以下図面に基づいて、本発明が適用されたMRI装置およびその制御方法の一実施形態(以下実施例と記す)について説明する。なお以下に説明の図面において、同一の符号を付した構成あるいはステップは、略同一の構成あるいは略同一の作用を為し、略同様の効果を奏する。これらの構成あるいはステップについての繰り返しの説明を省略する。
〔MRI装置100の基本構成〕
図1は、本発明の一実施例であるMRI装置100の全体構成の概略を示すブロック図である。MRI装置100は、核磁気共鳴(以下NMRと記す)現象を利用して、寝台82に載置された被検体1の断層画像を撮像する装置である。MRI装置100は、静磁場発生源20と傾斜磁場コイル32とを備える磁場発生系30と、送信系40と、受信系50と、中央処理装置(以下CPUと記す)14および入出力装置90を有する信号処理系60と、寝台82を制御する寝台制御装置80と、シーケンサ12と、マーカ15を備える。静磁場発生源20と傾斜磁場コイル32は、ガントリの中央部に形成された撮像空間において静磁場および傾斜磁場を発生する。
被検体1は寝台82に載置された状態で、前記ガントリ内の前記撮像空間に導かれ、例えば静磁場発生源20と傾斜磁場コイル32とが発生する磁場が被検体1に加えられ、照射コイル48から高周波磁場パルス(以下RFパルスと記す)が被検体1に照射されることにより、被検体1の部位の生体組織を構成する原子の原子核が励起され、NMR現象が誘起される。NMR現象により原子核がNMR信号を発生し、被検体1に近接して設けられた受信コイル52により前記NMR信号が受信される。受信したNMR信号から画像が構成され、信号処理系60の出力装置96が有するディスプレイに表示される。なお出力装置96はディスプレイだけでなくプリンタやその他必要に応じて色々な出力装置を備えている。
磁場発生系30は、MRI装置の座標系すなわち静止座標系であるX軸やY軸やZ軸の3軸方向に傾斜磁場をそれぞれ印加するためにそれぞれの軸の傾斜磁場コイル32と、それぞれの軸の傾斜磁場コイル32を駆動する傾斜磁場電源34を備えている。シーケンサ12からの命令に従ってそれぞれの傾斜磁場コイルの傾斜磁場電源34を駆動することにより、X軸やY軸やZ軸の方向に傾斜磁場GxやGyやGzを被検体1に印加する。MRI撮像時には、例えば、スライス面すなわち撮像断面に直交する方向にスライス方向傾斜磁場パルス(Gs)を印加して被検体1に対するスライス面を設定し、そのスライス面に直交して且つ互いに直交する残りの2つの方向に位相エンコード方向傾斜磁場パルス(Gp)と周波数エンコード方向傾斜磁場パルス(Gf)を印加して、NMR信号にそれぞれの方向の位置情報をエンコードする。
静磁場発生源20は、被検体1の体軸方向2に均一な静磁場を発生させる水平磁場方式が用いられ、被検体1の周りに永久磁石方式、常電導方式あるいは超電導方式の静磁場発生源が配置されている。なお、静磁場発生源20は、被検体1の周りの空間にその体軸と直交する方向に均一な静磁場を発生させる垂直磁場方式を用いるものであっても良い。基本的な考え方は同じであり、以下の説明ではこれらの代表例として、水平磁場方式を用いた例で説明する。しかし上述のとおり本発明の適用は、水平磁場方式に限られるものではない。
送信系40は、被検体1の生体組織を構成する原子の原子核スピンに核磁気共鳴を起こさせるために被検体1にRFパルスを照射する作用を為し、高周波発振器42と変調器44と高周波増幅器46と高周波コイルである照射コイル48を備えている。照射コイル48は被検体1に近接して配置され、高周波発振器42から出力されたRFパルスをシーケンサ12からの指令によるタイミングで変調器44により振幅変調し、この振幅変調されたRFパルスを高周波増幅器46で増幅した後に照射コイル48に供給することにより、RFパルスが被検体1に照射される。また照射コイル48から照射されたRFパルスの被検体1への吸収量は、SAR実測部70で実測される。
受信系50は、NMR現象により放出されるNMR信号を検出する機能を有し、高周波コイルである受信コイル52と信号増幅器54と直交位相検波器56とアナログデジタル変換器(以下A/D変換器と記す)58を有する。照射コイル48から照射されたRFパルスによって励起された被検体1の部位からのNMR信号が被検体1に近接して配置された受信コイル52で受信され、信号増幅器54で増幅された後、シーケンサ12からの指令によるタイミングで直交位相検波器56により直交する二系統の信号に分割され、それぞれがA/D変換器58でディジタルデータに変換されて、信号処理系60に送られる。
照射コイル48と傾斜磁場コイル32は、被検体1が挿入される静磁場発生源20の図示しない静磁場空間内に、垂直磁場方式であれば被検体1に対向して、水平磁場方式であれば被検体1を取り囲むようにして設置される。また、受信コイル52は、被検体1に対向して、あるいは取り囲むようにして設置される。シーケンサ12は、RFパルスと傾斜磁場パルスをある所定のパルスシーケンスで繰り返し印加する制御を行う制御手段であり、信号処理系60のCPU14の制御に従って動作し、被検体1の断層画像のデータ収集に必要な種々の命令を磁場発生系30の傾斜磁場電源34や、送信系40や、受信系50に送る。
寝台制御装置80は、CPU14から受信する移動距離信号に基づいて寝台82を移動させたり、寝台82の位置情報をCPU14に送信したりする。なお移動距離信号は、入出力装置90からの入力により生成するようにしてもよいし、MRI装置100に別途操作卓を設けて、この操作卓の操作により生成するようにしてもよい。
マーカ15は、レーザー発生装置等のデバイスで構成されており、撮像対象となる部位等の位置を指定するために被検体1に取り付けられている。マーカ15はレーザーを発生し、このレーザーを検知してマーカ15の位置が撮像空間の所定の位置、例えば磁場中心に来るように寝台82の移動を制御する。これによりマーカ15で指定した被検体1の部位を、例えば磁場中心に移動させることが可能となる。
信号処理系60は、いろいろな操作や制御のための指令やデータの入力処理、各種ディジタルデータの処理や制御、処理結果等の表示などの出力処理、さらに必要なデータの保存処理等あるいは保存されているテータの読出し処理などを行う、制御装置として動作する。このため信号処理系60は、入出力装置90と、必要なデータを記憶するための光ディスク62や磁気ディスク64等の外部記憶装置61と、内部記憶装置(以下内部メモリと記す)66と、MRI装置100の全体の制御を行う制御装置として動作するCPU14を有する。
例えば受信系50からディジタル化されたNMR信号が信号処理系60のCPU14に入力されると、CPU14は信号処理および画像再構成等の処理を実行し、被検体1の断層画像を生成する。さらにCPU14はこの断層画像を出力装置96のディスプレイ98に表示し、また必要に応じあるいは操作に基づき、外部記憶装置61の磁気ディスク64あるいは光ディスク62に前記断層画像あるいは必要なデータを記憶する。
信号処理系60の入出力装置90は、MRI装置100の処理に使用する各種設定値を含む各種制御情報やMRI装置100を操作するための各種指令を入力する入力装置と、出力装置を備えている。その他に図示していないが、入出力装置90は他の機器や他のシステムと画像を含む情報のやり取りを行うための通信装置を備えている。また前記入力装置として、キーボード94と、トラックボール又はマウスやパッドやタッチパネルなどを含むポインティングデバイス92と、を有している。また出力装置96として、例えばディスプレイ98やプリンタ99を備えている。前記入力手段は、ポインティングデバイス92としてディスプレイ98などの出力装置96に近接して設けられたタッチパネルなどを備えており、操作者がディスプレイ98の表示を見ながら、インタラクティブにMRI装置100の各種処理の制御を指示できるように構成されている。
入出力装置90の構成として説明した上述の入出力装置は、さらに必要に応じ複数組設けられている。入出力装置90は、MRIの制御卓に設けられているだけでなく、作業性を向上するために、一部はガントリに備え付けられている。例えばガントリ備え付けディスプレイ18は出力装置90の入出力装置の一部として動作し、図示しない前記ガントリに設けられている。前記ガントリの近くで操作者が作業する場合に、作業に必要な情報をガントリ備え付けディスプレイ18に表示し、また表示内容に対応してガントリ備え付けディスプレイ18から指示や設定値などの入力を行うことができる。
表示機能や入力機能を有するガントリ備え付けディスプレイ18は、入出力装置90の一部として動作し、入出力装置90と同様にCPU14に接続されており、CPU14を介して必要な情報の表示および操作された入力情報の取り込みが行われる。この機能は、ガントリのそばで作業する操作者にとって大変便利であり、表示内容の確認や入力のために一々操作卓の所へ行く必要が無く、作業性の向上につながる。ガントリ備え付けディスプレイ18は表示手段と入力手段とが一体に構成されており、ガントリ備え付けディスプレイ18の表示を見ながら、操作のための指示を行うことができる。なおガントリ備え付けディスプレイ18の表示内容とディスプレイ98の表示内容が重複していても良いし、ガントリ備え付けディスプレイ18からの入力に代えて、ポインティングデバイス92あるいはキーボード94から入力することができる。
上述のようなMRI装置100の撮像対象となる核種としては、人である被検体1の主たる構成物質である水素原子核(以下プロトンと記す)が臨床で普及している。本実施形態のMRI装置100おいては、例えばプロトン密度の空間分布や励起状態の緩和時間の空間分布に関する情報を画像化することで、人体頭部、腹部、四肢等、部位の形態または機能を2次元的もしくは3次元的に撮像する。
〔撮像の準備、撮像スケジュールや撮像条件を設定〕
次に、MRI装置100における被検体1のMRI画像の撮像の手順を説明する。本発明が適用されたMRI装置100は、被検体1にRFパルスを照射して撮像を実施する前に、入力された被検体の情報や撮像のための設定内容と予めMRI装置が有しているSAR値の演算データからSAR値を算出し、この算出されたSAR値がIEC60601-2-33,3rd editionなどに基づいて設定された規定値を超えないように撮像条件を設定する。その上で被検体1にRFパルスを照射して撮像を実施する。このようにすることにより、撮像の実施中にSAR値の規定値を超過することに起因して、撮像作業が中止されることによる作業性の著しい低下を防ぐ効果的が得られる。
図2は、MRI装置100の撮像スケジュールや撮像条件を設定するために使用する設定画像800であり、ディスプレイ98に表示される。なお設定画像800はディスプレイ98だけでなく、ガントリ備え付けディスプレイ18にも表示するようにしても良い。また図3は、SARの条件を満たす撮像条件を設定するためのフローチャートである。
設定画像800は、スキャンA〜Eで例示したスキャン名152のリストを表示するスキャンリスト表示部810と、選択されたスキャン名152の撮像条件を表示する撮像条件表示部820と、各スキャン名の撮像条件を一覧のリストの形で表示する撮像スケジュール表示部870と、演算により求めたより適切なスキャン順番を表示するスキャン順番候補表示部880と、を備えている。撮像条件表示部820は撮像条件を表示すると共に、表示されている条件を修正する場合、あるいは新たに条件を入力する場合にも利用できる。
例えば表示されているスキャン位置834をカーソル150で選択して移動することで、スキャン位置834を変更できる。また繰り返し時間(TR)852の数値をカーソル150で選択し、新たな数値を入力することで、繰り返し時間(TR)852の条件を変更できる。さらにカーソル150で対象項目あるいは表示画像上の位置を指定して入力操作を行うことにより、新しく入力することができる。例示した項目や位置以外の他の部分に関しても同様である。
入出力装置90を介して撮像を予定している部位あるいは部位よりさらに細かい位置を順に入力すると、入力された各部位あるいはさらに細かい指示位置に対して、それぞれ撮像のためのスキャン名152が信号処理系60により自動的に付され、スキャンリスト表示部810にスキャン名のリストの形で入力順に表示される。各スキャン名152は入力された部位あるいは指示位置に対して付される。指示位置に対してはスキャン名152を付さないで部位に対してスキャン名152を付してもよい。
しかし本実施例では部位に対応するだけでなく、必要に応じてさらに細かい指示位置に対してスキャン名152を付している。ここで指示位置は例えば、撮像のために寝台82を停止する停止位置とすると撮像作業の管理上あるいは撮像のための操作においてたいへん便利である。例えば頭部に対して少し離れた撮像箇所を複数個所撮像する場合に、同じ部位である同じ頭部であってもそれぞれの撮像箇所に対応して寝台82を動かして、MRIの撮像空間における撮像箇所の位置調整を撮像箇所ごとに行う。寝台82の停止位置ごとにスキャン名152を付すことで、停止位置ごとに寝台82の位置を含めた撮像条件を設定できる。また発明者の研究結果では、撮像位置毎に被検体1に吸収されるSAR値がかなり異なる場合があり、SAR値を高い精度で管理するには、寝台82の停止位置を前記指示位置として、寝台82の停止位置ごとにスキャン名152を付すことが好ましい。
入力された部位あるいは寝台82の停止位置に対してスキャン名152が付され、スキャン名152で寝台の位置を含めた撮像条件が管理され、スキャン名152をキーワードとして選択されたスキャン名152の撮像条件あるいは撮像結果さらに被検体1に関する情報の外部記憶装置61や内部メモリ66への書き込みや読み出しを行うことができる。寝台の位置を含めた撮像条件を以下スキャンセットと記す。各スキャンセットはそれぞれスキャン名152で管理される。なおMRI装置100を含むシステムでは、被検体1を特定すると撮像された結果である画像や関係するスキャン名152を外部記憶装置61から読み出すことができ、読み出されたスキャンリストから各スキャン名152を特定することで、撮像条件やそのときのSAR値を読み出すことができる。
入力された部位あるいは指示位置の順にスキャン名152が付されてスキャンリスト表示部810に表示され、スキャン名152の表示の順番に撮像が行われる。カーソル150でスキャン名152を特定して表示位置を変更し、スキャン名152の表示の順番を変更すると、撮像順番が新たな表示順に従うように変更される。これらの操作は、カーソル150を使用するだけでなく、ディスプレイ98の表示面に設けられているタッチパネルを用いて、指で操作することが可能である。他の項目に対しても同じである。
リストとして示されているスキャン名の一つ、例えばスキャンA152を、カーソル150などを用いて選択すると、スキャンA152にリンクしているスキャンセットが内部メモリ66あるいは外部記憶装置61から読み出され、撮像条件が撮像条件表示部820に表示される。未だスキャンA152の撮像条件が入力されていない場合あるいは入力されていない項目は、項目だけで具体的な撮像条件の無い状態で表示される。必要に応じ撮像条件表示部820の空欄項目に撮像条件を入力することが可能であり、既に表示されていても新たな入力操作で、撮像条件を変更することができる。
撮像条件表示部820に表示される撮像条件は、選択されたスキャン名152とリンクしており、これらはリンクされた状態でMRI装置100における撮像など、色々な動作やそのための制御において、関連づけられた状態で取り扱われる。この明細書では、各スキャン名152とリンクする撮像条件などを含む、関係する一連の設定条件や設定値などの集合体をスキャンカードと記しまた各スキャン名152をスキャンカード名と記す場合がある。MRI装置100はスキャンカード名152の下に撮像条件などの関連する情報が集合体として取り扱われる。このようにすることで、各スキャン名152を特定することにより、撮像条件を含むいろいろな設定値を簡単に読出して確認や変更でき、また内部メモリ66または外部記憶装置61への書き込みや、撮像動作の実行、を行うことができる。このことで制御や管理、撮像動作が行い易くなる。
撮像条件表示部820は、スキャン位置を設定するための位置決め画像832を表示する位置決め画像表示部830と、RFパルスを繰り返し照射するための繰り返し時間(TR)852やNMR信号の発生から実際にNMR信号を受信する時点までの時間であるエコー時間(TE)854や撮像を行うときの寝台位置856などの撮像のパラメータを入力し表示するための撮像パラメータ表示部850と、後述する演算されたSAR値の表示を行うためのSAR値表示部840と、撮像開始の操作を行うための撮像開始マーク860と、を備えている。
なお、寝台位置856を表す位置情報は、例えば磁場中心からの相対位置であって、操作者が入力してもよい。また操作者が入力する代わりに、信号処理系60が位置決め画像と後述する撮像断面の位置等から演算に寝台82の移動位置を算出して、自動的に設定するようにしてもよい。なお同様に繰り返し時間(TR)852やエコー時間(TE)854に付いても、信号処理系60が演算した演算結果が入力された設定されてもよいし、操作者が入力してもよい。撮像条件表示部820には撮像の動作を開始するための指令を行う撮像開始マーク860が表示されており、撮像開始マーク860を操作することにより撮像パラメータ表示部850で設定された条件に従って、撮像のためのスキャン動作が開始される。
位置決め画像表示部830には、撮像位置であるスキャン位置834やスキャン位置836を設定するための位置決め画像832を表示する位置決め画像表示部831や、設定されたスキャン位置834や836に基づく仮の断面画像838が表示される画像表示部837、が設けられている。
位置決め画像表示部831に表示された位置決め画像832は、被検体1の広範囲の画像を、例えば側面視の画像や平面視(頭頂部側)の画像などのように2次元画像として、あるいは3次元画像として、または1次元画像として、表する画像である。位置決め画像832に重畳して、撮像断面の位置を表すスキャン位置834やスキャン位置836がそれぞれ表示される。スキャン位置834やスキャン位置836は、被検体1のどの位置の断面画像(スライス画像と記す)を撮像するかを設定する機能を有し、例えば、マウスやタッチパネルなどのポインティングデバイス92、あるいはキーボード94を介してカーソル150を移動しながらスキャン位置834やスキャン位置836を設定する。
また既に設定されているスキャン位置834やスキャン位置836を修正することが可能であり、新たに追加することもできる。例えば移動したい対象スキャン位置834をカーソル150で選択して、移動したい位置に移動すると、選択されたスキャン位置834の移動に伴ってスキャン位置836も自動的に移動し、適切な位置にスキャン位置834が移動したときに設定の操作を行うと、移動した新たな位置が新たな設定位置となる。またスキャン位置836も新たに設定した位置に表示される。さらに新たなスキャン位置834やスキャン位置836の仮の断面画像838が表示される。位置決め画像832は、被検体1の外観形状や寝台82と被検体1との位置関係を特定する目的の画像であり、詳細な断面を撮像するための画像でない。そのため表示される断面画像838は詳細な画像ではなく、断面画像イメージを把握するための極めて大まかな画像である。しかし撮像したい位置が適切に設定されたかを確認することが可能であり、たいへん役立つ。
スキャン位置834やスキャン位置836を追加したい場合には、追加したい位置をカーソル150で指定して、設定の操作を行うと、新しくスキャン位置834やスキャン位置836を追加できる。逆に既に設定されているスキャン位置834やスキャン位置836を選択して、消去の操作を行うと、設定されたスキャン位置834やスキャン位置836を削除できる。
スキャン位置834やスキャン位置836で撮像される画像の状態を予め確認するために、設定された複数のスキャン位置834やスキャン位置836から特定のスキャン位置をカーソル150で選択すると、選択されたスキャン位置の仮の断面画像838が画像表示部837に表示される。なおカーソル150で同時に複数のスキャン位置を指定すると指定された複数のスキャン位置に基づいて複数の仮の断面画像838が表示される。
図2では、位置決め画像832として位置決めのための画像(以下スキャノグラムと記す)が表示されており、カーソル150により選択されたスキャン位置に基づく仮の断面画像838ではスキャノグラムの断面画像が表示される。このように特定のスキャン名をカーソル150で選択すると選択されたスキャン名にリンクする撮像条件が撮像条件表示部820に表示され、撮像条件表示部820の位置決め画像表示部830には設定されたスキャン位置が表示される。選択されたスキャン名のスキャン位置を複数個設定している場合には、各スキャン位置を表すための複数個のスキャン位置834やスキャン位置836が表示される。これら複数個のスキャン位置834あるいは複数個のスキャン位置836から特定のスキャン位置を選択することで撮像される画像の状態を予め確認することができる。このようにスキャンリストに基づく撮像が実際に行われた場合の被検体1の撮像画像の状態を確認することができ、撮像の信頼性を向上することができる。
ただし、前記撮像条件の設定に被検体1のスキャノグラムを使用する方法は一例であり、スキャノグラムの代わりに標準的なモデル画像を外部記憶装置61から読み出して使用しても良い。あるいは過去の被検体1の画像を利用しても良い。標準的なモデル画像を使用した場合に、実際の被検体1の大きさと使用するモデル画像の大きさに差がある場合に、設定した位置関係を、被検体1と前記モデル画像の大きさの比を用いた比例演算などで修正して特定するようにしても良い。
図2では、カーソル150により選定されたスキャンA152に対応する位置決め画像832や仮の断面画像838が画像表示部837に表示される。選定されたスキャン名と位置決め画像表示部830とのリンクの関係が視認できるように、選定されたスキャン名が明確となる表示、例えば表示の色を他のスキャン名に対して異なる色に変更するなどの処理により視認効果が向上する。また図2に一例として示す如く選択されたスキャンA152と撮像条件表示部820が繋がるようにした表示形式(以下タブ表示と記す)することも視認効果が向上する。
発明者等の研究によれば、被検体1の部位が異なると被検体1に吸収されるSARの値が大きく異なることが多い、ことが分かった。それだけではなく撮像対象部位が同じであっても、スキャン位置が離れており、寝台82を移動して撮像する場合は、寝台82を移動すると被検体1に吸収されるSARの値が異なる場合がある、ことが分かった。このため部位単位ごとに、あるいはさらに詳細に寝台82の移動を撮像のために停止する停止位置毎に、SARの値を予測演算して求め、SARの予測値に基づいて撮像条件を定めることが望ましい。寝台82の停止位置毎にSARの値を予測演算してSARの値を管理することにより、寝台82の停止位置毎に撮像する撮像条件を、SARの規定を守りながら、より適切により高精度に設定することが可能となる。スキャン名152を寝台82の停止位置に対応させて定めることにより、寝台82の停止位置毎の撮像条件のきめ細かく設定でき、例えばRFパルスの照射出力をより高い精度で設定することが可能となる。
図2の実施例では、スキャンリスト表示部810に表示される各スキャン名152は、入力された部位または撮像を行う寝台停止位置に対応づけて自動的に定められる。これは一例であって、同じ寝台停止位置であっても、撮像する画像の種類が異なる場合はRFパルスの照射出力の決定条件が異なる。従って撮像する画像の種類が異なる場合は新たなスキャン名を付けた方が良い。位置決め画像表示部830における設定条件が異なる場合、あるいは撮像パラメータ表示部850における設定条件が異なる場合に、それぞれ異なるスキャン名を付して撮像条件設定することが望ましい。
〔撮像条件の設定動作〕
図2および図3を用いてMRI装置100の撮像条件の設定動作を説明する。図2は、選択されたスキャン名152の撮像条件を設定するために、あるいは設定された撮像条件を表示するために、ディスプレイ98に表示される画像であり、図3は撮像条件を設定するために信号処理系60が動作する内容を示すフローチャートである。図3のステップS102で、キーボード94あるいはポインティングデバイス92を用いて、被検体1に関する情報が入力される。これらの入力の操作は、ガントリ備え付けディスプレイ18から行うこともできるし、寝台に備えられた入出力装置を使用して行うことも可能である。新たな情報の入力であっても良いが、以前に入力されたデータを読み出してその一部または全部を使用するようにしても良い。
入力される情報は、例えば撮像を予定する部位あるいは予定の撮像を行うための寝台82の停止位置や、被検体1を特定する情報や、被検体1の身体の状態を表す情報である。
このステップS102で、撮像条件を可能な範囲で入力しても良いが、全ての撮像条件をこの段階で入力できないので以下のステップでまとめて入力しても良い。撮像予定の部位の情報としては例えば頭部や首、胸、腹部、四肢などがあり、これらの情報は以下で行うスキャノグラムの撮像や、撮像パラメータを含む撮像条件の設定に使用される。
部位の特定では撮像対象の範囲を特定するのに広い過ぎる場合があり、その場合には寝台82の停止位置で撮像対象の範囲を特定することができる。以下のステップで、撮像されたスキャノグラムとの関係で寝台82の停止位置を定め、撮像予定位置を停止位置で特定して入力とても良い。被検体1を特定する情報としては、例えば氏名や割り当てされた番号である。被検体1の身体の状態を表す情報として、体重や身長や年齢や性別などがある。被検体1の体重や身長は、標準的な基準を被検体1に対応した値に置き換えるのに利用できる。例えば前記寝台82の停止位置などの撮像位置を、標準者を基準としたデータで入力し、前記身長や体重を使用して被検体1の身体に対応した値に変換し、撮像の条件として利用できる。
以下に説明する実施例では、撮像を予定する部位が「頭部」や「胸部」、「胸部」、「腹部」、「足部」の5つの部位であると仮定して説明する。本ステップS102で入力された部位の情報は、以下で行うスキャノグラムの撮像にも使用される。また入力された各部位に基づいて、信号処理系60は以下で説明する撮像のためのスキャン名を定め、スキャン名のリストを入力の順に作成し、設定画像800のスキャンリスト表示部810に表示する。
ステップS104で被検体1を寝台82の天板84に載置し、天板84を移動してMRI装置100のガントリ内の所定の位置に配置する。被検体1の基準点が撮像空間の基準位置と一致するように被検体1とMRI装置100との位置関係を定める。被検体1とMRI装置100との位置関係が定まると、その後は寝台制御装置80により寝台82の天板84を正確に移動することにより、被検体1の各部位があるいはスキャン位置834やスキャン位置836がMRI装置100の計測空間の指定の位置にくるように、寝台82を制御することが可能となる。このステップS104では、例えば被検体1を寝台82の天板84に載置して固定し、被検体1の部位の基準位置、例えば中心に、レーザーを発するマーカ15を固定する。マーカ15からのレーザーで指定された被検体1の部位の基準位置の位置情報が寝台制御装置80に送信され、この位置情報に基づいて寝台82の天板84が移動し、マーカ15で指定された被検体1の基準点が磁場の基準位置である磁場中心に来るようにしても良い。このようにして被検体1のマーカ15で指定された位置と、MRI装置100との位置関係を定めることができる。
ステップS106で、撮像するスキャン位置834やスキャン位置836の詳細設定を行うためのスキャノグラムの撮像を行う。スキャン位置を詳細設定するための画像である前記スキャノグラムは高解像度である必要がなく、スキャン位置を設定するための解像度があれば十分であり、照射されるRFパルスの強度を本来のMRI撮像時のRFパルスの強度より弱くすることが可能である。このためスキャノグラムの撮像時のSARは、本来のMRI撮像時のSARより少なくなり、SARの規定値を超えることがほとんど無い。
しかし安全性をより向上するために、スキャノグラムの撮像においても以下で説明する手順を踏んで、SARが規定値を超えることが無いかどうかなどの確認を行った上で、スキャノグラムの撮像を行うことにより、安全性をより向上することができる。また撮像途中にSAR値が設定値を超えることによる撮像の停止などの異常事態を防ぐことができる。
前記ステップS106のスキャノグラムの撮像では、信号処理系60はステップS102で入力された検査のための部位情報に基づいて、各部位の位置すなわち基準点からの距離を演算により求め、演算された位置でスキャノグラムの撮像を行う。上述の例では、入力された検査部位が頭部、胸部、胸部、腹部、足部であり、信号処理系60はこれら各部位に対してそれぞれ、記憶されている各部位の標準身長に対する標準位置の情報とステップS102で入力された被検体1の身長とから、部位の位置を演算により求め、演算で求めた位置に各部位順に移動してくるように寝台制御装置80を介して寝台82の天板84が移動する。それぞれの寝台位置で対応する部位のスキャノグラムの撮像が行なわれる。
撮像された各部位の2次元あるいは3次元のスキャノグラムの画像を、信号処理系60は内部メモリ66あるいは光ディスク62、磁気ディスク64に記憶する。
ステップS112〜ステップS124では、ステップS106で撮像したスキャノグラムの画像を使用してスキャンリストの各スキャン名におけるスキャン位置の設定がそれぞれ行われる。信号処理系60は、先にステップS102で入力された各部位に対してあるいは寝台位置に対して、それぞれスキャン名を割り付けし、割り付けられたスキャン名のリストを内部メモリ66の撮像条件記憶部606に記憶する。ステップS112で記憶されている内部メモリ66からスキャン名のリストを読み出し、図2に示すスキャンリスト表示部810に表示する。ステップS114で、このスキャン名のリストから操作者によりあるいは信号処理系60の動作によりスキャン名が選択されると、選択されたスキャン名に関して既に設定されている撮像条件が存在すれば、撮像条件表示部820に表示される。なおこれらの条件が入力される以前は、表示エリアが確保されているが条件の表示欄は空欄である。表示欄をカーソル150で指定することで、入力する項目を選択できる。
選択された項目に条件が入力されると入力された内容が表示され、確定などの操作により設定される。信号処理系60により自動的にスキャン名が選択される場合は所定の順番で、例えば先ず最初にリストの先頭のスキャンAが選択される。
ステップS116で、選択されたスキャン名であるスキャンAの撮像対象である部位、ここでは頭部、に対してステップ106で撮像されて記憶されていたスキャノグラムが読み出され、図2の位置決め画像表示部830に位置決め画像832として表示される。ステップS122で、表示された画像832に、スキャンAで撮像するスキャン位置を先ず1つ入力する。この実施例では画像832としてスキャノグラムを用い、スキャノグラムを表示してスキャン位置の入力およびその設定を行う例であるが、スキャノグラムの使用は必ずしも必須ではなく、部位を表す標準的な画像やパターンを用いても良い。例えばステップS102で被検体1の身長などの情報が入力されているので、標準的な部位の画像を必要に応じて被検体1の身長などの特徴により補正して使用しても良い。ただスキャノグラムを用いることでより正確にスキャン位置を設定できる効果がある。
ステップS122で、対象のスキャン名における複数のスキャン位置の1つについて、ポインティングデバイス92あるいはキーボード94を用いて入力する。例えばカーソル150をポインティングデバイス92あるいはキーボード94を用いてスキャン位置に移動し決定の指示を行うことで、カーソル150から垂直あるいは水平方向にスキャン位置を設定できる。2次元表示された位置決め画像832のそれぞれに対してスキャン位置を入力することで撮像面であるスキャン位置が決定される。そして入力された撮像面のイメージが仮の断面画像838として表示される。このようにしてスキャン位置834の1つおよび対応するスキャン位置836の一つが入力され、確定の操作によりスキャン位置の1つが設定される。この操作を繰り返すことにより、スキャン名で管理さる複数のスキャン位置をそれぞれ設定することができる。なお既に設定されたスキャン位置であっても、カーソル150で既に設定されたスキャン位置を選択することにより、選択したスキャン位置を移動あるいは削除することが可能となる。またポインティングデバイス92あるいはキーボード94を用いてスキャン位置を追加や変更するなど、再設定することが可能となる。
ステップS124で、選択されたスキャン名についての必要なスキャン位置が全て設定されたかを判断し、必要なスキャン位置がすべて設定された場合には、次のステップS132に実行が移る。一方選択されたスキャン名について、スキャン位置の設定が終了していない場合には、再びステップS122が実行される。入力されたスキャン位置834やスキャン位置836の入力されたスキャン位置に対応して、イメージとしての仮の断面画像838が位置決め画像表示部830の画像表示部837に表示される。各スキャン名はスキャン位置が1つで構成される場合は稀であり、各スキャン名は複数のスキャン位置を備えこれら一連のスキャン位置をセットとして管理し取り扱うことが可能である。
ステップS124で、選択連れたスキャン名で管理される全てのスキャン位置が設定されたと判断されると、選択されたスキャン名であるスキャンAに対してステップS132で、撮像のためのパラメータの入力と設定が行われる。ステップS132で入力される撮像パラメータは、上述した撮像のための高周波パルスの繰り返し時間(TR)852やエコー時間(TE)854、寝台位置856等である。その他撮像のためのパラメータはいろいろあるが、必要なパラメータをステップS132で入力し、設定する。
ステップS132で選択されたスキャン名のスキャン位置を含む撮像条件が一通り入力されて設定されると、次に安全性の確認のため、選択されたスキャン名の撮像条件で撮像した場合にSAR値が規定値以下の条件を満たすかどうかを確認するためにSARの予測演算が、ステップS134で、信号処理系60によって行われる。信号処理系60によって予測演算された結果は、図2の撮像条件表示部820のSAR値表示部840にSAR値842として表示される。またこれと対比して超えてはいけないSAR規定値844がSAR値表示部840に表示される。
ここでSARの予測演算を行う式を次に(数1)と(数2)と(数3)として示す。
(数1)と(数2)と(数3)において、Power seq(W)はPower sequenceを表し、撮像パラメータに基づいて照射コイル48が照射するRFパルスのエネルギーを信号処理系60で算出した値である。また、W-basicは、SAR吸収率であり、例えば、被検体であるヒトの各部位にRFパルスを照射したときのSAR吸収率の統計的な平均値である。(数1)で定義される全身SARとは、RFパルスの電磁波のエネルギーにより被検体全身に吸収される電磁波のエネルギーを被検体の質量で割った数値である。(数2)で定義される身体部分SARとは、被検体の所望部位に吸収される電磁波のエネルギーを被検体の所望部位の質量で割ったものである。(数3)で定義される頭部SARとは、頭部吸収率Rhを全身SARに掛け、頭部質量で割った値である。
ここで、上述したようにSAR規定値は超えてはいけないSAR上限値であり、これは所定の平均時間で規定される値である。このため、後述する待ち時間を長くすることで、SAR吸収率の時間平均が低下するため、各式で演算されるSAR値は上記SAR規定値よりも低くなって規定条件を満足するようになる。
(数1)と(数2)と(数3)によるSARの予測演算の詳細は以下で説明する。(数1)と(数2)と(数3)に基づくSARの予測演算結果がSAR値表示部840にSAR値842として表示される。SARの予測演算結果がSAR規定値844を超えると警告846がSAR値表示部840に表示され、さらにこのときのスキャン名が警告欄848に表示される。警告欄848の警告は、選択されたスキャン名が他のスキャン名に切り替わった後も表示され続けるので、複数のスキャン名が警告の対象となった場合は、複数のスキャン名が警告欄848に警告のために表示される。一方警告846の表示は、選択されているスキャン名に対してなされ、新たに選択されたスキャン名が警告対象でない場合には、警告846には警告が表示されない。SAR値842は選択されたスキャン名に対応して表示され、SAR規定値844もまた選択されたスキャン名に対応して表示され、SAR値842がSAR規定値844を超える条件で警告846が表示される。
ステップS134で演算された予測演算結果がそれぞれ対応して設けられているSAR規定値844を超えるかどうかの判断を、信号処理系60がステップS136を実行することにより行い、前記予測演算結果の少なくとも1つが対応して設けられているSAR規定値844を超える場合には、信号処理系60はステップS138を実行し、警告846を図2のSAR値表示部840に表示し、さらに対象となるスキャン名をスキャンリスト表示部810の警告欄848に表示する。この場合は、予測演算結果の6分平均及び10秒平均がSAR規定値844を超えないようにするために、スキャン位置を含む撮像条件や撮像パラメータの再設定を行う。
スキャン位置を含む撮像条件や撮像パラメータの再設定のために、信号処理系60は再びステップS122およびステップS132を実行する。ここで、スキャン位置834やスキャン位置836で示される撮像数を減らす、あるいはステップS132で撮像パラメータを変更することにより、前記SAR値を減らすことが可能であり、新たな撮像条件を入力し設定する。その後、再びステップS134でSARの予測演算を行い、次のステップS136で、新たに入力された撮像条件による予測演算結果が、対応するSAR規定値を超えないかどうかを判断する。このようにしてSAR規定値844を超えない条件で撮像条件を決定することができる。
ステップS136で、予測演算結果がSAR規定値を超えないと判断した場合には、信号処理系60の実行がステップS139に移り、入力された撮像条件が設定され、また過去にステップS138で警告を発しこれにより警告欄848や警告846に警告が表示されていた場合には、対応する警告を消去する。仮に警告欄848に警告が表示された状態で、操作者が他のスキャン名152を選択すると新たに選択されたスキャン名152に関してステップS116からの手順が実行される。この場合は、警告が表示されたスキャン名152に関する撮像条件が改善されて、予測演算結果がSAR規定値を超えない状態とならない限り、警告の表示は消去されない。このため、SAR規定値844に関する安全性が維持される。
前記説明は選択されたスキャンAを代表例として説明したが、ステップS140でスキャンリスト表示部810に表示された全てのスキャン名について撮像条件が設定されたかを判断し、撮像条件が設定されていないスキャン名がある場合には、ステップS140からステップS114に信号処理系60の実行が移り、次に撮像条件を入力するスキャン名が選定され、再び撮像条件の入力および入力された撮像条件によるSARの予測演算を行い、SARの予測演算結果がSAR規定値844を超えない条件で撮像条件が設定される。このようにして、スキャンリスト表示部810に表示された各スキャン名に対して撮像条件の設定がなされる。この後信号処理系60の実行は、図4で説明する撮像動作のフローチャートに移る。もし、警告欄848に警告表示されているスキャン名152が存在する場合には、ステップS140から実行がステップS114に移り、警告欄848に警告されているスキャン名152が選択され、予測演算結果がSAR規定値を超えない撮像条件の設定が行われる。各スキャン名により管理されるスキャン位置や撮像条件はスキャンカードとし、各スキャン名をファイルの単位として内部メモリ66や光ディスク62、磁気ディスク64に記憶され、保持および管理される。
なおスキャン位置や撮像パラメータを変更したい場合に、前記図3に示すフローチャートの実行位置とは関係なく、操作者がカーソル150を操作してスキャンリスト表示部810に表示されたスキャン名を選択すると、選択されたスキャン名の撮像条件が撮像条件表示部820に表示される。またカーソル150で対象の撮像条件を選択すると、既に設定されている撮像条件を変更することができる。撮像条件が変更された後、ステップS134で変更された撮像条件でSAR値が演算され、ステップS136でSARの予測演算結果が規定値を超えないかどうかを判断する。なお、ステップS136で、予測演算結果がSAR規定値を超えないと判断した場合には、ステップS139で新たに変更された撮像条件が設定され、また先にステップS138で警告を発せられて警告欄848に警告が表示されている場合には、該当する警告が消去される。
以上のようにSARの予測演算を行い、予測演算結果がSARの規定値を超えないように撮像条件を設定できるので、安全性がより向上する。また実際の撮像中にSAR値がSARの規定値を超える異常事態が生じるのを防止でき、前記異常事態の発生により撮像を中止するなどの事態を防止することができる。
図4は記載のMRIの撮像動作を示すフローチャートである。図2に示す設定画像800に表示された撮像開始マーク860を操作するとあるいは入出力装置90の撮像開始のキーを選択すると、信号処理系60は図4ステップS302を実行し、MRI装置100は撮像動作を開始する。ステップS304で、信号処理系60は自動的にスキャンリスト表示部810に表示された先頭のスキャン名を選択する。スキャンリスト表示部810に表示されたスキャン名の順番は撮像順番を表しており、最初に先頭に位置するスキャン名が信号処理系60により選択される。信号処理系60は選択したスキャン名のスキャンカードを読み出し、読み出したスキャンカードの撮像条件に基づいてステップS306で寝台82を制御する。寝台82の制御は、信号処理系60から寝台制御装置80に制御指令が送られることにより行われ、被検体1の最初の撮像部位が撮像空間の基準位置である例えば傾斜磁場の中央に来るように、撮像条件に従って、寝台82の天板84が制御される。
次にステップS308で、設定された撮像条件に基づくRFパルスが照射コイル48から照射される。この照射されたRFパルスに基づき、SAR実測部70により被検体1の個人のSAR吸収率がステップS312で実測されて求められる。この実測に基づき求められた被検体1の個人のSAR吸収率(以下W-patientと記す)はステップS312でさらに内部メモリ66や光ディスク62に記憶され、必要に応じ磁気ディスク64に記憶され保持される。ここでSAR実測部70は被検体1に対応するより正確なW-patientを算出する装置であり、W-patientそのものを実測値として計測する必要は無く、計測した被検体1に基づく実測した物理量を使用してW-patientを算出するものであればよい。
ステップS314で、前記W-patientに基づいて、信号処理系60は以下の数(4)や数(5)や数(6)を使用してSAR値(実測SAR値と記す)を演算する。前記実測SAR値を演算し、演算した実測SAR値がSAR規定値を超えないかどうかをステップS316で判断する。さらに入力された撮像スケジュールとW-patientとに基づき、ステップS314でこの後に実行する実測SAR値を予測演算し、予測演算した実測SAR値がSARの規定値を超えないかどうかをステップS316で判断する。選択された部位の撮像のために照射したRFパルスに基づきSAR実測部70がW-patientを計測し、計測したW-patientを使用して信号処理系60はステップS314で実測SAR値を演算する。しかし対象の部位のW-patientが存在しないばあい、あるいは対象の寝台位置LのW-patientが存在しない場合、ステップS314は、既に存在するW-patientの内の位置的に近いW-patient選択し、さらに撮像条件などの撮像スケジュールに基づき実測SAR値を演算する。W-patientを使用したSAR値の演算を以下実測SAR値演算と記す。また演算された結果を実測SAR値と記す。
実測SAR値がSARの規定値を超える場合には、ステップS320に信号処理系60の実行が移り、撮像動作を停止する。ステップS312でW-patientを使用して演算した実測SAR値(ステップS314)がSARの規定値を超えないと判断された場合には、ステップS332が実行され、予定の撮像動作が実行される。なお、特殊な場合であるが、同じスキャン位置を重複して撮像する場合があり、その場合にはステップS334から再びステップS314に実行が戻り、同じ手順で撮像を繰り返す。
次にステップS336からステップS304に戻り、スキャンリスト表示部810に記載された次のスキャン名が選択され、同様に撮像動作を繰り返して、選択されたスキャン名の撮像を行う。スキャンリスト表示部810に記載の全てのスキャン名に対して上述の手順で撮像を繰り返し、スキャンリスト表示部810に記載された全てのスキャン名について撮像を終了すると、ステップS336で信号処理系60は撮像の終了を判断し、信号処理系60はステップS338でMRIの撮像の終了の処理を行い、一連の撮像動作を終了する。
図4に示すフローチャートでは、信号処理系60はステップS314で実測に基づくW-patientに基づいて実測SAR値を演算し、実測SAR値の演算結果がSAR規定値を超えるかどうかを判断し、実測SAR値の演算結果がSAR規定値を超える場合に、あるいは今後の撮像動作で規定値を超えることが予測される場合に、MRIの撮像動作を停止する。この動作により安全性をさらに向上できる。また、撮像動作の無駄を低減できる。
図3のフローチャートに記載したSARの予測演算により、実際の撮像動作時にSAR値が規定値を超える恐れがあるかを予測し、超える可能性がある場合には撮像条件を変更することで、SARの関係で撮像動作を停止しなければならないといった無駄な撮像動作を回避することができる。それに加え、図4に記載のW-patientを使用した実測SAR値を演算することで、非常に高い精度で実際の撮像動作の前にSAR値を予測演算できる。あるいは撮像動作に入っても早い段階でしかも非常に高い精度で、これから行う撮像動作でSAR値がSAR規定値を超えるかどうかを判断できる。これにより安全性の向上に止まらず、撮像動作を停止するなどの無駄を防止できる。
撮像条件に基づく撮像用RFパルスの照射に伴うW-patientから実測SAR値の演算を行い、求めた高い精度の実測SAR値がSAR規定値を超えないかどうかの監視を行う実測SARの監視を、図4で説明したように、撮像動作のなかで行い、被検体1に対する実測SAR値がSAR規定値を超えないための監視を行うことで最終的な安全性が保持される。図4で説明した実施例では、被検体1の撮像動作と実測SAR値の監視動作とが一連のフローチャートに組み込まれている。これら被検体1の撮像動作と実測SAR値の監視動作とを、独立して別々に実行されるプログラムによって行うようにしても良い。図4の撮像動作とSAR監視動作とを、別々の異なるプログラムで行うことにより、SAR監視動作が撮像動作による制限を受け難い状態で実行することができ、上述した効果をより向上することができる。その動作を図5のフローチャートを用いて説明する。なお図4に記載の参照符号と同じ参照符号のステップは、略同じ動作をなし、略同じ効果を奏する。既に説明済の参照符号のステップに付いては説明を省略する。
図5に示すフローチャートは、図2のスキャンリスト表示部810に記載のスキャンリストに基づき撮像動作を行う撮像プログラム360と、上述のSAR監視を行う監視プログラム370と、撮像プログラム360や監視プログラム370を管理する管理プログラムとによる動作を示している。これらのプログラムは、図2に基づいて説明した信号処理系60が動作するための色々なプログラムと共に、信号処理系60の内部メモリ66の記憶部や外部記憶装置例えば磁気ディスク64の記憶部に記憶されている。撮像プログラム360を信号処理系60が実行することにより、ステップS302〜S308とステップS332〜S338が実行される。
ステップS302〜S308とステップS332〜S338の基本的な動作は既に説明済であり、詳細な説明を省略するが、ステップS304で撮像対象部位あるいは撮像を行う寝台位置に対応して付されたスキャン名のリストから順に撮像を行うスキャン名が選択され、ステップS306で選択されたスキャン名の撮像条件が検索されて、寝台82が制御され、さらにステップS308でRFパルスが照射されて撮像が行われる。選択されたスキャン名におけるスキャン位置の撮像動作が全て終了すると、ステップS336からステップS304に信号処理系60の実行が移り、ステップS306で次に撮像されるスキャン名が選択される。信号処理系60がステップS308とステップS332を実行して、選択されたスキャン名におけるスキャン位置の撮像が全て終了すると次に撮像されるスキャン名がステップS304で選択される。このようにしてスキャン名のリストに登録された全てのスキャン名に対する撮像動作を終了すると、ステップS338で信号処理系60は撮像終了の処理を行い、撮像動作を終了する。
信号処理系60が、撮像プログラム360とは別に動作する、実測SAR値がSAR規定値を超えないかどうかの監視を行う監視プログラム370を実行することにより、ステップS352やステップS312〜S318が実行され、さらにステップS320が実行される。撮像プログラム360や監視プログラム370の実行はシステムソフトウエア(System Software)350により制御される。システムソフトウエア350は例えばOS(Operating System)などであり、MRI装置100が備えるハードウエアの制御や色々な演算あるいは監視などを行う、色々なアプリケーションソフトウェア(Application software)を管理し、各アプリケーションソフトウェアの起動や実行などを制御する。システムソフトウエア350は信号処理系60の内部メモリ66の記憶部や外部記憶装置61の記憶部に記憶され、保持されている。
操作者が図2に記載の設定画像800に表示された撮像開始マーク860を操作するとあるいは入出力装置90が有する撮像開キーを操作すると、この操作に基づきシステムソフトウエア350は対応するアプリケーションソフトウェアとして撮像プログラム360を起動し、信号処理系60はステップS302を実行する。システムソフトウエア350は操作者の操作を受けて起動手段352を介して撮像プログラム360を起動し、また起動手段354は一定時間の経過により繰り返し監視プログラム370を起動する。監視プログラム370は、撮像プログラム360のステップS304で、スキャンリスト表示部810に記載のスキャン名が特定されると、特定されたスキャン名の情報を監視プログラム370はステップS352で受け取る。受け取ったスキャン名の情報を基に、監視プログラム370はステップS352でさらに実測SAR値を演算する対象のスキャン名をステップS304で受け取ったスキャン名とする。スキャン名の受け渡し方法は例えば、撮像プログラム360はステップS304で選択したスキャン名の情報を内部メモリ66の特定のアドレスに書き込み、監視プログラム370のステップS352で前記特定のアドレスから選択したスキャン名を読み出すことで、実現できる。
撮像プログラム360のステップS308による照射コイル48からのRFパルスの照射に従いSAR実測部70が出力するW-patientを、監視プログラム370のステップS312で繰り返し取り込み、ステップS314でW-patientを使用して実測SAR値の演算を行う。さらに今後の撮像スケジュールに従ってさらにその撮像条件に従って、W-patientを使用して実測SARに関する予測演算を、ステップS314で行う。
ステップS316で、ステップS314のSARの演算結果やステップS314のSARの予測した演算結果がSAR規定値を超えるかどうかを判断し、越えなければ信号処理系60の実行がステップS316からステップS318に移り、監視プログラム370の実行を終了する。一方ステップS314の実測SAR値の演算結果や予測した演算結果がSAR規定値を超える場合は、信号処理系60がステップS320を実行後、ステップS318を実行し、監視プログラム370の実行を終了する。監視プログラム370はシステムソフトウエア350により、極短い周期で繰り返し実行されるので、ステップS314の演算が繰り返し行われ、演算結果の実測SARがSAR規定値を超えないかどうかの監視をステップS316で繰り返し行う。このためより早い段階で、実測SARがSAR規定値を超えるかどうかの判断が可能となる。
〔予測SAR値や実測SAR値の演算に使用されるデータベース〕
次に図3のステップS134で説明した予測SARの演算や、図4と図5のステップS312で説明した実測SAR値の演算について説明する。図6は、予測SAR値の演算や実測SAR値の演算に関係する情報の記憶状態を示すブロック図である。外部記憶装置61はMRI装置100の撮像動作に必要な色々なデータベースを含む情報を保持している。被検体情報や撮像条件が使用する色々な情報が外部記憶装置61から必要に応じ内部メモリ66に取り込まれる。しかし特に内部メモリ66に取り込まなくてもそのまま外部記憶装置61に対して読み出しや置き込みを行っても良い。しかし、一例として関係情報を内部メモリ66に取り込むものとして、以下説明する。
内部メモリ66は、被検体1に関係する色々なデータベースやソフトウエア、その他情報を、外部記憶装置61が取り込み保持し、必要に応じ保持している情報やデータベースなどを外部記憶装置61に書き込み、保持する。データベースとしては、例えば図7に示す、RFパルスを照射したときのSAR吸収率の統計的な平均値のデータであるW-basicのデータベースDB1や、図8に示す、被検体1に対して実際に照射したRFパルスに基づいてSAR実測部70により実測演算した実測のSAR吸収率のデータベースであるW-patientのデータベースDB2がある。
図7に示すデータベースDB1や図8に示すデータベースDB2の大きな特徴は、データであるW-basicやW-patientが、各部位や撮像のための寝台82の各停止位置に対応したデータを備えていることである。図7に示すデータベースDB1は、部位情報610の項目と、撮像のために天板84の移動を停止する寝台の停止位置である寝台位置情報612の項目と、平均的なひとのSAR吸収率を表すW-basic情報614の項目と、平均的なひとの頭部のSAR吸収率を表す頭部吸収率Rh情報616の項目と、を備えている。
図7に示す、SAR吸収率の統計的な平均値のデータであるW-basic情報614のデータWbb1からデータWbb13は、各部位や撮像のための寝台82の各停止位置に対応して記憶されている。これらのデータWbb1からWbb13は、多くの標準的な人の実測に基づく、各部位や撮像のための寝台82の停止位置に対応するSAR吸収率の計測値の平均値として求められた値である。また寝台82の停止位置を示す寝台位置L1から寝台位置L13は、実測した人の寝台位置の値を平均化した値である。従ってデータWbb1からデータWbb13の使用に当たっては、撮像する被検体1の個人的な身長に基づいて比例計算して、寝台位置L1から寝台位置L13のデータを、被検体1の個人の体格に合わせた値に変換して使用する。データベースDB1は、部位情報610あるいは寝台位置情報612をデータベースDB1の検索パラメータとしてW-basic情報614を検索することができる。また頭部吸収率Rh情報616は、寝台82の各停止位置に対応して、RFパルスの高周波エネルギーが頭部に吸収される吸収率Rhの平均的なデータであり、同じく部位情報610あるいは寝台位置情報612を検索パラメータとして検索により読み出すことができる。
本実施例では、W-basic情報614を構成する前記データWbb1からデータWbb13を、各部位や各寝台位置に対応した値として記憶している。W-basic情報614を各部位や各寝台位置に対応させるのではなく、広い領域に対するデータとした場合は、誤差が大変大きくなる。発明者等が行った実測結果では、各部位や各停止位置に対応するデータWbb1からデータWbb13値は、部位や寝台位置に基づいてその値が大きく異なっている。部位あるいは寝台82の停止位置の異なるデータどうしを比較すると数数倍の値の違いがある場合がある。
このため部位や寝台82の停止位置を特定していない広範囲に対応する平均的なSAR値を使用して求めたSAR値を使用した場合には、撮像位置によってはたいへん大きな誤差を有していることが考えられる。誤差の大きいSAR値を使用した場合は、計算して求めた予測SAR値を使用して撮像条件を決定する場合に、安全率を非常に大きく取ることが必要となり、適切なRFパルスの出力の設定が困難となる。また、実際の撮像中にSAR値が規定値を超える異常状態が発生して、撮像を停止しなければならない事態が生じる恐れが高くなる。
図8に示すデータベースDB2は、撮像を予定する部位のデータを記憶する部位情報620と、撮像を予定する寝台の停止位置である寝台位置情報622と、寝台位置に対応した実測のSAR吸収率のデータであるW-patient情報624と、被検体1の頭部に対する実測のSAR吸収率のデータである頭部吸収率Rh情報626と、を備えている。
図8に示す、被検体1に対する実測のSAR吸収率のデータであるW-patientのデータWp1からWp13は、図7の場合と同様、それぞれ各部位や撮像のための寝台82の各停止位置に対応して設けられている。データWp1からデータWp13は、各部位や撮像のための寝台82の停止位置において実際に照射コイル48からRFパルスを照射しSAR実測部70により実測した被検体1固有のSAR吸収率の値である。また寝台82の停止位置を示す寝台位置L1から寝台位置L13は、標準的な人に対する寝台82の停止位置の値である。従ってデータWp1からWp13の使用に当たっては、使用する被検体1の身長に基づいて比例計算して、被検体1の体格に合った寝台位置L1から寝台位置L13のデータを演算し、その演算結果を使用する。ただ、図8に記載のデータベースDB2で、寝台位置L1から寝台位置L13の値を、平均的な値ではなく、撮像対象の被検体1に固有な値にしても良い。また頭部に対しては、寝台82の各停止位置に対応して、RFパルスの高周波エネルギーが頭部に吸収される吸収率Rhのデータが記憶されている。
内部メモリ66はさらに、撮像条件記憶部606、被検体1に関わる被検体情報記憶部604、を有していて、撮像条件記憶部606には入力されて設定された撮像条件が記憶される。被検体1に関する被検体情報記憶部604には、記憶された氏名などの個人情報や体重や身長などの身体に関する情報が保持される。内部メモリ66に保持されている撮像条件はさらに外部記憶装置61の撮像条件記憶部607に、被検体1に関わる被検体情報は、外部記憶装置61の被検体情報記憶部605に必要に応じ記憶される。またデータベースDB1やデータベースDB2は外部記憶装置61に保持される。もし内部メモリ66においてデータが修正されたり、あるいは追加されたり、あるいは新たに作成されたりした場合には、必要に応じ内部メモリ66から外部記憶装置61に書き込まれ、保持される。その他外部記憶装置61には、必要なプログラムが保持されており、本明細書で説明するフローチャートを実行するためのプログラムも保持されている。
〔SAR予測値の演算〕
図3に記載のステップ134の詳細を、図9のフローチャートを用いて説明する。このフローチャートは信号処理系60が実行する動作を表しており、ステップS412で、入力されて内部メモリ66の撮像条件記憶部606に記憶されていた撮像条件に基づいて、信号処理系60は照射コイル48が照射するRFパルスのエネルギーPower seq(W)を演算する。さらにステップS414で、データベースDB1に記憶されている標準的な値である全身SAR用W-basicを部位あるいは寝台位置Lを検索パラメータとして検索する。上述したように全身SAR用W-basicや部位SAR用W-basic、頭部SAR用W-basicに詳細に分けずに、全身SAR用W-basicや部位SAR用W-basic、頭部SAR用W-basicに対して同じ値を使用しても、予測SAR値を得ることができるが、ここでは部位あるいは寝台82の移動停止位置に基づく全身SAR用W-basicや部位SAR用W-basic、頭部SAR用W-basicを読み出すことができ、非常に精度の高いSAR予測値の演算が可能である。
ここでは、(数1)や(数2)、(数3)にそれぞれ対応したW-basicを検索して使用する例を代表して説明する。ステップS416で、図3のステップS102で入力した被検体1の体重Wを内部メモリ66の被検体1に関する情報604から読み出し、ステップS418で上述した(数1)の演算を行い、予測全身SAR(W/Kg)の値を演算により求める。このようにステップS412〜ステップS418により信号処理系60は予測全身SAR(W/Kg)を算出する。算出された予測全身SAR(W/Kg)は、ステップS418で図2のSAR値表示部840に表示され、さらに内部メモリ66の撮像条件記憶部606に記憶される。
同様に、ステップS422でデータベースDB1から撮像しようとする部位の部位あるいは寝台位置のSAR用W-basicを、部位あるいは寝台位置を検索パラメータとして検索する。さらに被検体1の体重から撮像する部位の質量mpを演算により求め、ステップS426で(数2)の演算を行い、予測身体部分SARを信号処理系60が演算する。ステップS422〜ステップS426は、信号処理系60が予測身体部分SARを演算するために実行する手順であり、演算結果がSAR値表示部840に表示され、内部メモリ66の撮像条件記憶部606に記憶される。
ステップS432〜ステップS438を信号処理系60が実行することにより、予測頭部SAR値を演算し、演算結果を表示および記憶する。まず、ステップS432でデータベースDB1に記憶されている頭部用W-basicを、部位あるいは寝台位置を検索用パラメータとして検索により求め、ステップS434で入力されている体重Wから頭部の質量mhを演算により求め、さらに頭部吸収率RhをデータベースDB1から部位あるいは寝台位置を検索用パラメータとして検索することにより求め、ステップS438で(数3)の演算を行う。この演算により予測頭部SARが求まり、図2のSAR値表示部840に表示すると共に、図8に示す内部メモリ66の撮像条件記憶部606に記憶する。
このようにして信号処理系60が図9に示すフローチャートを実行することにより、(数1)や(数2)、(数3)の演算が行われ、演算結果が図2のSAR値表示部840にSAR値842として表示され、SAR規定値844の値を超えているかどうかが、信号処理系60が図3のステップS136を実行することにより判断する。この後の信号処理系60の動作は図3を用いて説明したとおりである。
〔実測値W-patientを用いた実測SAR値の演算〕
図4や図5に記載のステップS314の詳細を次に説明します。SAR実測部70が、照射コイル48から実際に照射された高周波パルスであるRFパルスのエネルギー吸収状態を実測し、実測値に基づき被検体1に実際吸収される吸収率W-patientを演算して求め、データベースDB2として記憶する。各部位に対応してあるいは寝台82の各移動停止位置に対応して実測値に基づくW-patientのデータが図8に記載のように、内部メモリ66にデータベースDB2として記憶され、さらに外部記憶装置である例えば磁気ディスク64や光ディスク62に保持される。なお、本実施例ではW-patientの値が、部位に対応するだけでなく、各部位においてさらにスキャン位置が異なるために寝台位置を移動する場合の各停止位置に対応して計測されたW-patientのデータが保持されており、より精度の高い実測SAR値が得られる効果がある。
信号処理系60が、図4に記載のステップS314や図5に記載のステップ314を実行して実測SAR値を演算する動作を、図10を用いて具体的に説明する。ここで実測に基づく実測SAR値の演算を行う式を次に(数4)と(数5)と(数6)として示す。
ここでW-patientは上述したとおりSAR実測部70が実測値から演算して求めた吸収率である。Power seq(W)や部分質量mp、頭部質量mh、頭部吸収率Rhは(数1)や(数2)や(数3)で説明した内容と略同じである。
図10に示すフローチャートで、信号処理系60はステップS442で、先に入力されて撮像条件記憶部606に記憶されている撮像条件を読出し、これに基づいて、照射コイル48が照射するRFパルスのエネルギーPower seq(W)を演算により求める。図3に示すフローチャートの実行などで先に演算したPower seq(W)が保持されている場合には、その結果を使用することが可能である。
ステップS443からステップS445は、(数4)の演算を行うフローチャートである。ステップS443で、実測SAR値を演算する部位に関し、実測値に基づき演算されたRFパルスの吸収率であるW-patientが記憶されているかどうかを調べる。実測に基づくW-patientがデータベースDB2に存在する場合は、ステップS444でこのW-patientをデータベースDB2から検索により読出し、(数4)の演算に使用する。図8に示す如く、実測に基づくW-patientは部位を検索パラメータとして、あるいは寝台位置Lすなわち被検体1が配置されている位置を検索パラメータとして検索することができる。本実施例では、部位だけでなく寝台位置Lを検索パラメータとして実測に基づくW-patientを記憶しているので、撮像部位に適したW-patientを保持することができ、さらに寝台位置Lを検索パラメータとするW-patientを利用することができる、実測SAR値の演算精度を向上することができる。
このことにより撮像条件の安全率(margin)を適切に設定でき、結果として、適切な撮像条件とくにRFパルスの照射エネルギーを適切に設定でき、撮像された画質がより向上する。
対象となる部位や寝台位置のW-patientが実測されていない場合、すなわち対応するW-patientが、データベースDB2を未だ完成していない場合には、ステップS446で対象となる部位に近い部位あるいは対象となる寝台位置に近い寝台位置のW-patientを検索して読み出す。読み出されたW-patientは異なる部位あるいは異なる寝台位置Lに対する値であるが、そのまま使用することで被検体1の標準値に対する個人差を考慮でき、演算で得られた実測SAR値を使用する方が予測SAR値より精度が向上する。さらに異なる部位の値あるいは異なる寝台位置Lに対するW-patientをそのまま使用するのではなく、ステップS447で補正し、補正したW-patientを使用することによりさらに精度を向上することが可能となる。
ステップS445で、ステップS444で求めたW-patientあるいはステップS446で求めたW-patient、あるいはさらにステップS447で補正したW-patientを使用して、信号処理系60は(数4)に示す式を演算し、実測全身SARの演算結果を図2のSAR値表示部840にSAR値842として表示し、また内部メモリ66の撮像条件記憶部606に記憶する。
ステップS453からステップS455は、(数5)の演算を行うフローチャートである。ステップS453で、ステップS443と同様に今撮像対象になっている部位あるいは寝台位置に関するW-patientが保持されているかどうかを調べ、W-patientがデータベースDB2に存在する場合は、ステップS454で実測に基づくW-patientを、データベースDB2から部位あるいは寝台位置を検索パラメータとして検索により読み出す。W-patientがデータベースDB2に未だ存在しない場合には、ステップS456で対象となる部位に近い部位のW-patient、あるいは対象となる寝台の停止位置に近い停止位置のW-patientを検索して読み出す。読み出されたW-patientをそのまま使用してステップS455で実測身体部分SARを演算しても良い。またステップS456で求めた、異なる部位あるいは異なる寝台位置のW-patientをそのまま使用するのではなく、ステップS457で補正して使用することでより精度を向上することが可能となる。
ステップS455で、ステップS454で求めたW-patientあるいはステップS456で求めたW-patient、あるいはさらにステップS457で補正したW-patientを使用して、信号処理系60は(数5)に示す式を演算して実測身体部分SARを求め、その演算結果を図2のSAR値表示部840にSAR値842として表示し、また内部メモリ66の撮像条件記憶部606に記憶する。
ステップS463からステップS465は、(数6)の演算を行うフローチャートである。ステップS463で、ステップS443と同様に今対象としている部位あるいは寝台位置に関するW-patientが保持されているかどうかを調べ、W-patientがデータベースDB2に存在する場合は、ステップS464で実測に基づくW-patientを、データベースDB2から部位あるいは寝台位置を検索パラメータとして検索により読み出す。W-patientがデータベースDB2に存在しない場合には、ステップS466で対象となる部位に近い部位のW-patientあるいは対象となっている寝台位置に近い寝台位置のW-patientを検索して読み出す。読み出されたW-patientをそのまま使用してステップS465で実測頭部SARを演算しても良い。
またステップS466で求めた、異なる部位のW-patientあるいは異なる寝台位置に対するW-patientをそのまま使用するのではなく、ステップS467で補正する。このように補正することで、そのまま使用するよりも精度の高い実測頭部SAR値を得ることができる。
ステップS465で、ステップS464で求めたW-patientあるいはステップS466で求めたW-patient、あるいはさらにステップS467で補正したW-patientを使用して、信号処理系60は、(数6)に示す式を演算して実測頭部SARを求め、その演算結果を図2のSAR値表示部840にSAR値842として表示し、また内部メモリ66の撮像条件記憶部606に記憶する。
図10に示すフローチャートは、信号処理系60が実行する図4に記載のステップ314あるいは図5に記載のステップ314の詳細である。図10の実行後、信号処理系60は図4や図5に示すステップS316を実行し、上述のとおり各演算結果がSAR規定値を超えるかどうかを判断する。具体的な説明は上述したとおりであり、省略する。なお本実施例は、(数4)や(数5)や(数6)の演算を全て行った後に演算結果である実測SARの値がSAR規定値を超えていないかどうかを、ステップS316で判断しているが、(数4)や(数5)や(数6)の演算を個々に完了するたびに、図4や図5に示すステップS316の処理である、演算結果である実測SARの値と対応する規定値との比較を行っても良い。
〔図4の実測SAR値を用いた監視に基づく撮像条件に関する他の実施例〕
図3で予測SAR値を演算して、撮像条件を含む設定した撮像スケジュールによる実際の撮像動作で、SAR値が規定値を超えるのを防止しており、仮に規定値を超える事態が発生するとあるいは規定値を超えることが予測されると、図4に記載のフローチャートでは、ステップS320で撮像を停止する。しかし、対象とする部位あるいは寝台停止位置でのMRIの撮像は、被検体1にとって必要であり、撮像を止めてしまうことができない場合が多い。従って撮像条件を適切に再設定して、撮像を再開することが望ましい場合が多い。この場合に、操作者が撮像条件の変更など撮像スケジュールの変更をおこない、さらに撮像を行うこととなる。このための実施例を図11に示す。
被検体1の固有のエネルギー吸収率W-patientは個人差があり、人によっては標準的なエネルギー吸収率W-basicと大きく異なることがある。図4に記載の如くSAR実測部70により実測値に基づいて求められたW-patientを使用することで個人差が大きくても対応が可能で、SAR値の演算精度を向上できる。このW-patientを使用して撮像条件に基づくSARの演算を行い、さらにこの後行う他の部位の撮像スケジュールに沿った実測SARの演算に対しても、既に実測した部位のW-patientを使用して行うことで個人差によるSARの精度低下を低減できる。
上述したように既に実測した部位に関するW-patientを使用して、この後の撮像スケジュールに沿って実測SAR値のある程度予測演算できる。このように既に実測して求めたW-patientを使用して、まだ実測していない他の部位の実測SARを予測演算し、その演算結果(以下実測SARの予測値と記す)に基づいて、SAR規定値を超えるかどうかを判断し、SAR規定値を超える場合には信号処理系60がその旨を表示などの手段で出力し、操作者に撮像条件の変更など撮像スケジュールの変更を促すことが望ましい。このための実施例を図11に示す。
図11は、図4に記載のフローチャートに新たなステップを追加したものであり、特にステップS316とステップS332あるいはステップS320との間に新たなステップが追加されている。図4に記載のその他のステップに関しては既に説明した内容と略同じ動作であり、これらのステップの説明を省略する。
図11において、図4で説明したステップS302からステップS308が実行され、次にステップS312が実行されると、ステップS312の後に、ステップS314が実行される。SAR実測部70により求められたデータベースDB2に保持されているW-patientを使用して、(数4)や(数5)や(数6)に基づき実測SAR値の演算が、ステップS314で行われ。この演算結果である実測SAR値がSAR規定値以下の場合には、図4と同様ステップS316から信号処理系60が、ステップS511やステップS512を実行し、さらにステップS332に移る。
ただし、ステップS316の判断が行われたスキャン名152について既に警告846や警告欄848の警告表示がされていた場合には、先に発せられた警告の原因がステップS316の判断により解決されたことが確認されたために、ステップS511で、前記警告846や警告欄848の警告表示がそれぞれ消去される。また他のスキャン名152で警告が出ている場合には、警告が出ているスキャン名152の撮像条件を再設定して警告が出ているスキャン名152が無くなってから撮像動作に入ることが必要である。
このためステップS512で、他のスキャン名152で警告が出ているスキャン名152が無いかどうかを判定し、警告が出ているスキャン名が無い場合にステップS332に信号処理系60の実行が移る。他のスキャン名で警告が出ている場合には、ステップS518で警告が出ているスキャン名152の撮像条件を直ぐに変更するかあるいは後で変更するかを、操作者に質問する表示を行い、操作者の判断基づいてステップS520を実行するかステップS524を実行するかを決める。ステップS511やステップS518の動作の詳細や動作の目的については後述する。
一方演算結果である実測SAR値がSAR規定値を超える場合には、ステップS516に信号処理系60の実行が移り、図2のSAR値表示部840に警告846を表示し、さらにスキャン名をスキャンリスト表示部810の警告欄848に表示する。なお、警告846の表示は選択されたスキャン名152に対応した表示であり、仮にスキャンリスト表示部810のリストに表示された全スキャン名152に対する警告の発生状態を確認するために、操作者が次のスキャン名を強制的に選択すると、あるいは以下で説明する如く警告に対して後で対応するとの選択を操作者が行うと、新たなスキャン名に対する処理に信号処理系60の実行が移る。
この場合には、撮像条件表示部820の表示は新たに選択されたスキャン名152の状態の表示に変わる。その結果、前のスキャン名152に対する警告846の表示は消え、新たなスキャン名152の状態に従って警告846の表示が行われる。一方警告欄848は、スキャンリスト表示部810に記載されたスキャン名のリストの全体に対する警告状態の表示であり、選択するスキャン名152が切り替わっても警告欄848の警告表示は変化しない。例えば複数のスキャン名152で実測SAR値がSAR規定値を超える状態では、警告の対象となる複数のスキャン名が警告欄848に表示される。なおこの実施例では警告の対象となる複数のスキャン名をスキャンリスト表示部810に表示しているが、警告欄848を他の場所に表示しても良い。どのスキャン名152が、警告が発せられている状態であるかを操作者に伝えることが極めて重要であり、上述のようにSARの条件を満たさない警告対象のスキャン名を表示することにより、撮像条件の設定の対応誤りを防止することができ、信頼性向上や安全性向上の点で大きな効果を奏する。
信号処理系60の実行が、ステップS316からステップS516に移り、SAR値表示部840や警告欄848に警告の表示を行い、さらにステップS516からステップS518に移る。あるいはステップS512で、警告が発せられているスキャン名がある場合に、ステップS518が実行される。ステップS518で、警告の原因に対する対応を直ぐに行うか、撮像を止めることも含め対応を後で行うかを操作者に確認する表示を行い、操作者の指示を待つ。例えばスキャンリスト表示部810の記載のスキャン名の全てについて警告の有無を確認してから対応を決める場合が考えられ、この場合には、操作者は後で対応する内容の指示を入力する。操作者の指示に従い信号処理系60はステップS524を実行する。ステップS518で行う、操作者に確認するための表示を行う位置は、特に規定するものではないが、例えば警告欄848の近くに表示する方が判断し易い。また表示形式も色々な形式が可能であり、特に形式を定める必要は無い。
ステップS518による表示に対して、直ぐに撮像条件を変更する指示を操作者が入力した場合に、この指示によりステップS518からステップS520へ、信号処理系60の実行が移り、警告が発せられているスキャン名が自動的にステップS520で選択される。さらに選択されたスキャン名のスキャン位置834やスキャン位置836が位置決め画像表示部830に表示され、撮像パラメータ表示部850に警告の原因となった先に設定された撮像パラメータを含む撮像条件が表示される。またSAR値表示部840のSAR値842には、警報の原因となった実測SAR値が表示され、さらに対応してSAR規定値844が表示される。
ステップS522で、位置決め画像表示部830や撮像パラメータ表示部850の条件を変更するための新たな撮像パラメータを含む撮像条件が入力されると、再びステップS314が実行さる。W-patientに基づく実測SAR値の演算が、新たに入力された情報を使用して(数4)や(数5)や(数6)により行われ、再びステップS316が実行される。このようにして、SAR実測部70による実測及び演算によって求められたW-patientを使用して実測全身SAR値や実測身体部分SAR値や実測頭部SAR値を、前記(数4)〜(数6)を使用して演算することにより、SAR条件が満足されるかどうかが判断される。このようにしてより最適な撮像条件の設定が行われる。
一方ステップS518で、警告に対する撮像条件の変更を直ちに行うのではなく、例えば他のスキャン名の撮像条件についても警告の有無を調べ、その後に撮像条件の変更を行う場合または撮像動作自信を停止する場合には、ステップS518に基づく表示に対して、操作者が「NO」の指示を入力する。この指示に基づき後で変更する又は撮像動作を停止する、が、ステップS518で選択され、ステップS524に実行が移る。ステップS524で、更に撮像動作を単に停止するのか、先に他のスキャン名について警告の有無を調査するか、を尋ねる表示を行う。操作者が撮像を停止すると入力すると、図4で説明の如くステップS320に実行が移り、信号処理系60は撮像動作を停止する処理をステップS320で行い、撮像制御を終了する。
ステップS524で、他のスキャン名の警告の有無を先に判断するためなどの目的で、後で撮像条件を変更する、を選択すると、信号処理系60の実行がステップS526およびステップS528に移る。ステップS528で、スキャンリスト表示部810に表示されたスキャン名152の内の次のスキャン名が選択されて、図4のステップS306が実行される。このことによりスキャンリスト表示部810の全てのスキャン名152について警告の有無を順に検査することができる。なお、スキャンリスト表示部810に表示されたスキャン名152について順に警告の有無を調べ、スキャンリストの全てのスキャン名の調査が完了した場合には、ステップS526で全てのスキャン名の調査の完了が判断され、信号処理系60の実行がステップS532に移る。全てのスキャン名の調査の完了を意味する表示がステップS532で行われ、ステップS520で警告の発せられたスキャン名に付いてその撮像条件の変更が開始される。
例えば、スキャンリスト表示部810に表示されたスキャンリストの最初のスキャンA152で前記警告が発せられた場合を仮に考えると、ステップS316からステップS516を介してステップS518に信号処理系60の実行が移る。上述したようにステップS516で警告846や警告欄848におけるスキャン名の表示が行われる。ステップS518で、操作者によりNOが指示されるとステップS524が実行され、さらにステップS526からステップS528が実行される。ステップS528で、スキャンリストの次のスキャン名であるスキャンB152が選択される。スキャンBでは仮に警告が出なくてもステップS512からステップS518に実行が移り、ステップS524とステップS526を介してステップS528が実行され、次のスキャン名152であるスキャンC152が選択される。選択されたスキャン名が警告を発する場合はステップS316で警告846や警告欄848におけるスキャン名の表示が行われる。そしてステップS316からステップS518を通り、ステップS524からステップS526をとおり、ステップS528が実行されて、選択されるスキャン名が順に更新される。選択されたスキャン名が警告を発することが無くても、ステップS512からステップS518を通り、ステップS528により選択されるスキャン名152が順に更新される。最後のスキャン名152であるスキャンE152までの全てのスキャン名152に付いて、警告の有無を調べることが可能となる。さらに警告を発することになったスキャン名152では、全てステップS516が実行され、警告欄848に該当するスキャン名152が順に表示される。このため全てのスキャン名に付いての警告の有無の調査結果は警告欄848に表示され。操作者は警告欄848を見ることで全体の状況を把握できる。このように全体の状況を把握することで、計測条件をどのようにするかの参考とすることが可能となる。被検体1の状態が標準者のそれと非常に異なる場合には、参考となる。
スキャンリスト表示部810に表示されたスキャンリストの全てのスキャン名152に付いて、警告の有無を調べた後、ステップS520で撮像条件を再設定して、SARに関する警告の発生が回避された場合には、ステップS316で「YES」の判断の後、ステップS511が実行され、警告846や警告欄848に表示されたスキャン名が消去される。この結果、撮像条件を再設定したことによる警告の有無の状況を、操作者が警告欄848を見ることにより把握、確認することができる。
撮像条件を再設定したことにより警告が回避されたスキャン名以外に、警告が回避されないスキャン名が存在する場合は、ステップS512での判断に基づき信号処理系60の実行がステップS518に移りさらにステップS518からステップS520に移り、警告を発するスキャン名が順にステップS520で選択される。ステップS520でのスキャン名の選択の後、ステップS522で撮像条件の再設定が行われ、ステップS314の演算結果に基づきステップS316で、警告状態が改善されて警告状態が回避される状態となったことが確認されると、ステップS316から実行がステップS511に移る。ステップS511で、警告欄848に表示されたスキャン名が消去される。このようにして順に警告されたスキャン名が減少し、警告を発した全てのスキャン名について撮像条件の再設定が行われて全てのスキャン名の警告状態が回避されると、ステップS512からステップS332に実行が移り、ステップS332で撮像動作が開始される。この後の動作は図4で説明したとおりである。
ステップS518で仮に操作者がNOを入力していたとしても、ステップS524から実行がステップS526、そしてステップS532に移り、ステップS532で警告の有無を全て判断済の表示がなされ、ステップS520が実行される。ただし、操作者が撮像動作を停止したい場合は、ステップS524からステップS320に実行が移り、撮像動作が停止される。
仮に撮像を行う被検体1の状態が図7に示す標準的なデータであるW-basicと大きく異なっているなどの関係で、実測SAR値が規定値を超える恐れが生じたとしても、図11に示す動作により、速やかに対応することができる。
〔標準の寝台位置と被検体1固有の寝台位置の関係〕
本実施例では、図7や図8に示すデータベースDB1やデータベースDB2で、撮像対象である部位と共に寝台位置を検索パラメータとして使用している。また図2に記載の撮像パラメータ表示部850の欄にも寝台位置の入力欄および表示欄があり寝台位置856が表示される。この欄に入力されるあるいは表示される寝台位置は被検体1の撮像のための位置制御に使用される。図7や8に示す寝台位置および撮像パラメータ表示部850の欄に入力あるいは表示される寝台位置は、標準者に対する寝台位置であっても良いし、被検体1の個人に対応した寝台位置であっても良い。
ただし、個々の被検体1に対応した個々の部位の位置を具体的に測定することは手間が掛かり、あまり効率的ではない。またデータベースDB1やデータベースDB2の検索パラメータとしては、多くのひとに標準的に使用できる方が色々な点で便利である。このため前記寝台位置を標準者に対する寸法関係で取扱い、信号処理系60が実際に寝台制御装置80を介して寝台82の天板84を移動するときやその他具体的な制御を行う場合に、入力された被検体1の個人的なデータである、身長や体重やその他図3で説明したスキャノグラムから得られるデータを用いて、標準者に対する寝台位置を被検体1の個人に対応した寝台位置に変換して使用する。標準者を対象とした寝台位置のデータではなく、もちろん被検体1の個人の部位の位置をそれぞれ測定して測定した個人的なデータを入力および表示に使用するようにしてもよいし、標準の寝台位置データと個人の寝台位置データの両方を使用できるようにし、操作者が選択して使用できるようにしても良い。
〔W-basicの代わりにW-patientを使用した実施例〕
先に図3に記載のフローチャートを用いて、標準的なSAR吸収率のデータであるW-basicを使用した予測SAR値により、SAR規定値を満たす撮像条件の設定を行う実施例を説明した。しかし、標準的なSAR吸収率のデータであるW-basicの代わりに、撮像予定者の個人的なSAR吸収率であるW-patientを使用しても良い。
図12を用いて、撮像予定者の個人的なSAR吸収率であるW-patientを使用した実測SARを演算してSAR規定値を満たす撮像条件を設定する実施例を説明する。
図3の実施例では、設定した撮像条件がSAR規定値を満足するかどうかを、標準的なSAR吸収率であるW-basicを用いて予測SAR値を演算し、予測SAR値とSAR規定値との比較により行う。標準のSAR吸収率であるW-basicと撮像予定の被検体1の個人に関するSAR吸収率であるW-patientとが、近い値であるかどうかは個人差があり、人によっては違いが大きい場合が考えられる。図12に記載の実施例では、SAR実測部70により求めた被検体1の個人的なW-patientを使用して(数4)と(数5)、(数6)の演算を行い、設定した撮像条件がSAR規定値を満足するかどうかを判断する実施例を示す。図3と略同じ動作をするステップは、同じ参照符号を付し、説明の重複はできるだけ避ける。
信号処理系60が図12に示すフローチャートの実行を開始すると、ステップS102で被検体1の検査する部位あるいは部位に対応する寝台位置や氏名、体重、身長、年齢などを、信号処理系60が表示する入力用画像に基づいて入力する。信号処理系60は入力された部位あるいは寝台位置に対応して順にスキャン名152を付し、スキャンリスト表示部810にスキャン名152を表示する。ステップS104で被検体1を寝台82の天板84に載置し、例えば被検体1の基準位置がガントリ内の傾斜磁場の中心位置に来るように天板84をマーカ15の信号を基に制御する。これによりガントリ内の所定の位置に、被検体1の各部位がくるように寝台82を、部位または寝台位置データL1〜L13に従って制御することが可能となる。ステップS102で撮像する部位の入力を、部位を特定する寝台位置を入力することでも可能であり、また撮像する部位とスキャン位置を特定するための寝台位置の両方を入力しても良い。この場合は、入力された部位と入力された寝台位置の情報とに基づいて寝台82の天板84が寝台制御装置80を介して制御される。
図3の説明では、図12のステップS562やステップS566の記載や説明を省略したが、図3においても次に説明の動作を行うことが可能である。ステップS562で、先にステップS102で複数の部位あるいは寝台位置が入力された場合に、入力された複数の部位または寝台位置から1つが、例えばスキャンリスト表示部810の表示の順に、選択される。例えばスキャンリスト表示部810に表示されたスキャンA〜スキャンEのスキャン名の内、最初のスキャンAが特定され、スキャンAの撮像対象の部位である頭部が選択される。さらに頭部のスキャノグラムを撮像する位置に被検体1が配置されるように、信号処理系60が寝台制御装置80を介して寝台82の天板84を制御する。
ステップS106で、照射コイル48からRFパルスを照射してスキャノグラムを撮像し、さらにステップS564でSAR実測部70は被検体1の実際のSAR吸収率であるW-patientを実測する。実測して得られたW-patientは被検体1の個人的なSAR吸収率を表している。算出したW-patientを信号処理系60が内部メモリ66にデータベースDB2のデータとして記憶する。このときデータベースDB2を検索する検索パラメータは、部位あるいは寝台位置、またはその両方である。もちろん多くのデータベースDB2の内から被検体1の個人に対応するデータベースDB2を選択するために、被検体1を特定するデータ例えば氏名または固有番号を合わせて使用する。例えば本実施例では、記憶された複数のデータベースから氏名により被検体1に対応するデータベースDB2を特定し、特定したデータベースDB2から部位あるいは寝台位置を検索パラメータとして先に記憶したW-patientを検索して読み出すことができる。
W-patientは、実際に撮像する状態のRFパルスの照射に基づいてSAR実測部70により算出されることが望ましい。一方スキャノグラムを撮像するのに要するRFパルスは実際に撮像する状態のRFパルスより出力が小さい。しかし、スキャノグラムを撮像するためのRFパルスの照射を利用して、W-patientを算出することによる、標準的なSAR吸収率であるW-basicと被検体1個人のSAR吸収率であるW-patientとの違いの基となる個人差の状態を把握できるので、スキャノグラムを撮像するためのRFパルスを用いて得られたW-patientを使用することにより、個人差に基づく誤差を低減できる。さらに標準的なSAR吸収率であるW-basicと被検体1個人のSAR吸収率であるW-patientとの両方のデータがあるので、スキャノグラムを撮像するためのRFパルスを用いて得られたW-patientの値を必要に応じて補正して使用するようにしても良い。
もし撮像する部位あるいは撮像する寝台位置が1つである場合には、信号処理系60は、ステップS566で、スキャノグラムの撮像やW-patientの検出が終了したと判断して、次のステップS112に信号処理系60の実行が移る。撮像する部位や寝台位置が複数個存在する場合、ステップS566でさらに処理すべき部位あるいは寝台位置が存在するとして、信号処理系60の実行がステップS562へ再び移行する。そして上述の動作が繰り返される。このようにして入力された全ての部位あるいは寝台位置に対してW-patientの計測がSAR実測部70により行われる。信号処理系60がSAR実測部70から取得したW-patientの値は、図8に示す如く部位あるいは寝台位置を検索パラメータとして記憶され、データベースDB2として内部メモリ66に保持される。なお図8では頭部から足部まで撮像部位として記載されているが、この実施例では、ステップS102で入力された部位または寝台位置に対してSAR実測部70によりW-patientの実測が行われ、SAR実測部70により測定されたW-patientでデータベースDB2が作られる。
撮像条件の入力および設定のために、ステップS112で図2に記載のスキャンリスト表示部810にスキャンリストを読出し、ステップS114でスキャンリストの中のスキャン名152が選択される。選択は例えば表示されている順に行われる。ステップS116で、選択されたスキャン名152に関するスキャノグラムが読み出されて位置決め画像表示部831に表示される。上述したように画像表示部831に表示されたに基づいてスキャン位置834やスキャン位置836の入力が可能となる。ステップS564でスキャン位置834やスキャン位置836の入力および設定が行われ、さらに撮像パラメータの入力および設定が行われる。図12では、図3のS122やステップ124、ステップS132の動作をまとめてステップS564として記載している。
ステップS114で選択されたスキャン名のスキャン位置や撮像パラメータを含む撮像条件が一通りステップS564入力されると、SARに関する安全性の確認のため、入力された撮像条件で撮像した場合にSAR値がSAR規定値を超えないとの条件を満たすかどうかを確認するための処理が、ステップS572とステップS574、ステップS136により行われる。先ずステップS572で、先のステップS564で信号処理系60がSAR実測部70から取り込んで記憶したデータベースDB2のデータであるW-patientを、部位または寝台位置を検索パラメータとして読み出す。読み出したデータであるW-patientを使用してステップS574で、実測全身SARや実測部分SARや実測頭部SARを、(数4)や(数5)、(数6)に基づいて演算する。演算結果をステップS574で、図2に記載の撮像条件表示部820のSAR値表示部840に、SAR値842として表示し、さらにSAR規定値844を表示する。
ステップS136で、前記(数4)や(数5)、(数6)に基づいて演算した実測全身SARや実測部分SARや実測頭部SARが、それぞれに対して設けられているSAR規定値より低い値であるかどうかをそれぞれに付いて判断する。もし前記演算した3種類のSAR値の何れかが、それに対して設けられている前記SAR規定値を超える場合には、ステップS136で「NO」の判定を行い、ステップS138で、SAR値表示部840や警告欄848に警告を表示する。ステップS136の動作は、図3に記載のステップS136や図4に記載のステップS316と略同じである。
ステップS138で、SAR値表示部840や警告欄848に警告を表示した後、警告の原因であるSARの値を下げるために、ステップS564に戻り、スキャン位置や撮像パラメータを含む撮像条件を再入力する。一方ステップS136で、前記(数4)や(数5)、(数6)に基づいて演算した演算値の全てが、対応するSAR規定値を超えないと判断された場合には、ステップS136からステップS139に実行が移り、もし先にステップS138でSAR値表示部840や警告欄848に警告を発している場合には、該当する警告を消去する。次にステップS140で、スキャンリスト表示部810に表示の全てのスキャン名152について、撮像条件の入力およびその設定が完了したかを判断し、終了していない場合には、ステップS114に実行が移り、次に記載のスキャン名152が選択され、上述の動作を繰り返して、撮像条件が決定される。全てのスキャン名152の撮像条件の入力およびその設定が完了するまで、前記動作を繰り返す。撮像条件の設定が完了すると、ステップS140で、全てのスキャン名152の撮像条件の設定完了の判断がなされ、撮像のステップを実行する。撮像の動作は設定された撮像条件に基づいて行われ、具体的な説明は省略する。
〔撮像時間を考慮した撮像スケジュールの設定の実施例〕
上述した実施例では、入力されスキャンリスト表示部810に表示された各スキャン名152についてそれぞれ個々にSARの規制値を超えないかどうかを判断した。図13に記載する実施例は、複数の撮像動作すなわちスキャンのスケジュールを変えることで、SARの規制値を満足する撮像条件の設定方法に関する。なお、図13に記載の方法と、先に説明した方法とを併用しても良いことは当然である。またここで使用する「撮像動作のスケジュールを変えるとの概念」には、撮像が予定されているスキャン名の撮像を行う順番を変えるだけでなく、寝台82の移動速度を変えることや、寝台82の移動が停止してから撮像のためのRFパルスの照射までの時間を変える、などの概念を含んでいる。
図13に示すステップS602で、スキャンリスト表示部810に記載されたそれぞれのスキャン名152について、SARの規制値を超えないかどうかを判断する。ステップS602に至る手順は、先の実施例で説明したとおりであり、例えばステップS602は、図11に記載のステップS316あるいはステップS512に対応すると動作を含んでいる。
ステップS602の判断結果に対する対応の基本的な考え方は、もし撮像が予定された全スキャン名が、全てSARの条件を満足している場合にはそのまま撮像動作を開始しても良いが、さらに撮像時間を短縮するあるいはRFパルスの出力を上げるなどの撮像条件の設定を変更することが可能である。また一方撮像が予定された全スキャン名において、SARの条件を満たさないスキャン名1つ以上存在する場合には、前記基準を満たさないスキャン名の撮像条件だけを変えることで対応するのではなく、該当するスキャン名の撮像条件を変更しても良いが、他の方法として撮像に費やす時間を延長したりあるいは待ち時間を設けたり増やしたりすることにより、SARの条件を満たさなかったスキャン名についてもSARの条件を満たすようにすることである。
ステップS602で、スキャンリスト表示部810に記載された全スキャン名152がSARの規制値を下回っており、SARの条件を満たすと予測される状態なのか、あるいは逆にSARの条件を満たさないと予測される状況なのかを判断する。先ずスキャンリスト表示部810に記載の全スキャン名152がSARの規定値を下回っており、SARの条件を満たすと判断できる状態であるとする。ステップS622では、以前に発せられた警告、具体的には警告欄848や警告846の警告が有ればこれを消去する。
次にステップS624で、この状態で撮像動作を開始することができるので、この状態の撮像条件および撮像スケジュールで、撮像を開始するかどうかを判断する。具体的には前記判断を操作者に求めるための表示を行う。操作者が、これ以上撮像スケジュール等の調整を行わないで撮像を開始すると判断した場合には、操作者からの操作による指示に従って、信号処理系60の実行がステップS624からステップS626に移り、撮像動作を開始する。その後撮像が終了するとステップS630で撮像終了の処理を行う。例えば図2に記載の撮像開始マーク860を操作者が選択すると、ステップS624からステップS626に信号処理系60の実行が移り、前記撮像動作が開始される。
上述のようにSARの条件を満足しているが、撮像に要する時間を短縮したりあるいは撮像条件を変更して、RFパルスの出力を増やしたりすることが可能であり、このことにより更に作業性を改善したり撮像の質を向上したりすることが可能である。この場合には操作者の操作に基づき、信号処理系60の実行がステップS624からステップS614に移り、さらにステップS634やステップS638で撮像条件や撮像スケジュールを変更する。ステップS614では、撮像条件や撮像スケジュールの変更を、操作者自ら行うのか信号処理系60に変更案を自動的に作らせるのかを、判断する。ステップS614で操作者に問い合わせのための表示が行われ、信号処理系60に変更案を自動的に作らせる場合には、操作者の操作による指示により、信号処理系60の実行がステップS614からステップS638に移動する。
ステップS638で、信号処理系60は自動的にスキャン名リストの順番を変更し、撮像順番を変更する。撮像順番を変更するとそれに伴って待ち時間が変更される。あるいは撮像順番を変更せずに待ち時間だけを変更することも行われる。信号処理系60は、SARの条件を満足するように撮像順番を変更したり、待ち時間を変更したりする。新たな変更結果が図2のスキャン順番候補表示部880に表示される。ここでスキャン順番候補表示部880に表示される内容は、以下に説明の撮像スケジュール表示部870表示される内容と略同じである。撮像スケジュール表示部870に表示される内容とスキャン順番候補表示部880に表示される内容の大きな相違点は、撮像スケジュール表示部870の表示内容が以下に説明のステップS634で操作者が自ら入力した内容を表しており、スキャン順番候補表示部880の表示内容がステップS638において信号処理系60により自動的に演算された内容を表している点である。
ステップS638の処理に伴う撮像時間や寝台の移動速度、待ち時間およびこれらの合計の演算が、ステップS639で行われ、スキャン順番候補表示部880の表示内容に追加表示される。図14に示す表示は、上述のとおり、撮像スケジュール表示部870の表示であるが、スキャン順番候補表示部880の表示内容と基本的に同じである。図14の内容には、ステップS639の演算により得られた内容と同じ内容が追加されていて、ステップS639によるスキャン順番候補表示部880の表示内容は、図14の内容と同じである。ステップS640で、上述のスキャン順番候補表示部880の表示に従って撮像動作を開始するかどうかの判断を操作者が行う。スキャン順番候補表示部880の表示内容に基づいて、操作者が撮像動作を開始するかどうかの判断を行い、操作者が撮像動作を開始する場合には、操作者の指示により、信号処理系60の実行がステップS640からステップS626に移り、撮像動作が開始される。一方さらに撮像スケジュール等を変更したい場合には、操作者の指示により、ステップS640からステップS634に実行が移る。
前記ステップS602で、SAR基準を満たさないスキャン名が存在する場合に、信号処理系60のステップS612で警告846や警告欄848に警告の表示を行い、信号処理系60の実行がステップS614に移る。ステップS614では上述したように、信号処理系60に自動的に対応させるか、操作者自ら対応するかの判断を行う。ステップS614で、操作者が自ら撮像スケジュール等の変更を行うための指示を行った場合に、信号処理系60の実行がステップS614からステップS634へ移る。またステップS640で、信号処理系60が演算により求めた変更案を受け入れないで、操作者が自ら撮像スケジュール等を入力すると、指示された場合も、ステップS640の後にステップS634が実行される。
ステップS634の処理を、図14を用いて説明する。ステップS634では、撮像スケジュールの変更だけでなく、撮像スケジュールの変更に加えて撮像条件を変更しても良いし、撮像スケジュールの変更を行わないで撮像条件だけを変更してもよい。撮像条件の変更については前記実施例で上述したとおりであり、この実施例では、撮像スケジュールの変更について説明する。
撮像スケジュールの変更とは、具体的には、スキャンリスト表示部810に記載のスキャン名152の撮像順番を変更したり、あるいは待ち時間を延長したりする。撮像順番を変更することにより待ち時間が変更されることが多いが、撮像順番を変更しないで待ち時間だけを変更してもよい。ここで、待ち時間の変更の処理には、寝台82の天板84の移動速度の変更の処理も含んでいる。
図14に、スキャン名の撮像順番を変更した場合の撮像スケジュール表示部870の表示内容を示す。撮像スケジュール表示部870は例えば図2の設定画像800に設けられていて、撮像スケジュールの実行に伴う順番や待ち時間などに関する情報を表示す。項目652は撮像順番を表し、項目654は撮像が予定されているスキャン名を表示する。この実施例では、項目654に記載の順番に従って各スキャン名の撮像動作が行われる。項目654のスキャン名の順番は、図2に記載のスキャンリスト表示部810のスキャン名152の順番と一致しており、スキャンリスト表示部810のスキャン名152の順番を入れ替えたり、あるいは図14の項目654に記載のスキャン名の順番を入れ替えたりすることにより、撮像の順番を変更することができる。また、スキャンリスト表示部810や項目654のどちらかでスキャン名の順番を変更すると他の方もそれに合わせて自動的にスキャン名の順番が変更される。
項目656は、撮像される対象の部位を表示しており、項目658は寝台位置で、撮像のための寝台82の天板84の停止位置を表している。図14の例では、項目656に記載の部位と項目658に記載の寝台位置とが、一対一に対応しているが、図7や図8に記載の如く、各部位は広い範囲を有するので、各部位においてどの位置で撮像するのかをより詳細に制御するために、1つの部位に対して複数の寝台位置を定めることが可能である。この場合は、各寝台位置に対してスキャン名が付けられる。ステップS636で演算されたSARの演算結果が表示される。表示されるSARの演算値には、(数1)〜(数3)に基づいて演算された予測演算結果の場合があるし、さらにまた(数4)〜(数6)に基づいて演算された実測演算結果の場合がある。実際には各スキャン名に対してSARの演算結果は3種類であるが、省略して1つのみを記載している。なおSAR規定値として示している値は、超えてはいけないSARの規定値であり、各スキャン名に対して実際には3種類のSARの規定値があるが記載を省略している。
項目662は、各スキャン名に対して設定された撮像動作に必要な時間であり照射コイル48からRFパルスが照射されている時間である。項目664は寝台82の天板84の移動時間を含めた撮像を行っていない時間、すなわちRFパルスが照射されていない時間である。項目662や項目664の合計欄は各項目の合計の時間である。項目666は寝台82の天板84の移動速度である。また合計欄は寝台82の天板84の移動時間の合計である。設定表示872は図14に関する入力や変更結果を確定するための表示であり、設定表示872を選択すると図14に記載の内容が設定され、確定する。
説明のための例示として、図14の項目654や図2のスキャンリスト表示部810に記載のスキャン名の記載順番は、当初スキャンA、スキャンB、スキャンCの順になっており、図13のステップS634で、スキャンBとスキャンCの順が入れ替えられた、として説明する。図14は、カーソル150により、スキャンBとスキャンCの順番を変更した状態を示す。最初の頭部が傾斜磁場の中心に位置する場合に、頭部から撮像を開始し、頭部から足部に向かう方向に、寝台82の移動に沿うようにして順に撮像を行う方が、寝台82の移動時間が少なく、撮像に必要な時間が短くなる。図14において、スキャンAの頭部の撮像の後、スキャンCの腹部の撮像を行い、次にスキャンBの胸部の撮像を行うと、寝台82の天板84の移動方向が切り替わり、移動が重複することになる。このため、スキャンBとスキャンCの撮像の順番を入れ替えると、寝台82の移動に伴う待ち時間が増加することとなる。しかし、待ち時間を増やすことで、単位時間当たりのRFパルスのエネルギーの吸収量であるSARの値を下げることができる。
上記の理由で、図14の項目654のスキャン名の記載順番を操作者が変更すると、操作者の操作に基づいて撮像順番が変更され、この変更に伴う寝台82の移動時間が自動的に演算される。演算により求められた待ち時間が項目664に表示される。図14に示した例では、単位時間当たりのRFパルスのエネルギーの吸収量であるSARの値を下げるための待ち時間の増加を、撮像順番を変更することにより行う例である。単位時間当たりのRFパルスのエネルギーの吸収量であるSARの値を下げるために、待ち時間を増加させることが重要であり、撮像順番を変更しないでそのままにして、項目664の待ち時間を変更することも可能である。この場合は、例えばカーソル150で項目664の該当するスキャン名の待ち時間を指定し、待ち時間を長くする入力を行う。待ち時間を長くした場合に、例えば寝台82の天板84が待ち時間に合わせてゆっくり移動するように制御される。あるいは他の例として、寝台82の天板84の移動が終了しても待ち時間が経過するまでは、照射コイル48からのRFパルスの照射が行われないようにしてもよい。
上記説明は、単位時間当たりのRFパルスのエネルギーの吸収量であるSARの値を下げるための操作に関しており、項目664のスキャンBやスキャンCの待ち時間を増加させて、RFパルスのエネルギーの吸収量であるSARの値を下げる方法である。一方ステップS602でSARの条件が満たされている場合には、逆に待ち時間を減少させて、被検体1の撮像に必要な時間を減少させるための処理が、ステップS364で行われる。この場合には待ち時間の値が減少する方向に変更される。このようにステップS634の処理により、項目664の待ち時間が増加の方向あるいは減少の方向に変更される。ステップS635で、新たに変更された撮像スケジュールに基づいて、項目662や項目664の合計時間や項目666の寝台82の移動速度や移動時間の合計が演算される。
ステップS634では、上述のように項目664の待ち時間が増やされたり、減らされたりする。寝台82の移動後の撮像が始まるまでの時間を少なくすることが作業の向上につながる。また場合によっては寝台82の移動停止から撮像が始まるまでの時間長いと被検体1が不安を抱く場合がある。このようなことから、寝台82の移動速度である、寝台82の天板の移動速度を待ち時間に合わせて制御することが好ましい。
ただし、Tw≠D/Soである。ここでSB(mm/S)は寝台82の天板84の移動速度、Tw(s)は待ち時間、D(mm)は移動距離、So(mm/s)は初期の天板84の移動速度である。(数7)により寝台の移動速度を調節することで、待ち時間が長くなった場合に待ち時間の延長を利用して、被検体1を静かに移動することができ、被検体1の物理的な衝撃を低減できる。さらに寝台の移動が停止してから撮像動作までの時間間隔の増加を少なく抑えることができるので、被検体1への精神的な圧迫を低減できる。また、SAR条件を満たす範囲内で、寝台82の天板84の移動速度を増加することができるので、撮像作業の効率が向上する。さらに被検体1の撮像に要する全体的な時間を短縮できるので、総合的にみると被検体1の負担を低減することとなる。
図13に示すステップS634で上述のように撮像順番を変更して待ち時間を変更した場合、あるいは撮像の待ち時間を変更した場合、ステップS636で、新たな条件に基づくSAR値の演算が行われる。演算されたSAR値がSARの条件を満たすかどうかの判断が、ステップS602で行われる。図13に示す実施例により、上述の実施例とは異なり、SARの条件を満たす方法として待ち時間を利用することができる。SARの条件を満たすための解決策が増え、上述の実施例で説明した方法も含め、幅広い対応が可能となる。
図15は、図7に示すデータベースDB1や図8に示すデータベースDB2の部位と身長との関係を示す標準的なデータを表しており、内部メモリ66に保持されている。図15は足先部が基準となり、足先部が傾斜磁場の中心に配置され、頭部が傾斜磁場の中心から最も遠くに位置する状態(以下フィートファースト(Feet First)と記す)の状態のデータである。このデータから逆に頭頂部が基準となり、頭部が傾斜磁場の中心に配置され、足部が傾斜磁場の中心から最も遠くに位置する状態(以下ヘッドファースト(Head First)と記す)のデータを簡単に演算により求めることができる。図15に示す標準者の部位データを使用し、必要に応じて撮像を行う被検体1の固有の部位位置の情報に、被検体1の身長情報などを使用して変換できる。図7や図8に示すデータベースDB1やデータベースDB2は、部位と寝台位置との関係や、寝台位置を検索パラメータとした場合のW-basicや頭部吸収率やW-patientの検索処理には、標準者を対象者とした寝台位置の値を使用することが望ましい。従ってデータベースDB1やデータベースDB2を含むデータベースは、図15に示す標準者の身長や体格を基に作成されている。一方これらデータベースから検索されたデータを使用する場合には、標準者に基づく寝台位置を被検体1の個人の値に変換して使用する。
図16は、入力された撮像を予定している被検体1の部位の位置を、寝台82の天板84の移動長さに変換する、あるいは被検体1の載置された位置とガントリの基準位置である傾斜磁場中心との関係をあるいは被検体1の載置された位置と寝台82の天板84の基準位置との関係を設定する、ためのフローチャートである。ステップS710で、被検体1の撮像予定部位や個人情報を入力する。被検体1の撮像予定部位は一度に複数個の部位を入力することが可能であり、例えば図2に示す如く、入力された部位に対してスキャン名がそれぞれ割当られる。またこの例ではステップS710で撮像予定部位が入力されるが、撮像位置を部位の代わりに図15に示す標準者における基準点からの距離あるいは天板84の移動停止位置で入力しても良い。撮像予定者である被検体1の個人的な値で天板84の停止位置を入力しようとすると、被検体1の撮像位置の基準点からの長さを一々計測する必要があり、たいへん面倒である。図15に示す如く、標準的な位置関係の数値で入力することが効率的である。またデータ検索などにも便利である。
ステップS712で、被検体1を寝台82の天板84に載置する。被検体1の載置の方向としては、例えば図17に記載のように頭部が先にガントリの中心に移動するヘッドファースト方向や、図18に記載のように足部が先にガントリの中心に移動するフィードファースト方向がある。さらにステップS712で、被検体1の基準位置や部位にマーカが取り付けられる。この場合に撮像を予定している全ての部位にマーカを取り付ける必要はなく、1か所または2か所にマーカが取り付けられればよい。次にステップS714で、被検体1が天板84に対してヘッドファースト方向に載置されたのか、フィードファースト方向に載置されたのかを入力する。入力された部位と寝台位置との関係を演算するのにこの情報が使用される。
図17に記載の載置例では、被検体1の頭部に基準となる基準マーカ262を固定し、撮像予定部位である腹部に部位マーカ272を固定する。なお、部位マーカ272の位置の部位だけでなく、基準マーカ262の取り付け位置の部位も撮像することができる。さらにその他のマーカを付していない部位の位置の特定についても、基準マーカ262や部位マーカ272の位置関係から、可能となり、天板84の移動を入力された部位の位置で停止して撮像することが可能となる。
被検体1の撮像予定の部位の位置を演算により決定する一つの方法は、基準マーカ262と部位マーカ272との位置関係から基準マーカ262と部位マーカ272との被検体1に固有な長さを計測し、図15に記載の標準データベースとの長さの違いを基に、比例演算を行って、被検体1に固有の撮像予定部位の基準位置からの距離を演算する方法である。他の方法は入力された被検体1の身長を基に、図15の標準データの身長との比を求め、入力された部位毎の基準位置からの標準距離を被検体1固有の距離に変換して、被検体1の撮像予定の部位の基準マーカ262からの距離を演算で求める方法である。図17の載置方法において、基準マーカ262を基準点として、演算された撮像予定の部位の距離で天板を停止することが可能である。
図18の例では、被検体1の足部に基準となる基準マーカ262を固定し、撮像予定部位である腹部に部位マーカ272を固定する。この例でも、上述したように、基準マーカ262と部位マーカ272との間の距離を検知することで図15のデータに基づき、入力された撮像予定の部位の位置の個人的な値を演算で算出でき、天板84の移動や停止を被検体1の個人的な値に基づいて制御することが可能である。さらに上述したように、基準マーカ262と被検体1の身長のデータを使用することで、仮に部位マーカ272が使用されなくても同様の演算および制御が可能である。
図17や図18において移動方向252はそれぞれ天板84の移動方向を表しており、ステップS716で天板84が動かされると、先ず基準マーカ262がガントリ中心である傾斜磁場の中心位置に移動され、ステップS718で基準マーカ262が検知され、天板84の基準位置と基準マーカ262との関係が記憶される。ステップS720で天板84が移動し、部位マーカ272が検知される。部位マーカ272の天板84の基準位置に対する位置関係、あるいは基準マーカ262と部位マーカ272の間の距離情報が計測され、記憶される。
さらにステップS722で、入力された他の撮像予定の部位が読み出され、ステップS724においてこれら読み出された各部位の基準マーカ262からの距離や天板84の基準位置からの距離がそれぞれ演算により算出され、算出値がそれぞれ記憶される。ステップS724の後、先に記載の実施例で説明したステップS726など、撮像のための必要な処理が行われ。
図19は、撮像予定の部位を入力するためのフローチャートであり、図20はガントリ備え付けディスプレイ18の表示される画像である。なお、図20に示す画像はガントリ備え付けディスプレイ18に表示を限るものではなく、ディスプレイ98に表示してもよいし、ガントリ備え付けディスプレイ18とディスプレイ98の両方に表示してもよい。
また図20に示すガントリ備え付けディスプレイ18は、タッチパネルなどを備えており、表示するだけでなく表示された画像に触れることで撮像を予定する部位の入力や取り消しを行うことができる。
ガントリ備え付けディスプレイ18に表示される画像は、モデル像182と、部位入力画像186と、モデル像182と部位入力画像186との関連を示す関係表示184と、を備えている。部位入力画像186は撮像対象となる部位名188が表示され、例えば部位名188の頭部をタッチ等の操作により選択すると、選択された部位名である頭部とモデル像182の頭部とが関係表示184により繋がり、頭部が撮像予定として入力されたことが分かる。上記説明は部位入力画像186を指定したことにより、撮像予定の部位を入力したが、モデル像182の像に対して撮像予定部位を指定すると、例えばモデル像182の頭部をタッチすると、撮像予定の部位として頭部が入力され、関係表示184が表示される。モデル像182あるいは部位入力画像186において、入力状態の部位を再びタッチ操作などにより選択すると、先の入力状態がリセットされ、表示されていた対象の関係表示184が消去状態となる。撮像予定の部位に対して順に入力を行うと、入力された順にスキャン名がつけられ、図2のスキャンリスト表示部810に表示される。
図21は、天板84に設けられた入力部190を説明する説明図であり、入力部190から撮像を予定する部位の入力や取り消しを行うことができる。また入力部190は入力機能だけでなく、例えば各部位名194に対応してそれぞれ操作手段の一例である操作ボタン192が設けられており、操作手段の一例である操作ボタン192は入力された状態では色が変化するなど、入力されている状態か入力されていない状態かを表示する機能を有する。入力部190に表示の部位名194を、撮像予定に従って順に、選択すると部位名が順に入力される。例えば天板84に載置された被検体1の頭部を撮像するために、部位名194に対応する操作手段である操作ボタン192を選択すると、操作ボタン192の色が変化し、頭部の部位が選択したことが表示される。複数の部位名194が選択されると、選択された部位名194に対応する複数の操作ボタン192色がそれぞれ変化し、入力された状態であることが分かる。
図21に示す入力部190と図20で説明した部位入力画像186やモデル像182との両方が使用される場合には、ガントリ備え付けディスプレイ18からの入力に基づいて、入力部190の該当する部位名194の操作ボタン192の表示状態が入力されている状態の表示に変化する。逆に入力部190からの入力に対して、ガントリ備え付けディスプレイ18において表示状態が入力されていることを表す表示状態となる。すなわち関係表示184が入力された部位名188とモデル像182との間に対応関係が分かるように表示される。既に入力状態にある部位名188や部位名194をガントリ備え付けディスプレイ18あるいは入力部190から入力されていない状態に戻すリセット操作を行うことができる。なお、図21に記載の被検体1が天板84に載置される前であっても、天板84に載置された後であっても、入力部190からの入力が可能である。
図20に示すガントリ備え付けディスプレイ18からの撮像予定の部位の入力や表示に加え、図21に示す入力部190でも撮像予定の部位の入力や表示が可能である。図20に示すガントリ備え付けディスプレイ18や図21に示す入力部190はそれぞれ、撮像予定の部位の入力や表示の一例であってこれら両方を備えていてもよいし、これらのどちらかを備えていてもよい。またこれらが設けられているとたいへん便利であるが、撮像予定の部位の入力や表示の機能は、入出力装置90も有しているので、必須ではない。
図19は撮像が予定されている部位の入力を行うフローチャートである。ステップS740でフローチャートの実行が開始されると、ステップS742でガントリ備え付けディスプレイ18にモデル像182や部位入力画像186を表示し、ガントリ備え付けディスプレイ18は部位の入力が可能の状態となる。また入力部190からの入力も可能な状態となる。天板84は人が触れ易い場所であり、入力部190から常時入力可能とすると被検体1を載置する状態で誤入力が起こる心配がある。従ってステップS742等、入力操作を許可することにより、誤入力を防ぐことができる。
ステップS744で入力の有無を調べ、部位が入力された状態では、ステップS745が実行される。入力された部位が、新たな入力なのかそれとも既に入力された部位であり、入力を取り消す操作なのかをステップS745で検出する。既に入力された状態に対して、再び入力操作が行われるとこの実施例では入力の取り消しと判断する。初めての入力の部位に対しては、ステップS746で入力された部位を記憶し、ステップS748で図20に記載のガントリ備え付けディスプレイ18に関係表示184を表示し、また図21に示す入力部190の対応する操作ボタン192の色を変更する。さらに入力された部位にスキャン名を付し図2に示すスキャンリスト表示部810にスキャン名を表示する。
一方ステップS745で既に入力済の部位に対して再入力されたと判断した場合には、ステップS747が実行され、入力済の情報が記憶から消去され、次のステップS749で図20に示すガントリ備え付けディスプレイ18に表示されていた入力済を意味する表示184を消去する。また図21に示す入力部190において、該当する部位の入力状態であることを表す表示を、入力されていない状態を表す表示に変更する。また図2のスキャンリスト表示部810に表示されている該当するスキャン名を消去する。
ステップS744で入力操作が行われない場合には、ステップS744から実行がステップS750に移り、部位を入力する操作の終了を意味する状態かどうかを判断する。例えば入力操作終了を意味する操作が行われた場合は、部位の入力が終了したとして撮像のための次の処理がステップS754で行われる。部位の入力操作の終了ではない状態の場合には、ステップS744に実行が戻り、部位の入力が行われたかどうかを判断する。
図19や図20や図21で説明した方法で部位を入力することにより、非常に簡単な方法で部位を入力できる。入力された部位は、撮像が予定されている部位として入力毎にスキャン名が付けられ、図2のスキャンリスト表示部810に表示され、上述したように各スキャン名に対して撮像条件がそれぞれ設定される。上述したように入力された部位に基づいて、W-basicのデータベースDB1やW-patientのデータベースDB2を検索することにより、部位に対応したW-basicのデータやW-patientのデータを使用して、SARの演算を行うことができ、高い精度で予測SAR値や実測SAR値を求めることができる。このことは正確な撮像条件の設定につながる。