JP6481580B2 - カソードの製造方法 - Google Patents
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第1発明のカソードの製造方法は、カソード仕上機を用いて複数本の溝が形成された種板を有するカソードの製造方法であって、前記カソード仕上機は、種板を挟んで溝を形成する鍔部を備えた一対の溝付けローラを有する溝付けローラ対を備えた溝付け部と、該溝付け部の一対の溝付けローラ間の隙間を調整する隙間調整部と、前記一対の溝付けローラ間に供給される種板の厚さを測定する厚さ測定部と、を備えており、前記一対の溝付けローラ間の隙間が、基準板厚の種板に合わせた基準隙間に調整されており、前記厚さ測定部によって測定された種板の測定厚さが基準板厚よりも厚くなると、前記一対の溝付けローラの間の隙間を前記基準隙間よりも大きくし、種板の測定厚さが基準板厚よりも薄くなると、前記一対の溝付けローラの間の隙間を前記基準隙間よりも小さくし、種板の測定厚さに対する前記一対の溝付けローラ間の隙間の変化率を、種板の測定厚さが基準板厚よりも厚い場合には、種板の測定厚さが基準板厚よりも薄い場合よりも小さくなるように、補正係数を用いて調整することを特徴とする。
第2発明のカソードの製造方法は、第1発明において、種板の基準板厚が0.75mmであり、前記一対の溝付けローラの間の隙間を、種板の測定厚さが基準板厚よりも厚い場合には、基準板厚の種板に合わせて調整された隙間に、基準板厚と測定厚さの差に対して0.8〜1.2の補正係数を乗じて得られる補正値を加えた量に調整し、種板の測定厚さが基準板厚よりも薄い場合には、基準板厚の種板に合わせて調整された隙間から、基準板厚と測定厚さの差に対して1.5〜2.0の補正係数を乗じて得られる補正値を除した量に調整することを特徴とする。
第3発明のカソードの製造方法は、第1または第2発明において、前記溝付け部の溝付けローラ対における一対の溝付けローラは、前記種板に複数本の溝を同時に形成する複数の鍔部を備えており、前記種板に形成される隣接する一対の溝間の部分が該種板において吊り手が取り付けられる部分となり、かつ、吊り手を挟む一対の溝が同時に形成されるように、前記一対の溝付けローラに設けられていることを特徴とする。
第3発明のカソードの製造方法は、第1、第2または第3発明において、前記一対の溝付けローラに設けられた鍔部は、隣接する溝を同時かつ両者が互いに逆方向に凹むように形成し、各溝付けローラ対における一対の溝付けローラは、前記種板において、他の溝付けローラ対によって形成された溝と異なる位置に溝を形成することを特徴とする。
第5発明のカソードの製造方法は、第1から第4発明のいずれかにおいて、前記種板に形成される溝が、該種板の幅方向の中央から側端縁に向かって順次形成されることを特徴とする。
なお、本明細書において「隣接する溝」とは、種板の幅方向の長さに比べて両溝間の距離が十分に小さい溝を意味している。具体的には、両溝間の距離が種板の幅の半分の長さよりも短い場合が、本明細書における「隣接する溝」に該当する。
第1発明によれば、厚さ測定部によって測定された種板の厚さに応じて、隙間調整部によって溝付け部の一対の溝付けローラ間の隙間を調整する。しかも、種板が基準板厚よりも厚くなるほど一対の溝付けローラ間の隙間を大きくし、種板が基準板厚よりも薄くなるほど一対の溝付けローラ間の隙間を小さくする。したがって、種板の厚さに適した力を加えて種板に溝を形成することができるので、製造されたカソードのカソード歪を小さくすることができる。しかも、ローラ間の隙間の変化率を調整する補正係数を、基準板厚に対して種板の測定厚さが厚いか薄いかによって異なるものとしているので、種板が厚くなっても、一対の溝付けローラ間の隙間が過大にならないので、カソード歪を小さくすることができる。
第2発明によれば、種板が厚くなっても、一対の溝付けローラ間の隙間が過大にならないので、カソード歪を小さくすることができる。
第3発明によれば、吊り手の両側に位置する一対の溝を同一の溝付けローラ対で形成するので、カソード歪を小さくすることができる。
第4発明によれば、隣接する一対の溝を同時かつ逆方向に凹むように形成できるので、溝を形成する際の変形を相殺することができる。カソードの種板のそりや曲がりを抑制しかつ幅方向の凹凸を小さくすることができるので、カソード歪を抑制することができる。しかも、各溝には一回しか力が加わらないので、同時に形成された溝の曲げ量等を同じ状態にできる。
第5発明によれば、種板への溝の形成を種板の中央部から順次両端縁に向かって形成できるので、種板に溝を付けた際に発生する応力が中央部に残留することを防ぐことができる。すると、残留応力に起因する成形後の種板の変形を抑制できる。
まず、本発明のカソードの製造方法によって製造されるカソードCの概略を説明する。
図3に示すように、カソードCは、種板Sを吊り手shでカソードビームBから吊り下げたものである。種板Sは、例えば、縦幅が約1000〜1150mm、横幅が約1000〜1150mm、厚さが約0.6〜1.0mmの金属板である。電気銅の製造に使用される場合には、種板Sには、純度が99.99%の電気銅が使用される。
つぎに、上述したカソードCを製造するカソード仕上機1の一例を説明する。
なお、カソード仕上機1は、上記以外にも、種板の裁断、表面付着物の除去、カソード歪の測定などを行う機能を有していてもよい。
なお、高純度の金属板を裁断して所定の寸法の種板を形成する方法は、バリが少なく平滑な板が得られる方法であればよく、とくに限定されない。
厚さ測定部は、内部応力除去部2へ供給する種板Sの厚さを測定するものである。厚さ測定部が種板Sの厚さを測定する方法はとくに限定されない。例えば、ノギスによって種板Sの厚さを直接測定してもよいし、超音波等を使用した機器によって測定してもよい。また、レーザー光や放射線等を使用した非接触の厚さ測定機器によって種板Sの厚さを測定してもよい。レーザー光や放射線等を使用した非接触の厚さ測定機器によって種板Sの厚さを測定する場合には、種板Sの厚さを直接測定することはできないが、機器から種板Sの表面までの距離から種板Sの厚さを求めることができる。
なお、後述する隙間調整部においてクリアランスCLを調整に利用される種板Sの厚さは、厚さ測定部によって測定された各種板Sにおける所定の位置の測定値をそのまま使用してもよいし、各種板Sにおける所定の数点を測定したものの平均値を使用してもよい。また、各種板Sにおける所定の区間の厚さを測定し、その測定値の平均値を使用してもよい。
内部応力除去部2は、ローラによって種板Sを挟んで、種板Sの内部応力を除去するものである。具体的には、内部応力除去部は、ローラーレベラーを備えている。ローラーレベラーは、種板Sに直接接触するワークローラーを備えたものである。ワークローラーは、上下に千鳥状に配置されており、上下ワークローラー間に種板Sが送り込まれる。すると、種板Sは多数のワークローラーで繰り返し板厚方向に曲げられるので、搬送方向における種板Sの反りや凹凸幅を小さくすることができる。なお、搬送方向は、種板Sの上下方向と一致している。
なお、ローラーレベラーは、ワークローラーを支えるバックアップローラーを備えていることが望ましい。
溝付け部10は、内部応力除去部によって内部応力を除去された種板Sに溝を形成するものである。具体的には、内部応力除去部における種板Sの搬送方向と平行な複数本の溝gを種板Sに形成する。この溝付け部10は、図4(A)に示すように、3対の溝付けローラ対11〜13を備えている。この3対の溝付けローラ対11〜13は、いずれも上下一対の溝付けローラ11A〜13Bを備えている。
そして、隙間調整部は、上述した厚さ測定部によって測定された種板Sの厚さに基づいてクリアランスCLを調整する機能も有している。この隙間調整部が種板Sの厚さに基づいてクリアランスCLを調整する方法については後述する。
吊り手形成部は、溝付け部10によって溝がつけられた種板Sに吊り手shを取り付けるものである。具体的には、帯状の板を、輪状になるようにその両端を種板Sの両面に固定して吊り手shが形成される。例えば、一対の吊り手sh,shを取り付ける場合には、図3に示すような位置に取り付けられる。
カソードビーム取り付け部は、吊り手shにカソードビームBを取り付けるものである。具体的には、輪状になっている吊り手sh(例えば、一対の吊り手sh,sh)にカソードビームBを挿通する。このように、カソードビームBを吊り手shに取り付ければ、カソードCが完成する(図3参照)。
以下では、溝付け部10の隙間調整部よるクリアランスCL調整について詳細に説明する。
このように、基準クリアランスを基準板厚の種板Sに対応した値に設定することは、さまざまな種板Sに対応した値に設定するよりも、設定時の板厚のばらつきの影響を受けにくく、信頼性の高い基準クリアランスが得られる利点がある。
なお、種板Sの基準板厚には、種板Sの製造条件から決まる標準的な種板Sの厚みを用いるのが好ましい。例えば、電解製錬による電気銅の製造に使用されるカソードの種板Sを製造する場合には、0.5〜1.0mmの範囲における任意の値を種板Sの基準板厚とすることができる。
また、基準板厚の種板Sに対して適切な力で溝が形成されているか否かは、基準板厚の種板Sを使用して形成されるカソードのカソード歪から判断することができる。具体的には、カソード歪が所定の値よりも小さければ、適切な力で種板Sに溝を形成できていると判断できる。つまり、基準板厚の種板Sに対する基準クリアランスが適切な値に設定されていると判断できる。例えば、電解製錬による電気銅の製造に使用されるカソードの種板S(基準板厚が0.5〜1.0mm)の場合であれば、カソード歪が15mm以下、より好ましくは10mm以下となっていれば、適切な力で種板Sに溝を形成できていると判断できる。
(クリアランス補正式)
クリアランス=基準クリアランス+(測定した板厚 − 基準板厚)×補正係数
以下では、溝付け部10の溝付けローラ対11〜13を詳細に説明する。
まず、溝付け部10の3対の溝付けローラ対11〜13は、種板Sが搬送される方向における上流側から、溝付けローラ対11、溝付けローラ対12、溝付けローラ対13、の順で配設されている(図2(A)参照)。
種板Sに形成する隣接する溝gの間隔は、種板Sの幅方向の中央部分は広くして、幅方向の端部は狭くすることが望ましい。種板Sの幅方向の端部は、通電中に変形しやすい。しかし、溝g間隔を狭くしておけば、変形を抑制することができる。例えば、種板Sの幅方向の端部における溝gの間隔を、種板Sの幅方向の中央部分の半分程度にしておけば、通電中にカソードCの種板Sの曲がりやねじれを適確に抑制できる。
上記例では、種板Sに形成される溝gは、一つの溝gが一つの溝付けローラ対によって形成される場合を説明したが、複数の溝付けローラ対によって種板Sの同じ位置を複数回挟んで一つの溝gを成形してもよい。つまり、一つの溝gを複数の溝付けローラ対によって形成してもよい。しかし、一つの溝gを一つの溝付けローラ対だけで形成するようにした場合、各溝gには一回しか力が加わらないので、溝gに加わる力を一定に保つことが可能になる。すると、形成される溝gの溝深さや溝幅、溝の周囲の傾きなどのばらつきを抑えることができる。
上記例では、溝付けローラ対11〜13によって、種板Sの幅方向の中央から側端縁に向かって順次溝gが形成される場合を説明した。このように複数の溝gを種板Sの中央部から順次両端縁に向かって形成すれば、種板Sに溝gを付けた際に発生する応力が中央部に残留することを防ぐことができる。すると、残留応力に起因する成形後の種板Sの変形を抑制できる。しかし、溝付けローラ対11〜13により種板Sに発生する応力が小さい場合などのように、残留応力に起因する成形後の種板Sの変形が小さいと考えられる場合には、溝付けローラ対11〜13によって溝gを形成する順番はとくに限定されない。
上記例では、3対の溝付けローラ対11〜13によって溝gを形成する場合を説明した。溝付けローラ対は、一対でもよいし、4対以上あってもよい。形成する溝gの数や種板Sの性質に合わせて、カソード歪が小さくなるように適宜設定すればよい。なお、溝付けローラ対を複数対設ければ、各溝付けローラ対が種板Sを挟む力を、溝毎に微調整することも可能となるので好ましい。
実験は、図4(A)に示す構造のカソード仕上機を使用し、上述したクリアランス補正式を使用してクリアランスを調整しながら、カソードを形成し、そのカソードのカソード歪を確認した。
吊り手も、純度99.99%の電気銅によって形成された板を使用した。板の寸法は、縦300mm×横100mm×厚さ0.6〜1.0mmの帯状のものを使用した。
なお、カソードビームは、30×30×1400mmのものを使用した。
実施例1では、図1に示す溝付けローラ対(3本の溝付けローラ対)を使用した。この溝付けローラ対では、鍔部は、3対の溝付けローラ対によって形成される溝が、種板の中央から外側へ向かって順次溝を形成するように溝付けローラ対に配置されている。しかも、各溝付けローラ対において、種板の中央に対して略線対称な位置に配置され、隣接する溝を形成するように複数の鍔部が並んで配置されている。
なお、クリアランス補正式における各値は以下の通りである。
また、種板Sの板厚は、内部応力除去部に供給される前に、レーザー距離計によって測定した。
2)基準クリアランス:1.50mm
3)補正係数:
測定した板厚が基準種板厚さ未満の場合は1.50
測定した板厚が基準種板厚さ以上の場合は1.00
例えば、測定した板厚が0.80mmの種板を処理する場合には、クリアランスは1.55mm(1.50mm+(0.80mm−0.75mm)×1.00=1.55mm)となる。
また、測定した板厚が0.60mmの種板を処理する場合には、クリアランス1.275mm(1.50mm+(0.60mm−0.75mm)×1.50=1.275mm)となる。
実施例1に対して、補正係数を種板の厚さにかかわらず1.00とした点以外は、実施例1と同様の方法でカソードを100枚製造した。
得られたカソードについて、カソード歪Xを測定したところ、100枚のカソード歪Xの平均値は13.5mmであった。
実施例1に対して、種板の厚さにかかわらずクリアランスを1.50mmとした(つまり、補正係数を0.00とした)点と溝付けローラRが図6の形状である点(つまり、鍔部の配置)を変更して、他は実施例1と同様の方法でカソードを100枚製造した。
得られたカソードについて、カソード歪Xを測定したところ、100枚のカソード歪Xの平均値は20.5mmであった。
つまり、実施例1、2のように、種板の厚さが大きいほど、種板の厚さに対するクリアランスの変化幅を小さくすることによって、カソード歪Xを効果的に抑制できることが確認された。
2 内部応力除去部
10 溝付け部
11 溝付けローラ
12 溝付けローラ
13 溝付けローラ
15 鍔部
16 鍔部
17 鍔部
CL クリアランス
C カソード
S 種板
B カソードビーム
sh 吊り手
X カソード歪
g 溝
θ 溝の周囲の曲がり角度
Claims (5)
- カソード仕上機を用いて複数本の溝が形成された種板を有するカソードの製造方法であって、
前記カソード仕上機は、
種板を挟んで溝を形成する鍔部を備えた一対の溝付けローラを有する溝付けローラ対を備えた溝付け部と、
該溝付け部の一対の溝付けローラ間の隙間を調整する隙間調整部と、
前記一対の溝付けローラ間に供給される種板の厚さを測定する厚さ測定部と、を備えており、
前記一対の溝付けローラ間の隙間が、基準板厚の種板に合わせた基準隙間に調整されており、
前記厚さ測定部によって測定された種板の測定厚さが基準板厚よりも厚くなると、前記一対の溝付けローラの間の隙間を前記基準隙間よりも大きくし、
種板の測定厚さが基準板厚よりも薄くなると、前記一対の溝付けローラの間の隙間を前記基準隙間よりも小さくし、
種板の測定厚さに対する前記一対の溝付けローラ間の隙間の変化率を、種板の測定厚さが基準板厚よりも厚い場合には、種板の測定厚さが基準板厚よりも薄い場合よりも小さくなるように、補正係数を用いて調整する
ことを特徴とするカソードの製造方法。 - 種板の基準板厚が0.75mmであり、
前記一対の溝付けローラの間の隙間を、
種板の測定厚さが基準板厚よりも厚い場合には、基準板厚の種板に合わせて調整された隙間に、基準板厚と測定厚さの差に対して0.8〜1.2の補正係数を乗じて得られる補正値を加えた量に調整し、
種板の測定厚さが基準板厚よりも薄い場合には、基準板厚の種板に合わせて調整された隙間から、基準板厚と測定厚さの差に対して1.5〜2.0の補正係数を乗じて得られる補正値を除した量に調整する
ことを特徴とする請求項1記載のカソードの製造方法。 - 前記溝付け部の溝付けローラ対における一対の溝付けローラは、前記種板に複数本の溝を同時に形成する複数の鍔部を備えており、
前記種板に形成される隣接する一対の溝間の部分が該種板において吊り手が取り付けられる部分となり、かつ、吊り手を挟む一対の溝が同時に形成されるように、前記一対の溝付けローラに設けられている、
ことを特徴とする請求項1または2記載のカソードの製造方法。 - 前記一対の溝付けローラに設けられた鍔部は、
隣接する溝を同時かつ両者が互いに逆方向に凹むように形成し、
各溝付けローラ対における一対の溝付けローラは、
前記種板において、他の溝付けローラ対によって形成された溝と異なる位置に溝を形成する
ことを特徴とする請求項1、2または3記載のカソードの製造方法。 - 前記種板に形成される溝が、該種板の幅方向の中央から側端縁に向かって順次形成される
ことを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載のカソードの製造方法。
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