以下、本発明の一実施形態を図1〜図12に基づいて説明する。図1(A)には、一実施形態のRFIDタグ100の平面透視図が示されている。図1(B)には、RFIDタグ100のYZ断面図が示されている。
RFIDタグ100は、一例として、図1(A)及び図1(B)に示されるように、第1の導電層10aを中間層として含む積層体10と、該積層体10上に設けられたアンテナ20と、該アンテナ20に接続されたICチップ30と、を備えている。ここでは、RFIDタグ100は、パッシブ型タグであるが、電池を搭載したアクティブ型タグであっても良い。
以下では、積層体10の積層方向をZ軸方向とするXYZ3次元直交座標系を適宜用いて説明する。ここでは、アンテナ20、ICチップ30は、積層体10の+Z側に配置されている。
ICチップ30には、ユニークなID番号が格納されている。このID番号は、RW装置(リーダライタ装置)を用いて読み出すことができる。
アンテナ20としては、図1(A)に示されるような蛇行部を含むものの他、通常RFIDタグで使用される通信用のアンテナ(ループアンテナ、パッチアンテナ、ダイポールアンテナ、スパイラルアンテナ、ヘリカルアンテナ、スリットアンテナなど)でもよい。
積層体10は、第1の導電層10aに加えて、該第1の導電層10aの−Z側に配置されたグランド層としての第2の導電層10bと、第1及び第2の導電層10a、10b間に配置された誘電体からなる第1のスペーサ層10cと、第1の導電層10aとアンテナ20との間に配置された誘電体からなる第2のスペーサ層10dとを含む。
各導電層の材料(導電性材料)としては、金、白金、銀、ニッケル、クロム、アルミニウム、銅、亜鉛、鉛、タングステン、鉄などの金属であってもよく、樹脂に上記金属の粉末、導電性カーボンブラックの混入された樹脂混合物、あるいは導電性樹脂のフィルム等であってもよい。上記金属等を、箔状、板状、シート状、フィルム状等に加工されたものであってもよい。あるいはまた合成樹脂性フィルム上に、膜厚たとえば600Åの金属薄層が形成された構成を有してもよい。金属箔をフィルムもしくはクロスなどの基材に転写したものでもよい。また、金属粒子系の導電インク(たとえば抵抗率10Ω/□以下)を第1のスペーサ層10cや第2のスペーサ層10dに塗布してもよい。
各スペーサ層の材料としては、例えば、PET(Polyethylene Terephthalate樹脂)などの誘電体材料が適している。また、実際のスペーサ層の材料としては比較的透明なもの(少なくとも内部を透視しうるもの)を用いる場合もある。その他、できるだけ誘電率の低い樹脂や、空気分を含む発泡材、スポンジ、ウレタン、繊維などが好ましい。さらに、有機材料としては、たとえばゴム、熱可塑性エラストマー、各種プラスチック、木材、紙材、などの高分子有機材料等の多孔質体が挙げられる。前記ゴムとしては、天然ゴムのほか、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、エチレン−プロピレンゴム、エチレン−プロピレン−ジエンゴム(EPDMゴム)、エチレン−酢酸ビニル系ゴム、ブチルゴム、ハロゲン化ブチルゴム、クロロプレンゴム、ニトリルゴム、アクリルゴム、エチレンアクリル系ゴム、エピクロロヒドリンゴム、フッ素ゴム、ウレタンゴム、シリコンゴム、塩素化ポリエチレンゴム、水素添加ニトリルゴム(HNBR)などの合成ゴム単独、それらの誘導体、もしくはこれらを各種変性処理にて改質したものなどが挙げられる。これらのゴムは、単独で使用するほか、複数をブレンドして用いることができる。熱可塑性エラストマーとしては、たとえば塩素化ポリエチレンのような塩素系、エチレン系共重合体、アクリル系、エチレンアクリル共重合体系、ウレタン系、エステル系、シリコーン系、スチレン系、アミド系、オレフィン系などの各種熱可塑性エラストマーおよびそれらの誘導体が挙げられる。さらに、各種プラスチックとしては、たとえばポリエチレン、ポリプロピレン、AS樹脂、ABS樹脂、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン等の塩素系樹脂;ポリ酢酸ビニル、エチレン−酢酸ビニル共重合体、フッ素樹脂、シリコーン樹脂、アクリル系樹脂、ナイロン、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、アルキド樹脂、不飽和ポリエステル、ポリスルホン、ポリイミド樹脂、ウレタン系樹脂、フェノール樹脂、尿素樹脂、エポキシ樹脂などの熱可塑性樹脂または熱硬化性樹脂およびこれらの誘導体、さらには共重合体やリサイクル樹脂等が挙げられる。以上の材料をそのままか、複合化、変性化して用いることができる。発泡することが好ましい。典型的な低密度の誘電体材料は、発泡スチロール樹脂などの発泡樹脂である。熱可塑性エラストマーとしては、たとえば塩素化ポリエチレンのような塩素系、エチレン系共重合体、アクリル系、エチレンアクリル共重合体系、ウレタン系、エステル系、シリコーン系、スチレン系、アミド系、オレフィン系などの各種熱可塑性エラストマーおよびそれらの誘導体が挙げられる。以上の材料をそのままか、複合化、変性化して用いることができる。発泡することが好ましい。典型的な低密度の誘電体材料は、発泡スチロール樹脂などの発泡樹脂である。以上の他に、ダンボールなどの紙材、木材、ガラス、ガラス繊維、土系材料なども使用可能である。また無線ICタグの基材や粘着材層をスペーサーの材料とすることも可能である。
各スペーサ層は、以上のように磁性材料を実質的に含まない材料で構成されることで、安価で実現可能である。
第1の導電層10aは、図1(A)に示されるように、複数(例えば11個)の単位構造がXY平面に沿って2次元に周期配列された2次元周期配列構造を有している。各単位構造は、他の単位構造や周囲と絶縁されている。ここでは、複数の単位構造の周期配列は、千鳥配列であるが、例えばマトリクス配列等の他の周期配列であっても良い。
各単位構造は、括れ部と、該括れ部を介して接続され、該括れ部からY軸方向に離れるほどX軸方向に幅広となる一対のテーパ部とを含んでいる。すなわち、一対のテーパ部は、先端同士が括れ部を介して結合している(接続されている)。各単位構造は、一体成形されても良いし、複数の部分が別体で成形された後、接合されても良い。
括れ部は、X軸方向、Y軸方向の少なくとも一方にある程度の幅を有していても良いし、X軸方向、Y軸方向の少なくとも一方の幅が略0であっても良い。すなわち、括れ部は、平面形状(+Z側から見た形状)が、面形状(図3(A)参照)、線形状、点形状のいずれであっても良い。括れ部の平面形状がX軸に平行な線形状や点形状である場合には、実質的に、一対のテーパ部は、先端部同士が直接結合されている。この場合には、「括れ部」は、一対のテーパ部の界面を意味すると考えて良い。
ここでは、括れ部の形状は、一例として、矩形(面形状)とされているが、他の形状であっても良い。
一対のテーパ部は、括れ部をY軸方向に挟む位置関係にある。また、一対のテーパ部は、同形かつ同大であり、括れ部を通る互いに直交する一軸(X軸)及び他軸(Y軸)それぞれに関して軸対称(線対称)に配置されている。そこで、以下では、単位構造を「括れ付き2軸対称構造」とも呼ぶ。
括れ付き2軸対称構造における各テーパ部の平面形状(+Z側から見た形状)としては、一例として、台形(例えば等脚台形)、三角形(例えば正三角形、二等辺三角形等)、扇形、滴形の一部などが挙げられる(図2(A)〜図2(D))。なお、図2(A)〜図2(D)では、各テーパ部の側面(テーパ面)は、平面となっているが、曲面であっても良い。また、例えば、図2(D)に示される滴形のように、テーパ部の最大幅箇所に他の部分が結合していても良い。
第1の導電層10aの作製に際しては、例えば、第1又は第2のスペーサ10c、10d上に貼り付けられる1枚の導電膜に切り欠き加工を施すことで括れ付き2軸対称構造を複数形成しても良いし、予め成形加工された括れ付き2軸対称構造を第1又は第2のスペーサ層10c、10d上に複数貼り付けることで形成しても良いし、括れ付き2軸対称構造をパーツ毎に成形加工し、各パーツを第1又は第2のスペーサ層10c、10d上に貼り付けることで各括れ付き2軸対称構造を形成しても良い。このように、括れ付き2軸対称構造を複数有する第1の導電層10aは、容易に作製可能である。
ここで、括れ部を有する単位構造(例えば括れ付き2軸対称構造)は、構造内部をX軸方向もしくはY軸方向に伝播する面内伝播波を有している。すなわち、括れ部を有する単位構造は、構造の周期性により、波数空間上のブリルアンゾーン中に空間高調波を持つ。これらのうち、位相速度が光速よりも速くなる速波領域では、外部からの電磁波が面内伝播波に結合することができる。このことは、励起された面内伝播波を、外部に放射させることが可能であることを意味する。
RFIDタグ100では、括れ付き2軸対称構造上に第2のスペーサ層10dを介してアンテナ20が配置されているため、括れ付き2軸対称構造から面内伝播波を放射させてアンテナ20と電磁的に結合させることができる。このように、括れ付き2軸対称構造は、アンテナ20のゲイン(動作利得)を補強(増強)する機能を有する。
この場合、RFIDタグ100を導電体や高誘電体に接触もしくは近接させても、アンテナ20に結合したICチップ30が外部電磁波からの給電を受けることが可能になり、もしくはICチップ30からの情報を電磁波に乗せて放射(送信)することが可能になる。
なお、アンテナ20の共振層は特定周波数の電波に対応する波長に応じたサイズで決まり、通常用いられているものであれば、種類は問わない。
図3(A)には、各テーパ部の形状が正三角形の括れ付き2軸対称構造Trの構成が示され、図3(B)には、括れ付き2軸対称構造Tr(ここでは便宜上1つ)が第2の導電層10b上に第1のスペーサ層10cを介して配置された積層構造体LSのYZ断面図が示されている。
図4(A)、図4(B)には、それぞれX軸方向、Y軸方向の位相差を付与した場合の括れ付き2軸対称構造Trの面内伝播波の分散特性が示さている。なお、「X軸方向の位相差」は、面内伝播波が括れ付き2軸対称構造TrをX軸方向に通過(伝播)したときの、通過前後での該面内伝播波の位相のずれを意味する。「Y軸方向の位相差」は、面内伝播波が括れ付き2軸対称構造TrをY軸方向に通過(伝播)したときの、通過前後での該面内伝播波の位相のずれを意味する。図4(A)、図4(B)の横軸は、ka/πである。ただし、「k」は波数ベクトル2π/λ(λは面内伝播波の波長)を示し、「a」は括れ付き2軸対称構造Trを単位構造とする2次元周期配列構造におけるX軸方向もしくはY軸方向の繰り返し周期を示す。
ここでは、括れ付き2軸対称構造Trにおいて、一例として、図3(A)に示されるように、テーパ部の高さをh=25.0mm、括れ部のX軸方向の幅をa=1.55mm、括れ部のY軸方向の幅をb=2.0mm、テーパ部と周囲との間隔をc=1.225mmとしている。また、第1のスペーサ層10cの厚さをd=0.364mm、比誘電率を3.37としている。この条件での測定結果から、X軸方向、Y軸方向ともに、915MHzにおいて、放射域に伝播モードを持つことがわかった。すなわち、RFIDタグ100の通信周波数として915MHzを用いることにより、括れ付き2軸対称構造Trから面内伝播波を外部に最も効率良く放射させることができる。
なお、図4(A)、図4(B)において、破線よりも左側の領域が有効放射域、すなわち面内伝播波の放射効果が比較的良好に得られる領域である。このことから、X軸方向、Y軸方向それぞれに付与する位相差は、ある位相差よりも小さくすることが好ましいことがわかる。
図5(A)及び図5(B)には、それぞれX軸方向に既知の位相差を付与した場合の電界分布と、Y軸方向に既知の位相差を付与した場合の電界分布の計算結果が濃淡画像で示されている。この計算結果から、X軸方向、Y軸方向のいずれに位相差を付与しても、面内を伝播する電磁波(面内伝播波)は同じモードを持つことが分かる。
図6には、RFIDタグ100におけるICチップ30からアンテナ構造20側を見たインピーダンスの実測値がスミスチャートで示されている。
すなわち、図6は、括れ付き2軸対称構造TRrの正三角形のテーパ部の高さをhとし、このhをパラメータとしたときのインピーダンスの実測値が示されている。測定結果から、インピーダンスは、比較的ICチップ30の整合領域に近くなっていることがわかる。ここでは、第1のスペーサ10cは、厚さd=0.364mmのPETフィルムとされている(図3(B)参照)。
また、括れ付き2軸対称構造Trの大きさ、すなわちテーパ部の大きさ(テーパ部の高さh)を変化させることで括れ付き2軸対称構造Trの共振周波数が変化し、括れ付き2軸対称構造Trが大きくなるほど、共振周波数が低くなることがわかる。
また、図7には、積層構造体LSにおいて、第1のスペーサ層10cの厚さd(mm)を変えたときのRFIDタグ100におけるICチップ30からアンテナ20側を見たインピーダンスの実測値がスミスチャートで示されている。第1のスペーサ層10cの厚さが厚くなると、括れ付き2軸対称構造Trの共振周波数は高くなることがわかる。ここでは、h=26.0mmとされている。
このことから、第1のスペーサ層10cの厚さ、括れ付き2軸対称構造Trの大きさを調整することで、ICチップ30とアンテナ20のインピーダンス整合を調整することができる。
図8には、図3(B)に示される積層構造体LSにおける括れ付き2軸対称構造Trにおける面内伝播波の通過特性が示されている。
詳述すると、図8には、図3(A)に示される括れ付き2軸対称構造Trの正三角形のテーパ部の高さをhとし、このhをパラメータとしたときの周波数特性が示されている。図8から、括れ付き2軸対称構造Trの大きさが大きくなるほど、面内伝播波の通過域は低周波数側にシフトすることがわかる。ここでは、d=0.364mmとされている。
図9には、図3(B)に示される積層構造体LSにおいて、第1のスペーサ層10cの厚さd(mm)を変えたときの括れ付き2軸対称構造Trの面内伝播波の通過特性が示されている。ここでは、正三角形の高さhは25.5mmに設定されている。この場合は、第1のスペーサ層10cの厚さd(mm)が厚くなるほど、面内伝播波の通過域は高周波数側にシフトすることがわかる。
図8、図9より、括れ付き2軸対称構造Trの大きさ、第1のスペーサ10cの厚さを変えることで、RFIDタグ100の動作特性を調整可能なことがわかる。
図10には、通信距離の測定方法が概略的に示されている。ここでは、一例として、金属面にRFIDタグ100を貼付した状態で、RFIDタグ100とRW装置との距離Lを変えながら通信可能な最大距離である通信距離を探索(測定)する。
図11には、図10に示される状態で、括れ付き2軸対称構造Trの正三角形のテーパ部の高さh(mm)を一定とした場合の、第1のスペーサ層10cの厚さd(mm)と通信比率の関係がグラフで示されている。図11の横軸はd(mm)、縦軸は通信比率(%)である。通信比率は、測定した通信距離に基づいて、(測定した通信距離/自由空間での通信距離)×100(%)で算出されている。RFIDタグ100を例えば金属面に貼付した状態でも、dの値によらず30%以上の通信比率を実現しており、d=1.064mmで、通信比率が72%であった。いずれの場合も、通信状態が改善されていることがわかる。
図12には、図10に示される状態で、第1のスペーサ層10cの厚さd(mm)を一定として場合の、2軸対称構造の正三角形のテーパ部の高さh(mm)と通信比率の関係がグラフで示されている。図12の横軸はh(mm)、縦軸は通信比率(%)である。ここでは、一例としてd=0.464mmに設定されている。RFIDタグ100を例えば金属面に貼付した状態でも、hの値によらず15%以上の通信比率を実現しており、h=26mmで、通信比率が33%であった。いずれの場合も、通信状態が改善されていることがわかる。
RFIDタグ100の通信に用いられる周波数は、特に限定されるものではないが、300MHz以上300GHz以下の範囲を含み、任意の単数または複数の周波数を選択することができる。この300MHz以上300GHz以下の範囲には、UHF帯(300MHz〜3GHz)、SHF帯(3GHz〜30GHz)およびEHF帯(30GHz〜300GHz)が含まれる。
RFIDタグ100は、外表面の少なくとも一部を誘電材料で被覆することが好ましい。この誘電材料は、磁性を有していてもよい。被覆するための誘電材料としては、たとえばハードカバーとする場合と柔軟性を付与するソフトカバーとする場合が考えられる。ハードカバーとしては前述の各種プラスチック及び無機材料、木材等が考えられる。樹脂に無機材料等を配合したものでよい。ソフトカバーとしては、前述の熱可塑性エラストマー及び各種合成ゴムを使用する事ができる。剛性を付与できる材料を用いるのがハードカバーとなり、柔軟性を付与できる材料を用いるのがソフトカバーとなる。材料としては、誘電体材料として例示した材料やその他無機材料、紙系、木材系、土系、ガラス系、セラミックス系材料を使用することができる。これらの材料に充填材を配合したり、架橋を施したりすることは任意である。また粘着性や接着性も有していてもよい。発泡材料を用いることもできる。被覆材料としては第1のスペーサ層10cや第2のスペーサ層10dの材料として挙げた材料をそのまま使うことができる。ポリマーとガラス繊維との組み合わせやその他複合材料が用いられることが多い。とくに耐環境性、耐久性、耐衝撃性、絶縁性を付与するために適当な材料が選定されて、被覆加工される。
ところで、従来、RFIDタグは、例えば伝票、証明書、カード、ラベル等(以下では伝票類と呼ぶ)などに装着することで、情報伝達媒体として利用されている。
このような伝票類は、現在も、作業指示書、依頼書、発注書、納入伝票、札表、伝票、カンバンなどとして物流、ロジスティックス、流通、在庫管理、工程管理などで活用されている。
しかしながら、従来のようにRFIDタグが組み込まれ、または貼付された伝票類を、RFIDタグの通信を妨害する通信妨害部材(例えば導電部材や高誘電率部材)に取り付けることができなかった。
実際の製造業、運輸業、販売業、レンタル業などでは、RFIDタグが使用される環境に通信妨害部材が非常に多く、また通信妨害部材を含む対象物にRFIDタグを装着し、該対象物を管理したいというニーズも非常に多い。
そこで、本実施形態のRFIDタグ100は、このような通信妨害部材に近接させ、もしくは装着して使用することができるため、その活用範囲が格段に広がり、非常にユーティリティの高いものとなる。
具体的には、導電材料や高誘電率材料からなる容器、導電材料からなる通信妨害部材や高誘電率材料からなる通信妨害部材を含む製品、中間製品、部品、運搬具、パレット、車、フォークリフト、コンテナ、鞄、包袋、ケース、通い箱、導電性箱、測定器、装置、重機、什器、備品、機械、機器、部材、消火器、ガスボンベ、ボンベ、タンク、乗物、輸送機、搭載機、配管、金属管などに、RFIDタグ100をICタグ、カンバン、伝票、証明書、カードまたはラベルとして直接貼り付けても、無線通信を行うことが可能となる。これにより物流管理、在庫管理、流通管理、情報管理などでの対象製品が拡がり、しかもRFID周波数の国際周波数に対応することで、輸出入の場合の管理も容易となる。
以上説明した本実施形態のRFIDタグ100は、第1の導電層10aを中間層として含む積層体10と、積層体上に設けられたアンテナ20と、該アンテナ20と接続されたICチップ30と、を備え、第1の導電層10aは、括れ部を有する構造を含む。
この場合、外部からの電磁波により第1の導電層10aの面内伝播波が励起され放射されることでアンテナ20のゲイン(動作利得)が増強される。
このため、積層体10における第1の導電層10aに対してアンテナ20と反対側(対象物への装着面側)の層(例えば第1のスペーサ層10c)の厚さを薄くして、導電体や高誘電体に接触もしくは近接させても、通信性の低下を抑制できる。また、第1の導電層10aは、製造が容易である。
結果として、RFIDタグ100によれば、導電体や高誘電体に接触もしくは近接したときの通信性の低下を抑制でき、かつ薄型化と低コスト化を両立できる。
また、括れ部を有する構造は、括れ部を介して接続され、該括れ部から離れるほど幅広となる一対のテーパ部を含むため、面内伝播波の放射性を向上でき、通信性の低下を安定して抑制できる。
また、2つのテーパ部は、同形かつ同大であるため、面内伝播波の放射性を良好にすることができる。
また、2つのテーパ部は、括れ部を通る一軸(X軸)に関して軸対称に配置されているため、面内伝播波の放射性を一層良好にすることができる。
また、2つのテーパ部は、括れ部を通り、一軸(X軸)に直交する他軸(Y軸)に関して軸対称に配置されているため、面内伝播波の放射性をより一層良好にすることができる。
また、括れ部を有する構造は複数あり、複数の構造は、周期的に配置されているため、構造間で面内伝播波の放射の相乗効果を得ることができる。
また、括れ部を有する複数の構造は、千鳥配列されている。この場合、第1の導電層10aにおいて括れ部を有する構造を高密度に配置することができ、面内伝播波の放射密度を高くすることができる。
また、積層体10は、第1の導電層10aとアンテナ20との間に配置された第2のスペーサ層10dと、第1の導電層10aに対して第2のスペーサ層10dとは反対側に配置された第1のスペーサ層10cと、を含む。
この場合、アンテナ20と第1の導電層との間、及び第1の導電層と対象物との間を安定して絶縁することができる。
また、積層体10は、第1のスペーサ層10cに対して第1の導電層10aとは反対側に配置された第2の導電層10bを含み、第2の導電層10bの大きさは、第1の導電層10aの大きさ以上である。
この場合、RFIDタグ100の設置位置や環境からの影響を小さくすることができる。
また、第1及び第2のスペーサ層10c、10dの少なくとも一方が、ポリエチレンテレフタレートや発泡体からなる場合、軽量化と薄型化を図ることができる。
また、第2のスペーサ層10d及び第2の導電層10bの少なくとも一方が粘着性または接着性を有する場合、アンテナ20、ICチップ30の積層体10への取り付けや、RFIDタグ100の対象物への貼り付けを容易に行うことができる。
また、RFIDタグ100の外表面の少なくとも一部が誘電材料(誘電体膜)で被覆されている場合、外部からの不要電磁波の影響や、周辺環境からの影響を小さくし、通信改善効果をさらに向上させることができる。
また、RFIDタグ100の外表面の少なくとも一部が誘電材料で被覆されている場合、耐久性、耐侯性、耐衝撃性、印刷特性などを付与することができる。
また、RFIDタグ100単独で、あるいはICチップ及びアンテナを含むICタグと電磁波制御シートとを組み合わせて、導電体や高誘電体を含む製品、中間製品、部品、容器、運搬具、移動手段等に対して、伝票、証明書、カード、ラベル等の情報伝達媒体として直接貼り付けても、無線でICチップと通信を行うことができる。
なお、上記実施形態では、第1の導電層10aは、括れ付き2軸対称構造を単位構造とする2次元周期構造を有しているが、これに限られない。例えば、図13(A)〜図13(B)に示される変形例のRFIDタグ200のように、第1の導電層は、2軸対称構造を1つのみ有していても良い。また、第1の導電層は、2軸対称構造が1次元に周期配列された1次元周期構造を有していても良い。なお、2軸対称構造は必ずしも周期配列されていなくても良い。いずれの場合であっても、括れ付き2軸対称構造は、その周囲や他の括れ付き2軸対称構造と絶縁されることが必要である。
また、図14(A)及び図14(B)に示されるように、RFIDタグ100の積層体10を電磁波制御シートとして使用することも可能である。なお、電磁波制御シートは、図15(A)及び図15(B)に示されるように、第1の導電層が2軸対称構造を1つのみ有していても良い。
このような積層体10から成る電磁波制御シートは、市販の無線ICタグを重ね合わせるだけで、被着物の種類に依存しないで通信改善が達成できる。また、電磁波制御シートと無線ICタグのICチップとの間の電波信号のやりとりに導線配線、結線、ハンダ等の工程を用いることなく、インピーダンス調整を行い、共振周波数調整や通信改善が実現できる。
なお、RFIDタグや電磁波制御シートは、第2の導電層10bを有していなくても良い。この場合でも、上記実施形態と同様の効果が得られる。ただし、第2の導電層10bは、製造時において導電体に接触させた状況を予め設定しておくことができ、この状況下での安定動作を保証できる点で有用な構成部材である。
また、スペーサ層は、アンテナ20と第1の導電層10aとの間や、第1及び第2の導電層10b間を絶縁できれば良く、例えば凹部、開口部、切り欠き部等が形成されていても良い。
また、第1の導電層における括れ部を含む構造は、上記実施形態、変形例で説明したものに限定されず、適宜、変更可能である。以下に例示する括れ部を含む構造でも、上記実施形態、変形例の括れ部を含む構造よりも若干程度は劣るものの同様の効果が得られる。
例えば、括れ付き2軸対称構造のテーパ部の側面(テーパ面)は、図16(A)及び図16(B)に示されるように、曲面(平面視で曲線)であっても良い。
また、例えば、図17(A)〜17(C)に示されるように、括れ部を含む構造は、1軸に関してのみ対象な1軸対称構造であっても良い。図17(A)では、一対のテーパ部は、同形・同大である。図17(B)では、一対のテーパ部は、同形・異大(異なるサイズ)である。図17(C)では、各テーパ部の一対のテーパ面が軸対称でない。
また、例えば、図18(A)〜図18(C)に示されるように、括れ部を含む構造は、一対のテーパ部が直接結合していても良い。図18(A)の括れ付き2軸対称構造では、括れ部が面状(平面視で線状)である。図18(B)の括れ付き2軸対称構造では、括れ部が線状(平面視で点状)である。図18(C)の括れ付き1軸対称構造では、括れ部が面状(平面視で線状)である。
また、例えば、図19(A)に示されるように、一対テーパ部が異形の括れ付き1軸対称構造であっても良い。また、図19(B)に示されるように、一対のテーパ部が異形の括れ付き非軸対称構造であっても良い。また、図19(C)に示されるように、各テーパ部の一対のテーパ面が略平行な2軸対称構造であっても良い。すなわち、各テーパ部のテーパ角は、逆テーパとならない範囲で適宜変更可能である。
また、複数の括れ付き2軸対称構造の配列は、例えば、図20(A)に示されるように、括れ付き2軸対称構造を縦横で互い違いになるように周期配列しても良いし、図20(B)に示されるように括れ付き2軸対称構造をマトリクス状に周期配列しても良い。なお、図20(A)の配列の方が、図20(B)の配列に比べて高密度配置が可能である。このように、括れ付き2軸対称構造の配列は、周期的、規則的であることが好ましいが、規則的でなくても良い。
なお、第1の導電層は、括れ部を含む構造を少なくとも1つ有していれば良く、第1の導電層における括れ部を含む構造の周囲の部分は、あっても、なくても良い。
上記実施形態のRFIDタグ100と該RFIDタグ100に対して無線通信により情報の読み出し及び書き込みの少なくとも一方を行うRW装置(通信装置)とを含んで、無線通信システムを構築することもできる。この場合、情報の正確な授受が可能な無線通信システムを実現することができる。さらに、この無線通信システムは、通信装置で読み出された情報を管理する管理装置を含んで構成することもできる。
例えば、多数の金属製物品にRFIDタグ100を貼り付け、それらを順次(一定間隔を開けながら)コンベア上を流し、それらを任意の場所に設置されたアンテナゲート部にて、物流管理(入出庫管理)やトレーサビリティ管理などを行う無線通信システムを構築することができる。
RFIDタグ100によって伝達可能な情報としては、製品IDだけでなく、履歴情報、特記情報のみならず、作業指示書、依頼書、納入伝票、発注書なども含むことができ、たとえば在庫管理やコスト管理のデータとすることで歩留まり向上やコスト低減といった生産性を向上することも期待できる。
以下に、本発明の発明者が上記実施形態を発案するに至った経緯を説明する。
近年、RFID(Radio Frequency Identification)タグに対する関心が高まっている。RFIDタグは、無線ICタグの一種であり、一般に、LSI(Large Scale Integrated circuit)チップ、アンテナ及びそれらをモールドする外部樹脂などから構成されている。
RFIDタグのサイズ(外径)は、0.3mm(ゴマ粒サイズ)から直径20〜30mmのコインサイズ、ICカードサイズなど様々である。また、電池搭載型と電池非搭載型があり、前者はアクティブ型タグ、後者はパッシブ型タグと呼ばれる。
RFIDタグに内蔵されるLSIチップは、アンテナ、送受信部、制御部及びメモリを備える。メモリには、固有の識別コード(ユニークID)が記憶されており、このユニークIDがRFIDタグ用リーダライタ(以下、単にリーダライタと記載)によって読み出される。このリーダライタによるRFIDタグのユニークIDの読み出しは、RFIDタグ用アンテナ(以下、単にアンテナと記載)を介して無線通信(無線交信)により行われる。この無線交信には、電波方式と電磁誘導方式がある。
一般に、RFIDタグは金属に貼付すると、特性が大きく変化する。 例えば、電磁誘導方式のRFIDタグの場合は、磁束が金属に入ると渦電流が流れ、それが磁束を打ち消すように作用する。この結果、交信距離(交信エリア)が大幅に短くなり、最悪の場合には交信不能となる。この場合、RFIDタグの貼付位置を金属から一定距離以上離すようにすると、金属からの影響は少なくなる。
また、電波方式のRFIDタグの場合には、金属面で電波が反射してマルチパス現象が発生し、RFIDタグの情報の読み取りが不安定になり、金属面の影響により、RFIDタグのアンテナの電力変換効率が悪くなる為、電磁誘導方式と同様に更新距離の劣化を生じる。
この場合もRFIDタグの貼付位置を金属から一定距離以上離すようにすることにより、金属からの影響を軽減させることができるようになる。
商品や製品の場合、金属性の材料で作られているものも多い。 このため、金属に貼付可能な金属対応RFIDタグというものがあり、既に商品化されている。
金属対応RFIDタグは、そのアンテナ(RFIDタグアンテナ)が金属から十分な距離だけ離れるようにするか、または、RFIDタグと金属との間にRF吸収材料を挟むようにして、金属に貼付される。
図21(A)には、従来の金属対応RFIDタグ1000の構成が示す断面図で示されている。同図に示す金属対応RFIDタグ1000は、金属反射板101、スペーサ部102、基板材部103及びPET104が順に積層された構成になっている。基板材部103にはRFIDタグが実装されおり、その略中央にLSIチップ111が、その両側面にはアンテナ(RFIDタグアンテナ)112が設けられている。
RFIDタグは、LSIチップ111とアンテナ112から構成される。 LSIチップ111には、制御部、送受信部及びメモリ等が集積されている。 アンテナ112は、ダイポール型アンテナが用いられることが多い。
金属反射板101は、接着剤(不図示)を介して金属に貼付される薄い板(プレート)であり、該金属で反射されるRFを反射する。
スペーサ部102は、誘電体や発砲スチロール、プラスチック等から成り、金属対応RFIDタグ100が貼付される金属と基板材部103に実装されるアンテナ112との距離を一定以上に保つためのものであり、RF吸収材としの機能を有する材料も使用される。
以上のように構成される従来の金属対応RFIDタグ1000においては、スペーサ部102の厚みを大きくする必要があるため、金属対応RFIDタグ100本体の厚みが非常に大きくなり、取り扱いにくく、用途も限定されている。
ところで、表面インピーダンスの高いものをアンテナ近傍に配置することができれば、その高い表面インピーダンスによりインピーダンス面に入射したエネルギーが同相反射され、アンテナ性能を向上させることが知られている。
高い表面インピーダンスを有するシート状構造体としてEBG(Electromagnetic
BandGap)構造があり、このシート状構造体とICチップとの間の整合をとるものをシート状構造体の上に置き、シート状構造体の同相反射周波数でアンテナ導体とICチップとの整合を図る方法も提案されている(例えば、特許文献1参照)。
特許文献1では、図21(B)に示されるように、シート状構造体は、EBG構造体3の単位構造5からなり、単位構造10はトップ電極11と、グランド電極12と、トップ電極11とグランド電極12とを接続するビア13と、トップ電極11とグランド電極12との間に挟まれた誘電体と、誘電体内に配置された浮遊キャパシタ電極15とで構成されている。
しかし、特許文献1に記載のアンテナ装置のシート状構造体においては、ビアを形成する工程が含まれるため製造工程自体が複雑になり、安価に作製することが困難であった。
そこで、発明者は、以上の問題に対処すべく、上記実施形態、変形例を発案するに至った。