JP6496481B2 - 甘味を提供若しくは調整するための組成物および方法ならびにそれらのスクリーニング方法 - Google Patents

甘味を提供若しくは調整するための組成物および方法ならびにそれらのスクリーニング方法 Download PDF

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Description

[発明の背景]
単糖および二糖の糖(グルコース、果糖、ショ糖)、糖アルコール、小分子ノンカロリー甘味料(サッカリン、サイクラミン酸、スクラロース)、ジペプチド(アスパルテーム、ネオテーム)およびタンパク質甘味料(モネリン、タウマチン、ブラゼイン)を包含する広範な甘味化合物が、食品添加物としての使用のため、および練り歯磨き粉から製薬学的製剤までの製品を加糖するために存在する。しかしながら、ヒトは、長年にわたり開発された人工ノンカロリー甘味料を上回る天然に存在する甘味料に対する好みを有することが明確であった。
2種のファミリーC Gタンパク質共役型受容体(GPCR)T1r2+T1r3(非特許文献1に総説される)のヘテロ二量体の組合せとしての主要甘味センサーの分子同定の前に、甘味は糖輸送体若しくは糖作動性陽イオンチャンネルに頼っているかもしれないと提案された(非特許文献2;非特許文献3;非特許文献4;非特許文献5)。グルコース輸送体(GLUT)、ナトリウム・グルコース共輸送体(SGLT)およびKATP代謝型センサーは身体全体および多くの特定の器官(例えば腸、膵、心、骨格筋、脳)におけるグルコース恒常性および代謝において重要な役割を演じている(非特許文献6:非特許文献7;非特許文献8;非特許文献9に総説される)。しかしながら、これらの重要なタンパク質の味細胞中の存在および機能はほとんど未知である。Liuら(非特許文献10)はラット茸状味細胞中でSUR1(KATPの一構成要素)を同定したが、しかしSUR1がラット有郭味細胞に非存在であることを見出した。Liuらは味細胞型特異的な発現を検査しなかった。Heveziら(非特許文献11)はマカクの味細胞/味蕾で潜在的に発現される遺伝子としてGLUT8、GLUT9、GLUT10、GLUT13、SLC2A4RG(GLUT4の調節物質)およびインスリン受容体を同定した。しかしながら、これらの著者は、味細胞中でのこれらの遺伝子の発現を確認しなかったか、若しくは特定の型の味細胞でそれらが発現されているかどうかを決定しなかった。
Bachmanov AA、Beauchamp、2007 DeSimone JA、Heck GL、Mierson S、Desimone SK.、1984 Mierson S、DeSimone SK、Heck GL、DeSimone JA.、1988 Simon SA、Labarca P、Robb R.、1989 Simon SA、1991 Scheepers A、Joost HG、Schurmann A.、2004 McTaggart JS、Clark RH、Ashcroft FM.、2010 Nichols CG.、2006 ZhaoとKeating、2007 Acta Histochemica、2010 PLoS One、2009
[発明の要約]
一局面において、口中で甘味を提供する若しくは高める分子の同定方法が、細胞中のグルコース輸送体タンパク質の発現若しくは活性に対する試験分子の影響についてスクリーニングすることにより提供される。一態様において、本方法は、試験分子をグルコース輸送体タンパク質を発現する哺乳動物細胞若しくは細胞株とin vitro培養条件下で接触させること;および該接触された細胞若しくは細胞株によるグルコース輸送体タンパク質の発現レベル若しくは機能的活性を測定することを必要とする。陽性若しくは陰性対照細胞若しくは細胞株のものを上回る試験分子と接触された細胞若しくは細胞株によるグルコース輸送体タンパク質のタンパク質発現若しくはグルコース輸送体タンパク質の機能的活性の増大が、甘味を提供する若しくは高める試験分子を同定する。
別の局面において、口中で甘味を提供する若しくは高める分子の同定方法が、ATP感受性K+チャンネル(KATP)を介してスルホニル尿素受容体(SUR)サブユニットタンパク質およびカリウム内向き整流性チャンネル(Kir)サブユニットタンパク質を発現する哺乳動物細胞若しくは細胞株に対する試験分子の影響をスクリーニングすることにより提供される。一態様において、該方法は、試験分子を、ATP感受性K+チャンネル(KATP)を介してスルホニル尿素受容体(SUR)サブユニットタンパク質およびカリウム内向き整流性チャンネル(Kir)サブユニットタンパク質を発現する哺乳動物細胞若しくは細胞株とin vitro培養条件下で接触させること、ならびに該接触された細胞若しくは細胞株中のKATPチャンネルの電気生理学的若しくは機能的活性を測定することを必要とする。陰性対照細胞若しくは細胞株のものと比較した試験分子と接触された細胞若しくは細胞株のKATPの電気生理学的若しくは機能的活性の減少若しくは阻害が、甘味を提供する若しくは高める試験分子を同定する。
別の局面において、口中で甘味を提供する若しくは高める分子の同定方法が、細胞中のSUR1タンパク質の結合若しくは核局在化に対する試験分子の影響についてスクリーニングすることにより提供される。一態様において、本方法は、試験分子をスルホニル尿素受容体1(SUR1)タンパク質を発現する哺乳動物細胞若しくは細胞株とin vitro培養条件下で接触させること;および培養物中のSUR1タンパク質への試験分子の結合を検出することを必要とする。陽性若しくは陰性対照細胞若しくは細胞株のものを上回る試験分子と接触された細胞若しくは細胞株でのSUR1への試験分子の有意の量の結合の存在が、甘味を提供する若しくは高める試験分子を同定する。
なお別の局面において、口中で甘味を提供する若しくは高めるこうした試験分子の使用が、こうした分子を含有する組成物がそうであるように提供される。
本発明の他の局面および利点は本発明の以下の詳細な記述から容易に明らかであろう。
図1Aから図1Dは糖輸送体、KATPグルコースセンサーおよびインスリン受容体のmRNAの味組織での発現を示す。
有郭(CV)味組織および味蕾を欠く「味以外(non−taste)」(NT)舌上皮組織から調製されたマウスcDNAからの糖輸送体、(GLUT2、GLUT4、GLUT8、GLUT9BおよびSGLT1)、ガストデューシン(GUST、味RNA対照)ならびにGAPDH(組織RNA対照)のPCR増幅(35サイクル)のゲル顕微鏡写真である。GAPDHは双方のcDNAサンプル中で発現され;ガストデューシンは味cDNA中でのみ発現される。GLUT8、GLUT9BおよびSGLT1は味cDNA中でより高度に発現される。これらの遺伝子を発現することが既知の組織から調製されたcDNAは、正しい大きさにされた産物を増幅するプライマーの能力を確認するための陽性対照(CTRL)としてはたらいた。 CV味組織および味蕾を欠く味以外NT舌上皮組織から調製されたマウスcDNAからのKATPサブユニット(SUR1、SUR2A、SUR2B、Kir6.1、Kir6.2)およびインスリン受容体(INSR)のPCR増幅(35サイクル)の顕微鏡写真である。SUR1、SUR2A、Kir6.1およびINSRは味cDNA中でより高度に発現される。これらの遺伝子を発現することが既知の組織から調製されたcDNAは、正しい大きさにされた産物を増幅するプライマーの能力を確認するためのCTRLとしてはたらいた。 CV(黒棒)味組織および味蕾を欠くNT(灰色棒)舌上皮組織中の糖輸送体、KATPサブユニットおよびインスリン受容体の発現を定量化するためのTaqmanリアルタイムPCRを使用することの結果を示すグラフである。味cDNAの上昇された発現がGLUT8、SGLT1およびインスリン受容体について観察された。各遺伝子の発現はそのサイクル閾値とGAPDHのものの間の比の対数としてプロットする。 CV(黒棒)味組織および味蕾を欠くNT(灰色棒)舌上皮組織中の糖輸送体、KATPサブユニットの発現を定量化するためのTaqmanリアルタイムPCRを使用することの結果を示すグラフである。味cDNAの上昇された発現がGLUT9、SUR1およびKir6.1について観察された。各遺伝子の発現はそのサイクル閾値とGAPDHのものの間の比の対数としてプロットする。 機能的KATPチャンネルがマウス味細胞に存在することを示すグラフである。KATPチャンネルのスルホニル尿素阻害剤グリベンクラミドはマウス茸状味細胞中の外向き(K)電流を阻害する。各データ点は7〜16個の細胞からである。 マウス味細胞中の100μMグリベンクラミドの適用により達成される電流の阻害に対し正規化された外向き電流(+40mVで)のグリベンクラミド阻害についての濃度反応関数を示すグラフである。各データ点は7〜16個の細胞からである。
[発明の詳細な記述]
本明細書に記述される方法および組成物は新規甘味料を同定および開発するための手段を提供する。I型味受容体の組合せすなわちT1R2およびT1R3は甘味応答の基礎にある主要な受容体と考えられているとは言え、発明者は口腔味細胞中の糖(すなわち甘さ)の検知および従って甘味応答のキネティクスにおけるある種の腸型糖輸送体タンパク質および膵臓内分泌型代謝型グルコースセンサーの意義のある役割を確認した。理論により束縛されることを願わず、発明者は、ナトリウム塩による甘味の増強がSGLT1を介する味細胞へのナトリウム依存性グルコース取り込みに部分的に依存していると仮定する。甘味は、味細胞代謝の糖応答性変化に応答したT1R3味細胞からのホルモン遊離を調節することにより高められることが提案されている。
I.定義
本明細書で使用される全部の科学および技術用語は、生物学、生物工学および分子生物学の分野の当業者にとって、ならびに本出願で使用される用語の多くへの一般的指針を当業者に提供する刊行された教科書を参照して、それらの既知のかつ通常の意味するところを有する。しかしながら明快さのため以下の用語を後に続くとおり具体的に定義する。すなわち、
「甘味を提供すること」により、試験分子が単独で口腔味細胞により検出される際に甘味を創成することを意味している。
「甘味を高めること」により、試験分子が、グルコース若しくは果糖のような天然の糖またはサッカリンのような人工甘味料、あるいは甘味が望ましい組成物例えば医薬品など中の何らかの他成分のような他の甘味料若しくは他の組成物成分の口腔味細胞により検出されるところの甘味を増大させ得ることを意味している。
本明細書で使用されるところの「糖輸送体タンパク質」は、グルコース、果糖および他者のような糖を能動的に輸送する、若しくは細胞内および細胞を横断する促進受動的輸送を提供するように機能するタンパク質を包含する。一態様において糖輸送体はナトリウム・グルコース共輸送体(SGLT)である。別の態様において糖輸送体はグルコース輸送体(GLUT)である。腸の糖輸送体のこれら2ファミリーはT1R3含有味細胞の甘味応答に寄与すると考えられている。これらの輸送体は甘味応答のキネティクス、例えば、それらが頂端輸送体を介して味細胞に取り込まれかつその後側底糖輸送体を介して味細胞から代謝若しくは輸送される場合に、なぜ人工甘味料は遅延された開始/停止を有する一方で炭水化物甘味料は迅速な開始/停止を有するのかに関与していると理論付けられている。本明細書に記述される方法で重要なSGLTタンパク質の1つがSGLT1若しくはSGLT3である。本明細書に記述される方法の重要なGLUTファミリータンパク質の1つはGLUT1、GLUT2、GLUT3、GLUT4、GLUT8およびGLUT9である。これらの糖輸送体のヌクレオチドおよび/若しくはタンパク質配列は公知であり、かつ、例えばGENBANK、例えば、受託番号AAF172491のマウスSGLT1;ヒトSGLT1 受託番号NP_000334.1;ヒトSGLT3、受託番号P31636;ヒトGLUT1、受託番号NP006507.2、マウスGLUT1、受託番号NP0355530.2に見出しうる。なお他者は公的データベースで容易に入手可能である。
「ATP感受性K+チャンネル(KATP)」はスルホニル尿素受容体(SUR)サブユニットタンパク質およびカリウム内向き整流性(Kir)チャンネルサブユニットタンパク質の複合体である。それは膵β細胞の細胞膜に見出され、そしてATPへのその代謝を手段としてグルコースの膵臓内分泌型センサーである。発明者によれば、KATPは味細胞でのT1R非依存性糖検知にもまた関与している。持続的に(tonically)活性若しくは別の分子により活性化される場合、このチャンネルは細胞膜を超えるカリウムの持続性(tonic)過分極性流出を制御する。該チャンネルがある種の分子との相互作用により阻害される場合、該過分極性流出が阻害され、かように膜を横断する電位を引き起こしてより陽性になる。膵臓内分泌細胞においては、この脱分極が電位依存性カルシウムイオンチャンネルを開放して細胞内カルシウムの上昇を引き起こし、これはプロインスリンの増大された分泌につながり得る。同様の機能が味細胞に存在することが予期される。
本明細書で使用されるところの用語「試験分子」は、甘味料若しくは甘さを調整するための分子として試験するためのいかなる既知若しくは新規の分子も指すことができる。こうした分子は典型的には、例えば動物での安全な使用のため前スクリーニングされたものを包含する分子の既知のライブラリーに見出しうる。適する試験分子は例えばAMESライブラリーに見出すことができ、そしてOtava、TimTec,Inc.、Chem
Bridge Corp.などのような供給業者から容易に得ることができる。例えばBhalら、2007 Mol.Pharmaceutics、4(4):556−560を参照されたい。本発明の方法により同定される試験分子/化合物は、甘味のみを提供するかまたは組成物の他成分の甘味を調整する(所望のとおり増大する、高める若しくは阻害する)化合物、小分子、cDNAのような核酸配列、またはペプチド若しくはポリペプチドでありうる。
本明細書で使用されるところの用語「スルホニル尿素化合物」(SU化合物)は、構造:
Figure 0006496481
を有する分子を指す。
これらのスルホニル尿素誘導体化合物は、フェニル環のp−置換(R)および尿素N’端基で終端する多様な基(R)をもつ中心のS−フェニルスルホニル尿素構造を含有する。スルホニル尿素はATP感受性K+チャンネル(KATP)のSURサブユニットに結合する。本明細書に記述される方法および組成物での使用のための望ましいスルホニル尿素分子若しくは誘導体は、SUR1を結合するがしかし膵インスリン産生を増大しないと機能的に記述されうる上の活性部分を含有する誘導体若しくは化合物である。同様に、神経血管組織に見出される非選択的ATP感受性陽イオンチャンネルを上方制御しないSUが、ありそうには望ましい化合物である。ある態様において、局所で作用しかつ腸で分解若しくは再吸収される既知のSUもまた、ありそうには本発明の方法での使用のための化合物である。同様に、他のチャンネルサブユニット若しくは受容体を結合することにおいて有用であるSUは、ありそうには甘さを高めるための望ましい化合物であり、そして本明細書に記述されるこれらの方法により容易に同定可能である化合物の一群でありうる。ある態様において、Rは、ハロゲン、場合によっては置換されているCないしC10アルキル、場合によっては置換されているCないしCシクロアルキル、場合によっては置換されているアリール、場合によっては置換されているヘテロアリール、場合によっては置換されている複素環、CN、NO、場合によっては置換されているCないしC10アルケニル、場合によっては置換されているCないしC10アルキニル、OH、CF、OCF、SCF、場合によっては置換されているCないしC10アルコキシ、COH、C(O)O(場合によっては置換されているCないしCアルキル)、C(O)NH、C(O)NH(場合によっては置換されているCないしCアルキル)、C(O)N(場合によっては置換されているCないしCアルキル)(場合によっては置換されているCないしCアルキル)、NHC(O)(場合によっては置換されているCないしCアルキル)、NHC(O)O(場合によっては置換されているCないしCアルキル)、NHC(O)NH、NHC(O)NH(場合によっては置換されているCないしCアルキル)、NHSO(場合によっては置換されているCないしCアルキル)、SO(場合によっては置換されているCないしCアルキル)、SONH、SONH(場合によっては置換されているCないしCアルキル)、若しくはN(場合によっては置換されているCないしCアルキル)(場合によっては置換されているCないしCアルキル)である。
ある態様において、Rは、場合によっては置換されているCないしC10アルキル、場合によっては置換されているCないしCシクロアルキル、場合によっては置換されているアリール、場合によっては置換されているヘテロアリール、場合によっては置換されている複素環、場合によっては置換されているCないしCアルケニル、場合によっては置換されているCないしCアルキニル、COH、C(O)O(場合によっては置換されているCないしCアルキル)、C(O)NH、C(O)NH(場合によっては置換されているCないしCアルキル)、C(O)N(場合によっては置換されているCないしCアルキル)(場合によっては置換されているCないしCアルキ
ル)、SO(場合によっては置換されているCないしCアルキル)、SONH、SONH(場合によっては置換されているCないしCアルキル)、若しくはN(場合によっては置換されているCないしCアルキル)(場合によっては置換されているCないしCアルキル)である。いくつかの態様において、Rはハロゲンである。
用語「アルキル」は、1ないし約10個の炭素原子および望ましくは1ないし約6個の炭素原子(すなわちC、C、C、C、C若しくはC)を有する直鎖状および分枝状双方の鎖の飽和脂肪族炭化水素基を指すのに本明細書で使用する。
用語「シクロアルキル」は、たった今記述されたところのしかし構造が環状でありかつ3ないし約8個の炭素原子を有するアルキル基に本明細書で使用する。一態様において、シクロアルキル基は3ないし約8個の炭素原子を有する。別の態様において、シクロアルキル基は約3ないし約6個の炭素原子(すなわちC、C、C若しくはC)を有する。
用語「アルケニル」は、1個若しくはそれ以上の炭素−炭素二重結合を有しかつ約3ないし約8個の炭素原子を含有する直鎖状および分枝状双方の鎖のアルキル基を指すのに本明細書で使用する。一態様において、用語アルケニルは1若しくは2個の炭素−炭素二重結合を有するアルキル基を指す。さらなる一態様において、アルケニル基は約2ないし約8個の炭素原子を有する。別の態様において、アルケニル基は約2ないし約6個の炭素原子を有する。
用語「アルキニル」は、1個若しくはそれ以上の炭素−炭素三重結合を有しかつ約3ないし約8個の炭素原子を有する直鎖状および分枝状双方の鎖のアルキル基を指すのに本明細書で使用する。一態様において、用語アルキニルは、1若しくは2個の炭素−炭素三重結合を有しかつ約3ないし約6個の炭素原子を有するアルキル基を指す。
本明細書で使用されるところの用語「アリール」は、単環または一緒に縮合若しくは結合された複数の芳香環を包含し得る芳香系を指し、ここで縮合若しくは結合された環の少なくとも一部は共役芳香系を形成する。アリール基は、限定されるものでないが、フェニル、ナフチル、ビフェニル、アントリル、テトラヒドロナフチル、フェナントリル、インデン、ベンゾナフチル、フルオレニルおよびカルバゾリルを挙げることができる。望ましくは、アリール基は場合によっては置換されているフェニル基である。
本明細書で使用されるところの用語「ヘテロアリール」は、最低1個および望ましくは1から約4個までのイオウ、酸素および窒素を包含するヘテロ原子環メンバーを包含する、場合によっては置換されている単、二、三若しくは他の多環芳香環系を指す。一態様において、ヘテロアリール基は、その中の炭素原子の範囲および特定の数の全部の組合せおよび下位組合せを包含する約3ないし約50個の炭素原子を含有し得る。別の態様において、ヘテロアリール基は約4ないし約10個の炭素を含有し得る。ヘテロアリール基の制限しない例は、例えばピロリル、フリル、ピリジル、1,2,4−チアジアゾリル、ピリミジル、チエニル、イソチアゾリル、イミダゾリル、テトラゾリル、ピラジニル、ピリミジル、キノリル、イソキノリル、チオフェニル、ベンゾチエニル、イソベンゾフリル、ピラゾリル、インドリル、プリニル、カルバゾリル、ベンズイミダゾリルおよびイソキサゾリルを包含する。
本明細書で使用されるところの用語「複素環の」は、飽和若しくは部分的に不飽和である安定な4ないし7員単環若しくは多環複素環を指す。複素環はそのバックボーンに炭素原子ならびに窒素、酸素およびイオウ原子を包含する1個若しくはそれ以上のヘテロ原子を有する。望ましくは、複素環は環のバックボーンに1ないし約4個のヘテロ原子を有す
る。複素環が環のバックボーンに窒素若しくはイオウ原子を含有する場合、該窒素若しくはイオウ原子は酸化されていることができる。用語「複素環の」は、複素環がアリール環に縮合されている多環もまた指す。複素環はヘテロ原子若しくは炭素原子によりアリール環に結合され得るが、但し結果として生じる複素環構造が化学的に安定である。多様な複素環基が当該技術分野で既知であり、そして、酸素含有環、窒素含有環、イオウ含有環、混合ヘテロ原子含有環、縮合ヘテロ原子含有環およびそれらの組合せを制限なしに包含する。複素環基は、限定されるものでないがフリル、テトラヒドロフラニル、ピラニル、ピロニル、ジオキシニル、ピロリル、ピラゾリル、イミダゾリル、トリアゾリル、ピリジル、ピペリジニル、2−オキソピペリジニル、ピリダジニル、ピリミジニル、ピラジニル、ピペラジニル、アゼピニル、トリアジニル、ピロリジニル、アゼピニル、オキサチオリル、オキサゾリル、チアゾリル、オキサジアゾリル、オキサトリアゾリル、ジオキサゾリル、オキサチアゾリル、オキサチオリル、オキサジニル、オキサチアジニル、モルホリニル、チアモルホリニル、チアモルホリニルスルホキシド、オキセピニル、チエピニル、ジアゼピニル、ベンゾフラニル、チオナフタレン、インドリル、ベナザゾリル(benazazolyl)、プリンジニル(purindinyl)、ピラノピロリル、イソインダゾリル、インドキサジニル、ベンゾキサゾリル、アントラニリル、ベンゾピラニル、キノリニル、イソキノリニル、ベンゾジアゾニル、ナプチルリジニル(napthylridinyl)、ベンゾチエニル、ピリドピリジニル、ベンゾキサジニル、キサンテニル、アクリジニルおよびプリニル環から選択される。
本明細書で使用されるところの用語「アルコキシ」はO(アルキル)基を指し、ここで結合の点は酸素原子を通じてでありかつ該アルキル基は場合によっては置換されている。
本明細書で使用されるところの用語「アリールオキシ」はO(アリール)基を指し、ここで結合の点は酸素原子を通じてでありかつ該アリール基は場合によっては置換されている。
本明細書で使用されるところの用語「アルキルカルボニル」はC(O)(アルキル)基を指し、ここで結合の点はカルボニル部分の炭素原子を通じてでありかつ該アルキル基は場合によっては置換されている。
本明細書で使用されるところの用語「アルキルカルボキシ」はC(O)O(アルキル)基を指し、ここで結合の点はカルボキシ部分の炭素原子を通じてでありかつ該アルキル基は場合によっては置換されている。
本明細書で使用されるところの用語「アルキルアミノ」は二級および三級双方のアミンを指し、ここで結合の点は窒素原子を通じてでありかつ該アルキル基は場合によっては置換されている。該アルキル基は同一若しくは異なることができる。
本明細書で使用されるところの用語「ハロゲン」はCl、Br、F若しくはI基を指す。
用語「場合によっては置換されている」は、基礎分子が、1個若しくはそれ以上の炭素、窒素、酸素若しくはイオウ原子で、ハロゲン、CN、OH、NO、アミノ、アリール、複素環、アルコキシ、アリールオキシ、アルコキシ、アルキルカルボニル、アルキルカルボキシ若しくはアルキルアミノを制限なしに包含する1置換基で置換されうることを示すが、但し結果として生じる部分は化学的に安定である。
本明細書で論考される化合物は、該細胞若しくは被験体により本発明の化合物を処理することにより形成される独特の生成物である「代謝物」もまた包含する。望ましくは、代
謝物はin vivoで形成される。
本明細書で使用されるところの「味細胞」は有郭乳頭および葉状乳頭を包含する哺乳動物の口腔中の味蕾で見出される哺乳動物の知覚細胞を指す。これらの細胞は光学および電子顕微鏡検査下でそれらの典型的な外観により同定され得る。それらはα−ガストデューシン、T1R1、2、3、T2R、TrpM5、Snap25、GLASTのような味特異的タンパク質の発現と一緒になって口腔位置によってもまた特定され得る。
本明細書で使用されるところの「味様細胞」は既知の味シグナル伝達タンパク質を発現する口腔の外側のいかなる細胞も指す。こうした細胞は、肺および鼻の孤立性化学受容性細胞、腸内分泌細胞、膵臓内分泌細胞および他者を包含する。これらの細胞に特徴的な既知の味シグナル伝達タンパク質の1つはT1r1、α−ガストデューシン、T1r2、T1r3、T2RおよびTrpm5である。
用語「天然の細胞」の使用により、示されるmRNA若しくはタンパク質を天然にすなわち内因性に発現する哺乳動物細胞若しくは細胞株を意味している。例えば、天然のグルコース輸送体を発現する口腔細胞若しくは細胞株は、GLUTを天然に発現する哺乳動物口腔味細胞若しくは口腔味細胞株である。
本明細書で使用されるところの「異種細胞若しくは細胞株」は、口腔味細胞でなくかつ/または所望のmRNA若しくはタンパク質を天然に発現しない細胞から樹立された哺乳動物細胞若しくは細胞株を意味している。例えば、グルコース輸送体タンパク質を発現する異種細胞は、所望のGLUTタンパク質を発現するよう遺伝子改変されているヒト腎臓細胞(HEK)細胞、またはグルコース輸送体タンパク質を天然に発現しないがしかし口腔細胞でない哺乳動物内分泌細胞若しくは細胞株でありうる。一態様において、有用な内分泌細胞若しくは細胞株は腸(intestinal)すなわち腸管(gut)内分泌細胞若しくは細胞株である。別の態様において、内分泌細胞若しくは細胞株は膵臓内分泌細胞若しくは細胞株である。なお他者が既知でありかつ下述される方法で提供されるとおり有用である。
本明細書で使用されるところの「形質転換細胞若しくは細胞株」は、それが天然に発現しない若しくはそれがそれを既知の量で天然に発現しない所望のmRNA若しくはタンパク質を発現するよう遺伝子改変されている哺乳動物細胞若しくは細胞株を指す。とりわけ望ましい細胞若しくは細胞株は、ヒト、サル、マウス、ラット、ウサギおよびハムスターを包含する哺乳動物由来のA549、WEHI、3T3、10T1/2、HEK 293細胞、PERC6、Saos、C2C12、L細胞、HT1080、HepG2および初代線維芽細胞、肝細胞および筋芽細胞のような細胞を制限なしに包含するいかなる哺乳動物種のなかからも選択される。該細胞を提供する哺乳動物種の選択は本発明の制限でなく;哺乳動物細胞の型すなわち上皮、腫瘍などもそうでない。
「発現レベル」により、所望のタンパク質コーディング配列(例えば糖輸送体)のヌクレオチド配列(例えばmRNA)の定量的発現若しくは所望のタンパク質(例えば糖輸送体)それ自身の定量的発現を意味している。
「機能的活性」により、細胞で発現される場合のある種のmRNA若しくはタンパク質すなわちチャンネルの期待される通常の活性を意味している。例えば、GLUTタンパク質の機能的活性は受動的な促進輸送活性のもの、すなわち細胞中へのすなわち細胞膜を横切るグルコースの取り込みすなわち輸送である。例えば、SGLTタンパク質の機能的活性は、細胞中へのすなわち細胞膜を横切るグルコースおよびナトリウムの能動的取り込みおよび/若しくは共輸送である。双方の型の輸送を示すための既知のアッセイが存在し、
そして下述される方法で使用しうる。適するアッセイの例は、実施例1、下位段落K、およびWilson−O’Brien、Endocrinology、149(3):917−24(2008)に見出し得る。KATPチャンネルの機能的活性は、電子生理学的活性、例えば、細胞の分極若しくは脱分極またはパッチクランプ若しくは記録電極で測定可能なK若しくは他の陽イオンの流動である。例えば実施例4で論考されるところのK電流の測定を参照されたい。こうした活性の別の測定方法は、脱分極を監視する指示色素、例えばCa++指示薬若しくは特定のイオン(K)の流動の使用による。
本明細書で使用されるところの「非特異的活性」により、能動的若しくは受動的グルコース輸送若しくはナトリウム輸送以外、またはカリウムイオン特異的チャンネル活性以外である細胞培養物中で試験分子により誘発される活性を意味している。非特異的活性は所望のmRNA若しくはタンパク質を発現しない細胞中で作用する試験分子を包含し得る。別の非特異的活性は所望の機能的活性を通常阻害する阻害性化合物である。
「カウンタースクリーニングアッセイ(counter−screen assay)」により、指定される試験化合物を非特異的活性についてスクリーニングし得る既知アッセイを意味している。
「哺乳動物」により、主にヒト、しかしまた最も一般的には、他の味から甘味を識別することが可能である天然の口腔細胞若しくは味細胞を有する霊長類、マウス、ラットなどのような実験哺乳動物も意味している。
「甘さについての動物の生理学的若しくは行動アッセイ」により、哺乳動物試験動物若しくはヒトの口腔味細胞に適用された化合物の増大若しくは低下された甘さに応答しての生理学的若しくは行動的反応に頼る既知アッセイを意味している。既知アッセイの例は、味覚計(例えばBuschら、Chem Senses.2009 May;34(4):341−8を参照されたい)、リッコメーター(lickometer)(例えばFudgeら、Horm Behav.2009 Sep;56(3):322−31を参照されたい)、条件味覚嫌悪(例えばAyestaran、PLoS One.2010 Oct 27;5(10):e15000を参照されたい)、味覚神経記録アッセイ(例えばDamakら、Chem Senses.2006 Mar;31(3):253−64を参照されたい)、および一口含みそして吐き出す(sip and spit)味覚アッセイ(例えばDelwicheら、Food Quality and Preference、1996 Mar;7(3−4)293−7を参照されたい)の使用を包含する。別の態様において、こうしたアッセイは電気生理学的応答若しくはカルシウム画像化または単離された味細胞、単離された味蕾若しくは味スライス(taste slice)を包含する。他の適するアッセイは当業者に既知であり、そして下述される方法で適用されうる。
用語「ある(a若しくはan)」は1若しくはそれ以上を指し、例えば「あるアッセイ(an assay)」は1若しくはそれ以上のアッセイを表すと理解される。であるから、用語「ある(a)」(若しくは「ある(an)」)、「1若しくはそれ以上」および「少なくとも1つ」は本明細書で互換性に使用する。本明細書で使用されるところの用語「約」は、別の方法で指定されない限り与えられる参照からの10%の変動性を意味している。本明細の多様な態様が「含んでなる」言語を使用して提示される一方、他の環境下では、関連する態様は、「よりなる」若しくは「より本質的になる」言語を使用して解釈および記述されることもまた意図している。
II.本発明の特定の方法
一態様において、口中で甘味を提供する若しくは高める分子の同定方法は、試験分子を
糖輸送体タンパク質を発現する哺乳動物細胞若しくは細胞株とin vitro培養条件下で接触させることを必要とする。所望の特定のアッセイおよび終点に依存して、適する培養条件は約37℃の温度;若しくは約32から40℃までの範囲を包含する。この温度は約10分ないし24時間維持される。いくつかの態様において、時間は最低約20分、30分、45分、1時間、3時間、5時間、10時間、15時間、20時間若しくはそれ以上である。遺伝子産物の発現レベル若しくは発現されるタンパク質の機能的活性に対する試験分子の影響を、発現レベルの測定のための上述されたところのいずれかの適する手段により評価および定量する。
陰性対照細胞若しくは細胞株のものを上回る試験分子と接触された細胞若しくは細胞株による糖輸送体タンパク質のタンパク質発現の増加若しくは糖輸送体タンパク質の機能的活性の増加が、甘味を提供する若しくは高める試験分子を同定する。すなわち、糖輸送タンパク質の通常の発現若しくは活性を変える試験分子の影響は、甘味を提供する若しくは高めることに対するその影響と関係する。該影響が、該試験分子が通常の発現レベルの維持を可能にするか若しくは糖輸送タンパク質のレベルを対照のものより上に増大させることである場合、その試験分子は潜在的新規甘味化合物、若しくは最終組成物例えば食品、医薬品などの他成分の甘さを高めることにおいて有用な化合物として有用であることが示される。該影響が、該試験分子が糖輸送タンパク質の発現レベルを低下させるか若しくはその機能的活性を低下させることである場合、該試験分子は組成物中に存在する場合に甘味に対する潜在的阻害効果を有することが示される。
本方法で一般に使用される陰性対照は、口中で甘味を提供しない若しくは高めないことが既知である対照分子により接触される同一細胞若しくは細胞株である。別の態様において、本方法で一般に使用される陰性対照は、試験若しくは対照分子により接触されない同一細胞若しくは細胞株である。従って、該方法での試験分子の影響の比較は、甘味を提供する若しくは高めることと相関する結果の同定を可能にする。
望ましくは、該方法で使用される細胞若しくは細胞株は、天然の口腔味細胞、若しくは糖輸送体タンパク質を発現する樹立された口腔味細胞株である。別の態様において、該細胞株若しくは細胞培養物は異種(口腔以外、味以外)細胞若しくは細胞株でありうる。なお別の態様において、細胞若しくは細胞株は糖輸送体を発現するよう形質転換された異種細胞若しくは細胞株でありうる。
本方法の実施において、糖輸送体は望ましくはSGLTである。一態様において輸送体はSGLT1である。別の態様において輸送体はSGLT3である。SGLTが発現される糖輸送体である場合、機能的活性はグルコースおよびナトリウムの能動的共輸送である。
本方法の別の態様、本方法の別の実施において、糖輸送体は望ましくはGLUTである。一態様において輸送体はGLUT2である。別の態様において輸送体はGLUT4である。別の態様において輸送体はGLUT8である。別の態様において輸送体はGLUT9である。別の態様において輸送体はGLUT1である。別の態様において輸送体はGLUT3である。なおさらなる態様において、GLUTファミリー輸送体の組合せが発現され、そして発現レベルおよび/若しくは機能的活性を双方とも測定する。GLUT輸送体が発現される糖輸送体である場合、該機能的活性はグルコースの受動的促進輸送である。
なお他の態様において、該方法を実施して他の糖輸送体例えば果糖の糖輸送体の活性の発現を検出および定量する。
なお他の態様において、該方法を実施して同一細胞若しくは細胞株中の多様な糖輸送体
の組合せ、例えば異なるGLUT若しくはSLGTおよびGLUTを検出する。
該方法は、試験される細胞若しくは細胞株中の試験分子の非特異的活性を排除するための試験分子についてのカウンタースクリーニングアッセイをさらに使用しうる。加えて、該方法は、試験分子を甘さに対する動物の生理学的応答、電気生理学的応答若しくは行動アッセイまたは単離された味細胞、単離された味蕾若しくは味スライスのカルシウム画像化にかけて、該試験分子が甘味を提供する若しくは高めることを確認することにより試験分子をスクリーニングすることをさらに包含しうる。
下で提供される実施例は本方法で有用な多様な方法およびアッセイを示す。
口中で甘味を提供する若しくは高める分子の別の同定方法は、試験分子を、ATP感受性K+チャンネル(KATP)を介してスルホニル尿素受容体(SUR例えばSUR1)サブユニットおよびカリウム内向き整流性チャンネル(Kir例えばKIR6.1)サブユニットを発現する哺乳動物細胞若しくは細胞株とin vitro培養条件下で接触させることを必要とする。上で示唆されたところの適する培養条件例えば37℃で約10分ないし24時間後に、KATP機能的活性に対する該試験分子の影響をいずれかの適する手段により評価および定量する。
一態様において、接触される細胞若しくは細胞株中のKATPチャンネルの電気生理学的若しくは機能的活性を電極により測定する。一態様において、電気生理学的活性はある種のカルシウムイオン指示薬若しくはカリウムイオン流動の変化である。一態様において、電気生理学的活性は細胞若しくは細胞株の分極若しくは脱分極である。一態様において、接触された細胞若しくは細胞株中のKATPチャンネルの電気生理学的若しくは機能的活性を測定して、細胞膜を越えるカリウムイオンの過分極性流出の増大若しくは減少を検出する。
例えば、陰性対照細胞若しくは細胞株のものと比較して試験分子と接触された細胞若しくは細胞株のKATPの電気生理学的若しくは機能的活性の低下若しくは阻害は、甘味を提供する若しくは高める試験分子を同定する。すなわち、細胞膜を横切るカリウムの正常の過分極性流出を変えるための試験分子の影響は甘味を提供する若しくは高めることと関係する。該影響が、該試験分子が通常のKATPチャンネル活性の維持若しくは対照のものより上の増大された流出を可能にすることである場合、その影響は、該試験分子が潜在的な新規甘味化合物として有用でないことを示す。あるいは、その結果は、該試験分子が組成物中に存在する場合に甘味に対する潜在的阻害効果を有することを示している。該影響が、試験分子が対照のものを超えて機能的活性を低下させることである場合、該試験分子は最終組成物例えば食品、医薬品などの他成分の甘さを高めることにおいて有用であることが示される。
一態様において、本方法で一般に使用される陰性対照は、口中で甘味を提供しない若しくは高めないことが既知である対照分子により接触される同一細胞若しくは細胞株である。別の態様において、本方法で一般に使用される陰性対照は、試験若しくは対照分子により接触されない同一細胞若しくは細胞株である。従って、該方法での試験分子の影響の比較が、甘味を提供する若しくは高めることと相関する結果の同定を可能にする。
望ましくは、該方法で使用される細胞若しくは細胞株は、ATP感受性K+チャンネルを発現する天然の口腔味細胞若しくは細胞株である。別の態様において、細胞株若しくは細胞培養物は異種(口腔以外、味以外)細胞若しくは細胞株、例えば膵細胞若しくは細胞株または内分泌細胞若しくは細胞株であることができる。なお別の態様において、細胞若しくは細胞株はATP感受性K+チャンネルを発現するよう形質転換された異種細胞若し
くは細胞株でありうる。
該方法は、試験される細胞若しくは細胞株中の該試験分子により媒介される非特異的活性を排除するための、例えば非特異的K+電気生理学的活性を排除するための該試験分子についてのカウンタースクリーニングアッセイをさらに使用しうる。加えて、該方法は、試験分子を甘さに対する動物の生理学的応答、電気生理学的応答若しくは行動アッセイ、または単離された味細胞、単離された味蕾若しくは味スライスのカルシウム画像化にかけて、該試験分子が甘味を提供する若しくは高めることを確認することにより試験分子をスクリーニングすることもまた包含しうる。
下に提供される実施例は本方法で有用な多様な方法およびアッセイを示す。
別の局面において、口中で甘味を提供する若しくは高める分子の同定方法は、試験分子を、スルホニル尿素受容体1(SUR1)を発現する哺乳動物細胞若しくは細胞株とin
vitro培養条件下で接触させることを必要とする。先行する方法で上述されたところの適する培養条件例えば37℃で約10分ないし24時間後に、該細胞培養物を評価して培養物中のSUR1への試験分子の結合を検出する。結合の検出は多様な慣習的結合アッセイにより行ってよい。陰性対照細胞若しくは細胞株のものを上回る試験分子と接触された細胞若しくは細胞株中のSUR1への試験分子の有意の量の結合の存在が、甘味を提供する若しくは高める試験分子を同定する。
本方法により、陰性対照は、SUR1を結合するがしかし口中で甘味を提供しない若しくは高めないことが既知の対照分子により接触される同一細胞若しくは細胞株を含んでなる。あるいは、陰性対照は、試験若しくは対照分子により接触されないまたはSUR1を結合しない対照分子により接触される同一細胞若しくは細胞株を含んでなる。
望ましくは、一態様において細胞若しくは細胞株は口腔味細胞若しくは口腔味細胞株である。あるいは、細胞若しくは細胞株はSUR1を発現する異種細胞である。なお別の態様において、細胞若しくは細胞株はSUR1を発現するよう操作されている形質転換された細胞若しくは細胞株である。ある態様において、細胞若しくは細胞株は上述されたところの内分泌細胞株である。
一態様において、試験分子とSUR1受容体サブユニットの間の結合は試験分子に結合された標識を使用する結合アッセイにより検出する。慣習的標識を使用する慣習的結合アッセイを本アッセイで使用しうる。慣習的な検出可能な標識は、酵素、蛍光色素、発光若しくは化学発光物質または放射活性物質を包含しうる。こうした標識の試験分子との会合方法は当業者に既知である。従って、試験分子へのSUR1結合を検出するために、一態様において、SUR1を発現する哺乳動物細胞若しくは細胞株を、検出可能な標識で標識されている試験分子若しくは化合物と接触させる。該細胞をその後洗浄していかなる結合されない標識された試験分子若しくは化合物も除去する。該細胞をその後分析して、検出可能な標識を検出することにより結合された試験分子−SUR1複合体の存在を検出する。
該方法はさらに、試験される細胞若しくは細胞株中の試験分子の非特異的活性を排除する、例えばSUR1以外の結合活性を排除するための試験分子についてのカウンタースクリーニングアッセイを使用しうる。カウンタースクリーニングアッセイは同時に実施され、ここでは同じ方法段階が哺乳動物細胞若しくはSUR1を発現しない細胞株を使用して実施される。該カウンタースクリーニングアッセイは陰性対照として作用し、そして発現されたSUR1に結合する試験化合物の検出を見込む。
加えて、該方法は、試験分子を甘さに対する動物の生理学的応答、電気生理学的応答若しくは行動アッセイ、または単離された味細胞、単離された味蕾若しくは味スライスのカルシウム画像化にかけて、該試験分子が甘味を提供する若しくは高めることを確認することにより試験分子をスクリーニングすることをさらに包含しうる。
下に提供される実施例は本方法で有用な多様な方法およびアッセイを示す。
口中で甘味を提供する若しくは高める分子のなお別の同定方法は、試験分子を、ATP感受性K+チャンネル(KATP)を介してスルホニル尿素受容体(SUR例えばSUR1)サブユニットおよびカリウム内向き整流性チャンネル(Kir例えばKIR6.1)サブユニットを発現する哺乳動物細胞若しくは細胞株とin vitro培養条件下で接触させることを含んでなる。適する培養条件、例えば37℃で約10分ないし約24時間後に、接触された細胞若しくは細胞株中のSUR1の核局在化に対する試験分子の影響を、実施例1および2に記述されるところの間接的免疫蛍光共焦点顕微鏡検査のようないずれかの適する手段により評価、測定かつ/若しくは定量する。陰性対照細胞若しくは細胞株中のSUR1の核局在化に関する接触された細胞若しくは細胞株中のSUR1の核局在化の変化は、甘味を提供する若しくは調整する試験分子を示す。
一態様において、本方法で一般に使用される陰性対照は、口中で甘味を提供しない若しくは高めないことが既知である対照分子により接触される同一細胞若しくは細胞株である。別の態様において、本方法で一般に使用される陰性対照は、試験若しくは対照分子により接触されない同一細胞若しくは細胞株である。従って、該方法における試験分子の効果の比較は、甘味を提供する若しくは高めることと相関する結果の同定を可能にする。
望ましくは、該方法で使用される細胞若しくは細胞株はATP感受性K+チャンネルを発現する天然の口腔味細胞若しくは細胞株である。別の態様において、該細胞株若しくは細胞培養物は異種(口腔以外、味以外)細胞若しくは細胞株、例えば膵細胞若しくは細胞株または内分泌細胞若しくは細胞株でありうる。なお別の態様において、細胞若しくは細胞株はATP感受性K+チャンネルを発現するよう形質転換された異種細胞若しくは細胞株でありうる。
該方法は、試験される細胞若しくは細胞株中で試験分子により媒介される非特異的活性を排除する、例えば非特異的核局在化を排除する、若しくは望ましくない特性をもつ試験分子を排除するための該試験分子についてのカウンタースクリーニングアッセイをさらに使用しうる。加えて、該方法は、試験分子を、甘さに対する動物の生理学的応答、電気生理学的応答若しくは行動アッセイまたは単離された味細胞、単離された味蕾若しくは味スライスのカルシウム画像化にかけて、該該試験分子が甘味を提供する若しくは高めることを確認することにより試験分子をスクリーニングすることをさらに包含しうる。
III.該方法の実施で有用な一般的方法/アッセイ
下に提供される実施例は本方法で有用な多様な方法およびアッセイを示す。上で指定される方法で有用な慣習的方法の1つが発現レベルの多様な測定手段である。遺伝子産物の発現レベルは、タンパク質若しくは核酸の測定によるを包含する慣習的手段を使用して測定しうる。発現されたタンパク質の発現レベルの測定は、発現されるタンパク質に向けられるいかなる適するリガンド、例えばタンパク質を検出するための抗体(若しくはいずれかの第二のバイオマーカーに対する抗体)も使用しうる。こうした抗体は現在当該技術分野で現存しうるか、若しくは現在商業的に使用されうるか、または免疫学の分野で現在普遍的な技術により開発されうる。同様に、該リガンドは、使用されるアッセイ形式に依存して検出可能なシグナルを提供することが可能な試薬でタグをつける若しくは標識することができる。こうした標識は、単独でまたは他の組成物若しくは化合物と共同して検出可
能なシグナルを提供することが可能である。例えばサンドイッチELISAでのように1種以上のリガンドをある診断方法で使用する場合、標識は望ましくは検出可能なシグナルを生じるように相互作用的である。最も望ましくは、標識は視覚的に例えば比色的に検出可能である。
本発明の方法で利用しうる他の標識系は他の手段により検出可能であり、例えば、その中に色素が埋め込まれている着色ラテックス微粒子(Bangs Laboratories、インディアナ州)を、適応可能なアッセイで結果として生じるタンパク質−リガンド複合体の存在を示す視覚的シグナルを提供するための酵素の代わりに使用しうる。なお他の標識は蛍光化合物、放射活性化合物若しくは元素を包含する。ペプチド模倣物のような生物学的サンプル中のタンパク質の検出のための他の試薬、SE−CADを検出することが可能な合成化合物を、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)、免疫組織化学などのような生物学的サンプル中のSE−CADタンパク質の定量的検出のための他のアッセイ形式で使用しうる。
発現される核酸のレベルの測定は当該技術分野で既知の慣習的技術を使用しうる。こうした方法は、ポリヌクレオチドのハイブリダイゼーション分析に基づく方法、ポリヌクレオチドのシークエンシングに基づく方法、プロテオミクスに基づく方法若しくは免疫化学技術を包含する。サンプル中のmRNA発現の定量のための当該技術分野で既知の最も一般的に使用される方法は、ノーザンブロッティングおよびインシトゥーハイブリダイゼーション;リボヌクレアーゼ保護アッセイ;ならびに逆転写、リアルタイムポリメラーゼ連鎖反応(RT−PCR)若しくはqPCRのようなPCRに基づく方法を包含する。あるいは、特異的DNA−タンパク質二重鎖を認識し得る抗体を使用しうる。本明細書に記述される方法はそれらを実施するために選択される特定の技術により制限されない。
同様に、本明細書に記述される方法のいずれも、口中で甘味を提供若しくは調整する試験分子を同定するのに使用されるハイスループットスクリーニングアッセイを使用しうる。一態様において、こうしたアッセイは、異なる選択された試験分子(例えばヌクレオチド配列、アミノ酸配列、小分子など)を、特定の糖輸送タンパク質を発現する哺乳動物口腔細胞若しくは細胞株とマルチウェルプレートの各個々のウェル中で接触させることを必要とする。一態様において、その細胞は、前記細胞が糖輸送タンパク質を発現する場合のみルシフェラーゼ(若しくは別のマーカー遺伝子)を発現する発現系(プロモーター、タンパク質、マーカー遺伝子)でトランスフェクトされている。化合物が適切な培養条件下で発現する細胞に曝露された後に、マーカー遺伝子(すなわちルシフェラーゼ)のレベルを慣習的に測定する。試験分子のいずれかにより引き起こされる、該細胞により通常発現される特定の糖輸送タンパク質の発現のレベルの変化が、各ウェル中の該マーカーの発現若しくは発現の欠如と相関する。
本明細書に記述される方法での使用のための他の慣習的アッセイおよび技術もまた存在し、その方法は本明細書で参照される刊行物に記述されている。こうした他のアッセイ形式を使用することができ、かつ、本明細書に記述されるアッセイ形式は制限でない。
本明細書で同定される試験分子に対する構造的類似性を有する化合物は、化学的実体若しくはフラグメントが既知の化合物若しくは試験分子、例えば本明細書に記述されるSU若しくはGLUT活性化因子またはSLGT1活性化因子と会合するか若しくはそれらを模倣するそれらの能力についてスクリーニングしかつ選択される一連の段階によって、コンピュータで評価かつ設計してもまたよい。当業者は、これらのペプチドの構造を模倣する、およびより具体的にはSUR1受容体と結合する構造を同定するそれらの能力についての化学的実体若しくはフラグメントのいくつかのスクリーニング方法の1つを使用しうる。この方法は、例えばコンピュータ画面上での三次元構造の目視検査により開始しうる
。選択されたフラグメント若しくは化学的実体をその後、構造的類似性を決定することへの多様な方向に配置しうるか、若しくは受容体の推定結合部位内でドッキングしうる。
本明細書の方法により同定されるものに基づき新たな試験分子を設計する方法でもまた補助しうる特化されたコンピュータプログラムは、オックスフォード大学、英国オックスフォードから入手可能なGRIDプログラム(P.J.Goodford、J.Med.Chem.、1985 28:849−857);Molecular Simulations、マサチューセッツ州バーリントンから入手可能なMCSSプログラム(A.MirankerとM.Karplus、Proteins:Structure,Function and Genetics、1991 11:29−34);Scripps Research Institute、カリフォルニア州ラホヤから入手可能なAUTODOCKプログラム(D.S.GoodsellとA.J.Olsen、Proteins:Structure,Function,and Genetics、1990 8:195−202);およびカリフォルニア大学、カリフォルニア州サンフランシスコから入手可能なDOCKプログラム(I.D.Kuntzら、J.Mol.Biol.、1982 161:269−288)、ならびにQuantaおよびSybylのようなソフトウェア、次いでCHARMMおよびAMBERのような標準的分子力学力場でのエネルギー最小化および分子ダイナミクスを包含する。小分子化合物の付加的な商業的に入手可能なコンピュータデータベースは、Cambridge Structural
Database、Fine Chemical DatabaseおよびCONCORDデータベースを包含する(総説についてはRusinko,A.、1993、Chem.Des.Auto.News、8:44−47を参照されたい。
適する化学的実体若しくはフラグメントが一旦選択されれば、それらを単一化合物に集成し得る。集成は、受容体の構造に関してコンピュータ画面に表示される三次元像上での相互に対するフラグメントの関係の目視検査により進めてよい。個々の化学的実体若しくはフラグメントを結合する際に当業者を補助するための有用なプログラムは、カリフォルニア大学、カリフォルニア州バークレイから入手可能であるCAVEATプログラム(P.A.Bartlettら、“CAVEAT:A Program to Facilitate the Structure−Derived Design of Biologically Active Molecules”、Molecular Recognition in Chemical and Biological Problems“、Special Pub.中、Royal Chem.Soc.78、pp.182−196(1989)];MACCS−3Dデータベース(MDL Information Systems、カリフォルニア州サンレアンドロ)のような3Dデータベースシステム(例えばY.C.Martin、J.Med.Chem.、1992 35:2145−2154を参照されたい);およびMolecular Simulations、マサチューセッツ州バーリントンから入手可能なHOOKプログラムを包含する。
本明細書に記述される試験分子を模倣する化合物は、Biosym Technologies、カリフォルニア州サンディエゴから入手可能なLUDIプログラム(H.−J.Bohm、J.Comp.Aid.Molec.Design、1992 6:61−78);Molecular Simulations、マサチューセッツ州バーリントンから入手可能なLEGENDプログラム(Y.NishibataとA.Itai、Tetrahedron、1991 47:8985);およびTripos Associates、ミズーリ州セントルイスから入手可能なLeapFrogプログラムのような方法を使用して、全体として若しくは「新たに」設計しうる。他の分子モデル化技術もまた使用しうる。例えばN.C.Cohenら、J.Med.Chem.、1990 33:883−894を参照されたい。M.A.NaviaとM.A.Murcko、Cu
rrent Opinions in Structural Biology、1992 2:202−210もまた参照されたい。例えば、試験化合物の構造が既知である場合、試験化合物のモデルを標的受容体のモデルに重ね合わせうる。この段階を実施するための多数の方法および技術が当該技術分野で既知であり、そのいずれも使用しうる。例えばP.S.Farmer、Drug Design、Ariens,E.J.編、Vol.10、pp 119−143(Academic Press、ニューヨーク、1980);米国特許第5,331,573号明細書;米国特許第5,500,807号明細書;C.Verlinde、Structure、1994 2:577−587;およびI.D.Kuntz、Science、1992 257:1078−1082を参照されたい。本明細書に記述されるモデル構築技術およびコンピュータ評価システムは制限でない。
かように、これらのコンピュータ評価システムを使用して、多数の化合物を迅速かつ容易に検査することができ、そして高価かつ非常に長い生物学的試験を回避しうる。さらに、多くの化合物の実際の合成の必要性が効果的に排除される。
IV.組成物
モデル化技術により一旦構築されれば、本明細書に記述される方法のいずれかにより同定される提案される新たな試験分子、若しくはこれらの方法でのその同定により新たな用途を有することが示される既知分子を、生物活性および適合性についてさらに試験しうる。こうした試験は実施例のin vitroアッセイのような標準的技術を使用して最終組成物の他成分を用いて実施する。本明細書の使用のための適するアッセイは、限定されるものでないが下に実施例に示されるアッセイを挙げることができる。他のアッセイ形式を使用することができ、そしてアッセイ形式の選択は該方法の制限でない。
例えば、本発明のある態様において、甘味を提供する若しくは甘味を強化することを示す試験分子は、スルホニル尿素(SU)化合物若しくは誘導体、またはペプチド若しくはタンパク質であるはSUR1受容体と結合するために必要な同一の三次元形状を有する。例えば、局所で作用することが既知であるかまたは腸管で分解されるか若しくは再吸収されるスルホニル尿素化合物若しくは誘導体は有用な試験分子の一分類を提供する。あるいは、糖尿病若しくは心疾患を処置するための制限される活性を有するSUは、本発明の組成物のための有用な試験分子であることもまた予期される。同様に、他のチャンネル若しくは受容体に結合することが可能であるSUの誘導体が同様に有用でありうる。
他の態様において、甘味を提供する若しくは加糖を高めることが示されている試験分子はGLUTの既知の活性化因子の誘導体である。こうした既知の化合物の1つは、ある種のシアン化物およびアジド様化合物のような酸化的ホスフィレーション(phosphylation)の阻害剤(Shettyら、1993 JBiolChem、268(23):17225−17232);若しくはTNFα、ホルボールエステル、オカダ酸および8−ブロモ−cAMP(Stephensら 1992 JBiolChem、267(12):8336−41);HIF−1ならびにグルコースである。
なお別の態様において、甘味を提供する若しくは加糖を高めることが示されている試験分子は、イソプロテレノール若しくはテルブチリンのようなSGLT−1の既知の活性化因子の誘導体(Aschenbachら、2002、J.Nutrition、132:1254−57)、リポ多糖若しくはグルコースである。
本明細書に記述される化合物、ならびにこれらの方法により有用と同定されかつ上述されたところのスルホニル尿素化合物若しくは誘導体は、描かれる構造の生物活性を特徴とする本明細書に提供される構造の互変異性体を包含しうる。さらに、本明細書に記述され
る化合物は製薬学的若しくは生理学的に許容できる酸、塩基、アルカリ金属およびアルカリ土類金属由来の塩の形態で使用し得る。製薬学的に許容できる塩は、例えば酢酸、プロピオン酸、乳酸、クエン酸、酒石酸、コハク酸、フマル酸、マレイン酸、マロン酸、マンデル酸、リンゴ酸、フタル酸、塩酸、臭化水素酸、リン酸、硝酸、硫酸、メタンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、トルエンスルホン酸、カンファースルホン酸および類似の既知の許容できる酸を包含する有機および無機酸から形成し得る。塩はまた、例えばナトリウム、リチウム若しくはカリウムを包含する無機塩基、望ましくはアルカリ金属塩、ならびに、アンモニウム塩、モノ、ジおよびトリメチルアンモニウム、モノ、ジおよびトリエチルアンモニウム、モノ、ジおよびトリプロピルアンモニウム(イソおよびノルマル)、エチルジメチルアンモニウム、ベンジルジメチルアンモニウム、シクロヘキシルアンモニウム、ベンジルアンモニウム、ジベンジルアンモニウム、ピペリジニウム、モルホリニウム、ピロリジニウム、ピペラジニウム、1−メチルピペリジニウム、4−エチルモルホリニウム、1−イソプロピルピロリジニウム、1,4−ジメチルピペラジニウム、1−n−ブチルピペリジニウム、2−メチルピペリジニウム、1−エチル−2−メチルピペリジニウム、モノ、ジおよびトリエタノールアンモニウム、エチルジエタノールアンモニウム、n−ブチルモノエタノールアンモニウム、トリス(ヒドロキシメチル)メチルアンモニウム、フェニルモノエタノールアンモニウムなどのような有機塩基からも形成されうる。
生理学的に許容できるアルカリ塩およびアルカリ土類金属塩は、エステルおよびカルバメートの形態のナトリウム、カリウム、カルシウムおよびマグネシウム塩を制限なしに包含し得る。
これらの塩ならびに本明細書に記述される他の化合物は、そうした形態で投与される場合にin vivoで活性部分に転化するエステル、カルバメートの形態および他の慣習的「プロドラッグ」の形態にあり得る。一態様において、プロドラッグはエステルである。例えばB.TestaとJ.Caldwell、“Prodrugs Revisited:The “Ad Hoc”Approach as a Complement to Ligand Design”、Medicinal Research Reviews、16(3):233−241、編、John Wiley&Sons(1996)を参照されたい。
本明細書に記述されるとおり、本明細書に記述される化合物および/またはそれらの塩、プロドラッグ若しくは互変異性体は、本明細書に記述されるところの治療若しくは予防目的で送達される。
本明細書に記述される化合物は、商業的に入手可能な出発原料若しくは文献の手順を使用して製造し得る出発原料から当業者により容易に製造される。
上で論考された分子/化合物は、描かれる構造の生物活性を特徴とする本明細書で提供される構造の互変異性体を包含しうる。さらに、該化合物は、製薬学的若しくは生理学的に許容できる酸、塩基、アルカリ金属およびアルカリ土類金属由来の塩の形態でもまた使用しうる。
本明細書に記述される組成物は、それらの用途に依存して未希釈でまたは投与のための1種若しくはそれ以上の賦形剤とともに処方しうる。当業者は、こうした組成物に添加すべき適する付加的な成分を決定することが容易に可能であろう。組成物は固体若しくは液体でありうるのみならず、しかし付加的な固体および/若しくは液体担体を含有しうる。該担体は乾燥若しくは液体の形態にあることができ、そして摂取に安全でありかつ/若しくは製薬学的に許容できなければならない。
これらの方法により同定される試験分子は一態様において甘味料としてそれら自身有用である。あるいは、これらの試験分子は、ありそうには、他の既知の天然若しくは人工甘味料の甘味を高めてこうした甘味料をヒト消費者により訴えるようにするはずである。試験分子を添加しうるなお他の組成物は、添加された甘味料を必要とする食品、食品添加物、飲料、および経口で投与される製剤のような他の製品を包含する。本発明の化合物は、天然若しくは人工甘味料が現在使用されているいかなる組成物(例えば甘味料、食品添加物、飲料若しくは製剤)でも有用であることが予期される。これらの組成物(上の方法により同定される新たな若しくは既知の分子若しくは化合物は、哺乳動物味細胞を上述されたところの組成物とin vivoで接触させることによる口中の甘味のいかなる提供若しくは調整方法でも使用しうる。
以下の実施例は具体的に説明するのみであり、そして本発明に対する制限であることを意図していない。
V.実施例
われわれはT1r非依存性甘味の性質を検査し、そしてT1r以外の複数の糖輸送体および糖検知分子の味細胞中の存在を確認した。われわれは、味細胞がグルコース輸送体および他組織で糖センサーとしてはたらく代謝センサーを発現しているかどうか確認することを欲した。RT−PCR、qPCR、インシトゥーハイブリダイゼーションおよび免疫組織化学により、われわれは味細胞が数種のグルコース輸送体(GLUT2、GLUT4、GLUT8およびGLUT9)、ナトリウム・グルコース共輸送体(SGLT1)、KATP代謝センサーの2成分(SUR1およびKir6.1)を発現し、また、インスリン受容体が味細胞で選択的に発現されたことを確認した。甘味における役割と矛盾せず、GLUT4、SGLT1およびSUR1はT1r3陽性味細胞で優先的、選択的若しくは排他的に発現されることを見出した。
電気生理学的記録が、マウス茸状味細胞の全外向き電流のほぼ20%がスルホニル尿素で阻害可能なKATPチャンネルから構成されたことを確認した。T1r3を発現する味細胞の圧倒的大多数がSUR1もまた発現し、そして逆もまた真であるため、発明者は、KATPチャンネルが味細胞のT1r3サブセットのKチャンネルの主要部分を構成すると仮定する。味細胞で発現されるグルコースセンサーおよびKATPは、従って、味細胞の甘味応答性サブセットにおける糖のT1r非依存性甘味のメディエーターとしてはたらく。
材料および方法
A.試薬
合成オリゴヌクレオチドはGenelink(ニューヨーク州ホーソーン)から購入した。プラスミドおよびDNAフラグメント精製のためのキットはQiagen(カリフォルニア州バレンシア)からであった。制限エンドヌクレアーゼはNew England
Biolabs(マサチューセッツ州ビバリー)からであった。ディスパーゼおよびコラゲナーゼAはRoche(インディアナ州インディアナポリス)からであった。抗SNAP−25抗体はDr.Paul Breslinからの贈与物であり;抗SLGT1抗体はDr.Soraya Shirazi−Beecheyからの贈与物であった。
B.野生型およびトランスジェニックマウス
全実験は研究における動物の保護および使用についてのNIHガイドラインのもとで実施し、そしてMonell若しくはユタ州立大学の施設動物管理使用委員会により承認さ
れた。本研究に使用された全マウスはC57BL/6J背景であった。T1r3(T1r3−GFP)およびTrpM5(TrpM5−GFP)のためのプロモーター下にGFPを発現するトランスジェニックマウスを以前に記述された(Clapp TRら、2006)とおり生成した。
C.全RNAの単離および逆転写
2匹の成体(2〜10月齢)C57BL/6マウスを頸部脱臼により殺し、そしてそれらの舌を摘出し、2mM EGTAを含有するPBS溶液に入れ、そしてCV乳頭を含有する上皮を、下にある筋組織からの汚染を最小限にするよう注意を払い剥離した。味蕾を欠く味以外の舌上皮を同様の方法で舌の腹側表面から単離した。全RNAは、製造元の説明書に従ってInvitrogenからのPure−Link RNAミニキット(カタログ番号12183018A)を使用して単離した。汚染するゲノムDNAを、Pure−Linkデオキシリボヌクレアーゼ(カタログ番号12185−010)を使用してRNA単離の間にカラム中で消化した。RNA濃度をNanoDrop装置(ND−1000、Thermo Scientific)を使用して測定した。約500ngの全RNAをInvitrogenからのqRT−PCRのためのSuperScript III First−Strand Synthesis SuperMix(カタログ番号11752−050)を使用して逆転写した。
D.RT−PCRおよびqPCR
研究された各遺伝子の発現をInvitrogenからのPCR SuperMix(カタログ番号10572014)を使用するPCRにより確認した。プライマーはPrimer3(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/tools/primer−blast/)を使用して設計した。各プライマーが異なるエキソンからであるような全プライマー対を選んだ。各遺伝子に使用したプライマーを表1に提供する。
Figure 0006496481
GAPDHプライマーを用いる逆転写(RT)−PCRを使用して成功裏のmRNA単離およびRT反応を確認した。ガストデューシンプライマーを用いるRT−PCRを使用して味および味以外のRNAの特異性を確認した。問い合わせられた(queried)遺伝子が発現されることが既に知られていた組織からのcDNAを陽性対照として使用した。PCR産物を1.5%アガロースゲルで分離し、そしてUV照明下に臭化エチジウムで可視化した。
各遺伝子の発現を、レポーターとしてのFAM色素、5’端の副溝結合体部分、3’端の非蛍光クエンチャー色素および受動的参照標準としてのROXを使用してTaqman
Gene Expression(Applied Biosystems)を使用するqPCRにより定量した。Taqman FASTカスタムプレートを内部標準としてのGAPDHおよび製造対照としての18s rRNAとともに使用した。各遺伝子についてのTaqmanプローブおよびプライマーの組合せはApplied Biosystemsのウェブサイト(www.appliedbiosystems.com)に従って選び、そして表2に提供する。
Figure 0006496481
マスターミックスを、2×TaqMan Fast Universal Master Mix(Applied Biosystems、部品番号:4444557)、ヌクレアーゼフリー水およびcDNA(0.8μl/反応)を使用してCV若しくはNTサンプルについて調製した。10μlの反応をStepOne 2.1ソフトウェアを実行するStepOnePlus機械で実施した。各遺伝子を各運転で三重の反応により定量し、そして運転を双方のマウスからのCVおよびNTサンプルについて3回反復した。データ解析はMS Excelを使用して行った。各遺伝子の平均δCt(GAPDHおよび各遺伝子のCt値の間の差異)のlog10をCVおよびNT双方の組織についてプロットした。
E.RNAプローブ
GLUT2(Slc2a2、クローン配列BC034675.1)、GLUT4(Slc2a4、クローン配列BC014282.1)、GLUT9(Slc2a9、クローン配列BC006076)およびSGLT1(Slc5a1、クローン配列BC003845)の商業的に入手可能なマウス哺乳動物遺伝子コレクションで確認された完全長cDNAをOpen Biosystems(アラバマ州ハンツビル)から購入し;SUR1(Abcc8、クローン配列BC141411.1)をimaGenes(独国ベルリン)から購入した。各ストックを液体培地中で増殖させ、そしてプラスミドDNAをmini−QIAGENプラスミドキット(カリフォルニア州バレンシア)を使用して精製した。Open Biosystemsからの構築物をpCMV−SPORT6ベクター中およびimaGenesからpYX−AScベクター中で得た。上のクローンからのプラスミドDNAをQuiagenミディプレップキットを使用して精製し、そしてABI 96キャピラリー3730XLシークエンサーを使用してペンシルバニア大学DNAシークエンシング施設で色素ターミネーター法により配列決定した。クローンDNAは、アンチセンスプローブについてSalIで消化しかつT7若しくはT3 RNAポリメラーゼにより転写したか、またはセンスプローブについてNot1で消化しかつSp6 RNAポリメラーゼにより転写した。プローブはDIG RNAラベリングキット(Roche、インディアナ州インディアナポリス)を用いて生成しそしてProbeQuant G−50マイクロカラム(Amersham Biosciences、ニュージャージー州ピスカタウェイ)で精製した。標識RNAプローブの濃度およびA260/A280光学密
度をNanoDropリーダー(ND−1000、Thermo Fisher)で確認した。
F.組織調製
成体雄性C57BL/6、トランスジェニックT1r3−GFPおよびトランスジェニックTrpM5−GFPマウス(2〜10月齢)を頸部脱臼により殺し、その後膵、骨格筋、小腸、ならびに舌の有郭、葉状および茸状乳頭含有部分を手早く取り出しかつ氷冷PBS中で手早くすすいだ。インシトゥーハイブリダイゼーションのため、組織を100%エタノールドライアイス浴を使用してTissue−Tek O.C.T.マウント媒体(Sakura、カリフォルニア州トランス)中で急速凍結し、その後1hr以内に薄片を作った。免疫組織化学のため、組織を、O.C.T.に包埋する前に4%パラホルムアルデヒド/1×PBS中4℃で1hr一夜固定しかつ20%ショ糖/1×PBS中4℃で一夜低温保存した。8ないし12ミクロン厚切片をクライオスタットCM3050S(Leica Microsystems、独国ヴェッツラー)を使用して調製し、そして予め被覆された顕微鏡スライドガラス(Superfrost plus、Fisher Scientific、ペンシルベニア州ピッツバーグ)に適用した。切片を40℃で20min乾燥し、そしてインシトゥーハイブリダイゼーションに直ちに使用したか、若しくは免疫組織化学のため−80℃で保存した。
G.インシトゥーハイブリダイゼーション
新鮮切片を4%パラホルムアルデヒド/1×PBS中で10min固定し、10μg/mlプロテイナーゼK(Boehringer Mannheim、独国)を含有する1Mトリス−HCl(pH8.0)/0.5M EDTA中37℃で10minインキュベーションにより透過処理し、4%パラホルムアルデヒド/1×PBS中で10min後固定し、その後10minアセチル化した。全段階に次いで、DEPC処理された1×PBSで3回5min洗浄した。スライドガラスをその後、DEPC処理水中50%脱イオン化ホルムアミド、5×生理的食塩水/クエン酸ナトリウム(SSC)、5×Denhardts、500μg/mlサケ精子DNA、250μl/ml酵母tRNA、2.5M EDTAを含有する混合物中室温で1hrプレハイブリダイズした。ハイブリダイゼーションのため、該混合物のアリコートを85℃で10min加熱して酵母tRNAを変性させ、そしてDIG標識RNAプローブを添加して所望の濃度を生じた。以下の濃度すなわち0.5μg/ml GLUT2、0.25μg/ml GLUT4、0.25μg/ml GLUT9、0.5μg/ml SGLT1および0.3μg/ml SUR1を各RNAプローブに使用した。RNAプローブ混合物を85℃で3min加熱してプローブを変性させ、その後直ちに氷上で冷却した。Hybrislipプラスチック製カバーガラス(Invitrogen)を使用してハイブリダイゼーションの間に切片が乾燥するのを防ぎ、そしてスライドガラスを加湿チャンバーに入れ、大型の湿ったジッパー付ビニール袋中に封止しかつ65℃で一夜インキュベートした。プラスチック製カバーガラスを、65℃に予め加温した5×SSC中に浸漬することにより除去した。スライドガラスを0.2×SSC中で各30min3回および0.1×TritonX−100を含むPBS(PBST)中で10min1回洗浄した。チラミド(tyramide)シグナル増幅Plus DNP−APキット(Perkin−Elmer、マサチューセッツ州ボストン)を製造元のプロトコルに従って使用して、GLUT2、GLUT4、GLUT9およびSUR1のRNAプローブからのシグナルを増幅した。SGLT1プローブとハイブリダイズされたスライドガラスは増幅段階なしで舌および腸双方の組織でかなりのmRNA標識を表した。これらのスライドを10%熱不活化正常ヤギ血清を用い室温で1hrブロッキングし、次いでブロッキング溶液中の抗DIG−アルカリホスファターゼ(1:1000、Boehringer)と室温で3hrインキュベートした。アルカリホスファターゼ標識は、レバミソール(Sigma、ミズーリ州セントルイス)を含むNBT+BICP(ニトロブルーテトラゾリウム+5−ブロモ−4−クロロ−3インドリルリン酸)
混合物(Roche)との室温で暗所での一夜インキュベーションにより検出した。スライドガラスをPBSTで洗浄し、水中ですすぎ、増大する一連のETOHで脱水し、Histoclear(National Diagnostics、ジョージア州アトランタ)で透徹し、そしてPermount(Fisher)でカバーガラスを載せた(coverslipped)。アンチセンスおよびセンスRNAプローブは、同等条件を確保するために同等濃度で使用しかつ同一実験で同時に実施した。各実験で、T1r3若しくはガストデューシンアンチセンスプローブを伴うインシトゥーハイブリダイゼーション実験陽性対照を味組織で行ってハイブリダイゼーションが適正にはたらいたことを保証した。加えて、インシトゥーハイブリダイゼーションを陽性対照組織で行ってRNAプローブの質および特異性を確認した。アンチセンスRNAプローブは目的の遺伝子を発現することが既知の組織での陽性の発現について試験した一方、センスRNAプローブは対照として使用した。アンチセンスプローブはGLUT2、GLUT9およびSUR1の膵での適切な発現を示した一方、センスプローブはGLUT2、GLUT9およびSUR1の膵での低い非特異的ハイブリダイゼーションを示した。アンチセンスプローブはGLUT4の骨格筋での適切な発現を示した一方、センスプローブはGLUT4の骨格筋での低い非特異的ハイブリダイゼーションを示した。アンチセンスプローブはSGLT1の腸での適切な発現を示した一方、センスプローブはSGLT1の腸での低い非特異的ハイブリダイゼーションを示した。データは示されない。
H.免疫組織化学
標準的免疫組織化学技術を使用した。簡潔には、凍結切片をPBSで再水和した。非特異的結合をブロッキング緩衝液(1×PBS中3%ウシ血清アルブミン、0.3%TritonX−100、2%ヤギ若しくはロバ血清)で室温で1〜2hrブロッキングした。切片を、ウサギ抗GLUT2(1:150、Santa Cruz Biotechnology、サンタクルズ、sc−9117);ウサギ抗GLUT4(1:150、Abcam、マサチューセッツ州ケンブリッジ、ab33780);ウサギ抗Kir6.1(1:100、Abcam、ab80972);ウサギ抗SGLT1(1:150、Abcam、ab14686);ウサギ抗SUR1(1:150、Santa Cruz Biotechnology、sc−25683);ヤギ抗T1R3(1:250、Novus
Biological、NBP1−46466);ヤギ抗GLAST1(1:250、Santa Cruz Biotechnology、sc−7757);若しくはマウス抗SNAP−25(1:250、Chemicon、マサチューセッツ州ビレリカ、MAB331)に対する一次抗体と加湿チャンバー中4℃で一夜インキュベートした。PBSTでの3回の15min洗浄後、スライドガラスを、ブロッキング緩衝液中の以下の蛍光二次抗体(1:500)すなわちウサギ一次抗体の免疫蛍光のためAlexa448ロバ抗ウサギ(Molecular Probes、オレゴン州ユージーン);T1R3−GFPマウスからの切片を用いるウサギ一次抗体の免疫蛍光のためAlexa594ロバ抗ウサギ(Molecular Probes)の1種と室温で1時間インキュベートした。全部の二重免疫蛍光標識を、細胞核を標識するためのDAPI(1:1000、Molecular Probes)と一緒に以下の二次抗体すなわちAlexa488ロバ抗ヤギ、Alexa 488ロバ抗マウス、Alexa594ロバ抗ヤギ、若しくはAlexa594ロバ抗ヤギ(1:500、Molecular Probes)の組合せを用いて行った。陰性対照は一次抗体の省略を包含した。グルコース輸送体抗体もまた陽性対照組織で試験した。味蕾含有切片との使用前に、全抗体を目的の遺伝子を発現することが既知の組織での陽性の発現について試験した。抗体は、膵:GLUT2、SUR1;骨格筋:GLUT4;および小腸:SGLT1で適切な発現を示した(データは示されない)。一次抗体の省略はこれらの組織で二次抗体から低い非特異的バックグラウンドを示した(データは示されない)。
I.画像化
明視野画像を、Nikon Eclipse 80i顕微鏡に接続されたNikon DXM 1200Cデジタルカメラを使用して可視化し、そしてNikon NIS−Element F3.00ソフトウェアを使用して撮像し、若しくはNikon SA Microphot顕微鏡に接続されたSPOTデジタルカメラ(Diagnostics Instruments,Inc)を用い、そしてImage−Pro Plus画像解析ソフトウェア(Media Cybernetics Inc.、メリーランド州シルバースプリング)を使用して最小限に処理した。取得パラメータはアンチセンスおよびセンス双方のプローブを用いるインシトゥーハイブリダイゼーションについて一定に保持した。蛍光画像を、UV、Ar、GeNeおよびHeNeレーザーならびに適切な励起スペクトルを使用してLeica TCS SP2スペクトル共焦点顕微鏡(Leica
Microsystems inc.、独国マンハイム)で撮像した。Leica Scanwareソフトウェアを使用して、撮像されたzシリーズスタックを0.25〜0.35μmステップサイズで取得した。画像を512×512画素形式で走査し;走査線を2回平均しかつフレームを3回走査した。取得パラメータ(すなわち利得、相殺およびPMT設定)は抗体を用いる実験および抗体を含まない対照について一定に保持した。デジタル画像をトリミングし、そしてPhotoshop CS(Adobe Systems,Inc.、カリフォルニア州サンノゼ)を使用して配置した。関連するアンチセンスおよびセンス画像を同一の輝度およびコントラストで調節した。図内の蛍光画像はバックグラウンド標準化のため輝度およびコントラストについて調節した。
J.細胞計数
量的測定を実施して、GLUT4若しくはSUR1を共発現した単独でおよび二重で標識されたII型(T1r3)およびIII型(SNAP−25)味細胞の比率を決定した。味蕾含有切片をLecia共焦点顕微鏡で40×対物レンズ下で走査し、そして、個々の味細胞を容易に識別し得た100〜150μm面積を生じるように拡大し;細胞体全体を可視化し得た味細胞のみを計数した。各味細胞型について、CV乳頭全体の1切片および葉状乳頭からの2〜3切片を計数した。
K.SGLT−1についての糖取り込みアッセイ
味細胞を、低若しくは高グルコースを含む細胞培地中で試験化合物と24hインキュベートする。糖取り込みを、SGLT−1に選択的でありかつ他のグルコース輸送体により輸送されないC14標識糖プローブα−MG(Amersham Biosciences、米国ニュージャージー州ピスカタウェイ)を使用するラジオアッセイで測定する(KimmichとRandles、Am.J.Physiol.1981 Nov;241(5):C227−32;Turnerら、J.Biol.Chem.1996 Mar
29;271(13):7738−44)。α−MG取り込みは15minから少なくとも2hまで直線的である。予備研究は、SGLT−1によるα−GM糖プローブの取り込みが、放射標識プローブの存在下で添加される0.5mMフロリジン(Sigma)を使用して選択的であることを示す。
細胞を、25mM d−マンニトールを含有するグルコースフリーハンクス平衡塩類溶液(マンニトール−HBSS)で穏やかに洗浄し、そしてその後0.2mlの2μCi/ml(6.65μM) 14C標識α−GMを含有するマンニトール−HBSSと37℃、5%COおよび96%湿度で30minインキュベートする。細胞を4℃でHBSSで洗浄しかつ0.1N NaOHで可溶化する。ライセートを液体シンチレーションカクテルに混合する。糖取り込みのレベルをβ−シンチレーションカウンターを使用して測定する。値をナノモル/cm表面積として表す。
L.電気生理学
野生型C57BL/6マウスの茸状乳頭からの味蕾を、十分に確立された手順(例えば
Baquero AF、Gilbertson TA 2010 Am J Physiol doi:10.1152/ajpcell.00318.2010を参照されたい)により単離した。味蕾内の個々の細胞を、7.2のpHのK−グルコン酸、140mM;CaCl、1mM;MgCl、2mM;HEPES、10mM;EGTA、11mMの標準的細胞内溶液で満たした場合に4〜10MΩの抵抗まで引かれるホウケイ酸パッチピペットを用いる慣習的全細胞パッチクランプ条件を使用することから記録した。Na−グルコン酸、140mM;KCl、5mM;MgCl、1mM;HEPES、10mM、グルコース、10mM;ピルビン酸Na、10mMおよびテトロドトキシン、0.5mMを含有する、公称でCa2+フリーの細胞外溶液を使用して、10mV増分で−80から+40mVまでの0.4s電圧段階の間の外向きK電流を単離した。グリベンクラミド(0.1〜100μM;Sigma)をこの溶液に添加し、そして約4ml/minの流速で浴適用して(bath−applied)5s未満での溶液変更を可能にした。直列抵抗およびキャパシタンスを記録前に最適に補償し、そしてどの記録も漏洩を差し引かなかった。電流データを記録しそしてコマンド電位をpClampソフトウェア(v.8−10)を使用して送達した。このソフトウェアはAxoPatch 200B増幅器およびDigidata 1322Aデータ取得システム(Molecular Devices、カリフォルニア州サニーベイル)とインターフェースされた。
M.Ca画像化により決定される多様な味刺激に対する味細胞の応答
使用される味細胞は実施例1で記述されるとおり単離し、そしてラット尾I型コラーゲン被覆カバーガラス上で数時間ないし1週若しくは2か月間まで培養する。例えばBaquero AF、Gilbertson TA 2010 Am J Physiol doi:10.1152/ajpcell.00318.2010を参照されたい。
Ca画像化は後に続くとおり実施する。該カバーガラスを、1mM Fura−2 AM(Molecular Probes Inc.、オレゴン州ユージーン)および20mg/ml PLURONIC F127(Molecular Probes Inc.)を補充された修正MHNKリンゲル液(80mM NaCl、5mM KCl、1mM MgCl、1mM CaCl、1mM ピルビン酸Naおよび20mM Hepes−Na、pH7.2、モル浸透圧濃度を5M NaClにより300〜310に調節する)中でカルシウム感受性色素と15〜30分間インキュベートする。カルシウム感受性色素fura−2 AMは、蛍光性でありかつ検出され得るfura−2に切断される。
インキュベーション後にカバーガラスを記録チャンバーに入れ、そして灌流として適用される修正MHNKリンゲル液で継続的に浸漬する。
刺激(安息香酸デナトニウム2mMおよび0.5mM、アセスルファムK250ppm、グルタミン酸一ナトリウム(MSG)3mM、シクロヘキシミド25μM、グリシン125mMおよび高K緩衝液(5mM NaCl、80mM KCl、1mM MgCl、1mM CaCl、1mM ピルビン酸Naおよび20mM Hepes−Naを含む修正MHNKリンゲル液、pH7.2、モル浸透圧濃度を5M NaClにより300〜310に調節する)を、灌流を刺激溶液に切り替えることによりカバーガラスに適用し、これは10秒以内のチャンバー中の浴溶液の完全な変更を見込む。
カルシウム画像化記録は、Restrepo D.、M.ZvimanとN.E.Rawson、“The measurement of intracellular calcium in chemosensory cells”、Methods in
Chemosensory Research、A.SpielmanとJ.Brandにより編中。CRC Press、1995により記述されるところの標準的画像化技
術を使用して実施する。照明は顕微鏡に接続されたLSR SPECTRAMASTERモノクロメーターにより提供する。200倍拡大下で細胞中のfura−2からの発射光を510nmでフィルタリングしかつ冷却されたCCDカメラ(Olympix、Perkin Elmer Life Sciences、メリーランド州ベセスダ)で記録する。励起波長は広帯域フィルターを使用して340〜380nmでありかつ発射波長は510nmである。画像は、照明器、カメラおよび取得を制御しかつ画像の比例拡大(ratioing)および擬似カラー画像の表示を実施するMerlin Imaging Workstation(Perkin Elmer Life Sciences、メリーランド州ベセスダ)を使用してデジタル化する。記録設定への導入後、細胞は2日を超えた間生存可能なままであり、かつ、色素漂白の可視的効果を伴わず一度に2時間連続して画像化し得る。
刺激は、修正MHNKリンゲル液で希釈しそして重力流灌流装置を介して刺激に依存して約10〜60秒間適用する。細胞を、選択された最低1個の細胞についてFura−2
AMの陽性のシグナルにより示されるとおり試験される全刺激により刺激し得る。典型的には数個の細胞を試験する。
グルコース輸送体および代謝センサーは味細胞中で発現される
腸および/若しくは他の組織に存在することが既知のグルコース輸送体または膵でグルコース検知に関与する代謝センサーが味細胞にもまた存在しうるかどうかを確認するため、われわれは最初に味および味以外組織でのそれらのmRNAの発現を検査した。cDNAを、マウス有郭(CV)乳頭から単離された味蕾および味細胞を欠く舌上皮細胞(「味以外」(NT)陰性対照)から調製し、その後ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を、以下すなわちGLUT2、GLUT4、GLUT8、GLUT9B、SGLT1、SUR1、SUR2A、SUR2B、Kir6.1、Kir6.2およびインスリン受容体に対応するcDNAに特異的なプライマー対を使用して実施した。PCRにより、われわれは、味以外組織からより味からのcDNA中のGLUT8、GLUT9B、SGLT1、SUR1、SUR2A、Kir 6.1、およびインスリン受容体のより高レベルの発現を観察した(図1Aおよび1Bを参照されたい)。PCRは、GLUT2、GLUT4 SUR2BおよびKir6.2のmRNAが味以外組織に対して味でより多量で発現されなかったことを示した(図1Aおよび1B)。
リアルタイムPCRによる量的評価はGLUT8、GLUT9、SGLT1、SUR1、Kir6.1およびインスリン受容体の味組織cDNAの上昇された発現を示した(図1Cおよび1D)。しかしながら、GLUT4およびSUR2は、味組織cDNAでより高度に発現されることが定量的RT−PCRにより見出されなかった(図1Cおよび1D)。味組織中でより高度に発現される遺伝子について、味組織中でのmRNA発現の絶対的レベルはGLUT8、SGLT1およびインスリン受容体について最高であった。しかしながら、最高の示差的発現はSUR1およびインスリン受容体で見出された。すなわち、それぞれは味以外組織からより味からのmRNA中で約10倍より高度に発現された。
PCR実験のためのcDNA鋳型は、味細胞ならびに周囲の上皮および結合細胞の混合物を含有するCV味組織若しくは味細胞を欠く対照の味以外組織由来であった。これらの遺伝子のmRNAが味細胞でそれら自身選択的に発現されるかどうかを確認するため、われわれはアンチセンスおよびセンス(対照)プローブを用いるインシトゥーハイブリダイゼーションを実施した。マウス有郭(CV)および葉状味乳頭からの味蕾含有組織へのインシトゥーハイブリダイゼーションを、ジゴキシゲニン標識RNAプローブを用いて実施した。味蕾含有切片へのインシトゥーハイブリダイゼーションは、GLUT2、GLUT4、GLUT9、SGLT1およびSUR1のmRNAがマウス味細胞中でCVおよび葉
状双方の乳頭で選択的に発現されることを示した。非特異的バックグラウンドを示す味細胞中および周囲のセンスプローブ対照への味細胞のハイブリダイゼーションは、対応するアンチセンスプローブでよりも一般により低かった。データは示されない。
対照実験で、これらのプローブのそれぞれをこれらのmRNA、すなわち膵におけるGLUT2、GLUT9およびSUR1;骨格筋におけるGLUT4;小腸におけるSGLT1を発現することが既知の組織切片を用いて検証した(データは示されない)。次に、マウス有郭(CV)、葉状および茸状味乳頭からの味蕾含有切片の免疫蛍光共焦点顕微鏡検査を、糖輸送体(GLUT2、GLUT4およびSGLT1)若しくはKATPサブユニット(SUR1、Kir6.1)に対し向けられる特異的ポリクローナル抗体を用いて実施した。GLUT2、GLUT4、SLGT1、SUR1およびKir6.1のCV細胞での発現を示す免疫蛍光が観察された(データは示されない)。GLUT2、GLUT4、SLGT1、SUR1およびKir6.1の葉状細胞での発現を示す免疫蛍光が観察された(データは示されない)。GLUT2、GLUT4、SLGT1、SUR1およびKir6.1の茸状細胞での発現を示す免疫蛍光が観察された(データは示されない)。
GLUT2、GLUT4、SGLT1、SUR1およびKir6.1に対する免疫反応性がCV、葉状および茸状乳頭のマウス味細胞で観察された(データは示されない)。興味深いことに、SUR1免疫蛍光の多くは味細胞の核内に集中されるようであった(データは示されない)。マウス有郭(CV)および葉状味乳頭からの味蕾含有切片の間接的免疫蛍光共焦点顕微鏡検査を、核染色DAPI(4’,6−ジアミジノ−2−フェニルインドール)(図7A、7D、7G)若しくはKATPサブユニットSUR1に対する抗体を用いて実施した。SUR1の染色の核パターンをDAPI染色で確認した(データは示されない)。より高い拡大はSUR1が核質内に存在したことを示した(データは示されない)。全部の一次抗体は、目的のタンパク質を発現することが既知の組織、すなわち膵でGLUT2およびSUR1;骨格筋でGLUT4;小腸でSGLT1、で適切な免疫反応性を検出するそれらの能力について検証した(データは示されない)。加えて、二次抗体は、膵および小腸で一次抗体を含まない対照中の非特異的免疫反応性がないことが示された(データは示されない)。
GLUT4、SGLT1およびSUR1はT1r3陽性味細胞で選択的に発現される
上のデータは、グルコース輸送体およびKATPサブユニットが味細胞中に存在することを複数の独立した技術により示す。これらのグルコース輸送体若しくは細胞内グルコース代謝のセンサーのいずれかがグルコースの味細胞検知で機能するはずであるならば、それらは、最もありそうには、グルコースおよび他の甘味化合物を検出することが既知である味細胞で見出されるであろう(すなわちII型味細胞のT1r2+T1r3陽性サブセット)。この可能性を検査するため、われわれは、T1r3−GFPトランスジェニックマウス(Clapp TRら、2006)からのT1r3を発現する味細胞で緑色蛍光タンパク質の固有の蛍光を可視化することと一緒に、輸送体若しくはKATPサブユニットに対する抗体を使用して味細胞を二重染色した。こうしてGLUT4、SGLT1およびSUR1がT1r3陽性味細胞中で優先的に発現されることが見出された。二重染色はT1r3プロモーターからトランスジーンとして発現される緑色蛍光タンパク質(GFP)の固有の蛍光を利用した。上置き画像はGLUT4、SGLT1およびSUR1とのT1r3の頻繁な共発現を示す(データは示されない)。
上で示されたSUR1の核染色は葉状および有郭乳頭からの味細胞で再度確認された(データは示されない)。
味細胞を、GLUT4およびT1r3、SUR1およびT1r3若しくはSUR1およ
びSNAP−25について二重染色し、その後、有郭(A)および葉状(B)味乳頭中の単独および二重標識された細胞を計数した。結果を下の表3に記録する。分子は遺伝子1および遺伝子2双方を発現する味細胞の数である。分母は遺伝子1を発現する味細胞の数である。遺伝子1および遺伝子2双方を発現する味細胞を遺伝子1を発現するものの比率としてカッコ内に示す。ND、未測定。GLUT4若しくはSUR1をT1r3と共発現する味細胞の定量は、(1)GLUT4を発現する味細胞の90〜92%がT1r3を発現する一方、T1r3細胞の13〜20%はGLUT4を発現せず;および(2)SUR1を発現する味細胞の80〜85%がT1r3を発現する一方、T1r3細胞の11〜24%はSUR1を発現しないことを確認した。SUR1をSnap−25と共発現するCV味細胞の定量は、SUR1を発現する味細胞の17%がSnap−25を発現することを確認した。要するに、ほとんどのSUR1を発現する味細胞はT1r3を発現するII型細胞であり、残りはありそうにはSnap−25を発現するIII型細胞である。
Figure 0006496481
I型(GLAST)若しくはIII型(Snap−25)味細胞のマーカーでのGLUT4を発現する味細胞の二重染色は、GLUT4がいずれの味細胞サブタイプにも存在しないことを示した(データは示されない)。マウス有郭(CV)味乳頭からの味蕾含有切片の間接的免疫蛍光共焦点顕微鏡検査を、GLUT4およびSUR1に対する抗体を用いて実施した(データは示されない)。二重染色を、I型味細胞(抗GLAST)、III型味細胞(抗SNAP−25)を標識するための抗体若しくはII型味細胞(TrpM5−GFP)を標識するためのGFPを用いて実施した。重ねられた画像はGLAST若しくはSNAP−25とのGLUT4、またはGLASTとのSUR1のCV味細胞での共発現を示さず、また、SNAP−25とのSUR1のまれな共発現を示した(データは示されない)。対照的にCV味細胞中のSUR1は主としてTrpM5を発現するII型味細胞中にある(データは示されない)。I型、II型およびIII型細胞のマーカーでのSUR1を発現する味細胞の二重染色は、SUR1が主としてII型(TrpM5)味細胞中に存在する(データは示されない)が、しかしI型(GLAST)味細胞ではせず(データは示されない)、およびSUR1を発現する少数のIII型(Snap−25)細胞が存在する(データは示されない)ことを示した。予備定量は、(1)大部分のT1r3を発現するII型味細胞がGLUT4およびSUR1を発現し、(2)全部のGLUT4を発現する味細胞がT1r3を発現し、ならびに(3)大部分のSUR1を発現する味
細胞がT1r3を発現することを示す。
マウス味細胞は機能的KATPチャンネルを有する
上述された電気生理学アッセイ由来のデータは、KATPサブユニットKir6.1およびSUR1が味細胞に存在し、SUR1は主としてT1r3を発現する味細胞で見出されることを示す。マウス味細胞に機能的KATPチャンネルが存在するならば、われわれは、SUR1に結合するグリベンクラミドのようなスルホニル尿素化合物によりそれらが阻害されることを期待できよう。事実、グリベンクラミドはマウス茸状味細胞中で外向き(K)電流を阻害した(図2Aおよび2B)。
C57Bl/6マウスの茸状乳頭から単離された67個の味細胞のうち18個(26.9%)が20μMグリベンクラミドによる有意の可逆的阻害を示した。平均して(n=18)、20μmのグリベンクラミドは茸状味細胞中の全外向き電流の18.70±4.32%を阻害した。すなわち、KATPチャンネルは全味細胞Kチャンネルの有意の比率を含んでなる。T1r3味細胞中のSUR1の優勢な発現を考えれば、全K+チャンネルのなかのグリベンクラミドで阻害可能なKATPチャンネルのなおより高い比率が、ありそうにはT1r3を発現する味細胞で見出されるとみられる。
理論により束縛されることを願わず、発明者は、KATPチャンネルがT1r3含有味細胞で甘味で演じている以下の機能を理論化した。膵中のKATPチャンネルは自発的に活性であり、β細胞のグルコースが上昇しかつ代謝される際にADPに対するATPの細胞内比もまた上昇し、KATPチャンネル閉鎖、細胞の脱分極およびインスリン遊離につながる。グリベンクラミドで阻害可能なK電流のわれわれの記録を、T1r3陽性若しくはそうでないと特異的に同定されない茸状味細胞の全般的プールを用いて行った。SUR1を発現する味細胞の圧倒的大多数がT1r3もまた発現する(かつ逆もまた真である)ことを考えれば、スルホニル尿素で阻害されるKATPコンダクタンスがT1r3陽性味細胞の基礎的全外向き電流の20%以上に有意に寄与することがありそうである。T1r3含有味細胞のKATPチャンネルは、舌に適用される代謝可能な甘味溶液の局所濃度、または血糖若しくは循環ホルモンを介して味細胞と通信されるところの生物体の全般的代謝状態に従ってこれらの細胞の活性を調節するための確固たる手段を提供し得る。T1r3味細胞のKATPチャンネルが頂端に配置される場合には、スルホニル尿素若しくは上昇されたATPによりこのK電流を阻害することはこれらの細胞を脱分極するとみられる。代謝される場合にT1r3味細胞のKATPチャンネルの閉鎖を促進するグルコースのようなカロリー甘味料と一緒の、甘味細胞を脱分極するセカンドメッセンジャーシグナル伝達カスケードを開始するためのT1r2+T1r3を介して作用するノンカロリー甘味料の組合せは、ありそうには、いずれかの甘味料単独により達成されるものを上回る甘味の高められた認識を提供するとみられる。
逆に、低グルコース/低代謝条件下で、T1r3細胞のKATPチャンネルの持続性活性は、これらの味細胞を過分極して、T1r2+T1r3の甘味料活性化が味細胞を脱分極してそれにより味認識に抗することをより少なくありそうにするとみられる。思うに、T1r3細胞のKATPチャンネルの調節は代謝要求に従って甘味化合物に対する味細胞の感受性を変動させるための生理学的手段でありうる。GLUTおよびSGLT1輸送体がT1r3陽性味細胞中でKATPチャンネルと一緒に共発現されることは、代謝される場合に味細胞のATPレベルを増大させ、KATPを活性化しかつこれらの味細胞を過分極するとみられる輸送体を介する糖の取り込みにつながり得る。さらに、味細胞のKATPは、味細胞代謝の変化に応答してT1r3味細胞からのホルモンおよび/若しくは神経伝達物質の遊離を調節しうる。ちょうど膵β細胞の活性化のように、KATPがインスリン遊離を促進し、同じように味細胞のKATP活性化が味細胞からのホルモン遊離を促進
しうる。
味細胞中のSUR1の細胞質への局在化は際立っており、そして、それが核局在化シグナル若しくはこうした配列との別のタンパク質の会合により標的化されていることを示唆する。以前、SUR1および機能的KATPチャンネルが膵β細胞の核膜で観察されている(Quesadaら、2002)。T1r3味細胞中のこの核局在化は原形質膜から離れたスルホニル尿素受容体を封鎖するようにはたらくことができ、それにより味細胞の休止K電流のKATP成分を減少させるか、若しくはそれらをグリベンクラミドおよび他のスルホニル尿素に対し非感受性にする。別の可能性は、核膜若しくは核質中のKATPチャンネルがT1r3それ自身若しくは他の味シグナル伝達成分の味細胞転写に影響を及ぼすことである。転写に対するこうした影響が、長期間にわたり甘味応答を変えかつ味受容体発現を食事内容に関係付けるようはたらくことができる。
本明細で引用される全部の刊行物および米国仮出願第61/435,904号明細書は引用することにより本明細書に組み込まれる。本発明は特定の態様を参照して記述された一方、改変が本発明の技術思想から離れることなくなされ得ることが認識されるであろう。こうした改変は付随される請求の範囲の範囲内にあることを意図している。
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Claims (5)

  1. (i)試験分子を、ATP感受性K+チャンネル(KATPを発現する哺乳動物細胞若しくは細胞株とイン・ビトロ(in vitro)培養条件下で接触させるステップであって、K ATP がスルホニル尿素受容体1(SUR1)およびカリウム内向き整流性チャンネル(Kir)を含む、ステップ;ならびに
    (ii)接触された細胞若しくは細胞株中のKATPチャンネルの電気生理学的若しくは機能的活性を測定するステップであって、陰性対照細胞若しくは細胞株のものと比較した試験分子と接触された細胞若しくは細胞株のKATPの電気生理学的若しくは機能的活性の減少若しくは阻害が、甘味を高める試験分子を同定する、ステップ
    を含んでなる、口中で甘味を高める分子の同定方法。
  2. 細胞若しくは細胞株が、口腔味細胞若しくは口腔味細胞株、味シグナル伝達タンパク質を発現する異種細胞、形質転換細胞若しくは内分泌細胞または細胞株である、請求項1に記載の方法。
  3. 電気生理学的活性が、細胞若しくは細胞株の分極若しくは脱分極またはある種のイオン指示薬若しくは流動の変化である、請求項1に記載の方法。
  4. 請求項1に記載の方法であって、
    (iii)試験分子で対スクリーニングアッセイを実施して該試験分子により媒介される非特異的活性若しくは結合を排除するステップ;および
    (iv)試験分子を、動物の生理学的応答アッセイ、電気生理学的応答アッセイ、甘さに対する行動アッセイ、または単離された味細胞若しくは単離された味蕾のカルシウム画像化にかけるステップ
    の1つ若しくはそれ以上をさらに含んでなる、方法。
  5. 陰性対照が、口中で甘味を提供しない若しくは高めないことが既知の対照分子により接触されるか、または試験若しくは対照分子により接触されないかのいずれかである同一細胞若しくは細胞株を含んでなる、請求項1に記載の方法。
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