図1には、本発明の実施例1である光学機器としての交換レンズを含むレンズ交換式カメラシステムの構成を示している。交換レンズ112は、カメラ本体131に対して取り外し(交換)可能に装着される。
被写体から交換レンズ112内に設けられた撮影光学系に入射した光は、該撮影光学系によって結像されて被写体像を形成する。撮影光学系は、被写体側から順に、第1レンズ101と、変倍レンズ102と、絞り103と、NDフィルタ104と、光軸方向に移動して焦点調節を行うフォーカス素子としてのフォーカスレンズ105と、第4レンズ106とを含む。
撮影光学系から出射してカメラ本体131内に入射した光は、メインミラー123によって反射され、ペンタプリズム121を介して光学ファインダ122に導かれる。これにより、ユーザが被写体像を観察することができる。
メインミラー123の一部であるハーフミラー部を透過した光は、不図示のサブミラーによって反射されてデフォーカス検出部127に導かれる。デフォーカス検出部127は、位相差検出方式により撮影光学系のデフォーカス量を検出し、デフォーカス量の情報をカメラマイクロコンピュータ(以下、カメラマイコンという)129に送る。
また、メインミラー123およびサブミラーは光路から退避可能であり、これらが退避した状態では、被写体像が撮像素子124上に形成される。撮像素子124は、被写体像を光電変換して電気信号としての撮像信号を出力する。撮像信号は信号処理部125に入力される。信号処理部125は、撮像信号に対してA/D変換、増幅、色補正、ホワイトバランス等の撮像処理を行うことで、映像信号を生成する。映像信号は、記録処理部126にて不図示の半導体メモリや光ディスク等の記録媒体に記録されたり、不図示の電子ビューファインダ用モニタに表示されたりする。
また、信号処理部125で生成された映像信号は、コントラスト信号生成部128にも送られる。コントラスト信号生成部128は、映像信号に含まれる輝度信号のうち高周波成分を抽出してコントラスト評価値信号を生成する。コントラスト評価値信号は、映像信号のコントラスト状態に対応した値(コントラスト評価値)を有する信号であり、カメラマイコン129に送られる。
カメラマイコン129と交換レンズ112に設けられたレンズマイクロコンピュータ(以下、レンズマイコンという)111は、所定の周期で又は必要に応じて相互に通信を行う。カメラマイコン129は、レンズマイコン111に対して様々なレンズ制御命令(フォーカス駆動命令、絞り命令およびレンズ情報の送信命令等)を送信する。また、レンズマイコン111は、カメラマイコン129に対して各種レンズ情報(ズーム位置、フォーカス位置、被写体距離、絞り値等)送信する。
また、カメラマイコン129は、レンズマイコン111とともに、位相差AFおよびコントラストAF用の制御手段として機能する。位相差AFでは、カメラマイコン129は、デフォーカス検出部127からのデフォーカス量に基づいて、撮影光学系を被写体に対して合焦状態とするためのフォーカスレンズ105の移動量を算出する。そして、その移動量の情報を含む位相差AF用のフォーカス駆動命令をレンズマイコン111に送信する。また、コントラストAFでは、カメラマイコン129は、フォーカスレンズ105をコントラスト評価値が最大となる位置に向かって移動させるようにコントラストAF用のフォーカス駆動命令をレンズマイコン111に送信する。
交換レンズ112において、フォーカスレンズ駆動部109は、振動型モータ、ステッピングモータ、ボイスコイルモータ(VCM)等のフォーカスアクチュエータおよびその駆動回路を含む。位相差AF用フォーカス駆動命令を受信したレンズマイコン111は、そのフォーカス駆動命令に含まれる移動量だけフォーカスレンズ105を光軸方向に移動させるようにフォーカスレンズ駆動部109を制御する。コントラストAF用フォーカス駆動命令を受信したレンズマイコン111は、フォーカスレンズ105にコントラスト評価値が増加する方向(合焦方向)を探索するためのウォブリングを行わせるようにフォーカスレンズ駆動部109を制御する。さらにレンズマイコン111は、フォーカスレンズ105に合焦方向におけるコントラスト評価値が最大となる位置(合焦位置)まで山登り駆動を行わせるようにフォーカスレンズ駆動部109を制御する。
フォーカス位置検出部113は、エンコーダにより構成され、フォーカスレンズ105の位置を検出してその位置(以下、フォーカス位置という)の情報をレンズマイコン111に送る。なお、フォーカスアクチュエータがステッピングモータのようにパルス信号により駆動される場合は、レンズマイコン111がフォーカスレンズ駆動部109を通じて該パルス信号の数をカウントすることでフォーカスレンズ105の位置を検出してもよい。
絞り駆動部108は、ステッピングモータやVCM等の絞りアクチュエータとその駆動回路を含む。絞り駆動命令を受信したレンズマイコン111は、絞り103の絞り値がその絞り駆動命令によって指示された絞り値に設定されるように絞り駆動部108を制御する。
NDフィルタ104は、ユーザが不図示のフィルタ挿抜機構を操作することで、光路に対して挿抜可能となっている。
変倍レンズ102は、ユーザが不図示の変倍レンズ駆動機構を操作することで、光軸方向に移動して撮影光学系の変倍を行う。ズーム位置検出部107は、ポテンショメータやエンコーダ等により構成され、変倍レンズ102の位置を検出してその位置(以下、ズーム位置という)の情報をレンズマイコン111に送る。
情報表示部(表示手段)110は、交換レンズ112の外部から視認可能な位置に設けられており、レンズマイコン111からの表示命令に応じて、レンズマイコン111またはカメラマイコン129からの各種情報を表示する。情報表示部110は、液晶パネルや有機EL素子等の表示素子により構成されている。また、情報表示部110が表示する情報には、後述するようにレンズマイコン111がフォーカス位置に基づいて算出する被写体距離に関する情報が含まれる。被写体距離は、撮影光学系が合焦する被写体までの距離である。
以上のように構成されたカメラシステムにおいて、交換レンズ112の撮影光学系はリアフォーカスタイプの光学系であるため、ズーム位置の変更に伴う像面位置の変動(ピントのずれ)を防止する必要がある。そこで、本実施例では、いわゆるズームトラッキングによりズーム位置の変化に応じて自動的にフォーカス位置を調節することで、一定距離に位置する被写体に対する合焦状態を維持する。
図2(a)には、ズームトラッキングを行うためにレンズマイコン111内の不図示のメモリ(フラッシュROM等)に記憶されたデータであって、被写体距離ごとのズーム位置とフォーカス位置との関係を示す電子カムデータを示している。図2(a)の横軸はズーム位置を、縦軸はフォーカス位置を示している。
ただし、実際の電子カムデータは、メモリ容量との関係で、図中に黒点で示すように離散的に選択された複数の代表被写体距離A〜Dにおいて離散的に選択された代表ズーム位置とこれに対するフォーカス位置との組からなるデータとして構成されている。いずれかの代表被写体距離におけるいずれかの代表ズーム位置に対するフォーカス位置はそのままメモリに記憶された電子カムデータから読み出して用いられる。一方、代表被写体距離以外の被写体距離におけるズーム位置に対するフォーカス位置や代表ズーム位置以外のズーム位置に対するフォーカス位置は、図2(b)に示すような補間処理により求められる。
図2(b)には、図2(a)に示した電子カムデータのうち代表被写体距離A,Bに対する電子カムデータの一部を拡大して示しており、横軸はズーム位置を示し、縦軸はフォーカス位置を示す。
図2(b)において、白丸で示すxは現在のフォーカス位置であり、代表被写体距離A,Bの間の被写体距離A′におけるワイド側ズーム位置に対するフォーカス位置である。二重丸で示すフォーカス位置(以下、目標フォーカス位置という)yは、被写体距離A′におけるそれぞれ代表ズーム位置であるワイド側ズーム位置とテレ側ズーム位置との間のミドルズーム位置に対するフォーカス位置である。ここでは、被写体距離A′に対する合焦状態を維持しながらズーム位置がワイド側ズーム位置からミドルズーム位置に変更された場合に現在のフォーカス位置xからフォーカスレンズ105を移動させるべき目標フォーカス位置yを求める場合について説明する。メモリには、目標フォーカス位置y(被写体距離A′、ミドルズーム位置)に近い2つの代表被写体距離A,Bにおける2つずつの代表ズーム位置に対する4つのフォーカス位置(黒丸で示す)のデータが記憶されている。zは被写体距離A′におけるテレ側ズーム位置に対するフォーカス位置である。
ワイド側ズーム位置において、被写体距離A,B間の間隔はaであり、被写体距離A,A′間の間隔はbである。一方、テレ側ズーム位置において、被写体距離A,B間の間隔はa′であり、被写体距離A,A′間の間隔はb′である。ワイド側ズーム位置とミドルズーム位置との間隔はlであり、テレ側ズーム位置とミドルズーム位置との間隔はmである。
この場合、まずaとbの比がa′とb′の比と同じであることを用いてフォーカス位置zを求める。次に、フォーカス位置x,zおよびlとmの比を用いて、目標フォーカス位置yを求める。
次に、図2(b)と同様に代表被写体距離A,Bに対する電子カムデータの一部を示す図3を用いて、ズーム位置とフォーカス位置から(すなわち、フォーカス位置に基づいて)被写体距離を算出する方法について説明する。図2(b)でも示したように、図3中に黒丸で示す2つの代表被写体距離A,Bにおける2つずつの代表ズーム位置(ワイド側およびテレ側ズーム位置)に対する4つのフォーカス位置がメモリに記憶されている。また、図3では、現在のズーム位置とフォーカス位置が二重丸で示す位置にある。ここでは、現在のズーム位置とフォーカス位置に対応する被写体距離Xを求める場合について説明する。
この場合、ワイド側およびテレ側ズーム位置と現在のズーム位置との間の間隔l,mの比率を用いて被写体距離A,Bのそれぞれにおける現在のズーム位置に対するフォーカス位置(白丸で示す)を算出する。そして、2つの白丸のフォーカス位置間の間隔bと被写体距離Aにおける白丸のフォーカス位置と二重丸のフォーカス位置の間隔aとの比率を求める。ガウスの結像公式により被写体距離の逆数とフォーカス位置とは比例関係にあるため、上述したフォーカス位置の比率から現在の被写体距離Xを算出することができる。
図4(a)を用いて、コントラストAFにおけるフォーカスレンズ105のウォブリングについて説明する。図4(a)において、横軸は時間であり、縦軸はフォーカスレンズ105の位置(フォーカス位置)である。フォーカス位置について、図の上方向を無限遠側とし、下方向を至近側とする。図に示すように、ウォブリングは、コントラストAF(オートフォーカス制御)により、フォーカスレンズ105が無限遠側および至近側のうち一方と他方への往復移動を複数回繰り返しながら合焦位置(図の右側)に移動することをいう。また、図では、無限遠側に合焦位置が存在する場合において、フォーカスレンズ105が無限遠側への移動の後に所定移動量だけ至近側に戻るという1回の往復移動を複数回繰り返す例を示している。このとき、以下の説明において、フォーカスレンズ105の1回の往復移動における無限遠側の端位置と至近側の端位置との間の距離を、図に示すように往復移動の振幅Aとする。また、図に示すように、振幅Aの中心を往復移動の振幅中心Cという。振幅中心Cは、往復移動の振幅内の所定位置であって、無限遠側の端位置と至近側の端位置との間の位置に相当する。また、図中の丸囲みの数字1〜7はフォーカス位置を示すが、以下の説明では括弧書きの数字で示す。
フォーカスレンズ105がフォーカス位置(1)にあるとき、カメラマイコン129からコントラストAF用のフォーカス駆動命令としてウォブリング命令を受信したレンズマイコン111は、フォーカスレンズ105のウォブリングを開始する。ウォブリング命令は、フォーカスレンズ105の振幅中心Cとその振幅中心Cからの移動方向(無限遠側または至近側)と振幅の情報を含む。レンズマイコン111は、ウォブリング命令に含まれる振幅中心Cに対して振幅の半値を加算(移動方向が無限遠側の場合)または減算(移動方向が至近側の場合)して得られる位置にフォーカスレンズ105を移動させるようにフォーカス駆動部109を制御する。
図4(a)に示すウォブリングにおいて、フォーカス位置(2)はフォーカス位置(1)から無限遠側に移動した後のフォーカス位置であり、フォーカス位置(3)はフォーカス位置(2)から至近側に移動した(戻った)後のフォーカス位置である。このフォーカス位置(2)への移動およびフォーカス位置(3)への移動(戻り)が1回の往復移動となる。
同様に、フォーカス位置(3)からフォーカス位置(4)への無限遠側への移動とフォーカス位置(4)からフォーカス位置(5)への至近側への移動(戻り)が1回の往復移動となる。さらに、フォーカス位置(5)からフォーカス位置(6)への無限遠側への移動とフォーカス位置(6)からフォーカス位置(7)への至近側への移動(戻り)も1回の往復移動となる。それぞれの往復移動における無限遠側への移動量は、無限遠側へのコントラスト評価値の増加に伴ってウォブリング命令に含まれる振幅中心Cがより無限遠側へと変更されることに応じて変化する。こうして実際のフォーカス位置がフォーカス位置(7)よりも無限遠側に存在する合焦位置に近づくまで又は到達するまでウォブリングが行われる。
このようなフォーカスレンズ105のウォブリング中における情報表示部110での被写体距離の表示について説明する。図4(b)には、情報表示部110において被写体距離を表示する被写体距離計がウォブリングに伴って無限遠側および至近側に交互に移動するフォーカス位置に基づいて算出される被写体距離をそのまま表示する場合に表示される被写体距離の変化を示している。図4(b)の上側には距離表示計(以下、従来の距離表示計という)を示しており、被写体距離がメートル目盛りで書かれている。このメートル目盛りに対して現在の被写体距離を示す不図示の指示バー(縦棒)の表示が加わることで、現在の被写体距離が表示される。なお、ここでは、メートル目盛りと指示バーとを用いて被写体距離を表示する場合について説明するが、被写体距離の数値(メートル表記)を直接表示してもよい。
図4(b)の下側には、従来の距離表示計においてウォブリング中のフォーカス位置(1)〜(7)に対応する被写体距離を表示する表示バーの動き(つまりは表示される被写体距離の変化)を示している。丸囲みの数字の位置が同じ数字を付したフォーカス位置(1)〜(7)での表示バーの位置を示し、丸囲みの数字から延びる矢印が次の移動先のフォーカス位置に対応する被写体距離を表示するための表示バーの動きを示している。
この図に示すように、従来の距離表示計では、ウォブリングにより往復移動するフォーカス位置に基づいて算出される被写体距離をそのまま表示するので、表示される被写体距離が小刻みに変動(増減)し、これを見たユーザに違和感を与える。
図5(a)には、図4(a)と同じウォブリングによるフォーカスレンズ105の往復移動を示しており、横軸は時間を、縦軸はフォーカス位置をそれぞれ示している。図5(a)において、フォーカス位置(2)はフォーカス位置(1)から無限遠側に移動した後のフォーカス位置である。フォーカス位置(3)は、フォーカス位置(2)から至近側に戻った後のフォーカス位置(図4(a)中のフォーカス位置(2))からさらに無限遠側に移動した後のフォーカス位置である。フォーカス位置(3)は、フォーカス位置(3)から至近側に戻った後のフォーカス位置(図4(a)中のフォーカス位置(5))からさらに無限遠側に移動した後のフォーカス位置である。
そして、図5(b)の上側には、本実施例における距離表示計を示している。この距離表示計は、図4(b)に示した従来の距離表示計と同じく、メートル目盛りと指示バーとにより被写体距離を表示する。
図5(b)の下側には、本実施例の距離表示計においてウォブリング中のフォーカス位置に対応する被写体距離を表示する表示バーの動き(表示される被写体距離の変化)を示している。図4(b)と同様に、丸囲みの数字の位置が同じ数字を付したフォーカス位置(1)〜(4)での表示バーの位置を示し、丸囲みの数字から延びる矢印が次の移動先のフォーカス位置に対応する被写体距離を表示するための表示バーの動きを示している。
本実施例では、フォーカスレンズ105の各回の往復移動(以下、各往復移動ともいう)における複数のフォーカス位置を代表する1つのフォーカス位置に対応する被写体距離を距離表示計に表示させる。具体的には、各往復移動における振幅中心Cに対応する被写体距離を距離表示計に表示させる。そして、各往復移動中において、振幅中心C以外(所定位置以外)のフォーカス位置に対応する被写体距離を距離表示計に表示させないようにする。これにより、図4(b)に示した従来の距離表示計のようにウォブリング中に表示される被写体距離が小刻みに増減することを回避することができる。そして、ウォブリング中において表示される被写体距離の変動の頻度が少なくなるため、ユーザにとって見易い距離表示計を提示することができる。
図5(b)に示した距離表示計を情報表示部110に表示させる距離表示処理は、距離表示処理装置(判定手段および処理手段)としてのレンズマイコン111が行う。図7には、レンズマイコン111がコンピュータプログラムとしての距離表示処理プログラムに従って行う距離表示処理の流れを示している。
ステップS801において、レンズマイコン111は、ズーム位置検出部107から現在のズーム位置を取得する。
次にステップS802では、レンズマイコン111は、その内部のメモリから電子カムデータを取得する。
次にステップS803では、レンズマイコン111は、カメラマイコン129からウォブリング命令を受信したか否か、つまりはフォーカスレンズ105のウォブリングを行うウォブリング状態に入ったか否かを判定する。ウォブリング状態である場合は、ステップS804に進み、ウォブリング状態でない場合はステップS806に進む。
ステップS804では、レンズマイコン111は、カメラマイコン129からのウォブリング命令に含まれる振幅中心Cを取得する。
次にステップS805では、レンズマイコン111は、ステップS804で算出した振幅中心Cに相当するフォーカス位置と現在のズーム位置と電子カムデータとを用いて、振幅中心Cに対応する被写体距離を算出する。そして、ステップS808に進む。
一方、ウォブリング状態でないとしてステップS806に進んだレンズマイコン111は、フォーカス位置検出部113から現在のフォーカス位置を取得する。
そして、ステップS807では、レンズマイコン111は、ステップS806において取得した現在のフォーカス位置と現在のズーム位置と電子カムデータとを用いて、現在のフォーカス位置に対応する被写体距離を算出する。そして、ステップS808に進む。
ステップS808では、レンズマイコン111は、ステップS805またはステップS807にて計算した被写体距離を距離表示計に表示させる。すなわち、距離表示計に表示する被写体距離を更新する。そして、ステップS803に戻り、ステップS803〜ステップS808の処理を繰り返す。
本実施例によれば、ウォブリングにおいて距離表示計に表示する被写体距離を各往復移動でのフォーカス位置を代表するフォーカス位置(振幅中心)に限定したので、被写体距離を小刻みに増減させることなく安定的に表示させることができる。
なお、本実施例では、各往復移動でのフォーカス位置を代表するフォーカス位置(所定位置)を振幅中心としたが、各往復移動での無限遠側または至近側の端位置のように他のフォーカス位置を各往復移動でのフォーカス位置を代表するフォーカス位置としてもよい。
次に、本発明の実施例2について説明する。なお、本実施例において、実施例1の構成要素と共通する構成要素又は類似する機能を有する構成要素には、実施例1と同符号を付す。
実施例1では、カメラマイコン129からウォブリング命令に各往復移動の振幅中心が含まれている場合について説明した。しかし、ウォブリング命令に振幅中心が含まれておらず、各往復移動での無限遠側または至近側の端位置(以下、目標端位置という)が含まれている場合もある。本実施例では、このような場合でも、距離表示計に表示される被写体距離をウォブリングに伴って小刻みに増減させないようにする方法について説明する。
ウォブリングは、一般にフォーカスレンズの移動によるピント変動が光学ファインダまたは電子ビューファインタを観察するユーザに対して認識されないように焦点深度(Fδ)以下の振幅、例えば1/4Fδ程度の振幅で行われる。ただし、Fは絞り値であり、δは許容錯乱円径である。本実施例では、フォーカスレンズ105の無限遠側または至近側のうち同一方向への移動量が、例えば1/4Fδより大きく(つまりは振幅より大きく)設定された所定量以上である場合に限って被写体距離の表示を更新する。つまりは、該移動量が所定量より小さい場合は被写体距離の表示を更新しない。これにより、距離表示計に表示される被写体距離がウォブリングに伴って小刻みに増減しないようにする。なお、本実施例では、所定量を焦点深度に等しいFδとする。また、ウォブリングにおける各往復移動を代表するフォーカス位置として、図6(a)に示す例において該往復移動における無限遠側の端位置とする場合について説明する(ただし、他の例において至近側の端位置としてもよい)。
図6(a)には、実施例1の図5(a)と同じウォブリングによるフォーカスレンズ105の往復移動を示しており、横軸は時間を、縦軸はフォーカス位置をそれぞれ示している。図6(a)において、フォーカス位置(2)はフォーカス位置(1)から1回の往復移動を経てさらに無限遠側に移動した後のフォーカス位置(無限遠側の端位置)である。フォーカス位置(3)は、フォーカス位置(2)から至近側に戻った後のフォーカス位置からさらに無限遠側に移動した後のフォーカス位置(無限遠側の端位置)である。
また、D1はフォーカス位置(1)から無限遠側に所定量Fδ(=焦点深度)だけ離れたフォーカス位置を示し、D2はフォーカス位置(2)から無限遠側にFδだけ離れたフォーカス位置を示している。
図6(b)の上側には、本実施例における距離表示計を示している。この距離表示計は、実施例1の図5(b)に示した距離表示計と同じく、メートル目盛りと指示バーとにより被写体距離を表示する。
図6(b)の下側には、本実施例の距離表示計においてウォブリング中のフォーカス位置に対応する被写体距離を表示する表示バーの動き(表示される被写体距離の変化)を示している。丸囲みの数字の位置が同じ数字を付したフォーカス位置(1)〜(3)での表示バーの位置を示し、丸囲みの数字から延びる矢印が次の移動先のフォーカス位置に対応する被写体距離を表示するための表示バーの動きを示している。
本実施例では、ウォブリング中の前回の被写体距離の表示更新後におけるフォーカスレンズ105の無限遠側または至近側のうち同一方向への移動量が所定量Fδ以上となるごとに(フォーカス位置(2),(3)において)被写体距離の表示を更新する。これにより、ウォブリング命令に振幅中心が含まれていない場合でも、距離表示計に表示される被写体距離がウォブリングに伴って小刻みに増減することを回避することができる。そして、ウォブリング中において表示される被写体距離の変動の頻度が少ないため、ユーザにとって見易い距離表示計を提示することができる。
図6(b)に示した距離表示計を情報表示部110に表示させる距離表示処理は、距離表示処理装置としてのレンズマイコン111が行う。図8には、レンズマイコン111がコンピュータプログラムとしての距離表示処理プログラムに従って行う距離表示処理の流れを示している。
ステップS901において、レンズマイコン111は、前回表示した被写体距離を算出するのに用いられて内部のメモリに保存されていたフォーカス位置(以下、前回フォーカス位置という)を該メモリから取得する。
次に、ステップS902では、レンズマイコン111は、フォーカス位置検出部113から現在のフォーカス位置を取得する。
次に、ステップS903では、レンズマイコン111は、その内部のメモリから電子カムデータを取得する。
次に、ステップS904では、レンズマイコン111は、カメラマイコン129からウォブリング命令を受信したか否か、つまりはフォーカスレンズ105のウォブリングを行うウォブリング状態に入ったか否かを判定する。ウォブリング状態である場合は、ステップS905に進み、ウォブリング状態でない場合はステップS911に進む。
ステップS905では、レンズマイコン111は、ステップS901にて取得した前回フォーカス位置とウォブリング命令に含まれている目標端位置との差分を計算して、フォーカスレンズ105の移動量(以下、フォーカス移動量という)を求める。
次に、ステップS906では、レンズマイコン111は、フォーカス移動量の大きさを判定するための閾値である上述した所定量を計算する。所定量は、前述したように絞り値Fと許容錯乱円径δとを乗じた値(Fδ)とする。ただし、この所定量は例であり、他の値(例えば、1/2Fδ)としてもよい。
次に、ステップS907では、レンズマイコン111は、ステップS905で求めたフォーカス移動量が所定量以上(閾値以上)か否かを判定する。所定量以上である場合はステップS908に進む。一方、所定量より小さい場合はそのまま本処理を終了する。
ステップS908では、レンズマイコン111は、ウォブリング命令に含まれる目標端位置と現在のズーム位置と電子カムデータとを用いて目標端位置(所定位置)に対応する被写体距離を算出する。
そして、ステップS909では、レンズマイコン111は、ステップS908で算出した被写体距離を距離表示計に表示させる。すなわち、距離表示計に表示する被写体距離を更新する。
さらに、ステップS910では、レンズマイコン111は、今回表示した被写体距離を算出するのに用いた目標端位置を次回のルーチンのステップS901で取得する「前回フォーカス位置」とするためにメモリに保存する。そして、ステップS904に戻る。
一方、ウォブリング状態でないとしてステップS911に進んだレンズマイコン111は、ステップS902で取得した現在のフォーカス位置と現在のズーム位置と電子カムデータとを用いて、現在のフォーカス位置に対応する被写体距離を算出する。
次に、ステップS912では、レンズマイコン111は、ステップS911で算出した被写体距離を距離表示計に表示させる。
そして、ステップS913では、レンズマイコン111は、今回表示した被写体距離を算出するのに用いた現在のフォーカス位置を次回のルーチンのステップS901で取得する「前回フォーカス位置」とするためにメモリに保存する。そして、ステップS904に戻る。
本実施例によれば、ウォブリング中の前回の被写体距離の表示更新後にフォーカスレンズ105が同一方向に所定量以上移動した場合に限って被写体距離を更新表示する。このため、ウォブリングに伴って被写体距離を小刻みに増減させることなく安定的に表示させることができる。
なお、本実施例では、各往復移動でのフォーカス位置を代表するフォーカス位置(所定位置)を各往復移動での端位置としたが、各往復移動での振幅中心を無限遠側および至近側の端位置から算出してこれを所定位置としてもよい。
また、上記各実施例では、レンズマイコン111はカメラマイコン129からウォブリング命令として受け取った各往復移動の振幅中心や端位置での被写体距離を算出する場合について説明した。しかし、各往復移動の最初の移動後のフォーカス位置(図5(b)および図6(b)における無限遠側の端位置)をフォーカス位置検出部113により検出して、その検出したフォーカス位置を用いて被写体距離を算出してもよい。
また、上記各実施例では、交換レンズに設けられたレンズマイコンが距離表示処理装置である場合について説明したが、光学機器としてのカメラ本体に設けられたカメラマイコンが距離表示処理装置として機能してもよい。また、光学機器としてのレンズ一体型カメラにおいて該カメラに設けられたマイクロコンピュータが距離表示装置として機能してもよい。
さらに、上記各実施例では、フォーカス素子が光軸方向に移動可能なフォーカスレンズである場合について説明したが、光軸方向に移動可能なフォーカス素子として撮像素子を用いてもよい。
(その他の実施例)
本発明は、上述の実施形態の1以上の機能を実現するプログラムを、ネットワーク又は記憶媒体を介してシステム又は装置に供給し、そのシステム又は装置のコンピュータにおける1つ以上のプロセッサーがプログラムを読出し実行する処理でも実現可能である。また、1以上の機能を実現する回路(例えば、ASIC)によっても実現可能である。
以上説明した各実施例は代表的な例にすぎず、本発明の実施に際しては、各実施例に対して種々の変形や変更が可能である。