JP6478569B2 - 温度応答性細胞塊作製方法 - Google Patents

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Description

本発明は、高温溶解型高分子を細胞培養系に添加することによって細胞塊を作製する方法、及び細胞の単層培養状態と細胞塊培養状態を可逆的に制御する方法に関する。
温度応答性高分子は、低音溶解型(Lower Critical Solution Temperature:LCST型)と高温溶解型(Upper Critical Solution Temperature:UCST型)の2種類に大別できる。生理的条件下でLCST型挙動を示すポリ(N−イソプロピルアクリルアミド)(PNIPAM)は体温付近に相転移温度を持つことから、バイオマテリアルへの応用が盛んに研究されている。一方、有機溶液中で相転移を示すUSCT型高分子の報告例はいくつか存在するが、水溶液中で、特に生理的条件下(例えば、150mM NaCl、pH7.5)の溶媒中で相転移を示す高分子は非常に少ない(非特許文献1〜6)。
これまでに、本発明者らは、ウレイド基を有するポリアリルアミン−co−ポリアリルウレア(PAU)が生理的条件下においてUCST型挙動を示す珍しい高分子であることを報告してきた(特許文献1、非特許文献7)。ウレイド基が分子内又は分子間で水素結合を形成することで相分離すると考えられる。また、PAUは主鎖の分子量やウレイド基導入率を変化させることにより、相分離温度(phase separation temperature:T)を8〜65℃の広範囲で制御可能である。このように新しい物性を持つPAUは、生体分子等と特殊な相互作用をする可能性がある。
しかしながら、培養液中でUCST型高分子を添加し、温度変化によって、単層培養細胞から細胞塊を作製したという報告例はない。
国際公開第2011/118587号
Costa, R. O. R. & Freitas, R. F. S., Polymer, (2002) 43, 5879-5885 Pagonis, K. & Bokias, G., Polymer, (2004) 45, 2149-2153 Hoogenboom, R., et al., U. S. Aust. J. Chem., (2010) 63, 1173-1178 Hoogenboom, R., et al., U. S. Soft Matter, (2009) 5, 3590-3592 Koyama, M., et al., J. Phys. Chem. B, (2008), 112, 10854-10860 Buscall, R., et al., Eur. Polym. J., (1982) 18, 967-974 Shimada, N., et al., Biomacromolecules, (2011) 12, 3418-3422
本発明は、再生医療等の細胞培養において、細胞を単層培養状態から細胞塊状態に迅速かつ効率的に作製し、細胞塊を提供するための技術を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決すべく、細胞を細胞培養プレートに播種前又は播種後に、UCST型高分子を添加し、培養温度を変化させることによって細胞塊を作製することに成功し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、以下の通りである。
[1]細胞塊を作製する方法であって、下記:
(a)下記式(I):
(式中、
は、−NH、−CONH、−COONH、−COOH、
で示される置換基からなる群から選択され;
は、下式:
で示される置換基を意味し;
mは、10以上の整数を意味し;
nは、0.4≦n≦1を満たす数を意味し;及び
p及びqは、独立して、0〜6の整数を意味する)
で表される化合物又はその付加塩の水溶液を用意する工程;
(b)上記工程(a)で用意した化合物又はその付加塩の水溶液を、細胞培養プレートに細胞を播種前又は播種後に添加する工程;及び
(c)5%CO存在下、相転移温度より低い温度又は37℃で、1〜48時間、細胞を培養する工程
を含み、ここで、工程(b)で使用される式(I)で表される化合物又はその付加塩は、細胞培養液中で、4〜50℃の範囲に相転移温度を有し、当該相転移温度より低い温度で不溶相を形成し、当該相転移温度より高い温度で溶解相を形成する、細胞塊を作製する方法。
[2]式(I)において、p及びqが0であり、Rが−NHである、上記[1]に記載の作製方法。
[3]式(I)で表される化合物又はその付加塩の水溶液の濃度が、1〜1000mg/mlである、上記[1]又は[2]に記載の作製方法。
[4]単層培養状態と細胞塊培養状態を制御する方法であって、下記:
(a)請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法を用いて細胞塊を作製する工程;
(b)5%CO存在下、相転移温度より高い温度又は37℃で、1〜72時間、細胞塊を培養することによって細胞を単層状態にする工程;及び
(c)場合により、工程(a)を繰り返すことによって再び細胞塊を作製する工程
を含む制御方法。
本発明の細胞塊を形成させる方法は、相転移温度が細胞培養温度に適した温度の範囲内にある高温融解型高分子(PAU)を用いることを特徴とし、培養温度を制御するだけで、相転移温度の変化によるPAUの構造変化に起因して、単層状態の培養細胞を容易に3次元培養の状態へと変化させることができる。さらに、単層培養状態と細胞塊培養状態の制御を可逆的に行うことができる。
図1は、NIH−3T3細胞の培養系に高温融解型高分子を添加した場合と添加しない場合において、24時間後(A)と48時間後(B)の細胞の形態観察を顕微鏡下(位相差)で行った結果を示す。高温融解型高分子としてPAU15K93(相転移温度:43℃(DMEM+5%FBS中))を使用した。 図2は、共焦点レーザー走査型顕微鏡を用いて細胞塊を観察した結果を示す。細胞塊は、XY平面、Z軸方向ともに細胞が凝集している球状(約50μmの径)のスフェロイドであった。観察前に細胞をパラホルムアルデヒドによって固定したため、全ての細胞がPI染色(死細胞の指標)された。 図3は、生細胞をCalcein−AMで染色した結果を示す。細胞塊内部に若干の死細胞(PI染色)が観察されるものの、細胞塊は、主に生細胞で形成されていることが分かった。 図4は、HepG2細胞(ヒト肝癌由来細胞株)を用いた細胞塊の形成を示す結果である。パネルAは、PAU15K93を添加後、24時間での細胞の形態観察の結果を示し、パネルBは、48時間、さらにはFBS濃度(5%と10%)の違いによる細胞の形態観察の結果を示す。 図5は、培養温度の変化による単層培養状態と細胞塊培養状態の可逆的制御を検討した結果を示す。高温融解型高分子としてPAU5K91(相転移温度:37℃(DMEM+5%FBS中))を使用した。培養温度を25℃から37℃に変化させると、細胞塊状態から単層状態へと変化した(パネルE)。次に、25℃に戻すと再度、細胞塊が形成された(パネルF)。
1.本発明の高温溶解型高分子及びその製造方法
1−1.高温融解型高分子
本発明の高温融解型高分子は、下記式(I)で示される。
上記式(I)中、「m」は、本発明の高温融解型高分子の重合度を表す。具体的には、mは10以上の整数を意味する。好ましくは10〜5000であり、より好ましくは20〜2000であり、特に好ましくは20〜1000である。
上記式(I)中、「n」は、本発明の高温融解型高分子における水素結合性官能基(R及びR)の導入度を表す。具体的には、nは0.4≦n≦1の数を示す。生理的条件の観点からより好ましくは0.84≦n≦1であり、さらに好ましくは0.87≦n≦1である。
上記式(I)中、「p」及び「q」は、独立して、1〜6の整数を意味する。好ましくは1〜4、より好ましくは0又は1である。
本発明において、Rで示される置換基は、プロトンアクセプター又はプロトンドナーを有する基であってもよく、このような基としては、限定されないが、下記:−NH、−CONH、−COONH、−COOH、
を挙げることができる。
本発明において、Rで示される置換基は、末端にアミノ基を有する置換基であれば限定されないが、好ましくは、下式:
で示される置換基である。
本発明の高温融解型高分子の付加塩とは、該高分子を構成するモノマー単位中の側鎖アミノ基及び/又はカルボキシル基への付加塩を挙げることができる。かかる付加塩としては、塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、硫酸塩、リン酸塩、ホスホン酸塩、酢酸塩等のカルボン酸塩類、メタンスルホン酸塩、p−トルエンスルホン酸塩、クエン酸塩や酒石酸塩などオキシカルボン酸塩、安息香酸塩を例示することができる。
本発明の高温融解型高分子及びその付加塩は、pH3〜10.5の少なくとも1mMの塩を有する水溶液又は細胞培養液(血清を含む又は含まない)中で、4〜50℃の範囲に相転移温度を有することを特徴とする。ここで、「4〜50℃の範囲に相転移温度を有する」とは、高温融解型高分子(I)又はその付加塩が上記水溶液又は細胞培養液中で不溶化し、不溶相を形成する温度と、該高分子(I)又はその付加塩が上記水溶液又は細胞培養液中で溶解し、溶解相を形成する温度との境界温度が、4〜50℃の範囲にあることを意味する。つまり「相転移」とは、上記水溶液又は細胞培養液において高温融解型高分子(I)又はその付加塩によって形成される不溶相と溶解相との相転移を意味する。
かかる「相転移温度」は、例えば、高温融解型高分子(I)又はその付加塩を少なくとも1mMの塩を含有する水溶液に溶解し、降温させながら石英セル中で500nm又は700nmの可視光の透過率を測定し、当該化合物が完全に溶解しているときの清澄溶液の可視光の透過率を100%とした場合に、これを降温したときに該透過率が減少し始める温度として求めることができる。
本明細書で使用するとき、「塩」とは、KCl、NaCl、CaCl、MgCl、KBr、NaBr、NaSO、及びMgSO等を挙げることができるが、高温融解型高分子(I)が、後述する式(III)で示されるカルバモイル化ポリアリルアミン(Carb−PAA)である場合、好適には塩化ナトリウムを挙げることができる。
1−2.高温融解型高分子の製造方法
本発明の高温融解型高分子は、当業者であれば、従来技術を用いて製造することができる。例えば、UCST型の温度応答性高分子化合物を製造する方法を記載した特許文献1(国際公開WO2011/118587、上述)を参照して、本発明の高温融解型高分子を製造することができる。より具体的には、本発明の高温融解型高分子(前述の一般式(I))のうち、Rが水素原子であり、Rがカルバモイル基であり、p=q=0である化合物(III)は、下式(II)で示されるポリアリルアミン又はその塩をシアン酸塩(MCNO)と反応させることによって製造することができる。ここで、ポリアリルアミン(II)の塩としては、塩酸塩、硫酸塩、及びリン酸塩などの無機塩を挙げることができる。
(n及びmは、上記と同意義である。MCNOはシアン酸の塩(M)を意味する。)。
なお、ポリアリルアミン(II)又はその塩の製造方法は既に公知であり、具体的には例えば、特開昭60−106803号公報の記載に従って調製することができる。塩を含まないフリーのタイプのポリアリルアミン(II)は、既知のポリアリルアミンの塩をアルカリで中和後、副生する中和塩を水に対して透析することで調製することができる。また、市販のポリアリルアミン(塩フリー)を使用することもできる。かかる市販品としては、濃度15%のポリアリルアミン(分子量約1万)水溶液(PAA−15:日東紡績(株)製)、濃度10%のポリアリルアミン(分子量約1万)水溶液(PAA−10C:日東紡績(株)製)、濃度20%のポリアリルアミン(分子量約1万)水溶液(PAA−L:日東紡績(株)製)、及び濃度20%のポリアリルアミン(分子量約10万)水溶液(PAA−H:日東紡績(株)製)を例示することができる。
ポリアリルアミン(II)を溶液にするために使用する溶媒としては、水、有機溶媒又はこれらの混合液を挙げることができる。有機溶媒としては、ポリアリルアミンの溶解性から極性溶媒であることが好ましく、例えばメタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール等のアルコール類;アセトニトリル、ホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン等を挙げることができる。反応に使用するポリアリルアミン溶液におけるポリアリルアミン濃度としては、制限されないが、通常1〜50重量%、好ましくは2〜30重量%、より好ましくは5〜20重量%を挙げることができる。
ポリアリルアミン(II)又はその塩と反応させるシアン酸塩(MCNO)としては、シアン酸カリウムやシアン酸ナトリウム等のシアン酸のアルカリ金属塩を好適に例示することができる。好ましくはシアン酸カリウムである。かかるシアン酸塩の使用割合としては、上記ポリアリルアミン(II)にカルバモイル基を有する置換基が所望の割合(導入率)(一般式(III)中、nが0.4≦n≦1)で導入されるように、化学量論的に必要な計算量を挙げることができる。シアン酸塩の使用割合として、具体的には、ポリアリルアミン1モルに対して、0.4〜10モルになるような割合を挙げることができる。上限は10モル以下であればよいが、好ましくは5モル以下、より好ましくは3モル以下である。下限は該置換基の導入率(カルバモイル化度)に応じて対応するモル数に設定することができる。例えば、カルバモイル化度を0.4にする場合には0.4モル程度、0.8にする場合には0.8モル程度に設定調整することができる。
ポリアリルアミン(II)又はその塩とシアン酸塩(MCNO)とを反応させて、Rが水素原子で、Rがカルバモイル基である本発明の高分子化合物(III)を製造する場合、最初に、原料のポリアリルアミン(II)又はその塩の溶液にシアン酸塩(MCNO)をゆっくりと滴下することが好ましい。このとき、溶媒にシアン酸塩(MCNO)を溶解させて、原料のポリアリルアミン(II)又はその塩の溶液に滴下することもできる。この場合、シアン酸塩(MCNO)を溶解させるための溶媒は、通常、原料のポリアリルアミンを溶解させるための溶媒と同じである。ポリアリルアミン(II)又はその塩とシアン酸塩(MCNO)との反応は、撹拌しながら行うことが好ましい。反応温度は、特に制限されないが、好ましくは0〜100℃、より好ましくは30〜60℃に維持することが望ましい。反応時間も特に制限されないが、通常12〜48時間、好ましくは12〜25時間で、本発明の高温融解型高分子(III)の溶液を得ることができる。
反応終了後、副生したアルコールと反応溶媒を除去するために、反応溶液を、真空乾燥することにより、本発明の高温融解型高分子(III)を、固体として得ることができる。
また、本発明の高温融解型高分子(III)の付加塩は、原料として、ポリアリルアミンの部分塩を用い、これとシアン酸塩(MCNO)とを、フリーのポリアリルアミンを用いた場合と同様に、反応させることにより、製造することができる。通常、原料のポリアリルアミンの部分塩とシアン酸塩(MCNO)とを反応させた場合、そのポリアリルアミンのNHで、塩を形成していないNHが、優先的に水素結合性置換基で置換される。反応終了後、得られる高温融解型高分子(III)の塩の溶液を、アセトン等の溶媒に加えて再沈することにより、本発明の高温融解型高分子(III)の付加塩を、固体として取り出すことが可能となる。
2.本発明の高温融解型高分子を用いた細胞塊の作製方法
本発明は、上記高温融解型高分子を細胞培養系に添加することによって細胞塊を作製し、さらには細胞の単層培養状態と細胞塊培養状態を可逆的に制御することができる。このような細胞塊の作製及び制御は、本発明の高温融解型高分子の温度制御による高分子の構造変化に起因していると考えられる。本発明によれば、本発明の高温融解型高分子がその相転移温度よりも低い温度で不溶し、不溶相を形成する性質と、相転移温度よりも高い温度で溶解し、溶解相を形成する性質を利用し、培養温度を単に制御することによって容易に細胞塊を作製する方法を提供することができる。
一実施形態において、本発明は、(a)上記高温融解型高分子(I)又はその付加塩の水溶液(細胞培養液を含む)を用意する工程、(b)該高温融解型高分子(I)又はその付加塩の水溶液を、細胞培養プレートに細胞を播種前又は播種後に添加する工程;及び(c)5%CO存在下、相転移温度より低い温度又は37℃で、1〜48時間、細胞を培養する工程を含む細胞塊を作製する方法を提供することができる。ここで、本発明の細胞塊を作製するために使用される高温融解型高分子(I)又はその付加塩の水溶液の濃度は、細胞塊を作製することができる濃度であれば特に限定されない。例えば、該水溶液の濃度は、0.1mg/ml以上であればよく、好ましくは0.5〜2000mg/ml、より好ましくは1〜1000mg/mlである。
本発明によれば、細胞培養系に高温融解型高分子(I)又はその付加塩を添加する場合の水溶液は、限定されないが、1mMの塩を含有する水溶液であってもよい。別の態様として、水溶液は、血清不含又は血清含有の培養培地であってもよい。使用される培養培地は、通常、培養される細胞が増殖及び/又は分化等の所望の機能を発揮又は維持できるように調整された市販の培地であってもよい。例えば、細胞が哺乳動物の場合には、例えば、Alpha−MEM、Doulbecco’s modified Eagle’s Medium(DMEM)、DMEM:Ham’s F12混合培地(1:1)、RPMI1640、DMEM:RPMI1640混合培地(1:1)、Ham’s F12 medium(大日本製薬株式会社等)、Ham’s F12:RPMI1640混合培地(1:1)、Williams’ medium Eなどの市販培地を使用することができる。また、細胞を培養する場合に、通常、使用されている血清(例えば、FBS、FCS)を培地に添加してもよい。培地に添加した血清の最終濃度は、1〜10%、好ましくは5%である。
本発明によれば、本発明の細胞塊を作製する場合に使用される細胞、培養容器(培養プレートを含む)、培養装置(インキュベーターなど)、細胞培地は、限定されない。細胞は、作製された細胞塊の使用目的に応じて、適宜に選択可能である。後述する実施例2に示されるように、本発明の方法を用いることによって、細胞種を限定することなく、細胞塊を作製することができる。ここで、使用される培養細胞は、培養基材に接着性の培養であってもよく、又は培養基材に接着させず、浮遊培養に適した細胞のいずれであってもよい。また、細胞の由来も限定されず、細胞は、限定されないが、哺乳動物細胞、酵母、昆虫細胞等の真核細胞、大腸菌、枯草菌などの原核細胞であってもよい。さらに、培養容器及び培養プレートは、培養細胞に応じて、適宜に選択可能である。例えば、組織培養用ディッシュ(IWAKI)などの市販のものを使用することができる。また、培養装置も限定されず、細胞を培養するために必要とされる条件、例えば、温度、湿度、CO濃度を制御できるものであれば限定されない。
細胞塊を形成させるためには、細胞を培養する温度を調節することによって、その目的が達成される。上記した通り、高温融解型高分子(I)又はその付加塩は、水溶液又は血清を含んでもよい培養液中で、4〜50℃の範囲に相転移温度を有し、当該相転移温度より低い温度で不溶相を形成し、当該相転移温度より高い温度で溶解相を形成する特性を有する。したがって、高温融解型高分子(I)の相転移温度が、細胞を培養する場合に適しているとされる37℃よりも低い場合には、その相転移温度よりも低い温度で細胞を培養することが好ましい。一方、高温融解型高分子(I)の相転移温度が、37℃よりも高い場合には、37℃又はそれよりも低い温度で細胞を培養することが好ましい。なお、高温融解型高分子(I)の水溶液又は培養培地に血清を含む場合の相転移温度を測定すると、血清を含まない場合の該高分子の相転移温度と比較して高くなることがある。このような場合に、相転移温度が37℃を超える場合には、37℃又はそれよりも低い温度で細胞を培養することが好ましい。
本明細書で使用するとき、用語「細胞塊」とは、単層培養状態と比較して、3次元的に細胞が集合した状態を指し、このような集合体を構成する細胞数は2個以上である。細胞塊を構成する細胞数や細胞塊の径を調節するためには、増殖因子やサイトカインなので添加剤を必要とせず、培養時間、培養温度を適宜調節することによって可能となる。細胞塊の径の調整は、集合する各々の細胞の移動(運動)に起因していると考えられるため、培養時間を長く又は短くし、さらには細胞の移動能を抑制しない程度の培養温度の条件を採用することによって行うことができる。なお、実施例1において示されるように、細胞塊の径が大きくなると、細胞塊の内部に存在する細胞に栄養供給がなされないため、壊死する細胞も出現することがある。したがって、細胞塊を形成するための培養時間は、0.5〜96時間、好ましくは1〜72時間である。
3.本発明の高温融解型高分子を用いた単層培養状態と細胞塊培養状態を制御する方法
本発明によれば、本発明によって作製された細胞塊を、温度調節することによって、単層培養状態にすることができ、さらに単層培養状態から細胞塊培養状態に戻すことができる。より具体的には、本発明は、単層培養状態と細胞塊培養状態を制御する方法であって、(a)前述の細胞塊を作製する方法を用いて細胞塊を作製する工程;(b)5%CO存在下、相転移温度より高い温度又は37℃で、1〜48時間、細胞塊を培養することによって細胞を単層状態にする工程;及び(c)場合により、工程(a)を繰り返すことによって再び細胞塊を作製する工程、を含む制御方法を提供することができる。ここで、上記の工程(a)及び(b)における細胞塊を作製する工程は、前述の通りである。一方、工程(b)は、一度作製された細胞塊を温度制御によって単層培養状態に戻す工程である。ここでは、細胞塊を作製する場合の相転移温度の利用とは反対に、高温融解型高分子(I)又はその付加塩が、工程(a)と同じ水溶液又は細胞培養液中で溶解し、溶解相を形成する温度まで上昇させることを利用している。すなわち、工程(b)においては、高温融解型高分子(I)の相転移温度が、細胞を培養する場合に適しているとされる37℃よりも低い場合には、その相転移温度よりも高い温度又は37℃で細胞を培養することが好ましく、一方、高温融解型高分子(I)の相転移温度が、37℃よりも高い場合には、相転移温度で培養することが好ましい。言うまでもないが、相転移温度が37℃より遥かに高い場合には、細胞が死滅する可能性があるため、このような相転移温度を有する高温融解型高分子の使用は適さない。
以下、製造例及び実験例を挙げて本発明の構成及び効果をより明確に説明する。但し、本発明はこれらの実施例によって何ら制限されるものではない。
実施例1:高温融解型高分子による細胞塊の形成
(1)材料
培養系に添加する高温融解型高分子として、主鎖となるポリ(アリルアミン)(「PAA」)の分子量が15,000Daであり、側鎖にウレイド基を93%の含有率で有するポリ(アリルアミン−co−ポリアリルウレア)(以下、「PAU15K93」と称する)を合成し、使用した。細胞は、3T3細胞(マウス由来線維芽細胞)を用いた。培養容器として、35mm径の細胞培養ディッシュ(細胞培養用ペトリディッシュ、Nunc)を使用した。細胞培養溶液は、ウシ胎児血清(FBS)を5%又は10%含有させたダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)を使用した。
(2)方法
3×10細胞/35mmディッシュになるように調整した3T3細胞をディッシュに播種した。5%COの存在下、37℃にて24時間培養した。次に、5%FBSを含有するDMEM中に溶解したPAU15K93溶液(終濃度1mg/mL、2mL)と培地交換した。その後、37℃にて細胞をインキュベートした。また、24時間後の細胞塊については、死細胞の指標であるPropidium Iodide(PI)で染色後、共焦点レーザー走査型顕微鏡(Confocal Laser Scanning Microscopy、Zeiss)下で細胞の形態変化を観察した。具体的には、24時間後の細胞塊を4%パラホルムアルデヒドによって固定し、PI染色後、観察を行った。さらに、別の24時間後の細胞塊を、生細胞の指標であるCalcein−AMで染色後、共焦点レーザー走査型顕微鏡によって観察を行った。
(3)結果
PAU15K93の相転移温度は、透過率測定から5%FBSを含まないDMEM中では43℃であり、5%FBSを含有するDMEM中では45℃であった。37℃にて3T3細胞をインキュベートし、培地交換から24時間及び48時間後に顕微鏡で観察した結果を図1に示す。図1Aは、24時間後の細胞の形態を観察したものであるが、PAU未添加と比較して、細胞塊の形成により培養基材上で細胞が占める面積は非常に少なくなり、コアセルベートが非常に多いことが観察された。48時間後には、細胞塊の径はさらに多くなった(図1B)。さらに、共焦点レーザー走査型顕微鏡を用いて観察した結果を図2に示す。この観察結果からも明らかなように、細胞塊は、XY平面、Z軸方向ともに細胞が凝集している球状のスフェロイドであった。観察した細胞塊の直径は約50μm、高さは約50μmであった。なお、本観察では、細胞をパラホルムアルデヒドによって固定したため、全ての細胞がPI染色された。また、生細胞をCalcein−AMで染色した結果を図3に示す。細胞塊内部に若干の死細胞(PI染色)が観察されるものの、細胞塊は、主に生細胞(Calcein−AM染色)で形成されていることが分かった。
実施例2:細胞種の相違による細胞塊の形成
実施例1では、3T3細胞による細胞塊の形成を観察したが、細胞塊の形成における細胞種の相違による影響を検討した。培養細胞として、HepG2細胞(ヒト肝癌由来細胞株)を用いた。培養条件、PAUの添加濃度等は実施例1と同様であったが、培養液に含まれるFBS濃度を5%及び10%とした。図4A及びBに示されるように、HepG2細胞を用いた場合も、3T3細胞と同様に、PAU未添加系では細胞塊が形成されなかったが、同濃度のPAU添加系では細胞塊が形成された。この結果から、本発明の細胞塊を作製する方法は、細胞種の相違による影響はないといえる。なお、図4Bにおいては、FBS濃度の差による細胞塊の形成を検討したところ、FBSが高濃度(10%)である培養系においては、細胞塊がより形成し易かった。
実施例3:単層培養状態と細胞塊培養状態の可逆的制御
培養温度の変化によって、単層培養状態と細胞塊培養状態を可逆的に制御できるかどうかを試みた。高温融解型高分子としてPAU5K91を用いた。PAU5K91の相転移温度は、透過率測定から5%FBSを含まないDMEM中では23.5℃であり、5%FBSを含有するDMEM中では37℃であった。細胞種、播種濃度、PAUの濃度及び添加量は実施例1と同様とした。PAUを添加し、3T3細胞を24時間培養後の細胞の形態観察(明視野)では、径は小さいながらも細胞塊を形成していた(図5、パネルB)。その後、25℃を維持した系と37℃に上昇させた系を用意し、それぞれ24時間培養(PAU添加から48時間)後、細胞の形態を観察した。25℃に維持した径では、細胞塊の径はさらに大きくなった(パネルC)のに対して、37℃に変化させた系では、細胞が伸展し、細胞塊状態から単層状態に変化した(パネルE)。さらに、温度を37℃から再度25℃に変化させ、48時間培養した系では、単層状態から細胞塊状態に戻った(パネルF)。このように、本発明のPAUの使用によって、単に培養温度を変化させるだけ単層培養状態と細胞塊培養状態を制御できることが分かった。
本明細書に引用する全ての刊行物及び特許文献は、参照により全体として本明細書中に援用される。なお、例示を目的として、本発明の特定の実施形態を本明細書において説明したが、本発明の精神及び範囲から逸脱することなく、種々の改変が行われる場合があることは、当業者に容易に理解されるであろう。

Claims (4)

  1. 細胞塊を作製する方法であって、下記:
    (a)下記式(I):
    (式中、
    は、−NH、−CONH、−COONH、−COOH、
    で示される置換基からなる群から選択され;
    は、下式:
    で示される置換基を意味し;
    mは、10以上の整数を意味し;
    nは、0.4≦n≦1を満たす数を意味し;及び
    p及びqは、独立して、0〜6の整数を意味する)
    で表される化合物又はその付加塩の水溶液を用意する工程;
    (b)上記工程(a)で用意した化合物又はその付加塩の水溶液を、細胞培養プレートに細胞を播種前又は播種後に添加する工程;及び
    (c)5%CO存在下、(i)相転移温度が37℃より低い場合は、相転移温度より低い温度で、又は(ii)相転移温度が37℃より高い場合は、37℃以下の温度で、1〜48時間、細胞を培養する工程
    を含み、ここで、工程(b)で使用される式(I)で表される化合物又はその付加塩は、細胞培養液中で、4〜50℃の範囲に相転移温度を有し、当該相転移温度より低い温度で不溶相を形成し、当該相転移温度より高い温度で溶解相を形成する、細胞塊を作製する方法。
  2. 式(I)において、p及びqが0であり、Rが−NHである、請求項1に記載の作製方法。
  3. 式(I)で表される化合物又はその付加塩の水溶液の濃度が、1〜1000mg/mlである、請求項1又は2に記載の作製方法。
  4. 単層培養状態と細胞塊培養状態を制御する方法であって、下記:
    (a)請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法を用いて細胞塊を作製する工程;
    (b)5%CO存在下、(i)相転移温度が37℃より低い場合は、相転移温度より高い温度若しくは37℃で、又は(ii)相転移温度が37℃より高い場合は、相転移温度で、1〜72時間、細胞塊を培養することによって細胞を単層状態にする工程;及び
    (c)場合により、工程(a)を繰り返すことによって再び細胞塊を作製する工程
    を含む制御方法。
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