本発明は、上記背景技術に鑑みてなされたものであり、簡易かつ確実に装置のアライメントを可能とし、かつ、装置の小型化を図ることができる虚像表示装置及びプロジェクターを提供することを目的とする。
上記目的を達成するため、本発明に係る虚像表示装置は、映像素子と、映像素子を収納して支持する映像素子ケースと、映像素子からの光を投射する投射光学系と、投射光学系の少なくとも一部を収納して支持するとともに接着により映像素子ケースに接続される鏡筒と、投射光学系からの光を観察者の眼に向けて画像を視認させる導光装置とを備え、映像素子ケースと鏡筒とのうち一方は、他方側に突出するように設けられて他方との接着に際しての接着領域を形成する板状部分を有し、映像素子ケースと鏡筒とのうち他方は、板状部分に対応して設けられ接着領域を形成する平面部分を含み当該平面部分において板状部分と協働して映像素子と投射光学系との相対位置を調整可能にしつつ接着する接続部を有する。
上記虚像表示装置では、板状部分と接続部とによって、映像素子と投射光学系との相対的な位置を調整しながら、映像素子を収納する映像素子ケースと投射光学系を収納する鏡筒とを接着させることができる。従って、投射光学系での製造誤差等に伴ってバラツキが発生しても、投射光学系と液晶表示デバイスとのアライメント時において上記のバラツキを補正して、確実な装置のアライメントを行うことが可能となる。この場合、例えば映像素子等の外端部の四隅等にピンと孔とでクリアランスを設ける嵌合部等によってアライメントを行う場合に比べて、装置の小型化を図ることができ、かつ、簡易な構造にできる。
本発明の具体的な側面では、板状部分及び平面部分が、鏡筒における光軸に対して略平行にそれぞれ延びている。ここで、光軸に対して略平行とは、接着箇所である板状部分や平面部分の表面が光軸に対して完全に平行である場合のみならず、各表面がアライメントに影響を及ぼさない範囲で多少の傾きをそれぞれ有している場合も含まれることを意味する。この場合、板状部分と平面部分とが光軸に対して略平行にそれぞれ延びていることで、取付箇所(接着箇所)を光軸に垂直な方向に広げることなく接着領域を形成することができる、すなわち接着面を確保することができる。
本発明の別の側面では、板状部分が、映像素子ケースの一部として鏡筒側に延びるように形成され、平面部分が、鏡筒の側面の一部として形成される。この場合、平面部分である鏡筒の側面に沿ってこれを覆うように板状部分が延びるものとなり、光学部分に影響を与えることなく確実に接着領域を確保できる。
本発明のさらに別の側面では、鏡筒は、接続部において複数の平面部分を有するとともに当該平面部分の間に段差状部分を形成している。この場合、段差状部分があることで、接着領域において接着剤をとどまりやすくして、接着部を確実に形成させることができる。
本発明のさらに別の側面では、板状部分が、スリット状部分を有し、接続部が、スリット状部分に対応して設けられる凸状リブを有する。この場合、スリット状部分と凸状リブとによって接着代(接着面積)を増やすことができ、接着状態をより強固にできる。
本発明のさらに別の側面では、映像素子ケースが、映像素子を収納する本体部分と本体部分の両端から鏡筒側にそれぞれ延びる一対の対向する板状部分とを有するU字形状である。この場合、板状部分が映像素子ケースの両端から対向して延びる一対の構成となっていることで、これらによって両端側から鏡筒を挟んで確実な接着を行うことができる。また、U字形状であることで、例えば板状部分を有しない側方側から紫外光の照射による接着剤の硬化が可能になる。
本発明のさらに別の側面では、映像素子は、装着時に観察者の側頭部に配置され、映像素子ケースにおいて、一対の対向する板状部分を有し、板状部分は、観察者の眼が並ぶ横方向に垂直な縦方向に相当する垂直方向について、本体部分の両端から鏡筒側にそれぞれ延びている。この場合、デザイン性の観点等から特にコンパクト化を図りたい観察者の眼が並ぶ横方向について、組付けに伴う装置の大型化を回避できる。
本発明のさらに別の側面では、映像素子ケースと鏡筒とは、板状部分と接続部とで形成される接着領域において紫外線硬化性樹脂によって接着される。この場合、紫外光の照射によって、接着固定を必要な時に短時間で行うことができるので、平面部分を含む接続部と板状部分とによる簡易な構造であっても、投射光学系と液晶表示デバイスとのアライメント時において補正をし、補正がなされた状態において短時間に確実に接着を行うことが可能になる。
本発明のさらに別の側面では、映像素子は、照明光を空間的に変調して映像光を形成する液晶表示デバイスである。この場合、液晶表示デバイスにより小型であっても高精細な映像を形成でき、例えばカラーフィルターを用いたカラー画像を映し出すことができる。
本発明のさらに別の側面では、鏡筒は、光射出側に導光装置と連結し、投射光学系から導光装置までの光学系を一体化させる連結部分を有する。この場合、鏡筒は、虚像を形成するための全光学系を一体的に組付け可能となる。
本発明のさらに別の側面では、板状部分及び平面部分が、鏡筒を介して導光装置に連結された状態において映像素子の位置を調整可能にする。この場合、例えば投射光学系と導光装置との組付けに際して製造誤差等に伴ってバラツキが発生しても、このバラツキを映像素子と鏡筒とのアライメントにおいて補正することができる。
本発明のさらに別の側面では、映像素子ケースと鏡筒とが、板状部分と平面部分との間に観察者の眼が並ぶ横方向に相当する水平方向及び当該横方向に垂直な縦方向に相当する垂直方向について調整を可能にする調整代を形成する調整構造部分を有している。この場合、映像素子ケースと鏡筒との組付けにおいて、観察者の眼の位置を想定して水平方向や垂直方向について調整することができる。
上記目的を達成するため、本発明に係るプロジェクターは、映像素子と、映像素子を収納して支持する映像素子ケースと、映像素子からの光を投射する投射光学系と、投射光学系の少なくとも一部を収納して支持するとともに接着により映像素子ケースに接続される鏡筒とを備え、映像素子ケースと鏡筒とのうち一方は、他方側に突出するように設けられて他方との接着に際しての接着領域を形成する板状部分を有し、映像素子ケースと鏡筒とのうち他方は、板状部分に対応して設けられ接着領域を形成する平面部分を含み当該平面部分において板状部分と協働して映像素子と投射光学系との相対位置を調整可能にしつつ接着する接続部を有する。
上記プロジェクターでは、板状部分と接続部とによって、映像素子と投射光学系との相対的な位置を調整しながら、映像素子を収納する映像素子ケースと投射光学系を収納する鏡筒とを接着させることができる。従って、投射光学系での製造誤差等に伴ってバラツキが発生しても、投射光学系と液晶表示デバイスとのアライメント時において上記のバラツキを補正して、確実な装置のアライメントを行うことが可能となる。この場合、例えば映像素子等の外端部の四隅等にピンと孔とでクリアランスを設ける嵌合部等によってアライメントを行う場合に比べて、装置の小型化を図ることができ、かつ、簡易な構造にできる。
本発明の具体的な側面では、板状部分及び平面部分が、鏡筒における光軸に対して略平行にそれぞれ延びている。この場合、板状部分と平面部分とが光軸に対して略平行にそれぞれ延びていることで、取付箇所(接着箇所)を光軸に垂直な方向に広げることなく接着領域を形成することができる、すなわち接着面を確保することができる。
以下、図1等を参照しつつ、本発明に係る虚像表示装置の一実施形態について詳細に説明する。
図1に示すように、本実施形態の虚像表示装置100は、眼鏡のような外観を有するヘッドマウントディスプレイであり、この虚像表示装置100を装着した観察者又は使用者に対して虚像による画像光を視認させることができるとともに、観察者に外界像をシースルーで視認又は観察させることができる。虚像表示装置100は、観察者の眼前を透視可能に覆う第1及び第2光学部材101a,101bと、両光学部材101a,101bを支持する枠部102と、枠部102の左右両端から後方のつる部分(テンプル)104にかけての部分に付加された第1及び第2像形成本体部105a,105bとを備える。ここで、図面上で左側の第1光学部材101aと第1像形成本体部105aとを組み合わせた第1表示装置100Aは、右眼用の虚像を形成する部分であり、単独でも虚像表示装置として機能する。また、図面上で右側の第2光学部材101bと第2像形成本体部105bとを組み合わせた第2表示装置100Bは、左眼用の虚像を形成する部分であり、単独でも虚像表示装置として機能する。
図2は、虚像表示装置100の内部構造を示している。なお、図2を図1と比較することで、虚像表示装置100の外観と内部とが対比される。また、図4は、図2の右半分に対応し、虚像表示装置100の第1表示装置100A側を部分的に拡大した斜視図である。
図1等に示すように、虚像表示装置100に設けた枠部102は、上側に配置されるフレーム107と下側に配置されるプロテクター108とを備える。枠部102のうち、上側のフレーム107は、U字状に折れ曲がった細長い板状の部材であり、左右の横方向(X方向)に延びる正面部107aと、前後の奥行き方向(Z方向)に延びる一対の側面部107b,107cとを備える。フレーム107、すなわち正面部107aと側面部107b,107cとは、アルミダイカストその他の各種金属材料で形成された金属製の一体部品である。正面部107aの奥行き方向(Z方向)の幅は、第1及び第2光学部材101a,101bに対応する導光装置20の厚み又は幅よりも十分に厚いものとなっている。また、図2に示すように、フレーム107の左側方、具体的には正面部107aにおける向かって左端部から側面部107bにかけての部分である側方端部65aには、第1光学部材101aと第1像形成本体部105aとがアライメントされネジ止めよって直接固定されることによって支持されている。また、フレーム107の右側方、具体的には正面部107aにおける向かって右端部から側面部107cにかけての部分である側方端部65bには、第2光学部材101bと第2像形成本体部105bとがアライメントされネジ止めによって直接固定されることによって支持されている。なお、第1光学部材101aと第1像形成本体部105aとは、嵌合によって互いにアライメントされ、第2光学部材101bと第2像形成本体部105bとは、嵌合によって互いにアライメントされる。
また、図2に示すように、表示装置100A,100Bは、見方を変えれば、投影用の光学系である投射透視装置70と、映像光を形成する画像表示装置80とをそれぞれ備える。投射透視装置70は、第1及び第2像形成本体部105a,105bによって形成された画像を虚像として観察者の両眼にそれぞれ投射する役割を有する。投射透視装置70は、導光及び透視用の導光部材10と、透視用の光透過部材50と、結像用の投射レンズ30とをそれぞれ備える。なお、詳しくは図3を参照して後述するが、導光装置20は、導光部材10と光透過部材50とによって構成されている。
画像表示装置80は、透過型の空間光変調装置である映像表示素子(映像素子)82のほか、映像表示素子82へ照明光を射出するバックライトである照明装置81や、映像表示素子82等の動作を制御する駆動制御部(不図示)を有する。映像表示素子82は、映像素子ケース86に収納されており、映像素子ケース86を介して結像用の投射レンズ30を収納する鏡筒39に組付けされている。なお、画像表示装置80のうち照明装置81や不図示の駆動制御部について詳しくは、図9において後述する。
図1に戻って、プロテクター108は、アンダーリム状の部材であり、フレーム107に固定されている。プロテクター108の中央部108gは、フレーム107の中央部107g(図2参照)に嵌合及びネジ止めによって固定されている。プロテクター108は、2段のクランク状に折れ曲がった細長い板状の部材であり、金属材料又は樹脂材料で形成された一体部品である。プロテクター108の奥行き方向(Z方向)の幅は、導光装置20の厚み又は幅程度となっている。
フレーム107は、第1及び第2像形成本体部105a,105bを支持するだけでなく、カバー状の外装部材105dと協働して第1及び第2像形成本体部105a,105bの内部を保護する役割を有する。プロテクター108は、第1及び第2像形成本体部105a,105bに連結される第1及び第2光学部材101a,101b又は導光装置20の側辺部や下辺部を保護する役割を有する。具体的には、プロテクター108の縦部分63aは、導光装置20の周囲部分のうち鼻に近い内側の側辺部を使用環境下に存在する周囲の様々な物体から保護し、プロテクター108の横部分63bは、導光装置20の周囲部分のうち下側の下辺部を使用環境下にある周囲の様々な物体から保護する。つまり、フレーム107やプロテクター108が十分な強度を有すれば、虚像表示装置100が周囲の他の物体と衝突等しても、第1及び第2像形成本体部105a,105bや第1及び第2光学部材101a,101b、特に露出する導光装置20において損傷や位置ずれが発生する可能性を低減できる。
プロテクター108の中央部108gに近い一対の縦部分63aには、パッド状の鼻当て部材108aがそれぞれ形成されている。プロテクター108の縦部分63aや横部分63bは、第1及び第2像形成本体部105a,105bに連結される根元側を除いた導光装置20の長円状の周囲部分と離間するか又は緩く接している。なお、導光装置20の周囲部分は、フレーム107の正面部107aとも離間するか又は緩く接している。このように、第1及び第2光学部材101a,101b又は導光装置20は、根元側を除いたC字状の周囲部分でフレーム107及びプロテクター108に近接するが、フレーム107及びプロテクター108に固定されていない。このため、中央の導光装置20と、フレーム107及びプロテクター108を含む枠部102との間に熱膨張率の差があっても、枠部102内での導光装置20の膨張が許容され、導光装置20に歪み、変形、破損が生じることを防止できる。
図3に示すように、導光部材10と光透過部材50とは、互いに固定されて一体的な導光装置20を構成している。導光装置20は、映像の光を内部で反射させつつ観察者の眼に導くプリズム状の部材である。導光装置20のうち周囲部分に囲まれた本体部分は、長円状の輪郭を有する。ここで、光透過部材50は、プリズム型の部材である導光部材10の先端側、すなわち射出側又は光射出側の第1導光部分11に連結するようにその延長方向に配置され、接着剤を利用した接合によって第1導光部分11に固定されている。導光部(光学部材)20の周囲部分のうち、フレーム107に近い上辺側には、第1のリブ10nが形成され、プロテクター108に近い下辺側には、第2のリブ10oが形成されている。上辺側の第1のリブ10nは、複数のリブ部分(凸部)10pと複数の拡幅部(凸部)10qとを交互に連結した構造を有し、全体として導光装置20の縁に沿って直線的に細長く延びている。このうち、前者のリブ部分(凸部)10pは、第1導光部分11及び光透過部材50に付随して設けられており、これらの部材のアライメント等を可能にする。後者の拡幅部10qは、第1導光部分11及び光透過部材50を射出成形するための金型のゲートに相当する部分である。拡幅部10qについては、ゲートに限らず、第1導光部分11及び光透過部材50に対して特別の形状として転写・成形したものとすることもできる。第1のリブ10nは、詳細は後述するが、フレーム107に設けられている制限部107n(図4(B)参照)に係止される係止部であり、この第1のリブ(係止部)10nの存在により、導光装置20の奥行き方向(Z方向)に関する変位が制限される。ここで、制限部に係止されるとは、機械的に止められることを意味し、凹凸の嵌め合わせに限らず、留め具による連結、移動阻止用の1つ以上の突起の設置、移動を特定方向に関して制限するガイド等の様々な手段を広く含むものとする。
図4(A)及び4(B)等を参照して、第1表示装置100Aのフレーム107への組付けについて説明する。第1像形成本体部105aを構成する投射レンズ30は、これを収納する鏡筒39に埋め込むように形成された取付部39gを利用してフレーム107の側方端部65aに設けた第1固定部61fに直接固定されている。このような固定の際、第1固定部61fの裏面68fと取付部39gの上端面39f等とが当接してアライメントが達成され、ネジ孔61sを介してネジ61tを取付部39gにねじ込むことで着脱可能で確実な固定が可能になる。この際、フレーム107のボス孔61xに鏡筒39に設けたボス39xが嵌合して鏡筒39の回転が規制され回転に関する位置決めも行われる。一方、第1光学部材101aである導光装置20は、そのネック部に形成された突起状の取付部10gを利用して、フレーム107の側方端部65aに設けた第2固定部61eに直接固定されている。取付部10gは、導光装置20の入射側又は光入射側の部分、具体的には第1導光部分11と第2導光部分12との境界周辺において周囲に拡張するように立設されている。このような固定の際、第2固定部61eの前側部分に設けた突当て面68eと取付部10gの裏面10kとが当接してアライメントが達成され、ネジ孔61uを介してネジ61vをネジ孔10uにねじ込むことで着脱可能で確実な固定が可能になる。
導光装置20は、導光部材10の第2導光部分12側の先端部12jが投射レンズ30を収納する鏡筒39の前端側に設けられて開口する矩形枠状の係止部材39aに嵌合することで投射レンズ30に対して位置決めされた状態で係止される。つまり、導光装置20に設けた導光部材10をフレーム107の第2固定部61eに固定する際に、第2導光部分12側の先端部12jを鏡筒39の係止部材39a内に嵌合するように挿入する。この際、先端部12jの側面12mが係止部材39aの内面39mと当接してアライメントが達成される。つまり、係止部材39aは、鏡筒39において、光射出側に導光装置20と連結し、投射レンズ30から導光装置20までの光学系を一体化させる連結部分である。
図4(B)に示すように、フレーム107の正面部107aの下面107mにおいて、第2固定部61eから適宜離間した中央側には、ストッパーとして溝状の制限部107nが設けられている。制限部107nは、フレーム107の正面部107aに沿って延びる一対の対向する凸条部107rを有し、両凸条部107rに挟まれるように設けられて正面部107aに沿って延びる溝107sを有する。溝107sは、複数の溝部分(凹部)107pと複数の拡幅部(凹部)107qとを交互に連結した構造を有する。第1光学部材101a又は導光装置20の組み付け後において、制限部107nには、導光装置20の上端部に設けた突起状のリブ10nが僅かな隙間を有する遊嵌状態で挿入される。これにより、リブ(係止部)10nは、溝107sに受容され、凹部及び凸部の係合を利用して溝107sを挟む一対の凸条部107rを含む制限部107nに係止される。ここで、凹部及び凸部の係合とは、凹部及び凸部が密着する嵌合に限らず、凹部及び凸部が互いに離間しつつも一定の限界以上の移動を制限する場合が含まれるものとする。
ここで、本実施形態の虚像表示装置100は、上記のようにして導光装置20や投射光学系である投射レンズ30といった各光学系をアライメントが達成された状態で組み付けた後、投射レンズ30を収納する鏡筒39と映像素子である映像表示素子82を収納する映像素子ケース86とが、接着により組み付けられるものとなっている。この組付けに際して、組付け箇所である映像素子ケース86の板状部分87(図2参照)と鏡筒39の接続部CNとの間においてクリアランスを設けた状態にしており、表示される画像の状態を確認しながらアライメントが達成された状態を維持しつつ接着を行うことで、導光装置20や投射レンズ30での製造誤差等に起因するバラツキを補正し(バラツキを吸収させる)、画像を良好な状態で視認させることが可能となっている。このようなアライメントの達成によるバラツキの補正の方法については、本実施形態とは異なる態様が知られている。例えば、従来の態様の一つとして、取付部材の外端部の四隅等にピンと孔とを有する嵌合部(引用文献1の図2参照)によってアライメントを達成させる技術が確立されている。しかしながら、このような従来の方法では、光学系に映像素子等の部品を固定するに際して組付け部分として横方向に大きく出っ張るスペースを要することになり、HMDの小型化を図ることが困難となる場合がある。特に、本実施形態のように観察者の側頭部に映像素子を配置するような構成のHMDの場合、デザイン的な観点や重量負担の軽減からコンパクト化(小型化)の要請がさらに求められる。これに対して、本実施形態では、組付け時の調整精度を高い状態に維持しつつ、小型化に対応可能な構造となっている。
以下、図5等を参照して、映像素子ケース86及び鏡筒39のうち組付部分の構造について説明する。図5(A)は、第1表示装置100Aの外観及び構造を説明する斜視図であり、特に映像素子ケース86と鏡筒39との接着時の状況について示す図である。また、図5(B)は、図5(A)の状態にある第1表示装置100Aを、図5(A)とは異なる方向から見た状態の斜視図である。なお、図示のように、鏡筒39の光軸を光軸AAとする。この光軸AAは、投射レンズ30の光軸に相当するものである。図6(A)は、第1表示装置100Aのうち鏡筒39及び映像素子ケース86の組付部分の構造を示すために第1表示装置100Aの一部を拡大して示す斜視図であり、図6(B)は、図6(A)とは異なる方向から組付部分を見た状態の斜視図である。なお、鏡筒39についてここでは、映像素子ケース86との組付け時に接続される部分である接続部CNの構造について説明する。
まず、映像素子ケース86を含む画像表示装置80の構造について説明する。画像表示装置80は、既述のように、照明装置81と、映像表示素子82とを備えており、これらは、映像素子ケース86によって一体的に収納されている。また、図示のように、映像素子ケース86の一端から、映像表示素子82に接続されているパネル用配線基板88や照明装置81に接続されている光源用配線基板89が延びている。なお、パネル用配線基板88や光源用配線基板89は、不図示の駆動制御部等に接続されている。
以下、映像素子ケース86の構造について説明する。映像素子ケース86は、本体部分86aと、板状部分87とを有し、側面から見た場合に鏡筒39側に空きのあるU字形状(又はC字形状)となっている。より具体的に説明すると、まず、本体部分86aは、映像表示素子82を収納している。これに対して、板状部分87は、映像素子ケース86の一部として、本体部分86aの上下方向(Y方向)に関する両端から鏡筒39側にそれぞれ延びる一対の対向する平板状の部材である上側部分87aと下側部分87bとで構成されている。上側部分87a及び下側部分87bは、鏡筒39の光軸AAに略平行に沿ってそれぞれ延びている。以上により、映像素子ケース86は、本体部分86aと上側部分87a及び下側部分87bとによってU字形状を有するものとなっている。
また、上側部分87aと下側部分87bとは、中央部分において、鏡筒39側から鏡筒39の光軸方向に沿って延びるスリット状部分SLa,SLbをそれぞれ有している。
次に、鏡筒39のうち、接続部CNの構造について説明する。接続部CNは、鏡筒39のうち光入射側の端部であり、映像素子ケース86に接着する筒状の部分であり、鏡筒39の側面の一部を構成する。接続部CNは、平面部分39pと、段差状部分STと、凸状リブPRa,PRbとを有する。なお、これらはいずれも接続部CNの筒状の外周に沿って設けられており、鏡筒39の側面の一部を構成している。接続部CNは、平面部分39pにおいて板状部分87と協働して映像表示素子82と投射レンズ30との相対位置を調整可能にしつつ接着するための部分である。
平面部分39pは、鏡筒39の側面の一部として、鏡筒39の光軸AAに略平行に沿って延びる平坦な外表面部分であり、接着時において、映像素子ケース86の板状部分87を構成する平板状の部材である上側部分87aと下側部分87bとに対向するものとなっている。また、平面部分39pは、複数の面部分で構成されており、各面部分の間に複数の段差状部分STが形成されている。見方を変えると、段差状部分STは、平面部分39pの間に設けられた複数の溝状の部分となっている。
以上のように、映像素子ケース86が、鏡筒39側に突出するように設けられて鏡筒39との接着に際しての接着領域を形成する板状部分87を有している。これに対して、鏡筒39が、板状部分87に対応して設けられ接着領域を形成する平面部分39pを含んでいる。板状部分87を構成する上側部分87a及び下側部分87bの内表面と平面部分39p(接続部CNの外表面)とは、鏡筒39の光軸AAに略平行に沿ってそれぞれ延びており、これらが取付け時における取付け箇所すなわち接着箇所となっている、つまり、接着領域を形成している。この場合、板状部分87と平面部分39pとが光軸AAに対して略平行にそれぞれ延びていることで、接着箇所を光軸AAに垂直な方向に広げることなく十分な大きさの接着領域を形成することができる。板状部分87と平面部分39pとにおいて、クリアランスを設けた状態とすることで、板状部分87と接続部CNとにおいて、導光装置20や投射レンズ30での製造誤差等に起因するバラツキの補正(バラツキの吸収)をしてアライメントを達成させつつ、接着を行い、画像を良好な状態で視認させることが可能となっている。
また、上記のように、映像素子ケース86がU字形状となっていることにより、板状部分87は、両端側から鏡筒39の接続部CNを挟んで確実な接着を行うことができる。特に、板状部分87において、上側部分87aと下側部分87bとは、観察者の眼が並ぶ横方向に垂直な縦方向に相当する垂直方向(Y方向)について、本体部分86aの両端から鏡筒39側にそれぞれ延びている。本実施形態のように、映像表示素子82が、装着時に観察者の側頭部に配置される場合、デザイン性の観点等から特に観察者の眼が並ぶ横方向についてコンパクト化を図ることが望ましい。これに対して、上記のような構成とすることで、確実な接着を維持しつつ、横方向についての装置の大型化を回避している。
また、映像素子ケース86がU字形状であることで、接着に際して、板状部分87を有しない側方側(水平方向の側)から紫外光の照射による接着剤の硬化が可能になる。
また、上記のように、接続部CNは、映像素子ケース86との接着箇所となる部分において、板状部分87に対向させる平面部分39pのみならず、溝状の部分である段差状部分STを有している。この場合、接着時に接続部CN側に接着剤を塗布すれば、接続部CNは、接着時における正確なアライメントを可能としつつ、接着領域に入り込む接着剤の流れを適切に制御できるものとなる。
また、平面部分39pは、中央部分において、映像素子ケース86側から鏡筒39の光軸方向に沿って延びる凸状リブPRa,PRbをそれぞれ有している。凸状リブPRa,PRbは、上述した上側部分87a及び下側部分87bのスリット状部分SLa,SLbにそれぞれ対応して設けられている。つまり、凸状リブPRaは、スリット状部分SLaに嵌合し、凸状リブPRbは、スリット状部分SLbに嵌合する。これらのスリット状部分SLa,SLbと凸状リブPRa,PRbとがあることによって、接着時の接着代(接着面積)を増やすことができ、映像素子ケース86と鏡筒39との接着状態をより強固にできる。また、この接着代は、光軸AAに略平行に沿った面内に関して広がり、光軸AAに垂直な方向にはほとんど広がらないものとなっている。
以下、図7等を参照して、映像素子ケース86と鏡筒39との接着の状態や接着の動作等に関して説明する。図7(A)〜7(C)は、映像素子ケース86及び鏡筒39の構造のうち特に接着に関する部分について説明するために、模式的に示している図であり、図7(A)は、鏡筒39と映像素子ケース86との接着について説明するための模式的な断面図であり、図7(B)は、側面図であり、図7(C)は、平面図である。図7(A)〜7(C)に示すように、接着剤PTが固化することで形成される接着部PPは、鏡筒39のうち筒状の端部である接続部CNの外周であるに沿って平面部分39p及び段差状部分STに沿って隙間なく充填されている。なお、接着剤PTは、紫外線硬化性樹脂であり、紫外光を照射されることによって固化することで、映像素子ケース86と鏡筒39とを接着する。この際、図7(B)に示すように、接続部CNを構成する平面部分39pと板状部分87を構成する一対の上側部分87a及び下側部分87bとが、互いに略平行に延びていることで、間に挟まれた接着剤PTは、十分に広がり、接着力が強固なものとなっている。なお、図7(A)や7(C)に示すように、段差状部分STや、凸状リブPRa及びスリット状部分SLa等があることによっても、接着面積が十分に設けられ、必要に足る接着力が確保されるものとなっている。
以下、図8を参照して、接着の工程の詳細について説明する。なお、図8(A)〜8(C)は、図7(B)に示す側面図に対応する図である。また、図5(A)及び5(B)に示すように、この接着の工程以前において、鏡筒39には既に導光装置20が取付けられている、すなわち、投射レンズ30が鏡筒39を介して導光装置20に連結された状態となっているが、ここでは、図示を省略している。まず、図8(A)に示すように、鏡筒39が準備され、次に、図8(B)に示すように、鏡筒39の接続部CNのうち、平面部分39p及び段差状部分STに接着部PPとなるべき接着剤PTが塗布される。次に、鏡筒39の光軸AAに沿って板状部分87を接続部CNに対向させた状態にある映像素子ケース86が鏡筒39側に近づけられる。次に、図8(C)に示すように、板状部分87を構成する上側部分87aと下側部分87bとがこれらに対応して設けられた平面部分39cと協働して接着剤PTを挟むようにして接着される。つまり、板状部分87と平面部分39cとによって形成される接着領域に接着剤PTが充填されていく。この過程において、映像素子ケース86内に収納された映像表示素子82から射出された画像光である映像光が投射レンズ30や導光装置20を介して投影される画像を確認しつつ、位置調整がなされる。最適な位置が決定されると、その状態を維持して、図7(A)において矢印A1で示す方向から適宜紫外光の照射がなされ、接着剤PTが固化し、接着がなされる。なお、以上の工程のうち接着剤の塗布工程において、段差状部分STを有する鏡筒39の接続部CN側に接着剤PTが塗布されることにより、接着剤PTが段差状部分STに留まり、光学機能を有する投射レンズ30や映像表示素子82に接着剤PTが及ぶことが回避される。
上述のような接着の工程において、図8(B)等に示すように、映像素子ケース86の板状部分87と鏡筒39の平面部分39cとの間には、接着剤PTを充填させつつアライメントが可能となるように、調整代となる間隙が設けられている。具体的に説明すると、映像素子ケース86のうち板状部分87及び本体部分86aが凹状の嵌合部分REを形成しているのに対して、鏡筒39のうち接続部CNが嵌合部分REに対応する凸状の部分となっており、接続部CNと嵌合部分REとの間にクリアランスを有するものとなっている。図示の場合では、接続部CNのサイズ幅SZ1が嵌合部分REのサイズ幅SZ2よりも若干小さくなっている。つまり、接続部CNと嵌合部分REとが相対的な位置を調整可能にする調整構造部分となっている。これにより、板状部分87と平面部分39pとの間に、観察者の眼が並ぶ横方向に相当する水平方向や、横方向に垂直な縦方向に相当する垂直方向について、相対的な位置を調整可能とする間隙が形成されている。
以上のようにして、投射レンズ30等に対する映像表示素子82のアライメント可能としていることにより、観察者の眼の位置に入る画像が設計値になるように調整ができるものとなっている。例えば垂直な観察者の眼が並ぶ横方向に垂直な縦方向に相当する垂直方向については、右眼側と左眼側とでのズレを50μm程度以内に抑えることが望ましい。これ以上に縦方向すなわち上下方向に差があると、右眼側と左眼側とでの画像のズレを脳の中で合わせることができなくなり、違和感を生じるからである。また、例えば観察者の眼が並ぶ横方向に相当する水平方向の調整については、右眼側の画像と左眼側の画像との重なり状態や視差を適切な状態にするために必要になる。例えば、左右での視差を利用して3D画像を形成させる場合に、水平方向についてのずれが大きすぎると、画像が2重に見えてしまい立体視画像が適切に視認されなくなる可能性がある。また、例えば距離に対する画角の関係についてずれが生じて、近くの画面(例えば5m先に80型相当の画像)の見え方と遠くの画面(例えば20m先に320型相当の画像)の見え方とが合わなくなってしまう場合も考えられる。本実施形態では、例えばアルミダイカストのフレーム107に鏡筒39及び導光装置20が、左右ともに既に取付けた状態で左右の眼の位置に相当する位置にセンサーをそれぞれ置き、左右の映像表示素子82と投射レンズ30との相対位置を、左右の眼の位置に入る画像が設計値になるようにそれぞれ調整するものとなっていることで、上記のような垂直方向及び水平方向について所望の状態となるようなアライメントが可能となる。
図9を参照して、投射透視装置70等の機能、動作等の詳細について説明する。投射透視装置70のうち、導光装置20の一部である導光部材10は、平面視において顔面に沿うように湾曲した円弧状の部材である。導光部材10のうち、第1導光部分11は、鼻に近い中央側つまり光射出側に配置され、光学的な機能を有する側面として、第1面S11と、第2面S12と、第3面S13とを有し、第2導光部分12は、鼻から離れた周辺側つまり光入射側に配置され、光学的な機能を有する側面として、第4面S14と、第5面S15と、第6面S16とを有する。このうち、第1面S11と第4面S14とが隣接し、第3面S13と第5面S15とが隣接し、第1面S11と第3面S13との間に第2面S12が配置され、第4面S14と第5面S15との間に第6面S16が配置されている。
導光部材10において、第1面S11は、Z軸に平行な射出側光軸AXOを中心軸とする自由曲面であり、第2面S12は、XZ面に平行な基準面(図示の断面)に含まれZ軸に対して傾斜した光軸AX1を中心軸とする自由曲面であり、第3面S13は、射出側光軸AXOを中心軸とする自由曲面である。第4面S14は、XZ面に平行な上記基準面に含まれZ軸に対して傾斜した一対の光軸AX3,AX4の2等分線を中心軸とする自由曲面であり、第5面S15は、XZ面に平行な上記基準面に含まれZ軸に対して傾斜した一対の光軸AX4,AX5の2等分線を中心軸とする自由曲面であり、第6面S16は、XZ面に平行な上記基準面に含まれZ軸に対して傾斜した光軸AX5を中心軸とする自由曲面である。なお、以上の第1〜第6面S11〜S16は、水平(又は横)に延びXZ面に平行で光軸AX1〜AX5等が通る基準面(図示の断面)を挟んで、鉛直(又は縦)のY軸方向に関して対称な形状を有している。
導光部材10のうち本体10sは、可視域で高い光透過性を示す樹脂材料で形成されており、例えば金型内に熱可塑性樹脂を注入・固化させることにより成形する。なお、本体10sの材料としては、例えばシクロオレフィンポリマー等を用いることができる。本体10sは、一体形成品とされているが、導光部材10は、第1導光部分11と第2導光部分12とに分けて考えることができる。第1導光部分11は、映像光GLの導波及び射出を可能にするとともに、外界光HLの透視を可能にする。第2導光部分12は、映像光GLの入射及び導波を可能にする。
第1導光部分11において、第1面S11は、映像光GLを第1導光部分11外に射出させる屈折面として機能するとともに、映像光GLを内面側で全反射させる全反射面として機能する。第1面S11は、眼EYの正面に配されるものであり、観察者に対し凹面形状を成している。なお、第1面S11は、本体10sの表面に施されたハードコート層27によって形成される面である。
第2面S12は、本体10sの表面であり、当該表面にハーフミラー層15が付随している。このハーフミラー層15は、光透過性を有する反射膜(すなわち半透過反射膜)である。ハーフミラー層(半透過反射膜)15は、第2面S12の全体ではなく、第2面S12を主にY軸に沿った鉛直方向に関して狭めた部分領域PA上に形成されている。ハーフミラー層15は、本体10sの下地面のうち部分領域PA上に、金属反射膜や誘電体多層膜を成膜することにより形成される。ハーフミラー層15の映像光GLに対する反射率は、シースルーによる外界光HLの観察を容易にする観点で、想定される映像光GLの入射角範囲において10%以上50%以下とする。具体的な実施例のハーフミラー層15の映像光GLに対する反射率は、例えば20%に設定され、映像光GLに対する透過率は、例えば80%に設定される。
第3面S13は、映像光GLを内面側で全反射させる全反射面として機能する。第3面S13は、眼EYの正面に配されるものであり、第1面S11と同様に観察者に対し凹面形状を成しており、第1面S11と第3面S13とを通過させて外界光HLを見たときに、視度が略0になっている。なお、第3面S13は、本体10sの表面に施されたハードコート層27によって形成される面である。
第2導光部分12において、第4面S14は、映像光GLを内面側で全反射させる全反射面として機能する。なお、第4面S14は、本体10sの表面に施されたハードコート層27によって形成される面である。
第2導光部分12において、第5面S15は、既述のように、本体10sの表面上に無機材料で形成される光反射膜RMを成膜することで形成され、反射面として機能する。
第6面S16は、映像光GLを第2導光部分12内に入射させる屈折面として機能する。なお、第6面S16は、本体10sの表面に施されたハードコート層27によって形成される面である。
光透過部材50は、既述のように導光部材10と一体的に固定され1つの導光装置20となっている。光透過部材50は、導光部材10の透視機能を補助する部材(補助光学ブロック)であり、光学的な機能を有する側面として、第1透過面S51と、第2透過面S52と、第3透過面S53とを有する。ここで、第1透過面S51と第3透過面S53との間に第2透過面S52が配置されている。第1透過面S51は、導光部材10の第1面S11を延長した曲面上にあり、第2透過面S52は、当該第2面S12に対して接着層CCによって接合され一体化されている曲面であり、第3透過面S53は、導光部材10の第3面S13を延長した曲面上にある。このうち第2透過面S52と導光部材10の第2面S12とは、薄い接着層CCを介しての接合によって一体化されるため、略同じ曲率の形状を有する。
光透過部材(補助光学ブロック)50は、可視域で高い光透過性を示し、光透過部材50の本体部分は、導光部材10の本体10sと略同一の屈折率を有する熱可塑性樹脂材料で形成されている。なお、光透過部材50は、本体部分を導光部材10の本体10sに接合した後、接合された状態で本体10sとともにハードコートによる成膜がなされて形成されるものである。つまり、光透過部材50は、導光部材10と同様、本体部分の表面にハードコート層27が施されたものとなっている。つまり、第1透過面S51と第3透過面S53とは、本体部分の表面に施されたハードコート層27によって形成される面である。
画像表示装置80は、2次元的な照明光SLを射出する照明装置81と、透過型の空間光変調装置である映像表示素子82と、照明装置81及び映像表示素子82の動作を制御する駆動制御部84とを有する。
画像表示装置80の照明装置81は、赤、緑、青の3色を含む光を発生する光源81aと、光源81aからの光を拡散させて矩形断面の光束にするバックライト導光部81bとを有する。映像表示素子82は、例えば液晶表示デバイスで形成される映像素子であり、照明装置81からの照明光SLを空間的に変調して動画像等の表示対象となるべき画像光を形成する。駆動制御部84は、光源駆動回路84aと、液晶駆動回路84bとを備える。光源駆動回路84aは、照明装置81の光源81aに電力を供給して安定した輝度の照明光SLを射出させる。液晶駆動回路84bは、映像表示素子(映像素子)82に対して画像信号又は駆動信号を出力することにより、透過率パターンとして動画や静止画の元になるカラーの映像光又は画像光を形成する。なお、液晶駆動回路84bに画像処理機能を持たせることができるが、外付けの制御回路に画像処理機能を持たせることもできる。
以下、虚像表示装置100における映像光GL等の光路について説明する。映像表示素子(映像素子)82から射出された映像光GLは、投射レンズ30によって収束されつつ、導光部材10に設けた比較的強い正の屈折力を有する第6面S16に入射する。
導光部材10の第6面S16を通過した映像光GLは、収束しつつ進み、第2導光部分12を経由する際に、比較的弱い正の屈折力を有する第5面S15で反射され、比較的弱い負の屈折力を有する第4面S14で反射される。
第2導光部分12の第4面S14で反射された映像光GLは、第1導光部分11において、比較的弱い正の屈折力を有する第3面S13に入射して全反射され、比較的弱い負の屈折力を有する第1面S11に入射して全反射される。なお、映像光GLは、第3面S13を通過する前後において、導光部材10中に中間像を形成する。この中間像の像面IIは、映像表示素子82の像面OIに対応するものである。
第1面S11で全反射された映像光GLは、第2面S12に入射するが、特にハーフミラー層15に入射した映像光GLは、このハーフミラー層15を部分的に透過しつつも部分的に反射されて第1面S11に再度入射して通過する。なお、ハーフミラー層15は、ここで反射される映像光GLに対して比較的強い正の屈折力を有するものとして作用する。また、第1面S11は、これを通過する映像光GLに対して負の屈折力を有するものとして作用する。
第1面S11を通過した映像光GLは、観察者の眼EYの瞳に略平行光束として入射する。つまり、観察者は、虚像としての映像光GLにより、映像表示素子(映像素子)82上に形成された画像を観察することになる。
一方、外界光HLのうち、導光部材10の第2面S12よりも−X側に入射するものは、第1導光部分11の第3面S13と第1面S11とを通過するが、この際、正負の屈折力が相殺されるとともに収差が補正される。つまり、観察者は、導光部材10越しに歪みの少ない外界像を観察することになる。同様に、外界光HLのうち、導光部材10の第2面S12よりも+X側に入射するもの、つまり、光透過部材50に入射したものは、これに設けた第3透過面S53と第1透過面S51とを通過する際に、正負の屈折力が相殺されるとともに収差が補正される。つまり、観察者は、光透過部材50越しに歪みの少ない外界像を観察することになる。さらに、外界光HLのうち、導光部材10の第2面S12に対応する光透過部材50に入射するものは、第3透過面S53と第1面S11とを通過する際に、正負の屈折力が相殺されるとともに収差が補正される。つまり、観察者は、光透過部材50越しに歪みの少ない外界像を観察することになる。なお、導光部材10の第2面S12と光透過部材50の第2透過面S52とは、略同一の曲面形状をともに有し、略同一の屈折率をともに有し、両者の隙間が略同一の屈折率の接着層CCで充填されている。つまり、導光部材10の第2面S12や光透過部材50の第2透過面S52は、外界光HLに対して屈折面として作用しない。
ただし、ハーフミラー層15に入射した外界光HLは、このハーフミラー層15を部分的に透過しつつも部分的に反射されるので、ハーフミラー層15に対応する方向からの外界光HLは、ハーフミラー層15の透過率に弱められる。その一方で、ハーフミラー層15に対応する方向からは、映像光GLが入射するので、観察者は、ハーフミラー層15の方向に映像表示素子(映像素子)82上に形成された画像とともに外界像を観察することになる。
導光部材10内で伝搬されて第2面S12に入射した映像光GLのうち、ハーフミラー層15で反射されなかったものは、光透過部材50内に入射するが、光透過部材50に設けた不図示の反射防止部によって導光部材10に戻ることが防止される。つまり、第2面S12を通過した映像光GLが光路上に戻されて迷光となることが防止される。また、光透過部材50側から入射してハーフミラー層15で反射された外界光HLは、光透過部材50に戻されるが、光透過部材50に設けた上述の不図示の反射防止部によって導光部材10に射出されることが防止される。つまり、ハーフミラー層15で反射された外界光HLが光路上に戻されて迷光となることが防止される。
以上の説明から明らかなように、本実施形態の虚像表示装置100によれば、板状部分87と接続部CNとによって、映像素子である映像表示素子82と投射光学系である投射レンズ30との相対的な位置を調整しながら、映像表示素子82を収納する映像素子ケース86と投射レンズ30を収納する鏡筒39とを接着させることができる。従って、投射レンズ30での製造誤差等に伴って光学系にバラツキが発生しても、投射レンズ30と映像表示素子82とのアライメント時において上記のバラツキを補正して、確実な装置のアライメントを行うことが可能となる。この場合、例えば従来の方法として知られている映像素子等の外端部の四隅等にピンと孔とでクリアランスを設ける嵌合部等によってアライメントを行う場合に比べて、装置の小型化を図ることができる。また、上記のような嵌合部を有する場合に比べて、簡易な構造となっている。
以上、実施形態に即して本発明を説明したが、本発明は、上記の実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能であり、例えば次のような変形も可能である。
上記では、映像素子ケース86が板状部分87を有し、鏡筒39が接続部CNを有するものとしているが、これとは反対に、鏡筒39が映像素子ケース86に向かって延びる板状部分87を有し、映像素子ケース86が板状部分87に対応して設けられる平面部分を含む接続部CNを有するものとすることもできる。
上記では、凸状リブPRa及びスリット状部分SLa等は、中央側に1つ設けられているものとしているが、これらの形状は、図示の場合に限らず種々の形状とすることができ、例えば、凸状リブPRaが二つ以上設けられるもの等であってもよく、大きさ(深さ)も種々のものが適用できる。
また、上記では、HMD等の虚像表示装置に対して説明したが、本願発明は、虚像表示装置に限らず、例えば小型のプロジェクター、特に、携帯端末等の小型の電子機器に組み込まれる際の液晶プロジェクター等においても同様に適用することができる。図10は、携帯端末等の小型の電子機器PDに組み込まれた液晶型のプロジェクター200を模式的に示す図である。具体的には、プロジェクター200は、映像表示素子(映像素子)282を映像素子ケース286の本体部分286aに収納する画像表示装置280と、投射光学系である投射レンズ230を収納する鏡筒239とを有している。画像表示装置280を構成する映像素子ケース286は、本体部分286aの両端から鏡筒239の接続部CN側にそれぞれ延びる一対の対向する平板状の部材である上側部分287aと下側部分287bとで構成されている。なお、プロジェクター200は、ケーブルCBを介して電子機器PDの本体部に接続されており、画像信号等の各種信号が入力され、入力された画像信号に応じて映像表示素子282で画像を形成させ、投射レンズ230によって形成された画像をスクリーン面SCに映像光GLを投射する。この場合も、映像素子ケース286の板状部分287と鏡筒239の接続部CNとによって、映像表示素子282と投射レンズ230との相対的な位置を調整しながら、映像表示素子282を収納する映像素子ケース86と投射レンズ30を収納する鏡筒39とをアライメントしつつ接着させることができる。また、プロジェクター200は、コンパクトに設計できるので、小型の電子機器PDに組み込みやすいものとなる。なお、図では、プロジェクター200を、電子機器PDに組み込んだ例を示したが、これに限らず、プロジェクター200が電子機器PDに外付けされる構成であるものとしてもよい。この場合、プロジェクター200を小型にできるので、外付けしても邪魔になりにくく、例えば取付け場所に制限がある場合に使いやすいものとなる。
また、上記では、虚像表示装置100のフレーム107と投射レンズ30とが別体でネジ止めによって投射レンズ30をフレーム107に固定しているが、投射レンズ30を収納する鏡筒39をフレーム107と一体成形することもできる。鏡筒39をフレーム107と一体成形する方法として、アウトサート成形、ダイカスト一体成形後の鏡筒部削り出し等の手法がある。
導光装置20又は投射レンズ30については、ネジ止めによる締結に限らず、様々な手法でフレーム107に固定することができる。
上記の説明では、制限部107nやリブ10nが細長く延びるとしたが、これらを短くすることができ、さらに複数組の制限部107nやリブ10nを設けることもできる。また、リブ10nにおいて拡幅部10qは不要であり、この拡幅部10qを省略する場合、制限部107nの溝107sにおいて、拡幅部107qを省略することもできる。さらに、制限部107nは、溝107sのような凹部に限らず、例えばリブ10nに沿って互い違いに配置された突起又は凸条とすることもできる。
上記の説明では、フレーム107に制限部107nを設けているが、これに代えて或いはこれとともに、プロテクター108に導光部材10の変形、ぶれ等を防止するための制限部を設けることもできる。プロテクター108側に形成された制限部は、下のリブ10oを例えば遊嵌によって係止する。
上記の説明では、フレーム107にプロテクター108を取り付けているが、プロテクター108についてはこれを省略することができる。この場合、図2(B)等に示すフレーム107を元の形状のままに維持して、フレーム107の中央部107gに鼻当て部材108aを設けた補助部材を連結することもできるが、補助部材を一体的に設けたフレーム107を予め準備することもできる。かかる補助部材は、プロテクター108の縦部分63aと同様に導光装置20を保護する部材として用い得る。なお、フレーム107とプロテクター108とを一体的に作製することもできる。
上記実施形態では、導光部材10の光入射側に投射レンズ30を配置しているが、投射レンズ30を省略して、導光部材10自体に結像機能を持たせることができる。また、投射レンズ30に代えて結像機能を有する別の導光部材10を配置することもできる。この場合、導光部材10を鏡筒39に組み付けた後に、鏡筒39と映像素子ケース86とを組み付けることになる。
上記実施形態では、投射レンズ30を収納する鏡筒39に導光装置20との係止部材(連結部分)39aを設けているが、導光装置20側に例えば鏡筒39を挟むように鏡筒39と嵌合する係止部材を設けることができる。
上記実施形態では、ハーフミラー層(半透過反射膜)15が横長の矩形領域に形成されるとしたが、ハーフミラー層15の輪郭は用途その他の使用に応じて適宜変更することができる。また、ハーフミラー層15の透過率や反射率も用途その他に応じて変更することができる。
上記実施形態では、ハーフミラー層15が単なる半透過性の膜(例えば金属反射膜や誘電体多層膜)であるとしたが、ハーフミラー層15は、平面又は曲面のホログラム素子に置き換えることができる。
上記実施形態では、映像表示素子82における表示輝度の分布を特に調整していないが、位置によって輝度差が生じる場合等においては、表示輝度の分布を不均等に調整することができる。
上記実施形態では、画像表示装置80として、透過型の液晶表示デバイス等からなる映像表示素子82を用いているが、画像表示装置80としては、透過型の液晶表示デバイス等からなる映像表示素子82に限らず種々のものを利用可能である。例えば、反射型の液晶表示デバイスを用いた構成も可能であり、液晶表示デバイス等からなる映像表示素子82に代えてデジタル・マイクロミラー・デバイス等を用いることもできる。また、画像表示装置80として、LEDアレイやOLED(有機EL)などに代表される自発光型素子を用いることができる。
上記の説明では、一対の表示装置100A,100Bを備える虚像表示装置100について説明しているが、単一の表示装置とできる。つまり、右眼及び左眼の双方に対応して、一組ずつ投射透視装置70及び画像表示装置80を設けるのではなく、右眼又は左眼のいずれか一方に対してのみ投射透視装置70及び画像表示装置80を設け、画像を片眼視する構成にしてもよい。この場合、フレーム107やつる部分104は、例えば図1等に示すままで左右対称に配置する形状とする。
上記の説明では、一対の表示装置100A,100BのX方向の間隔について説明していないが、両表示装置100A,100Bの間隔は固定に限らず、機械機構等によって間隔の調整が可能である。つまり、フレーム107に伸縮機構等を設けるならば、両表示装置100A,100BのX方向の間隔を、着用者の眼幅等に応じて調整することができる。
上記実施形態では、導光部材10の第1面S11及び第3面S13において、表面上にミラーやハーフミラー等を施すことなく空気との界面により映像光を全反射させて導くものとしているが、本願発明の虚像表示装置100における全反射については、第1面S11又は第3面S13上の全体又は一部にミラーコートや、ハーフミラー膜が形成されてなされる反射も含むものとする。例えば、映像光の入射角度が全反射条件を満たした上で、上記第1面S11又は第3面S13の全体又は一部にミラーコート等が施され、実質的に全ての映像光を反射する場合も含まれる。また、十分な明るさの映像光を得られるのであれば、多少透過性のあるミラーによって第1面S11又は第3面S13の全体又は一部がコートされていてもよい。
上記の説明では、導光部材10等が眼EYの並ぶ横方向に延びているが、導光部材10を縦方向に延びるように配置することもできる。この場合、導光部材10は、例えば上部での片持ち状態によって支持される。