JP6481023B2 - 固体支持体をコーティングする方法 - Google Patents

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Description

本発明は、細胞培養用途に用いるのに適した固体支持体をコーティングする方法に関する。当該方法は、キャリアタンパク質であって、これに付着した、またはこのアミノ酸配列の一部として、少なくとも1つの細胞機能調節ペプチド配列を含むキャリアタンパク質の溶液を、低くとも50℃に加熱して、2から1000個のタンパク質分子を含む可溶性キャリアタンパク質凝集体の形成をもたらす条件下でインキュベートする工程を含む。続いて、タンパク質凝集体を、支持体に対する凝集体の非共有結合性の吸着を可能にする条件下で、固体支持体と接触させる。本発明はまた、コーティングされた固体支持体であって、その表面上に、上記キャリアタンパク質凝集体の少なくとも1つが非共有結合的に吸着した、コーティングされた固体支持体に関する。
インビトロ細胞培養は一般的に、プラスチック製の細胞培養容器、例えばポリスチレンフラスコまたはポリスチレン皿において実行される。そのようなフラスコまたは皿は、37℃以上のルーチン的に用いられる培養温度にて非常に安定しており、さらに透明であり、かつ製造が容易である。しかしながら、細胞培養に現在利用可能な細胞または細胞株の殆どは、疎水性のプラスチック表面に対する十分な付着を示さない。したがって、改質されていないプラスチック表面上で細胞を増殖することによって達成される結果は、多くの場合、不十分である。
プラスチック製の細胞培養フラスコまたは細胞培養皿に対する不十分な細胞付着に関する問題を克服するために、これらの部材の表面をより親水性にするいくつかの方法が、先行技術において提唱された。例えば、表面上に反応性親水基を提供するプラズマ処理が実行された。しかしながら、この技術によって獲得可能な表面改質製品は、特定の用途、例えば幹細胞または高度に分化した細胞の培養に適していないことが証明されている。また、プラズマ処理による表面の改質は高価であり、かつ煩雑である。したがって、表面が改質された培養容器を提供する代替法が開発された。
細胞外マトリックス(ECM)の構成要素の使用が、生存能力のある細胞に結合する表面の能力に非常に影響を与え得ることが、細胞培養の分野において早くから認識されてきた。インビボで、細胞は互いと、そしてその環境と、主に、ECMの一部を形成する構造タンパク質の結合を介して、相互作用している。ECMと細胞の接着性相互作用は、細胞増殖、細胞分化、細胞移動、および組織形成が挙げられるいくつかの重要な細胞活性に影響を与えることが見出された。実際、ECMは、形態形成、血管形成、創傷治癒、および腫瘍転移のようないくつかの複雑な生理学的プロセスに関与する。
ECMは、組成が異なる三次元分子複合体であり、生物活性タンパク質、例えばラミニンおよびフィブロネクチン、糖タンパク質、ヒアルロン酸、エラスチン、プロテオグリカン、ならびにコラーゲンが挙げられる。細胞は、その表面上に発現される特定の表面受容体の結合を介して、ECMと相互作用する。ECMの構成要素と相互作用することが知られている最も顕著な細胞表面受容体は、インテグリンである。脊椎動物において、24のインテグリンサブタイプが見出されており、それぞれが、異なるリガンド特異性を示す。これらのインテグリンサブタイプは、非特許文献1において、そして非特許文献2において要約されている。一部のインテグリンの、ECMターゲット構成要素への結合は、ECM分子中の特定の結合配列によってもたらされる。多くのマトリックスタンパク質において、例えばフィブロネクチン、ラミニン、およびオステオポンチンにおいて同定されている顕著な一結合配列が、ペプチド配列Arg−Gly−Asp(RGD)であり、これは非特許文献3によって記載されている。フラスコまたはマイクロタイタープレートのような支持体部材に対する、培養された細胞の付着を高めるために、先行技術において、ECMに由来する材料をそのような部材の表面に付与することが考えられてきた。
第1のアプローチにおいて、培養容器の表面に、完全ECM材料を提供することが提唱された。小腸、胃、または膀胱組織に由来する粘膜下組織が、ECMの源として用いられた。例えば、特許文献1、特許文献2、特許文献3、および特許文献4参照。細胞培養の分野において広く用いられており、かつ細胞培養用途用にCorning Life Sciencesのようなメーカーから入手可能なゼラチン状のタンパク質混合物、Matrigel(商標)が、完全ECM材料に適した別の源である。Matrigel(商標)は、マウスEngelbreth−Holm−Swarm(EHS)肉腫によって分泌され、過剰の増殖因子、および他の、培養される細胞にとって自然な、生物学的に適合性のある環境を形成する、生物学的に活性のある分子を含有する。しかしながら、Matrigel(商標)のような、完全ECM材料でコーティングされた部材は、明確な特性がない。というのも、様々なECM構成要素のどれが混合物の一部であり、かつコーティング後にアクセス可能であるかが未知のままであるからである。また、全ECM抽出物を含有する表面上での細胞培養は、識別可能なECM構成要素への細胞の結合によって開始される細胞シグナル伝達カスケードを厳密に制御することが可能でないという事実のために、問題があることが分かった。
これらの問題を鑑みて、個々のECMタンパク質またはECMタンパク質フラグメントでコーティングされた、より修正された表面を提供することが考えられた。しかしながら、完全長ECMタンパク質の生産は高価であり、かつ技術的に扱いにくい。これらの問題を克服するために、細胞結合配列モチーフ、例えばRGDモチーフを有するより小さなペプチドを支持体表面上に付与して、細胞付着を向上させることが示唆された。多数のペプチドが容易に合成され得、これらは付与条件下で比較的安定している。しかしながら、完全長タンパク質およびペプチドのコーティングは、両方ともコーティングされた産物の安定性が不十分である。支持体部材の表面上にタンパク質またはペプチドを固定する従来の技術は、表面に対する、タンパク質またはペプチドの非共有結合性の吸着に依存する。しかしながら、残念なことに、細胞培養条件下での、特に37℃でのインキュベーション中のタンパク質またはペプチドの脱着が、支持体からの培養細胞の剥離をもたらし、これが最終的に、当該細胞におけるプログラム細胞死(アポトーシス)の誘導の原因となる虞があることが見出された。
タンパク質脱着の問題を防ぐ一方法が、支持体材料の表面上のヒドロキシル基、アミン基、または他の反応基に対するタンパク質またはペプチドの共有結合性化学固定を用いるものである。直接的な共有結合が、官能基、例えばアミン基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、またはアルデヒド基の生成を実現するトレシルクロリド、グルタルアルデヒド、またはシアノボロヒドリド等の化学物質を用いた表面活性化によって、達成され得る。続いて、これらの基が、タンパク質またはペプチド中の官能基と反応して、共有結合がもたらされる。そのような結合法は、例えば特許文献5、特許文献6、および特許文献7に広く記載されている。
米国特許第5281422号明細書 米国特許第5554389号明細書 米国特許第6099567号明細書 米国特許第6206931号明細書 米国特許第5278063号明細書 米国特許出願公開第2005/0059140号明細書 米国特許第7399630号明細書
Barczykら、2010(Cell Tissue Res 339,269−280) Yurchenco & Patton 2009(Curr Pharma Des.15,1277−1294) Pierschbacher and Ruoslahti,J.Biol Chem 1987,262,17294−17298
しかしながら、培養された細胞は、化合物の存在に非常に敏感である。反応性化学物質の量が非常に少なくても、細胞の増殖または付着をかなり妨げ、無効にすらする虞がある。したがって、タンパク質またはペプチドの、細胞培養表面に対する化学固定は、所望されない。
上記のことから、細胞培養部材、例えば容器、フラスコ、プレート、および皿の表面上でのタンパク質またはペプチドの安定した固定を実現する新しい方法が必要とされていることが分かる。細胞培養表面に塗布されるタンパク質コーティングまたはペプチドコーティングに対する要求は、非常に高い。コーティングは安定するべきであり、固定されたタンパク質またはペプチドは、37℃で1日から10日の期間インキュベートされる場合に、全く放出されないか、非常に少量の放出とするべきである。また、細胞培養用途に用いるには、表面は通常、無菌である必要がある。本発明は、これらの要求を満たし、かつ付加的な利点も提供する新規の方法を提供する。
本発明は、キャリアタンパク質で固体支持部材をコーティングする方法を提供する。当該方法は、迅速であり、非常に再現性があり、かつ細胞培養消耗品の既存の生産プロセスへの実施が容易である。キャリアタンパク質中に細胞機能調節ペプチド配列を組み込むことによって、合成表面を修正することが可能であり、この表面は、当該表面上で培養される細胞の特定機能を、例えば接着、増殖、移動、および/または分化を促進することによって、調節することができる。本明細書中に開示される方法は、細胞培養用途に用いるのに非常に適した産物を提供する。というのも、当該方法は、安定し、かつ均一なコーティングをもたらすことができるからである。また、当該方法は、特定用途のために特別に修正され得る細胞機能調節ペプチド配列の多様性によって特徴付けられるコーティングの生産を可能にする。最後に、本発明の方法は、コーティングされた表面の下流の用途に干渉する虞があるいかなる反応性化学物質も用いない。
第1の態様において、本発明は、細胞培養用途に用いるのに適した固体支持体をコーティングする方法に関する。本発明の方法は、以下の工程を含む:
(a)少なくとも1つのキャリアタンパク質であって、これに付着した、またはこのアミノ酸配列の一部として、少なくとも1つの細胞機能調節ペプチド配列を含むキャリアタンパク質の溶液を調製する工程;
(b)該溶液を、低くとも50℃に加熱して、2から1000個のタンパク質分子を含む可溶性のキャリアタンパク質凝集体の形成をもたらす条件下で、該溶液をインキュベートする工程;
(c)キャリアタンパク質凝集体を、支持体に対する凝集体の非共有結合性の吸着を可能にする条件下で、固体支持体と接触させる工程;
(d)場合によっては、結合していないキャリアタンパク質およびキャリアタンパク質凝集体を除去するために、固体支持体を洗浄する工程;
これらによって、表面上に複数の細胞機能調節ペプチド配列を含む固体支持体が提供される。本発明の方法は、好ましくは、支持部材にキャリアタンパク質を結合させるための反応性化学物質の使用を含まない。
ゆえに、本発明の方法は、細胞培養用途に用いるのに適した固体支持部材上にタンパク質またはペプチド含有材料のコーティングを提供することに関する。支持部材は、いかなる材料であってもよく、ガラス表面またはプラスチック表面のコーティングが本明細書中で特に好ましい。本発明の方法を適用することによってコーティングされる固体支持体は、細胞培養用途において一般的に用いられる製品、特に細胞培養容器、例えば細胞培養フラスコ、ローラーボトル、培養プレート、チューブ、マイクロタイタープレート、膜、または培養皿の表面であってよい。本発明の好ましい実施形態において、固体支持体は、6、12、24、または48ウェルを有する細胞培養プレートである。これらのプレートは、いくつかの異なるメーカーから入手可能であり、例えばFisher Scientificによって商標名Corning(商標)で販売されているプレートがある。別の好ましい実施形態において、固体支持体は、接着して増殖する細胞株を培養するためのバイオ発酵槽内の担体としてルーチン的に用いられる小さなプラスチック製のディスクまたはビーズであってよい。ポリプロピレン製のそのようなディスクは、例えば、Eppendorf AGから商標名Fibra−Cel(商標)で入手可能である。更なる実施形態において、固体支持体は、接着して増殖する細胞株を培養するためのバイオ発酵槽内の担体として用いられるより大きなキャリアプレートであってよい。本発明のコーティング法が行われ得る別の固体対象物が、患者への移植前に細胞を播種させる医療用インプラントである。タンパク質材料でコーティングされることになる固体支持体の表面は、親水性であっても疎水性であってもよく、このことは、多種多様な部材に対し、細胞が播種される表面を生じさせる本発明の方法が行われ得ることを意味する。当該方法は、後続の細胞増殖に影響を及ぼす虞がある、表面のあらゆる種類の攻撃的な化学処理を回避する。
本発明は、細胞機能調節ペプチド配列、例えば細胞付着を実現するペプチド配列をキャリアタンパク質に結合することによって、または代わりにこれを、前記キャリアタンパク質のアミノ酸配列中への組換え法によって含めることによって、固体支持体に、例えば細胞培養容器に、当該細胞機能調節ペプチド配列が吸着され得るという見識にある程度基づいている。その後、キャリアタンパク質は加熱されて、部分的な変性が、そして可溶性のタンパク質凝集体の形成が誘導されて、この凝集体が支持体の表面に吸着され得る。加熱して直ぐに、凝集体内のキャリアタンパク質は部分的に変性するが、可溶性のままであるので、コーティングされることになる表面上でタンパク質凝集体の均一な分布が可能となる。対照的に、完全に変性したタンパク質であれば、析出タンパク質パッチが形成されることによって、タンパク質の均一な分布というよりもむしろ、不所望の局所的蓄積を招くことになるであろう。本発明に従えば、支持部材上にキャリアタンパク質をコーティングすると、細胞の均一な分布に至り、細胞は続いて支持体の表面上で培養される。細胞の均一な分布は、いくつかの細胞培養用途において達成されるべき重要な目的である。表面上での細胞の均一な分布を評価する方法が、例えば、Amentaら(1998),Proceedings of the 25th Annual Conference on Computer Graphics and Interactive Techniques,415−421に記載されている。
本発明の方法に用いられるキャリアタンパク質は、いかなるサイズであってもよいが、キャリアタンパク質は、少なくとも20,000またはそれ以上の分子量を有することが好ましい。本発明のさらにより好ましい実施形態において、キャリアタンパク質は、少なくとも30,000、40,000、50,000、60,000、70,000、80,000、90,000、100,000またはそれ以上のサイズを有する。少なくとも50,000のキャリアタンパク質のサイズが、本発明の方法に用いるのに特に好ましい。本発明の方法において利用されてよい適切なキャリアタンパク質は、アルブミン、例えばヒト血清アルブミンまたはウシ血清アルブミン、および卵アルブミンを含む。好ましい実施形態において、本発明の方法に用いられるキャリアタンパク質は、ECM中に本来存在しないタンパク質であり、例えば、アルブミン、より好ましくはウシもしくはヒト血清アルブミン、またはそのフラグメントである。
本発明の方法に用いられるキャリアタンパク質は、1つまたは複数の細胞機能調節ペプチド配列を含むように改変された。本発明に従えば、キャリアタンパク質は、細胞機能調節ペプチドに適した環境を提供するのに用いられる。細胞機能調節ペプチド配列は、化学結合によって、または組換え技術によって、キャリアタンパク質に結合することができる。好ましい実施形態に従えば、キャリアタンパク質は、そのアミノ酸配列の一部として1つまたは複数の細胞機能調節ペプチドを含む組換えタンパク質である。さらにより好ましい実施形態に従えば、キャリアタンパク質は、1つまたは複数の細胞機能調節ペプチドが挿入された組換えアルブミンタンパク質、例えばウシまたはヒト血清アルブミンである。
別の実施形態に従えば、キャリアタンパク質は、1つ以上、2つ以上、3つ以上、4つ以上、5つ以上、またはさらには10以上の細胞機能調節ペプチドを含む。さらに別の実施形態において、キャリアタンパク質は、1つの細胞機能調節ペプチドを含む。
細胞機能調節ペプチドは、キャリアタンパク質に結合され、またはその一次構造中に一体化されるので、熱誘導凝集体形成と同時に、様々なキャリアタンパク質上に存在する細胞機能調節ペプチドが、細胞機能調節配列の分子モザイクを形成する。異なるペプチドまたは同じペプチドからなるそのようなアレイは、細胞の表面上の多数の受容体または結合分子との強い相互作用を提供する。ゆえに、本発明の好ましい実施形態において、細胞機能調節ペプチドが、キャリアタンパク質によって含まれることにより、凝集体の様々なキャリアタンパク質上またはキャリアタンパク質中に存在する細胞機能調節ペプチドの分子モザイクが形成される。
1つのキャリアタンパク質あたり2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、またはそれ以上の同じ、または異なる細胞機能調節ペプチドの存在が、本発明に従えば、特に好ましい。
細胞結合に利用可能であるペプチドの分子モザイクの形態の、同じ凝集体内における多数の、同じ、または異なる細胞機能調節ペプチド配列は、細胞培養用途にとって特に興味深い。培養されることになる細胞は、その表面上に、増殖中に細胞が付着する表面と相互作用する多数の受容体分子を有する。本発明の方法によってコーティングされた部材の表面上の凝集体によって提供される、細胞機能調節ペプチドの分子モザイクは、当該細胞機能調節ペプチドが、凝集体に付着した細胞の機能を調整するために十分に高い密度で提示されることを確実にする。
細胞機能調節ペプチド配列は、天然キャリアタンパク質のアミノ酸を、細胞機能調節ペプチドが起源する天然タンパク質内の三次構造の同じ、または類似する位置内に位置決めされている細胞機能調節ペプチドのアミノ酸と置換することによって、キャリアタンパク質中に組み込まれ得る。1つまたは複数の細胞機能調節ペプチドを含むキャリアタンパク質の高次構造は、コンピュータープログラム、例えばSwiss−PdbViewer、ICM−Browser、Phyre、Modeller、HHpred、Robetta、またはBioInfoBankサーバによって算出かつ視覚化され得る。
本発明の文脈において用いられる用語「細胞機能調節ペプチド」は、細胞への結合時に、1つまたは複数の細胞機能、例えば細胞増殖、細胞分化、細胞移動、細胞活性化、細胞エージング、または細胞アポトーシスを調整することができるあらゆるペプチド配列を指す。また、この用語に含まれるのは、そのようなペプチドでコーティングされている表面への細胞の付着を実現するペプチドである。特定の細胞機能を調節することができる多数のペプチド配列が、当該技術において知られている。支持体上にコーティングされることになる細胞機能調節ペプチドの選択、または細胞機能調節ペプチドの組合せは、コーティングされた支持部材の、担体上での培養細胞の接着、増殖、移動、または分化を促進する能力を決定することとなる。また、用語「ペプチド」の意味の範囲内に含まれるのが、ペプチド模擬物、例えば1つまたは複数の非天然アミノ酸を含有する模擬物である。
本発明の好ましい実施形態に従えば、支持体は、1つまたは複数のペプチド配列を含むキャリアタンパク質でコーティングされ、前者は、細胞アンカーレージ、すなわち、ペプチド配列の結合を介した、コーティングされた表面に対する細胞の付着を実現する。好ましくは、コーティングされた支持体は、配列番号1〜26に表されるペプチド配列の1つまたは複数を含む少なくとも1つのキャリアタンパク質を含む。これらの配列は、ECM構成要素、例えばラミニン、フィブロネクチン、およびコラーゲンに由来する細胞結合モチーフを含有する。本発明の特に好ましい実施形態に従えば、固体支持体は、細胞アンカーレージを提供し、かつRGD配列モチーフを含む1つまたは複数のペプチド配列を含む少なくとも1つのキャリアタンパク質でコーティングされる。RGD配列は好ましくは、キャリアタンパク質のループ構造の一部である。別の実施形態において、細胞アンカーレージを提供するペプチド配列は、環状ペプチドである。本発明の特に好ましい実施形態に従えば、固体支持体は、様々なキャリアタンパク質でコーティングされ、これらはそれぞれ、細胞アンカーレージを提供し、かつRGD配列モチーフを含む異なるペプチド配列を含む。
別の好ましい実施形態において、支持体は、細胞の増殖および分化を調節する1つまたは複数のペプチド配列を含む少なくとも1つのキャリアタンパク質でコーティングされる。増殖因子活性を有することが報告されているペプチド配列が、配列番号27〜56に示されている。配列番号27〜56の配列は、様々な増殖因子分子、とりわけ、塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGF)、トランスフォーミング増殖因子α(TGF−α)、神経増殖因子(NGF)、オステオポンチン、上皮増殖因子(EGF)、血管内皮増殖因子(VEGF)、および血小板由来増殖因子(PDGF)から知られるモチーフを含有する。
本発明に従えば、番号1〜56に開示されるペプチドは全て、線状型で用いられても環状型で用いられてもよい(すなわち、環状ペプチドが、そのキャリアタンパク質へのペプチドの化学結合に基づいた実施形態に用いられてよい)。したがって、配列表が環状ペプチドに言及する場合、この言及は、このペプチドの線状型にも言及し、その逆も同じであると理解されるべきである。
別の好ましい実施形態において、支持体は、骨形成細胞の増殖および分化を促進するのに有効であることが見出されている1つまたは複数のペプチド配列を含む少なくとも1つのキャリアタンパク質でコーティングされる。これらのペプチドは、配列番号1、13、15、22、および49に示される配列を含む。別の好ましい実施形態において、支持体は、ニューロン細胞の増殖および分化を促進するのに有効であることが見出されている1つまたは複数のペプチド配列を含む少なくとも1つのキャリアタンパク質でコーティングされる。これらのペプチドは、配列番号1、5〜7、17、24〜25、27〜29、および55〜56に示される配列を含む。別の好ましい実施形態において、支持体は、肝細胞の増殖および分化を促進するのに有効であることが見出されている1つまたは複数のペプチド配列を含む少なくとも1つのキャリアタンパク質でコーティングされる。これらのペプチドは、配列番号1、6、16〜19、27〜32、および34に示される配列を含む。
本発明に従えば、支持部材は、細胞機能調節ペプチドの単一種のみでコーティングされてもよいし、様々な調節ペプチドの混合物でコーティングされてもよい。しかしながら、好ましい実施形態において、2つ、3つ、4つ、5つ、またはそれ以上の異なる細胞機能調節ペプチド配列が、同じ、または異なるキャリアタンパク質に用いられる。ゆえに、支持体の表面が、少なくとも2つの異なる細胞機能調節ペプチドを含むキャリアタンパク質凝集体でコーティングされることが好ましく、少なくとも3つ、少なくとも4つ、少なくとも5つ、少なくとも6つ、少なくとも7つ、少なくとも8つ、少なくとも9つ、または少なくとも10の異なるペプチドも同様に可能である。本発明の方法はまた、10、20または30の異なる細胞機能調節ペプチドを含むコーティングを提供することもできる。例えば、細胞アンカーレージを提供する第1の細胞機能調節ペプチドを、細胞分化を促進する第2のペプチドと組み合わせて用いることが可能である。第1および第2の細胞機能調節ペプチドは、同じ、または異なるキャリアタンパク質分子の一次構造中に含まれてよい。例えば、BSAがキャリアタンパク質として用いられるならば、その一次構造において(a)配列番号1〜26のいずれかのペプチド、および(b)配列番号27〜56のいずれかのペプチドを含む組換えBSA分子を生産することが可能となる。
これ以外にも、特定の用途について、それぞれが一次構造中に単一の細胞機能調節ペプチドのみを含む様々な組換えBSA分子を生産することが望ましいこともある。その場合、本明細書中に記載される方法の工程(a)においてキャリアタンパク質溶液を調製する際に、特定の細胞機能調節ペプチドの所有によって特徴付けられる様々なBSAキャリアタンパク質が混合されてよい。
キャリアタンパク質の配列に付着される、または含まれる細胞機能調節ペプチドの組合せは、特定の細胞機能を達成または抑制するように修正されてよい。一実施形態において、固体支持体の表面上にコーティングされた様々な細胞機能調節ペプチド配列の特定の組成が、細胞増殖を促進する。別の実施形態において、細胞機能調節ペプチド配列の組成が、1つまたは複数のキナーゼ酵素の活性化を含む、細胞活性化を誘導または促進する。キナーゼ活性化は、例えば、チロシンキナーゼ、Srcチロシンキナーゼ、およびRas−MAPK経路の活性化を含んでよい。さらに別の実施形態において、含有される様々なペプチド配列の組成は、細胞分裂および/または細胞分化について、抑制的である。さらに別の実施形態において、支持部材の表面は、コーティングされた表面からの細胞のデラミネーションを妨げるペプチドまたはペプチドの組合せでコーティングされた。
代替の実施形態において、細胞機能調節ペプチドは、それぞれのキャリアタンパク質に化学的に結合することができる。小さなペプチドをより大きなタンパク質に結合させる方法が、当該技術において知られている。例えば、以下の実施例においてより詳細に記載されるように、細胞機能調節ペプチドは、細胞機能調節ペプチドへの結合に用いられ得る、スルフヒドリル反応性のマレイミド活性化キャリアタンパク質を生じさせるのに、アミン−スルフヒドリル架橋剤を用いることによって、キャリアタンパク質、例えばアルブミンに結合することができる。ペプチドをタンパク質に結合させる他の方法も用いられてよい。そのような方法は、例えばG.T.Hermanson「Bioconjugate techniques」,第3版(2013) Academic Press;ISBN−13:978−0123822390に記載されている。
本発明のコーティング法の第1の工程において、キャリアタンパク質の溶液(タンパク質が水または水性バッファ、例えばリン酸バッファ等の水性媒質中に溶解していることを意味する)が調製される。キャリアタンパク質の量は、溶液からのタンパク質の析出をすべて回避するように構成されることとなる。様々なキャリアタンパク質がコーティングに用いられる場合、これらのキャリアタンパク質は、好ましくは、単一の溶液中に加熱前に混合される。これ以外にも、各キャリアタンパク質用に別々の溶液が調製されてよく、以降の加熱工程は、キャリアタンパク質の溶液毎に別々に実行される。キャリアタンパク質のサイズおよび性質に応じて、溶液中に含まれることになるキャリアタンパク質の量は、変化してよい。通常、本発明の方法の工程(a)の溶液に用いられることになるキャリアタンパク質の量は、1〜50mg/ml、例えば5〜40mg/ml、10〜30mg/ml、または20〜25mg/mlの範囲にあることとなる。
場合によっては、キャリアタンパク質を含有する溶液は、工程(a)の後に滅菌される。殆どの細胞培養用途は、滅菌条件下での培養を必要とするので、工程(a)において用いられるタンパク質溶液における汚染は回避されなければならない。滅菌タンパク質溶液を提供する技術が、当該技術において一般的に知られており、例えば、細孔サイズが0.1から0.5μm、好ましくは0.2から0.3μmの範囲、より好ましくは0.22μmであるフィルタ膜を通すタンパク質溶液の濾過が挙げられる。適切なフィルタ膜が、いくつかの異なるメーカーから、例えばSartorius,Millipore,Pallその他から購入され得る。本発明の方法は、ペプチドおよびタンパク質の完全性に影響を及ぼす、滅菌化学物質、またはUV照射もしくはガンマ照射のような物理的プロセスの使用を回避する。
本発明の方法の以降の工程において、キャリアタンパク質を含有する溶液は、平均して1凝集体あたり2〜1000個のタンパク質分子を含む可溶性タンパク質凝集体の形成を誘導する温度に加熱される。好ましくは、方法工程(b)に由来する凝集体は、1凝集体あたり2から1000個のタンパク質分子、最も好ましくは1凝集体あたり5から100個のタンパク質分子を含む。本明細書中で用いられる、2から1000個のタンパク質分子を含む凝集体の形成は、溶液中のキャリアタンパク質の少なくとも50%、好ましくは少なくとも80%、少なくとも90%、さらにより好ましくは少なくとも95%が、2から1000個のタンパク質分子を含む凝集体中に存在することを意味する。加熱工程中に用いられる温度は、低くとも50℃となるであろう。より高い温度、例えば低くとも55℃、低くとも60℃、低くとも65℃、低くとも70℃がより好ましい。つまり、タンパク質溶液は、工程(b)において、50℃から75℃、好ましくは65℃から73℃、より好ましくは68℃から72℃の温度に加熱される。加熱工程は、10分から48時間の期間実行されることとなり、殆どの場合、高温が1〜24時間、例えば2時間、4時間、6時間、8時間、10時間、12時間、14時間、16時間、18時間、20時間、または22時間適用されることとなる。本方法の工程(b)において用いられるべき最適温度は、キャリアタンパク質のサイズおよび性質と共に、そしてまた溶液の組成、例えば加えられる塩またはバッファの濃度と共に変化することとなる。当業者であれば、所定のキャリアタンパク質溶液について、挙げられるタンパク質分子数を含有する可溶性凝集体を形成するのに必要とされる温度およびインキュベーション時間を容易に決定することができるであろう。
凝集体の溶解度を監視するためのかなり単純なアプローチが、335nmの波長にてタンパク質溶液の光学密度(OD)を測定することである。ODは、溶液中のタンパク質凝集体の形成と共に増大することとなる。図2に示されるように、凝集体形成に最も適した温度を決定することは容易である。この図に示されるように、BSAは、様々な温度(65℃、70℃、および75℃)に様々な期間加熱され、BSA凝集体の形成が、335nmにてODを測定することによって監視された。65℃の温度は明らかに、BSA凝集体の形成を誘導するにはあまりに低かった(図2のA、A’参照)一方で、75℃の温度はあまりに高かった。というのも、後者は、遠心分離によって析出したタンパク質を除去した後のOD値の降下によって明示されるように、溶液からの大部分の凝集体の沈澱を誘導したからである(図2のC’参照)。BSAについて、70℃の温度が特に有利であることが見出された。というのも、約18時間の加熱時に形成された凝集体の小画分しか、遠心分離直後に溶液から析出しなかったからである(図2のB’参照)。ゆえに、当業者に知られているルーチンの方法を用いることによって、可溶性のキャリアタンパク質凝集体の形成をもたらす条件を決定することが可能である。好ましくは、凝集体の形成は、355nmにてODを測定することによって監視される。遠心分離後も高いままである335nmでの高ODは、強いタンパク質凝集、および低レベルの析出(または析出なし)を示す。一旦最適条件が決定されると、これは、各キャリアタンパク質の可溶性凝集体の生産にルーチン的に用いられ得る。
同様に、凝集体によって含まれるタンパク質分子の平均数を容易に決定することも可能である。この目的のために、凝集体形成を誘導するために加熱されたタンパク質溶液の画分が、未変性ポリアクリルアミドゲル電気泳動(PAGE)に、非還元条件下でかけられる。そのような電気泳動は、加熱時に形成されたタンパク質凝集体の分子量に関する情報を提供することとなる。一旦キャリアタンパク質の分子量が分かると、凝集体中のタンパク質数が算出され得る。
好ましくは、本発明の方法の工程(b)における条件は、溶液中のタンパク質凝集体の少なくとも50%、好ましくは少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、または少なくとも95%が可溶性の形態で維持されるように、選択される。
加熱工程(b)は、標準的なサーモミキサ装置において実行されてよい。100〜500rpmの撹拌速度が、温度上昇インキュベーション中に用いられてよい。
溶液の加熱が完了した後、キャリアタンパク質凝集体を、支持体に対する凝集体の非共有結合性の吸着を可能にする条件下で、固体支持体と接触させる。このために、タンパク質凝集体を含有する溶液は、不溶性の析出タンパク質材料をすべて除去するために、例えば1,000〜5,000rpmにて5分間、遠心分離されてよい。その後、遠心分離工程から得られた上澄みを、コーティングされることになる支持部材に塗布する。一実施形態において、溶液の画分を支持部材の表面に直接ピペッティングしてから、支持部材を、25〜37℃の温度で、液体が支持部材の表面から完全に蒸発するまで乾燥する。乾燥は、標準的なエバポレータ内で実行してもよい。代替の実施形態において、工程(b)で得られたタンパク質凝集体を、凍結乾燥してから水性培地中に溶解し、これをその後、支持体に塗布する。工程(c)におけるインキュベーション時間は、1から48時間、好ましくは2から24時間の範囲内であり、例えば4時間、6時間、8時間、10時間、12時間、14時間、16時間、18時間、または20時間である。
場合によっては、コーティングを受けた支持部材は、工程(c)の後に、結合していないキャリアタンパク質およびキャリアタンパク質凝集体をすべて除去するために、洗浄されることとなる。洗浄は、水または適切なバッファ、例えばリン酸バッファで支持部材の表面をリンスすることによって実行されてよい。洗浄バッファは、好ましくは、支持部材の表面からの吸着した凝集体の除去を回避するために、いかなる変性化合物または洗浄剤、例えばSDSも含有するべきでない。洗浄および乾燥後、支持部材は、さらに細胞培養に用いられるまで、保存されてよい。
上記方法を行う場合、非共有結合的に吸着したキャリアタンパク質凝集体中に存在する複数の細胞機能調節ペプチド配列を表面上に含む固体支持体が提供される。好ましくは、コーティングされた固体支持体の表面は、平均して1mm2の表面積あたり1,000から1,000,000、好ましくは100,000から400,000の細胞機能調節ペプチド配列を含む。
更なる態様において、本発明は、先に記載される方法によって獲得可能な、コーティングされた固体支持体に関する。
また更なる態様において、本発明は、非共有結合的に吸着した、キャリアタンパク質の少なくとも1つの凝集体を表面上に有する、コーティングされた固体支持体に関し、前記キャリアタンパク質は、これに付着した、またはこのアミノ酸配列の一部として、少なくとも1つの細胞機能調節ペプチド配列を含み、前記凝集体は、2から1000、好ましくは5から100、より好ましくは50から100個のタンパク質分子を含む。
本明細書中の他の場所に記載されるように、固体支持体は、あらゆる材料のものであってよく、ガラスまたはプラスチックの表面を有する支持部材が特に好ましい。固体支持体は、細胞培養部材、例えば細胞培養容器、例えば細胞培養フラスコ、ローラーボトル、培養プレート、培養チューブ、マイクロタイタープレート、膜、ディスク、ビーズ、スライド、バイオ発酵槽用のキャリアプレート、または培養皿の表面であってよい。本発明の好ましい実施形態において、本発明の固体支持体は、6、12、24、または48ウェルを有する細胞培養プレートである。
本発明の固体支持体は、その表面上に、本明細書中の他の場所に記載されるキャリアタンパク質の少なくとも1つの凝集体を含む。凝集キャリアタンパク質は、細胞機能調節ペプチド配列の分子モザイクを提供する。ゆえに、好ましい実施形態において、前記支持体の表面は、凝集体の様々なキャリアタンパク質上に、またはキャリアタンパク質中に存在する細胞機能調節ペプチド配列の分子モザイクを含む。キャリアタンパク質は、好ましくは、細胞外マトリックス中に本来存在しないタンパク質である。
本発明のコーティングされた支持体の表面は、1つまたは複数のキャリアタンパク質中に、先に議論された細胞機能調節ペプチド配列を1つのみ含んでもよいが、2つ以上の異なる細胞機能調節ペプチド配列を含むことが好ましい。例えば、支持部材の表面は、少なくとも3つ、少なくとも4つ、少なくとも5つ、少なくとも6つ、少なくとも7つ、少なくとも8つ、少なくとも9つ、または少なくとも10の異なる細胞機能調節ペプチド配列を含んでよい。特定の実施形態において、前記支持体の表面は、細胞結合に利用可能な細胞機能調節ペプチド配列の分子モザイクを含むキャリアタンパク質凝集体を含む。形成されたモザイクは、同じ、または異なる細胞機能調節ペプチド配列を含んでよい。これは、多数の受容体が、培養されることになる細胞の表面上に存在するという事実、および細胞機能の促進または抑制における起こり得る相互作用を考慮すると、特に興味深い。特に好ましい態様において、コーティングされた固体支持体は、細胞結合ペプチドモチーフ、好ましくはRGDモチーフを有する少なくとも1つの細胞機能調節ペプチド配列を含む。例えば、支持体は、配列番号1〜26から選択される細胞結合ペプチドの1つもしくは複数、および/または配列番号27〜56から選択される、増殖因子活性を有する1つもしくは複数のペプチドを含んでよい。
キャリアタンパク質であって、これに付着する、またはこの中に含まれる細胞機能調節ペプチド配列を含むキャリアタンパク質は、非共有結合性の吸着によって固体支持体の表面に固定される。細胞機能調節ペプチド配列は、本発明の支持部材の表面に非共有結合的に吸着されるが、本発明の方法によって提供されるコーティングは、非常に安定している。好ましくは、PBSまたは細胞培地中のキャリアタンパク質の30%未満、より好ましくは25%未満、20%未満、15%未満、10%未満、または5%未満しか、37℃にて24時間のインキュベーション後に、コーティングされた表面から除去されない。さらにより好ましくは、キャリアタンパク質の4%、3%、2%、1%未満、または0.5%もしくは0.1%未満しか、これらの条件下で表面から剥離しない。非共有結合的に吸着したタンパク質の剥離は、勿論、研磨化学物質、例えば有機溶媒または洗浄剤によって達成され得る。
本発明に従えば、キャリアタンパク質の凝集後に細胞機能調節ペプチドを付着させることも可能であろう。凝集後にだけ細胞機能調節ペプチドが提供されたキャリアタンパク質は、HEK293細胞上で、細胞培養において15分間、RGDペプチドで試験された場合に、細胞機能調節ペプチドが凝集前に付着したタンパク質と類似の結果を示すことが見出された。
特に好ましい実施形態において、固体支持体の表面は、1mm2表面積あたり1,000から1,000,000、好ましくは100,000から400,000の細胞機能調節ペプチド配列を含む。
本発明の支持部材の表面は、様々なキャリアタンパク質によって、例えば、それぞれの細胞機能調節ペプチド配列が互いに異なるBSAタンパク質でコーティングされた、少なくとも5つまたはそれ以上、好ましくは少なくとも10またはそれ以上の位置または点を含んでよい。
図1は、本発明の方法の原理を示す。示されるのは、固体表面コーティングの様々な調製法、および生じた産物である。 図2は、BSAの凝集に及ぼすインキュベーションの時間および温度の影響を示す。アルブミン溶液が、様々な温度(65℃、70℃、および75℃)に様々な期間加熱され、BSA凝集体の形成が、光学密度(OD)を335nmにて測定することによって監視された。その後、溶液が遠心分離されて、335nmでのODがここでも測定された。65℃の遠心分離前(A)および遠心分離後(A’)、70℃の遠心分離前(B)および遠心分離後(B’)、75℃の遠心分離前(C)および遠心分離後(C’)。 図3は、ポリスチレンプレート上への凝集BSAのコーティングの効率を示す。グラフは、70℃で様々な期間(1時間、4時間、18時間)凝集されたBSAの溶液とのインキュベーション後に、ポリスチレンウェルにコーティングされたBSAの量を示す。BSA CTLは、加熱を受けなかった加熱されるBSAを示す。 図4は、疎水性表面および親水性表面に及ぼすコーティング効率の比較を示す。細胞培養用に事前に処理された(組織培養処理された(TCT)、Costar(登録商標),Corning #3524)、またはされなかった(Costar(登録商標),Corning #3738)24のプレートが提供された。これらのプレートのウェルが、実施例2に記載される線状RGDまたは環状RGDに結合された1mg/ml凝集BSAで4時間コーティングされた。洗浄後、プレートは37℃で乾燥された。150,000個のHEK293細胞が各ウェル中に挿入されて、10%FCSを有する培地中で15分間インキュベートされた。15分のインキュベーション後、付着した細胞数が、WST−1試薬を用いた比色アッセイによって推定された。吸光度は、690nmでのリファレンスを用いて、450nmにて測定された。白色のバー=TCT;灰色のバー=非処理表面。A:BSAのみ、B:BSA+SMCC、C:BSA+SMCC+線状RGD、D:BSA+SMCC+環状RGD、E:コーティングなし。
実施例1
配列中に細胞機能調節ペプチド配列を挿入したBSAキャリアタンパク質の構築
一次構造の一部として、ECMタンパク質に由来する細胞機能調節ペプチド配列を含む様々な組換えヒト血清アルブミン(HAS)タンパク質を構築した。この目的のために、天然のECMタンパク質内の細胞機能調節ペプチド配列の高次構造を、Vector NTIソフトウェア(Invitrogen)の構成要素であるソフトウェア3D Molecule Viewerを用いて判定した。以降の工程において、天然のECMタンパク質の高次構造を、HASタンパク質の高次構造と比較して、類似した高次構造を有する領域を同定した。類似した領域を同定した場合、選択した領域において位置決めされたBSAのアミノ酸を、細胞機能調節ペプチドのアミノ酸によって置換し、生じた組換えタンパク質の構造を、プログラム「SWISS−MODEL」を用いて再計算した。このように、配列番号2(GRGDS)の細胞機能調節ペプチド配列によって置換するのに適した3つのループを天然のHASタンパク質において同定した。
第1のループ(ループ−1)は、天然のHAS(配列番号57)のアミノ酸80から84(DESAE)を含有する。第2のループ(ループ−2)は、天然のHASのアミノ酸116から120(AKQEP)を、そして第3(ループ−3)はアミノ酸194から198(QAADK)を含有する。これらのループのアミノ酸を、配列番号2(GRGDS)の配列によって置換した。HASのループ領域1、2、または3中に含まれる配列番号2の細胞機能調節ペプチド配列を有する、結果として生じた構築体を、それぞれ配列番号58から60に示す。HASの3つ全てのループ領域中に含まれる配列番号2の細胞機能調節ペプチド配列を有する構築体を、配列番号61に表す。
別の構築体において、配列REDVを、アミノ酸137から140(PRLV)の間に位置決めされたBSAタンパク質の線状ストレッチ中に組み込んだ。生じた構築体を、配列番号62に示す。さらに別の構築体において、ペプチドRYVVLPRを、アミノ酸129から135(HKDDNPN)の間に位置決めされるBSAタンパク質の逆ループ中に組み込んだ。生じた構築体を、配列番号63に示す。ループ3中に組み込んだRGDを含む構築体、線状ストレッチ中に組み込んだREDV、および逆ループ中に組み込んだRYVVLPRを、配列番号64に示す。それらの配列において1つ、2つ、または3つの細胞機能調節ペプチド配列を有する様々な構築体を、以下でさらに記載するようにして用いた。VSV−Gタグ、またはHisタグを、アフィニティ精製用にC末端配列に加えた。発現を、ピキア・パストリス(Pichia pastoris)において実行した。発現後のSDS−PAGE電気泳動によって、非トランスフェクション細胞と比較して、発現されたHASとして、68kDのバンドが同定された。
実施例2
BSA表面に対する細胞機能調節ペプチド配列の付着によるBSAキャリアタンパク質の構築
1mlの100mMリン酸バッファ中10mg HAS(Sigma #021M7353V)の溶液pH7.4を、3mgのSulfo−SMCC(#MF158668,Thermo Scientific,Rockford,Il,USA)と21℃で1.5時間インキュベートした。溶液を同バッファ中で一晩透析した。1mgの活性化HASを、1mgのペプチドと21℃で一晩インキュベートすることによって、ペプチドの結合を実行した。RGD環状ペプチドまたはスペーサペプチドを、Eurogentec(Liege,Belgium)またはBachem AG(Bubendorf,Switzerland)によって合成的に合成した。ペプチドを、10mM EDTAを有するPBS溶液中に懸濁させた。同方法を、凝集タンパク質上にペプチドを結合するのに用いた。
実施例3
タンパク質の凝集
1mlの100mMリン酸バッファ中に10mg BSA(Sigma #A3059)を含有する溶液pH7.4を、ThermoMixer(登録商標)(Eppendorf AG,Hamburg,Germany)上のlow bindチューブ(Eppendorf AG,Hamburg,Germany)内で、500rpmの混合速度で70℃にて4時間インキュベートした。インキュベーション後、溶液の光学密度(OD)を、335nmにて判定し、タンパク質凝集体の存在を判定した。
実施例4
可溶性タンパク質凝集体を得るための実験条件の決定
1mlの100mMリン酸バッファ中に10mg BSA(Sigma #A3059,Saint Louis,USA)およびビオチン化した1μgBSA(Sigma #A8549,Saint−Louis,USA)を含有する溶液pH7.4を調製した。溶液をアリコートに分割し、Eppendorf(登録商標)Protein LoBindTubes(Eppendorf,Hamburg,Germany)内に入れ、ThermoMixer(登録商標)(Eppendorf,Hamburg,Germany)上で、500rpmの混合速度で様々な温度にて様々な期間加熱した。インキュベーション後、タンパク質凝集体の形成を監視するために、335nmにてODを判定した。天然の可溶性BSAのODは、この波長にて0であった。OD値がより高ければ、タンパク質凝集体の形成が示される。その後、溶液を、5000rpmにて5分間遠心分離し、ODをもう一度測定した。遠心分離により、不溶性凝集体が溶液から除去される。
結果を図2に与える。70℃で4時間加熱した溶液のODは、0.04であり、遠心分離後も同じであった。75℃で18時間加熱した溶液は、335nmで0.407のODを示したが、遠心分離後は0.07のODしか示さなかった。これは、タンパク質の一部が加熱によって変性して、溶液から析出したことを示す。
加熱したタンパク質溶液を、非変性電気泳動ブルーネイティブアクリルアミドゲル(4.5%から16%までの勾配)上で分離した。電気泳動条件は以下の通りであった:陰極バッファ(50mMトリシン、15mM Bis−トリスpH7、0.02%クーマシーブルー)と、陽極バッファ(50mM Bis−トリスpH7)との間で4mAにて18時間の移動。70℃で4時間インキュベートした凝集BSAの溶液は、大部分の凝集体が600,000から100万の分子量を有し、少量の凝集体のみより低い分子量を有することを示した。65℃で4時間インキュベートしたタンパク質溶液は、低い分子量のBSA凝集体(殆ど2量体から8量体)を示した。75℃でインキュベートした溶液はいかなるバンドも示さなかった。これは、タンパク質凝集体および/または沈殿物が、ゲルに入るにはあまりに大きかったためである。上記のことは、タンパク質材料の相当な損失なく凝集体形成を達成するための、温度および時間の最適なパラメータを決定する方法を示す。
実施例5
ポリスチレンウェルにおける凝集BSAのコーティング
1mlの100mMリン酸バッファ中に10mg BSA(Sigma #A3059,Saint Louis,USA)およびビオチン化した1μg BSA(Sigma #A8549,Saint−Louis,USA)を含有する溶液pH7.4を調製した。溶液をアリコートに分割し、Eppendorf(登録商標)Protein LoBindTubes(Eppendorf,Hamburg,Germany)内に入れ、ThermoMixer(登録商標)(Eppendorf,Hamburg,Germany)上で、500rpmの混合速度で70℃にて0時間、1時間、4時間、および18時間加熱した。加熱工程の後、様々な凝集BSA溶液を、「組織培養処理された(TCT)」マルチウェルプレート(Corning #3595,NY,USA)のポリスチレンウェルと接触させた。50μl/ウェル(500μg BSA+ビオチン化した50ng BSA/ウェル)をコーティングに用いた。
ウェルをプラスチックフィルムでシールし、18時間室温でインキュベートした。インキュベーション後、ウェルを空にし、200μlのPBSで1×5分間、続いて2×1分間洗浄してから、50μlのストレプトアビジン−ペルオキシダーゼコンジュゲート溶液(100mMリン酸バッファ中1μg/mlのSTAV−HRP+0.5%のスキムミルク)と室温で30分間インキュベートした。
コンジュゲートのインキュベーション後、ウェルを200μl PBSで室温にて3×1分洗浄し、かつ50μl TMB溶液と室温にて正確に5分間インキュベートした。反応を、各ウェル内への50μlの1N HCl溶液の添加によって止め、プレートを、Multiskan(商標)プレートリーダー(LabSystems,ThermoScientific)内で、450nmの波長にて読んだ。様々なBSA溶液の光学密度のプロットを図3に表す。コーティングされた凝集体の量が、凝集に用いた時間と共に増大することが分かる。
その後、コーティングされたプレートを、PBS溶液中で37℃にて24時間インキュベートして、プレートから放出されたタンパク質の量を測定した。これらの条件下で、ビオチン化したBSAをPBS溶液中に検出することはできないことが見出された。これは、タンパク質がコーティングから放出されていないことを意味する。
コーティングしたウェルの表面上の、ビオチン化したBSAの存在を検出するために、ストレプトアビジン−ペルオキシダーゼ直接アッセイを、37℃での24時間のPBS水溶液による洗浄の前後で行った。ウェルを、3つの異なる凝集条件(70℃にて1時間、4時間、18時間)でコーティングした。先に説明したように、ビオチン化したBSAを、光学密度を判定することによって測定した。結果を、以下の表1に示す。ビオチン化したBSAの量は、3つの凝集条件の全てについて、洗浄の前後で本質的に同じであったことが分かる。ビオチン化したBSAの損失は、37℃での24時間の洗浄後もなかった。これらの結果から、凝集BSAのコーティングは安定しており、水性培地中に溶解しないことが示される。非凝集BSAをコントロール(CTL)として用いた。
実施例6
疎水性または親水性の表面上での細胞の培養
HEK293細胞を、細胞培養用に処理された(TCT、Costar(登録商標)Corning #3524)、またはされていない(Costar(登録商標)Corning #3738)24のプレート内で培養した。150,000個の細胞を各ウェル中に挿入して、10% FCSを有する培地中で15分間インキュベートした。ウェルのコーティングを、実施例3のように1mg/mlの凝集BSAで4時間実行し、そして実施例5のようにウェル上にコーティングした。コーティング後、プレートを洗浄して、37℃で乾燥させた。SMCCを用いて(実施例2において記載)、線状または環状のRGD含有ペプチドをBSAに結合させた。15分のインキュベーション後、付着した細胞の数を、WST−1試薬(N°10008883,Cayman Chemical,Michigan,US)を用いた比色アッセイによって推定し、吸光度を、690nmでのリファレンスを用いて、450nmにて読んだ。
結果を図4に示す。コントロール実験において、TCTは、非処理表面(E)と比較して、表面に付着した細胞の数を増大させることが分かる。線状RGD含有ペプチドを含む凝集BSA(C)、または環状RGD含有ペプチドを含むBSA(D)でコーティングしたプレートを用いる場合、TCTプレートと非TCTプレートとの間で同じ細胞付着効率が達成された。いかなる細胞機能調節ペプチドも含まないコーティングでは、細胞付着に負の影響が及ぶ(A)。
実施例7
幹細胞分化
いくつかのペプチドまたはペプチドの組合せをBSAに結合させて、キャリアタンパク質を提供した。タンパク質溶液を、実施例3に記載した凝集体を得るために加熱した。続いて、実施例5で説明したように、タンパク質凝集体を培養フラスコの表面にコーティングした。ヒト間葉系幹細胞(hMSC)を、Lonza(#PT−2501,Vervier,Belgium)から得た。細胞を最初に幹細胞増殖培地(BulletKit(商標),Lonza PT−3001)において1〜2日間増殖させてから、分化を誘導した。
骨形成分化に向けた細胞培養:細胞を、3.7×103細胞/cmの密度で0日目に、コーティングしたプレートのウェルに播種した。分化の誘導を、hMSC Osteogenic Differentiation BulletKit(商標)(Lonza,PT−3002)を用いて、1日目に始めた。誘導培地を、3、6および10日目に更新した。アッセイを14日目に実行した。骨芽細胞の分化は、マトリックスの成熟および鉱物化をもたらす。骨芽細胞は、ヒドロキシアパタイト、および1型コラーゲンを含む有機構成要素で構成される鉱物化小節を含有する;ヒドロキシアパタイトを、Osteolmage(商標)Bone Mineralization Assay(Lonza,PA−1503)によってアッセイした。Osteolmage(商標)がヒドロキシアパタイトに結合すると、蛍光シグナルが生じ、これを観察かつ測定することができる。分化の他のマーカーとしては、プロコラーゲン1、TGF−β、およびフィブロネクチンの合成がある。細胞培養物を、分化の14日後および21日後に試験した。配列番号1および13のペプチド、または配列番号1および15のペプチドの組合せが、細胞増殖および細胞分化の双方にとって特に効率的であった。RGD含有凝集BSAは、プレ分化工程において、そしてより高次の分化時に、TCTよりもかなり良好な細胞増殖をもたらした。分化の程度は、BioCoat(商標)フィブロネクチンコーティングプレート(BD,Belgium)で観察したものと類似していた。
脂肪細胞分化に向けた細胞培養:hMSC細胞を、0日目に、2.1×104細胞/cmの密度でウェルに播種した(0日目)。培地は、hMSC Adipogenic Differentiation BulletKit(商標)(Lonza,PT−3004)であり、メーカーの説明書に従って培養を実行した。培地を4日目に更新した。分化の誘導を、hMSC Adipogenic Differentiation BulletKit(商標)(Lonza,PT3004)を用いて、5日目に始めた。8日目に、誘導培地を維持培地によって3日間置換した。誘導の別のサイクルを11日目に、そして第3のサイクルを15日目に始めた。維持培地を18、20、22、25日目に加えて、アッセイを26日目に実行した。配列番号1のペプチドを含む凝集BSAは、細胞増殖、および脂肪生成細胞への分化を良好なものにした。
実施例8
幹細胞のニューロン分化。
配列番号1の環状RGD含有ペプチドをBSAに結合させてキャリアタンパク質を提供し、加熱して実施例3に記載した凝集体を得た。その後、実施例5で説明したように、凝集体を培養容器表面上にコーティングした。
幹細胞は、Gibco(登録商標)(# N7800−200)(Life Technologies,Belgium)から得たヒト神経幹細胞(H−9 hNSC)であった。これは、NIH承認H9(WA09)胚性幹細胞に由来する。培養培地および分化培地は、Gibco(登録商標)由来であった。メーカーによって推奨されるプロトコルに従って、細胞を最初に、幹細胞増殖培地(StemPro(登録商標)NSC SFM,Life Technolgies)中で2日間増殖させてから、分化を誘導した。
いくつかの培養表面を、分化工程に用いた:標準的な、組織培養処理された(TCT)表面、Synthemax(登録商標)(Corning,Belgium)、PureCoat(商標)ECM Mimetic Cultureware Fibronectin Protein(Becton Dickinson,BD,Belgium)、BioCoat(商標)Poly−L−Ornithine/Laminin(BD,Belgium)、および本発明に従って調製したRGD含有BSA凝集体でコーティングした表面。
実施例9
無血清培地における培養
配列番号1の環状RGD含有ペプチドをHSAに結合させてキャリアタンパク質を提供し、加熱して実施例3に記載した凝集体を得た。その後、実施例5で説明したように、凝集体を培養容器表面上にコーティングした。
幹細胞は、Lonzaから得たヒト間葉系幹細胞(hMSC)(#PT−2501,Vervier,Belgium)であった。メーカーが要求するように、細胞を、グルタミンを補ったCTS(商標)StemPro(登録商標)MSC SFM培地(A10332−01,Life Technologies)中で増殖させた。
細胞を10日間培養し、この期間中に調査した:培養物を顕微鏡下で調査して、支持体からの剥離後の細胞をカウントした。細胞は、この期間中、ペプチド処理済みの表面上でよく増殖した一方で、TCT表面上では増殖せず、最終的に退化することが観察された。

Claims (16)

  1. 細胞培養用途に用いるのに適した固体支持体をコーティングする方法であって:
    (a)少なくとも1つのキャリアタンパク質であって、これに付着した、またはこのアミノ酸配列の一部として、少なくとも1つの細胞機能調節ペプチド配列を含むキャリアタンパク質の溶液を調製する工程であって、前記細胞機能調節ペプチド配列は、細胞結合ペプチドモチーフを含む、工程と;
    (b)該溶液を、低くとも50℃に加熱して、2から1000個のタンパク質分子を含む可溶性のキャリアタンパク質凝集体の形成をもたらす条件下で、該溶液をインキュベートする工程と;
    (c)該キャリアタンパク質凝集体を、該支持体に対する該凝集体の非共有結合性の吸着を可能にする条件下で、該固体支持体と接触させる工程と;
    (d)場合によっては、結合していないキャリアタンパク質およびキャリアタンパク質凝集体を除去するために、該固体支持体を洗浄する工程と;
    を含み
    これらによって、表面上に複数の細胞機能調節ペプチド配列を含む固体支持体が提供される、方法。
  2. 該固体支持体の表面は、疎水性または親水性である、請求項1に記載の方法。
  3. 2つ、3つ、4つ、5つ、またはそれ以上の異なる細胞機能調節ペプチド配列が、同じ、または異なるキャリアタンパク質に用いられる、請求項1又は2に記載の方法。
  4. 該タンパク質凝集体は、5から100個のタンパク質分子を含む、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
  5. 該キャリアタンパク質は、アルブミン、またはアルブミンに由来するタンパク質である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
  6. 工程(b)において、該溶液は、50℃から75℃の温度に加熱される、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
  7. 工程(b)において、該条件は、該タンパク質凝集体の少なくとも50%を可溶性の形態で得るように選択される、請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
  8. 該細胞結合ペプチドモチーフは、RGDモチーフおよび/または配列番号1〜26に示される配列から選択される細胞結合ペプチドモチーフである、請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
  9. 該少なくとも1つの細胞機能調節ペプチド配列はさらに、配列番号27〜56から選択される、増殖因子活性を有するペプチド配列を含む、請求項8に記載の方法。
  10. 細胞機能調節ペプチドは、該キャリアタンパク質によって含まれて、該凝集体の様々な該キャリアタンパク質上または該キャリアタンパク質中に存在する細胞機能調節ペプチドの分子モザイクが形成される、請求項1〜9のいずれか一項に記載の方法。
  11. 非共有結合的に吸着した、キャリアタンパク質の少なくとも1つの凝集体を表面上に有する、コーティングされた固体支持体であって、前記キャリアタンパク質は、これに付着した、またはこのアミノ酸配列の一部として、少なくとも1つの細胞機能調節ペプチド配列を含み、前記細胞機能調節ペプチド配列は、細胞結合ペプチドモチーフを含み、前記凝集体は、2から1000個のタンパク質分子を含む、コーティングされた固体支持体。
  12. 前記支持体の表面は、2つまたはそれ以上の異なる細胞機能調節ペプチド配列を含む、請求項11に記載のコーティングされた固体支持体。
  13. 該キャリアタンパク質の30%未満しか、37℃にて24時間のインキュベーション後に、コーティングされた該表面から除去されない、請求項11又は12に記載のコーティングされた固体支持体。
  14. 該細胞結合ペプチドモチーフは、RGDモチーフおよび/または配列番号1〜26に示される配列から選択される細胞結合ペプチドモチーフである、請求項11〜13のいずれか一項に記載のコーティングされた固体支持体。
  15. 該少なくとも1つの細胞機能調節ペプチド配列はさらに、配列番号27〜56から選択される、増殖因子活性を有するペプチド配列を含む、請求項14に記載のコーティングされた固体支持体。
  16. 前記支持体の該表面は、該凝集体の様々な該キャリアタンパク質上または該キャリアタンパク質中に存在する細胞機能調節ペプチド配列の分子モザイクを含む、請求項11〜15のいずれか一項に記載のコーティングされた固体支持体。
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