JP6467357B2 - 波長可変光フィルタ - Google Patents

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本発明は波長可変光フィルタに関し、詳細には、応答速度が数n秒の高速な波長可変光フィルタに関する。
狭帯域の高速波長可変光フィルタは、近年、多様な分野でその実現が望まれている。例えば、通信分野においては、現在、光通信システムの大容量化、高速化及び高機能化に加え、各家庭にまで光ファイバが導入されるなど、アクセス系ネットワークにも光通信が適用されるようになってきた。今後さらに、ネットワークの高機能性が求められ、波長の有効利用が進展すると期待されている。
高密度波長多重通信では、極めて短い波長間隔で複数の波長が異なる光を多重化し、1つの導波路で伝送することによって通信容量の増大を図っている。送信側では、例えば、0.8nmといった極めて短い間隔で、複数の波長が異なる光が数十nm程度の範囲にわたって多重化され、これにより、複数の信号が高密度に送信される。それに対応して受信側では、これら複数の波長が異なる光から所定の波長を有する光のみを受信することによって必要な信号を取り出す。
このように高い密度で送られてくる信号から特定の信号だけを精度よく得るためには、透過帯域を十分に確保し、且つ隣接チャンネルとのクロストークが十分小さいような急峻なスペクトルを有する光フィルタを用いなければならない。このような光フィルタは、波長が異なる多くの光が伝送されるネットワークから所望の波長を有する光のみを取り出す場合に限らず、複数の光を多重化する場合、特定の波長を有する光の送信状況を監視する場合などにおいても欠くことはできない。さらに、高速に特定の波長をフィルタリングし、切り替えることができれば、より大容量で高速なネットワークを実現することができる。
また、非通信分野においては、例えば、光を用いた可視化技術が複数開発されている。低コヒーレンス干渉を利用して生体や電子デバイス等の断面を非破壊に観測する光コヒーレンストモグラフィー(OCT)は、表面より深さ方向に数mmの範囲で細胞レベルの数十μm程度の分解能を有し、高い解像度の高品質な画像を得ることができる。OCT像を得る方式としては、TD−OCT(Time domain optical coherence tomography)とSD−OCT(Spectral domain optical coherence tomography)が知られている。
TD−OCT方式しては、光源としてとしてSLD(Superluminescent Light Emitting Diode)を用いて観測対象の表面に2次元照射し面内の情報を取り出し、奥行方向にさらにスキャンして3次元情報を得る方式が一般的である。
一方、SD−OCTとしては、高速波長掃引光源を用い奥行方向の情報を得て、残りの2軸方向にスキャンすることによって3次元画像を得ることができる。近年数百kHz以上の高速波長掃引光源技術が急速に発展したため、画像取得スピードの観点からSD−OCTを用いた方式が優勢である。用いられる高速波長掃引光源の構成としては、ブロード光源の波長を高速にフィルタリングする構成が典型的であるが、そこでも急峻にフィルタリングするより高速な波長可変光フィルタが求められている。
Kenji Uchino, et.al., "Anomalous Temperature Dependence of Electrostrictive Coefficient in KTN,"J. of Physical Society of Japan, Vol.51, No.10, October 1982, p.3242-3244
これまで、波長可変光フィルタとして、回折格子型フィルタ、ファブリペローエタロン型フィルタ、干渉型フィルタ、及び音響光学型フィルタなどが提案されている。これら従来のフィルタは、その原理は個々には異なるが、いずれにしても機械的にある部分の長さを変化させる、入射光に対する角度を変える、温度を変えることにより波長を変えるため、基本的にm秒領域の可変速度が限界であるという課題がある。
本発明はこのような事情に鑑みなされたものであって、その目的とするところは、電気光学結晶の端面と光学透明材料に形成された反射膜との間にエアギャップエタロンを構成し、電気光学結晶に電圧を印加することでエアギャップを変化させて、応答速度が数μ秒以下の高速波長可変光フィルタを実現することにある。
上記の課題を解決するために、本発明は、波長可変光フィルタであって、電気光学結晶と、前記電気光学結晶の対向する第1および第2の面に形成した少なくとも2つの電極と、前記電気光学結晶と縦列に配置された光学透明材料と、前記電気光学結晶の前記光学透明材料と対向する側の第3の面に形成した第1の反射膜と、前記光学透明材料の前記電気光学結晶と対向する側の第1の面に形成された第2の反射膜と、前記電気光学結晶に接し、正方晶への相転移温度に近い温度領域となるように前記電気光学結晶を温度調整する温度調整手段と、を備え、前記電気光学結晶は、タンタル酸ニオブ酸カリウム(KTa 1-x Nb x 3 (0<x<1))結晶、またはリチウムを添加したK 1-y Li y Ta 1-x Nb x 3 (0<x<1、0<y<1)結晶のいずれかであり、前記第1の反射膜と前記第2の反射膜との間にエアギャップエタロンを形成し、前記電気光学結晶の前記電極間に電圧を印加することにより、前記エアギャップエタロンのギャップ長を変化さることを特徴とする。
請求項に記載の発明は、請求項に記載の波長可変光フィルタにおいて、前記電気光学結晶の第3の面と対向する第4の面と前記光学透明材料の第1の面との距離は固定されていることを特徴とする。
請求項に記載の発明は、請求項に記載の波長可変光フィルタにおいて、前記電気光学結晶の第4の面に固定された第1の固定部材と、前記光学透明材料に固定された第2の固定部材と、を備え、前記第1の固定部材と前記第2の固定部材とが前記温度調整手段に固定されていることを特徴とする。
請求項に記載の発明は、請求項1乃至のいずれか一項に記載の波長可変光フィルタにおいて、前記電気光学結晶に接する前記温度調整手段はペルチェ素子であり、前記ペルチェ素子を用いて、前記電気光学結晶の比誘電率を所望の値になるよう温度調整することを特徴とする。
本発明によれば、電気光学結晶における電歪効果の高速応答を利用することで、応答速度が数μ秒以下の高速波長可変光フィルタを実現することが可能となる。
KTN結晶にDC電圧を印加した時の変位の様子を示す図である。 本発明の一実施形態に係るKTN結晶と光学透明材を用いたエアギャップエタロンの構成を示す図である。 本発明の実施形態1に係るKTN結晶と光学透明材からなる温調機能を備えたエアギャップエタロンの構成を示す図である。
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。
本発明の波長可変光フィルタは、タンタル酸ニオブ酸カリウム(KTa1-xNbx3(0<x<1))結晶、またはリチウムを添加したK1-yLiyTa1-xNbx3(0<x<1、0<y<1)結晶の電気光学結晶を備えたファブリペローエタロン型フィルタである。KTN結晶およびKLTN結晶は、温度の上昇とともに正方晶から立方晶へと結晶系を変え、立方晶において、大きい2次の電気光学効果を有する。特に、正方晶への相転移温度に近い温度領域では、比誘電率が発散する現象が起こり、比誘電率の2乗に比例する2次の電気光学効果はきわめて大きく発揮され、KTN結晶およびKLTN結晶の電圧印加に対する応答速度は、数n秒程度である。

非特許文献1によれば、電歪係数をQ、分極をP、電界をE、真空の誘電率をε0、比誘電率をεrとすると、歪xは下式で表される。
例えば、KTN結晶の正負電極間の厚み1mm、比誘電率εr=30000とし、正負電極間に400Vの電圧を印加すると、結晶内に400V/mmの一様な電界が発生する。このとき、KTN結晶は、長手方向(x方向)に1.1μm伸びることになる。図1にその様子を示す。電歪係数が、Q11とQ12で符号が異なるためz方向に電界を印加した時、x方向に結晶は伸びるがy方向は結晶が縮むという性質を示す。
ところで、ファブリペローエタロンは、その構成によりソリッドエタロンとエアギャップエタロンに大別される。ソリッドエタロンは部材の対向する端面を反射面とするものであり、エアギャップエタロンは空気層を介して対向する反射面からなるものである。エタロンは、対向した反射面間の干渉効果により特定の波長が強められ、その強められた波長のみが透過することで波長フィルタとして機能する。その特性は通常FSR(Free Spectral Range)とF(Finesse)により特定することができる。FはFSRと半値全幅(FWHM:Full width at Half Maximum)の比で表され、Fは主に反射率により決定される。両端の反射率が等しいとして反射率をRとおき、屈折率をnとすると、次の関係式が示される。
ここで、エアギャップdの場合はn=1となる。例えば、FSRとして100nmを実現したい場合は、波長1.0μmにおいてd=5μmとなる。Rとして0.99の反射率を採用すると、Fとして312を有するフィルタが実現でき、そのFWHMは0.32nmとなる。また、式(3)の微分をとると、
となることから、波長1.0μmにおいてギャップを1μm変位させることで中心波長を100nm変化させることができるので、広帯域の波長可変光フィルタを実現することができる。
図2に、本発明の一実施形態に係るKTN結晶と光学透明材を用いたエアギャップエタロンの構成を示す。KTN結晶101は、正負電極102A、102B間のz方向の厚み1mm、x方向の長さ4mmで比誘電率εr=30000である。正負電極102A、102B間に400Vの電圧を印加すると、結晶内に400V/mmの一様な電界が発生し、このときKTN結晶101は、長手方向(x方向)に約1μm伸びる。図2に示すように、KTN結晶101と光学透明材料103(たとえば石英基板)を用いてエアギャップエタロンを形成することで、実用的な範囲内で、広帯域の波長可変光フィルタを実現できる。
尚、KTN結晶101と光学透明材料103とは、電圧印加に応じてエアギャップdが伸縮するよう、エアギャップエタロンを構成するKTN結晶101の端面と対向する端面から、エアギャップエタロンを構成する光学透明材料103の端面までの距離lが固定されている。
(実施形態1)
図3に、実施形態1に係るKTN結晶と光学透明材からなる温調機能を備えたエアギャップエタロンの構成を示す。KTN結晶101の正負電極102A、102B間のz方向の厚み1mm、x方向の長さ4mm、幅3mmの結晶を用いた。この時の電極102A、102Bの材料としては、Pt/Auを用いた。また、KTN結晶101の片端に1.3μmを中心に約100nmの帯域において、反射率が約99%になるように誘電多層膜104Aを形成した。さらに、石英基板などの光学透明材料103の片端にKTN結晶101と同様に1.3μmを中心に150nmの帯域において、反射率が約99%になるように誘電多層膜104Bを形成した。
また、図3に示すように、固定部材105Aおよび固定部材105Bを介して、KTN結晶101および光学透明材103をペルチェ素子107に固定して、エアギャップdが5μmとなるようにした。尚、KTN結晶101は、x方向に伸縮可能なように、固定部材105Aにのみ固定されている。
また、ペルチェ素子107を用いて、KTN結晶101が収まる箱(又は蓋)106ごと温調して、KTN結晶101の比誘電率が約30000となるように温度設定する。
ここで、電極102A、102B間に、周波数200kHzで400Vの振幅の電圧を印加することによって、1.3μmを中心に帯域100nmで応答速度が5μ秒の高速波長可変光フィルタを実現した。尚、本実施形態では、KTN結晶101を用いたが、上述したようにKLTN結晶を用いても同様の効果が得られる。
また、KTN結晶、KLTN結晶の電圧印加に対する応答速度は数n秒なので、さらなる高速化が可能である。
101 KTN結晶
102 電極
103 光学透明材料
104 誘電多層膜
105 固定部材
106 箱(又は蓋)
107 ペルチェ素子

Claims (4)

  1. 電気光学結晶と、
    前記電気光学結晶の対向する第1および第2の面に形成した少なくとも2つの電極と、
    前記電気光学結晶と縦列に配置された光学透明材料と、
    前記電気光学結晶の前記光学透明材料と対向する側の第3の面に形成した第1の反射膜と、
    前記光学透明材料の前記電気光学結晶と対向する側の第1の面に形成された第2の反射膜と、
    前記電気光学結晶に接し、正方晶への相転移温度に近い温度領域となるように前記電気光学結晶を温度調整する温度調整手段と、
    を備え、
    前記電気光学結晶は、タンタル酸ニオブ酸カリウム(KTa 1-x Nb x 3 (0<x<1))結晶、またはリチウムを添加したK 1-y Li y Ta 1-x Nb x 3 (0<x<1、0<y<1)結晶のいずれかであり、
    前記第1の反射膜と前記第2の反射膜との間にエアギャップエタロンを形成し、前記電気光学結晶の前記電極間に電圧を印加することにより、前記エアギャップエタロンのギャップ長を変化さることを特徴とする波長可変光フィルタ。
  2. 前記電気光学結晶の第3の面と対向する第4の面と前記光学透明材料の第1の面との距離は固定されていることを特徴とする請求項に記載の波長可変光フィルタ。
  3. 前記電気光学結晶の第4の面に固定された第1の固定部材と、
    前記光学透明材料に固定された第2の固定部材と、
    を備え、前記第1の固定部材と前記第2の固定部材とが前記温度調整手段に固定されていることを特徴とする請求項に記載の波長可変光フィルタ。
  4. 前記電気光学結晶に接する前記温度調整手段はペルチェ素子であり、前記ペルチェ素子を用いて、前記電気光学結晶の比誘電率を所望の値になるよう温度調整することを特徴とする請求項1乃至のいずれか一項に記載の波長可変光フィルタ。
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