JP6468001B2 - 鋼板および鋼板の製造方法 - Google Patents

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本発明は、鋼板および鋼板の製造方法に関するものである。
近年、自動車、各種産業機械、建築構造物等に使用される、鋼板、ボルトなどの鋼材の高強度化に対する要求が高まっている。しかし、高強度鋼の前記用途への適用に当たっては、水素脆化の発生という問題を解決する必要がある。
水素脆化は、高い応力が印加された状況で、腐食反応や、溶接時の鋼板表面のオイル分解等によって、鋼中に侵入した水素が粒界に捕捉されて引き起こされる。水素脆化が発生すると、鋼材が破損に至るおそれがある。
水素脆化という現象は、高強度鋼ほど感受性が高いことが知られている。これは、高強度鋼では、応力が印加されても塑性変形し難く、高応力下で保持されるため、その間に水素が鋼中に侵入し、水素脆化に至るからと考えられている。これに対し、低強度鋼では、応力が印加されると、塑性変形して破断に至ることから脆性破壊は起こらない。
従来、水素脆化に対する対策として、製造プロセスにおいて析出させた合金炭化物に水素を一時的に捕捉させ、環境の水素濃度が低下した時に徐々に放出させる技術がある。この技術では、粒界に捕捉される水素量を、水素脆化が引き起こされる量より少なく抑えることができる。
例えば、特許文献1には、粒径0.01〜0.5μmのNbおよびTiの1種または2種を含有する炭化物、窒化物あるいは炭窒化物を2×10個/mm以上存在させることによって、水素脆化を抑制する技術が開示されている。また、特許文献2には、平均粒径10nm未満のTiおよびMoを含む炭化物が分散析出している高張力鋼板が開示されている。
特開2012−214891号公報 特開2002−322543号公報
しかし、従来の技術では、析出物による水素捕捉能が不充分であった。このため、希少な金属であるNbやTi、Moなどのレアメタルを多量添加して、析出物の個数密度を増加させて、高い水素捕捉能が得られるようにしていた。
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、析出物による水素捕捉能により、レアメタルを大量に使用することなく、優れた耐水素脆化特性が得られる高強度鋼板およびその製造方法を提供することを課題とする。
本発明者らは、上記課題を解決するために、析出物サイズと、析出物の水素捕捉能との関係に着目して鋭意検討を重ねた。水素捕捉能を保持する析出物は、サイズによって水素捕捉能が異なる。したがって、最適サイズの析出物を鋼中に分散させて、析出物による水素捕捉能が充分に発揮されるようにすることで、耐水素脆化特性に優れた高強度鋼板を提供できる。
本発明者らは、析出物に水素が捕捉されるメカニズムを計算機シミュレーション等によって明らかにし、その結果を用いて水素を捕捉する析出物の最適サイズを見出した。そして、このようにして見出された最適サイズの析出物を適切な密度で含む鋼板において、優れた耐水素脆化特性が得られることを確認し、本発明に至った。即ち、本発明の要旨は、以下のとおりである。
[1] 質量%で、
C:0.02〜0.25%、
Si:0.3〜2.5%、
Mn:1.5〜3.0%、
P:0.001〜0.030%、
S:0.0001〜0.010%、
Al:0.005〜2.50%、
O:0.001〜0.005%、
N:0.0001〜0.006%、
を含有し、
更に質量%で、
Ti:0.0075〜0.20%、
V:0.005〜0.1%、
Nb:0.005〜0.09%、
の1種または2種以上を含有し、残部Feおよび不可避不純物からなる鋼板であって、
前記鋼板中に、遷移金属炭化物、遷移金属窒化物、遷移金属炭窒化物のうちの1種以上からなり、NaCl型の結晶構造を有する扁平な析出物が析出しており、
前記析出物のうち、最大断面形状の等価円直径D(nm)が下記式(1)を満たす部分整合析出物を、2×1015個/cm以上1×1019個/cm以下の密度で含み、
引張最大強度が780MPa以上であることを特徴とする、鋼板。
≦D≦D+2 ‥‥式(1)
式(1)において、Dは、下記式(2)で表される数値である。
Figure 0006468001
式(2)において、a(Fe)は、nmで表した前記鋼板の格子定数であり、a(MX)は、nmで表した前記析出物の格子定数である。
[2] 更に質量%で、
Cr:0.05〜2.0%、
Ni:0.01〜5.0%、
Mo:0.05〜1.0%
の1種または2種以上を含有することを特徴とする、[1]に記載の鋼板。
[3] 表面に亜鉛めっき層が形成されていることを特徴とする、[1]または[2]に記載の鋼板。
[4] 表面に合金化亜鉛めっき層が形成されていることを特徴とする、[1]または[2]に記載の鋼板。
[5][1]または[2]に記載の鋼板の製造方法であって、[1]または[2]に記載の化学成分からなる鋼塊あるいはスラブを1050℃以上に加熱し、Ar変態点以上で熱間圧延を完了し、仕上げ圧延温度〜550℃間を平均冷却速度50℃/秒以上で冷却し、550℃以下の温度域にて巻き取った後、連続焼鈍ラインを通板するに際し、550℃〜Ac変態点の温度範囲にて20秒以上焼鈍を行い、その後、室温まで冷却することを特徴とする鋼板の製造方法。
[6][3]に記載の鋼板の製造方法であって、[1]または[2]に記載の化学成分からなる鋼塊あるいはスラブを1050℃以上に加熱し、Ar変態点以上で熱間圧延を完了し、仕上げ圧延温度〜550℃間を平均冷却速度50℃/秒以上で冷却し、550℃以下の温度域にて巻き取った後、連続溶融亜鉛めっきラインを通板するに際し、550℃〜Ac変態点の温度範囲にて20秒以上焼鈍を行い、その後、溶融亜鉛めっき浴に浸漬した後、室温まで冷却することを特徴とする鋼板の製造方法。
[7][4]に記載の鋼板の製造方法であって、[1]または[2]に記載の化学成分からなる鋼塊あるいはスラブを1050℃以上に加熱し、Ar変態点以上で熱間圧延を完了し、仕上げ圧延温度〜550℃間を平均冷却速度50℃/秒以上で冷却し、550℃以下の温度域にて巻き取った後、連続溶融亜鉛めっきラインを通板するに際し、550℃〜Ac変態点以下の温度範囲にて20秒以上焼鈍を行い、その後、溶融亜鉛めっき浴に浸漬し、500〜600℃の温度範囲にて合金化処理を行った後、室温まで冷却することを特徴とする鋼板の製造方法。
本発明の鋼板は、水素捕捉能が充分に発揮される最適サイズの析出物が適切な密度で析出しているものであるため、耐水素脆化特性に優れた高強度鋼板を提供することが可能となる。
また、本発明の鋼板では、析出物による水素捕捉能が充分に発揮されるため、従来の同等の耐水素脆化特性を有する鋼板と比較して、レアメタルの使用量を低減できる。
また、本発明の鋼板の製造方法によれば、耐水素脆化特性に優れた本発明の鋼板が得られる。
発明者らは、鋼板中の析出物による水素捕捉のメカニズムを、計算機シミュレーション等を駆使して明らかにした。計算機シミュレーションとして、原子番号と原子の初期配置のみから電子状態を計算し、諸々の物性値を算出することの可能な第一原理計算を用いた。そして計算機シミュレーションでは、α鉄とNbCの界面を作成し、後述する整合界面と部分整合界面について、水素捕捉能の違いを調べた。
その結果、整合界面よりも部分整合界面に水素が捕捉されやすいことが分かった。そして、部分整合界面を持つ最小の析出物が、最も水素捕捉に有利であると考えた。また、実験的には、整合析出物であるか部分整合析出物であるかの区別はされていないものの、上記の第一原理計算で得られた結果と矛盾しない結果が得られた。具体的には、VCからなる析出物を含む鋼材に重水素をチャージした上で、重水素の存在位置を観察した。その結果、小さい析出物には水素が捕捉されず、大きい析出物にのみ水素が捕捉された。
水素を捕捉する析出物としては、母相中、即ち鋼板中に析出しているNaCl型の結晶構造を持つ析出物(NaCl型析出物)が用いられる。例えば、NbCからなるNaCl型析出物は、α鉄母相と(100)NbC//(100)Fe、[010]NbC//[011]Fe、[001]NbC//[0−11]FeのBaker−Nuttingの関係といわれる結晶方位関係を持つことが知られている。この結晶方位関係では、(100)面に垂直な方向の整合性が悪いため、析出物が板状に成長しやすい。以後、母相とは、鋼板中の鉄を主とした相のことである。
NaCl型析出物のうち、サイズが2nm以下の極微小析出物は、鉄母相と整合している整合界面を有する整合析出物である。NaCl型析出物のサイズが大きくなるにつれて、析出物と母相との格子定数の差による歪が大きくなる。そして、析出物が所定のサイズ以上に大きくなると、母相中に蓄積された歪を解消するために、整合析出物から部分整合析出物に遷移する。ここでいう部分整合析出物というのは、析出物と母相の格子定数が違うために、析出物と母相の結晶格子とが完全に結合した状態(整合析出物)で存在することができず、界面に転位を導入して存在しているものをいう。部分整合析出物は、母相と整合している部分と母相と整合していない部分とからなる部分整合界面を有する。部分整合析出物のサイズがさらに大きくなると、析出物と母相の結晶格子とが整合しない非整合状態に遷移する。非整合状態の粗大化した析出物は、単位体積当たりの界面面積が小さくなるため、部分整合析出物と比較して水素捕捉効果が低いものである。従来、鋼板中の析出物は、サイズが大きく歪みを解消して安定化した析出物であり、水素補足効果が不十分であった。
発明者らは、NaCl型析出物が遷移するサイズについて、第一原理計算と古典分子動力学法を用いる計算機シミュレーションにより調べた。その結果、析出物のうち、サイズD(nm)が以下の式(1)を満たす析出物は、析出物と母相との界面が、整合した整合状態から非整合状態に遷移する間の中間的な整合状態である部分整合析出物であることが分かった。
なお、本発明者らが、遷移金属を含む鋼からなる試料を製造し、母相中に析出しているNaCl型析出物を調べた結果、これらNaCl型析出物は、扁平な板状に析出することが分かった。ここでは、扁平な板状のNaCl型析出物の最大断面形状から等価円直径(nm)を求め、これを式(1)における析出物のサイズD(nm)とした。
式(1)において、Dは、nmで表した母相の格子定数a(Fe)と、遷移金属炭化物、遷移金属窒化物、遷移金属炭窒化物のうちの1種以上からなるから成るNaCl型析出物のnmで表した格子定数a(MX)とを用いて算出される下記式(2)で表される数値である。
≦D≦D+2 ‥‥式(1)
Figure 0006468001
式(2)で表されるDの値は、NaCl型析出物が、典型的なNaCl型析出物であるTiC、VC、NbCである場合、それぞれ、4.6nm、10.3nm、3.1nmである。
さらに、シミュレーションによれば、整合状態から非整合状態に遷移する中間的な整合状態のNaCl型析出物(部分整合析出物)は、鋼中に侵入した水素を強い結合エネルギーで捕捉することが明らかとなった。即ち、サイズD(nm)が上記式(1)を満たす析出物は、鋼中で水素を効率よく捕捉し、鋼の水素脆化を抑制することが期待できる。
本発明の鋼板において母相中に析出している析出物のサイズD(nm)は、D+0≦D≦D+1.5の範囲であることが好ましい。析出物のサイズD(nm)がD+1.5以下である場合、母相中に析出物が析出していることによる鋼板の強度向上機能が効果的に得られるため、好ましい。
また、NaCl型析出物として遷移金属炭化物等を含む鋼からなる試料を製造し、析出物を調査した。その結果、NaCl型析出物は、TiC等の炭化物等の単一な化合物としてではなく、複数の遷移金属を含む炭窒化物として析出する場合がほとんどであることが分かった。即ち、NaCl型析出物は、NaCl型の結晶構造を保ったまま、複数の遷移金属を含む析出物であることが分かった。NaCl型析出物が含有する遷移金属、炭素、窒素の量が変化すると、析出物の格子定数a(MX)も変化する。従って、式(2)で表されるDも変化する。
また、本調査においては、試料から抽出した析出物の構造を電子顕微鏡によって調査した。まず、電子線回折パターンより析出物の結晶構造を調査し、NaCl型の結晶構造であるかどうか確認した。そして、析出物がNaCl型の結晶構造であることが確認された場合には、電子線回折パターンより、対象析出物の格子定数、即ち式(2)におけるa(MX)を測定した。その後、このようにして測定したa(MX)と、あらかじめ測定した母相の格子状数とから(2)式を用いてDを求めた。即ち、(2)式で表されるDは、析出物の組成を調べなくとも算出できる。
さらに、本調査においては、電子顕微鏡に付随した解析装置を利用して、析出物の組成を調査した。具体的には、析出物に含まれる遷移金属等の元素を測定する場合には、特性X線解析(EDS)装置を用い、炭素、窒素等の軽元素の測定を測定する場合には、電子線エネルギー損失分光(EELS)装置を用いた。
上記調査の結果、鋼から抽出したほとんどのNaCl型析出物において、複数の遷移金属と、炭素と、窒素とが検出された。即ち、析出物が遷移金属の複合的な炭窒化物であることが確認された。
本発明の鋼板の母相中において、NaCl型析出物として存在しうる元素の組み合わせ(MX)は、鋼中に含まれるTi、V、Nbの1種または2種以上の遷移金属元素Mと、炭素および/または窒素(X)である。具体的には、部分整合析出物として、TiC、VC、NbCのいずれか一種以上を含むものが挙げられる。部分整合析出物は、複合化合物としてCr、Ni、Moの1種または2種以上を含むものであってもよい。
次に、電子顕微鏡の観察モードを、回折像から実像モードに切り替えることで、析出物のサイズD(析出物の最大断面形状の等価円直径D(nm))を計測した。また、析出物のサイズD(nm)が、式(1)を満たす場合には、観察対象である観察試料中に存在する部分整合析出物の個数としてカウントした。次に、観察試料の体積を用いて部分整合析出物の密度を求めた。即ち、観察領域(体積)にある式(1)を満たすNaCl型析出物(部分整合析出物)の個数を、観察領域の体積で除して密度を求めた。
さらに、各々の鋼板について引張強度、水素脆化の評価を行った。その結果、シミュレーション結果での予測通り、析出物のサイズD、即ち最大断面形状の等価円直径が、式(1)を満たすNaCl型析出物(部分整合析出物)の密度が高いほど、鋼板の水素脆化が抑制されることが分かった。これは、前述のように、中間的な整合状態にあるNaCl型析出物(部分整合析出物)による水素の捕捉機能によるものと推定される。
母相中に、NaCl型析出物が存在したとしても、その密度が小さければ水素捕捉機能は限定される。充分な水素捕捉機能を得るためには、部分整合析出物の密度は、2×1015個/cm以上である必要があり、好ましくは5×1015個/cm以上である。しかし、部分整合析出物の密度が1×1019個/cmを超えると、鋼の延性が低下してしまうので、1×1019個/cm以下とし、1×1018個/cm以下であることが好ましい。
部分整合析出物のサイズおよび密度を計測する際に用いる電子顕微鏡観察用の試料は、電子線を透過させるため、厚さが0.06μm以下であることが好ましい。また、あまり薄い試料を作成するのは困難であるから、試料厚みの下限は、0.03μmとする。
また、試料の観察領域が小さすぎると、試料中に存在する析出物の個数が少なくなり、算出される密度の誤差が大きくなる。このため、観察領域の面積の下限は、0.16μm(0.4μm×0.4μm)とする。また、観察領域の面積の上限は、特に設けないが、作業効率を考慮すると1μm(1μm×1μm)程度が好ましい。
即ち、観察領域の体積は、0.0048μm(0.16μm×0.03μm)を下限とする。
なお、電子顕微鏡技術は、日進月歩であり、技術解析測定作業の大きな効率化が見込めるため、観察領域の面積および体積の上限は飛躍的に大きくなることが見込める。
以上の解析過程においては、上述したように、析出物の結晶構造の判定は、電子顕微鏡に付随した解析装置を利用して得られた電子線回折パターンにより行うことができる。また、析出物の格子定数も電子線回折パターンによって測定できる。従って、析出物の成分を必ずしも同定しなくとも、上記解析過程をすすめることができる。
尚、本発明においては、母相中に析出している部分整合状態にあるNaCl型構造の析出物(部分整合析出物)の密度が重要である。母相中に析出しているNaCl型析出物が、遷移金属炭化物、遷移金属窒化物、遷移金属炭窒化物のうちのいずれであるかは、必ずしも確認する必要はない。
また、前記シミュレーション結果に基づき、その製造プロセス、析出物のサイズ、水素捕捉能力、機械特性、遅れ破壊の関係について詳細な実験を行った。その結果、熱間圧延で析出物を析出させ、その後、Ac変態点を超える加熱を行った場合、熱間圧延にて析出させた析出物が粗大化して非整合状態となることが分かった。この場合、遷移金属炭化物、遷移金属窒化物、遷移金属炭窒化物のうちの1種以上からなるNaCl型の結晶構造の析出物が析出していても、析出物による充分な水素捕捉効果は必ずしも得られないことが明らかとなった。
本発明の鋼板は、引張試験にて測定される引張最大強度が780MPa以上のものである。引張最大強度を780MPa以上としたのは、780MPa以上の高強度鋼板にて水素に起因した破壊(遅れ破壊)が生じる懸念があるためである。
なお、引張最大強度が540MPa以上の鋼板であれば、本発明の効果である極微小析出物による効率的な析出強化や、これに伴うTi、V、Cr、Nb、Moなどのレアメタルの添加量の削減効果が得られる。
次に、本発明の鋼板の化学成分の限定理由について説明する。
Cは、鋼板の母材の強度を確保するために0.02%以上必要である。Cが多すぎると鋼板の母材の靭性や溶接性を損なうので0.25%が上限である。Cの含有量は、0.08%以上であることが好ましく、0.09%以上であることがより好ましい。また、Cの含有量は、0.23%以下であることが好ましく、0.21%以下であることがより好ましい。
Siは、脱酸のために0.3%以上含有させる。しかし、Siの含有量が多すぎると、鋼板の溶接性および靭性を劣化させるので、上限を2.5%とする。Siの含有量は、0.5%以上であることが好ましく、0.7%以上であることがより好ましい。Siの含有量は、2.2%以下であることが好ましく、2.0%以下であることがより好ましい。
Mnは、鋼板の母材の強度と靭性の確保に不可欠であるから、1.5%以上含有させる必要がある。しかし、Mnの含有量が多すぎると、焼き入れ性が増加して鋼板の溶接性や靭性が劣化する。このため、Mnの含有量の上限を3.0%とする。Mnの含有量は、1.6%以上であることが好ましく、1.7%以上であることがより好ましい。Mnの含有量は、2.8%以下であることが好ましく、2.6%以下であることがより好ましい。
PとSは、本発明において不純物元素であり、鋼板の母材の機械的性質を確保するために、Pの含有量は0.030%以下、Sの含有量は0.010%以下に低減する必要がある。コストを考慮すると、Pの含有量は0.001%以上、Sの含有量は0.0001%以上にすることが好ましい。Pの含有量は、0.005%以上であることが好ましい。Pの含有量は、0.020%以下であることが好ましい。Sの含有量は、0.001%以上であることが好ましい。Sの含有量は、0.005%以下であることが好ましい。
Alは、脱酸に重要な元素であり、酸素濃度を充分に下げるためには、0.005%以上含有させる必要がある。また、Alは固溶強化にも寄与する。Alの含有量が多すぎると溶接性および加工性を損なうため、Alの含有量の上限は2.50%とする。Alの含有量は、0.007%以上であることが好ましく、0.01%以上であることがより好ましい。Alの含有量は、1.50%以下であることが好ましく、1.00%以下であることがより好ましい。
Oは、酸化物を形成し、直接的あるいは間接的にTiNの微細分散に寄与するため、0.001%以上含有させる必要があり、0.002%以上であることが好ましい。しかし、Oが0.005%を超えると、鋼の清浄度が低下して鋼板の母材の機械的性質が劣化する。このため、O含有量は、0.005%以下であり、0.004%以下であることが好ましい。
Nは、含有量が0.006%超となると鋼板の靭性を劣化させる。このため、N含有量は、0.006%以下とし、0.005%以下とすることが好ましい。また、Nは不可避的に混入するものであり、母相中に窒化物からなる析出物を析出させるために、下限は0.0001%であり、0.0005%以上であることが好ましい。
Tiは、NやCと結びつき、NaCl型の結晶構造をもった化合物からなる析出物を生成する。Tiは、析出物として、微細なTiN、TiCを生成することにより、水素脆化抑制に寄与するだけでなく、鋼板の靭性向上にも寄与する。その効果は、Tiを0.0075%以上含有させることで発現する。一方で、Ti含有量が0.20%を超えると、粗大なTiN、TiCが生成し、靭性を劣化させ易い。Tiの含有量は、0.03%以上であることが好ましく、0.05%以上であることがより好ましい。Tiの含有量は、0.18%以下であることが好ましく、0.16%以下であることがより好ましい。
Vは、NやCと結びつき、NaCl型の結晶構造をもった化合物からなる析出物を生成する。Vは、析出物として、微細なVN、VCを生成することにより、水素脆化抑制に寄与するだけでなく、鋼板の強度向上にも寄与する。その効果は、Vを0.005%以上含有させることにより発現する。しかしながら、0.1%を超えてVを含有させると、NaCl型化合物からなる析出物の密度が低下する傾向がある。これは、以下に示す理由によるものと推定される。すなわち、V含有量を多くすると、NaCl型化合物の析出過程の初期段階で析出する析出物の数が増える。しかし、その後の析出過程において、初期段階で析出した析出物が融合する。その結果、NaCl型化合物からなる析出物の密度が低下するものと考えられる。よって、V含有量が0.1%を超えると、優れた耐水素脆化特性が得にくくなる。さらに、0.1%を超えてVを含有させると、鋼板の溶接性が劣化するため、これが上限である。Vの含有量は、0.01%以上であることが好ましく、0.015%以上であることがより好ましい。Vの含有量は、0.08%以下であることが好ましく、0.07%以下であることがより好ましい。
Nbは、NやCと結びつき、NaCl型の結晶構造をもった化合物からなる析出物を生成する。Nbは、析出物として、微細なNbN、NbCを生成することにより、水素脆化抑制に寄与するだけでなく、鋼板の母材の組織を微細化して靭性を向上させるため、必須である。その効果を発現するNb含有量の下限は0.005%である。しかし、Nb含有量が0.09%を超えると、NaCl型化合物からなる析出物の密度が低下する傾向がある。これは、以下に示す理由によるものと推定される。すなわち、Nb含有量を多くすると、NaCl型化合物の析出過程の初期段階で析出する析出物の数が増える。しかし、その後の析出過程において、初期段階で析出した析出物が融合する。その結果、NaCl型化合物からなる析出物の密度が低下するものと考えられる。よって、Nb含有量が0.09%を超えると、優れた耐水素脆化特性が得にくくなる。さらに、Nb含有量が0.09%を超えると、鋳片表面割れが著しく発生したり、鋼板の溶接性が劣化したりするため、これが上限である。Nbの含有量は、0.01%以上であることが好ましく、0.015%以上であることがより好ましい。Nbの含有量は、0.08%以下であることが好ましく、0.07%以下であることがより好ましい。
Crは、必要に応じて含有される元素である。Crは、強度、耐食性を向上させるために有効な元素である。その効果は、Crを0.05%以上含有させることにより発現する。しかし、Cr含有量が2.0%を超えると鋼板の溶接性が劣化するため、これが上限である。Crの含有量は、0.2%以上であることが好ましい。Crの含有量は、1.0%以下であることが好ましい。
また、Crは、NやCと結びついてNaCl型の結晶構造をもった化合物を作ることは無い。しかしながら、Crは、複合化合物としてNaCl型の化合物に含まれる場合がある。複合化合物としてCrを含むNaCl型の化合物の格子定数は、Crを含まないNaCl型の化合物の格子定数と大きく変わることは無い。
Niは、必要に応じて含有される元素である。Niは、鋼板の強度、靭性を向上させるために添加する元素である。強度、靭性を向上させるために必要なNi含有量は0.01%以上である。Niは高価な元素であるので、5.0%を超えて過剰にNiを含有させると、合金コストの観点から経済性に好ましくないため、これが上限である。Niの含有量は、0.05%以上であることが好ましい。Niの含有量は、2.0%以下であることが好ましい。
また、Niは、NやCと結びついてNaCl型の結晶構造をもった化合物を作ることは無い。しかしながら、Niは、複合化合物としてNaCl型化合物に含まれる場合がある。複合化合物としてNiを含むNaCl型の化合物の格子定数は、Niを含まないNaCl型の化合物の格子定数と大きく変わることは無い。
Moは、必要に応じて含有される元素である。Moは、鋼板の母材の強度を向上させるために有効である。その効果を発現するMo含有量の下限は0.05%である。しかし、Mo含有量が1.0%を超えると鋼板の溶接性が劣化するため、これが上限である。Moの含有量は、0.1%以上であることが好ましい。Moの含有量は、0.8%以下であることが好ましい。
また、Moは、NやCと結びついてNaCl型の結晶構造をもった化合物を作ることは無い。しかしながら、Moは、複合化合物としてNaCl型化合物に含まれる場合がある。複合化合物としてMoを含むNaCl型の化合物の格子定数は、Moを含まないNaCl型の化合物の格子定数と大きく変わることは無い。
本実施形態の高強度鋼板は、表面に亜鉛めっき層が形成されているものであってもよい。また、本実施形態の高強度鋼板は、表面に合金化亜鉛めっき層が形成されているものであってもよい。
次に、本発明の鋼板の製造方法について説明する。
本発明の鋼板を製造するには、まず、上述した化学成分(組成)を有する鋼塊あるいはスラブを鋳造する。
熱間圧延に供するスラブとしては、連続鋳造スラブや薄スラブキャスターなどで製造したものを用いることができる。本発明の鋼板の製造方法は、鋳造後に直ちに熱間圧延を行う連続鋳造−直接圧延(CC−DR)のようなプロセスに適合する。
鋼塊あるいはスラブは、製造後に直接または一旦冷却した後、1050℃以上のスラブ加熱温度に加熱する必要がある。スラブ加熱温度が1050℃未満であると、熱間圧延の仕上げ圧延温度がAr変態点を下回ってしまい、フェライト及びオーステナイトの二相域圧延となる。その結果、熱間圧延後に得られた熱延板の組織が、不均質な混粒組織となり、冷延及び焼鈍工程を経たとしても不均質な組織が解消されず、延性や曲げ性に劣る鋼板となる。また、本鋼板は、焼鈍後に780MPa以上の引張最大強度を確保するために、多量の合金元素を添加していることから、仕上げ圧延時の強度が高くなりがちである。スラブ加熱温度が1050℃未満であると、熱間圧延の仕上げ圧延温度の低下を招く。このことが、更なる圧延荷重の増加を招き、熱間圧延が困難になったり、熱間圧延後に得られる熱延板の形状不良を招いたりする懸念がある。したがって、スラブ加熱温度は1050℃以上とする必要があり、1100℃以上であることが好ましい。
スラブ加熱温度の上限は特に定めることはなく、本発明の効果は発揮されるが、スラブ加熱温度を過度に高温にすることは、経済上好ましくない。このことから、スラブ加熱温度の上限は1300℃未満とすることが好ましい。
本実施形態においては、熱間圧延を完了する仕上げ圧延温度を、Ar変態点以上とする。Ar変態点とは、冷却時にFeのオーステナイトからフェライトへの変態が始まる温度であり、以下の式により計算する。
Ar=901−325×C+33×Si−92×(Mn+Ni/2+Cr/2+Mo/2)
上記式において、C、Si、Mn、Ni、Cr、Moは各元素の含有量[質量%]である。
一方、熱間圧延の仕上げ圧延温度の上限は、特に定める必要はなく、本発明の効果は発揮される。しかし、仕上げ圧延温度を過度に高温とした場合、その温度を確保するためにスラブ加熱温度を過度に高温にしなければならない。このことから、仕上げ圧延温度の上限温度は、1000℃以下とすることが好ましい。
本実施形態においては、熱間圧延を完了した後、仕上げ圧延温度から550℃間を平均冷却速度50℃/秒以上で冷却する。この平均冷却速度が50℃/秒未満であると、本発明で重要な役割を果たすNaCl型の結晶構造の板状析出物が冷却中に析出し、本発明で規定する形態の析出物が得られなくなる。
更に、本実施形態においては、熱間圧延を完了して得られた熱延板を、550℃以下の温度域にて巻き取る必要がある。巻き取り温度が550℃を超えると、NaCl型の結晶構造の板状析出物が巻き取り中に析出し、本発明で規定する形態の析出物が得られなくなる。その結果、本発明で規定する強度および水素脆化特性を満足する鋼板が得られない。
巻き取り後の熱延板は、酸洗を実施してから、連続焼鈍ラインを通板させる。
本実施形態の高強度鋼板として、表面に亜鉛めっき層または合金化亜鉛めっき層が形成されているものを製造する場合には、巻き取り後の熱延板に酸洗を実施してから、連続溶融亜鉛めっきラインを通板させる。
熱延板は、連続焼鈍ラインまたは連続溶融亜鉛めっきラインを通板するに際し、550℃〜Ac変態点の温度範囲にて20秒以上の焼鈍を行う必要がある。
焼鈍温度が550℃以下では、NaCl型の結晶構造の板状析出物が充分に析出せず、析出物の密度が不十分となる。また、焼鈍温度がAc変態点を超えると、焼鈍の昇温中に生成した析出物が成長し過ぎて、本発明で規定する形態の析出物を得ることができなくなる。焼鈍温度は、600℃以上であることが好ましい。また、焼鈍温度は、750℃以下であることが好ましい。
更に、550℃〜Ac変態点の温度範囲での保定時間が20秒未満であると、NaCl型の結晶構造の板状析出物が充分に析出せず、析出物の密度が不十分となる。上記の保定時間は、22秒以上であることが好ましい。上記の保定時間は、析出物が粗大化することによる水素捕捉能の低下を防止するとともに、生産性を向上させるために、120秒以下であることが好ましい。
尚、Ac変態点は、昇温時に、Feがフェライトからオーステナイトに変態を開始する温度であり、以下の式により求めた(参考文献「鉄鋼材料学」:W.C.Leslie著、幸田成康監訳、丸善p273参照)。
Ac=723−10.7×Mn−16.9×Ni+29.1×Si+16.9×Cr
上記式において、Si、Mn、Ni、Crは各元素の含有量[質量%]である。
上記の焼鈍を行った後、表面に亜鉛めっき層または合金化亜鉛めっき層を形成しない場合には、鋼板を室温まで冷却する。このことにより、高強度鋼板が得られる。
上記の焼鈍を行った後、表面に亜鉛めっき層または合金化亜鉛めっき層を形成する場合には、例えば400〜500℃に冷却を行い、溶融亜鉛めっき浴に浸漬する。溶融亜鉛めっき浴に浸漬した後、合金化処理を行わない場合には、室温まで冷却する。このことにより、表面に亜鉛めっき層を有する高強度亜鉛めっき鋼板が得られる。
また、溶融亜鉛めっき浴に浸漬した後、合金化処理を行う場合には、500〜600℃の温度範囲にて合金化処理を行った後、室温まで冷却する。
合金化処理の温度が500℃未満であると、亜鉛めっき層の合金化が進まず、合金化された亜鉛めっき層による鋼板保護効果が発揮し難い。合金化処理の温度が600℃を越えると、NaCl型の結晶構造の析出物が粗大化し、優れた水素捕捉能を持つサイズの析出物の密度が低下してしまう。
合金化処理を行うことで、表面に亜鉛めっき層が合金化されてなるZn−Fe合金が形成され、表面に合金化亜鉛めっき層を有する高強度亜鉛めっき鋼板が得られる。合金化処理を行う場合、コスト増になる反面、プレス成型性が向上する、溶接性が高まるなどの効果が得られる。但し、合金化処理の有無によって、遅れ破壊特性に有意の差はない。
表1に示す化学成分の鋼A〜Uを溶製し、常法に従って連続鋳造でスラブとした。これらのスラブを加熱炉中にて1200℃で加熱し、800℃〜850℃で熱間圧延を完了した。この仕上げ圧延温度の範囲は、表1に示した各鋼のAr変態点の温度以上である。これらの仕上げ圧延温度から550℃間を水冷で冷却し、放射温度計を用いて温度変化をモニターしたところ、この間の平均冷却速度は、50℃/秒〜55℃/秒であった。その後、熱延板を530℃で巻き取った。
この熱延板に酸洗を実施した後、連続溶融亜鉛めっきラインを通板するに際し、表2に示した焼鈍温度にて23秒焼鈍を行い、その後、450℃まで冷却を行い、溶融亜鉛めっき浴に浸漬した後、室温まで冷却し、試験番号1〜21の亜鉛めっき鋼板を得た。表1に、各鋼のAc変態点の温度を示す。
Figure 0006468001
Figure 0006468001
また、表1に示す鋼Bの化学成分の鋼を溶製し、常法に従って連続鋳造でスラブとした。このスラブを加熱炉中にて1200℃で加熱し、850℃で熱間圧延を完了した。次いで、表3に示す仕上げ圧延温度〜550℃間の平均冷却速度で冷却し、表3に示す巻き取り温度で巻き取った。
巻き取った熱延板を、連続溶融亜鉛めっきラインを通板するに際し、表3に示す焼鈍温度で23秒焼鈍を行い、その後、450℃まで冷却を行い、溶融亜鉛めっき浴に浸漬した後、室温まで冷却し、試験番号22〜27の亜鉛めっき鋼板を得た。
Figure 0006468001
このようにして得られた試験番号1〜27の亜鉛めっき鋼板から電子顕微鏡観察用の試料を採取し、以下に示す方法により、析出物のサイズ、密度を調べた。
FEI社製透過電子顕微鏡Titan80−300を用いて、厚み0.05μmの観察試料の0.5μm×0.5μmの領域を観察した。観察試料の観察領域の体積は0.0125μmであった。
観察領域の析出物のサイズを、析出物1つずつについて測定した。析出物のサイズは、析出物の最大断面形状の等価円直径D(nm)として求めた。
更に、その1つ1つの析出物について、透過電子顕微鏡の電子線回折パターンによって、析出物がNaCl型の結晶構造であるか否かを判断した。そして、析出物がNaCl型の結晶構造であることが確認された場合には、電子線回折パターンより、対象析出物の格子定数、即ち式(2)におけるa(MX)を測定した。その後、a(MX)と、あらかじめ電子線回折パターンにより測定した母相の格子状数とから(2)式を用いてDを求めた。
その後、各析出物のサイズD(nm)が、式(1)を満たす部分整合析出物であるかどうか検討した。そして、析出物のサイズD(nm)が、式(1)を満たす場合には、観察試料中に存在する部分整合析出物の個数としてカウントし、満たさない場合にはカウントしないこととし、部分整合析出物の個数を計測した。
次に、観察領域(体積)にある式(1)を満たすNaCl型析出物(部分整合析出物)の個数を、観察試料の体積(0.0125μm)で除して密度を求めた。その結果を表2および表3に記載した。
また、試験番号1〜27の亜鉛めっき鋼板について、以下に示す方法により、遅れ破壊促進試験を行って耐水素脆化特性を評価した。
まず、各亜鉛めっき鋼板をシャー切断して、圧延方向に垂直な方向が長手方向となる1.2mm×30mm×100mmの試験片とし、端面を機械研削した。端面の機械研削は、鋼板表面の軟化層による遅れ破壊特性向上効果を評価するため、シャー切断時に導入された欠陥を起点に発生する遅れ破壊を防止するために行った。
その後、試験片を押し曲げ法にて曲げて、半径5Rの曲げ試験片を作製した。応力除荷後の曲げ試験片の開き量は40mmとした。その後、表面に歪ゲージを貼り、ボルトで締め付けることで、曲げ試験片を弾性変形させた。その際の歪量を読み取ることで、負荷応力を算出した。その結果を表2および表3に示す。
その後、曲げ試験片を3%のNaClを含むチオシアン酸ナトリウム水溶液中に浸漬して、電流密度1.0mA/cmの条件にて電解チャージを行うことで、鋼板中に水素を侵入させる遅れ破壊促進試験を行った。
そして、電解チャージ時間が100時間となっても、割れが生じないものを良好(○)な耐水素脆化特性を有する鋼板と評価し、割れが生じたものを不良(×)と評価した。その結果を表2および表3に記載した。
また、試験番号1〜27の亜鉛めっき鋼板からJIS Z 2201に準拠した引張試験片を採取し、JIS Z 2241に準拠して引張試験を行い、引張最大強度(TS)を測定した。その結果を表2および表3に示す。
表2に示すように、本発明の実施例である試験番号2、3、4、7、8、9、13、14、15、17、21では耐水素脆化特性が優れていた。
表3に示すように、本発明の実施例である試験番号23、25、27では、耐水素脆化特性が優れていた。
一方、表2に示すように、試験番号1、5、6、16では、焼鈍温度がAc変態点よりも高かったため、析出物が焼鈍中に粗大化した。その結果、部分整合析出物の密度が低くなり、充分な水素捕捉性能を発揮できなかった。
試験番号18では、Ti含有量が多すぎるため、析出物が粗大化し、部分整合析出物の密度が低くなり、充分な水素捕捉性能を発揮できなかった。
試験番号10、11では、焼鈍温度が各々のAc変態温度を上回った。また、試験番号12では、焼鈍温度が550℃を下回った。試験番号10〜12は、いずれも焼鈍温度が適切でなかった。このため、部分整合析出物の密度が低くなり、優れた耐水素脆化特性が得られなかった。
また、V含有量が本発明範囲を上回った試験番号19、及び、Nb含有量が本発明範囲を上回った試験番号20では、初期段階で析出した析出物が析出過程において融合したため、析出物の数が減って密度が低くなった。このため、試験番号19及び20においても優れた耐水素脆化特性が得られなかった。
また、表3に示すように、試験番号22では、仕上げ圧延温度〜550℃間の平均冷却速度が遅すぎたため、析出物が粗大化し、部分整合析出物の密度が低くなり、充分な耐水素脆化特性が得られなかった。
試験番号24では、冷却停止温度を650℃とし、巻き取り温度を630℃としたため、冷却停止温度および巻き取り温度が高すぎて、巻き取り中に析出物が析出し、粗大化した。その結果、部分整合析出物の密度が低くなり、充分な水素捕捉性能を発揮できなかった。
試験番号26では、焼鈍温度がAc変態点を超えていたため、焼鈍中に析出物が粗大化した。その結果、部分整合析出物の密度が低くなり、充分な水素捕捉性能を発揮できなかった。
また、表2および表3には示していないが、仕上げ圧延後の冷却停止温度を480℃とした水準では、鋼板が硬化し、巻き取り時に不具合が発生したため巻き取りを中止した。
仕上げ圧延温度〜550℃間の平均冷却速度、および巻き取り温度は、部分整合析出物の析出や成長過程に大きな影響を与えるため、水素捕捉性能、つまり、耐水素脆化特性に対して非常に重要な因子である。
表2に示す試験番号7の亜鉛めっき鋼板から採取した試料について、密度を求める際に観察された析出物の格子定数a(MX)、D、析出物のサイズD(nm)を表4に示す。なお、表2に示す試験番号7の亜鉛めっき鋼板の母相の格子状数、即ち式(2)のa(Fe)は、0.286nmであった。
また、透過電子顕微鏡に付随するEDS装置及びEELS装置を用いて、表4に示す30個の析出物に含有される元素をそれぞれ測定した。その結果を表4に示す。
Figure 0006468001
表4に示すように、厚み0.05μmの観察試料の0.5μm×0.5μmの領域(体積)中に30個の析出物が観察された。そして、30個の析出物の内、析出物番号1、6、11、16、30の5個については、各々について求められたDと析出物のサイズD(nm)が式(1)を満たさなかったため、部分整合析出物の個数としてカウントしなかった。その他の25個の析出物は、析出物のサイズD(nm)が式(1)を満たしていたため、部分整合析出物の個数としてカウントした。
表4に示す30個の析出物のうち、例えば、析出物番号16の格子定数、即ち式(2)のa(MX)は、0.43nmであった。従って、析出物番号16の式(2)で求められるDは、5nmであった。また、析出物番号16は、等価円直径で評価した析出物のサイズD(nm)が9nmであった。よって、析出物番号16は、式(1)を満たさないため、部分整合析出物の個数としてカウントしなかった。
析出物番号2においては、a(MX)は、0.44nmであり、Dは、4nmとなった。また、析出物のサイズD(nm)は、6nmであり、式(1)を満たすため、部分整合析出物の個数としてカウントした。
そして、観察試料の体積(0.05μm×0.5μm×0.5μm=0.0125μm)に式(1)を満足する析出物が25個存在していたことから、部分整合析出物の密度を2×1015個/cmと算出した。
また、析出物番号16においては、析出物に含有される元素としてTi,V,Nb,Cが検出された。即ち析出物番号16は、遷移金属MとしてTi,V,Nbを含み、炭素または窒素Xとして炭素を含むものである。
また、析出物番号2についても、析出物に含有される元素としてTi,V,Nb,Cが検出された。このため、析出物番号2も析出番号16と同様に、遷移金属MとしてTi,V,Nbを含み、炭素または窒素Xとして炭素を含むものである。
表4に示すように、表2に示す試験番号7の観察試料で観察されたNaCl型の結晶構造の析出物は、すべて炭化物であった。これは、鋼板中の窒素の含有量が炭素の含有量に比べて低いため、窒化物の生成確率が低いためであると推定される。また、表4に示すように、NaCl型の結晶構造の析出物に含まれる金属元素は、TiおよびV,またはTi、V,Nbであったが、他の金属を複合的に含む場合もある。また、表2に示す試験番号7においてはNbを複合的に含む場合もある。
また、表2に示す試験番号8と同条件でめっき浴に浸漬するまでの製造工程を経た後、表5に示す合金化温度で合金化処理を行った後、室温まで冷却し、試験番号28〜30の亜鉛めっき鋼板を得た。そして、表2に示す試験番号7と同様にして、析出物の密度、耐水素脆化特性、引張最大強度を評価した。その結果を表5に記載した。
Figure 0006468001
表5に示すように、本発明の実施例である試験番号28、29では、耐水素脆化特性が優れていた。
一方、試験番号30では、合金化温度が600℃を超えたため、合金化過程において析出物が粗大化し、析出物密度が低くなり、充分な耐水素脆化特性を発揮できなかった。
また、表5には示していないが、合金化温度を450℃としたものについては、Zn−Fe間の合金化反応が充分進まず、500〜600℃の温度範囲にて合金化処理を行っためっき鋼板と比較して、プレス成型時にめっき層がはがれやすく、プレス成型性において劣勢であった。
次に、表面に亜鉛めっき層が形成されていない鋼板の実施例および比較例について述べる。
上述した試験番号1〜21の亜鉛めっき鋼板を製造する工程と同様して、熱延板を酸洗するまでの工程を行った後、連続焼鈍ラインを通板するに際し、表6に示した焼鈍温度にて23秒焼鈍を行い、その後、室温まで冷却し、試験番号31〜51の鋼板を得た。
このようにして得られた試験番号31〜51の鋼板から電子顕微鏡観察用の試料を採取し、上述した試験番号1〜21と同様にして、NaCl型析出物密度、負荷応力、耐水素脆化特性、引張最大強度を評価した。その結果を表6に記載した。
Figure 0006468001
表6に示すように、本発明の実施例である試験番号32、33、34、37、38、39、43、44、45、47、51では、耐水素脆化特性が優れていた。
一方、表6に示すように、試験番号31、35、36、46では、焼鈍温度がAc変態点を超えていたため、焼鈍中に析出物が粗大化した。その結果、部分整合析出物の密度が低くなり、充分な水素捕捉性能を発揮できなかった。
試験番号48では、Ti含有量が多すぎるため、析出物が粗大化し、部分整合析出物の密度が低くなり、充分な水素捕捉性能を発揮できなかった。
試験番号40、41では、焼鈍温度が各々のAc変態温度を上回ったため、析出物が粗大化した。また、試験番号42では、焼鈍温度が550℃を下回ったため、析出物の析出が促進されなかった。試験番号40〜42は、いずれも焼鈍温度が適切でなかった。このため、部分整合析出物の密度が低くなり、優れた耐水素脆化特性が得られなかった。
また、V含有量が本発明範囲を上回った試験番号49、及び、Nb含有量が本発明範囲を上回った試験番号50では、初期段階で析出した析出物が析出過程において融合したため、析出物の数が減って密度が低くなった。このため、試験番号49及び50においても優れた耐水素脆化特性が得られなかった。
尚、表2に示す試験番号1〜21、及び表6に示す試験番号31〜51は、いずれも焼鈍時間が23秒の例であるが、焼鈍時間を20秒未満とした場合には、得られた鋼板の析出物密度が低くなり、耐水素脆化特性が劣勢であった。

Claims (7)

  1. 質量%で、
    C:0.02〜0.25%、
    Si:0.3〜2.5%、
    Mn:1.5〜3.0%、
    P:0.001〜0.030%、
    S:0.0001〜0.010%、
    Al:0.005〜2.50%、
    O:0.001〜0.005%、
    N:0.0001〜0.006%、
    を含有し、
    更に質量%で、
    Ti:0.0075〜0.20%、
    V:0.005〜0.1%、
    Nb:0.005〜0.09%、
    の1種または2種以上を含有し、残部Feおよび不可避不純物からなる鋼板であって、
    前記鋼板中に、遷移金属炭化物、遷移金属窒化物、遷移金属炭窒化物のうちの1種以上からなり、NaCl型の結晶構造を有する扁平な析出物が析出しており、
    前記析出物のうち、最大断面形状の等価円直径D(nm)が下記式(1)を満たす部分整合析出物を、2×1015個/cm以上1×1019個/cm以下の密度で含み、
    引張最大強度が780MPa以上であることを特徴とする、鋼板。
    ≦D≦D+2 ‥‥式(1)
    式(1)において、Dは、下記式(2)で表される数値である。
    Figure 0006468001
    式(2)において、a(Fe)は、nmで表した前記鋼板の格子定数であり、a(MX)は、nmで表した前記析出物の格子定数である。
  2. 更に質量%で、
    Cr:0.05〜2.0%、
    Ni:0.01〜5.0%、
    Mo:0.05〜1.0%
    の1種または2種以上を含有することを特徴とする、請求項1に記載の鋼板。
  3. 表面に亜鉛めっき層が形成されていることを特徴とする、請求項1または請求項2に記載の鋼板。
  4. 表面に合金化亜鉛めっき層が形成されていることを特徴とする、請求項1または請求項2に記載の鋼板。
  5. 請求項1または請求項2に記載の鋼板の製造方法であって、
    請求項1または請求項2に記載の化学成分からなる鋼塊あるいはスラブを1050℃以上に加熱し、Ar変態点以上で熱間圧延を完了し、仕上げ圧延温度〜550℃間を平均冷却速度50℃/秒以上で冷却し、550℃以下の温度域にて巻き取った後、連続焼鈍ラインを通板するに際し、550℃〜Ac変態点の温度範囲にて20秒以上焼鈍を行い、その後、室温まで冷却することを特徴とする鋼板の製造方法。
  6. 請求項3に記載の鋼板の製造方法であって、
    請求項1または請求項2に記載の化学成分からなる鋼塊あるいはスラブを1050℃以上に加熱し、Ar変態点以上で熱間圧延を完了し、仕上げ圧延温度〜550℃間を平均冷却速度50℃/秒以上で冷却し、550℃以下の温度域にて巻き取った後、連続溶融亜鉛めっきラインを通板するに際し、550℃〜Ac変態点の温度範囲にて20秒以上焼鈍を行い、その後、溶融亜鉛めっき浴に浸漬した後、室温まで冷却することを特徴とする鋼板の製造方法。
  7. 請求項4に記載の鋼板の製造方法であって、
    請求項1または請求項2に記載の化学成分からなる鋼塊あるいはスラブを1050℃以上に加熱し、Ar変態点以上で熱間圧延を完了し、仕上げ圧延温度〜550℃間を平均冷却速度50℃/秒以上で冷却し、550℃以下の温度域にて巻き取った後、連続溶融亜鉛めっきラインを通板するに際し、550℃〜Ac変態点以下の温度範囲にて20秒以上焼鈍を行い、その後、溶融亜鉛めっき浴に浸漬し、500〜600℃の温度範囲にて合金化処理を行った後、室温まで冷却することを特徴とする鋼板の製造方法。
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