JP6485855B2 - アプタマーを用いた被検物の電気化学検出法 - Google Patents

アプタマーを用いた被検物の電気化学検出法 Download PDF

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Description

本発明は、被検物を検出するための方法及び手段に関する。具体的には、本発明は、被検物に対して特異的に結合し、かつ電気化学重合するアプタマーを用いて被検物を検出する方法、キット及びセンサに関する。また本発明は、かかるアプタマーの製造方法に関する。
ウイルスなどの被検物の検出は、医療、食品、環境などの分野で慣用的に行われている。例えば、インフルエンザウイルスを含むウイルスの検出は、現在は主に免疫クロマト法にて行われている。この方法は定性的で時間を要し、定量的測定ができないという課題がある。
また、電気化学センシングも利用されており、最も成功を収めている例はグルコースセンサである(例えば特許文献1)。このような酵素検出に加えて、抗体又はアプタマーに基づくセンサが開発されている。酵素検出は特異的な基質に制限されるが、これらのセンサプローブは任意の標的のために調製することができる。例えば、インフルエンザに対する抗体、アプタマーは数多く報告されている(非特許文献1)。しかし、抗体やアプタマーはそれだけではインフルエンザに結合するだけで、そのほかの機能はない。また、抗体及びアプタマーは唯一の結合アフィニティを有するため、検出プロセスにはシグナル部分とのコンジュゲーション及び洗浄プロセスが必要となる。
一方、伝導性高分子(重合すると着色する高分子)を利用したセンサーが報告されている(非特許文献2)。また、例えば非特許文献3は、標的ssDNAの直接検出及び定量のための、伝導性ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)に基づく新規な標識不要のDNAセンサの設計及び開発を報告している。非特許文献4は、電気化学重合により溶存酸素の光電気化学センサのためにポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン) (PEDOT)/シュウ酸鉄複合材料を合成している。非特許文献5は、化学センサのための金属イオン還元媒介蒸着重合(VDP)を用いてAgナノ粒子(NP)修飾PEDOTナノチューブ(NTs)を構築している。Ag NPs/PEDOT NTsは、表面領域の増大及びAg NPsによるPEDOTの酸化に起因する導電性の改善のためにNH3を効率的に感知する。
特開2014-6155号公報
Woo, H.M. et al., Antiviral Res. 100(2):337-345, 2013 Sikes, H.D. et al., Nature Materials 7(1):52-56, 2008 Krishnamoorthy, K. et al., Chem. Commun. 7:820-821, 2004 Bencsik, G. et al., Analyst, 135(2):375-380, 2010 Park, E. et al., J. Mater. Chem. 22:1521-1526, 2012
本発明は、種々の被検物について迅速かつ定量的な検出方法及び検出手段を提供することを目的とする。また本発明は、被検物を迅速かつ特異的に検出するための手段を製造する方法を提供することを目的とする。
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意検討を行った結果、標的センサプローブとなるアプタマーに結合機能とシグナル機能をもたせることによって、煩雑な工程を要することなく簡便かつ迅速に標的を検出することができる方法及び手段を開発するに至った。具体的には、シグナル部分として電気化学重合可能で高分子になると伝導性になるモノマー基を有する標的特異的アプタマーを選別し、標的と相互作用してアプタマーの重合挙動が変化することを利用することによって、標的を定量的に検出できることを見出した。
すなわち、本発明は以下を包含する。
[1]被検サンプル中の被検物の検出方法であって、
被検物に対して特異的に結合し、かつ電気化学重合するアプタマーを、電極上又は電極間で被検サンプルと接触させる工程、
電極に電圧を印加し、電流を測定する工程
を含む、被検物の検出方法。
[2]被検物が、ウイルス、細菌、真菌、原生生物、天然分子及び合成分子からなる群より選択される少なくとも1種である、[1]に記載の方法。
[2-1]被験物がインフルエンザウイルスである、[1]又は[2]に記載の方法。
[3]アプタマーが、タンパク質アプタマー、ペプチドアプタマー、ペプチド核酸アプタマー、及び核酸アプタマーからなる群より選択される少なくとも1種である、[1]又は[2]に記載の方法。
[3-1]アプタマーが、配列番号5に示されるアミノ酸配列からなるペプチド、又は配列番号5に示されるアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなりかつインフルエンザウイルスに対して特異的に結合するペプチドを含む、[1]又は[2]に記載の方法。
[4]アプタマーがチオフェン、アニリン、ピロール及びアセチレンからなる群より選択される少なくとも1種を有する電気化学重合性基を含む、[1]〜[3]のいずれかに記載の方法。
[4-1]アプタマーがチオフェンを有する電気化学重合性基を含む、[1]〜[3]のいずれかに記載の方法。
[5]電気化学重合性基が3,4-エチレンジオキシチオフェン(EDOT)である、[4]に記載の方法。
[6]被検物を含まない対照サンプルと比較して電流が増大している場合には、被検サンプルが被検物を含むことを示す、[1]〜[5]のいずれかに記載の方法。
[7]被検物を含む対照サンプルと比較して電流が低下している場合には、被検サンプルが被検物を含まない又は対照サンプルよりも少ない被検物を含むことを示す、[1]〜[5]のいずれかに記載の方法。
[7-1]電極が金電極である、[1]〜[7]のいずれかに記載の方法。
[8]被検物に対して特異的に結合し、かつ電気化学重合するアプタマーを含むことを特徴とする被検物検出用キット。
[9]被検物に対して特異的に結合し、かつ電気化学重合するアプタマーを含む被検物結合手段と、
電極を含む検出手段と
を備えることを特徴とする被検物センサ。
[10]インフルエンザウイルスに対して特異的に結合し、かつ電気化学重合するペプチドアプタマー。
[10-1]配列番号5に示されるアミノ酸配列からなるペプチド、又は配列番号5に示されるアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなりかつインフルエンザウイルスに対して特異的に結合するペプチドを含む、電気化学重合するペプチドアプタマー。
[11][10-1]に記載のペプチドアプタマーを含むことを特徴とするインフルエンザウイルス検出用キット。
[12][10-1]に記載のペプチドアプタマーを含むインフルエンザウイルス結合手段と、
電極を含む検出手段と
を備えることを特徴とするインフルエンザウイルスセンサ。
[13]被検物に対して特異的に結合し、かつ電気化学重合するアプタマーの製造方法であって、
電気化学重合性基を含むアプタマーを調製する工程、
前記アプタマーが、被検物の存在下において電気化学重合せず、被検物の不在下において電気化学重合することを確認する工程
を含む、アプタマーの製造方法。
[14]被検物に対して特異的に結合し、かつ電気化学重合するアプタマーの製造方法であって、
電気化学重合性基を含む分子から構成されるライブラリを調製する工程、
前記ライブラリの分子を被検物と接触させ、被検物と特異的に結合する分子を選択する工程、
選択した分子が、被検物の存在下において電気化学重合せず、被検物の不在下において電気化学重合することを確認する工程
を含む、アプタマーの製造方法。
[14-1]アプタマーがペプチドアプタマーであり、ライブラリがリボソームディスプレイによるペプチドライブラリである、[14]に記載の方法。
[14-2]被検物が、ウイルス、細菌、真菌、原生生物、天然分子及び合成分子からなる群より選択される少なくとも1種である、[13]又は[14]に記載の方法。
[14-3]被験物がインフルエンザウイルスである、[13]又は[14]に記載の方法。
[14-4]分子が、タンパク質、ペプチド、ペプチド核酸、及び核酸からなる群より選択される少なくとも1種である、[14]に記載の方法。
[14-5]電気化学重合性基がチオフェン、アニリン、ピロール及びアセチレンからなる群より選択される少なくとも1種を有する、[13]又は[14]に記載の方法。
[14-6]電気化学重合性基が3,4-エチレンジオキシチオフェン(EDOT)である、[14-5]に記載の方法。
[15][13]又は[14]に記載の方法により製造されたアプタマー。
本発明により、被検物の迅速かつ定量的な検出方法及び検出手段が提供される。アプタマーに被検物との結合能力だけでなく、シグナル機能を持たせることで、洗浄工程や高価な測定器(SPRやQCM)を使用した検出工程を要することなく、被検物を検出することが可能である。したがって、本発明に係る方法、キット及びセンサは、被検物の検出が必要とされる医療、食品、環境などの分野で有用である。
電気化学重合するアプタマーによる被検物の検出原理を示す概略図である。 リボソームディスプレイ及びミスアシル化tRNAを用いた試験管内選抜(in vitroセレクション)の原理を示す概略図である。 合成したペプチドのインフルエンザウイルスに対するアフィニティを比較したグラフである。 選択したEDOT-ペプチドアプタマーのインフルエンザウイルスに対する生物学的特異性をドットブロットにより調べた結果である。 電気化学検出の実験設定の一例を示す。(a) 実際の実験設定の全体的観点、(b) 対応する概略図、(c) (a)の部分拡大イメージ。 サイクリックボルタンメトリーによる金電極上での種々の濃度のペプチド#7の重合及び沈着後の、矩形波ボルタモグラムからの平均ピーク電流を示すグラフである。 (A)サイクリックボルタンメトリーによる金電極上での分析物の重合及び沈着後の、矩形波ボルタモグラムからの平均ピーク電流を示すグラフである。種々の濃度の不活化インフルエンザウイルスを、0.1 mg/mL (1)、又は0.2 mg/mL (2)のペプチド#7の存在下で検出した。(B)サイクリックボルタンメトリーによる金電極上での分析物の重合及び沈着後の、矩形波ボルタモグラムからの平均ピーク電流を示すグラフである。陰性対照としてのゼラチン (3)、及びオボアルブミン (4)の結果を示す。 サイクリックボルタンメトリーによる金被覆シリコンチップ上での重合及び沈着後の、種々の濃度のFITC標識ペプチド#7からの蛍光イメージの統合密度(integrated density)を示すグラフである。 電気化学重合するペプチドアプタマーを用いてウイルスを検出する方法の概要を示す。
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明は、被検物に対して特異的に結合し、かつ電気化学重合するアプタマーを用いた被検物の検出方法に関する。本発明において「検出」とは、被検サンプル中の被検物の存在の有無を検出することだけではなく、被検物を定量的に検出すること、被検物の存在比を決定することも含む。
本発明の原理を図1に示す。図1に示すように、本発明において使用するアプタマーは、被検物と特異的に結合することができ、かつ電気化学重合するものである。アプタマーは、被検物の不在下では、電気化学重合して作用電極の表面上に沈着し、これが絶縁層として働くため、電極に電圧を印加しても電流が低下する。一方、被検物が存在する場合、アプタマーは被検物と結合することによって、遊離アプタマー分子の数が低減し、電極上でのアプタマーの電気化学重合が被検物の濃度依存的に阻害され、結果として絶縁層が形成されず、電極に電圧を印加すると電流が増大する。そのため、かかるアプタマーを電極上又は電極間で被検サンプルと接触させ、電極における電流を測定することによって、被検サンプル中の被検物を検出することが可能となる。この原理によって、被検物特異的な電気センサが提供される。
本発明において使用するアプタマーは、被検物と特異的に結合し、かつ電気化学重合するものであれば任意の分子を使用することができる。例えば、アプタマーは、タンパク質アプタマー(抗体など)、ペプチドアプタマー、ペプチド核酸アプタマー、核酸アプタマー(DNA、RNA、DNA/RNAハイブリッド)などである。
本発明は、このような被検物と特異的に結合し、かつ電気化学重合するアプタマーの製造方法も提供する。
本発明のアプタマーの製造方法は、電気化学重合性基を含むアプタマーを調製する工程、及び、前記アプタマーが、被検物の存在下において電気化学重合せず、被検物の不在下において電気化学重合することを確認する工程を含む。例えば、既に被検物に対して特異的に結合するアプタマーがわかっている場合、アプタマー分子のいずれかの部分に電気化学重合性基を結合することにより、電気化学重合性基を含むアプタマーを調製することができる。
被検物に対するアプタマーがわかっていない場合や、よりアフィニティの高いアプタマーが必要とされる場合、試験管内選抜(いわゆるin vitroセレクション又はin vitro進化)により製造することができる。この方法は、具体的には、電気化学重合性基を含む分子から構成されるライブラリを調製する工程、ライブラリの分子を被検物と接触させ、被検物と特異的に結合する分子を選択する工程、選択した分子が、被検物の存在下において電気化学重合せず、被検物の不在下において電気化学重合することを確認する工程を含む。in vitroセレクションの一例を図2に示す。この方法によれば、電気化学重合性基を含むアプタマーを容易に得ることができる。
電気化学重合するアプタマーを得るため、電気化学重合性基を利用する。電気化学重合性基とは、電気化学的に重合することができる基又は部分を意味する。そのような基としては、限定されるものではないが、チオフェン、例えば3,4-エチレンジオキシチオフェン(EDOT)、3-メチルチオフェン、3-エチルチオフェン、3-ブチルチオフェン、3-ヘキシルチオフェン、3-オクチルチオフェン、ビスチオフェン;アニリン;ピロール;アセチレン等の単量体、二量体又は多量体が挙げられる。
まず、このような電気化学重合性基を含む分子から構成されるライブラリを調製する。ライブラリは、使用する分子の種類に応じて、当業者であれば適宜調製することができる。例えば、ペプチドアプタマーを製造する場合には、リボソームディスプレイシステム(例えば、特開2003-102495号公報、特開2008-271903号公報)、ファージディスプレイシステム(例えば、Smith, G.P. et al., Science 228:1315-1317, 1985)を利用することができる。リボソームディスプレイシステムは、簡単に説明すると、cDNAライブラリに含まれるcDNAをmRNAへin vitroで転写し、in vitro翻訳においてmRNAを翻訳する際にmRNAとポリペプチドとリボソームとの複合体の形でポリペプチドが翻訳されることによって、mRNAとポリペプチドとの相関が保たれたままポリペプチドを被検物と接触させ、被検物と特異的に結合するポリペプチド(すなわちmRNA)を選択し分析することができる技術である。リボソームディスプレイシステムにおいて電気化学重合性基を含むペプチドをディスプレイするため、電気化学重合性基を結合させたアミノ酸を担持しかつアンバーコドンに対応するアンチコドンを有するミスアシル化tRNAを用いて、in vitro翻訳を行うことが好ましい。非天然アミノ酸をポリペプチドに導入するための方法は公知であり(例えば、Taira, H. et al., Biochem. Biophys. Res. Commun. 2008, 374, 304-308、Noren, C.J. et al., Science 244:182-188, 1989、特許第4917044号など)、任意の方法により電気化学重合性基を含むペプチドを調製しうる。これにより電気化学重合性基を含むペプチドから構成されるペプチドライブラリを調製することができる。
また、DNAやRNA等の核酸アプタマーを製造する場合には、ランダム配列を含むDNAライブラリ、ゲノムDNAライブラリ、cDNAライブラリ、mRNAライブラリなどを構築することができる。ライブラリ内の分子への電気化学重合性基の組み込みも当技術分野では公知であり、電気化学重合性基が付加されたヌクレオチド基質を用いた転写又は増幅反応によって、電気化学重合性基を含む核酸分子から構成されるライブラリを調製することができる。
続いて、ライブラリの分子を被検物と接触させて、被検物と特異的に結合する分子を選択する。
本発明において、検出対象、すなわち被検物の種類は特に限定されるものではない。例えば、被検物は、任意の物質的因子、具体的には、天然に生じる分子、例えば、アミノ酸、ペプチド、オリゴペプチド、ポリペプチド、タンパク質、核酸、脂質、炭水化物(糖等)、ステロイド、グリコペプチド、糖タンパク質、プロテオグリカンなど;天然に生じる分子の合成アナログ又は誘導体、例えば、ペプチド擬態物、核酸分子(アンチセンス核酸等)など;天然に生じない分子、例えば、コンビナトリアルケミストリー技術等を用いて作成した低分子有機化合物(無機及び有機化合物ライブラリー、又はコンビナトリアルライブラリー等)など;それらの混合物を挙げることができる。また被検物は、単一物質であってもよいし、複数の物質から構成される複合体、転写因子等であってもよい。さらに被検物は、ウイルス、細菌、真菌、原生生物などの個体であってもよい。また被検物は、炭素、窒素、酸素などの気体因子であってもよい。
ライブラリの分子と被検物を接触させる条件は、特に限定されるものではなく、液相系又は固相系のいずれをも用いることができる。当業者であれば、被検物の種類、ライブラリの分子の種類及び形態(固定化の有無など)に応じて適宜接触の条件を決定することができる。例えば、被検物を含む溶液中にライブラリの分子を添加し、それらを接触させてもよいし、固相化した被検物に対して、ライブラリの分子を接触させてもよい。
接触後のライブラリの分子と被検物との結合は、当技術分野で公知の任意の方法に従って判定することができる。例えば、固定化された被検物を用いる場合、被検物と結合しなかったライブラリの分子を洗浄等により除去し、残った被検物からライブラリの分子を遊離させることによって、被検物に結合したライブラリの分子を得ることができる。あるいは、ライブラリの分子を標識(例えば蛍光標識)し、被検物と接触させた後に、被検物と結合したライブラリの分子をその標識に基づいて選択することができる。
必要に応じて、上述したライブラリの調製、被検物との接触、及び被検物と結合したライブラリの分子の選択を反復して行ってもよく、それにより、被検物と特異的に結合するアプタマーがよりリファインされる。
次に、選択した分子の電気化学重合を確認する。具体的には、選択した分子が、被検物の存在下において電気化学重合せず、被検物の不在下において電気化学重合することを確認する。例えば、選択した分子を被検物と接触させる前後に、選択した分子と電解質を含む溶液を滴下した電極上又は電極間に電圧を印加し、電流を測定する。電解質としては、任意の化合物を用いることができ、例えばフェリシアン化カリウムを用いることができる。電流の測定は、当技術分野で公知の任意の方法により行うことができ、例えばサイクリックボルタンメトリー、矩形波ボルタンメトリー、光電流分光法などを用いることができる。分子が電気化学重合していれば電流が低下し、電気化学重合していなければ電流に変化がないか電流の低下が少なくなる。
こうして、所望の被検物に対する電気化学重合アプタマーを選択することができる。上述のようなセレクションにより選択されたアプタマーは、公知の方法により製造することができる。例えばペプチドアプタマーの場合には固相合成法などにより、核酸アプタマーの場合には増幅反応(PCR等)、オリゴヌクレオチド合成法などにより、目的のアプタマーを製造する。アプタマーへの電気化学重合性基の導入は、当技術分野で公知の方法により行うことができる。好ましくは、電気化学重合性基を、アプタマーの製造と同時に導入することができる。例えばペプチドアプタマーの場合には、固相合成法において電気化学重合性基を結合させた保護アミノ酸を使用してペプチドアプタマーを製造することにより、あるいは上述したように、電気化学重合性基を結合させたアミノ酸を担持しかつアンバーコドンに対応するアンチコドンを有するミスアシル化tRNAを用いて、ペプチドアプタマーをin vitro翻訳により製造することにより、電気化学重合性基を含むペプチドアプタマーを調製することができる。また核酸アプタマーの場合には、電気化学重合性基が付加されたヌクレオチド基質を用いた転写又は増幅反応により核酸アプタマーを製造することにより、あるいは固相合成法により電気化学重合性基が付加されたヌクレオチドを使用して核酸アプタマーを製造することにより、電気化学重合性基を含む核酸アプタマーを調製することができる。
本発明者は、被検物としてインフルエンザウイルスを選択し、ペプチドアプタマーのin vitroセレクションを試みたところ、インフルエンザウイルスに特異的に結合しかつ電気化学重合するペプチドアプタマーを取得することができた。このペプチドアプタマーは、後述する実施例4に示されるように、被検物であるインフルエンザウイルスの存在下では、インフルエンザウイルスとの結合が立体障害となって電気化学重合が阻害され、ウイルス濃度依存的に電流が増大する。一方、インフルエンザウイルスの不在下では、ペプチドアプタマーが電気化学条件下において電気化学重合し、電流が妨害される。本発明は、かかるペプチドアプタマーも提供する。
具体的には、本発明に係るペプチドアプタマーは、HAAXHATPTSG(式中、XはEDOT結合アミノフェニルアラニンを表す;配列番号5)に示されるアミノ酸配列からなるペプチドを含む、電気化学重合するペプチドアプタマーである。また本発明に係るペプチドアプタマーは、配列番号5に示されるアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなりかつインフルエンザウイルスに対して特異的に結合するペプチドを含む、電気化学重合するペプチドアプタマーである。
本発明に係るペプチドアプタマーは、公知の方法により、例えばペプチド固相合成法、in vitro転写翻訳系を利用した方法、遺伝子組換え法などにより製造することができる。ペプチドアプタマーへの電気化学重合性基の導入は上述のように行うことができ、固相合成法において電気化学重合性基を結合させた保護アミノ酸を使用してペプチドアプタマーを製造することにより、あるいは上述したように、電気化学重合性基を結合させたアミノ酸を担持しかつアンバーコドンに対応するアンチコドンを有するミスアシル化tRNAを用いて、ペプチドアプタマーをin vitro翻訳により製造することにより、電気化学重合性基を含むペプチドアプタマーを調製することができる。また、アミノ酸変異を有するペプチドがインフルエンザウイルスと特異的に結合するか否かも、当技術分野で公知の任意の方法、例えば上述した方法に従って判定することができる。
本発明に係る被検物の検出方法では、まず上述のアプタマーを、電極上又は電極間で被検サンプルと接触させる。
被検サンプルは、検出対象の被検物を含む疑いのあるサンプルであれば特に限定されるものではなく、液体、固体若しくは気体サンプル、又はこれらの混合サンプルであってよい。被検サンプルは、具体的には、生体液サンプル(唾液、鼻汁、血液、尿など)、細胞又は組織サンプル(口腔スワブなど)、環境サンプル(海水、河川水、工業用水、土壌など)を包含する。液体サンプルは、そのまま、又は溶媒で希釈若しくは濃縮して使用することができる。固体サンプルは、溶媒に懸濁するか、粉砕機などによりホモジナイズするか、あるいは溶媒と共に攪拌して得られる上清を使用してもよい。例えば綿棒などのスティックを無菌水で湿らせ、測定箇所をぬぐった後に、溶媒の中ですすぎ、得られる液体をサンプルとしてもよい。溶媒としては、例えば、蒸留水、生理食塩水、リン酸緩衝液、トリス緩衝液などが挙げられる。さらには、サンプルをフィルターでろ過し、サンプル成分(細胞、細菌、ウイルス等)を捕捉したフィルターを用いることも可能である。そのようなフィルターは、被検物を捕捉できるサイズであれば特に限定されない。
電極は、電気化学的検出を行うことができるものであれば特に限定されるものではない。例えば、金属材料、例として貴金属(金(Au)、銀(Ag)、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、ロジウム(Rh)、イリジウム(Ir)、ルテニウム(Ru)等)、銅(Cu)、アルミニウム(Al)、タングステン(W)、モリブデン(Mo)、クロム(Cr)、チタン(Ti)、ニッケル(Ni)等、ステンレス、ハステロイ、インコネル、モネル、ジュラルミン等の合金、炭素材料、例としてカーボン、グラファイト(グラフェン等)を用いて形成された電極、あるいは半導体素子等の電極(トランジスタ、FETなど)を用いる。電極の形状は、棒状、チップ状、膜状、フィルム状などとすることができ、絶縁体基板上に形成されていてもよい。電極の大きさは、検出対象の被検物の種類、検出目的などに応じて適宜設定することができ、例えば1mm〜1cm、あるいはより微小な、例えばマイクロメーター又はナノメーターのサイズとすることが可能である。
アプタマーと被検サンプルとの接触は、被検サンプル中に存在する被検物とアプタマーとが結合できるように近接することができる状態にすることを意味し、当業者であれば、被検サンプル及び被検物の種類又は状態、アプタマーの種類及び形態に応じて適宜接触の条件を決定することができる。例えば、被検サンプル溶液中にアプタマーを添加する、ビーズ等に固相化した被検サンプルをアプタマー溶液と混合するなどの操作によって行うことができる。被検物とアプタマーとの接触は、適当な温度(例えば5〜100℃)で、適当なpH条件(例えばpH3〜12)で行うことが可能である。
続いて、電極に電圧を印加し、電流を測定する。その際、被検サンプルとアプタマーとを電解質を含む溶液で満たし、アプタマーが電気化学重合する条件とすることが好ましい。電圧の印加と電流の測定は、公知の方法により、例えば電極に接続した電流変化測定器によって行うことができる。電流変化測定器は、電圧変化に惹起される電極内電子移動(電流)を検知可能な測定器であればいかなる回路構成を有する測定器でもよい。例えば、電流変化を測定するために、サイクリックボルタンメトリ、矩形波ボルタンメトリーなどの測定器を用いることができる。ここで、電極に電圧を印加して電気化学重合が起こった後に、電極を洗浄して遊離しているアプタマー及び被検サンプルを洗い流し、その後、電流の測定を行うことが好ましい。
測定した電流を、対照と比較し、電流の変化を判定する。例えば、被検物を含まない対照サンプル、被検物を含む対照サンプル(好ましくは既知濃度の被検物を含む対照サンプル)を用いて得られた電流と比較する。そこで、被検物を含まない対照サンプルと比較して電流が増大している場合には、被検サンプルが被検物を含むことを示す。一方、被検物を含む対照サンプルと比較して低下している場合には、被検サンプルが被検物を含まない又は対照サンプルよりも少ない被検物を含むことを示す。好ましくは、被検物の濃度依存的に電流の変化の程度も変わるため、既知の段階的な濃度の被検物を含む対照サンプルのセットを用いて電流を測定し、検量線を作成することによって、被検物を定量することが可能である。
上述した本発明に係る被検物の検出方法は、キット又はセンサ或いはデバイスを利用して簡便に実施することができる。本発明に係る被検物検出用キットは、被検物に対して特異的に結合し、かつ電気化学重合するアプタマーを含むものである。被検物検出用キットは、被検物を検出するための手順、被検物を定量するための基準(検量線など)を記載した説明書を備えてもよい。本発明の被検物検出用キットの一態様はインフルエンザウイルス検出用キットである。本発明のインフルエンザイウイルス検出用キットの一例は、被検物に対して特異的に結合し、かつ電気化学重合するアプタマーとして、配列番号5に示されるアミノ酸配列からなるペプチド、又は配列番号5に示されるアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなりかつインフルエンザウイルスに対して特異的に結合するペプチドを含む、電気化学重合するペプチドアプタマーである。
また本発明に係る被検物センサ或いは被検物検出用デバイスは、被検物に対して特異的に結合し、かつ電気化学重合するアプタマーを含む被検物結合手段と、電極を含む検出手段とを備えるものである。本発明の被検物センサ又は被検物検出用デバイスの一態様は、インフルエンザウイルスセンサ又はインフルエンザ検出用デバイスである。本発明に係るインフルエンザウイルスセンサ又はインフルエンザ検出用デバイスは、上記のペプチドアプタマーを含むインフルエンザウイルス結合手段と、電極を含む検出手段とを備える。
本発明に係るキット及びデバイスは、被検物を簡便に検出することができるものであるため、多様な分析に有用である。
以下、本発明を実施例及び図面によりさらに具体的に説明する。ただし、以下の実施例は、本発明を限定するものではない。
[実施例1]アプタマーの製造
電気化学重合するアプタマーを製造するために、電気化学重合性基として3,4-エチレンジオキシチオフェン(EDOT)を有する非標準アミノ酸をペプチドアプタマーに組み込む選択系としてリボソームディスプレイを開発した。これを用いて、図2に示す手法でアプタマーの試験管内選別(in vitroセレクション)を実施した。
(1)EDOT-アミノフェニルアラニル-tRNAの合成
まず、電気化学重合するペプチドアプタマーを得るため、EDOTと結合させたアミノフェニルアラニンを有するtRNAを調製した。最初に、tBoc-ε-アミノフェニルアラニンを5’-O-ホスホリル-2’-デオキシシチジリル-(3’-5’)アデノシン(pdCpA)と結合させ、EDOTをアミノフェニルアラニル-pdCpAと結合させた。次に、EDOT-スクシンイミジルエステルのDMSO溶液を、DMSO溶液と、水性ピリジン-HCl(5M, pH 5.0, 80μL)中のアミノフェニルアラニル-pdCpA(AF-pdCpA)(5 mM, 40μL)と混合した。37℃で3時間インキュベーション後、EDOT-AF-pdCpAを、逆相HPLC(Waters XTerra C18; 2.5μm、4.6 mm × 20 mm)で、流速1.5 mL/分、10分での0.1%トリフルオロ酢酸中0%〜100%アセトニトリルの線形勾配を用いて精製した。MALDI-TOFMS(Voyager, Applied Biosystems)により、[M-H]-の計算値1010.83のところ1010.20の値を得、生成物を確認した。
得られたEDOT-AF-pdCpAを、既報(Taira, H. et al., Biochem. Biophys. Res. Commun. 2008, 374, 304-308)の通り、化学ライゲーション法により3’ジヌクレオチドなしでマイコプラズマ・カプリコラム(Mycoplasma capricolum)Trp1 tRNAに由来するアンバーサプレッサーtRNA(アンバーコドンをコードする2塩基短縮したtRNA)にライゲートした。精製したEDOT-AF-tRNAsを凍結し、-80℃で保存した。
(2)ペプチドライブラリの作製
ランダム配列ライブラリとして、アンバーコドンを含むDNAのランダム配列ライブラリ、すなわち(VVN)3TAG(VVN)7(VはG、C又はAを表し、NはG、C、T又はAを表す)(配列番号1)を作製した。具体的には、T7 RNAポリメラーゼのプライマー配列、大腸菌(Escherichia coli)リボソーム結合配列、SfiI制限酵素配列、タンパク質リンカー配列、及びリボソーム停止配列を有するプラスミド(13Trx)を使用し、並行してランダム二本鎖DNA(dsDNA)を調製した。ライブラリの配列はOperon Co. Ltd.(Tokyo, Japan)から入手した。その配列は、5’-ATATGGCCATGCAGGCC(VVN)3TAG(VVN)7GGCCAGCTAGGCCAGTT-3’(VはG、C又はAを表し、NはG、C、T又はAを等しく表す)(配列番号2)であった。VVNは、疎水性アミノ酸(例えばロイシン、バリン、トリプトファン等)以外の12種の天然アミノ酸のみ、及び停止コドン(TAG、TAA及びTGA)を含む。この設計は、水性バッファー中での高溶解度のため、及びEDOTの意図しない追加の組み込みなくライブラリ配列の同じ位置にEDOT分子を組み込むためのものである。Takara Ex taq DNAポリメラーゼ(Takara Bio Inc., Otsu, Shiga, Japan)を用いたポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を1サイクル行ってdsRNAを調製し、QIAquick PCR Purification kit(Qiagen, Valencia, CA, USA)を用いて精製した。得られたdsDNA及び13Trxプラスミドを制限酵素(SfiI; New England Biolabs, Ipswich, MA, USA)で消化し、ライゲートした(DNA Ligation Kit; Takara Bio)。最後に、二本鎖DNAライブラリを、新たなプライマー(New-T7-fp-rec-1: 5’-GTAATACGACTCACTATAGGCCGCGTCGACAATAA-3’(配列番号3)及びNew-rp-fp-M13-NS: 5’-GATTACGCCAAGCTGAGTGAGA-3’(配列番号4))を用いたPCRにより調製した。ランダム配列DNAライブラリのin vitro転写のため、37℃にて3時間転写を実施し、続いて産物をDNaseで処理した。RNeasy kits(Qiagen)を用いてmRNAを精製した。
続いて、PURE system Classic II kit(Wako Pure Chemical Industries Ltd., Chuo-ku, Osaka, Japan)を用いて、EDOT結合アミノフェニルアラニンを有するtRNAの存在下においてin vitro翻訳を実施し、EDOT含有ペプチドライブラリを作製した。TAGコドンにはEDOT結合アミノフェニルアラニンが対応することになる。ライブラリは、停止コドンの喪失のため、リボソームはmRNA又は翻訳されたペプチドを放出することができない。低温に保つことでリボソーム-mRNA−ペプチドの複合体として安定的に結合し、リボソームの表面上にディスプレイされたEDOT修飾ペプチドが産生される。これがいわゆるリボソームディスプレイシステムである。混合物を氷上に10分置くことで反応を停止させた。この翻訳収量は、tRNAの添加のためおよそ10倍低かった。
(3)試験管内選別(in vitroセレクション)
翻訳したライブラリ溶液を、選択バッファー(0.1%Tween 20、50 mM Tris、150 mM NaCl、50 mM酢酸マグネシウム)中のシリカアフィニティビーズ(Sumitomo Bakelite co., ltd, Tokyo, Japan)上に固定された不活化インフルエンザウイルスA/California/07/2009(H1N1, Denka Seiken co., ltd, Tokyo, Japanより供与)と共に4℃で1時間インキュベートして、アフィニティセレクションを実施した。ウイルス固定化ビーズを10,000 gで5分遠心して回収し、4℃にて洗浄バッファー(50 mM Tris、150 mM NaCl、50 mM酢酸マグネシウム)を用いて未結合のmRNA-リボソーム-ペプチド複合体を洗い流した。室温にて30分間エチレンジアミン四酢酸(EDTA)と共にインキュベートした後、結合したmRNA-リボソーム-ペプチド複合体からmRNAを回収した。
単離されたmRNAをRNeasyキットを用いて精製した。逆転写(RT)-ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を行って、回収したmRNAからDNAを増幅した。DNA産物をQIAquick PCR purification kits(Qiagen)を用いて精製した。単離されたDNAを次のラウンドの選択(転写及び翻訳)のための鋳型として使用した。
選択プロセスを6ラウンド行った後、選択したDNAの配列をクローニングし、配列を解析した。92のクローンから89種の配列を見出した。
[実施例2]ペプチド合成
実施例1で得られたペプチド配列の中から重複があった3つのペプチド配列を化学合成し、後述するようにインフルエンザへの結合性を確認するため、ペプチドにフルオレセインを付加した(表1)。
Figure 0006485855
具体的には、選択したペプチド#07、#81及び#93を、RIKEN Brain Science Instituteにおいて一般的なFmoc固相法により合成した。選択したペプチド配列にEDOTを組み込むためにFmoc-アミノフェニルアラニルEDOTを合成した。ペプチド合成樹脂からのこれらのペプチドの切断のため、トリフルオロ酢酸:フェノール:チオアニソール:ddH2O:エタンジチオールを85:5:4:4:2 (v/v)の比で含むΔTIS切断溶液を使用して、チオフェン部分の還元を回避した。
[実施例3]生物学的特異性
合成したペプチドのアフィニティを実施例1の(3)と同様に試験し、図3に示すように比較した。3つのペプチドアプタマーのうち、#7のみがインフルエンザウイルスに対する結合アフィニティを示した。
ドットブロットにより、選択したEDOT-アプタマーであるペプチド#7の不活化インフルエンザウイルスへの結合についての生物学的特異性をさらに確認した。最初にPVDF膜(Immobilon-P Transfer Membrane, 孔径:0.45μm)をメタノールに浸漬し、続いてブロッティングバッファー(25 mM Tris、192 mMグリシン、20%(v/v)エタノール)に浸漬した。乾燥を避けるためにろ紙上に膜を置いた後、2μLの不活化インフルエンザウイルスA/California/07/2009(H1N1, Denka Seiken co., ltd, Tokyo, Japanより供与)(128HAユニット/μLをmilliQで1:1、1:2、1:4及び1:8の比で希釈)をそれぞれ膜上に滴下し、一方、陰性対照として、2μLの1.5 mg/mLゼラチン及び2μLの1.5 mg/mLウシ血清アルブミン(BSA, Sigma-Aldrich)を同じ希釈比で滴下した。乾燥させた後、膜を再度、メタノール、続いてブロッティングバッファー中に浸漬した。その後、ブロッキングバッファー(TBS-Tバッファー(50 mM Tris、150 mM NaCl、0.05% Tween 20、pH 7.4)中の5% w/v ECL Advance blocking agent)に浸漬し、室温で1時間振盪して、非特異的結合をブロックした。TBS-Tバッファーで簡単に洗浄し、湿潤状態を維持するためにパラフィルム上に置き、100μLの0.2 mg/mL FITC標識ペプチド#7を膜上に滴下して、全領域を覆った。暗室で室温で1時間インキュベートし、TBS-Tバッファーで3回(それぞれ5分)洗浄した後、RIKEN Brain Science InstituteにおいてMolecular Imager FX(Bio-Rad Laboratories, Tokyo, Japan)により膜の表面イメージを取得した。
結果を図4に示す。図4は、ペプチド#7がインフルエンザウイルスに特異的に結合可能であることを示す。陰性対照であるゼラチン及びBSAはインフルエンザウイルスに結合しなかった。
[実施例4]センサによる電気化学検出
最も結合性の高かったペプチド#7を用い、ペプチド#7の重合を調べた。すなわち、図1に示すような原理でインフルエンザ濃度に応じた電流変化があるかどうかを調べた。
(1)センサの製造
図5に概略を示すように、金(Au)電極(OD: 6 mm、ID: 3 mm;ALS Co., Ltd, Tokyo, Japan)を作用電極として使用し、プラチナ(Pt)ワイヤー及びAg/AgCl電極(RE-1S、ALS Co., Ltd, Tokyo, Japan)をそれぞれ対電極及び参照電極として使用した。図5の(a)は、実際の実験設定の全体的観点、(b)は対応する概略図、(c)は(a)の部分拡大イメージである。金電極を最初に6μm研磨ダイアモンドを用いて機械的に研磨し、続いて0.05μm研磨アルミナスラリーを用いて研磨した後、milliQで十分にすすいだ。
(2)電気化学検出
実験は、autolab(AUTOLAB PGSTAT128N, Eco Chemie B.V., Utrecht, Netherlands)を用いて実施した。分析物として、ペプチド#7のストック溶液をmilliQで調製し、続いて0.1 M Tris-HClバッファー(pH 7.0)で所望の濃度にまで希釈した。
電極の設置後(図5)、すべての電極に分析物が触れるように20μLの分析物を金電極に滴下した。サイクリックボルタンメトリー(0〜1.2V 対 Ag/ AgCl、スキャン速度0.1 V/s)を6サイクル実施して種々の濃度のペプチド#7を重合させ、金電極上にポリマー膜を形成させた。その後、金電極をmilliQに漬け、穏やかに振盪し、残りの分析物溶液を除去した。風乾して、0.1 M Tris-HClバッファー(pH 7.0)中の5 mM K3[Fe(CN)6]の20μLを金電極に滴下し、矩形波ボルタンメトリー((0.05V, 1s; 0.45V, 1s)、5サイクル)を実施して電流を検出した。6s、8s及び10s時点での測定値を平均化し、図6に示す。
図6は、サイクリックボルタンメトリーによる金電極上での種々の濃度のペプチド#7の重合及び沈着後の、矩形波ボルタモグラムからの平均ピーク電流を示す。この結果は、電流がペプチド濃度の増加に伴って低下し、最終的に飽和したことを示す(図6)。
続いて、分析物として、ペプチド#7、ゼラチン及びオボアルブミン(ニワトリ卵白由来アルブミン, Sigma-Aldrich)のストック溶液をmilliQで調製し、続いて0.1 M Tris-HClバッファー(pH 7.0)で所望の濃度にまで希釈した。また、ペプチド#7の濃度を0.1mg/mL及び0.2mg/mLにそれぞれ固定して、種々の濃度のインフルエンザウイルスを分析物に添加した。上と同じ電気化学プロセスを行った結果を図7A及びBに示す。
図7Aは、サイクリックボルタンメトリーによる金電極上での分析物の重合及び沈着後の、矩形波ボルタモグラムからの平均ピーク電流を示す。種々の濃度の不活化インフルエンザウイルス(H1N1, Californian)を、固定濃度のペプチド#7の存在下で検出した(上のグラフ: 0.1 mg/mL, 近似曲線; 下のグラフ: 0.2 mg/mL, 直接プロット)。図7Bは、ゼラチン及びオボアルブミンを、0.2mg/mLのペプチド#7と共に陰性対照として用いて得られた結果を示す。図7Aから、両方の濃度で、インフルエンザウイルスの濃度が増大すると、それに対応して電流が増加していることがわかった。このことは、ペプチド#7がインフルエンザウイルスに結合し、有効な(未結合の)ペプチド#7の濃度が低下し、したがってポリマー膜が薄くなったことを示している。図7Bに示すように、アルブミンやゼラチンなどのペプチド#7が結合しないタンパク質の共存下ではこのような変化は起こらなった。平らな曲線は、ペプチド#7がインフルエンザウイルスを特異的に検出できたことを示す。
このようにして、図9に示されるような、分析物におけるインフルエンザウイルスの定量プロトコールが確立された。
[実施例5]重合の確認
金電極表面上でのペプチド#7の重合及び沈着をFITC標識ペプチド#7を用いて確認した。
Molecular Image FXシステムの測定要件を満たすために、棍棒状金電極の代わりに、金被覆シリコンウエハ(Sigma-Aldrich)から切り出した金被覆シリコンチップ(5 mm x 10 mm)を作用電極として使用した。実験設定及び重合のためのサイクリックボルタンメトリーは実施例4と同様とした。具体的には、0.1M Tris-HClバッファー(pH 7.0)中0、0.5、1及び1.5 mg/mL FITC標識ペプチド#7の20μLを金被覆シリコンチップ上に滴下し、ポテンシオスタット(ALS/CH Instruments, 電気化学分析機、model 700C, BAS)を用いてサイクリックボルタンメトリー(0〜1.2 V 対 Ag/ AgCl、スキャン速度0.1 V/s)を6サイクル実施した。その後、チップをmilliQに漬け、穏やかに振盪し、残りのFITC標識ペプチド#7を除去した。風乾した後、RIKEN Brain Science InstituteにおいてMolecular Imager FX(Bio-Rad Laboratories, Tokyo, Japan)によりチップ表面のイメージを取得した。ソフトウエアImageJ64により蛍光イメージを解析することにより、分析物スポットの統合密度を使用して図8を作図した。
図8は、FITC標識ペプチド#7の濃度が増大するにつれて画像の統合密度が増加したことを示す。このことは、ペプチドアプタマーが作用電極表面上で重合及び沈着に成功したことを示している。
本発明は、被検物の迅速かつ定量的な検出を可能とするものである。そのため、本発明は、被検物の検出が必要とされる医療、食品、環境などの分野で有用である。
配列番号1及び2:人工配列(合成オリゴヌクレオチド)
配列番号3及び4:人工配列(プライマー)
配列番号5〜7:人工配列(合成ペプチド)

Claims (14)

  1. 被検サンプル中の被検物の検出方法であって、
    被検物に対して特異的に結合し、かつ被検物の存在下において電気化学重合しないが被検物の不在下において電気化学重合するアプタマーを、電極上又は電極間で被検サンプルと接触させる工程、
    電極に電圧を印加し、電流を測定する工程
    を含む、被検物の検出方法。
  2. 被検物が、ウイルス、細菌、真菌、原生生物、天然分子及び合成分子からなる群より選択される少なくとも1種である、請求項1に記載の方法。
  3. アプタマーが、タンパク質アプタマー、ペプチドアプタマー、ペプチド核酸アプタマー、及び核酸アプタマーからなる群より選択される少なくとも1種である、請求項1又は2に記載の方法。
  4. アプタマーがチオフェンを有する電気化学重合性基を含む、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
  5. 電気化学重合性基が3,4-エチレンジオキシチオフェン(EDOT)である、請求項4に記載の方法。
  6. 被検物を含まない対照サンプルと比較して電流が増大している場合には、被検サンプルが被検物を含むことを示す、請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
  7. 被検物を含む対照サンプルと比較して電流が低下している場合には、被検サンプルが被検物を含まない又は対照サンプルよりも少ない被検物を含むことを示す、請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
  8. 被検物に対して特異的に結合し、かつ被検物の存在下において電気化学重合しないが被検物の不在下において電気化学重合するアプタマーを含むことを特徴とする被検物検出用キット。
  9. 被検物に対して特異的に結合し、かつ被検物の存在下において電気化学重合しないが被検物の不在下において電気化学重合するアプタマーを含む被検物結合手段と、
    電極を含む検出手段と
    を備えることを特徴とする被検物センサ。
  10. 配列番号5に示されるアミノ酸配列からなるペプチド、又は配列番号5に示されるアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなりかつインフルエンザウイルスに対して特異的に結合するペプチドを含む、電気化学重合するペプチドアプタマー。
  11. 請求項10に記載のペプチドアプタマーを含むことを特徴とするインフルエンザウイルス検出用キット。
  12. 請求項10に記載のペプチドアプタマーを含むインフルエンザウイルス結合手段と、
    電極を含む検出手段と
    を備えることを特徴とするインフルエンザウイルスセンサ。
  13. 被検物に対して特異的に結合し、かつ電気化学重合するアプタマーの製造方法であって、
    電気化学重合性基を含むアプタマーを調製する工程、
    前記アプタマーが、被検物の存在下において電気化学重合せず、被検物の不在下において電気化学重合することを確認する工程
    を含む、アプタマーの製造方法。
  14. 被検物に対して特異的に結合し、かつ電気化学重合するアプタマーの製造方法であって、
    電気化学重合性基を含む分子から構成されるライブラリを調製する工程、
    前記ライブラリの分子を被検物と接触させ、被検物と特異的に結合する分子を選択する工程、
    選択した分子が、被検物の存在下において電気化学重合せず、被検物の不在下において電気化学重合することを確認する工程
    を含む、アプタマーの製造方法。
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