JP6468536B2 - 3−メチル−2−シクロペンタデセノン組成物の製造方法および(r)−ムスコン組成物の製造方法 - Google Patents

3−メチル−2−シクロペンタデセノン組成物の製造方法および(r)−ムスコン組成物の製造方法 Download PDF

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本発明は、(E)−3−メチル−2−シクロペンタデセノンと(Z)−3−メチル−2−シクロペンタデセノンとの存在比が調整された3−メチル−2−シクロペンタデセノン組成物の製造方法、および、その3−メチル−2−シクロペンタデセノン組成物を合成中間体とする(R)−ムスコン組成物の製造方法に関する。
従来、(R)−ムスコンおよび(S)−ムスコンの組成物を得る方法としては、特許文献1に示されるように、(R)−ムスコンと(S)−ムスコンとの等量混合物であるラセミ体ムスコンを得る方法等が知られている。
また、(R)−ムスコンと(S)−ムスコンとを任意の割合で調整した組成物の製造方法としては、特許文献2に示されるように、ラセミ体ムスコンから光学分割して得られた(R)−ムスコンと(S)−ムスコンとを混合する方法や、(E)−3−メチル−2−シクロペンタデセノンまたは(Z)−3−メチル−2−シクロペンタデセノンを不斉水素化し、得られた(R)−ムスコンと(S)−ムスコンとを混合する方法や、(R)−ムスコンにラセミ体ムスコンを混合する方法や、光学分割法や不斉合成法の反応条件等を調整する方法等が知られている。
(E)−3−メチル−2−シクロペンタデセノンの製造方法としては、特許文献3に示されるように、3−メチル−2−シクロペンタデセノン類に臭化水素または塩化水素を付加させる付加工程と、付加工程のあとに臭化水素または塩化水素を脱離する脱離工程とからなる異性化工程を経て、(E)−3−メチル−2−シクロペンタデセノンを得る方法等が知られている。
また、(Z)−3−メチル−2−シクロペンタデセノンの製造方法としては、特許文献4に示されるように、3−メチル−1−トリメチルシロキシ−1−シクロペンタデセン等から合成する方法等が知られている。
特許第2763383号公報 特許第4808633号公報 特許第5603169号公報 特開平7−267968号公報
上述の特許文献1の方法では、(R)−ムスコンと(S)−ムスコンとの等量混合物であるラセミ体ムスコンしか得られず、(R)−ムスコンと(S)−ムスコンとを任意の割合で調整できない。
上述の特許文献2に記載されたラセミ体ムスコンから光学分割して得られた(R)−ムスコンと(S)−ムスコンとを混合する方法では、高価な光学分割材を使用しなければならないため、製造コストが上昇してしまう。
また、(E)−3−メチル−2−シクロペンタデセノンまたは(Z)−3−メチル−2−シクロペンタデセノンを不斉水素化し、得られた(R)−ムスコンに(S)−ムスコンまたはラセミ体ムスコンを混合する方法では、それぞれ(R)−ムスコン、(S)−ムスコンまたはラセミ体ムスコンを製造しなければならないため、製造工程が多く煩雑であり、容易に製造できない。
不斉合成法の反応条件等を調整する方法では具体的な記載はないが、反応条件によっては多くの異なる設備が必要になり、製造コストが上昇してしまう。
そして、不斉合成法の反応条件等を変えることなく簡便に(R)−ムスコン組成物を得るためには、(E)−3−メチル−2−シクロペンタデセノンと(Z)−3−メチル−2−シクロペンタデセノンとが目的の組成比に調整された組成物を不斉合成の原料として用いる方法が考えられる。
上述の特許文献3および4に記載された方法では、それぞれ(E)−3−メチル−2−シクロペンタデセノンと(Z)−3−メチル−2−シクロペンタデセノンとを製造するが、目的とする3−メチル−2−シクロペンタデセノンを得るためには、それぞれ異なる反応条件に調整する必要がある。また、これら方法で得られた(E)−3−メチル−2−シクロペンタデセノンと(Z)−3−メチル−2−シクロペンタデセノンとを混合し、目的の割合に調整する必要もあり、煩雑で容易に製造できない。
そこで、(E)−3−メチル−2−シクロペンタデセノンと(Z)−3−メチル−2−シクロペンタデセノンとの存在比が調整された3−メチル−2−シクロペンタデセノン組成物、および、(R)−ムスコン組成物を、コスト的な観点からも作業的な観点からも容易に製造できる方法が求められていた。
本発明は、このような点に鑑みなされたもので、(E)−3−メチル−2−シクロペンタデセノンと(Z)−3−メチル−2−シクロペンタデセノンとの存在比が調整された3−メチル−2−シクロペンタデセノン組成物を容易に製造できる3−メチル−2−シクロペンタデセノン組成物の製造方法、および、(R)−ムスコン組成物を容易に製造できる(R)−ムスコン組成物の製造方法を提供することを目的とする。
請求項1に記載された3−メチル−2−シクロペンタデセノン組成物の製造方法は、3−メチル−2−シクロペンタデセノンおよび3−メチル−3−シクロペンタデセノンを含む混合物中の3−メチル−2−シクロペンタデセノンおよび3−メチル−3−シクロペンタデセノンにハロゲン化水素を付加する付加工程と、この付加工程後のハロゲン化水素付加物から比誘電率1以上50以下の溶媒の存在下でハロゲン化水素を脱離させる脱離工程とを備え、これら付加工程および脱離工程により、前記混合物中の3−メチル−2−シクロペンタデセノンおよび3−メチル−3−シクロペンタデセノンを異性化させる際に、脱離工程における溶媒の比誘電率を調整することによって、(E)−3−メチル−2−シクロペンタデセノンと(Z)−3−メチル−2−シクロペンタデセノンとの存在比を28.9:68.8から85.1:12.7の範囲に調整するものである。
求項に記載された3−メチル−2−シクロペンタデセノン組成物の製造方法は、請求項1記載の3−メチル−2−シクロペンタデセノン組成物の製造方法において、脱離工程は、無機塩基および有機塩基の少なくとも一方の存在下で行うものである。
請求項に記載された3−メチル−2−シクロペンタデセノン組成物の製造方法は、請求項1または2記載の3−メチル−2−シクロペンタデセノン組成物の製造方法において、付加工程および脱離工程による異性化後の異性体混合物から3−メチル−2−シクロペンタデセノンを分離する分離工程を備えるものである。
請求項に記載された3−メチル−2−シクロペンタデセノン組成物の製造方法は、請求項記載の3−メチル−2−シクロペンタデセノン組成物の製造方法において、分離工程で分離された3−メチル−2−シクロペンタデセノン以外の成分を付加工程へ循環させる循環工程を備えるものである。
請求項に記載された(R)−ムスコン組成物の製造方法は、請求項1ないしいずれか一記載の3−メチル−2−シクロペンタデセノン組成物の製造方法により得られた3−メチル−2−シクロペンタデセノン組成物を不斉水素化するものである。
本発明によれば、付加工程および脱離工程により、混合物中の3−メチル−2−シクロペンタデセノンおよび3−メチル−3−シクロペンタデセノンを異性化させて、(E)−3−メチル−2−シクロペンタデセノンと(Z)−3−メチル−2−シクロペンタデセノンの存在比を所定の比率に調整できるため、(E)−3−メチル−2−シクロペンタデセノンと(Z)−3−メチル−2−シクロペンタデセノンとの存在比が調整された3−メチル−2−シクロペンタデセノン組成物を容易に製造できる。
また、この3−メチル−2−シクロペンタデセノン組成物の製造方法で得られた3−メチル−2−シクロペンタデセノン組成物を不斉水素化するため、(R)−ムスコン組成物を容易に製造できる。
溶媒の比誘電率と異性体の比率との関係を示すグラフである。
以下、本発明の一実施の形態の構成について詳細に説明する。
本発明の一実施の形態に係る3−メチル−2−シクロペンタデセノン組成物の製造方法は、3−メチル−2−シクロペンタデセノンおよび3−メチル−3−シクロペンタデセノンを含む混合物中の3−メチル−2−シクロペンタデセノンおよび3−メチル−3−シクロペンタデセノンを異性化して、(E)−3−メチル−2−シクロペンタデセノンと(Z)−3−メチル−2−シクロペンタデセノンとの存在比を所定の比率に調整する。
すなわち、例えば[化1]に示す化学式において、構造式1,2,3,4を含む3−メチルシクロペンタデセノン類の5種類の異性体混合物中の構造式1,2,3,4の化合物を、構造式1および2の化合物である(E)−3−メチル−2−シクロペンタデセノンおよび(Z)−3−メチル−2−シクロペンタデセノンに異性化することによって、(E)−3−メチル−2−シクロペンタデセノンと(Z)−3−メチル−2−シクロペンタデセノンとの存在比を調整する。
なお、3−メチル−2−シクロペンタデセノン組成物における(E)−3−メチル−2−シクロペンタデセノンと(Z)−3−メチル−2−シクロペンタデセノンとの存在比を20:80から95:5の範囲において所望の存在比に調整する。
Figure 0006468536
構造式1,2,3,4の化合物を含む混合物(異性体混合物)には、構造式5の化合物が含まれていてもよい。また、構造式5の化合物が含まれている場合には、異性化工程において構造式5の化合物は、構造式1,2,3,4の化合物とともに構造式1および2の化合物に異性化される。
なお、異性化の際には、構造式1,2,3,4,5の化合物が構造式1および2の化合物に完全に異性化される必要はなく、異性化後に構造式3,4,5の化合物が残留していてもよい。また、構造式3,4,5の化合物の一部が構造式1および2の化合物に異性化されていてもよい。
ここで、3−メチル−2−シクロペンタデセノンおよび3−メチル−3−シクロペンタデセノンを含む混合物中の3−メチル−2−シクロペンタデセノンおよび3−メチル−3−シクロペンタデセノンを異性化する異性化工程は、混合物にハロゲン化水素を付加する付加工程と、この付加工程後に比誘電率1以上50以下の溶媒の存在下でハロゲン化水素を脱離させる脱離工程とを備える。
付加工程では、3−メチル−2−シクロペンタデセノンおよび3−メチル−3−シクロペンタデセノンにハロゲン化水素を付加して、構造式6に示すハロゲン化水素付加物とする。
脱離工程では、ハロゲン化水素付加物からハロゲン化水素を脱離させて、構造式1および2に示す(E)−3−メチル−2−シクロペンタデセノンおよび(Z)−3−メチル−2−シクロペンタデセノンを多く含む異性体混合物とする。
付加工程にて用いるハロゲン化水素は、ガス状であることには限定されず、液体や溶液として用いることができ、経済性および安全性を考慮すると、溶液として用いることが好ましい。
ハロゲン化水素としては、例えば、塩化水素、臭化水素およびヨウ化水素等から適宜選択でき、経済性およびハロゲン化水素付加物の安定性を考慮すると、塩化水素を用いることが好ましい。
ハロゲン化水素の使用量は、3−メチル−2−シクロペンタデセノン類に対して1.0倍モルより少ないと反応が完結しない可能性があり、また一方、多すぎると経済的ではない。そのため、通常、ハロゲン化水素の使用量は3−メチル−2−シクロペンタデセノン類に対して1.0倍モル以上100倍モル以下とし、好ましくは1.0倍モル以上10倍モル以下である。
付加工程では、溶媒を用いても用いなくてもよいが、溶媒を用いないと副生成物の生成が多くなる可能性があるため、溶媒を用いる方が好ましい。
付加工程で用いる溶媒としては、例えば、カルボン酸類、脂肪族炭化水素類、芳香族炭化水素類、ハロゲン化物類、アルコール類、エーテル類およびエステル類から適宜選択でき、具体的には、酢酸、ヘキサン、デカン、トルエン、ジクロロメタン、メタノール、エタノール、テトラハイドロフランおよび酢酸エチル等を用いることができる。またこれらの中では、ハロゲン化水素の溶解性が高く、反応性も良好な、酢酸、メタノール、エタノール、テトラハイドロフランおよび酢酸エチルが好ましい。なお、溶媒は複数の溶媒を混合した混合溶媒を使用してもよい。
溶媒の使用量は、無添加であると副生成物の生成が多くなる可能性があり、また一方、多すぎると経済的ではない。そのため、通常は3−メチル−2−シクロペンタデセノン類に対して50倍重量以下とし、好ましくは0.5倍重量以上20倍重量以下である。
付加工程における反応温度は、−20℃より低いと反応が進行しにくくなり、また一方、80℃より高いと副反応を抑制できなくなる可能性がある。そのため、通常は−20℃以上80℃以下とし、好ましくは0℃以上40℃以下である。
付加工程における反応時間は、0.5時間より短いと反応が完結しない可能性があり、また一方、48時間より長いと副反応を抑制できなくなる可能性がある。そのため、通常は0.5時間以上48時間以下とし、好ましくは1時間以上24時間以下である。
脱離工程では、溶媒や、無機塩基および有機塩基の少なくとも一方を用いて、ハロゲン化水素付加物からハロゲン化水素を脱離する。
この脱離工程における溶媒は、比誘電率1以上50以下の溶媒であり、比誘電率が11以下だと(Z)−3−メチル−2−シクロペンタデセノンが多く生成されて、比誘電率が11より大きいと(E)−3−メチル−2−シクロペンタデセノンが多く生成される。そのため、溶媒の比誘電率を調整することにより(E)−3−メチル−2−シクロペンタデセノンと(Z)−3−メチル−2−シクロペンタデセノンの存在比を20:80から95:5の範囲における所望の割合に調整する。
比誘電率1以上50以下の溶媒としては、例えば、脂肪族炭化水素類、芳香族炭化水素類、ハロゲン化物類、アルコール類、エーテル類から適宜選択でき、具体的には、ヘキサン、ヘプタン、デカン、ベンゼン、トルエン、o−キシレン、クロロベンゼン、t−ブタノール、エタノール、メタノール、ジブチルエーテル、ジエチルエーテルおよびテトラハイドロフラン等を用いることができる。なお、溶媒は複数の溶媒を混合した混合溶媒を使用してもよい。
溶媒の使用量は、構造式6で示すハロゲン化水素付加物に対して0.5倍重量より少ないと副反応を抑制できなくなる可能性があり、また一方、多すぎると経済的ではない。そのため、通常はハロゲン化水素付加物(構造式6)に対して0.5倍重量以上100倍重量以下とし、好ましくは1倍重量以上50倍重量以下である。
また、脱離工程では、無機塩基および有機塩基の少なくとも一方の存在下で反応させることで、3−メチル−2−シクロペンタデセノンの選択率を向上できるので好ましい。
無機塩基としては、水酸化物類および炭酸化物類から適宜選択でき、具体的には、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウムおよび炭酸カリウム等を用いることができる。
有機塩基としては、アルコキシド類、アミド類、および、アミン類から適宜選択でき、具体的には、ナトリウムエトキシド、カリウムエトキシド、ナトリウムt−ブトキシド、カリウムt−ブトキシド、ナトリウムビス(トリメチルシリル)アミド、カリウムビス(トリメチルシリル)アミド、リチウムジイソプロピルアミド、および、ジアザビシクロウンデセン等を用いることができる。
無機塩基および有機塩基の使用量は、ハロゲン化水素付加物(構造式6)に対して1.0倍モルより少ないと反応が完結しない可能性があり、また一方、多すぎると経済的ではない。そのため、通常はハロゲン化水素付加物(構造式6)に対して1.0倍モル以上3.0倍モル以下とし、好ましくは1.0倍モル以上2.0倍モル以下である。
脱離工程における反応温度は、−100℃より低いと反応が進行しにくくなり、60℃より高いと副反応を抑制できなくなる可能性がある。そのため、通常は−100℃以上60℃以下とし、好ましくは−80℃以上40℃以下である。
反応時間は、1分より短いと反応が完結しない可能性があり、72時間より長いと副反応を抑制できなくなる可能性がある。そのため、通常は1分以上60時間以下とし、好ましくは1分以上48時間以下である。
また、3−メチル−2−シクロペンタデセノン組成物の製造方法では、異性化後の異性体混合物から3−メチル−2−シクロペンタデセノンを分離する分離工程を備えることにより、3−メチル−2−シクロペンタデセノンの純度を向上できるので好ましい。
すなわち、分離工程では、例えば蒸留およびクロマトグラフィー等の分離方法で、異性化後の異性体混合物から3−メチル−2−シクロペンタデセノンを分離する。
さらに、3−メチル−2−シクロペンタデセノン組成物の製造方法では、分離工程で分離された3−メチル−2−シクロペンタデセノン以外の成分を付加工程へ返送して循環させる循環工程を備えることにより、3−メチル−2−シクロペンタデセノンの収率を向上できるので好ましい。
そして、3−メチル−2−シクロペンタデセノン組成物の製造方法により得られた3−メチル−2−シクロペンタデセノン組成物を合成中間体として、(R)−ムスコン組成物を製造すると、比較的に低コストで簡便に目的の組成比に調整された(R)−ムスコン組成物が得られるため好ましい。
具体的には、(E)−3−メチル−2−シクロペンタデセノンと(Z)−3−メチル−2−シクロペンタデセノンとの存在比を20:80から95:5の範囲に調整された3−メチル−2−シクロペンタデセノン組成物を不斉水素化することで、(R)−ムスコン組成物が得られる。
不斉水素化は、ルテニウム−光学活性ホスフィン錯体を触媒として不斉水素化する方法等の既知の方法を適宜適用できる。
次に、上記一実施の形態の効果等を説明する。
上記3−メチル−2−シクロペンタデセノン組成物の製造方法によれば、付加工程および脱離工程により、3−メチル−2−シクロペンタデセノンおよび3−メチル−3−シクロペンタデセノン混合物中の3−メチル−2−シクロペンタデセノンおよび3−メチル−3−シクロペンタデセノンを3−メチル−2−シクロペンタデセノンに異性化させるため、例えば比較的に高価な化学製品等を用いることなく低コストで作業が簡便であり、(E)−3−メチル−2−シクロペンタデセノンと(Z)−3−メチル−2−シクロペンタデセノンとの存在比が調整された3−メチル−2−シクロペンタデセノン組成物を容易に製造できる。
また、3−メチル−2−シクロペンタデセノンおよび3−メチル−3−シクロペンタデセノンを3−メチル−2−シクロペンタデセノンに異性化させるため、この異性化により得られた異性体混合物における3−メチル−2−シクロペンタデセノンの存在割合が高くなり、3−メチル−2−シクロペンタデセノンを容易に分離できる。
分離工程では、異性化後の異性体混合物から3−メチル−2−シクロペンタデセノンを分離するため、高純度の3−メチル−2−シクロペンタデセノン組成物を得ることができる。
分離工程で3−メチル−2−シクロペンタデセノンを分離した後に残留した3−メチル−2−シクロペンタデセノン以外の成分を付加工程へ循環させることにより、3−メチル−2−シクロペンタデセノン組成物の収率を向上できる。
また、上記3−メチル−2−シクロペンタデセノン組成物の製造方法で得られた(E)−3−メチル−2−シクロペンタデセノンと(Z)−3−メチル−2−シクロペンタデセノンとの存在比を20:80から95:5の範囲に調整された3−メチル−2−シクロペンタデセノン組成物を不斉水素化することで、低コストで簡便に目的の組成比に調整された(R)−ムスコン組成物を容易に製造できる。
以下、本発明の具体的な実施例および比較例について説明する。
[実施例1]
[3−メチルシクロペンタデセノン類の異性体混合物の合成]
カラム(22mmφ、長さ40cm)に3〜4mmφの磁性ラシヒ35mLを上部に充填し、触媒として酸化亜鉛ペレット50mLを下部に充填し、磁性ラシヒ層の温度を315℃、触媒層の温度を360℃になるように加熱した。このカラムへ窒素(5L/時間)キャリア下にて、5重量%の2,15−ヘキサデカンジオンのデカン溶液を25g/時間の速度で導入して、分子内縮合反応を行った。3時間の反応後の反応生成液をガスクロマトグラフィー(GC)にて分析したところ、収率は52%であった。次いで、反応生成液を粗蒸留し、3−メチルシクロペンタデセノン類の異性体混合物(構造式1,2,3,4,5)を得た。
得られた異性体混合物をH−NMRにより分析したところ、異性体混合物における異性体の比率は、1:2:3:4:5=21:15:37:22:5であった。
[ハロゲン化水素の付加]
(i)塩化水素の付加
3−メチルシクロペンタデセノン類の5種類の異性体混合物(236mg,1.0mmol)に9%塩化水素酢酸溶液(2.0g,5.0mmol)を加えて、室温で3時間撹拌した。次いで、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液を加えた後、酢酸エチルで2回抽出した。また、有機層を水および飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した後、溶媒を留去し、淡黄色の油状物を得た。
この油状物を高速液体クロマトグラフィー(HPLC)測定したところ、塩化水素付加物(構造式6、X=Cl)は220mg(収率80%)であった。
(ii)臭化水素の付加
3−メチルシクロペンタデセノン類の5種類の異性体混合物(473mg,2.0mmol)のジクロロメタン溶液(4.0mL)に25%臭化水素酢酸溶液(777mg,2.4mmol)を加えて、室温で1時間撹拌した。次いで、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液を加えた後、酢酸エチルで2回抽出した。また、有機層を水および飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した後、溶媒を留去し、淡黄色の油状物を得た。
この油状物を高速液体クロマトグラフィー(HPLC)測定したところ、臭化水素付加物(構造式6、X=Br)は511mg(収率81%)であった。
[ハロゲン化水素の脱離]
(i)溶媒の検討
上記塩化水素付加物(273mg,1.0mmol)のヘキサン溶液(5.3mL)に室温でカリウムt−ブトキシド(123mg,1.1mmol)を加え、15分間撹拌した。次いで、塩化アンモニウム水溶液を加えた後、酢酸エチルで2回抽出した。また、有機層を水および飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した後、溶媒を留去し、淡黄色の油状物を281mg得た。
薄層クロマトグラフィー(TLC)およびガスクロマトグラフィー(GC)の結果から異性体混合物(構造式1,2,3,4,5)の比率は1:2:3:4:5=31.1:68.3:痕跡:痕跡:0.6であった。また、異性体混合物(構造式1,2,3,4,5)と原料の塩化水素付加物(構造式6、X=Cl)との比率はガスクロマトグラフィー(GC)により、100:0であった。この結果を表1のエントリー1および図1に示す。
また、溶媒としてエントリー1のヘキサンの代わりに比誘電率が11より低い溶媒としてヘプタン、デカン、トルエン、o−キシレン、ジブチルエーテル、ジエチルエーテル、クロロベンゼンおよびt−ブタノールを用いた場合について、エントリー1と同様に操作した。これら各溶媒を用いた場合の結果を表1のエントリー2ないし9および図1に示す。
また、エントリー1のヘキサンの代わりに、比誘電率が11より高い溶媒であるシクロヘキサノール、1−ブタノール、1−プロパノール、エタノールおよびメタノールを用いた場合について、エントリー1と同様に操作した。これらの結果を表1のエントリー10ないし14および図1に示す。
Figure 0006468536
[実施例2]
[脱離工程における塩基の検討]
塩化水素付加物(273mg,1.0mmol)のデカン溶液(7.8mL)に室温でカリウムt−ブトキシド(123mg,1.1mmol)を加え、1時間撹拌した。次いで、塩化アンモニウム水溶液を加えた後、酢酸エチルで2回抽出した。また、有機層を水および飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した後、酢酸エチルを留去し、異性体混合物のデカン溶液を5.8g得た。
薄層クロマトグラフィー(TLC)およびガスクロマトグラフィー(GC)の結果から異性体混合物(構造式1,2,3,4,5)の比率は1:2:3:4:5=31.3:65.6:痕跡:3.1:0であった。また、異性体混合物(構造式1,2,3,4,5)と原料の塩化水素付加物(構造式6、X=Cl)との比率はガスクロマトグラフィー(GC)により、100:0であった。この結果を、表2のエントリー1に示す。
また、塩基、溶媒および反応条件を変更した場合の条件および結果を表2のエントリー2ないし7に示す。
Figure 0006468536
[実施例3]
[分離および循環]
実施例1のエントリー1で得られた異性化後の異性体混合物(構造式1,2,3,4,5)をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:ヘキサン/酢酸エチル98/2(容積比))にて3−メチル−2−シクロペンタデセノンを分離した後、残った3−メチル−2−シクロペンタデセノン以外の成分を付加工程に循環した。すなわち、3−メチル−2−シクロペンタデセノン以外の成分を異性化前の3−メチルシクロペンタデセノン類の5種類の異性体混合物(構造式1,2,3,4,5)と混合した。混合した後の5種類の異性体混合物(236mg,1.0mmol)を用いて実施例1と同様に塩化水素を付加し、塩化水素付加物(構造式6、X=Cl)を218mg得た(収率80%)。
得られた塩化水素付加物(218mg,0.8mmol)を用いて実施例1のエントリー1と同様に脱離操作を行い、異性体混合物(構造式1,2,3,4,5)188mgを得た(収率100%)。
薄層クロマトグラフィー(TLC)およびガスクロマトグラフィー(GC)の結果から異性体混合物(構造式1,2,3,4,5)の比率は1:2:3:4:5=31.0:68.0:痕跡:痕跡:1.0であった。
[実施例4]
[(R)−ムスコン組成物の合成]
実施例2のエントリー6で得られた異性化後の異性体混合物(構造式1,2,3,4,5)をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:ヘキサン/酢酸エチル98/2(容積比))にて分離精製した。
得られた3−メチル−2−シクロペンタデセノン組成物は、ガスクロマトグラフィー(GC)の結果から(E)−3−メチル−2−シクロペンタデセノンと(Z)−3−メチル−2−シクロペンタデセノンとの存在比が80:20であった。上記分離精製で得られた3−メチル−2−シクロペンタデセノン(236mg,1.0mmol)をRuCl[(R)−Tol−BINAP]NEt(1mg,0.0005mmol)およびメタノール(1mL)と共に、窒素置換した25mLのオートクレーブに入れ、50atm水素圧下にて、25℃で24時間反応させた。次いで、溶媒を留去した後、得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:ヘキサン/酢酸エチル20/1(容積比))にて精製し、(R)−ムスコン組成物を233mg(収率98%)得た。
ガスクロマトグラフィー(GC)の結果から(R)−ムスコンと(S)−ムスコンとの存在比は75:25であった。
本発明は、(R)−ムスコン組成物や、(R)−ムスコン組成物の合成中間体である3−メチル−2−シクロペンタデセノン組成物の製造に利用できる。

Claims (5)

  1. 3−メチル−2−シクロペンタデセノンおよび3−メチル−3−シクロペンタデセノンを含む混合物中の3−メチル−2−シクロペンタデセノンおよび3−メチル−3−シクロペンタデセノンにハロゲン化水素を付加する付加工程と、
    この付加工程後のハロゲン化水素付加物から比誘電率1以上50以下の溶媒の存在下でハロゲン化水素を脱離させる脱離工程とを備え、
    これら付加工程および脱離工程により、前記混合物中の3−メチル−2−シクロペンタデセノンおよび3−メチル−3−シクロペンタデセノンを異性化させる際に、脱離工程における溶媒の比誘電率を調整することによって、(E)−3−メチル−2−シクロペンタデセノンと(Z)−3−メチル−2−シクロペンタデセノンとの存在比を28.9:68.8から85.1:12.7の範囲に調整する
    ことを特徴とする3−メチル−2−シクロペンタデセノン組成物の製造方法。
  2. 脱離工程は、無機塩基および有機塩基の少なくとも一方の存在下で行う
    ことを特徴とする請求項1記載の3−メチル−2−シクロペンタデセノン組成物の製造方法。
  3. 付加工程および脱離工程による異性化後の異性体混合物から3−メチル−2−シクロペンタデセノンを分離する分離工程を備える
    ことを特徴とする請求項1または2記載の3−メチル−2−シクロペンタデセノン組成物の製造方法。
  4. 分離工程で分離された3−メチル−2−シクロペンタデセノン以外の成分を付加工程へ循環させる循環工程を備える
    ことを特徴とする請求項記載の3−メチル−2−シクロペンタデセノン組成物の製造方法。
  5. 請求項1ないしいずれか一記載の3−メチル−2−シクロペンタデセノン組成物の製造方法により得られた3−メチル−2−シクロペンタデセノン組成物を不斉水素化する
    ことを特徴とする(R)−ムスコン組成物の製造方法。
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