般式(4)で表される化合物とホスホン酸ジメチル及びパラホルムアルデヒドとの反応は、有機溶媒の存在下に実施することができる。かかる溶媒としては反応に悪影響を及ぼさない限り特に制限はなく、例えばベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;ジエチルエーテル、ジエチレングリコール、ジメチルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル類等が挙げられる。これらは1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。溶媒を使用する場合、その使用量に特に制限はないが、原料の一般式(4)で表される化合物に対して、通常、0.5〜20倍重量の範囲であることが好ましく、容積効率の観点からは、1〜5倍重量の範囲であることがより好ましい。
一般式(4)で表される化合物とホスホン酸ジメチル及びパラホルムアルデヒドとの反応における反応温度は、通常、40〜300℃の範囲であることが好ましく、60〜100℃の範囲であることがより好ましい。
反応終了後、反応混合液を水酸化ナトリウム水溶液、炭酸水素ナトリウム水溶液等の塩基性物質の水溶液で洗浄して残渣を除去した後、溶液を濃縮することにより、一般式(5)で表される化合物を得ることができる。
次に、一般式(5)で表される化合物と一般式(6)で表される化合物を反応させることにより、一般式(7)で表される化合物を得る方法について、説明する。
官能基Z1及び官能基Z2は、これらの反応によりエステル結合(−COO−)、アミド結合(−CONH−)又はウレタン結合(−NHCO−O−)の結合が生成するように選ばれる。これらの結合を生成させる官能基Z1及びZ2ならびにその反応方法は、当業者に周知である。例えば、エステル結合(−COO−)を形成させる場合には、Z1として−OHを選択し、Z2として、−COOH、−COOR’(R’は脂肪族炭化水素基を示す)、又は−COClを選択し、公知方法に従いエステル化反応させればよい。また、例えば、アミド結合(−CONH−)を形成させる場合には、Z1として−NH2を選択し、Z2として、−COOH、又は−COClを選択し、公知方法に従い脱水縮合反応させればよい。また、例えば、ウレタン結合(−NHCO−O−)を形成させる場合には、Z1として−OHを選択し、Z2として、−NCOを末端に有する脂肪族炭化水素基(水素と炭素以外に、酸素及び窒素が含まれていてもよい)を選択し、公知方法に従いウレタン化反応させればよい。
以下、エステル結合(−COO−)を生成させる反応について、詳細に説明する。−COO−結合を生成させる反応としては、必要に応じてエステル化触媒の存在下に一般式(6)でZ2が−COOHであるカルボン酸化合物と一般式(5)でZ1が−OHである水酸基含有化合物とを脱水縮合させる方法(以下、エステル化方法(a)と称する)、触媒存在下に一般式(6)でZ2が−COOR’(式中、R’は前記と同義である)であるエステル化合物と一般式(5)でZ1が−OHである水酸基含有化合物とをエステル交換反応させる方法(以下、エステル化方法(b)と称する)、及び必要に応じて塩基性化合物存在下に、一般式(6)でZ2が−COClである酸クロライド化合物と一般式(5)でZ1が−OHである水酸基含有化合物とを反応させる方法(以下、エステル化方法(c)と称する)が挙げられる。
以下、エステル化方法(a)について、詳細に説明する。一般式(6)でZ2が−COOHであるカルボン酸化合物の原料としての使用量に特に制限はないが、一般式(5)でZ1が−OHである水酸基含有化合物に含まれるZ1基に対して、通常、0.8〜30倍モルの範囲であることが好ましく、反応速度及び容積効率の観点からは、1〜20倍モルの範囲であることがより好ましい。但し、一般式(6)でZ2が−COOHであるカルボン酸化合物を溶媒として用いる場合は、この限りではない。
エステル化方法(a)は溶媒の存在下又は不存在下に実施することができる。かかる溶媒としては反応に悪影響を及ぼさない限り特に制限はなく、トルエン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド等が挙げられる。これらは1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。溶媒を使用する場合、その使用量に特に制限はないが、原料の一般式(5)でZ1が−OHである水酸基含有化合物に対して、通常、0.5〜50倍重量の範囲であることが好ましく、1〜20倍重量の範囲であることがより好ましく、容積効率の観点からは、さらに、3〜10倍重量の範囲であることがより好ましい。
エステル化方法(a)では、反応の進行に伴って水が副生し、反応が平衡状態となる。そのため、目的とするエステル化合物の収率向上の観点からは、かかる水を反応系外に除去しながら反応を行なうことが好ましい。水を反応系外に除去する方法には特に制限はないが、例えば、水と共沸する溶媒を共存させ、該溶媒と共沸させて反応系外に水を除去する方法が好ましく、かかる溶媒としては、例えばベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類が挙げられる。また、モレキュラーシーブ等の反応に悪影響を及ぼさない脱水剤を反応系に共存させることにより、副生する水を除去してもよい。
エステル化方法(a)で使用する酸としては、例えば硫酸、塩酸等の鉱酸;p−トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸等の有機酸;アルミニウムトリイソプロポキシド、チタンアセチルアセトナート、バナジウムアセチルアセトナート等のルイス酸;ケイモリブデン酸、リンタングステン酸等のヘテロポリ酸;シリカ、シリカ−アルミナ、活性白土、酸性イオン交換樹脂等の固体酸等が挙げられる。これらの中でも、反応を円滑に進行させる観点からは有機酸又は鉱酸を用いることが好ましい。酸の使用量には特に制限はないが、原料の一般式(5)でZ1が−OHである水酸基含有化合物に対して、通常、0.0001〜40重量%の範囲であることが好ましく、反応速度及び副反応や生成物の着色抑制の観点からは、0.001〜20重量%の範囲であることがより好ましく、0.01〜20重量%の範囲であることがより好ましく、0.1〜20重量%の範囲であることがより好ましい。
エステル化方法(a)は、重合禁止剤の存在下に実施することが好ましい。かかる重合禁止剤としては、例えばヒドロキノン、ヒドロキノンモノメチルエーテル、2,5−ジ−t−ブチルヒドロキノン等のヒドロキノン類;p−ベンゾキノン等のキノン類;α−ナフトール、β−ナフトール等のナフトール類;カテコール、3,5−ジ−t−ブチルカテコール等のカテコール類;ピロガロール、フェニルエチルピロガロール等のピロガロール類;2,6−ジ−t−ブチルアニソール等のアニソール類等が挙げられる。これらは1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
エステル化方法(a)において、反応温度は、通常、20〜300℃の範囲であることが好ましく、60〜200℃の範囲であることがより好ましい。また、エステル化方法(a)は、空気雰囲気下でも、窒素、アルゴン等の不活性ガス雰囲気下でも実施することができる。さらに、エステル化方法(a)は、大気圧下で行なってもよく、減圧下で行なってもよい。
反応終了後、使用した酸に応じ、適宜、反応混合液を水酸化ナトリウム水溶液、炭酸水素ナトリウム水溶液等の塩基性物質の水溶液で洗浄して酸を除去するか、又はろ過、デカンテーション等により固体酸を除去した後、濃縮し、再結晶、蒸留、カラムクロマトグラフィー等の通常の精製手段で精製することによって、目的とする一般式(7)でR2が−O−であるエステル化合物を分離取得することができる。
次に、エステル化方法(b)について説明する。エステル化方法(b)で使用する一般式(6)でZ2が−COOR’(式中、R’は前記と同義である)であるエステル化合物において、R’の例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基等が挙げられる。これらの中でも、メチル基又はエチル基が好ましい。
一般式(6)でZ2が−COOR’(式中、R’は前記と同義である)であるエステル化合物の使用量に特に制限はないが、一般式(5)でZ1が−OHである水酸基含有化合物に含まれるZ1基に対して、通常、0.8〜50倍モルの範囲であることが好ましく、反応速度の観点から、1〜30倍モルの範囲であることがより好ましい。
エステル化方法(b)は、溶媒の存在下又は不存在下に実施することができる。使用できる溶媒は反応に悪影響を及ぼさない限り特に制限はなく、トルエン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド等が挙げられる。これらは1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。溶媒を使用する場合、その使用量に特に制限はないが、一般式(5)でZ1が−OHである水酸基含有化合物に対して、通常、0.5〜50倍重量の範囲であることが好ましく、1〜20倍重量の範囲であることがより好ましく、容積効率の観点からは、さらに、3〜10倍重量の範囲であることがより好ましい。
エステル化方法(b)では、反応の進行に伴い、一般式(6)でZ2が−COOR’(式中、R’は前記と同義である)であるエステル化合物の有するR’部分に対応したアルコール(例えばR’がメチル基である場合にはメタノール)が副生し、反応が平衡状態となる。そのため、目的とするエステル化合物の収率向上の観点からは、かかるアルコールを反応系外に除去しながら反応を行なうことが好ましい。アルコールを反応系外に除去する方法としては、例えば副生するアルコールと共沸する溶媒を使用して、かかるアルコールを共沸により反応系外に留去させながら反応を行なう方法等が挙げられる。
エステル化方法(b)で使用する触媒としては、例えば硫酸、塩酸等の鉱酸;硫酸水素ナトリウム、リン酸一水素ナトリウム、リン酸二水素カリウム等の鉱酸の塩;メタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸等の有機酸;ピリジニウムp−トルエンスルホネート等の有機酸の塩;ジブチルスズオキシド、ジブチルスズジラウレート、ジブチルスズジオクチレート、ジブチルスズジ(2−エチルヘキサノエート)、ジブチルスズオキシド等の有機スズ化合物;アルミニウムトリイソプロポキシド、チタンアセチルアセトナート、バナジウムアセチルアセトナート等のルイス酸;ケイモリブデン酸、リンタングステン酸等のヘテロポリ酸;シリカ、シリカ−アルミナ、活性白土、酸性型イオン交換樹脂等の固体酸;ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、ナトリウムt−ブトキシド、カリウムt−ブトキシド等のアルカリ金属アルコキシド;水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カルシウム等のアルカリ金属又はアルカリ土類金属の水酸化物;炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム等のアルカリ金属の炭酸塩又は炭酸水素塩;酢酸ナトリウム、酢酸カリウム等のアルカリ金属の酢酸塩等が挙げられる。これらの中でも、反応速度及び副反応の抑制の観点からは、鉱酸、有機酸又は有機スズ化合物を用いることが好ましい。
触媒の使用量は、一般式(5)でZ1が−OHである水酸基含有化合物に対して、0.0001〜40重量%の範囲であることが好ましく、反応速度、副反応の抑制及び生成物の着色抑制の観点からは、0.001〜20重量%の範囲であることがより好ましい。
エステル化方法(b)は、重合禁止剤の存在下に実施することが好ましい。重合禁止剤としては、例えばヒドロキノン、ヒドロキノンモノメチルエーテル、2,5−ジ−t−ブチルヒドロキノン等のヒドロキノン類;p−ベンゾキノン等のキノン類;α−ナフトール、β−ナフトール等のナフトール類;カテコール、3,5−ジ−t−ブチルカテコール等のカテコール類;ピロガロール、フェニルエチルピロガロール等のピロガロール類;2,6−ジ−t−ブチルアニソール等のアニソール類;p−ヒドロキシジフェニルアミン、フェノチアジン、ジエチルヒドロキシルアミン等のアミン類;2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−N−オキシル、4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−N−オキシル等のN−オキシル類等が挙げられる。これらは1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。但し、触媒として酸を使用する場合には、アミン類及びN−オキシル類以外の重合禁止剤を使用することが好ましい。
エステル化方法(b)において、反応温度は、通常、20〜300℃の範囲であることが好ましく、60〜200℃の範囲であることがより好ましい。また、エステル化方法(b)は、空気雰囲気下でも、窒素、アルゴン等の不活性ガス雰囲気下でも実施することができる。さらに、エステル化方法(b)は大気圧下で行なってもよく、減圧下で行なってもよい。
反応終了後、使用した触媒に応じ、適宜、水酸化ナトリウム水溶液、炭酸水素ナトリウム水溶液等の塩基性物質の水溶液もしくは硫酸、塩酸等の酸性物質の水溶液で洗浄するか、又はろ過、デカンテーションにより触媒成分を除去した後、濃縮し、再結晶、蒸留、カラムクロマトグラフィー等の通常の精製手段で精製することによって、目的とする一般式(7)でR2が−O−であるエステル化合物を分離取得することができる。
次に、エステル化方法(c)について説明する。一般式(6)でZ2が−COClである酸クロライド化合物の使用量に特に制限はないが、一般式(5)でZ1が−OHである水酸基含有化合物に含まれるZ1基に対して、通常、0.5〜50倍重量の範囲であることが好ましく、1〜20倍重量の範囲であることがより好ましく、容積効率の観点からは、さらに、3〜10倍重量の範囲であることがより好ましい。
エステル化方法(c)は、溶媒の存在下又は不存在下に実施することができる。使用できる溶媒は反応に悪影響を及ぼさない限り特に制限はなく、トルエン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、水等が挙げられ、水溶液であることが好ましい。これらは1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。溶媒を使用する場合、その使用量に特に制限はないが、一般式(5)でZ1が−OHである水酸基含有化合物に対して、通常、0.5〜300倍重量の範囲であることが好ましく、1〜150倍重量の範囲であることがより好ましく、容積効率の観点からは、さらに、1〜100倍重量の範囲であることがより好ましい。
エステル化方法(c)は塩基性化合物の存在下又は不存在下に行うことができる。塩基性化合物としては、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリn−プロピルアミン、トリイソプロピルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、ピリジン、2−メチルピリジン、3−メチルピリジン、4−メチルピリジン、4−ジメチルアミノピリジン、2,6−ジメチルピリジン、2,4,6−トリメチルピリジン、キノリン、イソキノリン、1,8−ジアザビシクロ〔4.3.0〕ノネン−5、1,8−ジアザビシクロ〔5.4.0〕ウンデセン−7、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド等を使用することができ、これらのうち、トリエチルアミン、ピリジン、4−ジメチルアミノピリジンが好ましい。塩基性化合物の使用量に特に制限はないが、一般式(5)でZ1が−OHである水酸基含有化合物に含まれるZ1基に対して、0.8〜20倍モルであることが好ましく、1〜10倍モルであることがより好ましい。これらの塩基性化合物は単独で、又は2種以上を混合して使用してもよい。また、これらの塩基性化合物を溶媒として使用してもよい。
エステル化方法(c)は、重合禁止剤の存在下に実施することが好ましい。重合禁止剤としては、例えばヒドロキノン、ヒドロキノンモノメチルエーテル、2,5−ジ−t−ブチルヒドロキノン等のヒドロキノン類;p−ベンゾキノン等のキノン類;α−ナフトール、β−ナフトール等のナフトール類;カテコール、3,5−ジ−t−ブチルカテコール等のカテコール類;ピロガロール、フェニルエチルピロガロール等のピロガロール類;2,6−ジ−t−ブチルアニソール等のアニソール類;p−ヒドロキシジフェニルアミン、フェノチアジン、ジエチルヒドロキシルアミン等のアミン類;2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−N−オキシル、4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−N−オキシル等のN−オキシル類等が挙げられる。これらは一種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
エステル化方法(c)において、反応温度は、通常、−40〜100℃の範囲であることが好ましく、−20〜60℃の範囲であることがより好ましい。
反応終了後、酸処理により一般式(7)でR2が−O−であるエステル化合物の塩基付加塩から目的とする一般式(7)でR2が−O−であるエステル化合物を遊離させ、水で抽出し、得られた溶液を濃縮した後、再結晶、蒸留、カラムクロマトグラフィー等の通常の精製手段で精製することによって、目的とする一般式(7)でR2が−O−であるエステル化合物を分離取得することができる。
以下、アミド結合(−CONH−)を生成させる反応について、詳細に説明する。−CONH−結合を生成させる反応としては、必要に応じてアミド化触媒の存在下に一般式(6)でZ2が−COOHであるカルボン酸化合物と一般式(5)でZ1が−NH2であるアミノ基含有化合物とを脱水縮合させる方法(以下、アミド化方法(a)と称する)、及び必要に応じて塩基性化合物存在下に、一般式(6)でZ2が−COClである酸クロライド化合物と一般式(5)でZ1が−NH2であるアミノ基含有化合物とを反応させる方法(以下、アミド化方法(b)と称する)が挙げられる。
以下、アミド化方法(a)について、詳細に説明する。一般式(6)でZ2が−COOHであるカルボン酸化合物の原料としての使用量に特に制限はないが、一般式(5)でZ1が−NH2であるアミノ基含有化合物に含まれるZ1基に対して、通常、0.8〜30倍モルの範囲であることが好ましく、反応速度及び容積効率の観点からは、1〜20倍モルの範囲であることがより好ましい。但し、一般式(6)でZ2が−COOHであるカルボン酸化合物を溶媒として用いる場合は、この限りではない。
アミド化方法(a)は溶媒の存在下又は不存在下に実施することができる。かかる溶媒としては反応に悪影響を及ぼさない限り特に制限はなく、トルエン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド等が挙げられる。これらは1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。溶媒を使用する場合、その使用量に特に制限はないが、原料の一般式(5)でZ1が−NH2であるアミノ基含有化合物に対して、通常、0.5〜50倍重量の範囲であることが好ましく、1〜20倍重量の範囲であることがより好ましく、容積効率の観点からは、さらに、3〜10倍重量の範囲であることがより好ましい。
アミド化方法(a)では、反応の進行に伴って水が副生し、反応が平衡状態となる。そのため、目的とするアミド化合物の収率向上の観点からは、かかる水を反応系外に除去しながら反応を行なうことが好ましい。水を反応系外に除去する方法には特に制限はないが、例えば、水と共沸する溶媒を共存させ、該溶媒と共沸させて反応系外に水を除去する方法が好ましく、かかる溶媒としては、例えばベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類が挙げられる。また、モレキュラーシーブ等の反応に悪影響を及ぼさない脱水剤を反応系に共存させることにより、副生する水を除去してもよい。
アミド化方法(a)で使用する酸としては、例えば硫酸、塩酸等の鉱酸;p−トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸等の有機酸;アルミニウムトリイソプロポキシド、チタンアセチルアセトナート、バナジウムアセチルアセトナート等のルイス酸;ケイモリブデン酸、リンタングステン酸等のヘテロポリ酸;シリカ、シリカ−アルミナ、活性白土、酸性イオン交換樹脂等の固体酸等が挙げられる。これらの中でも、反応を円滑に進行させる観点からは有機酸又は鉱酸を用いることが好ましい。酸の使用量には特に制限はないが、原料の一般式(5)でZ1が−NH2であるアミノ基含有化合物に対して、通常、0.0001〜40重量%の範囲であることが好ましく、反応速度及び副反応や生成物の着色抑制の観点からは、0.001〜20重量%の範囲であることがより好ましく、0.01〜20重量%の範囲であることがより好ましく、0.1〜20重量%の範囲であることがより好ましい。
アミド化方法(a)は、重合禁止剤の存在下に実施することが好ましい。かかる重合禁止剤としては、例えばヒドロキノン、ヒドロキノンモノメチルエーテル、2,5−ジ−t−ブチルヒドロキノン等のヒドロキノン類;p−ベンゾキノン等のキノン類;α−ナフトール、β−ナフトール等のナフトール類;カテコール、3,5−ジ−t−ブチルカテコール等のカテコール類;ピロガロール、フェニルエチルピロガロール等のピロガロール類;2,6−ジ−t−ブチルアニソール等のアニソール類等が挙げられる。これらは1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
アミド化方法(a)において、反応温度は、通常、20〜300℃の範囲であることが好ましく、60〜200℃の範囲であることがより好ましい。また、アミド化方法(a)は、空気雰囲気下でも、窒素、アルゴン等の不活性ガス雰囲気下でも実施することができる。さらに、アミド化方法(a)は、大気圧下で行なってもよく、減圧下で行なってもよい。
反応終了後、使用した酸に応じ、適宜、反応混合液を水酸化ナトリウム水溶液、炭酸水素ナトリウム水溶液等の塩基性物質の水溶液で洗浄して酸を除去するか、又はろ過、デカンテーション等により固体酸を除去した後、濃縮し、再結晶、蒸留、カラムクロマトグラフィー等の通常の精製手段で精製することによって、目的とする一般式(7)でR2が−NH−であるアミド化合物を分離取得することができる。
次に、アミド化方法(b)について説明する。一般式(6)でZ2が−COClである酸クロライド化合物の使用量に特に制限はないが、一般式(5)でZ1が−NH2であるアミノ基含有化合物に含まれるZ1基に対して、通常、0.5〜50倍重量の範囲であることが好ましく、1〜20倍重量の範囲であることがより好ましく、容積効率の観点からは、さらに、3〜10倍重量の範囲であることがより好ましい。
アミド化方法(b)は、溶媒の存在下又は不存在下に実施することができる。使用できる溶媒は反応に悪影響を及ぼさない限り特に制限はなく、トルエン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、水等が挙げられ、水溶液であることが好ましい。これらは1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。溶媒を使用する場合、その使用量に特に制限はないが、一般式(5)でZ1が−NH2であるアミノ基含有化合物に対して、通常、0.5〜300倍重量の範囲であることが好ましく、1〜150倍重量の範囲であることがより好ましく、容積効率の観点からは、さらに、1〜100倍重量の範囲であることがより好ましい。
アミド化方法(b)は塩基性化合物の存在下又は不存在下に行うことができる。塩基性化合物としては、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリn−プロピルアミン、トリイソプロピルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、ピリジン、2−メチルピリジン、3−メチルピリジン、4−メチルピリジン、4−ジメチルアミノピリジン、2,6−ジメチルピリジン、2,4,6−トリメチルピリジン、キノリン、イソキノリン、1,8−ジアザビシクロ〔4.3.0〕ノネン−5、1,8−ジアザビシクロ〔5.4.0〕ウンデセン−7、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド等を使用することができ、これらのうち、トリエチルアミン、ピリジン、4−ジメチルアミノピリジンが好ましい。塩基性化合物の使用量に特に制限はないが、一般式(5)でZ1が−NH2であるアミノ基含有化合物に含まれるZ1基に対して、0.8〜20倍モルであることが好ましく、1〜10倍モルであることがより好ましい。これらの塩基性化合物は単独で、又は2種以上を混合して使用してもよい。また、これらの塩基性化合物を溶媒として使用してもよい。
アミド化方法(b)は、重合禁止剤の存在下に実施することが好ましい。重合禁止剤としては、例えばヒドロキノン、ヒドロキノンモノメチルエーテル、2,5−ジ−t−ブチルヒドロキノン等のヒドロキノン類;p−ベンゾキノン等のキノン類;α−ナフトール、β−ナフトール等のナフトール類;カテコール、3,5−ジ−t−ブチルカテコール等のカテコール類;ピロガロール、フェニルエチルピロガロール等のピロガロール類;2,6−ジ−t−ブチルアニソール等のアニソール類;p−ヒドロキシジフェニルアミン、フェノチアジン、ジエチルヒドロキシルアミン等のアミン類;2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−N−オキシル、4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−N−オキシル等のN−オキシル類等が挙げられる。これらは1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
アミド化方法(b)において、反応温度は、通常、−40〜100℃の範囲であることが好ましく、−20〜60℃の範囲であることがより好ましい。
反応終了後、酸処理により一般式(7)でR2が−NH−であるアミド化合物の塩基付加塩から目的とする一般式(7)でR2が−NH−であるアミド化合物を遊離させ、水で抽出し、得られた溶液を濃縮した後、再結晶、蒸留、カラムクロマトグラフィー等の通常の精製手段で精製することによって、目的とする一般式(7)でR2が−NH−であるアミド化合物を分離取得することができる。
以下、ウレタン結合(−NHCO−O−)を生成させる反応(以下、ウレタン化反応)について、詳細に説明する。−NHCO−O−結合を生じさせるウレタン化反応は、特公昭63−020203号公報に記載の方法を参照することができる。
ウレタン化反応には触媒を用いることができ、触媒としては、有機金属化合物及びアミン類が使用できる。
有機金属化合物としては、ウレタン化反応に対して触媒活性のある有機金属化合物が使用できる。具体的には、ナフテン酸コバルト等の有機コバルト化合物、テトラ−n−ブチルスズ、トリメチルスズヒドロキシド、ジメチル二塩化スズ、ジラウリン酸ジ−n−ブチルスズ、オクトエ酸スズ等の有機スズ化合物等が挙げられる。アミン類としては、トリエチルアミン、トリブチルアミン、トリオクチルアミン等が挙げられる。
触媒の使用量は、原料である一般式(5)で表される化合物1モルに対して、0.000001〜1モルの範囲であることが好ましく、0.00001〜0.01モルの範囲であることがより好ましい。触媒の使用量が0.000001モル未満の場合、触媒の効率が低下し反応時間が長くなるおそれがある。一方、1モルを超えると、使用量の増加による効果が得られなくなる。
また、本反応は、重合禁止剤の存在下に実施することが好ましい。かかる重合禁止剤としては、例えばハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、2,5−ジ−t−ブチルハイドロキノン等のハイドロキノン類;p−ベンゾキノン等のキノン類;α−ナフトール、β−ナフトール等のナフトール類;カテコール、3,5−ジ−t−ブチルカテコール等のカテコール類;ピロガロール、フェニルエチルピロガロール等のピロガロール類;2,6−ジ−t−ブチルアニソール等のアニソール類等が挙げられる。これらは1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
ウレタン化反応は、溶媒の存在下又は不存在下に実施することができる。使用できる溶媒としては、一般式(5)で表される化合物の溶解度が、好ましくは0.5質量%以上、より好ましくは10質量%以上である溶媒が挙げられる。具体的には、トルエン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、酢酸エチル、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジイソプロピルエーテル、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等が挙げられる。精製での溶媒除去のしやすさから、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテルが好ましい。溶媒は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
ウレタン化反応において、反応温度は、通常、0〜150℃程度が好ましく、より好ましくは10〜100℃である。温度が低すぎると、反応速度が低下するため反応時間が長くなる。また、反応温度が高いと、重合等の副反応が進みやすくなり、生成物の純度が大幅に低下する。
ウレタン化反応の際の圧力は、絶対圧力で0.01〜10MPa程度が好ましく、より好ましくは常圧(101.3kPa)〜1MPaであり、もっとも好ましいのは、常圧である。圧力が高すぎると、安全上問題があり、特別な装置が必要となるため産業上有用ではない。圧力が10MPa以下であると、安全性が確保されるので特別な装置が不要となり、産業上有用である。
反応終了後、溶液を濃縮した後、再結晶、蒸留、カラムクロマトグラフィー等の通常の精製手段で精製することによって、目的とする一般式(7)でR2が−O−又は−NH−であり、R1にウレタン結合を有するウレタン化合物を得ることができる。
次に一般式(7)で表される化合物と、ブロモトリメチルシランを反応させることにより、一般式(8)で表される化合物を得る方法について、説明する。
ブロモトリメチルシランの使用量は、特に制限されないが、一般式(7)で表される化合物に対して、4.0〜10.0倍モルが好ましく、4.0〜5.0倍モルがより好ましく、4.0〜10.0倍モルがより好ましい。
一般式(7)で表される化合物とブロモトリメチルシランとの反応は、有機溶媒の存在下に実施することができる。かかる溶媒としては反応に悪影響を及ぼさない限り特に制限はなく、例えばベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;ジクロロメタン、クロロホルム、1,2−ジクロロエタン等の含ハロゲン化合物類;ジエチルエーテル、ジエチレングリコール、ジメチルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル類等が挙げられる。これらは1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。溶媒を使用する場合、その使用量に特に制限はないが、原料の一般式(7)で表される化合物に対して、通常、0.5〜20倍重量の範囲であることが好ましく、容積効率の観点からは、1〜5倍重量の範囲であることがより好ましい。
一般式(7)で表される化合物とブロモトリメチルシランとの反応における反応温度は、通常、0〜200℃の範囲であることが好ましく、10〜60℃の範囲であることがより好ましい。
反応終了後、溶液を濃縮し、メタノール、エタノール、プロパノール等のアルコール類を加え、二時間攪拌した後、溶液を濃縮し、水および、クロロホルム又は酢酸エチル等の有機溶媒を加えて、有機溶媒で洗浄した後、水溶液を濃縮することにより、一般式(8)で表される化合物を得ることができる。
本発明のジホスホン酸化合物(A)を含有する歯科用重合性組成物が高い接着耐久性を示す理由は定かではないが、以下のように推定される。二つのホスホン酸基に期待する効果は、酸性基を一つしか持たない酸性化合物よりも、基体表面(たとえば、歯系組織、たとえば象牙質、エナメル質、骨、またはその他の硬組織)のカルシウムを二つのホスホン酸により挟み、強固に結合することである。しかし、特許文献1や特許文献2に示されるようなA−5やA−6ではホスホン酸基周辺の立体構造が込み合い、ホスホン酸基の自由度が低いため、基体表面のカルシウムと理想的な結合を形成できず、充分な結合が得られないため、低い接着耐久性に留まるが、本発明のジホスホン酸化合物(A)では、R1と二つのホスホン酸基との間に存在する窒素原子により、ホスホン酸基周辺の自由度が高く基体表面に接合しやすくなっており、そのため、基体表面のカルシウムイオンと強固に結合し、高い接着耐久性を発現すると考えられる。
本発明の歯科用重合性組成物は、化合物(A)以外の重合性単量体として、化合物(A)と共重合可能な重合性単量体(B)を含んでいてもよい。また、本発明の歯科用重合性組成物は、重合性組成物に好適なその他の成分を含んでいてもよい。前記重合性組成物に好適なその他の成分としては、重合開始剤(C)、重合促進剤(D)、フィラー(E)、溶媒(F)等が挙げられる。
重合性単量体(B)
重合性単量体(B)としては、重合性基(好ましくは、(メタ)アクリロイル基)を有するラジカル重合性単量体が好ましく、歯科用重合性組成物の機械的強度、及び接着性の向上に寄与する。
重合性単量体(B)として、下記の親水性重合性単量体(B−1)及び疎水性重合性単量体(B−2)が挙げられる。
親水性重合性単量体(B−1)とは、25℃における水に対する溶解度が10重量%以上のものを意味する。同溶解度が30重量%以上のものが好ましく、25℃において任意の割合で水に溶解可能なものがより好ましい。親水性重合性単量体(B−1)は、歯科用重合性組成物の成分の歯質への浸透を促進するとともに、自らも歯質に浸透して歯質中の有機成分(コラーゲン)に接着する。親水性重合性単量体(B−1)としては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、1,3−ジヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2,3−ジヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−トリメチルアンモニウムエチル(メタ)アクリルクロライド等が挙げられる。
疎水性重合性単量体(B−2)としては、25℃における水に対する溶解度が10重量% 未満の架橋性の重合性単量体が挙げられ、単官能性重合性単量体、二官能性重合性単量体、三官能性以上の重合性単量体等が例示される。疎水性重合性単量体(B−2)は、歯科用重合性組成物の機械的強度、取り扱い性等を向上させる。
単官能性重合性単量体の例としては、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、6−ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、10−ヒドロキシデシル(メタ)アクリレート、プロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、グリセロールモノ(メタ)アクリレート、エリスリトールモノ(メタ)アクリレート、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、N、N−(ジヒドロキシエチル)(メタ)アクリルアミド、N−アクリロイルモルホリン等が挙げられる。
二官能性重合性単量体の例としては、2,2−ビス((メタ)アクリロイルオキシフェニル)プロパン、2,2−ビス[4−(3−アクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(3−メタクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)フェニル]プロパン(通称「Bis−GMA」)、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシポリエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシジエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシトリエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシテトラエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシペンタエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシジプロポキシフェニル)プロパン、2−(4−(メタ)アクリロイルオキシジエトキシフェニル)−2−(4−(メタ)アクリロイルオキシエトキシフェニル)プロパン、2−(4−(メタ)アクリロイルオキシジエトキシフェニル)−2−(4−(メタ)アクリロイルオキシトリエトキシフェニル)プロパン、2−(4−(メタ)アクリロイルオキシジプロポキシフェニル)−2−(4−(メタ)アクリロイルオキシトリエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシプロポキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシイソプロポキシフェニル)プロパン、1,4−ビス(2−(メタ)アクリロイルオキシエチル)ピロメリテート、エリスリトールジ(メタ)アクリレート、ソルビトールジ(メタ)アクリレート、マンニトールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、グリセロールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,5−ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10−デカンジオールジ(メタ)アクリレート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンビス(2−カルバモイルオキシエチル)ジメタクリレート(通称「UDMA」)、1,2−ビス(3−メタクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロピルキシ)エタン等が挙げられる。これらの中でも、2,2−ビス〔4−(3−(メタクリロイルオキシ)−2−ヒドロキシプロポキシフェニル〕プロパン、グリセロールジメタクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンビス(2−カルバモイルオキシエチル)ジメタクリレート及び1,2−ビス(3−メタクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロピルオキシ)エタンが好ましい。
三官能性以上の重合性単量体の例としては、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールメタントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、N,N−(2,2,4−トリメチルヘキサメチレン)ビス〔2−(アミノカルボキシ)プロパン−1,3−ジオール〕テトラメタクリレート、1,7−ジアクリロイルオキシ−2,2,6,6−テトラアクリロイルオキシメチル−4−オキシヘプタン等が挙げられる。
上記の重合性単量体(B)(親水性重合性単量体(B−1)及び疎水性重合性単量体(B−2))は、いずれも1種単独を配合してもよく、2種以上を組み合わせて配合してもよい。また、重合性単量体(B)は親水性重合性単量体(B−1)を含有することが好ましい。なお、本発明において重合性単量体成分の全量とは、化合物(A)及び重合性単量体(B)の合計量をいう。
重合開始剤(C)
本発明に用いられる重合開始剤(C)は、一般工業界で使用されている重合開始剤から選択して使用でき、中でも歯科用途に用いられている重合開始剤が好ましく用いられる。特に、光重合及び化学重合の重合開始剤が、1種単独で又は2種以上適宜組み合わせて使用される。
光重合開始剤としては、(ビス)アシルホスフィンオキサイド類、α−ジケトン類、クマリン類、アントラキノン類、ベンゾインアルキルエーテル化合物類、α−アミノケトン系化合物等が挙げられる。
上記光重合開始剤として用いられる(ビス)アシルホスフィンオキサイド類のうち、アシルホスフィンオキサイド類としては、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、2,6−ジメトキシベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、2,6−ジクロロベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイルメトキシフェニルホスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイルエトキシフェニルホスフィンオキサイド、2,3,5,6−テトラメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、ベンゾイルジ−(2,6−ジメチルフェニル)ホスホネート等が挙げられる。ビスアシルホスフィンオキサイド類としては、ビス−(2,6−ジクロロベンゾイル)フェニルホスフィンオキサイド、ビス−(2,6−ジクロロベンゾイル)−2,5−ジメチルフェニルホスフィンオキサイド、ビス−(2,6−ジクロロベンゾイル)−4−プロピルフェニルホスフィンオキサイド、ビス−(2,6−ジクロロベンゾイル)−1− ナフチルホスフィンオキサイド、ビス−(2,6−ジメトキシベンゾイル)フェニルホスフィンオキサイド、ビス−(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルホスフィンオキサイド、ビス−(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,5−ジメチルフェニルホスフィンオキサイド、ビス−(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキサイド、(2,5,6−トリメチルベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルホスフィンオキサイド等が挙げられる。
これら(ビス)アシルホスフィンオキサイド類の中でも、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイルメトキシフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキサイドがより好ましい。
上記光重合開始剤として用いられるα−ジケトン類としては、例えば、ジアセチル、ジベンジル、カンファーキノン、2,3−ペンタジオン、2,3−オクタジオン、9,10−フェナンスレンキノン、4,4’−オキシベンジル、アセナフテンキノン等が挙げられる。この中でも、可視光域に極大吸収波長を有している観点から、カンファーキノンがより好ましい。
上記光重合開始剤として用いられるクマリン化合物の例としては、3,3’−カルボニルビス(7−ジエチルアミノ)クマリン、3−(4−メトキシベンゾイル)クマリン、3−チェノイルクマリン、3−ベンゾイル−5,7−ジメトキシクマリン、3−ベンゾイル−7−メトキシクマリン、3−ベンゾイル−6−メトキシクマリン、3−ベンゾイル−8−メトキシクマリン、3−ベンゾイルクマリン、7−メトキシ−3−(p−ニトロベンゾイル)クマリン、3−(p−ニトロベンゾイル)クマリン、3−ベンゾイル−8−メトキシクマリン、3,5−カルボニルビス(7−メトキシクマリン)、3−ベンゾイル−6−ブロモクマリン、3,3’−カルボニルビスクマリン、3−ベンゾイル−7−ジメチルアミノクマリン、3−ベンゾイルベンゾ[f]クマリン、3−カルボキシクマリン、3−カルボキシ−7−メトキシクマリン、3−エトキシカルボニル−6−メトキシクマリン、3− エトキシカルボニル−8−メトキシクマリン、3−アセチルベンゾ[f]クマリン、7−メトキシ−3−(p−ニトロベンゾイル)クマリン、3−(p−ニトロベンゾイル)クマリン、3−ベンゾイル−8−メトキシクマリン、3−ベンゾイル−6−ニトロクマリン、3−ベンゾイル−7−ジエチルアミノクマリン、7−ジメチルアミノ−3−(4−メトキシベンゾイル)クマリン、7−ジエチルアミノ−3−(4−メトキシベンゾイル)クマリン、7−ジエチルアミノ−3−(4−ジエチルアミノ)クマリン、7−メトキシ−3−(4−メトキシベンゾイル)クマリン、3−(4− ニトロベンゾイル)ベンゾ[f]クマリン、3−(4−エトキシシンナモイル)−7−メトキシクマリン、3−(4−ジメチルアミノシンナモイル)クマリン、3−(4−ジフェニルアミノシンナモイル)クマリン、3−[(3−ジメチルベンゾチアゾール−2−イリデン)アセチル]クマリン、3−[(1−メチルナフト[1,2−d]チアゾール−2−イリデン)アセチル]クマリン、3,3’−カルボニルビス(6−メトキシクマリン)、3,3’−カルボニルビス(7−アセトキシクマリン)、3,3’−カルボニルビス(7−ジメチルアミノクマリン)、3−(2−ベンゾチアゾイル)−7−(ジエチルアミノ)クマリン、3−(2−ベンゾチアゾイル)−7−(ジブチルアミノ)クマリン、3−(2−ベンゾイミダゾイル)−7−(ジエチルアミノ)クマリン、3−(2−ベンゾチアゾイル)−7−(ジオクチルアミノ)クマリン、3−アセチル−7−(ジメチルアミノ)クマリン、3,3’−カルボニルビス(7−ジブチルアミノクマリン)、3,3’−カルボニル−7−ジエチルアミノクマリン−7’−ビス(ブトキシエチル)アミノクマリン、10−[3−[4−(ジメチルアミノ)フェニル]−1−オキソ−2−プロペニル]−2,3,6,7−1,1,7,7−テトラメチル1H,5H,11H−[1]ベンゾピラノ[6,7,8−ij]キノリジン−11−オン、10−(2−ベンゾチアゾイル)−2,3,6、7−テトラヒドロ−1,1,7,7−テトラメチル1H,5H,11H−[1]ベンゾピラノ[6,7,8−ij]キノリジン−11−オン等の特開平9−3109号公報、特開平10−245525号公報に記載されている化合物が挙げられる。
上述のクマリン化合物の中でも、特に、3,3’−カルボニルビス(7−ジエチルアミノクマリン)及び3,3’−カルボニルビス(7−ジブチルアミノクマリン)が好適である。
上記光重合開始剤として用いられるアントラキノン類の例としては、アントラキノン、1−クロロアントラキノン、2−クロロアントラキノン、1−ブロモアントラキノン、1,2−ベンズアントラキノン、1−メチルアントラキノン、2−エチルアントラキノン、1−ヒドロキシアントラキノン等が挙げられる。
上記光重合開始剤として用いられるベンゾインアルキルエーテル類の例としては、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル等が挙げられる。
上記光重合開始剤として用いられるα−アミノケトン類の例としては、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オン等が挙げられる。
これらの光重合開始剤の中でも、(ビス)アシルホスフィンオキサイド類及びその塩、α−ジケトン類、及びクマリン化合物からなる群から選択される少なくとも1種を用いることが好ましい。これにより、可視及び近紫外領域での光硬化性に優れ、ハロゲンランプ、発光ダイオード(LED)、キセノンランプのいずれの光源を用いても十分な光硬化性を示す重合性組成物が得られる。
本発明に用いられる重合開始剤(C)のうち化学重合開始剤としては、有機過酸化物が好ましく用いられる。上記の化学重合開始剤に使用される有機過酸化物は特に限定されず、公知のものを使用することができる。代表的な有機過酸化物としては、ケトンパーオキサイド、ハイドロパーオキサイド、ジアシルパーオキサイド、ジアルキルパーオキサイド、パーオキシケタール、パーオキシエステル、パーオキシジカーボネート等が挙げられる。
上記化学重合開始剤として用いられるケトンパーオキサイドとしては、メチルエチルケトンパーオキサイド、メチルイソブチルケトンパーオキサイド、メチルシクロヘキサノンパーオキサイド及びシクロヘキサノンパーオキサイド等が挙げられる。
上記化学重合開始剤として用いられるハイドロパーオキサイドとしては、2,5−ジメチルヘキサン−2,5−ジハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイド及び1,1,3,3−テトラメチルブチルハイドロパーオキサイド等が挙げられる。
上記化学重合開始剤として用いられるジアシルパーオキサイドとしては、アセチルパーオキサイド、イソブチリルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、デカノイルパーオキサイド、3,5,5−トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、2,4−ジクロロベンゾイルパーオキサイド及びラウロイルパーオキサイド等が挙げられる。
上記化学重合開始剤として用いられるジアルキルパーオキサイドとしては、ジ−t−ブチルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、t−ブチルクミルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、1,3−ビス(t−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン及び2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)−3−ヘキシン等が挙げられる。
上記化学重合開始剤として用いられるパーオキシケタールとしては、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、2,2−ビス(t−ブチルパーオキシ)ブタン、2,2−ビス(t−ブチルパーオキシ)オクタン及び4,4−ビス(t−ブチルパーオキシ)バレリックアシッド−n−ブチルエステル等が挙げられる。
上記化学重合開始剤として用いられるパーオキシエステルとしては、α−クミルパーオキシネオデカノエート、t−ブチルパーオキシネオデカノエート、t−ブチルパーオキシピバレート、2,2,4−トリメチルペンチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−アミルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、ジ−t−ブチルパーオキシイソフタレート、ジ−t−ブチルパーオキシヘキサヒドロテレフタラート、t−ブチルパーオキシ−3,3,5−トリメチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシアセテート、t−ブチルパーオキシベンゾエート及びt−ブチルパーオキシマレリックアシッド等が挙げられる。
上記化学重合開始剤として用いられるパーオキシジカーボネートとしては、ジ−3−メトキシパーオキシジカーボネート、ジ−2−エチルヘキシルパーオキシジカーボネート、ビス(4−t−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ−n−プロピルパーオキシジカーボネート、ジ−2−エトキシエチルパーオキシジカーボネート及びジアリルパーオキシジカーボネート等が挙げられる。
これらの有機過酸化物の中でも、安全性、保存安定性及びラジカル生成能力の総合的なバランスから、ジアシルパーオキサイドが好ましく用いられ、その中でもベンゾイルパーオキサイドがより好ましく用いられる。
本発明に用いられる重合開始剤(C)の配合量は特に限定されないが、得られる組成物の硬化性等の観点からは、重合性単量体成分の全量100重量部に対して、重合開始剤(C) を0.001〜30重量部含有してなることが好ましい。重合開始剤(C)の配合量が0.001重量部未満の場合、重合が十分に進行せず、接着力の低下を招くおそれがあり、より好適には0.05重量部以上である。一方、重合開始剤(C)の配合量が30重量部を超える場合、重合開始剤自体の重合性能が低い場合には、十分な接着強度が得られなくなるおそれがあり、さらには組成物からの析出を招くおそれがあるため、より好適には20重量部以下である。
重合促進剤(D)
本発明の組成物は、重合促進剤(D)を含むことが好ましい。本発明に用いられる重合促進剤(D)としては、アミン類、スルフィン酸及びその塩、トリアジン化合物、銅化合物、バナジウム化合物、ハロゲン化合物、アルデヒド類、チオール化合物、亜硫酸塩、亜硫酸水素塩、チオ尿素化合物等が挙げられる。
重合促進剤(D)として用いられるアミン類は、脂肪族アミン及び芳香族アミンに分けられる。脂肪族アミンとしては、例えば、n−ブチルアミン、n−ヘキシルアミン、n−オクチルアミン等の第1級脂肪族アミン;ジイソプロピルアミン、ジブチルアミン、N−メチルエタノールアミン等の第2級脂肪族アミン;N−メチルジエタノールアミン、N−エチルジエタノールアミン、N−n−ブチルジエタノールアミン、N−ラウリルジエタノールアミン、2−(ジメチルアミノ)エチルメタクリレート、N−メチルジエタノールアミンジメタクリレート、N−エチルジエタノールアミンジメタクリレート、トリエタノールアミンモノメタクリレート、トリエタノールアミンジメタクリレート、トリエタノールアミントリメタクリレート、トリエタノールアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリブチルアミン等の第3級脂肪族アミン等が挙げられる。これらの中でも、組成物の硬化性及び保存安定性の観点から、第3級脂肪族アミンが好ましく、その中でもN−メチルジエタノールアミン及びトリエタノールアミンがより好ましく用いられる。
また、芳香族アミンとしては、例えば、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−3,5−ジメチルアニリン、N,N−ジ(2−ヒドロキシエチル)−p−トルイジン、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−3,4−ジメチルアニリン、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−4−エチルアニリン、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−4−イソプロピルアニリン、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−4−t−ブチルアニリン、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−3,5−ジ−イソプロピルアニリン、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−3,5−ジ−t−ブチルアニリン、N,N−ジメチルアニリン、N,N−ジメチル−p−トルイジン、N,N−ジメチル−m−トルイジン、N,N−ジエチル−p−トルイジン、N,N−ジメチル−3,5−ジメチルアニリン、N,N−ジメチル−3,4−ジメチルアニリン、N,N−ジメチル−4−エチルアニリン、N,N−ジメチル−4−イソプロピルアニリン、N,N−ジメチル−4−t−ブチルアニリン、N,N−ジメチル−3,5−ジ−t−ブチルアニリン、4−(N,N−ジメチルアミノ)安息香酸エチル、4−(N,N−ジメチルアミノ)安息香酸メチル、4−(N,N−ジメチルアミノ)安息香酸n−ブトキシエチル、4−N,N−ジメチルアミノ安息香酸2−(メタクリロイルオキシ)エチル、4−(N,N−ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、4−ジメチルアミノ安息香酸ブチル等が挙げられる。これらの中でも、組成物に優れた硬化性を付与できる観点から、N,N−ジ(2−ヒドロキシエチル)−p−トルイジン、4−(N,N−ジメチルアミノ)安息香酸エチル、4−(N,N−ジメチルアミノ)安息香酸n−ブトキシエチル及び4−(N,N−ジメチルアミノ)ベンゾフェノンからなる群から選択される少なくとも1種が好ましく用いられる。
重合促進剤(D)として用いられるスルフィン酸及びその塩としては、例えば、p−トルエンスルフィン酸、p−トルエンスルフィン酸ナトリウム、p−トルエンスルフィン酸カリウム、p−トルエンスルフィン酸リチウム、p−トルエンスルフィン酸カルシウム、ベンゼンスルフィン酸、ベンゼンスルフィン酸ナトリウム、ベンゼンスルフィン酸カリウム、ベンゼンスルフィン酸リチウム、ベンゼンスルフィン酸カルシウム、2,4,6−トリメチルベンゼンスルフィン酸、2,4,6−トリメチルベンゼンスルフィン酸ナトリウム、2,4,6−トリメチルベンゼンスルフィン酸カリウム、2,4,6−トリメチルベンゼンスルフィン酸リチウム、2,4,6−トリメチルベンゼンスルフィン酸カルシウム、2,4,6−トリエチルベンゼンスルフィン酸、2,4,6−トリエチルベンゼンスルフィン酸ナトリウム、2,4,6−トリエチルベンゼンスルフィン酸カリウム、2,4,6−トリエチルベンゼンスルフィン酸リチウム、2,4,6−トリエチルベンゼンスルフィン酸カルシウム、2,4,6−トリイソプロピルベンゼンスルフィン酸、2,4,6−トリイソプロピルベンゼンスルフィン酸ナトリウム、2,4,6−トリイソプロピルベンゼンスルフィン酸カリウム、2,4,6−トリイソプロピルベンゼンスルフィン酸リチウム、2,4,6−トリイソプロピルベンゼンスルフィン酸カルシウム等が挙げられ、ベンゼンスルフィン酸ナトリウム、p−トルエンスルフィン酸ナトリウム、2,4,6−トリイソプロピルベンゼンスルフィン酸ナトリウムがより好ましい。
重合促進剤(D)として用いられるトリアジン化合物としては、例えば、2,4,6−トリス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2,4,6−トリス(トリブロモメチル)−s−トリアジン、2−メチル−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−メチル−4,6−ビス(トリブロモメチル)−s−トリアジン、2−フェニル−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(p−メトキシフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(p−メチルチオフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(p−クロロフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(2,4−ジクロロフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(p−ブロモフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(p−トリル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−n−プロピル−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(α,α,β−トリクロロエチル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−スチリル−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−[2−(p−メトキシフェニル)エテニル]−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−[2−(o−メトキシフェニル)エテニル]−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−[2−(p−ブトキシフェニル)エテニル]−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−[2−(3,4−ジメトキシフェニル)エテニル]−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−[2−(3,4,5−トリメトキシフェニル)エテニル]−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(1−ナフチル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(4−ビフェニリル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−[2−{N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)アミノ}エトキシ]−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−[2−{ N−ヒドロキシエチル−N−エチルアミノ}エトキシ]−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−[2−{N−ヒドロキシエチル−N−メチルアミノ}エトキシ]−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−[2−{N,N−ジアリルアミノ}エトキシ]−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン等が挙げられる。
上記で例示したトリアジン化合物の中でより好ましいものは、重合活性の点で2,4,6−トリス(トリクロロメチル)−s−トリアジンであり、また保存安定性の点で、2−フェニル−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(p−クロロフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、及び2−(4−ビフェニリル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジンである。上記トリアジン化合物は1種又は2種以上を混合して用いても構わない。
重合促進剤(D)として用いられる銅化合物としては、例えば、アセチルアセトン銅、酢酸第2銅、オレイン酸銅、塩化第2銅、臭化第2銅等が好適に挙げられる。
重合促進剤(D)として用いられるバナジウム化合物は、好ましくはIV価及び/又はV価のバナジウム化合物類である。IV価及び/又はV価のバナジウム化合物類としては、例えば、四酸化二バナジウム(IV)、酸化バナジウムアセチルアセトナート(IV)、シュウ酸バナジル(IV)、硫酸バナジル(IV)、オキソビス(1−フェニル−1,3−ブタンジオネート)バナジウム(IV)、ビス(マルトラート)オキソバナジウム(IV)、五酸化バナジウム(V)、メタバナジン酸ナトリウム(V)、メタバナジン酸アンモン(V)等の特開2003−96122号公報に記載されている化合物が挙げられる。
重合促進剤(D)として用いられるハロゲン化合物としては、例えば、ジラウリルジメチルアンモニウムクロライド、ラウリルジメチルベンジルアンモニウムクロライド、ベンジルトリメチルアンモニウムクロライド、テトラメチルアンモニウムクロライド、ベンジルジメチルセチルアンモニウムクロライド、ジラウリルジメチルアンモニウムブロマイド等が好適に挙げられる。
重合促進剤(D)として用いられるアルデヒド類としては、例えば、テレフタルアルデヒドやベンズアルデヒド誘導体等が挙げられる。ベンズアルデヒド誘導体としては、ジメチルアミノベンズアルデヒド、p−メチルオキシベンズアルデヒド、p−エチルオキシベンズアルデヒド、p−n−オクチルオキシベンズアルデヒド等が挙げられる。これらの中でも、硬化性の観点から、p−n−オクチルオキシベンズアルデヒドが好ましい。
重合促進剤(D)として用いられるチオール化合物としては、例えば、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、2−メルカプトベンゾオキサゾール、デカンチオール、チオ安息香酸等が挙げられる。
重合促進剤(D)として用いられる亜硫酸塩としては、例えば、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸カリウム、亜硫酸カルシウム、亜硫酸アンモニウム等が挙げられる。
重合促進剤(D)として用いられる亜硫酸水素塩としては、例えば、亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸水素カリウム等が挙げられる。
重合促進剤(D)として用いられるチオ尿素化合物としては、1−(2−ピリジル)−2−チオ尿素、チオ尿素、メチルチオ尿素、エチルチオ尿素、N,N’−ジメチルチオ尿素、N,N’−ジエチルチオ尿素、N,N’−ジ−n−プロピルチオ尿素、N,N’−ジシクロヘキシルチオ尿素、トリメチルチオ尿素、トリエチルチオ尿素、トリ−n−プロピルチオ尿素、トリシクロヘキシルチオ尿素、テトラメチルチオ尿素、テトラエチルチオ尿素、テトラ−n−プロピルチオ尿素、テトラシクロヘキシルチオ尿素等が挙げられる。
本発明に用いられる重合促進剤(D)の配合量は特に限定されないが、得られる組成物の硬化性等の観点からは、重合性単量体成分の全量100重量部に対して、重合促進剤(D)を0.001〜30重量部含有してなることが好ましい。重合促進剤(D)の配合量が0.001重量部未満の場合、重合が十分に進行せず、接着力の低下を招くおそれがあり、より好適には0.05重量部以上である。一方、重合促進剤(D)の配合量が30重量部を超える場合、重合開始剤自体の重合性能が低い場合には、十分な接着強度が得られなくなるおそれがあり、さらには組成物からの析出を招くおそれがあるため、より好適には20重量部以下である。
フィラー(E)
本発明の歯科用重合性組成物に、実施態様によっては、さらにフィラー(E)を配合することが好ましい。このようなフィラーは、通常、有機フィラー、無機フィラー及び有機−無機複合フィラーに大別される。有機フィラーの素材としては、例えばポリメタクリル酸メチル、ポリメタクリル酸エチル、メタクリル酸メチル−メタクリル酸エチル共重合体、架橋型ポリメタクリル酸メチル、架橋型ポリメタクリル酸エチル、ポリアミド、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、クロロプレンゴム、ニトリルゴム、エチレン−酢酸ビニル共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、アクリロニトリル−スチレン共重合体、アクリロニトリル−スチレン−ブタジエン共重合体等が挙げられ、これらは単独で又は2種以上の混合物として用いることができる。有機フィラーの形状は特に限定されず、フィラーの粒子径を適宜選択して使用することができる。得られる組成物のハンドリング性及び機械強度等の観点から、前記有機フィラーの平均粒子径は、0.001〜50μmであることが好ましく、0.001〜10μmであることがより好ましい。
無機フィラーの素材としては、石英、シリカ、アルミナ、シリカ−チタニア、シリカ−チタニア−酸化バリウム、シリカ−ジルコニア、シリカ−アルミナ、ランタンガラス、ホウケイ酸ガラス、ソーダガラス、バリウムガラス、ストロンチウムガラス、ガラスセラミック、アルミノシリケートガラス、バリウムボロアルミノシリケートガラス、ストロンチウムボロアルミノシリケートガラス、フルオロアルミノシリケートガラス、カルシウムフルオロアルミノシリケートガラス、ストロンチウムフルオロアルミノシリケートガラス、バリウムフルオロアルミノシリケートガラス、ストロンチウムカルシウムフルオロアルミノシリケートガラス等が挙げられる。これらもまた、単独で又は2種以上を混合して用いることができる。得られる組成物のハンドリング性及び機械強度等の観点から、前記無機フィラーの平均粒子径は0.001〜50μmであることが好ましく、0.001〜10μmであることがより好ましい。
無機フィラーの形状としては、不定形フィラー及び球状フィラーが挙げられる。組成物の機械強度を向上させる観点からは、前記無機フィラーとして球状フィラーを用いることが好ましい。さらに、前記球状フィラーを用いた場合、本発明の歯科用重合性組成物を歯科用コンポジットレジンとして用いた場合に、表面滑沢性に優れたコンポジットレジンが得られるという利点もある。ここで球状フィラーとは、走査型電子顕微鏡(以下、SEMと略す)でフィラーの写真を撮り、その単位視野内に観察される粒子が丸みをおびており、その最大径に直交する方向の粒子径をその最大径で割った平均均斉度が0.6以上であるフィラーである。前記球状フィラーの平均粒子径は好ましくは0.1〜5μmである。平均粒子径が0.1μm未満の場合、組成物中の球状フィラーの充填率が低下し、機械的強度が低くなるおそれがある。一方、平均粒子径が5μmを超える場合、前記球状フィラーの表面積が低下し、高い機械的強度を有する硬化体が得られないおそれがある。
前記無機フィラーは、組成物の流動性を調整するため、必要に応じてシランカップリング剤等の公知の表面処理剤で予め表面処理してから用いてもよい。かかる表面処理剤としては、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリクロロシラン、ビニルトリ(β−メトキシエトキシ)シラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、11−メタクリロイルオキシウンデシルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン等が挙げられる。
本発明で用いられる有機−無機複合フィラーとは、上述の無機フィラーにモノマー化合物を予め添加し、ペースト状にした後に重合させ、粉砕することにより得られるものである。前記有機−無機複合フィラーとしては、例えば、TMPTフィラー(トリメチロールプロパンメタクリレートとシリカフィラーを混和、重合させた後に粉砕したもの)等を用いることができる。前記有機−無機複合フィラーの形状は特に限定されず、フィラーの粒子径を適宜選択して使用することができる。得られる組成物のハンドリング性及び機械強度等の観点から、前記有機−無機複合フィラーの平均粒子径は、0.001〜50μmであることが好ましく、0.001〜10μmであることがより好ましい。なお、本明細書において、フィラーの平均粒子径は、当業者に公知の任意の方法により測定され得、例えば、レーザー回折型粒度分布測定装置により容易に測定され得る。具体的には、0.10μm以上の粒子の粒子径測定にはレーザー回折散乱法が、0.10μm以下の超微粒子の粒子系測定には電子顕微鏡観察が簡便である。前記0.10μmはレーザー回折散乱法により測定した値を意味する。
レーザー回折散乱法は、例えば、レーザー回折式粒度分布測定装置(SALD−2100:島津製作所製)により、0.2%ヘキサメタリン酸ナトリウム水溶液を分散媒に用いて測定することができる。
電子顕微鏡観察は、例えば、粒子の走査型電子顕微鏡(日立製作所製、S−4000型)写真を撮り、その写真の単位視野内に観察される粒子(200個以上)の粒子径を、画像解析式粒度分布測定ソフトウェア(Macview(株式会社マウンテック))を用いて測定することにより求めることができる。このとき、粒子の粒子径は、粒子の最長の長さと最短の長さの算術平均値として求められ、粒子の数とその粒子径より、平均一次粒子径が算出される。
本発明に用いられるフィラー(E)の配合量は特に限定されず、重合性単量体成分の全量100重量部に対して、フィラー(E)を1〜2000重量部が好ましい。フィラー(E)の好適な配合量は、用いられる実施態様によって大幅に異なるので、後述する本発明の歯科用重合性組成物の具体的な実施態様の説明と併せて、各実施態様に応じたフィラー(E)の好適な配合量を示すこととする。
溶媒(F)
本発明の歯科用重合性組成物は、その具体的な実施態様によっては、溶媒(F)を含むことが好ましい。溶媒としては、水、有機溶媒、及びこれらの混合溶媒等が挙げられる。
本発明の歯科用重合性組成物が水を含む場合には、重合性単量体成分の全量100重量部に対して、水を1〜2000重量部含有することが好ましい。また、水は、悪影響を及ぼすような不純物を含有していないことが好ましく、蒸留水又はイオン交換水が好ましい。
有機溶媒としては、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−メチル−2−プロパノール、アセトン、メチルエチルケトン、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ヘキサン、トルエン、クロロホルム、酢酸エチル、酢酸ブチル等が挙げられる。これらの中でも、生体に対する安全性と、揮発性に基づく除去の容易さの双方を勘案した場合、有機溶媒が水溶性有機溶媒であることが好ましく、具体的には、エタノール、2−プロパノール、2−メチル−2−プロパノール、アセトン、及びテトラヒドロフランが好ましく用いられる。前記有機溶媒の含有量は特に限定されず、実施態様によっては前記有機溶媒の配合を必要としないものもある。前記有機溶媒を用いる実施態様においては、重合性単量体成分の全量100重量部に対して、有機溶媒を1〜2000重量部含有することが好ましい。
この他、本発明の歯科用重合性組成物には、本発明の効果を阻害しない範囲でpH調整剤、重合禁止剤、紫外線吸収剤、増粘剤、着色剤、抗菌剤、香料等を配合してもよい。
本発明の歯科用重合性組成物は、高い接着性を有し、例えば、生体硬組織、金属材料、有機高分子材料、セラミック等用の接着材として用いることができる。当該歯科用組成物は、例えば、プライマー、ボンディング材、自己接着性コンポジットレジン、セメント(レジンセメント、レジン強化型グラスアイオノマーセメント)、小窩裂溝填塞材、義歯床用レジン等の歯科用材料に用いることができ、中でも、プライマー、ボンディング材、自己接着性コンポジットレジン、又はセメントとして好適に用いられる。このとき、歯科用重合性組成物の成分を2つに分けた2剤型として用いてもよい。
歯科用プライマー
歯科用材料の接着システムは、象牙質表面を酸性成分で溶かす脱灰工程、モノマー成分が象牙質のコラーゲン層に浸透する浸透工程、浸透したモノマー成分が固まってコラーゲンとのハイブリッド層(樹脂含浸層)を形成する硬化工程を含む。基本的には、浸透工程に用いられる製品がプライマーである。プライマーとしては、近年前記脱灰工程と前記浸透工程とを併せて一段階で行うセルフエッチングプライマーもあり、化合物(A)が脱灰作用を有するため、本発明の歯科用重合性組成物と浸透作用を有する重合性単量体(B)を用いることによりセルフエッチングプライマーを構成することができる。
歯科用プライマーは、酸性基を含有する重合性単量体を含む公知のプライマーの、酸性基を含有する重合性単量体の一部又は全部を化合物(A)に置き換えることにより、構成することができる。プライマー組成物の例としては、重合性単量体成分の全量100重量部中において、化合物(A)0.1〜50重量部及び重合性単量体(B)1〜99.9重量部を含有することが好ましく、化合物(A)0.25〜30重量部及び重合性単量体(B)10〜99.75重量部を含有することがより好ましく、化合物(A)0.5〜20重量部及び重合性単量体(B)10〜99.5重量部を含有することがさらに好ましい。さらに、プライマー組成物は、重合性単量体成分の全量100重量部に対し、重合開始剤(C)0.001〜30重量部及び重合促進剤(D)0.001〜30重量部を含むことがより好ましく、重合開始剤(C)0.05〜20重量部及び重合促進剤(D)0.05〜20重量部を含むことがより好ましい。また、プライマー組成物は、重合性単量体成分の全量100重量部に対し、溶媒(F)を6〜3500重量部含むことが好ましく、7〜2000重量部含むことがより好ましい。また、プライマー組成物は、粘度調整などの目的で、重合性単量体成分の全量100重量部に対し、フィラー(E)を0〜5重量部含んでもよい。
歯科用ボンディング材
上記の硬化工程に用いられる製品がボンディング材である。ボンディング材は、酸性基を含有する重合性単量体を含む公知のボンディング材の、酸性基を含有する重合性単量体の一部又は全部を化合物(A)に置き換えることにより、構成することができる。ボンディング組成物の例としては、重合性単量体成分の全量100重量部中において、化合物(A)0.1〜50重量部及び重合性単量体(B)5〜99.9重量部を含有することが好ましく、化合物(A)0.5〜20重量部及び重合性単量体(B)20〜99.5重量部を含有することがより好ましい。さらに、ボンディング組成物は、重合性単量体成分の全量100重量部に対し、重合開始剤(C)0.001〜30重量部及び重合促進剤(D)0.001〜30重量部を含むことが好ましく、重合開始剤(C)0.05〜20重量部及び重合促進剤(D)0.05〜20重量部を含むことがより好ましい。また、重合性単量体成分の全量100重量部に対し、フィラー(E)を0〜30重量部含むことが好ましく、0〜15重量部含むことがより好ましい。また、プライマーと組み合わせて用いるボンディング組成物は、溶媒(F)を含んでいてもよいが、溶媒(F)を実質的に含まないことが好ましい。
近年では、浸透工程、脱灰工程、及び硬化工程を併せて一段階で行う1ステップ型のボンディング材も開発されている。また、ボンディング材は、2剤を使用直前に混和して用いる2液型と、1剤をそのまま使用可能な1液型とに分かれるが、現在は1液型が主流である。化合物(A)が、脱灰作用、及び硬化作用を有するため、本発明の歯科用重合性組成物は、1ステップ型の1液型ボンディング材を構成することができる。
1ステップ型の1液型ボンディング材組成物の例としては、重合性単量体成分の全量100重量部中において、化合物(A)0.1〜50重量部及び重合性単量体(B)5〜99.9重量部を含有することが好ましく、化合物(A)0.5〜20重量部及び重合性単量体(B)10〜60重量部を含有することがより好ましい。さらに、1液型ボンディング材組成物は、重合性単量体成分の全量100重量部に対し、重合開始剤(C)0.001〜30重量部及び重合促進剤(D)0.001〜30重量部を含むことが好ましく、重合開始剤(C)0.05〜20重量部及び重合促進剤(D)0.05〜20重量部を含むことがより好ましい。また、1液型ボンディング材組成物は、重合性単量体成分の全量100重量部に対し、フィラー(E)を0〜30重量部含むことが好ましく、0〜15重量部含むことがより好ましい。また、1液型ボンディング材組成物は、重合性単量体成分の全量100重量部に対し、溶媒(F)を6〜2000重量部含むことが好ましく、7〜1000重量部含むことがより好ましい。
自己接着性歯科用コンポジットレジン
コンポジットレジンは、通常、齲蝕発生部位を切削し窩洞を形成した後に、前記窩洞に充填される形態で用いられる歯科治療用材料である。自己接着性歯科用コンポジットレジンは化合物(A)が、脱灰作用、高い硬化作用、及び高いカルシウム結合能を有するため、構成することが可能である。
自己接着性歯科用コンポジットレジンは、酸性基を含有する重合性単量体を含む公知のコンポジットレジンの、酸性基を含有する重合性単量体の一部又は全部を化合物(A)に置き換えることにより、構成することができる。自己接着性コンポジットレジンの組成の例としては、重合性単量体成分の全量100重量部中において、化合物(A)0.1〜50重量部及び重合性単量体(B)10〜99.9重量部を含有することが好ましく、化合物(A)0.5〜20重量部及び重合性単量体(B)20〜99.5重量部を含有することがより好ましい。さらに、自己接着性コンポジットレジンは、重合性単量体成分の全量100重量部に対し、重合開始剤(C)0.001〜30重量部及び重合促進剤(D)0.001〜30重量部を含むことが好ましく、重合開始剤(C)0.05〜20重量部及び重合促進剤(D)0.05〜20重量部を含むことがより好ましい。また、自己接着性コンポジットレジンは、重合性単量体成分の全量100重量部に対し、フィラー(E)を50〜3000重量部含むことが好ましく、80〜2000重量部含むことがより好ましい。また、自己接着性コンポジットレジンは、溶媒(F)を含んでいてもよいが、溶媒(F)を実質的に含まないことが好ましい。
歯科用セメント
歯科用セメントは、通常、インレーやクラウンと呼ばれる金属やセラミックス製の歯冠用修復材料を歯牙に固定する際の合着材として用いられる歯科治療用材料である。化合物(A)が、脱灰作用、及び硬化作用を有するため、本発明の歯科用重合性組成物により、自己接着性セメントを構成することも可能である。セメントとしては、レジンセメント及びレジン強化型グラスアイオノマーセメントがある。
セメントは、酸性基を含有する重合性単量体を含む公知のセメントの、酸性基を含有する重合性単量体の一部又は全部を化合物(A)に置き換えることにより、構成することができる。レジンセメント組成物の例としては、重合性単量体成分の全量100重量部中において、化合物(A)0.1〜50重量部及び重合性単量体(B)10〜99.9重量部を含有することが好ましく、化合物(A)0.5〜20重量部及び重合性単量体(B)20〜99.5重量部を含有することがより好ましい。さらに、レジンセメント組成物は、重合性単量体成分の全量100重量部に対し、重合開始剤(C)0.001〜30重量部及び重合促進剤(D)0.001〜30重量部を含むことが好ましく、重合開始剤(C)0.05〜20重量部及び重合促進剤(D)0.05〜20重量部を含むことがより好ましい。また、レジンセメント組成物は、重合性単量体成分の全量100重量部に対し、フィラー(E)を50〜2000重量部含むことが好ましく、80〜1000重量部含むことがより好ましい。また、レジンセメント組成物は、溶媒(F)を含んでいてもよいが、実質的に含まないことが好ましい。
レジンセメント組成物においては、重合開始剤(C)として化学重合開始剤を用いることが好ましく、重合促進剤(D)としてアミン類及び/又はスルフィン酸及びその塩を用いることが好ましい。レジンセメント組成物においては、保存安定性の観点から、化合物(A)及び重合開始剤(C)と、重合促進剤(D)とを、それぞれ別々の容器に保存する2剤型とすることが好ましい。
グラスアイオノマーセメントは、典型的にはフルオロアルミノシリケートガラスのような無機フィラーと、ポリアクリル酸のようなポリアルケン酸とが酸−塩基反応によって反応、硬化するものである。そして、前記ポリアルケン酸と歯質を構成するハイドロキシアパタイト中のカルシウムとが相互作用することにより、接着機能が発現すると考えられている。グラスアイオノマーセメント組成物の例としては、重合性単量体成分の全量100重量部中において、化合物(A)0.1〜50重量部及び重合性単量体(B)10〜99.9重量部を含有することが好ましく、化合物(A)0.5〜20重量部及び重合性単量体(B)20〜99.5重量部を含有することがより好ましい。さらに、グラスアイオノマーセメント組成物は、重合性単量体成分の全量100重量部に対し、重合開始剤(C)0.001〜30重量部及び重合促進剤(D)0.001〜30重量部を含むことが好ましく、重合開始剤(C)0.05〜20重量部及び重合促進剤(D)0.05〜20重量部を含むことがより好ましい。また、グラスアイオノマーセメント組成物は、重合性単量体成分の全量100重量部に対し、ポリアルケン酸10〜200重量部、及びフルオロアルミノシリケートガラス50〜500重量部を含むことが好ましく、ポリアルケン酸10〜100重量部、及びフルオロアルミノシリケートガラス80〜400重量部を含むことがより好ましい。また、グラスアイオノマーセメント組成物は、フルオロアルミノシリケートガラス以外のフィラー(E)を0〜2000重量部、好ましくは10〜1000重量部添加してもよい。また、グラスアイオノマーセメント組成物は、重合性単量体成分の全量100重量部に対し、溶媒(F)を1〜500重量部含むことが好ましく、10〜50重量部含むことがより好ましい。
グラスアイオノマーセメント組成物においては、保存安定性の観点から、ポリアルケン酸と、フルオロアルミノシリケートガラスとを、それぞれ別々の容器に保存する2剤型とすることが好ましい。2剤に分ける場合には、化合物(A)は、ポリアルケン酸側に配合する。また、重合開始剤(C)と、重合促進剤(D)とを、別々の容器に保存することが好ましい。
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明は、これら実施例に限定されるものではなく、多くの変形が本発明の技術的思想内で当分野において通常の知識を有する者により可能である。まず、実施例及び比較例で作製した重合性組成物の各成分について記載する。
[ジホスホン酸化合物]
A−1:(メタクリロイルオキシエトキシエチル)アミノ−N,N−ビス(メチレンホスホン酸)
A−2:〔N−(2−メタクリロイルオキシエチル)−カルバモイルオキシエチル〕アミノ−N,N−ビス(メチレンホスホン酸)
A−3:〔N−(2−メタクリロイルオキシエトキシエチル)−カルバモイルオキシエチル〕アミノ−N,N−ビス(メチレンホスホン酸)
A−4:〔N−(2−メタクリロイルオキシエトキシエチル)−カルバモイルオキシプロピル〕アミノ−N,N−ビス(メチレンホスホン酸)
A−5:(1−ヒドロキシ−6−メタクリルアミドヘキシリデン)ビスホスホン酸
A−6:2−〔N−(2−メタクリロイルオキシエチル)−カルバモイルオキシメチル〕−1,3−プロピレン−ビスホスホン酸
[重合性単量体(B)]
HEMA:2−ヒドロキシエチルメタクリレート
Bis−GMA:2,2−ビス[4−(3−メタクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)フェニル]プロパン
NPGDMA:ネオペンチルグリコールジメタクリレート
[重合開始剤(C)]
CQ:dl−カンファーキノン
BAPO:ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキサイド
[重合促進剤(D)]
DABE:4−(N,N−ジメチルアミノ)安息香酸エチル
[フィラー(E)]
R972:日本アエロジル社製微粒子シリカ「アエロジルR−972」、平均粒子径:16nm
Ar380:日本アエロジル社製微粒子シリカ「アエロジル380」、平均粒子径:7nm
[その他]
BHT:2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール(安定剤(重合禁止剤))
(合成例)
(2−ヒドロキシエトキシエチル)アミノ−N,N−ビス(メチレンホスホン酸ジメチル)の合成
300ml三口ナスフラスコに2−(2−アミノエトキシ)エタノール(東京化成製、36.7ml、350mmol)、パラホルムアルデヒド(東京化成製、24.7g、700mmol)、p−トルエンスルホン酸一水和物(和光純薬製、0.7g、3.5mmol)、テトラヒドロフラン(和光純薬製、70ml)を加えて65℃に加熱し、パラホルムアルデヒドが溶解するまで攪拌した。溶解後、ここにホスホン酸ジメチル(東京化成製、65.5ml、700mmol)を30分かけて滴下した。滴下後、系内を75℃にして還流させて、12時間攪拌した。攪拌停止後、室温まで放冷し、溶媒をロータリーエバポレーターを用いて減圧留去した。得られた溶液にクロロホルムを加えて、0.1N NaOH水溶液により洗浄し、溶媒をロータリーエバポレーターを用いて減圧留去し、続けて真空ポンプにより溶媒を減圧留去することで、無色の粘性オイルが得られた。1H-NMR測定を行い、シグナルの位置及び積分値から、得られた無色のオイルが(2−ヒドロキシエトキシエチル)アミノ−N,N−ビス(メチレンホスホン酸ジメチル)であることを確認した。収量は36.7g、収率は30%であった。
1H-NMR(400MHz、CDCl3):3.85(t、2H),3.79(d,12H),3.69(t,2H),3.64(t,2H),3.57(t,2H),3.56(d,4H)
(メタクリロイルオキシエトキシエチル)アミノ−N,N−ビス(メチレンホスホン酸ジメチル)の合成
50ml三口ナスフラスコに(2−ヒドロキシエトキシエチル)アミノ−N,N−ビス(メチレンホスホン酸ジメチル)(3.49g、10mmol)、トリエチルアミン(和光純薬製、2.11ml、15mmol)、クロロホルム(和光純薬製、5.7ml)を加えて0℃で攪拌して、系内の温度を低下させた後、メタクリロイルクロリド(和光純薬製、1.81ml、15mmol)を8分かけて滴下した。滴下後、0度で1時間、25℃で28時間攪拌させた。攪拌後、系内に水(10ml)加え、25℃で30分攪拌し、水により不純物を抽出して除去した。抽出後、クロロホルム層に硫酸マグネシウムを加えて脱水し、硫酸マグネシウム除去後、溶媒をロータリーエバポレーターを用いて減圧留去し、続けて真空ポンプにより溶媒を減圧留去することで、赤褐色の粘性オイルが得られた。1H-NMR測定を行い、シグナルの位置及び積分値から、得られた赤褐色の粘性オイルが目的とする化合物(メタクリロイルオキシエトキシエチル)アミノ−N,N−ビス(メチレンホスホン酸ジメチル)であることを確認した。収量は3.5g、収率は84%であった。
1H-NMR(400MHz、CDCl3):6.13(s、1H),5.62(s、1H),3.87(t、2H),3.80(d,12H),3.69(t,2H),3.60(t,2H),3.58(t,2H),3.54(d,4H)
A−1:(メタクリロイルオキシエトキシエチル)アミノ−N,N−ビス(メチレンホスホン酸)の合成
100ml三口ナスフラスコに(メタクリロイルオキシエトキシエチル)アミノ−N,N−ビス(メチレンホスホン酸ジメチル)(3.5g、8.4mmol)及びクロロホルム(28ml)を加えて、ブロモトリメチルシラン(東京化成製、6.88ml、50.4mmol)を20分かけて滴下した。滴下後、25℃で22時間攪拌した。攪拌停止後、ロータリーエバポレーターを用いて溶媒を減圧留去し、ここにメタノール(56ml)を加えて25℃で3時間攪拌した。攪拌停止後、ロータリーエバポレーターを用いて溶媒を減圧留去し、クロロホルムにより不純物を抽出して除去した。抽出後、水層を減圧下35℃で濃縮し、続けて真空乾燥(35℃、一日)を行うことで、白色の固体が得られた。1H-NMR測定を行い、シグナルの位置及び積分値から、得られた白色の固体がA−1:(メタクリロイルオキシエトキシエチル)アミノ−N,N−ビス(メチレンホスホン酸)であることを確認した。収量は2.2g、収率は72%であった。
1H-NMR(400MHz、D2O):6.12(s、1H),5.58(s、1H),3.90(t、2H),3.72(t,2H),3.62(t,2H),3.58(t,2H),3.54(d,4H)、1.89(s、3H)
(2−ヒドロキシエチル)アミノ−N,N−ビス(メチレンホスホン酸ジメチル)の合成
300ml三口ナスフラスコに2−アミノエタノール(東京化成製、21.4ml、350mmol)、パラホルムアルデヒド(東京化成製、24.7g、700mmol)、テトラヒドロフラン(和光純薬製、70ml)、を加えて65℃に加熱し、パラホルムアルデヒドが溶解するまで攪拌した。溶解後、ここにホスホン酸ジメチル(東京化成製、65.5ml、700mmol)を30分かけて滴下した。滴下後、系内を75℃にして還流させて、12時間攪拌した。攪拌停止後、室温まで放冷し、溶媒をロータリーエバポレーターを用いて減圧留去した。得られた溶液にクロロホルムを加えて、0.1N NaOH水溶液により洗浄し、溶媒をロータリーエバポレーターを用いて減圧留去し、続けて真空ポンプにより溶媒を減圧留去することで、無色の粘性オイルが得られた。1H-NMR測定を行い、シグナルの位置及び積分値から、得られた無色のオイルが(2−ヒドロキシエチル)アミノ−N,N−ビス(メチレンホスホン酸ジメチル)であることを確認した。収量は45g、収率は45%であった。
1H-NMR(400MHz、CDCl3):3.79(d,12H),3.64(t,2H),3.23(d,4H),2.96(d,2H)
N−(2−メタクリロイルオキシエチル)−カルバモイルオキシエチル〕アミノ−N,N−ビス(メチレンホスホン酸ジメチル)の合成
50ml三口ナスフラスコに(2−ヒドロキシエチル)アミノ−N,N−ビス(メチレンホスホン酸ジメチル)(3.05g、10mmol)、ジラウリン酸ジブチルスズ(IV)(和光純薬製、63.3μl、0.1mmol)、及びハイドロキノンモノメチルエーテル(12.4mg)を加えた後、2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネート(商品名;カレンズMOI、昭和電工製、1.42ml、10mmol)を10分かけて滴下した。滴下後、25℃で18時間攪拌した。攪拌停止後、無溶媒反応のため1H-NMR測定を行い、シグナルの位置及び積分値から、得られた無色の粘性オイルが〔N−(2−メタクリロイルオキシエチル)−カルバモイルオキシエチル〕アミノ−N,N−ビス(メチレンホスホン酸ジメチル)であることを確認し、反応が終了していることを確認した。得られたものの純度が高いため、精製せずに次の反応に用いることとした。
1H-NMR(400MHz、CDCl3):6.10(s、1H),5.55(s、1H),5.10(br、1H),4.22(t、2H),3.70(d,12H),3.62(t、2H),3.48(t、2H),3.20(d,4H),3.06(t、2H),1.90(s、3H)
A−2:〔N−(2−メタクリロイルオキシエチル)−カルバモイルオキシエチル〕アミノ−N,N−ビス(メチレンホスホン酸)の合成
100ml三口ナスフラスコに〔N−(2−メタクリロイルオキシエチル)−カルバモイルオキシエチル〕アミノ−N,N−ビス(メチレンホスホン酸ジメチル)(2.3g、5mmol)及びクロロホルム(16.7ml)を加えて、ブロモトリメチルシラン(東京化成製、4.1ml、30mmol)を20分かけて滴下した。滴下後、25℃で19時間攪拌した。攪拌停止後、ロータリーエバポレーターを用いて溶媒を減圧留去し、ここにメタノール33.3mlを加えて25℃で3時間攪拌した。攪拌停止後、ロータリーエバポレーターを用いて溶媒を減圧留去し、クロロホルムにより不純物を抽出して除去した。抽出後、水層を減圧下35℃で濃縮し、続けて真空乾燥(35℃、一日)を行うことで、薄ピンク色の高粘性オイルが得られた。1H-NMR測定を行い、シグナルの位置及び積分値から、得られた薄紫色の固体がA−2(〔N−(2−メタクリロイルオキシエチル)−カルバモイルオキシエチル〕アミノ−ビス(メチレンホスホン酸))であることを確認した。収量は1.9g、収率は2工程で94%であった。
1H-NMR(400MHz、D2O):6.10(s、1H),5.65(s、1H),4.36(t、2H),3.80(t、2H),3.65(t、2H),3.55(d,4H),3.33(t、2H),1.90(s、3H)
〔N−(2−メタクリロイルオキシエトキシエチル)−カルバモイルオキシエチル〕アミノ−N,N−ビス(メチレンホスホン酸ジメチル)の合成
50ml三口ナスフラスコに(2−ヒドロキシエチル)アミノ−N,N−ビス(メチレンホスホン酸ジメチル)(3.05g、10mmol)、ジラウリン酸ジブチルスズ(IV)(和光純薬製、63.3μl、0.1mmol)、及びハイドロキノンモノメチルエーテル(12.4mg)を加えた後、2−(2−メタクリロイルオキシ)エトキシエチルイソシアネート(商品名;カレンズMOI−EG、昭和電工製、1.78ml、10mmol)を10分かけて滴下した。滴下後、25℃で20時間攪拌した。攪拌停止後、無溶媒反応のため1H-NMR測定を行い、シグナルの位置及び積分値から、得られた無色の粘性オイルが〔N−(2−メタクリロイルオキシエトキシエチル)−カルバモイルオキシエチル〕アミノ−N,N−ビス(メチレンホスホン酸ジメチル)であることを確認し、反応が終了していることを確認した。得られたものの純度が高いため、精製せずに次の反応に用いることとした。
1H-NMR(400MHz、CDCl3):6.12(s、1H),5.58(s、1H),5.14(br、1H),4.27(t、2H),4.15(t、2H),3.73(d,12H),3.69(t、2H),3.54(t、2H),3.32(t、2H),3.21(d,4H),3.09(t、2H),1.90(s、3H)
A−3:〔N−(2−メタクリロイルオキシエトキシエチル)−カルバモイルオキシエチル〕アミノ−N,N−ビス(メチレンホスホン酸)の合成
100ml三口ナスフラスコに〔N−(2−メタクリロイルオキシエトキシエチル)−カルバモイルオキシエチル〕アミノ−N,N−ビス(メチレンホスホン酸ジメチル)(2.5g、5mmol)及びクロロホルム(16.7ml)を加えて、ブロモトリメチルシラン(東京化成製、4.1ml、30mmol)を20分かけて滴下した。滴下後、25℃で20時間攪拌した。攪拌停止後、ロータリーエバポレーターを用いて溶媒を減圧留去し、ここにメタノール33.3mlを加えて25℃で3時間攪拌した。攪拌停止後、ロータリーエバポレーターを用いて溶媒を減圧留去し、クロロホルムにより不純物を抽出して除去した。抽出後、水層を減圧下35℃で濃縮し、続けて真空乾燥(35℃、一日)を行うことで、薄ピンク色の高粘性オイルが得られた。1H-NMR測定を行い、シグナルの位置及び積分値から、得られた薄紫色の固体がA−3(〔N−(2−メタクリロイルオキシエトキシエチル)−カルバモイルオキシエチル〕アミノ−ビス(メチレンホスホン酸))であることを確認した。収量は2.1g、収率は2工程で95%であった。
1H-NMR(400MHz、D2O):6.12(s、1H),5.70(s、1H),4.45(t、2H),4.32(t、2H),3.88(t、2H),3.80(t、2H),3.65(t、2H),3.60(d,4H),3.33(t、2H),1.90(s、3H)
(3−ヒドロキシプロピル)アミノ−N,N−ビス(メチレンホスホン酸ジメチル)の合成
300ml三口ナスフラスコに3−アミノ−1−プロパノール(東京化成製、26.6ml、350mmol)、パラホルムアルデヒド(東京化成製、24.7g、700mmol)、テトラヒドロフラン(和光純薬製、70ml)、を加えて65℃に加熱し、パラホルムアルデヒドが溶解するまで攪拌した。溶解後、ここにホスホン酸ジメチル(東京化成製、65.5ml、700mmol)を30分かけて滴下した。滴下後、系内を75℃にして還流させて、12時間攪拌した。攪拌停止後、室温まで放冷し、溶媒をロータリーエバポレーターを用いて減圧留去した。得られた溶液にクロロホルムを加えて、0.1N NaOH水溶液により洗浄し、溶媒をロータリーエバポレーターを用いて減圧留去し、続けて真空ポンプにより溶媒を減圧留去することで、無色の粘性オイルが得られた。1H-NMR測定を行い、シグナルの位置及び積分値から、得られた無色のオイルが(3−ヒドロキシプロピル)アミノ−N,N−ビス(メチレンホスホン酸ジメチル)であることを確認した。収量は54g、収率は48%であった。
1H-NMR(400MHz、CDCl3):3.77(d,12H),3.63(t,2H),3.45(t,2H),3.23(d,4H),2.94(d,2H)
〔N−(2−メタクリロイルオキシエトキシエチル)−カルバモイルオキシプロピル〕アミノ−N,N−ビス(メチレンホスホン酸ジメチル)の合成
50ml三口ナスフラスコに(3−ヒドロキシプロピル)アミノ−N,N−ビス(メチレンホスホン酸ジメチル)(3.19g、10mmol)、ジラウリン酸ジブチルスズ(IV)(和光純薬製、63.3μl、0.1mmol)、及びハイドロキノンモノメチルエーテル(12.4mg)を加えた後、2−(2−メタクリロイルオキシ)エトキシエチルイソシアネート(商品名;カレンズMOI−EG、昭和電工製、1.78ml、10mmol)を10分かけて滴下した。滴下後、25℃で20時間攪拌した。攪拌停止後、無溶媒反応のため1H-NMR測定を行い、シグナルの位置及び積分値から、得られた無色の粘性オイルが〔N−(2−メタクリロイルオキシエトキシエチル)−カルバモイルオキシプロピル〕アミノ−N,N−ビス(メチレンホスホン酸ジメチル)であることを確認し、反応が終了していることを確認した。得られたものの純度が高いため、精製せずに次の反応に用いることとした。
1H-NMR(400MHz、CDCl3):6.12(s、1H),5.60(s、1H),5.15(br、1H),4.29(t、2H),4.15(t、2H),3.71(d,12H),3.65(t、2H),3.55(t、2H),3.45(t,2H),3.33(t、2H),3.20(d,4H),3.07(t、2H),1.93(s、3H)
A−4:〔N−(2−メタクリロイルオキシエトキシエチル)−カルバモイルオキシプロピル〕アミノ−N,N−ビス(メチレンホスホン酸)の合成
100ml三口ナスフラスコに〔N−(2−メタクリロイルオキシエトキシエチル)−カルバモイルオキシプロピル〕アミノ−N,N−ビス(メチレンホスホン酸ジメチル)(2.6g、5mmol)及びクロロホルム(16.7ml)を加えて、ブロモトリメチルシラン(東京化成製、4.1ml、30mmol)を20分かけて滴下した。滴下後、25℃で22時間攪拌した。攪拌停止後、ロータリーエバポレーターを用いて溶媒を減圧留去し、ここにメタノール33.3mlを加えて25℃で3時間攪拌した。攪拌停止後、ロータリーエバポレーターを用いて溶媒を減圧留去し、クロロホルムにより不純物を抽出して除去した。抽出後、水層を減圧下35℃で濃縮し、続けて真空乾燥(35℃、一日)を行うことで、薄ピンク色の高粘性オイルが得られた。1H-NMR測定を行い、シグナルの位置及び積分値から、得られた薄紫色の固体がA−4(〔N−(2−メタクリロイルオキシエトキシエチル)−カルバモイルオキシプロピル〕アミノ−N,N−ビス(メチレンホスホン酸))であることを確認した。収量は2.1g、収率は2工程で92%であった。
1H-NMR(400MHz、D2O):6.12(s、1H),5.62(s、1H),4.50(t、2H),4.35(t、2H),3.90(t、2H),3.82(t、2H),3.72(t、2H),3.65(t、2H),3.55(d,4H),3.30(t、2H),1.93(s、3H)
A−5は特許文献1(特表2006−514114号公報)の実施例1に記載の方法に従って合成し、1H-NMR測定を行うことで、目的の化合物が得られたことを確認した。
A−6は特許文献2(国際公開2013/083734号)の実施例8に記載の方法に従って合成し、1H-NMR測定を行うことで、目的の化合物が得られたことを確認した。
実施例1〜16及び比較例1〜8(歯科用プライマーの調製)
表1記載の配合量(重量部)で、ホスホン酸基を2つ有する重合性単量体(A−1〜A−6)、重合性単量体(B)を混合し得られた重合性単量体組成物100重量部にCQ0.25重量部、DABE0.45重量部、R972 2重量部を常温下で混合することによって歯科用重合性組成物である歯科用プライマー組成物を調製した。さらに、HEMA40重量部、NPGDMA20重量部、Bis−GMA40重量部、BAPO0.5重量部、CQ0.6重量部、DABE2重量部、R972 6重量部、Ar380 1.5重量部で混合したボンディング組成物を調製した。このプライマー組成物とボンディング組成物とを使用し、牛脂エナメル質及び牛歯象牙質との接着強度を下記方法に従って測定した。結果を表1にまとめて示す。
〔接着力試験方法〕
ウシ下顎前歯の唇面を流水下にて#80シリコン・カーバイド紙(日本研紙社製)で研磨して、エナメル質の平坦面を露出させたサンプル及び象牙質の平坦面を露出させたサンプルを得る。得られたサンプルを流水下にて#1000のシリコン・カーバイド紙(日本研紙社製)でさらに研磨した。研磨終了後、表面の水をエアブローすることで乾燥した。乾燥後の平滑面に、直径3mmの丸穴を有する厚さ約150μmの粘着テープを貼着し、接着面積を規定した。
上記作製したプライマー組成物を上記の丸穴内に筆で塗布し、そのまま20秒間放置してからエアーシリンジで乾燥させた。その上に、上記作製したボンディング組成物を筆で約100ミクロンの厚さに塗布し、歯科用可視光線照射器(モリタ社製、商品名「ペンキュア2000」)にて10秒間光照射することにより、塗布したプライマー組成物及びボンディング組成物を硬化させた。
得られたプライマー組成物及びボンディング組成物の硬化物の表面に歯科充填用コンポジットレジン(クラレノリタケデンタル社製、商品名「クリアフィルAP−X」(登録商標))を充填し、離型フィルム(ポリエステル)で被覆した。次いで、その離型フィルムの上にスライドガラスを載置して押しつけることで、前記コンポジットレジンの塗布面を平滑にした。続いて、前記離型フィルムを介して、前記コンポジットレジンに対して前記照射器「ペンキュア2000」を用いて20秒間光照射を行い、前記コンポジットレジンを硬化させた。
得られた歯科充填用コンポジットレジンの硬化物の表面に対して、市販の歯科用レジンセメント(クラレノリタケデンタル社製、商品名「パナビア21」)を用いてステンレス製円柱棒(直径7mm、長さ2.5cm)の一方の端面(円形断面)を接着した。接着後、当該サンプルを30分間室温で静置した後、蒸留水に浸漬した。接着試験供試サンプルはエナメル質、象牙質それぞれ16個ずつ作製し、37℃に保持した恒温器内に24時間静置した。16個のサンプルのうち8個については、接着初期の接着力を評価するため、24時間静置後ただちに接着強さを測定した。残りの8個については、接着耐久性を評価するため、さらに4℃の冷水と60℃の温水に交互に1分間浸漬する工程を1サイクルとする熱サイクルを100000サイクル行った後に接着強さを測定した。
上記の接着試験供試サンプルの引張接着強さを、万能試験機(島津製作所社製)にてクロスヘッドスピードを2mm/分に設定して測定し、平均値を引張接着強さとした。
上記の方法で得られた初期接着強さとサーマルサイクル後の接着強さを用いて、以下の式で、接着力の保持率を求めた。
接着力の保持率(%)=(サーマルサイクル後の接着強さ(MPa)/初期接着強さ(MPa))×100
表1に示すように、本発明に係る歯科用重合性組成物である歯科用プライマー組成物(実施例1〜16)は、エナメル質に対しては17MPa以上、象牙質に対しても14MPa以上の高い初期接着力を示し、さらにサーマルサイクル後のエナメル質及び象牙質に対する接着力もすべて10MPa以上である。この結果から、エナメル質及び象牙質のいずれに対してもサーマルサイクル後の接着力保持率が70%以上という、高い接着耐久性を発現した。特に、ウレタン結合及び充分なスペーサー長を有するA−3及びA−4では、サーマルサイクル後のエナメル質への接着力保持率が80%以上及び象牙質への接着力保持率が75%以上と高い接着耐久性を発現した。