JP6467436B2 - 蛋白の測定方法 - Google Patents

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Description

本発明は、蛋白の測定方法に関する。
特に、本発明は、ヒト又は動物から採取した消化管(GI管)試料中の蛋白の濃度を測定する方法に関する。
多くの病気は、細胞の代謝に大きな影響を示す。内在的に産生された物質のいくつかは、GI管内に一定量放出される。例えば、炎症性疾患、アレルギー性疾患、感染症、食物不耐症又は癌などの疾患を患う患者では、この内在的に産生された物質のGI管内への放出量が増減する。このような内在的に産生された物質の有無は、疾患を予測及び診断するための重要かつ貴重な見地であり得る。さらに、このような内因的に産生された物質の量の変化は、疾患の進行を監視する上で非常に有用であり得る。加えて、処置及び/又は治療手順の有効性を評価することができると共に、適切な調整を行うことができる。
GI管内に放出される上記物質の1つは、カルプロテクチンである。カルプロテクチン、3つのポリペプチド鎖からなる36.5kDaのカルシウム結合蛋白である。カルプロテクチンは、S100A8/A9、カルグラニュリンA/B、MIF関連蛋白8/14(MRP8/14)又はL1蛋白としても知られており、好中球顆粒球、単球、マクロファージ及び粘膜上皮細胞に多く存在する。この蛋白は、生体外(in vitro)において、殺細菌性及び殺カビ性の両方の殺菌特性を発揮する。それはまた、炎症プロセスにおける調節機能を有すると考えられる。したがって、糞便カルプロテクチンは、炎症性疾患のマーカーであると同時に、下部GI管の腫瘍性疾患のマーカーでもある。糞便中のカルプロテクチンの濃度の上昇は、結腸直腸癌、炎症性腸疾患及びGI管における細菌性感染症の患者において測定される。血漿中のカルプロテクチンの最も高いレベルは、慢性関節リウマチ、嚢胞性線維症、クローン病、及び、敗血症や髄膜炎菌性疾患のような急性細菌性感染症の患者において見られる。したがって、糞便カルプロテクチンの測定は、上述の疾患、特に炎症性腸疾患(クローン病及び潰瘍性大腸炎)及び結腸直腸癌を監視するための重要な、日常的なパラメータである。
ヒト膵臓エラスターゼ1は、分子量26kDaのアニオン性エンドプロテアーゼである。ヒト膵臓エラスターゼ1はセリンプロテアーゼ族に属し、ステロイド結合蛋白である。この酵素は、他の消化酵素と並行して、膵臓から十二指腸内へと分泌される。腸通過の間、膵臓エラスターゼ1は胆汁酸塩に結合し、分解されない。エラスターゼ1分泌と、膵臓のリパーゼ、アミラーゼ及びトリプシン分泌との間には、線形相関がある。さらに、十二指腸内へのエラスターゼ1分泌は、便中のエラスターゼ1濃度と線形相関を示す。ヒトの便中では、膵臓エラスターゼ1の濃度は、膵液中よりも5〜6倍高い。これらの事実は、診断用途にとって重要である。あらゆる膵外分泌機能障害は、エラスターゼ1の分泌低下に関係しており、その分泌低下の結果、便中の酵素濃度が低下する。したがって、エラスターゼ1は膵外分泌機能不全の診断のためのマーカーとして使用される。エラスターゼ1はまた、真性糖尿病、嚢胞性線維症及び慢性膵炎における膵外分泌機能の監視にも使用される。
キモトリプシンは蛋白分解酵素であり、十二指腸に作用する膵液の成分であって、プロテオリシスすなわち蛋白及びポリペプチドの分解を行う。キモトリプシンはセリンプロテアーゼ族にも属し、トリプシンの存在下で活性化される。
GI管試料中の蛋白を抽出及び測定する方法は、従来技術において周知である。
米国特許第5,455,160号には、糞便中のカルプロテクチンの測定のためのキット及び方法が開示されており、これらは癌及び炎症性腸疾患の検出に使用するための診断ツールとして提示されている。
Ton(oはストローク付) et al.の発表論文(Clinica Chimica Acta 292(2000)41-54)は、糞便カルプロテクチンの改良されたアッセイに関する。著者らは、カルプロテクチン収量が比較的高く汚染リスクが比較的低いカルプロテクチンの測定のための新規開発された糞便試料調製手順について記載している。
Ton(oはストローク付) et al.の方法における重要な見地は、試料の抽出中に緩衝液により1:20〜1:80で希釈された試料の糞便カルプロテクチン濃度が、米国特許第5,455,160号に記載された従来の1:2の試料希釈と比較してより高い度合に増加したことにある。
Whitehead et al.による別の直近の研究(Ann. Clin. Biochem. 50(2013)53-61)は、3つの異なる市販の抽出装置を使用した場合には、手作業での秤量手順に比べて、糞便カルプロテクチンの回収率が最大28%低下することを報告している。ある水様性粘稠度の試料の回収率は、わずか5%〜45%であった。全ての試料は、各抽出緩衝液を用いた1:50の希釈を用いて抽出された。
これらの欠点から出発して、本発明の目的は、蛋白の測定方法を改良することにある。
上記目的は、本発明の請求項1によって解決される。請求項1は、ヒト又は動物から採取した消化管(GI管)試料中の蛋白の濃度を測定する方法であって、
a)前記試料を収集するステップと、
b)ステップa)の試料を、所定の量の緩衝化水性抽出媒体と混合するステップと、
c)ステップb)の混合物を均質化するステップと、
d)ステップc)で得られた混合物を用いて免疫アッセイを行うステップと、
e)前記タンパク質の濃度を測定するステップと
を含んでいる方法に関する。
請求項1によれば、上記目的は、ステップb)において、前記緩衝化水性抽出媒体中にて前記試料の1:100〜1:10,000の範囲の希釈が得られるという特徴によって解決される。
本出願全体を通じて、緩衝化水性抽出媒体中の試料の希釈率は、別段の指示のない限り、それぞれ試料の重量及び緩衝化水性抽出媒体の体積に関連する。
この解決手段は、以下の理由により、本出願の出願日前における当業者の予想に反している。
Ton(oはストローク付) et al.は、試料と緩衝化水性抽出媒体との比(1:20,1:50,1:80)を複数試験している。彼らは、希釈率が高ければ抽出された蛋白の収率が増加するという傾向を見出したものの、それらの結果の間に有意な差はなかった。糞便と抽出緩衝液との比が1:20及び1:50の際には、カルプロテクチン収率における相関は強かったが、それらの2つのデータセット間の一致率は乏しかった。すなわち、これらの結果は、1:50の希釈において比較的高かったが、有意に高いものではなかった。糞便と抽出緩衝液との比が1:50及び1:80の際には、それらの2つのデータセット間の相関も強く、それらの2つのデータセット間の一致率は良好であった。したがって、Ton(oはストローク付) et al.は、希釈比を1:50以上に増加させても抽出収率に有意な影響はないと結論付けている。
驚くべきことに、本発明者らは、抽出の間における緩衝化水性抽出媒体中の試料の1:100〜1:10,000の範囲の希釈により、GI管試料から抽出された蛋白の収率がさらに高くなることを示した。このことは、高い蛋白濃度を含有する試料にとって好ましい。従来技術に記載されているような1:50の希釈は、上記目的の解決には十分でない。
加えて、1:100〜1:10,000の範囲の希釈によって得られる結果は、より正確であると共に、信頼性及び再現性もある。これによって、より正確な疾患の診断が可能になる。さらに、GI管試料中の蛋白濃度の任意の変化を非常に容易に検出でき、それによって疾患の進行をよりよく監視することができるようになる。また、処置及び/又は治療手順の有効性をよりよく評価及び追跡することができると共に、適切な調整をより迅速に行うことができる。
さらに、本発明者らは、驚くべきことに、1:100〜1:10,000の範囲の希釈にて試料及び緩衝化水性抽出媒体を含む混合物が、遥かに高い安定性を示すことを見出した。すなわち、GI管試料から緩衝化水性抽出媒体中に抽出された蛋白(これにより1:100〜1:10,000の範囲の希釈が得られる)は、2〜42℃、好ましくは2〜28℃の温度範囲において少なくとも1日、最大で28日の期間において、従来技術に記載されたような最大で1:80の希釈を伴う緩衝化水性抽出媒体よりも遥かに分解が少ない又は全く分解されないことを見出した。
本発明の方法は、GI管試料に適用される。GI管試料は、GI管の任意の部位より採取されてもよい。しかしながら、糞便は非侵襲的手順によって容易に入手できるため、好ましい。
GI管試料は、水様性の又は緩いGI管試料であってもよく、非水様性の又は堅いGI管試料であり得る。
本発明の方法の利点は、水様性の又は緩いGI管試料にも適用可能であることである。
そのような試料では、含水量は様々であり、高いこともあり、極めて高いことさえもある。希釈効果のために、このような水様性のGI管試料中の蛋白濃度は低くなることがある。
それにもかかわらず、本発明者らは、驚くべきことに、本発明の方法が、従来技術の方法とは異なり、水様性の又は緩いGI管試料において正確かつ信頼性のある結果をもたらすことを見出した。
さらに、本発明の方法は、そのような水様性のGI管試料に対してさえも容易に適用可能である。これに対し、従来技術で利用可能な方法は、緩い試料を乾燥させた後に乾燥糞便中の蛋白濃度を測定する複数の複雑なステップを用いていた。
Kampanis et al.の乾式抽出法(Ann. Clin. Biochem. 46 (2009) 33-37)は、ヒト糞便中のエラスターゼ1の測定に関して言及され得る。記載された方法は、(例えば、ScheBo Biotech E1 Quick-Prep(商標)チューブ、希釈比1:70を用いての)従来の湿式抽出法と比較した場合、試料の調製するのにより時間がかかるため不利である。したがって、実際には、その使用は、緩い湿った試料に限られていた。湿った糞便試料又は緩い糞便試料は、乾燥させた後に秤量して、最後に抽出溶液で希釈する必要がある。これは非常に重労働であるうえ、あまり衛生的ではない。このアプローチのもう1つの欠点は、2つの抽出方法の間の基準濃度の違いであり、使用者が間違った基準濃度を適用するおそれがある。このことは、誤診や間違った治療決定につながることがある。
本願発明の方法は正確かつ信頼性のある結果をもたらすため、追加の不要な調査、リソースの不適切な使用及び患者管理が回避される。非常に高い含水量にもかかわらず、そのような試料は分析に適しており、したがって、生化学的診断及び適切な治療の開始の遅れが回避される。GI管試料は、ヒト又は動物由来、好ましくはヒト由来であり得る。該動物は、好ましくは、犬、猫、サル、ウシ、ブタ、ウマ、ラット又はマウスであり、これらの動物は、ヒトと同様の糞便蛋白の量の増加を伴い得る症状を発症することがある。
GI管試料は、侵襲的方法(例えば、手術や生体組織検査)の間に収集されてもよく、排泄物から収集されてもよい。
本発明の方法では、ステップa)による収集は、特別な定量投与先端(quantitative dosing tip)、白金耳、小型スプーン、シリンジ又はピペット(先端)を用いて行われてもよい。このことには、使い捨て用具を使用することができるため、検査員の健康リスクが比較的低いという利点がある。加えて、環境や作業者が汚染されることがほとんどない。さらに、試料が相互汚染されるおそれは極めて低い。
GI管試料が非水様性のGI管試料である場合、ステップa)は、収集用具を試料の種々の位置に導入することにより行われてもよい。そのような採取の利点は、蛋白濃度の任意の局所的な差異が排除されることにある。
GI管試料が水様性のGI管試料である場合、ステップa)は、好ましくは、定量シリンジを用いて又は定量的ピペッティングにより行われてもよい。
本発明の方法のステップa)で収集される試料の量は、GI管試料が非水様性のGI管試料である場合には、好ましくは1〜1,000mgの範囲、より好ましくは2〜100mgの範囲、さらに好ましくは4〜20mgの範囲であり、最も好ましくは8〜12mgの範囲内である。
本発明の方法のステップa)で収集される試料の量は、GI管試料が水様性のGI管試料である場合には、好ましくは1〜1,000μlの範囲、より好ましくは2〜100μlの範囲、さらに好ましくは4〜20μlの範囲であり、最も好ましくは8〜12μlの範囲内である。
このような小さな試料サイズの糞便を使用することは、どの患者からでも、たとえ子供、高齢者又は虚弱な患者からであっても、そのような糞便を容易に取得できるという利点を有する。このような少量の糞便は、試料の凍結が要求される場合であっても、容易に貯蔵され得る。
本発明の方法のステップb)において、ステップa)の試料は、所定の量の緩衝化水性抽出媒体と混合され、好ましくは直接混合される。この文脈の用語「直接」は、ステップa)とb)の間に、試料を用いた追加の処理ステップ、例えば、予備希釈、乾燥、抽出、洗浄又は熱処理などを行わないことを意味する。
緩衝化水性抽出媒体の緩衝物質は、リン酸塩、マレイン酸塩、クロロ酢酸塩、ギ酸塩、安息香酸塩、ピリジン、ピペラジン、プロピオン酸塩、3−N−モルホリノプロパンスルホン酸(MOPS)、1,3−ビス(トリス(ヒドロキシメチル)メチルアミノプロパン(Bis−TRIS)、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン(TRIS)、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタンマレイン酸(TRISマレイン酸)、2−(トリス(ヒドロキシメチル)メチルアミノ)エタンスルホン酸(TES)、1,4−ピペラジン−ビスエタンスルホン酸(PIPES)、4−モルホリノエタンスルホン酸(MES)、N−2−ヒドロキシエチルピペラジン−N’−2−エタンスルホン酸(HEPES)、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−2−アミノエタンスルホン酸(BES)、N−(2−アセトアミド)イミノ二酢酸(ADA)、N−(2−アセトアミド)−2−アミノエタンスルホン酸(ACES)及び当業者に知られた他のものから選択され得る。前記緩衝物質の任意の混合物もまた、本発明の方法のステップb)において使用することができる。緩衝化水性抽出媒体は、塩、抗菌剤、洗浄剤、キレート剤、カオトロピック剤及び/又は消泡剤を含有していてもよい。原理的には、本発明には任意の緩衝化水性抽出媒体が適切に機能し得る。
緩衝化水性抽出媒体の量は、緩衝化水性抽出媒体中にて1:100〜1:10,000の範囲の試料の希釈が得られるように選択され得る。好ましくは、希釈は1:100〜1:2,000の範囲であり、より好ましくは、希釈は1:200〜1:1,000の範囲であり、さらに好ましくは、希釈は1:450〜1:550であり、最も好ましくは、希釈は1:500である。緩衝化水性抽出媒体中にて1:100〜1:10,000の範囲の希釈は、好ましくは1ステップで得られる。
緩衝化水性抽出媒体中の緩衝物質の濃度は、0.1mM〜2M、好ましくは10mM〜0.2M、最も好ましくは20〜50mMの濃度から選択され得る。
さらに、本発明の方法のステップb)に係る混合のpHは、ステップb)において使用され得る緩衝化水性抽出媒体に依存し、pH3〜pH12の範囲から、好ましくはpH5〜pH9の範囲から、最も好ましくはpH7.5から選択され得る。
本発明の方法のステップb)に係る混合は、2℃〜45℃の温度範囲、好ましくは10℃〜35℃の温度範囲、より好ましくは18℃〜28℃の温度範囲、最も好ましくは23℃の温度で行われ得る。
本発明の方法のステップc)に係る均質化は、好ましくは密閉容器内で行われ得る。
本発明の方法のステップc)に係る均質化は、手振り、ボルテックスミキサー若しくは転倒型ミキサー(回転ミキサー)の使用、シリンジ及びピペットをそれぞれ用いたせん断力の印加、又は超音波の印加により行われ得る。
ステップc)に係る均質化が、手振り、シリンジ及びピペットをそれぞれ用いたせん断力の印加、又は超音波の印加により行われる場合には、その期間は少なくとも5秒間、好ましくは5〜600秒の範囲、より好ましくは10〜60秒の範囲である。
ステップc)に係る均質化がボルテックスミキサーの使用により行われる場合には、その期間は少なくとも5秒間、好ましくは5〜300秒間の範囲、より好ましくは10〜60秒間の範囲であり得る。ボルテックスミキサーの速度は100〜10,000rpmの範囲から選択されることができ、好ましくは、その速度は利用可能な最大値であり得る。
ステップc)に係る均質化が転倒型ミキサー(回転ミキサー)の使用により行われる場合には、その期間は少なくとも5分、好ましくは5分〜24時間の範囲、より好ましくは10〜180分の範囲、さらに好ましくは15〜60分の範囲であり得る。回転ミキサーの速度は10〜1,000rpmの範囲から選択されることができ、好ましくは、その速度は利用可能な最大値であり得る。
均質化ステップc)は、混合物が静置される期間を含んでいてもよい。加えて、これにより混合物中に未だ存在している固体成分を沈降させてもよい。好ましくは、その時間は5分〜24時間の範囲、より好ましくは10〜60分の範囲から選択される。
均質化ステップc)は、収集用具(例えば、採取ピンの投与先端(dosing tip))から非水様性のGI管試料物質を完全に除去するために、数回繰り返してもよく、好ましくは2回繰り返してもよい。
好ましくは、均質化ステップc)は直接行い、ステップb)の混合物を用いた追加の処理ステップは行わない。
さらに、完全な抽出プロセス(すなわち、本発明の方法に係るステップb)及びc))は、1:100〜1:10,000の範囲の希釈にて実施することが好ましい。技術水準に係る方法では、まず、緩衝化水性抽出媒体中の試料の最大で1:80の希釈にて抽出を行い、続いて、均質化ステップの後に、さらに希釈を行う。
本発明の方法のステップd)では、ステップc)で得られた混合物を使用し、好ましくは直接使用して、免疫アッセイを行う。この文脈の用語「直接」は、ステップc)とd)の間に、試料を用いた追加の処理ステップ、例えば、遠心分離、抽出、さらなる均質化又は濾過などを行わないことを意味する。このことは、従来技術で知られた方法よりも時間及びリソースの消費が少ないため、有利である。従来技術の方法では、当業者は、均質化した試料に遠心分離ステップを適用しなければならない。また、その上清を分離し、アッセイ緩衝液でさらに希釈した後、さらなる分析に使用する必要がある。
ステップd)において行われる免疫アッセイは、GI管試料中にて測定される蛋白に依存する。
蛋白は、ラクトフェリン、エラスターゼ(例えば、PMNエラスターゼ、エラスターゼ1、エラスターゼ2A、エラスターゼ2B、エラスターゼ3A、エラスターゼ3B)、M2ピルビン酸キナーゼ、ヘモグロビン、ハプトグロビン、ヘモグロビン/ハプトグロビン複合体、キモトリプシン、リゾチーム、アルブミン、プレアルブミン、β−デフェンシン2、α−1−アンチトリプシン、α−2−マクログロブリン、炭酸脱水酵素I、炭酸脱水酵素II、ミエロペルオキシダーゼ、好酸球由来ニューロトキシン、好酸球ペルオキシダーゼ、主要塩基性蛋白1、シャルコー・ライデン結晶蛋白(CLC/GAL10)、好酸球蛋白X、C反応性蛋白、免疫グロブリン、分泌型IgA、抗組織トランスグルタミナーゼ抗体、抗グリアジン抗体、抗脱アミドグリアジン抗体、インターロイキン(インターロイキン1、インターロイキン6、インターロイキン8など)、腫瘍壊死因子α、病原体の抗原、病原体の抗体、抗H.ピロリ抗体、S100蛋白、カルグラニュリンC(S100A12、EN−RAGE)、カルグラニュリンB(S100A8、MIF関連蛋白8)、カルグラニュリンC(S100A9、MIF関連蛋白14)及びカルプロテクチン(カルグラニュリンA/B、S100A8/A9、MIF関連蛋白8/14)を含む群から選択される。
しかしながら、カルプロテクチン、エラスターゼ又はヘモグロビンが特に好ましい。
糞便カルプロテクチンは、GI管中の炎症性疾患及び腫瘍性疾患のマーカーである。結腸直腸癌、炎症性腸疾患(クローン病及び潰瘍性大腸炎)、虫垂炎及びGI管の細菌性感染症の患者では、糞便中のカルプロテクチン濃度の上昇が測定されている。糞便カルプロテクチンは、炎症性腸疾患(IBD、通常はカルプロテクチン濃度が高い)と過敏性腸症候群(IBS、通常はカルプロテクチンレベルが低い又は存在しない)を区別するためにも使用される。
エラスターゼの濃度低下は、膵外分泌機能不全の診断のためのマーカーとして用いられている。同様に、真性糖尿病、嚢胞性線維症及び慢性膵炎における膵外分泌機能の監視にも使用される。
糞便ヘモグロビン(いわゆる便潜血)のレベルの上昇は、結腸直腸癌と関連している。したがって、このマーカーは、結腸直腸癌スクリーニングに広く使用されている。
したがって、糞便蛋白の正確な測定は、上記疾患、特に炎症性腸疾患(クローン病及び潰瘍性大腸炎)及び結腸直腸癌の正しい診断及び正確な監視にとって必須である。
従来技術では、上述の蛋白の測定のために、免疫アッセイが利用可能である。当業者は、どのアッセイを選択するかを既に知っている。
好ましくは、免疫アッセイは、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)、免疫濁度アッセイ、免疫クロマトグラフィー(ラテラルフロー)アッセイ及びフローサイトメトリーアッセイを含む群から選択される。
本発明の方法のステップe)では、蛋白の濃度が測定される。
本発明の方法のステップe)における濃度の測定は、反射測定法、吸光度、蛍光、化学発光、電気化学発光、UV/VIS分光法、電流測定法、磁気測定法、ボルタンメトリー、電位差測定法、導電率測定法、電量測定法、ポーラログラフィー及び電解重量測定法を含む群から選択される。
別の実施形態では、本発明の方法のステップe)における測定は、視覚的に行われる。そのような測定は容易であり、さらなる装置を用いずに実施され得る。
非水様性のGI管試料の場合には、蛋白濃度は、前記試料に対して1ng/g〜100mg/gの範囲、好ましくは、試料に対して10μg/g〜10mg/gの範囲である。
水様性のGI管試料の場合には、蛋白濃度は、試料に対して1ng/ml〜100mg/mlの範囲、好ましくは、試料に対して10μg/ml〜10mg/mlの濃度である。
好ましい実施形態では、飼料中の蛋白濃度は、非水様性のGI管試料の場合には、試料に対して300μg/gより高く、水様性のGI管試料の場合には、試料に対して300μg/mlより高い。本発明者らは、驚くべきことに、このような多量の蛋白を用いると、本発明の方法は、従来技術の方法よりも正確かつ信頼性のある結果を提供することを見出した。
この蛋白は、GI管試料の基質(例えば、糞便。Ton(oはストローク付) et al., Clinica Chimica Acta 292(2000)41-54参照)内に存在する際には、概して優れた安定性を示す。しかしながら、緩衝化水性抽出媒体を用いてGI管試料の基質(例えば、糞便)から溶液又は懸濁液内へと蛋白を抽出する際には、蛋白は、緩衝化水性抽出媒体の構成、貯蔵温度、貯蔵時間等の保存条件に応じて低下した安定性を示し得る。試料抽出物(=抽出された蛋白)の安定性は、糞便試料を異なる場所(例えば、患者の家庭)にて緩衝化水性抽出媒体が予め充填された容器内へと収集した後、実験室へと送る場合、特に輸送時に環境温度で数日かかる際には、特に重大事項である。
安定性の基準は、蛋白の分解量と関連する。
蛋白(例えば、カルプロテクチン)の分解は、本発明の文脈では、ステップc)で得られた混合物中の前記蛋白の回収率によって定義される。回収率は、以下の等式によって計算され得る。
回収率=t1にてT1で抽出された蛋白の濃度/t0にてT0で抽出された蛋白の濃度×100%
溶液又は懸濁液中の抽出された蛋白の濃度は、従来技術で公知の方法又は本発明の方法に従って測定され得る(以下の実施例1及び2参照)。
最初に、前記蛋白の濃度を、時刻0(t0)にて温度T0で測定する。すなわち、本発明の方法に係るそれぞれの抽出の後、即座に糞便抽出物を計測する。用語「即座に」とは、本発明の方法のステップb)及びc)の後5〜120分の時間内に濃度の測定を行うことを意味する。好ましくは、温度T0は環境温度、すなわち20〜25℃である。
次に、糞便抽出物を、所定の温度T1で所定の時間t1(例えば、28℃で1日)インキュベートする。前記時間t1の後に、前記蛋白の濃度を再度測定する。
驚くべきことに、1:50の抽出希釈と比較して1:100〜1:10,000の範囲の抽出希釈を用いて、緩衝化水性抽出媒体を備えたGI管試料から蛋白を抽出し、その後所定の温度で所定の時間貯蔵する場合には、蛋白はより一層安定となり、特に高温にてより一層安定となることが、本発明者らによって見出された。
好ましい実施形態では、1:50の抽出希釈と比較して1:100〜1:10,000の範囲、好ましくは1:500の抽出希釈が使用される場合には、緩衝化水性抽出媒体中の蛋白は、2〜42℃、より好ましくは2〜28℃の温度範囲で1〜28日間安定である。
例えばカルプロテクチンは、1:500の希釈率を用いて緩衝化水性抽出媒体を備えたGI管試料から抽出した場合、2〜8℃の範囲の温度において完全に安定であり、同様に28℃で6日間まで完全に安定であった。1:500の抽出希釈では分解は見られず、すなわち、回収率は100%以上であった(実施例10参照)。
安定係数SCは、以下の等式により計算され得る:
SC=(希釈1:X中t1にてT1で抽出された蛋白の回収率)/(希釈1:50中t1にてT1で抽出された蛋白の回収率)
ここで、Xは100〜10,000の範囲の値であり、t1及びT1は上述の定義と同様である。
上記安定係数は、少なくとも1.001、好ましくは1.001〜15の範囲、好ましくは1.001〜8の範囲、より好ましくは1.001〜5の範囲、さらに好ましくは1.001〜2の範囲、最も好ましくは1.001〜1.7の範囲であり得る。
便試料33個における、希釈倍率1:500を用いて抽出した便試料と希釈倍率1:50を用いて抽出した便試料との比較。細線は、対応する試料対間の回帰直線を表す(傾き:y=1.5931x)。太線は、対応する試料対間の仮の均等直線(identity line)を表す(傾き:y=1.00x)。 試料300μg/gを超えるカルプロテクチン濃度の便試料29個における、希釈倍率1:500を用いて抽出した便試料と希釈倍率1:50を用いて抽出した便試料との比較。糞便試料は、1:50抽出希釈を用いて測定された濃度が高くなる順に並べられている。斑模様のバーは、1:50の抽出希釈を用いて測定されたカルプロテクチン濃度を表す。黒塗りのバーは、1:500の抽出希釈を用いて測定されたカルプロテクチン濃度を表す。6,000μg/gを超える試料を測定する試料は、ELISAアッセイで追加の希釈は行わず、「6000μg/g」として示している。 50〜1,800μg/gの範囲のカルプロテクチン濃度を有する糞便試料6個を、3つの異なる市販の抽出緩衝液を用いて1:50及び1:500の希釈率でそれぞれ抽出し、2つの異なる市販のELISA試験にて分析した。2つの異なる抽出希釈物について測定した全てのデータ点をまとめて、対応するデータ対を回帰分析により比較した。太い実線は対応する試料対間の仮の均等直線を表し(傾き:y=1.00x)、破線は対応するデータ対30個全体にわたる真の回帰直線を表す(傾き:y=2.8612x)。 20〜2500μg/gの範囲のカルプロテクチン濃度を有する糞便試料40個を、1:500の希釈率で2つの異なる抽出法(BUHLMANN Calex(商標) Cap装置。ピペット分注及び手作業での秤量の手順による)を用いて抽出し、BUHLMANNカルプロテクチンELISAで分析した。対応するデータ対を回帰分析によって比較した。細線は対応する試料対の間の仮の均等直線を表し(傾き:y=1.00x)、太い実線は対応するデータ対40個全体にわたる真の回帰直線を表す(傾き:y=0.9636x)。
本発明の特徴的な効果及び利点は、以下の非限定的な実施例によって説明される。
実施例1:糞便試料の抽出
糞便は、地方の日常的な研究所及びバーゼル大学病院の消化器科より好意で提供された匿名の便試料の余りから取得した。試料を受領した後、2〜8℃で最大1週間、又は−20℃未満で長期間(最大2年間)保存した。糞便試料は、抽出前に周囲温度(20〜25℃)に平衡化した後、以下のようにして抽出した:
a)「参照方法」:60〜100mgの糞便を、非水様性の試料には小さいスプーンを、水様性(液状)の試料の定量ピペットを用いて、Smart−Prep装置(B−CAL−RD、BUHLMANN Laboratories社(スイス、シェーネンブーフ))の試料チャンバ内に秤量した。後者の場合、平均的な糞便試料の密度が1g/mlに近いため、60〜100μlの水様性の糞便を試料チャンバ内にピペット分注した。このようにして、3〜5mlの抽出緩衝液(B−CAL−EX、BUHLMANN Laboratories社(スイス、シェーネンブーフ))を添加して、1:50の抽出率を得た。次に、Smart−Prep装置を最大速度で1分間ボルテックスして、得られたホモジネートを30分間沈降させた。その後、上清の各分割量を、それぞれのカルプロテクチンELISAアッセイに用いた(実施例2参照)。
b)糞便と1:100、1:250及び1:500の抽出緩衝液との対比についての別の抽出率を生成するために、およそ40mg(40μl)、30mg(30μl)及び15mg(15μl)の糞便を、Smart−Prep装置(B−CAL−RD、BUHLMANN Laboratories社(スイス、シェーネンブーフ))の試料チャンバ内にそれぞれ秤量(ピペット分注)した。それに応じて、およそ4ml、7.5ml及び7.5mlの抽出緩衝液(B−CAL−EX、BUHLMANN Laboratories社(スイス、シェーネンブーフ))をそれぞれ添加して、それぞれの抽出希釈率を得た。1:1,000及び1:5,000の抽出希釈率は、20mg(20μl)及び10mg(10μl)の糞便を50mlファルコンチューブ(ThermoFisher Scientific AG(スイス、ライナハ))内に秤量(ピペット分注)し、20ml及び50mlの抽出緩衝液(B−CAL−EX、BUHLMANN Laboratories社(スイス、シェーネンブーフ))をそれぞれ添加することにより得た。次に、充填された全ての装置を最大速度で1分間ボルテックスして、得られたホモジネートを30分間沈降させた。その後、上清の各分割量を、それぞれのカルプロテクチンELISAアッセイに用いた(実施例2参照)。
c)あるいは、CALEX(商標) Cap及びCALEX(商標) Valve装置(BUHLMANN Laboratories社(スイス、シェーネンブーフ))を、1:500の抽出率を得るためにそれぞれ用いた。装置は、採取ピンと、およそ8mlの容量と、得られた糞便抽出物を分析装置に移送するための閉鎖スクリューキャップ(CALEX(商標) Cap)又は他の端部のバルブ部分(CALEX(商標) Valve)からなる。溝を完全に満たすために、8〜10本の溝(溝の総容積は糞便10mgの体積に相当する)を備えた採取ピンを非水様性の糞便試料に3〜5回導入した。次に、採取ピンを抽出チャンバの開口に配置された漏斗を通して導入し、該漏斗にて余分な糞便を剥ぎ取り、予め5mlの抽出緩衝液(B−CAL−EX、BUHLMANN Laboratories社(スイス、シェーネンブーフ))で満たされた抽出チャンバ内に正確に10mgの糞便を移送して、1:500の抽出率を得た。水様性(液状)の糞便試料の場合には、10μlの糞便を、抽出チャンバの開口に配置された漏斗を通して精密ピペットにより導入し、採取ピンをその閉位置内に押し込むことより該装置を閉じた。次に、装置を少なくとも10秒間を2回又は残りの全ての糞便が採取ピンの溝から除去されるまで激しく手振りしたか、装置を最大速度で30〜60秒間ボルテックスした。得られたホモジネートを30分間沈降させた。その後、上清及び/又はホモジネートの各分割量を、それぞれのカルプロテクチンELISAアッセイに用いた(実施例2参照)。
実施例2:カルプロテクチンアッセイ
明示的に言及されていない場合には、抽出された糞便試料中のカルプロテクチン濃度の評価には、BUHLMANNカルプロテクチンサンドイッチELISA(EK−CAL、BUHLMANN Laboratories社(スイス、シェーネンブーフ))を用いた。実施例3〜10で得られた糞便抽出物は、インキュベーション緩衝液(B−CAL−IB、BUHLMANN Laboratories社(スイス、シェーネンブーフ))を用いて1:5〜1:150の範囲にさらに希釈し、100μlの希釈糞便試料抽出物並びに100μlの予め希釈した標準物質及び対照を、高特異的抗カルプロテクチン抗体(B−CAL−MP、BUHLMANN Laboratories社(スイス、シェーネンブーフ))でコーティングしたマイクロタイタープレートのウェルに繰り返しピペット分注した。続いて、西洋ワサビペルオキシダーゼ(酵素標識B−CAL−EL、BUHLMANN Laboratories社(スイス、シェーネンブーフ))に結合した第2のモノクローナル抗カルプロテクチン抗体100μlを各ウェルに添加した後、マイクロタイタープレートを回転式振とう機(400〜600rpm)上にて環境温度(18〜28℃)で30分間インキュベートした。長期洗浄の後、100μlのTMB基質溶液(B−TMB12、BUHLMANN Laboratories社(スイス、シェーネンブーフ))を各ウェルに添加して、マイクロタイタープレートを回転式振とう機(400〜600rpm)上にて環境温度(18〜28℃)で15分間インキュベートした。停止溶液100μlを添加した後、各ウェルの吸光度をSpectraMax(登録商標)190マイクロタイタープレートリーダー(Molecular Devices社(アメリカ合衆国、カリフォルニア州サニーベール))にて450nmで測定した。キャリブレーターの吸光度(縦軸)をそれぞれのカルプロテクチン濃度(横軸)に対してプロットし、最も適合する標準曲線を4パラメーターロジスティックフィットを用いて描いた。対照及び抽出した糞便試料の吸光度を標準曲線と交わらせて、得られたカルプロテクチン濃度を横軸から読み取った。最後に、必要に応じてカルプロテクチンの濃度を異なる希釈率で補正した。それに応じて、異なるカルプロテクチンELISAを使用した。
実施例3:抽出プロセス中における希釈率1:50に対する希釈率1:500がカルプロテクチン収率に及ぼす効果
実施例1a)(抽出希釈1:50)又は実施例1b)(抽出希釈1:500)のいずれかに従って糞便試料33個を抽出し、実施例2に記載のBUHLMANNカルプロテクチンELISAにてアッセイを行った。結果を表1に示すと共に、図1にて図式的に示す。試料に対しておよそ300μg/gを超える、特に試料に対して1,000μg/gを超えるカルプロテクチン濃度を示す糞便試料は、1:50の抽出希釈のときと比較して、1:500の抽出希釈ではより高い値を示すことが明らかにわかる。
Figure 0006467436
続いて、試料に対して300μg/gより高いカルプロテクチン濃度の追加試料29個を、上記と同じ方法で試験した。結果を表2及び図3に示す。試験した全ての試料は、希釈率1:500を用いて抽出した際に、より高い濃度を示した。
Figure 0006467436
試料の抽出収率(EYR)は%で与えられ、以下の式に従って決定される:
EYR=1:500の希釈率を用いて抽出した試料の濃度/1:50の希釈率を用いて抽出した試料の濃度×100%
抽出収率は104〜670%の範囲であった。平均抽出収率は258%であった。この効果は液状(水様性)の試料から非常に硬い試料までにおいて報告され得るため、これらの結果は糞便試料の粘稠度とは無関係であった。1:500の抽出希釈と1:50の抽出希釈との差は統計的に非常に有意であり、p値は<0.0001を示した(Wilcoxon符号順位検定)。
実施例4:1:50から1:5,000までの段階的抽出希釈の効果(比較例)
実施例3の結果を解釈すると、1:50の抽出希釈にて、特に試料に対して約500μg/gを超えるカルプロテクチン濃度を含む糞便試料にとっては、抽出能力が制限されると考えられる。この仮説を試験するために、得られた1:50抽出物のホモジネートを、実施例1a)に記載の抽出ステップの後、即座に4つの分割量に分割した。これらの分割量のうち3つを、さらなる抽出緩衝液(B−CAL−EX、BUHLMANN Laboratories社(スイス、シェーネンブーフ))を用いて、さらに10倍、20倍及び100倍にそれぞれ希釈し、それによって1:500、1:1,000及び1:5,000の最終希釈をそれぞれ得た。希釈したホモジネートは、最大速度で1分間さらにボルテックスすることにより抽出した。希釈したホモジネートを少なくとも30分間沈降させた。その後、全てのホモジネートについて、実施例2に従うBUHLMANNカルプロテクチンELISAにてアッセイを行った。増加したカルプロテクチン濃度を有する糞便試料6個を試験し、その結果を表3に示す。試料に対して400μg/gを超える高蛋白濃度を含有する糞便からのカルプロテクチンは、1:50の抽出希釈では糞便基質から完全に抽出することができず、10〜100倍大きい容積の抽出緩衝液で再抽出させた際には、より高い抽出収率を示すことがわかる。
しかしながら、このような1:50の第1希釈並びに1:500,1:1,000及び1:5,000の第2希釈をそれぞれ用いた段階的抽出(表3参照)と、1:500,1:1,000及び1:5,000の直接希釈を1ステップで用いた抽出(実施例5、表4参照)とを比較すると、カルプロテクチン濃度は、1:500,1:1,000及び1:5,000の直接希釈を1ステップで用いた本発明の抽出にて有意に高いことが明らかにわかる。段階的抽出は、カルプロテクチンを糞便試料から完全に抽出するには十分でない。
Figure 0006467436
実施例5:抽出プロセス中の希釈率がカルプロテクチン収率に及ぼす影響
50倍、100倍、250倍、500倍、1,000倍、5,000倍の容量の抽出緩衝液(B−CAL−EX、BUHLMANN Laboratories社(スイス、シェーネンブーフ))を秤量した糞便に添加することにより、糞便試料4個を実施例1a)及び1b)に従って抽出した。1分間激しくボルテックスした後、各試料を30分間沈降させて、実施例2に記載のBUHLMANNカルプロテクチンELISAでアッセイを行った。表4に示す結果より、抽出希釈率が高いほどカルプロテクチンの平均抽出収率が高くなることがわかる。さらに、全ての試験において、カルプロテクチンの濃度は、1:50の希釈と比較して1:100〜1:5,000の範囲の希釈を用いたときにより高かったことが分かる。1:50の希釈を用いた抽出物は、糞便試料からカルプロテクチンを完全に抽出するには十分でない。最適な抽出希釈率は、1:250〜1:1,000あたりでピークとなる。
Figure 0006467436
実施例6:抽出緩衝液の比較
技術水準の文献より、1:2から1:80までの抽出希釈を採用した際には、抽出緩衝液の構成がカルプロテクチンの抽出収率に有意に影響し得ることが知られている(米国特許第5,455,160号、Ton(oはストローク付) et al.(Clinica Chimica Acta 292(2000)41-54)。したがって、3つの異なる最適化された市販の抽出緩衝液の影響を、各抽出緩衝液を有する1:50の抽出希釈と1:500の抽出希釈とを比較して用いて試験した。糞便試料6個を、「BL」抽出緩衝液(B−CAL−EX、BUHLMANN Laboratories社(スイス、シェーネンブーフ))、「ID」抽出緩衝液(EXBUF、Immundiagnostik社(ドイツ、ベンスハイム))及び「CL」抽出緩衝液(FEC EXTR BUF 2,5x、Calpro AS社(ノルウェー、リサーカー))を用い、実施例1a)に係る1:50の希釈及び実施例1b)に係る1:500の希釈をそれぞれ用いて抽出した。得られた全ての抽出物を、実施例2に記載したBUHLMANNカルプロテクチンELISAにてアッセイを行った。結果を表5に示す。測定されたカルプロテクチンレベルの絶対値は、3つの異なる抽出緩衝液について幾分差異はあったが、3つの最適化された抽出緩衝液のそれぞれについて、1:500の抽出率で抽出した場合には、1:50の抽出率に比べて抽出収率が有意に高かった(p<0.0001、Wilcoxon検定による)(図3も参照)。抽出収率の平均増加(234%〜249%の範囲)は、3つの抽出緩衝液の間で著しく似通っていた。このことは、糞便から抽出されたカルプロテクチンの高い抽出収率が、ほとんど1:500の高い抽出希釈率のみに依存していることを明確に示している。注目すべきは、「CL」抽出緩衝液(FEC EXTR BUF 2,5x、Calpro AS社(ノルウェー、リサーカー))は、欧州特許第0 937 259号、米国特許第5,455,160号及びTon(oはストローク付) et al.(Clinica Chimica Acta 292(2000)41-54)のそれぞれに記載されている最適化された緩衝液であり、糞便からカルプロテクチンを完全に抽出するには、それぞれ1:50及び1:80の抽出希釈率で全く十分であると述べられていることである。
Figure 0006467436
Figure 0006467436
実施例7:カルプロテクチンELISA法の比較/影響
糞便抽出物の全てが同じカルプロテクチンアッセイ、すなわち2つの高度に特異的なモノクローナル抗体のセットを用いるサンドイッチアッセイ技術に基づくBUHLMANNカルプロテクチンELISAにて測定されているため、実施例6で得られた結果は偏っていると主張され得る。そのため、「BL」抽出物及び「CL」抽出物について、別のELISAアッセイであるCalprolabs(商標)カルプロテクチンELISA(ALP)(Calpro AS社(ノルウェー、リサーカー))においても測定を行った。Calprolabs(商標)カルプロテクチンELISA(ALP)(Calpro AS社(ノルウェー、リサーカー))は、カルプロテクチンを捕捉するためのモノクローナル抗体及び結合したカルプロテクチンを検出するためのポリクローナル抗体を用いるサンドイッチアッセイ技術に基づくELISAアッセイである。測定されたカルプロテクチン濃度の絶対値は2つの抽出緩衝液でわずかに異なるが、Calprolabs(商標)ELISAでも、1:500の希釈を用いて抽出した場合には、1:50の希釈に比べて抽出収率が有意に高かった(p=0.0024、Wilcoxon検定による)(表6)。抽出収率の平均増加率は、BUHLMANN“BL”抽出緩衝液(B−CAL−EX、BUHLMANN Laboratories社(スイス、シェーネンブーフ))では177%、Calpro“CL”抽出緩衝液(FEC EXTR BUF 2,5x、Calpro AS社(ノルウェー、リサーカー))では224%であった。したがって、抽出希釈率1:500の糞便からのカルプロテクチンの抽出収率が高くなるという効果は、使用したELISAアッセイとは無関係であった。
実施例6及び7の結果を回帰分析によりまとめて、図3に示す。回帰直線(破線)の傾きから、糞便試料を1:500の希釈で抽出した場合には、1:50の希釈に比べてカルプロテクチンの抽出収率が平均して約200%高いことが読み取れる。このグラフはまた、1:500の糞便抽出物のほぼ全てが均等直線(太い実線)より上にあることが読み取られることを示しており、これもまた1:500抽出希釈の優れた性能を示すものである。
実施例8:直接的な1:500抽出方法を提供するCALEX(商標)装置
直接的な1:500の抽出率を用いた簡単、適切かつ信頼性があると共に衛生的な糞便の採取法及び抽出法を獲得するために、CALEX(商標)Cap及びCALEX(商標)Valve装置が開発された(BUHLMANN Laboratories社(スイス、シェーネンブーフ))。これらの装置は、それぞれのカルプロテクチンアッセイ、すなわちBUHLMANNカルプロテクチンELISA(EK−CAL、BUHLMANN Laboratories社(スイス、シェーネンブーフ))のための最終均質化糞便抽出物を使用する前における、秤量ステップ又はピペット分注ステップのいずれについても必要としない。
実施例1c)に記載され、説明したように用いられるCALEX(商標)Cap装置のパフォーマンスを、実施例1b)に係る糞便試料調製キット(製品番号10745804、Roche Diagnostics社(マンハイム))を用いて、定量的な「参照」秤量手順と比較した。CALEX(商標) Cap装置の採取ピンの投与先端を、糞便試料内の異なる場所に5回導入して、投与先端の溝内に十分な糞便物質を収集した。次に、採取ピンを、CALEX(商標) Cap装置の横隔壁に備えられた漏斗を通して抽出チャンバ内に再度導入し、それによって余分な糞便物質を採取ピンの投与先端から剥ぎ取り、5mlの抽出緩衝液(B−CAL−EX、BUHLMANN Laboratories社(スイス、シェーネンブーフ))で満たされた抽出チャンバ内に正確に10±1mgの糞便を導入した。続いて、CALEX(商標)装置を最大速度で30秒間ボルテックスし、30分間放置し、再び最大速度で30秒間ボルテックスした。その後、均質化された糞便抽出物を周囲温度(約23℃)で1時間沈降させて、最後にBUHLMANNカルプロテクチンELISAでアッセイを行った。「参照」手順では、40種類の異なる糞便試料8〜12mgを、Roche装置(製品番号10745804、Roche Diagnostics社(マンハイム))のベースキャップの試料チャンバ内に秤量した。次に、抽出チューブの本体を、満たされたベースキャップ上に押し付けて、4〜6mlの抽出緩衝液(B−CAL−EX、BUHLMANN Laboratories社(スイス、シェーネンブーフ))を添加した。続いて、Rocheチューブをキャップし、最大速度で1分間ボルテックスして、周囲温度(約23℃)で1時間沈降させ、最後に、40個の糞便抽出物と同一の操作中において、CALEX(商標)Cap装置によりBUHLMANNカルプロテクチンELISAでアッセイを行った。比較データを図4に示す。2つの収集及び抽出の方法と装置との間にはそれぞれ、正確度(傾きy=0.9636x)及び精度/信頼性(R2=0.9417)のいずれにおいても、有意な差は見られなかった。
実施例9:液状(水様性)の糞便の取り扱い及びパフォーマンス
液状の糞便は、CALEX(商標)装置(実施例1c)及び8参照)又は同一若しくは類似の試料収集原理を用いた他の技術水準の装置における投与先端では容易に収集できないため、取り扱いが非常に難しい。このことは、Whitehead et al.によっても観測されている(Ann. Clin. Biochem. 50(2013)53-61の58頁、図3における液状試料5)。
この例では、液状(水様性)の糞便試料における低いパフォーマンス(特に、大幅に減少した抽出収率)の問題を回避するための非常にシンプルかつ信頼性のある方法を提供する。精密ピペットを用いて、正確に10μlの水様性の糞便を、漏斗を通して5mlの抽出緩衝液(B−CAL−EX、BUHLMANN Laboratories社(スイス、シェーネンブーフ))で予め満たされたCALEX(商標)Cap装置の抽出チャンバ内にピペット分注することにより、1:500(v/v)の抽出希釈とした。次に、CALEX(商標)装置を採取ピンで閉じて、実施例1c)に記載されるようにして処理した。あるいは、水様性の糞便試料5個の小部分(約5〜15mg)を、小さなスプーンを用いて予め秤量したTPPプラスチック遠心分離管(Techno Plastic Products社(スイス、トラザーディンゲン))内に移送し、糞便試料の正味重量を精密天秤により測定した。続いて、500倍量の抽出緩衝液(B−CAL−EX、BUHLMANN Laboratories社(スイス、シェーネンブーフ))を添加し、TTP管を密閉して、抽出物を実施例1b)及び8に記載されるようにして処理することにより、1:500(w/v)の抽出希釈とした。両方の方法によって得られた糞便抽出物のカルプロテクチン濃度を、BUHLMANNカルプロテクチンELISAで測定した。その後、両方の方法におけるアプローチについて、3重の抽出におけるカルプロテクチン抽出収率及び変動性(CV、変動係数)を比較し、表7に示す。
半液状の試料については、「CALEX(商標)ピペット分注」法の方が高い抽出収率を示す一方、液状の試料については、秤量法の方が若干高い抽出収率を示すことがわかる。
しかしながら、緩衝化水性抽出媒体中における試料の1:500(w/v又はv/v)希釈を用いた両方法は、特に、技術水準の文献(例えば、Whitehead et al., Ann. Clin. Biochem. 50(2013)53-61)にて報告されているような、たったの約5%といった遥かに低い抽出収率を示す他の抽出ツールと比較して、許容可能な抽出収率を提供する。同じ糞便試料の抽出物間の変動性(CV)は、「CALEX(商標)ピペット分注」法を用いたときに高くなるが、依然として許容可能である。このことは、水様性の糞便試料には多くの液体に加えて小さな固体部分も含まれているというような、水様性の糞便試料の不均一な性質によるものである。これらの小さな固体部分は、液体部分よりもずっと多くのカルプロテクチンを含む。液体部分は、通常、水様性の糞便試料の全カルプロテクチンの10%未満しか含有していない(データは示さない)。そのため、液状(水様性)の糞便試料をそのピペット分注前又はピペット分注中によく混合することは非常に重要だが、時にはそれほど簡単ではない。
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実施例10:1:50の抽出物と1:500の抽出物との安定性の比較
ほとんどの場合、糞便抽出物は、試験所では即座に分析されない。まず試料を患者の家庭又は医院から試験所まで輸送する必要があり、又は、試験所は糞便試料抽出物をバッチ式、すなわち週1回分析するためである。そのため、本発明者らは、冷蔵庫(2〜8℃)及び「室温」より少し高い温度(すなわち、28℃)の際の糞便抽出物の安定性についても試験した。糞便試料39個を、実施例1a)に従って1:50、及び、実施例1b)に従って1:500で抽出した後、2〜8℃又は28℃のいずれかにて1、2、3及び6日間インキュベートした。対応するインキュベートの後、実施例2に従うBUHLMANNカルプロテクチンELISAにて試験した。驚くべきことに、本発明者らは、糞便抽出物が、1:500の抽出希釈を用いて(すなわち、実施例1c)及び8によるCALEX(商標)装置を用いて)抽出及び保存した場合には、技術水準における従来の装置を用いた1:50の抽出希釈に比べて遥かに安定であり、特に高温において遥かに安定であることを見出した。表8a及び8bにまとめた結果において示されるように、1:500の希釈率で抽出された糞便試料は、両方の温度において6日間まで完全に安定であったのに対して、1:50の希釈率で抽出された糞便試料では、時間と共に徐々に劣化していくところが見られた。より詳細には、本発明者らは、1:500の希釈にて抽出して6日間まで保存した場合(表8a参照)には、最大3個及び4個の糞便抽出物がそれぞれ2〜8℃及び28℃において完全には安定でなかったのに対し、1:50の希釈にて抽出して6日間まで保存した場合(表8b参照)には、最大16個及び23個の糞便抽出物がそれぞれ2〜8℃及び28℃の温度範囲において安定ではなかった。本実施例の文脈における「不安定性」の基準は、カルプロテクチンの回収率が時間0(t0)と比較して80%未満ということである。すべての不安定な試料は、表8a及び8bにおいて、斑模様の背景によって表されている。
技術水準にて適用されるような1:50の抽出希釈を用いると、抽出した蛋白を2℃〜8℃の温度範囲に保持する際には、24時間後〜6日後に蛋白は平均して2%〜13%の範囲で分解され、抽出した蛋白を28℃の温度に保持する際には、24時間後〜6日後に蛋白は平均して6%〜26%の範囲で分解される。1:500の抽出希釈では、分解は見られない。平均安定性係数は、平均回収率についてt0と比較して計算した場合、1.134〜1.676の範囲である。
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本発明は、GI管試料中の蛋白についての、シンプル、高感度かつ特異的な測定ツールを提供する。このGI管試料中における蛋白、例えば、カルプロテクチン、エラスターゼ又はヘモグロビンの測定によれば、技術水準の方法を用いた測定に比べて、より正確かつ再現性のある結果が得られる。測定される濃度は、特に高レベルの蛋白を含有するGI管試料中では、有意に高くなる。したがって、本蛋白測定により、消化器管の炎症を患った患者の治療経過観察中において特に重要なより正確なレベルが得られる。また、本発明によれば、より安定な蛋白抽出物も得られ、これによって、効果、貯蔵条件(冷却チェーン不要)及び輸送時間(速達便不要)の点で、患者による試料採取及び患者から医院又は試験所への輸送が簡素化される。

Claims (13)

  1. ヒト又は動物から採取した消化管(GI管)試料中の蛋白の濃度を測定する方法であって、
    a)前記試料を収集するステップと、
    b)ステップa)の試料を、所定の量の緩衝化水性抽出媒体と混合するステップと、
    c)ステップb)の混合物を均質化するステップと、
    d)ステップc)で得られた混合物を用いて免疫アッセイを行うステップと、
    e)前記タンパク質の濃度を測定するステップとを含んでおり、
    ステップb)において、前記緩衝化水性抽出媒体中における前記試料の1:250〜1:1,000の範囲の希釈が得られ、
    前記蛋白は、カルプロテクチン(カルグラニュリンA/B、S100A8/A9、MIF関連蛋白8/14)である、方法。
  2. 前記GI管試料は、水様性のGI管試料又は非水様性のGI管試料である、請求項1に記載の方法。
  3. 前記蛋白は、水様性のGI管試料の場合には、前記試料に対して1ng/ml〜100mg/mlの濃度範囲で、又は、非水様性のGI管試料の場合には、前記試料に対して1ng/g〜100mg/gの濃度範囲で、GI管試料中に存在する、請求項1又は2に記載の方法。
  4. 前記蛋白の安定性係数は、1.001〜15の範囲である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
  5. 前記緩衝化水性抽出媒体中の前記蛋白は、2〜42℃の温度範囲で1〜28日の期間において安定である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
  6. 前記試料中における前記蛋白の濃度は、非水様性のGI管試料の場合には、前記試料に対して300μg/gより高く、水様性のGI管試料の場合には、前記試料に対して300μg/mlより高い、請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
  7. 前記消化管試料は糞便である、請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
  8. ステップb)において、1:450〜1:550の範囲の希釈が得られる、請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。
  9. 前記動物は、イヌ、ネコ、サル、ウシ、ブタ、ウマ、ラット又はマウスである、請求項1〜8のいずれか1項に記載の方法。
  10. ステップa)において、1〜1,000mgの前記試料が収集される、請求項1〜9のいずれか1項に記載の方法。
  11. ステップa)において、2〜100mgの前記試料が収集される、請求項10に記載の方法。
  12. ステップd)における前記免疫アッセイは、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)、免疫濁度アッセイ、免疫クロマトグラフィー(ラテラルフロー)アッセイ及びフローサイトメトリーアッセイを含む群から選択される、請求項1〜11のいずれか1項に記載の方法。
  13. ステップe)における前記測定は、視覚的に行われる、又は、反射測定法、吸光度、蛍光、化学発光、電気化学発光、UV/VIS分光法、電流測定法、磁気測定法、ボルタンメトリー、電位差測定法、導電率測定法、電量測定法、ポーラログラフィー及び電解重量測定法を含む群から選択される方法によって行われる、請求項1〜12のいずれか1項に記載の方法。
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