JP6490184B2 - 機能性木質材料の製造方法、及び、機能性木質材料 - Google Patents

機能性木質材料の製造方法、及び、機能性木質材料 Download PDF

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Description

本発明は、機能性無機物質を含浸して固定化した機能性木質材料、及び、その製造方法に関する。
木材は、導管,仮導管、壁孔等の微細構造を有する多孔質体であり、このような多孔質体に機能性を付加するために無機物質を含浸させるには、無機塩の水溶液や、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)あるいはイオン性液体のような溶媒に無機塩を溶解した溶液が用いられている。しかし、この場合、無機塩は木材内に固定されておらず、溶媒に再溶解してしまうため、その用途が限定される。
このような従来技術に対して、第1の無機塩溶液を含浸させ、次いで、第1の無機塩溶液の溶質と反応して不溶性物質を生成する第2の無機塩溶液を含浸させれば、不溶性物質を木材内に固定化できると考えられる。しかしながら、実際には、第2の無機塩溶液の浸漬工程で、含浸対象の木材の表面、および、その表面付近に生成した不溶性物質が、第2の無機塩溶液の木材内部への浸透を妨げるので、表面のみの固定にとどまり、木材内部までの固定化が事実上できなった。
このような第1および第2の無機塩溶液に共通の溶質を含ませておけば、交換反応により、無機塩を木材内部に固定させることが可能である。例えば、第1の無機塩溶液として燐酸水素アンモニウムとホウ酸アンモニウム混合水溶液を、第2の無機塩溶液として塩化バリウムとホウ酸アンモニウムの混合水溶液を、それぞれ用いることにより、木材内に燐酸バリウムを固定することができる(非特許文献1)。
しかしながら、このような方法が適用できる溶質の組み合わせは少なく、上記において、バリウムをストロンチウムに置き換えることができるだけであり、その応用は限定的であった。
木質材料に難燃剤である燐酸グアニジンあるいは燐酸グアニル尿素を含浸する場合、これらは常温では水に対する溶解度がかなり低いために、炭酸アンモニウムないし炭酸水素アンモニウムを相溶させることにより、これらの濃厚溶液を得て、含浸後に加熱処理して炭酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウムを揮散させる方法が提案されている(特許文献1)。しかし、この方法では化学反応が生じているわけではなく、一時的に濃高溶液を得て、含浸絶対量を大きくする操作を行っている。このように木材の不燃化処理技術において、このように難燃剤の含浸絶対量を大きくすることは、不燃性を獲得するための絶対必要条件である。
上記以外に、溶媒を70〜80℃程度に加熱してより多くの難燃剤を溶解させ、その後も温度を保つことにより、高い濃度の含浸液を用いて含浸処理を行うことにより含浸絶対量を多くした場合も、上記同様に木材を不燃化させることができる。しかし、これらの高濃度溶液を用いる技術の場合、含浸された難燃剤が依然として水溶性であり、処理された木材が水で洗い流されるような環境では、内部の難燃剤は徐々に失われる。
特許第4445991号 特開2012−118037号公報
「もくざいと科学」日本木材学会編。発行:海青社、発行日:1989年7月15日
本発明は、上記従来技術を改良する、すなわち、木材に機能を付与する様々な物質を木材内部(表面よりも深い部分)、ないし、深部にまで到達させるとともに木材に固定化させて、多様な機能性を備えた木質材料を得ることができる、機能性木質材料の製造方法を提供することを目的とする
本発明の機能性木質材料の製造方法は上記課題を解決するため、溶液を木材の内部に含浸させ、前記溶液の溶質を前記木材の内部で化学反応させて前記木材に機能性を付与する物質を生成させるとともに当該物質を前記木材の内部に固定化させることを特徴とする機能性木質材料の製造方法である。
前記本発明の機能性木質材料の製造方法において、前記化学反応が、加水分解反応であることが好ましい。
前記本発明の機能性木質材料の製造方法において、前記加水分解反応が、尿素の加水分解反応であることが好ましい。
前記本発明の機能性木質材料の製造方法において、前記加水分解反応が、ポリ燐酸塩の加水分解反応であることが好ましい。
前記本発明の機能性木質材料の製造方法において、前記化学反応が、前記木材を構成するセルロースの糖化によって生成した糖の還元反応であることが好ましい。
前記本発明の機能性木質材料の製造方法において、前記化学反応が、前記木材を構成するセルロースのエステル化反応であることが好ましい。
前記本発明の機能性木質材料の製造方法において、前記化学反応が、可溶性金属有機化合物の熱分解反応であることが好ましい。
前記本発明の機能性木質材料の製造方法において、前記化学反応が、可溶性過酸化物の熱分解反応、または、可溶性過酸化物の還元反応であることが好ましい。
前記本発明の機能性木質材料の製造方法において、前記化学反応が、スルファミン酸塩の加水分解による不溶性硫酸塩の生成反応であることが好ましい。
本発明の機能性木質材料の製造方法によれば、溶液を木材の内部に含浸させ、前記溶液の溶質を前記木材の内部で化学反応させて前記木材に機能性を付与する物質を生成させるとともに当該物質を前記木材の内部(表面よりも深い部分)に固定化させることにより、従来、互いに反応し合う溶質をそれぞれ備えた二液を用いる方法と比べ、一回の含浸処理のみで様々な機能を木材に付与できる。
さらに、前記木材に機能性を付与する物質は木材内部に固定化されるために、付与された機能の、機能性付与成分溶出による逸失が発生せず、さらに、前記木材の内部(深部)にまで前記物質が固定化されるために、常に安定した効果が得られる。
本発明の機能性木質材料の製造方法では、溶質を選択し、または/および、複数の溶質を組み合わせ、さらに必要により加熱処理等を併用することで、様々な化学反応を利用して、多様な機能を木材に付与することができる。
また、本発明の機能性木質材料の製造方法において、可溶性の機能付与材料を併用した場合、前記固定化された物質が多孔質体である木材からの可溶性の機能付与材料の溶出を効果的に防止するために、可溶性の機能付与材料による機能が長期間に亘って保持される。
本発明の機能性木質材料の製造方法は、溶液を木材の内部に含浸させ、前記溶液の溶質を前記木材の内部で化学反応させて前記木材に機能性を付与する物質を生成させるとともに当該物質を前記木材の内部に固定化させることを特徴とする機能性木質材料の製造方法である。
このような無機質含有溶液としては、尿素やポリ燐酸塩などの加水分解反応を引き起こす溶質を有するもの、セルロースの糖化によって還元可能な糖を生成する酸、酵素あるいは、セルロースのエステル化を生じさせる燐酸、硫酸等、熱分解により金属あるいは金属化合物を生じる可溶性有機金属化合物、熱分解および還元反応により金属酸化物を生成する可溶性金属過酸化物等を有するものが挙げられる。
本発明で用いることができる木材としては、杉、檜、松、ブナ、ケヤキ、ヒバ、なら、樫、ラワンなどが挙げられ、また、その形状としては、板、柱、梁、つき板、集成材などが挙げられる。
本発明における含浸処理とは、基本的には、溶質が溶媒に溶解した溶液(本発明において「含浸液」と云う)を木材の内部に浸透(含浸)させる処理を指す。
溶質である化合物としては、有機物であっても無機物であってもよく、また、溶液の溶媒としては有機溶媒であってもよいが、経済性および環境負荷を小さくするために、通常は。水を用いることが好ましい。ただし、必要に応じて水と有機溶媒との混合液を用いることもできる。
ここで、分散質を分散媒中に有するコロイド溶液は、含浸液として用いると目的の成分が木材内に浸透しない、あるいは、浸透しにくいので一般には好ましくないが、必要に応じて、あるいは、経木などの薄板を被含浸処理材とする場合などでは、用いることができる。
本発明において、含浸液の溶質は、木材内で化学反応させることができるものである必要がある。このような化学反応としては、木材内に存在する水分や酸素により生じる反応であってもよい。この場合、含浸液の長期保存性に問題が生じる場合があるが、反応速度が遅い反応であれば十分に利用することができる。
その他、本発明で利用できる化学反応としては、加熱による反応(例えば、加熱による熱分解反応、加熱による加水分解反応)、木材内部にのみ存在するものとの反応(たとえば、含浸された木材のセルロースとの反応)が挙げられる。さらには、含浸液中の一成分により木材内部で発生した新たな成分(一例として、溶質の一成分とセルロースとの反応で生じた物質、たとえば、セルロース加水分解糖質やエステル化セルロースなど)と、溶質中のその他の成分と、の反応などが挙げられる。
本発明における含浸処理は、被含浸処理木材を含浸液中に浸漬した状態で、木材内部に含浸液を浸透(含浸)させる方法によって実施することができる。このような含浸処理として、木材を含浸液中に浸漬した状態で減圧処理を行う真空含浸処理、木材を含浸液中に浸漬した状態で加圧処理を行う加圧含浸処理、真空含浸処理後に加圧含浸処理を行う真空−加圧含浸処理、水を浸透させた木材中の水を水溶性金属塩濃厚溶液と相互拡散交換する、濃度差含浸処理などが挙げられる。
真空含浸処理の減圧条件としては、溶媒として水を用い、常温で行う場合には通常、10kPa以下、好ましくは、1kPa以下、さらに好ましくは1hPa以下とする。有機溶媒や有機溶媒と水との混合溶媒を用いる場合、あるいは、常温より高い温度で行う場合には、用いる有機溶媒の蒸気圧を勘案し、必要に応じて予備実験を行って決定する。
また、減圧処理の時間としては、被含浸処理木材の形状、大きさにより予め検討を行ってその条件を決定するが、例えば5分間以上、好ましくは30分間以上、さらに好ましくは60分間以上とする。
加圧含浸処理は、加圧容器を用いて、被含浸処理木材を加圧容器内の含浸液中に浸漬した状態で容器内を1気圧(約1013hPa)超とする含浸処理方法であり、被含浸処理木材の形状、大きさにより、予め検討を行ってその条件を決定するが、通常はその圧力を2気圧以上、好ましくは5気圧以上、より好ましくは10気圧以上として行う。
加圧含浸処理の処理時間としては、10分間以上、好ましくは30分間以上、さらに好ましくは60分間以上とする。
これら含浸処理は、通常は常温で行うが、必要に応じ、常温よりも高い温度、あるいは、低い温度で行っても良い。
含浸処理後の木材(機能性木質材料)は、必要に応じて、液きり、拭き取り、洗浄、場合によっては、含浸液成分の溶出防止液中で洗浄を行う。さらに、各含浸処理により木材内部に浸透した溶質を反応させるために、必要に応じて加熱処理を行う。たとえば、各含浸処理の後に、加熱処理を最後に行った場合、たとえば真空含浸処理の後に加熱処理を行った場合に「真空含浸・加熱処理」と記載し、同様に加圧含浸処理後に加熱処理を行った場合を「加圧含浸・加熱処理」と、また、真空−加圧含浸処理後に加熱処理を行った場合を「真空−加圧含浸・加熱処理」と、それぞれ記載する。
以下に、本発明で利用する化学反応について例を挙げて説明する。
<1.尿素の加水分解反応を利用する方法>
尿素の加水分解反応を利用する場合、尿素を配合した含浸液を木材内に含浸させ、その後、加熱処理することによって、木材中の尿素を加水分解させてアンモニアと炭酸ガスとを発生させ、これらアンモニアあるいは炭酸ガスにより、上記の含浸液の溶媒(水や有機溶媒)に不溶性の水酸化物、酸化物、炭酸塩、無機塩、場合によっては有機化合物を木材に機能性を付与する物質(以下、「機能性付与物質」とも云う。)として生成させ、木材内部に固定化させる。
このような方法によれば、機能性付与物質が極めて微小なナノ粒子として生成され、このとき、その微少性により効率的な光触媒作用,抗菌ないし殺菌作用、導電作用などの特徴ある機能を発揮させることができる。
前記含浸液に尿素と共に配合する溶質としては無機金属塩(硫酸塩、塩酸塩、燐酸塩、ホウ酸塩、シュウ酸塩等である。ここで、硝酸塩、過塩素酸塩等の強力な酸化剤となるものは、燃焼性や爆発性を木材に付与する恐れがあるので、含浸液中に高濃度となるような添加は行わない。
加熱処理方法としては、水分(水蒸気)が前記尿素に接触することができる方法であれば適宜選択できる。含浸処理後、加熱処理前に前処理をして、木材表面、あるいはその付近に含浸液の溶媒に対して不溶性の成分を生成させておくと、加熱処理中に、木材からの含浸液の流出を防ぐことができ、このとき、前処理液と含浸液成分が反応することで機能性付与物質を析出させるようにすれば、木材表面を機能化することができる。
尿素は水分存在下で100℃付近に加熱されることにより加水分解してアンモニアと炭酸ガスとが生成し(反応式(1)参照)、木材内の含浸液のpHは中性方向かアルカリ性方向へ変化する。このpHの変化により、各種の不溶性成分を生成することができる。
[化1]
CO(NH22 + H2O → 2NH3 + CO2 ……(1)
含浸液の溶質として、尿素とともに金属塩を溶解させておくことにより、尿素の加水分解反応の結果、生じるアンモニウムイオン、炭酸イオン、水酸化イオンと反応させて、不溶性のアンモニウム塩、炭酸塩、水酸化物や酸化物を生成させることができる。たとえば、尿素と硫酸銅とを溶質として含有する含浸液を用いて含浸処理を行った木材を加熱処理すると、木材内部では次の化学式(2)に示す反応により、不溶性の塩基性炭酸銅が生成し、同時に、難燃化成分である硫酸アンモニウム(硫安)が生成する。
[化2]
2CuSO4 + 2CO(NH22 + 5H2
→Cu(OH)2CuCO3 + 2(NH42SO4 + CO2
……(2)
硫酸強酸性の硫酸チタニル水溶液を尿素と併用した場合には、加熱処理により、水酸化チタニル(TiO(OH)2)、または、酸化チタン(アナターゼ型)と水(TiO2+H2O)、および、硫酸アンモニウムを生成する(下記化学式(3)参照)。塩酸チタニル、その他の可溶性チタニル塩でも同様の反応が生じ、また、各種のジルコニル塩も、チタニル塩と同様の挙動をとる。このようにして固定化された水酸化チタニルおよび酸化チタン(アナターゼ型)は、光触媒効果を発揮する機能性成分として働く。
[化3]
TiOSO4 + H2SO4 + 2CO(NH22 + 8H2
→TiO(OH)2 + 2(NH42SO4 + 2CO2 ……(3)
ナトリウム塩、および、カリウム塩以外の可溶性の強酸性燐酸塩を尿素と併用した場合は、不溶性の燐酸塩と難燃化成分である燐酸アンモニウムとが生成する。二価の金属塩:Me(II)イオン(式中「Me」は金属を表す。以下同じ)の場合、尿素の加水分解度合により、次の反応式(4)あるいは反応式(5)により、不溶性金属塩と難燃剤とが生成する。
[化4]
Me(H2PO42 + CO(NH22 + H2
→ MeHPO4 +(NH42HPO4 + CO2 ……(4)
[化5]
3Me(H2PO42 + 2CO(NH22 + 3H2
→ 2Me3(PO42 + 2(NH42HPO4 + 2NH4HCO3
……(5)
リチウム塩、ナトリウム塩、および、カリウム塩以外の燐酸酸性塩ないし強酸性塩にホウ酸と尿素とを相溶解させた含浸液を用いた場合では、木材に含浸処理後に加熱処理することで、難溶性ないし不溶性のホウ酸塩が生成する。
三価の金属燐酸塩(Me(III)(H2PO43)の酸性水溶液を用いた場合、MeHPO4・H2PO4、Me2(HPO43、MePO4のいずれか、あるいは、これらの混合物の不溶性燐酸塩と燐酸アンモニウムとが生成する。
また、水分のない状態で、尿素を、その融点である132℃以上に加熱するとアンモニアガスが発生して、二量化体であるビウレットが形成され、さらに200℃近辺ではシアヌル酸が生成するので、木材中にこれらと反応して形成される金属化合物を分布させることにより固定化させることもできる。
<2.有機酸塩の熱分解反応を利用する方法>
アルミニウム(III)のシュウ酸塩はシュウ酸酸性水溶液に対して可溶であり、クロム(III)のシュウ酸塩、および、鉄(III)のシュウ酸塩は共に水溶性である。そして、これらは単体でも熱分解して水不溶性物質が生成するので、本発明で用いる一液性の含浸液の溶質として用いることができる。
3価の金属(Me(III))のシュウ酸塩の場合、これを含有する含浸液を用いて含浸処理を行った木材をこのシュウ酸塩の熱分解温度以上に加熱すれば、次の反応式(6)のように、水に不溶性の金属酸化物が生成し、木材中に固定される。
[化5]
Me2(C243 → Me23 + 3CO2 + 3CO ……(6)
さらに3価の金属(Me(III))のシュウ酸塩と尿素とを相溶させた含浸液を用いた場合では、シュウ酸の熱分解温度以下で、尿素が加水分解して、シュウ酸アンモニウムが形成され、このとき、金属水酸化物が不溶化して木材内に析出する。
同様に、酢酸金属塩、ヒドロキシ酢酸金属塩、マレイン酸金属塩、グルコン酸金属塩、乳酸金属塩のような可溶性有機酸塩は、これを溶質とした一液性含浸液を調製することができ、この含浸液を木材に含浸後、その塩の熱分解温度まで加熱することにより不溶性物質が生成する。また、さらに尿素を相溶させた含浸液を用いた場合には尿素の加水分解温度以上に加熱すれば有機酸が中和されて不溶性物質が生成する。
また、三価金属の燐酸との塩、および、同じ三価金属と有機酸との塩の混合塩水溶液を用いて、多孔質体である木材に含浸処理を行ったのち、前記有機酸の熱分解温度以上に加熱すれば、混合の比率に見合った燐酸金属塩と金属酸化物とが形成される。
<3.尿素と有機酸塩とを利用する方法>
尿素と有機酸塩とを含む含浸液を用いる場合では、有機酸塩の分解温度以下であっても、尿素の加水分解温度以上であれば、金属イオンは不溶化する。三価金属塩の場合、それが硫酸塩であっても中和され、脱水されれば不溶性となる。このように尿素を併用することで、硫酸金属塩と有機酸金属塩との組み合わせた溶質であっても利用できる。
<4.スルファミン酸塩を利用する方法>
尿素と発煙硫酸とを反応させて得られるスルファミン酸(アミド硫酸)は、加熱すると次の反応式(7)に示されるように加水分解してアンモニアが生成するが、同時に生成する硫酸により中和されても、中性にもアルカリ性にもならず、酸性のままである。このような弱い中和によって無機塩を不溶化させることは、一般にはできない。
[化7]
(NH2)HSO3 + H2O → NH4HSO4 ……(7)
しかし、スルファミン酸を一般の無機塩の陰イオン成分として利用できる。あるいは、スルファミン酸塩は可溶性であっても、硫酸塩が不溶性である場合は、硫酸塩としての固定方法に応用することができる。スルファミン酸のカルシウム、ストロンチウム、バリウム、および、鉛との塩はいずれも水溶性であるので、これらの水溶液を木質材料に含浸処理後に加熱処理すれば、不溶性の硫酸塩と防燃化剤となる硫酸アンモニウムとが生成する。ここで、スルファミン酸に可溶性の二価陽イオンをMe(II)とすれば、次式(8)のように不溶性の硫酸塩となる。
[化8]
Me(II)(NH2HSO32 + H2
→ MeSO4 + (NH42SO4 ……(8)
<5.セルロースの糖化によって生成した糖の還元反応を利用する方法>
木材を構成するセルロースは、酸成分あるいはセルロース分解酵素(セルラーゼ)によって糖化される。このため、これらの少なくとも一方を含む含浸液に添加された成分は、含浸後に生成した糖成分によって還元される。この作用を利用し、たとえばモリブデン酸塩、および/または、タングステン酸塩を含む燐酸系含浸液と組み合わせると、モリブデン酸、タングステン酸が還元されて燐酸と反応し、発色した上に、木材内部に固定される。同様に、銀イオン、銅イオンも糖によって還元されて析出し、木材内部に固定化される。ここで、モリブデンおよびタングステンはそれぞれ、木材に着色作用と同時に、共存する含浸液成分のモニターとしての機能を付与する。
<6.セルロースの燐酸エステル化反応、あるいは、硫酸エステル化反応を利用する方法>
燐酸と尿素との混合水溶液を用いて木材に含浸処理し、150℃の加熱処理を行うと、木材を構成しているセルロースの一部は燐酸エステル化される。このような燐酸エステル化木材は、難燃性を有し、さらに、種々の金属イオン、すなわち、リチウム、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、鉄、マンガン、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、クロム等のイオンオンを取り込む性質がある。硫酸エステル化木材も同様である。
<本発明によって得られる効果>
以上のように、内部に不溶性の無機化合物、場合によっては、有機化合物が固定化された木材、あるいは、誘導体化された木材は、次に示すようなさまざまな機能を発揮する。
(1)二酸化チタン(TiO2)、二酸化ジルコニウム(ZrO2)、酸化亜鉛(ZnO)、三酸化タングステン(WO3)のように光触媒機能を有する物質は、その還元作用、酸化作用により、殺菌、抗菌、防汚、防臭、空気浄化機能を発揮する。
(2)銀(Ag)、金(Au)、白金(Pt)、銅(Cu)、亜鉛(Zn)、ホウ素(B)の各成分は木材に防虫、防腐、抗菌機能を付与する。
(3)四酸化三鉄(Fe34)は、電気伝導性、および、フェライトによる磁気特性を付与する。チタン酸バリウムは高誘電特性を付与する。
(4)ホウ素(B)、リン(P)、硫黄(S)の各成分は、木質の炭化機能、即ち、防燃機能を付与する。
(5)木材中のアンモニアは燃焼の遅延剤として機能する。
(6)多くの遷移金属イオンは各種色調を発色、着色する。含浸による発色および着色は意匠性の観点からも大きな意義がある。木材を微視的に見れば部分的に密度が異なり、これが独特の木目を表現している。密度差に対応して含浸の度合いが異なるので、着色は木目をいっそう鮮明にする。塗装による着色とは大きく異なり、天然木の一つとして同じものがない木目を生かした、様々な色の木質模様を得ることができる。
このように着色した木質材料は、家具、屋内外調度品、内装材、外装材等の用途で好適に使用することができる。
(7)エステル化セルロースによって、金属イオンの捕集、金属イオンの固定機能が付与される。このような機能が付与された木材は、排水からの金属の回収や、排水の無害化等の用途で好適に使用することができる。
(8)放射線の遮蔽:含浸された重金属によるX線、γ線遮蔽、ホウ素化合物による中性子線の遮蔽。このような機能が付与された木材は、医療機関の検査室、治療室、一般の研究室等の用途で好適に使用することができる。
(9)原子番号12のマグネシウム(Mg)以降の元素による、含浸成分のモニター。このような機能が付与された木材は、たとえば有機物や、原子番号11以下の金属化合物などが含浸された、容易に含浸量を知ることができない木材に、上記モニター元素の化合物を相溶させておいて、目的の機能性物質量を間接的に知る方法(特許文献2)に、利用できる。
(10)木質材料内に無機多孔質組成物、たとえば、珪酸ゲルあるいはゼオライト組成物を生成させ、水分の吸収および放出機能を持たせることができる。
以上、本発明について、好ましい実施形態を挙げて説明したが、本発明の機能性木質材料の製造方法、及び、機能性木質材料は、上記実施形態の構成に限定されるものではない。
当業者は、従来公知の知見に従い、本発明の機能性木質材料の製造方法、及び、機能性木質材料を適宜改変することができる。このような改変によってもなお本発明の機能性木質材料の製造方法、及び、機能性木質材料を具備する限り、もちろん、本発明の範疇に含まれるものである。
<実施例 1>
鉄粉1モルを燐酸3モルと水1L(リットル)とからなる燐酸水溶液に溶解させ、この溶液に30重量%の過酸化水素水を、鉄を三価イオンに酸化するのに必要な量加えて、薄すみれ色のFe(H2PO43水溶液を調整した。これに尿素5モルを溶解させ、比重1.22(25℃)の、木材に難燃性を付与するための含浸液Aを調製した。この含浸液Aを用いて、12mm厚の杉辺材板(以下、「12mm厚の杉辺材板」を単に「杉板」とも云う。)および経木(杉の薄板:厚さ約0.2mm。以下、「経木」とも云う。)に常温で真空含浸処理をおこなった。すなわち、これら杉材を含浸液Aに浸漬させた状態で減圧容器に入れ、気圧:30hPaまで減圧し、そのまま30分保ち、その後、常圧に戻した。なお、以下、真空含浸処理における減圧条件は、特に記載がない限り、この実施例1での真空含浸処理と同じである。
次いで、これら杉材の表面の残余液をふき取った後、熱風乾燥機で90℃〜150℃の範囲で、30分〜10時間の範囲で加熱処理を行った。
この加熱処理後のサンプルを水に浸漬して、燐酸分および鉄分の溶出試験を行った。その結果、90℃で10時間の加熱処理を行ったサンプル(杉板)では、燐酸イオンの溶出は認められたものの、鉄イオンは溶出せず、鉄が木材内に固定化されたことが確認された。このときの鉄は、FeHPO4・H2PO、および、FePO4として固定化されたと考察される。すなわち、ここでは尿素の加水分解反応により鉄化合物の固定化が達成された。
また、加熱処理温度を150℃としたサンプルでは、30分と短い加熱処理時間とした場合であっても、鉄イオンのみならず燐酸イオンの溶出もなく、これらの木材内部での固定化が確認された。
これら溶出テストの結果は、150℃の加熱処理では、尿素の加水分解によって燐酸が単純に中和されるだけではなく、セルロースと燐酸とが反応してセルロース燐酸エステルが生成していることを示す。
上記の2つの条件で真空浸漬処理−加熱処理が施された経木及び杉板は、すべて含浸液Aと同じ系統の薄スミレ色に着色されていた。さらに、処理された杉板についてその中央部を切断して断面を確認したところ、内部まで着色されていた。また、この中央部について、蛍光X線分析装置を用いて調べたところ、リンおよび鉄の存在が確認された。これら結果から、リン成分、および、鉄成分が木材内部まで侵入し、かつ、固定化されていることが確認された。
木材中に含浸された鉄の濃度分布状況は蛍光X線分析により、非破壊的に、比較的簡単に測定できる。このため、上記のように鉄と燐酸とを同時に含浸させた場合、難燃化剤である燐酸の分布状況を、上記鉄の存在量、および、用いた含浸液中の鉄と燐酸との比率から知ることができる。すなわち、上記のように鉄と燐酸とを同時に含浸すれば、三価の鉄(Fe(III))は、木材に対して色彩的に大きい影響を与えない難燃剤モニターとして用いることができ、難燃化木材製造の非破壊検査による品質管理に応用できる(特許文献2)。
上記で、含浸処理後、150℃で30分間の加熱処理された経木について、難燃性UL−94規格に準拠した難燃性テスト(以下、「難燃性テスト」とも云う。)を行ったところ、残炎はなく、その評価結果は最高評価のV−0を満足する(以下、単に「V−0を満足する」とも云う。)極めて優れたものであった。このように、残炎が全くないことは、きわめて優れた自己消火性を有することを示す。
ここで、十数年前から現在にいたるまで、日本における一般火災原因の一位は「放火および放火疑い」であり、二位は「タバコの火の不始末」である。このような難燃性UL−94規格の評価V−0を有する材料が普及すれば、これら主要原因に起因する火災の大部分を解消させることができる。
一方、上記で含浸処理後、90℃で10時間加熱処理された杉板について、ISO−5660−1に準拠したコーンカロリメーターによる発熱性評価テスト(以下、「発熱性評価テスト」とも云う。)を行ったところ、5分間の総発熱量は2.08MJ/m2、最大発熱速度は9.78kw・m2であった。さらに、含浸処理後に150℃で30分間の加熱処理がされた杉板では、10分間の総発熱量は3.36MJ/m2であり、最大発熱速度は10.11kw/m2であり、さらに、これら試験中に杉板の裏面に達する亀裂や孔は発生しなかった。このため、前者は内装材の難燃規格RM、後者は準不燃規格QM(それぞれ、5分間あるいは10分間の総発熱量が8MJ/m2以内、最大発熱速度200kw/m2以内、であることが要求される)を満足させることができた。
<実施例 2>
無水クロム酸2モル、燐酸6モルを0.5Lの水に溶解し、これにヒドラジン1.5モルを少量ずつ添加して、六価クロムを三価クロムに還元させて、酸性燐酸クロム(Cr(H2PO43)水溶液を調整し、さらに、この水溶液に尿素6モルと水とを加え、全容量を2Lとして含浸液Bを得た。この含浸液Bの比重は1.29(25℃)であった。この含浸液Bを用いた以外は実施例1と同様に、経木および杉板に常温で真空含浸処理を行った。
また、この含浸液Bを用いて、2枚の40mm厚の杉辺材板に対して同様に真空含浸心処理を行った後、含浸液Bに浸漬した状態のまま、圧力容器内に移して、0.7MPaに加圧処理を実施して真空−加圧含浸処理を行った。ここで、真空含浸処理のみならず、加圧含浸処理を併用したのは、板厚が40mmと厚い杉辺材板の内部まで含浸液を浸透させるためである。
これら含浸処理を行った木材について、さらに、実施例1同様に加熱処理を行った。これら処理後の木材に対してクロムイオンおよび燐酸イオンの溶出の有無について調べたところ、実施例1と同様に、90℃、10時間の加熱処理を行ったサンプルではクロムイオンは溶出せず、燐酸イオンの溶出は認められた。このことから、クロムが木材内に固定化されたことが確認された。このときのクロムは、CrHPO4・H2PO4、および、CrPO4として固定化されたと考察される。すなわち、ここでは尿素の加水分解反応によりクロム化合物の固定化が達成された。
また、加熱処理温度を150℃としたサンプルでは、短時間(30分間)の処理品であっても、クロムイオンのみならず燐酸イオンの溶出もなかった。
また、上記で真空−加圧含浸処理後に加熱処理を行った40mm厚さの杉辺材板の中央部を切断し、その断面の中央について、蛍光X線分析装置を用いて調べたところ、クロムおよびリンの存在が確認された。これら結果から、クロム成分およびリン成分が木材内部まで侵入し、かつ、固定化されていることが確認された。
上記の、含浸後に150℃で30分間の加熱処理を行った経木について行った、難燃性UL−94規格に準拠した難燃性テストでは残炎はなく、その結果は実施例1同様にV−0を満足するものであり、優れた自己消火性を有していることが確認された。
また、含浸処理後に150℃で30分間の加熱処理を行った杉板の発熱性評価テストでは、5分間の総発熱量は1.46MJ/m2であり、また、最大発熱速度は9.70kw/m2であった。このように、このサンプルでは、内装材の難燃規格RM(それぞれ、8MJ/m2以下、200kw/m2以下)を十分に満足した。
上記2枚の40mm厚の杉辺材板サンプルについて発熱性評価を行ったところ、10分間の総発熱量がそれぞれ4.92MJ/m2、および、6.59MJ/m2であり、最大発熱速度は14.20kw/m2、および、18.17MJ/m2であって、内装材の準不燃規格QMを満足した。
上記の酸性燐酸クロム−尿素系の難燃化含浸液の特徴は、含浸された木材が緑色に着色されることである。単純に難燃化剤成分である燐酸成分含有量を知るための蛍光X線分析のモニターとしてクロム(Cr)化合物を添加するのであれば、添加量はこの実施例の十分の一以下であってもよい。しかし、燐酸に対して、上記程度、すなわち、かなり多量にクロムを含む場合では、含浸処理された木材はその緑色の濃さを、例えば、予め作製した標準サンプルと視認により比較することによって、特別な分析装置なしでも、おおよその燐酸成分含有量を知ることができる。
<実施例 3>
酸性燐酸アルミ(Al(H2PO43)−尿素系の含浸液を調整した。すなわち、水酸化アルミニウム1モルを50重量%−燐酸水溶液(燐酸3モル相当量)に溶解させた後、尿素6モルと水を加えて含浸液C(比重:1.26(25℃))を調製した。
この含浸液Cを用いた以外は、実施例2における40mm厚さの杉辺材板に対して行った処理と同様にして、常温で経木および杉板に真空―加圧含浸処理を行った。その後、150℃で30分間の加熱処理を行い、含浸処理サンプルを得た。これらサンプルには、含浸処理による着色はなかった。
また、これらサンプルについて溶出試験を行ったところ、アルミニウムイオンは水中に溶出せず、アルミニウムが木材内に固定化されたことが確認された。このときのアルミニウムは、AlHPO4・H2PO4、及び、AlPO4として固定化されたと考察される。さらに、燐酸イオンの溶出も認められなかった。
また、上記で真空含浸処理後に加熱処理を行った杉板の中央部を切断し、その断面の中央について蛍光X線分析装置を用いて調べたところ、リンおよびアルミニウムの存在が確認された。これらから、リン成分、および、アルミニウム成分が木材内部まで侵入し、かつ、固定化されていることが確認された。ここでは尿素の加水分解反応によりアルミニウム化合物の固定化が達成された。
上記で含浸処理された経木に対するUL−94準拠の難燃性テストは、V−0を満足する結果であった。また、含浸処理された杉板のISO−5660−1に準拠した発熱性評価では、5分間の総発熱量が1.49MJ/m2であり、内装材の難燃規格RM(8MJ/m2以内)を十分に満足する結果であった。
<実施例 4>
酸性燐酸マグネシウム(Mg(H2PO42)−尿素系の含浸液を調整した。すなわち、すなわち、水酸化マグネシウム1モルを水に分散させたスラリーに、75重量%の燐酸水溶液を燐酸2モル相当量混合して溶解させ、これに尿素4モルを添加して含浸液D(比重:1.24(25℃))を調製した。
この含浸液Dを用いた以外は、実施例3における40mm厚さの杉辺材板に対して行ったのと同様に、常温で経木および杉板に真空−加圧含浸処理を行った。その後150℃で30分間の加熱処理を行い、含浸処理サンプルを得た。これらサンプルには、真空−加圧含浸・加熱処理による着色はなかった。
また、これらサンプルについて溶出試験を行ったところ、マグネシウムイオンは溶出せず、マグネシウムイオンが木材中に固定されたことが確認された。このときマグネシウムは、MgHPO4、および、Mg3(PO42として固定されたと考察される。さらに、燐酸イオンの溶出も認められなかった。すなわち、ここでは尿素の加水分解反応によりマグネシウム化合物の固定化が達成された。
また、上記で真空含浸処理後に加熱処理を行った杉板の中央部を切断し、その断面の中央について、蛍光X線分析装置を用いて調べたところ、リンおよびマグネシウムの存在が確認された。これらから、燐成分、および、マグネシウム成分が木材内部まで浸入し、かつ、固定化されていることが確認された。
上記で真空−加圧含浸・加熱処理された経木の難燃性テストの結果は、V−0を満足するものであった。また、真空−加圧含浸・加熱処理された杉板の発熱性評価の結果は、5分間の総発熱量が1.47MJ/m2であり、内装材の難燃規格RMを十分に満足した。
<実施例 5>
酸性燐酸銅(Cu(H2PO42)0.1モル、燐酸1.6モル、ホウ酸1モル、尿素6モルを水に溶解させ、さらに水を加えて全量を1Lに調整して含浸液Eを得た。この含浸液Eの比重は1,20(25℃)であった。この含浸液Eを用いたこと、及び、常温ではなく35℃で行った以外は実施例1と同様にして、経木および杉板に対して真空含浸処理を行い、その後、温度を変えて加熱処理(90〜150℃、60分間)を行った。上記で真空含浸処理を35℃で行ったのは、低温ではホウ酸の溶解度が小さいので、十分な量の含浸ができないためである。
このような含浸液Eを用いて真空含浸・加熱処理を行った木材(木質材料)は、防腐、防虫、抗菌、および、防燃の機能を有する。
上記で得られた真空含浸・加熱処理されたサンプルについて溶出試験を行ったところ、90℃での加熱処理品では燐酸、および、ホウ酸の固定は達成されていなかった。150℃の加熱処理品ではこれらすべての溶出が認められず、さらに木材の色調が赤褐色化していた。このことから、150℃以上で、セルロースの燐酸エステル化反応だけでなく、セルロースの糖化反応も少なくとも一部生じて銅イオンが還元されて銅の微粒子として木材内に固定されることが確認された。なお、真空含浸処理後に加熱処理を行った杉板の中央部を切断し、その断面について調べたところ、断面の中央でも銅及びリンの存在が確認された。また、同じ断面中央部分について化学分析を行ったところ、ホウ素が確認された。これら結果より、これら元素を有する化合物が木材内部まで侵入し、かつ、固定化されたことが確認された。すなわち、ここではセルロースのエステル化反応とセルロースの糖化反応とにより銅化合物の固定化が達成された。
なお、上記のようにホウ酸と共に銅を含浸させることにより、蛍光X線分析などにより非破壊で検出できる銅を、防虫剤及び防腐剤として機能するホウ酸の含浸状況を知る上でのモニターとして用いることができることが理解される。
上記で真空含浸・加熱処理を行った経木の防燃テストではV−0を満足する結果であった。また、真空−加圧含浸・加熱処理された杉板の発熱性評価結果は、5分間の総熱量が1.47MJ/m2であり、内装材の難燃規格を十分に満足した。
<実施例 6>
硫酸チタニル(TiOSO4)、硫酸(H2SO4)、尿素、水からなる含浸液Fを調整した。具体的には、市販の硫酸チタニル(テイカ社製)を水に溶解させ、これに尿素を相溶させて調製した。この含浸液Fを用いて経木および杉板に常温で真空含浸処理を行い、その後、90℃で240分間の加熱処理を行った。一部のサンプルについて溶出試験を行ったところ、硫酸チタニルの不溶化が確認されたものの、硫酸イオンは溶出した。そのため、150℃での加熱処理を30分間行ったところ、酸性硫酸イオンの溶出もなくなった。このような結果から、150℃での加熱処理により、尿素の加水分解による硫酸の中和だけでなく、木材のセルロースの硫酸エステル化反応が生じたと考察される。すなわち、ここではセルロースのエステル化反応によりチタン化合物の固定化が達成された。
なお、真空含浸処理後に150℃で加熱処理を行った杉板の中央部を切断し、その断面について蛍光X線分析装置により調べたところ、断面の中央でもチタンと硫黄の存在が確認された。これら結果より、これら元素を有する化合物が木材内部まで含浸され、かつ、固定化されたことが確認された。しかもX線回折分析の結果、固定されたチタンは、アナターゼ型の酸化チタンであることが確認できた。
このように不溶化によって生成した酸化チタンは、光触媒として機能し、殺菌、抗菌、防汚、防臭の機能を有する。
なお、真空含浸処理後に150℃で加熱処理した経木に対する防燃テストでは、その最高レベルの評価であるV−0を満足した。
<実施例 7>
水に、酸性燐酸バリウム(Ba(H2PO42):0.15モル、燐酸:0.8モル、尿素:1モルを加えて、比重1.14の含浸液Gを調整した。この含浸液Gを用いて経木に常温で真空含浸処理を行った。その後150℃で加熱処理したサンプルについて溶出試験を行ったところ、バリウム、及び、燐酸がともに溶出せず、これらの固定が確認された。すなわち、ここでは尿素の加水分解反応およびセルロースの燐酸エステル化反応により、バリウム化合物の固定化が達成された。
このようにバリウム(Ba)や鉛(Pb)等の重金属を内部に固定化した木材には放射線の遮蔽効果がある。また、上記で処理された経木について防燃テストを行ったところ、その結果は最高レベルの評価であるV−0を満足した。
なお、有機重金属塩と尿素とを含む含浸液を含浸させた木材も加熱により、重金属化合物を内部に固定化できる。
<実施例 8>
0.15モル/L−シュウ酸第二鉄水溶液、0.2モル/L−シュウ酸アルミニウム水溶液、及び、0.2モル/L−シュウ酸クロム水溶液の3種類の水溶液をそれぞれ調製し、これらをそれぞれ含浸液H1〜H3として用いて常温で経木および杉板に真空含浸処理を行った。その後、110℃、あるいは、170℃でそれぞれ120分間の加熱処理を行った。これら処理品について溶出試験を行ったところ、これらすべてで、それぞれ第二鉄イオン、アルミニウムイオンあるいはクロムイオンの溶出は認められず、それぞれ鉄、アルミニウムおよびクロムの固定が確認された。ただし、鉄を含むもの、及び、クロムを含むものは、黒系色に着色した。すなわち、ここではシュウ酸塩の熱分解反応により鉄化合物、アルミニウム化合物、あるいは、クロム化合物の固定化が達成された。この真空含浸処理後に加熱処理されたこの経木について燃焼テストをしたところ、易可燃性であることが判った。
また、これら処理品はいずれもより多孔質になった。これはシュウ酸塩が熱分解したときにCOガス及びCO2ガスが生成し、これらが木材の外部に抜ける際に形成された孔によるものである。なお、このような鉄、アルミニウム、あるいはクロムが固定化された木材(木質材料)は、上記着色以外に、易可燃性、易含浸性などの機能性を有する。
<実施例 9>
モリブデン酸アンモニウム塩を10g、0.5モル/L−燐酸水溶液に加えて含浸液Iを調製した。この含浸液Iを用いて常温で経木および杉板に真空含浸処理を行い、その後、90℃の加熱処理を15時間行った。処理後に溶出試験を行ったところ、モリブデン酸塩の溶出は認められず、固定が確認された。さらに上記で処理された杉板の中央部を切断し、その断面中央でも周辺同様にモリブデンによる青系の着色が観察された。また、同様に断面中央でもリンの存在が、蛍光X線分析により確認された。これら結果より、これら元素を有する化合物が木材内部まで含浸され、かつ、これら元素が固定化されたことが確認された。ここでは、セルロースの糖化と、これによるモリブデン酸の還元反応によりモリブデン化合物の固定化が達成された。
さらに、この真空含浸処理後に加熱処理された経木について燃焼テストを行ったところ、その結果は最高レベルのV−0を満足した。また、処理された杉板については、発熱性評価テストを行ったところ、難燃レベルとの評価であった。
<実施例 10>
酸性クロム燐酸、シュウ酸クロム、および、尿素を有する含浸液Jを調製した。すなわち、酸性燐酸クロム(Cr(H2PO43)を0.5モル/L、シュウ酸クロム(Cr2(C243)を0.1モル/L、及び、尿素(Urea)を3モルを/Lとなるように水に溶解して含浸液Jを調製した。この含浸液Jを用いて、上記同様に経木および杉板に対して含浸処理を行った後、150℃で120分間の加熱処理を行った。
さらに同様に溶出試験を行ったところ、クロム、および、リンの溶出は認められなかった。また、蛍光X線分析と化学分析とを行ったところ、燐酸クロムが木材内部にも固定化されていることが確認された。
また、含浸処理後に加熱処理された木材表面を水で濡らし、pH試験紙で液性を調べたところ、中性(pH=6〜7)となっていることが判った。このことから上記加熱処理により尿素の加水分解が進行し、生成したシュウ酸アンモニウムが熱分解したことが確認された。すなわち、ここでは可溶性金属有機化合物であるシュウ酸塩の熱分解反応によりクロム化合物の固定化が達成された。
さらに、シュウ酸根の溶出が認められなかったことから、含浸液に燐酸塩とシュウ酸塩とを混合配合した効果、すなわち、シュウ酸アンモニウムの熱分解によってシュウ酸根が消失し、クロムの含有率の高い燐酸塩が生成したと云う現象が確認された。また、含浸・加熱処理の結果として、かなり緑色の濃い木質表面とコントラストのはっきりした木目とを有する木質材が得られた。
また、上記で含浸処理後に加熱処理された経木での燃焼テストの結果は最高レベルのV−0を満足し、上記で浸漬処理後に加熱処理された杉板での発熱性評価テストでの結果は不燃規格を十分に満足した。
<実施例 11>
(ケイ酸塩水溶液に尿素を相溶させた含浸液での実施例)
アルカリ金属と珪酸とからなるケイ酸塩が尿素と共存する溶液を木材に含浸させ、加熱処理によって尿素を加水分解させるとアンモニアガスと炭酸ガスとが発生し、このうちの炭酸ガスによって、アルカリ金属イオン、すなわち、リチウムイオン(Li+),ナトリウムイオン(Na+),あるいは、カリウムイオン(K+)が炭酸塩(炭酸イオンCO3-との塩)となって中和され、その結果、珪酸成分が不溶化し、木材内で固定化される。
一方、アルカリ金属の炭酸塩は水溶性であるので、溶出試験を行えば、アルカリ炭酸塩は溶出する。また、上記加熱処理で分解しなかった残存尿素は、珪酸ナトリウムによる木材の硬化効果の発現を穏やかにする効果があり、含浸処理後に加熱処理を行った木材にやわらかい風合いを維持させる。このようにやわらかい風合いを維持させることにより、のこぎりやかんなによる加工が行えるようになり、また、釘打ちすることができる。なお、このように尿素が残存するようにするためには、用いる含浸液における尿素の混合割合、加熱処理温度、加熱処理時間等の条件を選定する。
3号珪酸ナトリウム(珪酸とナトリウムとのモル比:SiO2/Na2O=3.0)とポリメタ燐酸ナトリウムとを混合し、水の存在下で加熱処理すると、ポリメタ燐酸ナトリウムが加水分解して弱酸性の燐酸二水素ナトリウム(NaH2PO4)を生成し(下記反応式(8)参照)、生成した燐酸二水素ナトリウムは珪酸ナトリウムを中和して珪酸ナトリウムを不溶化させる。
[化8]
(NaPO3)n + nH2O → nNaH2PO4 ……(8)
ただし、式中nは3以上の整数(以下同じ)
ポリメタ燐酸ナトリウムにおけるメタ燐酸と二酸化ナトリウムとの存在において、メタ燐酸が二酸化ナトリウムと同量ないし多い(P25/Na2O≧1)と、鎖状のポリ燐酸ナトリウムであっても、加水分解して珪酸ナトリウムを不溶化できる。本実施例では、3号珪酸ナトリウムと珪酸リチウムとにヘキサメタ燐酸ナトリウムと溶解して調製した水溶液であるプラセラム社製の金属鋳物用含浸剤「セラミックシーラントCS−3」に尿素を配合した含浸液Kを使用した。尿素の配合量としてはセラミックシーラントCS−3に対して30重量%である。
このような含浸液Kを用いて、常温で真空含浸処理を行った後、120℃での加熱処理を60分間行った杉板について溶出テストを行ったところ、ケイ酸ナトリウムの溶出は認められなかった。すなわち、ここではポリ燐酸塩の加水分解反応によりナトリウム化合物の固定化が達成され。また、処理された経木の難燃性テストの結果は最高レベルのV−0を満足し、同じ含浸処理および加熱処理を行った杉板も発熱性評価テストで難燃性以上との評価となった。
また、含浸処理および加熱処理を行った杉板について、その風合いの評価を行った。すなわち、含浸−加熱処理を行う以前の杉板と手触り感触を比較した結果、この杉板では上記のような含浸−加熱処理を行ったにもかかわらず柔軟な風合いが維持されていることが確認された。
<実施例 12>
アルミン酸ナトリウムとメタ燐酸ナトリウムを溶解させた含浸液を用いて、含浸−加熱処理試験を行った。すなわち、アルミニウムとナトリウムとのモル比(Al/Na)が0.58のアルミン酸ナトリウムの45重量%水溶液300gと、ヘキサメタ燐酸ナトリウムの40重量%水溶液240gを相溶させて含浸液Lとして、経木および杉板に真空含浸処理を行った。その後、100℃で15時間の加熱処理を行ったものについて溶出試験を行ったところ、アルミニウムの溶出はなく、固定化が確認された。しかし、強アルカリ性の燐酸ナトリウムが溶出したので、5質量%−硫酸アルミニウム水溶液に浸漬すると、燐酸ナトリウムの溶出もなくなった。ここでは酸性塩とアルカリ塩の複合ゲル化反応によりナトリウム化合物の固定化が達成された。このような処理を行った経木は、難燃性テストの結果は最高レベルのV−0を満足した。
<実施例 13>
硫酸チタニル硫酸酸性水溶液を水酸化ナトリウム水溶液で中和して得た水酸化チタニルに、過酸化水素水を作用させると透明な水溶液となる。一般にチタニル塩に過酸化水素水を作用させると、水溶性となる。水酸化チタニルに過ホウ酸ナトリウムを作用させて得た、ペルオキソチタニルホウ酸ナトリウム水溶液を含浸液Mとして、経木および杉板に真空含浸処理を行った。含浸処理後に120℃の加熱処理を120分間行った。処理品についてX線回折分析を行った結果、アナターゼ型酸化チタンが杉板内に析出し、固定されていることが確認された。
<実施例 14>
シュウ酸チタニルと尿素とを溶解させて得た水溶液を含浸液として用いた。具体的には、シュウ酸チタニルカリウム150gと尿素600gとを水2kgに溶解して含浸液Mを得た。この含浸液Nを用いて、常温で真空含浸処理を行った後、150℃での加熱処理を12時間行った。こうして処理された杉板について、蛍光X線分析、及び、X線回折を行ったところ、杉板の中央部の断面の全体に、光触媒として機能するアナターゼ形二酸化チタンが固定化されていることが確認された。二酸化チタンの生成と固定とは、尿素の加水分解によって生じたシュウ酸アンモニウムの熱分解であると推定される。
<実施例 15>
0.4モルのスルファミン酸バリウムを1kgの水に溶解させた後、スルファミン酸を添加してpHを1.5に調整して含浸液Oとした。この含浸液Oを用いて経木に真空含浸処理した後、水蒸気を共存させながら、105℃で10時間加熱した。この経木について溶出試験を行ったが、バリウムの溶出は全く起こらず、スルファミン酸の溶出も生じず、これらから硫酸バリウムとして固定されたことが確認できた。ここではスルファミン酸化合物の加水分解反応によりバリウム化合物の固定化が達成された。

Claims (1)

  1. 溶液を木材に含浸させ、前記溶液の溶質を前記木材内で化学反応させて前記木材に機能性を付与する物質を生成させて木材内部に固定化させることを特徴とし、前記化学反応がポリ燐酸塩の加水分解反応である機能性木質材料の製造方法。
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