以下、本発明の第1実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、各図面を通じて同一もしくは同等の部位や構成要素には、同一もしくは同等の符号を付している。ただし、図面は模式的なものであり、現実のものとは異なることに留意すべきである。また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることはもちろんである。
また、以下に示す実施の形態は、この発明の技術的思想を具体化するための装置等を例示するものであって、この発明の技術的思想は、各構成部品の材質、形状、構造、配置等を下記のものに特定するものでない。この発明の技術的思想は、特許請求の範囲において、種々の変更を加えることができる。
[本発明の第1実施形態]
図1は、本発明の第1実施形態に係る印刷システム1の概略構成図、図2は、本発明の第1実施形態に係る印刷システム1の構成を示す概略ブロック図、図3は、本発明の第1実施形態に係る印刷装置10に記憶される情報を示すテーブルである。
印刷システム1は、ネットワーク等を介して、パソコンなどの端末装置(不図示)から受信した印刷ジョブに基づいて、印刷用紙Pに画像を印刷することができる。
図1に示すように、本実施形態に係る印刷システム1は、印刷装置10と、印刷装置10に着脱可能に構成されるインク容器50とを備える。印刷装置10は、インク容器50から供給されるインクを用いて印刷処理を実行する。具体的に、印刷装置10は、外部に設けられるパソコンなどの端末装置(不図示)から送信される印刷ジョブを受信するとともに、当該印刷ジョブに基づいて、印刷用紙Pに画像を印刷する印刷処理を実行する。
印刷装置10は、インク容器50から供給されるインクを使用して、印刷用紙Pに画像を印刷する。なお、本実施形態に係る印刷装置10は、インクジェット方式によって印刷用紙Pに画像を印刷するインクジェット印刷装置である。
印刷装置10は、インク容器50から供給されるインクを使用して、印刷用紙Pに画像を印刷する場合に、インク容器50に備えられるインク容器側記憶部51(図2参照)に記憶される情報を参照する。
印刷装置10は、搬送経路に沿って印刷用紙Pを搬送しながら、印刷用紙Pに画像を印刷する。なお、搬送経路は、通常経路と、通常経路に分岐接続される反転経路とを含む。図1において太矢印で示す経路が、通常経路であり、点線矢印で示す経路が、反転経路である。なお、反転経路は、用紙を往復させて通常経路に戻すことにより印刷用紙Pの表裏を反転させる経路である。
また、図1〜2に示すように、印刷装置10は、給紙部3と、印刷部4と、搬送部5と、排紙部6と、通信部11と、本体制御部100と、操作パネル部120と、を備える。
給紙部3は、搬送経路の最も上流側に配置されている。給紙部3は、印刷用紙Pを載置するトレイ3aと、印刷用紙Pを給紙する給紙ローラ3bとを備える。トレイ3aには、印刷媒体である印刷用紙Pが複数枚積層され、最上層の印刷用紙Pが給紙ローラ3bによって、搬送経路へと送り出される。
給紙ローラ3bは、トレイ3aから搬送されてきた用紙Pを一旦止めた後、後述のベルト搬送部4aに向けて搬送する。給紙ローラ3bは、図示しないモータにより駆動される。
印刷部4は、ベルト搬送部4aと、インク供給部7と、インクジェットヘッド部8とを備える。ベルト搬送部4aは、給紙ローラ3bから搬送されてきた用紙Pをベルト上に吸着保持して搬送する。ベルト搬送部4aは、図示しないモータにより駆動される。インク供給部7は、インク容器50とインクジェットヘッド部8とに接続されている。インク供給部7は、インク容器50の装着部とインク搬送管とインクポンプ等を備える(いずれも不図示)。インク供給部7は、インクポンプ等を駆動させることよって、インク容器50に収容されたインクをインクジェットヘッド部8に供給する。
本実施形態では、インクジェットヘッド部8として、多数のノズルが形成された複数のインクジェットヘッド部8a〜8dを備える。複数のインクジェットヘッド部8a〜8dのそれぞれは、インク色の異なるインクを吐出する。インクジェットヘッド部8aは、シアン色のインクを吐出し、インクジェットヘッド部8bは、マゼンタ色のインクを吐出し、インクジェットヘッド部8cは、イエロー色のインクを吐出し、インクジェットヘッド部8dは、ブラック色のインクを吐出する。
印刷部4は、インクジェットヘッド部8a〜8dのそれぞれからインクを吐出することによって、印刷用紙Pに画像を印刷する。なお、本実施形態では、インクジェットヘッド部8a〜8dのそれぞれを、単にインクジェットヘッド部8として、適宜説明する。
インクジェットヘッド部8は、ノズルと、インク室と、ピエゾ素子とを備えている(いずれも不図示)。インク室およびピエゾ素子は、インクジェットヘッド部8に多数形成されたノズルに対応して設けられている。インクジェットヘッド部8では、ピエゾ素子が、後述の印刷制御部104(図2参照)から送られるインク吐出データに基づいて変形することにより、インク室の一端に形成されたノズルからインクが吐出される。なお、ピエゾ素子に代えて発熱素子を用いて、インク発熱により生じる気泡によりインクを吐出するようにしてもよい。
また、インクジェットヘッド部8から吐出されるインクの単位時間あたりの吐出回数は、印刷搬送速度に応じて異なる。具体的に、インクの単位時間あたりの吐出回数は、印刷搬送速度が早いほど多く、印刷搬送速度が遅いほど少ない。
搬送部5は、搬送ベルトと搬送ローラ5aとを備え、搬送ベルトと搬送ローラ5aとによって、印刷用紙Pを搬送経路に沿って搬送する。
排紙部6は、印刷済みの印刷用紙Pを排紙する。排紙部6は、印刷済みの印刷用紙Pを収容する排紙台と、排紙台に印刷済みの印刷用紙Pを搬送する排紙ローラとを備える(いずれも不図示)。
本体制御部100は、CPU及びCPUを動作させるためのプログラムを格納したプログラムROM等を備えている。本体制御部100は、CPUを動作させることによって、印刷装置10内の各種機能を統括制御する。また、本体制御部100は、通信部11を介して、インク容器50に備えられるインク容器側記憶部51との間で、無線により通信を行う。なお、本体制御部100の詳細な構成については、後述する。
操作パネル部120は、表示/入力パネルと、製版処理や印刷処理等を開始させるためのスタートキー、製版処理や印刷処理等を停止させるためのストップキー、印刷枚数等を入力するためのテンキー等の各種操作キーとを備え(いずれも不図示)、ユーザ入力に基づく入力情報を本体制御部100に送信する。
操作パネル部120の表示/入力パネルは、前面に配置された感圧式あるいは静電式の透明なタッチパネルと、このタッチパネルの裏面に配置され、各種表示画面を表示する液晶表示パネル(いずれも不図示)とを有している。ユーザは、液晶表示パネルの表示画面を見ながら、タッチパネルの表面を指などで直接触れることで、表示画面上に表示された各種の入力操作を行うことができる。
インク容器50は、印刷部4に供給されるインクを収容する。インク容器50に収容されるインクは、インク供給部7を介して、インクジェットヘッド部8に供給される。また、インク容器50は、インク情報を予め記憶するインク容器側記憶部51を有する(図2参照)。
ここで、インク情報は、インク容器50に収容されるインクの色を識別するインク色、印刷処理を実行する際の印刷濃度など、印刷処理を実行する際に本体制御部100によって参照される情報である。なお、インク情報は、インク容器50の識別情報と、インク容器50に収容されるインクの比重、粘度及び表面張力等のインク特性とを示す情報を含んでいる。
インク容器側記憶部51は、非接触ICタグに備えられており、本体制御部100との間で無線により通信を行う。なお、インク容器側記憶部51は、非接触ICタグの無線通信によりインク情報などを読み書き可能に構成されている。
次に、印刷装置10の本体制御部100の構成等を説明する。図2に示すように、本実施形態に係る本体制御部100は、インク情報取得部101と、受付部102と、印刷設定部103と、印刷制御部104と、本体記憶部105とを備える。
インク情報取得部101は、インク容器50に記憶されるインク情報を取得する。
インク情報取得部101は、インク容器50が装着されると、通信部11を介して、インク容器50のインク容器側記憶部51を読み込む。そして、インク情報取得部101は、インク容器側記憶部51からインク情報を取得する。
受付部102は、インク情報取得部101よりインク情報を取得できなかった場合、ユーザの入力からユーザインク情報を受け付ける。具体的に、受付部102は、操作パネル部120に所定の画面を表示して、ユーザからユーザインク情報を受け付ける。
なお、ユーザインク情報は、インク情報の代替としてユーザによって入力される情報である。従って、ユーザインク情報も、インク色、印刷濃度などのように、印刷処理を実行する際に本体制御部100によって参照される情報である。
印刷設定部103は、ユーザインク情報が入力された場合、ユーザインク情報により印刷処理が可能な印刷設定を設定する。
ここで、印刷設定とは、印刷処理を実行するために必要な情報であり、印刷処理における制御値の許容範囲及び印刷機能の使用可否など、印刷処理における許容環境を示す。本実施形態では、印刷設定は、印刷搬送速度、印刷濃度、解像度、用紙サイズ、用紙トレイのそれぞれの許容範囲と、両面印刷の使用可否とを示す情報とする。
なお、印刷搬送速度は、速度1〜7によって規定され、数値が大きいほど印刷搬送速度が速いことを示す。速度1〜7のそれぞれは、印刷装置10で適用可能な印刷搬送速度の範囲内(例えば、40〜150ppm)において、規定されている。印刷濃度は、印刷装置10で適用可能な印刷濃度の範囲内において、濃度1〜5によって規定され、数値が大きいほど印刷濃度が濃いことを示す。解像度は、印刷装置10で適用可能な解像度の範囲内(例えば、300〜600dpi)において規定される複数の解像度を示す。用紙サイズは、A4、A4R、A3・・・など、印刷装置10で適用可能な用紙サイズを示す。用紙トレイは、トレイ1、トレイ2、外部給紙トレイ・・・など、印刷装置10で適用可能な用紙トレイを示す。なお、印刷設定は、これらに限定されるものではない。
また、本実施形態では、印刷設定部103は、ユーザインク情報が入力されなかった場合、印刷処理における印刷搬送速度を、複数の印刷搬送速度のうち最も低速にする印刷設定に設定する。本実施形態において、複数の印刷搬送速度のうち最も低速にする印刷設定とは、最低印刷搬送速度を示す。
印刷制御部104は、通信部11を介して印刷ジョブを受信すると、当該印刷ジョブに基づいて、印刷処理を実行するように印刷装置10内の各種機能を制御する。具体的に、印刷制御部104は、給紙部3、印刷部4、搬送部5、排紙部6などを制御して、印刷処理を実行する。また、印刷制御部104は、印刷設定部103によって設定された印刷設定に従って、印刷処理を実行する。
例えば、印刷制御部104は、印刷設定が最低印刷搬送速度を示す場合、印刷処理において、印刷搬送速度が最も低速になるように、給紙部3、印刷部4、搬送部5、排紙部6などに対して、給紙速度、用紙間隔、排紙速度、各種タイミングを制御する。
このとき、印刷制御部104は、印刷部4のインクジェットヘッド部8から吐出されるインクの単位時間あたりの吐出回数も制御する。
ここで、画像を印刷するために必要なインクの吐出回数は、印刷する画像の画像データに応じて画像処理部(不図示)により算出される。
また、インクの単位時間あたりの吐出回数は、印刷搬送速度と対応する関係を有しており、印刷搬送速度が設定されることで、インクの単位時間あたりの吐出回数が、設定される。具体的に、印刷搬送速度が早いほど、インクの単位時間あたりの吐出回数が増加し、印刷搬送速度が遅いほど、インクの単位時間あたりの吐出回数が減少する。
印刷制御部104は、印刷搬送速度と、インクの単位時間あたりの吐出回数とを関連づけた速度吐出回数テーブル(不図示)を参照して、印刷搬送速度に対応するインクの単位時間あたりの吐出回数を設定する。例えば、印刷制御部104は、印刷設定が最低印刷搬送速度を示す場合、インクの単位時間あたりの吐出回数が最も少ない吐出回数を設定し、設定した吐出回数を含むインク吐出データをインクジェットヘッド部8に送信する。
本体記憶部105は、本体制御部100内の各種機能によって用いられる情報を記憶する。本実施形態に係る本体記憶部105は、図3に示すように、動作モードと、複数の印刷設定とを関連付けたテーブルを記憶する。
ここで、本実施形態では、図3に示すように、複数の印刷設定が、動作モードによって規定される。また、動作モードは、“動作モード0”から“動作モード99”まで、複数規定されている。なお、動作モードの数はこれに限定されない。
また、本実施形態では、印刷設定部103は、本体記憶部105に記憶されるテーブルを参照するとともに、“動作モード0”から“動作モード99”の内の一つの動作モードを選定する。印刷設定部103は、一つの動作モードを選定することによって、動作モードに対応する印刷設定を設定する。
なお、本実施形態では、“動作モード0”を、全ての制御値及び印刷機能の使用を許可した印刷設定を規定する正常動作モードとし、“動作モード1〜98”を、制御値及び印刷機能を制限した印刷設定を規定する制限動作モードとし、“動作モード99”を最も制御値及び印刷機能を制限した印刷設定を規定する最制限動作モードとして説明する。また、本実施形態に係る最制限動作モードでは、印刷搬送速度が最も低い最低印刷搬送速度(図3に示す“速度1”であり、例えば40ppm)を示す印刷設定が規定されている。また、本実施形態に係る最制限動作モードでは、最低印刷搬送速度の他、印刷濃度を最も薄くした最低印刷濃度(図3に示す“濃度1”)、解像度を最も低くした最低解像度(図3に示す“300dpi”)、用紙サイズを最も小さくした最小用紙サイズ(図3に示す“A4”)、両面印刷の使用を許可しない使用不可(図3に示す“使用不可”)などを示す印刷設定が規定されている。
次に、本実施形態に係る印刷装置10の動作を説明する。図4は、本実施形態に係る印刷装置10の動作を示すフローチャートである。具体的に、図4は、インク容器50を装着した際の印刷装置10の動作を示すフローチャートである。
ステップS1において、印刷装置10では、インク容器50が装着されると、本体制御部100がこれを検出する。
ステップS2において、印刷装置10では、本体制御部100が、印刷設定を設定する印刷設定処理を実行する。なお、印刷設定処理の詳細は、後述する(図5参照)。
ステップS3において、印刷装置10では、本体制御部100が、印刷設定に基づいて、印刷処理を実行する。具体的に、本体制御部100は、端末装置から受信した印刷ジョブと、印刷設定処理によって設定された印刷設定とに基づいて、印刷処理を実行する。
次に、本実施形態に係る印刷装置10において、印刷設定処理を実行する際の動作について説明する。図5は、印刷装置10が印刷設定処理を実行する際の動作を示すフローチャートである。
まず、ステップS21において、印刷装置10では、インク情報取得部101は、インク容器50のインク容器側記憶部51を参照して、インク容器側記憶部51に記憶されるインク情報の取得を試みる。
ステップS22において、インク情報取得部101は、インク容器側記憶部51からインク情報を取得できるか否かを判定する。なお、インク容器50が汎用品であると、インク情報を取得できない場合がある。従って、ステップS22では、インク情報取得部101は、インク容器50が汎用品であるか否かを判定しているとも言い換えることができる。
ステップS23において、インク情報取得部101がインク情報を取得できた場合(ステップS22;Yes)、印刷設定部103は、印刷処理において、全ての制御値及び印刷機能の使用を許可する印刷設定に設定する。本実施形態では、印刷設定部103は、正常動作モードを選定するとともに、正常動作モードに応じた印刷設定に設定する。
ステップS24において、印刷設定部103は、操作パネル部120において、図6に示すように、正常動作モードが設定されたことを示す印刷待機画面を表示する。
続いて、ステップS25において、印刷設定部103は、設定した印刷設定を、印刷処理で参照される印刷設定として、本体記憶部105に記憶する。なお、このとき、印刷設定部103は、インク情報も印刷設定に関連付けて記憶してもよい。
そして、この後、印刷制御部104は、印刷設定部103によって記憶された印刷設定を参照して、端末装置(不図示)から受信した印刷ジョブに対応する印刷処理を実行する。
一方、ステップS26において、インク情報取得部101は、インク情報を取得できなかった場合(ステップS22;No)、受付部102は、操作パネル部120において、ユーザからユーザインク情報を受け付けるための印刷設定初期画面を表示する。
ここで、図7には、印刷設定初期画面の一例が示されている。図7に示すように、印刷設定初期画面には、最低限の動作によって確実に印刷することが可能な最制限動作モードに関連付けられる印刷設定が表示される。なお、図7に示す印刷設定初期画面には、設定可能な印刷設定が太字で示され、設定不可能な印刷設定が薄字で示されている。また、印刷設定初期画面には、「設定入力不要」ボタン領域D21と、「設定入力」ボタン領域D22とが含まれている。
ステップS27において、印刷設定初期画面の「設定入力」ボタン領域D22が入力されると、受付部102は、図8に示すユーザインク情報入力画面を表示する。そして、受付部102は、ユーザインク情報を受け付けたか否かを判定する。
ここで、ユーザインク情報入力画面には、ユーザインク情報を入力するための「ユーザ情報」入力領域D31と、数値を入力する「テンキー」ボタン領域D32と、「設定完了」ボタン領域D33とが含まれている。ユーザは、「ユーザ情報」入力領域D31において、「テンキー」ボタン領域D32を入力することによって、ユーザインク情報を入力する。なお、図8のユーザインク情報入力画面には、「製造年月日」、「インク残量」、「インク色」、「印刷濃度調整」などが、ユーザインク情報として表示される場合を例に挙げているが、インク特性など、他の項目をユーザインク情報として表示させてもよい。
ステップS28において、受付部102は、ユーザインク情報入力画面において、ユーザによってユーザインク情報が入力された後、ユーザによって「設定完了」ボタン領域D33が入力されると、ユーザインク情報が入力されたと判定する(ステップS27;Yes)。そして、印刷設定部103は、入力されたユーザインク情報に基づいて、複数の制限動作モードの中から、所定の制限動作モードを選定するとともに、選定した所定の制限動作モードに応じた印刷設定を設定する。
具体的に、印刷設定部103は、ユーザインク情報と動作モードとを関連付けたモード識別テーブルを予め記憶しており、当該モード識別テーブルを参照して、所定の制限動作モードを選定する。そして、印刷設定部103は、選定した所定の制限動作モードに応じた印刷設定を設定する。
ステップS29において、印刷設定部103は、設定した印刷設定を示す印刷設定画面を表示する。ここで、図9には、設定した印刷設定を示す印刷設定画面の一例が示されている。印刷設定画面には、「設定変更」ボタン領域D41と、「設定完了」ボタン領域D42とが含まれている。また、図9に示す印刷設定画面には、設定可能な印刷設定が太字で示され、設定不可能な印刷設定が薄字で示されている。
この印刷設定画面を表示した後、ユーザにより「設定変更」ボタン領域D41が入力されると、図8に示すユーザインク情報入力画面が再度表示される。一方、ユーザにより印刷設定画面に含まれる「設定完了」ボタン領域D42が入力されると、印刷設定部103は、設定した印刷設定を本体記憶部105に記憶する(ステップS25)。なお、このとき、印刷設定部103は、ユーザインク情報も印刷設定に関連付けて記憶してもよい。
また、ステップS27において、受付部102は、印刷設定初期画面の「設定入力不要」ボタン領域D21が入力されると、ユーザインク情報が入力されないと判定する(ステップS27;No)。
そして、ステップS30において、印刷設定部103は、ユーザインク情報が入力されない場合、図3において“動作モード99”として示した最制限動作モードを選定する。すなわち、印刷設定部103は、最制限動作モードを選定することで、印刷搬送速度のうち印刷搬送速度を最も低速にした最低印刷搬送速度を示す印刷設定に設定する。そして、印刷設定部103は、最低印刷搬送速度の他、最制限動作モードに応じた印刷設定を本体記憶部105に記憶する(ステップS25)。
以上のように、第1実施形態に係る印刷装置10では、ユーザインク情報が入力されなかった場合に、印刷設定部103が最制限動作モード(“動作モード99”)を選定する。すなわち、印刷設定部103は、最制限動作モードを選定することで、印刷搬送速度のうち印刷搬送速度を最も低速にした最低印刷搬送速度を示す印刷設定に設定する。
ここで、印刷搬送速度が早いほど、インクの単位時間あたりの吐出回数が増加するため、搬送経路上を浮遊するインクミストが多く発生しやすい。このようなインクミストの発生は、搬送経路、インクジェットヘッド部8、及びベルト搬送部4aなどに付着し、装置汚れを引き起こすおそれがある。
特に、インク情報が取得できず、かつ、ユーザインク情報が入力されなかった場合には、インクの比重や粘度、表面張力等のインク特性が認識できないため、インクミストが非常に多く発生するおそれがある。
本実施形態係る印刷装置10によれば、インク情報を取得できず、かつ、ユーザインク情報が入力されなかった場合に、印刷搬送速度を最も低速にした印刷設定によって印刷処理を実行できるため、インクの単位時間あたりの吐出回数を最も少なくした印刷設定によって、印刷処理を実行できる。これにより、インクミストの発生を減少させることができるため、インクミストによって印刷装置が汚れることを抑制できる。
このように、かかる印刷装置10によれば、汎用品のインク容器50を使用した印刷処理においても、インクミストによる装置汚れを抑制することができる。
また、印刷装置10では、インク情報が取得できず、かつ、ユーザからユーザインク情報が入力された場合、ユーザインク情報に基づいて、印刷処理において許容可能な印刷設定を設定する。具体的に、ユーザインク情報に基づいて、複数の制限動作モードの中から所定の制限動作モードを選定するとともに、所定の制限動作モードに対応する印刷設定を設定する。すなわち、印刷搬送速度の許容範囲を制限した印刷設定を設定する。これにより、インク情報が取得できない汎用品であっても、ユーザによって入力されたユーザインク情報に基づいて、印刷搬送速度の許容範囲を制限した印刷設定によって印刷処理を実行できるため、インクミストによる装置汚れを抑制することができる。
また、本実施形態係る印刷装置10によれば、装置汚れに起因して、印刷用紙Pが汚れることも抑制できるため、印刷品質の低下も抑制できる。
また、本実施形態係る印刷装置10によれば、ユーザインク情報が入力されなかった場合に、最低限動作モードに応じた印刷設定を設定して、印刷処理を開始できるため、ユーザがすぐに印刷処理を開始することを望む場合には、ユーザインク情報を入力しなければ印刷処理をすぐに開始できる。
また、本実施形態に係る最制限動作モードでは、最低印刷搬送速度の他、印刷濃度を最も薄くした最低印刷濃度、解像度を最も低くした最低解像度、用紙サイズを最も小さくした最小用紙サイズなどを示す印刷設定が規定されているため、これらの印刷設定によって印刷処理を実行できる。
これにより、印刷装置10において、インク情報が取得できず、ユーザインク情報が入力されない場合に、印刷濃度が濃すぎることや解像度が高すぎることにより画像に汚れやじみが発生することを抑制できるため、印刷品質の低下を抑制できる。また、最制限動作モードでは、用紙サイズを最も小さくすることや両面印刷を使用不可にすることにより、用紙サイズが大きい場合や両面印刷を使用する場合に比べて、紙詰まりの発生などの印刷不具合を抑制できる。
なお、最制限動作モードには、余白を最も広く設定した最大余白を示す印刷設定が規定されていてもよい。例えば、余白1〜5まで、番号の大きいほど余白を段階的に広くすることを示す印刷設定において、最制限動作モードには、最も余白を広く設定した余白5を示す印刷設定が規定されていてもよい。
ここで、余白は、狭いほど、印刷処理において、印刷すべき画像の端部が印刷範囲外に位置してしまい印刷できないなどの印刷品質の低下を引き起こしやすい。一方、余白は、広いほど、印刷処理において、印刷すべき画像の端部における印刷品質の低下を抑制できる。従って、最制限動作モードにおいて、最も余白を広く設定した余白5を示す印刷設定が規定されることで、印刷装置10では、印刷品質の低下を一層抑制できる。
また、印刷装置10では、インク情報が取得できず、かつ、ユーザからユーザインク情報が入力された場合、当該ユーザインク情報に基づいて、複数の制限動作モードの中から所定の制限動作モードを選定するとともに、所定の制限動作モードに対応する印刷設定を設定する。すなわち、制御値の許容範囲及び印刷機能の使用可否が制限された印刷設定を設定する。これにより、インク情報が取得できない汎用品であっても、ユーザによって入力されたユーザインク情報に基づいて、制御値の許容範囲及び印刷機能の使用可否を制限した印刷設定で印刷処理を実行できるため、印刷品質の低下を抑制した印刷処理を実行することも可能になる。
なお、上述した第1実施形態では、印刷装置10が、印刷済の用紙に後処理を行う後処理装置を備えていない場合を例に挙げて説明したが、これに限定されるものではなく、後処理装置を備えていてもよい。また、後処理装置としては、例えば、印刷済の印刷用紙Pを印刷ジョブのページ順にソートするソート処理装置、ソートした印刷用紙Pを綴じる綴じ処理装置、印刷済の印刷用紙Pを複数の折り線に沿って折り畳む折り畳み処理装置、印刷済の印刷用紙Pを折り畳むことによって封筒を成形するメーリング処理装置、複数の印刷用紙Pと別途印刷した印刷表紙とによってくるみ製本を作成する製本処理装置などが挙げられる。
また、上述のように、印刷装置10が後処理装置を備える際には、印刷設定部103は、ユーザインク情報が入力されなかった場合に、最制限動作モードを選定することで、後処理装置の使用を禁止する印刷設定に設定することが好ましい。かかる印刷装置10によれば、ユーザインク情報が入力されなかった場合、後処理装置の使用を禁止する印刷設定に設定するため、後処理装置による不具合が発生する可能性を回避して、より安定した印刷処理を実行できる。
[第2実施形態]
次いで、本発明の第2実施形態について説明する。本実施形態に係る印刷装置10では、過去に不具合が発生した印刷設定を不具合印刷設定として記憶しておき、以降の印刷処理における不具合の発生を抑制する。
具体的に、本実施形態に係る印刷装置10では、本体記憶部105が、ユーザインク情報と、ユーザインク情報に対応して実行された印刷処理において不具合が発生したときの印刷設定である不具合印刷設定と、を関連付けて記憶する。また、印刷設定部103は、受付部102でユーザインク情報を受け付けた際、当該ユーザインク情報が本体記憶部105に記憶されたユーザインク情報と同一である場合、不具合印刷設定と同一の印刷設定を設定不可にする。
以下に、本実施形態に係る印刷装置10について、具体的に説明する。初めに、印刷装置10が、印刷処理において不具合印刷設定を記憶する際の動作について説明する。図10には、不具合印刷設定を記憶する際の動作を示すフローチャートが示されている。なお、図10に示す動作は、図4のステップS3に示す印刷処理において実行される。
ステップS31において、印刷装置10では、印刷制御部104は、印刷ジョブと、印刷設定部103によって設定された印刷設定とに基づいて、印刷処理を開始する。
ステップS32において、印刷設定部103は、印刷処理中に、例えば、印刷用紙Pの紙詰まりなどの不具合が発生するか否かを検出する。なお、印刷設定部103において不具合が発生しない場合(ステップS32;No)、印刷制御部104は、印刷制御部104は、印刷ジョブの印刷を終了したか否かを判定する(ステップS36)。
ステップS33において、印刷設定部103は、不具合が発生したことを検出すると(ステップS32;Yes)、印刷処理に用いられている印刷設定を不具合印刷設定として特定するとともに、不具合印刷設定を設定する際に入力されたユーザインク情報を特定する。そして、印刷設定部103は、図11に示すように、ユーザインク情報と不具合印刷設定とを関連付けて本体記憶部105に記憶する。
ステップS34において、印刷設定部103は、印刷設定を変更する。具体的に、印刷設定部103は、不具合印刷設定を除外した印刷設定に変更する。例えば、不具合印刷設定及び印刷設定が印刷搬送速度を示す場合を例に挙げると、印刷設定部103は、不具合印刷設定によって示される印刷搬送速度(例えば、速度4)よりも、低い印刷搬送速度(例えば、3)を示す印刷設定に変更する。
ステップS35において、ユーザによって不具合が解消されると、印刷制御部104は、印刷設定部103によって変更された印刷設定に基づいて、印刷処理を再開する。
ステップS36において、印刷制御部104は、印刷ジョブの印刷を終了したか否かを判定し、終了していない場合(ステップS36;No)には、判定を繰り返す。一方で、印刷制御部104は、印刷ジョブの印刷を終了した場合(ステップS36;Yes)には、印刷処理を終了する。
次に、本実施形態に係る印刷装置10が、不具合印刷設定を参照して、印刷設定を設定する動作について説明する。図12には、かかる動作を示すフローチャートが示されている。なお、図12に示す動作は、図4のステップS28において実行される。
具体的に、ステップS280において、印刷設定部103が、受け付けたユーザインク情報に対応する制限動作モードを選定するとともに、選定した所定の制限動作モードに応じた印刷設定を設定する。なお、かかるステップS280の動作は、ステップS28の動作と同様である。
ステップS281において、印刷設定部103は、本体記憶部105を参照して、ステップS27において入力されたユーザインク情報と同一のユーザインク情報が本体記憶部105に記憶されているか否かを判定する。
ステップS282において、印刷設定部103は、入力されたユーザインク情報と同一のユーザインク情報が本体記憶部105に記憶されている場合(ステップS281;Yes)、ステップS280で選定した所定の制限動作モードに対応する印刷設定の中で、不具合印刷設定と同一の印刷設定を設定不可にする。
例えば、図11に示すように、不具合印刷設定が、「印刷搬送速度:5」、「印刷濃度:4」・・・などを示す場合、印刷設定部103は、「印刷搬送速度:5」、「印刷濃度:4」・・・などを除外した印刷設定を設定する。
そして、この後、印刷設定部103は、図4に示すステップS29の動作を行う。なお、ステップS29において、印刷設定部103は、図13に示すように、不具合印刷設定を下線部などによって示した印刷設定画面を表示させて、不具合のあったことをユーザに通知してもよい。
以上のように、本実施形態に係る印刷装置10によれば、印刷設定部103は、受付部102によって受け付けたユーザインク情報と不具合印刷設定に関連付けて記憶されたユーザインク情報とが同一である場合、不具合印刷設定と同一の印刷設定を設定不可にするため、不具合の再発を防止して、安定した印刷処理を実行できる。
[本発明のその他の実施形態]
次に、本発明のその他の実施例について説明する。上述した本発明の実施形態では、ステップS24において、印刷待機画面を表示するように構成されていたが、必ずしも表示しなくてもよい。また、ステップS29において、印刷設定画面を表示するように構成されていたが、必ずしも表示しなくてもよい。
上述した本発明の実施形態では、印刷制御部104は、印刷搬送速度と、インクの単位時間あたりの吐出回数とを関連づけた速度吐出回数テーブル(不図示)を参照して、印刷搬送速度に対応するインクの単位時間あたりの吐出回数を設定していたが、印刷設定部103が、印刷搬送速度を設定する際に、インクの単位時間あたりの吐出回数も設定してもよい。すなわち、インクの単位時間あたりの吐出回数も、印刷設定として設定してもよい。
本発明は上記実施の形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施の形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合せにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施の形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。