JP6465927B2 - 芳香族陽イオン性ペプチドおよびその使用方法 - Google Patents

芳香族陽イオン性ペプチドおよびその使用方法 Download PDF

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Description

(関連出願の相互参照)
本出願は、米国特許仮出願61/540,910(2011年9月29日出願)、米国特出願61/596,455(2012年2月8日出願)、米国特許仮出願61/558,177(2011年11月10日出願)、米国特許仮出願61/642,282(2012年5月3日出願)および米国特許仮出願61/681,444(2012年8月9日出願)(これらの記載内容は各々、参照により本明細書中で援用される)に対する利益および優先権を主張する。
(技術分野)
本発明の技法は、一般的に、腎虚血/再灌流組織損傷を防止するかまたは治療する組成物および方法に関する。特に、本発明の技法の実施形態は、腎動脈狭窄の治療における腎動脈開存性の回復に関連した虚血/再還流損傷を防止するかまたは治療するために、ならびにアテローム硬化性腎血管性疾患(ARVD)の長期治療のために、芳香族陽イオン性ペプチドを有効量で投与することに関する。
以下の説明は、読者の理解を手助けするために提供される。提供される情報または引用される参考文献はいずれも従来技術であるとは認められない。
アテローム硬化症によりもっとも一般的に引き起こされる腎動脈狭窄(RAS)は、65歳より上の成人ではほぼ7%の発生率を有する。アテローム硬化性RASまたは(ARVD)を有する患者は、しばしば高血圧症または腎血管性高血圧症を発症し、これが、冠動脈疾患、卒中、末梢血管性疾患および末期腎臓疾患への進行に関する危険を増大する。さらに、腎機能における疾患は、それ自体、心臓血管性罹患率および死亡率増大に関連する。
アテローム硬化性腎動脈狭窄(ARAS)を治療するに際して、直接的治療目標は腎動脈に対する開存性を回復することである。しばしば、経皮経血管性腎臓血管形成術(PTRA)は、推奨治療過程である。しかしながら、腎動脈開存性の上首尾の回復は、必ずしも組織還流の回復に言い換えられない。腎臓微小血管系の粗鬆化(rarefaction)および再灌流損傷は、腎臓還流低減および長期腎機能不全を引き起こし得る。これらの作用を低減する方法は、PTRA療法を受けている患者およびARVDを有する患者に関する長期予後を改善する。
本発明の技法は、それを必要とする被験体への、治療的有効量の芳香族陽イオン性ペプチド、例えばD-Arg-2’,6’-Dmt-Lys-Phe-NH2またはその製薬上許容可能な塩、例えば酢酸塩またはトリフルオロ酢酸塩の投与による、哺乳動物における腎虚血-再還流損傷およびARVDの治療または防止に関する。いくつかの実施形態では、本発明の技法は、腎臓微小血管系粗鬆化の治療または防止において有用な方法に関する。いくつかの態様では、本発明の技法は、それを必要とする被験体への、治療的有効量の芳香族陽イオン性ペプチド、例えばD-Arg-2’,6’-Dmt-Lys-Phe-NH2またはその製薬上許容可能な塩、例えば酢酸塩またはトリフルオロ酢酸塩の投与による、ARVDを有する被験体の長期治療に関する。
いくつかの態様では、本開示は、腎虚血/再還流損傷、腎臓微小血管系粗鬆化および/またはアテローム硬化性腎血管性疾患(ARVD)の長期治療を治療するかまたは防止する方法であって、それを必要とする被験体に、治療的有効量の芳香族陽イオン性ペプチドまたはその製薬上許容可能な塩、例えば酢酸塩またはトリフルオロ酢酸塩を投与する方法を提供する。いくつかの実施形態では、当該方法はさらに、被験体に関して血管再生を実施することを包含する。いくつかの実施形態では、芳香族陽イオン性ペプチドは、以下の:
少なくとも1つの正味正電荷;
最低4個のアミノ酸;
最大約20個のアミノ酸;
正味正電荷の最小数(pm)とアミノ酸残基の総数(r)との間の関係(この場合、3pmはr+1以下である最大数である);ならびに芳香族基(a)の最小数と正味正電荷の総数(pt)との間の関係(この場合、2aは、pt+1以下である最大数である。但し、ptは1でもあり得る)
を有するペプチドである。特定の実施形態では、被験体はヒトである。
いくつかの実施形態では、2pmは、r+1以下である最大数であり、ptと等しいこともある。芳香族陽イオン性ペプチドは、最低で2または最低で3の正電荷を有する水溶性ペプチドであり得る。いくつかの実施形態では、ペプチドは、1つ以上の非天然アミノ酸、例えば1つ以上のD-アミノ酸を含む。いくつかの実施形態では、C末端でのアミノ酸のC末端カルボキシル基はアミド化される。ある実施形態では、ペプチドは、最低4個のアミノ酸を有する。ペプチドは、最大で約6、最大で約9または最大で約12個のアミノ酸を有し得る。
いくつかの実施形態では、ペプチドは、N末端にチロシンまたは2’,6’-ジメチルチロシン(Dmt)残基を含む。例えば、ペプチドは、式Tyr-D-Arg-Phe-Lys-NH2または2’,6’-Dmt-D-Arg-Phe-Lys-NH2を有し得る。別の実施形態では、ペプチドは、N末端にフェニルアラニンまたは2’,6’-ジメチルフェニルアラニン残基を含む。例えば、ペプチドは、式Phe-D-Arg-Phe-Lys-NH2または2’,6’-Dmp-D-Arg-Phe-Lys-NH2を有し得る。特定の実施形態では、芳香族性陽イオン性ペプチドは、式D-Arg-2’,6’-Dmt-Lys-Phe-NH2またはその製薬上許容可能な塩、例えば酢酸塩またはトリフルオロ酢酸塩を有する。
一実施形態では、ペプチドは、式I:
(式中、R1およびR2は、各々独立して、以下の:
(i)水素;
(ii)線状または分枝鎖C1〜C6アルキル;
(iii)
から選択され;
3およびR4、各々独立して、以下の:
(i)水素;
(ii)線状または分枝鎖C1〜C6アルキル
(iii)C1〜C6アルコキシ;
(iv)アミノ
(v)C1〜C4アルキルアミノ;
(vi)C1〜C4ジアルキルアミノ;
(vii)ニトロ;
(viii)ヒドロキシル;
(ix)ハロゲン(ここで、「ハロゲン」は、クロロ、フルオロ、ブロモおよびヨードを包含する)
から選択され;
5、R6、R7、R8およびR9は、各々独立して、以下の:
(i)水素;
(ii)線状または分枝鎖C1〜C6アルキル
(iii)C1〜C6アルコキシ;
(iv)アミノ
(v)C1〜C4アルキルアミノ;
(vi)C1〜C4ジアルキルアミノ;
(vii)ニトロ;
(viii)ヒドロキシル;
(ix)ハロゲン(ここで、「ハロゲン」は、クロロ、フルオロ、ブロモおよびヨードを包含する)
から選択され;
nは、1〜5の整数である)
により定義される。
特定の実施形態では、R1およびR2は水素であり;R3およびR4はメチルであり;
5、R6、R7、R8およびR9はすべて水素であり;そしてnは4である。
一実施形態では、ペプチドは、式II:
(式中、R1およびR2は、各々独立して、以下の:
(i)水素;
(ii)線状または分枝鎖C1〜C6アルキル;
(iii)
から選択され;
3、R4、R5、R6、R7、R8、R9、R10、R11およびR12は、
各々独立して、以下の:
(i)水素;
(ii)線状または分枝鎖C1〜C6アルキル
(iii)C1〜C6アルコキシ;
(iv)アミノ
(v)C1〜C4アルキルアミノ;
(vi)C1〜C4ジアルキルアミノ;
(vii)ニトロ;
(viii)ヒドロキシル;
(ix)ハロゲン(ここで、「ハロゲン」は、クロロ、フルオロ、ブロモおよびヨードを包含する)
から選択され;
nは、1〜5の整数である)
により定義される。
特定の実施形態では、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9、R10、R11およびR12はすべて水素であり、そしてnは4である。別の実施形態では、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9およびR11はすべて水素であり、R8およびR12はメチルであり、R10はヒドロキシルであり、そしてnは4である。
芳香族陽イオン性ペプチドは、種々の方法で投与され得る。いくつかの実施形態では、ペプチドは、経口的に、局所的に、鼻内に、腹腔内に、静脈内に、皮下に、または経皮的に(イオン導入法により)投与され得る。いくつかの実施形態では、芳香族陽イオン性ペプチドは、動脈内経路により投与される。
一態様において、本発明の開示は、それを必要とする被験体におけるアテローム硬化性腎動脈狭窄の治療方法であって、治療的有効量のペプチドD-Arg-2’,6’-Dmt-Lys-Phe-NH2またはその製薬上許容可能な塩を前記被験体に投与することを包含する方法を提供する。
いくつかの実施形態では、当該方法は、前記被験体に関して血管再生術(revascularization procedure)を実施する工程をさらに包含する。いくつかの実施形態では、血管再生術は、経皮経血管性腎臓血管形成術からなる。いくつかの実施形態では、アテローム硬化性腎動脈狭窄は、前記被験体の腎臓微小血管系の崩壊または閉塞を含む。いくつかの実施形態では、被験体は、腎臓微小血管系粗鬆化の危険があるがまたはそれに罹患している。いくつかの実施形態では、被験体は、腎臓微小血管系粗鬆化の開始前に前記ペプチドを投与される。
いくつかの実施形態では、被験体は、血管再生術前、血管再生術後、血管手法の最中および後、あるいは血管再生の前、最中および後に連続的に、ペプチドを投与される。
いくつかの実施形態では、被験体は、血管再生術後少なくとも3時間、血管再生術後少なくとも5時間、血管再生術後少なくとも8時間、血管再生術後少なくとも12時間、または血管再生術後少なくとも24時間ペプチドを投与される。
いくつかの実施形態では、被験体は、血管再生術の少なくとも8時間前に開始して、血管再生術の少なくとも4時間前に開始して、血管再生術の少なくとも2時間前に開始して、血管再生術の少なくとも1時間前に開始して、または血管再生術の少なくとも10分前に開始して、ペプチドを投与される。
いくつかの実施形態では、血管再生術は腎動脈閉塞の除去からなる。いくつかの実施形態では、血管再生術は1つ以上の血栓溶解薬の投与からなる。いくつかの実施形態では、1つ以上の血栓溶解薬は、組織プラスミノーゲン活性化因子、ウロキナーゼ、プロウロキナーゼ、ストレプトキナーゼ、アシル化型のプラスミノーゲン、アシル化型のプラスミンおよびアシル化ストレプトキナーゼ-プラスミノーゲン複合体からなる群から選択される。
別の態様では、本発明の開示は、それを必要とする被験体におけるアテローム硬化性腎動脈狭窄の治療方法であって、前記被験体に関して経皮経血管性腎臓血管形成術を実施すること、そして治療的有効量のペプチドD-Arg-2’,6’-Dmt-Lys-Phe-NH2またはその製薬上許容可能な塩を前記被験体に投与することを包含する方法を提供する。
いくつかの実施形態では、前記被験体は、腎臓微小血管系粗鬆化の危険があるがまたはそれに罹患している。いくつかの実施形態では、被験体は、腎臓微小血管系粗鬆化の開始前に前記ペプチドを投与される。
いくつかの実施形態では、被験体は、血管再生術前、血管再生術後、血管再生術の最中および後、あるいは血管再生の前、最中および後に連続的に、ペプチドを投与される。
いくつかの実施形態では、被験体は、血管再生術後少なくとも3時間、血管再生術後少なくとも5時間、血管再生術後少なくとも8時間、血管再生術後少なくとも12時間、または血管再生術後少なくとも24時間ペプチドを投与される。
いくつかの実施形態では、被験体は、血管再生術の少なくとも8時間前に開始して、血管再生術の少なくとも4時間前に開始して、血管再生術の少なくとも2時間前に開始して、血管再生術の少なくとも1時間前に開始して、または血管再生術の少なくとも10分前に開始して、ペプチドを投与される。
いくつかの実施形態では、それを必要とする被験体におけるアテローム硬化性腎動脈狭窄の治療方法であって、前記被験体に関して経皮経血管性腎臓血管形成術を実施すること、そして治療的有効量のペプチドD-Arg-2’,6’-Dmt-Lys-Phe-NH2またはその製薬上許容可能な塩を前記被験体に投与することを包含する方法は、1つ以上の血栓溶解薬を被験体に投与することを包含する。いくつかの実施形態では、前記1つ以上の血栓溶解薬は、組織プラスミノーゲン活性化因子、ウロキナーゼ、プロウロキナーゼ、ストレプトキナーゼ、アシル化型のプラスミノーゲン、アシル化型のプラスミンおよびアシル化ストレプトキナーゼ-プラスミノーゲン複合体からなる群から選択される。
いくつかの態様において、本発明の開示は、それを必要とする被験体における片側性または両側性アテローム硬化性腎動脈狭窄に関連した対側性腎臓損傷の治療方法であって、治療的有効量のペプチドD-Arg-2’,6’-Dmt-Lys-Phe-NH2またはその製薬上許容可能な塩を前記被験体に投与することを包含する方法を提供する。
いくつかの態様において、本発明の開示は、それを必要とする被験体における高血圧症または腎臓血管性高血圧症に関連した標的器官損傷(例えば腎臓または心臓)の治療方法であって、治療的有効量のペプチドD-Arg-2’,6’-Dmt-Lys-Phe-NH2またはその製薬上許容可能な塩を被験体に投与することを包含する方法を提供する。
いくつかの実施形態では、当該方法は、前記被験体に関して腎臓血管再生術を実施する工程をさらに包含する。いくつかの実施形態では、前記血管再生術は経皮経血管性腎臓血管形成術からなる。いくつかの実施形態では、アテローム硬化性腎動脈狭窄は、被験体の腎臓微小血管系の崩壊または閉塞を含む。いくつかの実施形態では、被験体は、腎臓微小血管系粗鬆化の危険があるがまたはそれに罹患している。いくつかの実施形態では、被験体は、腎臓微小血管系粗鬆化の開始前に前記ペプチドを投与される。
いくつかの実施形態では、被験体は、血管再生術前、血管再生術後、血管再生術の最中および後、あるいは血管再生の前、最中および後に連続的に、ペプチドを投与される。
いくつかの実施形態では、被験体は、血管再生術後少なくとも3時間、血管再生術後少なくとも5時間、血管再生術後少なくとも8時間、血管再生術後少なくとも12時間、または血管再生術後少なくとも24時間ペプチドを投与される。
いくつかの実施形態では、被験体は、血管再生術の少なくとも8時間前に開始して、血管再生術の少なくとも4時間前に開始して、血管再生術の少なくとも2時間前に開始して、血管再生術の少なくとも1時間前に開始して、または血管再生術の少なくとも10分前に開始して、ペプチドを投与される。
いくつかの実施形態では、前記血管再生術は腎動脈閉塞の除去からなる。いくつかの実施形態では、血管再生術は、1つ以上の血栓溶解薬の投与からなる。いくつかの実施形態では、前記1つ以上の血栓溶解薬は、組織プラスミノーゲン活性化因子、ウロキナーゼ、プロウロキナーゼ、ストレプトキナーゼ、アシル化型のプラスミノーゲン、アシル化型のプラスミンおよびアシル化ストレプトキナーゼ-プラスミノーゲン複合体からなる群から選択される。
いくつかの態様において、本発明の開示は、それを必要とする被験体におけるアテローム硬化性腎動脈狭窄に関連したうっ血性心不全の治療方法であって、治療的有効量のペプチドD-Arg-2’,6’-Dmt-Lys-Phe-NH2またはその製薬上許容可能な塩を前記被験体に投与することを包含する方法を提供する。
いくつかの実施形態では、当該方法は、前記被験体に関して腎臓血管再生術を実施する工程をさらに包含する。
いくつかの実施形態では、前記血管再生術は経皮経血管性腎臓血管形成術からなる。いくつかの実施形態では、前記アテローム硬化性腎動脈狭窄は、前記被験体の腎臓微小血管系の崩壊または閉塞を含む。いくつかの実施形態では、被験体は、腎臓微小血管系粗鬆化の危険があるがまたはそれに罹患している。いくつかの実施形態では、被験体は、腎臓微小血管系粗鬆化の開始前に前記ペプチドを投与される。
いくつかの実施形態では、被験体は、血管再生術前、血管再生術後、血管再生術の最中および後、あるいは血管再生の前、最中および後に連続的に、ペプチドを投与される。
いくつかの実施形態では、被験体は、血管再生術後少なくとも3時間、血管再生術後少なくとも5時間、血管再生術後少なくとも8時間、血管再生術後少なくとも12時間、または血管再生術後少なくとも24時間ペプチドを投与される。
いくつかの実施形態では、被験体は、血管再生術の少なくとも8時間前に開始して、血管再生術の少なくとも4時間前に開始して、血管再生術の少なくとも2時間前に開始して、血管再生術の少なくとも33時間前に開始して、または血管再生術の少なくとも10分前に開始して、ペプチドを投与される。
いくつかの実施形態では、前記血管再生術は腎動脈閉塞の除去からなる。いくつかの実施形態では、血管再生術は、1つ以上の血栓溶解薬の投与からなる。いくつかの実施形態では、前記1つ以上の血栓溶解薬は、組織プラスミノーゲン活性化因子、ウロキナーゼ、プロウロキナーゼ、ストレプトキナーゼ、アシル化型のプラスミノーゲン、アシル化型のプラスミンおよびアシル化ストレプトキナーゼ-プラスミノーゲン複合体からなる群から選択される。
いくつかの態様において、本発明の開示は、それを必要とする被験体におけるARVDの治療方法であって、治療的有効量のペプチドD-Arg-2’,6’-Dmt-Lys-Phe-NH2またはその製薬上許容可能な塩を前記被験体に投与することを包含する方法を提供する。
いくつかの実施形態では、ARVDはアテローム硬化性腎動脈狭窄(ARAS)を含む。いくつかの実施形態では、ARVDは、正常対照と比較した腎臓血行動態障害(impaired renal hemodynamics)を含む。
いくつかの実施形態では、前記減損腎臓血行動態は平均腎動脈血圧増大を含む。いくつかの実施形態では、前記減損腎臓血行動態は腎臓容積低減を含む。いくつかの実施形態では、前記減損腎臓血行動態は皮質還流低減を含む。いくつかの実施形態では、前記減損腎臓血行動態は腎臓血流量(RBF)低減を含む。いくつかの実施形態では、前記減損腎臓血行動態は糸球体濾過率(GFR)低減を含む。いくつかの実施形態では、前記減損腎臓血行動態は皮質血液酸素化低減を含む。いくつかの実施形態では、前記ARVDは尿細管間質性線維症を含む。
いくつかの実施形態では、治療することは、ペプチドD-Arg-2’,6’-Dmt-Lys-Phe-NH2またはその製薬上許容可能な塩の長期投与を包含する。いくつかの実施形態では、長期投与は、1週間より長い期間のペプチドD-Arg-2’,6’-Dmt-Lys-Phe-NH2またはその製薬上許容可能な塩の投与を包含する。いくつかの実施形態では、長期投与は、1年より長い期間のペプチドD-Arg-2’,6’-Dmt-Lys-Phe-NH2またはその製薬上許容可能な塩の投与を包含する。
別の態様において、本発明の開示は、アテローム硬化性腎動脈狭窄(ARAS)により引き起こされる減損腎臓血行動態の治療方法であって、治療的有効量のペプチドD-Arg-2’,6’-Dmt-Lys-Phe-NH2またはその製薬上許容可能な塩を被験体に投与することを包含する方法を提供する。
いくつかの実施形態では、前記ARASは正常対照と比較した腎臓血行動態障害を含む。いくつかの実施形態では、前記減損腎臓血行動態は平均腎動脈血圧増大を含む。いくつかの実施形態では、前記減損腎臓血行動態は腎臓容積低減を含む。いくつかの実施形態では、前記減損腎臓血行動態は皮質還流低減を含む。いくつかの実施形態では、前記減損腎臓血行動態は腎臓血流量(RBF)低減を含む。いくつかの実施形態では、前記減損腎臓血行動態は糸球体濾過率(GFR)低減を含む。いくつかの実施形態では、前記減損腎臓血行動態は皮質血液酸素化低減を含む。いくつかの実施形態では、前記ARVDは尿細管間質性線維症を含む。
いくつかの実施形態では、治療することは、ペプチドD-Arg-2’,6’-Dmt-Lys-Phe-NH2またはその製薬上許容可能な塩の長期投与を包含する。いくつかの実施形態では、長期投与は、1週間より長い期間のペプチドD-Arg-2’,6’-Dmt-Lys-Phe-NH2またはその製薬上許容可能な塩の投与を包含する。いくつかの実施形態では、長期投与は、1年より長い期間のペプチドD-Arg-2’,6’-Dmt-Lys-Phe-NH2またはその製薬上許容可能な塩の投与を包含する。
別の態様において、本発明の開示は、アテローム硬化性腎動脈狭窄(ARAS)により引き起こされる減損腎臓血行動態の治療方法であって、治療的有効量のペプチドD-Arg-2’,6’-Dmt-Lys-Phe-NH2またはその製薬上許容可能な塩を1つ以上の抗高血圧薬とともに投与することを包含する方法を提供する。
いくつかの実施形態では、前記1つ以上の抗高血圧薬は、利尿薬、アドレナリン作動性受容体拮抗薬、カルシウムチャネル遮断薬、レニン阻害薬、アンギオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬、アンギオテンシンII受容体拮抗薬、アルドステロン拮抗薬、血管拡張薬またはアルファ-2作動薬を包含する。
いくつかの実施形態では、前記利尿薬は、ループ利尿薬、チアジド利尿薬、チアジド様利尿薬またはカリウム保持性利尿薬を包含する。いくつかの実施形態では、前記利尿薬は、ブメタニド、エタクリン酸、フロセミド、トルセミド、エピチジド、ヒドロクロロチアジド、クロロチアジド、ベンドロフルメチアジド、インダパミド、クロルサリドン、メトラゾン、アミロリド、トリアムテレンまたはスピロノラクトンを包含する。
いくつかの実施形態では、前記アドレナリン作動性受容体拮抗薬は、ベータ遮断薬、アルファ遮断薬または混合アルファおよびベータ遮断薬を包含する。いくつかの実施形態では、前記アドレナリン作動性受容体拮抗薬は、アテノロール、メトプロロール、ナドロール、オキシプレノロール、ピンドロール、プロプラノロール、チモロール、ドキサゾシン、フェントラミン、インドラミン、フェノキシベンズアミン、プラゾシン、テラゾシン、トラゾリン、ブシンドロール、カルベジロールまたはラベタロールを包含する。
いくつかの実施形態では、前記カルシウムチャネル遮断薬はジヒドロピリジンまたは非ジヒドロピリジンを包含する。いくつかの実施形態では、前記カルシウムチャネル遮断薬は、アムロジピン、フェロジピン、イスラジピン、レルカニジピン、ニカルジピン、ニフェジピン、ニモジピン、ニトレンジピン、ジルチアゼムまたはベラパミルを包含する。
いくつかの実施形態では、前記レニン阻害薬はアリスキレン(登録商標)を包含する。いくつかの実施形態では、前記アンギオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬は、カプトプリル、エナラプリル、フォシノプリル、リシノプリル、ペリンドプリル、キナプリル、ラミプリル、トランドラプリルまたはベナゼプリルを包含する。いくつかの実施形態では、前記アンギオテンシンII受容体拮抗薬はイルベサルタン(登録商標)を包含する。いくつかの実施形態では、前記アルドステロン拮抗薬は、エプレレノンまたはスピロノラクトンを包含する。いくつかの実施形態では、前記血管拡張薬拮抗薬は、ニトロプルシドナトリウムまたはヒドララジンを包含する。いくつかの実施形態では、前記アルファ-2作動薬拮抗薬は、クロニジン、グアナベンズ、メチルドパ、グアネチジンまたはレセルピンを包含する。
図1Aは、時点および具体的介入を示す実験プロトコールの模式的線図である。図1B〜Gは、ベースライン(ペプチド注入前)、PTRAの30分後およびPTRAの180分後の、ARAS+PTRA+ビヒクルおよびARAS+PTRA+D-Arg-2’,6’-Dmt-Lys-Phe-NH2ペプチドブタにおける、単球走化性タンパク質(MCP-1)(B)、腫瘍壊死因子(TNF)-α(C)、インターロイキン(IL)-1β(D)、顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)(E)、形質転換増殖因子(TGF)-β(F)および血清クレアチニン(Scr)(G)を示すグラフである。*p<0.05対ベースライン;#p<0.05対ARAS+PTRA+ビヒクル。 図2A〜Bは、ARAS+PTRA+ビヒクルおよびARAS+PTRA+D-Arg-2’,6’-Dmt-Lys-Phe-NH2ペプチド被験体における、ベースラインおよびPTRAの210分後の8-イソプロスタン(A)および尿タンパク質(B)の尿中レベルを示すグラフである。#p<0.05対ARAS+PTRA+ビヒクル。図2Cおよび2Dは、血管収縮薬(C)作用も血管拡張薬(D)作用もペプチドに対する応答において単離腎動脈環で観察されなかった、ということを示すグラフである。#p<0.05対ARAS+PTRA+ビヒクル。 図3Aは、遠隔測定法により測定した場合の、71日の期間に亘る実験被験体における平均動脈圧を示すグラフである。図3B〜Eは、正常、ARAS、ARAS+PTRA+ビヒクルおよびARAS+PTRA+D-Arg-2’,6’-Dmt-Lys-Phe-NH2ペプチド被験体における、腎臓皮質(黒色)および髄質(灰色)容積(B)、還流(C)、腎臓血流量(RBF)(D)および糸球体濾過率(GFR)(E)を示す。ペプチドの投与は、狭窄性血管再生化腎臓における腎機能を改善した。*p<0.05対正常;‡p<0.05対ARAS+PTRA+D−Arg−2’,6’−Dmt−Lys−Phe−NH2ペプチド。 図4Aは、正常、ARAS、ARAS+PTRA+ビヒクルおよびARAS+PTRA+D−Arg−2’,6’−Dmt−Lys−Phe−NH2ペプチド被験体における、代表的末端デオキシヌクレオチジルトランスフェラーゼdUTPニック末端標識(TUNEL)(上部パネル)およびカスパーゼ−3染色(下部パネル)を示す。図4Bは、正常、ARAS、ARAS+PTRA+ビヒクルおよびARAS+PTRA+D−Arg−2’,6’−Dmt−Lys−Phe−NH2ペプチド被験体における、TUNEL(黒色)およびカスパーゼ−3染色(灰色)の定量を示す。図4Cは、正常、ARAS、ARAS+PTRA+ビヒクルおよびARAS+PTRA+D−Arg−2’,6’−Dmt−Lys−Phe−NH2ペプチド被験体からの腎臓組織における、B−細胞リンパ腫(Bcl)−2、Bcl−2−関連Xタンパク質(Bax)、ペルオキシソーム増殖因子活性化受容体ガンマ共活性化因子(PGC)−1α、核呼吸因子(NRF)−1、GA−結合タンパク質(GABP)、ペルオキシソーム増殖因子活性化受容体(PPAR)α、PPAR−δ、ヘムオキシゲナーゼ(HO)−1およびサーチュイン(SIRT)−1の発現を示すウエスタン・ブロットである。図4Dは、GAPDHに関するこれらのタンパク質の定量を示す。 図5Aは、正常、ARAS、ARAS+PTRA+ビヒクルおよびARAS+PTRA+D−Arg−2’,6’−Dmt−Lys−Phe−NH2ペプチド被験体における代表的三次元マイクロCT画像(上部パネル)ならびに皮質微小血管の経壁空間密度の定量(下部パネル)を示す。図5Bは、皮質微小血管の平均血管直径および血管蛇行率の定量を示す。図5Cは、正常、ARAS、ARAS+PTRA+ビヒクルおよびARAS+PTRA+D−Arg−2’,6’−Dmt−Lys−Phe−NH2ペプチド被験体における、血管内皮細胞増殖因子(VEGF)およびその受容体(VEGFR−1およびVEGFR2)の腎臓発現のレベルを示す。*p<0.05対正常;‡p<0.05対ARAS+PTRA+D−Arg−2’,6’−Dmt−Lys−Phe−NH2ペプチド。 図6Aは、正常、ARAS、ARAS+PTRA+ビヒクルおよびARAS+PTRA+D−Arg−2’,6’−Dmt−Lys−Phe−NH2ペプチド被験体からの腎臓組織における蛍光性ジヒドロエチジウム(DHE)およびDAPI染色(上部パネル)ならびにシグナルの定量(下部パネル)を示す。図6Bは、正常、ARAS、ARAS+PTRA+ビヒクルおよびARAS+PTRA+D−Arg−2’,6’−Dmt−Lys−Phe−NH2ペプチド被験体からの腎臓組織におけるp47およびニトロチロシン(NT)のレベルを示す。*p<0.05対正常;‡p<0.05対ARAS+PTRA+D−Arg−2’,6’−Dmt−Lys−Phe−NH2ペプチド。 図7Aは、正常、ARAS、ARAS+PTRA+ビヒクルおよびARAS+PTRA+D−Arg−2’,6’−Dmt−Lys−Phe−NH2ペプチド被験体からの腎臓組織における代表的MCP−1(上部パネル)およびCD163(下部パネル)染色を示す。図7Bは、正常、ARAS、ARAS+PTRA+ビヒクルおよびARAS+PTRA+D−Arg−2’,6’−Dmt−Lys−Phe−NH2ペプチド被験体からの腎臓組織におけるMCP−1およびCD163の定量を示す。図7Cは、正常、ARAS、ARAS+PTRA+ビヒクルおよびARAS+PTRA+D−Arg−2’,6’−Dmt−Lys−Phe−NH2ペプチド被験体からの腎臓組織からのTNF−αのウエスタン・ブロット、ならびにGAPDHに関するTNF-αレベルの定量を示す。*p<0.05対正常;‡p<0.05対ARAS+PTRA+D−Arg−2’,6’−Dmt−Lys−Phe−NH2ペプチド。 図8Aは、正常、ARAS、ARAS+PTRA+ビヒクルおよびARAS+PTRA+D−Arg−2’,6’−Dmt−Lys−Phe−NH2ペプチド被験体からの腎臓組織の代表的過ヨウ素酸シッフ(PAS)染色、ならびに尿細管損傷の定量を示す。図8Bは、正常、ARAS、ARAS+PTRA+ビヒクルおよびARAS+PTRA+D−Arg−2’,6’−Dmt−Lys−Phe−NH2ペプチド被験体からの腎臓組織における代表的フィブロネクチン(上部パネル)およびコラーゲンIV(下部パネル)を示す。図8Cは、総面積のパーセントとしての、正常、ARAS、ARAS+PTRA+ビヒクルおよびARAS+PTRA+D−Arg−2’,6’−Dmt−Lys−Phe−NH2ペプチド被験体からの腎臓組織におけるフィブロネクチンおよびコラーゲンIV染色の定量を示す。*p<0.05対正常;‡p<0.05対ARAS+PTRA+D−Arg−2’,6’−Dmt−Lys−Phe−NH2ペプチド。 図9Aは、正常、ARAS、ARAS+PTRA+ビヒクルおよびARAS+PTRA+D−Arg−2’,6’−Dmt−Lys−Phe−NH2ペプチド被験体からの糸球体周辺(上部パネル)および尿細管-間質性(下部パネル)腎臓組織における代表的三重染色を示す。図9Bは、正常、ARAS、ARAS+PTRA+ビヒクルおよびARAS+PTRA+D−Arg−2’,6’−Dmt−Lys−Phe−NH2ペプチド被験体における尿細管-間質性繊維症および糸球体スコアの定量を示す。パネル9Cは、正常、ARAS、ARAS+PTRA+ビヒクルおよびARAS+PTRA+D−Arg−2’,6’−Dmt−Lys−Phe−NH2ペプチド被験体の腎臓組織からのPAI−1およびTGFβ−1タンパク質のウエスタン・ブロット、ならびにGAPDHに関するPAI−1およびTGFβ−1レベルの定量を示す。*p<0.05対正常;‡p<0.05対ARAS+PTRA+D−Arg−2’,6’−Dmt−Lys−Phe−NH2ペプチド。 正常+ビヒクル、正常+ペプチド、ARAS+ビヒクル、およびARAS+ペプチド被験体からの腎臓組織切片の代表的三重染色(青色;倍率40x)を示す。 図10に示した正常+ビヒクル、正常+ペプチド、ARAS+ビヒクル、およびARAS+ペプチド被験体における三重染色の定量を示す。*p<0.05対正常;‡p<0.05対ARVD+ペプチド。 正常+ビヒクル、正常+ペプチド、ARAS+ビヒクル、およびARAS+ペプチド被験体に関する代表的BOLD MRI画像を示す。 正常+ビヒクル、正常+ペプチド、ARAS+ビヒクル、およびARAS+ペプチド被験体における皮質血液酸素化指数(R2*)の定量を示す。*p<0.05対正常;‡p<0.05対ARVD+ペプチド。 Ach注入に応答する正常+ペプチド、ARAS+ビヒクル、およびARAS+ペプチド被験体における腎臓血流量における変化の大きさ(ΔRBF)を示す。*p<0.05対正常;‡p<0.05対ARVD+ペプチド。 Ach注入に応答する正常+ペプチド、ARAS+ビヒクル、およびARAS+ペプチド被験体における糸球体濾過率における変化の大きさ(ΔGFR)を示す。*p<0.05対正常;‡p<0.05対ARVD+ペプチド。
(詳細な説明)
本発明の技法の実質的理解を提供するために、本発明の開示のある態様、方式、実施形態、変形および特徴は、種々のレベルで詳細に以下で記載される。
本発明の方法を実行するに際して、分子生物学、タンパク質生化学、細胞生物学、免疫学、微生物学および組換えDNAにおける多数の慣用的技法が用いられる。これらの技法は周知であり、例えば、Current Protocols in Molecular Biology, Vols. I-III, Ausubel, Ed. (1997); Sambrook et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Second Ed. (Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, NY, 1989); DNA Cloning: A Practical Approach, Vols. I and II, Glover, Ed. (1985); Oligonucleotide Synthesis, Gait, Ed. (1984); Nucleic Acid Hybridization, Hames & Higgins, Eds. (1985); Transcription and Translation, Hames & Higgins, Eds. (1984); Animal Cell Culture, Freshney, Ed. (1986); Immobilized Cells and Enzymes (IRL Press, 1986); Perbal, A Practical Guide to Molecular Cloning; the series, Meth. Enzymol., (Academic Press, Inc., 1984); Gene Transfer Vectors for Mammalian Cells, Miller & Calos, Eds. (Cold Spring Harbor Laboratory, NY, 1987);およびMeth. Enzymol., Vols. 154 and 155, Wu & Grossman, and Wu, Eds.でそれぞれ説明されている。
この明細書で用いられるようなある用語の定義を、以下で提示する。別記しない限り、本明細書中で用いられる技術用語および科学用語はすべて、一般的に、この技術が属する当該技術分野における当業者に一般に理解されるものと同じ意味を有する。
本明細書中および添付の特許請求の範囲で用いる場合、単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」および「その(the)」は、当該内容が明らかにそうでないことを示すのでない限り、複数の指示対象を包含する。例えば、「1つの細胞」への言及は、2つ以上の細胞の組み合わせを包含する、といった具合である。
本明細書中で用いる場合、被験体への作用物質、薬剤またはペプチドの「投与」は、化合物を被験体に導入するかまたは送達して、その意図された機能を実施する任意の経路を包含する。投与は、任意の適切な経路により、例えば経口的に、鼻内に、非経口的に(静脈内に、筋肉内に、腹腔内に、または皮下に)、くも膜下腔内に、または局所的に実行され得る。いくつかの実施形態では、芳香族陽イオン性ペプチドは、動脈内経路により投与される。投与は、自己投与および/または別の人による投与を包含する。
本明細書中で用いる場合、「アミノ酸」という用語は、天然アミノ酸および合成アミノ酸、ならびに天然アミノ酸といわば同様に機能するアミノ酸類似体およびアミノ酸模倣物を包含する。天然アミノ酸は、遺伝暗号によりコードされるもの、ならびに後に修飾されるアミノ酸、例えばヒドロキシプロリン、γ-カルボキシグルタメートおよびO-ホスホセリンである。アミノ酸類似体は、天然アミノ酸と同一の基本的化学構造、すなわち、水素、カルボキシル基、アミノ基およびR基と結合されるα-炭素を有する化合物、例えばホモセリン、ノルロイシン、メチオニンスルホキシド、メチオニンメチルスルホニウムを指す。このような類似体は、修飾R基(例えばノルロイシン)または修飾ペプチド主鎖を有するが、しかし天然アミノ酸と同一の基本的化学構造を保持する。アミノ酸模倣物は、アミノ酸の一般的化学構造とは異なるが、しかし天然アミノ酸といわば同様に機能する構造を有する化学化合物を指す。アミノ酸は、それらの一般に既知の三文字記号により、またはIUPAC-IUB生化学命名委員会により推奨される一文字記号により、本明細書中で言及され得る。
本明細書中で用いる場合、「有効量」という用語は、所望の治療的および/または予防的作用を達成するために十分である量、例えば、腎虚血-再還流損傷、あるいは腎虚血、虚血-再還流損傷またはアテローム硬化性腎動脈狭窄(ARAS)に関連した1つ以上の症候の防止または低減を生じる量を指す。治療的または予防的適用の状況では、被験体に投与される組成物の量は、疾患の種類および重症度によって、ならびに個体の特質、例えば全身の健康状態、年齢、性別、体重および薬剤に対する耐容性によって決まる。それは、疾患の程度、重症度および種類によっても決まる。当業者は、これらのおよびその他の因子によって、適切な投与量を決定することができた。組成物は、1つ以上の付加的治療用化合物と組み合わせても投与され得る。本明細書中に記載される方法において、芳香族陽イオン性ペプチドは、腎虚血損傷、腎虚血-再灌流損傷、高血圧症、ARASまたは腎血管性高血圧症のうちの1つ以上の徴候または症候を有する被験体に投与され得る。他の実施形態では、当該哺乳動物は、腎機能不全の1つ以上の徴候または症候、例えば疲労または倦怠、組織腫脹、背部痛、食欲の変化、消化不良、血清クレアチニン上昇、腎性高血圧症、あるいは排尿の量、色または頻度の変化を有する。例えば、「治療的有効量」の芳香族陽イオン性ペプチドとは、腎虚血-再灌流損傷またはARASの生理学的作用が最低でも改善されるレベルを意味する。
本明細書中で用いる場合、「虚血再灌流損傷」という用語は、最初に組織への血液供給の制限、そしてその後の血液の突然の再供給およびフリーラジカルの付随的生成により引き起こされる傷害を指す。虚血は、組織への血液供給の減少であり、次いで、再灌流、欠乏組織中への酸素の突然の還流を生じる。虚血性損傷は、組織への血液供給の制限により引き起こされる傷害である。虚血性損傷は、急性虚血または慢性虚血のためであり得る。
「単離」または「精製」ポリペプチドまたはペプチドは、細胞性物質、あるいは当該作用物質が由来する細胞または組織供給源からのその他の夾雑ポリペプチドを実質的に含有しないし、あるいは化学的に合成される場合、化学的前駆体または他の化学物質を実質的に含有しない。例えば、単離芳香族陽イオン性ペプチドは、作用物質の診断的または治療的使用を妨げる物質を含有しない。このような妨害物質としては、酵素、ホルモンおよびその他のタンパク質性および非タンパク質性溶質が挙げられる。
本明細書中で用いる場合、「ポリペプチド」、「ペプチド」および「タンパク質」という用語は、ペプチド結合または修飾ペプチド結合により互いに結合される2つ以上のアミノ酸を含むポリマー、すなわちペプチドイソスターを意味するために、本明細書中で互換的に用いられる。ポリペプチドは、短鎖(一般にペプチド、糖ペプチドまたはオリゴマーとして言及される)および長鎖(一般的にタンパク質として言及される)の両方を指す。ポリペプチドは、20個の遺伝子コードアミノ酸以外のアミノ酸を含有し得る。ポリペプチドは、天然過程、例えば翻訳後プロセシングにより、または当該技術分野で周知である化学的修飾技法により修飾されるアミノ酸配列を包含する。
本明細書中で用いる場合、「治療すること」または「治療」または「緩和」は、治療的治療および予防的または防止的手段の両方を指し、この場合、目的は、標的化された病理学的状態または障害を防止するかまたは遅らせる(少なくする)ことである。例えば、本明細書中に記載される方法に従って治療的有効量の芳香族陽イオン性ペプチドを接種後、被験体がARASに関連した腎虚血-再灌流損傷における観察可能なおよび/または測定可能な低減を示すならば、被験体は、ARASに関連した腎虚血/再灌流損傷に関して首尾よく「治療」される。記載されるような医学的症状の治療または防止の種々の方式が「実質的」(全体的な治療または防止を包含するが、全体的未満も包含する)を意味するよう意図され、この場合、いくつかの生物学的または医学的関連結果が達成される、とさらにまた理解されるべきである。
本明細書中で用いる場合、「長期治療」という用語は、単一回投与を上回る治療の一形態を施すことを指す。いくつかの実施形態では、治療は、1回より多く被験体に施される。いくつかの実施形態では、治療は、5回より多く被験体に施される。いくつかの実施形態では、治療は、10より多く、20回より多く、30回より多く、40回より多く、50回より多く、60回より多く、70回より多く、80回より多く、90回より多く、または100回より多く、被験体に施される。いくつかの実施形態では、治療は、約1週間より長い期間、約2週間より長い、約3週間より長い、約4週間より長い、約5週間より長い、約6週間より長い、約7週間より長い、約8週間より長い、約9週間より長い、約10週間より長い、約11週間より長い、約12週間より長い、約13週間より長い、約14週間より長い、または約15週間より長い期間、被験体に施される。いくつかの実施形態では、治療は、1年より長い、5年より長い、10年より長い、または20年より長い期間、被験体に施される。
本明細書中で用いる場合、障害または症状の「防止」または「防止すること」は、統計学的試料において、非治療対照試料に比して、治療試料における障害または症状の発生を低減する、あるいは非治療対照試料に比して、障害または症状の1つ以上の症候の開始を遅延するかまたはその重症度を低減する化合物を指す。本明細書中で用いる場合、虚血-再還流損傷を防止することは、酸化的傷害を防止すること、あるいはミトコンドリア透過性遷移を防止し、それにより腎臓への血流量の損失とその後の回復の有害作用を防止するかまたは改善することを包含する。
I. 高血圧および/または腎動脈狭窄に関連した腎臓および心臓損傷の防止または治療の方法
腎臓への血流量の回復は、腎臓狭窄に関する治療の重要部分である。血流量の急速な回復は、腎臓微小血管を傷害して、腎機能低減および長期予後不良を引き起こし得る。この作用は、虚血/再灌流損傷として既知である。
再灌流損傷は、腎臓以外の器官、例えば心臓、肝臓、腎臓、脳、皮膚等で起こり得る。再灌流時の組織傷害は、最初に、脳虚血で示唆された。短い2 1/2分の虚血を蒙ったウサギの脳は、虚血が軽減されると、正常血流量を有した。ウサギがより長い虚血期間に曝露された場合、脳組織への正常流は、血管閉塞の軽減後でも、回復されなかった。長期虚血は、脳細胞への正常流を妨げる微小血管系における有意の変化を生じた。この現象の存在は、脳虚血の種々の動物モデルにおいて確証された。それは、種々のその他の器官、例えば皮膚、骨格筋および腎臓においても示された。さらに、微小循環改変は、臓器移植中の虚血-再灌流損傷により誘導される器官傷害を調整し得る。
本発明の技法は、それを必要とする被験体に、治療的有効量の芳香族陽イオン性ペプチド、例えばD-Arg-2’,6’-Dmt-Lys-Phe-NH2またはその製薬上許容可能な塩、例えば酢酸塩またはトリフルオロ酢酸塩を投与することによる哺乳動物での虚血損傷および/または虚血-再還流損傷の治療または防止に関する。一態様において、本発明の技法は、腎動脈狭窄を有する被験体における腎血管再生に関する腎臓損傷の治療または防止に有用な方法に関する。
一態様において、本発明の技法は、それを必要とする被験体に、治療的有効量のペプチドD-Arg-2’,6’-Dmt-Lys-Phe-NH2またはその製薬上許容可能な塩、例えば酢酸塩またはトリフルオロ酢酸塩を投与することを包含するARVDの治療に関する。いくつかの実施形態では、治療は、1週間より長い期間投与される長期治療である。
別の態様では、本発明の技法は、組織再灌流の非存在下での虚血性損傷の治療または防止に関する。例えば、ペプチドは、血管再生術のための適切な候補でない、または血管再生術が容易に利用可能でない、1つ以上の組織または器官における急性虚血を経験している患者に投与され得る。付加的には、または代替的には、血管再生術に対する必要性に前もって措置を講じるために、ペプチドは1つ以上の組織における慢性虚血を有する患者に投与され得る。組織再灌流の非存在下での虚血性損傷の治療または防止のために芳香族陽イオン性ペプチドを投与される患者は、付加的には、本明細書中に記載される方法による血管再生術の前、最中および後に、ペプチドを投与され得る。
一実施形態では、腎臓再還流損傷は、芳香族陽イオン性ペプチドを投与されない同様の被験体と比較して、一被験体における組織再灌流の量または区域を増大することを包含する。一実施形態では、腎再灌流損傷の防止は、芳香族陽イオン性ペプチドを投与されない同様の被験体と比較して、一被験体における再灌流により引き起こされる微小血管傷害の量または区域を低減することを包含する。いくつかの実施形態では、腎再還流損傷の治療または防止は、芳香族陽イオン性ペプチドを投与されない同様の被験体と比較して、一被験体において、再灌流時に罹患血管に対する損傷を低減すること、血球による施栓の作用を低減すること、および/または内皮細胞腫脹を低減することを包含する。防止または治療の程度は、当該技術分野で既知の任意の技法、例えば腎臓容積、腎動脈圧、腎臓血流量(RBF)および糸球体濾過率(GFR)の測定(これらに限定されない)により、ならびに当該技術分野で既知の画僧処理技法、例えばCTおよびマイクロCT(これらに限定されない)により測定され得る。上首尾の防止または治療は、芳香族陽イオン性ペプチドを投与されない対照被験体または対照被験体の一集団と比較した場合の、これらの画像処理技法のいずれかにより観察される被験体における腎臓再灌流損傷の程度を比較することにより決定される。
一態様において、本発明の技法は、それを必要とする被験体への、ある芳香族陽イオン性ペプチド、例えばD-Arg-2’,6’-Dmt-Lys-Phe-NH2またはその製薬上許容可能な塩、例えば酢酸塩またはトリフルオロ酢酸塩の投与による、腎臓血管再生に関連した腎臓再灌流損傷の治療または防止に関する。器官の再灌流時の腎臓に対する損傷を防止するために、被験体における腎狭窄を治療する方法も提供される。
一実施形態では、被験体への芳香族陽イオン性ペプチド(単数または複数)の投与は、腎臓再灌流損傷の発生の前である。例えば、いくつかの実施形態では、ペプチドは、それを必要とする被験体における虚血性損傷を抑制し、防止し、または治療するために、および/または再灌流治療に前もって措置を講じるために、および/または再灌流損傷を軽減するかまたは改善するために投与される。付加的には、または代替的には、いくつかの実施形態では、被験体への芳香族陽イオン性ペプチド(単数または複数)の投与は、腎臓再灌流損傷の発生の後である。一実施形態では、当該方法は、血管再生術とともに実施される。一実施形態では、血管再生術は、経皮経血管性腎臓血管形成術(PTRA)である。一態様において、本発明の技法は、腎臓血管再生の方法であって、治療的有効量の芳香族陽イオン性ペプチドを哺乳動物被験体に投与すること、および当該被験体に関してPTRAを実施することを包含する方法に関する。
一実施形態では、被験体は、血管再を生手法の前に、ペプチド、例えばD-Arg-2’,6’-Dmt-Lys-Phe-NH2またはその製薬上許容可能な塩、例えば酢酸塩またはトリフルオロ酢酸塩を投与される。別の実施形態では、被験体は、血管再生術後に、ペプチドを投与される。別の実施形態では、被験体は、血管再生術の最中および後に、ペプチドを投与される。さらに別の実施形態では、被験体は、血管再生術の前、最中および後に、ペプチドを投与される。別の実施形態では、被験体は、腎動脈狭窄および/または腎臓血管再生術後に、定期的に(すなわち長期的に)ペプチドを投与される。
いくつかの実施形態では、被験体は、血管再生術後にペプチドを投与される。一実施形態では、被験体は、血管再生術後少なくとも3時間、少なくとも5時間、少なくとも8時間、少なくとも12時間、または24時間、ペプチドを投与される。いくつかの実施形態では、被験体は、血管再生術の少なくとも8時間前に、4時間前に、少なくとも2時間前に、少なくとも1時間前に、または10分前に開始して、ペプチドを投与される。一実施形態では、被験体は、血管再生術後少なくとも1週間、少なくとも1か月または少なくとも1か月間、投与される。いくつかの実施形態では、被験体は、血管再生術の前および後にペプチドを投与される。いくつかの実施形態では、被験体は、特定期間に亘って、注入液としてペプチドを投与される。いくつかの実施形態では、ペプチドは、ボーラスとして被験体に投与される。
いくつかの実施形態では、本発明の方法は、芳香族陽イオン性ペプチドを1つ以上の血栓溶解薬とともに投与することを包含する。いくつかの実施形態では、1つ以上の血栓溶解薬は、組織プラスミノーゲン活性化因子、ウロキナーゼ、プロウロキナーゼ、ストレプトキナーゼ、アシル化型のプラスミノーゲン、アシル化型のプラスミンおよびアシル化ストレプトキナーゼ-プラスミノーゲン複合体からなる群から選択される。
高血圧症、腎血管性高血圧症または片側性腎動脈狭窄を有する患者における狭窄性腎臓および/または対側性腎臓損傷の防止または治療のための方法も本明細書中で提供される。このような患者において、対側性腎臓への損傷は、腎動脈狭窄に対する代償性生物学的応答の結果である。増大量のレニンが、腎臓細動脈における脈圧減少に応答して狭窄性腎臓から放出される。例えば、腎臓還流圧の50パーセント減は、虚血性腎臓からのレニン分泌の即時的および持続的増大、ならびに対側性腎臓からの分泌の共存的抑圧をもたらす。これは、ナトリウム排出、交感神経活動、腎臓内プロスタグランジン濃度および一酸化窒素生成に及ぼす直接的作用を有する;したがって、腎臓血管性高血圧症を引き起こす。腎臓血管性高血圧症が持続される場合、血漿レニン活性は減少する(「逆タキフィラキシー」として言及される)。多年持続期間を有する腎臓血管性高血圧症患者は、対側性腎臓における広範な腎硬化症を蒙る。
高血圧症、片側性腎動脈狭窄または腎臓血管性高血圧症を有する患者における心臓損傷を防止するかまたは治療するための方法も、本明細書中で提供される。このような患者において、心臓損傷は、腎動脈狭窄および高血圧症に対する代償性生物学的応答の結果である。上記のように、増大量のレニンは腎臓細動脈における脈圧減少に応答して狭窄性腎臓から放出されるが、一方、レニンレベルは、対側性腎臓から減少される。これは、血漿レニンレベルおよび/または活性における全体的低減を生じる。これは、体液容積拡張および心拍出量増大により成し遂げられる。心拍出量における持続性増大は、うっ血性心不全の発症をもたらす。さらに、動脈圧の増大は後負荷を増大し、心臓肥大をもたらす。いくつかの実施形態では、ペプチドは、第二の活性作用物質、例えば抗高血圧薬とともに投与される。例示的作用物質としては、利尿薬、アドレナリン作動性受容体作動薬、カルシウムチャネル遮断薬、レニン阻害薬、ACE阻害薬、アンギオテンシンII受容体作動薬、アルドステロン拮抗薬、血管拡張薬および/または中枢作用性アドレナリン作動薬が挙げられるが、これらに限定されない。
したがって、いくつかの態様において、本発明の開示は、それを必要とする被験体における片側性腎動脈狭窄に関連した対側性腎臓損傷の治療方法であって、治療的有効量のペプチドD-Arg-2’,6’-Dmt-Lys-Phe-NH2またはその製薬上許容可能な塩を被験体に投与することを包含する方法を提供する。
いくつかの実施形態では、当該方法は、被験体に関する腎臓血管再生術を実施する工程をさらに包含する。いくつかの実施形態では、血管再生術は、経皮経血管性腎臓血管形成術を包含する。いくつかの実施形態では、アテローム硬化性腎動脈狭窄は、被験体の腎臓微小血管系の崩壊または閉塞を包含する。いくつかの実施形態では、被験体は、腎臓微小血管系粗鬆化の危険があり、またはそれに罹患している。いくつかの実施形態では、被験体は、腎臓微小血管系粗鬆化の開始前にペプチドを投与される。
いくつかの実施形態では、被験体は、血管再生術前、血管再生術後、血管再生術の最中および後、あるいは血管再生の前、最中および後に連続的に、ペプチドを投与される。
いくつかの実施形態では、被験体は、血管再生術後少なくとも3時間、血管再生術後少なくとも5時間、血管再生術後少なくとも8時間、血管再生術後少なくとも12時間、または血管再生術後少なくとも24時間ペプチドを投与される。
いくつかの実施形態では、被験体は、血管再生術の少なくとも8時間前に開始して、血管再生術の少なくとも4時間前に開始して、血管再生術の少なくとも2時間前に開始して、血管再生術の少なくとも1時間前に開始して、または血管再生術の少なくとも10分前に開始して、ペプチドを投与される。
いくつかの実施形態では、血管再生術は、腎動脈閉塞の除去からなる。いくつかの実施形態では、血管再生術は、1つ以上の血栓溶解薬の投与からなる。いくつかの実施形態では、1つ以上の血栓溶解薬は、組織プラスミノーゲン活性化因子、ウロキナーゼ、プロウロキナーゼ、ストレプトキナーゼ、アシル化型のプラスミノーゲン、アシル化型のプラスミンおよびアシル化ストレプトキナーゼ-プラスミノーゲン複合体からなる群から選択される。
いくつかの実施形態では、本発明の開示は、それを必要とする被験体におけるアテローム硬化性腎動脈狭窄に関連したうっ血性心不全または心臓肥大の治療方法であって、治療的有効量のペプチドD-Arg-2’,6’-Dmt-Lys-Phe-NH2またはその製薬上許容可能な塩を前記被験体に投与することを包含する方法を提供する。
いくつかの実施形態では、当該方法は、被験体に関する腎臓血管再生術を実施する工程をさらに包含する。
いくつかの実施形態では、血管再生術は、経皮経血管性腎臓血管形成術からなる。いくつかの実施形態では、前記アテローム硬化性腎動脈狭窄は、被験体の腎臓微小血管系の崩壊または閉塞を含む。いくつかの実施形態では、被験体は、腎臓微小血管系粗鬆化の危険があるがまたはそれに罹患している。いくつかの実施形態では、被験体は、腎臓微小血管系粗鬆化の開始前にペプチドを投与される。
いくつかの実施形態では、被験体は、血管再生術前、血管再生術後、血管再生術の最中および後、あるいは血管再生の前、最中および後に連続的に、ペプチドを投与される。
いくつかの実施形態では、被験体は、血管再生術後少なくとも3時間、血管再生術後少なくとも5時間、血管再生術後少なくとも8時間、血管再生術後少なくとも12時間、または血管再生術後少なくとも24時間ペプチドを投与される。
いくつかの実施形態では、被験体は、血管再生術の少なくとも8時間前に開始して、血管再生術の少なくとも4時間前に開始して、血管再生術の少なくとも2時間前に開始して、血管再生術の少なくとも1時間前に開始して、または血管再生術の少なくとも10分前に開始して、ペプチドを投与される。
いくつかの実施形態では、血管再生術は、腎動脈閉塞の除去からなる。いくつかの実施形態では、血管再生術は、1つ以上の血栓溶解薬の投与からなる。いくつかの実施形態では、1つ以上の血栓溶解薬は、組織プラスミノーゲン活性化因子、ウロキナーゼ、プロウロキナーゼ、ストレプトキナーゼ、アシル化型のプラスミノーゲン、アシル化型のプラスミンおよびアシル化ストレプトキナーゼ-プラスミノーゲン複合体からなる群から選択される。
いくつかの実施形態では、本明細書中に記載される方法は、組織再灌流の非存在下での虚血性損傷の治療または防止のために、それを必要とする被験体に1つ以上の芳香族陽イオン性ペプチドを投与することを包含する。いくつかの実施形態では、当該方法は、血管再生術のための適切な候補でない、または血管再生術が容易に利用可能でない、1つ以上の組織における急性虚血を経験している患者に、1つ以上のペプチド、例えばD-Arg-2’,6’-Dmt-Lys-Phe-NH2またはその製薬上許容可能な塩、例えば酢酸塩またはトリフルオロ酢酸塩を投与することを包含する。いくつかの実施形態では、当該方法は、血管再生術に対する必要性に前もって措置を講じるために、1つ以上の組織における慢性虚血を有する患者に1つ以上のペプチドを投与することを包含する。いくつかの実施形態では、組織再灌流の非存在下での虚血性損傷の治療または防止のために芳香族陽イオン性ペプチドを投与される患者は、付加的には、血管再生術の前、最中および後に、ペプチドを投与される。
II. 本発明の技法の芳香族陽イオン性ペプチドの調製
本発明の技法の芳香族陽イオン性ペプチドは、水溶性で高極性である。これらの特性にもかかわらず、ペプチドは細胞膜を容易に透過し得る。芳香族陽イオン性ペプチドは、典型的には、ペプチド結合により共有結合される最低でも3個、または最低でも4個のアミノ酸を含む。芳香族陽イオン性ペプチド中に存在するアミノ酸の最大数は、ペプチド結合により共有結合されるアミノ酸約20個である。適切には、アミノ酸の最大数は、約12、さらに好ましくは約9、もっとも好ましくは約6個である。
芳香族陽イオン性ペプチドのアミノ酸は、任意のアミノ酸であり得る。本明細書中で用いる場合、「アミノ酸」という用語は、少なくとも1つのアミノ基および少なくとも1つのカルボキシル基を含有する任意の有機分子を指すために用いられる。典型的には、少なくとも1つのアミノ基は、カルボキシル基に対してα位置にある。アミノ酸は、天然に生じるものであり得る。天然アミノ酸としては、例えば、哺乳動物タンパク質中に普通に見出される20個の最も一般的な左旋性(L)アミノ酸、すなわち、アラニン(Ala)、アルギニン(Arg)、アスパラギン(Asn)、アスパラギン酸(Asp)、システイン(Cys)、グルタミン(Gln)、グルタミン酸(Glu)、グリシン(Gly)、ヒスチジン(His)、イソロイシン(Ile)、ロイシン(Leu)、リシン(Lys)、メチオニン(Met)、フェニルアラニン(Phe)、プロリン(Pro)、セリン(Ser)、トレオニン(Thr)、トリプトファン(Trp)、チロシン(Tyr)およびバリン(Val)が挙げられる。その他の天然アミノ酸としては、例えば、タンパク質合成に関連しない代謝過程で合成されるアミノ酸が挙げられる。例えば、アミノ酸であるオルニチンおよびシトルリンは、尿の生成中に哺乳動物代謝において合成される。天然アミノ酸の別の例としては、ヒドロキシプロリン(Hyp)が挙げられる。
ペプチドは、任意に、1つ以上の非天然アミノ酸を含有する。いくつかの実施形態では、ペプチドは、天然に生じているアミノ酸を有さない。非天然アミノ酸は、左旋性(L-)、右旋性(D-)またはその混合物であり得る。非天然アミノ酸は、典型的には、生きている生物体において通常の代謝過程では合成されないアミノ酸であり、タンパク質中に天然に生じない。さらに、非天然アミノ酸は、適切には、さらにまた一般的プロテアーゼによって認識されない。非天然アミノ酸は、ペプチド中の任意の位置に存在し得る。例えば、非天然アミノ酸は、N末端、C末端に、またはN末端とC末端との間の任意の位置に存在し得る。
非天然アミノ酸は、例えば天然アミノ酸中に見いだされないアルキル、アリールまたはアルキルアリール基を含む。非天然アルキルアミノ酸のいくつかの例としては、β-アミノ酪酸、β-アミノ酪酸、γ-アミノ酪酸、δ-アミノ吉草酸およびε-アミノカプロン酸が挙げられる。非天然アリールアミノ酸のいくつかの例としては、オルト-、メタおよびパラ-アミノ安息香酸が挙げられる。非天然アルキルアリールアミノ酸のいくつかの例としては、オルト-、メタ-およびパラ-アミノフェニル酢酸、ならびにγ-フェニル-β-アミノ酪酸が挙げられる。非天然アミノ酸は、天然アミノ酸の誘導体を包含する。天然アミノ酸の誘導体は、例えば天然アミノ酸への1つ以上の化学基の付加を包含し得る。
例えば、1つ以上の化学基は、フェニルアラニンまたはチロシン残基の芳香族環の2’、3’、4’、5’または6’位置、あるいはトリプトファン残基のベンゾ環の4’、5’、6’または7’位置に付加され得る。当該基は、芳香族環に付加され得る任意の化学基であり得る。このような基のいくつかの例としては、分枝鎖または非分枝鎖C1〜C4アルキル、例えばメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチルまたはt−ブチル、C1〜C4アルキルオキシ(すなわち、アルコキシ)、アミノ、C1〜C4アルキルアミノおよびC1〜C4ジアルキルアミノ(例えばメチルアミノ、ジメチルアミノ)、ニトロ、ヒドロキシル、ハロ(すなわち、フルオロ、クロロ、ブロモまたはヨード)が挙げられる。天然アミノ酸の非天然誘導体のいくつかの特定例としては、ノルバリン(Nva)およびノルロイシン(Nle)が挙げられる。
ペプチド内のアミノ酸の修飾の別の例は、ペプチドのアスパラギン酸またはグルタミン酸残基のカルボキシル基の誘導体化である。誘導体化の一例は、アンモニアによる、あるいは第一級または第二級アミン、例えばメチルアミン、エチルアミン、ジメチルアミンまたはジエチルアミンによるアミド化である。誘導体化の別の例としては、例えばメチルまたはエチルアルコールによるエステル化が挙げられる。別のこのような修飾としては、リシン、アルギニンまたはヒスチジン残基のアミノ基の誘導体化が挙げられる。例えば、このようなアミノ基は、アシル化され得る。いくつかの適切なアシル基としては、例えば上記のC1〜C4アルキル基のいずれかを含むベンゾイル基またはアルカノイル基、例えばアセチルまたはプロピオニル基が挙げられる。
非天然アミノ酸は、一般プロテアーゼに対して、好ましくは抵抗性であり、さらに好ましくは非感受性である。プロテアーゼに対して抵抗性または非感受性である非天然アミノ酸の例としては、上記天然L-アミノ酸の右旋(D-)型、ならびにL-および/またはD-非天然アミノ酸が挙げられる。D-アミノ酸はタンパク質中に天然では生じないが、しかしそれらは細胞の通常のリボソームタンパク質合成機構以外の手段により合成されるある種のペプチド抗生物質中に見いだされる。本明細書中で用いる場合、D-アミノ酸は非天然アミノ酸であるとみなされる。
プロテアーゼ感受性を最小限にするために、アミノ酸が天然であるか、非天然であるかにかかわらず、ペプチドは、一般的プロテアーゼにより認識される連続L-アミノ酸を、5未満、好ましくは4未満、さらに好ましくは3未満、最も好ましくは2未満有するべきである。いくつかの実施形態では、ペプチドは、D-アミノ酸のみを有し、L-アミノ酸を有さない。ペプチドがアミノ酸のプロテアーゼ感受性配列を含有する場合、アミノ酸のうちの少なくとも1つは、好ましくは非天然D-アミノ酸であり、それにより、プロテアーゼ抵抗性を付与する。プロテアーゼ感受性配列の一例は、一般的プロテアーゼ、例えばエンドペプチダーゼおよびトリプシンにより容易に切断される2つ以上の連続塩基性アミノ酸を包含する。塩基性アミノ酸の例としては、アルギニン、リシンおよびヒスチジンが挙げられる。
芳香族陽イオン性ペプチドは、ペプチド中のアミノ酸の総数との比較において、生理学的pHで最小数の正味負電荷を有するべきである。生理学的pHでの正味負電荷の最小数は、(pm)として以下で言及される。ペプチド中のアミノ酸残基の総数は、(r)として以下で言及される。以下で考察される正味正電荷の最小数は、すべて生理学的pHでのものである。「生理学的pH」という用語は、本明細書中で用いる場合、哺乳動物身体の組織および器官の細胞における正常pHを指す。例えば、ヒトの生理学的pHは、通常はおよそ7.4であるが、しかし哺乳動物における正常生理学的pHは約7.0から約7.8までの任意のpHであり得る。
「正味電荷」は、本明細書中で用いる場合、ペプチド中に存在するアミノ酸により保有される正電荷の数と負電荷の数の均衡を指す。本明細書中では、正味電荷は生理学的pHで測定される、と理解される。生理学的pHで正に荷電される天然アミノ酸としては、L-リシン、L-アルギニンおよびL-ヒスチジンが挙げられる。生理学的pHで負に荷電される天然アミノ酸としては、L-アスパラギン酸およびL-グルタミン酸が挙げられる。
典型的には、ペプチドは、正荷電N末端アミノ基および負荷電C末端カルボキシル基を有する。電荷は、生理学的pHで互いに相殺する。正味電荷の算定の一例として、ペプチドTyr-D-Arg-Phe-Lys-Glu-His-Trp-D-Argは、1個の負荷電アミノ酸(すなわち、Glu)および4個の正荷電アミノ酸(すなわち、2個のArg残基、1個のLysおよび1個のHis)を有する。したがって、上記ペプチドは、3つの正味電荷を有する。
一実施形態では、芳香族陽イオン性ペプチドは、生理学的pHでの正味正電荷の最小数(Pm)と、アミノ酸残基の総数(r)との間の関係を有する(ここで、3pmは、r+1以下である最大数である)。この実施形態では、正味正電荷の最小数(Pm)とアミノ酸残基の総数(r)との間の関係は、以下のとおりである:
別の実施形態では、芳香族陽イオン性ペプチドは、正味正電荷の最小数(Pm)とアミノ酸残基の総数(r)との間の関係を有する(ここで、3pmは、r+1以下である最大数である)。この実施形態では、正味正電荷の最小数(Pm)と、アミノ酸残基の総数(r)との間の関係は、以下のとおりである:
一実施形態では、正味正電荷の最小数(Pm)とアミノ酸残基の総数(r)は等しい。別の実施形態では、ペプチドは3または4個のアミノ酸残基および最低でも1の正味正電荷を有し、適切には、2の正味正電荷、さらに好ましくは最低でも3の正味正電荷を有する。
芳香族陽イオン性ペプチドは、正味正電荷の総数(pt)との比較において、芳香族基の最小数を有する、ということも重要である。芳香族基の最小数は、(a)として以下で言及される。芳香族基を有する天然アミノ酸としては、アミノ酸であるヒスチジン、トリプトファン、チロシンおよびフェニルアラニンが挙げられる。例えば、ヘキサペプチドLys-Gln-Tyr-D-Arg-Phe-Trpは、正味正電荷が2で(リシンおよびアルギニン残基により与えられる)、そして3つの芳香族基(チロシン、フェニルアラニンおよびトリプトファン残基により与えられる)を有する。
芳香族陽イオン性ペプチドは、さらにまた、芳香族基の最小数(a)と生理学的pHでの正味正電荷の総数(pt)との間に関係を有すべきであって、ここで、3aはpt+1以下である最大数であるが、但し、ptが1である場合、aも1であり得る。この実施形態では、芳香族基の最小数(a)と、正味正電荷の総数(pt)との間の関係は、以下のとおりである:
別の実施形態では、芳香族陽イオン性ペプチドは、芳香族基の最小数(a)と正味正電荷の総数(pt)との間に関係を有し、この場合、2aはpt+1以下である最大数である。この実施形態では、芳香族アミノ酸残基の最小数(a)と、正味正電荷の総数(pt)との間の関係は、以下のとおりである:
別の実施形態では、芳香族基の数(a)と正味正電荷の総数(pt)は等しい。
カルボキシル基、特にC末端アミノ酸の末端カルボキシル基は、例えばアンモニアで適切にアミド化されて、C末端アミドを生成する。代替的には、C末端アミノ酸の末端カルボキシル基は、任意の第一級または第二級アミンでアミド化され得る。第一級または第二級アミンは、例えばアルキル、特に分枝鎖または非分枝鎖C1〜C4アルキル、あるいはアリールアミンであり得る。したがって、ペプチドのC末端のアミノ酸は、アミド、N−メチルアミド、N−エチルアミド、N,N−ジメチルアミド、N,N−ジエチルアミド、N−メチル−N−エチルアミド、N−フェニルアミドまたはN−フェニル−N−エチルアミド基に変換され得る。芳香族陽イオン性ペプチドのC末端に生じないアスパラギン、グルタミン、アスパラギン酸およびグルタミン酸残基の遊離カルボキシレート基も、それらがペプチド内で生じるところではどこでも、アミド化される。これらの内部位置でのアミド化は、上記のアンモニアあるいは第一級または第二級アミンのいずれかを用いるものであり得る。
一実施形態では、芳香族陽イオン性ペプチドは、2個の正味正電荷および少なくとも1個の芳香族アミノ酸を有するトリペプチドである。特定の実施形態では、芳香族陽イオン性ペプチドは、2個の正味正電荷および2個の芳香族アミノ酸を有するトリペプチドである。
芳香族陽イオン性ペプチドとしては、以下のペプチド例が挙げられるが、これらに限定されない:
一実施形態では、ペプチドは、μ-オピオイド受容体作動薬活性を有する(すなわち、それらはμ-オピオイド受容体を活性化する)。μ-オピオイド活性は、クローン化μ-オピオイド受容体と結合する放射性リガンドにより、またはモルモット回腸を用いるバイオアッセイにより査定され得る(Schiller et al., Eur. J. Med. Chem., 35:895-901, 2000; Zhao et al., J. Pharmacol. Exp. Ther., 307:947-954, 2003)。μ-オピオイド受容体の活性化は、典型的には、鎮痛作用を引き出す。ある場合には、μ-オピオイド受容体作動薬活性を有する芳香族陽イオン性ペプチドが選択される。例えば、短期間治療の間、例えば急性疾患または症状においては、μ-オピオイド受容体を活性化する芳香族陽イオン性ペプチドを用いることが有益であり得る。このような急性疾患および症状は、しばしば、中等度または重度の疼痛と関連する。これらの場合、芳香族陽イオン性ペプチドの鎮痛作用は、ヒト患者またはその他の哺乳動物の治療レジメンにおいて有益であり得る。しかしながら、μ-オピオイド受容体を活性化しない芳香族陽イオン性ペプチドも、臨床的要件によって、鎮痛薬とともに、または伴わずに用いられ得る。
代替的には、他の場合、μ-オピオイド受容体作動薬活性を有さない芳香族陽イオン性ペプチドが選択される。例えば、長期治療の間、例えば慢性疾患状態または症状では、μ-オピオイド受容体を活性化する芳香族陽イオン性ペプチドは、禁忌であり得る。これらの場合、芳香族陽イオン性ペプチドの潜在的に有害なまたは中毒性の作用は、ヒト患者またはその他の哺乳動物の治療レジメンにおいてμ-オピオイド受容体を活性化する芳香族陽イオン性ペプチドの使用を排除し得る。潜在的有害作用としては、鎮静、便秘および呼吸抑制が挙げられ得る。このような場合、μ-オピオイド受容体を活性化しない芳香族陽イオン性ペプチドが適切な治療であり得る。
μ-オピオイド受容体作動薬活性を有するペプチドは、典型的には、N末端(すなわち、第一アミノ酸位置)にチロシン残基またはチロシン誘導体を有するペプチドである。チロシンの適切な誘導体としては、2’−メチルチロシン(Mmt);2’,6’−ジメチルチロシン(2’,6’−Dmt);3’,5’−ジメチルチロシン(3’5’Dmt);N,2’,6’−トリメチルチロシン(Tmt);および2’−ヒドロキシ−6’−メチルチロシン(Hmt)が挙げられる。
一実施形態では、μ-オピオイド受容体作動薬活性を有するペプチドは、式Tyr−D−Arg−Phe−Lys−NH2を有する。このペプチドは、アミノ酸チロシン、アルギニンおよびリシンにより与えられる3の正味正電荷を有し、アミノ酸フェニルアラニンおよびチロシンにより与えられる2個の芳香族基を有する。チロシンは、チロシンの修飾誘導体、例えば2’,6’−ジメチルチロシンであって、式2’,6’−Dmt−D−Arg−Phe−Lys−NH2を有する化合物を生成し得る。このペプチドは、640の分子量を有し、生理学的pHで正味3の正電荷を保有する。ペプチドは、エネルギ依存的に、いくつかの哺乳動物細胞型の形質膜を容易に透過する。(Zhao et al., J. Pharmacol Exp Ther., 304:425-432, 2003)。
μ-オピオイド受容体作動薬活性を有さないペプチドは、一般的に、N末端(すなわち、アミノ酸位置1)にチロシン残基またはチロシンの誘導体を有さない。N末端でのアミノ酸は、チロシン以外の任意の天然または非天然アミノ酸であり得る。一実施形態では、N末端のアミノ酸は、フェニルアラニンまたはその誘導体である。フェニルアラニンの例示的誘導体としては、2’−メチルフェニルアラニン(Mmp)、2’,6’−ジメチルフェニルアラニン(2’,6’−Dmp)、N,2’,6’−トリメチルフェニルアラニン(Tmp)および2’−ヒドロキシ−6’−メチルフェニルアラニン(Hmp)が挙げられる。
μ-オピオイド受容体作動薬活性を有さない芳香族陽イオン性ペプチドの一例は、式Phe−D−Arg−Phe−Lys−NH2を有する。代替的には、N末端フェニルアラニンは、フェニルアラニンの誘導体、例えば2’,6’−ジメチルフェニルアラニン(2’,6’−Dmp)であり得る。一実施形態では、アミノ酸位置1に2’,6’−ジメチルフェニルアラニンを有するペプチドは、式2’,6’−Dmp−D−Arg−Phe−Lys−NH2を有する。一実施形態では、アミノ酸配列は、DmtがN末端に存在しないよう再整列される。μ-オピオイド受容体作動薬活性を有さないこのような芳香族陽イオン性ペプチドの一例は、式D-Arg-2’,6’−Dmt−Lys-Phe−NH2を有する。
本明細書中で言及されるペプチドおよびその誘導体は、機能的類似体をさらに包含し得る。ペプチドは、当該類似体が既述のペプチドと同じ機能を有する場合、機能的類似体とみなされる。類似体は、例えば、1つ以上のアミノ酸が別のアミノ酸により置換されるペプチドの置換変異体であり得る。ペプチドの適切な置換変異体は、保存的アミノ酸置換を包含する。アミノ酸は、以下のように、それらの物理化学的特質によって類別され得る: (a)非極性アミノ酸:Ala(A)Ser(S)Thr(T)Pro(P)Gly(G)Cys(C);
(b)酸性アミノ酸:Asn(N)Asp(D)Glu(E)Gln(Q);
(c)塩基性アミノ酸:His(H)Arg(R)Lys(K);
(d)疎水性アミノ酸:Met(M)Leu(L)Ile(I)Val(V);および
(e)芳香族アミノ酸:Phe(F)Tyr(Y)Trp(W)His(H)。
同一群における別のアミノ酸によるペプチド中のアミノ酸の置換は保存的置換として言及され、元のペプチドの物理化学的特質を保存し得る。これに対比して、異なる群における別のアミノ酸によるペプチド中のアミノ酸の置換は、一般的に、元のペプチドの特質を変更すると思われる。
μ-オピオイド受容体を活性化するペプチドの例としては、表5に示される芳香族陽イオン性ペプチドが挙げられるが、これらに限定されない:



μ-オピオイド受容体を活性化しない類似体の例としては、表6に示される芳香族陽イオン性ペプチドが挙げられるが、これらに限定されない:
表5および6に示されるペプチドのアミノ酸は、L-またはD-型であり得る。
ペプチドは、当該技術分野で周知の方法のいずれかにより合成され得る。タンパク質を化学的に合成するための適切な方法としては、例えばStuartとYoungによりSolid Phase Peptide Synthesis, Second Edition, Pierce Chemical Company (1984)に、およびMethods Enzymol., 289, Academic Press, Inc, New York (1997)に記載された方法が挙げられる。
III. 本発明の技法の芳香族陽イオン性ペプチドの予防的および治療的使用
概説: 本明細書中に記載される芳香族陽イオン性ペプチド、例えばD−Arg−2’,6’−Dmt−Lys−Phe−NH2またはその製薬上許容可能な塩、例えば酢酸塩またはトリフルオロ酢酸塩は、疾患または症状を防止するかまたは治療するために有用である。具体的には、本発明の開示は、腎動脈狭窄に関連した、または腎動脈狭窄の治療に関連した腎臓損傷の危険がある(またはそれが疑われる)被験体を治療する予防的および治療的方法の両方を提供する。いくつかの実施形態では、当該方法は、それを必要とする被験体において血管再生術を実施することを包含する。いくつかの実施形態では、血管再生術は、経皮経血管性腎臓血管形成術(PTRA)を包含する。したがって、本発明の方法は、有効量の芳香族陽イオン性ペプチドを投与することにより、それを必要とする被験体における腎臓再還流損傷の防止および/または治療を提供する。
芳香族陽イオン性ペプチドを基礎とした療法の生物学的作用の確定: 種々の実施形態において、特定の芳香族陽イオン性ペプチドを基礎とした療法の作用ならびにその投与が治療のために適応されるか否かを確定するために、適切なin vitroまたはin vivo検定が実施される。種々の実施形態において、in vitro検定は、所定の芳香族陽イオン性ペプチドを基礎とした療法が腎臓再灌流損傷を防止するかまたは治療するのに所望の作用を発揮するか否かを確定するために、代表的動物モデルを用いて実施される。治療に用いるための化合物は、ヒト被験体を試験する前に、適切な動物モデル系、例えばラット、マウス、ニワトリ、ブタ、ウシ、サル、ウサギ、ヒツジ、モルモット等で試験され得る。同様に、in vivo試験のために、当該技術分野で既知の動物モデル系のいずれかが、ヒト被験体に投与する前に用いられ得る。
予防的方法: 一態様において、本発明の開示は、症状の開始または進行を防止する芳香族陽イオン性ペプチドを被験体に投与することにより、被験体における腎虚血または再灌流損傷を防止するための方法を提供する。腎臓再灌流損傷の危険がある被験体は、例えば、本明細書中に記載されるような、または当該技術分野で既知であるような診断または予後検定のいずれかまたはその組合せにより同定され得る。予防的適用では、芳香族陽イオン性ペプチドの薬学的組成物または医薬品は、疾患または症状が疑われるか、そうでなければその危険がある被験体に、疾患または症状、例えば疾患または症状の生化学的、組織学的および/または行動的症候、疾患または症状の発症中に存在するその合併症および中間の病理学的表現型の危険を排除するかまたは低減し、その重症度を低下させ、あるいはその着手を遅らせるのに十分な量で投与される。疾患または障害が防止され、代替的には、その進行を遅延されるよう、予防的芳香族陽イオン性ペプチドの投与は異所性の特徴を示す症候の症状発現前に起こり得る。適切な化合物は、上記のスクリーニング検定に基づいて決定され得る。
いくつかの実施形態では、予防方法は、1つ以上の血栓溶解薬とともに芳香族陽イオン性ペプチドを投与することを包含する。いくつかの実施形態では、1つ以上の血栓溶解薬は、組織プラスミノーゲン活性化因子、ウロキナーゼ、プロウロキナーゼ、ストレプトキナーゼ、アシル化型のプラスミノーゲン、アシル化型のプラスミンおよびアシル化ストレプトキナーゼ-プラスミノーゲン複合体からなる群から選択される。
治療方法: 当該技法の別の態様は、治療目的のために芳香族陽イオン性ペプチドを被験体に投与することにより、被験体における腎臓再灌流損傷を治療する方法を包含する。治療的適用において、組成物または医薬品は、このような疾患または症状が疑われるか、または既に罹患している被験体に、疾患または症状の発症におけるその合併症および中間病理学的表現型を含めて疾患または症状の症候を治癒し、または少なくとも部分的に阻止するために十分な量で投与される。このようなものとして、当該技法は、腎臓再灌流損傷に苦しむ個体を治療する方法を提供する。
いくつかの実施形態では、治療方法は、1つ以上の活性作用物質とともに芳香族陽イオン性ペプチドを投与することを包含する。いくつかの実施形態では、ペプチド投与は長期的である。
いくつかの実施形態では、ペプチドは1つ以上の血栓溶解薬とともに投与される。いくつかの実施形態では、1つ以上の血栓溶解薬は、組織プラスミノーゲン活性化因子、ウロキナーゼ、プロウロキナーゼ、ストレプトキナーゼ、アシル化型のプラスミノーゲン、アシル化型のプラスミンおよびアシル化ストレプトキナーゼ-プラスミノーゲン複合体からなる群から選択される。
いくつかの実施形態では、治療方法は、1つ以上の抗高血圧薬とともに芳香族陽イオン性ペプチドを投与することを包含する。いくつかの実施形態では、1つ以上の抗高血圧薬は、利尿薬、アドレナリン作動性受容体拮抗薬、カルシウムチャネル遮断薬、レニン阻害薬、アンギオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬、アンギオテンシンII受容体拮抗薬、アルドステロン拮抗薬、血管拡張薬またはアルファ-2作動薬を包含する。
いくつかの実施形態では、前記利尿薬は、ループ利尿薬、チアジド利尿薬、チアジド様利尿薬またはカリウム保持性利尿薬を包含する。いくつかの実施形態では、前記利尿薬は、ブメタニド、エタクリン酸、フロセミド、トルセミド、エピチジド、ヒドロクロロチアジド、クロロチアジド、ベンドロフルメチアジド、インダパミド、クロルサリドン、メトラゾン、アミロリド、トリアムテレンまたはスピロノラクトンを包含する。
いくつかの実施形態では、前記アドレナリン作動性受容体拮抗薬は、ベータ遮断薬、アルファ遮断薬または混合アルファおよびベータ遮断薬を包含する。いくつかの実施形態では、前記アドレナリン作動性受容体拮抗薬は、アテノロール、メトプロロール、ナドロール、オキシプレノロール、ピンドロール、プロプラノロール、チモロール、ドキサゾシン、フェントラミン、インドラミン、フェノキシベンズアミン、プラゾシン、テラゾシン、トラゾリン、ブシンドロール、カルベジロールまたはラベタロールを包含する。
いくつかの実施形態では、前記カルシウムチャネル遮断薬はジヒドロピリジンまたは非ジヒドロピリジンを包含する。いくつかの実施形態では、前記カルシウムチャネル遮断薬は、アムロジピン、フェロジピン、イスラジピン、レルカニジピン、ニカルジピン、ニフェジピン、ニモジピン、ニトレンジピン、ジルチアゼムまたはベラパミルを包含する。
いくつかの実施形態では、前記レニン阻害薬はアリスキレン(登録商標)を包含する。
いくつかの実施形態では、前記アンギオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬は、カプトプリル、エナラプリル、フォシノプリル、リシノプリル、ペリンドプリル、キナプリル、ラミプリル、トランドラプリルまたはベナゼプリルを包含する。
いくつかの実施形態では、前記アンギオテンシンII受容体拮抗薬は、イルベサルタン(登録商標)を包含する。
いくつかの実施形態では、前記アルドステロン拮抗薬は、エプレレノンまたはスピロノラクトンを包含する。
いくつかの実施形態では、前記血管拡張薬拮抗薬は、ニトロプルシドナトリウムまたはヒドララジンを包含する。
いくつかの実施形態では、前記アルファ-2作動薬拮抗薬は、クロニジン、グアナベンズ、メチルドパ、グアネチジンまたはレセルピンを包含する。
V. 投与方式および有効投与量
細胞、器官または組織をペプチドと接触させるための、当業者に既知の任意の方法が用いられ得る。適切な方法としては、in vitro、ex vivoまたはin vivo方法が挙げられる。in vivo方法は、典型的には、芳香族陽イオン性ペプチド、例えば上記のペプチドを、哺乳動物に、適切にはヒトに投与することを包含する。治療のためにin vivoで用いられる場合、芳香族陽イオン性ペプチドは、有効量(すなわち、所望の治療効果を有する量)で被験体に投与される。用量および投薬レジメンは、被験体における損傷の程度、用いられる特定の芳香族陽イオン性ペプチドの特質、例えばその治療指数、被験体および被験体の病歴によって決まる。
有効量は、開業医および臨床医には周知の方法により、前臨床試験および臨床試験中に決定され得る。当該方法に有用なペプチドの有効量が、薬学的化合物を投与するために多数の周知の方法のいずれかにより、それを必要とする哺乳動物に投与され得る。ペプチドは、全身的に、または局所的に投与され得る。
ペプチドは、製薬上許容可能な塩として処方され得る。「製薬上許容可能な塩」という用語は、患者、例えば哺乳動物への投与のために許容可能である塩基または酸から調製される塩(例えば、所定の投薬レジメンに関して許容可能な哺乳動物安全性を有する塩)を意味する。しかしながら、塩、例えば患者への投与のために意図されない中間化合物の塩は、製薬上許容可能な塩である必要はない、と理解される。製薬上許容可能な塩は、製薬上許容可能な無機または有機塩基に、および製薬上許容可能な無機または有機酸に由来し得る。さらに、ペプチドが、塩基性部分、例えばアミン、ピリジンまたはイミダゾール、および酸性部分、例えばカルボン酸またはテトラゾールをともに含有する場合、両性イオンが形成され得るし、本明細書中で用いられる場合、「塩」という用語内に包含される。製薬上許容可能な無機塩基に由来する塩としては、アンモニウム、カルシウム、銅、第二鉄、第一鉄、リチウム、マグネシウム、第二マンガン、第一マンガン、カリウム、ナトリウムおよび亜鉛塩等が挙げられる。製薬上許容可能な有機塩基に由来する塩としては、第一級、第二級および第三級アミン、例えば置換アミン、環状アミン、天然アミン等塩、例えばアルギニン、ベタイン、カフェイン、コリン、N,N’−ジベンジルエチレンジアミン、ジエチルアミン、2−ジエチルアミノエタノール、2−ジメチルアミノエタノール、エタノールアミン、エチレンジアミン、N−エチルモルホリン、N−エチルピペリジン、グルカミン、グルコサミン、ヒスチジン、ヒドラバミン、イソプロピルアミン、リシン、メチルグルカミン、モルホリン、ピペラジン、piperadine、ポリアミン樹脂、プロカイン、プリン、テオブロミン、トリエチルアミン、トリメチルアミン、トリプロピルアミン、トロメタミン等が挙げられる。製薬上許容可能な無機酸に由来する塩としては、ホウ酸、カルボン酸、ハロゲン化水素酸(臭化水素酸、塩酸、フッ化水素酸またはヨウ化水素酸)、硝酸、リン酸、スルファミン酸および硫酸の塩が挙げられる。製薬上許容可能な有機酸由来の塩としては、脂肪族ヒドロキシル酸(例えば、クエン酸、グルコン酸、グリコール酸、乳酸、ラクトビオン酸、リンゴ酸および酒石酸)、脂肪族モノカルボン酸(例えば、酢酸、酪酸、蟻酸、プロピオン酸およびトリフルオロ酢酸)、アミノ酸(例えば、アスパラギン酸およびグルタミン酸)、芳香族カルボン酸(例えば、安息香酸、p−クロロ安息香酸、ジフェニル酢酸、ゲンチシン酸、馬尿酸およびトリフェニル酢酸)、芳香族ヒドロキシル酸(例えば、o−ヒドロキシ安息香酸、p−ヒドロキシ安息香酸、1−ヒドロキシナフタレン−2−カルボン酸および3−ヒドロキシナフタレン−2−カルボン酸)、アスコルビン酸、ジカルボン酸(例えば、フマル酸、マレイン酸、シュウ酸およびコハク酸)、グルクロン酸、マンデル酸、ムチン酸、ニコチン酸、オロト酸、パモ酸、パントテン酸、スルホン酸(例えば、ベンゼンスルホン酸、樟脳スルホン酸、エジシル酸、エタンスルホン酸、イセチオン酸、メタンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸、ナフタレン−1,5−ジスルホン酸、ナフタレン−2,6−ジスルホン酸およびp−トルエンスルホン酸)、キシナホ酸等の塩が挙げられる。いくつかの実施形態では、塩は酢酸塩またはトリフルオロ酢酸塩である。
本明細書中に記載される 芳香族陽イオン性ペプチド、例えばD−Arg−2’,6’−Dmt−Lys−Phe−NH2またはその製薬上許容可能な塩、例えば酢酸塩またはトリフルオロ酢酸塩は、単独で、または組み合わせて、本明細書中に記載される障害の治療または防止のために被験体に投与するために、薬学的組成物中に組み入れられ得る。このような組成物は、典型的には、活性作用物質および製薬上許容可能な担体を含む。本明細書中で用いる場合、「製薬上許容可能な担体」という用語は、生理食塩水、溶媒、分散媒、コーチング、抗細菌および抗真菌剤、等張および吸収遅延剤等(薬学的投与と適合性)を包含する。補足的活性化合物も組成物中に組み入れられ得る。
薬学的組成物は、典型的には、その意図される投与経路と適合性であるよう処方される。投与経路の例としては、非経口(例えば、静脈内、皮内、腹腔内または皮下)、経口、吸入、経皮(局所)、眼内、イオン泳動および経粘膜投与が挙げられる。非経口、皮内または皮下適用のために用いられる溶液または懸濁液は、以下の構成成分を含み得る:滅菌希釈液、例えば注射用の水、生理食塩溶液、不揮発性油、ポリエチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコールまたはその他の合成溶媒;抗細菌剤、例えばベンジルアルコールまたはメチルパラベン;酸化防止剤、例えばアスコルビン酸または亜硫酸水素ナトリウム;キレート化剤、例えばエチレンジアミン四酢酸;緩衝剤、例えば酢酸塩、クエン酸塩またはリン酸塩、ならびに張性の調整のための作用物質、例えば塩化ナトリウムまたはデキストロース。pHは、酸または塩基、例えば塩酸または水酸化ナトリウムで調整され得る。非経口調製物は、ガラス製またはプラスチック製のアンプル、使い捨て注射器または複数回用量バイアル中に封入され得る。患者または治療医の便宜のために、治療(例えば7日治療)経過中、必要な装備(例えば、薬剤のバイアル、希釈液のバイアル、注射器および針)をすべて含有するキット中で、用量投与処方物は提供され得る。
注射用に適した薬学的組成物は、滅菌水溶液(水溶性である場合)または分散液、ならびに滅菌注射溶液または分散液の即時調製のための滅菌粉末を包含し得る。静脈内投与に関して、適切な担体としては、生理学的食塩水、静菌水、クレモフォー(Cremophor)EL(登録商標)(BASF, Parsippany, N.J.)またはリン酸塩緩衝生理食塩水(PBS)が挙げられる。すべての場合に、非経口投与のための組成物は滅菌性でなければならず、容易に注射可能的に存在する程度に流動性であるべきである。それは製造および貯蔵条件下で安定であるべきで、細菌および真菌のような微生物の汚染作用に対して保存されなければならない。
芳香族陽イオン性ペプチド組成物は、例えば水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコールおよび液体ポリエチレングリコール等)、ならびにその適切な混合物を含有する溶媒または分散媒であり得る担体を含み得る。適正な流動性は、例えばレシチンのようなコーチングの使用により、分散液の場合は必要な粒子サイズの保持により、そして界面活性剤の使用により保持され得る。微生物の作用の防止は、種々の抗細菌および抗真菌剤、例えばパラベン、クロロブタノール、フェノール、アスコルビン酸、チオメルサール等により達成され得る。グルタチオンおよびその他の酸化防止剤は、酸化を防止するために含まれ得る。多くの場合、等張剤、例えば糖、ポリアルコール、例えばマンニトール、ソルビトールまたは塩化ナトリウムを組成物中に含むことが好ましい。注射用組成物の吸収延長は、吸収を遅延する作用物質、例えばアルミニウムモノステアレートまたはゼラチンを組成物中に含むことによりもたらされ得る。
滅菌注射溶液は、上記列挙した成分のうちの1つまたは組合せとともに、適切な溶媒中に必要量で活性化合物を混入し、必要に応じて、その後、濾過して滅菌することにより調製され得る。一般的に、分散液は、滅菌ビヒクル中に活性化合物を組み入れることにより調製され、これは、塩基性分散媒および上記列挙のものからの必要なその他の成分を含有する。滅菌注射溶液の調製のための滅菌粉末の場合、典型的調製方法としては真空乾燥および凍結乾燥が挙げられ、これらは、そのあらかじめ滅菌濾過された溶液から活性成分+任意の付加的所望成分の粉末を生じ得る。
経口組成物は、一般的には、不活性希釈剤または食用担体を含む。経口治療的投与の目的のために、活性化合物は、賦形剤とともに組み入れられて、錠剤、トローチ剤またはカプセル、例えばゼラチンカプセルの形態で用いられ得る。経口組成物は、口内洗浄剤としての使用のために流体担体を用いても調製され得る。薬学的に相溶性の結合剤および/またはアジュバント物質は、組成物の一部として含まれ得る。錠剤、カプセル、トローチ等は、以下の成分または同様の性質の化合物のいずれかを含有し得る:結合剤、例えば微晶質セルロース、トラガカントゴムまたはゼラチン;賦形剤、例えばデンプンまたはラクトース、崩壊剤、例えばアルギン酸、プリモゲルまたはコーンスターチ;滑剤、例えばステアリン酸マグネシウムまたはステロテス(Sterotes);流動促進剤、例えばコロイドに酸化ケイ素;甘味剤、例えばスクロースまたはサッカリン;あるいは風味剤、例えばペパーミント、サリチル酸メチルまたはオレンジ香料。
吸入による投与のために、化合物は、適切な噴射剤、例えば気体、例えば二酸化炭素を含有する加圧容器またはディスペンサー、あるいはネブライザーからエーロゾル噴霧の形態で送達され得る。このような方法は、米国特許第6,468,798号に記載されたものを含む。
本明細書中に記載されるような治療用化合物の全身投与は、経粘膜または経皮的手段によるものでもあり得る。経粘膜または経皮投与のために、透過されるべきバリアに適した浸透剤が処方物中に用いられる。このような浸透剤は一般的に当該技術分野で既知であり、例えば経粘膜投与のためには、洗剤、胆汁酸塩およびフシジン酸誘導体を包含する。経粘膜投与は、鼻噴霧の使用により成し遂げられ得る。経皮投与のためには、活性化合物は、当該技術分野で一般的に既知であるように、軟膏、膏薬、ゲルまたはクリーム中に処方される。一実施形態では、経皮投与は、イオン泳動により実施され得る。
治療用タンパク質またはペプチドは、担体系中に処方され得る。担体は、コロイド系であり得る。コロイド系は、リポソーム、リン脂質二重層ビヒクルであり得る。一実施形態では、治療用ペプチドは、ペプチド完全性を保持しながら、リポソーム中に封入される。当業者が理解するように、リポソームを調製するためには種々の方法がある(Lichtenberg et al., Methods Biochem. Anal., 33:337-462 (1988); Anselem et al., Liposome Technology, CRC Press (、1993)参照)。リポソーム処方物は、クリアランスを遅延し、細胞取り込みを増大し得る(Reddy, Ann. Pharmacother., 34(7-8):915-923 (2000)参照)。活性作用物質も、製薬上許容可能な成分から調製される粒子中に、例えば可溶性、不溶性、透過性、不透性、生分解性または胃保持性ポリマーまたはリポソーム(これらに限定されない)中に詰め込まれ得る。このような粒子としては、ナノ粒子、生分解性ナノ粒子、微小粒子、生分解性微小粒子、カプセル、乳濁液、リポソーム、ミセルおよびウィルスベクター系が挙げられるが、これらに限定されない。
担体は、ポリマー、例えば生分解性、生体適合性ポリマーマトリクスでもあり得る。一実施形態では、治療用ペプチドは、タンパク質完全性を保持しながら、ポリマーマトリクス中に包埋され得る。ポリマーは、天然、例えばポリペプチド、タンパク質または多糖、あるいは合成、例えばポリα-ヒドロキシ酸であり得る。例としては、例えばコラーゲン、フィブロネクチン、エラスチン、酢酸セルロース、硝酸セルロース、多糖、フィブリン、ゼラチンおよびその組合せから作られた担体が挙げられる。一実施形態では、ポリマーは、ポリ乳酸(PLA)またはコポリ乳酸/グリコール酸(PGLA)である。ポリマーマトリクスは、種々の形態およびサイズで調製され、単離され、マイクロスフェアおよびナノスフェアを包含し得る。ポリマー処方物は、治療効果の持続期間延長をもたらし得る(Reddy, Ann. Pharmacother., 34(7-8):915-923 (2000)参照)。ヒト成長ホルモン(hGH)に関するポリマー処方物が、臨床試験で用いられてきた(Kozarich and Rich, Chemical Biology, 2:548-552 (1998)参照)。
ポリマーマイクロスフェア徐放性処方物の例は、PCT公告WO 99/15154(Tracy等)、米国特許第5,674,534号および第5,716,644号(ともにZale等)、PCT公告WO 96/40073(Zale等)およびPCT公告WO 00/38651(Shah等)に記載されている。米国特許第5,674,534号および第5,716,644号、ならびにPCT公告WO 96/40073は、塩による凝集に対して安定化されるエリスロポエチンを含有するポリマーマトリクスを記載する。
いくつかの実施形態では、治療用化合物は、身体からの迅速な排除に対して治療用化合物、例えば移植片および微小封入送達系を含めた制御放出処方物を防御する担体を用いて調製される。生分解性、生体適合性ポリマー、例えばエチレンビニルアセテート、ポリ無水物、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルトエステルおよびポリ乳酸が用いられ得る。このような処方物は、既知の技法を用いて調製され得る。当該物質は、さらにまた、例えばAlza CorporationおよびNova Pharmaceuticals, Inc.から商業的に得られる。リポソーム懸濁液(例えば細胞特異的抗原に対するモノクローナル抗体を有する特定細胞に標的化されるリポソーム)も、製薬上許容可能な担体として用いられ得る。これらは、例えば米国特許第4,522,811号に記載されているように、当業者に既知の方法に従って調製され得る。
治療用化合物は、細胞内送達を増強するためにも処方され得る。例えば、リポソーム送達系は、当該技術分野で既知である(例えば、Chonn and Cullis, “Recent Advances in Liposome Drug Delivery Systems,” Current Opinion in Biotechnology 6:698-708 (1995); Weiner, “Liposomes for Protein Delivery: Selecting Manufacture and Development Processes,” Immunomethods, 4(3):201-9 (1994);およびGregoriadis, “Engineering Liposomes for Drug Delivery: Progress and Problems,” Trends Biotechnol., 13(12):527-37 (1995)参照)。Mizguchi et al., Cancer Lett., 100:63-69 (1996)は、in vivo およびin vitroの両方で細胞にタンパク質を送達するための融合性リポソームの使用を記載する。
治療薬の投与量、毒性および治療効果は、例えばLD50(集団の50%に対して致死的な用量)およびED50(集団の50%において治療的に有効な用量)を決定するために、細胞培養または実験動物において標準薬学的手法により確定され得る。毒性作用と治療効果との間の用量比が治療指数であり、それは、比LD50/ED50として表され得る。高治療指数を示す化合物が選択される。毒性副作用を示す化合物は用いられ得るが、非感染細胞に対する潜在的傷害を最小限にして、それにより副作用を低減するために、罹患組織の部位にこのような化合物を向ける送達系を設計するよう注意が払われるべきである。
細胞培養検定および動物試験から得られるデータは、ヒトでの使用のための一連の投与量を処方するのに用いられ得る。このような化合物の投与量は、好ましくは、毒性をほとんどまたはまったく有さないED50を包含する一連の循環濃度内にある。投与量は、用いられる剤形および利用される投与経路によって、この範囲内で変わり得る。当該方法で用いられる任意の化合物に関して、治療的有効用量は、最初に細胞培養検定から概算され得る。用量は、細胞培養で確定した場合にIC50(すなわち、症候の半最大抑制を達成する試験化合物の濃度)を含む循環血漿濃度範囲を達成するために動物モデルで処方され得る。このような情報は、ヒトにおける有用な用量をより正確に決定するために用いられ得る。血漿中レベルは、例えば高速液体クロマトグラフィーにより測定され得る。
典型的には、治療的または予防的効果を達成するために十分な芳香族陽イオン性ペプチドの有効量は、約0.000001mg/体重1kg/日〜約10,000mg/体重1kg/日の範囲である。好ましくは、投与量範囲は、約0.0001mg/体重1kg/日〜約100mg/体重1kg/日である。例えば投与量は、1mg/体重1kgまたは10mg/体重1kgを、毎日、2日毎または3日毎、あるいは1〜10mg/kgを、毎週、2週間毎または3週間毎であり得る。一実施形態では、ペプチドの単一回投与量は、0.1〜10,000μg/体重1kgの範囲である。一実施形態では、担体中の芳香族陽イオン性ペプチド濃度は、0.2〜2000μg/送達1mlの範囲である。例示的治療レジメンは、1回/日または1回/週の投与を課する。治療的適用において、相対的に短い間隔での相対的に高い投与量は、疾患の進行が低減されるかまたは終結されるまで、好ましくは被験体が疾患の症候の部分的または完全な改善を示すまで、時として必要とされる。その後、患者は予防的レジメンを施され得る。
いくつかの実施形態では、芳香族陽イオン性ペプチドの治療的有効量は、10-12〜10-6モル、例えば約10-7モルという標的組織での濃度と限定される。この濃度は、0.01〜100mg/kgの全身用量投与または体表面積による等価用量投与により送達され得る。用量投与スケジュールは、最も好ましくは1日1回または週1回投与により、標的組織での治療濃度を保持するよう最適化されるが、しかし連続投与(例えば、非経口的注入または経皮適用)も包含される。
いくつかの実施形態では、芳香族陽イオン性ペプチドの投与量は、「低」、「中」または「高」用量レベルで提供される。一実施形態では、低用量は、約0.01〜約0.5mg/kg/h、適切には約0.0001〜約0.1mg/kg/hで提供される。一実施形態では、中用量は、約0.001〜約1.0mg/kg/h、適切には約0.01〜約0.5mg/kg/hで提供される。一実施形態では、高用量は、約0.005〜約10mg/kg/h、適切には約0.01〜約2mg/kg/hで提供される。
被験体を有効に治療するために必要とされるある種の因子、例えば疾患または障害の重症度、以前の治療、被験体の全身健康状態および/または年齢、ならびに存在する他の疾患(これらに限定されない)が、投与量および時機に影響を及ぼし得る、と当業者は理解する。さらに、治療的有効量の本明細書中に記載される治療用組成物により被験体の治療は、単一治療または一連の治療を包含し得る。
本発明の方法に従って治療される哺乳動物は、任意の哺乳動物、例えば農場動物、例えばヒツジ、ブタ、ウシおよびウマ;ペット動物、例えばイヌおよびネコ;実験室動物、例えばラット、マウスおよびウサギであり得る。適切な実施形態では、哺乳動物はヒトである。
V. 腎損傷関連腎動脈狭窄の測定
画像処理技法は、腎臓は、再還流損傷に及ぼす本発明の技法のペプチドの作用を査定するのに有用である。例えば、腎臓微小血管構築は、CT、マイクロCTまたはMRIにより可視化され得る。代替的には、腎臓微小血管構築は、本明細書中に記載される方法と適合性である当該技術分野で既知の方法を用いて査定され得る。画像処理方法は、腎臓微小血管密度の密度および蛇行率、ならびに平均血管直径を評価するために有用である。
付加的にまたは代替的には、腎臓再灌流損傷は、腎臓機能の種々のパラメーター、例えば動脈圧、腎臓容積、腎臓血流量、腎臓酸素化および糸球体濾過率(これらに限定されない)を測定することにより評価され得る。これらのパラメーターを測定するための方法は、当該技術分野で既知であり、例としては、血中酸素レベル依存性磁気共鳴画像処理(BOLD-MRI)および多検出器コンピューター断層撮影(MDCT)(これらに限定されない)が挙げられる。
付加的にまたは代替的には、腎臓再灌流損傷は、in vitro方法、例えばアポトーシス、腎臓形態、例えば炎症および繊維症、ならびに酸化ストレスの測定(これらに限定されない)により査定され得る。アポトーシスは、当該技術分野で既知の方法、例えば末端デオキシヌクレオチジル・トランスフェラーゼdUTPニック末端標識(TUNEL)によるDNA断片化の検出、カスパーゼ活性化の検出および前アポトーシスタンパク質、例えばBcl-xLおよびBaxの検出を用いて査定され得る。腎臓形態学、例えば炎症および繊維症は、当業界で既知の方法、例えばヘマトキシリン・エオシン(H&E)染色、三重染色、ならびにCD163、MMP−9、PAI−1、MCP−1、VEGF、TNF−α、TGF−βおよびVEGR1レベルの検出(これらに限定されない)を用いて検出され得る。酸化ストレスは、当該技術分野で既知の方法、例えばイソプロスタン、スーパーオキシ度、NAD(P)Hオキシダーゼ、DHE、MnCuZn-SOD、NOシンターゼ、ヘムオキシゲナーゼおよび血漿硝酸塩/硝酸塩レベル(これらに限定されない)により測定され得る。
以下の実施例により本発明の技法をさらに例証するが、これらはいかなる点でも本発明を限定するものではない。
上記のように、虚血は、多数の組織/器官への正常血流量を妨害する微小血管系における有意の変化を生じ得る。このようなものとして、虚血/再灌流現象は、種々の組織/器官、例えば心臓、肝臓、脳、皮膚、骨格筋、腎臓等で起こり得る。本発明の技法の芳香族陽イオン性ペプチドは、種々の組織/器官における虚血/再灌流損傷を防止するかまたは治療する方法に有用である、と予測される。さらに、本発明の技法の芳香族陽イオン性ペプチドはARVDの長期治療のための方法に有用である、と予測される。
実施例1 D−Arg−2’,6’−Dmt−Lys−Phe−NH 2 の投与によるブタ腎臓アテローム硬化性動脈狭窄(ARAS)における経皮経血管性腎臓血管形成術(PTRA)後の腎臓損傷の低減
A. 要約
この実施例は、腎臓アテローム硬化性動脈狭窄(ARAS)に関連した腎臓損傷の防止および治療における芳香族陽イオン性ペプチドD−Arg−2’,6’−Dmt−Lys−Phe−NH2の使用を実証する。本発明の方法に従って、動物被験体に、ARASの期間とその後の経皮経血管性腎臓血管形成術(PTRA)による腎臓血管再生を施した。血管再生術の前および後の限定期間を含めてPTRAとともに、芳香族陽イオン性ペプチドを被験体に投与した。対照動物には、対照ビヒクル単独の注入なしまたはその注入を施した。対照被験体と比較して、ペプチドを摂取している被験体では、腎臓機能の多数の態様、例えば腎臓容積、腎臓血流量、糸球体濾過率、腎臓微小血管系密度、平均血管直径、血管蛇行率および腎臓酸素化が改善された。ペプチドの投与は、腎臓炎症、アポトーシス、繊維症および酸化ストレスも低減した。結果は、ペプチドD−Arg−2’,6’−Dmt−Lys−Phe−NH2が、ARASの治療におけるPTRAによる血管再生に関連した腎臓損傷を治療するかまたは防止する方法に有用である、ということを実証している。
B. 実験計画の大要
実験予定表の要約を、表7および図1に示す。実験はすべて、ガイドラインに従って実施され、所内動物管理使用委員会(IACUC)により承認された。被験体は、16週間の観察の間、若い雌被験体(Manthei Hog Farm, LLC, MN)で構成された(図1)。ベースラインでは、動物を正常(n=7)またはARAS(n=21)群で無作為化した。正常動物には正常ブタ用噛み餌を与え、ARAS被験体には高コレステロール餌(TD-93296、Harlan-Teklad, Indianapolis, IN, USA)(これは、以前に示されているように、RAS腎臓におけるコレステロールレベルおよび腎機能低下の増大、炎症および繊維症により特性化されるび漫性早期アテローム硬化症を誘導する)を与えた(表8参照)。
6週間の期間後、ARAS被験体には、主腎動脈中に局所刺激用コイルを入れることにより誘導される片側性RASを施し、一方、正常動物には擬似操作を施した。麻酔のために、動物にケタミンおよびキシラジン(0.5g)の筋肉内注射で誘導して、静脈内ケタミン(0.2mg/kg/分)およびキシラジン(0.03mg/kg/分)で麻酔を保持した。遠隔測定システム(Data Sciences International, St Paul, Minnesota, USA)を左大腿動脈中に埋め込んで、その後10週間、平均動脈圧(MAP)を継続的に測定した。
RAS誘導の6週間後に、動物を同様に麻酔して、狭窄の程度を血管造影法により測定し、被験体をPTRAまたはShamで治療した。手術中、加熱パッドで動物の体温を37℃まで保持して、PTRAおよびステント挿入を蛍光顕微鏡下で(以前の記述通りに)実施した。さらに、PTRAまたはShamの30分前から3.5時間後まで、0.050mg/kgのペプチドまたは等容量の生理食塩水ビヒクルの連続静脈内注入で、ARAS被験体を治療した。基線(ペプチド注入直前)、再灌流の30分後、および再灌流の180分後に、薬物動態分析のために、ならびに炎症および損傷バイおよびバイオマーカー用に、下大静脈(IVC)試料を採取した。ペプチド注入前およびPTRAの210分後に、尿試料を採取した。
4週間後、被験体を再び同様に麻酔して、狭窄の程度を血管造影により確定した。PRA、クレアチニンおよびコレステロール測定のために、IVC試料を採取した。尿試料を採取して、アルブミン濃度を定量した(ELISA、Bethyl Laboratories, Texas)。各腎臓における腎臓血行力学および機能を、多検出器コンピューター断層撮影(MDCT)を用いて査定した。
in vivo試験完了の3日後、動物をペントバルビタール・ナトリウム(100mg/kg、 Sleepaway(登録商標)、Fort Dodge Laboratories, Fort Dodge, Iowa, USA)で安楽死させた。腎臓を取り出し、切開して、ex vivo試験用に調製した。正常動物からの腎動脈を採取して、単離リングを、クレブス溶液を充てんした器官小室中に吊り下げて、ペプチドにおうとうする血管反応性を評価した。ミトコンドリア・バイオジェネシス、微小血管構築、アポトーシス、血管形成、炎症、酸化ストレス、尿細管損傷および繊維症を、ex vivoで評価した。
片腎腎臓血行力学および機能の査定のために、MDCT試験を実施した。イオパニドール(0.5mL/kg/2秒)の中心静脈注入後、140連続スキャンを実施した。横断画像を再構築して、Analyze(商標)ソフトウェアパッケージ(Biomedical Imaging Resource, Mayo Clinic, Rochester, MN)で分析した。皮質および髄質容積ならびに還流、RBFおよびGFRを、以前に詳細に記載されたように、算定した。
C. 方法
薬物動態分析
ベースライン(ペプチド注入直前)、PTRA直前、ならびに再還流後30分および180分に、4mLの静脈全血試料をペプチド処理動物から採取した。注射器を用いて、K2EDTA、10mL/管を含有するBD Vacutainer(登録商標)PST(商標)血漿分離管(ラベンダートップ)中に静脈血を入れた。管を静かに8回反転させて、遠心分離まで氷水浴中に保持した。1時間以内に、1000〜1300RCF(または約1500×G)で、4℃で15分間、スイングバケット式遠心分離機で試料を遠心分離した。血漿を個々の血液管から採取して、単一ポリプロピレン・バイアル(またはネジ蓋式管)中に入れて、検定まで約−80℃Cで保存した。
K2-EDTAブタ血漿中で、定性LC/MS/MS検定を用いて、D-Arg-2’,6’-Dmt-Lys-Phe-NH2の血漿濃度を確定した。検定は、重水素標識d5-D-Arg-2’,6’-Dmt-Lys-Phe-NH2を分析内部標準(IS)として用いた。要するに、試料に内部標準を加え、タンパク質沈殿抽出により処理し(回収率約90%)、Turbo Ion Spray(登録商標)MS/MS検出とともに逆相HPLCを用いて分析した。D−Arg−2’,6’−Dmt−Lys−Phe−NH2およびIS(d5−D−Arg−2’,6’−Dmt−Lys−Phe−NH2)に関する陽性(M+2H)2+イオンを、MRM方式でモニタリングした。標準に関する薬剤対ISピーク面積比を用いて、2.5〜1000ng/mLの範囲の線形較正曲線を作成した。検定精度に関する変動の日間係数は10%未満で、精度は3.6〜11.8%の範囲であった。
炎症および損傷マーカー
腫瘍壊死因子−α(TNF−α)(Invitrogen、カタログ番号KSC3011)、インターロイキン−1β(IL−1β)(R&D systems DY681)、単球走化性タンパク質(MCP−1)(Kingfisher Biotech、カタログ番号VS0081S−002)、顆粒球コロニー刺激因子(G−CSF)(NovaTein Bio.カタログ番号BG−POR11157)および形質転換増殖因子−β(TGF−β)のIVCレベルを、酵素結合免疫吸着検定法(ELISA)により、ベースライン(ペプチド注入前)ならびにPTRA後30分および180分で測定した。同様に、血清クレアチニンレベル(ベースライン、PTRA後30分および180分)ならびに8−エピ−イソプロスタンおよびタンパク質の尿中レベルを、ベースラインおよびPTRA後210分に標準手法により測定した。
血管反応性
ペプチド(またはビヒクル)に対する血管収縮および血管拡張応答を、前記と同様に、正常動物から腎動脈切片を切開し、クレブス溶液を充填した器官小室中に吊り下げて評価した。切開腎動脈切片(長さ2〜3mm、2個/動物)を、37℃でクレブス溶液(pH=7.4、95%O2および5%CO2)を充填した25ml器官小室中に吊り下げた。固定支柱に取り付けたその管腔を通したステンレスクリップおよびひずみ計を用いて、吊り下げた腎動脈切片により等尺性力を測定した。塩化カリウム(KCl、20mM)を用いることにより、血管リングを段階的に引っ張って、それらの長さ-張力関係に関する最適点を得た。
一旦、最適張力を確定したら、対照溶液で洗浄後、血管リングを30分間平衡させた。4つの血管リングにおいて、漸増用量のペプチド(10-9M〜10-4M)を投与して、血管収縮応答の存在に関して試験した。他の4つのリングでは、エンドセリン-1(10-7M)(Phoenix Pharmaceuticals, Mountain View, CA, USA)で前収縮処理後に漸増用量のペプチドを投与して、内皮細胞弛緩を評価した。WinDaq獲得ソフトウェア(DATAQ Instruments, Inc. Akron, OH, USA)を用いて、データを定量した。
アポトーシスおよびミトコンドリア・バイオジェネシス
TUNEL(Promega, Madison, WI, USA)およびカスパーゼ-3(1:200、Santa Cruz Biotechnology, Santa Cruz, CA, USA)で染色した腎組織切片で、アポトーシスを査定した。さらに、アポトーシス染色調節因子タンパク質Bcl−2(Lifespan BioSciences, Seattle, WA, USA; 1:1000)およびBax(Santa Cruz Biotechnology、1:200)の腎臓タンパク質発現を、ウエスタン・ブロットにより評価した。
PGC−1α(Abcam、 1:1000)、NRF−1(Abcam, Cambridge, MA, USA;1:300)、GABP(Abcam、 1:1000)、PPAR−α(Abcam、1:1000)、PPAR−δ(Abcam、1:300)、HO−1(Abcam、1:250)およびSIRT−1(Abcam、1:1000)の腎臓発現により、ミトコンドリア・バイオジェネシスを評価した。
微小血管構築および血管形成
微小血管構築を評価するために、放射線不透過性シリコーンポリマー(Microfil MV122;Flow Tech, Carver, MA, USA)を用いて生理学的還流圧下で、腎臓を還流した。マイクロCTスキャナーを用いて還流腎臓切片を走査し、Analyze(商標)を用いて再構築画像(18μmボクセル)を表示した。腎臓皮質微小血管(直径40〜500μm)の空間密度、平均直径および蛇行性を、前記と同様に算定した。さらに、VEGFおよびその受容体(VEGFR−1および2)の腎臓タンパク質発現(Santa Cruz Biotechnology;1:200)を、ウエスタン・ブロットにより測定した。
腎臓形態学および繊維症
コンピューター援用画像分析プログラムAxioVision(登録商標)4.8.2.0(Carl ZEISS SMT, Oberkochen, Germany)を用いて、マッソン三重染色で染色した各腎臓の5μm中腎門横断切片で、腎繊維症を査定した。尿細管間質性繊維症および糸球体スコア(100個の糸球体からの硬化性の%)を、15〜20視野で定量した。さらに、過ヨウ素酸シッフ(PAS)で染色した切片において、盲検方式で尿細管損傷をスコア付けした。要するに、尿細管損傷(拡張、肥大、円柱形成、細胞剥離または尿細管基底膜の肥厚)を、以下のように1から5までスコア付けした:0は正常である;1:損傷尿細管<10%;2:損傷尿細管10〜25%;3:損傷尿細管26〜50%;4:損傷尿細管51〜75%;5:損傷尿細管>75%。
炎症および酸化ストレス
MCP−1またはCD163(腎臓マクロファージの定量)で染色した組織切片において、そしてウエスタン・ブロットにより測定されるTNF−α(Santa Cruz Biotechnology; 1:200)のタンパク質発現により、腎臓炎症を査定した。
腎臓組織のジヒドロエチジウム(DHE)染色、8-エピ-イソプロスタン(EIAキット)の全身レベル、NADPH−オキシダーゼサブユニットp47(Santa Cruz、1:200)およびニトロチロシン(Cayman Chemical Co., Ann Arbor, MI, USA;1:200)の腎臓タンパク質発現により、酸化ストレスを査定した。
統計学的方法
JMPソフトウェアパッケージ・バージョン8.0(SAS Institute Inc., Cary, NC, USA)を用いて、全データを解析した。 シャピロ・ウィルク検定を用いて、正規性からの偏差に関して試験した。正規分布データに関する平均±標準偏差(SD)、および非正規分布データに関する中位(範囲)として結果を表した。パラメトリック(ANOVAおよび非対応スチューデントt検定)および非パラメトリック(Wilcoxon and Kruskal Wallis)検定を、適宜用いた。p≦0.05の値は、統計学的に有意であるとみなされた。
D. 結果
RASの誘導および軽減
RASの誘導の6週間後および血管再生前に、全ARAS動物において有意程度の狭窄が得られ(77.5%(65〜95%))、平均動脈圧(MAP)は同様に増大された(p<0.05対正常)(図3A)。
PTRA中のペプチドおよび損傷シグナルの循環レベル
全身血漿ペプチド濃度は、注入後30分までに治療レベル(〜100ng/mL)に増大し、その後、注入の60〜90分後に、注入の末期の間中、見かけの定常状態濃度に達した(表9)。
単球走化性タンパク質(MCP-1)の全身血漿レベルは、同様に、ARAS+PTRA+ビヒクルおよびARAS+PTRA+ペプチド動物(図1B、ともにp<0.05対ベースライン)において血管再生後に増大した。腫瘍壊死因子(TNF)−α、インターロイキン(IL)−1β、顆粒球コロニー刺激因子(G−CSF)、形質転換増殖因子(TGF)−βおよびクレアチニンの全身レベルは、尿タンパク質および8-エピ-イソプロスタンレベル(図2A〜B)と同様に、血管再生後も依然として変化しなかった(図1C〜G)。
薬物動態分析
ペプチドIV注入をPTRA手順の30分前に開始して、0.05mg/kg/hで210分間継続した。注入まで30分(PTRA手順の時間)での平均血漿レベルは、100.6ng/mLであった(表7)。血漿濃度は増大し続けて、約60〜90分で見かけの定常状態濃度(〜125ng/mL)に達し、注入末期を通して定常状態レベルを保持した。
血管反応性
漸増量のD−Arg−2’,6’−Dmt−Lys−Phe−NH2に曝露された単離腎動脈リングは、直径の変化を示さなかった(図2C〜D)。この結果は、ペプチドが、血管収縮も血管拡張も誘導しない、ということを示唆している。
PTRAの4週間後の腎臓機能および構造
表8は、PTRAまたはshamの4週間後の全群における全身パラメーターを示す。残留狭窄はPTRA治療動物においては観察されず、MAPは正常レベルに減少した(図3B)。血清クレアチニンレベルは、正常と比較して全ARASで上昇した(すべてp<0.05対正常)が、しかし血漿レニン活性(PRA)および尿アルブミンレベルは正常被験体と同様であった。総コレステロールレベル、高密度リポタンパク質(HDL)および低密度リポタンパク質(LDL)は、正常と比較して、全ARASで高かった。
D−Arg−2’,6’−Dmt−Lys−Phe−NH 2 は腎臓血行力学および機能を改善した
血管再生の4週間後、皮質および髄質容積は、正常動物と比較して、全ARASで同様に低かった(図3B)。これに対比して、皮質および髄質還流、RBFおよびGFR(ARASでは有意に低減され、PTRA単独によって変化は認められなかった)は、ペプチド治療被験体では正常レベルに回復した(図3C〜E、すべてp<0.05対正常)。
D−Arg−2’,6’−Dmt−Lys−Phe−NH 2 はアポトーシスを減少し、ミトコンドリア・バイオジェネシスを促した
末端デオキシヌクレオチジル・トランスフェラーゼdUTPニック末端標識(TUNEL)およびカスパーゼ−3に関して陽性であるアポトーシス細胞の数は、正常と比較した場合、ARASおよびARAS+PTRA+ビヒクルにおいて増大したが、しかしARAS+PTRA+ペプチド被験体では減少した(図4A〜B)。B細胞リンパ腫(Bcl)−2の腎臓発現は群間で異なったが、しかしPTRA中のペプチドによる治療は、前アポトーシスタンパク質Bcl−2−関連Xタンパク質(Bax、図4C〜D)のその後の発現を有意に低減した。
D−Arg−2’,6’−Dmt−Lys−Phe−NH2は、さらにまた、PGC−1α、核呼吸因子(NRF)−1、GA−結合タンパク質(GABP)およびペルオキシソーム増殖因子活性化受容体(PPAR)−αの発現を上方調節した(図4C〜D)。ヘムオキシゲナーゼ(HO)−1およびPPAR−δの腎臓発現は、全ARAS群において依然として同様に鈍いままであった。血管再生(補助的ペプチドを伴うかまたは伴わない)は、ARASで観察されたサーチュイン(SIRT)−1の下方調節化発現を正常レベルに回復した(図4C〜D、p>0.05対正常)。
D−Arg−2’,6’−Dmt−Lys−Phe−NH 2 は微小血管網を改善した
腎臓皮質微小血管の空間密度は、ARASおよびARAS+PTRA+ビヒクル動物において同様に低かったが、しかしPTRA中にペプチドで治療された被験体においては正常レベルと異ならなかった(図5A)。さらに、平均血管直径および蛇行性は、ARASおよびARAS+PTRA+ビヒクルにおいて同様に増大されたが、しかしペプチド治療被験体において改善された(図5B)。VEGFおよびその受容体(VEGFR−1および2)の腎臓発現は、正常と比較して、ARASにおいては低く、PTRA+ビヒクルで治療された動物においては依然として低減されたままであった。しかしながら、PTRA+ペプチドによる治療は、それらを正常と同様のレベル(VEGFR−1およびVEGFR−2)または正常を上回るレベル(VEGF)に回復させた(図5C)。
酸化ストレスはD−Arg−2’,6’−Dmt−Lys−Phe−NH 2 で治療された動物において減少した
8−エピ−イソプロスタンの全身レベルは、正常と比較して、ARASおよびARAS+PTRA+ビヒクルにおいて増大されたが、しかしARAS+PTRA+ペプチド被験体においては正常レベルに減少された(表8、p>0.05対正常)。同様に、狭窄後腎臓におけるスーパーオキシド陰イオンのin-situ産生は、ARASおよびARAS+PTRA+ビヒクルにおいて有意に増大されたが、しかし、p47およびニトロチロシンの腎臓発現(図6B、ともにp>0.05対正常)と同様に、ペプチドで治療された動物においては正常と異ならないレベルに減少された(図6A)。
炎症はペプチド治療被験体において根絶された
MCP−1免疫反応性は、ARASおよびARAS+PTRA+ビヒクルにおいては等しく上方調節されたが、しかし腎臓に浸潤するCD163+マクロファージの数と同様に、ペプチドで治療された被験体において改善された(図7A〜B)。同様に、TNF−αの腎臓発現増大は、ペプチド治療被験体においてのみ正規化された(図7C)。
PTRA中の炎症および損傷マーカー
単球走化性タンパク質(MCP-1)の血漿レベルは、ARAS+PTRA+ビヒクルおよびARAS+PTRA+ペプチド動物において、血管再生後に同様に増大した(図1B、ともにp<0.05対ベースライン)。しかしながら、腫瘍壊死因子(TNF)−α、インターロイキン(IL)−1β、顆粒球コロニー刺激因子(G−CSF)、形質転換増殖因子(TGF)−βの血漿レベル、または血清クレアチニンレベルは、血管再生直後に変化しなかった(図1C〜G)。
タンパク尿ならびに8-イソプロスタンおよびTGF-βの尿中レベルは、PTRA後も依然として変化しなかった(図2A〜B)。
ペプチドによる治療は尿細管傷害および腎臓瘢痕を減少させた
尿細管損傷スコアは、全ARAS群においては正常より高かった(すべてp<0.05)が、しかしARAS+PTRA+ペプチド被験体においては、根絶はされなかったが、有意に減少された(図8A)。
前繊維症マーカー フィブロネクチンおよびコラーゲンIVの免疫染色は、ARASおよびARAS+PTRA+ビヒクルにおいて増大されたが、しかしペプチド治療被験体においては低減された(図8B〜C)。尿細管間質性繊維症および糸球体スコアも、正常と比較して、全ARASにおいて高かったが、しかしARAS+PTRA+ペプチド被験体においては有意に低減された(図9A〜B)。プラスミノーゲン活性因子阻害剤(PAI)−1の腎臓発現は、両PTRA群で有意に弱められた(ともにp>0.05対正常)が、しかし、TGF−β1発現は、ペプチド治療被験体においてのみ、正常レベルに回復された(図9C)。
E. 考察
本試験は、アテローム硬化性腎血管性疾患における血管再生に対する腎臓応答減衰におけるmPTP開口の関与を実証する。さらに、それは、ブタARASにおける閉塞性腎動脈病変の血管再生後の腎臓構造的および機能的結果を保持するためのミトコンドリア標的化ペプチドに関する新規の役割を確立する。血管再生の4週間後、ミトコンドリア・バイオジェネシスは、ARAS+PTRA+ペプチド被験体で上方調節されたが、一方、酸化ストレス、細胞アポトーシス、微小血管粗鬆化および組織損傷は、それらの狭窄後腎臓において改善された。さらに、狭窄性腎臓還流、RBFおよびGFRはペプチド治療被験体で正規化されたが、これは、アテローム硬化性腎臓血管性疾患における腎臓機能結果を改善するためにPTRAと協力するペプチドの腎臓保護作用を明示している。このようなものとして、D−Arg−2’,6’−Dmt−Lys−Phe−NH2は、ミトコンドリア・バイオジェネシスを上方調節するための方法において有用であり、狭窄後腎臓を有する被験体における酸化ストレス、細胞アポトーシス、微小血管粗鬆化および組織損傷を減少させる。さらに、芳香族陽イオン性ペプチドD−Arg−2’,6’−Dmt−Lys−Phe−NH2は、アテローム硬化性腎臓血管性疾患における腎臓機能的結果を改善するためにPTRAと協力する腎臓保護作用を提供するための方法において有用である。
ARASは、酸化的傷害、アポトーシス、炎症および間質性繊維症を増大するいくつかの機序を活性化して、腎機能悪化をもたらし、そして閉塞腎動脈の血管再生は、潜在的に限定的な治療選択肢として出現した。さらにまた、ステント挿入法+投薬療法と投薬療法単独を比較する大規模無作為化対照試験は、腎動脈開存性の改善と血管再生後の腎臓結果との間の乖離を示した。PTRAは狭窄性ブタ腎臓における構造的および機能的悪化を逆転できなかった、ということが以前に示されており、これは、継続的アポトーシスおよび酸化ストレスを伴い、ARASにおける腎機能を改善するためにPTRAと組み合わせたより有効な戦略の必要性を強調している。
PTRA中の腎組織傷害を永続させる機序の1つは急性IRIであり、これは、ROSの産生および炎症機序の活性化を包含する。さらに、実験および臨床データは、IRI後の細胞死を加速するに際してのmPTP開口の役割を支持する。ROSの過剰産生は、mPTP開口および細胞基質中へのチトクロームの放出をもたらし、これは、アポトーシス(カスパーゼ3および9を活性化することによる)だけでなく、細胞基質中へのミトコンドリアROSの放出に派生する尿細管傷害も誘発する。それゆえ、mPTPを選択的に標的にする治療的介入は、細胞保護を付与し、腎不全への進行を緩和する。
いくつかの動物モデルにおける従来の研究は、アポトーシスを抑制し、酸化ストレスを弱めることにより、ミトコンドリア標的化ペプチドの保護作用を実証している。抗アポトーシス作用(mPTPの開口の抑制により達成される)のほかに、ROSを補足し、ミトコンドリア内膜(ROS産生のための主要部位)で濃縮するそれらの能力は、他の抗酸化剤療法と比較して、酸化ストレスを抑制するための並外れた効能を有するこれらの小ペプチドを提供する。実際、血管再生直前のシクロスポリン(mPTPの強力な阻害剤)による治療は、急性心筋梗塞を有する患者におけるより小さな梗塞と関連しており、これらの治療的介入の臨床的重要性を強調する。しかしながら、その治療能力は、少なからぬ副作用により制限される。
D−Arg−2’,6’−Dmt−Lys−Phe−NH2は、ミトコンドリア内膜において極端に高い濃度に達して、抗アポトーシスおよび酸化防止特性を発揮する細胞透過性テトラペプチドである。他のmPTP阻害剤と違って、本発明の技法のペプチドは、既知の免疫抑制作用を有さない。実験的げっ歯類モデルにおける近年の研究は、梗塞サイズを低減し、高血圧性心筋症を弱めるに際しての本発明の技法のペプチドの有益な作用を示した。さらに、それは、急性虚血再灌流損傷および片側性尿管閉塞のラットモデルにおいて、間質性繊維症を防止し、尿細管細胞再生を加速し、このことは、損傷腎臓の機能および構造を保持するためのこの薬剤に関する効能を示唆している。この試験は、PTRA中のD−Arg−2’,6’−Dmt−Lys−Phe−NH2による治療が、ミトコンドリア・バイオジェネシスを回復し、アポトーシスおよび酸化ストレスを弱めて、結局、慢性ブタARASにおける腎機能改善をもたらす。
D−Arg−2’,6’−Dmt−Lys−Phe−NH2の強力な抗アポトーシス作用は、この試験では、TUNEL+カスパーゼ-3+細胞の数の低減により反映された。さらに、前アポトーシスタンパク質Baxの腎臓発現は、ペプチド治療被験体において実質的に減少され、これは、アポトーシスの開始を防止するよう配向される療法の有効性を生じる。付加的には、PTRA+D−Arg−2’,6’−Dmt−Lys−Phe−NH2による治療は、NAD(P)H-オキシダーゼ(p47phox)およびニトロチロシンのROS産生および発現低減により立証されるように、酸化ストレスマーカー8-イソプロスタンの全身レベルおよび腎臓酸化ストレスを低減した。
D−Arg−2’,6’−Dmt−Lys−Phe−NH2治療後の全身性および腎臓性酸化ストレスにおけるこの低減は、狭窄腎臓における微小血管網の保存に寄与したと思われる。ROSの産生の増大または延長は、腎臓微小血管の完全性を危うくして、腎臓損傷の進行および血管再生に対する応答の重要な決定因子であるリモデリングまたは粗鬆化をもたらす。近年の研究において、微小血管損失は、皮質微小血管の空間密度増大および平均直径減少において反映されるように、ARAS+PTRA+D−Arg−2’,6’−Dmt−Lys−Phe−NH2被験体において弱められたが、一方、微小血管未成熟を反映する蛇行性は減少した。理論に縛られずに考えると、D−Arg−2’,6’−Dmt−Lys−Phe−NH2は、さらにまた、血管細胞アポトーシスを鈍らせ、血管形成を促進することにより微小血管損失を防止し得たが、これは、血管形成因子VEGFおよびその受容体の腎臓発現増大により示唆される。
腎臓炎症は、ARASにおける疾患進行の重要決定因子である。酸化ストレス増大は、狭窄性ブタ腎臓におけるマクロファージおよびリンパ球の浸潤と関連しており、これは、血管再生に対する不十分な腎臓応答と関連づけられ、長期酸化防止剤補足により弱められる、ということが従来示されている。注目すべきは、MCP-1の正規化尿細管-間質性発現により立証されるように、PTRA中のD−Arg−2’,6’−Dmt−Lys−Phe−NH2による短期治療が、4週間後に腎臓炎症を根絶したことであったが、これは、狭窄性腎臓におけるCD163マクロファージの浸潤低減を説明し得た。その強力な抗炎症作用は、前炎症性サイトカインTNF-αの正規化腎臓発現によっても支持された。重要なことは、D−Arg−2’,6’−Dmt−Lys−Phe−NH2での治療後に減少された炎症、酸化ストレスおよびアポトーシスが、すべて、尿細管傷害を弱め得たことで、これは尿細管損傷スコア低減により反映される。したがって、D−Arg−2’,6’−Dmt−Lys−Phe−NH2は、尿細管刷子縁を保存し、尿細管細胞剥離を最小限にすることにより、ラットにおける急性虚血誘導性尿細管傷害を弱めた。
ミトコンドリア・バイオジェネシスは、ペプチドで治療された動物において促進され、PGC-1α、NFR-1、GABPおよびPPAR-αのレベル回復により明らかにされたが、これは酸化ストレスおよび炎症の改善におけるこの経路の活性化に関与する。NRF-1およびGABP(NRF-2としても知られている)のPGC-1α媒介性活性化は、NAD(P)H:キノンオキシドレダクターゼ(NQO1)のような解毒酵素の発現を調節するヒト酸化防止剤応答因子(hARE)を結合することにより、酸化ストレスに関与する多数の遺伝子の発現を調節する。さらに、ペプチド誘導性ミトコンドリア・バイオジェネシスは、HO-1酵素活性を増大することによりマクロファージおよび内皮細胞炎症応答を調節する腎臓において高度に発現される転写因子であるPPAR-αの発現を上方調節したが、しかし、HO-1発現は、D−Arg−2’,6’−Dmt−Lys−Phe−NH2治療群では抑圧されたままであった。同様に、PPAR-δおよびSIRT-1の腎臓発現は、ペプチド治療被験体においては依然として下方調節されたままで、これは、PTRA後のD−Arg−2’,6’−Dmt−Lys−Phe−NH2誘導性炎症減衰にそれらが保護的に寄与することと反対の結論を示している。総合すると、これらの観察は、PTRA中のD−Arg−2’,6’−Dmt−Lys−Phe−NH2の補助的注入が、ミトコンドリア・バイオジェネシスの急性低下を防止し得た、ということを示し、これは、4週間後に持続される腎臓機能および構造改善を説明し得た。
PTRA+D−Arg−2’,6’−Dmt−Lys−Phe−NH2による治療は、尿細管-間質性および糸球体繊維症を4週間後に減少させるが、これは、フィブロネクチンおよびコラーゲンIV含量減少と関連した。さらに、繊維形成因子TGF-βおよびPAI-1の腎臓発現は、ペプチド治療動物で正規化され、おそらくは、腎臓酸化ストレスレベル減少により助長される。次いで、これらは、ペプチド治療被験体における腎臓血行力学および機能改善に寄与し得たが、これは正規化単腎還流、RBFおよびGFRにより立証され、ARASにおける腎機能不全を減じるためのペプチドの実現可能性を強調する。しかしながら、これらの作用は、in vitroでのペプチドに応答する腎臓血管反応性の欠如を考えると、血管の調子の直接的調節のためとは思われない。狭窄性腎臓GFRの改善にもかかわらず、血清クレアチニンレベルは依然としてわずかに高いままで、おそらくは、高コレステロール血症に関連した非狭窄性腎臓における何らかの残留性または高血圧性傷害あるいは腎機能不全のためであり、残存する異脂肪血症に対するより標的化された治療を保証し得る。
PTRA後3時間枠内に炎症または酸化媒介物質の検出可能な急性変化は認められなかったが、但し、MCP-1は増大しており、これはD−Arg−2’,6’−Dmt−Lys−Phe−NH2により影響されなかった。PTRA中のD−Arg−2’,6’−Dmt−Lys−Phe−NH2への曝露は、4週間後に持続された強力な保護作用を付与するのに十分であった。
ARASのこのブタモデルは、早期アテローム硬化症の作用を再現し、臨床的に適用可能なツールを用いて単腎機能および構造を試験するのを可能にして、腎臓機能を改善し、ARAS腎臓におけるアポトーシスおよび繊維症への進行を低減するためのペプチドの潜在的作用を査定する機会を提供する。
総合的には、これらの結果は、アテローム硬化性腎臓血管性疾患の血管再生におけるmPTP開口の重要性を強調し、ブタARASにおけるアポトーシス、炎症および酸化ストレスを減少させるためにPTRAと協力するD−Arg−2’,6’−Dmt−Lys−Phe−NH2の腎臓保護作用を明示する。さらに、D−Arg−2’,6’−Dmt−Lys−Phe−NH2による治療は、ミトコンドリア・バイオジェネシスを上方調節し、血管形成を改善して、結局は、ARASにおける血管再生後の腎臓血行力学および機能を改善した。これらの結果は、慢性腎臓血管性疾患におけるPTRA御の応答の改善に際してのD−Arg−2’,6’−Dmt−Lys−Phe−NH2に関する独特の役割を明らかにした。
これらの結果は、本発明の技法のペプチドD−Arg−2’,6’−Dmt−Lys−Phe−NH2が、RASを有する被験体におけるPTRAによる血管再生に関連した腎臓損傷の治療および防止のための方法において有用である、ということを実証している。特に、これらの結果は、D−Arg−2’,6’−Dmt−Lys−Phe−NH2の投与が再灌流関連損傷に対して微小血管を保護し、非治療対照と比較して改善された腎機能をもたらし、そしてRASに関して治療された被験体の予後改善をもたらす、ということを実証する。
実施例2: D−Arg−2’,6’−Dmt−Lys−Phe−NH 2 の投与によるヒトアテローム硬化性動脈狭窄(ARAS)における経皮経血管性腎臓血管形成術(PTRA)後の腎臓損傷の低減
A. 要約
この実施例は、ヒトにおける腎臓アテローム硬化性動脈狭窄(ARAS)に関連した腎臓損傷の防止および治療における芳香族陽イオン性ペプチドD−Arg−2’,6’−Dmt−Lys−Phe−NH2の使用を実証する。本発明の方法に従って、ARASを有するヒト被験体は、経皮経血管性腎臓血管形成術(PTRA)による腎臓血管再生を受けた。血管再生術の前および後の限定期間を含めてPTRAとともに、芳香族陽イオン性ペプチドを被験体に投与した。対照被験体には、対照ビヒクル単独の注入なしまたはその注入を施した。対照被験体と比較して、ペプチドを摂取している被験体では、腎臓機能の多数の態様、例えば腎臓容積、腎臓血流量、糸球体濾過率、腎臓微小血管系密度、平均血管直径、血管蛇行率および腎臓酸素化が改善されると予測される。結果は、ペプチドD−Arg−2’,6’−Dmt−Lys−Phe−NH2が、ヒトでのARASの治療においてPTRAによる血管再生に関連した腎臓損傷を治療するかまたは防止する方法に有用である、ということを実証している。
B. 実験計画の大要
ARASを有するヒト被験体を、実験群と対照群に無作為化する。被験体をステント挿入を伴うPTRAにより治療し、PTRAの30分前の時点からPTRA後3時間まで、芳香族陽イオン性ペプチドD−Arg−2’,6’−Dmt−Lys−Phe−NH2(0.05mg/kg IV)を補助的連続注入する。要するに、タンタルステントにより包まれるバルーンカテーテルを蛍光顕微鏡ガイダンス下で腎動脈の近位中央断面に噛み合わせ、膨らませると、完全直径に拡大して、管腔開口を回復する。バルーンを萎ませて、取り出し、ステントを血管壁に埋め込まれたままにしておく。実験被験体を、PTRAの30分前から3時間半後まで、D−Arg−2’,6’−Dmt−Lys−Phe−NH2(0.05mg/kg)の単一連続静脈内注入で治療する。対照被験体には、注入を施さないか(「無注入対照」)または生理食塩水ビヒクルのみを注入する(「ビヒクル対照」)。PTRAの4週間後、血管造影により狭窄の程度を確定し、全身および腎静脈血液試料の両方を、血漿レニン活性およびクレアチニン測定のために採取する(GammaCoat PRAキット; DiaSorin, Inc., Stillwater, Minnesota, USA)。各腎臓における腎臓血行力学および機能を、MDCTを用いて査定し、腎臓酸素化をBOLD MRIにより査定する。
C. 方法
血中酸素レベル依存性磁気共鳴画像処理(BOLD-MRI) - PTRAの4週間後に、BOLD-MRIを3 Tesla (Signa Echo Speed; GE Medical Systems, Milwaukee, WI)で実施して、カスタマイズ化腹部器官プロトコールを用いて、腎臓の髄質および皮質領域におけるR2*レベルを測定する。BOLD法の原理は、以前の出版物で詳細に記載されている。要するに、常磁性分子は、磁場摂動を誘導する。血中で、オキシヘモグロビンは反磁性であり、その濃度はT2*に影響を及ぼさないが、しかしデオキシヘモグロビンは常磁性であり、組織T2*を減少させる。したがって、勾配MRI獲得のエコー時間が増大すると、MRIシグナル減衰は、デオキシヘモグロビンの濃度増大に伴って増大する。Ln(強度)対エコー時間の傾斜は緩和時間率R2*(=1/T2)と等しく、デオキシヘモグロビンの濃度と直接的に比例する。ベースラインBOLD獲得後、フロセミド(20mg)を静脈内投与して、2mlの生理食塩水で洗い流す。BOLD測定を、15分後に反復する。データ分析のために、各実験期間における最良の解剖学的詳細を提供する7-msエコー時間画像で、皮質および髄質において当該領域を手動でトレースする。各エコー時間に関して、ソフトウェアは、各々の当該領域内のMRシグナルの平均を自動的に計算する。BOLDシグナルが、緩和性R2*により特性化されるように、次いで測定される。ベースラインからフロセミドまでのR2*の変化は、「デルタ-R2*」として確定される。
多検出器コンピューター断層撮影(MDCT) - BOLD MRIの1〜2日後に、MDCTを用いて各腎臓における腎臓血行力学および機能を査定する。MDCTは、単腎容積、局部的還流、血流量、糸球体濾過率(GFR)および尿細管機能の精確且つ非侵襲的定量を提供する超速スキャナーである。要するに、イオパミドール(0.5mL/kg/2秒)の中心静脈注入後の45連続スキャン後に、画像が得られる。MDCT画像は、Analyzeソフトウェアパッケージ(Biomedical Imaging Resource, Mayo Clinic, MN, USA)を用いて再構成され、表示される。大動脈、腎臓皮質および髄質からの横断面画像から、当該領域を選択する。各領域における平均組織減衰を経時的にプロットし、曲線適合アルゴリズムにより適合させて、腎機能の測定値を得る。皮質および髄質容積を、皮質および髄質還流の生成物ならびに対応する容積の和として、Analyze(Biomedical Imaging Resource, Mayo Clinic, MN, USA)およびRBFを用いて算定する。近位尿細管曲線の傾斜を用いて、皮質曲線からGFRを算定する。アセチルコリン(Ach)(5μg/kg/分)の10分副腎注入の終わりに向けて、15分後に同一手順を反復して、内皮依存性微小血管反応性を試験する。頸動脈から導入されるトラッカーカテーテル(Prowler Microcatheter, Cordis, Miami, FL, USA)を、Achの注入のために腎動脈上に配置する。したがって、血行力学および機能は、ベースラインでの安定3分観察期間およびAch注入中に測定される。
血漿硝酸塩/亜硝酸塩レベル - メーカーの使用説明書に従って、市販のキット(酸化窒素定量キット、Active Motif, Carlsbad, CA)を用いて2段階検定により、血漿硝酸塩/亜硝酸塩レベルを定量する。
薬物動態分析:
血液試料採取および取扱い
1.生物分析的検定開発のための対照血液試料採取: 20mLの静脈全血試料を採取する。K2EDTA(10mL/管)を含有するBD Vacutainer(登録商標)PST(商標)血漿分離管(lavender top)中に、注射器を用いて静脈血を引き抜く。管を静かに8回反転させて、遠心分離まで氷水浴中に保持した。血液試料採取後1時間以内に、1000〜1300RCF(または約1500×G)で、4℃で15分間、スイングバケット式遠心分離機で試料を遠心分離する。血漿を個々の血液管から採取して、単一ポリプロピレン・バイアル(またはネジ蓋式管)中に入れて、−70℃で保存する。
2.PKおよびバイオマーカー分析のための血液試料採取: 静脈全血試料を、PK分析のために、ならびにバイオマーカー分析、および以下で特定される時点でのその他の炎症バイオマーカーのために、採取する。
(i)PK分析: K2EDTAを含有するBD Vacutainer(登録商標)PST(商標)血漿分離管(lavender top)中に、注射器を用いて、以下の時点で4mL静脈全血を採取する:D−Arg−2’,6’−Dmt−Lys−Phe−NH2注入直前、PTRA直前、ならびに再灌流後30、60および180分。PK血液管を静かに混合し、直ちに氷中に入れる(氷浴または砕氷)。採取の30分以内に、1500×Gで4℃で15分、試料を遠心分離した後、2つの血漿アリコート(各々約0.5mL)を取り出し、直ちにネジ蓋付ポリプロピレン管中に入れる。個々の血漿試料をドライアイス上で急速冷凍して、分析まで−70°C±15°Cで保存する。
(ii)バイオマーカー分析: BD Vacutainer(登録商標)PST(商標)血漿分離管(lavender top)中に、以下の時点で4mL静脈全血を採取する:D−Arg−2’,6’−Dmt−Lys−Phe−NH2注入直前、PTRA直前、ならびに再灌流後30、60および180分。充填後、管を少なくとも5回反転させる。管を約1時間室温に保持して、血液を凝固させ、血清試料を収集するために遠心分離する。血清が生じない場合は、以下のベースライン参照を用いる:凝固後、スイングバケット中での遠心分離を、室温で固定角ローター中で、1000〜1300RCFで10分間または15分間実施する。血清を5本のポリプロピレン管中に収集し(各々約0.5mLの血清を含有する)、−70℃で保存する。
尿試料採取および取扱い
1.生物分析的検定開発のための対照尿試料採取: 10mLの対照尿試料を、各被験体から採取する。試料を、約1500×Gで10分間、遠心分離して、あらゆる破砕屑を除去する。試料をポリプロピレン・バイアル中に入れて、−70℃で保存する。
2.D−Arg−2’,6’−Dmt−Lys−Phe−NH 2 測定のための尿試料採取: D−Arg−2’,6’−Dmt−Lys−Phe−NH2注入の最後(210分)に、あらかじめ計量した容器中に出して膀胱を空にする。試料と容器の併合重量を測定して、記録する。十分に混合した後、2つの10mLアリコートをラベルを貼ったネジ蓋式ポリプロピレン管中に分配する。個々の尿試料をドライアイス上で急速冷凍して、試験まで−70℃±15℃で保存する。
統計学的方法
結果を、平均±SEMとして表す。対応スチューデントt検定を用いて群内の比較を、ANOVAを用いて群間の比較を実施し、その後、テューキー検定を実施する。全検定に関する統計学的有意は、p≦0.05に関して許容される。
D. 結果
PTRA後、全被験体が、正常対照の値に匹敵するレベルへの平均動脈圧の低下を示す(p>0.05)、と予測される。さらに、PTRAと一緒にD−Arg−2’,6’−Dmt−Lys−Phe−NH2注入を受けている被験体は、対照被験体と比較して、改善された腎臓容積、腎臓血流量、糸球体濾過率、腎臓微小血管密度、平均血管直径、血管蛇行率および腎臓酸素化を示す。
E. 結論
これらの結果は、本発明の技法のペプチドD−Arg−2’,6’−Dmt−Lys−Phe−NH2が、RASを有するヒト被験体において、PTRAによる血管再生に関連した腎臓損傷の治療および防止のための方法に有用である、ということを実証する。特に、これらの結果は、ペプチドの投与が再灌流関連損傷に対して腎臓微小血管を保護して、対照被験体と比較して改善された腎機能を、そしてRASに関して治療された被験体に関する改善された予後をもたらす、ということを実証する。
実施例3: D−Arg−2’,6’−Dmt−Lys−Phe−NH 2 の投与によるブタアテローム硬化性腎臓動脈狭窄(ARAS)における腎臓悪化の低減
A. 要約
この実施例は、D−Arg−2’,6’−Dmt−Lys−Phe−NH2の投与が、血管介入で治療されないARAS被験体における腎細胞アポトーシスおよび炎症、酸化ストレス、繊維症、ならびに腎臓機能的-構造的悪化を弱める、ということを実証する。この実施例の結果は、PTRAに関する候補でないARAS被験体に特に関係がある。
B. 実験計画の大要
10週間のARAS後、ならびにD−Arg−2’,6’−Dmt−Lys−Phe−NH2または生理食塩水ビヒクルの長期皮下(SC)注入4週間後、ブタの2つの群を試験する(表11、12)。多検出器コンピューター断層撮影および血中酸素レベル依存性磁気共鳴を用いて、D−Arg−2’,6’−Dmt−Lys−Phe−NH2またで治療されない、または治療された被験体において、単腎容積、還流、腎臓血流量、糸球体濾過率および酸素化を試験する。埋め込み可能な遠隔測定用送量装置を用いて、血圧を毎日追跡する。腎臓炎症、アポトーシス、繊維症、血管形成および酸化ストレスに及ぼすD−Arg−2’,6’−Dmt−Lys−Phe−NH2の作用を、標準in vitroプロトコールを用いて査定する。腎臓微小血管構築に及ぼすD−Arg−2’,6’−Dmt−Lys−Phe−NH2の作用を、マイクロコンピューター断層撮影を用いてex vivoで試験する。
所内動物管理使用委員会(IACUC)による承認後、16週間の観察期間中、14匹のブタ(50〜60kg)を試験する。ベースラインで、全被験体は、び漫性早期アテローム硬化症が狭窄に先行する臨床状況をシミュレートするために、2%コレステロールおよび15%ラードを含有する高コレステロール餌を開始する(表12)。6週間後、ARAS被験体を、0.5gの筋肉内ケタミンおよびキシラジンで麻酔して、静脈内ケタミン(0.2mg/kg/分)およびキシラジン(0.03mg/kg/分)で麻酔を保持した。主腎動脈中に局所刺激用コイルを入れることによりRASを誘導し、これは、Chade et al., FASEB J 2006; 20: 1706-1708に記載されたように、片側性RASの漸次発症をもたらす。
RAS(またはsham)の誘導後、遠隔測定システムを左大腿動脈中に埋め込んでMAPを測定し、さらに10週間動物を追跡調査する。各試験前の最後の2週間における平均MAPを算定する。RASの誘導の6週間後に、動物を同様に麻酔して、狭窄の程度を血管造影法により測定する。sham手順を全被験体で実施するが、これは、腎動脈の評価と、造影剤注入を伴う選択的腎臓血管造影を包含する。さらに、7匹のARAS被験体は、毎週5日、毎日1回、生理食塩水中の0.1mg/kgのD−Arg−2’,6’−Dmt−Lys−Phe−NH2の長期SC注入による治療を開始する。生理食塩水ビヒクルを、他の7匹のARAS被験体に投与する(表12)。
4週間後、被験体を再び同様に麻酔する。狭窄の程度を血管造影により確定し、全身および腎臓静脈の両方の血液試料を、血漿レニン活性(GammaCoat PRAキット; DiaSorin, Inc., Stillwater, Minnesota, USA)、およびクレアチニン測定のために採取する。各腎臓における腎臓血行力学および機能を、多検出器コンピューター断層撮影(MDCT)を用いて査定し、腎臓酸素化を血中酸素レベル依存性磁気共鳴画像処理(BOLD MRI)により査定する(表13)。
全試験完了後、被験体を、100mg/kgという致死静脈内用量のペントバルビタール・ナトリウム(Sleepaway、Fort Dodge Laboratories, Fort Dodge, Iowa, USA)で安楽死させる。腹膜後切開を用いて腎臓を取り出し、直ちに切開して、切片を液体窒素中で凍結させ(そして−80℃で保持)、あるいはin vitro試験のためにホルマリン中で保存する(表13)。
C. 方法
血中酸素レベル依存性磁気共鳴画像処理(BOLD-MRI) - 注入の4週間後に、BOLD-MRIを3 Tesla(Signa Echo Speed; GE Medical Systems, Milwaukee, WI)で実施して、前記と同様に、カスタマイズ化腹部器官プロトコールを用いて、腎臓の髄質および皮質領域におけるR2*レベルを測定する。呼吸一時停止中に、MRI実験を実施する。BOLD法の原理は、以前の出版物で詳細に記載されている。要するに、常磁性分子は、磁場摂動を誘導する。血中で、オキシヘモグロビンは反磁性であり、その濃度はT2*に影響を及ぼさないが、しかしデオキシヘモグロビンは常磁性であり、組織T2*を減少させる。したがって、勾配MRI獲得のエコー時間が増大すると、MRIシグナル減衰は、デオキシヘモグロビンの濃度増大に伴って増大する。Ln(強度)対エコー時間の傾斜は緩和時間率R2*(=1/T2)と等しく、デオキシヘモグロビンの濃度と直接的に比例する。ベースラインBOLD獲得後、フロセミド(20mg)を耳静脈カテーテル中に静脈内投与して、2mlの生理食塩水で洗い流す。BOLD測定を、15分後に反復する。データ分析のために、各実験期間における最良の解剖学的詳細を提供する7-msエコー時間画像で、皮質および髄質において当該領域を手動でトレースする。各エコー時間に関して、ソフトウェアは、各々の当該領域内のMRシグナルの平均を自動的に計算する。BOLDシグナルが、緩和性R2*により特性化されるように、次いで測定される。最後に、ベースラインからフロセミドまでのR2*の変化は、「デルタ-R2*」として確定される。
多検出器コンピューター断層撮影(MDCT) - BOLD MRIの1〜2日後に、MDCTを用いて各腎臓における腎臓血行力学および機能を査定する。MDCTは、単腎容積、局部的還流、RBF、GFRおよび尿細管機能の精確且つ非侵襲的定量を提供する超速スキャナーである。要するに、イオパミドール(0.5mL/kg/2秒)の中心静脈注入後の160連続スキャン後に、画像が得られる。MDCT画像は、Analyzeソフトウェアパッケージ(Biomedical Imaging Resource, Mayo Clinic, MN, USA)を用いて再構成され、表示される。大動脈、腎臓皮質および髄質からの横断面画像から、当該領域を選択する。各領域における平均組織減衰を経時的にプロットし、曲線適合アルゴリズムにより適合させて、腎機能の測定値を得る。皮質および髄質容積を、皮質および髄質還流の生成物ならびに対応する容積の和として、AnalyzeおよびRBFにより算定する。近位尿細管曲線の傾斜を用いて、皮質曲線からGFRを算定する。アセチルコリン(Ach)(5μg/kg/分)の10分副腎注入の終わりに向けて、15分後に同一手順を反復して、内皮依存性微小血管反応性を試験する。頸動脈から導入されるトラッカーカテーテル(Prowler Microcatheter, Cordis, Miami, FL, USA)を、Achの注入のために腎動脈上に配置する。したがって、血行力学および機能は、ベースラインでの安定3分観察期間およびアセチルコリン(Ach)注入中に測定される。
組織学 - コンピューター援用画像分析プログラム(MetaMorph, Meta Imaging, Molecular Devices, Sunnyvale, CA, USA)を用いて、各腎臓の5μm中腎門横断切片(1/動物)を検査する。各スライドにおいて、三重染色またはDHE蛍光を、コンピュータープログラムにより15〜20視野で半自動的に定量して、腎臓表面積の分数として表し、全視野からの結果を平均する。
アポトーシス - 末端デオキシヌクレオチジルトランスフェラーゼdUTPニック末端標識(TUNEL)検定、活性化カスパーゼ−3染色、ならびに前アポトーシスBaxおよび抗アポトーシスBcl−xLタンパク質により、アポトーシスを評価する。
酸化ストレス - 腎臓における酸化ストレスを査定するために、in vitro試験を実施する。酸化ストレスバイオマーカー・イソプロスタンの全身レベルを、前記のように、EIAキットを用いて査定する。腎臓レドックス状態を、前記のようにジヒドロエチジウム(DHE)を用いて蛍光顕微鏡により、そしてラジカル生成酵素ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドホスフェート水素(NAD(P)H)-オキシダーゼおよび内皮酸化窒素シンターゼ(eNOS)の発現により検出されるスーパーオキシド陰イオンのin situ産生を査定することにより評価する。
血漿硝酸塩/亜硝酸塩レベル - メーカーの使用説明書に従って、市販のキット(酸化窒素定量キット、Active Motif, Carlsbad, CA, USA)を用いて、両方の合計に関して、2段階検定により、血漿硝酸塩/亜硝酸塩レベルを定量する。
ウェスタン・ブロッティング - 以下の:MMP−9、PAI−1、単球走化性タンパク質−1(MCP−1)、VEGF、VEGF受容体−1(VEGFR1)、腫瘍壊死因子アルファ(TNF−α)および形質転換増殖因子ベータ(TGF−β)に対する特異的ポリクローナル抗体を用いて、ウェスタン・ブロッティングプロトコールを進行する。タンパク質発現を各腎臓で確定して、タンパク質帯域(1/動物)の強度を定量する。
マイクロコンピューター断層撮影分析(MCT) - 腎臓を洗い流したのち、microfil MV122(血管内造影剤)を、腎動脈の分枝中に結紮されるカニューレを通して生理学的圧下で、狭窄腎臓中で還流する。前記と同様に、試料を調製し、走査して、画像を分析する。腎臓皮質の内、中および外3分の1における微小血管(20〜500mmの範囲の直径)の空間密度および平均直径も、ソフトウェアパッケージANALYZE(商標)を用いて算定する。
統計学的方法 - 予備データに基づいて、検出力計算は、80%の検出力で差異を検出するためには6匹(動物損失を考慮して+1)/群が必要である、ということを示す。結果は、平均±SEMで表わされる。対応スチューデントt検定を用いて群内の比較を、ANOVAを用いて群間の比較を実施し、その後、テューキー検定を実施する。全検定に関する統計学的有意は、p≦0.05に関して許容される。
D. 結果
Baxのレベルの低減、Bcl-xLのレベルの増大、およびTUNEL+細胞の数の減少により示されるように、非治療ARAS被験体へのD−Arg−2’,6’−Dmt−Lys−Phe−NH2の投与は、アポトーシスを減少させる、と予測される。さらに、D−Arg−2’,6’−Dmt−Lys−Phe−NH2の投与は、繊維症三重染色の程度の減少、ならびに繊維形成因子TGF-βおよびPAI-1の発現により示されるように、腎臓血管、尿細管および糸球体繊維症の減少を引き起こす、と予測される。さらに、D−Arg−2’,6’−Dmt−Lys−Phe−NH2の投与は、TNF-α、CD163およびMCP-1レベルの減少により示されるように、腎臓炎症を減少させる、と予測される。さらに、D−Arg−2’,6’−Dmt−Lys−Phe−NH2の投与は、NO利用可能性(eNOS発現、硝酸塩/亜硝酸塩レベル)増大を伴うスーパーオキシドのin situ産生およびNAD(P)Hオキシダーゼ発現の低減により示されるように、酸化ストレスを減少させる、と予測される。さらに、D−Arg−2’,6’−Dmt−Lys−Phe−NH2の投与は、マイクロ-CTにより検出されるように、腎臓微小血管の損失を防止して、微小血管密度、腎臓血行力学および酸素化の増大をもたらす、と予測される。
E. 結論
この結果は、芳香族陽イオン性ペプチドD−Arg−2’,6’−Dmt−Lys−Phe−NH2が、血管介入により治療されない被験体、例えばPTRAの候補でない被験体におけるARASの治療のための方法および組成物に有用である。
実施例4: D−Arg−2’,6’−Dmt−Lys−Phe−NH 2 による長期治療はブタARASにおける狭窄腎を保存する
要約
この実施例は、ブタARVDにおける狭窄腎臓の保存における芳香族陽イオン性ペプチドD−Arg−2’,6’−Dmt−Lys−Phe−NH2の使用を実証する。本発明の方法によれば、動物被験体はARASの期間に付された。被験体に、10週間期間のうちの最後の4週間、毎日芳香族陽イオン性ペプチドを投与した。対照動物には、注入を施さないか、または対照ビヒクル単独の注入を施した。腎機能の多数の態様、例えば単腎容積、還流、腎臓血流量(RBF)、糸球体濾過率(GFR)、皮質酸素化および腎臓繊維症(これらに限定されない)は、対照被験体と比較して、ペプチドを摂取している被験体において改善された。結果は、ペプチドD−Arg−2’,6’−Dmt−Lys−Phe−NH2が、ARVDの長期治療のための方法に有用である、ということを実証している。
実験計画
実験はすべて、ガイドラインに従って実施され、所内動物管理使用委員会(IACUC)により承認された。被験体は、10週間の観察の間、若い雌被験体(Manthei Hog Farm, LLC, MN)で構成された。ベースラインでは、動物を正常またはARAS群で無作為化した。正常動物には正常ブタ用噛み餌を与え、ARAS被験体には高コレステロール餌(TD-93296、Harlan-Teklad, Indianapolis, IN, USA)(これは、RAS腎臓におけるコレステロールレベルおよび腎機能低下の増大、炎症および繊維症により特性化されるび漫性早期アテローム硬化症を誘導する)を与えた(表14参照)。
6週間の期間後、ARAS被験体には、主腎動脈中に局所刺激用コイルを入れることにより誘導される片側性RASを施し、一方、正常動物には擬似操作を施した。麻酔のために、動物にケタミンおよびキシラジン(0.5g)の筋肉内注射で誘導して、静脈内ケタミン(0.2mg/kg/分)およびキシラジン(0.03mg/kg/分)で麻酔を保持した。遠隔測定システム(Data Sciences International, St Paul, Minnesota, USA)を左大腿動脈中に埋め込んで、その後10週間、平均動脈圧(MAP)を継続的に測定した。
RAS誘導の10週間後に、被験体に、0.1mg/kgのD−Arg−2’,6’−Dmt−Lys−Phe−NH2またはビヒクルを、4週間の期間の間、各週のうち5日、皮下注射を施した。
D−Arg−2’,6’−Dmt−Lys−Phe−NH2またはビヒクルでの治療の4週間後、被験体を同様に麻酔して、狭窄の程度を血管造影により確定した。単腎腎臓血行力学および機能の査定のために、多検出器コンピューター断層撮影(MDCT)試験を実施した。イオパミドール(0.5mL/kg/2秒)の中心静脈注入後、140連続スキャンを実施した。横断面画像を再構築し、Analyze(商標)ソフトウェアパッケージ(Biomedical Imaging Resource, Mayo Clinic, MN)を用いて分析した。腎臓皮質および髄質の横断面画像から、当該領域を選択した。各領域における平均組織減衰を経時的にプロットし、曲線適合アルゴリズムにより適合させて、腎機能の測定値を得た。皮質および髄質容積を、皮質および髄質還流の生成物ならびに対応する容積の和として、AnalyzeおよびRBFにより算定した。近位尿細管曲線の傾斜を用いて、皮質曲線からGFRを算定した。Ach(5μg/kg/分)の10分副腎注入の終わりに向けて、15分後に同一手順を反復して、内皮依存性微小血管反応性を試験した。頸動脈から導入されるトラッカーカテーテル(Prowler Microcatheter, Cordis, Miami, FL, USA)を、Achの注入のために腎動脈上に配置した。血行力学および機能を、ベースラインでの安定3分観察期間およびAch注入中に測定した。腎臓酸素化を、血中酸素レベル依存性(BOLD)MRIを用いて査定した。
in vivo試験完了後、動物をペントバルビタール・ナトリウム(100mg/kg、 Sleepaway(登録商標)、Fort Dodge Laboratories, Fort Dodge, Iowa, USA)で安楽死させた。腎臓を取り出し、切開して、ex vivo試験用に調製した。
コンピューター援用画像分析プログラムAxioVision(登録商標)4.8.2.0(Carl ZEISS SMT, Oberkochen, Germany)を用いて、マッソン三重染色で染色した各腎臓の5μm中腎門横断切片で、腎繊維症を査定した。尿細管間質性繊維症および糸球体スコア(100個の糸球体からの硬化性の%)を、15〜20視野で定量した。
JMPソフトウェアパッケージ・バージョン8.0(SAS Institute Inc., Cary, NC, USA)を用いて、全データを解析した。シャピロ・ウィルク検定を用いて、正規性からの偏差に関して試験した。正規分布データに関する平均±標準偏差(SD)、および非正規分布データに関する中位(範囲)として結果を表した。パラメトリック(ANOVAおよび非対応スチューデントt検定)および非パラメトリック(Wilcoxon and Kruskal Wallis)検定を、適宜用いた。p≦0.05の値は、統計学的に有意であるとみなされた。
結果
RASの誘導の6週間後、全ARAS動物において有意程度の狭窄が得られ(81.0%〜89.8%)、平均動脈圧(MAP)は同様に増大された(p<0.05対正常)(表15)。
表15は、10週間のARAS期間の最後の4週間の間のD−Arg−2’,6’−Dmt−Lys−Phe−NH2またはビヒクルでの治療後の正常およびARAS被験体における平均動脈圧(mmHg)、腎臓容積(cc)、皮質還流(ml/分/cc)、RBF(ml/分)、GFR(ml/分)および尿細管間質性繊維症(%)を示す。腎臓組織切片の三重染色を図10に示し、図11で定量する。血中酸素レベル依存性(BOLD)MRI画像を図12に、皮質血液酸素化指数(R2*)の定量を図13に示す。
ARASの誘導の4週間後、腎臓血行力学的パラメーターは、正常対照と比較して、RAAS被験体において低減された(表15)。同様に、ARAS被験体は、正常対照と比較して、尿細管間質性繊維症増大および皮質血液酸素化低減を示した(表15;図10〜13)。血管反応性は、Achに応答したRBFおよびGFRの大きさの変化により測定されるように、ARAS被験体において低減された。
D−Arg−2’,6’−Dmt−Lys−Phe−NH2による治療は、非治療対照と比較して、ARAS被験体において尿細管間質性繊維症を低減し、腎臓容積、皮質還流、RBFおよびGFRを増大した(表15;図10〜11)。D−Arg−2’,6’−Dmt−Lys−Phe−NH2による治療は、非治療対照と比較して、皮質血液酸素化およびAdhに対する血管反応性も改善した(図12〜15)。
これらの結果は、本発明の技法のペプチドD−Arg−2’,6’−Dmt−Lys−Phe−NH2ペプチドが、ARASを有する被験体の治療に有用である、ということを実証する。特に、これらの結果は、D−Arg−2’,6’−Dmt−Lys−Phe−NH2ペプチドによるARAS被験体の長期治療が、腎臓尿細管間質性繊維症を低減し、腎臓血行力学および血管反応性を改善する、ということを示す。結果はさらに、D−Arg−2’,6’−Dmt−Lys−Phe−NH2ペプチドが、一般的にARVDを有する被験体において腎機能を改善し、被験体の予後を改善するために有用である、ということを示す。
実施例5: ARVDを有するヒト被験体におけるD−Arg−2’,6’−Dmt−Lys−Phe−NH 2 での長期治療後の腎機能改善
要約
この実施例は、ARVDを有するヒト被験体の長期治療における芳香族陽イオン性ペプチドD−Arg−2’,6’−Dmt−Lys−Phe−NH2の使用を実証する。
本発明の方法に従って、ARVDを有するヒト被験体に、数週間の期間中、D−Arg−2’,6’−Dmt−Lys−Phe−NH2を投与する。対照被験体には、対照ビヒクル単独の注入なしまたはその注入を施す。対照被験体と比較して、ペプチドを摂取している被験体では、腎臓機能の多数の態様、例えば腎臓容積、皮質還流、RBF、GFR、皮質血液酸素化および血管反応性が改善されると予測される。結果は、D−Arg−2’,6’−Dmt−Lys−Phe−NH2ペプチドが、ARVDを有するヒト被験体の長期治療のための方法に有用である、ということを実証している。
実験計画
ARVDを有するヒト被験体を、実験群と対照群に無作為化する。被験体を、4週間の期間中1日1回皮下投与するD−Arg−2’,6’−Dmt−Lys−Phe−NH2(0.1mg/kg)ペプチドで治療する。各腎臓における腎臓血行力学および機能を、MDCTを用いて査定し、腎臓酸素化をBOLD MRIにより査定する。
血中酸素レベル依存性磁気共鳴画像処理(BOLD-MRI) - PTRAの4週間後に、上記と同様に、BOLD-MRIを3 Tesla (Signa Echo Speed; GE Medical Systems, Milwaukee, WI)で実施して、カスタマイズ化腹部器官プロトコールを用いて、腎臓の髄質および皮質領域におけるR2*レベルを測定する。要するに、常磁性分子は、磁場摂動を誘導する。血中で、オキシヘモグロビンは反磁性であり、その濃度はT2*に影響を及ぼさないが、しかしデオキシヘモグロビンは常磁性であり、組織T2*を減少させる。したがって、勾配エコーMRI獲得のエコー時間が増大すると、MRIシグナル減衰は、デオキシヘモグロビンの濃度増大に伴って増大する。Ln(強度)対エコー時間の傾斜は緩和時間率R2*(=1/T2)と等しく、デオキシヘモグロビンの濃度と直接的に比例する。ベースラインBOLD獲得後、フロセミド(20mg)を静脈内投与して、2mlの生理食塩水で洗い流す。BOLD測定を、15分後に反復する。データ分析のために、各実験期間における最良の解剖学的詳細を提供する7-msエコー時間画像で、皮質および髄質において当該領域を手動でトレースする。各エコー時間に関して、ソフトウェアは、各々の当該領域内のMRシグナルの平均を自動的に計算する。BOLDシグナルが、緩和性R2*により特性化されるように、次いで測定される。ベースラインからフロセミドまでのR2*の変化は、「デルタ-R2*」として確定される。
多検出器コンピューター断層撮影(MDCT) - BOLD MRIの1〜2日後に、MDCTを用いて各腎臓における腎臓血行力学および機能を査定する。MDCTは、単腎容積、局部的還流、血流量、糸球体濾過率(GFR)および尿細管機能の精確且つ非侵襲的定量を提供する超速スキャナーである。要するに、イオパミドール(0.5mL/kg/2秒)の中心静脈注入後の45連続スキャン後に、画像が得られる。MDCT画像は、Analyzeソフトウェアパッケージ(Biomedical Imaging Resource, Mayo Clinic, MN, USA)を用いて再構成され、表示される。大動脈、腎臓皮質および髄質からの横断面画像から、当該領域を選択する。各領域における平均組織減衰を経時的にプロットし、曲線適合アルゴリズムにより適合させて、腎機能の測定値を得る。皮質および髄質容積を、皮質および髄質還流の生成物ならびに対応する容積の和として、Analyze(Biomedical Imaging Resource, Mayo Clinic, MN, USA)およびRBFを用いて算定する。近位尿細管曲線の傾斜を用いて、皮質曲線からGFRを算定する。アセチルコリン(Ach)(5μg/kg/分)の10分副腎注入の終わりに向けて、15分後に同一手順を反復して、内皮依存性微小血管反応性を試験する。頸動脈から導入されるトラッカーカテーテル(Prowler Microcatheter, Cordis, Miami, FL, USA)を、Achの注入のために腎動脈上に配置する。したがって、血行力学および機能は、ベースラインでの安定3分観察期間およびAch注入中に測定される。
結果を、平均±SEMとして表す。対応スチューデントt検定を用いて群内の比較を、ANOVAを用いて群間の比較を実施し、その後、テューキー検定を実施する。全検定に関する統計学的有意は、p≦0.05に関して許容される。
結果
本発明の技法のペプチドD−Arg−2’,6’−Dmt−Lys−Phe−NH2による長期治療後、ARVD被験体は、非治療対照と比較して、改善された腎臓容積、皮質還流、RBF、GFR、皮質血液酸素化および血管反応性、ならびに平均動脈血圧低下を示す、と予測される。さらに、治療被験体は、非治療対照被験体と比較して、尿細管間質性繊維症低減を示す、と予測される。前記パラメーターに関する値は、正常対照に匹敵する、と予測される(p<0.05)。
これらの結果は、本発明の技法のD−Arg−2’,6’−Dmt−Lys−Phe−NH2ペプチドが、ARASを有するヒト被験体の治療において有用である、ということを実証する。特に、これらの結果は、D−Arg−2’,6’−Dmt−Lys−Phe−NH2ペプチドでのヒトARAS被験体の長期治療が、腎臓尿細管間質性繊維症を低減し、腎臓血行力学および血管反応性を改善する、ということを示す。結果は、さらに、一般的にARVDを有する被験体における腎機能を改善し、そして被験体の予後を改善するために有用である、ということを示す。
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〔1〕アテローム硬化性腎動脈狭窄の治療を必要とする被験体におけるアテローム硬化性腎動脈狭窄の治療方法であって、治療的有効量のペプチドD-Arg-2’,6’-Dmt-Lys-Phe-NH 2 またはその製薬上許容可能な塩を前記被験体に投与する工程を含むことを特徴とする方法。
〔2〕前記被験体に関して血管再生術を実施する工程をさらに含む、前記〔1〕記載の方法。
〔3〕前記血管再生術が、経皮経血管性腎臓血管形成術を含む、前記〔2〕記載の方法。
〔4〕前記アテローム硬化性腎動脈狭窄が、前記被験体の腎臓微小血管系の崩壊または閉塞を含む、前記〔1〕記載の方法。
〔5〕前記被験体が、腎臓微小血管系粗鬆化の危険があるかまたはそれに罹患している、前記〔1〕記載の方法。
〔6〕前記被験体が、腎臓微小血管系粗鬆化の開始前に前記ペプチドを投与される、前記〔1〕記載の方法。
〔7〕前記被験体が、血管再生術前、血管再生術後、血管再生術の最中および後、あるいは血管再生術の前、最中および後に連続的に、ペプチドを投与される、前記〔2〕記載の方法。
〔8〕前記被験体が、血管再生術後少なくとも3時間、血管再生術後少なくとも5時間、血管再生術後少なくとも8時間、血管再生術後少なくとも12時間、または血管再生術後少なくとも24時間ペプチドを投与される、前記〔7〕記載の方法。
〔9〕前記被験体が、血管再生術の少なくとも8時間前に開始して、血管再生術の少なくとも4時間前に開始して、血管再生術の少なくとも2時間前に開始して、血管再生術の少なくとも1時間前に開始して、または血管再生術の少なくとも10分前に開始して、ペプチドを投与される、前記〔7〕記載の方法。
〔10〕前記血管再生術が、腎動脈閉塞の除去を含む、前記〔2〕記載の方法。
〔11〕前記血管再生術が、1つ以上の血栓溶解薬の投与を含む、前記〔2〕記載の方法。
〔12〕前記1つ以上の血栓溶解薬が、組織プラスミノーゲン活性化因子、ウロキナーゼ、プロウロキナーゼ、ストレプトキナーゼ、アシル化型のプラスミノーゲン、アシル化型のプラスミンおよびアシル化ストレプトキナーゼ-プラスミノーゲン複合体からなる群から選択される、前記〔11〕記載の方法。
〔13〕アテローム硬化性腎動脈狭窄の治療を必要とする被験体におけるアテローム硬化性腎動脈狭窄の治療方法であって、前記被験体に関して経皮経血管性腎臓血管形成術を実施する工程と、治療的有効量のペプチドD-Arg-2’,6’-Dmt-Lys-Phe-NH 2 またはその製薬上許容可能な塩を前記被験体に投与する工程とを含むことを特徴とする方法。
〔14〕前記被験体が、腎臓微小血管系粗鬆化の危険があるかまたはそれに罹患している、前記〔13〕記載の方法。
〔15〕前記被験体が、腎臓微小血管系粗鬆化の開始前に前記ペプチドを投与される、前記〔14〕記載の方法。
〔16〕前記被験体が、血管形成術前、血管形成術後、血管形成術の最中および後、あるいは血管形成術の前、最中および後に連続的に、ペプチドを投与される、前記〔13〕記載の方法。
〔17〕前記被験体が、血管形成術後少なくとも3時間、血管形成術後少なくとも5時間、血管形成術後少なくとも8時間、血管形成術後少なくとも12時間、または血管形成術後少なくとも24時間ペプチドを投与される、前記〔16〕記載の方法。
〔18〕前記被験体が、血管形成術の少なくとも8時間前に開始して、血管形成術の少なくとも4時間前に開始して、血管形成術の少なくとも2時間前に開始して、血管形成術の少なくとも1時間前に開始して、または血管形成術の少なくとも10分前に開始して、ペプチドを投与される、前記〔16〕記載の方法。
〔19〕1つ以上の血栓溶解薬の投与を含む、前記〔13〕記載の方法。
〔20〕前記1つ以上の血栓溶解薬が、組織プラスミノーゲン活性化因子、ウロキナーゼ、プロウロキナーゼ、ストレプトキナーゼ、アシル化型のプラスミノーゲン、アシル化型のプラスミンおよびアシル化ストレプトキナーゼ-プラスミノーゲン複合体からなる群から選択される、前記〔19〕記載の方法。
〔21〕片側性または両側性アテローム硬化性腎動脈狭窄に関連した対側性腎臓損傷の治療を必要とする被験体における片側性または両側性アテローム硬化性腎動脈狭窄に関連した対側性腎臓損傷の治療方法であって、治療的有効量のペプチドD-Arg-2’,6’-Dmt-Lys-Phe-NH 2 またはその製薬上許容可能な塩を前記被験体に投与することを包含する方法。
〔22〕前記被験体に関して腎臓血管再生術を実施する工程をさらに包含する、前記〔21〕記載の方法。
〔23〕前記血管再生術が、経皮経血管性腎臓血管形成術を含む、前記〔22〕記載の方法。
〔24〕前記アテローム硬化性腎動脈狭窄が、前記被験体の腎臓微小血管系の崩壊または閉塞を含む、前記〔21〕記載の方法。
〔25〕前記被験体が、腎臓微小血管系粗鬆化の危険があるかまたはそれに罹患している、前記〔21〕記載の方法。
〔26〕前記被験体が、腎臓微小血管系粗鬆化の開始前に前記ペプチドを投与される、前記〔21〕記載の方法。
〔27〕前記被験体が、血管再生術前、血管再生術後、血管再生術の最中および後、あるいは血管再生術の前、最中および後に連続的に、ペプチドを投与される前記〔22〕記載の方法。
〔28〕前記被験体が、血管再生術後少なくとも3時間、血管再生術後少なくとも5時間、血管再生術後少なくとも8時間、血管再生術後少なくとも12時間、または血管再生術後少なくとも24時間ペプチドを投与される、前記〔27〕記載の方法。
〔29〕前記被験体が、血管再生術の少なくとも8時間前に開始して、血管再生術の少なくとも4時間前に開始して、血管再生術の少なくとも2時間前に開始して、血管再生術の少なくとも1時間前に開始して、または血管再生術の少なくとも10分前に開始して、ペプチドを投与される、前記〔27〕記載の方法。
〔30〕前記血管再生術が、腎動脈閉塞の除去を含む、前記〔22〕記載の方法。
〔31〕前記血管再生術が、1つ以上の血栓溶解薬の投与を含む、前記〔22〕記載の方法。
〔32〕前記1つ以上の血栓溶解薬が、組織プラスミノーゲン活性化因子、ウロキナーゼ、プロウロキナーゼ、ストレプトキナーゼ、アシル化型のプラスミノーゲン、アシル化型のプラスミンおよびアシル化ストレプトキナーゼ-プラスミノーゲン複合体からなる群から選択される、前記〔31〕記載の方法。
〔33〕アテローム硬化性腎動脈狭窄に関連したうっ血性心不全の治療を必要とする被験体におけるアテローム硬化性腎動脈狭窄に関連したうっ血性心不全の治療方法であって、治療的有効量のペプチドD-Arg-2’,6’-Dmt-Lys-Phe-NH 2 またはその製薬上許容可能な塩を前記被験体に投与する工程を含むことを特徴とする方法。
〔34〕前記被験体に関して腎臓血管再生術を実施する工程をさらに含む、前記〔33〕記載の方法。
〔35〕前記血管再生術が、経皮経血管性腎臓血管形成術を含む、前記〔34〕記載の方法。
〔36〕前記アテローム硬化性腎動脈狭窄が、前記被験体の腎臓微小血管系の崩壊または閉塞を含む、前記〔33〕記載の方法。
〔37〕前記被験体が、腎臓微小血管系粗鬆化の危険があるかまたはそれに罹患している、前記〔33〕記載の方法。
〔38〕前記被験体が、腎臓微小血管系粗鬆化の開始前に前記ペプチドを投与される、前記〔33〕記載の方法。
〔39〕前記被験体が、血管再生術前、血管再生術後、血管再生術の最中および後、あるいは血管再生術の前、最中および後に連続的に、ペプチドを投与される、前記〔34〕記載の方法。
〔40〕前記被験体が、血管再生術後少なくとも3時間、血管再生術後少なくとも5時間、血管再生術後少なくとも8時間、血管再生術後少なくとも12時間、または血管再生術後少なくとも24時間ペプチドを投与される、前記〔39〕記載の方法。
〔41〕前記被験体が、血管再生術の少なくとも8時間前に開始して、血管再生術の少なくとも4時間前に開始して、血管再生術の少なくとも2時間前に開始して、血管再生術の少なくとも33時間前に開始して、または血管再生術の少なくとも10分前に開始して、ペプチドを投与される、前記〔39〕記載の方法。
〔42〕前記血管再生術が、腎動脈閉塞の除去を含む、前記〔34〕記載の方法。
〔43〕前記血管再生術が、1つ以上の血栓溶解薬の投与を含む、前記〔34〕記載の方法。
〔44〕前記1つ以上の血栓溶解薬が、組織プラスミノーゲン活性化因子、ウロキナーゼ、プロウロキナーゼ、ストレプトキナーゼ、アシル化型のプラスミノーゲン、アシル化型のプラスミンおよびアシル化ストレプトキナーゼ-プラスミノーゲン複合体からなる群から選択される前記〔43〕記載の方法。
〔45〕アテローム硬化性腎臓血管性疾患(ARVD)の治療を必要とする被験体におけるアテローム硬化性腎臓血管性疾患(ARVD)の治療方法であって、治療的有効量のペプチドD-Arg-2’,6’-Dmt-Lys-Phe-NH 2 またはその製薬上許容可能な塩を前記被験体に投与する工程を含むことを特徴とする方法。
〔46〕前記ARVDが、アテローム硬化性腎動脈狭窄(ARAS)を含む、前記〔45〕記載の方法。
〔47〕前記ARVDが、正常対照と比較した腎臓血行動態障害を含む、前記〔45〕記載の方法。
〔48〕前記腎臓血行動態障害が、平均腎動脈血圧増大を含む、前記〔47〕記載の方法。
〔49〕前記腎臓血行動態障害が、腎臓容積低減を含む、前記〔47〕記載の方法。
〔50〕前記腎臓血行動態障害が、皮質還流低減を含む、前記〔47〕記載の方法。
〔51〕前記腎臓血行動態障害が、腎臓血流量(RBF)低減を含む、前記〔47〕記載の方法。
〔52〕前記腎臓血行動態障害が、糸球体濾過率(GFR)低減を含む、前記〔47〕記載の方法。
〔53〕前記腎臓血行動態障害が、皮質血液酸素化低減を含む、前記〔47〕記載の方法。
〔54〕前記ARVDが、尿細管間質性線維症を含む、前記〔45〕記載の方法。
〔55〕治療が、ペプチドD-Arg-2’,6’-Dmt-Lys-Phe-NH 2 またはその製薬上許容可能な塩の長期投与を含む、前記〔45〕記載の方法。
〔56〕長期投与が、1週間より長い期間のペプチドD-Arg-2’,6’-Dmt-Lys-Phe-NH 2 またはその製薬上許容可能な塩の投与を含む、前記〔55〕記載の方法。
〔57〕長期投与が、1年より長い期間のペプチドD-Arg-2’,6’-Dmt-Lys-Phe-NH 2 またはその製薬上許容可能な塩の投与を含む、前記〔55〕記載の方法。
〔58〕アテローム硬化性腎動脈狭窄(ARAS)により引き起こされる減損腎臓血行動態の治療を必要とする被験体におけるアテローム硬化性腎動脈狭窄(ARAS)により引き起こされる減損腎臓血行動態の治療方法であって、治療的有効量のペプチドD-Arg-2’,6’-Dmt-Lys-Phe-NH 2 またはその製薬上許容可能な塩を前記被験体に投与する工程を含むことを特徴とする方法。
〔59〕前記ARASが、正常対照と比較した腎臓血行動態障害を含む、前記〔45〕記載の方法。
〔60〕前記腎臓血行動態障害が、平均腎動脈血圧増大を含む、前記〔59〕記載の方法。
〔61〕前記腎臓血行動態障害が、腎臓容積低減を含む、前記〔59〕記載の方法。
〔62〕前記腎臓血行動態障害が、皮質還流低減を含む、前記〔59〕記載の方法。
〔63〕前記腎臓血行動態障害が、腎臓血流量(RBF)低減を含む、前記〔59〕記載の方法。
〔64〕前記腎臓血行動態障害が、糸球体濾過率(GFR)低減を含む、前記〔59〕記載の方法。
〔65〕前記腎臓血行動態障害が、皮質血液酸素化低減を含む、前記〔59〕記載の方法。
〔66〕前記ARASが、尿細管間質性線維症を含む、前記〔59〕記載の方法。
〔67〕治療が、ペプチドD-Arg-2’,6’-Dmt-Lys-Phe-NH 2 またはその製薬上許容可能な塩の長期投与を含む、前記〔58〕記載の方法。
〔68〕長期投与が、1週間より長い期間のペプチドD-Arg-2’,6’-Dmt-Lys-Phe-NH 2 またはその製薬上許容可能な塩の投与を含む、前記〔67〕記載の方法。
〔69〕長期投与が、1年より長い期間のペプチドD-Arg-2’,6’-Dmt-Lys-Phe-NH 2 またはその製薬上許容可能な塩の投与を含む、前記〔67〕記載の方法。
〔70〕アテローム硬化性腎動脈狭窄(ARAS)により引き起こされる減損腎臓血行動態の治療を必要とする被験体におけるアテローム硬化性腎動脈狭窄(ARAS)により引き起こされる減損腎臓血行動態の治療方法であって、治療的有効量のペプチドD-Arg-2’,6’-Dmt-Lys-Phe-NH 2 またはその製薬上許容可能な塩を1つ以上の抗高血圧薬とともに前記被験体に投与する工程を含むことを特徴とする方法。
〔71〕前記1つ以上の抗高血圧薬が、利尿薬、アドレナリン作動性受容体拮抗薬、カルシウムチャネル遮断薬、レニン阻害薬、アンギオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬、アンギオテンシンII受容体拮抗薬、アルドステロン拮抗薬、血管拡張薬またはアルファ-2作動薬を含む、前記〔70〕記載の方法。
〔72〕前記利尿薬が、ループ利尿薬、チアジド利尿薬、チアジド様利尿薬またはカリウム保持性利尿薬を含む、前記〔71〕記載の方法。
〔73〕前記利尿薬が、ブメタニド、エタクリン酸、フロセミド、トルセミド、エピチジド、ヒドロクロロチアジド、クロロチアジド、ベンドロフルメチアジド、インダパミド、クロルサリドン、メトラゾン、アミロリド、トリアムテレンまたはスピロノラクトンを含む、前記〔72〕記載の方法。
〔74〕前記アドレナリン作動性受容体拮抗薬が、ベータ遮断薬、アルファ遮断薬または混合アルファおよびベータ遮断薬を含む、前記〔71〕記載の方法。
〔75〕前記アドレナリン作動性受容体拮抗薬が、アテノロール、メトプロロール、ナドロール、オキシプレノロール、ピンドロール、プロプラノロール、チモロール、ドキサゾシン、フェントラミン、インドラミン、フェノキシベンズアミン、プラゾシン、テラゾシン、トラゾリン、ブシンドロール、カルベジロールまたはラベタロールを含む、前記〔74〕記載の方法。
〔76〕前記カルシウムチャネル遮断薬が、ジヒドロピリジンまたは非ジヒドロピリジンを含む、前記〔71〕記載の方法。
〔77〕前記カルシウムチャネル遮断薬が、アムロジピン、フェロジピン、イスラジピン、レルカニジピン、ニカルジピン、ニフェジピン、ニモジピン、ニトレンジピン、ジルチアゼムまたはベラパミルを含む、前記〔76〕記載の方法。
〔78〕前記レニン阻害薬が、アリスキレン(登録商標)を含む、前記〔71〕記載の方法。
〔79〕前記アンギオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬が、カプトプリル、エナラプリル、フォシノプリル、リシノプリル、ペリンドプリル、キナプリル、ラミプリル、トランドラプリルまたはベナゼプリルを含む、前記〔71〕記載の方法。
〔80〕前記アンギオテンシンII受容体拮抗薬が、イルベサルタン(登録商標)を含む、前記〔71〕記載の方法。
〔81〕前記アルドステロン拮抗薬が、エプレレノンまたはスピロノラクトンを含む、前記〔71〕記載の方法。
〔82〕前記血管拡張薬拮抗薬が、ニトロプルシドナトリウムまたはヒドララジンを含む、前記〔71〕記載の方法。
〔83〕前記アルファ-2作動薬拮抗薬が、クロニジン、グアナベンズ、メチルドパ、モキソニジン、グアネチジンまたはレセルピンを含む、前記〔71〕記載の方法。

Claims (11)

  1. 血管反応性の改善を必要とする被験体において血管反応性を改善するための医薬の製造における、ペプチドD-Arg-2’,6’-Dmt-Lys-Phe-NH2またはその製薬上許容可能な塩を含む組成物の使用であって、
    前記被験体が、アテローム硬化性腎臓血管性疾患(ARVD)と診断されている、使用
  2. ARVDが、正常対照被験体と比較して低減した腎臓血流量(RBF)を含む、請求項に記載の使用。
  3. ARVDが、正常対照被験体と比較して低減した糸球体濾過率(GFR)を含む、請求項に記載の使用。
  4. 験体に血管再生術実施される、請求項1に記載の使用。
  5. 血管再生術が、経皮経血管性腎臓血管形成術を含む、請求項に記載の使用。
  6. 血管再生術前、血管再生術後、血管再生術の最中および後、あるいは血管再生術の前、最中および後に連続的に、医薬が被験体へ投与される、請求項に記載の使用。
  7. 血管再生術後少なくとも3時間、血管再生術後少なくとも5時間、血管再生術後少なくとも8時間、血管再生術後少なくとも12時間、または血管再生術後少なくとも24時間、医薬が被験体へ投与される、請求項に記載の使用。
  8. 血管再生術の少なくとも8時間前に開始して、血管再生術の少なくとも4時間前に開始して、血管再生術の少なくとも2時間前に開始して、血管再生術の少なくとも1時間前に開始して、または血管再生術の少なくとも10分前に開始して、医薬が被験体へ投与される、請求項に記載の使用。
  9. 血管再生術が、腎動脈閉塞の除去を含む、請求項に記載の使用。
  10. 血管再生術が、1つ以上の血栓溶解薬の投与を含む、請求項に記載の使用。
  11. 1つ以上の血栓溶解薬が、組織プラスミノーゲン活性化因子、ウロキナーゼ、プロウロキナーゼ、ストレプトキナーゼ、アシル化型のプラスミノーゲン、アシル化型のプラスミンおよびアシル化ストレプトキナーゼ-プラスミノーゲン複合体からなる群から選択される、請求項10に記載の使用。
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