第1の発明は、便器上に設置される本体と、前記本体に回動自在に枢支された便座と、2枚のアルミシートの間に線状ヒータが蛇行形状に配設され、前記便座の上部便座ケーシングの裏面に固定された便座ヒータと、前記便座の温度を検知する応答速度の遅い低応答温度検知素子と、前記便座の温度を検知する応答速度の速い高応答温度検知素子と、前記便座ヒータの通電を制御する主制御部と、前記低応答温度検知素子の検知情報により前記便座の過昇を防止する低応答過昇防止制御部と、前記高応答温度検知素子の検知情報により前記便座の過昇を防止する高応答過昇防止制御部と、を含み、前記低応答温度検知素子と、前記高応答温度検知素子と、は前記便座の前記アルミシート表面の前記線状ヒータと重合しない位置に固定された構成とし、前記便座の過昇を判定する閾値は、前記低応答過昇防止制御部の閾値より前記高応答過昇防止制御部の閾値が高く設定されていることを特徴とする便座装置である。
これにより、大きく異なる通電容量で便座ヒータの駆動する通電パターンにおいて、それぞれのパターンで発生する過昇状態を適切に防止することができ、便座装置の安全性と信頼性を向上することができる。
第2の発明は、特に第1の発明において、前記低応答検知素子と、前記低応答過昇防止制御部と、はそれぞれ複数個備え、複数個の前記低応答過昇防止制御部は異なる閾値が設定されているものである。
これにより、発生した過昇状態に対して過昇防止手段を相互にバックアップすることができるとともに、構成部材の特性のバラツキ等により作動の優先順序が乱れることを防止することができ、過昇防止手段の信頼性と安定性を向上することができる。
第3の発明は、特に第1または第2の発明において、前記主制御部は、前記低応答温度検知素子の温度検知情報により、前記便座ヒータの通電を制御するものである。
これにより、便座ヒータの通常の通電制御と過昇防止手段の温度検知を1個の温度検知素子で実施することが可能となり、便座の構成のシンプル化と低コスト化を図ることができる。
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
(実施の形態1)
<1>便座装置の構成
図1は本実施の形態における便座装置を便器上に設置した状態の外観の斜視図を示すものである。
図1に示すように、便座装置100は、本体200、便蓋300、便座400、リモートコントローラ500により構成され、本体200、便蓋300、便座400は一体で構成され、便器110の上面に設置される。
本体200には、便蓋300および便座400が電動の便座便蓋回動機構を介して開閉可能に取り付けられている。図1に示すように便蓋300を開放した状態においては、便
蓋300は便座装置100の最後部に位置するように起立する。また、便蓋300を閉塞すると便座400の上面を隠蔽する。便座400は便座ヒータ450を内蔵しており、便座400の着座面が快適な温度になるように加熱する。
また、便座400の回動軸を支持する軸受部分には便座400に着座した人体を検知する着座検知スイッチ(図示せず)が設置されている。この着座検知スイッチは、便座400に使用者が着座することによる重量変化でスイッチを開閉させることにより、便座400上に使用者が着座していることを検知するものである。
また図1に示すように、本体200の側部には突出部210が設けてあり、突出部210の上面には複数の操作スイッチ212を備えた操作部211が設けられている。
リモートコントローラ500には、便座装置の各機能の操作と設定を行う複数の操作スイッチ501と、トイレルームに入室した使用者を検知する人体検知センサ502が設けられている。リモートコントローラ500は便座400に着座した使用者が操作可能なトイレ室の壁面等の場所に取り付けられ、操作信号は無線を介して本体200に送信される。
なお、本実施の形態においては便座装置の本体200の設置側を後方、便座400の設置側を前方とし、後方より前方に向かって右側を右方、左側を左方として各構成要素の配置を説明する。
本体200の内部には、使用者の局部を洗浄する洗浄手段(図示せず)と、洗浄後の局部を乾燥する乾燥装置(図示せず)と、便器110内の臭気を脱臭する脱臭装置(図示せず)と便蓋300と便座400を電動で回動する便座便蓋回動機構(図示せず)と、便座装置100制御する制御部600等が設置されている。
洗浄手段は洗浄水供給機構とノズル装置で構成されており、水道配管から供給される洗浄水を洗浄水供給機構の熱交換器で加熱した温水をノズル装置に供給し、ノズル装置から使用者の局部に向けて温水を噴出し、使用者の局部を洗浄するものである。
ノズル装置は、お尻を洗浄するお尻洗浄ノズル部と女性の局部を洗浄するビデノズル部を有する洗浄ノズルと、洗浄ノズルを本体200内に収容した収納位置と本体から突出して洗浄動作を行う洗浄位置との間を進退移動する駆動手段(図示せず)と、熱交換器からの洗浄水を洗浄ノズルに切換えて供給する流調弁(図示せず)等が一体に組み込まれている。
乾燥装置の噴出口は、本体200の前面下部に配置されており、噴出口の前方には、開閉自在の乾燥シャッターが設置されており、乾燥装置不使用時は閉塞して乾燥装置の内部へ洗浄水等が侵入することを防止し、乾燥装置の駆動時には、乾燥装置から噴出される風圧により開放される構成となっている。乾燥装置の詳細な構成は後述する。
制御部600は、便座装置100の各機能の操作を行うリモートコントローラ500の操作スイッチ501と本体200の操作スイッチ212および着座検知スイッチ(図示せず)から送信される信号に基づいて、便座装置100の各部の動作を制御する。
本発明の便座装置100はトイレ室に使用者が存在しない場合は、便座ヒータへの通電を停止、もしくは20℃程度の低温に保温している。トイレ室に使用者が入室すると、人体検知センサ502からの信号を受け、便座ヒータに通電を行う。便座ヒータは800W程度の非常に高出力のヒータであり、使用者がトイレ室に入室してから便座に着座するま
での6秒から10秒程度の間に、便座400の着座面を40℃程度の適温に温める。便座400が適温に達した後は、便座ヒータへの通電を50W程度の低ワットに下げ、適温を保つ。使用者がトイレルーム内から出ると、便座ヒータへの通電を停止、もしくは20℃程度の低温保温となる。つまり、トイレルームに使用者がいないときの電力を大幅に削減した便座装置である。
なお、洗浄機構と乾燥装置と脱臭装置と便座便蓋回動機構は便座装置の必須構成要素ではなく、これらの構成要素を具備しない便座装置でもよい。
<2>便座の構成
図2は便座400の組立状態の斜視図を示し、図3は便座400の分解斜視図を示し、図4は便座の上部便座ケーシングに便座ヒータ等の部材を取り付けた状態を示す下面図である。
図2および図3に示すように、便座400は、主としてアルミニウムにより形成された略楕円形状の環状の上部便座ケーシング410と、合成樹脂により形成された略楕円形状の環状の下部便座ケーシング420と、上部便座ケーシング410の裏面に粘着した略馬蹄形状の便座ヒータ450を主構成部品として構成されている。
以下、着座した使用者から見て前方側を便座400の前部とし、着座した使用者から見て後方側を便座400の後部とする。
上部便座ケーシング410は、厚さ約1mmのアルミニウム板をプレス加工等により成形し、表面および裏面には絶縁性と耐熱性を有するポリエステル粉体塗装膜が形成されている。ピンホールの生じにくい粉体塗装を採用することで、絶縁性能を向上することができる。
上部便座ケーシング410は略楕円形の環状の着座面411と、着座面411の後部には着座面411より上方に立ち上がったバックガード部412が連続して形成されている。着座面411は内周部より外周部が高い傾斜を有する上方に凸の曲面を成している。
バックガード部412と着座面411と連続的な凹曲面で繋がっており、上部は傾斜面となっている。バックガード部412の上縁412aは水平線に近い大きな曲線となっており、バックガード部412の幅は着座面411の横幅と略同寸法となっている。バックガード部412は着座面411に着座した使用者の後方への移動を規制することにより、使用者の身体が本体に接触することにより不快を感じることを抑制することができる。
上部便座ケーシング410の内周縁415と外周縁416は内方に向かって折れ曲がって形成されており、内周縁415と外周縁416の複数箇所には、上部便座ケーシング410と下部便座ケーシング420を係合する複数の係合孔418が形成されている。
図4に示すように、上部便座ケーシング410の裏面のほぼ全面には前部の一部が切り取られた略馬蹄状に形成された便座ヒータ450が粘着固定されている。便座ヒータ450の側部表面には、便座400の着座面411の温度を検知する第一サーミスタ401と第二サーミスタ402と第三サーミスタ403が設置されている。また、上部便座ケーシング410の外周部には安全性を確保するアース線473が接続されている。なお、サーミスタの取り付け構造の詳細は後述する。
第一サーミスタ401と第二サーミスタ402は同じ特性を備えたものであり、金属面に設置した場合の応答速度を規定する熱時定数が約5秒の低応答温度検知素子ものである
。これに対して第三サーミスタ403は熱時定数が約2秒の応答速度が速い高応答温度検知素子である。
下部便座ケーシング420は樹脂材料を使用した成型品であり、平面形状が上部便座ケーシング410と略同形状の本体部421と、本体部421の両側後方に斜め上方に突出した腕部422で構成されている。
下部便座ケーシング420の内周縁425と外周縁426には、上部便座ケーシング410と下部便座ケーシング420を係合する複数の係合爪428が形成されている。
上部便座ケーシング410と下部便座ケーシング420とは、下部便座ケーシング420に形成された係合爪428が上部便座ケーシング410に形成された係合孔418に係合することにより結合され、内部に空洞部が形成される構成となっており、結合部には水密手段が施されている。
なお、上記のように、上部便座ケーシング410はアルミニウム板を使用して形成したが、これに限るものではなく、銅やステンレス等の板材あるいはマグネシウム合金の成型品等の熱伝導の良い他の金属あるいは樹脂材料を使用してもよい。また、アルミニウム板に施される表面処理は上記仕様に限定されるものではなく、他の化学的な処理やアクリル系やウレタン系の塗料を使用した他の塗装等も選択可能である。
<3>便座ヒータの構成
図5は便座ヒータの下面図を示すものである。
図5に示すように、便座ヒータ450は、前部の一部が切り取られた略馬蹄状に形成されている。便座ヒータ450の基本構成は、アルミニウムからなる2枚のアルミシート451の間に線状ヒータ460を蛇行形状に配設したものである。
アルミシート451の後部右側には端子部452が設置されており、線状ヒータ460の始端は端子部452の始短部(図示せず)に接続されており、始端部より延伸された線状ヒータ460はアルミシート451の右側領域451aを主に左右に蛇行しながら右前端部まで配設され、前端部よりアルミシート451の主に内周に沿ってアルミシート451の後部と左側を経由してアルミシートの左側領域451bの左前端部まで到達し、左前端部よりアルミシート451に左側領域451bを主に左右に蛇行しながら後部左側まで配設されている。後部左側よりアルミシート451の後部領域451cを左右に蛇行しながら後部右側まで配設され、線状ヒータ460の終端は端子部452の終端部に接続されることにより、線状ヒータ460は始端部から終端部まで連続して配設されている。
線状ヒータ460を蛇行させて配設した右側領域451aと左側領域451bと後部領域451cは、便座400に使用者が着座した状態で快適な暖房効果を得られる着座暖房範囲456を形成している。着座暖房範囲456は、線状ヒータ460が近似のピッチで配設されており、使用者が着座した状態でほぼ同一の温感を得られるように構成されている。
端子部452には便座ヒータ450に電力を供給する2本の電力リード線470、471と、線状ヒータ460とアルミシート451間の漏電を検知する検知リード線472が接続されている。電力リード線470は端子部452の始端部に接続されており、電力リード線471は端子部452の終端部に接続されている。また、検知リード線472はアルミシート451に接続されている。
また、電力リード線471の途中には便座400の過昇防止手段の1つである温度ヒューズ454が接続されており、温度ヒューズ454は便座ヒータ450の後部領域451cの略中央に設置される。
<4>サーミスタの取り付け構造
図4は便座の上部便座ケーシングに便座ヒータ等の部材を取り付けた状態を示す下面図であり、図6は図4のA部で示す第一サーミスタの取り付けの詳細を示したものであり、図7は図6に示すBB断面図を示したものであり、図8は固定金具の外観を示す斜視図であり、図9(a)は固定金具が正規に取り付けられた状態を示す平面図であり、(b)は固定金具が不正規に取り付けられた状態を示す平面図であり、図10(a)は固定金具の取り付け過程を示す断面図であり、(b)は固定金具の取り付け完成状態を示す断面図である。
図4に示すように、第一サーミスタ401と第二サーミスタ402は上部便座ケーシング410の裏面に貼着された便座ヒータ450のアルミシート451表面の略左右対称位置となる側部に設置されている。便座ヒータ450の線状ヒータ460が略平行に配設された間のスペースであるアルミシート451の表面に、線状ヒータ460と重合しないように低応答温度検知素子である第一サーミスタ401と第二サーミスタ402が配置されている。
また、高応答温度検知素子である第三サーミスタ403は第一サーミスタ401の前方に設置されており、第一サーミスタ401と第二サーミスタ402と同様に、便座ヒータ450の線状ヒータ460が略平行に配設された間のスペースであるアルミシート451の表面に、線状ヒータ460と重合しないように配置されている。
以下、サーミスタの取り付け構造の詳細については、図6および図7を参照し、主に第一サーミスタ401を例に説明を行う。
図6および図7に示すように、アルミニウムシートの片面に粘着剤を塗布した粘着部材404で第一サーミスタ401の感熱部401aを覆うようにして粘着固定されている。そして粘着部材404の上に発泡ポリエチレン製の断熱材407を積層し、その上から上部便座ケーシング410の外周縁416に螺子408で固定された共用固定金具405で押し付けて固定されている。図6および図7は第一サーミスタ401の取り付け状態を示すものであるが、第二サーミスタ402も左右対称で同様に取り付けられている。また、第三サーミスタ403は固定金具の形状は異なるが第一サーミスタおよび第二サーミスタと上記と同様な構成で取り付けられている。
図8に示すように、共用固定金具405は、厚さ0.2mmのバネ性を有する略長方形のステンレス板の両端部を折り曲げて略コの字型に形成されたものである。一方の折り曲げ部には、上部便座ケーシング410の外周縁416に固定する固定部405aが形成されており、固定部405aの中央には、螺子408で固定するための貫通孔を備えた螺子止部405b形成されている。また、固定部405aの両端部には切起して形成された2個のストッパ405cが形成されている。
図9(a)に示すように、一方のストッパ405cを外周縁416に当接させることにより、共用固定金具405の正規の位置に設置することができる構成となっており、他方のストッパ405cを当接させた場合は、図7(b)に示すように共用固定金具405の取り付け位置が大きくずれるようになっている。また、同じ形状の共用固定金具405を上部便座ケーシング410の反対側の外周縁416に固定する場合は、反対側のストッパ405cを当接させることにより、固定金具を正規の位置に取り付けることができ、1つ
の形状の共用固定金具405を異なる形状の2か所で共通に使用することができる。
また、他方の折り曲げ部には、上部便座ケーシング410の内周縁415の内面に係止することにより共用固定金具405を固定することができる係止部405dが形成されている。係止部405dは先端部を曲げ戻すことにより、先端が曲面に形成されている。
図10(a)に示すように、共用固定金具405は係止部405dを浮かした状態で、固定部405aの螺子止部405bを螺子408で固定し、その後、矢印Cで示すように係止部405dの近傍を押し込むことにより、図8(b)に示すように係止部405dを内周縁415の内面に係止させることができる。
第三サーミスタ403の取り付けには共用固定金具405とは別の専用固定金具406が使用されるが、専用固定金具406の構成は、共用固定金具405の幅寸法を小さくし、他の部分は同様の形状に形成されている。
第一サーミスタ401の感熱部401aを覆った粘着部材404は、断熱材407が直接接触して押止されており、断熱材407の断熱性機能により便座ヒータ450の熱が共用固定金具405に伝達されることを抑制し、第一サーミスタ401の感熱部の温度上昇が遅延することを防止する構成となっている。また断熱材407は軟質材料で形成されているため、粘着部材404や便座ヒータ450のアルミシート451を傷つけることを抑制する効果を備えている。第二サーミスタ402および第三サーミスタ403も同様の作用効果を備えている。
上記構成の第一サーミスタ401を取り付ける作業は、まず、第一サーミスタ401をアルミシート451の所定位置に配置し、第一サーミスタ401の感熱部の上から粘着部材404で覆い仮固定を行う。このとき、感熱部401aは両側の線状ヒータ460の中央に設置することが重要であり、仮固定後の位置は粘着部材404の上から目視で確認することができる。次に、断熱材407を粘着部材404の上に積層する。
次に、共用固定金具405の固定部405aを外周縁416の下側に差し込み、螺子止部405bを螺子408で上部便座ケーシング410の外周縁416に固定する。なお、共用固定金具405は図7(a)に示すように、一方のストッパ405cを外周縁416に当接させて正規の位置に固定させる。
次に、図8(a)に示すように、係止部405dの近傍を矢印Cで示す方向に押し込むことにより、係止部405dを内周縁415の内面に係止させることができ、第一サーミスタ401の取り付けが完了する。
次に、第二サーミスタ402をアルミシート451の第一サーミスタ401とは左右対称の所定位置に配置し、第一サーミスタ401と同様の手順での取り付け作業を実施する。
次に、第三サーミスタ403をアルミシート451の所定位置に配置し、上記と同様に感熱部の上から粘着部材404で覆い仮固定を行い、断熱材407を粘着部材404の上に積層する。次に専用固定金具406を共用固定金具405と同様に上部便座ケーシング410の外周縁416に固定し、係止部の近傍を押し込むことにより、第三サーミスタ403の取り付けが完了する。
上記ように、第一サーミスタ401、第二サーミスタ402、第三サーミスタ403を、粘着部材404と断熱材407と共用固定金具405および専用固定金具406を介し
て固定することにより、例えば、粘着部材404による取り付け状態が不十分な場合でも、断熱材407と共用固定金具405および専用固定金具406によりサーミスタを確実に押圧固定することができ、作業不良および経年変化によるサーミスタの脱落を確実に防止することができる。
<5>便座装置の制御系の構成
図11は便座装置100の便座ヒータ450の駆動を主とする制御系の構成を示すブロック図である。
便座400内部には、便座400を加熱する便座ヒータ450と、便座の温度を検知する低応答温度検知素子である第一サーミスタ401および第二サーミスタ402と、高応答温度検知素子である第三サーミスタ403と、便座の過昇を防止する過昇防止手段として温度ヒューズ454が設置されている。
本体200内部には、リモートコントローラ500と本体200の操作部211からの操作信号と、第一サーミスタ401の温度検知信号に基づいて便座ヒータ450を制御するマイクロコンピュータを備えた主制御部601と、主制御部601の制御信号に基づいて便座ヒータ450を駆動するトライアックを主構成部材とするヒータ駆動部610を備えている。
また、便座400の過昇防止手段として、低応答温度検知素子である第一サーミスタ401の温度検知信号に基づいて便座の過昇防止の制御を行う第一過昇防止制御部602で構成された第1の過昇防止手段と、低応答温度検知素子である第二サーミスタ402の温度検知信号に基づいて便座の過昇防止の制御を行う第二過昇防止制御部603で構成された第2の過昇防止手段と、高応答温度検知素子である第三サーミスタ403の温度検知信号に基づいて便座の過昇防止の制御を行う第三過昇防止制御部604で構成される第3の過昇防止手段と、第一過昇防止制御部602、第二過昇防止制御部603、第三過昇防止制御部604の制御信号に基づき便座装置100の電源を遮断するリレーを主構成部材とする電源遮断部620を備えている。
また、便座ヒータ450の後部には温度ヒューズ454が別途設置されており、第1の過昇防止手段、第2の過昇防止手段、第3の過昇防止手段に異常が発生した場合には、第4の過昇防止手段として便座ヒータ450への通電を遮断する機能を備えている。このように本実施の形態の便座装置100は4段階の過昇防止手段備えている。
主制御部601は第一サーミスタ401の温度検知信号を受信し、リモートコントローラ500と本体200の操作部211から送信される操作信号および設定信号と、リモートコントローラ500の人体検知センサ502と本体200の着座検知スイッチの検知信号等のデータをマイクロコンピュータで演算することにより、便座400を所定温度に制御する機能を備えたものであり、主制御部601が制御する便座の最高温度は43℃に設定されている。
一方、第一過昇防止制御部602、第二過昇防止制御部603、第三過昇防止制御部は、主制御部601とは分離された別回路で構成され、また、第一過昇防止制御部602、第二過昇防止制御部603、第三過昇防止制御部604もそれぞれ独立した別回路で構成されている。このような構成を採用することにより、主制御部601と、第一過昇防止制御部602と、第二過昇防止制御部603と、第三過昇防止制御部とはそれぞれ他の制御機能に影響されずに単独で機能を発揮することができる構成となっている。
第一過昇防止制御部602は第一サーミスタ401と接続されており、第一サーミスタ
401の温度検知情報に基づき電源遮断部620を駆動して電源を遮断する。第一過昇防止制御部602は過昇状態を判定する閾値として45℃が設定されている。この設定により、便座400の着座面411の表面温度が約45℃に上昇した時点で電源が遮断される。
また、第二過昇防止制御部603は第二サーミスタ402と接続されており、第二サーミスタ402の温度検知情報に基づき電源遮断部620を駆動して電源を遮断する。第二過昇防止制御部603は過昇状態を判定する閾値として46℃が設定されている。この設定により、便座400の着座面411の表面温度が約46℃に上昇した時点で電源が遮断される。上記のように、第一過昇防止制御部602の閾値より、第二過昇防止制御部603の閾値を高く設定されているのは、第一サーミスタ401と第二サーミスタ402の温度特性のバラツキを考慮したものである。
上記構成を採用することにより、第一サーミスタ401と主制御部601による温度制御機能と第一サーミスタ401と第一過昇防止制御部602による第1の過昇防止手段が正常な状態において、例えば、第二サーミスタ402の特性のバラツキにより、第二サーミスタ402と第二過昇防止制御部603による第2の過昇防止手段が第1の過昇防止手段より先に作動することにより、正常状態の便座装置100の通電が不用意に遮断される誤作動を防止することができる。
また、第三過昇防止制御部604は第三サーミスタ403と接続されており、第三サーミスタ403の温度検知情報に基づき電源遮断部620を駆動して電源を遮断する。第三過昇防止制御部604は過昇状態を判定する閾値として55℃が設定されている。この設定により、便座400の着座面411の表面温度が約45℃に上昇した時点で電源が遮断される。
上記構成によれば、例えば、主制御部601に異常が発生し、便座ヒータ450の通電制御が適切に行われず、便座400の温度が上昇を続けた場合でも、第一過昇防止制御部602の機能により電源を遮断することにより、便座が45℃以上になることを防止することができる。また、第一過昇防止制御部602に異常が発生した場合でも、第二過昇防止制御部603の機能により電源を遮断することにより、便座が46℃以上になることを防止することができる。
第一サーミスタ401と第一過昇防止制御部602による第1の過昇防止手段と、第二サーミスタと第二過昇防止制御部603による第2の過昇防止手段は、便座400の着座面411の表面温度場が設定温度に到達した後の保温時において、比較的緩やかな温度上昇による過昇状態に対応する目的で設けられたものである。
これに対して、第三サーミスタ403と第三過昇防止制御部604による第3の過昇防止手段は、人体検知直後における便座400の昇温時において、便座ヒータ450へ高容量の800W通電が実施された状態において発生する急峻な温度上昇における過昇状態に対応する目的で設けられたものである。すなわち、急峻な温度上昇を応答速度の速い高応答温度検知素子である第三サーミスタ403で検知することにより、便座400の着座面411の表面温度が高温に上昇する前に通電を遮断することができるものである。
<6>便座ヒータの通電パターンと温度変化
図12は便座ヒータの通電パターンと便座の各部の温度変化を示すグラフであり、正常な状態で制御されている場合の制御パターンを示すものである。
便座ヒータ450を駆動する通電パターンとしては、便座ヒータ450を駆動する電力
を大きく3つパターンに変化させることにより制御されている。
まず、人体検知センサ502が人体検知を行った直後に便座400を短時間に急峻な温度勾配で昇温させる場合、主制御部601の制御信号によりヒータ駆動部610は約800Wの電力で便座ヒータ450を駆動する(この駆動状態を800W駆動と称する)。
次に、800W駆動により便座400の温度が所定の温度に上昇した後は、800W駆動よりもやや緩やかな温度勾配で昇温させるため、ヒータ駆動部610は約400Wの電力に切替えて便座ヒータ450を駆動する(この駆動状態を400W駆動と称する)。
さらに、便座400の温度を一定に保つ場合、ヒータ駆動部610は、例えば、30Wの電力で便座ヒータ450を駆動する(この駆動状態を低電力駆動と称する)。なお、低電力駆動とは、800W駆動および400W駆動に比べて十分に低い電力(例えば、15W〜150Wの範囲内の電力)により便座ヒータ450を駆動することをいう。
800W駆動、400W駆動および低電力駆動の切替えは、主制御部601の制御信号によりヒータ駆動部610が便座ヒータ450への通電を位相制御により行う。
図12は、便座400の着座面411の表面温度を実線で、サーミスタの取り付け部である便座ヒータ450のアルミシート451の表面温度を一点鎖線で、第一サーミスタ401および第二サーミスタ402の検知温度を破線で、第三サーミスタ403の検知温度を点線で、便座ヒータ450を駆動する通電容量を実線で示し。これらの時間的変化を同一の時間軸で示したものである。
本実施の形態の便座装置100は、使用者が便座400の着座面411の表面温度を32℃〜38℃の範囲で設定可能な構成となっている(この温度を設定温度と称する)。本例では、設定温度の最高の温度である38℃に設定した場合を想定して以降の説明を行う。
また、冬季等で室温が18℃以下の場合、便座装置100が使用されていない待機時においては、便座400の着座面411の表面温度が18℃となるように維持される(この温度を待機温度と称する)。主制御部601は、人体検知センサ502により使用者の入室が検知されるまでの待機時においては、ヒータ駆動部610を駆動して便座400の着座面411の表面温度が18℃で一定となるように、便座ヒータ450を低電力駆動(約15W)で駆動する。このときの便座400の温度制御は、第一サーミスタ401の検知温度の情報により制御される。
主制御部601が人体検知センサ502の検知信号により使用者の入室が検知した時点T1で、ヒータ駆動部610は便座ヒータ450を800W駆動で駆動を開始し、あらかじめ設定された第1の昇温期間(例えば、6秒間)便座ヒータ450の800W駆動を継続する。800W駆動は基本的に主制御部601が備えた時計機能により時間制御で実施される。800W駆動が実施されている間、便座400の各部は最も急峻な温度勾配で上昇する。
便座ヒータ450の800W駆動は、便座400の着座面411の表面温度が所定温度(約30℃)に到達するまで行われる。この所定温度は設定温度にまで十分に上昇した温度でなく、それよりも低くても、使用者が着座した際に冷たいという不快を感じない最低限界の温度(この温度を冷感限界温度と称する)であればよい。この冷感限界温度は、発明者らの実施した被験者実験により約29℃であることを把握している。
このように、800W駆動が完了した時点T2においては、便座400の着座面411の表面温度が冷感限界温度以上の約30℃に上昇されるため、この時点で使用者は便座400を冷たいと感じることなく便座400に着座することができる。
この間、便座ヒータ450のアルミシート451は約60℃まで、第一サーミスタ401および第二サーミスタ402の検知温度は約24℃まで、第三サーミスタ403の検知温度は約40℃まで上昇する。
次に、主制御部601は、800W駆動の終了時点T2で、便座ヒータ450の400W駆動を開始し、便座400の着座面411の表面温度が設定温度(本例では38℃)に到達するまで400W駆動を継続する。この間、便座400の着座面411の表面温度は800W駆動時より緩やかな温度勾配で上昇する。
便座ヒータ450の400W駆動は、便座400の着座面411の表面温度が便座設定温度(38℃)に達するまで行われ、第一サーミスタ401の検知温度が設定温度(38℃)に到達すると、400W駆動を停止し次の駆動に切替える。
一般的に便座400の着座面411の表面温度を設定温度まで急激に上昇させると、その温度変化にオーバーシュートが生じる。しかしながら、本実施に形態では、便座400の着座面411の表面温度が設定温度より低い冷感限界温度に達したときに便座ヒータ450の800W駆動を終了し、その後、通電容量を400Wに切替えて駆動する。これにより、便座400の着座面411の表面温度が設定温度よりオーバーシュートすることを抑制し、使用者が着座時に便座400を熱いと感じることが防止される。
主制御部601は、400W駆動の終了時点T3で、便座ヒータ450の低電力駆動を開始し、便座400の着座面411の表面温度を便座設定温度(38℃)で一定となるように制御する。この状態が便座400は便座400の正常な使用状態であり、使用者は便座400の着座面411に着座して快適に使用することができる。
図示していないが、使用者が用便を終了し、便座400から離れたことを着座スイッチが検知すると、所定期間(本実施の形態では1分間)経過後に便座ヒータ450の駆動を停止する。それにより、便座400の着座面411の表面温度が低下する。主制御部601は、便座400の表面温度が18℃に到達した時点で、再び便座ヒータ450の低電力駆動を開始し、便座400の表面温度が18℃で一定となるように低電力駆動を維持する。
上記は使用者が便座400に着座して使用した場合を想定した制御パターンを記載したが、男子小用および清掃等で、便座を使用しない使用状態がある。
例えば、男子小用の場合は便座400を起立させて用便を行うため、便座400の回動部に設けた便座角度検知手段(図示せず)により起立状態を検知し、検知信号を受信することにより、主制御部601は便座ヒータ450の昇温駆動を停止し、待機温度に復帰するように制御する。
また、清掃等で便座400が倒伏状態で着座されない場合は、人体検知信号を受信した時点T1から所定期間(本実施の形態では1分間)経過後に便座ヒータ450への通電を停止し、待機温度に復帰するように制御する。
<7>過昇防止手段の制御
図13は昇温時において過昇状態が発生した場合の温度変化を示すグラフであり、図1
4は保温時に過昇状態が発生した場合の温度変化を示すグラフである。
図13で示すように、800W駆動時に主制御部601の故障により、所定の通電時間(例えば6秒間)が経過した時点T2後も800W駆動が継続された場合、便座400は急激に温度上昇し、便座設定温度(38℃)以上に上昇する。
この状態において、第三サーミスタ403の検知温度が上昇を続け、閾値である55℃に到達した時点T4で第三過昇防止制御部604は過昇状態と判定し、電源遮断部620を駆動して電源を遮断する。この時点T4において便座400の着座面411の表面温度は約45℃であり、使用者が火傷などの損傷を受けることを防止することができる。
一方、図14で示すように、低電力駆動による便座400の保温時に、主制御部601に故障が発生すると、故障発生時点T5から第一サーミスタ401の検知温度が上昇し、閾値である45℃に到達した時点T6で、第一過昇防止制御部602は過昇状態と判定し、電源遮断部620を駆動して電源を遮断する。この時点T6において便座400の着座面411の表面温度は45℃であり、使用者が火傷などの損傷を受けることを防止することができる。
また、低電力駆動による便座400の保温時に、例えば第一サーミスタ401の取り付け状態に異常が発生することにより、温度制御が適切に行われない場合に、第二サーミスタ402が46℃を検知すると、第二過昇防止制御部603は、電源遮断部620を駆動して電源を遮断する。この時点において便座400の着座面411の表面温度は46℃であり、使用者が火傷などの損傷を受けることを防止することができる。
一般的に、金属面が48℃の場合は10分以上、金属面が51℃の場合は1分以上、金属面が55℃の場合10秒以上、金属面が65℃の場合1秒以上、直接肌が接触した場合に火傷による身体的な損傷を受けるとされている。このため、使用者の肌が直接接触する便座装置においては、異常状態においても表面温度を48℃以下に保つことが望ましいと考えられている。
本実施の形態における便座400は、異常状態においても過昇防止手段により表面温度が46℃以下に維持される、この状態において便座400に直接肌が接触した場合、火傷が発生するまでは10分以上の時間があり、熱いと感じてから便座400から退避動作を行う時間を十分に確保することが可能であり、火傷を負うことを十分に抑制することができる安全性の高いものである。
上記のように、本実施の形態における便座装置は、過昇防止手段の温度検知素子として低応答温度検知素子である第一サーミスタ401および第二サーミスタ402と、高応答温度検知素子である第三サーミスタ403との応答速度の異な温度検知素子を備えたことにより、大きく異なる通電容量で便座ヒータの駆動する通電パターンにおいて、それぞれのパターンで発生する過昇状態を適切に防止することができ、便座装置の安全性と信頼性を向上することができる。
また、同様な構成である第一サーミスタと第一過昇防止制御部による第1の過昇防止手段と、第二サーミスタと第二過昇防止制御部による第2の過昇防止手段とを備え、第1の過昇防止手段と第2の過昇防止手段に異なる閾値を設定したことにより、保温状態で発生した過昇状態に対して過昇防止手段を相互にバックアップすることができるとともに、構成部材の特性のバラツキ等により作動の優先順序が乱れることを防止することができ、過昇防止手段の信頼性と安定性を向上することができる。
また、同一のサーミスタを便座ヒータの通常の通電制御と、過昇防止手段の温度検知の両方で共用したことにより、過昇防止手段の設置数を低コストで増やすことが可能となり、便座装置の安全性と信頼性を向上することができる。
また、便座ヒータの通常の通電制御を行う主制御部と、過昇防止手段を制御する過昇防止制御部を別構成で構成し、しかも、複数のサーミスタに対して専用の過昇防止制御部を個々に構成したことにより、過昇防止手段の安全性と信頼性をより向上することができる。
なお本実施の形態においては、低応答温度検知素子を備えた過昇防止手段として、第1の過昇防止手段と第2の過昇防止手段の2個の過昇防止手段を備えたが、これに限るものではなく、第1の過昇防止手段または第2の過昇防止手段のみを備えた構成であっても良い。
また、本実施の形態においては、温度検知素子としてサーミスタを使用したがこれに限るものではなく、白銀測温抵抗体や熱電対等の他の温度検知素子を使用しても良い。使用する温度検知素子としては検知精度が高く、応答速度の速いものが望ましい。