以下に本発明の実施の形態を遊技機たるスロットマシンを例に図面を参照しつつ説明する。なお、図1はスロットマシンの分解斜視図、図2は扉形前面部材を省略した状態を示すスロットマシンの分解斜視図、図3はスロットマシンの斜視図、図4は扉形前面部材を省略した状態を示すスロットマシンの縦断面図、図5は図4のZ1部拡大図、図6はコネクタホルダーを移動させた状態を示す図4のZ1部拡大図、図7は扉形前面部材を省略した状態を示すスロットマシンの横断面図、図8(a)は図7のZ2部拡大図、図8(b)はコネクタホルダーを移動させた状態を示す図7のZ2部拡大図、図9は図8(a)の要部を示す拡大図、図10は背板側を示すスロットマシン要部の横断面図、図11はケース部材の分解斜視図、図12はケース部材を後ろから見た斜視図、図13(a),(b)はコネクタホルダーの仮止め状態を説明するケース部材の要部の斜視図、図14は配線中継部材の分解斜視図、図15は配線中継部材のカバー体を省略した正面図、図16,図17はコネクタホルダーの分解斜視図、図18はケース部材を止めるストッパーの斜視図、図19は他の形態を示すストッパーの斜視図、図20,図21はケース部材のガイド構造を示す要部の断面図、図22は把手の他の形態を示す図柄変動表示装置の部分斜視図、図23はケース部材と外本体側のストッパーとの関係を示す要部の斜視図、図24は配線窓と図柄変動表示装置のリールとの関係を示す要部の断面図、図25はスロットマシン上部の縦断面図、図26はメダル放出装置を省略してスロットマシンの下半部を示す斜視図、図27は図26の分解斜視図、図28はスロットマシンの裏側から放熱口を見た背面図、図29は電源装置を示すスロットマシンの一部断面部分正面図、図30は電源装置を下から見上げた状態を示す斜視図、図31は他の形態を示すもので外本体の側板と電源装置の要部断面図、図32は他の形態を示す照明装置の概略断面図、図33は透明板と発光ユニットを分解して示す扉形前面部材の斜視図、図34は透明板を分解して示す扉形前面部材の斜視図、図35は透明板を装着した扉形前面部材の図33A−A線相当断面図、図36はヒンジ金具の分解・組み立て斜視図、図37はヒンジ金具の連鎖を示す線図、図38は扉形前面部材を示す要部の横断平面図、図39は開く途中の扉形前面部材を示す要部の横断平面図、図40は扉形前面部材の上半部を示す裏側から見た斜視図、図41は連結具を縦方向に切断した断面斜視図、図42は他のヒンジ金具の例を示す扉形前面部材の要部横断平面図、図43は図42の扉形前面部材の開く途中を示す要部の横断平面図、図44は機種ユニットにおいて前面開閉部材を開いた状態を示す斜視図、図45は連結具を連結したまま扉形前面部材を開いた状態を示す斜視図である。
[1.スロットマシン]
本発明のスロットマシン1は、図1及び図2に示すように、前面が開口する箱形の外本体100と、該外本体100の前面に回転軸100aをもって横開きの扉状に回動可能に取り付けた扉形前面部材200と、複数の図柄を駆動手段で変動させる図柄変動表示装置300と、前記外本体100に対し着脱自在であって前面に開口部401を有するケース部材400と、任意の画像を表示する画像表示体500と、を有する。
[2.外本体]
外本体100は、図1〜図4に示したように底板101の左右に側板102,102を取着すると共に該側板102,102の頂部に天板103を設置して正面視縦長「口」字形の枠状となし、その枠の背に背板104を固着して前面のみ開口する箱形に形成してなる。前記左右の側板102,102は前縁が後傾状態に僅かに傾斜する台形になっており、従って外本体100の開口は後傾状態の傾きを有する。また、前記天板103には、遊技機設置島(図示せず)に設置した状態で該遊技機設置島の上桟600(図25想像線参照)と対向する領域内に複数(実施形態では4個)の貫通孔132,132…が穿設されている。
[2−1.外本体−仕切板]
外本体100内には高さのほぼ中央に棚板状の仕切板105が設けられている。該仕切板105は金属製であって、図1,図2に示したように中央に突段部106を有する正面視略凸形であり、両端に形成した垂直な取付片107を外本体100の側板102,102内面に固着し、また、後端に形成した垂直な取付片108を外本体100の背板104内面に固着して取り付けられる。なお、仕切板105の後端の取付片108にはバーリング加工(下孔の孔径をポンチで広げながら短筒状の突起を立ち上げる金属加工)による筒状突起(図示せず)が形成されており、該筒状突起を外本体100の背板104にプレ加工した小孔(図示せず)に打ち込んで位置決めされる。また、仕切板105の両横の最奥部には外本体100の背板104との間に配線用の開口109が形成されている。
[2−1−1.外本体−仕切板−下スペース]
外本体100内の前記仕切板105より下のスペースには、遊技媒体たるメダルを前記扉形前面部材200の前面下部にあるメダル用受皿201に放出するメダル放出装置110と、メダル放出装置110からオーバーフローするメダルを貯めるメダル用補助収納箱111と、電源装置112等が設けられている。
[2−1−1−1.外本体−仕切板−下スペース−メダル放出装置]
前記メダル放出装置110は、駆動手段を内蔵した装置本体110aにメダル貯留用のホッパ110bを取り付けたものであり、装置本体110aの前面にメダルの放出口110cが設けられていて、ホッパ110b内にあるメダルが前記駆動手段の作動により放出口110cに向けて1枚ずつ送り出される。また、ホッパ110bには溢れたメダルを排出させるオーバーフロー樋110dが設けてあり、そのオーバーフロー樋110dの突端下方に前記したメダル用補助収納箱111が臨む。なお、メダル放出装置110のメダル放出機構は、現在公知のどのようなものを採用してもよく、よって詳細な説明を省略する。
[2−1−1−2.外本体−仕切板−下スペース−電源装置]
前記電源装置112は、図26〜図30に示したように、外本体100の底板101と、正面向かって左側の側板102と、背板104の三部材が直交する内側コーナー部分に取り付けられている。電源装置112は、前記メダル放出装置110等の電気部品に電気を供給するためのものであって発熱しやすい部品であり、従って外本体100の背板104には電源装置112の取付部位に放熱口104aが開設されている。
電源装置112の装置ケース112aは、透明な合成樹脂で形成されている。こうすることにより装置ケース112aの内部が見えるから、電源装置112の基板112s(図30参照)等に対する不正工作の発見が容易になる。装置ケース112aは、上面をカバーする上面板112bと、外本体100の背板104に対向する後面板112cと、該後面板112cの反対側をカバーする正面板112dと、スロットマシン1の内部に向かう側をカバーする側面板112eと、上面板112bと側面板112eの境界部分を面取り形態にカバーする斜面板112fと、底部をカバーする底面板112r(図30参照)で形成されている。一方、装置ケース112aの、外本体100の側板102に対向する側の面はカバーされておらず開放状態にあるが、この開放面は外本体100に取り付けた状態で外本体100の側板102によって塞がれる。
なお、外本体100の側板102には図26,図27に示したように凸面部102aを設けて段状のガード部102bを形成し、該ガード部102bの下に装置ケース112aの上面板112bの一側を潜り込ませる仕様になっている。これにより装置ケース112aの一面をカバーしなくてもガード部102bによって装置ケース112aと側板102の継ぎ目が塞がれるから異物の差込みが行えない。図31は前記ガード部102bを溝状にした他の実施形態を示すものであり、この例では装置ケース112aの上面板112bの縁を側板102側に若干突出させてその先をガード部102bの溝に嵌め込むようになっている。
このように電源装置112の装置ケース112aにおいて、外本体100の側板102に当接する側の面をカバー無しの開放構造にして使用時に前記側板102で塞がるようにした場合は、装置ケース112a内への基板112s等の組み込みが開放面を使って行い易く、また、装置ケース112aに基板112s等を組み込んだ後の開放面へのカバー付けが不要であるから作業性が向上する。
前記装置ケース112aの上面板112b、側面板112e、斜面板112f、後面板112c、底面板112rには多数の通気孔112g,112g…が形成されていて内部に熱がこもらないようになっている。装置ケース112aは、底部に設けた脚部112h,112h…によって高床式に持ち上げられており、装置ケース112aの底面板112rと外本体100の底板101の間に通気空間112iが形成されている。従って、通気空間112iから底面板112rの通気孔112g,112g…を通って低層の比較的冷たい空気が装置ケース112a内に導入できる。実施形態の通気空間112iは、外本体100の前記放熱口104aに連通するようになっているため、機裏の冷たい空気を通気空間112iに導入することができる。なお、装置ケース112aの後面板112cと底面板112rの境界部に前記通気空間112iを嵩上げする逆L字形の段部112j(図30参照)を形成すれば、脚部112hの高さと放熱口104aの高さにズレがあっても通気空間112iを放熱口104aに連通させることができる。
[2−1−1−2−1.外本体−仕切板−下スペース−電源装置−固定]
電源装置112は、装置ケース112aの正面板112dの一側辺に対して直角である取付片112kと、装置ケース112aの後面板112cから外本体100の背板104に向けて突設した突部112mと、外本体100の背板104に開設した放熱口104aと、の組合せにより外本体100に固定される。
すなわち、放熱口104aの輪郭は装置ケース112aの後面板112cの輪郭より小さく形成されており、従って電源装置112は外本体100の背板104に当たって放熱口104aを通らない。また、装置ケース112aの後面板112cに突設した突部112mは、前記放熱口104aに内接する位置にあり、電源装置112の浮き上がり動作に抗すべく放熱口104aの上辺に内接する水平な突片112m−1と、電源装置112の横転動作に抗すべく放熱口104aの縦辺に内接する垂直な突片112m−2で構成される。従って、電源装置112を外本体100の側板102の内面に沿わせて押し込み、放熱口104aに突部112mを差し込むだけで、装置ケース112aの後面(奥側)の上方向(浮き上がり)と図26において右方向(横転)への固定が完了する。もちろん電源装置112は、下方向に対しては外本体100の底板101によって、また、図26において左方向に対しては外本体100の側板102によってその動きが規制されるため、放熱口104aに突部112mを嵌め込むだけの単純な操作で、手前に引っ張る方向以外について電源装置112の動きが完全に規制できる。
一方、正面板112dに突設した取付片112kにはビス用の透孔112pが複数穿設されており、該透孔112pの少なくとも1個に木ねじ112qを通して外本体100の側板102に固定する。これにより手前に引っ張る方向についても電源装置112の動きが規制されるため、1本の木ねじ112qで外本体100への電源装置112の確実な固定が可能である。
[2−1−1−2−2.外本体−仕切板−下スペース−電源装置−電源コード]
電源装置112には外部から電気の供給を受けるための電源コード(図示せず)が接続されている。そして、従来は前記放熱口104aの横に膨出部を設けてそこから前記電源コードを引き出すようにしていたが、この位置では電源コードを束ねても地面にすれる危険性が高い。スロットマシン1は、製造途中で電源を投入する場合があり、そのときに備えて外本体100の外に電源コードを出しておかなければならないから、製造ライン上での移動の際やライン間での移動の際に電源コードが地面にすれたり、スロットマシン1の底板101の下に入って挟まるおそれがある。
これに対し実施形態の放熱口104aは、その上辺から上に向けてコード引出口104bを拡張し、そこから電源コードを引き出すようにしている。これにより束ねた電源コードを宙づり状態にぶら下げるに十分な高さが確保できる。よってスロットマシン1を製造する工程で誤って電源コードを傷めてしまうトラブルが激減する。
以上のように本発明のスロットマシン1は、電源装置112を外本体100の内側コーナー部分にセットして1本の木ねじ112qをねじ込むだけで取り付けが完了するため、従来に比べて電源装置112の取付作業の大幅な省力化が可能である。また、本発明では、1つの面に対してネジ止めすれば固定が完了するので、特に、固定する部位を電源装置112の前方(手前)に持ってきた場合は視認しやすく、確実に固定できる。ちなみに、従来は電源装置112の複数の面或は部材に対してネジ止めする必要があり、特に、背板104に固定するネジは視認しにくいため忘れる可能性があった。
また、放熱口104aは、電源装置112の冷却手段として必要なものであるから、この放熱口104aを電源装置112の固定に利用しても余分な工程やコストは殆ど発生しない。却って、固定のために放熱口104aの位置と電源装置112の位置を一致させることになるから冷却効率が向上する。加えて、装置ケース112aを実施形態のごとく合成樹脂製にした場合には、取付用の突部112mも一体成形できるため殆どコストが掛からない。よって電源装置112の取り付けに要するトータルのコストも従来に比べて削減できる。
さらにまた、装置ケース112aを合成樹脂製にした場合には、電源装置112の発熱対策として有用な装置ケース112aの脚部112hや段部112jも殆どコストをかけずに実施できるメリットがある。
[2−1−2.外本体−仕切板−上スペース]
一方、外本体100内の仕切板105より上のスペースには前記ケース部材400が納められ、また、外本体100の背板104の内面には後述する配線手段の中核となる配線中継部材113が取り付けられ(図1,図2参照)、さらに背板104には配線中継部材113より上方に放熱用の通気口133が形成されている。
[3.扉形前面部材]
図3に扉形前面部材200の表側が、また、図1に扉形前面部材200の裏側が示されている。扉形前面部材200は、表側の下方にメダル用受皿201を有し、また、表側のほぼ中央に操作部202が設けられている。この操作部202には、メダル投入用の投入口203と、後述するメイン基板409のメモリーにデータとして蓄えられているメダルから1枚のみの投入(引き落と)を指示する1枚投入ボタン205と、同じく1回のゲームで使用可能な最高枚数(例えば3枚)の投入を指示するMAX投入ボタン206と、後述するメダルセレクタ207の中に詰まったメダルをメダル用受皿201に戻すためのメダル返却ボタン208と、メイン基板409のメモリーにデータとして蓄えられているメダルの貯留解除命令(精算による放出命令)を入力するための貯留解除スイッチ209と、前記図柄変動表示装置300を作動させる始動レバー210と、図柄変動表示装置300の各リール301a,301b,301cを停止させる3個のリール停止ボタン211a,211b,211c等が設けられている。もちろんここに示した操作部202の構成は1つの例示であり、これらに限定されるものではない。
また、前記投入口203の裏側にはメダルセレクタ207が設けられており、そのメダルセレクタ207の横にメダル樋212が、また、下に返却樋213が接続している。メダルセレクタ207は内蔵したソレノイド(図示せず)をON・OFFさせることによって流路を切り替える公知のものであり、遊技者からのメダルの投入を待つ遊技状態のときには流路をメダル樋212側に、また、規定枚数を超えたメダルの投入など、メダルの投入を拒否する遊技状態のときには流路を返却樋213側に設定する。前記メダル樋212は、扉形前面部材200が外本体100の前面に被さる閉じ位置にあるときその突端がメダル放出装置110のホッパ110b内に臨むようになっており、投入口203からメダルセレクタ207を通ってメダル樋212に流れたメダルはホッパ110bに行き着く。一方、前記返却樋213は表側のメダル用受皿201に繋がっており、投入口203からメダルセレクタ207を通って返却樋213に流れたメダルはメダル用受皿201に戻る。
[3−1.扉形前面部材−透視窓]
扉形前面部材200は、外本体100の前面全体をカバーする大きさであって、その上半部は、図33,図34に示したように、透明板214aで覆ったゲーム用の透視窓214になっている。実施形態の透視窓214並びに透明板214aは、前記画像表示体500と図柄変動表示装置300が上下に並んで見えるよう通常より大きくなっており、扉形前面部材200と一体の額フレーム216によって画像表示体500と図柄変動表示装置300の領域が視覚上、上下に区画されている。このように一枚の透明板214aを、画像表示体500と図柄変動表示装置300の双方をカバーする大きさに設定しておけば、画像表示体500と図柄変動表示装置300の配置が上下入れ替わっても、そのまま使用することができる。
[3−1−1.扉形前面部材−透視窓−透明板]
透明板214aは、透明な合成樹脂(例えば耐衝撃性、耐擦傷性、光学特性に優れたゴム入りのメタクリル樹脂、実施形態では三菱レイヨン株式会社製「アクリペット(登録商標)IR D30」を使用)をほぼ逆さ台形にした上広がりの形態であって、底辺を除く三辺(左右側辺と上辺)の周縁に、遊技者と向かい合う側を前面としてその前面側に膨出する縁部材214b,214b,214bを、樹脂成型用型枠を用いての樹脂成型時に一体成型してなる。このように平らな板状の透明板214aの周縁に縁部材214bを一体に成型した場合には、縁部材214bが補強バーになって透明板214a全体の強度を高めるため、透明板214aが上記のように画像表示体500と図柄変動表示装置300の双方をカバーする程度に大きくても撓みや歪みが生じにくい。
前記縁部材214bは、図35に示したように、後面側に開口する殻構造(中実でなく、内部に空間がある殻のような構造であり、各部の肉厚は任意である。)になっており、その内部空間に発光ユニット217と、必要に応じて例えば表面に模様や文字を施した装飾部材(図示せず)が組み込まれる。
なお、図34では、発光ユニット217が扉形前面部材200に取り付けられているように描かれているが、実際の発光ユニット217は、図35に示したように縁部材214bの中に嵌め込まれている。従って、透明板214aと発光ユニット217は、一体の部品として取り扱われる。
縁部材214bの形状は図示したものに限定されず、発光ユニット217や装飾部材のデザインに合わせて任意に変更可能である。また、縁部材214bを設ける部位も実施形態のように透明板214aの周縁の三辺に限定されず、最低限、何れかの一辺に設けるだけでもよい。
その他、図33,図34において符号218は、透明板214aの上の左右コーナー部分に設けた固定部材であって、透明板214aの裏側から透孔214c(図33拡大図参照)に通したビス(図示せず)により、縁部材214bと縁部材214bの間に嵌った図34の状態で止められている。該固定部材218は、外見上コーナー飾りとしての役割を果たす一方、扉形前面部材200と透明板214aの夫々の上のコーナー部分に設けた通孔200a,214d(図33拡大図参照)に対し扉形前面部材200の裏側から通したビス(図示せず)に螺合し、もって透明板214aを扉形前面部材200に固定するナット的な役割を果たす。
また、図33〜図35において、符号217aは発光ユニット217の発光体、217bは発光体217aを支持する反射部材である。左右に位置する発光ユニット217の反射部材217bは、図35に示したように、棒状の発光体217aの光をスロットマシン1の周囲に向けて多く反射するように角度が設定されている。なお、透明板214aの縁部材214bの内部に発光ユニット217を組み込んだ形態は、発光体217aをスロットマシン1の、より手前側に配置することができるから、あたかも岬の突端にある灯台のごとく、光を周囲に向けて放射させる場合に有利である。また、上に位置する発光ユニット217の反射部材217bは、発光体217a(光源217a−1と導光板217a−2の組合せ)の光をスロットマシン1の上方に向けて多く反射するように設定されている。
以上の構成である発光ユニット217は、遊技中、特に大当たりが出た場合などに点灯して大当たりの発生を周囲にアピールする演出を行うことができる。このように周囲に対しアピール度の高い演出を行うことによって、大当りを得た遊技者に注目させることができ、多くの者の視線が遊技者に優越感を抱かせるから、遊技がさらに盛り上がる。また、大当たりが出ていることを周囲にアピールすることにより、その機種の人気が高まり、稼働率が向上することも期待される。
実施形態の透明板214aは以上のような構成であって、扉形前面部材200の裏側に設けた凹溝219(図34拡大図参照)に対し、板状の底辺を扉形前面部材200の前面から斜めに差し入れて建具式に嵌め込み、その状態で透明板214aを直立させて扉形前面部材200の前面に全ての縁部材214b,214b,214bを当接させ、さらに扉形前面部材200の裏から通したビス603(図1参照)によって固定する。図35は、このときの扉形前面部材200の要部を切断したものであり、この図35から明らかなように、もし仮に、遊技者が扉形前面部材200と縁部材214bの境から異物を無理矢理差し込んだとしても、その異物の先が縁部材214bの内部を横断して透明板214aの裏側に到達する余地は殆どない。従って、優れた防犯効果を発揮する。
[3−2.扉形前面部材−錠装置]
扉形前面部材200の自由端側の一側には専用キー(図示せず)を使って開閉操作する錠装置215が設けてある。
[4.図柄変動表示装置]
図柄変動表示装置300はリール回転式表示装置であって、モータ等の駆動手段303で個別に回転可能な例えば3個のリール301a,301b,301cと、該リール301a,301b,301cを組込み・収容する装置ケース302とを有し、リール301a,301b,301cの周面に描いた複数の図柄(図示せず)の組合せで遊技を行う周知のものである。
前記装置ケース302は、あたかも横倒しにした八角柱から正面(遊技者)に向かう3面を除いた変形六角柱形態であって、底部板304と、天板部305と、図11において向かって右側の右側板306と、同じく左側の左側板307と、後面を覆う垂直な後部板308と、天板部305と後部板308の間に設けた上斜板309と、底部板304と後部板308の間に設けた下斜板310で囲った箱形であり、前記リール301a,301b,301cの円弧の一部が装置ケース302の正面からはみ出す状態になっている。
また、装置ケース302の天板部305には指掛可能な使用状態と、天板部305に伏した不使用状態とに変化可能な把手311が設けられており、該把手311に指を掛けて持ち運ぶようになっている。
このように装置ケース302の天板部305に上記のごとく変化可能な把手311を設ける構成は、ケース部材400の強度アップ策と密接に関連する。すなわち、実施形態では後述するようにケース部材400の開口部401に補強桟402を設け、もってケース部材400の開口部401に画像表示体500を片持ちさせるに十分な強度を付与しているが、そのような補強桟402は開口部401を横切るから装置ケース302のケース部材400への出し入れに対し、明らかに障害となる。これに対し実施形態のように把手311を変化可能にして天板部305に伏させておけば、把手311の出っ張りがなくなるから、装置ケース302が補強桟402の下を難なく通過できるのである。従って、装置ケース302の天板部305に上記のように変化可能な把手311を設けてこそ、ケース部材400の開口部401に該開口部401を横切る向きの補強桟402を設けることが可能になる。ちなみに、従来の装置ケースは、天部板から把手が出っ張っていてそれが障害になるため、ケース部材の開口部に補強桟を設ける余地がない。
なお、実施形態の把手311は、立てた使用状態と伏した不使用状態とに揺動して変化させる構造としたが、把手311を使用状態と不使用状態とに変化させ得る構造は、実施形態に限定されない。例えば図22に示したように、天板部305に2つのベルト通し314,314を切り起こし、該ベルト通し314,314に例えば合成樹脂や革製であって両端に抜け止め部315,315を設けてなる帯状の把手311を挿通し、図22の伏した不使用状態から中央を引き上げて指掛可能な使用状態に変化させる構造にするなど、指掛可能な使用状態と、天板部305に伏した不使用状態とに変化可能であれば、どのような構造であってもよい。
また、実施形態の装置ケース302の底部板304には図4,図11に示したようにフランジ状の下把手316が突設されており、該下把手316をつかんで装置ケース302を押し込み又は引っ張ることにより、ケース部材400への出し入れが行い易くなっている。
[5.ケース部材]
ケース部材400は、前記外本体100の仕切板105から上のスペースにほぼ合致する大きさであって、底板403と、該底板403の左右両横に立設した側板404,404と、底板403の後縁に立設した後面板405と、該後面板405と前記側板404,404の上面を覆う天板406とからなり、前面に開口部401を有する箱形である。
該ケース部材400は、底板403が金属製で、側板404,404、後面板405、天板406が合成樹脂製であり、側板404,404と天板406の開口部401内面に金属製の補強部材407,407,407が設けられ、さらに側板404,404の補強部材407,407の間に開口部401を横切る金属製の補強桟402が掛け渡されている。そして、この補強桟402を境にそれより下が前記図柄変動表示装置300の設置領域として、また、補強桟402より上の開口部401が前記画像表示体500の設置領域として、さらにまた、画像表示体500より後方のケース部材400で囲われた領域が配線作業空間408として割り当てられ、その配線作業空間408の後面板405の内壁面に、主たる制御基板であるメイン基板409が装着され、さらにメイン基板409以外の制御基板等(例えば演出制御基板510(図44参照))も配線作業空間408内に装着されている。
ケース部材400の天板406には、図1に示したように天窓部443,443が形成されている。この天窓部443,443は、天板406の強度を保つための補強帯444を挟んで2つに分けられており、その夫々が前記外本体100の貫通孔132,132…を通る軸線との交点を含む領域にあり、該貫通孔132,132…より十分に広く開口している。もっとも天窓部443の前側の周縁は前側に位置する貫通孔132の近くに寄せられている。そうすることにより天窓部443の周縁を基準として手探りで貫通孔132が見つけ出せるから、たとえ天窓部443の中を作業者が覗き込めなくとも貫通孔132の位置が素早く簡単に割り出せる。ここで、天窓部443が本発明の開口部としても機能している。つまり、ケース部材400の上面に開口部として複数の天窓部443を備えることにより、軽量化を図ることができ、輸送時や交換時における作業者の負担を一層軽減することが可能になる。
ケース部材400の後面板405の外面には図2,図5,図6,図12に示したように複数のボス410,410が突設されており、該ボス410を外本体100の背板104にプレ加工したボス孔114,114に嵌めて位置決めされる。なお、このボス410,410は、図2,図5に示したように後述する配線窓411近くに設けられており、一方、外本体100側のボス孔114,114は前記配線中継部材113近くに設けられており、これによりケース部材400の配線窓411と背板104の配線中継部材113の位置決めが正確になる。
一方、ケース部材400の底板403の底面には、図2に示したように凹段部412が形成されており、該凹段部412が前記仕切板105の突段部106に嵌まり合う。凹段部412の後面板405側の端部には後方に向かって拡大する向きのテーパ部413が設けてあり、該テーパ部413に案内され仕切板105の突段部106とケース部材400の凹段部412との嵌め合わせが円滑に行える。このようにケース部材400の凹段部412と仕切板105の突段部106の嵌め合いによってケース部材400が仕切板105の奥に真っ直ぐに案内されるが、例えば図20に示したように仕切板105に凹溝形態のレール部材115を敷設又は一体にプレス成形し、一方、ケース部材400の底板403に車輪414を設置し、該車輪414をレール部材115の溝内で転がらせるようにしてもよい。或は、図21に示したように仕切板105に凸形態のレール部材116を敷設又は一体にプレス成形し、一方、ケース部材400の前記車輪414の両端に鍔415,415を形成し、該車輪414の鍔415,415でレール部材116を挟ませるようにしてもよい。
また、ケース部材400は、仕切板105上の所定の位置にセットした状態で、図1,図2,図18,図23に示した揺動レバー形態のストッパー117で止められている。このストッパー117は、図1,図2に示したように仕切板105の前端部と、天板103に垂設した2つの取付具118,118とに軸着されており、図18実線のようにケース部材400の一部に係合する作動姿勢と、図18想像線のようにケース部材400に係合しない非作動姿勢とを手動で切り替えてケース部材400の仕切板105上における前方向の動きを規制する。なお、ストッパー117を図19に示したように鍵形にしてケース部材400に設けた引掛部416に係合させるようにすれば、ケース部材400の仕切板105上における上方向の動きも規制することができる。
また、天板103の取付具118に軸着したストッパー117は、図23に示したようにケース部材400の側板404と天板406のコーナー部に貫設した係止孔442に臨む位置にあり、ケース部材400を所定の位置に押し込んだ状態でケース部材400の内側から作動姿勢と非作動姿勢の切り替えが行えるようになっている。
また、ケース部材400の後面板405には外本体100の背板104側に貫通する長孔形態の配線窓411が開設されている。該配線窓411は、図4,図5,図24に示したようにケース部材400に設置した図柄変動表示装置300の装置ケース302の上斜板309に対応し且つ前記メイン基板409の下側の位置にあり、上斜板309の上にある横長の空きスペース417(或は上斜板309とメイン基板409の間に形成される横長の三角スペース417と観念してもよい。)と背板104を結ぶ開口として機能する。
また、ケース部材400には図5,図12に示したように空きスペース417の高さのほぼ中間位置に棚板状の仮止め部材418(以下「仮止め棚」ともいう。)が設けられており、また、後面板405の外側であって配線窓411の両横にケース部材400の左右側面に抜ける配線通路たる凹み419,419が形成されている。
なお、前記配線窓411の配置を、図柄変動表示装置300のリール301a,301b,301cを基準に特定するならば、配線窓411は、図24に示したように図柄変動表示装置300のリール301a,301b,301cの回転中心を通る水平面HLと、リール301a,301b,301cの最高高さ位置を通る水平面HHとの間の範囲を下限とする状態、つまりその範囲内に下辺を置く高さに配置したものである、と言い換えることもできる。
[6.画像表示体]
画像表示体500は、例えば、少なくとも液晶ディスプレイ(他にもプラズマディスプレイや有機ELディスプレイ等でもよい。)で構成される画像表示可能なパネル形のユニットであり、ケース部材400の前面開口を開閉可能に閉鎖する前面開閉部材90(図44参照)としても機能している。なお、画像表示体500は、図11においてケース部材400の左側の側板404に設けた補強部材407にヒンジ金具420を取り付けて(取付位置は図11斜線部参照)、該ヒンジ金具420により回動自在に支持されている。
また、図44に示すように、画像表示体500の裏面側には、演出制御基板510が組付けられている。このため、液晶ディスプレイ等の画像表示体500と演出制御基板510とを一体的に構成することが可能になり、取扱いが容易になるとともに、両者を繋ぐ配線が省略でき、ケース部材400内における配線作業空間408の煩雑さを抑制できる。また、画像表示体500が開かれると、演出制御基板510がケース部材400内から飛び出すように出現するため、演出制御基板510に対する作業性を著しく向上させることができる。
[6−1.画像表示体−ヒンジ金具]
図36は、ヒンジ金具420の分解・組み立て斜視図である。なお、ヒンジ金具420は、上下が対称な構造であるため、主として上部について説明する。ヒンジ金具420は、前記ケース部材400の補強部材407に取り付く固定部材420aと、画像表示体500の裏側(図36の破線領域500s参照)に取り付く回動部材420bと、該回動部材420bと固定部材420aを連結する短リンク420c及び長リンク420dで構成される。
ヒンジ金具420の固定部材420aは、棚板形態である横向きの固定片420eを有し、該固定片420eの上面に長リンク420dの一端をピンP1で、また、固定片420eの下面に短リンク420cの一端をピンP2で回動自在に軸着する。一方、ヒンジ金具420の回動部材420bは、棚板形態である横向きの軸承片420fを有し、該軸承片420fの上面に長リンク420dの一端をピンP3で、また、軸承片420fの下面に短リンク420cの一端をピンP4で回動自在に軸着する。
こうして固定片420eと軸承片420fと長リンク420dと短リンク420c及びピンP1〜P4は、図37の線図に示したように四節回転連鎖を構成し、その連鎖の中でも特に、最短リンクである軸承片420fに向かい合う固定片420eを固定リンクとする、いわゆる両てこ機構を構成する。この両てこ機構は、図37(a)〜(c)に示したように、画像表示体500の回動軌道を、扉形前面部材200の回転軸100aを中心とする回動軌道に近似させるべく、それぞれのピン位置が設定されている。つまり、ヒンジ金具420が回転中心移動機構として機能しており、扉形前面部材200の回動位置が変化しても、扉形前面部材200の回動外縁側と画像表示体500の回動外縁側との距離が略一定になるようにしている。
なお、長リンク420dと短リンク420cは、画像表示体500がほぼ90度回動した(開いた)状態で上下に重なり合うように重合領域420g,420hが設定されており(例えば長リンク420dの重合領域420gを三角形に膨出させて短リンク420cの重合領域420hに重なるようにする。)、その重合領域420g,420hの夫々にピン孔420i,420jが形成されている。このピン孔420i,420jは、両者を同軸上に揃えて棒状の止めピン(図示せず)を差し込むことにより長リンク420dと短リンク420cを連結し、もって両てこ機構をロックして画像表示体500を開いた位置に固定するためのものである。
[6−2.画像表示体−ロック片]
図11,図12に示したように、ケース部材400の縦の補強部材407のうち前記ヒンジ金具420を設けた補強部材407の反対側の補強部材407(図11において向かって右側)にはロック片421が軸着されており、該ロック片421を図11の状態から時計回りに回動させるとその先端が画像表示体500の裏側に突設した受部508に係合し、この状態で画像表示体500がケース部材400の開口部401の上部を閉じた位置にロックされる。一方、前記ロック片421をロック状態から逆向きに回動させると画像表示体500のロックが解除され、ヒンジ金具420を中心に回動自在になる。通常、ケース部材400を外本体100に装着する前の状態では画像表示体500を閉じ位置にロックして無用な回動を防止し、一方、ケース部材400を外本体100に装着した状態では画像表示体500のロックを解除して回動自在とする。
[6−3.画像表示体−連結具]
ところで、外本体100の扉形前面部材200とは別に、ケース部材400に開閉可能な画像表示体500が設けられることから、ケース部材400内を視認したりケース部材400内で作業したりする場合には、まず手前側の扉形前面部材200を開放し、その後さらに奥側の画像表示体500を開放しなければならず、これにより作業性を低下させたり煩わしさを与えることが懸念される。
そこで、本例のスロットマシン1では、画像表示体500の回動方向を扉形前面部材200の回動方向と同方向にするとともに、扉形前面部材200と画像表示体500を適宜な連結具700で連結し、扉形前面部材200の開閉に連動して画像表示体500も一緒に開閉させるようにしてある。これによれば、扉形前面部材200を開放させると、連結具700を介して画像表示体500も同方向に回動し、ケース部材400の前面が開放される。つまり、画像表示体500が扉形前面部材200に連れ回ることとなり、一回の横開き操作によって外本体100内は勿論、ケース部材400の内部までも視認させることが可能になる。
ここで、前記のように実施形態の扉形前面部材200と画像表示体500とは、ヒンジ金具420の両てこ機構によって、画像表示体500の回動軌跡が扉形前面部材200の回転軸100aを回転中心とする回動軌跡に近似するようになっているものの、それでもなお両者の動きには相対的なずれが生じる。そこで、実施形態の連結具700は、図40及び図41に示したように、画像表示体500の自由端側の裏面に固定鞘部材701を形成し、該固定鞘部材701の内部に摺動自在な状態にロッド702を納め、そのロッド702の先端を扉形前面部材200の裏面(具体的には錠装置215のベース部材215a)に対し、止め軸703で回転可能な状態に連結してある。こうすることにより、図39のように、扉形前面部材200の開閉に連動して画像表示体500が扉形前面部材200の付属部品であるかのごとく一緒に開閉し、その際生じる両者の動きの相対的なずれを連結具700のロッド702が固定鞘部材701に出入りして吸収する。
なお、ロッド702が画像表示体500の回動外縁(自由端)から最も突出したときの最大突出長さは、画像表示体500が開放位置である場合(例えば90°開放された場合)の、扉形前面部材200の回動外縁(止め軸703の位置)と画像表示体500の回動外縁との距離に基づいて設定されている。このため、ロッド702の長さを必要最小限の長さとすることができ、連結具の大型化を抑制することが可能になる。
また、前記止め軸703は、錠装置215のベース部材215aの一部を曲げて形成した支持片215b,215b,215bに対し、上下動自在に装着されており、スプリング703aにより常時下向きに付勢されている。よって、この止め軸703は、スプリング703aの付勢に抗して上動させることが可能であり、上動させて下端を浮かせることによって前記連結具700のロッド702の着脱が可能である。すなわち、ロッド702の先端部分に形成された軸孔部702aに対し上方から止め軸703を挿入させ、スプリング703aの付勢力によって保持することが可能になっている。
また、図40において、符号704は連結具700の固定鞘部材701の上面に設けた弾性的な片持ち梁式のストッパーであって、前記止め軸703から外したロッド702を固定鞘部材701の内部に納めて保持するためのものであり、ロッド702の上面に形成した溝705の端部の引掛壁702bに係合してロッド702の盲動を防止する。ロッド702には、その側面に摺動方向と直交する方向に摘み片706が突設されており、該摘み片706を摘んでロッド702を強制的に移動させることにより前記ストッパー704のロックが外れるようになっている。また、固定鞘部材701の先端側底面には、抜止め防止片701aが垂下され、ロッド702の溝705内に挿入されている。この抜止め防止片701aは、ロッド702が最も突出した際に引掛壁702bと当接し、ロッド702が固定鞘部材701から抜け出ることを阻止するものである。
また、図40において、連結具700の近傍にある符号509は、画像表示体500の回動外縁側の裏面に突設した係合部である。該係合部509は、ケース部材400の開口部401を横切る補強桟402に係合して、閉じ位置にある画像表示体500の自由端側の荷重を支えるものである。なお、図11に示したように、補強桟402には、前記係合部509を補強桟402の上面に円滑に導くべく、画像表示体500に向かって下り傾斜する滑り台式の案内部402aが設けてある。また、画像表示体500の係合部509は、画像表示体500とは別の潤滑性に優れた合成樹脂で形成されており、画像表示体500に対し着脱自在(交換自在)に装着されている。
ところで、扉形前面部材200と画像表示体500の回動軌跡の相違に起因する動きの相対的なずれは、上記のような伸縮自在なロッド形式の連結具700の他、柔軟なワイヤーにしても吸収することができる。但し、連結具が柔軟なワイヤー等であると、扉形前面部材200を閉じる段階で扉形前面部材200が開いたまま停止している画像表示体500にぶつかることになって、円滑さを損なうおそれがある。これに対し、例えば画像表示体500に巻バネなどの付勢手段を設けて常時閉じ方向に付勢するようにすればよい。そうすることにより扉形前面部材200の閉じ動作に際し、画像表示体500が上記付勢力の作用で連結具を引っ張りつつ自力で閉じるから、扉形前面部材200と画像表示体500がぶつからない。もちろん扉形前面部材200と画像表示体500の連れ回りのための手段は上記に限定されない。例えば、上記において連れ回りのための一要素たるヒンジ金具420は、上記のような両てこ機構の構造に限定されず、図41,図42に示したような、単独のピン420kを中心にして画像表示体500を回動させる単純なものであってもよい。
ケース部材400に対する画像表示体500の取着手段をヒンジ構造にして該画像表示体500を扉状に回動させ得る構成に、上記のように画像表示体500を閉じ位置にロックするロック手段(上記のロック片421)を付加した場合には、ケース部材400を外本体100に装着した状態で原則ロックを継続させ、配線作業空間408内のチェック等、必要な時にのみロックを解除する、という取り扱いを選択することも可能であり、その場合には画像表示体500によって配線作業空間408内の重要部品(例えばメイン基板409や演出制御基板510)がブロックできるから、防犯性能の向上に効果がある。
ケース部材400の開口部401上縁と閉じた画像表示体500の上縁との前後間には隙間10が設けられており、該隙間10に通した指で天板406の前記補強部材407が掴めるようになっている。また、ケース部材400の天板406の前方中央部分(天窓部443,443の間の補強帯444)には把手口422が形成されており、該把手口422に通した指で天板406の補強部材407が掴めるようになっている。従ってケース部材400は、取り扱う場所や姿勢に応じて該把手口422と前記隙間10との適宜な使い分けが可能である。例えば、ケース部材400を外本体100に組み込む前の搬送時には把手口422を使って鞄形態に持ち運ぶ方がバランスがよく、一方、ケース部材400を外本体100に装着した状態では、図4に示したように把手口422が外本体100の奥に隠れて指が入らないため、前記隙間10から補強部材407に指を掛けてケース部材400を引っ張り出す、という具合である。なお、ケース部材400の底板403の正面中央には前記した装置ケース302の下把手316(図4,図11参照)が突出しており、該下把手316を持って押し込み又は引っ張ることで外本体100へのケース部材400の出し入れが容易に行える。この場合の下把手316は、装置ケース302がケース部材400にビスで固着されていることよりケース部材400と一体であり、従ってケース部材400の底板403の正面に下把手316が突設されているに等しい。
[6−4.画像表示体−枠部材]
画像表示体500は、ケース部材400の開口部401の前記補強桟402から上の領域のほぼ全部を覆う大きさである。また、画像表示体500の下側には、ケース部材400の開口部401の前記補強桟402から下の領域、つまり図柄変動表示装置300の前方領域を額縁状に囲う枠部材501が一体に垂設されている。
ここで、枠部材501は、遊技者がリールの一部を視認可能な表示領域(リール表示領域/図柄表示領域)を提供する一般的な構成部品の1つであり、枠部材501によって提供されるリール表示領域は固定的である(図11及び図44参照)。本節では、このような枠部材501を用いてスロットマシン1の構造についての説明を続ける。しかし、本実施形態のスロットマシン1は、「リール表示領域(図柄表示領域)が可変」という特徴を有し、これを実現するために、実際には、固定的な枠部材501ではなく、リール表示領域を変更可能にする機能を有する構成(例えば、後述するリール表示装置520)が用いられる。
枠部材501の説明を続ける。画像表示体500の下側に垂設された枠部材501によれば、枠部材501によって形成される窓状の領域を通じて、図柄変動表示装置300のリール301a,301b,301cの一部分は前方から視認可能にされるため、当該リール部分に付された図柄が遊技者から視認可能になる。また、枠部材501の表面は装飾面になっており、適宜な模様等が描かれている。なお、図示しないが、枠部材501にはLED等の発光源と、その発光源を制御する発光制御基板と、発光源の前方に配置され光を透過可能な装飾部材とから構成された電飾部が設けられている。ここで、画像表示体500と枠部材501とを組合せたものを、以下、前面開閉部材90(図44参照)として説明する。
[6−4−1.画像表示体−枠部材−照明装置]
前記枠部材501の裏側上下には照明装置502が設けられており、該照明装置502によって図柄変動表示装置300の図柄が明るく照らされる。枠部材501は画像表示体500の下に垂設されていて図柄変動表示装置300に近いから、そのような枠部材501に照明装置502を組み込むことで光源を図柄変動表示装置300に近づけることができる。従って枠部材501に照明装置502を組み込む手段は、従来の照明装置に比べて低光量でも十分な明るさが確保できる、という特徴がある。
実施形態として例示した照明装置502は、図4に示したように、図の紙面と直交する方向(スロットマシン1の幅方向であってリール301a…の回転軸と同方向)に細長い帯状の基板503に多数の発光ダイオード(以下LEDという。)504を並べたものであり、下側の照明装置502は、上面を例えば乳白色の透光性蓋板505で塞いだチューブ枠506の中にLED504を上向きにして配置し、一方、上側の照明装置502は、断面上向きコ字状の例えば乳白色である透光性カバー507内にLED504を下向きにして配置してなる。
なお、上側の照明装置502は、照明方向を図4に示したように真下より遊技者側、すなわち透明板214a側に向かう斜め下向きに設置してある。実施形態では比較的強い指向性を持ったLED504の主たる照射領域の中心線L(図4拡大図参照)を透明板214aに対し斜めに向かわせるべく、基板503のLED取付面の向きが、前記透明板214a側に向けて斜め下向きに傾けられている。
また、もし照明装置502の光源として蛍光灯のような棒状発光体を採用した場合には、図4の基板503を板状又は光源を包むような凹面状の反射部材に変更し、直射光と反射光の総和により方向付けられる主たる照射領域の中心線が、透明板214a側の裏面に斜めに当たるように設定すればよい。以上のように照明装置502の照射照準を透明板214aに設定すれば、漏れた一部の光がリール301a,301b,301cの外周面を照らしても殆ど影響はない。
実験によれば、照明装置502の照明方向をリール301a,301b,301cの周面側に向けた場合には、湾曲するリール301a,301b,301cの特定部分が強く反射して見辛くなるのに対し、上記のように主たる照射領域の中心線Lを透明板214aに対し斜めに向かわせた場合には、透明板214aを介してリール外周面が照らされることにより、リール301a,301b,301cの広い範囲が明るく見え易くなることが確認できた。その理由として、照明装置502から照射した光が扉形前面部材200の透視窓214に嵌めた透明板214aに当たって反射し全体に拡散するか、或は透明板214aが明るく照らされることでリール301a,301b,301cの広い範囲が明るく見えるか、或はそれらの相乗作用によるものと推測される。
以上のような上側の照明装置502の構造は、下側の照明装置502にも採用することができ、もちろん図32に示したように下側の照明装置502にのみ採用することもできる。なお、図32は図4の上側の照明装置502を下側に配置し、下側の照明装置502を上側に配置したものであるため、上記照明装置502の説明の「上」を「下」に読み替え、「下」を「上」に読み替えればよい。
ところで照明装置502の光源として実施形態のようにLEDを採用した場合には、(a)低電圧で駆動するため約200Vの高電圧で駆動する従来の冷陰極管より安全性が高い、(b)冷陰極管より寿命が長い、(c)ガラス管である冷陰極管より丈夫である、(d)多色発光が可能であるため演出の幅を広げることができる、(e)インバータと組合せて使用する冷陰極管より軽く、従って画像表示体500を支えるヒンジ金具420の負担が少ない、というメリットがある。
[7.配線手段]
前記外本体100に取り付けられている例えばメダル放出装置110や電源装置112及び扉形前面部材200の操作部202にある例えば各投入ボタン205,206や始動レバー210(以下、これらの総称として単に「本体側電気部品」という場合もある。)と、ケース部材400にある例えばメイン基板409等(ケース部材側の電気部品の総称として単に「ケース部材側電気部品」という場合もある。)とは電気的に接続されている。そして、実施形態のスロットマシン1は、前面開閉部材90とケース部材400とからなる機種ユニット50(図44及び図45参照)が外本体100に対し着脱自在であるため、機種ユニット50の交換等に際して本体側電気部品(筐体側電気部品)とケース部材側電気部品とを簡単に接続又は切り離すための合理的な配線手段が設けられている。
[7−1.配線手段−配線中継部材]
前記のように外本体100の背板104の内面上部には、図14に示した配線中継部材113が取り付けられている。該配線中継部材113は図4,図5に示したように、前記ケース部材400の配線窓411に対応する位置にあって該配線窓411からケース部材400の空きスペース417に臨むようになっている。配線中継部材113は、前記本体側電気部品につながる本体側配線類119と、前記ケース部材側電気部品につながるケース側配線類423とを中継するものであって、外本体100の背板104にビス止めされる取付板120と、該取付板120の前面に被さるカバー体121と、該カバー体121と前記取付板120の間に納められる複数(実施形態では大小2枚)のコネクタ基板(以下「コネクタ接続用端子基板」という場合もある。)122,123とからなる。
前記2枚のコネクタ基板122,123のうち、図14,図15において左側に位置する大きい方のコネクタ基板122は取付板120に対して固定的に取り付けられており、前記メイン基板409につながっているハーネス424の先端のコネクタ425と対をなすコネクタ124が設けられている。
一方、図14,図15において右側に位置する小さい方のコネクタ基板123は、取付板120とカバー体121の間の隙間に非固定的な遊動可能状態に取り付けられており、従って図15拡大図に示したように上下方向に移動可能であり、また、左右方向にも移動し得る。この小さいコネクタ基板123には、メイン基板409以外のケース部材側電気部品につながっているハーネス426の先端のコネクタ427と対をなすコネクタ125が設けられている。なお、該コネクタ125と前記コネクタ124は、プリント基板にハンダ付け等の固着手段で固着する基板固着型であり、安価なDIN規格のものが使われている。
また、取付板120の前面に被さるカバー体121は、前記コネクタ124,125が通る大小2つの開口126,127と、該開口126,127と横並びの位置に突設した支持筒128と、下半部前方に張り出すトンネル状の配線ダクト129と、を有する。
配線中継部材113に接続する本体側配線類119は、前記配線ダクト129の内部を通るか、または配線中継部材113の取付板120の下側前面に突設したフック形状の配線止め130に束ねられた状態で、図1一点鎖線Lに示したように外本体100の側板102,102側に振り分けられ、該側板102,102と背板104のコーナー付近でほぼ垂直に向きを変え、その多くは仕切板105の奥に設けた配線用の開口109を通って本体側電気部品に夫々接続される。もちろん仕切板105より上の領域に本体側電気部品(例えば図1において側板102の内面に設けた外部中継端子板131)がある場合には、仕切板105の配線用の開口109とは無関係にそのまま接続される。
ここまでで説明した配線手段から、次のような技術的思想が把握できる。
(a)ケース部材400の後面板405に、図柄変動表示装置300のリール301a,301b,301cの回転中心を通る水平面とリール301a,301b,301cの最高高さ位置を通る水平面との間に自己の下辺が位置する高さにして配線窓411を形成する。
(b)外本体100の背板104に、本体側電気部品につながる本体側配線類119と、ケース部材側電気部品につながるケース側配線類423とを中継する配線中継部材113を設置する。
(c)外本体100の側板102,102の内面沿いに配線を通す上下方向の配線経路を形成する。
(d)配線中継部材113につながる本体側配線類119をケース部材400の側方に導き、そこから前記配線経路を通って本体側電気部品に接続する。
以上(a)〜(d)の構成要素を備えた遊技機は、図柄変動表示装置300のリール301a,301b,301cの後ろを本体側配線類119が通らず、外本体100の側板102,102沿い(背板104とのコーナーを含む(図10参照)。)に設けた配線経路を迂回するため、リール301a,301b,301cを外本体100の背板104近くにまで寄せることが可能になり、従来の構成、すなわち、本体側配線類119が背板104のほぼ中央を下ってリール301a,301b,301cの後ろを通っていた従来の構成に比べて、リール301a,301b,301cの径を大きくすることができる。なお、リール301a,301b,301cの径は大きい方が、回転時の迫力が増す。
[7−2.配線手段−コネクタ425,427]
上記のように配線中継部材113に設けられている2つのコネクタ124,125には、ケース部材400のメイン基板409につながっているハーネス424の先のコネクタ425と、メイン基板409以外のケース部材側電気部品につながっているハーネス426の先のコネクタ427がそれぞれ接続されている。
この2つのコネクタ425,427は、図16に示したように1つのコネクタホルダー428に一体に取り付けられている。該コネクタホルダー428は、コネクタ425,427がビス止めされるホルダー主体429と、ほぼ中央に透孔430を有し前記ホルダー主体429の両横に突設した板状の取着片431と、該取着片431の透孔430に装着した周知のボタン形パネルファスナー432(商品名「ナイラッチ」:登録商標)と、からなり、図5,図8(a)に示したように配線中継部材113の前記支持筒128の先に取着片431を当て、該取着片431のボタン形パネルファスナー432を支持筒128に差し込んでロックしてある。従ってコネクタホルダー428が固定手段たる支持筒128に固定され、ひいては配線中継部材113に固定されるため、コネクタ425,427とコネクタ124,125の結合が外れない。
[7−2−1.配線中継基板−コネクタ425,427−仮止め棚]
上記のようにコネクタ425,427は配線中継部材113のコネクタ124,125に接続されているが、ケース部材400が外本体100に組み込まれる前、つまり工場出荷から設置完了までの間、コネクタ425,427は、ケース部材400に設けた仮止め棚418に仮止めされている。
前記仮止め棚418は、図5,図6,図12,図13に示したようにケース部材400の内側から前記配線窓411に向かわせた棚板状の部材であり、図6に示したようにコネクタホルダー428を載置するほぼ水平なベンチ部433と、そのベンチ部433の両端に立設したベンチ側板434と、各ベンチ側板434に突設した3本の内向き爪片435,435,435とを有する。この内向き爪片435,435,435の中央の1本と他の上下の2本との間にはコネクタホルダー428の取着片431が嵌まり得る間隔が設けてある。なお、一方のベンチ側板434は、先端に指掛部436を延設した薄板構造であって、指掛部436に指を掛け図8(b)矢示X方向に力を加えることにより一端支持の板バネのごとく外向きに反らせ得るようになっており、その反らせた状態で内向き爪片435,435,435からコネクタホルダー428の取着片431が簡単に外れるようになっている。図8(a)の想像線は指掛部436の先を鍵形に折り曲げた例を示したものであり、こうすることにより矢示Yのようにボタンを押す感覚でコネクタホルダー428の取外しが楽に行える。
しかして、図6に示したように前記仮止め棚418のベンチ部433にコネクタホルダー428を載置し、該コネクタホルダー428の取着片431をベンチ側板434の内向き爪片435,435,435の間に嵌めることによってコネクタホルダー428が仮止め棚418に仮止めされる。もちろん仮止めと言っても、ケース部材400の輸送中にコネクタホルダー428が仮止め棚418から外れない強度を有する設定になっており、従ってケース部材400が外本体100に組み込まれる前までは、コネクタホルダー428と一体のコネクタ425,427はケース部材400に設けた仮止め棚418に仮止めされて動かない。よってケース部材400を輸送したり、ケース部材400を外本体100に組み込む作業の最中に、ハーネス424,426の先にあるコネクタ425,427が、ケース部材400内の部品に当たってその部品はもちろん、自らも損傷する、というようなおそれがない。
そして、図8(b)→図8(a)に示したように、ケース部材400を外本体100に固定した後の配線工程で、上記のように一方のベンチ側板434を外向きに反らせてコネクタホルダー428を仮止め棚418から外し、そのコネクタホルダー428を自己の取着片431が配線中継部材113の支持筒128に当たる位置まで移動させれば、コネクタ425,427が配線中継部材113のコネクタ124,125に嵌まるから(その詳細は後述する。)、その状態で取着片431のボタン形パネルファスナー432を押し込んで取着片431を支持筒128にロックする。なお、このとき図5,図6に二点鎖線で示したように、ベンチ部433にガイド用の案内レール440を設けておけば、コネクタホルダー428を奥に押し込むだけでよいため、作業性が向上する。
以上のようにして配線中継部材113に取り付けたコネクタホルダー428は、外本体100の背板104を支持基盤として安定し、ケース部材から離間していて接触しないため、輸送時の振動等で外本体100と機種ユニット50が相対的に動いても無理な負荷が加わらない。
ここまでの説明から、次のような技術的思想が把握できる。
(a)前面が開口し背面を背板で覆った箱形であって電源装置その他の本体側電気部品を備えた外本体と、
(b)前記外本体に対し着脱自在なケース部材に複数の図柄を変動させる図柄変動表示装置その他のケース部材側電気部品を設けた機種ユニットと、
(c)前記本体側電気部品につながる本体側配線類と、前記ケース部材側電気部品につながるケース側配線類とを中継すべく前記外本体の背板に取り付けた配線中継部材と、
(d)前記ケース側配線類の先端に取り付けたコネクタと、
(e)該コネクタに取り付けたコネクタホルダーと、
(f)該コネクタホルダーを仮止めするためケース部材に設けた仮止め部材と、
(g)前記コネクタホルダーを前記配線中継部材に固定するための固定手段と、を有し、(h)機種ユニットを外本体に装着する前の状態で前記コネクタホルダーを仮止め部材に仮止めし、機種ユニットを外本体に装着した状態で前記コネクタホルダーを仮止め部材から固定手段に付け替えてコネクタホルダーのコネクタを配線中継部材に接続するようにしたことを特徴とする
(i)遊技機。
上記の遊技機は、機種ユニット50の外本体100への装着とコネクタ同士の結合とを別々に行うようにしたものであるが、これとは対照的に、例えば機種ユニット50に直接コネクタを取り付け、機種ユニット50を外本体100に押し込む動作で自動的にコネクタ同士を結合させる、という方式が考えられる。しかしこの方式は、質量の大きな機種ユニット50が輸送中などに外本体100の内部で振動した場合、大きな負担がコネクタ結合部に掛かるため信頼性に不安があり、その対策にコストが掛かる課題がある。
また、本発明の遊技機は、外本体100に1枚の扉形前面部材200を取り付け、該扉形前面部材200に対して機種ユニット50を物理的に独立させた構成であるが、これとは対照的に、扉形前面部材を上下2段に分割し、上部の扉形前面部材を機種ユニット50側の部品とする遊技機も考えられる。しかし、このような遊技機では、遊技中に興奮した遊技者が上部の扉形前面部材を叩いた場合にコネクタ結合部に直接衝撃が加わるためコネクタの結合が不安定になるおそれがあり、さらに上下の扉形前面部材同士の継ぎ目に対し新たな防犯構造を要する課題がある。
これに対し本発明の遊技機は、外本体100に1枚の扉形前面部材200を取り付け、該扉形前面部材200に対して機種ユニット50を物理的に独立させた構成であり、さらに、コネクタホルダー428を配線中継部材113に接続した後、該コネクタホルダー428は、図5に示したように外本体100に固定した部品(配線中継部材113)と結合し機種ユニット50から離間した独立構造になっているため、プリント基板にハンダ付けして用いる低コストで一般的なコネクタを使用した場合でも、輸送中においても、遊技中においても信頼性・耐久性に不安がない。また、機種ユニット50のみが機種変更時の交換対象であり、扉形前面部材200は交換対象とならないため、機種変更のための遊技場の負担も軽くなる。
[7−2−2.コネクタ425,427とコネクタ124,125の結合]
前記のようにコネクタ425とコネクタ427は、1つのコネクタホルダー428に取り付けられている。こうすることによりコネクタホルダー428を配線中継部材113の所定の位置にセットする1回の動作で2つのコネクタ425,427の接続が完了する。しかし現実の問題として、2つのコネクタ425,427とコネクタホルダー428という独立した要素を寄せ集めて一体にする構造では、コネクタ425,427とコネクタ124,125の「正確な位置決め」という困難な問題に直面する。すなわち2つのコネクタ425,427と配線中継部材113側のコネクタ124,125の4要素の位置決めが全て正確でなければ、コネクタ425,124とコネクタ427,125の一括結合は不可能であるのに、そのような位置決めの精度を量産品レベルのコストで達成するのは困難だからである。そのような問題を解決する1つの手段として、プリント基板にハンダ付けすることなく結合時の融通性を高める機構を施したいわゆるドロワーコネクタを使用する方法が考えられるが、ドロワーコネクタ自体が高価であるため、まだコスト面の負担が大きい。
これに対し実施形態の配線手段では、基板支持部材たる配線中継部材113のコネクタ基板122,123を分割してそれぞれにコネクタ124,125を装着し、そのコネクタ基板122,123の少なくとも一方を、配線中継部材113の取付板120とカバー体121の間の隙間に非固定的に納めてコネクタ427とコネクタ125の結合方向と直交する方向(ここでの「直交」は、厳密な90度にこだわらず、社会通念上のほぼ90度という程度の意味である。)に遊動可能状態にする手段を講じている。かかる構成においてコネクタホルダー428の結合照準をコネクタ425とコネクタ124に定めた場合、もう一方のコネクタ427とコネクタ125の相対位置に若干の狂いがあっても、コネクタ基板123が遊動してその狂いを矯正すべく移動するから、コネクタ427とコネクタ125の結合も可能になる。これにより基板固着型で安価なDIN規格のコネクタで十分に対応できる。
ここまでの説明から、次のような技術的思想が把握できる。
(1)「2以上の配線用のコネクタと、その各コネクタと対をなす2以上の配線用のコネクタとを有する遊技機において、一方のコネクタグループを1つのコネクタホルダーに固着すると共にこれらと対をなす他のコネクタグループをコネクタ基板に装着し、さらにそのコネクタ基板をコネクタ毎に分割してその1つを基板支持部材に固定すると共に他のコネクタ基板を基板支持部材に対しコネクタの結合方向と直交する方向に遊動可能な状態に取り付けるようにしたことを特徴とする遊技機。」
(2)「前面が開口し背面を背板で覆った箱形であって電源装置その他の本体側電気部品を備えた外本体と、前記外本体に対し着脱自在なケース部材に複数の図柄を変動させる図柄変動表示装置その他のケース部材側電気部品を設けた機種ユニットと、前記本体側電気部品につながる本体側配線類と、前記ケース部材側電気部品につながるケース側配線類とを中継すべく前記外本体の背板に取り付けた配線中継部材と、前記ケース側配線類の先端に取り付けた2系統以上のコネクタと、該2系統以上のコネクタをコネクタグループとして一括支持するコネクタホルダーと、該コネクタホルダーを前記配線中継部材に固定するための固定手段と、前記2系統以上のコネクタグループの各コネクタと対をなしプリント基板に固着して使用する基板固着型のコネクタによる他のコネクタグループと、前記背板に取り付けた配線中継部材に取り付けられ、前記他のコネクタグループのコネクタを固着してなるコネクタ接続用端子基板と、を有し、該コネクタ接続用端子基板をコネクタ毎に分割してその1つを前記配線中継部材に固定すると共に他のコネクタ接続用端子基板を配線中継部材に対しコネクタの結合方向と直交する方向に遊動可能な状態に取り付けるようにしたことを特徴とする遊技機。」
(3)「2以上の配線用のコネクタと、その各コネクタと対をなす2以上の配線用のコネクタとを有する遊技機において、一方のコネクタグループをコネクタ基板を介して基板支持部材に固着すると共にこれらと対をなす他のコネクタグループを1つのコネクタホルダーに装着し、さらにそのコネクタホルダーに対しコネクタグループの中の1つのコネクタを固定すると共に他のコネクタをコネクタホルダーに対しコネクタの結合方向と直交する方向に遊動可能な状態に取り付けるようにしたことを特徴とする遊技機。」
(4)「前面が開口し背面を背板で覆った箱形であって電源装置その他の本体側電気部品を備えた外本体と、前記外本体に対し着脱自在なケース部材に複数の図柄を変動させる図柄変動表示装置その他のケース部材側電気部品を設けた機種ユニットと、前記本体側電気部品につながる本体側配線類と、前記ケース部材側電気部品につながるケース側配線類とを中継すべく前記外本体の背板に取り付けた配線中継部材と、前記ケース側配線類の先端に取り付けた2系統以上のコネクタと、該2系統以上のコネクタをコネクタグループとして一括支持するコネクタホルダーと、該コネクタホルダーを前記配線中継部材に固定するための固定手段と、前記2系統以上のコネクタグループの各コネクタと対をなしプリント基板に固着して使用する基板固着型のコネクタによる他のコネクタグループと、前記背板に取り付けた配線中継部材に取り付けられ、前記他のコネクタグループのコネクタを固着してなるコネクタ接続用端子基板と、を有し、前記コネクタホルダーに対しコネクタグループの中の1つのコネクタを固定すると共に他のコネクタをコネクタホルダーに対しコネクタの結合方向と直交する方向に遊動可能な状態に取り付けるようにしたことを特徴とする遊技機。」
以上の遊技機は、固定したコネクタ接続用端子基板のコネクタに照準を合わせてコネクタホルダーを操作するようにすれば、他のコネクタ同士の相対位置に製造誤差等で若干の狂いがあっても、非固定のコネクタ接続用端子基板がコネクタごと遊動してその狂いを矯正すべく移動し誤差を吸収するから、結合照準でないコネクタ同士の結合も可能になる。従って1つのコネクタホルダーを用いて複数系統のコネクタの一括接続が可能である。しかも使用しているコネクタは、プリント基板にハンダ付けして用いるような汎用的で安価な例えばDIN規格のものであり、コストも安い。
また、コネクタホルダーは、ナイラッチ(登録商標)等の固定手段で配線中継部材、ひいては該配線中継部材を介して外本体の背板に確実に固定される。一方、コネクタホルダーと機種ユニットの間では、フレキシブルなハーネスを介してつながっているのみであり、機種ユニットが動いたとしても、その動きはフレキシブルなハーネスが吸収するので、コネクタホルダーに動きは伝わらない。このため、たとえ輸送中の振動により外本体と機種ユニットの間に相対的な動きが生じても、コネクタホルダーは、外本体のみと一緒に動き、機種ユニットの干渉を受けないから、コネクタの結合部には全く負荷が掛からない。よってコネクタ結合の信頼性が非常に高い。
なお、実施形態のように、小さいコネクタ125に対応する小さいコネクタ基板123を遊動可能とし、大きいコネクタ425,コネクタ124同士を結合の基準に定める構成は、その逆の構成に比べてコネクタ425,124,427,125の結合が楽に行える。小さいコネクタ基板123の方が軽い力で扱えるため、狂いの自動矯正が容易だからである。また、実施形態では、図9のようにコネクタ425,124の方がもう一方のコネクタ427,125より先に結合するようになっており、そうすることにより結合照準のコネクタ同士が合わせやすい。
また、図9に拡大して示したように凸形のコネクタ425,427の凸部先端の周縁角部及び/又は凹形のコネクタ124,125の差込口の周縁角部に面取り部C(直線的な面取り、曲線的な面取りのいずれも可)を形成しておけば、面取り部Cのテーパに沿った誘導作用が、コネクタ同士の結合性をより良好にする。
また、実施形態のように、配線中継部材113のコネクタ基板122,123を遊動可能にする構成の他、コネクタホルダー428側のコネクタ425,427の何れか一方を遊動可能にすることも可能であり、その場合も上記と同様の作用効果が得られる。なお、かかるコネクタホルダー428の具体例を図17に示した。この例では、コネクタホルダー428のホルダー主体429に雌ねじ付きの受筒429aを突設し、一方、コネクタ427の両横に遊孔427aを有する耳片427bを形成し、コネクタホルダー428の受筒429aにコネクタ427の遊孔427aを遊嵌させ、座金付きのビス427cをもって耳片427bの抜け止めとしている。そうすることによりコネクタ427は、コネクタホルダー428に対し、遊孔427aと受筒429aの径の差の範囲で自由に遊動し得る。この場合のコネクタ基板122,123は、一体にして取付板120に固定すればよい。また、実施形態では2つのコネクタを1つのコネクタグループとして取り扱ったが、1つのコネクタグループのコネクタ数は2以上でもよい。
また、実施形態では図4,図12に示したように、ケース部材400の後面板405の裏側であって、前記図柄変動表示装置300の装置ケース302の下斜板310に向けて凹ませたケーブル溝437が形成され、該ケーブル溝437の両端近傍にケース部材400の側板404(又は後面板405)を貫く配線口438,438が開設されている。この配線口438,438とケーブル溝437は、図柄変動表示装置300とメイン基板409等とを接続するためのものであり、図11において図柄変動表示装置300の装置ケース302の向かって右側面(扉形前面部材200の非ヒンジ側の側面)に設けたリール基板312のケーブル313(図12参照)を1つの配線口438からケース部材400の外に引き出し、そのケーブル313を図12のようにケーブル溝437に納め、さらにそのケーブル313の先を他の配線口438からケース部材400の中に戻してメイン基板409等につなぐようにしてある。なお、ケーブル溝437には所定の間隔でケーブル止め439が設けられていて、ケーブル溝437からケーブル313が脱落しないようになっている。
しかしてメイン基板409等とリール基板312は、共にケース部材400の中にあるケース部材側電気部品であり、本来、ケース部材400の外にケーブル313を引き出す要はない。それを敢えてケース部材400に配線口438,438とケーブル溝437を設けてケーブル313を外伝いに迂回させるようにした理由は次のとおりである。
リール基板312の設置場所は、限られたスペースの中でコネクタを抜き差しする配線の作業性を考慮すると、図柄変動表示装置300(装置ケース302)の側面のうち扉形前面部材200の非ヒンジ側に相当する側が好ましい。もし逆に、扉形前面部材200のヒンジ側に相当する装置ケース302の側面にリール基板312を設けると、開ききった扉形前面部材200(図1参照。)とリール基板312が近接位置で向かい合うため、コネクタの抜き差しに必要な広い作業空間が確保できないからである。
しかし一方、リール基板312の接続対象たる基板類(メイン基板409,演出制御基板510,画像表示体500等)の接続部がケース部材400の扉形前面部材200のヒンジ側に相当する側にあると、ケーブル313がケース部材400の内部を横切る格好になる。そうすると前記装置ケース302をケース部材400に装着する際にケーブル313を噛み込んだり、逆に装置ケース302を引き出す際にケーブル313を引っ掛けるおそれがある。
これに対し実施形態のように、ケース部材400に配線口438,438とケーブル溝437を設けてケーブル313を外伝いに迂回させるようにすれば、上記したようなケーブル313のトラブルは生じない。また、配線作業は、装置ケース302を所定の位置から若干引き出した状態で行う方が作業性がよく、それに伴って配線口438からリール基板312までのケーブル313の長さは、配線代とでも言うべき余裕が設けられている。従って装置ケース302を所定の位置にセットした状態でケーブル313に弛みが生じ、引き出し量によってはケーブル313の弛みが大きくなる。そのようなケーブル313の弛みが大きい場合には、配線口438と横並びの位置にある、装置ケース302の下斜板310とケース部材400の奥のコーナー部分との間に出来る三角スペースにケーブル313の弛んだ部分を逃がすことができる。
また、実施形態のようにケーブル溝437を装置ケース302の下斜板310に向かわせて膨らませるようにした場合には、ケース部材400の奥と装置ケース302の下斜板310との間にできるデッドスペースの有効活用に役立つ。なお、配線口438,438とケーブル溝437を使った配線は、リール基板312のケーブル313に限定する必要はなく、ケース部材400の内部を横切るケーブル全てに適用できる。
その他、図11中、符号441は機能分離中継端子板である。
以上のように構成されるスロットマシン1は、ケース部材400を外本体100に装着し、必要な配線を完了した完成品の状態で工場から出荷される。そして、その完成品のまま遊技場の遊技機設置島に取り付けられるが、このとき図25想像線のように、外本体100の天板103と遊技機設置島の上桟600とを木ねじ等の固定部材601で止める場合は、扉形前面部材200と画像表示体500を開放し、外本体100の貫通孔132に対しケース部材400の内側から天窓部443越しに固定部材601を挿通させ、さらにドライバー等の工具602で天窓部443越しに固定部材601を締め付けて外本体100の天板103と遊技機設置島の上桟600とを固定的に連結する。なお、貫通孔132は複数設けられているため、必要に応じてその中から任意に選択して使用することができる。例えば、上桟600の位置やサイズにばらつきがあってもその上桟600に対応する貫通孔132を選択することができる。また、遊技機をまるごと入れ替える場合に、使用する貫通孔132を変更すれば、上桟600の同じ位置に固定部材601の穴が開く弊害(いわゆる、ばか穴化)が防止できる。
ところで、図25に示したように外本体100とケース部材400の間には隙間Sが形成されており、画像表示体500等から発生した熱が画像表示体500の冷却ファン(図示せず)で煽られ、ケース部材400の天窓部443から前記隙間Sを通って背板104の通気口133に至り、そこから遊技機設置島の内部に抜ける。このとき背板104とケース部材400の間に配線中継部材113がありこれが障壁のごとく作用して前記隙間Sを広範囲に塞ぐから、隙間Sを流れる熱気がこの部分で遮られ、配線中継部材113より上方にある背板104の通気口133から積極的に外部に放出される。従って放熱効果が高い。
[8.各リールの図柄、図柄列]
各リール301a,301b,301cには、図46に示すように、複数種類の図柄が一定間隔に配置されることで構成された図柄列(配列番号1番から20番までで示した合計20個の図柄)が表記されたリール帯(図柄帯)が付されている。図46では、各リール301a,301b,301cに付されたそれぞれのリール帯321a,321b,321cに表記された図柄列を平面的に展開した状態を示す。なお、図柄列中に配置された図柄を識別するために上記配列番号を便宜的に記している。また、図46では、リール帯321aが付されるリール301aを左リール、リール帯321bが付されるリール301bを中リール、リール帯321cが付されるリール301cを右リールとして示しており、以下の説明でも、必要に応じて左リール301a、中リール301b、右リール301cと表記することがある。
そして、各リール301a,301b,301cは、各々の図柄列中に配置された図柄のうち、連続する所定数(例えば、3つ)の図柄が遊技者から視認可能となるように配置されている(例えば、図61参照)。なお、リール301の一部を視認可能にするスロットマシン1の構成については、後述のリール表示装置520に関する説明で述べる。
図47は、図柄の種類を説明するための図である。図47に示すように、リール301a〜301cに付される図柄の種類は、合計10種類であり、図47の上段から順に、「赤7図柄」、「青7図柄」、「BAR図柄」、「リプレイ図柄」、「ベル図柄」、「スイカ図柄」、「チェリー図柄」、「プラムa図柄」、「プラムb図柄」、「プラムc図柄」が用意されている。なお、以下の説明では、図柄名称を短縮して記載する場合がある(例えば、「リプレイ」を「リプ」とする等)。
これらの各図柄が各リール301a〜301c(リール帯321a〜321c)においてどのように配置されているかを説明する。図46を参照すると、「赤7図柄」は、左リール301aにおいては配列番号2番、中リール301bにおいては配列番号2番、右リール301cにおいては配列番号2番に配置されている。同様に、「青7図柄」は、左リール301aにおいては配列番号12番、中リール301bにおいては配列番号12番、右リール301cにおいては配列番号12番に配置されている。また、「BAR図柄」は、左リール301aにおいては配列番号6番、中リール301bにおいては配列番号9番、右リール301cにおいては配列番号17番に配置されている。また、「リプレイ図柄」は、左リール301aにおいては配列番号3番,8番,13番,18番の4箇所、中リール301bにおいては配列番号1番,6番,11番,16番の4箇所、右リール301cにおいては配列番号1番,6番,11番,16番の4箇所に配置されている。また、「ベル図柄」は、左リール301aにおいては配列番号4番,9番,14番,19番の4箇所、中リール301bにおいては配列番号5番,10番,15番,20番の4箇所、右リール301cにおいては配列番号4番,7番,9番,14番,19番の5箇所に配置されている。また、「スイカ図柄」は、左リール301aにおいては配列番号5番,10番,15番の3箇所、中リール301bにおいては配列番号3番,8番,13番,18番の4箇所、右リール301cにおいては配列番号3番,8番,13番,18番の4箇所に配置されている。また、「チェリー図柄」は、左リール301aにおいては配列番号1番、中リール301bにおいては配列番号4番,14番,19番の3箇所、右リール301cにおいては配列番号20番に配置されている。また、「プラムa図柄」は、左リール301aにおいては配列番号11番,16番の2箇所、中リール301bにおいては配列番号17番、右リール301cにおいては配列番号15番に配置されている。また、「プラムb図柄」は、左リール301aには配置されず、中リール301bにおいては配列番号7番、右リール301cにおいては配列番号10番に配置されている。また、「プラムc図柄」は、中リール301bには配置されず、左リール301aにおいては配列番号7番,17番の2箇所、右リール301cにおいては配列番号5番に配置されている。なお、図46に示す図柄配列は一例に過ぎず、リール301(リール帯321)に配置される図柄の総数、及び図柄の種類は、これに限定されるものではないが、例えば、プラムa,プラムb,プラムcのように、同一種別として扱われる図柄については、図柄の表示態様に類似部分を持たせる(例えば、部分的な柄違いにする)ことで、同一種別に分類される図柄であることを遊技者から認識させ易くしてもよい。
[9.リール及び図柄の表示]
以下では、本実施形態のスロットマシン1において、リール及びリールに付された図柄の表示に関する説明を行う。
[9−1.リール表示装置]
[6―4]の枠部材の説明で前述したように、本実施形態のスロットマシン1は、「リール表示領域が可変」という特徴を有する。そして以下では、このような特徴を実現するための構成例として、リール表示装置520について詳しく説明する。なお、「リール表示領域」は、リール301(個別にはリール301a〜301c)の一部分を表示するとともに、当該リール301に付された配列の図柄を表示する「図柄表示領域」でもある。以降では、呼称を図柄表示領域に統一する。
なお、以下に説明するリール表示装置520は、可変な図柄表示領域を形成する枠関連部品(前述の枠部材501に代わる)の他に、液晶表示パネル等による画像表示体525(前述の画像表示体500に代わる)を備えている。但し、リール表示装置520に関する本説明で重要なのは、前述の枠部材501との差異であり、それ以外の構成については、前述のスロットマシン1の構成を準用してもかまわない。
(1)通常態様におけるスロットマシンの外観
まず、リール表示装置520が搭載されたスロットマシン1の外観を説明する。以下に示す各図において、枠部材501を備えたスロットマシン1で説明済みの構成部品については、既出の同様の番号を付記するか、または、番号の付記を適宜省略する(例えば、図3や図45等を参照)。
図48は、扉形前面部材閉鎖時のスロットマシンの斜視図であり、図49は、図48に示したスロットマシンの正面図であり、図50は、図48に示したスロットマシンの側面図である。図48によれば、リール表示装置520で囲まれた領域に、リール301(リール301a〜301c)が表示されている。なお、図48〜図50には、リール表示装置520によって図柄表示領域の変更が行われていない「通常態様」の状態のスロットマシン1が示されている。
図48,49に示すように、スロットマシン1の正面視中央部において、リール表示装置520によって図柄表示窓524が区画され、図柄表示窓524を図柄表示領域としてリール301(301a〜301c)の一部が前方から視認可能にされている。このときの図柄表示窓524による図柄表示領域が「基本表示領域」であり、後述の図56、図58、図60では、基本表示領域524aとして破線で表す。詳細は後述するが、基本表示領域524aは、一例として、3本のリール(リール301a〜301c)の夫々で3個の連続した図柄が表示される「リール3本×図柄3段」の形状とし、基本表示領域524aでは、合計9個の図柄が遊技者から容易に識別可能な態様で表示される。
次に、図51は、扉形前面部材開放時のスロットマシンの斜視図であり、図52は、図51に示したスロットマシンの正面図であり、図53は、図51に示したスロットマシンの側面図である。図51〜図53のスロットマシン1も、「通常態様」の状態である。
なお、図45に示したスロットマシン1では、枠部材501及び画像表示体500が、リール301を含む図柄変動表示装置300側に配置されていた(より詳しくは、図11に示したように、リール301等と共にケース部材400と一体化するように構成されていた)が、図51に示したスロットマシン1では、リール表示装置520が扉形前面部材200側に配置されていることが分かる。このような配置が行われると、扉形前面部材200を開放した際のリール301の露出部分を広くすることができ、リール301に関する作業(例えば、リール301の位置調整や掃除等)を容易にする効果が期待できる。他にも、扉形前面部材200を開放した際の図柄変動表示装置300周辺の空間を広く確保できることから、メダル放出装置110に溜まったメダルの取り出しやメダル詰まりの対応等の作業を容易にする効果が期待できる。
また、リール表示装置520は、図45の場合と同様に、リール301を含む図柄変動表示装置300側に配置されるようにしてもよい。このような配置が行われると、扉形前面部材200側の重量及び体積を小さくできるため、ホール営業中にホール従業員が扉形前面部材200を開放する際、ホール従業員に掛かる物理的負荷を抑制したり、扉形前面部材200側が嵩張ることによる被害(遊技者に衝突したり、遊技機の部品が損壊する等)を抑制する効果が期待できる。
(2)リール表示装置の詳細構成
次に、リール表示装置520の構成について説明する。図54は、リール表示装置周辺の分解斜視図である。図54に示す破線は、各部品が組付けられる際の位置関係を示している。図54に示すように、リール表示装置520は、扉形前面部材200に後ろ側から組付けられる。
リール表示装置520を構成する各部品について説明する。図54によれば、リール表示装置520は、前方から見て窓状の領域を形成する額縁状の枠部材521と、枠部材521によって形成される領域の一部を遮蔽又は開放するように移動可能な役物としての可動枠522(上可動枠部材522a,下可動枠部材522b)と、可動枠522に駆動力を与える表示枠駆動モータ523(上可動枠駆動モータ523a,下可動枠駆動モータ523)と、画像表示体525とを含んで構成される。そして、図柄表示窓524は、図柄表示領域の枠部分に相当し、枠部材521及び可動枠522によって区画される。
枠部材521は、上下に1個ずつ窓状の領域(上窓521a、下窓521b)が形成されている。上窓521aは画像を表示するための表示窓であり、後方から画像表示体525が組み付けられる。また、下窓521bは、扉形前面部材200が閉鎖状態にあるときの位置関係としての「後方」に配置されるリール301を表示するための表示窓であり、下窓521bの左辺は左辺部材521cによって区画され、下窓521bの右辺は右辺部材521dによって区画される。そして、左辺部材521cと右辺部材521dとの間に挟むように、可動枠522(上可動枠部材522a,下可動枠部材522b)が組付けられる。また、左辺部材521c及び右辺部材521dには、可動枠522の組付部分に溝が形成されることで、可動枠522を上下方向にスライド可能にする。
図54の例では、可動枠522は、図柄表示領域の上方の領域を変更するための上可動枠部材522aと、図柄表示領域の下方の領域を変更するための下可動枠部材522bとに分かれて構成される。上可動枠部材522aは、枠上領域を開放するための可動枠であり、通常態様の場合、前方から見てリール301の枠上領域を遮蔽する位置に配置される。上可動枠部材522aは、接続される上可動枠駆動モータ523aから駆動力が供給されることで上下方向に移動することができ、通常態様からの移動時には、上方に移動して枠上領域を開放する。一方、下可動枠部材522bは、通常態様の場合、前方から見てリール301の枠下領域を遮蔽する位置に配置される。下可動枠部材522bは、接続される下可動枠駆動モータ523bから駆動力が供給されることで上下方向に移動することができ、通常態様からの移動時には、下方に移動して枠下領域を開放する。
なお、図54では、可動枠522が、主に枠上領域の開放を行う上可動枠部材522aと主に枠下領域の開放を行う下可動枠部材522bとに分けられているが、本実施形態のスロットマシン1における可動枠522の個数はこれに限定されるものではなく、例えば、さらに複数の可動枠に分けて構成されてもよいし、又は、これらを一体化して構成されてもよい。
また、可動枠522(上可動枠部材522a,下可動枠部材522bを含む)のサイズについては、少なくとも、自身が遮蔽/開放する対象領域に見合った大きさであることが必要である。例えば、リール301a〜301cに亘って1段分の枠外ラインを遮蔽/露出する場合は、3本のリールを覆う程度の幅と図柄1段分の高さとが必要になる。特に高さについては、可動枠522を移動させた際に、元の位置を覆う必要がなければ、遮蔽/開閉の対象領域程度の大きさであればよいが、元の位置まで覆わせたい場合には、可動枠522の移動量を考慮して、十分な高さを確保することが好ましい。
表示枠駆動モータ523(上可動枠駆動モータ523a,下可動枠駆動モータ523b)は、例えば、演出制御基板510(CPU1118)の制御に従って作動するモータであり、その作動によって駆動力を発生させる。上可動枠駆動モータ523aは上可動枠部材522aに接続され、下可動枠駆動モータ523bは下可動枠部材522bに接続される。そして、表示枠駆動モータ523で発生した駆動力が接続先の可動枠522に伝えられることによって、演出制御基板510(CPU1118)の制御に従って可動枠522が移動する。
なお、表示枠駆動モータ523と可動枠522との間には、表示枠駆動モータ523で発生した駆動力の方向及び大きさ等を調整して可動枠522に伝達するための伝達機構(例えばギア機構等)が備えられていてもよい。また、表示枠駆動モータ523の作動に伴って移動する可動枠522の位置は、位置センサを設けて検出信号を送信する等によって演出制御基板510に通知されるようにしてもよい。このようにすれば、可動枠522の作動位置が演出制御基板510の指示に沿った正常な位置であるか否かを判定できるだけでなく、固定的な枠部材501の位置と可動枠522の位置とを組み合わせることで、図柄表示窓524の形状(すなわち、図柄表示領域の形状)を認識することができる。
また、図54では、1個の可動枠522に1個の表示枠駆動モータ523が対応して設けられているが、本実施形態のスロットマシン1において、表示枠駆動モータ523の個数は、必ずしも可動枠522と1対1の関係でなくてもよい。
画像表示体525は、例えば液晶表示パネル等の表示部品であり、表示面を前方に向けて枠部材521に接続されることによって、画像や動画を前方から視認可能に表示する。なお、本実施形態のスロットマシン1においては、図柄表示領域の変更に関する構成としては、必ずしも画像表示体525が必要ではない。したがって、例えば、画像表示体525の代わりに、表示機能を有さないパネルや役物等が枠部材521に組付けられるようにしてもよい。
このように、図54に示したリール表示装置520の場合、図柄表示窓524で示される図柄表示領域は、左右辺が、可動しない固定的な枠部材521(左辺部材521c,右辺部材521d)によって区画され、上下辺が、可動性を有する可動枠522(上可動枠部材522a,下可動枠部材522b)によって区画される。そして、このような図柄表示領域の構成は、可動枠522の移動による図柄表示領域の変更前後で変わらない。すなわち、図54に示したリール表示装置520では、変更前の図柄表示領域である基本表示領域について、基本表示領域の(境界の)一部が、可動性を有する可動部材(具体的には、可動枠522(上可動枠部材522a,下可動枠部材522b))によって構成される。
ここで、従来のスロットマシンでは、基本表示領域が全て固定部材によって区画されて構成されていたため、図柄を表示可能な領域に制約があり、図柄の表示に関する自由度が抑制されるという課題があった。しかし、本実施形態のスロットマシン1によれば、上述のように、基本表示領域の一部が可動部材によって構成されるため、当該可動部材を動作させることで、基本表示領域による領域以上に図柄表示領域を拡張することができ、図柄の表示に関する自由度を高めることができる。なお、本実施形態のスロットマシン1は、「基本表示領域の境界の少なくとも一部」が可動部材によって区画・構成されればよく、可動部材によって構成される箇所は限定されない。したがって、基本表示領域の境界の全てが可動部材によって区画・構成されるようにしてもよい。このような場合、図柄表示領域の拡張性がさらに高まるため、図柄の表示に関する自由度もより高めることができる。
(3)図柄領域変更時のスロットマシンの外観
図48〜図50等に示した「通常態様」でのスロットマシン1と比較する形で、図柄表示領域が変更された状態でのスロットマシン1の様子を説明する。以下に示す例では、図柄表示領域が変更されるときに移動される可動枠522(上可動枠部材522a,下可動枠部材522b)の移動距離は、所謂1コマ分(正面視で図柄1段分の縦幅)とする。このような開放度合いは、後述する「開放度3」に相当する。
図55は、枠上領域開放状態におけるスロットマシンの斜視図であり、図56は、図55に示したスロットマシンの正面図である。
図55,56では、上可動枠部材522aが、図48,49に示した位置よりも上方に移動され、当該移動によって基本表示領域524aの枠上側の領域(枠上領域)が開放され、結果として、図柄表示窓524は、基本表示領域524aから上方向に拡張される。一方、下可動枠部材522bは、図48,49に示した位置から移動しないため、基本表示領域524aの枠下側の領域(枠下領域)には変化はない。このように図柄表示窓524が拡張されることによって、変更された図柄表示領域では、各リール301の最上段に新たに1段分(枠上段ライン)の図柄が表示される(例えば、図56)。
図57は、枠下領域開放状態におけるスロットマシンの斜視図であり、図58は、図57に示したスロットマシンの正面図である。
図57,58では、下可動枠部材522bが、図48,49に示した位置よりも下方に移動され、当該移動によって基本表示領域524aの枠下領域が開放され、結果として、図柄表示窓524は、基本表示領域524aから下方向に拡張される。一方、上可動枠部材522aは、図48,49に示した位置から移動しないため、基本表示領域524aの枠上領域には変化はない。このように図柄表示窓524が拡張されることによって、変更された図柄表示領域では、各リール301の最下段に新たに1段分(枠下段ライン)の図柄が表示される(例えば、図58)。
図59は、枠上下領域開放状態におけるスロットマシンの斜視図であり、図60は、図59に示したスロットマシンの正面図である。
図59,60では、上可動枠部材822a及び下可動枠部材522bが、それぞれ図48,49に示した位置よりも枠外方向に移動され、当該移動によって基本表示領域524aの枠上領域及び枠下領域がともに開放され、結果として、図柄表示窓524は、基本表示領域524aから上下方向に拡張される。このように図柄表示窓524が拡張されることによって、変更された図柄表示領域では、各リール301の最上段に新たに1段分(枠上段ライン)の図柄が表示されるとともに、最下段に新たに1段分(枠下段ライン)の図柄が表示される(例えば、図60)。
図55〜60に例示したように、リール表示装置520を備えた本実施形態のスロットマシン1によれば、リール表示装置520の可動枠522が作動(移動)することによって、図柄表示領域が変更されてリール301の枠外領域が露出される。その結果、当該露出された枠外領域に位置する枠外図柄に対して、遊技者の識別度合いを変更することができる。
(4)リール表示装置の他の構成
リール表示装置520は、本実施形態のスロットマシン1において図柄表示領域を変更可能にするための構成であり、当該目的を達成することができれば、上記例の部品構成に限定されるものではない。以下では、リール表示装置520を構成可能なその他の例について述べる。
まず、可動枠522の個数は2個に限らず、任意の個数設けられてよいこと、及び、表示枠駆動モータ523の個数が可動枠522の個数に依存する必要がないことは、(2)で前述した通りである。
次に、上記例では、固定的な枠部材521とは別に、スライド可能に組み付けられる可動枠522が、表示枠駆動モータ523からの駆動力によって移動することによって図柄表示領域を変更したが、図柄表示領域の区画を変更可能な機能を有する部品(役物)があれば、リール表示装置520は可動枠522を備えなくてもよい。具体的には例えば、図柄表示領域の変更パターンが、変更の前後で形状が変わることなく移動のみ行われるようなものであった場合(例えば、後述の図105(D)参照)、枠部材521の下窓521bの区画部分を移動可能にすれば、当該部分が可動枠522の代役となることができる。また、図柄表示領域が変更の前後で形状が変わる場合でも、枠部材521の下窓521bの区画部分を変形可能にすれば、枠部材521が可動枠522の代役となることができる。
また、上記例では、可動性を有する可動枠522を移動させるという物理的な動作によって、前方から視認可能な図柄表示領域を変更したが、図柄表示領域の変更は、必ずしも全て、物理的な動作によるものでなくてもよい。すなわち例えば、可動枠522によって変更し得るとした枠外領域の一部に、透過液晶を補助的に追加配置することが考えられる。このとき、演出制御基板510等が透過液晶への通電を制御して透過液晶の配置領域における透過の可否を制御すれば、可動枠522の移動という物理的な動作による枠外領域の遮蔽/開放に加えて、透過液晶への電荷の調整という電気的な処理によって枠外領域の遮蔽/開放が可能となる。その結果、上記例と同様に、リール表示装置520が図柄表示領域を変更することができる。
しかし、何れにしても、リール表示装置520は、上記例の可動枠522のように、図柄表示領域の区画を変更可能な機能を有する構成要素を必要とするので、以後は、可動枠522によって図柄表示領域の区画が変更されるとして説明する。
次に、可動枠522の形状について補足する。図48〜60の上記例では、可動枠522(上可動部材522a,下可動枠部材522b)は、3本のリール301a〜301cに跨って同じ幅で図柄表示領域を遮蔽/開放できるように、正面視で長方形(もしくは長方形に類似した形状)の部材が用いられていた(図54参照)。換言すれば、上記例の可動枠522は、図柄表示領域の変更に関して、全リール301に跨る水平方向の「段ライン」を同時に遮蔽/開放できるような形状であった。
しかし、本実施形態のスロットマシン1では、変更され得る図柄表示領域は「段ライン」に限定されるものではなく、図柄表示領域の変更パターンに基づいて、様々な形状の可動枠522を用いてよい。
例えば、図柄表示領域の変更時に、全リール301に対して同程度の開放を行うのではなく、リールごとに異なる開放幅で変更されるようにしてもよい。このような場合、開放したい枠外領域の部分でのみ移動できるように可動枠522の形状を調整してもよいし(例えば、「コ」の字形にする)、枠部材521によって固定的に遮蔽される枠外領域を設けるようにしてもよいし(例えば、リール301bの枠外領域は常に遮蔽する)、これらを組み合わせてもよい。
また、可動枠522の大きさ(特に横幅)を変えてもよい。例えば、可動枠522の横幅を、上記例のように3本のリールに跨る横幅(ライン幅)とするのではなく、例えばリール1本分の横幅(リール幅)とする。このようなリール幅の可動枠をリール301a〜301cにそれぞれ対応させて配置すれば、演出制御基板510等が各可動枠の動作を制御することによって、所望のリール上の図柄表示領域を容易に変更の対象とすることができる。なお、枠上領域及び枠下領域の双方を変更可能にしたい場合は、リール幅の可動枠を対象リールの枠上用と枠下用に配置すればよい。
また、これまでは最大でも1段分の枠外領域の開放しか述べていなかったが、リール表示装置520では、可動枠522の移動幅を変更することによって、2段分又はそれ以上の枠外領域を開放することも可能である。但し、このような場合は、枠部材501が形成する下窓521bの大きさ(特に縦幅)が、開放状態における最大の縦幅を確保していることが必要条件となる。具体的には、下窓521bの縦幅が、基本表示領域523aの縦幅と可動枠522による最大移動幅との合計より大きいことが必要条件となる。
また、図柄表示領域の変更パターンが、変更の前後で形状が変わることなく移動のみ行われるようなものであった場合(例えば、後述の図105(D)参照)、上可動部材522a及び下可動枠部材522bを同じ方向に同じ移動量で移動させるようにしてもよいが、別の方法として、前述したように、形状が固定された枠を移動させるようにしてもよい。
なお、図柄表示領域の複数箇所が変更される場合、それぞれの箇所で図柄表示領域の区画を変更する可動枠522の動作タイミングは、演出制御基板510によって制御される。ここで、「複数箇所が変更される場合」とは、複数のリール301で図柄表示領域が変更される場合や、同一リールだけの変更でも枠上と枠下のように異なる場所で図柄表示領域が変更される場合を指す。可動枠522の動作は、実際には、演出制御基板510によって制御される表示枠駆動モータ523の作動に依存するため、複数の可動枠522が設けられる場合は、可動枠522ごとに表示枠駆動モータ523を接続する等して、それぞれの可動枠522を独立して作動可能に制御してもよい。このようにして、可動枠522の動作タイミングに多様性を持たせることにより、図柄表示領域の変更に関する動作パターンを多様化できるため、遊技者の興趣向上に期待できる。
また、リール表示装置520は、遊技者から視認可能な面にLEDやセグ等の表示器を設置するようにしてもよい。また、リール301又は図柄に対して照射可能な照射器(照射手段)を設置して、可動枠522が移動する際に盤面を点滅させたり、移動後の図柄表示窓524の窓枠を点灯装飾したりすることで、図柄表示領域の変更を遊技者に強調した演出を実行することができる。但し、本実施形態のスロットマシン1では、図柄表示領域の変更に伴って現出される特定の図柄組合せをバックライト等で強調するような演出は行わない。このような図柄表示領域内を照射可能な照射手段による効果については、後に詳述する。
以上のように、本実施形態のスロットマシン1においては、図柄表示領域を変更するためのリール表示装置520は、様々な構成で実現することができる。しかし、多様な実現構成による記載の複雑化を避けるために、図柄表示領域の変更に関する以降の説明(特に後述の[12])では、用語に関する特段の指定がない限り、図柄表示領域の変更手段を「可動枠522」に統一して表記する。すなわち、以降の説明で「リール表示装置520において可動枠522の移動によって図柄表示領域が変更される」等と表記するとき、当該リール表示装置520は、(1)〜(3)で述べた構成のリール表示装置520に限定されるのではなく、(4)で述べた他の構成によるリール表示装置520も含むものである。
[9−2.図柄表示窓]
以下では、スロットマシン1におけるリール301及び図柄の表示態様について説明する。
図61は、通常態様における図柄表示窓付近を拡大したところを示している。ここでいう通常態様とは、可動枠522の移動による図柄表示領域の変更が行われていないときのリール表示態様を意味し、スロットマシン1において遊技の大部分は通常態様のリール表示態様で進行する。以後、上述したような通常態様の図柄表示窓524によって示される図柄表示領域について、特段の指定がない場合には単に「図柄表示領域」と表現し、可動枠522の移動が行われた後の「変更後の図柄表示領域」と区別する際には「通常の図柄表示領域」と表現する。「通常の図柄表示領域」は、例えば図61に示した図柄表示窓524内の領域に相当し、通常形態での遊技において停止図柄が表示される基本表示領域(図56等に示した基本表示領域524a)である。また、「変更後の図柄表示領域」についての詳細は別途後述するが、「変更後の図柄表示領域」のうち、基本表示領域の外側(枠外)に拡張される部分については、「枠外図柄表示領域」と表現する。
図61に示す図柄表示窓524からは、各リール301a,301b,301cの図柄列中の図柄のうち、連続する3つの図柄が視認可能となっている。この図柄が表示されている3つの位置を上から「上段(または上段位置)」(例えば、リール301aの「ベル1図柄」が表示されている位置)、「中段(または中段位置)」(例えば、リール301bの「リプレイ図柄」が表示されている位置)、「下段(または下段位置)」(例えば、リール301cの「ベル1図柄」が表示されている位置)という。
上記のことから、図61に示した図柄表示窓524内では、「リールの数×段数(連続して表示される図柄の個数)」個の図柄を表示させることが可能である。従って、スロットマシン1では「リールの数(3)×段数(3)」より図柄表示窓524内には最大で9個の図柄を表示させることができる。
図61に示したように、図柄表示窓524の周囲には、遊技者から視認可能な表示パネルが形成されている。表示パネルは、リール表示窓521よりも前方に配置され、例えば、枠部材の一部分であってもよい。表示パネルには、各種のランプが備えられており、そのうち、「BET1」,「BET2」,「BET3」と記されているのがBETランプ(ベットランプ)614である。BETランプの数字(上記の「BET1」,「BET2」,「BET3」の1,2,3の数字)はそれぞれベット数(賭け数のこと、賭けたメダルの枚数に応じた数のこと)に対応している。すなわち、「1」は1ベット(賭けたメダルの枚数は1枚)、「2」は2ベット(賭けたメダルの枚数は2枚)、「3」は3ベット(MAXベットともいう、賭けたメダルの枚数は3枚)に対応しているということである。
ベット数に応じて有効となる並びが決められている。この「有効となる並び」は有効ラインとも呼ばれる。以下では有効ラインと統一して称する。後述する所定の当選役に対応する図柄の組合せは、一つの有効ライン上に並んで表示されてはじめて当該当選役に対応する図柄の組合せ態様として表示されたと判断されるものである。すなわち、所定の当選役に対応する図柄を構成する各図柄が図柄表示窓524内に個々に表示されたとしても、それぞれの図柄がいずれかの有効ライン上に並んでいなければ(すなわち所定の当選役に対応する図柄の組合せが有効ライン上に並んでいなければ)、所定の当選役に対応する図柄の組合せ態様が表示されたとは判断されないことになる。なお、このように、所定の当選役に対応する図柄の組合せが有効ライン上に並んでいない場合は、バラバラな図柄の組合せ態様(すなわちハズレの図柄の組合せ)が表示されたと判断される。
次に、ベット数及び有効ラインについて具体的に説明する。一例として、本実施形態のスロットマシン1は、通常の遊技状態では3枚掛けによる遊技が規定又は推奨される(規定数3枚)。但し、ボーナス状態(例えばCB状態)のような特定の遊技状態では1枚掛けや2枚掛けによる遊技が行われる(規定数1枚、2枚)ようにしてもよい。また、有効ラインは、中段の直線型の並び(中段1ライン)とする。具体的には、図61の図柄表示窓524内で「リプレイ図柄−リプレイ図柄−リプレイ図柄」の並びが示された1ライン(中段ライン623a)に相当する。
なお、ベット数及び有効ラインは、上記例に限るものではなく、例えば、有効ラインは図柄表示窓524内で遊技者から視認可能なラインであればよい。具体的な他の例として、中段以外の複数段の直線型の並び、斜め直線並び、又は、山型やV字型の並び等にしてもよい。また、有効ラインの数も1本に限るものではなく、複数本の有効ラインを設定してもよい。さらに、遊技におけるメダルのベット数に応じて有効ライン数が変化するようにしてもよい。
図61の図柄表示窓524内に表示されている有効ライン上の図柄組合せは、中段ライン623aに表示されている「リプレイ図柄−リプレイ図柄−リプレイ図柄」であり、この図柄組合せは、リプレイ役(再遊技役)に対応する図柄組合せであるので、次ゲームにおいて、メダルを投入することなく自動ベットされ、前回のゲームと同様のゲームを再び実行することが可能となる。なお、本実施形態のスロットマシン1では、各役に対応する図柄組合せとして、有効ライン上にはいずれの役の図柄組合せが表示されたのか一見して把握し難い図柄組合せを表示するようにしてもよい。具体的には例えば、後述する「スイカ_1」役の当選時、左から順にリール301aが停止された場合には、条件装置「リプ6_1」が優先的に作動することで、有効ラインである中段ライン623aに「ベル−スイカ−ベル」といった図柄組合せが表示される。このような場合、有効ラインだけを見て何の役に当選したのか(又は入賞したのか)を遊技者が把握することは難しいが、図柄表示窓524全体で見れば、右下がりのラインにスイカ図柄が直線型に並ぶように停止表示されることで、スイカ役(スイカリプレイ)の入賞であることを遊技者に用意に把握させることができる。
その他、表示パネルには、スロットマシン1の遊技状態に合わせて点灯(あるいは点滅)可能なランプ及びLED類が設けられている。これらのランプ類は図の上から、「ERR」という文字の描かれたエラーランプ604、上記BETランプ614のすぐ下に位置する、「REP」という文字の描かれたリプレイランプ606、「STR」という文字の描かれたスタートランプ608、「INS」という文字の描かれたメダルINランプ610、及び2つの横並びの7セグメントLEDを備えた払出枚数表示LED612がそれぞれ備えられている。なお、これらの他に後述するボーナスゲームの当選を告知するボーナス告知ランプや、ボーナスゲームなどでのメダルの累計払い出し枚数を表示したり、ボーナスゲームをカウントしたりする7セグメントLED等を別途設けてもよい。
エラーランプ604は、スロットマシン1の遊技中に何かトラブル、故障等が生じた場合に点灯(あるいは点滅)を開始し、現在トラブル等が生じていることを遊技者等(ホールの係員なども含む)に知らせる役割を持っている。
リプレイランプ606は、ゲーム結果がリプレイ(後述する)となった場合に、再遊技(新たにメダルを賭けずにもう一度遊技ができること)ができることを遊技者に知らせる役割を持っている。
スタートランプ608は、ベット数がMAXベットに達すると点灯(あるいは点滅)を開始し、遊技者に始動レバー210の操作(始動操作)を促す役割を持っている。
メダルINランプ610は、ベット数が最大(MAXベット)になるまで点灯(あるいは点滅)を続けることにより、遊技者にベットを促す役割を持っている。
払出枚数表示LED612は、ゲーム結果に伴うメダルの払い出しがある場合に、その払い出し数(払出されるメダルの枚数)を表示することにより、遊技者にメダルの払出枚数を知らせる役割を持っている。
[10.スロットマシンの内部構成]
図62は、スロットマシン1に装備されている各種の機構要素や電子機器類、操作部材等の構成を概略的に示している。スロットマシン1は遊技の進行を統括的に制御するためのメイン基板409を有しており、このメイン基板409にはCPU1110をはじめROM1112、RAM1114、入出力インタフェース1116等が実装されている。
前述した1枚投入ボタン205,206や始動レバー210、リール停止ボタン211a,211b,211c、貯留解除スイッチ209等はいずれもメイン基板409に接続されており、これら操作ボタン類は図示しないセンサを用いて遊技者による操作を検出し、検出された操作信号をメイン基板409に出力することができる。具体的には、始動レバー210が操作されると前述した図柄変動表示装置300を始動させる(リール301a,301b,301cの回転を開始させる)操作信号がメイン基板409に出力され、リール停止ボタン211a,211b,211cが操作されると、リール301a,301b,301cをそれぞれ停止させる操作信号がメイン基板409に出力される。
なお、以下では必要に応じて、リール301a,301b,301cをそれぞれ左リール301a,中リール301b,右リール301cと呼ぶ。そして、これに対応するそれぞれのリール停止ボタン211a,211b,211cを左リール停止ボタン211a,中リール停止ボタン211b,右リール停止ボタン211cと呼ぶ。
またスロットマシン1にはメイン基板409とともにその他の機器類が収容されており、これら機器類からメイン基板409に各種の信号が入力されている。機器類には、図柄変動表示装置300のほか、メダル放出装置110等がある。
図柄変動表示装置300はリール301a,301b,301cをそれぞれ回転させるためのリール駆動モータ341a,341b,341cを備えている(左リール駆動モータ341a、中リール駆動モータ341b、右リール駆動モータ341c)。このリール駆動モータはステッピングモータからなり、それぞれのリール301a,301b,301cは独立して回転、停止することができ、その回転時には図柄表示窓524にて複数種類の図柄が上から下へ連続的に変化しつつ表示される。
また各リール301a,301b,301cの回転に関する基準位置を検出するための位置センサ331a,331b,331cを有しており、各リール301a,301b,301cにはそれぞれ位置センサ331a,331b,331cがリール内に対応して設けられている(左リール位置センサ331a、中リール位置センサ331b、右リール位置センサ331c)。これら位置センサからの検出信号(インデックス信号)がメイン基板409に入力されることで、メイン基板409では各リールの停止位置情報を得ることができる。
なお、図62では、リール表示装置520の表示枠駆動モータ523が、演出制御基板510に接続されている。前述したように、表示枠駆動モータ523は、図柄表示窓524を区画する可動枠522の位置を可変にするための駆動装置であり、演出制御基板510の制御に従って作動する。演出制御基板510は、図柄表示領域を変更する際に、可動枠522の移動(具体的な内容として、移動量、移動速度、移動タイミング等)を制御し、当該移動を実現するために必要な駆動力を可動枠522に供給するように、表示枠駆動モータ523に作動指示を行う。演出制御基板510が可動枠522の移動を制御するための制御データは、例えばROM1120に格納され、CPU1118によって参照される。また、可動枠522の移動に関する具体的な制御内容は、例えば、図柄表示領域の変更箇所や変更度合いに基づいて決定されてもよい。なお、移動量については、演出制御基板510によって都度算出される必要はなく、例えば、移動量のレベルを示すコマンドを用意しておき、当該コマンドを演出制御基板510が表示枠駆動モータ523に送信することによって、表示枠駆動モータ523から可動枠522に適切な駆動力を供給させればよい。
なお、本実施形態のスロットマシン1において、リール表示装置520(特に表示枠駆動モータ523や可動枠522)の制御元は、演出制御基板510に限定されるものではなく、例えば、他の周辺基板(メイン基板409以外の基板)に接続されてその接続先基板の制御に従って駆動するように構成されてもよい。また例えば、画像表示装置300の各構成部品(例えば、各リールの駆動モータや位置センサ等)と同様に、メイン基板409に接続されてその制御に従って作動するように構成されてもよい。何れにしても、表示枠駆動モータ523の作動は接続先の基板(特にCPU)によって制御されるため、可動枠522の移動も当該基板によって制御されることになる。また、リール表示装置520を制御する基板は、可動枠522の位置に関する位置情報を取得するようにしてもよく、さらには、当該位置情報を、別の基板に転送するようにしてもよい。
メダルセレクタ207内には、前述したソレノイド207aや投入センサ207bが設置されている。投入センサ207bは、メダル投入口203から投入されたメダルを検出し、メダルの検出信号をメイン基板409に出力する。ソレノイド207aがOFFの状態のとき、投入されたメダルは投入センサ207bで検出される。逆にソレノイド207aがONの状態のときは、メダルセレクタ207内で投入センサ207bに到達する通路がロックアウトされてメダルの投入が受け付けられなくなり、遊技者がメダルを投入しても、メダルセレクタ207を通って返却樋213に流れたメダルはメダル用受皿201に戻る。このとき合わせて投入センサ207bの機能が無効化されるので、メダル投入によるベットまたはメダルの貯留のいずれも行われなくなる。
メダル放出装置110は、払い出されたメダルを1枚ずつ検出する払出センサ110eを放出口110c内に有しており、この払出センサ110eからメダル1枚ごとの払出メダル信号がメイン基板409に入力されている。また、遊技メダル用補助収納箱111にはメダル満タンセンサ111aが設けられており、内部に貯留されたメダルの貯留数が所定数量を超えた場合、メダルが所定数量を超えた検出信号をメイン基板409に出力する。このとき画像表示体500、エラーランプ604等によりメダル貯留の異常を知らせるエラー表示が行われ、遊技者やホール従業員等に異常が発生したことが報知される。
一方、メイン基板409からは、図柄変動表示装置300やメダル放出装置110に対して制御信号が出力される。すなわち、前述した各リール駆動モータ341a,341b,341cの起動及び停止を制御するための駆動パルス信号がメイン基板409から出力される。またメダル放出装置110には、有効ライン上に停止した図柄の組合せの種類に応じてメイン基板409から駆動信号が入力され、これを受けてメダル放出装置110はメダルの払い出し動作を行う。このときメダル放出装置110内に払い出しに必要な枚数のメダルが不足しているか、あるいはメダルが全く無い状態であった場合、払出センサ110eによる枚数検出が滞ることとなる。そして所定時間(例えば3秒間)が経過すると、払出センサ110eより払い出しメダルの異常信号がメイン基板409へ出力され、これを受けてメイン基板409は、メダルの払い出しに異常が発生したことを知らせる内容をエラーランプ604や画像表示体500等に表示させて遊技者やホール従業員等に異常が発生したことを報知する。
スロットマシン1は、メイン基板409の他に演出制御基板510を備えており、この演出制御基板510にはCPU1118やROM1120、RAM1122、入出力インタフェース1130、VDP(Video Display Processor)1124、AMP(オーディオアンプ)1126、音源IC1128等が実装されている。演出制御基板510はメイン基板409から各種の指令信号を受け、画像表示体500の表示や照明装置502等の発光(または点灯、点滅、消灯等)及びスピーカ512の作動を制御している。
さらに、メイン基板409に外部中継端子板131を設けた場合には、スロットマシン1はこの外部中継端子板131を介して遊技場のホールコンピュータ1200に接続される。外部中継端子板131はメイン基板409から送信される各種信号(投入メダル信号や払出メダル信号、遊技ステータス等)をホールコンピュータ1200に中継する役割を担っている。なお、図62における接続構成は本実施形態のスロットマシンにおける一例に過ぎない。例えばその他の接続構成として、メイン基板409だけでなく、メイン基板409以外の基板(例えば演出制御基板510)も外部中継端子板131に接続可能にするようにしてもよく、このような場合、外部中継端子板131に接続された各種の基板から、様々な信号を外部中継端子板131に送信し、外部中継端子板131を介してホールコンピュータ1200に出力することができる。具体的には、演出制御基板510が管理する遊技上の情報(例えば、ATやARTに関する情報)や、演出制御基板510が管理可能な緊急情報(例えば、可動枠522等の誤作動や不具合を通知するエラー情報)をホールコンピュータ1200に出力することができるようになる。
その他、電源装置112には、設定キースイッチ112tやリセットスイッチ112u、電源スイッチ112v等が付属している。これらスイッチ類はいずれもスロットマシン1の外側に露出しておらず、扉形前面部材200を開けることではじめて操作可能となる。このうち電源スイッチ112vは、スロットマシン1への電力供給をON−OFFするためのものであり、設定キースイッチ112tはスロットマシン1の設定(例えば設定1〜6)を変更するためのものである。またリセットスイッチ112uはスロットマシン1で発生したエラーを解除するためのものであり、更には設定キースイッチ112tとともに設定を変更する際にも操作される。
以上がスロットマシン1の内部構成例である。スロットマシン1によるゲームは、遊技者がメダルの賭け数を決定した状態で始動レバー210を操作すると各リール301a,301b,301cが回転し、この後、遊技者がリール停止ボタン211a,211b,211cを操作すると、対応する各リール301a,301b,301cが停止制御され、そして、全てのリール301a,301b,301cが停止すると、有効ライン上での図柄の組合せ態様からゲーム結果を判断し、必要に応じて該当する当選役に対応する規定数のメダルが付与される。
前述したとおり、各リール301a,301b,301cには、それぞれリール帯321a,321b,321cが付されている(図46参照)。そして、全てのリール301a,301b,301cを停止させた際に図柄表示窓524内に表示される表示内容(有効ライン上に表示された図柄の組合せ態様)から、所定の当選役に対応する図柄の組合せ態様(図柄組合せ)が表示されたか否かが判断される。具体的には、図柄表示窓524内で前述の有効ライン(中段ライン623a)に所定の当選役に対応する図柄組合せが表示されているか否かが判断される。
なお、本例では有効ラインは1本として説明しているが、仮にスロットマシン1が複数の有効ラインを有するとしたときには、当該複数の有効ラインの夫々で当選役に対応する図柄組合せが表示されているか否かが判断される。その結果、複数の当選役の図柄組合せが表示されていると判断された場合は、表示された各当選役に対応する払出数を合算した数量のメダルの払出が行われる。なお、スロットマシン1では、1回あたりのメダルの払出数の上限値として所定枚数(例えば15枚)を規定することができる。このような場合に、複数の有効ライン上に表示された各当選役に対応する払出数の合算が当該上限値を超えるときは、上限値の所定枚数のメダルが払い出され、上限値の超過分は切り捨てられる。また、上限値の超過分を次回以降のゲームに分割して払い出す等もしない。
以下では、所定の当選役に対応する図柄の組合せ態様がいずれか一つの有効ライン上に表示された場合のことを、(所定の)当選役に対応する図柄(これを当選役図柄という)組合せが揃う、あるいは当選役図柄が揃った、という。
スロットマシン1の図柄には、「赤7図柄」、「青7図柄」、「BAR図柄」、「リプレイ図柄」、「ベル図柄」、「スイカ図柄」、「チェリー図柄」、「プラムa図柄」、「プラムb図柄」及び「プラムc図柄」があることは既に述べたとおりであるが、このうち、「赤7図柄」、「青7図柄」及び「BAR図柄」は他の図柄に比べて目立ち易く、識別しやすい図柄となっている。ここでいう識別のし易さとは、リールの回転中や、リールの停止した状態を含めて遊技者が容易に図柄を識別することができる度合いの高さのことをいう。これらの図柄はリールの回転中もその色彩や図柄の大きさから、遊技者が停止操作する際に、これらの図柄が図柄表示窓524内に停止されるように狙って停止操作することが容易となっている(すなわち目押しすることが容易である)。
これらの図柄はそれだけでは象徴的な図柄(図柄1つだけでは当選役に対応しない)に過ぎないものであるが、所定の組合せとなることにより当選役に対応する図柄の組合せとなるものである。すなわち、所定の遊技特典が付与される。以下に、図63に示された各当選役に対応して許容される図柄の組合せ態様について説明する。
[10−1.当選役と図柄の組合せ]
ここで、スロットマシン1の当選役(入賞役と呼ばれるものを含む)と、これに対応する図柄の組合せ(図柄組合せ)について、図63、図64、及び図65〜68を用いて説明する。
図63は、当選役の抽選に用いられる抽選テーブルの一例である。図63に示す抽選テーブル(当たり値判定テーブルともいう)は、予めROM1112等に格納されている。詳細は後述するが、スロットマシン1ではメイン基板409のCPU1110が当選役の抽選を行い、このような抽選は「内部抽選」とも呼ばれる。
図64は、図63に示した各当選役に対応する代表的な停止出目を説明するための図である。当選役に対応する停止出目は、当該当選役が選ばれたときに作動する条件装置に基づいて決定される。図65〜68は、各条件装置に対応する図柄組合せ及びメダルの払出数等の一例を示す図(その1〜その4)であり、これについても予めROM1112等に格納されているものである。
なお、以下に説明する本実施形態のスロットマシン1は、遊技機が備える機能の一例として、押し順小役を利用したAT(アシストタイム)機能を備えるとする。AT機能を備えた遊技機では、ATの当落が抽選(AT抽選)によって判定され、当該判定の結果ATに当選した場合は、ATゲームが実行される。ATゲームでは、内部抽選で押し順小役が当選役として選ばれた場合を中心に、最も多いメダルの払出に期待できる適正な押し順を教示することによって、多くのメダルを獲得可能にする。
また、押し順について補足すると、本実施形態のスロットマシン1では、3本のリール301a〜301cを用いていることから、その押し順(リール301の停止順)は、「左−中−右」、「左−右−中」、「中−左−右」、「中−右−左」、「右−左−中」、「右−中−左」の6通りが存在することになるが、以下の説明ではそれぞれの押し順を、順に、「左順押し」、「左挟み押し」、「中順押し」、「中逆押し」、「逆挟み押し」、「逆順押し」と呼ぶ。また、第1停止させるリールに着目した場合には、押し順は3通りになるが、このような場合の押し順については、リール301aを最初に停止させる「順押し」、リール301bを最初に停止させる「中押し」、リール301cを最初に停止させる「逆押し」と呼び分けることにする。
そして、本実施形態のスロットマシン1では、リール301を停止させる停止操作の手順として、ATゲームが行われない期間(非AT)のように押し順の教示が行われない遊技の際は、左リール301aを最初に停止させる(すなわち、リール停止ボタン211aに対して最初に停止操作を行う)「左押し(「順押し」又は「挟み押し」)」を推奨する。また、中リール301bや右リール301cを最初に停止させる等して、このような推奨手順に沿わない停止操作が行われた場合には、AT抽選の一時的な停止等の遊技者にとって不利な措置を行うようにしてもよい。
このようなスロットマシン1における停止出目について図64を参照すると、当選役の多くは、リール停止ボタン211(個別にはリール停止ボタン211a,211b,211c)の押し順によって、停止出目の態様が異なるようにされている。このような停止出目の態様の差異は、当選役の当選時に作動する複数の条件装置に対して、リール停止ボタン211の押し順に基づいた優先順位を設定することによって実現される。また、リール301の停止時に有効ライン上に引き込み可能な図柄は、リール停止ボタン211に対する停止操作を行った時点のリール301の位置に基づいて制限されるため(具体的には例えば、最大4コマまでの引き込みが許容される)、この停止操作のタイミング(押しタイミング)次第で、引き込み可能な図柄と引き込み不能な図柄とが発生する。その結果、停止出目の態様は押しタイミングによっても異なるものであり、押しタイミングに応じた条件装置の優先度も予め設定される。このような条件装置の作動関係については、後で具体例を挙げて説明する(例えば、図69,図70)。
スロットマシン1では、遊技状態に応じて異なる抽選テーブルが用意されており、例えば図63には、本実施形態のスロットマシン1における遊技状態の一例として、一般状態、ボーナス内部状態、及びボーナス状態が示されている。これらの遊技状態は、メイン基板409(特にCPU1110)によって制御される。
ここで、一般状態は、ボーナスゲーム中でなく、かつ、ボーナスフラグが未成立である通常の遊技状態である。また、ボーナス内部状態は、内部抽選によってボーナス役に当選し、かつ、ボーナス状態に移行せずに(すなわち、ボーナスゲームが開始せずに)当該ボーナス役の当選成立状態が持ち越されている遊技状態である。また、ボーナス状態は、内部抽選によってボーナス役に当選し、当該ボーナス役に対応する図柄組合せが表示されたことに基づいて移行する特別遊技状態であり、ボーナスゲームが行われる遊技状態である。図63では、ボーナスの例として「CB(第二種特別役物)」が設けられているため、遊技状態の遷移としては、一般状態においてCBに当選してCBに係る条件装置が作動した後、CB図柄が揃えられてCBゲームが開始されるまでの遊技ではボーナス内部状態に制御され、CBゲームが開始される遊技ではボーナス状態に制御される。なお、図63は、本実施形態のスロットマシン1における抽選テーブルの一例であって、他のボーナスゲームや遊技状態が用意されていてもよい。
また、図63に示すように、本実施形態によるスロットマシン1では、遊技状態ごとに各当選役についての当選確率(又は置数)が定められており、遊技状態に応じた抽選テーブルを用いて内部抽選が行われる。そして、スロットマシン1では、内部抽選の結果として何らかの役に当選すると、当選役に応じた条件装置が作動し、作動した条件装置に対応する図柄組合せが有効ライン上に表示されるように、後述するリール停止処理が行われる。そして、有効ライン上に表示された図柄組合せによって何らかの入賞役が示された場合は、当該入賞役に基づいたメダルの払出が行われる。なお、図63に示す当選役(役番号1〜60)は、それぞれの当選時に異なる組合せで1以上の条件装置が作動するように設定されている。すなわち、当選役ごとに作動する条件装置の組合せは全て異なる。
また、入賞役を示す図柄組合せの表示に基づいて払い出されるメダルの払出数については、入賞役ごとに異なる払出数を設定できるだけでなく、遊技状態や遊技の掛けメダル数(規定数)に応じて異なる払出数を設定してもよい。また、内部抽選では、遊技の掛けメダル数に応じて、異なる抽選テーブルを用いるようにしてもよい。例えば、本実施形態では、CBゲーム中(ボーナス状態)は規定数を2枚(2枚掛け)とし、それ以外の遊技状態(一般状態及びボーナス内部状態)では規定数を3枚(3枚掛け)とするが、それ以外に例えば、一般状態において1枚掛けや2枚掛けの遊技を選択可能にするような場合には、1枚掛け用の抽選テーブル、並びに2枚掛け用の抽選テーブルを別途用意することが好ましい。
本実施形態のスロットマシン1では、一の条件装置とリール制御のパターンとが1対1で対応しているので、一の当選役に対して複数のリール制御パターンを用意したい場合には、一の当選役に対して複数の条件が成立する場合もある。このようにすることで、一の当選役に対して、有効ライン上に複数パターンの停止出目(図柄組合せの停止態様)を用意することが可能となる。以下では、まず図63に示した当選役を種別で大別し、その概要を説明する。
図63における役番号1〜30までの当選役は、リプレイ(再遊技役)の当選役である。リプレイ役の当選時には、リプレイの条件装置が作動し、有効ライン(例えば中段ライン623a)上にリプレイ役に対応する図柄組合せの停止表示が許容され、これに基づいて、後述するリールの停止処理(図92のステップS5)が行われる。スロットマシン1では、リプレイの当選時には、リプレイ役の図柄組合せが必ず有効ライン上に表示されるように制御され、その結果、リプレイ役の特典として、次ゲームにおいて、改めてメダルを投入もしくはベット操作(貯留されたメダルを投入するための操作)をすることなく自動ベットされ、前回のゲームと同様のゲームを再び実行する再遊技が可能となる。
図63における役番号31〜46,55〜59の当選役は、所謂「小役」の単独当選役である。これらの小役に当選すると、対応する条件装置が作動し、有効ライン上に当該小役に対応する図柄組合せの停止表示が許容され、これに基づいてリールの停止処理が行われる。なお、小役よりも優先順位の高い役に当選していた場合は、当該小役の停止表示が優先されないこともあるが、その点については後述する。そして、リールの停止処理が行われた結果、メダルの払出に対応する所定の図柄組合せが有効ラインに停止した(入賞した)場合は、入賞した図柄組合せ(入賞役)に応じたメダルの払出が行われる。
なお、役番号59の「ボーナス専用役」は、「CB」の図柄組合せが揃えられたことを契機として制御されるボーナス状態(具体的には、CBゲーム中)でのみ抽選対象とされる。図63では、ボーナス状態では100%の確率でボーナス専用役が当選役として選ばれ、対応する条件装置が作動することで、リールの停止処理後にはボーナス専用役が入賞して所定枚数のメダルが払い出される。
図63における役番号47〜54の当選役「CB+ベル」は、ボーナス役と小役との同時当選役(重複役)である。より具体的には、後段で説明する役番号60のボーナス役「CB」と、前述の役番号39〜46の小役「中ベル、右ベル」の何れかとが、同時に当選役として選ばれる。本実施形態のスロットマシン1では、ボーナス役と小役が同時当選した場合には、小役を優先して引き込むよう制御するため、役番号47〜54の当選役が選ばれたときの代表的な停止形は、役番号39〜46のベル役と同様となる。リールの停止処理が行われた結果、メダルの払出に対応するベル役の図柄組合せが有効ラインに停止した(入賞した)場合は、入賞した図柄組合せ(入賞役)に応じたメダルの払出が行われる。
次に、図63における役番号60の当選役「CB」は、ボーナス役である。ボーナス役が当選役として選ばれると、前述の他の当選役の場合と同様に、対応する条件装置が作動し、リール停止処理が行われ、表示された図柄組合せに基づいて特典が付与される。なお、「CB」は当選フラグを持ち越し可能な役であり、当選ゲームで対応する図柄組合せが表示されなかった(揃えられなかった)としても、次ゲーム以降に当選成立状態が持ち越され、当該図柄組合せが停止されるまで、ボーナス内部状態として遊技が行われる。
なお、内部抽選の結果が何れの当選役も選ばれない「はずれ」であった場合は、ボーナス役の成立状態が持ち越されている場合を除き、何れの当選役に対応する図柄組合せも停止されることはない。
また、内部抽選の結果が「はずれ」ではなく、いずれかの役に当選したとしても、当該当選役に対応する図柄の組合せは、後述する引き込み制御を実行可能な範囲で図柄表示窓524内(より厳密には有効ライン623a上)に停止されるように狙って適正なタイミング(押し位置)で停止操作(リール停止ボタン211a〜211cを押す操作)が行われないと、有効ライン上に当選役に対応する図柄の組合せを表示させることができない。したがって、抽選の結果、いずれかの役に当選したにもかかわらず、この当選役に対応する図柄の組合せが有効ライン上に表示されなければ、「はずれ」が選ばれたときと同様に、後述するステップS6においてゲーム結果がハズレである旨が判定される。なお、本実施形態のスロットマシン1では、何らかの当選役に当選したにもかかわらずゲーム結果がハズレとなる場合に、無作為に「はずれ」の図柄組合せを表示させるのではなく、当該当選役に基づいた入賞を取り零したことを示す所定の図柄組合せ(停止出目)を図柄表示領域に表示させるように制御することにする。そして、このようなハズレ時に表示される図柄組合せ(停止出目)のことを、以下では「零し(又は、零し目)」と呼ぶ。
具体的には、図64で「零し」と示された欄を持つ当選役は、リール停止ボタン211a〜211cを押すタイミング次第で、所定の図柄組合せを引き込めなかった場合に「零し目」が停止し得る当選役であることを意味する。なお、図64で「ばらけ」と記載されたものは、停止出目の特徴を遊技者が比較的容易に認識し易い「揃い目」ではなく、一見ばらばらの図柄が組み合わされたような停止出目(所謂「ばらけ目」)が停止し得る当選役であることを意味する。「ばらけ目」は「零し目」とは異なるものであり、詳細についてはベル役の説明で後述する。
ここで、当選役の同時当選について補足説明する。本実施形態のスロットマシン1では、役番号47〜54の当選役「CB+ベル」のように、当選役の同時当選を設定することができる。同時当選は、1回の抽選機会において複数の当選役が同時に選び出されることを意味し、例えば、複数の小役(例えば、複数のベル役同士)が同時に選び出される場合や、ボーナス役と小役とが同時に選び出される場合がある。
複数の小役が同時当選した場合は、当該ゲーム(当選ゲーム)で当選したそれぞれの役に対応する条件装置が同時に作動し、予め定められた優先順位(例えば、『再遊技>小役>ボーナス』や、『再遊技>ボーナス>小役』のような優先順位)に従って当選役の図柄組合せの表示が許容されるなかでリール停止処理が行われ、入賞した役に応じた特典の払い出しが行われる。なお、遊技機の仕様や小役の組合せ、又は有効ラインの設定方法等によっては、同時当選役を共に入賞させるような制御が行われるようにしてもよく、同時入賞が発生した場合には夫々の入賞した役に応じた特典の払い出しが行われる。何れにしても、小役は、当選ゲームでのみ入賞し得る「非持ち越し役」であり、当選ゲームで入賞できなかった当選役の当選成立状態は、次ゲーム以降に持ち越されないことから、小役の同時当選が選ばれたとしても、当選ゲームで入賞できなかった小役に対しては、当該小役に応じたメダルの払い出しは行われない。
ボーナス役と小役とが同時当選した場合について、このような組合せで選ばれる役は重複役ともいう。ボーナス役と小役とが同時当選した場合も、小役同士の同時当選の場合と同様に、夫々の当選役に対応する条件装置が同時に作動し、予め定められた優先順位(例えば、『再遊技>小役>ボーナス』や、『再遊技>ボーナス>小役』のような優先順位)に従って当選役の図柄組合せの表示が許容されるなかでリール停止処理が行われ、入賞した役に応じた特典の払出が行われる。但し、ボーナス役については、当選ゲームで対応する図柄組合せが表示されなかったとしても、次ゲーム以降に当該ボーナス役の図柄組合せが表示されるまで当該ボーナス役の当選成立状態が持ち越される「持ち越し役」とすることができる。具体的には、CBは「持ち越し役」である。また、リプレイ役や小役(例えばベル役)は「非持ち越し役」である。このように重複役の当選によって「持ち越し役」と「非持ち越し役」とが同時当選したときも、何れの図柄組合せの表示を許容するかは、リール停止処理によって制御される。そして、当選ゲームで「持ち越し役」に対応する図柄組合せが表示されなかった場合は、「持ち越し役」の当選成立状態は次ゲーム以降に持ち越される。但し、このような「次ゲーム」において、別の小役に当選したときは、「持ち越し役」と「別の小役」との両方が当選成立している状態となるが、この場合は、互いに別の抽選機会(ゲーム)において選び出されているから、重複役には相当しない。また、同時当選役(重複役)とは逆に、1回の抽選機会において一つの役のみが選び出される当選役を単独役と呼ぶ。
なお、同時当選の場合に何れの当選役に対応する図柄の組合せが優先して有効ライン上に表示されるようになるかは、リール停止処理における優先順位の設定に基づいて決定される。
以上が図63に示した当選役の概要であるが、以下では、当選役の種別(ボーナス役、リプレイ役、小役等)ごとに、当選役と図柄組合せ(停止出目)との関係について詳しく説明する。
[10−1−1.ボーナス役]
本実施形態のスロットマシン1には、ボーナス役としてCBが用意されている。CB役に当選し、この当選役に対応する図柄の組合せ(「青7」−「BAR」−「BAR」揃い)が有効ライン上に表示されると、ボーナス状態の遊技状態でCBのボーナスゲームが実行される。ボーナスゲームは、複数ゲームに亘って遊技者がメダルを集中して獲得できる機会が設けられるゲームである。CBのボーナスゲームでは、遊技の規定数を2枚とし、払出数2枚のボーナス専用役が入賞する態様で遊技が進行し、合計40枚以上の払出が行われたときにボーナスゲームが終了する。ボーナスゲームが終了すると、遊技状態は、ボーナス状態から一般状態に移行する。なお、本例では用いていないが、本実施形態のスロットマシン1では、BBやRB等のような異なる種類のボーナスゲームが用意されてもよい。本例で用いるCBのボーナスゲームでは、実質的な遊技メダルの増加は期待できないが、異なる種類のボーナスゲームを用意することによって、比較的短期間に大量の遊技メダルが払い出されるようにすることもできる。例えば、BBゲーム(BBのボーナスゲーム)では合計465枚を超えるメダルの払出が行われるまで継続して実行する、といった設定が可能である。
なお、遊技状態に関して前述したように、CB役に当選した場合でも、CB役に対応する図柄組合せ(「青7」−「BAR」−「BAR」揃い)が有効ライン上に表示されるまでは、CBのボーナスゲームは実行されず、遊技状態は、CB役の成立状態が持ち越されたボーナス内部状態に制御される。そして、ボーナス内部状態に制御されているときに、内部抽選の結果、リプレイ役や小役に当選した場合は、予め定められた優先順位に従って、表示され得る当選役が決定される。具体的には、当該優先順位が『再遊技(リプレイ役)>小役>ボーナス』である場合には、ボーナス内部状態としてCBの成立状態が維持されていても、CBの図柄組合せを表示し得る機会は、内部抽選でリプレイ役にも小役にも当選しなかったとき(すなわち、はずれ)に限られる。しかし、本実施形態のスロットマシン1では、図63に示したように、ボーナス内部状態において内部抽選ではずれとなる割合は極めて小さく設定されている(1/65536)。したがって、ほとんどの遊技において、CBの図柄組合せが表示される機会はなく、遊技状態は、一般状態又はボーナス内部状態に制御される。
[10−1−2.リプレイ役]
本実施形態のスロットマシン1には、リプレイ役(再遊技役ともいう)が用意されている。図65〜図68に示したように、リプレイ役の当選時に作動する条件装置は、図65〜図68にリプという名前で示した複数の条件装置であり、当選したリプレイ役によって作動する条件装置、及びその優先度が異なる。そして、リプレイ役の当選に基づいて作動した条件装置に対応する図柄組合せ(例えば、「リプレイ」−「リプレイ」−「リプレイ」揃い)が有効ライン上に表示されると、再遊技という遊技特典が付与される。なお、リプレイの図柄組合せが有効ライン上に表示されたとしても、賞としてのメダルは払い出されない。
このリプレイゲームの遊技特典の特徴は、メダルの払出しを行わない代わりに次回のゲームで新たにメダルを消費する(新たにメダルを掛ける)必要がないことである。またリプレイはメダルの払い出しを伴わない当選役であるため、例えばその当選確率を高くすることにより、当選頻度が高くなったとしてもホールにとっての不利益は少ない。従って、スロットマシン1では、通常状態(一般状態)において、概ね6〜7回に1回程度以上で当選する確率としている(図63の一般状態では、8980/65536≒1/7.3)。これにより、遊技者が消費するメダルの量(一定時間当たりにつき消費するメダル数)をある程度一定の範囲に保つことが可能となる。つまり、リプレイという当選役にゲーム進行における過剰なメダルの消費を抑える役割を持たせることができるということになる。
また、各リール301a,301b,301cにリプレイ役に対応する図柄の組合せ態様を構成する図柄をそれぞれ満遍なく配置する(例えば、リプレイ役に対応する図柄の組合せ態様を構成する図柄と、同じくリプレイ役に対応する図柄の組合せ態様を構成する図柄との間に配置される他の図柄(リプレイ役に対応する図柄の組合せ態様を構成しない図柄)を1個から最大でも4個までにする)ことにより、リプレイ役に対応する図柄の組合せ態様を目押しの必要なく揃えることのできるものとすることができる。
なお、通常のリプレイ役に対応する図柄の組合せが有効ライン上に表示された場合には、再遊技の特典を付与できるだけであるが、スロットマシン1がARTやRTを備える仕様とするときには、特別なリプレイ役(例えばARTリプレイ)を設定することによって、ARTリプレイに対応する図柄の組合せが有効ライン上に表示された場合に、チャンスRT等のような遊技状態に移行する契機として機能させることもできる。
[10−1−2−1.多様なリプレイ役]
本実施形態では、リプレイ役として複数種類の当選役が用意されており、遊技の結果として図柄表示領域に表示される図柄組合せは、当選したリプレイ役の種類によって異なる停止態様で示されることがある。このようなリプレイ役の停止態様について、いくつかの例を示して説明する。
(1)BAR_1
図69は、BAR_1当選時に作動が許容される条件装置を説明するための図(その1)である。図69には、リプレイ役であるBAR_1(役番号19)に当選した際に作動する条件装置の一覧が示されている。図69に示すように、BAR_1が当選役として選ばれた場合には、リプ1,リプ2(リプ2_1〜リプ2_4),リプ9(リプ9_1,リプ9_2),リプ23(リプ23_1〜リプ23_3),リプ24(リプ24_1,リプ24_2),リプ25,リプ26(リプ26_1,リプ26_2)という複数の条件装置が同時に作動する。なお、図69や後述の図70等に示される条件装置は、図65〜68に例示した条件装置に対応している。
図70は、BAR_1当選時に作動が許容される条件装置を説明するための図(その2)である。図70には、BAR_1に当選した際に作動する条件装置(図69参照)について、図柄の表示に関する表示優先度の一覧が示されている。
図70に示す「左−中−右」や「左−右−中」等の欄は、リール301の停止順、すなわち、リール停止ボタン211の押し順を示しており、BAR_1の当選時に作動する複数の条件装置は、リール停止ボタン211の押し順に基づいて、図柄を表示させる条件装置に関する優先度(優先順位)が付けられていることが分かる。
また、図70に示す「表示優先度」の高低は、優先的に表示される条件装置の高低を示したものであり、リール停止ボタン211に対する停止操作の実行タイミング(押しタイミング)が全てのリールで適正である場合(「目押し時」に相当)、及び、各リールを停止させる途中で何れかのリールの押しタイミングが不適正である場合(「3rdミス時」、「2ndミス時」、「1stミス時」に相当)に分けることができる。なお、必ず引き込めるように配列された図柄(例えば、リプレイ図柄やベル図柄)を用いた図柄組合せの場合は、上記のような押しタイミングの不適正が生じることはないので、このような場合には表示優先度の詳細区分がなされないことがある。
なお、図69において欄の右側に「×印」が付された条件装置(具体的には、リプ9_1やリプ24_2)は、BAR_1の当選時に作動はするものの、図柄を表示させる条件装置としては選ばれない条件装置であることを意味するため、図70には示されていない。
そして、上記の図69及び図70に基づけば、BAR_1の当選時、リール停止ボタン211をどの押し順で、かつ、どのタイミングで押したかによって、最優先となる条件装置が決まり、当該条件装置に対応する図柄組合せが有効ライン上に停止表示される。
以下では、BAR_1の当選時に図柄が停止する様子について、一例を挙げて時系列で説明する。図71〜図73は、BAR_1当選時の図柄の停止態様の一例を説明するための図(その1〜その3)である。
まず、図71は、BAR_1に当選した際、左、中、右の順でリール301を停止させたとき(左順押し)の図柄の停止例を示している。図70によれば、BAR_1当選時に左順押しでリールの停止操作が行われる場合には、「リプ1」の条件装置が優先的に作動する。
このときの図柄の停止態様を各リール301の停止タイミングごとに見ていくと、まず、リール停止ボタン211aに対する停止操作が行われることで、左列の中段にリプレイ図柄が停止し(図71(A))、次に、リール停止ボタン211bに対する停止操作が行われることで、中列の中段にリプレイ図柄が停止し(図71(B))、最後に、リール停止ボタン211cに対する停止操作が行われることで、右列の中段にリプレイ図柄が停止する(図71(C))。
この結果、図71(C)に示すように、条件装置「リプ1」に対応する図柄組合せとして、リプレイ図柄揃いが中段ラインに表示され、再遊技の遊技特典が付与される。なお、図示はしないが、BAR_1当選時に左挟み押しでリール301が停止されるときも、「リプ1」の条件装置が優先的に作動することから(図70参照)、左順押しの場合と同様に、中段ラインにリプレイ図柄揃いが表示され、再遊技の遊技特典が付与される。
次に、図72は、BAR_1に当選した際、中、左、右の順でリール301を停止させたとき(中順押し)の図柄の停止例を示している。図70によれば、BAR_1当選時に中順押しでリールの停止操作が行われる場合には、「リプ24_1」、「リプ23_1」、「リプ23(リプ23_1〜リプ23_3の何れか、という意味。以下同様)」、「リプ2」が作動する。ここで、リール停止の押しタイミングが全てのリールで適正である(目押し時)とすれば、「リプ24_1」が優先的に作動する。
このときの図柄の停止態様を各リール301の停止タイミングごとに見ていくと、まず、リール停止ボタン211bに対する停止操作が行われることで、中列の中段にスイカ図柄が停止し(図72(A))、次に、リール停止ボタン211aに対する停止操作が行われることで、左列の中段にBAR図柄が停止し(図72(B))、最後に、リール停止ボタン211cに対する停止操作が行われることで、右列の中段にプラa図柄が停止する(図72(C))。
この結果、図72(C)に示すように、条件装置「リプ24_1」に対応する図柄組合せとして、「BAR−スイカ−プラa」の図柄組合せが中段ラインに表示される。このような図柄組合せは、一見してリプレイ役と認識することは難しく、さらには、図柄表示領域全体(上中下段の3段分)にもリプレイ役を容易に認識可能な図柄組合せは表示されないが、再遊技の遊技特典が付与される。
次に、図73は、BAR_1に当選した際、中、右、左の順でリール301を停止させたとき(中逆押し)の図柄の停止例を示している。図70によれば、BAR_1当選時に中逆押しでリールの停止操作が行われる場合には、「リプ26_1」、「リプ25」、「リプ26_2」、「リプ2」が作動する。ここで、リール停止の押しタイミングが全てのリールで適正である(目押し時)とすれば、「リプ26_1」が優先的に作動する。
このときの図柄の停止態様を各リール301の停止タイミングごとに見ていくと、まず、リール停止ボタン211bに対する停止操作が行われることで、中列の中段にスイカ図柄が停止し(図73(A))、次に、リール停止ボタン211cに対する停止操作が行われることで、右列の中段にBAR図柄が停止し(図73(B))、最後に、リール停止ボタン211aに対する停止操作が行われることで、左列の中段にベル図柄が停止する(図73(C))。
この結果、図73(C)に示すように、条件装置「リプ26_1」に対応する図柄組合せとして、「ベル−スイカ−BAR」の図柄組合せが中段ラインに表示される。このような図柄組合せは、中順押しの場合と同様、一見してリプレイ役と認識することは難しいが、再遊技の遊技特典が付与される。
このように、BAR_1が当選役として選ばれた場合に、リール停止ボタン211の押し順や押しタイミングによって様々な図柄組合せが図柄表示領域に表示されることが分かる。
但し、本実施形態のスロットマシン1では、押し順が教示される場合を除いて、「左順押し」又は「左挟み押し」が推奨されるため、推奨定順による遊技が行われる限りは、BAR_1の当選時に図72や図73に示したような図柄の停止態様が見られることはない。そして、本実施形態では、リプレイ役のうち、BAR_1〜BAR_7,赤BB,青BB(役番号17〜25)に当選した場合は、左リール301aを最初に停止させる順押しの押し順でリール301の停止操作が行われたときに、有効ライン(中段ライン623a)にリプレイ役に対応する図柄組合せが表示される。
また、以下に例示する他の当選役の場合も、BAR_1の例と同様に、当選役に基づいて複数の条件装置が優先度を付けられて作動することで、停止操作の押し順や押しタイミングによって、異なった停止態様で図柄組合せが表示される可能性があるが、このような他の当選役の説明において、繰り返しとなる詳細な説明は割愛する。
(2)枠外1_A
次に、BAR_1とは別のリプレイ役として、役番号1の枠外1_Aに当選した場合の図柄の停止態様について説明する。
図74,図75は、枠外1_A当選時に作動が許容される条件装置を説明するための図(その1,その2)である。図74,図75は、それぞれ、BAR_1当選時に説明した図69,図70に対応する図面である。
図74によれば、枠外1_Aが当選役として選ばれた場合には、リプ2(リプ2_1〜リプ2_4),リプ4(リプ4_1〜リプ4_4),リプ5(リプ5_1,リプ5_2),リプ12(リプ12_1〜リプ12_10),リプ19(リプ19_1〜リプ19_4),リプ20(リプ20_1〜リプ20_4)という複数の条件装置が同時に作動する。このうち、リプ12_6〜リプ12_10は、図柄を表示させる条件装置として選ばれないため、表示優先度をまとめた図75には示されていない。
図74によれば、枠外1_Aの当選時に作動が許容される条件装置は、BAR_1当選時の条件装置(図69)とは一部が異なっており、図75に示す条件装置の優先度も、BAR_1当選時(図70)とは異なった設定がなされている。したがって、枠外1_Aの当選時は、図74及び図75に示した条件装置の作動が行われることによって、BAR_1とは異なる態様で図柄が停止し得ることが分かる。
図76〜図78は、枠外1_A当選時の図柄の停止態様の一例を説明するための図(その1〜その3)である。
まず、図76は、枠外1_Aに当選した際、左順押しでリール301を停止させたときの図柄の停止例を示している。図75によれば、枠外1_A当選時に左順押しでリールの停止操作が行われる場合には、「リプ4」及び「リプ5」の条件装置が優先的に作動する。実際にリール301を停止するときに「リプ4」と「リプ5」の何れの条件装置に対応する図柄組合せを有効ラインに引き込むかは、各リールの押しタイミングによって決定され、より具体的には、リール停止ボタン211を押したときのリールの位置に基づいて、引き込み可能な図柄を有する条件装置を判断し、当該条件装置に対応する図柄組合せが停止される。
図柄の停止態様を各リール301の停止タイミングごとに見ていくと、まず、リール停止ボタン211aに対する停止操作が行われることで、左列の中段にリプレイ図柄が停止する(図76(A))。このリプレイ図柄は、「リプ4」,「リプ5」で共通である。
次に、リール停止ボタン211bに対する停止操作が行われたとき、中列の中段に停止する図柄は、「リプ4」の場合はベル図柄、「リプ5」の場合はBAR図柄かチェリー図柄である。ここで例えば、配列番号9番のBAR図柄が引き込み可能な範囲内に存在したとすれば、中列の中段にはBAR図柄が停止する(図76(B))。この段階で、図柄を表示することを許容される条件装置は「リプ5_1」だけになる。
最後に、リール停止ボタン211cに対する停止操作が行われると、右列の中段には、「リプ5_1」の図柄組合せを構成するスイカ図柄が停止する(図76(C))。図46を参照すれば分かる通り、スイカ図柄はどの押しタイミングであっても引き込み可能である(操作時がどの位置であっても4コマ以内に存在する)ので、「リプ5_1」に対応する図柄組合せは必ず有効ライン上に成立し、再遊技の遊技特典が付与される。
ここで、枠外1_Aはリプレイ役であるが、図76(C)では、図柄表示領域全体を見たときに、上段ラインにベル図柄が揃っている。これは、図46の配列表を参照すれば、左列のリプレイ図柄、中列のBAR図柄、そして右列のスイカ図柄の上には、それぞれベル図柄が存在するためであり、「リプ5_1」の条件装置が作動した際には、必ずベル図柄が上段ラインに揃うことになる。「リプ5_2」の条件装置が作動した際も同様である。このように、再遊技の遊技特典が付与される一方でベル小役のような図柄揃いが表示される停止態様を、本実施形態ではベルリプレイと呼ぶ。一般的には、ベル図柄の揃い表示は、小役入賞を示すことが多いが、ベルリプレイは、あくまで再遊技役である。
なお、枠外1_Aの当選時には、「リプ4」の条件装置に対応する図柄組合せが停止し得ることは前述した通りであるが、この場合には、リプレイを示す図柄揃いが中段ラインに停止するとともに、右下がりラインにベル図柄が揃って表示される(不図示)。また、図75によれば、枠外1_Aの当選時に左挟み押しを行った場合も、優先的に作動する条件装置は左順押しの場合と同じである。以上のことから、枠外1_Aの当選時に順押しでリール301が停止されたときには、図柄表示領域にはベルリプレイの態様で図柄組合せが表示される。
一方、図77は、枠外1_Aの当選時に中逆押しでリール301を停止させたときの図柄の停止例を示している。停止推移の詳細は省略するが、図77(A)〜(C)に示したように各リールは停止し、全てのリール301が停止した段階では、「リプ20」の条件装置に対応する図柄組合せとして、左列の中段にはリプレイ図柄が停止し、中列の中段には赤7図柄,青7図柄,プラムa図柄,プラムb図柄の何れかが停止し、右列の中段にはスイカが停止する。このような図柄組合せの表示に基づいて、再遊技の遊技特典が付与される。しかし、図77(C)に示すように、中逆押しの停止操作を行った場合には、図柄表示領域内にベル図柄揃いは現出せず、ベルリプレイの停止態様とはならない。
また、図78は、枠外1_Aの当選時に逆挟み押しでリール301を停止させた時の図柄の停止例を示している。図78(A)〜(C)では、目押し時の停止態様として「リプ12_3」の条件装置に対応する図柄組合せが有効ラインに停止する様子が示されており、再遊技の遊技特典が付与されることになるが、この場合も図77に示した停止態様と同様、ベルリプレイの停止態様とはならない。
このように、枠外1_Aが当選役として選ばれた場合に、リール停止ボタン211の押し順や押しタイミングによって様々な図柄組合せが図柄表示領域に表示されることが分かる。特に、リール停止ボタンの押し順が、推奨手順である順押し(左順押し又は左挟み押し)の場合には、図柄表示領域にベルリプレイの態様で図柄組合せが表示され、その他の押し順の場合にはベルリプレイの態様にならないことが特徴的である。
そして、本実施形態では、図64にまとめて示したように、リプレイ役のうち、枠外1_A,B〜枠外8_A,B(役番号1〜16)に当選した場合は、上述のベルリプレイ態様での停止出目が現出される。
(3)弱チェリー
次に、役番号26の弱チェリーに当選した場合の図柄の停止態様について説明する。
図79,図80は、弱チェリー当選時に作動が許容される条件装置を説明するための図(その1,その2)である。図79,図80は、それぞれ、BAR_1当選時の図69,図70、並びに枠外1_A当選時の図74,図75に対応する図面である。
図79及び図80によれば、弱チェリーが当選役として選ばれた場合には、全ての押し順や押しタイミングに拘わらず、リプ3(リプ3_1〜リプ3_12)の複数の条件装置が同時に作動する。表示優先度は特に設けられず、リプ3_1〜リプ3_12のうちの引き込み可能な図柄を有する条件装置が選択される。
図81,図82は、弱チェリー当選時の図柄の停止態様の一例を説明するための図(その1,その2)である。
まず、図81は、弱チェリーに当選した際、左順押しでリール301を停止させたときの図柄の停止例を示している。図81(A)〜図81(C)に示す停止推移は、押しタイミングに基づいて最終的に「リプ3_1」の条件装置に対応する図柄組合せが停止するときの様子である。
まず、リール停止ボタン211aに対する停止操作が行われたとき、左列の中段に赤7図柄(配列番号2番)が停止する(図81(A))。この赤7の下段には、配列の構成上、チェリー図柄が停止することになる。次に、リール停止ボタン211bに対する停止操作が行われたとき、中列の中段にベル図柄(例えば、配列番号5番)が停止する(図81(B))。このベル図柄の下段にも、配列の構成上、チェリー図柄が停止する。そして、最後に、リール停止ボタン211cに対する停止操作が行われると、右列の中段にチェリー図柄(配列番号20番)が停止する(図81(C))。この結果、中段ラインには「赤7−ベル−チェリー」という「リプ3_1」の条件装置に対応する図柄組合せが表示されることで、再遊技の遊技特典が付与される。
ここで、図81(C)を参照すると、図柄表示領域全体では、下段ラインの右列以外、すなわち、左列及び中列にチェリー図柄が並んでいる様子が分かるものであり、このような停止態様を、本実施形態ではチェリーリプレイと呼ぶ。一般的には、チェリー図柄は所定個数が図柄表示領域に停止することによって、何らかの特典付与が示唆されやすい図柄である。したがって、チェリーリプレイの停止態様が示されることによって、リプレイ役でありながら、チェリー図柄の存在を意識させることができる。
一方、図82は、弱チェリーの当選時に左順押しでリール301を停止させたときの別の図柄停止例を示している。図82(A)〜図82(C)に示す停止推移は、図81の押しタイミングとは異なる押しタイミングで停止操作が行われた場合の一例であり、最終的に「リプ3_5」の条件装置に対応する図柄組合せが停止するときの様子である。
このとき、まず、リール停止ボタン211aに対する停止操作が行われたとき、左列の中段に青7図柄(配列番号12番)が停止する(図82(A))。この青7の下段には、配列の構成上、チェリー図柄は停止しない。次に、リール停止ボタン211bに対する停止操作が行われたとき、中列の中段にベル図柄(例えば、配列番号5番)が停止する(図82(B))。このベル図柄の下段には、配列の構成上、チェリー図柄が停止する。そして、最後に、リール停止ボタン211cに対する停止操作が行われると、右列の中段にチェリー図柄(配列番号20番)が停止する(図82(C))。この結果、中段ラインには「青7−ベル−チェリー」という「リプ3_5」の条件装置に対応する図柄組合せが表示されることで、再遊技の遊技特典が付与される。
ここで、図82(C)を図81(C)と比較すると、図柄表示領域全体の停止出目について、図82(C)の場合は、左列の中段に停止した図柄が青7図柄であるため、チェリーが枠内に停止せず、全体的にチェリーリプレイの停止態様を現出することができていない。このことから、弱チェリーの当選時には、左リールの押しタイミングによっては、チェリーリプレイの停止態様とはならないことが分かる。
以上に述べてきたように、本実施形態のスロットマシンでは、様々な種類のリプレイ当選役が用意されている。何れのリプレイ当選役が選ばれた場合も、有効ライン上には再遊技を示す図柄組合せが停止されるが、一部のリプレイ当選役(例えばベルリプレイやチェリーリプレイ)の場合は、さらに、基本表示領域内に特定の図柄組合せを示す(ライン上の図柄揃いに限定されず、特定図柄が特定位置に停止することを含む)という特徴を有している。
このような「一部のリプレイ当選役」に含まれるリプレイ当選役としては、上記で例示したベルリプレイやチェリーリプレイ以外にも、「スイカリプレイ(役番号27,28)」や「チャンスリプレイ(役番号29,30)」等が用意されている。そして、夫々のリプレイ役の当選時には、当該当選したリプレイ役に基づいた図柄組合せが基本表示領域内に停止表示される。このような複数種類のリプレイ役を用意する効果としては、例えば、当選したリプレイ役の種類に応じて特典の付与に関する期待度(例えば、ATゲームへの当選期待度や、ATゲーム中のゲーム数上乗せに関する期待度)が異なるように設定することで、どのリプレイ役に当選するかによる差別化を図ることができる。また、当選したリプレイ役の種類によって図柄組合せの停止態様が異なることで、どのリプレイ役に当選したかを遊技者が認識しやすくできるため、特典の付与にどの程度期待できるかという目安を与える効果もある。
[10−1−3.ベル役]
次に、入賞役としてのベル役について説明する。このベル役は、当選時にメダルの払出が期待できる入賞役である。本実施形態では、何種類かのベル役が用意されており、以下ではその一例を具体的に説明する。
[10−1−3−1.共通ベル]
まず、当選時の入賞度合い(入賞率、及び入賞に基づくメダルの払出枚数)がリール301の押し順によって変化しない共通ベルについて説明する。
図63に示した役番号55の「強ベル」は、その当選時に、リール301をどのような順番や位置で停止させても、10枚のメダル払出に期待できる押し順不問のベル役である。強ベルに当選した際は、ベル1,ベル2の条件装置が作動することによって、リール停止ボタン211の押し順がどのような順番であろうと、有効ライン上に強ベルの図柄組合せ(CBベルの図柄組合せを含む)が表示され、10枚のメダルが払い出される。
図83,図84は、強ベル当選時に作動が許容される条件装置を説明するための図(その1,その2)である。図83,図84は、それぞれ、BAR_1当選時の図69,図70、並びに枠外1_A当選時の図74,図75等に対応する図面である。
図83及び図84によれば、押し順不問のベル役である強ベル(役番号55)が当選役として選ばれた場合には、ベル1,ベル2(ベル2_1〜ベル2_9)の複数の条件装置が同時に作動する。そして、押し順が順押し又は中押しである場合は、押しタイミングに拘わらずベル1の条件装置が優先的に作動し、押し順が逆押しである場合は、ベル2、押しタイミングに拘わらずベル2の条件装置が優先的に作動する。
図85は、強ベル当選時の図柄の停止態様の一例を説明するための図である。図85には、強ベル当選時に左順押しでリール301を停止させたときの図柄の停止例が示されている。図85(A)〜図85(C)に示す停止推移は、押しタイミングに拘わらず最終的に「ベル1」の条件装置に対応する図柄組合せが停止するときの様子である。
まず、リール停止ボタン211aに対する停止操作が行われたとき、左列の中段にベル図柄(例えば、配列番号4番)が停止する(図85(A))。次に、リール停止ボタン211bに対する停止操作が行われたとき、中列の中段にベル図柄(例えば、配列番号5番)が停止する(図85(B))。そして、最後に、リール停止ボタン211cに対する停止操作が行われると、右列の中段にベル図柄(配列番号4番)が停止する(図85(C))。この結果、中段ラインには「ベル−ベル−ベル」というベル図柄揃いが表示され、これは、「ベル1」の条件装置に対応する図柄組合せであるため、10枚のメダル払出の遊技特典が付与される。
なお、上記の説明では、各列の中段に停止するベル図柄を配列番号で例示したが、リール301の各リールにおいて、ベル図柄は、最大でも4個以内の別図柄を挟んで配置されているため(図46参照)、どの押しタイミングで停止操作が行われても、何れかのベル図柄を有効ライン上に引き込み可能である。
また、図示はしないが、強ベル当選時に、他の押し順として左挟み押し又は中押し(中順押し又は中逆押し)で停止操作が行われた場合も、ベル1の条件装置が優先的に作動することから、図85と同様に中段ラインにベル図柄が揃って停止する。また、強ベル当選時に、右押し(逆挟み押し又は逆順押し)で停止操作が行われた場合は、ベル2の条件装置が優先的に作動することから、左列及び中列の中段にベル図柄が並び、右列の中段にはベル図柄以外の各図柄が停止する(CBベルの図柄組合せ)。CBベルの図柄組合せも、どの押しタイミングで停止操作が行われても対象図柄を有効ライン上に引き込み可能である。そして、CBベルの図柄組合せの場合も、ベル揃いのときと同様に10枚のメダル払出の遊技特典が付与される。
このように、強ベルの当選時は、押し順によって表示される図柄組合せが多少異なる(逆押しの場合のみCBベルの図柄組合せ)ものの、遊技特典として払い出されるメダル枚数は同じであり、さらに言えば、通常時は順押しでの操作手順が推奨されることから、安定的に10枚のメダル払出に期待できる押し順不問の当選役といえ、後述の押し順ベルと対比した表現として「共通ベル」と呼ぶこともできる。
[10−1−3−2.押し順ベル]
次に、当選時の入賞度合い(入賞率、及び入賞に基づくメダルの払出枚数)がリール301の押し順によって変化し得る押し順ベルについて説明する。
図63に示した役番号31〜46のベル役は、その当選時に、リール停止ボタン211の押し順や押しタイミングによって、図柄表示領域(より厳密には有効ライン)に停止表示される図柄組合せ(停止出目)が変わり、その結果、賞として払い出されるメダル枚数が異なる小役である。なお、役番号47〜54の「CB+ベル」役は重複役であるが、ボーナス役よりも小役が優先して引き込まれる制御によって、実際の停止出目は役番号39〜46のベル役と同様に制御されるため、説明を省略する。
一般に、リール停止ボタン211の押し順によって停止出目が変わる小役は、押し順小役と呼ばれ、押し順に関する選択数を付加して呼ばれることもある。例えば、役番号31〜38のベル役は、その当選時に、第1停止リール及び第2停止リールが適正な押し順である場合に、最も多いメダルの払出に期待できるベル役とされており、「左−中−右」、「左−右−中」、「中−左−右」、「中−右−左」、「右−左−中」、「右−中−左」の6通りの押し順のうちに、適正な1通りの押し順が含まれることから、6択ベルと呼ぶことができる。また、役番号39〜46のベル役は、その当選時に、第1停止リールが適正な押し順である場合に、最も多いメダルの払出に期待できるベル役とされており、左リール301aを最初に停止させる「順押し」、中リール301bを最初に停止させる「中押し」、右リール301cを最初に停止させる「逆押し」の3通りのうちに、適正な1通りの押し順が含まれることから、3択ベルと呼ぶことができる。なお、押し順小役に関する「適正」「不適正」とは、最も多くのメダルの払出に期待できる押し順に関しての「適正」「不適正」という意味であり、通常時の遊技における推奨手順(順押し)における適正/不適正とは異なる。
以下では、このような押し順小役のベル役(押し順ベル)の一例として、役番号39の中ベル_1が当選役として選ばれた場合について説明する。中ベル_1は、中ベル_2〜中ベル_4(役番号40〜42)の当選時と同様に、中押しで停止操作が行われた場合に、最も多いメダルの払出に期待できる当選役であり、その他の押し順で停止操作が行われた場合には、中押しの場合よりも少ないメダルが払い出されるか、又はメダル払出が行われない。
(1)適正な押し順
図86,図87は、中ベル_1当選時に作動が許容される条件装置を説明するための図(その1,その2)である。図86,図87は、それぞれ、BAR_1当選時の図69,図70、並びに枠外1_A当選時の図74,図75等に対応する図面である。
図86及び図87によれば、中押しを適正な押し順とする押し順小役である中ベル_1(役番号39)が当選役として選ばれた場合には、ベル3,AT1,AT6,AT19,AT21の複数の条件装置が同時に作動する。そして、適正な押し順である中押しで停止操作が行われる場合には、押しタイミングに拘わらずベル3の条件装置が優先的に作動する。また、不適正な押し順である順押しで停止操作が行われる場合には、AT1及びAT6の条件装置が優先的に作動する。なお、図87の順押しの欄には「零し1」及び「零し2」という記載があるが、これについては後述の図89で説明する。また、不適正な押し順である逆押しで停止操作が行われる場合には、AT19及びAT21の条件装置が優先的に作動する。
図88〜図90は、中ベル_1当選時の図柄の停止態様の一例を説明するための図(その1〜その3)である。
まず、図88には、中ベル_1当選時に中順押しでリール301を停止させたときの図柄の停止例が示されている。このとき、「ベル3」の条件装置が優先的に作動し、リール停止ボタン211bに対する停止操作が行われたとき、中列の中段にベル図柄(例えば、配列番号5番)が停止する(図88(A))。次に、リール停止ボタン211aに対する停止操作が行われたとき、左列の中段にスイカ図柄(例えば、配列番号5番)が停止する(図85(B))。ここで、図46を参照すれば、左リール301aにおいてスイカ図柄の下段には必ずベル図柄が停止する。そして、最後に、リール停止ボタン211cに対する停止操作が行われると、右列の中段にスイカ図柄(例えば、配列番号3番)が停止する(図88(C))。ここでも、図46を参照すれば、右リール301cにおいてスイカ図柄の上段には必ずベル図柄が停止する。
この結果、中ベル_1当選時に中順押しで停止操作が行われた場合、中段ラインには「スイカ−ベル−スイカ」という「ベル3」の条件装置に対応する図柄組合せが表示されるため、3枚のメダル払出の遊技特典が付与される。さらにこのとき、図88(C)に示すように、図柄表示領域の右上がりライン上にベル図柄揃いが表示されることになり、遊技者に対しては右上がりラインにベル揃いが表示されたことによって3枚のメダル払出が行われたように認識させることができる。中ベル_1当選時に中逆押しで停止操作が行われた場合も、ベル3の条件装置が優先的に作動することで、図88(C)と同様な図柄組合せが表示され、3枚のメダル払出の遊技特典が付与される。
(2)不適正な押し順
一方、図89には、中ベル_1当選時に左順押しでリール301を停止させたときの図柄の停止例が示されている。このとき、「AT1」及び「AT6」の条件装置が優先的に作動するが、以下ではまず、「AT1」の条件装置に対応する図柄組合せが引き込まれる場合を説明する。リール停止ボタン211aに対する停止操作が行われたとき、左列の中段にリプレイ図柄(例えば、配列番号3番)が停止する(図89(A))。このとき、図46を参照すれば、左リール301aにおいてリプレイ図柄の上段には必ずベル図柄が停止する。次に、リール停止ボタン211bに対する停止操作が行われたとき、中列の中段に赤7図柄(配列番号2番)が停止する(図89(B))。ここで、図46を参照すれば、中リール301bにおいて赤7図柄の上下段にはベル図柄は存在しないため、中列にはベル図柄が停止することはない。そして、最後に、リール停止ボタン211cに対する停止操作が行われると、右列の中段にチェリー図柄(配列番号20番)が停止する(図89(C))。ここでも、図46を参照すれば、右リール301cにおいてチェリー図柄の下段には必ずベル図柄が停止する。
この結果、図89(C)に示すように、中段ライン上には「リプレイ−赤7−チェリー」という「AT1」の条件装置に対応する図柄組合せが表示されることから、1枚のメダル払出の遊技特典が付与される。
ここで、図89(C)では、図85(C)のように図柄表示領域においてベル図柄の揃い態様は見られず、他の図柄による揃い態様も見られない。このような停止出目は、遊技者視点で見れば、何の役も揃っていないように見えるため、「ばらけ目」と呼ぶことができる。本実施形態では、押し順小役の当選時に不適正な押し順で停止操作が行われたときに、「ばらけ目」を停止させることによって、適正な押し順のときにベル図柄が揃うのと比べて、得られる遊技特典の度合いが低いことを示す効果を実現している。実際に、図89(C)のばらけ目の場合は、1枚のメダル払出しか行われない。
なお、中ベル_1の当選時に左順押しを行った場合、リール停止ボタン211bに対する押下操作を行ったタイミングでの中リール301bの位置が赤7図柄を引き込み可能でない場合には、「AT1」の条件装置に対応する図柄組合せを引き込むことはできない。このとき、例えば、中リール301bの位置が青7図柄(配列番号12番)を引き込み可能な位置であれば、「AT6」の条件装置に基づいて中列の中段に青7図柄を停止させるとともに、右リール301cの停止時には、右列の中段にプラムa図柄を停止させることで、「AT6」の条件装置に対応する図柄組合せを表示して、1枚のメダル払出の遊技特典が付与される。この場合も、中リール301bにおいて青7図柄の上下段にはベル図柄が存在しないことから、図柄表示領域にベル図柄の揃い態様は表示されず、ばらけ目が表示されることが明らかである。
(2−1)不適正な押し順による零し目
中ベル_1の当選時に左順押しを行った場合の図柄停止例を説明したが、この他にも、リール停止ボタン211bに対する押下操作を行ったタイミングによっては、中リール301bの位置が赤7図柄又は青7図柄の何れも引き込めない位置となることがある。具体的には、引き込み可能な範囲を図柄4個分(4コマ)とすると、当該停止操作が行われたときに中段に位置する中リール301bの図柄が、配列番号3番〜7番、又は13番〜17番であった場合に、中列の中段に赤7図柄又は青7図柄のどちらも引き込むことができない。
このように、所定の条件装置が作動している状況にあって、押しタイミングによって当該条件装置に対応する図柄組合せを引き込むことができない場合には、メイン基板409は、「零し目」を停止させるリール制御を実行し、例えば、中ベル_1の当選時には、図87に示した「零し1」及び「零し2」に対応する図柄組合せを有効ライン上に停止させることができる。
ここで、零し目とは、上述してきた条件装置と同様に、所定の当選役の当選時に作動して引き込み制御の対象となるものであるが、その対応する図柄組合せが有効ライン上に表示されても、メダルの払出という遊技特典は付与されない。リールの停止制御において、零し目の作動中において、優先的に作動している条件装置に対応する図柄組合せを引き込み不能なタイミングでリール停止ボタン211への停止操作が行われたとき、当該零し目に対応する図柄組合せが引き込まれる。なお、本実施形態のスロットマシン1では、零し目に対応する図柄組合せが有効ライン上に停止した際に、図柄表示領域における何れの直線ライン上にも、何れの図柄による揃い態様も表示されない「ばらけ目」とすることで、何かの役が停止したような印象を遊技者に与えないように工夫している。但し、「AT1」〜「AT21」等の条件装置に対応する図柄組合せによって示される「ばらけ目」は、1枚ながらメダルの払出が行われるのに対し、「零し目」の場合はメダルの払出がない点が異なる。
図91は、零し目の図柄組合せの一例を説明するための図である。図91には、本実施形態のスロットマシン1で出現し得る零し目の一例として、「零し1」〜「零し3」を挙げ、夫々に対応する図柄組合せを示している。例えば、「零し1」の場合は、有効ライン上に「リプレイ−ベル−ベル」という図柄組合せが表示されるとともに、図柄表示領域における何れの直線ライン上にも、何れの図柄による揃い態様も表示されない。
図90には、中ベル_1当選時に左順押しでリール301を停止させたときに零し目(零し1)が停止する例を示している。前述したように、中ベル_1当選時には、「AT1」及び「AT6」の条件装置が優先的に作動する。これらの条件装置に対応する図柄組合せのうち、第1停止される左リール301aのリプレイ図柄は、常に有効ラインに引き込み可能であるから、第1停止の時点では零し目の停止は決定されず、左列の中段にはリプレイが停止する(図90(A))。しかし、第2停止される中リール301bにおいて、「AT1」の赤7図柄も「AT6」の青7図柄も引き込めなかったとすると、零し目(零し1又は零し2)の停止が決定する。ここで、引き込み可能な図柄として、例えば配列番号5番のベル図柄が存在したとすると、零し1に対応する図柄として当該ベル図柄が中列の中段に停止する(図90(B))。そして最後に、リール301cの停止時には、零し1に対応する図柄(図91の「零し1」参照)として、右列の中段にベル図柄(例えば、配列番号4番)が停止する(図90(C))。
図90(C)に示されるように、有効ライン上には、「零し1」に対応する図柄組合せ「リプレイ−ベル−ベル」が表示されるが、このときの図柄表示領域における図柄の停止態様を見ると、左列及び中列にベル図柄が右下がりに並ぶものの、右列ではベル図柄は中段に停止されるために、ベル図柄の揃い態様とはならない。また、他の図柄による揃い態様も一切表示されない。このような零し目による図柄の停止態様は、ベル揃いまで一歩及ばずに揃いきれなかったような印象を遊技者に与え得るものであり、遊技結果の特典としてもメダルは払い出されない。
このように、押し順ベルは、その当選時に、適正な押し順で停止操作が行われた場合と、不適正な押し順で停止操作が行われた場合とで、入賞時のメダルの払出枚数に差異を付けることができる。この差異は、図柄表示領域の停止出目からも判断することができる(ベル揃いとばらけ目)。さらに、特に不適正な押しタイミングで停止操作が行われた場合には、メダルの払出を受けられる入賞役の入賞を取り零すような制御も可能であり、この場合には零し目が表示される。
(3)押し順ベルの利用
なお、上述した中ベル_1は3択ベルであったが、役番号31〜38のベル役のように6択ベルでも同様に、適正な押し順と不適正な押し順によってメダルの払出枚数に差異を付けることが可能であり、さらに、入賞を取り零す場合に零し目を表示させることも可能である。但し、本実施形態のスロットマシン1では、6択ベルが適正な押し順で停止操作された場合には、「AT」の条件装置ではなく、「ベル1」の条件装置を優先的に作動させることとする。強ベル当選時に関して説明したように、「ベル1」の条件装置に対応する図柄組合せ(中段ベル揃い)は、必ず有効ライン上に引き込むことができるため、6択ベルが適正な押し順で停止操作された場合には、3択ベルの場合の3枚のメダル払出ではなく、10枚のメダル払出が行われる。なお、6択ベルについても、不適正な押し順で停止操作が行われたときは、3択ベルと同様に、「ばらけ目」を表示する「AT1」〜「AT21」の条件装置が作動するようにして、押しタイミングによって取り零した場合には、零し目を表示するようにすればよい。
このような本実施形態のスロットマシン1によれば、3択ベルの当選時に適正な押し順で停止操作が行われたとしても、規定数3枚の遊技結果として3枚のメダル払出がなされるだけであるのに対し、6択ベルの当選時に適正な押し順で停止操作が行われた場合には、規定数3枚の遊技結果として10枚のメダル払出がなされることから、遊技者の手持ちメダルを増加させることができる。
また、図64に示したように、本実施形態における押し順ベルの適正な押し順は、第1停止リールが左リール301a以外に限定されている。しかし、前述したように本実施形態では通常の遊技状態において左リール301aを第1停止とする順押しを推奨手順にしているため、通常の遊技状態では、押し順ベルに当選したとしても、遊技者が推奨手順で遊技している限りは適正な押し順での停止操作とはならず、3枚又は10枚のメダル払出を付与されることはない。すなわち、通常の遊技状態では、押し順ベルに当選したとしても、「AT1」〜「AT21」の条件装置が優先的に作動するため、遊技特典としてのメダル払出は、「ばらけ目」の表示に基づく1枚の払出か、もしくは「零し目」の表示に基づく払出なしの何れかしか付与されない。
しかし、本実施形態のスロットマシン1はAT機能を有しており、ATゲーム中に適正な押し順が教示され、当該教示に従った停止操作が行われることによって、遊技者は多くのメダル払出(10枚又は3枚)を容易に受けることができる。すなわち、本実施形態において、上述した押し順ベルは、ATゲーム用に設けられた当選役といえる。なお、非AT時の通常の遊技状態において、遊技者が推奨手順と異なる停止操作を行ってメダルを不当に得てしまった場合には、AT抽選の一時的な停止等の措置を行うことで、全体的なメダル払出の期待値を適正に調整する。
[10−1−4.チェリー役]
入賞役としてのチェリー役について説明する。本実施形態において、当選時に入賞することによってメダルの払出が行われるチェリー役は、役番号56の強チェリー及び役番号57の中段チェリーである。図示はしないが、各チェリー役当選時の図柄停止態様について簡単に説明する。
強チェリー当選時には、「チェリー1」及び「1枚役1」の条件装置が作動し、最も理想的な停止タイミングで停止操作が行われた場合は、図柄表示領域の下段ライン上にチェリー図柄が並ぶように各列の図柄を停止させて、3枚のメダル払出を行う。また、少なくとも左列の下段にチェリー図柄を引き込み可能な押しタイミングで左リール301aの停止操作が行われた場合には、少なくとも左列の下段にチェリー図柄が表示されるような所定の図柄組合せを表示させて、3枚のメダル払出を行う。以上の2通りの停止態様は、「チェリー1」の条件装置に基づく。また、左列の下段にチェリー図柄を引き込めない押しタイミングで左リール301aの停止操作が行われた場合には、「1枚役1」の条件装置に基づいた図柄組合せが表示され、1枚のメダル払出を行う。
中段チェリー当選時には、「チェリー2」及び「1枚役2」の条件装置が作動し、最も理想的な停止タイミングで停止操作が行われた場合は、図柄表示領域の中段ライン(すなわち有効ライン)上にチェリー図柄が並ぶように各列の図柄を停止させて3枚のメダル払出を行う。また、少なくとも左列の中段にチェリー図柄を引き込み可能な押しタイミングで左リール301aの停止操作が行われた場合には、少なくとも左列の中段にチェリー図柄が表示されるような所定の図柄組合せを表示させて、3枚のメダル払出を行う。以上の2通りの停止態様は、「チェリー2」の条件装置に基づく。また、左列の中段にチェリー図柄を引き込めない押しタイミングで左リール301aの停止操作が行われた場合には、「1枚役2」の条件装置に基づいた図柄組合せが表示され、1枚のメダル払出を行う。
このように、入賞役としてのチェリー役の当選時には、左リール301aのチェリー図柄を図柄表示領域に表示可能な停止操作が行われた場合は、チェリー役の入賞として3枚のメダル払出を行う一方、左リール301aのチェリー図柄を引き込めない位置で停止操作が行われた場合は、ばらけ目の態様で1枚役を入賞させるものである。本実施形態では、1枚役が入賞する可能性がある当選役は、上記のチェリー役又は後述の弱チャンス役に限っているため、仮にチェリー役当選時にチェリー図柄を停止させられなかったとしても、チェリー役又は弱チャンス役の何れかに当選したことを遊技者に認識させることができる。
[10−1−5.チャンス役]
入賞役としてのチャンス役について説明する。図64等に示したように、本実施形態のスロットマシンでは、チャンスと名の付く当選役として、「強チャンス_1(役番号29),強チャンス_2(役番号30)」と「弱チャンス(役番号58)」とがあるが、前者はリプレイ役の一種であるため、ここでは弱チャンス役について簡単に説明する。
弱チャンス当選時には、「1枚役2(1枚役2_1〜1枚役2_8)」の条件装置が作動し、当該条件装置の何れかに対応する図柄組合せを停止可能な押しタイミングで停止操作が行われた場合には、1枚役が入賞して1枚のメダル払出が行われる。また、1枚役に対応する図柄組合せを引き込めない押しタイミングで停止操作が行われた場合には、零し目として図91に例示した「零し3」の図柄組合せが有効ラインに表示され、遊技特典としてのメダルの払出は行われない。
弱チャンス役は、例えば、その当選時に、AT抽選におけるAT当選への期待度が通常よりも高くなるように設定されることで、遊技特典(この場合はAT当選)への期待度を高める当選役として用いられる。なお、期待度を高める遊技特典としては、AT当選に限らず、ATゲーム中の上乗せ当選率や、上乗せゲーム数の度合い等であってもよい。
また、これまでに説明してきた各当選役(例えば、強チャンス、強チェリー、中段チェリー等)のうち、内部抽選における当選率が比較的低い他の役についても、弱チャンス役と同様に、遊技特典への期待度を高める当選役として用いることで、遊技結果による遊技者の期待感を高めることができる。内部抽選における当選率は、図63から算出可能である。なお、このような場合、期待度の度合いは当選役によって差異を設けたほうが好ましい。
[10−1−6.ボーナス専用役]
入賞役としてのボーナス専用役について説明する。図63に示したように、役番号59のボーナス専用役は、ボーナスゲーム中の内部抽選でのみ選ばれる役であり、その当選率は100%にされている(但し、常に100%を必要条件とするものではない)。
ボーナスゲーム中は、例えば規定数2枚で遊技が行われ、ボーナスゲーム専用役に対応する所定の図柄組合せ(「専用ベル1」の条件装置に対応する図柄組合せ)が揃うと、遊技特典として規定枚数(例えば2枚)のメダル払出が行われる。そして、ボーナスゲーム中はこのボーナスゲーム専用役を揃いやすくすることにより、メダルの獲得が容易な複数回にわたるゲームを集中して実行することができる。したがって、ボーナスゲーム専用役図柄の組合せを構成する各図柄は、目押しを行うことなく有効ライン上に揃えることができるものとしており、本実施形態では中段ベル揃いとする。
なお、本実施形態のスロットマシン1では、ボーナスゲームにおいて、上記ボーナスゲーム専用役のみが抽選対象とされているが、これらとは異なる当選役を設けてもよい。さらには、ボーナスゲーム専用役のようなボーナスゲーム中限定の当選役を設けずに、ベル役やチェリー役等を代わりに用いるものとしてもよい。さらにこの場合、一般状態中とボーナスゲーム中とで、メダルの払い出し枚数を変えるようにしてもよい。
[10−1−7.ハズレ]
有効ライン上に表示された図柄組合せが図65〜図68に示された図柄組合せのいずれにも該当しない場合は、ハズレとなる。そして、ハズレとなった当該ゲームでは、メダルの付与は行われず、また次回以降のゲームに変化を及ぼすこともない。したがって、ハズレは遊技者に当該ゲーム及び次回以降のゲームにおいて何の遊技特典も付与しない役であるともいえる。
ハズレとなる場合は、図63に示した抽選テーブルを用いた内部抽選の結果、何らかの当選役が選ばれたものの、押しタイミングが適切ではなく「零し目」が表示された場合、又は、何れの当選役も選ばれなかった場合である。前者については、既述の零し目に関する説明の通りである。
後者、すなわち、何れの当選役も選ばれなかった場合について説明する。このようなハズレは、図63を参照すると、ボーナス内部状態において1/65536の確率で発生することが分かる。このとき、ハズレという遊技結果による遊技特典は付与されないものの、ボーナス役の成立状態が持ち越されている状態であるため、ボーナス役(CB)を入賞させることができる機会となる。ここで、ボーナス役を入賞させることを遊技者に推奨する場合は、ボーナスゲームの開始条件を満たすような特定の図柄組合せを停止可能な手順を告知演出等によって遊技者に通知すればよい。また、逆に、ボーナス役を入賞させないことを推奨する場合は、その旨を告知演出等によって遊技者に通知するか、ボーナス役の特定の図柄組合せを停止し得ない操作手順を告知演出等によって遊技者に通知する等すればよい。さらに、このような特殊な状況では、リールの回転開始時や回転途中に、遊技者による停止操作を受付不能な期間を設けること(いわゆる、フリーズ演出)により、特殊な状況であることを遊技者に強調するようにしてもよい。
以上がスロットマシン1におけるそれぞれの当選役と、それぞれの当選役に対応する図柄の組合せ態様である。
なお、これらの図柄は上記で説明した図柄や図柄の組合せ態様に限定されるものではない。また、上記の図柄に加えて複数種類の図柄を新たに設けることもできる。そして、当選役の種類をさらに増やすことや、あるいは減らすこともできる。さらに、上記で述べた当選役は全てを必ず設けることに限定されるものではなく、適宜必要な種類の当選役を選ぶこととしてもよい。
例えば、ボーナス役と小役(又はリプレイ役)との重複当選が設定されてもよい。このような重複役の当選時にどの役の図柄組合せが優先して有効ライン上に表示されるかは、リール停止処理によって制御される。
また、AT用の当選役として押し順小役を説明したが、押し順小役ではなく、押し位置(押しタイミング)によって遊技者が獲得し得るメダル枚数に差異を付ける小役(押し位置小役)を用い、ATゲーム中には適正な押し位置を教示するようにしてもよい。
例えばこのような「押し位置小役」を備える場合、AT状態(ATゲームが行われる遊技状態)では、押し位置の教示又は告知を行うことによって、遊技者に適正な押し位置でのリール停止操作を促すことができ、適正な押し位置によってメダルを獲得させることができるとともに、非AT状態ではこのような教示又は告知を行わないことで、適正な押し位置でのメダル獲得を非確実なものにさせることができ、遊技状態ごとにメダルの期待獲得枚数やメダルの消費ペースに差異をもたらすことができる。
[11.ゲーム処理]
次に、スロットマシン1におけるゲーム処理の流れについて説明する。以下のゲーム処理は、メイン基板409(主にCPU1110等)にて実行される制御プログラム上の処理手順に沿って進行する。
図92は、スロットマシン1における基本的な1ゲームの処理手順を一通り示している。先ずステップS1では、ゲームスタートに備えるための初期設定を実行する。特に電源の立ち上げ時等においては、前述した各種装置の接続及び作動状況を確認するとともに、バックアップデータの有無を確認し、バックアップデータが存在する場合には、電源断前の状態に復帰させる処理を実行する。
次のステップS2では、投入口203から投入されたメダルの枚数により、あるいはすでに貯留されているメダルがある場合にはMAX投入ボタン206(あるいは1枚投入ボタン205)の押下操作により賭け数が決定され、始動レバー210の操作待ちの状態となる。すなわち、1回のゲームの賭け数が決定され、始動レバー210の操作が可能な状態となるまでがBET処理にて実行される。なお、本実施形態のスロットマシン1を、3枚のメダルを投入することによってゲームの実行が可能となる3枚掛け専用機とする場合には、1枚投入ボタン205が備えられなくてもよい。
ステップS3では、ステップS2において操作待ちの状態となった始動レバー210の操作によりゲームをスタートさせるとともに、いずれかの当選役を内部抽選の結果とするか否かを決定するための内部抽選処理を実行する。この内部抽選処理とは、次のステップS4にて回転を開始する全てのリール301a,301b,301cが停止状態(遊技者の停止操作により停止状態となること)となる前の段階において、いずれかの当選役を当該ゲームの抽選結果とするかを決定するために実行されるものである。すなわち、この抽選の抽選結果がいずれかの当選役に該当する場合に限り、リール301a,301b,301cの停止操作が行われたときに、該当する当選役に対応する図柄組合せが有効ライン上に停止することが許容されるのである。
次にステップS4では、ステップS3の内部抽選処理の終了に伴い全てのリール301a,301b,301cの回転を開始させるリール回転処理を実行する。このリール回転処理においては、全てのリール301a,301b,301cの回転が開始された時点でリール停止ボタン211a,211b,211cの押下操作を有効とし、リール停止ボタン211a,211b,211cが有効になったことを知らせる操作有効ランプ(図示しない)を点灯させるとともに、次回のリール回転処理が実行されるまでのタイマカウントを開始する。なお、操作有効ランプは各リール停止ボタン211a,211b,211cにそれぞれ内蔵されるランプである。
ステップS5では、遊技者によるリール停止ボタン211a,211b,211cの押下操作が受け付けられて、その受け付け順に操作有効ランプを消灯させるとともに、対応するリール301a,301b,301cの回転を停止させるリール停止処理を実行する。
次のステップS6では、ステップS5において中段ライン623aを有効ラインとして全てのリール301a,301b,301cが停止状態になったと判定した時点で、有効ライン上に表示された表示内容(図柄の組合せ態様)と、上記のステップS3において決定された内部抽選の結果として許容されているものを照合して当選役の判定を行う判定処理を実行する。
ステップS7では、ステップS6において判定された当選役に対応する遊技特典の内容に基づくメダルの払出処理を実行する。また、ステップS6で判定された当選役が、CB又は特殊リプレイ(本実施形態のスロットマシン1では用いていないが、RT状態等の遊技状態を変更する契機となる特殊なリプレイを意味する)等のように遊技状態の変更を伴う当選役である場合には、それぞれ遊技状態の変更(図63に示される遊技状態の変更)や再遊技等の各種遊技特典に付与を実行する。
以上が、スロットマシン1の基本的な1ゲームの処理手順である。ここで、ステップS2(BET処理)、ステップS3(内部抽選処理)、ステップS4(リール回転処理)は、遊技者によって行われる一連の外部操作を契機として内部処理が行われるものである。従って、これらの処理(ステップS2、ステップS3、ステップS4)をまとめて始動処理と呼ぶ。以下ではこの始動処理の具体的な説明をする。
[11−1.始動処理]
図93は、始動処理で行われる各処理を具体的に示したものである。
始動処理では、まずステップS101にてメダルの投入または1枚投入ボタン205、MAX投入ボタン206の操作が待ち受けられる。MAXベット操作またはメダル投入があると、ステップS101の判定が満たされ、ステップS102に移る。なお、この判定はMAXベットに相当するメダルの投入(つまり、規定数3枚の遊技の場合は3枚以上のメダルの投入、規定数2枚の遊技の場合は2枚以上のメダルの投入)やMAXベットとなる1枚投入ボタン205、MAX投入ボタン206の操作が有った場合にのみ満たされるものとしている。
次のステップS102では、受付処理として、ベット数(この例ではMAXベットのみ)を決定するとともに、ベット数に応じた有効ラインランプを点灯させる。本実施形態のスロットマシン1では、例えば規定数3枚のとき3枚のメダルが投入されると、中段ライン623aが有効ラインとなり、これを示す有効ラインランプを点灯させる。
ステップS103では、始動レバー210の操作を有効化する。始動レバー210の操作が有効化されると、この始動レバー210の操作が受け付けられるまで操作待ちの状態となり、次のステップS104に移る。
次のステップS104では、始動レバー210の操作が有効化されているか、またその場合は始動レバー210の操作が受け付けられたかを判定する。先のステップS103にて始動レバー210の操作が有効化されている場合、遊技者による始動レバー210の操作が受け付けられると、この判定が満たされ、次のステップS105へ移る。
また、上記のステップS101にて遊技者がベット操作またはメダル投入をしない、あるいはMAXベットに至らないうちはステップS101の判定が満たされず、ステップS104に移る。このときはステップS104の判定も満たされず、ステップS101に戻り、以降の処理を繰り返す。
また、リプレイゲームでは、新たにメダルのベットを必要としない。これは、後述するリプレイゲーム処理にてMAXベットコマンドがRAM1114に格納されている場合、自動的にMAXベット状態にする。これにより、ステップS101の判定が満たされることになる。
ステップS105では、ステップS104での始動レバー210の操作を受けて、始動レバー210の操作を無効化する。
次にステップS106では、始動レバー210の操作があると、リール301a,301b,301cの回転が開始されるとともに、この始動レバー210の操作に基づいて乱数の抽出を行う。乱数の抽出を行った後、次のステップS107に移る。なお、このときの乱数を抽出するタイミングについては、始動レバー210の操作後直ぐに行ってもよいし、他にも例えば、所定時間(例えば0.5秒後など)後に行うなど、プログラミングの過程で適切な抽出タイミングを設定することができる。
ステップS107では、抽出された乱数値(以下では、抽出乱数値という)からいずれの当選役に該当するかの当たり判定(乱数値の照合)を行う。この当たり判定では、後述する当たり値判定テーブルにて抽出乱数値を照合する。ここで行われる乱数値の照合とは、予め決められた当選役の乱数値に、抽出乱数値が該当(合致、一致)するか否かを判定することである。このとき抽出乱数値がいずれかの当選役に該当すると判定された場合、該当する当選役に対応する条件装置をON(=1)にする。なお、抽出された乱数値と当たり判定テーブルとを照合して行われる当たり判定における各当選役についての当選確率は、図63に示されるとおりである)。
そして、フラグ処理では、当該ゲームにて抽出乱数値の照合を行う際に、判定の基準となる当たり値判定テーブルを決定する場合、後述するBBゲーム中フラグなどのゲーム状態フラグを参照して当該ゲームにおける当たり値判定テーブル(抽選テーブル)を決定する。すなわち、当該ゲームにてON(=1)状態となっているゲーム状態フラグ(遊技状態フラグ)に対応する当たり値判定テーブルをセットして抽出乱数値の照合を行う。ゲーム状態フラグは、遊技状態に応じたフラグがそれぞれ用意されているとし、例えば、一般状態中フラグ、ボーナス内部中フラグ、ボーナス中フラグがあるとする。そして、ボーナス内部中フラグ及びボーナス中フラグのいずれもOFF(=0)状態となっている場合には、常に一般状態中フラグをON(=1)状態とする。
一方、ステップS107にて、抽出乱数値がいずれの当選役にも該当しないと判定された場合、いずれの当選役にも該当しない「ハズレ」となり、いずれの条件装置も作動させない。ここで、いずれかの条件装置がONになっているとき(作動/成立しているとき)には、その成立している条件装置に対応する図柄組合せを揃えることが可能となる。各条件装置に対応する図柄組合せは、例えば、図65〜68に示したとおりである。従って、いずれの条件装置も成立していないハズレである場合は、いずれの当選役に対応する図柄組合せも、有効ライン上に揃えることができないことになる。上記のステップS106及びステップS107はスロットマシン1の内部にて乱数抽選を行ってものであり、以下ではこれらのステップのことを、まとめて内部抽選、あるいは内部抽選を行う等という。なお、この乱数の抽出からフラグ処理までは内部抽選(前述の図92のステップS3)に相当する。
次のステップS108では、前回の始動処理(具体的には当該ゲームの1回前のゲーム)にてスタートさせたウェイトタイマがタイムアップ(例えば4.1秒経過)したか否かを判定する。なお、このウェイトタイマと呼ばれるタイマは、当該ゲームにおいてリールの回転が開始されたときから次回のゲームでリールの回転が開始されるまでの所定時間(例えば、4.1秒)の経過を計測するものである。ここで、ウェイトタイマがタイムアップ(既に4.1秒経過した)となった場合にはこの判定が満たされ、次のステップS109に移る。また、この判定はウェイトタイマがタイムアップするまでループする。
ステップS109では、全てのリール301a,301b,301cの回転を開始させる。そして全てのリール301a,301b,301cの回転の速さが一定となると、それぞれのリール停止ボタン211a,211b,211cの操作有効ランプを点灯させる。この点灯により、遊技者はリール停止ボタン211a,211b,211cの押下操作が有効になったことを知ることとなる。
なお、スロットマシン1では、回転を開始したリールは遊技者による停止操作(リール停止ボタン211a,211b,211cの押下操作)が受け付けられるまで上記の一定の速さで回転を維持し続けるものである。
次にステップS110では、ウェイトタイマをリセットするとともに、次回の始動処理までウェイトタイマをスタートさせ始動処理は終了となる。
[11−2.内部抽選確率]
上記のとおり、スロットマシン1では、内部抽選の結果(抽出乱数値の照合の結果)が当該ゲームで該当する当選役(以下では、該当当選役をいう)として許容される。ここで該当当選役が許容されると、該当当選役に対応する条件装置を作動させて、この作動した条件装置の情報は、内部抽選の結果を示す情報コマンドとして以降の処理(リール停止処理、判定処理、払出処理等)に反映されることになる。
スロットマシン1では、乱数抽出を行う際の乱数値の範囲(これを抽出範囲という)を予め決めておくものである。この抽出範囲は、例えば、0から16383までの整数値(つまり、2の14乗=16384個の乱数)と決めることができる。なお、本実施形態のスロットマシン1では、抽出範囲の乱数値を、便宜上、0から65535までとするが、これに限られないことはいうまでもない。この乱数の抽出範囲を拡大すると、その分だけ抽出可能な乱数値の範囲(いわゆる分母)が大きくなるので特定の乱数値が偏って抽出されるといった事象が起こりにくくなる。
上記の抽出範囲内においては、さらにそれぞれの当選役に対応する乱数値が予め割り当てられている。例えば、抽出範囲(本実施形態のスロットマシン1では0から65535)内の乱数値のうち、CBに対応する乱数値を「1」とすれば、抽出乱数値が「1」となった場合に、内部抽選の結果は「CBに当選した」ということになり、CB役の当選に基づいた条件装置が当該ゲームでの情報コマンドとして処理されることになる。また、これを利用すると、抽出範囲及びCBに対応する乱数値から、CBの当選確率(CBが内部抽選の結果として選び出される確率、抽選確率)を算出することができる。図63の例では、一般状態におけるCBの当選確率は、〔CBに対応する乱数値の総個数/抽出範囲内の乱数値の総個数〕が18351/65536となり、CBの当選確率は約1/3.6となる。
このように全ての当選役にはそれぞれ対応する乱数値が決められており、これらの乱数値は、それぞれの当選役に対応する当たり値と呼ばれる。上記の例(CB)では、抽出範囲内の乱数値「1」がRB2に対応する当たり値ということになる。また、当たり値が複数存在する場合、例えば、所定役の当たり値を抽出範囲内の連続する乱数値「1」、「2」、「3」、「4」とすれば、この所定役の当たり値の範囲は乱数値「1」から「4」までとなる。そして、抽出乱数値が乱数値「1」から「4」までのいずれかに該当すると判定される(照合される)と、内部抽選の結果として「所定役に当選した」ということになる。なお、本実施形態のスロットマシン1では、図63に示すように、一の当選役のみに当選する単独役(例えばCB、強ベル、強チェリー等)を用意できるが、これ以外にも、複数の当選役が同時に当選する同時当選役(例えば「CB+ベル」等)を用意してもよい。このような同時当選役(ボーナス役+小役が同時当選する「重複役」を含む)の当たり値についても、上記の当たり値に含まれる。
このことから全ての当選役はその当たり値の範囲が決められ、内部抽選で抽出乱数値がいずれかの当選役の当たり値の範囲に該当するか否かが判定されることになる。このとき、抽出乱数値がいずれの当選役の当たり値の範囲にも該当しない場合は、ハズレ、となる。すなわち、ハズレの当たり値の範囲は、全ての当選役の当たり値の範囲以外ということになる。なお、当たり値は当選許容値とも呼ばれることもある。
ところで、単独役とは、1つの抽出乱数値に対して1つの当選役が対応するものであり、同時当選役とは、1つの抽出乱数値に対して、複数(この場合2つ)の当選役が対応するものである。つまり、抽出された乱数値が同時当選役の当たり値に該当する場合、複数の当選役のいずれにも当選したということになる。このとき、複数当選役のそれぞれの当選役に対応する条件装置が同時に成立する(作動が許容される)。ただし、各当選役に対応する複数の条件装置が同時に成立したとしても、同時当選役に対する条件装置の優先度が設定されるため、実際には、成立した条件装置に対応する図柄組合せの全てが有効ライン上に停止し得るとは限らない。例えば、リプレイ役とボーナス役とが同時当選した場合、リプレイ役の引き込みが優先されるとすれば、ステップS5のリール停止処理はリプレイ役の引き込みを優先するように行われ、さらに、リプレイ役に対応する図柄組合せは押し順や押しタイミングに拘わらず常に有効ライン上に停止可能であることから、結果として、ボーナス役に対応する図柄組合せが有効ライン上に停止することはできず、常にリプレイ役の図柄組合せが停止されることになる。
また、図63によれば、CBのボーナスゲーム中は、常にボーナス専用役に当選する(はずれがない)ように設定されており、従って、CBのボーナスゲームが実行される期間内は、必ずメダルが払い出されることとなる。また、BBゲーム等が搭載される場合は、当該ボーナスゲームで常に何らかの当選役に当選する(はずれがない)ように設定したり、多量のメダル(例えば15枚)の払出が期待できる当選役の当り値が抽出範囲の大半を占めたりするようにすれば、当該ボーナスゲームの実行期間内に多量のメダルが払い出されることになる。
[11−3.遊技状態の遷移]
図94は、メイン基板409に搭載されたCPU1110により実行される遊技状態移行制御処理の処理手順を示すフローチャートである。
先ず、ボーナスゲーム(CBゲーム)中であるか否かが判断され(ステップS151)、ボーナスゲーム中であると判断された場合は(ステップS151のYES)、当該ボーナスゲームの終了条件が満たされたか否かを確認する(ステップS152)。ボーナスゲームの終了条件が満たされていない場合は(ステップS152のNO)、ボーナス中の遊技状態が維持されたままリターンする。
ステップS152でボーナスゲームの終了条件が満たされた場合は(ステップS152のYES)、ボーナスゲームが終了し、一般状態に移行される(ステップS153)。一般状態では、一定期間にわたってゲームを実行したときに、この一定期間内に、ゲームの結果として払い出されるメダル枚数よりも遊技者がゲームを実行するために賭けるメダル枚数の方が多くなる。すなわち、一般状態は、遊技者がゲームを実行すると、それに伴ってメダル枚数が減少していく遊技状態である。
ステップS151においてボーナスゲーム(CBゲーム)中でないと判断されると(ステップS151のNO)、ボーナス内部中(ボーナス内部状態)であるか否かが判断される(ステップS154)。すなわち、内部抽選においてボーナス役(CB)に当選すると、ボーナス役に対応する条件装置が作動するが、このボーナス役に対応する条件装置は、内部抽選に当選したゲームにおいてボーナス役に対応する図柄組合せが有効ラインに表示されなかったとしても、次ゲーム以降においても、ボーナス役に対応する図柄組合せが有効ラインに表示されるまで継続して作動する。
ステップS154でボーナス内部状態であると判断された場合は、その後、ボーナス役に対応する図柄組合せが有効ラインに表示されたかの判断が行われる(ステップS155)。ステップS155でボーナス役に対応する図柄組合せが有効ラインに表示されたと判断されると(ステップS155のYES)、遊技状態がボーナス中(ボーナス状態)に移行し(ステップS156)、ボーナスゲームが実行される。また、ステップS155で否定結果が得られた場合は(ステップS155のNO)、ボーナス内部中の遊技状態が維持されたままリターンする。
一方、ステップS154においてボーナス内部状態ではないと判断されたときは、内部抽選でボーナス役(ここではCB、又はCBを含む重複役)に当選したか否かが判断される(ステップS157)。ステップS157においてボーナス役に当選したと判断された場合は(ステップS157のYES)、遊技状態がボーナス内部状態に移行する(ステップS158)。なお、ボーナス役に当選したゲームでボーナス役に対応する図柄組合せが有効ラインに表示された場合は、ボーナス内部状態でのゲームは行われず、遊技状態がボーナス状態に制御されてボーナスゲームが実行される。また、ステップS157においてボーナス役に当選しなかったと判断された場合は(ステップS157のNO)、一般状態に制御された遊技状態のままリターンする。
ところで、本実施形態のスロットマシン1では、前述したとおり、メイン基板409から内部抽選の結果情報が情報コマンドとして演出制御基板510のCPU1118に向けて出力される。メイン基板409から出力された内部抽選の結果情報を受信した演出制御基板510のCPU1118は、この結果情報に基づいて、例えば画像表示体500又は/及びスピーカ512を用いた演出を実行する手段を備える。
また、前述したように、本実施形態のスロットマシン1はAT機能を備えているが、以下では一例として、演出制御基板510のCPU1118が、各ゲーム内の所定のタイミングでAT抽選を行うとともに、ATゲームを実行する遊技期間(ATゲーム数)を決定するものとする。なお、本実施形態のスロットマシン1において、ATに関する制御(AT抽選やATゲームの上乗せ機能に係る抽選等)は、演出制御基板510による制御に限定されるものではなく、例えば、メイン基板409(特にCPU1110)によって制御されるようにしてもよい。
AT抽選におけるATの当落判定は、例えば、内部抽選で選ばれた当選役に基づいて行われる。このとき、当選役の種別や、図柄表示領域に停止表示された図柄組合せに応じて、AT当選への期待度に差異が設けられることが一般的である。
当選役の種別によるAT当選への期待度については、例えば、内部抽選で選ばれた当選役について、「強ベル」>「中段チェリー」>「強チェリー」>「強チャンス」>「弱チャンス」>「弱スイカ」>「押し順ベル」>「リプレイ」の順で、AT当選への期待度を高く設定する。また、図柄組合せによるAT当選への期待度については、例えば、図柄表示領域に停止表示された図柄組合せについて、「赤7図柄揃い」>「青7図柄揃い」>「BAR図柄揃い」「ベル図柄中段揃い」>「スイカ図柄揃い」>「リプレイ図柄揃い」の順で、AT当選への期待度を高く設定する。なお、上記例を組み合わせてAT当選への期待度に差異を設けるようにしてもよい。また、内部抽選の結果に基づくのではなく、別の抽選基準に基づいて、AT当選への期待度を判定するようにしてもよい。
また、ATゲーム数は、ATゲームの開始時に決定されるようにしてもよいし、さらに、ATゲーム中にATゲーム数が追加(上乗せ)される機会が提供されるようにしてもよい。上乗せされる機会が提供されるときの内部処理としては、例えば、上乗せの可否に関する判定(上乗せ可否判定)が行われ、その後、上乗せするゲーム数に関する判定(上乗せ数判定)が行われる。なお、上乗せ可否判定や上乗せ数判定の判定結果に対する期待度は、AT抽選での当選期待度と同様に、内部抽選で選ばれた当選役に基づいて差異を設けるようにしてもよいし、その他の判定基準を設けてもよい。
そして、ATゲームの実行時には、内部抽選で押し順小役が当選役として選ばれた場合を中心に、最も多いメダルの払出に期待できる適正な押し順を教示する。このとき、演出制御基板510のCPU1118は、メイン基板409から受信した内部抽選の結果情報を含むコマンドに基づいて、内部抽選で選ばれた当選役に対するリール停止ボタン211a〜211cについての適正な押し順を把握し、このリール停止ボタン211a〜211cについての適正な押し順を、例えば画像表示体500又は/及びスピーカ512を用いた演出により教示(明示)させる。
具体的には、図63に示した役番号31〜46(又は47〜54)のベル役が当選役として選ばれた場合に、適正な押し順が教示され、当該適正な押し順に従ってリール停止ボタン211a〜211cの停止操作が行われると、ベル図柄揃いが図柄表示領域に停止することになる。結果として、前述した「ばらけ目」や「零し目」の停止を抑制でき、最も多いメダルの払出に期待できるようになる。このような適正な押し順の教示演出は、原則としてATゲーム中に限定して実行され、ATゲーム以外(非ATゲーム)の遊技期間では当該教示演出は実行されないため、ATゲームは、非ATゲームに比べて、遊技者にとって有利な遊技といえる。
また、AT当選時やATゲーム中は、遊技者に向けてその遊技状況を認識(識別)できる態様にて実行させる。具体的には、ATに当選したことやATゲーム中であることの表示(画像表示体500等による)や、効果音(スピーカ512等による)により識別可能なものとする。
なお、ATゲームの実行は、基本的には、メイン基板409によって制御される遊技状態(図94に示した遊技状態)とは別系統で制御される。すなわち、一般状態及びボーナス内部状態の何れの遊技状態においても、ATゲームを実行することができる。但し、規則等の制限に抵触する場合はその限りではなく、例えば、ボーナス状態ではATゲームを実行できないとする。
このように、本実施形態のスロットマシン1では、一般状態、ボーナス内部状態、又はボーナス状態のうち何れかの遊技状態に制御され、これらの遊技状態とは別に、ATゲームの遊技期間が制御される。
なお、スロットマシン1には複数の設定値(例えば、設定値1から4までの4段階)を設けている(それぞれ図示はしない)。そして、それぞれの設定値では内部抽選確率に格差(段階的な差、極端な差など)がつけられている。この設定値は、設定値1<設定値2<設定値3<設定値4、というように設定値が高くなるほど、ボーナス当選役の内部抽選確率やAT当選率等の抽選確率が優遇されるようにするとよい。このように段階的な設定値を設けることにより、設定値ごとに特徴を持たせて遊技者が設定値の推測する際の手掛かりとしたり、ホール等の経営に合わせた設定値にてスロットマシン1の運用をしたり、といったことが可能となる。なお、上記のような設定値に限られることはない。
[11−4.リール停止処理]
始動処理が終了すると、一定速度で回転を続けているリールを停止させるための操作(停止操作、つまりリール停止ボタン211a,211b,211cの押下操作)待ちの状態となる。図95では、一例として「テーブル方式」によるリール停止処理の内容を示している。以下では、リール停止制御の処理の流れを説明する。
リール停止処理では、まずステップS201で、当該ゲームでの内部抽選の結果に対応して作動した条件装置にしたがってリール停止制御テーブルを選択する。このリール停止制御テーブルは予め全ての条件装置に1対1で対応するパターンが用意されており、これらは読み出し専用のテーブルデータとしてメイン基板409のROM1112に格納されている。
上記のステップS201にて成立している条件装置に基づいてリール停止制御テーブルが選択された状態になると、各リール停止ボタン211a,211b,211cの押下操作が受け付けられるまで待ち受け状態となる(ステップS202,S210,S217)。これらの待ち受け状態で、左リール301a、中リール301b、右リール301cの各リールがすでに停止しているか否か、あるいは第1リール停止フラグがONとなっていない状態(F=0、つまりOFFの状態)であるか否かを判定するとともに、合わせてリール停止ボタン211a,211b,211cのいずれかが押下されたかについても判定する。全てのリール停止ボタン211a,211b,211cの押下操作が受け付けられるまでは、ステップS209の判定が満たされず、ステップS202以降の処理を繰り返す。
ここで、リール停止ボタン211a,211b,211cの押下操作の受け付けられた順番(停止操作手順)は、前述したように、第1に押下操作が行われたリール停止ボタン211に着目した場合は「順押し」、「中押し」、「逆押し」の3通りに分けられ、各リール停止ボタン211に対する押下操作の順番で見た場合は、「左順押し」、「左挟み押し」、「中順押し」、「中逆押し」、「逆挟み押し」、「逆順押し」の6通りに分けられる。
ステップS202では、左リール301aが停止状態となったことを示すフラグ(左リール停止フラグLF)がOFF(LF=0)であり、なおかつ、左リール停止ボタン211aの押下操作が受け付けられたかを判定する。ステップS201で、リール停止ボタン211a,211b,211cの押下操作の待ち受け状態から「順押し」の停止操作手順に沿って最初(第1番目)に左リール停止ボタン211aが押下されたとすると、ステップS202の判定が満たされ、ステップS203に移る。
ステップS203では、第1リール停止フラグがOFF(F=0)であるか判定する。ここでいう「第1リール」とは第1番目に停止操作が受け付けられる、あるいは第1番目に停止するリールのことをいう。この例(「順押し」)では、左リール301aの停止操作が第1番目に受け付けられるので、第1リール停止フラグがOFFの状態(F=0)となっている。従って、ステップS203の判定は満たされ、次のステップS204に移る。
次のステップS204では、左リール301aについて第1リール停止処理が行われる。この第1リール停止処理では、作動している条件装置に対応するリール停止制御テーブルに基づいて内部抽選フラグに対応する当選役図柄の停止位置の制御を実行する。
ステップS206では、残りの中リール301b、右リール301cのリール停止制御テーブルを決定する。前述のとおり、スロットマシン1の有効ラインは右上がりラインと右下がりラインとの2ラインのみであるため、この時点で残りのリール(中リール301b、右リール301c)の停止制御テーブルは1つに決定することができる。つまり、第1停止リール(この場合は左リール301a)の図柄表示窓524内の図柄(これを停止目と呼ぶ、以下同様)のうち特に上段位置または下段位置の図柄が当選役図柄となる可能性のある図柄であった場合、その該当図柄を基準とした有効ライン上に残りのリール(中リール301b、右リール301c)の該当当選役図柄を揃えることの可能なリール停止制御テーブルを選択することになる。
ステップS207では、第1リール停止フラグをON(F=1)として、次のステップS208に移る。
次いでステップS208では、左リール停止フラグLFをON(LF=1)として、ステップS209に移る。
そして、ステップS209では、全てのリール301a,301b,301cが停止状態となったかを判定する。この例では、まだ左リール停止フラグLFがONとなっただけであり、中リール301b及び右リール301cはまだ回転中であることから、この判定が満たされず、ステップS202に戻り以降の処理を繰り返し実行する。
そして、再びステップS202以降の処理が実行される場合、すでに左リール301aは停止状態となっているのでステップS202の判定は満たされず、ステップS210に移る。
ステップS210では、中リール301bが停止状態となったことを示すフラグ(中リール停止フラグMF)がOFF(MF=0)であり、なおかつ、中リール停止ボタン211bの押下操作が受け付けられたかを判定する。ここでは「順押し」の停止操作手順に沿うため、中リール停止ボタン211bの押下操作が受け付けられることとなる。従って、ステップS210の判定が満たされ、次のステップS211に移る。
ステップS211では、上記のステップS203と同様に第1リール停止フラグがOFF(F=0)であるか判定する。そして、この時点ではすでに第1リール停止フラグはON(F=1)となっているため、この判定が満たされず、ステップS213に移る。
ステップS213では、中リール停止処理として、作動している条件装置に対応するリール制御テーブル(この場合は上記のステップS206で決定したリール停止制御テーブル)に基づいて該当当選役図柄の停止位置の制御を実行する。そして、このとき中リール301bは第2番目に停止するリール(第2リール)となり、ステップS212,S214,S215は全て迂回され、ステップS216に移り、中リール停止フラグMFをON(MF=1)としてステップS209に移る。
そして、再度ステップS209では、左リール301a及び中リール301bが停止状態となっただけであり、まだ右リール301cは回転中で停止状態(右リール停止フラグRFがOFFとなっている)となっていないので、この判定が満たされず、ステップS202に戻り、再度以降の処理を繰り返し実行する。
さらに、3度目のステップS202以降の処理では、先ずステップS217で右リール停止フラグMFがOFF(MF=0)であり、なおかつ、右リール停止ボタン211cの押下操作が受け付けられたかを判定していくことになるが、以降のステップS218,S220等の処理は、上記のステップS210以降の処理(ステップS211,S213)と同様であるため詳細な説明は省略する。
そして、ステップS223にて、右リール停止フラグRFをON(MF=1)として、ステップS209に移る。
最後にステップS209では、この時点において、全てのリール301a,301b,301cが停止状態となっていることから、この判定が満たされ、リール停止処理が終了する。
なお、「中押し」の停止操作手順の場合も上記と同様の説明ができるため詳細は省略する。ただし、「逆押し」の停止操作手順の場合は上記の説明と一部異なる点があるため、以下に説明する。
「逆押し」の停止操作手順で、上記の「順押し」あるいは「中押し」の停止操作手順と異なる点は、ステップS221(第1リール停止処理の後に残りのリール停止制御テーブルの決定)についてである。すなわち、「逆押し」の停止操作手順では、右リール301cのみが停止状態となり、なおかつ、右リール301cの停止目のうち、下段位置にいずれかの当選役図柄があった場合、まだ2つの有効ラインのいずれにも該当当選役図柄を揃えることが可能である。従って、ステップS221の段階では、いずれの有効ラインにも該当当選役図柄を揃えることのできるリール停止制御テーブルを複数用意しておき、いずれかを選び出すものとすればよい。
[11−4−1.リール停止制御]
上記のリール停止処理では、成立フラグに対応した当選役図柄(該当当選役図柄)を極力図柄表示窓524内に引き込むリール停止制御を行う(いわゆる、引き込み制御といわれる)。具体的には、遊技者によるリールの停止操作が受け付けられた時点で、図柄表示窓524内に停止させることが可能な範囲(該当当選役図柄を引き込むことが可能な範囲、例えば、図柄4個分)を予め決めておき、その範囲内に該当当選役図柄がある場合、これを図柄表示窓524内に引き込んでリールを停止させる制御を実行する。なお、ここでいう「引き込むことが可能な範囲」とは、リールの停止操作が受け付けられてから当該リールが停止するまでに、リールの回転方向にみて移動が可能な図柄の最大数のことをいう。例えば、引き込み可能な範囲を最大で図柄4個分とすれば、当該リールの停止操作が受け付けられた場合、その位置を基点にしてさらに図柄4個分までリールの回転移動が可能となる。
従って、このようなリール停止制御によれば、リールの停止操作が受け付けられた時点で、図柄表示窓524内に該当当選役図柄がなかったとしても、該当当選役図柄が引き込み可能な範囲内にあれば、その該当当選役図柄を図柄表示窓524内にまで移動させたうえで停止させることが可能となる。また、この引き込み制御を行うことにより、遊技者は該当当選役図柄の目押しのタイミングが多少早かったとしても、引き込み可能範囲内に当該当選役図柄があれば、その当該当選役図柄を図柄表示窓524内に引き込んで停止させることができる。従って、取りこぼし(当該当選役図柄を揃えることができずに当該当選役に対応する遊技特典を獲得できずにその遊技特典が消滅してしまうこと)が生じることを極力抑えることができる。
本実施形態のスロットマシン1では、リプレイ役(役番号1〜30)、強ベル役(役番号55)、ボーナス専用役(役番号59)等に対応する条件装置が作動している場合には、遊技者の目押しを必要とせずに必ず該当当選役図柄を揃えることができる(前述の図46参照)。これは、リプレイ役、強ベル役(中段ベル揃い又はCBベル揃い)、ボーナス専用役(中段ベル揃い)等のそれぞれに対応する図柄組合せ(例えば、強ベル役の場合は、中段ベル揃い又はCBベル揃い)を構成する図柄について、対応するそれぞれの当選役図柄が最大で4個分の図柄おきに配置されているからである。
例えば、所定のリプレイ役の当選時にリプレイ図柄が中段に揃うとするとき、リプレイ図柄について着目すると、左リール301a上では、リプレイ図柄からリプレイ図柄までのあいだに他の図柄が最大で4個分配置されている(図46参照)。これにより、左リール301aでは、リールのどの位置で停止操作が受け付けられても、リプレイ役に対応する条件装置が作動している限り、必ずリプレイ図柄を有効ライン上のいずれかに引き込んで停止させることができる。
また、内部抽選の結果がボーナス役と小役との重複役である場合は、ボーナス図柄よりも小役を優先的に引き込むものとしている。ボーナス役と小役との重複役に当選した場合、この当選したゲームにおいては小役に対応する図柄組合せが表示されたとしても、当該ボーナス役の成立状態が次ゲーム以降に維持され、次ゲーム以降の小役(又はリプレイ役)が成立しなかったゲームにおいて、当該ボーナス役に対応する図柄組合せが表示される。
以上がテーブル方式によるリール停止処理の一例である。これとは別にコントロール方式によるリール停止処理があるが、これについても公知の処理を適用可能であるため、ここでは具体的な説明を省略する。また、本実施形態においてコントロール方式またはテーブル方式のいずれのリール停止処理を実行してもよく、どの方式を採用するかは制御プログラムを構築するにあたって適宜決定すればよい。
[11−5.判定処理]
リール停止処理が終了すると、メイン基板409は、図柄表示窓524内にていずれかの有効ライン上に当選役図柄が揃っているか(いずれかの当選役に該当する図柄の組合せ態様が表示されているか)否かについて判定を行う。図96では、この判定処理の内容を具体的に説明する。
リール停止処理により全てのリール301a,301b,301cが停止した状態となると、図柄表示窓524内の停止目の態様から、いずれかの有効ライン上に当選役図柄が揃っているか(当選役に対応する図柄の組合せ態様が表示されているか)否かを判定する。なお、特に全てのリール301が停止状態となった場合の停止目は停止出目と呼ばれる。
まず、ステップS301では、ボーナスゲーム中であるかを判定する。これは、所定のゲーム状態フラグ(例えばCBゲーム中フラグ)のON状態(=1)、OFF状態(=0)を判定することである。CBゲーム中フラグがON(=1)となっていると、ステップS301の判定が満たされるので、ステップS302の処理に移行する。また、CBゲーム中フラグがOFF(=0)となっていると、ステップS301の判定が満たされず、ステップS312の処理に移行する。
ステップS302では、有効ライン上に停止した図柄組合せがボーナス図柄(ボーナス役に対応する図柄組合せ)であるか否かを判定する。図柄組合せの判定を具体例で説明すると、例えば、ボーナスとして図63等に示したCB(役番号60)を考えた場合、CBに対応する図柄組合せとは「青7−BAR−BAR」の図柄並びであり(図68の条件装置「CB」参照)、中段ライン上にこのような図柄並びが停止しているときに、CB図柄(ボーナス図柄)が停止したと判定できる。このようにして、ボーナス図柄の図柄組合せが有効ライン上に停止したと判定した場合は(ステップS302のYES)、ボーナスゲームの開始に関するボーナスゲーム開始処理を行い(ステップS303)、その後、処理を終了する。ボーナスゲーム開始処理については、図97を参照して後述する。一方、ステップS302において有効ライン上に停止した図柄組合せがボーナス図柄ではないと判定した場合は(ステップS302のNO)、ステップS304の処理に移行する。
ステップS304では、有効ライン上に停止した図柄組合せがリプレイ図柄(リプレイ役に対応する図柄組合せ)であるか否かを判定し、リプレイ図柄であると判定した場合は、リプレイゲーム処理を実行する(ステップS305)。このリプレイゲーム処理では、当該ゲームでのベット数と同じベット数(この例ではMAXベット)にて次回のゲームを開始させるために、MAXベットコマンドをRAM1114に一旦記憶させる。このコマンドに基づき、次回のゲームを再遊技として開始させることができる。ステップS305の処理後は、リプレイ当選フラグをOFF(=0)にして(ステップS306)、処理を終了する。
ステップS304において有効ライン上に停止した図柄組合せがリプレイ図柄ではないと判定した場合は(ステップS304のNO)、次なる判定処理として、当該図柄組合せが小役図柄(小役の入賞を示す図柄組合せ)であるか否かを判定する(ステップS308)。ステップS308で小役図柄であると判定した場合は、ステップS309の処理として、揃っている小役図柄に応じた規定枚数のメダルの払い出しを実行する(メダル放出装置110より規定枚数のメダルを払い出す)。そして、メダルの払出枚数を表示する(払出枚数表示LED612に表示する)。これにより、遊技者には当該小役に対応した規定枚数のメダルが払い出されたことが報知(告知、表示)される。そして、ステップS309の処理が終了した後は、該当する小役当選フラグをOFF(=0)にして(ステップS310)、処理を終了する。
ステップS308において有効ライン上に停止した図柄組合せが小役図柄ではないと判定した場合(ステップS308のNO)、上記のステップS302,S304,S308のいずれの判定も満たされず、有効ライン上にはいずれの当選役図柄も揃っていない。なお、このときの出目は「ハズレ目(バラバラな図柄の組合せ態様)」とも呼ばれる。このような場合には、ハズレ処理を実行する(ステップS311)。ハズレ処理では、この時点でON(=1)状態となっている当選フラグがボーナスを除く他の当選フラグの場合、当該当選フラグをOFF(=0)にする。また、いずれの当選フラグもON(=1)となっていない場合(このときはハズレフラグがON(=1)となっている)には、ハズレフラグをOFF(=0)にする。ステップS311のハズレ処理の後は、判定処理を終了する。
上記のステップS302からステップS311までの処理は、遊技状態が一般状態又はボーナス内部状態に制御されている場合に実行する処理となる。次に、ステップS301の判定が満たされなかった場合に行われるステップS312以降の処理について説明する。ここでの処理は、遊技状態がボーナス状態に制御されたボーナスゲーム(例えばCBゲーム)中に実行する処理である。
ステップS312では、有効ライン上にボーナスゲーム時払出図柄が揃っているかを判定する。ここでいう「ボーナスゲーム時払出図柄」とは、ボーナスゲーム中に揃うことでメダルの払出が行われる図柄組合せの総称を意味し、具体的には、ボーナスゲーム時払出役(本例では、ボーナス専用役)に対応する図柄組合せである。ステップS312で肯定判定が得られた場合は、揃っているボーナスゲーム時払出図柄に応じた規定枚数のメダルの払出処理を実行する(ステップS313)。メダルの払出処理では、メダル放出装置110より規定枚数のメダルを払い出すとともに、メダルの払出枚数を払出枚数表示LED612に表示する。このようなメダルの払出処理によって、遊技者には当該ボーナスゲーム時払出役に対応した規定枚数のメダルが払い出されたことが報知(告知、表示)される。
ステップS313に次いで、ステップS314では、当該ボーナスゲームを終了させるか否かを判定するボーナスゲーム終了判定処理を実行し(詳細は図98を参照して後述する)、その後、判定処理を終了する。
ステップS312においてボーナスゲーム時払出図柄が停止していないと判定した場合は(ステップS312のNO)、当該成立フラグをOFF(=0)にして(ステップS315)、処理を終了する。ステップS312でNOとなるパターンとしては、ボーナスゲーム時払出役に当選したが取り零した場合、及び、ボーナスゲーム時払出役に当選しなかった場合が考えられる。ステップS315の処理において、前者の場合は、ボーナスゲーム時払出役の成立フラグをOFFにし、後者の場合は、ハズレフラグをOFFにする。なお、本実施形態のスロットマシン1では、CBゲーム中には当選率100%でボーナス専用役に当選し、かつ、ボーナス専用役の当選時には取り零しなく当該役の入賞を可能とすることから、ステップS315の処理は行われない。
以上のステップS301〜S315の処理が、メイン基板409(特にCPU1110)によって行われる判定処理である。
一方、本実施形態のスロットマシン1では上述したようにAT機能を有しているため、1回の遊技ごとにATゲームに関する判定処理(ATゲーム判定処理)を行う必要がある。本実施形態では、演出制御基板510(特にCPU1118)がATゲームを制御するとしているため、ATゲーム判定処理も演出制御基板510によって行われる。ATゲームに関する諸決定事項(AT当選や上乗せ数等)は、内部抽選の抽選結果や停止図柄に基づいて決定されることが一般的であるため、演出制御基板510は、メイン基板409から送信されたコマンドに含まれる内部抽選の結果や停止図柄に関する情報に基づいて、ATゲーム判定処理を行う。また、ATゲーム判定処理が行われるタイミングとしては、例えば、メイン基板409による判定処理と並行して行うタイミングが考えられるため、図96では、参考までに、ステップS306,S310,S311,S314,S315の各処理の後にATゲーム判定処理が行われるように示されている(ステップS320)。なお、「ATゲームがメイン基板409によって制御される」とする場合は、図96で示したステップS320の所で、メイン基板409がATゲーム判定処理を行うようにすればよい。ATゲーム判定処理の詳細については、図99を参照して後述する。
[11−5−1.ボーナスゲーム開始処理]
前述の図96のステップS302の判定が満たされた場合、ボーナスゲーム開始処理を実行する。このボーナスゲーム開始処理について図97を用いて説明する。
まず、ステップS401では、ボーナスフラグ(例えばCBフラグ)がON(=1)となっているかを判定する。ステップS401の判定が満たされると、ステップS404に移る。ステップS404では、ボーナスゲーム中フラグをON(=1)にするとともに、ボーナスフラグをOFF(=0)にする。次いでステップS406にて、ボーナスゲーム中の累計払出枚数カウントをクリアする。これにより、次のゲームから累計払出枚数の累算が実行される。そして、次ゲームからは、ボーナスゲームの規定数(本例ではCBゲームの規定数は2枚)のベット数でボーナスゲームが開始される。
また、ステップS401の判定が満たされない場合、ステップS402に移り、エラー処理を実行する。このような場合となるのは、ボーナスフラグがOFF(=0)であるにも関わらず、ボーナス図柄が揃ってしまうような場合が該当する。すなわち、何らかの不正な手段(例えば、ゴト行為)が行われたか、あるいはスロットマシン1に故障が生じたか、いずれかの場合に起こり得るものである。従って、エラー処理では、エラーランプ604の点灯や、その他前述のLED等にエラー発生を知らせる表示を行う。
[11−5−2.ボーナスゲーム終了判定処理]
続いて、前述の図96のステップS314のボーナスゲーム終了判定処理について図98を用いて説明する。
まず、ステップS451では、前述の図96のステップS313にてメダルの払い出しがあったことを受けて、ボーナスゲーム中の累計払出枚数に当該ゲームの払出枚数を加算する。
次にステップS452では、累計払出枚数がボーナスごとに規定された総払出枚数(CBの場合は40枚とする)を超えたか否かを判定する。このステップS452の判定が満たされない場合、ステップS454に移り、ボーナスゲーム中の累計払出枚数を表示する(払出枚数表示LED612等に表示する。なお、累計払出枚数は表示用のLED等を別途設けてこれに表示するものとしてもよい)。ここで、図63〜図68等に示した例によれば、本実施形態のスロットマシン1では、CBボーナス中に常にボーナス専用役に当選し、ボーナス専用役の当選時に基づいて作動する条件装置「専用ベル1」によって、対応する図柄組合せ(中段ベル揃い)が取り零すことなく停止されるため、結果として、CBボーナス中の毎ゲームで2枚のメダルが払い出される。したがって、このような場合に、CBボーナスの規定総払出枚数が40枚であることを考慮すると、CBゲームは20ゲーム継続した時点で終了条件を満足する。
一方、ステップS452の判定が満たされなかった場合は、ボーナスゲーム中フラグをOFF(=0)にし(ステップS460)、処理を終了する。
[11−5−3.ATゲーム判定処理]
ATゲームは、AT抽選でATに当選したことに基づいて実行されるゲームであり、所定の当選役に当選したゲーム時に、多くのメダルの獲得に期待できる押し順が教示(明示)される。ATゲーム判定処理は、このようなATゲームの開始、継続、並びに終了等に関する判定処理であり、ATの制御主体(例えば、演出制御基板510)によって行われる。以下では、図99を参照してATゲーム判定処理の一例を説明する。
まず、ATゲームの概要を説明する。ATゲームは、ATゲームの開始条件が成立した場合に開始され、ATの終了条件が成立するまでの間、以降のゲーム期間で継続して実行される。ATゲームの開始条件が満たされた場合には、所定の内部フラグ(ATゲーム開始フラグ)がON(=1)にされ、ATゲーム中は、別の所定の内部フラグ(ATゲーム中フラグ)がON(=1)にされる。なお、これらのフラグや後述するATゲーム数等の情報は、ATゲームを制御する基板内のメモリ(例えば、演出制御基板510のRAM1122)で保持されるとする。
ATゲーム開始フラグがONになる条件は、例えば、AT抽選でATに当選し、かつ、当該当選したATの開始条件が成立することとする。
AT抽選は、所定の条件が成立したことに基づいて行われる。遊技状態の遷移の説明でも述べたが、本実施形態のスロットマシン1では、内部抽選の結果(さらには、図柄表示領域に停止表示された図柄組合せを含む)に基づいて、ATの当落が決定される。具体的には例えば、内部抽選(役抽選)において「強ベル」や「中段チェリー」が当選役として選ばれた場合に、高い確率でAT当選を決定する。また、同じ種類の当選役のなかでもAT当選率に差異を設けるようにして、例えば、リプレイ役のうち「赤BB」や「青BB」の当選時には必ずAT当選するようにしてもよい。
また、当選したATの開始条件は、例えば、AT当選すると同時に条件成立する(次ゲームからAT開始可能)としてもよいし、所定ゲーム期間(例えば16ゲーム)の経過を経た場合に条件成立する(所謂、前兆期間を経てからAT開始可能)としてもよいし、更には他の諸条件が設定されてもよい。
図99のステップS501では、ATゲーム判定処理の最初の処理として、ATゲーム開始フラグがON(=1)であるか否かを判定する。ATゲーム開始フラグがONであった場合は(ステップS501のYES)、AT開始時のATゲーム数をセットし(ステップS502)、ATゲーム中フラグをON(=1)にする(ステップS503)。AT開始時のATゲーム数は、固定ゲーム数が予め設定されるようにしてもよいし、AT当選時にゲーム数が抽選されてもよいし、その他の方法によって決定されてもよい。その後、ATゲーム開始フラグをOFF(=0)にして(ステップS504)、処理を終了する。
このようなステップS502〜S504の処理が行われることで、次ゲームからATゲームが開始される。なお、ATゲームの開始時には、ATゲームの開始、及びATゲーム数を遊技者に明示する演出が行われる。
一方、ステップS501でATゲーム開始フラグがONではなかった場合は(ステップS501のNO)、ATゲーム中フラグがON(=1)であるか否かを判定する(ステップS505)。ATゲーム中フラグがONであった場合は(ステップS505のYES)、ATゲーム中の1ゲームが行われたということであるから、ATゲーム数の値を「1」減算する処理を行う(ステップS806)。
ここで、本実施形態のスロットマシン1では、ATゲーム開始時に決定された開始時ゲーム数とは別に、ATゲーム中に所定の条件を満たしたことに基づいて、ATゲーム数を追加する上乗せ機能を有しているとする。ATゲーム数の上乗せが行われる際は、所定の内部フラグ(上乗せフラグ)がON(=1)にされるとともに、追加されるATゲーム数(上乗せゲーム数)が決定される。なお、上乗せが決定される条件は特に限定せず、役抽選における特定の当選役の当選であってもよいし、別の何らかの抽選結果に基づいて決定される等してもよい。また、上乗せゲーム数の決定方法についても、特段の方法に限定しない。そして、以下のステップS507〜S509の処理は、ATゲーム数の上乗せ機能を有する場合に行われる処理である。
まず、ステップS507では、上乗せフラグがON(=1)であるか否かを判定する。上乗せフラグがONであった場合は(ステップS507のYES)、現在のATゲーム数に上乗せゲーム数を加算する処理を行い(ステップS508)、上乗せフラグをOFF(=0)にする。この結果、残りのATゲーム数が上乗せ分だけ増加することになり、遊技者にとって有利なATゲームの継続期間が延長される。
ステップS509の処理後(上乗せ機能を有しない場合は、ステップS506の処理後)、現在のATゲーム数が「0」であるか否かを判定し(ステップS510)、「0」であった場合は、ATゲームの終了条件を満たすことになるので、ATゲーム中フラグをOFF(=0)にして(ステップS511)、処理を終了する。なお、このとき、ATゲームの終了を遊技者に明示するだけでなく、一連のATゲームに関する情報(例えば、当該ATゲームにおける払出メダルの総数やATゲーム継続数等)も遊技者に明示するようにしてよい。
ステップS510の判定で、現在のATゲーム数が「0」ではなかった場合は(ステップS510のNO)、ATゲームの終了条件を満たしていないため、ATゲーム中フラグを変更せずに処理を終了する。その結果、以降のゲームでもATゲームが継続する。
[11−6.演出動作の制御]
以上は、主にメイン基板409による制御の例であるが、スロットマシン1では、ゲームの進行にあわせて演出制御基板510により各種演出動作の制御を実行する。これはメイン基板409から出力される各種コマンド(情報コマンド、出力信号)に基づいて、演出制御基板510(主にCPU1118等)にて実行するものである。前述の通りメイン基板449から出力された各種コマンドは、一旦、RAM1122に記憶される。そして、当該コマンドに基づき、予め用意された演出態様を選択し、実行するものである。このような演出態様は、演出態様データテーブル(図示しない)としてROM1120内に格納されており、当該コマンドに対応する演出態様が複数用意されている。
例えば、演出態様としては、当該ゲームのみで完結するもの(以下、単発演出態様という)や、複数のゲームにわたって行われるもの(以下、連続演出態様という)などが含まれる。このうち、単発演出態様には、当該当選フラグを示唆する演出(示唆演出、告知演出、詳細は後述)、メダルの払い出しを知らせる演出(払出演出、なお、払い出し枚数までを知らせる態様でもよい)などがある。
示唆演出は、遊技者に当該当選フラグを直接的に知らせる演出(告知演出)とは異なり、当該当選フラグを間接的に知らせる演出のことをいう、例えば、当該当選フラグに該当する当選役の形、色などを表現した表示等を行うといったことである。また、示唆演出は、当該当選フラグがない場合(つまり、ハズレの場合)にも行われる。この場合には、ハズレであることを気付きにくい内容の演出とする(例えば、いずれの当選役とも取れるような曖昧な内容)。これにより、当該ゲームがハズレであることを遊技者に気付きにくくすることができる。
告知演出は、例えば、当該当選フラグがボーナス役であった場合やAT抽選でAT当選した場合等に、「ボーナス確定!」や「AT当選!」等、遊技に関する結果を遊技者に明確に知らせることのできるものである。この演出は、特にボーナスやATなど遊技者にとって喜ばしい当選役(メダルを大量に獲得できる可能性があるため)について実行させるとより効果的である。すなわち、遊技者がAT等に当選した際に、そのことを祝福する意味合いを持たせることができるからである。
また、連続演出態様としては、一般状態、ボーナス内部状態、ボーナス状態等の遊技状態に対応したものがある。これらは、遊技状態がどのようになっているかを明確にするものであり、遊技者はこれらの演出(連続演出)が行われることにより、現在の遊技状態が、例えば一般状態であるのかボーナス内部状態であるのか、といった区別を付けることが容易となる。
以上が、本実施形態のスロットマシン1における基本的なゲーム処理である。
[12.図柄表示領域の変更]
以下では、本実施形態のスロットマシン1に特有の演出動作として、図柄表示領域の変更について詳しく説明する。
[9]等で述べたように、本実施形態のスロットマシン1は、遊技中に所定の条件(以下、「枠変動条件」と呼ぶ)を満たした場合にリール表示装置520の可動枠522が移動されることにより、遊技者から視認可能な図柄表示領域を、「基本表示領域」から「変更後の図柄表示領域」に変更することができる。なお、ここでいう可動枠522の「移動」には、可動枠522の移動の前後で図柄表示領域(図柄表示窓524)の形状や面積が変更される「移動」(別の言葉でいえば「変形」)が含まれる。そして、以後の説明において、特段の指定がない限りは、可動枠522の「移動」は、上記「変形」を含むものとする。
なお、可動枠522の移動によって図柄表示領域を変更するタイミングは、特別なタイミングに限定されるものではなく、遊技を通じて任意のタイミングを設定できるとする。例えば、始動レバー210に対する開始操作に基づいてリール301a〜リール301cが回転を始めたタイミングであったり、リール301の回転中であったり、一部又は全てのリール301が停止したタイミングであったり、リール停止ボタン211への押下操作が行われたタイミングであったりすることができる。また、可動枠522が移動される「枠変動条件」についても、様々な条件設定が可能であり、枠変動条件の具体的な条件設定を定めたデータは、リール表示装置520を制御する基板に搭載されたメモリ(例えば、演出制御基板510のROM1120)に予め格納される。そして、枠変動条件の判定が行われた直後に可動枠522の移動(図柄表示領域の変更)を開始させるようにしてもよいし、枠変動条件の判定を行うタイミングと、当該判定結果に基づいた図柄表示領域の変更タイミングとの間に、所定の時間差を設けるようにしてもよい。
本実施形態のスロットマシン1における図柄表示領域は、可動枠522の可動性(移動量、移動方向、配置場所等)を変更することによって様々な変形態様を実現し得るが、何れの場合においても、当該変形に伴って、基本表示領域の枠外領域(枠外図柄表示領域)が新たに遊技者側に露出されることを特徴の1つとする。以下では、このような枠外図柄表示領域に着目しながら図柄表示領域の変更について説明する。
[12−1.枠外領域の開放度合い]
本実施形態のスロットマシン1によれば、可動枠522の移動に伴って枠外図柄表示領域が露出されることによって、一部の枠外図柄に対する遊技者による識別度合いを変更することができる。より具体的にいえば、図柄表示領域が枠外領域に広がることによって、当該枠外領域に位置するリール301に付された枠外図柄について、遊技者からの見え方を変えることができる。このような動作は、枠外領域の開放と呼べるものであり、以下ではまず、本実施形態における枠外領域の開放度合いについて説明する。
本実施形態のスロットマシン1において、可動枠522は、所定の枠外図柄の識別度合いを変更可能にする程度の移動幅を移動することによって、枠外領域を開放する。図100〜図103は、それぞれスロットマシンのリール表示窓付近の拡大図(その1〜その4)である。図100〜図103には、可動枠522(下可動枠部材522b)の移動に伴って基本表示領域の下方向に枠外領域を開放していく様子が例示されている。以下では、特に左リール301aの表示態様に注目して説明する。また、図104は、図101〜図103における枠下図柄の識別態様を説明するための図である。図104(A),(C),(E)に示した枠外図柄893は「赤7図柄」であり、図104(B),(D),(F)に示した枠外図柄894は「青7図柄」である。
図100は、可動枠522(下可動枠部材522b)の移動前、すなわち、図柄表示窓524で示される図柄表示領域が基本表示領域であるときの図柄の停止態様の一例を示している。そして、図101〜図103は、それぞれ下可動枠部材522bの移動後の図柄の停止態様の一例を示しており、それぞれで枠外領域の開放度合いが異なっている。
図100では、基本表示領域に停止した左列の3つの図柄として、上段から順に「スイカ図柄」、「ベル図柄」、「リプレイ図柄」が示されている。しかし、図46によれば、左列(リール301a)におけるこのような図柄の並びは、何通りか存在するため、図100の「リプレイ図柄」がリール301aに付されたどのリプレイ図柄であるか遊技者が知ることは困難である。換言すれば、図100の「リプレイ図柄」が配列番号3番,8番,13番,18番のどの「リプレイ図柄」であったとしても、図100に示した停止態様で図柄の並びが表示される。
図101では、枠外領域の開放度合いが最も小さい場合の一例として、枠外図柄の一部が視認可能に露出される程度で示される。具体的には例えば、可動枠522が、枠外図柄の縦幅の1/3以上を露出するだけの移動量で移動することによって、当該枠外図柄の存在を遊技者が認識し得るようにしている。なお、リール301に付された図柄の大きさは、図柄に応じて異なることがあるが、このような場合には、最も小さな縦幅の図柄を基準として、その1/3以上を露出するような移動量とすればよい。このような枠外領域の開放度合いを「開放度1」と呼ぶことにする。
開放度1の場合、図101に示したように、可動枠522(下可動枠部材522b)の移動によって、下段のリプレイ図柄の下側、すなわち、左列枠下領域に枠外図柄が見えるようになる。但し、図101に示された枠外図柄の表示態様は、「赤7図柄」か「青7図柄」の何れかという程度は識別できたとしても、その区別までつけることは難しい。
ここで、図104(A),(B)には、図101に示したように開放度1で枠外領域の開放が行われたときの左列枠下領域の拡大表示例が示されている。図104(A),(B)においては、開放度1で枠外領域が開放されることによって、左列枠下領域891のうち、当該領域に付された枠外図柄893(図104(B)では枠外図柄894)の縦幅に対してその2/3以下が可動枠522(下可動枠部材522b)によって隠された状態となっている。このような図104(A),(B)を比較すると、何れにおいても、何らかの枠外図柄が存在することは遊技者から識別可能であり、さらには、当該枠外図柄がおそらく「7図柄」であろうことまでは推測し得るため、枠外図柄を遊技者からおおむね識別可能にすることができる。しかし、図104(A),(B)に示された枠外図柄893,894の表示態様には差異がないことから、「赤7図柄」と「青7図柄」のどちらであるかを区別することは難しい。
次に、図102では、枠外領域の開放度合いが図101の場合よりも大きい場合の一例として、図柄の種類まで識別可能な程度で枠外図柄が露出される。具体的な移動量で例示すると、枠外図柄の縦幅の1/2以上を露出するだけの移動量とする。このような枠外領域の開放度合いを「開放度2」と呼ぶことにする。
開放度2の場合、図102に示したように、可動枠522(下可動枠部材522b)の移動によって、下段のリプレイ図柄の下側に枠外図柄が見えるようになるとともに、当該枠外図柄の種類が「赤7図柄」であることまで識別可能となる。
ここで、図104(C),(D)には、図102に示したように開放度2で枠外領域の開放が行われたときの左列枠下領域の拡大表示例が示されている。図104(C),(D)においては、開放度2で枠外領域が開放されることによって、左列枠下領域891のうち、当該領域に付された枠外図柄893(図104(D)では枠外図柄894)の縦幅に対してその1/2以下が可動枠522(下可動枠部材522b)によって隠された状態となっている。このような図104(C),(D)を比較すると、何れの枠外図柄も「7図柄」であることが遊技者から識別可能であり、さらに、「赤7図柄」と「青7図柄」との図柄態様の相違点まで露出されていることから、図104(C)の枠外図柄893が「赤7図柄」で、図104(D)の枠外図柄894が「青7図柄」であることまで識別可能となる。したがって、図102の場合は、左列枠下領域に図104(C)の表示態様で枠外図柄が露出されることで、遊技者は当該枠外図柄が「赤7図柄」であることを識別可能となり、その結果、下段ラインに配列番号3番の「リプレイ図柄」が停止していることを認識することができる。
次に、図103では、枠外領域の開放度合いが図102の場合よりもさらに大きい場合の一例として、図柄全体を視認可能な程度で枠外図柄が露出される。すなわち、可動枠522が通常の1コマ分(より具体的には、リール301を前面から見たときに図柄1個当りに割り当てられる縦幅であり、当該縦幅には図柄周囲の空白部分も含めて考えてよい)の移動量を基本表示領域の枠外側に移動することによって、直近の枠外図柄1個の全容を視認可能にする。このような枠外領域の開放度合いを「開放度3」と呼ぶことにする。なお、開放度3で枠外領域を開放する際、移動量は空白部分を含めた1コマ分を完全に確保する必要はなく、例えば、枠外領域に位置する1個の図柄が完全に視認可能にされる程度であればよい。
開放度3の場合、図103に示したように、可動枠522(下可動枠部材522b)の移動後の図柄表示領域には、基本表示領域における下段に表示されたリプレイ図柄のさらに下段に、新たな図柄(この場合は「赤7図柄」)が表示されることになる。そして、例えば、全リール301a〜301cにおいて、図103のように枠下側の図柄が1個ずつ露出される場合には、基本表示領域における下段ラインのさらに下に、水平方向の1ライン(枠下段ライン)が創出される。図103の例では、新たに識別可能に創出された枠下段ラインに、左列から順に「赤7図柄−青7図柄−赤7図柄」が表示されている。
図104(E),(F)には、図103に示したように開放度3で枠外領域の開放が行われたときの左列枠下領域の拡大表示例が示されている。図104(E),(F)においては、開放度3で枠外領域が開放されることによって、左列枠下領域891に付された枠外図柄893(図104(F)では枠外図柄894)は全て隠されていない露出状態となっている。このような図104(E),(F)を比較すると、図104(E)の枠外図柄893が「赤7図柄」で、図104(F)の枠外図柄894が「青7図柄」であることは、容易に識別可能である。したがって、図102の場合は、左列枠下領域に図104(E)の表示態様で枠外図柄が露出されることで、遊技者は当該枠外図柄が「赤7図柄」であることを識別可能となり、その結果、下段ラインに配列番号3番の「リプレイ図柄」が停止していることを認識することができる。
上記の図101〜図103に示した可動枠522の移動量(開放度1〜3)は、あくまで一例であるが、本実施形態のスロットマシン1では、このような移動量が設定されることによって、所定の開放度合いで枠外領域を開放し、枠外図柄の識別度合いを可変にする。
なお、本実施形態では、「赤7図柄」と「青7図柄」のように、異なる種類の図柄であっても、その一部が同一又は類似している図柄のことを「類似図柄」と呼ぶ。類似図柄は、それぞれの全容が明らかな場合には遊技者から識別可能であるが、相違部分の全て又は大部分が隠されているような場合には遊技者から識別することが難しい図柄となる。「赤7図柄」と「青7図柄」だけでなく、「プラム図柄(プラムa〜プラムc)」も類似図柄の関係にあると言える。また、図46に示した図柄ではないが、例えば、ベル図柄(図47参照)について、ベルの絵柄に描かれた星の数を変えて、複数種類のベル図柄を用意する場合等は、これらのベル図柄も類似図柄の関係にあると言える。
そして本実施形態のスロットマシン1で類似図柄が用いられる場合には、枠外領域の開放度合いに関して、開放度1〜開放度3の説明で上記したように枠外図柄や最も小さな縦幅の図柄を基準とするのではなく、類似図柄の相違点が視認可能(又は識別可能)に露出されるか否かを基準として各開放度に応じた移動量を設定してもよい。
具体的には例えば、類似図柄として図柄Aと図柄Bとがあるとして、上下何れかの方向から図柄A,Bの縦幅の20%以上が露出された場合に互いの相違点が識別可能になるとする。このとき、枠外領域の開放度合いを「開放度1」にするときは、上下何れかの方向から図柄A,Bの縦幅の20%未満となる移動量で枠外領域を開放するよう設定する。但し、枠外図柄の存在を識別可能な程度の移動量は確保する。このように設定した場合、図柄表示領域の変更によって、枠外図柄に対する遊技者の識別度合いを変化させることができる。また、枠外領域の開放度合いを「開放度2」にするときは、前記縦幅の20%以上となる移動量で枠外領域を開放するように設定する。このように設定した場合、図柄表示領域の変更によって、枠外図柄に対する遊技者の識別度合いを変化させることができるとともに、当該枠外図柄を類似図柄と区別して明確に識別可能にすることができる。なお、「開放度3」の場合は、図柄A,Bの縦幅以上の移動量とすればよい。
また、一般的な回胴式遊技機では、円筒状のリールが用いられ、かつ、当該リールの前面に透過性を有する板状の表示パネル等が配置されるため、リールと表示パネルとの間を覗き込む等によって、通常の遊技時から枠外図柄の一部を視認可能なものもあった。しかし、このような一般的な回胴式遊技機においては、枠外図柄を覗き込むために遊技者の姿勢や視線方向を変える必要があり、そもそも、意識的に枠外図柄を覗き込むような状況以外では、遊技者にとって枠外図柄の存在価値は重要なものではなかった。
このような一般的な回胴式遊技機と比較すると、本実施形態のスロットマシン1は、枠外図柄を覗き込むような行動を遊技者にとらせることなく、図柄表示領域の変更によって枠外図柄の識別度合いを可変にするものである。
[12−2.図柄表示領域の変更態様]
次に、本実施形態のスロットマシン1における図柄表示領域の変更態様について説明する。本実施形態のスロットマシン1において、可動枠522の移動に伴う図柄表示領域の変更態様は、枠外図柄表示領域が新たに遊技者側に露出され、かつ、当該露出された枠外図柄表示領域に位置する枠外図柄の識別度合いが図柄表示領域の変更前とは異なることを必要条件とする。
以下では、枠変動条件が満たされた遊技において、枠外領域の開放度合いを開放度3とし、全てのリール301が停止した後に図柄表示領域が変更される場合について、いくつかの具体的な図柄表示領域の変更例を示す。なお、枠外領域の開放度合い、及び図柄表示領域の変更タイミングについては、前述してきた様々なパターンを組み合わせて実現可能である。例えば、リール301が第1停止されたときを図柄表示領域の変更タイミングとして、開放度2で枠外領域を開放する等してもよい。
(1)図柄表示領域の第1の変更例
図105は、図柄表示領域の第1の変更例を説明するための図である。図105(A)〜(D)には、表示領域の形状を変えることなく図柄表示領域が変更され、かつ、当該変更によって開放される枠外図柄領域が複数のリールに跨がる場合の停止例が示されている。具体的には、図105(A)〜(D)は、BAR_1当選時に左順押しで停止操作が行われたときの停止態様を示している。
まず、図105(A)〜(C)は、各リール停止ボタン211a〜211cへの停止操作に基づいた各リール301a〜301cの停止態様であるが、図71(A)〜(C)と同じであるので説明を省略する。図105(C)に示したように全リール301が停止した時点では、基本表示領域が図柄表示領域となっており、当該領域内には、中段ラインに「リプ1」の条件装置に対応する図柄組合せであるリプレイ図柄揃いの図柄組合せが表示されている。
そして、図105(C)の停止状態となった後、可動枠522の移動が行われて枠外の図柄表示領域が開放される(図105(D))。具体的には、可動枠522が、その形状を変えることなく、通常の枠位置から図柄1個分だけ上方に移動することによって、図柄表示領域は、それまでの図柄表示領域の形状(リール3本×図柄3段)を維持したまま、各リールにおいて図柄1個分(1ライン分)だけ枠上側の領域を表示するようになる。なお、図105のように移動する場合、可動枠522は、移動時に図柄表示領域の形状を変える必要がないため、固定的な枠型で形成されてもよい。
図105(D)において灰色の背景で示された領域は、可動枠522の移動によって開放された枠外の図柄表示領域に相当し、以降に示す別例の図でもこれは同様である。図105(D)に示すように、図柄表示領域が変更された結果、変更後の図柄表示領域では、基本表示領域における上段ラインよりも1段上に隠されていたライン(枠上段ライン)が露出され、当該露出されたライン上に位置する図柄(枠外図柄)の識別度合いが変化する。具体的には、図柄表示領域の変更前には遊技者からは識別できなかった枠上段に停止していた枠外図柄(全リールともスイカ図柄)が識別可能になり、変更後の図柄表示領域の上段ライン(基本表示領域の枠上段ライン)にスイカ図柄揃いの図柄組合せが識別可能に表示される。なお、基本表示領域の中段ラインにリプレイ図柄揃いが停止したときに枠上段ラインにスイカ図柄揃いが停止していることは、図46の配列図から確認することができる。
また、本実施形態のスロットマシン1では、図柄表示領域が変更されることによって、図柄表示領域内に表示される各表示ラインの対応関係が変化する。例えば、図105の場合、変形前の図柄表示領域(基本表示領域)における上段ライン及び中段ラインは、変形後の図柄表示領域においてそれぞれ中段ライン及び下段ラインとなり、基本表示領域の枠上段ラインが、変形後の図柄表示領域における上段ラインとなる。このような対応ラインの対応関係の変化は、以降に示す別例でも同様であり、基本的にその説明を省略する。
そして、このように表示ラインの対応関係が変化することによって、図柄表示領域内に表示される図柄組合せの表示ラインが変化する。具体的には例えば、図柄表示領域の変更前の図105(C)では、特徴的な図柄組合せとして中段ラインにリプレイ図柄揃いが表示されていただけであったのが、図柄表示領域の変更後の図105(D)では、下段ラインにリプレイ図柄揃いが移動して表示されるとともに、上段ラインにスイカ図柄揃いが新たに表示される。
なお、図105(D)の例では、図柄表示領域の形状が維持されるため、基本表示領域の下段ラインが隠されることになるが、このように、図柄表示領域の変更に伴って基本表示領域の一部を遊技者から視認不能にする場合には(以降に示す別例でも同様)、遊技結果が直接的に表示される有効ラインが当該部分に含まれないようにすることが好ましい。
(2)図柄表示領域の第2の変更例
図106は、図柄表示領域の第2の変更例を説明するための図である。図106(A)〜(D)には、表示領域の形状を変えることなく図柄表示領域が変更され、かつ、当該変更によって開放される枠外図柄領域が複数のリールに跨がる場合の停止例が示されている。具体的には、図106(A)〜(D)は、枠外1_A当選時に左順押しで停止操作が行われたときの停止態様を示している。なお、図105では枠上方向に図柄表示領域が変更されるときの停止例を示したが、図106では、枠下方向に図柄表示領域が変更されるときの停止例を示す。
まず、図106(A)〜(C)は、各リール停止ボタン211a〜211cへの停止操作に基づいた各リール301a〜301cの停止態様であるが、図76(A)〜(C)と同じであるので説明を省略する。図106(C)に示したように全リール301が停止した時点では、基本表示領域が図柄表示領域となっており、当該領域内には、中段ラインに「リプ5_1」の条件装置に対応する図柄組合せである「リプレイ−BAR−スイカ」が表示されるとともに、上段ラインにベル図柄揃いの図柄組合せが表示されている(ベルリプレイ)。
そして、図106(C)の停止状態となった後、可動枠522の移動が行われて枠外の図柄表示領域が開放される(図106(D))。具体的には、可動枠522が、その形状を変えることなく、通常の枠位置から図柄1個分だけ下方に移動することによって、図柄表示領域は、それまでの図柄表示領域の形状(リール3本×図柄3段)を維持したまま、各リールにおいて図柄1個分(1ライン分)だけ枠下側の領域を表示するようになる。なお、図106のように移動する場合、可動枠522は、移動時に図柄表示領域の形状を変える必要がないため、固定的な枠型で形成されてもよい。
図106(D)に示すように、図柄表示領域が変更された結果、変更後の図柄表示領域では、基本表示領域における下段ラインよりも1段下に隠されていたライン(枠下段ライン)が露出され、当該露出されたライン上に位置する図柄(枠外図柄)の識別度合いが変化する。具体的には、図柄表示領域の変更前には遊技者からは識別できなかった枠下段に停止していた枠外図柄(左列から順に、チェリー−スイカ−リプレイ)が識別可能になり、変更後の図柄表示領域の下段ライン(基本表示領域の枠下段ライン)に左列のチェリー図柄を含む図柄組合せが識別可能に表示される。なお、図106(C)の停止態様にあるときに、各列(各ライン)の枠下段に停止している図柄(左列から順にチェリー−スイカ−リプレイ)については、図46の配列図から確認することができる。
また、第1例で上述したように、図柄表示領域の変更に伴って表示ラインの対応関係が変化することによって、図柄表示領域内に表示される図柄組合せの表示ラインが変化する。具体的には例えば、図柄表示領域の変更前の図106(C)では、特徴的な図柄組合せとして上段ラインにベル図柄揃いが表示されていたのが、図柄表示領域の変更後の図106(D)では、左列下段にチェリー図柄が新たに現れることによって、チェリー図柄を含む図柄組合せが表示される。また、上段ラインには元の中段ラインにあった「リプレイ−BAR−スイカ」という図柄組合せが表示されることになり、ベル図柄揃いは遊技者から隠される。
(3)図柄表示領域の第3の変更例
図107は、図柄表示領域の第3の変更例を説明するための図である。図107(A)〜(D)には、図柄表示領域が一方向(例えば枠上方向)に拡張するように変更され、かつ、当該変更によって開放される枠外図柄領域が複数のリールに跨がる場合の停止例が示されている。具体的には、図107(A)〜(D)は、BAR_1当選時に中逆押しで停止操作が行われたときの停止態様を示している。
まず、図107(A)〜(C)は、各リール停止ボタン211a〜211cへの停止操作に基づいた各リール301a〜301cの停止態様であるが、図73(A)〜(C)と同じであるので説明を省略する。図107(C)に示したように全リール301が停止した時点では、基本表示領域が図柄表示領域となっており、当該領域内には、中段ラインに「リプ26_1」の条件装置に対応する図柄組合せである「ベル−スイカ−BAR」が表示されるが、それ以外に特徴的な図柄組合せは表示されない。
そして、図107(C)の停止状態となった後、可動枠522の移動が行われて枠外の図柄表示領域が開放される(図107(D))。具体的には、可動枠522が、通常の枠位置から他の部分は変形させずに、枠の左右部分を上方だけに図柄1個分だけ広げるように移動(変形)することによって、図柄表示領域は、それまでの図柄表示領域の形状(リール3本×図柄3段)から拡張し(リール3本×図柄4段)、それまでの基本表示領域に加えて、各リールにおいて図柄1個分(1ライン分)だけ枠上側の領域を表示するようになる。
図107(D)に示すように、図柄表示領域が変更された結果、変更後の図柄表示領域では、基本表示領域における上段ラインよりも1段上に隠されていたライン(枠上段ライン)が露出され、当該露出されたライン上に位置する図柄(枠外図柄)の識別度合いが変化する。具体的には、図柄表示領域の変更前には遊技者からは識別できなかった枠上段に停止していた枠外図柄(左列から順にBAR−ベル−ベル)が識別可能になる。このとき、新たに識別可能にされた左列の「BAR図柄」と、変更前に基本表示領域の中列上段及び右列中段に表示されていた「BAR図柄」とを結ぶことで、変更後の図柄表示領域において、左列最上段から右下がり方向への直線ライン(後述する「枠上右下がりライン」)にBAR図柄揃いの図柄組合せが識別可能に表示される。なお、図107(C)の停止態様にあるときに、各列(各ライン)の枠上段に停止している図柄(左列から順にBAR−ベル−ベル)については、図46の配列図から確認することができる。
また、第1例で上述したように、図柄表示領域の変更に伴って表示ラインの対応関係が変化することによって、図柄表示領域内に表示される図柄組合せの表示ラインが変化する。特に第3例では、形状が維持された第1例や第2例と違い、変更後の図柄表示領域の形状が各リールともに図柄1個分拡張されるため、表示ラインの対応関係の変化がより顕著になる。具体的には、図柄組合せが表示される表示ラインが変化するだけでなく、表示ラインの本数まで変化する。
図107(C)と図107(D)とを参照して、図柄表示領域の変化に伴う具体的な図柄の停止態様を比較すると、枠上段ラインの枠外領域が拡張されることによって、当該枠外領域に停止している枠外図柄が新たに識別可能にされるため、この枠外図柄を用いた表示ラインが追加されることになる。ここで追加される表示ラインは、例えば、枠上段を水平に結んでなる「枠上段ライン」、左列枠上段−中列上段−右列中段を結んでなる「枠上右下がりライン」、及び、左列中段−中列上段−右列枠上段を結んでなる「枠上右上がりライン」と呼ぶことができる。すなわち、図107(C)のときの5本の表示ライン(上段ライン、中段ライン、下段ライン、右下がりライン、右上がりライン)と比べて、図107(D)では3本の表示ラインが追加される(合計の表示ライン数は8本になる)。そして、図柄表示領域の変更前の図107(C)では、中段ラインに「リプ26_1」の条件装置に対応する図柄組合せが表示される以外に特徴的な図柄組合せは表示されていなかったが、図柄表示領域の変更後の図107(D)では、枠上右下がりラインにBAR図柄揃いの図柄組合せが新たに表示される。
(4)図柄表示領域の第4の変更例
図108は、図柄表示領域の第4の変更例を説明するための図である。図108(A)〜(D)には、図柄表示領域が双方向(枠上及び枠下方向)に拡張するように変更され、かつ、当該変更によって開放される枠外図柄領域が複数のリールに跨がる場合の停止例が示されている。具体的には、図108(A)〜(D)は、枠外1_A当選時に中順押しで停止操作が行われたときの停止態様を示している。
まず、図108(A)〜(C)は、各リール停止ボタン211a〜211cへの停止操作に基づいた各リール301a〜301cの停止態様であるが、図78(A)〜(C)と同じであるので説明を省略する。図78では省略していたが、図108では中段ライン以外の停止図柄も追加して、全ての停止図柄を記載している。図108(C)に示したように全リール301が停止した時点では、基本表示領域が図柄表示領域となっており、当該領域内には、中段ラインに「リプ12_3」の条件装置に対応する図柄組合せである「赤7−リプレイ−チェリー」が表示されるとともに、左列下段のチェリー図柄を含む図柄組合せが表示される。
そして、図108(C)の停止状態となった後、可動枠522の移動が行われて枠外の図柄表示領域が開放される(図108(D))。具体的には、可動枠522が、通常の枠位置から枠の左右部分を上下方向にそれぞれ図柄1個分だけ広げるように移動(変形)することによって、図柄表示領域は、それまでの図柄表示領域の形状(リール3本×図柄3段)から拡張し(リール3本×図柄5段)、それまでの基本表示領域に加えて、各リールにおいて枠上側及び枠下側にそれぞれ図柄1個分(1ライン分)の領域を表示するようになる。
図108(D)に示すように、図柄表示領域が変更された結果、変更後の図柄表示領域では、基本表示領域における上段ラインよりも1段上に隠されていたライン(枠上段ライン)と、基本表示領域における下段ラインよりも1段下に隠されていたライン(枠下段ライン)とが露出され、当該露出されたライン上に位置する図柄(枠外図柄)の識別度合いが変化する。具体的には、図柄表示領域の変更前には遊技者からは識別できなかった枠上段に停止していた枠外図柄(左列から順にベル−スイカ−赤7)と、枠下段に停止していた枠外図柄(左列から順にスイカ−チェリー−スイカ)とが識別可能になる。このとき、新たに識別可能にされた右列枠上の「赤7図柄」と、変更前に基本表示領域の左列中段及び中列上段に表示されていた「赤7図柄」とを結ぶことで、変更後の図柄表示領域において、左列中段から右列最上段までの右上がり方向への直線ライン(枠上右上がりライン)に赤7図柄揃いの図柄組合せが識別可能に表示される。なお、図108(C)の停止態様にあるときに、各列(各ライン)の枠上段に停止している図柄(左列から順にベル−スイカ−赤7)や枠下段に停止している図柄(左列から順にスイカ−チェリー−スイカ)については、図46の配列図から確認することができる。
また、第1例で上述したように、図柄表示領域の変更に伴って表示ラインの対応関係が変化することによって、図柄表示領域内に表示される図柄組合せの表示ラインが変化する。特に第4例では、第3例と同様に変更後の図柄表示領域の形状が拡張されるため、表示ラインの対応関係の変化がより顕著になる。具体的には、図柄組合せが表示される表示ラインが変化するだけでなく、表示ラインの本数まで変化する。
図108(C)と図108(D)とを参照して、図柄表示領域の変化に伴う具体的な図柄の停止態様を比較すると、枠上段ライン及び枠下段ラインの枠外領域が拡張されることによって、当該枠外領域に停止している枠外図柄が新たに識別可能にされるため、この枠外図柄を用いた表示ラインが追加されることになる。ここで追加される表示ラインは、枠上段ラインの図柄に関係する表示ラインとして「枠上段ライン」、「枠上右下がりライン」、「枠上右上がりライン」であり、枠下段ラインの図柄に関係する表示ラインとして、「枠下段ライン」、「枠下右下がりライン」、「枠下右上がりライン」である。すなわち、図108(C)のときの5本の表示ライン(上段ライン、中段ライン、下段ライン、右下がりライン、右上がりライン)と比べて、図108(D)では6本の表示ラインが追加される(合計の表示ライン数は11本になる)。そして、図柄表示領域の変更前の図108(C)では、中段ラインに「リプ12_3」の条件装置に対応する図柄組合せ(赤7−リプレイ−チェリー)が表示され、左列下段のチェリー図柄を含む図柄組合せが表示されていたが、図柄表示領域の変更後の図108(D)では、このような図柄組合せの他に、枠上右上がりラインに赤7図柄揃いの図柄組合せが新たに表示される。
(5)図柄表示領域の第5の変更例
図109は、図柄表示領域の第5の変更例を説明するための図である。第1〜第4の変更例は、図柄表示領域の変更によって全てのリールに跨った枠外図柄領域が開放される場合の停止例であったが、第5の変更例では、図柄表示領域の変更によって所定のリールでのみ枠外図柄領域が開放される場合の停止例を示す。具体的には、図109(A)〜(D)は、BAR_1当選時に中順押しで停止操作が行われたときの停止態様を示している。
まず、図109(A)〜(C)は、各リール停止ボタン211a〜211cへの停止操作に基づいた各リール301a〜301cの停止態様であるが、図72(A)〜(C)と同じであるので説明を省略する。図109(C)に示したように全リール301が停止した時点では、基本表示領域が図柄表示領域となっており、当該領域内には、中段ラインに「リプ24_1」の条件装置に対応する図柄組合せである「BAR−スイカ−プラムa」が表示されるが、それ以外に特徴的な図柄組合せは表示されない。
そして、図109(C)の停止状態となった後、可動枠522の移動が行われて枠外の図柄表示領域が開放される(図109(D))。具体的には、可動枠522が、右列(右リール301c)の枠位置だけを枠上方向に図柄1個分だけ広げるように移動(変形)することによって、図柄表示領域は、それまでの図柄表示領域の形状(リール3本×図柄3段)から、右列枠上に図柄1個(1段)分を追加した形状に変形され、その結果、それまでの基本表示領域に加えて、右列の枠上側に図柄1個分の枠外領域を表示するようになる。
図109(D)に示すように、図柄表示領域が変更された結果、変更後の図柄表示領域では、基本表示領域における右列上段の1段上に隠されていた枠外領域が露出され、当該枠外領域に位置する図柄(枠外図柄)の識別度合いが変化する。具体的には、図柄表示領域の変更前には遊技者からは識別できなかった右列枠上段に停止していた枠外図柄として、BAR図柄が識別可能になる。このとき、新たに識別可能にされた右列枠上の「BAR図柄」と、変更前に基本表示領域の左列中段及び中列上段に表示されていた「BAR図柄」とを結ぶことで、変更後の図柄表示領域において、左列中段から右列最上段までの右上がり方向への直線ライン(枠上右上がりライン)にBAR図柄揃いの図柄組合せが識別可能に表示される。なお、図109(C)の停止態様にあるときに、右列の枠上段にBAR図柄が停止していることは、図46の配列図から確認することができる。
また、第1例で上述したように、図柄表示領域の変更に伴って表示ラインの対応関係が変化することによって、図柄表示領域内に表示される図柄組合せの表示ラインが変化する。特に第5例では、第1〜第4例のように複数リールに跨ってライン状の枠外領域を開放するのではなく、特定のリールにおける所定の枠外領域(この場合、右リール301cにおける図柄1個分の枠上領域)を開放するだけであるが、このような場合であっても、図柄表示領域の形状を変化させるだけでなく、図柄組合せを表示可能な表示ラインをも変化させることができる。
図109(C)と図109(D)とを参照して、図柄表示領域の変化に伴う具体的な図柄の停止態様を比較すると、右列枠上の枠外領域が拡張されることによって、当該枠外領域に停止している枠外図柄が新たに識別可能にされるため、この枠外図柄を用いた表示ラインが追加されることになる。ここで追加される表示ラインは、左列中段から右列枠上までを結んでなる「枠上右上がりライン」である。すなわち、図109(C)のときの5本の表示ライン(上段ライン、中段ライン、下段ライン、右下がりライン、右上がりライン)と比べて、図109(D)では1本の表示ラインが追加される(合計の表示ライン数は6本になる)。そして、図柄表示領域の変更前の図109(C)では、中段ラインに「リプ24_1」の条件装置に対応する図柄組合せ(BAR−スイカ−スイカ)が表示される以外に特徴的な図柄組合せは表示されていなかったが、図柄表示領域の変更後の図109(D)では、枠上右上がりラインにBAR図柄揃いの図柄組合せが新たに表示される。
以上、図105〜図109を参照しながら、枠外領域の開放度合いを開放度3とする図柄表示領域の変更例を示したが、本実施形態のスロットマシン1における図柄表示領域の変更パターンは上記例に限定されるものではなく、可動枠522が移動可能な範囲内で任意の変更パターンを設定可能である。例えば、上記例を組み合わせた変形パターンにしてもよいし、開放する枠外領域の幅を図柄1段分ではなく2段分以上にする等してもよい。また、可動枠522の移動が実行されるための枠変動条件も1つである必要はなく、図柄表示領域の変形パターン(すなわち、可動枠522の作動パターン)が異なる複数の枠変動条件を用意して、成立した枠変動条件に基づいて図柄表示領域を変形させるようにしてもよい。
しかし、何れの変更パターンであっても、本実施形態のスロットマシン1による図柄表示領域の変更が行われると、所定の枠外領域が開放され、当該枠外領域に位置する枠外図柄の識別度合いを変化させることができる。
[12−3.旧表示領域からみた図柄表示領域の変更]
上述してきたように、本実施形態のスロットマシン1は、開放度2以上で枠外領域が開放されることによって、通常態様の図柄表示領域(基本表示領域に相当するが、以降では「旧表示領域」とも呼ぶ)が、枠外領域を含めた新しい図柄表示領域(「旧表示領域」に対して「新表示領域」と呼ぶ)に変更されるという特徴を備えている。
ここで、旧表示領域を基準にした場合、本実施形態のスロットマシン1による図柄表示領域の変更は、「旧表示領域が維持される図柄表示領域の変更」、又は「旧表示領域が破壊される図柄表示領域の変更」という特徴を備える。以下では、このような旧表示領域からみた図柄表示領域の変更について説明する。
[12−3−1.旧表示領域の維持]
本実施形態のスロットマシン1において、「旧表示領域が維持される図柄表示領域の変更」とは、変更後の図柄表示領域(新表示領域)において、変更前の図柄表示領域(旧表示領域であり、基本表示領域に相当する)が遊技者から識別可能に維持されるような図柄表示領域の変更を意味する。このような図柄表示領域の変更が行われたとき、新表示領域には全ての旧表示領域が含まれることから、図柄表示領域は拡張する。以下では、旧表示領域が維持される図柄表示領域の変更について、図柄表示領域の具体的な変更例を参照しながら説明する。なお、各図において、図柄表示領域は、図柄表示窓524によって区画される領域に相当する。
まず、例えば、既述の図56には、変更後の図柄表示領域(新表示領域)の一例として、旧表示領域である基本表示領域524aに加えて、枠上段ラインの枠外領域が視認可能にされた図柄表示窓524が示されている。図柄を中心に言い換えれば、基本表示領域524aに位置する9個の図柄が識別可能な状態を維持されたまま、枠上段ラインに位置していた3個の図柄(左列から順に「ベル図柄」、「チェリー図柄」、「ベル図柄」)が、新たに識別可能に追加表示されている。
図56に示した図柄表示領域に変更するための具体的な制御処理例としては、上可動枠部材522aを通常の遊技態様における定位置から図柄1段分だけ上方向に移動させることによって、基本表示領域524aの枠上側1段分の枠外ライン(枠上段ライン)を開放することができる。
また、例えば、既述の図60には、変更後の図柄表示領域(新表示領域)の別例として、旧表示領域である基本表示領域524aに加えて、枠上段ライン及び枠下段ラインの枠外領域が視認可能にされた図柄表示窓524が示されている。図柄を中心に言い換えれば、基本表示領域524aに位置する9個の図柄が識別可能な状態を維持されたまま、枠上段ライン上に位置していた3個の図柄(具体的には、左列から順に「ベル図柄」、「チェリー図柄」、「ベル図柄」)と、枠下段ライン上に位置していた3個の図柄(左列から順に「スイカ図柄」、「ベル図柄」、「チェリー図柄」)とが、新たに識別可能に追加表示されている。また、このように識別可能な図柄が追加されたことで、表示ラインの本数も増加している。具体的には、図60の場合、変更前における直線状の表示ラインは5本であったが、変更後における直線状の表示ラインは11本にまで増加する。前述の図56の場合は、5本から8本に増加する。
図60に示した図柄表示領域に変更するための具体的な制御処理例としては、上可動枠部材522aを通常の遊技態様における定位置から図柄1段分だけ上方向に移動させるとともに、下可動枠部材522bを通常の遊技態様における定位置から図柄1段分だけ下方向に移動させることによって、基本表示領域524aの枠上側1段分の枠外ライン(枠上段ライン)と枠下側1段分の枠外ライン(枠下段ライン)とを開放することができる。
以上に例示した図56や図60は、基本表示領域が維持されたまま、全てのリール301a〜301cに跨った「段ライン」で枠外領域が開放される例であり、他にも、図58、図102、図103、図107(D)、図108(D)において、同様の変更パターンが示される。
なお、[12−2](5)等で前述したことではあるが、本実施形態のスロットマシン1において、図柄表示領域の変更時に開放される枠外領域は、必ずしも「段ライン」に限定されるものではなく、例えば、各リール301a〜301cで図柄ごとの領域を単位としてもよい。以降では、このような場合、「図柄単位」で枠外領域が開放されると呼ぶ。基本表示領域が維持されつつ「図柄単位」で枠外領域が開放される変更パターンについて、図110を参照しながら説明する。
図110は、基本表示領域が維持される図柄表示領域の変更例を説明するための図である。図110には、図柄表示領域が変更された後の図柄の表示態様の一例が示されている。図110に示された図柄の停止態様は、既述の図109(D)に示した停止態様と同様であり、この図柄表示領域の変更に関する詳細は、図109(A)〜(D)で説明した通りである。
但し、図110では、図柄単位での図柄表示領域の遮蔽/開放を可能にするために、図56等に示した上可動枠部材522aの代わりに、上可動枠部材522c,522d,522eが示されている。上可動枠部材522c,522d,522eは、順に左列(左リール301a)、中列(中リール301b)、右列(右リール301c)に対応するかたちで、基本表示領域524aの上側に設けられる上可動枠部材であって、それぞれが対応する各列(左リール301a、中リール301b、右リール301c)が表示される領域の一部を遮蔽又は開放するように移動可能な役物である。
なお、このような上可動枠部材522c,522d,522eは、図柄単位での図柄表示領域の遮蔽/開放を可能にするための可動枠522の一例であり、同様の遮蔽/開放を可能にする構造であれば、他の部材によって構成されても構わない。例えば、上可動枠部材522aとして一体化されて各リール幅で移動可能に構成されてもよい。後述する下可動枠部材522f,522g,522hについても同様である。
図110には、変更後の図柄表示領域(新表示領域)の一例として、旧表示領域である基本表示領域524aに加えて、右列枠上段の枠外領域が視認可能にされた図柄表示窓524が示されている。図柄を中心に言い換えれば、基本表示領域524aに位置する9個の図柄が識別可能な状態を維持されたまま、右列枠上段に位置していた1個の図柄(具体的には「BAR図柄」)が新たに識別可能に追加表示されている。
図110に示した図柄表示領域に変更するための具体的な制御処理例としては、上可動枠部材522eを通常の遊技態様における定位置から図柄1段分だけ上方向に移動させることによって、基本表示領域524aの右列における枠上側1段分の枠外領域(右列枠上段)を開放することができる。
ここで、図110に示される図柄の表示態様について補足すると、図109(C),(D)でも説明したように、旧表示領域である基本表示領域524aには、「リプ24_1」の条件装置に対応する図柄組合せが中段ラインに表示される以外は、特別な図柄の表示態様(例えば、表示ライン上に何らかの図柄揃いが停止したり、左列にチェリー図柄が停止したりする等)は表示されない。しかし、新表示領域(図110の図柄表示窓524)には、枠上右上がりラインにBAR図柄揃いの図柄組合せが新たに識別可能に表示される。
なお、図110は、上可動枠部材522eの移動によって右列枠上段だけが開放される変更パターンであるが、本実施形態のスロットマシン1では、基本表示領域を維持したまま枠外領域を開放するときに、上可動枠部材522c,522d,522eを任意に移動させることで、各列の枠上段を開放させるようにしてもよい。さらに、開放可能な領域は枠上側だけに限定されない。例えば枠下側も開放可能にする場合は、上可動枠部材522aの代わりに上可動枠部材522c,522d,522eを設けたのと同様に、下可動枠部材522bの代わりに、各列に対応する下可動枠部材(例えば、下可動枠部材522f,522g,522h)を基本表示領域524aの下側に設けるようにすればよい。
このように、本実施形態のスロットマシン1は、以上の各図(図56,60,110等)で説明したような図柄表示領域の開放を行うことにより、遊技者から視認可能な状態で旧表示領域(すなわち、基本表示領域)を維持したまま、旧表示領域の枠外(枠外領域)を新たに視認可能にする態様で図柄表示領域を拡張することができる。
そして、このような本実施形態のスロットマシン1によれば、基本表示領域に位置する図柄に対する識別度合いを維持したまま(識別可能なまま)、新たに開放された枠外領域に位置する図柄(枠外図柄)をおおむね識別可能に露出できるので、拡張された新表示領域において、旧表示領域よりも多数の図柄を識別容易にすることができる。
ここで、従来の遊技機では、遊技結果を示す図柄組合せに気付き易くさせる方向での工夫が見られたが、本実施形態のスロットマシン1では、図柄表示領域が拡張されて新表示領域で多数の図柄が識別容易になることにより、どのような図柄組合せが表示されているのか、遊技者が一見して把握し難い状況を作り出すことができる。そして、このような状況を提供可能にすることで、図柄組合せを探す楽しみを遊技者に与えることができる。図柄組合せを探している間は、図柄表示に遊技者の興味が向けられるため、遊技者の興味を長く惹きつけることができる。
また、本実施形態のスロットマシン1によれば、このような「基本表示領域が維持される図柄表示領域の変更」が行われることによって、従来からの基本表示領域による効果を確保しながら、新たに創出される枠外ラインによる効果を追加的に得ることができる。例えば、基本表示領域に特定の図柄組合せが表示された場合、図柄表示領域が変更されても、当該特定の図柄組合せの表示は維持されるため、当該特定の図柄組合せが表示されることによって遊技者に与えられる興趣感の向上が確保される。それに加えて枠外ラインが創出されて枠外ライン上に図柄組合せが表示されることで、双方の効果を得ることができる。
また、本実施形態のスロットマシン1によれば、「基本表示領域が維持される図柄表示領域の変更」が行われることによって、図柄表示領域が拡張されるため、表示される図柄の個数が増加し、図柄組合せの表示ラインの本数も増加させることができる。このように表示ラインが拡張されることによって、新表示領域において所定の図柄組合せが表示されること(表示成功)への期待感を高めることができ、遊技者の興趣向上に期待できる。また、所定の図柄組合せが表示成功した際に付与され得る特典への期待感も高めることができる。
また、本実施形態のスロットマシン1によれば、「基本表示領域が維持される図柄表示領域の変更」が行われるとき、基本表示領域に対する干渉が行われないまま枠外領域が開放されるため、遊技者を特に枠外領域の動きに注目させることができる。従来の遊技機では、図柄を視認不能な枠外領域に大きな意味を持たせることはできなかったが、本実施形態のスロットマシン1は、遊技者に枠外領域への興味を持たせるという、斬新な遊技性を実現することができる。
[12−3−2.旧表示領域の破壊]
本実施形態のスロットマシン1において、「旧表示領域が破壊される図柄表示領域の変更」とは、変更後の図柄表示領域(新表示領域)において、変更前の図柄表示領域(旧表示領域であり、基本表示領域に相当する)の一部が遊技者から視認不能に遮蔽されるような図柄表示領域の変更を意味する。このような図柄表示領域の変更が行われたとき、新表示領域には、遮蔽されなかった旧表示領域と開放された枠外領域とが含まれる。新表示領域の大きさは、遮蔽された旧表示領域の大きさと解放された枠外領域の大きさとに依存するため、旧表示領域と比して、縮小、維持、拡張の何れの場合もあり得る。
以下では、旧表示領域が破壊される図柄表示領域の変更(換言すれば、基本表示領域が破壊される図柄表示領域の変更)について、図柄表示領域の具体的な変更例を参照しながら説明する。なお、各図において、図柄表示領域は、図柄表示窓524によって区画される領域に相当する。
図111は、基本表示領域が破壊される図柄表示領域の変更の第1例を説明するための図である。図111には、図柄表示領域が変更された後の図柄の表示態様の一例が示されている。図111に示された図柄の停止態様は、既述の図105(D)に示した停止態様と同様であり、この図柄表示領域の変更に関する詳細は、図105(A)〜(D)で説明した通りである。
図111には、変更後の図柄表示領域(新表示領域)の一例として、旧表示領域である基本表示領域524aに対して下段ラインの領域が視認不能に遮蔽される一方で、枠上段ラインの枠外領域が視認可能にされた図柄表示窓524が示されている。図柄を中心に言い換えれば、基本表示領域524aに位置する9個の図柄のうち下段ラインを構成する3個の図柄が視認不能な状態に遮蔽された一方で(上段ラインお呼び中段ラインを構成する計6個の図柄が識別可能な状態を維持されたまま)、枠上段ラインに位置していた3個の図柄(具体的には、各列に「スイカ図柄」)が新たに識別可能に追加表示されている。
図111に示した図柄表示領域に変更するための具体的な制御処理例としては、下可動枠部材522bを通常の遊技態様における定位置から図柄1段分だけ上方向に移動させることによって、基本表示領域524aの下段ラインを遊技者から視認不能な状態に遮蔽するとともに、上可動枠部材522aを通常の遊技態様における定位置から図柄1段分だけ上方向に移動させることによって、基本表示領域524aの枠上側1段分の枠外ライン(枠上段ライン)を開放することができる。
ここで、図111に示される図柄の表示態様について補足すると、図105(C),(D)でも説明したように、旧表示領域である基本表示領域524aには、「リプ1」の条件装置に対応する図柄組合せとしてリプレイ図柄揃いが中段ラインに表示される。一方、図柄表示領域の変更後、新表示領域(図111の図柄表示窓524)では、枠上段ラインにスイカ図柄揃いの図柄組合せが新たに識別可能に表示される。
なお、図111の例では、図柄表示領域の変更時、旧表示領域に対する遮蔽量及び遮蔽方向と、枠外領域に対する開放量及び開放方向とが、ほぼ同量(具体的には、図柄1段分で上向き)であるため、変更の前後で図柄表示領域の形状はほぼ変化しない。このため、図柄表示領域の変更によって、「リール3列×図柄3段」の大きさの図柄表示窓が、形を変えることなく上側に1段分スライドしたような印象を与えることができる。そしてこのとき、スライド後の表示窓内では、元は中段ラインに表示されていたリプレイ図柄揃いが下段ラインに表示されるとともに、元は表示されていなかったスイカ図柄揃いが新たに上段ラインに表示されるという、斬新な図柄表示を実現することができる。
以上に説明した図111は、基本表示領域の一部が遮蔽される一方で「段ライン」の枠外領域が開放される変更パターンの一例であるが、既述の図106(D)も、同様の変更パターンといえる。しかし、本実施形態のスロットマシン1において、図柄表示領域の変更時に開放される枠外領域は、必ずしも「段ライン」に限定されるものではない。以下では別の変更パターンとして、「図柄単位」で枠外領域が開放される変更パターンについて、図112及び図113を参照しながら説明する。
図112,図113は、基本表示領域が破壊される図柄表示領域の変更の第2例を説明するための図(その1,その2)である。図112には、図柄表示領域が変更される前の図柄の表示態様の一例が示され、図113には、図柄表示領域が変更された後の図柄の表示態様の一例が示されている。図112に示された図柄の停止態様は、既述の図108(C)に示した停止態様と同様である。但し、図113では、図108とは異なる態様で図柄表示領域が変更されるため、新表示領域の形状が図108(D)とは異なるものになっている。
また、図112,図113の場合、「段ライン」での領域変更(遮蔽/開放)ではなく、「図柄単位」での領域変更を行うことから、可動枠522として、上可動枠部材522aの代わりに上可動枠部材522c,522d,522eが設けられ、下可動枠部材522bの代わりに下可動枠部材522f,522g,522hが設けられている。このような構成は、[12−3−1]の図110と同様であるため、詳細は省略する。
図柄表示領域の変更前の図112では、リール3本×図柄3段を表示可能な長方形の図柄表示窓524(旧表示領域、基本表示領域)において、「リプ12_3」の条件装置に対応する図柄組合せが中段ラインに表示される。また、左列下段にはチェリー図柄が表示されている。
これに対し、図柄表示領域の変更後の図113では、旧表示領域である基本表示領域524aに対して、左列上段の図柄領域と右列下段の図柄領域が視認不能に遮蔽される一方で、左列枠下段の枠外領域と右列枠上段の枠外領域とが視認可能にされた図柄表示窓524が示されている。図113における図柄表示窓524は、リール3本のそれぞれで図柄3段分を表示可能な点は変更前と変わらないが、その形状は、変更前の長方形とは違い、右上がりの階段形状になる。
図113に示した図柄表示領域に変更するための具体的な制御処理例としては、左リール301aに対して、上可動枠部材522c及び下可動枠部材522fを通常の遊技態様における定位置から図柄1段分だけ下方向に移動させることによって、基本表示領域524aの左列上段の図柄領域を遮蔽するとともに、左列枠下側1段分の枠外領域(左列枠下段)を開放する。また、中リール301bに対しては、上可動枠部材522d及び下可動枠部材522gの何れも移動させない。そして、右リール301cに対しては、上可動枠部材522e及び下可動枠部材522hを通常の遊技態様における定位置から図柄1段分だけ上方向に移動させることによって、基本表示領域524aの右列下段の図柄領域を遮蔽するとともに、右列枠上側1段分の枠外領域(右列枠上段)を開放する。
このような図113の新表示領域では、上段からの右上がりラインに赤7図柄揃いの図柄組合せが新たに識別可能に追加表示される。また、旧表示領域で左列下段に表示されていたチェリー図柄は、新表示領域では左列の中段に表示されて見えるようになる。
なお、図112,113の例では、図柄表示領域の変更時、リール301ごとに、旧表示領域に対する遮蔽量及び遮蔽方向と、枠外領域に対する開放量及び開閉方向とが、ほぼ同量であるが、リール301間でその遮蔽量/開放量が異なる(具体的には、左リール301a及び右リール301cでは図柄1段分、中リール301bでは移動量なし)。その結果、変更の前後で、図柄表示領域内に表示される図柄の総数及び表示ライン数に変わりはないが、その形状は、長方形から平行四辺形に傾くような態様で変化することになる。
図112,113では、このような図柄表示領域の変更が行われることにより、図112で示された上段ライン及び下段ラインが、図113では右上方向に傾く印象(上段ラインが枠上右上がりラインに変化し、下段ラインが枠下右上がりラインに変化するようなイメージ)を遊技者に対して与えることができ、斬新な図柄の表示態様を実現できる。
このように、本実施形態のスロットマシン1は、以上の各図(図111,113等)で説明したような図柄表示領域の開放を行うことにより、旧表示領域(すなわち、基本表示領域)の一部を遊技者から視認不能に遮蔽することで旧表示領域(基本表示領域)を破壊するとともに、旧表示領域の枠外(枠外領域)を新たに視認可能にする態様で、図柄表示領域を変更することができる。
そして、このような本実施形態のスロットマシン1によれば、基本表示領域に位置する図柄に対する識別度合いを変更させつつ(一部を識別不能にさせつつ)、新たに開放された枠外領域に位置する図柄(枠外図柄)をおおむね識別可能に露出できるので、新表示領域において、遊技者から識別容易な図柄を旧表示領域から可変にすることができる。そして、領域の遮蔽と開放とをともに行えることによって、自由度の高い図柄表示領域を形成することができる。
なお、自由度の高い図柄表示領域を形成するためには、従来の遊技機のように固定部材によって図柄表示領域が区画されるのではなく、本実施形態のスロットマシン1のように、少なくとも一部で可動部材(可動枠522)によって図柄表示領域が区画される必要がある。そして、別記していることであるが、本実施形態のスロットマシン1では、基本表示領域の区画についても、少なくとも一部で可動部材が用いられることが好ましく、このような構成にすることで、基本表示領域の破壊という変更パターンを実現しやすくできる。
また、本実施形態のスロットマシン1によれば、このような「基本表示領域が破壊される図柄表示領域の変更」が行われることによって、従来の遊技機にはなかった斬新な表示態様(表示形式を含む)を実現することができる。詳しくいえば、従来は固定的だった基本表示領域が部分的に遮蔽されることによって破壊されるという斬新さと、従来は視認不能な領域でしかなかった枠外領域が開放されるという斬新さとを、合わせて実現することができる。
また、本実施形態のスロットマシン1によれば、「基本表示領域が破壊される図柄表示領域の変更」が行われることによって、新表示領域において、視認可能な基本表示領域の割合を抑制する一方で、新たに枠外ラインを視認可能に創出できる。一般的に、遊技者の注目は、創出される領域に集まり易く、創出された領域で何かが表示されるであろうという期待も抱かせ易い。したがって、本実施形態のスロットマシン1によれば、創出された枠外ラインに対する遊技者の興趣を高め、枠外ラインに所定の図柄組合せが表示されるかもしれない、という期待感を抱かせることができる。
また、本実施形態のスロットマシン1によれば、上述のように枠外ラインに対する興趣を向上させる一方で、新表示領域において遮蔽されずに残された基本表示領域についても、遊技者の注目を集めさせることができる。すなわち、基本表示領域のうち、遮蔽されなかった領域に対して、何らかの重要な意味を遊技者に感じさせることができるため、遊技者の注目を集めることができる。例えば、当該遮蔽されなかった領域に所定の図柄組合せが表示されている場合等は、当該図柄組合せが表示されたことによる特典の付与に対して、通常以上の期待感を抱かせるといった効果が期待できる。
また、本実施形態のスロットマシン1によれば、「基本表示領域が破壊される図柄表示領域の変更」が行われるとき、基本表示領域に対する干渉と、枠外領域に対する開放という、方向性の異なる動作が提供されるため、基本表示領域及び枠外領域を合わせた図柄表示領域全体に対して遊技者の注意をひきつけることができる。従来は、比較的目立つ図柄組合せが表示されていた場合、その他の図柄及び図柄組合せに対する遊技者の興味は低下しがちであったが、本実施形態のスロットマシン1は、斬新な表示態様を提供することにより、元来は視認不能な枠外領域を含め、図柄表示領域全体に対して遊技者の関心を抱かせることができる。
なお、上述した「基本表示領域が破壊される図柄表示領域の変更」において、旧表示領域の一部が可動枠522によって遮蔽されるとしたが、本実施形態のスロットマシン1では、遮蔽される領域(遮蔽領域)には有効ラインを示す表示領域が含まれないように制御することが望ましい。言い換えれば、旧表示領域(基本表示領域524a)のうち、有効ラインを示す表示領域以外の少なくとも一部を遮蔽するように、可動枠522の移動を制御することが望ましい。このような制御を行うことによって、本実施形態のスロットマシン1では、図柄表示領域の変更に伴って旧表示領域の一部が遮蔽された場合でも、有効ライン上に表示される図柄組合せを遊技者が認識することができる。
また、「基本表示領域が破壊される図柄表示領域の変更」において、旧表示領域に対して有効ラインを示す表示領域を遮蔽するように制御する場合、遮蔽の前後で該有効ラインに停止している図柄(すなわち、有効ライン上の図柄)の識別度合いが変わらない程度となるようであれば、差支えない。このような制御を行うと、旧表示領域の遮蔽によって有効ラインを示す表示領域が部分的に遮蔽されたとしても、該有効ライン上の図柄の識別度合いは変わらず維持されるため、有効ライン上に表示される図柄組合せを遊技者が認識することができる。
[13.本実施形態の特徴及び効果]
以上に述べてきた本実施形態のスロットマシン1について、特徴的な構成及び期待される効果をまとめて説明する。
(1)第1の特徴及び効果
本実施形態のスロットマシン1は、リール301の一部を前方から視認可能な図柄表示領域について、図柄表示領域を区画する枠部分を移動可能に構成することで(具体的には、リール表示装置520や可動枠522等)、図柄表示領域を可変にするという特徴を有する。従来の一般的な遊技機は、図柄表示領域は基本表示領域に固定されており、各遊技では、変動停止するリールに付された図柄の停止態様が基本表示領域に表示されるに過ぎなかったが、本実施形態のスロットマシン1では、可変する図柄表示領域という斬新な遊技性を実現することができる。
さらに、本実施形態のスロットマシン1では、演出制御基板510に制御されて図柄表示領域の変更が行われることによって、通常態様の図柄表示領域(すなわち、基本表示領域524aに相当)の外部領域(枠外領域)が開放される。そして、この枠外領域の開放は、当該枠外領域に位置する図柄(枠外図柄)に対する識別度合いを変更できる度合いで行われる。その結果、基本表示領域とは異なる別の表示領域(例えば、前述した「枠外図柄表示領域」に相当する新規表示領域)を創出することができる。
そして、本実施形態のスロットマシン1によれば、このように新規表示領域が創出されることによって、枠外に停止している図柄(枠外図柄)の存在を遊技者に意識させることが可能となる。ここで、従来の遊技機においては、枠外図柄は、基本表示領域の領域外に位置する視認不能な図柄に過ぎず、遊技に直接関係しない図柄であった。その結果、従来の遊技機では、固定された図柄表示領域(基本表示領域)に停止図柄が表示される形のゲームが繰り返されていくにつれ、図柄表示領域に現出される図柄組合せが認識されてしまう傾向が少なからずあったため、停止図柄の表示態様に対する遊技者の関心が低下するおそれがあった。これに対して、本実施形態のスロットマシン1では、上述のように枠外図柄の存在を遊技者に意識させるようにすることで、遊技に関係する図柄という認識を持たせ、図柄表示領域に表示される図柄の停止態様をより楽しませることができる。
なお、このような効果は、枠外図柄のへの意識を高めさせる目的を実現することによって期待できるものである。当該目的を実現するために可動枠522を移動させる際は、新規表示領域の最低限の表示範囲として、枠外に枠外図柄が停止していることを遊技者に意識させる程度であればよく、枠外図柄に対する識別性の有無に拘わる必要は無い。具体的には、枠外領域の開放に伴う枠外図柄の識別態様については図104等で例示して説明した通りであり、枠外領域の開放度合いが少なくとも「開放度1」([12−1]参照)以上であれば、当該枠外図柄の一部を視認可能に露出させ、枠外図柄が停止していることを遊技者に意識させることができる(例えば、図101参照)。
(2)第2の特徴及び効果
本実施形態のスロットマシン1によれば、例えば演出制御基板510の制御にしたがってリール表示装置520(特に可動枠522)を作動させることにより、通常態様の図柄表示領域(基本表示領域524a)から、基本表示領域524aの枠外領域を含む新しい図柄表示領域に図柄表示領域を変更することができる。ここで、枠外領域の開放度合いを上述した「開放度2」([12−1]参照)以上とすることにより、図柄表示領域の変更によって開放された枠外領域において、当該枠外領域に位置する枠外図柄が、おおむね認識し得る程度に露出される(例えば、図102参照)。ここでいう「おおむね認識可能」とは、「図柄の種別をほぼ確実に識別可能な程度」に相当する。また、類似図柄が存在するときには、類似図柄のうちの何れの図柄であるかを識別可能な程度であることを意味する。なお、必ずしもリール301に付された全ての図柄について識別可能であることまでは限定しないが、全図柄のうち少なくとも所定割合(例えば8割)以上は識別容易であることが好ましい。
本実施形態のスロットマシン1がこのような図柄表示領域の変更を行うことで、図柄表示領域に表示されて遊技者が認識し得る図柄に、露出された枠外図柄が追加されることから、基本表示領域524aに現出される図柄の数よりも多くの図柄を遊技者に識別容易にさせ得る。具体的には例えば、基本表示領域にリール3本×図柄3段の9個の図柄が表示されるとして、1段分の枠下段ラインが開放度2以上で露出された場合、各リール301a〜301cにおいて1個ずつの枠下図柄が認識可能になることで、合計12個の図柄が識別容易に表示される。
このようなスロットマシン1によれば、図柄の表示に関して、見えなかった図柄(枠外図柄)が元来の表示領域を超えて視認可能になるという従来の遊技機とは異なる斬新な表示手段を実現することができ、その斬新な表示手段によって遊技者の興趣を向上させることに期待できる。すなわち、遊技者から認識容易な図柄の個数を増加できることによって、図柄の停止態様を多様に見せることが可能となり、遊技者の興趣を高める効果に期待できる。
(3)第3の特徴及び効果
本実施形態のスロットマシン1によれば、リール表示装置520(特に可動枠522)を作動させることにより、通常態様の図柄表示領域(基本表示領域524a)から、基本表示領域524aの枠外領域を含む新しい図柄表示領域に図柄表示領域を変更することができる。ここで、枠外領域の開放度合いを上述した「開放度2」([12−1]参照)以上とすることにより、図柄表示領域の変更によって開放された枠外領域において、当該枠外領域に位置する枠外図柄が、少なくともおおむね認識し得る程度に露出される(例えば、図102参照)。
そして、枠外図柄がおおむね認識し得る程度に露出されることにより、露出された枠外図柄を含めた新しい図柄組合せの表示ラインを創出することができ、変更後の図柄表示領域において、変更前の図柄表示領域である基本表示領域と比べて、図柄組合せの表示ラインの関係を変更させることができる。ここで、「図柄組合せの表示ラインの関係」とは、例えば、「図柄組合せの表示ラインの本数」又は「図柄組合せの表示ラインの相対的な位置関係」であり、さらに、「図柄組合せが表示ラインに表示された状態」は「ライン態様」という語で表現することもできる。すなわち、本実施形態のスロットマシン1によれば、開放度2以上で図柄表示領域が変更されることによって、基本表示領域で形成されるライン態様と比べて、変更後の図柄表示領域において、ライン態様の個数又はライン態様の相対的な位置関係の少なくとも何れかを変更することができる。以下に既述の具体例を用いて詳細に説明する。
まず、「図柄組合せの表示ラインの本数」について説明する。変更前の図柄表示領域である基本表示領域として、「リール3本×図柄3段」の基本表示領域524aを例に挙げると、形成される図柄組合せの表示ラインは、直線状の表示ラインに限った場合でも、上段ライン、中段ライン、下段ライン、右下がりライン、右上がりラインの5本となる(図49や図61参照)。これに対し、変更後の図柄表示領域として、例えば、図56や図107(D)に示したように、3本のリール301のそれぞれにおいて枠上段の1段分の枠外図柄が「おおむね認識し得る程度に露出」された場合、当該露出された枠外図柄(左列、中列、右列それぞれの枠上段図柄)を含む直線状の表示ラインとして、「枠上段ライン」、「枠上右下がりライン」、及び「枠上右上がりライン」の3本が新たに創出され、変更後の図柄表示領域における図柄組合せの表示ラインは合計8本に増加する([12−2](3)参照)。このように、図柄表示領域の変更によって露出された枠外図柄を含めた新しい図柄組合せの表示ラインが創出されることで、図柄組合せの表示ラインの本数を変更(主に増加)させることができる。
次に、「図柄組合せの表示ラインの相対的な位置関係」について説明する。図柄表示領域の変更パターンの1つとして、変更前後における図柄表示領域の形状が維持される場合がある(例えば、図106)。図106(D)では、図柄表示領域の変更時、図柄1段分の枠下段ラインが露出されるとともに、基本表示領域の上段ラインが識別し難い状態(遮蔽状態)にされた。このような場合、上述したような図柄組合せの表示ラインの本数は5本のまま変更されないが、図柄組合せの表示ラインの相対的な位置関係は変更される。図106を例にとって具体的に説明する。
前述したように図106は、当選役「枠外1_A」に当選したときに条件装置「リプ5_1」に対応する図柄組合せ(リプレイ−BAR−スイカ)が有効ラインに停止表示される様子を示している。ここで、図柄表示領域の変更前である図106(C)では、当該図柄組合せ(リプレイ−BAR−スイカ)は、中段ラインに表示されている。しかし、図柄表示領域の変更後である図106(D)では、変更前と同じ図柄表示領域の形状・大きさ(リール3本×図柄3段)であるものの、当該図柄組合せの表示位置は、上段ラインとなる。すなわち、図柄表示領域の変更によって、当該図柄組合せの表示ラインが中段ラインから上段ラインに変更されることになり、表示ラインの相対的な位置関係が変更されることが分かる。
このように、本実施形態のスロットマシン1では、開放度2以上で図柄表示領域が変更されることによって、図柄組合せの表示ラインの対応関係(ライン態様の個数又はライン態様の相対的な位置関係の少なくとも何れか)を変更させることができる。
従来の遊技機では、上述の通り固定的な図柄表示領域で遊技が進められており、仮に変則的な表示ラインを設定したとしても、当該基本表示領域に変動停止される所定個数の図柄を用いた遊技性であることに変わりはなかった。その結果、遊技に慣れた遊技者が徐々に飽きてしまうおそれが少なからずあった。これに対して、本実施形態のスロットマシン1は、上述したように、図柄組合せの表示ラインの対応関係を変更可能であるため、図柄組合せの表示態様を従来にはない斬新な方法で多様化させることができ、遊技興趣を向上させる効果を奏する遊技機である。
図柄組合せの表示態様を多様化できる本実施形態のスロットマシン1によれば、例えば、図柄組合せの表示ラインの対応関係を変更可能なことから、所定の図柄組合せが表示される位置を変えることによる視覚上の効果に期待できる。また、図柄組合せの表示ラインを増やす場合には、遊技者にとって価値の高い所定の図柄組合せが表示されることに対する期待度(図柄組合せの成立期待度)を高めることに期待できる。また、図柄組合せの表示ラインを減らす場合には、減らされた特定の表示ラインに遊技者の関心が集中するため、図柄組合せの成立に期待できる期待対象を集中化させ、遊技者の意識分散による遊技意欲の低下を抑制する効果に期待できる。
なお、上記効果を実現可能な枠外領域の開放度合いは開放度2以上としたが、開放度2の場合、開放された枠外領域に位置する枠外図柄について、その図柄全体は見えない。しかし図柄全体が見えなくても、当該図柄をおおむね識別可能であることは前述した通りであるため、遊技者が当該図柄を含む表示ラインを認識することができるといえ、その結果として、図柄表示領域の変更によって図柄組合せの対応ラインが変更されることを、より明確に示すことができる。そして、開放度3の場合は、露出された枠外領域に位置する枠外図柄を完全に視認可能にするため、開放度2の場合よりも、より顕著に上記効果を実現することができる。
また、上述の効果は、図柄表示領域の変更時に複数リールに亘って枠外領域が開放される場合に限らず、所定リール301の枠外領域だけが開放される場合でも同様である。例えば、図109(D)に示したように、右列(右リール301c)の枠上領域だけが開放される場合、右列枠上段の1個の枠外図柄が識別可能に露出されるが、当該枠柄図柄を含む表示ラインとして枠上右上がりラインが創出されるので、図柄表示領域の変更前後で図柄組合せの表示態様を変更することができる。
(4)第4の特徴及び効果
本実施形態のスロットマシン1は、図62で説明したように、リール表示装置520の可動枠522に対して駆動力を提供する表示枠駆動モータ523の作動を、メイン基板409以外(例えば演出制御基板510)によって制御する構成となっており、可動枠522を移動させることで図柄表示領域を変更することは上述の通りである。本実施形態のスロットマシン1によれば、当選役を決定する内部抽選処理(図92のステップS3)、及び内部抽選の結果に基づくリール停止処理(図92のステップS5)については、主基板(メイン基板409)によって制御されるものの、図柄表示領域を変更する処理は、メイン基板409以外の副基板(例えば、演出制御基板510)によって制御されることにより、当該副基板が、遊技者側から視認可能な図柄の表示態様を決定することができる。
従来から、スロットマシンは、変動停止したリールに付された図柄がどのように表示されるか(換言すれば、図柄表示領域における図柄組合せの表示態様)によって、最終的な遊技結果を遊技者に示す。ここで、本実施形態のスロットマシン1は、停止図柄が表示される図柄表示領域を、副基板(例えば、演出制御基板510)の制御によって決定し得る遊技機であるので、遊技者から認識可能な状態で現出される遊技結果を副基板が主導的に制御することができる遊技機といえる。
なお、図柄表示領域の変更タイミングについては、「枠変動条件」の説明時に触れたように、全リール301の停止後に限定されるものではなく、例えば、全リール301の回転直後であってもよい。このような場合、メイン基板409の制御によってリールの停止処理が行われるよりも前に、演出制御基板510の制御によって図柄表示領域が変更されることになるが、最終的に遊技者から視認可能に現出される図柄組合せの表示態様は、どのような図柄表示領域であるかに依るため、副基板によって主導的に制御される。
さらにいえば、本実施形態のスロットマシン1では、図柄表示領域を変更する際、演出制御基板510は、主基板が制御する遊技状態を変えることはなく(所謂、内部抽選の確率を変更することなく)、リールの停止位置を動かすようなこともない。すなわち、本実施形態のスロットマシン1は、副基板(例えば、演出制御基板510)が、主基板によって制御される遊技状態や主基板によって抽選される内部抽選の結果を変えることなく、主基板による内部抽選の結果を表示するとともに、遊技結果の表示を制御できる遊技機である。
そして、このような本実施形態のスロットマシン1は、主基板によって抽選された内部抽選の結果が表示された後に、前述したリールの停止位置を動かすようなことを行わない(リールを再可動させることがない)で、内部抽選の結果を報知するとともに、新たなる新表示領域を利用した図柄組合せをも表示することが出来るので、内部抽選の結果によって付与される特典(例えば、遊技メダル等の払出し)に加え、当該図柄組合せが表示された際に付与される特典の期待をも抱かせ得る遊技機である。
また、従来から遊技機の主基板には容量の制約が設けられているため、主基板は容量制限の範囲内で制御を行わねばならず、実行可能な制御処理には限りがあった。特に、図92に示した内部抽選処理(ステップS3)、リール回転処理(ステップS4)、及びリール停止処理(ステップS5)等、主基板で制御を行うことが規定された処理は多いため、残された容量の範囲内で主基板が自由にその他の制御処理を行うことは難しかった。
しかし、本実施形態のスロットマシン1では、上述したように、図柄表示領域の変更が副基板(例えば演出制御基板510)によって制御されることによって、遊技者から認識可能な状態で現出される遊技結果を副基板が主導的に制御することができるようにするものであり、限られた容量制限の中で自由度の高い遊技性を兼ね備えた遊技機を実現することができる。
また、本実施形態のスロットマシン1において、図柄表示領域の変更に関する上記の制御処理を主基板(メイン基板409)以外の副基板で制御するとした場合、副基板は演出制御基板510に限らないため、処理能力や容量の観点で余裕がある基板が制御するように、又は分担して制御するように構成することも可能である。このようにすることで、スロットマシン1全体での処理効率の向上に期待できる。また、図柄表示領域の変更に関する一連の処理を行うために専用の副基板を搭載してもよく、このような場合は、当該一連の処理がモジュール化されることで、より一層の処理効率の向上に期待できる。
(5)第5の特徴及び効果
本実施形態のスロットマシン1は、「開放度2」([12−1]参照)以上の枠外領域の開放度合いでリール表示装置520(特に可動枠522)を作動させることにより、通常態様の旧表示領域(基本表示領域524a)から、基本表示領域524aの枠外領域を含む新表示領域に図柄表示領域を変更することができるが、このときの図柄表示領域の変更パターンを、[12−3−1]で説明したような「旧表示領域が維持される図柄表示領域の変更」とする場合には、変更後の新表示領域において、旧表示領域(基本表示領域)を維持したまま、新表示領域を基本表示領域の外部領域(枠外領域)にまで拡張し、当該枠外領域に位置する図柄(枠外図柄)はおおむね識別可能に露出されることから、旧表示領域に現出される図柄の個数よりも多くの図柄を識別容易にすることができる。
このような本実施形態のスロットマシン1は、図柄表示領域の変更において、基本表示領域における図柄の識別度合いを維持するとともに、図柄をおおむね認識できる程度に枠外図柄の識別度合いを可変にするものであり、図柄表示領域が変更された新表示領域で斬新な図柄の表示態様を実現できることから、遊技者の興趣を向上させ得る。
また、このような本実施形態のスロットマシン1によれば、図柄表示領域の変更時に、基本表示領域が維持されることによって、基本表示領域における図柄の表示効果が確保される。これは、従来の遊技機でも同様の効果があったが、本実施形態のスロットマシン1によれば、新表示領域が、このような効果を確保したまま、枠外の領域まで拡張されることによる効果(例えば、斬新な図柄の表示態様の実現)をも併せ持つ点が特徴的である。
また、例えば図60に示した図柄表示領域のように、新表示領域が旧表示領域に比べて大きく拡張させる場合には、新表示領域内で識別容易な図柄の個数を大幅に増加させることができる。このようなスロットマシン1によれば、図柄表示領域が拡張されて新表示領域で多数の図柄が識別容易になることにより、どのような図柄組合せが表示されているのか、遊技者が一見して把握し難い状況を作り出すことができる。そして、スロットマシン1は、このような状況を提供可能にすることで、図柄組合せを探す楽しみを遊技者に与えることができる。図柄組合せを探している間は、図柄表示に遊技者の興味が向けられるため、遊技に慣れた遊技者が飽きてしまうことを防止し、遊技者の興味を長く惹きつける遊技機を提供することができる。
また、このような本実施形態のスロットマシン1によれば、図柄表示領域を変更する際、基本表示領域は領域が維持されるのに対して、枠外領域は新たに視認可能にされて図柄表示領域として創出されることから、当該枠外領域への重要性を感じさせて、当該枠外領域に遊技者の関心を強く惹きつけることができる。すなわち、本実施形態のスロットマシン1によれば、従来は遊技進行上の意味を有さなかった枠外領域に対して期待感を抱かせるという斬新な遊技性を実現することができる。
(6)第6の特徴及び効果
本実施形態のスロットマシン1は、「開放度2」([12−1]参照)以上の枠外領域の開放度合いでリール表示装置520(特に可動枠522)を作動させることにより、変更後の新表示領域において、新たに視認可能に開放された枠外領域に位置する図柄(枠外図柄)をおおむね認識し得る程度に露出することができるが、このときの図柄表示領域の変更パターンを、[12−3−1]で説明したような「旧表示領域が維持される図柄表示領域の変更」とする場合には、変更後の新表示領域において、旧表示領域(基本表示領域)内の表示ラインを維持しつつ、上記枠外図柄を含む新たな表示ライン(枠外ライン)を創出することができる。
言い換えれば、このような本実施形態のスロットマシン1は、図柄表示領域の変更によって、基本表示領域を視認可能に維持するとともに、基本表示領域の外部領域に視認可能な枠外図柄を創出するものであり、その結果として、旧表示領域(基本表示領域)で形成される所定のライン態様を確保したまま、新たなライン態様を追加可能にする。また、図柄表示領域全体でみれば、図柄表示領域の変更の前後でライン対応を可変にするものである。
このような本実施形態のスロットマシン1によれば、図柄表示領域の変更によって、表示ラインの本数を確実に増加させることができる(表示ラインの拡張)。そして、表示ラインの拡張によって、新表示領域内の表示ライン上に示される図柄組合せの表示態様を多様化できるため、遊技者の興趣を向上させる効果を奏する。
また、このような本実施形態のスロットマシン1によれば、表示ラインが拡張されることによって、新表示領域において所定の図柄組合せが表示されること(表示成功)への期待感を高めることができる。具体的には、図60の例では、直線状の表示ラインの本数は、旧表示領域では5本だったものが、新表示領域では11本になっていたが、表示ラインの本数が多いほど、所定の図柄組合せが現出されやすいと感じられるため、表示成功への遊技者の期待感を高めることができ、遊技者の興趣向上に期待できる。また、所定の図柄組合せが表示成功した際に付与され得る特典への期待感も高めることができる。
(7)第7の特徴及び効果
本実施形態のスロットマシン1において、主基板(メイン基板409)以外の副基板(例えば演出制御基板510)によって図柄表示領域の変更を制御するとし、「開放度2」([12−1]参照)以上の枠外領域の開放度合いで、[12−3−1]で説明したような「旧表示領域が維持される図柄表示領域の変更」を行う場合には、主基板(メイン基板409)以外の副基板(例えば演出制御基板510)によって制御する場合に、図柄表示領域内の有効ライン上に現出され得る当選役に対応した図柄組合せは主基板による制御に従いながらも、図柄表示領域において遊技者から認識可能に現出させる図柄の組合せの表示態様は、副基板が主導的に制御することができる。そして、このような本実施形態のスロットマシン1によれば、副基板が、主基板の制御下で決定された図柄の表示態様(これは基本表示領域に表示される)を変更することなく、枠外領域を視認可能に開放して、最終的な図柄表示領域(新表示領域)を決定することから、副基板が遊技結果の表示に関する主導権を握る遊技機を提供することができる。
このような本実施形態のスロットマシン1によれば、新表示領域に変更する制御処理において、基本表示領域を維持したまま、枠外領域の開放によって図柄表示領域を拡張することができるため、副基板によって図柄組合せの表示態様を多彩に制御することが可能となる。
ここで、従来から遊技機の主基板には容量の制約が設けられており(例えば、回胴式遊技機に係る主基板のロムでは、制御領域の容量が4.5KB以下、かつ、データ領域の容量が3KB以下)、このような制約の範囲内で主基板が実行可能な制御処理には限りがあった。したがって、図柄表示領域の変更に関する上記の制御処理を主基板(メイン基板409)によって制御しようとした場合には、主基板の制御領域の容量を圧迫し、場合によっては容量制限を超えてしまうことも考えられる。しかし、上記した本実施形態のスロットマシン1によれば、主基板ではなく副基板によって図柄表示領域の拡張に関する制御が可能なため、当該制御のために主基板の容量制限に追加的な影響を与えることなく、すなわち、主基板の容量制約を超えることなく、遊技性を高める制御処理を実行可能な遊技機を提供できる。
また、本実施形態のスロットマシン1において、副基板が「旧表示領域が維持される図柄表示領域の変更」を行う場合は、基本表示領域が維持されることから、主基板によって決定された図柄の表示態様に対する視認状態が変更されないので、可動枠522等の部材に不具合が発生する等して、図柄表示領域の変更処理に問題が発生したとしても、以降の遊技で、基本表示領域だけは常に表示することができ、遊技機の可用性に寄与できる。
(8)第8の特徴及び効果
本実施形態のスロットマシン1は、「開放度2」([12−1]参照)以上の枠外領域の開放度合いでリール表示装置520(特に可動枠522)を作動させることにより、通常態様の旧表示領域(基本表示領域524a)から、基本表示領域524aの枠外領域を含む新表示領域に図柄表示領域を変更することができるが、このときの図柄表示領域の変更パターンを、[12−3−2]で説明したような「旧表示領域が破壊される図柄表示領域の変更」とする場合には、変更後の新表示領域において、旧表示領域(基本表示領域)の一部が遊技者から視認不能に遮蔽される一方で、新表示領域を基本表示領域の外部領域(枠外領域)にまで拡張し、当該枠外領域に位置する図柄(枠外図柄)はおおむね識別可能に露出されることから、遊技者から識別容易な図柄の個数を旧表示領域に現出される図柄の個数から可変にすることができる。
このような本実施形態のスロットマシン1は、図柄表示領域の変更において、旧表示領域(基本表示領域)の一部遮蔽と枠外領域の視認化とによって新表示領域を形成することから、従来の遊技機では実現されなかった斬新な図柄の表示態様を提供することができ、遊技者の飽きを防止して興趣向上に寄与することができる。
また、このような本実施形態のスロットマシン1によれば、図柄表示領域を変更する際、基本表示領域は領域が縮小されるのに対して、枠外領域は新たに視認可能にされて図柄表示領域として創出されることから、当該枠外領域への重要性をより強く遊技者に感じさせることができる。そして、当該枠外領域に遊技者の関心を強く惹きつけることによって、従来は重要視されなかった枠外領域に注目させるという斬新な遊技性を実現することができる。
また、このような本実施形態のスロットマシン1によれば、図柄表示領域を変更する際、単に領域を追加して全体の表示領域を拡張するのではなく、旧表示領域の一部を遮蔽して制限することによって、新表示領域全体において識別容易にする図柄の全体数を調整することができる。新表示領域において識別容易な図柄の個数が過剰に増えてしまうと、遊技者が何に注目すべきか分からず、迷ってしまうというおそれが少なからずあるが、本実施形態のスロットマシン1は、「開放度2」以上で「旧表示領域が破壊される図柄表示領域の変更」を行うことによって、識別容易な図柄数を調整し、遊技上適当な領域に遊技者の注意を向けさせるよう補助することができる。
(9)第9の特徴及び効果
本実施形態のスロットマシン1は、「開放度2」([12−1]参照)以上の枠外領域の開放度合いでリール表示装置520(特に可動枠522)を作動させることにより、変更後の新表示領域において、新たに視認可能に開放された枠外領域に位置する図柄(枠外図柄)をおおむね認識し得る程度に露出することができるが、このときの図柄表示領域の変更パターンを、[12−3−2]で説明したような「旧表示領域が破壊される図柄表示領域の変更」とする場合には、変更後の新表示領域において、旧表示領域(基本表示領域)内の表示ラインを減少させる一方で、上記枠外図柄を含む新たな表示ライン(枠外ライン)を創出することができる。
言い換えれば、このような本実施形態のスロットマシン1は、図柄表示領域の変更によって、視認可能な基本表示領域を縮小させるとともに、基本表示領域の外部領域に視認可能な枠外図柄を創出するものであり、その結果として、旧表示領域(基本表示領域)で形成される所定のライン態様を抑制し、新たなライン態様を追加可能にする。また、図柄表示領域全体でみれば、図柄表示領域の変更の前後でライン対応を可変にするものである。
このような本実施形態のスロットマシン1によれば、表示ラインの減少及び創出を並行して行うことが可能なため、自由度の高い図柄表示領域を形成できる。例えば、図113に示した図柄表示領域等は、従来の遊技機には存在しなかった領域形状であり、このような自由度の高い図柄表示領域では、表示ラインの構成も従来にはなかったような斬新な構成が可能となる。かくして、本実施形態のスロットマシン1によれば、表示ライン上に現出される図柄組合せについても斬新な表示態様を可能にし、遊技者の遊技興趣を向上させることができる。
また、このような本実施形態のスロットマシン1によれば、基本表示領域内の表示ラインについて、表示ラインを減少させることによって、残された表示ラインに重要性を感じさせることができ、当該表示ラインに対する遊技者の注目度を高めることができる。また、一方で、枠外図柄を含む枠外ラインについては、新規に創出される表示ラインということで、より重要性を感じさせることができる。かくして、それぞれの表示ラインに対して、表示ラインごとに強調効果を付与することが期待でき、遊技性の多様化に寄与する。
また、このような本実施形態のスロットマシン1によれば、表示ラインの減少と拡張とを実現可能なため、図柄表示領域における表示ラインの総本数を調整することができ、遊技性の高い遊技演出を実行することができる。例えば、基本表示領域内の表示ラインの減少数が多いほど、若しくは、枠外ラインの拡張数が多いほど、何らかの遊技特典の付与に期待できる、といった遊技演出を実行可能である。
(10)第10の特徴及び効果
本実施形態のスロットマシン1において、主基板(メイン基板409)以外の副基板(例えば演出制御基板510)によって図柄表示領域の変更を制御するとし、「開放度2」([12−1]参照)以上の枠外領域の開放度合いで、[12−3−2]で説明したような「旧表示領域が破壊される図柄表示領域の変更」を行う場合には、図柄表示領域内の有効ライン上に現出され得る当選役に対応した図柄組合せは主基板による制御に従いながらも、図柄表示領域において遊技者から認識可能に現出させる図柄の組合せの表示態様は、副基板が主導的に制御することができる。そして、このような本実施形態のスロットマシン1によれば、副基板が、主基板の制御下で決定された図柄の表示態様(これは基本表示領域に表示される)のうち、有効ライン上の図柄組合せは遮蔽することなく、さらに枠外領域を視認可能に開放して、最終的な図柄表示領域(新表示領域)を決定することから、副基板が遊技結果の表示に関する主導権を握る遊技機を提供することができる。
このような本実施形態のスロットマシン1によれば、新表示領域に変更する制御処理において、基本表示領域の一部(有効ラインを除く)を遮蔽する一方で、枠外領域の開放によって図柄表示領域を拡張することができるため、複雑な図柄組合せの表示態様を、副基板の制御のもとで実現することが可能となる。
ここで、前述したように、従来から遊技機の主基板には容量の制約が設けられており(例えば、回胴式遊技機に係る主基板のロムでは、制御領域の容量が4.5KB以下、かつ、データ領域の容量が3KB以下)、このような制約の範囲内で主基板が実行可能な制御処理には限りがあった。したがって、図柄表示領域の変更に関する上記の制御処理を主基板(メイン基板409)によって制御しようとした場合には、主基板の制御領域の容量を圧迫し、場合によっては容量制限を超えてしまうことも考えられる。しかし、上記した本実施形態のスロットマシン1によれば、主基板ではなく副基板によって図柄表示領域の変更に関する制御が可能なため、主基板の処理負担の増加を抑制しながら、主基板の容量制約を超えることなく、高い遊技性を実現可能な遊技機を提供することができる。
なお、本実施形態のスロットマシン1において、副基板が「旧表示領域が破壊される図柄表示領域の変更」を行う場合、基本表示領域の一部が遮蔽されるため、主基板によって決定された図柄の表示態様(リールの停止位置に伴って表示される図柄の表示)の一部が遮蔽されることになる。しかし、当該遮蔽される領域及び図柄は、有効ライン以外に限定されることから、当選役に基づいた図柄組合せの表示結果という重要な遊技結果情報は、副基板による影響を受けることなく、遊技者に示される。したがって、このような本実施形態のスロットマシン1によれば、仮に図柄表示領域の変更に関する制御が実行不能な状況が発生したとしても、当選役に基づいた図柄組合せの表示を不能にするものではなく、主基板による処理への影響を抑制することができる。
(11)その他の特徴及び効果
この他の特徴的な構成として、本実施形態のスロットマシン1は、[9−1]のリール表示装置520の説明で一部述べたように、図柄表示領域内を照射可能な照射手段を有してもよい。この照射手段は、例えば、扉形前面部材200の透明板214aの後面側、又はリール表示領域520の前面側に、発光可能な透過液晶が設けられるようにして実現されてもよいし、リール301のリール帯321の背面から所定のリール前面を照射可能な発光部材が設けられて実現されるバックライト等でもよい。また、照射手段による照射は、メイン基板409(特にCPU1110)によって制御されてもよいし、メイン基板409以外(例えば演出制御基板510)によるものでもよい。
このような照射手段を有する本実施形態のスロットマシン1の場合、図柄表示領域の変更の有無に拘わらず、特定の図柄組合せを強調する演出は行わないほうが好ましいが、特定の図柄組合せではなく一部の図柄(例えば、ラインを構成する3個の図柄のうちの1個〜2個の図柄も含む)を強調する演出は、行ってもよい。この特定の図柄を強調する演出を行うことによって、図柄表示領域における図柄組合せ(又は図柄)の表示態様を示唆することができる。具体的には例えば、バックライトによって図柄表示領域内に停止した2個のスイカ図柄が強調されたとき、スイカ図柄揃いを構成する3個のスイカ図柄が強調されなくても、遊技者に対して、スイカ図柄揃いの図柄組合せが表示されることを示唆することができる。
また、特定の図柄を強調する演出は、上述したバックライトによる強調演出に限定されるものではない。他にも例えば、強調したい図柄(又は図柄組合せ)を音(音声)で報知する音演出であってもよいし、可動役物の作動による役物演出であってもよいし、強調したい図柄(又は図柄組合せ)を図柄表示窓524の窓枠等の発光色によって示唆する色演出であってもよい。発光色に基づく色演出の一例を示すと、窓枠等を緑色に発光させた場合はスイカ図柄揃いを示唆し、赤色に発光させた場合はチェリー図柄の図柄表示領域内停止を示唆する。さらに、緑色と赤色とを交互に発光させた場合は、図柄表示領域内にチェリー図柄又はスイカ図柄揃いの何れか(又は両方)が停止することを示唆する、等としてもよい。また、発光色に基づく色演出は、窓枠の発光だけでなく、スロットマシン1に備えられた他の発光部品(例えば、筺体の装飾LED等)を発光させて行われてもよい。また、強調演出の他の例として、図柄表示領域のなかで強調したい表示ライン(又は表示領域)を示唆可能な態様で振動する振動装置を設けるようにしてもよい。
さらに、本実施形態のスロットマシン1は、図柄表示領域の特定態様の変更時に、上述した照射手段等による特定図柄の強調演出を行うようにしてもよい。具体的には例えば、図柄表示領域が拡張される態様で変更されたときに、拡張された図柄表示領域内に表示された特定の図柄を強調する演出を行う。図60に例示したように、拡張された図柄表示領域では、停止表示される図柄の個数が増加するとともに表示ラインの本数も増加するため、通常態様の基本表示領域と比べて、一見してどのような図柄組合せが停止表示されたかを遊技者が認識し辛く、図柄表示領域内のどのような図柄に注目すべきか迷ってしまうことが想定される。スロットマシン1によれば、このような場合に、特定の図柄に対して照射手段による強調演出を行うことによって、より注目すべき図柄又は図柄組合せを遊技者に報知/示唆することが可能となり、遊技進行を補助する役割を果たして遊技興趣の向上に貢献する。
また、本実施形態のスロットマシン1は、図柄表示領域を照射する照射演出を行うとした場合に、上述したように「特定の図柄を強調する」態様で照射演出を行うのではなく、図柄表示領域の変更時(変更開始時から変更完了後の所定時間経過までを含む)に、特定の領域に差異を付けない態様で図柄表示領域を照射する照射演出を行うようにしてもよい。
従来の一部の遊技機でも、図柄表示領域を照射するものは存在したが、従来の照射は、特定の領域又は図柄組合せを強調し注目させる効果を奏するが、遊技者が強調された場所だけにしか興味を持たなくなるため、それ以外の領域又は図柄に対する遊技者の期待を低下させてしまい、遊技結果に対する楽しみが低減するおそれがあった。
これに対し、本実施形態のスロットマシン1による「特定の領域に差異を付けない態様」の照射演出とは、上記のような従来の照射方法とは異なる態様の照射演出を意味し、具体的には例えば、図柄表示領域の全面、又は図柄表示領域の枠周辺を照射する等に相当する。本実施形態のスロットマシン1によれば、このように図柄表示領域への照射演出が行われることによって、図柄表示領域の変更というスロットマシン1特有の動作が行われることを遊技者に強調することができ、遊技者の興趣を高めることができる。
なお、本実施形態のスロットマシン1がこのような照射演出を行うとき、従来の一部の遊技機で見られたような照射方法、すなわち、図柄表示領域の一部、又は特定の図柄並びに図柄組合せを照射する照射方法は採用しない。このような従来の照射は、特定の領域又は図柄(図柄組合せ)を強調し注目させる効果を奏するが、遊技者が強調された場所だけにしか興味を持たなくなるため、それ以外の領域又は図柄に対する価値が相対的に低くなってしまう。また、強調されることによって、図柄の表示態様に関する重要なポイントが簡単に分かってしまうため、遊技者の興趣が向上したとしても短期間しか持続せず、結果として、遊技結果に対する楽しみが低減するおそれがあった。
これに対し、本実施形態のスロットマシン1の照射によれば、特定の領域に遊技者の意識を集中させることなく、図柄表示領域の変更を示唆又は明示することができる。そして、図柄表示領域の変更を強調することで、(1)〜(4)で述べた各効果を高めることに貢献する。
また、本実施形態のスロットマシン1によれば、上述の照射演出を行うことによって、図柄表示領域全体に対して遊技者の興味を持たせることができ、遊技結果に対する遊技者の楽しみを増加させる効果が期待できる。より細かく言えば、図柄表示領域が移動又は拡張されたとき、図柄表示領域の変更によって、識別可能な図柄が増えたり、識別可能な図柄の場所が変わったりすることで、何らかの変化が起きていることを遊技者に感じさせることができる。そして、遊技者に対して、新たに追加された領域がどこか、そして、当該領域に何らかの図柄組合せが表示されるのか、等を探求する意欲を抱かせるだけでなく、新たに追加されなかった領域にも何らかの図柄組合せが表示される可能性を感じさせることができるため、図柄表示領域全体に遊技者の関心を広げさせ、遊技結果に対する興趣や期待を高めることができる。
なお、本実施形態では、AT機能を有するスロットマシン1の説明を行ったが、本発明に係る遊技機はAT機に限定されるものではない。他に例えば、RT(リプレイタイム)を有するRT機であってもよいし、RT中に小役の押し順を教示するようなART機であってもよいし、AT、RT、ARTを有しない機種(所謂、ボーナス主体の機種)であってもよい。また、本実施形態のスロットマシン1に用意されたボーナスはCBであったが、他の種別のボーナス(例えば、BB、RB、SB等)が用意されてもよい。
また、本実施形態のスロットマシン1では、遊技のために用いられる遊技用価値(遊技媒体)としてメダルを用いたが、本発明に係る遊技機で用いられる遊技用価値は、必ずしもメダルに限らず、例えば、遊技球であってもよいし、遊技用価値に相当する電子的なデータ等であってもよい。
また、本発明に係る遊技機として上述した実施形態のスロットマシン1において、リール301(リール301a〜301c)は、複数の図柄が付された回転可能な複数のリールの一例であり、メイン基板409(主にCPU1110)は、当選役の抽選を行う抽選手段の一例である。また、メイン基板409(主にCPU1110)は、所定の始動操作を契機として複数のリールを回転させるとともに、所定の停止操作を契機として回転中の複数のリールの夫々を抽選手段による抽選結果に基づいた停止位置で停止させるリール制御手段の一例であり、メイン基板409の制御に基づいて図柄変動表示装置300が、リールの停止に関する実際の駆動を行う。また、リール表示装置520は、複数のリールの夫々の一部を視認可能な基本表示領域(例えば基本表示領域524aに相当)が設けられることによって、リール制御手段によって複数のリールが停止したとき、基本表示領域で視認可能にされた各リール上の図柄を繋げて形成される1以上の所定のライン態様において図柄組合せを表示する図柄表示手段の一例であり、特に、可動枠522が作動していない「通常態様」の状態に相当する。また、ここでいう1以上の所定のライン態様のなかには、有効ライン523aが含まれる。また、演出制御基板510(主にCPU1118)は、特定の条件が成立したときに、基本表示領域内の一部の図柄を遮蔽するとともに該基本表示領域の外部領域に視認可能な図柄を創出することによって、遊技者から視認可能な全体領域におけるライン態様を変更する制御を実行するライン可変制御手段の一例である。「特定の条件」は、可動枠522が移動される「枠変動条件」に相当する。ライン可変制御手段による処理は、具体的には例えば、演出制御基板510が、「開放度2」以上で「旧表示領域が破壊される図柄表示領域の変更」を行うようにリール表示装置520の可動枠522を作動させる処理([12−3−2]参照)に相当し、このとき、基本表示領域内の一部の図柄が視認不能にされる一方で枠外図柄が新たに視認可能にされることから、基本表示領域内の表示ラインが減少し、かつ、枠外図柄を含んで形成される表示ラインが追加される態様で、新表示領域全体におけるライン態様を変更することができる。
以上は、本発明のスロットマシン1の一形態であるが、これに限定されることはない。スロットマシン以外の遊技機、例えば、パチンコ機や、パチンコ機とスロットマシンとを融合させてなる遊技機等であっても本発明を適用することができる。