JP6473018B2 - プリント配線板用基材の製造方法、プリント配線板用基材及びプリント配線板 - Google Patents

プリント配線板用基材の製造方法、プリント配線板用基材及びプリント配線板 Download PDF

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Description

本発明は、プリント配線板用基材の製造方法、プリント配線板用基材及びプリント配線板に関する。
可撓性を有するベースフィルムの両面に導電パターンを配設したフレキシブルプリント配線板が知られている。このようなフレキシブルプリント配線板101は、図8に示すように、ベースフィルム102の両面に導電パターンを有する導電層103、104が積層され、このベースフィルム102及び一方の導電層103を貫通する貫通孔105が形成される。そして、従来のフレキシブルプリント配線板101は、この貫通孔105及び他方の導電層104によって形成される凹部に導電材料を充填し、この導電材料を硬化することでビアホール106が形成される。これにより、一対の導電層103、104が電気的に接続される。
また、このような従来のプリント配線板における導電材料としては、導電粒子及びバインダー樹脂を含む導電ペーストが用いられている(特開2013−254910号公報参照)。つまり、従来のビアホールは、上記導電粒子がバインダー樹脂によって固着されて形成されている。
特開2013−254910号公報
このように、従来のプリント配線板は、ベースフィルムの両面に一対の導電層を積層し、この導電層間をビアホールによって電気的に接続するものである。つまり、従来のプリント配線板では、導電層を形成した上で、ビアホールが形成される。従って、ビアホールを形成するためには、導電パターンを形成する工程に加えて、さらに別個のビアホール形成工程が必要となる。そのため、従来のプリント配線板は、製造工程の簡素化が十分に促進されていない。
本発明は、上述のような事情に基づいてなされたものであり、ビアホールを容易かつ確実に製造することができると共に、製造工程を少なくすることが可能なプリント配線板用基材の製造方法を提供することを目的とする。また、本発明は、製造工程の増加を抑えることが可能なプリント配線板用基材及びプリント配線板を提供することを目的とする。
上記課題を解決するためになされた本発明の一態様に係るプリント配線板用基材の製造方法は、絶縁性を有するベースフィルムに1又は複数の貫通孔を形成する工程と、上記ベースフィルムの少なくとも一方の面に金属粒子を含有するインクを塗工する工程と、上記塗工したインクを焼成する工程とを備え、上記金属粒子の平均粒子径が1nm以上500nm以下である。
上記課題を解決するためになされた本発明の他の一態様に係るプリント配線板用基材は、1又は複数の貫通孔が形成され、絶縁性を有するベースフィルムと、このベースフィルムの少なくとも一方の面に形成される金属粒子の焼結層とを備えるプリント配線板用基材であって、上記貫通孔内に形成され、上記焼結層と同様の金属粒子の焼結体から構成されるビアホールをさらに備え、上記金属粒子の平均粒子径が1nm以上500nm以下である。
上記課題を解決するためになされた本発明の他の一態様に係るプリント配線板は、当該プリント配線板用基材を用い、サブトラクティブ法又はセミアディティブ法により形成される。
本発明のプリント配線板用基材の製造方法は、ビアホールを容易かつ確実に製造することができると共に、製造工程を少なくすることができる。また、本発明のプリント配線板用基材及びプリント配線板は、製造工程の増加を抑えることができる。
本発明の一実施形態に係るプリント配線板用基材の製造方法で用いるベースフィルムを示す模式的断面図である。 本発明の一実施形態に係るプリント配線板用基材の製造方法の貫通孔形成工程を説明する模式的断面図である。 本発明の一実施形態に係るプリント配線板用基材の製造方法の塗工工程の第1工程を説明する模式的断面図である。 本発明の一実施形態に係るプリント配線板用基材の製造方法の塗工工程の第2工程を説明する模式的断面図である。 本発明の一実施形態に係るプリント配線板用基材の製造方法の焼成工程を説明する模式的断面図である。 本発明の一実施形態に係るプリント配線板用基材の製造方法の無電解めっき工程を説明する模式的断面図である。 本発明の一実施形態に係るプリント配線板用基材の製造方法の電気めっき工程を説明する模式的断面図である。 本発明の一実施形態に係るプリント配線板用基材を示す模式的断面図である。 図2のプリント配線板用基材のビアホールを示す模式的部分拡大図である。 図2のプリント配線板用基材とは異なる実施形態に係るプリント配線板用基材を示す模式的断面図である。 図2及び図4のプリント配線板用基材とは異なる実施形態に係るプリント配線板用基材を示す模式的断面図である。 本発明の一実施形態に係るプリント配線板を示す模式的断面図である。 本発明の他の実施形態に係るプリント配線板用基材の製造方法の塗工工程を説明する模式的断面図である。 従来のプリント配線板を示す模式的断面図である。
[本発明の実施形態の説明]
最初に本発明の実施態様を列記して説明する。
本発明の一態様に係るプリント配線板用基材の製造方法は、絶縁性を有するベースフィルムに1又は複数の貫通孔を形成する工程と、上記ベースフィルムの少なくとも一方の面に金属粒子を含有するインクを塗工する工程と、上記塗工したインクを焼成する工程とを備え、上記金属粒子の平均粒子径が1nm以上500nm以下である。
当該プリント配線板用基材の製造方法は、ベースフィルムに貫通孔を形成し、このベースフィルムの一方の面に平均粒子径が上記範囲である金属粒子を含有するインクを塗工することで、このインクをベースフィルムの一方の面に被覆させつつ上記貫通孔に充填することができる。また、当該プリント配線板用基材の製造方法は、上記ベースフィルムの一方の面に被覆され、かつ上記貫通孔に充填されたインクを焼成することで、上記金属粒子により形成される焼結体によって上記ベースフィルムの一方の面に導電パターンのベースとなる焼結層を形成し、かつ上記貫通孔内にビアホールを形成することができる。このように、当該プリント配線板用基材の製造方法は、上記ビアホールを上記焼結層と同時に容易かつ確実に製造することができるので、従来のプリント配線板用基材の製造方法に比べて製造工程を減少し、効率化及びコスト削減を促進することができる。
上記塗工工程が、上記ベースフィルムの一方の面に上記インクを塗工する第1工程と、上記ベースフィルムの他方の面に上記インクを塗工する第2工程とを有するとよい。このように、上記塗工工程で、上記ベースフィルムの両面に上記インクを塗工することによって、例えば同じ設備や材料を用いて効率的かつ低コストで両面プリント配線板用基材を製造することができる。
上記ベースフィルムの貫通孔の平均径としては、10μm以上100μm以下が好ましい。このように、上記ベースフィルムの貫通孔の平均径が上記範囲であることによって、表面張力によって上記インクを貫通孔内に保持しやすくなり、プリント配線板用基材の製造の容易化が促進される。
上記インクにおける金属粒子の含有量としては、5質量%以上50質量%以下が好ましい。このように、上記インクにおける金属粒子の含有量が上記範囲であることによって、上記インクを貫通孔内に保持しやすくなる粘度に調整できるため、プリント配線板用基材の製造の容易化が促進される。
上記焼成工程により形成される焼結層の外面に無電解めっきを施す工程をさらに備えるとよい。このように、上記焼成工程により形成される焼結層の外面に無電解めっきを施す工程を備えることによって、上記焼結層を形成する金属粒子間の空隙に無電解めっきによるめっきが充填され、この焼結層とベースフィルムとの剥離強度が向上すると共に導通性を高めることができる。
上記焼成工程により形成される焼結層の外面側に電気めっきを施す工程をさらに備えるとよい。このように、上記焼成工程により形成される焼結層の外面側に電気めっきを施す工程を備えることによって、めっきの厚みを容易かつ確実に調整することができる。
上記インクの金属粒子が銅又は銅合金を主成分とするとよい。このように、上記インクの金属粒子が銅又は銅合金を主成分とすることによって、製造コストを抑えつつ、導通性を向上することができる。
上記課題を解決するためになされた本発明の他の一態様に係るプリント配線板用基材は、1又は複数の貫通孔が形成され、絶縁性を有するベースフィルムと、このベースフィルムの少なくとも一方の面に形成される金属粒子の焼結層とを備えるプリント配線板用基材であって、上記貫通孔内に形成され、上記焼結層と同様の金属粒子の焼結体から構成されるビアホールをさらに備え、上記金属粒子の平均粒子径が1nm以上500nm以下である。
当該プリント配線板用基材は、焼結層と同様の金属粒子の焼結体から構成されるビアホールを貫通孔内に備えるので、従来のプリント配線板のように絶縁層を形成した上でさらに別個の工程によってビアホールを形成することを要しない。そのため、当該プリント配線板用基材は、従来のプリント配線板に比べて製造工程の減少を図ることができる。
上記焼結層の外面の平均位置を基準とした上記ビアホール表面の最大凹凸高さの上記貫通孔の平均径に対する比の上限としては、1/10が好ましい。このように、上記ビアホール表面の最大凹凸高さの上記貫通孔の平均径に対する比を上記範囲とすることによって、ビアホール表面の平坦化が促進され、例えばビアホールの表面に気泡なくカバーコートを施すことができる。
上記ベースフィルムの両面に焼結層を備えるとよい。このように、上記ベースフィルムの両面に焼結層を備えることによって、製造の効率化及び低コスト化を促進することができる。
上記ベースフィルムの貫通孔の平均径としては、10μm以上100μm以下が好ましい。このように、上記ベースフィルムの貫通孔の平均径が上記範囲であることによって、ビアホールを的確に形成して導通性を高めることができる。
上記焼結層の外面に形成されるめっき金属を有するとよい。このように、上記焼結層の外面にめっき金属を有することによって、焼結層とベースフィルムとの剥離強度が向上すると共に導通性が高められる。
上記焼結層及びめっき金属により形成される層の外面に金属めっき層を有するとよい。このように、上記焼結層及びめっき金属により形成される層の外面に金属めっき層を有することによって、これらによって形成される金属層の厚みを容易かつ確実に調整することができる。
上記金属粒子が銅又は銅合金を主成分とするとよい。このように、上記金属粒子が銅又は銅合金を主成分とすることによって、製造コストを抑えつつ、導通性を向上することができる。
上記ビアホールの空隙率としては、0.1%以上50%以下が好ましい。このように、上記ビアホールの空隙率が上記範囲であることによって、導通性を十分に高めることができる。
上記課題を解決するためになされた本発明の他の一態様に係るプリント配線板は、当該プリント配線板用基材を用い、サブトラクティブ法又はセミアディティブ法により形成される。
当該プリント配線板は、当該プリント配線板用基材を用いるので、従来のプリント配線板に比べて製造工程の減少を図ることができる。
なお、本発明において、「平均粒子径」とは、分散液中の金属粒子の体積粒度分布の中心径D50で表される平均粒子径を指す。「平均径」とは、同面積の真円に換算した場合の径を意味する。「ビアホールの空隙率」とは、ビアホールを形成する貫通孔内部の焼結体における空隙の割合をいい、ASTM−D−792に準拠してビアホールの密度を測定することで求めることができる。また、「ビアホール表面の最大凹凸高さ」、「平均粒子径」、「平均径」、「ビアホールの空隙率」等の微細領域のパラメータについては、ビアホールの断面を電子顕微鏡で拡大観察することによって測定することもできる。
[本発明の実施形態の詳細]
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施形態に係るプリント配線板用基材の製造方法、プリント配線板用基材及びプリント配線板について説明する。
[第一実施形態]
<プリント配線板用基材の製造方法>
図1A乃至図1Gを参照して、当該プリント配線板用基材の製造方法について説明する。当該プリント配線板用基材の製造方法は、可撓性を有するフレキシブルプリント配線板用基材の製造に用いられる。当該プリント配線板用基材の製造方法は、絶縁性を有するベースフィルムに1又は複数の貫通孔を形成する工程と、このベースフィルムの両面に金属粒子を含有するインクを塗工する工程と、塗工したインクを焼成する工程とを主として備える。また、当該プリント配線板用基材の製造方法は、上記焼成工程により形成される焼結層の外面に無電解めっきを施す工程と、上記焼成工程により形成される焼結層の外面側に電気めっきを施す工程とを備える。
(ベースフィルム)
まず、当該プリント配線板用基材の製造方法で用いられるベースフィルムについて説明する。図1Aのベースフィルム1は、絶縁性及び可撓性を有する。ベースフィルム1の主成分としては、例えばポリイミド、ポリエチレンテレフタレート、フッ素樹脂、液晶ポリマー等の合成樹脂が挙げられる。中でも、絶縁性、柔軟性、耐熱性等に優れるポリイミドが好ましい。
ベースフィルム1の平均厚みの下限としては、10μmが好ましく、15μmがより好ましく、25μmがさらに好ましい。一方、ベースフィルム1の平均厚みの上限としては、100μmが好ましく、60μmがより好ましく、40μmがさらに好ましい。ベースフィルム1の平均厚みが上記下限未満であると、絶縁性及び機械的強度が不十分となるおそれがある。また、ベースフィルム1に後述する貫通孔2を設け、この貫通孔2にインクを充填した際にインクの膜厚が十分に得られず、このインクを焼成して得られるビアホール5の表面を平坦化し難くなるおそれがある。逆に、ベースフィルム1の平均厚みが上記上限を超えると、上記インクの使用量が不必要に増加してコストが嵩むおそれがある。なお、「平均厚み」とは、対象物の厚み方向に切断した断面における測定長さ内の表面側の界面の平均線と、裏面側の界面の平均線との間の距離を指す。ここで、「平均線」とは、界面に沿って引かれる仮想線であって、界面とこの仮想線とによって区画される山の総面積(仮想線よりも上側の総面積)と谷の総面積(仮想線よりも下側の総面積)とが等しくなるような線を指す。
また、ベースフィルム1の後述する焼結層4a、4bが積層される面(固着面)に親水化処理を施すことが好ましい。上記親水化処理としては、例えばプラズマを照射して固着面を親水化するプラズマ処理や、アルカリ溶液で固着面を親水化するアルカリ処理を採用することができる。固着面に親水化処理を施すことにより、固着面に対するインクの表面張力が小さくなるので、インクを固着面に均一に塗布することができる。
<貫通孔形成工程>
貫通孔形成工程は、図1Bに示すように、絶縁性を有するベースフィルムに1又は複数の貫通孔2を形成する。貫通孔2は、ベースフィルム1の平面方向と垂直な方向に形成される。貫通孔2の形成方法としては、特に限定されるものではなく、例えばエッチング加工、レーザー加工、パンチング加工等が挙げられる。
貫通孔2の平均径の下限としては、10μmが好ましく、20μmがより好ましく、30μmがさらに好ましい。一方、貫通孔2の平均径の上限としては、100μmが好ましく、70μmがより好ましく、50μmがさらに好ましい。貫通孔2の平均径が上記下限未満であると、ビアホール5を形成した際に導通性が十分に得られないおそれがある。逆に、貫通孔2の平均径が上記上限を超えると、上記インクを貫通孔2に充填した際に貫通孔2内にインクを適切に保持できず、液漏れを生じるおそれがある。
<塗工工程>
塗工工程では、ベースフィルム1の両面に金属粒子を含有するインクを塗工する。上記塗工工程は、ベースフィルム1の一方の面に上記インクを塗工する第1工程と、ベースフィルム1の他方の面に上記インクを塗工する第2工程とを有する。
(第1工程)
第1工程は、図1Cに示すように、ベースフィルム1の一方の面に金属粒子を含有するインクを塗工する。上記第1工程で塗工された上記インクは、ベースフィルム1の一方の面を被覆すると共に貫通孔2に充填され、塗膜3aを形成する。以下、上記第1工程について詳説する。
(金属粒子)
上記インクに分散させる金属粒子は、高温処理法、液相還元法、気相法等で製造することができる。中でも、液相還元法によれば、製造コストをより低減できる上、水溶液中での攪拌等により、容易に金属粒子の粒子径を均一にすることができる。
液相還元法によって金属粒子を製造するためには、例えば水に金属粒子を形成する金属のイオンのもとになる水溶性の金属化合物と分散剤とを溶解させると共に、還元剤を加えて一定時間金属イオンを還元反応させればよい。液相還元法で製造される金属粒子は、形状が球状又は粒状で揃っており、しかも微細な粒子とすることができる。上記金属イオンのもとになる水溶性の金属化合物としては、例えば銅の場合は、硝酸銅(II)(Cu(NO)、硫酸銅(II)五水和物(CuSO・5HO)等を挙げることができる。また銀の場合は、硝酸銀(I)(AgNO)、メタンスルホン酸銀(CHSOAg)等、金の場合はテトラクロロ金(III)酸四水和物(HAuCl・4HO)、ニッケルの場合は塩化ニッケル(II)六水和物(NiCl・6HO)、硝酸ニッケル(II)六水和物(Ni(NO・6HO)等を挙げることができる。他の金属粒子についても、塩化物、硝酸化合物、硫酸化合物等の水溶性の化合物を用いることができる。中でも、上記金属粒子としては、銅又は銅合金を主成分とすることが好ましい。このように、上記インクの金属粒子が銅又は銅合金を主成分とすることによって、製造コストを抑えつつ、導通性を向上することができる。
上記還元剤としては、液相(水溶液)の反応系において、金属イオンを還元及び析出させることができる種々の還元剤を用いることができる。この還元剤としては、例えば水素化ホウ素ナトリウム、次亜リン酸ナトリウム、ヒドラジン、3価のチタンイオンや2価のコバルトイオン等の遷移金属のイオン、アスコルビン酸、グルコースやフルクトース等の還元性糖類、エチレングリコールやグリセリン等の多価アルコールなどが挙げられる。中でも、還元剤としては3価のチタンイオンが好ましい。なお、3価のチタンイオンを還元剤とする液相還元法は、チタンレドックス法という。このチタンレドックス法では、3価のチタンイオンが4価に酸化される際の酸化還元作用によって金属イオンを還元し、金属粒子を析出させる。チタンレドックス法で得られる金属粒子は、粒子径が小さくかつ揃っているため、金属粒子がより高密度に充填され、塗膜3aをより緻密な膜に形成することができる。
金属粒子の粒子径を調整するには、金属化合物、分散剤及び還元剤の種類並びに配合割合を調整すると共に、金属化合物を還元反応させる際に、攪拌速度、温度、時間、pH等を調整すればよい。反応系のpHの下限としては7が好ましく、反応系のpHの上限としては13が好ましい。反応系のpHを上記範囲とすることで、微小な粒子径の金属粒子を得ることができる。このときpH調整剤を用いることで、反応系のpHを上記範囲に容易に調整することができる。このpH調整剤としては、塩酸、硫酸、硝酸、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、アンモニア等の一般的な酸又はアルカリが使用できるが、特に周辺部材の劣化を防止するために、アルカリ金属、アルカリ土類金属、ハロゲン元素、硫黄、リン、ホウ素等の不純物を含まない硝酸及びアンモニアが好ましい。
金属粒子の平均粒子径の下限としては、1nmとされ、10nmがより好ましく、30nmがさらに好ましい。一方、金属粒子の平均粒子径の上限としては、500nmとされ、300nmがより好ましく、100nmがさらに好ましい。金属粒子の平均粒子径が上記下限未満であると、インク中での金属粒子の分散性及び安定性が低下するおそれがある。逆に、金属粒子の平均粒子径が上記上限を超えると、金属粒子が沈殿しやすくなるおそれがあると共にインクを塗布した際に金属粒子の密度が不均一になるおそれがある。
インク中の金属粒子の含有割合の下限としては、5質量%が好ましく、10質量%がより好ましく、20質量%がさらに好ましい。また、インク中の金属粒子の含有割合の上限としては、50質量%が好ましく、40質量%がより好ましく、30質量%がさらに好ましい。金属粒子の含有割合が上記下限未満であると、インクの粘度が低下して上記インクを貫通孔2に充填した際に液漏れを生じるおそれがある。逆に、金属粒子の含有割合が上記上限を超えると、粘度が高くなり、上記インクを貫通孔2に充填した上このインクを焼成して得られるビアホール5の表面が平坦化し難くなるおそれがある。
(その他の成分)
上記インクには、金属粒子以外に分散剤が含まれていてもよい。この分散剤としては、特に限定されず、金属粒子を良好に分散させることができる種々の分散剤を用いることができる。分散剤の分子量の下限としては、2,000が好ましく、分散剤の分子量の上限としては、30,000が好ましい。分子量が上記範囲の分散剤を用いることで、金属粒子をインク中に良好に分散させることができ、塗膜3aの膜質を緻密でかつ欠陥のないものにすることができる。上記分散剤の分子量が上記下限未満であると、金属粒子の凝集を防止して分散を維持する効果が十分に得られないおそれがある。一方、上記分散剤の分子量が上記上限を超えると、分散剤の嵩が大きすぎて、塗膜3aの焼成時において、金属粒子同士の焼結を阻害してボイドを生じさせるおそれがある。また、分散剤の嵩が大きすぎると、塗膜3aの緻密さが低下したり、分散剤の分解残渣が導通性を低下させるおそれがある。
上記分散剤は、周辺部材の劣化防止の観点より、硫黄、リン、ホウ素、ハロゲン及びアルカリを含まないものが好ましい。好ましい分散剤としては、分子量が上記範囲にあるもので、ポリエチレンイミン、ポリビニルピロリドン等のアミン系の高分子分散剤、ポリアクリル酸、カルボキシメチルセルロース等の分子中にカルボキシ基を有する炭化水素系の高分子分散剤、ポバール(ポリビニルアルコール)、スチレン−マレイン酸共重合体、オレフィン−マレイン酸共重合体、1分子中にポリエチレンイミン部分とポリエチレンオキサイド部分とを有する共重合体等の極性基を有する高分子分散剤などを挙げることができる。
上記分散剤は、水又は水溶性有機溶媒に溶解させた溶液の状態でインクに配合することもできる。インクに分散剤を配合する場合、分散剤の含有割合の下限としては、100質量部の金属粒子に対して1質量部が好ましい。また、分散剤の含有割合の上限としては、100質量部の金属粒子に対して60質量部が好ましい。上記分散剤の含有割合が上記下限未満であると、金属粒子の凝集防止効果が不十分となるおそれがある。一方、上記分散剤の含有割合が上記上限を超えると、塗膜3aの焼成時に過剰の分散剤が金属粒子の焼結を阻害してボイドが発生するおそれがあり、また、分散剤の分解残渣が不純物として後述する焼結層3中に残存して導通性を低下させるおそれがある。
上記インクにおける分散媒としては、例えば水が使用できる。水を分散媒とする場合、水の含有割合の下限としては、100質量部の金属粒子に対して20質量部が好ましい。また、水の含有割合の上限としては、100質量部の金属粒子に対して1,900質量部が好ましい。分散媒である水は、例えば分散剤を十分に膨潤させて分散剤で囲まれた金属粒子を良好に分散させる役割を果たすが、上記水の含有割合が上記下限未満であると、この分散剤の膨潤効果が不十分となるおそれがある。一方、上記水の含有割合が上記上限を超えると、インク中の金属粒子の含有割合が少なくなり、必要な厚みと密度とを有する良好な焼結層3を形成できないおそれがある。
上記インクには、粘度調整や蒸気圧調整等のために必要に応じて有機溶媒を配合してもよい。このような有機溶媒としては、水溶性である種々の有機溶媒が使用可能である。その具体例としては、メチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、イソブチルアルコール、sec−ブチルアルコール、tert−ブチルアルコール等のアルコール類;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類;エチレングリコール、グリセリン等の多価アルコールやその他のエステル類;エチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル等のグリコールエーテル類などが挙げられる。
インクに有機溶媒を配合する場合、有機溶媒の含有割合の下限としては、100質量部の金属粒子に対して30質量部が好ましい。また、有機溶媒の含有割合の上限としては、100質量部の金属粒子に対して900質量部が好ましい。有機溶媒の含有割合が上記下限未満であると、インクの粘度調整及び蒸気圧調整の効果が十分に得られないおそれがある。一方、有機溶媒の含有割合が上記上限を超えると、例えば水による分散剤の膨潤効果が不十分となり、インク中で金属粒子の凝集が生じるおそれがある。
なお、液相還元法で金属粒子を製造する場合、液相(水溶液)の反応系で析出させた金属粒子は、ろ別、洗浄、乾燥、解砕等の工程を経て、一旦粉末状としたものを用いてインクを調製することができる。この場合は、粉末状の金属粒子と、水等の分散媒と、必要に応じて分散剤、有機溶媒等とを所定の割合で配合し、金属粒子を含むインクとすることができる。このとき、金属粒子を析出させた液相(水溶液)を出発原料としてインクを調製することが好ましい。具体的には、析出した金属粒子を含む液相(水溶液)を限外ろ過、遠心分離、水洗、電気透析等の処理に供して不純物を除去し、必要に応じて濃縮して水を除去する。又は、逆に水を加えて金属粒子の濃度を調整した後、さらに必要に応じて有機溶媒を所定の割合で配合することによって金属粒子を含むインクを調製する。この方法では、金属粒子の乾燥時の凝集による粗大で不定形な粒子の発生を防止することができ、緻密で均一な焼結層4aを形成しやすい。
(インクの塗工方法)
金属粒子を分散させたインクをベースフィルム1の一方の面に塗工する方法としては、スピンコート法、スプレーコート法、バーコート法、ダイコート法、スリットコート法、ロールコート法、ディップコート法等の従来公知の塗工法を用いることができる。また、スクリーン印刷、ディスペンサ等によりベースフィルム1の一方の面の一部のみにインクを塗工するようにしてもよい。
(第2工程)
第2工程では、ベースフィルム1の他方の面に金属粒子を含有するインクを塗工する。第2工程では、まず、第1工程後のベースフィルム1を上下逆にする。そして、図1Dに示すように、ベースフィルム1の他方の面に上記インクを塗工する。この第2工程で用いられるインクとしては、特に限定されないが、上記第1塗工工程と同一のインクを用いることが好ましい。また、上記インクの塗工方法としては、特に限定されないが、上記第1工程と同様とすることができる。この第2工程によって、ベースフィルム1の他方の面に塗膜3bが形成される。
<焼成工程>
焼成工程は、図1Eに示すように、塗工した上記インクによって形成される塗膜3a、3bを焼成する。詳細には、上記焼成工程は、ベースフィルムの両面に塗工したインクを乾燥した後、熱処理する。この焼成工程によって上記金属粒子同士が焼結して焼結体を構成すると共にこの焼結体がベースフィルム1に固着される。これにより、ベースフィルム1の両面に焼結層4a、4bが形成されると共に貫通孔2内に焼結層4a、4bを導通するビアホール5が形成される。なお、インクに含まれ得る分散剤やその他の有機物は、焼成によって揮発又は分解される。また、焼結層4a、4bとベースフィルム1との界面近傍では、焼成によって金属粒子が酸化されるため、金属粒子に基づく金属水酸化物やその金属水酸化物に由来する基の生成を抑えつつ、金属粒子に基づく金属酸化物やその金属酸化物に由来する基(以下、これらをまとめて「金属酸化物等」ともいう。)が生成する。この焼結層4a、4bとベースフィルム1との界面近傍に生成した金属酸化物等は、ベースフィルム1を構成するポリイミド等の樹脂と強く結合するため、ベースフィルム1と焼結層4a、4bとの間の密着力が大きくなる。
上記焼成は、焼結層4a、4bとベースフィルム1との界面近傍の金属粒子の酸化を促進させるため、一定量の酸素が含まれる雰囲気下で行うことが好ましい。この場合、焼成雰囲気の酸素濃度の下限としては、1体積ppmが好ましく、10体積ppmがより好ましい。また、上記酸素濃度の上限としては、10,000体積ppmが好ましく、1,000体積ppmがより好ましい。上記酸素濃度が上記下限未満であると、焼結層4a、4bとベースフィルム1との界面近傍における金属酸化物等の生成量が少なくなり、ベースフィルム1と焼結層4a、4bとの間の密着力を向上させることができなくなるおそれがある。一方、上記酸素濃度が上記上限を超えると、金属粒子の過度の酸化により焼結層4a、4bの導通性が低下するおそれがある。
上記乾燥は、例えば室温で行うことができる。
上記熱処理温度の下限としては、150℃が好ましく、200℃がより好ましい。一方、上記熱処理の温度の上限としては、500℃が好ましく、400℃がより好ましい。上記熱処理温度が上記下限未満であると、焼結層4a、4bとベースフィルム1との界面近傍における金属酸化物等の生成量が少なくなり、ベースフィルム1と焼結層4a、4bとの間の密着力を向上させることができなくなるおそれがある。一方、上記熱処理温度が上記上限を超えると、ベースフィルム1が変形するおそれがある。なお、熱処理時間については、特に限定されないが、例えば30分以上400分以下の範囲とすればよい。
焼結層4a、4bの平均厚みの下限としては、10nmが好ましく、50nmがより好ましく、100nmがさらに好ましい。一方、焼結層4a、4bの平均厚みの上限としては、1μmが好ましく、700nmがより好ましく、500nmがさらに好ましい。焼結層4a、4bの平均厚みが上記下限未満であると、平面視において焼結層4a、4bに切れ目が生じて導通性が低下するおそれがある。逆に、焼結層4a、4bの平均厚みが上記上限を超えると、後述するめっき工程に要する時間が長くなり生産性が低下するおそれがある。
<めっき工程>
上記焼成工程によって後述する当該プリント配線板用基材11(図2参照)が得られるが、焼結層4a、4b内に空隙が残存していると、この空隙部分が破壊起点となって焼結層4a、4bがベースフィルム1から剥離しやすくなる。これに対し、図1Fに示すように、この空隙にめっき金属6a、6bを充填することで、めっき金属6a、6bが焼結層4a、4bの外面だけでなく、焼結層4a、4bの内部(焼結層4a、4bを構成する金属粒子間の隙間)に入り込み、焼結層4a、4bのベースフィルム1からの剥離が防止される。
めっき金属6a、6bを形成するためのめっき方法は、特に限定されず、無電解めっきであっても電気めっきであってもよいが、焼結層4a、4bを形成する金属粒子間の空隙をより的確に埋めることで焼結層4a、4b及びベースフィルム1の剥離強度を容易かつ確実に向上できる無電解めっきが好ましい。以下、無電解めっき工程について説明する。
(無電解めっき工程)
無電解めっき工程では、焼成工程により形成される焼結層の外面に無電解めっきを施す。無電解めっきに用いる金属としてとしては、導通性のよい銅、ニッケル、銀等を用いることができるが、上記金属粒子に銅を使用する場合には、焼結層4a、4bとの密着性を考慮して、銅又はニッケルを用いることが好ましい。なお、無電解めっきに用いるめっき液は、ニッケル以外の金属を無電解めっきに用いる場合、めっき金属に加えてニッケル又はニッケル化合物を含有させたものを用いることが好ましい。
無電解めっきの手順としては、特に限定されず、例えばクリーナ工程、水洗工程、酸処理工程、水洗工程、プレディップ工程、アクチベータ工程、水洗工程、還元工程、水洗工程等の処理と共に、公知の手段で無電解銅めっきを行えばよい。
めっき金属6a、6bの平均厚みの下限としては、0.1μmが好ましく、0.2μmがより好ましい。一方、めっき金属6a、6bの平均厚みの上限としては、1μmが好ましく、0.5μmがより好ましい。めっき金属6a、6bの平均厚みが上記下限未満であると、めっき金属6a、6bが焼結層4a、4b内の空隙に十分に充填されないおそれがある。逆に、めっき金属6a、6bの平均厚みが上記上限を超えると、無電解めっきに要する時間が長くなり生産性が低下するおそれがある。
また、焼結層4a、4b内の空隙をめっき金属6a、6bで充填した後、さらに熱処理を行うことが好ましい。この熱処理により、焼結層4a、4bとベースフィルム1との界面近傍における金属酸化物等がさらに増加するため、ベースフィルム1と焼結層4a、4bとの間の密着力をより向上させることができる。
めっき金属6a、6bの形成により後述するプリント配線板用基材21(図4参照)が得られるが、図1Gに示すように、焼結層4a、4b及びめっき金属6a、6bにより形成される層の外面に金属めっき層7a、7bを積層することで、例えばサブトラクティブ法に用いるプリント配線板用基材31(図5参照)に容易に適用できる。
金属めっき層7a、7bのめっき方法は、特に限定されず、無電解めっきであっても電気めっきであってもよいが、厚みの調整を容易かつ正確に行うことができると共に、比較的短時間で金属めっき層7a、7bを形成することができる電気めっきが好ましい。以下、電気めっき工程について説明する。
(電気めっき工程)
電気めっき工程では、上記焼成工程により形成される焼結層の外面側に電気めっきを施す。電気めっきに用いる金属としてとしては、特に限定されるものではなく、例えば導通性のよい銅、ニッケル、銀等が挙げられる。また、電気めっきの手順としても、特に限定されるものではなく、公知の電気めっき浴及びめっき条件から適宜選択すればよい。
金属めっき層7a、7bの平均厚みは、どのようなプリント回路を作製するかによって設定されるもので特に限定されないが、例えば1μm以上100μm以下とすることができる。
なお、上記めっき金属6a、6b及び金属めっき層7a、7bが同様のめっき方法(無電解めっき又は電気めっき)で形成される場合、めっき金属6a、6b及び金属めっき層7a、7bは、一つの工程で同時に形成されてもよい。
<利点>
当該プリント配線板用基材の製造方法は、ベースフィルム1に貫通孔2を形成し、このベースフィルム1の両面に平均粒子径が上記範囲である金属粒子を含有するインクを塗工することで、このインクをベースフィルム1の両面に被覆させつつ貫通孔2に充填することができる。また、当該プリント配線板用基材の製造方法は、ベースフィルム1の両面に被覆され、かつ貫通孔2に充填されたインクを焼成することで、上記金属粒子により形成される焼結体によってベースフィルム1の両面に導電パターンのベースとなる焼結層4a、4bを形成し、かつ貫通孔2内にビアホール5を形成することができる。このように、当該プリント配線板用基材の製造方法は、ビアホール5を焼結層4a、4bと同時に容易かつ確実に製造することができるので、従来のプリント配線板用基材の製造方法に比べて製造工程を減少し、効率化及びコスト削減を促進することができる。
当該プリント配線板用基材の製造方法は、上述のように貫通孔2の平均径及び上記インクの粘度が調整されることによって、例えばベースフィルム1を水平に保った状態で上記貫通孔2の上方から上記インクを塗布した場合に、このインクが表面張力によって貫通孔2内に保持される。そのため、当該プリント配線板の製造方法は、ベースフィルム1の両面に焼結層4a、4bを形成するに際し、従来のプリント配線板のように、貫通孔及び導電層によって導電ペーストを受け入れるための凹部を形成しなくてもビアホール5を形成することができる。従って、当該プリント配線板用基材の製造方法は、プリント配線板用基材の製造の容易化を図ることができると共に、製造の自由度を高めることができる。
当該プリント配線板用機材の製造方法は、上記塗工工程が、第1工程及び第2工程を有するので、例えば同じ設備や材料を用いて効率的かつ低コストでプリント配線板用基材を製造することができる。また、当該プリント配線板用基材の製造方法は、このように上記塗工工程が、第1工程及び第2工程を有することで、焼成工程によってベースフィルム1の両面に塗工したインクを同時に焼成することができ、製造工程の簡素化をさらに促進することができる。
<プリント配線板用基材>
[プリント配線板用基材の第一実施形態]
図2のプリント配線板用基材11は、ベースフィルム1と、焼結層4a、4bと、ビアホール5とを備える。図2のプリント配線板用基材11は、可撓性を有するフレキシブルプリント配線板用基材である。
(ベースフィルム)
ベースフィルム1は、絶縁性及び可撓性を有する。また、ベースフィルム1は、1又は複数の貫通孔2を有する。ベースフィルム1としては、上記製造方法で用いた図1Bのベースフィルム1と同様であるため、説明を省略する。
(焼結層)
焼結層4a、4bは、ベースフィルム1の両面に積層される。焼結層4a、4bは、金属粒子から構成され、詳細には金属粒子の焼結体から構成される。焼結層4a、4bを構成する金属粒子としては、上記塗工工程で用いられる金属粒子と同様とされ、銅又は銅合金を主成分とするのが好ましい。当該プリント配線板用基材11は、このように上記金属粒子が銅又は銅合金を主成分とすることによって、製造コストを抑えつつ、導通性を向上することができる。また、当該プリント配線板用基材11は、焼結層4a、4bがベースフィルム1の両面に積層されることで、製造の効率化及び低コスト化が促進される。
ベースフィルム1と焼結層4a、4bとの間の剥離強度の下限としては、1N/cmが好ましく、1.5N/cmがより好ましく、2N/cmがさらに好ましく、5N/cmが特に好ましい。上記剥離強度を上記下限以上とすることによって、電気的な接続信頼性の高いプリント配線板を製造できる。一方、上記剥離強度の上限としては、特に限定されないが、例えば20N/cm程度である。上記剥離強度は、例えばベースフィルム1に固着される焼結体の量や、塗膜3a、3bを焼成する際の焼成温度及び焼成時間等により制御できる。
(ビアホール)
ビアホール5は、貫通孔2内に形成され、焼結層4a、4bを導通する。ビアホール5は、焼結層4a、4bと同様の金属粒子の焼結体から構成される。貫通孔2の平均径は、上記貫通孔形成工程で形成される貫通孔2と同様に調整される。当該プリント配線板用基材11は、貫通孔2の平均径が上記範囲であることによって、ビアホール5を的確に形成して導通性を高めることができる。
ビアホール5の表面は、図3に示すように、略平坦とされている。具体的には、焼結層4a、4bの外面の平均位置を基準としたビアホール5表面の最大凹凸高さL、Lの貫通孔2の平均径Dに対する比(L/D、L/D)の上限としては、1/10が好ましく、1/20がより好ましく、1/30がさらに好ましい。このように、上記比(L/D、L/D)が上記範囲であることによって、ビアホール5表面の平坦化が促進され、例えばビアホール5の表面に気泡なくカバーコートを施すことができる。なお、上記比(L/D、L/D)は、小さい方がより平坦化が促進されて好ましいため、上記比(L/D、L/D)の下限としては、0とすることができる。また、このようなビアホール5表面の平坦化は、例えばベースフィルム1の厚みを上記下限以上としつつ、上記インクの粘度を一定以下に抑えること等によって行うことができる。なお、「外面の平均位置」とは、ビアホールを除いた領域の外面の厚さ方向の平均位置をいい、好ましくは、ビアホールの中心軸からビアホールの半径の1倍以上2倍以内の領域における外面の厚さ方向の平均位置をいう。
ビアホール5の空隙率の上限としては、50%が好ましく、40%がより好ましく、30%がさらに好ましい。ビアホール5の空隙率が上記上限を超えると、十分な導通性が得られないおそれがある。なお、ビアホール5の空隙率の下限としては、特に限定されないが、例えば0.1%とすることができる。ビアホール5の空隙率が上記下限未満であると、ビアホール5の製造が困難になるおそれがある。
(利点)
当該プリント配線板用基材11は、焼結層4a、4bと同様の金属粒子の焼結体から構成されるビアホール5を貫通孔2内に備えるので、従来のプリント配線板のように絶縁層を形成した上でさらに別個の工程によってビアホールを形成することを要しない。そのため、当該プリント配線板用基材11は、従来のプリント配線板に比べて製造工程の減少を図ることができる。
また、当該プリント配線板用基材11は、ビアホール5の表面が焼結層4a、4bと一体的に形成されるので、ベースフィルム1の両面の所望の位置に容易かつ確実に導電パターンを形成することができる。そのため、当該プリント配線板用基材11は、導電パターンの製造の自由度を飛躍的に高めることができる。
[プリント配線板用基材の第二実施形態]
図4のプリント配線板用基材21は、ベースフィルム1と、焼結層4a、4bと、ビアホール5と、焼結層4a、4bの外面及び内部に形成されるめっき金属6a、6bとを備える。図4のプリント配線板用基材21は、可撓性を有するフレキシブルプリント配線板用基材である。図4のプリント配線板用基材21は、図3のプリント配線板用基材11の焼結層4a、4bの外面に無電解めっき又は電気めっきが施されることで形成される。
(利点)
当該プリント配線板用基材21は、焼結層4a、4bの外面及び内部にめっき金属6a、6bを有するので、焼結層4a、4bを形成する金属粒子間の空隙にめっきによる金属が充填される。そのため、当該プリント配線板用基材21は、焼結層4a、4bとベースフィルム1との剥離強度を向上できると共に導通性を高めることができる。
[プリント配線板用基材の第三実施形態]
図5のプリント配線板用基材31は、ベースフィルム1と、焼結層4a、4bと、ビアホール5と、めっき金属6a、6bと、焼結層4a、4b及びめっき金属6a、6bにより形成される層の外面に積層される金属めっき層7a、7bとを備える。図5のプリント配線板用基材31は、可撓性を有するフレキシブルプリント配線板用基材である。図5のプリント配線板用基材31は、図4のプリント配線板用基材21の焼結層4a、4b及びめっき金属6a、6bにより形成される層の外面に金属めっき層7a、7bを積層することによって形成される。なお、めっき金属6a、6b及び金属めっき層7a、7bが同様のめっき(無電解めっき又は電気めっき)で形成される場合、めっき金属6a、6b及び金属めっき層7a、7bは同一の工程で一体的に形成されてもよく、別工程で形成されてもよい。
(利点)
当該プリント配線板用基材31は、焼結層4a、4b及びめっき金属6a、6bにより形成される層の外面に金属めっき層7a、7bを有するので、焼結層4a、4b、めっき金属6a、6b及び金属めっき層7a、7bによって形成される積層体の厚みを容易かつ確実に調整することができる。そのため、当該プリント配線板用基材31は、例えばサブトラクティブ法に用いるプリント配線板用基材に容易に適用できる。
<プリント配線板>
図6のプリント配線板41は、ベースフィルム1と、ビアホール5と、導電パターン42a、42bとを備える。図5のプリント配線板用基材31を用いて形成される。具体的には、図6のプリント配線板41の導電パターン42a、42bは、プリント配線板用基材31の焼結層4a、4b、めっき金属6a、6b及び金属めっき層7a、7bによって形成される積層体をパターニングしたものであり、この積層体の一部を含む。この際のパターニング方法としては、例えばこの積層体にレジストパターン等のマスキングを施してエッチングする方法(サブトラクティブ法)を採用することができる。
(利点)
当該プリント配線板41は、当該プリント配線板用基材31を用いるので、従来のプリント配線板に比べて製造工程の減少を図ることができる。また、当該プリント配線板41は、上述のようにビアホール5の表面が焼結層4a、4bと一体的に形成されるので、ベースフィルム1の両面側の所望の位置に容易かつ確実に導電パターン42a、42bを形成することができる。
[その他の実施形態]
今回開示された実施の形態は全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記実施形態の構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
例えば当該プリント配線板用基材の製造方法は、上述のようにベースフィルムの両面に上記インクを塗工してもよく、また図7に示すように、ベースフィルム51の一方の面にのみ上記インクを塗工してもよい。このように、ベースフィルム51の一方の面にのみ上記インクを塗工する場合でも、上記インクはベースフィルム51の一方の面を被覆すると共に貫通孔52に充填され、塗膜53を形成する。なお、当該プリント配線板用基材の製造方法は、ベースフィルム51の一方の面にのみ上記インクを塗工する場合、ベースフィルム51の他方の面には別の金属層54が積層される。また、この金属層54は、上記インクを塗工後にベースフィルム51の他方の面に積層されてもよいが、図7のように上記インクの塗工前に積層されるのが好ましい。このように、上記金属層を上記インクの塗工前に積層することによって、上記インクが貫通孔52から漏れるのを容易かつ確実に防止できる。
当該プリント配線板用基材の製造方法は、ベースフィルムに2以上の貫通孔を形成してもよい。
当該プリント配線板用基材は、必ずしもフレキシブルプリント配線板用である必要はなく、リジッドプリント配線板用であってもよい。
当該プリント配線板は、必ずしもサブトラクティブ法によって形成される必要はなく、セミアディティブ法によって形成してもよい。
当該プリント配線板の製造方法は、上記塗工工程の前に、この塗工工程によって上記インクを塗工する面に親水化処理を施す工程を有してもよい。ベースフィルムに親水化処理を施すことにより、インクのベースフィルムに対する表面張力が小さくなるので、インクをベースフィルムに均一に塗りやすくなる。
以上のように、本発明のプリント配線板用基材の製造方法は、ビアホールを容易かつ確実に製造することができると共に、製造工程を少なくすることができるので、種々の電子機器等に用いられるプリント配線板用基材の製造に適している。また、本発明のプリント配線板用基材及びプリント配線板は、種々の電子機器等に好適に用いられる。
1、51 ベースフィルム
2、52 貫通孔
3a、3b、53 塗膜
4a、4b 焼結層
5 ビアホール
6a、6b めっき金属
7a、7b 金属めっき層
11、21、31 プリント配線板用基材
41 プリント配線板
42a、42b 導電パターン
54 金属層
101 プリント配線板
102 ベースフィルム
103、104 導電層
105 貫通孔
106 ビアホール

Claims (15)

  1. 絶縁性を有するベースフィルムに1又は複数の貫通孔を形成する工程と、
    上記ベースフィルムの少なくとも一方の面に金属粒子を含有するインクを塗工する工程と、
    上記塗工したインクを焼成する工程と
    を備え、
    上記金属粒子の平均粒子径が1nm以上500nm以下であり、
    上記焼成工程により焼結層と、上記貫通孔にビアホールとが形成され、
    上記焼結層の外面の平均位置を基準とした上記ビアホール表面の最大凹凸高さの上記貫通孔の平均径に対する比が1/10以下であるプリント配線板用基材の製造方法。
  2. 上記塗工工程が、
    上記ベースフィルムの一方の面に上記インクを塗工する第1工程と、
    上記ベースフィルムの他方の面に上記インクを塗工する第2工程と
    を有する請求項1に記載のプリント配線板用基材の製造方法。
  3. 上記ベースフィルムの貫通孔の平均径が10μm以上100μm以下である請求項1又は請求項2に記載のプリント配線板用基材の製造方法。
  4. 上記インクにおける金属粒子の含有量が5質量%以上50質量%以下である請求項1、請求項2又は請求項3に記載のプリント配線板用基材の製造方法。
  5. 上記焼成工程により形成される焼結層の外面に無電解めっきを施す工程をさらに備える請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のプリント配線板用基材の製造方法。
  6. 上記焼成工程により形成される焼結層の外面側に電気めっきを施す工程をさらに備える請求項1から請求項5のいずれか1項に記載のプリント配線板用基材の製造方法。
  7. 上記インクの金属粒子が銅又は銅合金を主成分とする請求項1から請求項6のいずれか1項に記載のプリント配線板用基材の製造方法。
  8. 1又は複数の貫通孔が形成され、絶縁性を有するベースフィルムと、
    このベースフィルムの少なくとも一方の面に形成される金属粒子の焼結層と
    を備えるプリント配線板用基材であって、
    上記貫通孔内に形成され、上記焼結層と同様の金属粒子の焼結体から構成されるビアホールをさらに備え、
    上記金属粒子の平均粒子径が1nm以上500nm以下であり、
    上記焼結層の外面の平均位置を基準とした上記ビアホール表面の最大凹凸高さの上記貫通孔の平均径に対する比が1/10以下であるプリント配線板用基材。
  9. 上記ベースフィルムの両面に焼結層を備える請求項8に記載のプリント配線板用基材。
  10. 上記ベースフィルムの貫通孔の平均径が10μm以上100μm以下である請求項8又は請求項9に記載のプリント配線板用基材。
  11. 上記焼結層の外面に形成されるめっき金属を有する請求項8、請求項9又は請求項10に記載のプリント配線板用基材。
  12. 上記焼結層及びめっき金属により形成される層の外面に金属めっき層を有する請求項11に記載のプリント配線板用基材。
  13. 上記金属粒子が銅又は銅合金を主成分とする請求項8から請求項12のいずれか1項に記載のプリント配線板用基材。
  14. 上記ビアホールの空隙率が0.1%以上50%以下である請求項8から請求項13のいずれか1項に記載のプリント配線板用基材。
  15. 請求項8から請求項14のいずれか1項に記載のプリント配線板用基材を用い、サブトラクティブ法又はセミアディティブ法により形成されるプリント配線板。
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