JP6459695B2 - 非水系電解液二次電池 - Google Patents

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Description

本発明は非水系電解液及びそれを用いた非水系電解液二次電池に関するものである。
含リチウム遷移金属酸化物を正極に用い、非水溶媒を電解液に用いるリチウム非水系電解液二次電池は、高いエネルギー密度を実現できることから、携帯電話、ラップトップコンピュータ等の小型電源から、自動車や鉄道、ロードレベリング用の大型電源まで広範な用途に適用されている。しかしながら、近年の非水系電解液電池に対する高性能化の要求はますます高まっており、二次電池の各種特性の改善が強く要求されている。
リチウム非水系電解液二次電池においては、エチレンカーボネートやプロピレンカーボネート等の環状カーボネート類、ジメチルカーボネートやジエチルカーボネートやエチルメチルカーボネート等の鎖状カーボネート類、γ−ブチロラクトンやγ−バレロラクトン等の環状カルボン酸エステル類、酢酸メチルや酢酸エチルやプロピオン酸メチル等の鎖状カルボン酸エステル類の非水溶媒と、LiPFやLiBFやLiAsFやLiClOやLiCFSOやLiN(CFSO等の溶質(電解質)とを含有する非水系電解液が用いられる。
このような非水系電解液を用いた非水系電解液二次電池では、その非水系電解液の組成によって反応性が異なるため、非水系電解液により電池特性が大きく変わることになる。非水系電解液二次電池の負荷特性、サイクル特性、保存特性等の電池特性を改良したり、過充電時の電池の安全性を高めたりするために、非水系電解液中の非水溶媒や電解質について種々の検討がなされている。
例えば特許文献1には、リチウムマンガン複合酸化物を活物質とする正極と、金属リチウム若しくはその合金、又はリチウム化合物を用いる負極と、非水電解液とからなるリチウムマンガン二次電池において、正極に脱水剤を備えることによって、充放電サイクル特性に優れたリチウムマンガン二次電池を提供する技術が開示されている。当該文献では、各種脱水剤を正極に予め含有させておくことで、マンガンの溶出が少なく、初期容量及び10サイクル後の容量維持率が向上することが開示されている。
特許文献2には、鎖状炭酸エステル、飽和環状炭酸エステル、及び不飽和環状炭酸エステルの混合溶媒、特定の鎖状イソシアナト化合物を含有する非水電解液によって、25℃、45℃におけるサイクル試験後の容量維持率が向上することが開示されている。
特許文献3には、ケイ素を構成元素として有する特定の負極を備える二次電池において、イソシアネート基および電子吸引性基を有するイソシアネート化合物を含有する電解液を用いることで、23℃において初期充放電特性を確保しつつサイクル特性が向上することが開示されている。
特許文献4には、特定の表面含酸素率である炭素質材料からなる負極活物質と、1,6−ジイソシアナトヘキサン等のイソシアネート基を有する化合物を含有する非水系電解液とを同時使用することで、高温時サイクル特性を改善させ、低温放電特性の劣化が小さい電池を実現する技術が開示されている。
非特許文献1には、テトラメチレンスルホンとパラトルエンスルホニルイソシアネートとを混合して用いた電解液が、熱安定性に優れ、リチウムイオン電池特性向上に資するという技術が開示されている。
特開2000−285961号公報 特開2006−164759号公報 特開2009−245923号公報 特開2013−38072号公報
Journal of Power Sources 202(2012)322−331
しかしながら、近年の非水系電解液二次電池の特性改善への要求はますます高まっており、エネルギー密度、出力性能、寿命、高温耐性、低温特性、高負荷放電特性等の各種性能を高いレベルで併せ持つことが求められているが、上記特許文献1〜4および上記非特許文献1に開示の技術を含めて、そのような二次電池は未だ達成されていない。中でも、二次電池の初期インピーダンスの増加を抑えつつ、高温サイクル特性を向上させることが難しいという問題があった。自動車などでの使用では、電池の抵抗が問題とされることが多く、また、用途として10年を越える長期の信頼性が要求されるため、近年特に問題となっていた。
また、本発明の発明者らによる検討によれば、特許文献1に記載の脱水材を正極に含有させる方法では、その後の電極作製や電池作製の工程において、パラトルエンスルホニルイソシアネートは空気中の水蒸気と反応してしまい、品質が変化してしまうことが見出された。また、特許文献2、特許文献3に記載のベンゼンスルフォニルイソシアネートを含有させた電解液を用いると、高負荷放電特性が悪化するという問題が見出された。さらに、本発明の発明者らによる検討によれば、特許文献4に記載の1,6−ジイソシアナトヘキサンを含有させた電解液を用いると、初期インピーダンスが著しく増加してしまうという問題点が見出された。非特許文献1に記載のパラトルエンスルホニルイソシアネートをテトラメチレンスルホンに含有させた電解液は粘度が極めて高く、電解液に用いた電池の充放電が行えずに、実用に堪えないという問題点が見出された。
本発明は、上述の課題に鑑みてなされたものである。即ち本発明は、非水系電解液二次電池に関して、初期インピーダンスの増加を抑えつつ、高負荷放電特性に優れ、かつ高温サイクル特性に優れる二次電池を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、特定の化合物を非水系電解液中に含有させることによって、上記課題を解決できることを見出し、本発明の完成に至った。
本発明の要旨は、以下に示す通りである。
〔1〕
金属イオンを吸蔵及び放出可能な正極と、金属イオンを吸蔵及び放出可能な負極と、非
水溶媒と該非水溶媒に溶解される電解質とを含む非水系電解液とを備えた非水系電解液二
次電池であって、
該負極の負極活物質が炭素質材料からなり
該非水系電解液が、環状カーボネート及び鎖状カーボネートのうち少なくとも一方を含
有し、
更に、下記一般式(1)で表される化合物を含有していることを特徴とする非水系電解
液二次電池。
Figure 0006459695
(式(1)中、R〜Rはそれぞれ独立して、水素原子、フッ素原子またはフッ素置換されていてもよい炭化水素基であり、R〜Rのうち少なくとも一つはフッ素原子またはフッ素置換されていてもよい炭化水素基である。R〜Rにフッ素原子を含む場合、R〜Rのうち少なくとも4つ以上にフッ素原子を含む。nは0または1である。n=0の場合、芳香環とSが直接結合することを意味する。)
〔2〕
前記非水系電解液が、前記一般式(1)で表される化合物を、非水系電解液全量に対して0.01質量%以上2質量%以下の含有率で含有していることを特徴とする〔1〕に記載の非水系電解液二次電池。
〔3〕
前記正極が、スピネル型構造を有するリチウムマンガン複合酸化物またはリチウム鉄燐酸化合物のうち少なくとも一方を含有することを特徴とする〔1〕または〔2〕に記載の非水系電解液二次電池。
〔4〕
前記正極が、リチウム鉄燐酸化合物を含有することを特徴とする〔3〕に記載の非水系電解液二次電池。
〔5〕
前記一般式(1)中のR〜Rのうち少なくとも一つはフッ素原子または炭化水素基であることを特徴とする〔1〕ないし〔4〕のいずれか一つに記載の非水系電解液二次電池。
〔6〕
前記非水溶媒として環状カーボネート及び鎖状カーボネートを含有することを特徴とする〔1〕ないし〔6〕のいずれか一つに記載の非水系電解液二次電池。
〔7〕
前記非水溶媒の組成に関して、環状カーボネート及び鎖状カーボネートの合計に対する環状カーボネートの割合が25体積%以上であることを特徴とする〔6〕に記載の非水系電解液二次電池。
〔8〕
前記鎖状カーボネートとして、非対称鎖状カーボネートを含有することを特徴とする〔1〕ないし〔7〕のいずれか一つに記載の非水系電解液。
〔9〕
前記非水系電解液が、フッ素原子を有する環状カーボネート、炭素―炭素不飽和結合を有する環状カーボネート、ジフルオロリン酸塩、フルオロ硫酸塩、一般式(1)で示される以外のイソシアナト基を有する化合物、シアノ基を有する化合物、環状スルホン酸エステル、及びジカルボン酸錯体塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物を含有することを特徴とする〔1〕ないし〔8〕のいずれか一つに記載の非水系電解液二次電池。
本発明の非水系電解液によれば、初期インピーダンスの増加を抑えつつ、高負荷放電特
性に優れ、かつ高温サイクル特性に優れる非水系電解液二次電池を提供することができる。
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明するが、以下に記載する構成要件の説明は、本発明の実施態様の一例(代表例)であり、本発明は、これらの具体的内容に限定はされず、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
[1.非水系電解液]
本発明の非水系電解液は、非水溶媒と該非水溶媒に溶解される電解質とを含む非水系電解液であり、上記一般式(1)で示される化合物を含有する。以下、前記電解質、非水系溶媒、そして一般式(1)で示される化合物の順に説明する。
<1−1.電解質>
本発明の非水系電解液に用いる電解質は、特に限定されず、目的とする非水系電解液二次電池に応じて、任意に採用することができる。なお、電解質としてはリチウム塩を用いることが好ましい。
前記電解質の具体例としては、例えば、LiClO4、LiAsF6、LiPF6、Li
BF4、LiAlF4等の無機リチウム塩;
LiCF3SO3、LiN(FSO22、LiN(CF3SO22、LiN(C25SO22、LiN(CF3SO2)(C25SO2)、LiN(CF3SO2)(C37SO2)、L
iN(CF3SO2)(FSO2)、リチウム環状1,2−エタンジスルホニルイミド、リ
チウム環状1,3−プロパンジスルホニルイミド、リチウム環状1,2−パーフルオロエタンジスルホニルイミド、リチウム環状1,3−パーフルオロプロパンジスルホニルイミド、リチウム環状1,4−パーフルオロブタンジスルホニルイミド、LiC(CF3SO23、LiPF4(CF32、LiPF4(C252、LiPF4(CF3SO22、LiPF4(C25SO22、LiBF3(CF3)、LiBF3(C25)、LiBF2(CF32、LiBF2(C252、LiBF2(CF3SO22、LiBF2(C25SO22等の含フッ素有機リチウム塩;
KPF6、NaPF6、NaBF4、CF3SO3Na等のナトリウム塩又はカリウム塩;
等が挙げられる。
これらのうち、LiPF6、LiBF4、LiCF3SO3、LiN(FSO22、LiN(CF3SO22、LiN(C25SO22、リチウム環状1,2−パーフルオロエタン
ジスルホニルイミドが好ましく、LiPF6、LiBF4、LiCF3SO3、LiN(FSO22、LiN(CF3SO22、LiN(CFSO2)(FSO2)がより好ましく、
特にLiPF6、LiBF4またはLiN(CF3SO22が好ましい。
これらの電解質は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。なかでも、無機リチウム塩の2種の併用、無機リチウム塩と含フッ素有機リチウム塩の併用が、連続充電時のガス発生又は高温保存後の劣化が効果的に抑制されるので好ましい。
特に、LiPF6とLiBF4との併用や、LiPF6、LiBF4等の無機リチウム塩と、LiN(FSO22、LiN(CF3SO22、LiN(CF3SO2)(FSO2)、LiN(C25SO22等の含フッ素有機リチウム塩との併用が好ましい。
LiPF6とLiBF4とを併用する場合、電解質全体に占めるLiBF4の割合が、0
.001質量%以上、20質量%以下であることが好ましい。この範囲内であると、LiBF4の解離度の低さのために、非水系電解液の抵抗が高くなることが抑制されうる。
一方、LiPF6、LiBF4等の無機リチウム塩と、LiCF3SO3、LiN(CF3
SO22、LiN(C25SO22等の含フッ素有機リチウム塩とを併用する場合、電解質全体に占める無機リチウム塩の割合は、70質量%以上、99.9質量%以下であることが好ましい。この範囲内であると、一般に無機リチウム塩と比較して分子量が大きい含フッ素有機リチウム塩の割合が高くなりすぎて、非水系電解液全体に占める非水溶媒の比率が低下し、非水系電解液の抵抗が高くなることが抑制されうる。
本発明の非水系電解液の最終的な組成中におけるリチウム塩等の電解質の濃度は、本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、好ましくは0.5mol/L以上、3mol/L以下である。電解質濃度がこの下限以上であると、十分な非水系電解液のイオン伝導率が得られやすく、上限以下であると、粘度が上昇しすぎることが避けられる。以上により、良好なイオン伝導率と、二次電池の性能を確保しやすい。リチウム塩等の電解質の濃度は、より好ましくは0.6mol/L以上、更に好ましくは0.8mol/L以上、また、より好ましくは2mol/L以下、更に好ましくは1.5mol/L以下の範囲である。
特に、非水系電解液の非水溶媒がアルキレンカーボネートやジアルキルカーボネートといったカーボネート化合物を主体とする場合には、LiPF6を単独で用いてもよいが、
LiBF4と併用すると連続充電による容量劣化が抑制されるので好ましい。これらを併
用する場合のLiPF61モルに対するLiBF4の使用量は、0.005モル以上、0.4モル以下であることが好ましい。この上限以下であれば、高温保存後の電池特性が低下することが避けやすく、下限以上であれば、連続充電時のガス発生や容量劣化を避けやすい。LiBF4の使用量は、LiPF61モルに対して、好ましくは0.01モル以上、特に好ましくは0.05モル以上であり、好ましくは0.2モル以下である。
<1−2.非水溶媒>
本発明の非水系電解液が含有する非水溶媒は、環状カーボネート及び鎖状カーボネートのうち少なくとも一方を含むのであれば、その他の溶媒の使用は特に制限されないが、以下に掲げる非水溶媒の内の1種以上であることが好ましい。
非水溶媒の例としては、環状カーボネート及び鎖状カーボネート、鎖状カルボン酸エステル及び環状カルボン酸エステル、鎖状エーテル及び環状エーテル、含燐有機溶媒、含硫黄有機溶媒、含硼素有機溶媒等が挙げられる。
前記環状カーボネートの種類は、特に限定されず、例えば、アルキレンカーボネートが挙げられ、なかでもアルキレンカーボネートを構成するアルキレン基の炭素数は2〜6が好ましく、特に好ましくは2〜4である。環状カーボネートとして具体的には、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート(2−エチルエチレンカーボネート、シス及びトランス2,3−ジメチルエチレンカーボネート)等が挙げられる。
これらの中でも、誘電率が高いために非水系電解液二次電池の抵抗を低減させることができることから、環状カーボネートとしてエチレンカーボネート又はプロピレンカーボネートが好ましく、特にエチレンカーボネートが好ましい。
また、フッ素原子を有する環状カーボネート類(以下、「フッ素化環状カーボネート」と略記する場合がある)も好適に用いることができる。
フッ素化環状カーボネートとしては、炭素原子数2〜6のフッ素化アルキレン基を有する環状カーボネートが挙げられ、より具体的には、例えばフッ素化エチレンカーボネート及びその誘導体である。前記フッ素化エチレンカーボネート及びその誘導体としては、例
えば、エチレンカーボネート又はアルキル基(例えば、炭素原子数1〜4個のアルキル基)で置換されたエチレンカーボネートのフッ素化物が挙げられ、中でもフッ素原子が1〜8個のエチレンカーボネートのフッ素化物が好ましい。
フッ素化エチレンカーボネート及びその誘導体としてより具体的には、モノフルオロエチレンカーボネート、4,4−ジフルオロエチレンカーボネート、4,5−ジフルオロエチレンカーボネート、4−フルオロ−4−メチルエチレンカーボネート、4,5−ジフルオロ−4−メチルエチレンカーボネート、4−フルオロ−5−メチルエチレンカーボネート、4,4−ジフルオロ−5−メチルエチレンカーボネート、4−(フルオロメチル)−エチレンカーボネート、4−(ジフルオロメチル)−エチレンカーボネート、4−(トリフルオロメチル)−エチレンカーボネート、4−(フルオロメチル)−4−フルオロエチレンカーボネート、4−(フルオロメチル)−5−フルオロエチレンカーボネート、4−フルオロ−4,5−ジメチルエチレンカーボネート、4,5−ジフルオロ−4,5−ジメチルエチレンカーボネート、4,4−ジフルオロ−5,5−ジメチルエチレンカーボネート等が挙げられる。
中でも、モノフルオロエチレンカーボネート、4,4−ジフルオロエチレンカーボネート、4,5-ジフルオロエチレンカーボネート及び4,5−ジフルオロ−4,5−ジメチ
ルエチレンカーボネートよりなる群から選ばれる少なくとも1種がより好ましい。前記4,5−ジフルオロエチレンカーボネートとしては、シス体よりもトランス体が好ましい。非水系電解液に高イオン伝導性を与え、かつ二次電池の電極上に好適に界面保護皮膜を形成するためである。
尚、フッ素化環状カーボネートは、溶媒のみならず下記<1−4.添加剤>に記載の添加剤としても有効な機能を発現する。フッ素化環状カーボネートを溶媒兼添加剤として用いる場合の配合量に明確な境界は存在せず、本明細書において、非水溶媒としての配合量及び添加剤の配合量として記載した配合量をそのまま踏襲できる。
前記鎖状カーボネートの種類は、特に限定されず、例えば、ジアルキルカーボネートが挙げられる。これらの中でも、ジアルキルカーボネートを構成するアルキル基の炭素数が、それぞれ1〜5のものが好ましく、1〜4のものがより好ましく、1〜3のものが特に好ましい。具体的には、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、メチル−n−プロピルカーボネート、エチル−n−プロピルカーボネート、ジ−n−プロピルカーボネート、等が好ましいジアルキルカーボネートとして挙げられる。
これらの中でも、工業的な入手性という観点からは、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、ジエチルカーボネートが好ましく、その非対称性による電解液融点低下の観点からはエチルメチルカーボネート、メチル−n−プロピルカーボネート、エチル−n−プロピルカーボネートが好ましい。
また、フッ素原子を有する鎖状カーボネート類(以下、「フッ素化鎖状カーボネート」と略記する場合がある)も好適に用いることができる。フッ素化鎖状カーボネートが有するフッ素原子の数は、1以上であれば特に制限されないが、通常6以下であり、好ましくは4以下、より好ましくは3以下である。フッ素化鎖状カーボネートが複数のフッ素原子を有する場合、それらは互いに同一の炭素に結合していてもよく、異なる炭素に結合していてもよい。フッ素化鎖状カーボネートの具体例としては、フッ素化ジメチルカーボネート、フッ素化エチルメチルカーボネート、フッ素化ジエチルカーボネート等が挙げられる。
前記フッ素化ジメチルカーボネートとしては、フルオロメチルメチルカーボネート、ジフルオロメチルメチルカーボネート、トリフルオロメチルメチルカーボネート、ビス(フ
ルオロメチル)カーボネート、ビス(ジフルオロ)メチルカーボネート、ビス(トリフルオロメチル)カーボネート等が挙げられる。
前記フッ素化エチルメチルカーボネートとしては、2−フルオロエチルメチルカーボネート、エチルフルオロメチルカーボネート、2,2−ジフルオロエチルメチルカーボネート、2−フルオロエチルフルオロメチルカーボネート、エチルジフルオロメチルカーボネート、2,2,2−トリフルオロエチルメチルカーボネート、2,2−ジフルオロエチルフルオロメチルカーボネート、2−フルオロエチルジフルオロメチルカーボネート、エチルトリフルオロメチルカーボネート等が挙げられる。
前記フッ素化ジエチルカーボネートとしては、エチル−(2−フルオロエチル)カーボネート、エチル−(2,2−ジフルオロエチル)カーボネート、ビス(2−フルオロエチル)カーボネート、エチル−(2,2,2−トリフルオロエチル)カーボネート、2,2−ジフルオロエチル−2'−フルオロエチルカーボネート、ビス(2,2−ジフルオロエ
チル)カーボネート、2,2,2−トリフルオロエチル−2'−フルオロエチルカーボネ
ート、2,2,2−トリフルオロエチル−2',2'−ジフルオロエチルカーボネート、ビス(2,2,2−トリフルオロエチル)カーボネート等が挙げられる。
尚、フッ素化鎖状カーボネートは、非水溶媒のみならず下記<1−4.添加剤>に記載の添加剤としても有効な機能を発現する。フッ素化鎖状カーボネートを溶媒兼添加剤として用いる場合の配合量に明確な境界は存在せず、本明細書において、非水溶媒としての配合量及び添加剤の配合量として記載した配合量をそのまま踏襲できる。
上記鎖状カルボン酸エステルの種類も特に限定されず、例えば、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸−n−プロピル、酢酸−i−プロピル、酢酸−n−ブチル、酢酸−i−ブチル、酢酸−t−ブチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸−n−プロピル、プロピオン酸−i−プロピル、プロピオン酸−n−ブチル、プロピオン酸−i−ブチル、プロピオン酸−t−ブチル、酪酸メチル、酪酸エチル等が挙げられる。
これらの中でも、酢酸メチル、酢酸エチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、酪酸メチル、酪酸エチルが、工業的な入手性や非水系電解液二次電池における種々の特性がよい点で好ましい。
更に上記環状カルボン酸エステルについても特に限定されず、例えば、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、δ−バレロラクトン等が挙げられる。
これらの中でも、γ−ブチロラクトンが、工業的な入手性や非水系電解液二次電池における種々の特性がよい点で好ましい。
上記鎖状エーテルの種類に関しても特に限定されず、例えば、ジメトキシメタン、ジメトキシエタン、ジエトキシメタン、ジエトキシエタン、エトキシメトキシメタン、エトキシメトキシエタン等が挙げられる。
中でも、ジメトキシエタン、ジエトキシエタンが、工業的な入手性や非水系電解液二次電池における種々の特性がよい点で好ましい。
また、環状エーテルも特に限定はされず、例えば、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン等が挙げられる。
また、上記含燐有機溶媒に関しても特に限定されず、例えば、燐酸トリメチル、燐酸トリエチル、燐酸トリフェニル、燐酸トリス(2,2,2−トリフルオロエチル)、亜燐酸トリメチル、亜燐酸トリエチル、亜燐酸トリフェニル、トリメチルホスフィンオキシド、トリエチルホスフィンオキシド、トリフェニルホスフィンオキシド等が挙げられる。
上記含硫黄有機溶媒の種類についても、特に限定されず、例えば、エチレンサルファイト、1,3−プロパンスルトン、1,4−ブタンスルトン、メタンスルホン酸メチル、メタンスルホン酸エチル、ブスルファン、スルホラン、スルホレン、ジメチルスルホン、エチルメチルスルホン、ジフェニルスルホン、メチルフェニルスルホン、ジブチルジスルフィド、ジシクロヘキシルジスルフィド、テトラメチルチウラムモノスルフィド、N,N−ジメチルメタンスルホンアミド、N,N−ジエチルメタンスルホンアミド等を挙げることができる。
上記含硼素有機溶媒も、特に限定されず、例えば、2,4,6−トリメチルボロキシン、2,4,6−トリエチルボロキシン等のボロキシン等が挙げられる。
以上説明した非水溶媒の中でも、鎖状カーボネート及び環状カーボネート又は鎖状カルボン酸エステル及び環状カルボン酸エステルが、非水系電解液非水系電解液二次電池における種々の特性がよい点で好ましく、それらのなかでも、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、2,2,2−トリフルオロエチルメチルカーボネート、ビス(2,2,2−トリフルオロエチル)カーボネート、酢酸メチル、酢酸エチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、酪酸メチル、酪酸エチル、γ−ブチロラクトンがより好ましく、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、2,2,2−トリフルオロエチルメチルカーボネート、酢酸メチル、酢酸エチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、酪酸エチルがより好ましい。
これらの非水溶媒は1種を単独で用いても、2種類以上を併用してもよいが、2種以上の併用が好ましい。例えば、環状カーボネートを用いる場合は鎖状カーボネート類や鎖状エステル類等の低粘度溶媒との併用が好ましい。
非水溶媒の好ましい組合せの1つは、環状カーボネート類と鎖状カーボネート類を主体とする組合せである。中でも、非水溶媒全体に占める環状カーボネート類と鎖状カーボネート類との合計が、好ましくは80体積%以上、より好ましくは85体積%以上、特に好ましくは90体積%以上であり、かつ環状カーボネート類と鎖状カーボネート類との合計に対する環状カーボネート類の容量が、好ましくは10体積%以上、より好ましくは15体積%以上、更に好ましくは20体積%以上、特に好ましくは25体積%以上、最も好ましくは27体積%以上であり、好ましくは70体積%以下、より好ましくは60体積%以下、更に好ましくは50体積%以下、より更に好ましくは40体積%以下、特に好ましくは35体積%以下、最も好ましくは32体積%以下のものである。これらの非水溶媒の組み合わせを用いて作製された電池では、非水系電解液二次電池作製時の電解液含浸速度と高温保存特性(特に、高温保存後の残存容量及び高負荷放電容量)のバランスがよくなるので好ましい。
環状カーボネート類と鎖状カーボネート類の好ましい組み合わせの例としては、エチレンカーボネートと鎖状カーボネート類の組み合わせが挙げられ、例えば、エチレンカーボネートとジメチルカーボネート、エチレンカーボネートとジエチルカーボネート、エチレンカーボネートとエチルメチルカーボネート、エチレンカーボネートとジメチルカーボネートとジエチルカーボネート、エチレンカーボネートとジメチルカーボネートとエチルメチルカーボネート、エチレンカーボネートとジエチルカーボネートとエチルメチルカーボネート、エチレンカーボネートとジメチルカーボネートとジエチルカーボネートとエチルメチルカーボネート等が挙げられる。
これらのエチレンカーボネートと鎖状カーボネート類との組み合わせに、更にプロピレンカーボネートを加えた組み合わせも好ましい。プロピレンカーボネートを含有する場合、エチレンカーボネートとプロピレンカーボネートの体積比は、99:1〜40:60が好ましく、特に好ましくは95:5〜50:50である。更に、非水溶媒全体に占めるプロピレンカーボネートの量を、0.1体積%以上、10体積%以下とすると、エチレンカーボネートと鎖状カーボネート類との組み合わせの特性を維持したまま、更に、優れた放電負荷特性が得られるので好ましい。非水溶媒全体に占めるプロピレンカーボネートの量は、より好ましくは1体積%、特に好ましくは2体積%以上であり、また、より好ましくは8体積%以下、特に好ましくは5体積%以下である。
これらの中で、鎖状カーボネート類として非対称鎖状カーボネート類を含有するものが更に好ましく、
特に、エチレンカーボネートとジメチルカーボネートとエチルメチルカーボネート、エチレンカーボネートとジエチルカーボネートとエチルメチルカーボネート、エチレンカーボネートとジメチルカーボネートとジエチルカーボネートとエチルメチルカーボネートを含有するもの、
或いはこれらに加えて更にプロピレンカーボネートを含有するものが、二次電池のサイクル特性と放電負荷特性のバランスがよいので好ましい。特に、非対称鎖状カーボネート類がエチルメチルカーボネートであるものが好ましく、また、ジアルキルカーボネートを構成するアルキル基の炭素数が1〜2であるものが好ましい。
本発明において好ましい非水溶媒の他の例は、鎖状カルボン酸エステル類を含有するものである。特に、上記、環状カーボネート類と鎖状カーボネート類の混合溶媒に、鎖状カルボン酸エステル類を含有するものが、二次電池の放電負荷特性向上の観点から好ましく、この場合、鎖状カルボン酸エステル類としては、酢酸メチル、酢酸エチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、酪酸メチルが、特に好ましい。非水溶媒に占める鎖状カルボン酸エステル類の容量は、好ましくは5体積%以上、より好ましくは8体積%以上、特に好ましくは10体積%以上であり、好ましくは50体積%以下、より好ましくは35体積%以下、特に好ましくは30体積%以下、とりわけ好ましくは25体積%以下である。
<1−3.一般式(1)で示される化合物>
本発明の非水系電解液は、下記一般式(1)で示される化合物(以下、「特定NCO化合物」と称する場合がある)を必須成分として含有する。本発明の非水系電解液においては、特定NCO化合物のうち1種を用いても、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
Figure 0006459695
(式(1)中、R〜Rはそれぞれ独立して、水素原子、フッ素原子またはフッ素置換されていてもよい炭化水素基であり、R〜Rのうち少なくとも一つはフッ素原子またはフッ素置換されていてもよい炭化水素基である。R〜Rにフッ素原子を含む場合、R〜Rのうち少なくとも4つ以上にフッ素原子を含む。nは0または1である。n=
0の場合、芳香環とSが直接結合することを意味する。)
本発明では、特定NCO化合物を含有する非水系電解液を使用することで、非水系電解液二次電池の高負荷放電特性と高温サイクル特性を両立させることが可能となる。この作用・原理は明確ではないが、本発明者らは以下のように考える。ただし、本発明は、以下に記述する作用・原理に限定されるものではない。
本発明の特定NCO化合物は、化合物自身が充電負極上にて還元され、その還元生成物により被膜状の構造物を形成することで、負極を保護するものと考えられる。この被膜状の構造物は、絶縁体であるがゆえに電解液の分解という副反応を抑制すると同時に、リチウム等の金属イオン伝導体であるがゆえに電極反応を阻害しないため、非水系電解液二次電池の充放電効率を向上させる。
このように充放電効率を向上させる観点から、還元生成物がリチウム等の金属イオンと適切に相互作用できる分極性官能基を有し、かつ、適度な緻密さで堆積でき、かつ、負極上に固定される化合物が好ましい。被膜上構造物が緻密でない場合や負極上から脱離してしまう場合は、電解液の継続的な分解反応を抑制することができずサイクル特性の悪化を招き、逆に緻密すぎる場合は、リチウム等の金属イオンの速やかな伝導を妨げてしまうため高負荷放電特性を損なってしまう。
この点、本発明の特定NCO化合物はスルホニル基やイソシアナト基のような分極性官能基を持つため、リチウム等の金属イオンと適切に相互作用することができる。また同時に、分子構造中のアリール基に置換基を有するため、負極活物質の主成分として炭素質材料を用いた場合、その炭素質材料中の芳香環とのπ−π相互作用が適切な強さであり、還元生成物が負極上に固定されるが、その堆積が緻密すぎず粗すぎず好適な程度であると考えられる。
上記一般式(1)中のnは0または1であり、出力特性、サイクル特性向上等の観点から0であることが好ましい。一般式(1)で示される化合物が分解した際に、フェノール誘導体の発生がなく、非水系電解液二次電池の種々の特性を劣化させることがないためである。
上記一般式(1)中のR〜Rは、それぞれ独立して、水素原子、フッ素原子またはフッ素置換されていてもよい炭化水素基であり、R〜Rのうち少なくとも一つはフッ素原子またはフッ素置換されていてもよい炭化水素基による置換基である。R〜Rのうち、化合物の安定性の観点から少なくともRに置換されていることが好ましい。
炭化水素基としては、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アルキニル基などが挙げられる。好ましくはアルキル基、アルケニル基、アルキニル基であり、より好ましくはアルキル基である。
アルキル基の場合は、通常炭素数6以下の、分岐していてもよいアルキル基であり、好ましくは3以下、より好ましくは炭素数2以下、最も好ましくは炭素数1の場合である。また、R〜Rの炭素数の合計は、10以下が好ましく、より好ましくは5以下、更に好ましくは3以下、特に好ましくは2以下であり、最も好ましくは合計の炭素数が1の場合である。
アルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、s−ブチル基、i−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、t−アミル基、ヘキシル基、が挙げられ、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基が好ましく、メチル基、エチル基がより好ましく、メチル基が最も好ましい。上記のアルキル基であると、置換基の立体障害が好適であるため、電極反応の阻害を最小限に抑えつつ、副反応の抑制が可能である。
また、上記のアルキル基は、一部または全ての水素がフッ素で置換されていてもよい。一部または全ての水素がフッ素で置換されているアルキル基の場合、通常炭素数4以下の、分岐していてもよいフッ素で置換されているアルキル基であり、好ましくは炭素数2以下、最も好ましくは炭素数1の場合である。
一部または全ての水素がフッ素で置換されているアルキル基の具体例としては、モノフルオロメチル基、ジフルオロメチル基、トリフルオロメチル基、2−フルオロエチル基、2,2−ジフルオロエチル基、2,2,2−トリフルオロエチル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基、4,4,4−トリフルオロブチル基が挙げられ、モノフルオロメチル基、ジフルオロメチル基、トリフルオロメチル基、2−フルオロエチル基、2,2−ジフルオロエチル基、2,2,2−トリフルオロエチル基が好ましく、モノフルオロメチル基、ジフルオロメチル基、トリフルオロメチル基がより好ましく、トリフルオロメチル基が特に好ましい。上記のフッ素で置換されているアルキル基であると、上述の立体障害が適切であり、かつ生産が比較的容易であるためである。
一部または全ての水素がフッ素で置換されていてもよいアルキル基以外の炭化水素基として、一部または全ての水素がフッ素で置換されていてもよいシクロアルキル基、アルケニル基、アルキニル基等が挙げられる。
シクロアルキル基の具体例としては、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基が挙げられ、シクロヘキシル基が好ましい。これらは一部または全てまたは全ての水素がフッ素で置換されていてもよい。上述のシクロアルキル基であると、立体障害が適切であり、かつ生産が比較的容易であるためである。
アルケニル基の具体例としては、エテニル基、プロペニル基、ブテニル基、ペンテニル基が挙げられ、エテニル基が好ましい。これらは一部または全てまたは全ての水素がフッ素で置換されていてもよい。上述のアルケニル基であると、立体障害が適切であり、かつ生産が比較的容易であるためである。
アルキニル基の具体例としては、エチニル基、プロピニル基、ブチニル基、ペンチニル基が挙げられ、エチニル基が好ましい。これらは一部または全てまたは全ての水素がフッ素で置換されていてもよい。上述のアルキニル基であると、立体障害が適切であり、かつ生産が比較的容易であるためである。
上記一般式(1)中のR〜Rは、それぞれ独立して、水素、フッ素原子または炭化水素基であることが好ましい。中でも、R〜Rがそれぞれ独立して、フッ素原子またはメチル基であることが好ましい。置換基が適切なサイズであるため、上述の被膜状構造物の堆積が適切に行われ、抵抗を最小限に抑えつつ、副反応の抑制が可能であるためである。
上記一般式(1)中、R〜Rにフッ素原子を含む場合、R〜Rのうち少なくとも4つ以上にフッ素原子を含み、好ましくはR〜Rの5つ全てにフッ素原子を含む。一方、R〜Rに炭化水素基またはフッ素置換炭化水素基の場合は、R〜Rのうち3つ以下に炭化水素基またはフッ素置換炭化水素基を含むことが好ましく、より好ましくはR〜Rのうち2つ以下に炭化水素基またはフッ素置換炭化水素基を含み、最も好ましくはR〜Rのうち1つに炭化水素基またはフッ素置換炭化水素基を含む。上記の置換基の個数範囲は、置換基の大きさが理由であり、フッ素原子は炭化水素基やフッ素置換炭化水素基よりも極めて小さいためである。上記の範囲であれば、上述の被膜状構造物の堆積が緻密すぎず粗すぎず好適な程度に調整できるため好ましい。
上記一般式(1)中、R〜Rに含まれるフッ素原子の数は、10以下であることが好ましく、8以下であることがより好ましく、6以下であることが特に好ましく、5以下
であることが最も好ましい。R〜Rに含まれるフッ素原子が多過ぎると、特定NCO化合物の非水溶媒への溶解度が低下してしまうためである。
本発明における特定NCO化合物の分子量に特に制限はなく、本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、通常350以下、好ましくは300以下、より好ましくは290以下、特に好ましくは280以下が実用的である。上記分子量の範囲内にあると、非水系電解液に対する溶解性に優れ、より効果的に優れた効果を奏しやすくなる。
一般式(1)で示される特定NCO化合物の好ましい具体例としては、以下のものが挙げられる。特定NCO化合物の中でも非水系電解液中に溶解性に優れ、生産性が高めやすいためである。
Figure 0006459695
より好ましい例としては、以下のものが挙げられる。立体障害が小さく、電極表面での反応性が最適であるためである。
Figure 0006459695
特に好ましい例としては、以下の化合物が挙げられる。上記の還元生成物による被膜状の堆積物の緻密さを好適な程度に調整できるためである。
Figure 0006459695
最も好ましいのは下記構造式(3)で表される特定NCO化合物である。工業的に入手しやすいため、非水系電解液の製造工程が簡略化できるためである。
Figure 0006459695
上記特定NCO化合物に関して、その製造方法に特に制限はなく、公知の方法を任意に選択して製造することが可能である。
非水系電解液中の特定NCO化合物の割合は、本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、通常、合計で0.01質量%以上、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.2質量%以上、さらに好ましくは0.3質量%以上、特に好ましくは0.5質量%以上、最も好ましくは0.6質量%以上であり、通常、2質量%以下、好ましくは1.4質量%以下、より好ましくは1.3質量%以下、特に好ましくは1.2質量%以下、最も好ましくは1.1質量%以下である。上記の濃度であれば、還元生成物が適度に負極
表面を覆い、電極界面での作用がより好適に進行するため、電池特性を最適にすることが可能となる。
特定NCO化合物は、非水系電解液に含有させ実際に非水系電解液二次電池の作製に供すると、その電池を解体して再び非水系電解液を抜き出しても、その中の含有量が著しく低下している場合が多い。従って、電池から抜き出した非水系電解液から、特定NCO化合物が極微量でも検出できるものは本発明に含まれるとみなされる。また、特定NCO化合物は、非水系電解液として実際に非水系電解液二次電池の作製に供すると、その電池を解体して再び抜き出した非水系電解液には特定NCO化合物が含有されていなかった場合であっても、非水系電解液二次電池の他の構成部材である正極、負極若しくはセパレータ上で検出される場合も多い。従って、正極、負極、セパレータの少なくとも一構成部材から、特定NCO化合物が検出された場合は、その合計量を非水系電解液に含まれていたと仮定して、非水系電解液中の含有量として算定することが適切と考えられる。
<1−4.添加剤>
本発明の非水系電解液は、本発明の効果を著しく損なわない範囲において、各種の添加剤を含有していてもよい。添加剤は、従来公知のものを任意に用いることができる。添加剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
添加剤の例としては、過充電防止剤や、二次電池の高温保存後の容量維持特性やサイクル特性を改善するための助剤等が挙げられる。これらの中でも、高温保存後の容量維持特性や抵抗増加を抑制するための助剤として、フッ素原子を有する環状カーボネート、炭素―炭素不飽和結合を有する環状カーボネート、ジフルオロリン酸塩、フルオロ硫酸塩、一般式(1)で示される以外のイソシアナト基を有する化合物、シアノ基を有する化合物、環状スルホン酸エステル、及びジカルボン酸錯体塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物(以下、「特定添加剤」と略記する場合がある)を含有することが好ましい。以下、特定添加剤とその他添加剤に分けて説明する。
<1−4−1.特定添加剤>
特定添加剤はいずれも、負極上にて還元された特定NCO化合物と反応し、電極反応に好適な被膜状構造物を協奏的に形成するものと考えられる。この作用・原理は、以下に記述する作用・原理に限定されるものではないが、本発明者らは以下のように推測する。(i)フッ素原子を有する環状カーボネート、(ii)炭素―炭素不飽和結合を有する環状カーボネート、(iii)ジフルオロリン酸塩、(iv)フルオロ硫酸塩、(v)一般式(1)で示される以外のイソシアナト基を有する化合物、(vi)シアノ基を有する化合物、(vii)環状スルホン酸エステル、及び(viii)ジカルボン酸錯体塩について、特定NCO化合物の還元により負極表面にて形成された求核種Nuとの推定反応機構を以下の反応式(1)に示す。
Figure 0006459695
(反応式中、Catは塩を構成するカチオンである。Qはフッ素を含む2価の有機基、Qは炭素―炭素不飽和結合を含む2価の有機基、QおよびQは1価の有機基、Qは2価の有機基、Qは単結合または2価の有機基、Xは錯体中心元素を含む2価の有機基をそれぞれ表す。)
上記反応式(1)に示すように、特定添加剤はいずれも求核攻撃受容部位を内包しており、示した各反応を開始反応として、特定NCO化合物と特定添加剤を原料とする、電極反応を好適にサポートする被膜状の構造物を協奏的に形成するものと推定される。
特定添加剤の中でも、フッ素原子を有する環状カーボネート、ジフルオロリン酸塩、フルオロ硫酸塩、一般式(1)で示される以外のイソシアナト基を有する化合物、シアノ基を有する化合物、環状スルホン酸エステル、ジカルボン酸錯体塩が好ましく、より好ましくは、フッ素原子を有する環状カーボネート、ジフルオロリン酸塩、フルオロ硫酸塩、シアノ基を有する化合物、環状スルホン酸エステル、ジカルボン酸錯体塩であり、特に好ましくは、ジフルオロリン酸塩、フルオロ硫酸塩、ジカルボン酸錯体塩であり、最も好ましいのはジカルボン酸錯体塩である。化合物中の求核攻撃受容部位の求電子性が好ましく、特定NCO化合物由来の求核種Nuとの反応性が好適であるためである。
特定添加剤の分子量は、特に限定されず、本発明の効果を著しく損なわない限り任意で
あるが、50以上、250以下であるものが好ましい。この範囲であると、非水系電解液中での特定添加剤の溶解性が良好で、添加の効果を十分に発現することができる。
また、特定添加剤の製造方法にも特に制限は無く、公知の方法を任意に選択して製造することが可能である。また、市販のものを用いてもよい。
また、特定添加剤は、本発明の非水系電解液中に、いずれか1種を単独で含有させてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併有させてもよい。
<1−4−1−1.フッ素原子を有する環状カーボネート>
特定添加剤のうち、フッ素原子を有する環状カーボネート(以下、「F化カーボネート」と略記する場合がある)としては、フッ素原子を有するものであれば、特に限定されず、任意のF化カーボネートを用いることができる。
F化カーボネートが有するフッ素原子の数も、1個以上であれば特に限定されず、2個以下が特に好ましい。
F化カーボネートの例としては、フルオロエチレンカーボネート及びその誘導体等が挙げられる。
フルオロエチレンカーボネート及びその誘導体の具体例としては、フルオロエチレンカーボネート、4,4−ジフルオロエチレンカーボネート、4,5−ジフルオロエチレンカーボネート、4−フルオロ−4−メチルエチレンカーボネート、4,5−ジフルオロ−4−メチルエチレンカーボネート、4−フルオロ−5−メチルエチレンカーボネート、4,4−ジフルオロ−5−メチルエチレンカーボネート、4−(フルオロメチル)−エチレンカーボネート、4−(ジフルオロメチル)−エチレンカーボネート、4−(トリフルオロメチル)−エチレンカーボネート、4−(フルオロメチル)−4−フルオロエチレンカーボネート、4−(フルオロメチル)−5−フルオロエチレンカーボネート、4−フルオロ−4,5−ジメチルエチレンカーボネート、4,5−ジフルオロ−4,5−ジメチルエチレンカーボネート、4,4−ジフルオロ−5,5−ジメチルエチレンカーボネート等が挙げられる。
これらのF化カーボネートの中でも、フルオロエチレンカーボネート、4−(フルオロメチル)−エチレンカーボネート、4,4−ジフルオロエチレンカーボネート、4,5−ジフルオロエチレンカーボネートが好ましく、特にフルオロエチレンカーボネートは、安定な被膜状の構造物の形成に寄与することができ、最も好適に用いられる。
F化カーボネートの含有量は、特に限定されず、本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、本発明の非水系電解液100質量%中、好ましくは0.001質量%以上、10.0質量%以下である。
F化カーボネートの含有量がこの下限以上であると、非水系電解液二次電池に、十分なサイクル特性向上効果をもたらすことができる。また、この上限以下であると、非水系電解液二次電池の製造コストの増加を避けることができる。F化カーボネートの含有量は、より好ましくは0.01質量%以上、更に好ましくは0.1質量%以上、特に好ましくは0.2質量%以上、最も好ましくは0.5質量%以上、また、より好ましくは8.0質量%以下、更に好ましくは6.0質量%以下、特に好ましくは3.0質量%以下、最も好ましくは2.0質量%以下である。
尚、F化カーボネートは、添加剤のみならず、上記<1−2.非水溶媒>に記載の非水溶媒としても有効な機能を発現する。F化カーボネートを溶媒兼添加剤として用いる場合の配合量に明確な境界は存在せず、本明細書において、非水溶媒としての配合量及び添加剤の配合量として記載した配合量をそのまま踏襲できる。
<1−4−1−2.炭素―炭素不飽和結合を有する環状カーボネート>
特定添加剤のうち、炭素―炭素不飽和結合を有する環状カーボネート(以下、「不飽和カーボネート」と略記する場合がある)としては、炭素−炭素二重結合や炭素−炭素三重結合等の炭素−炭素不飽和結合を有するカーボネートであれば、特に限定されず、任意の不飽和カーボネートを用いることができる。
不飽和カーボネートの例としては、ビニレンカーボネート類、炭素−炭素不飽和結合を有する置換基で置換されたエチレンカーボネート類等が挙げられる。
ビニレンカーボネート類の具体例としては、ビニレンカーボネート、メチルビニレンカーボネート、4,5−ジメチルビニレンカーボネート等が挙げられる。
炭素−炭素不飽和結合を有する置換基で置換されたエチレンカーボネート類の具体例としては、ビニルエチレンカーボネート、4,5−ジビニルエチレンカーボネート、エチニルエチレンカーボネート、プロパルギルエチレンカーボネート等が挙げられる。
中でも、ビニレンカーボネート、ビニルエチレンカーボネート、エチニルエチレンカーボネートが好ましく、特にビニレンカーボネートは、安定な被膜状の構造物の形成に寄与することができ、より好適に用いられる。
不飽和カーボネートの含有量は、特に限定されず、本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、本発明の非水系電解液100質量%中、好ましくは0.001質量%以上、5.0質量%以下である。
不飽和カーボネートの含有量がこの下限以上であると、非水系電解液二次電池に、十分なサイクル特性向上効果をもたらすことができる。また、この上限以下であると、非水系電解液二次電池の初期の抵抗増加を避けることができる。不飽和カーボネートの含有量は、より好ましくは0.01質量%以上、更に好ましくは0.1質量%以上、特に好ましくは0.2質量%以上、また、より好ましくは4.0質量%以下、更に好ましくは3.0質量%以下、特に好ましくは2.0質量%以下である。
<1−4−1−3.ジフルオロリン酸塩>
特定添加剤のうち、ジフルオロリン酸塩としては、ジフルオロリン酸アニオンを構成要素とする塩であれば、特に限定されず、任意のジフルオロリン酸塩を用いることができる。
ジフルオロリン酸塩の例としては、ジフルオロリン酸リチウム塩、ジフルオロリン酸ナトリウム塩、ジフルオロリン酸カリウム塩、ジフルオロリン酸アンモニウム塩等が挙げられる。
中でも、ジフルオロリン酸リチウム塩が、安定な被膜状の構造物の形成に寄与することができるため、より好適に用いられる。
ジフルオロリン酸塩の含有量は、特に限定されず、本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、本発明の非水系電解液100質量%中、好ましくは0.001質量%以上、2.0質量%以下である。
ジフルオロリン酸塩の含有量がこの下限以上であると、非水系電解液二次電池に、十分なサイクル特性向上効果をもたらすことができる。また、この上限以下であると、非水系電解液二次電池の製造コストの増加を避けることができる。ジフルオロリン酸塩の含有量は、より好ましくは0.01質量%以上、更に好ましくは0.1質量%以上、特に好ましくは0.2質量%以上、最も好ましくは0.3質量%以上、また、より好ましくは1.5質量%以下、更に好ましくは1.2質量%以下、特に好ましくは1.1質量%以下である。
<1−4−1−4.フルオロ硫酸塩>
特定添加剤のうち、フルオロ硫酸塩としては、フルオロ硫酸アニオンを構成要素とする塩であれば、特に限定されず、任意のフルオロ硫酸塩を用いることができる。
フルオロ硫酸塩の例としては、フルオロ硫酸リチウム塩、フルオロ硫酸ナトリウム塩、フルオロ硫酸カリウム塩、フルオロ硫酸アンモニウム塩等が挙げられる。
中でも、フルオロ硫酸リチウム塩が、安定な被膜状の構造物の形成に寄与することができるため、より好適に用いられる。
フルオロ硫酸塩の含有量は、特に限定されず、本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、本発明の非水系電解液100質量%中、好ましくは0.001質量%以上、4.0質量%以下である。
フルオロ硫酸塩の含有量がこの下限以上であると、非水系電解液二次電池に、十分なサイクル特性向上効果をもたらすことができる。また、この上限以下であると、非水系電解液二次電池の製造コストの増加を避けることができ、また正極集電体に頻繁に用いられるアルミニウムや外装体に頻繁に用いられる金属缶の腐食による性能低下を避けることができる。フルオロ硫酸塩の含有量は、より好ましくは0.01質量%以上、更に好ましくは0.1質量%以上、特に好ましくは0.2質量%以上、最も好ましくは0.3質量%以上、また、より好ましくは3.0質量%以下、更に好ましくは2.5質量%以下、特に好ましくは2.0質量%以下である。
<1−4−1−5.一般式(1)で示される以外のイソシアナト基を有する化合物>
特定添加剤のうち、一般式(1)で示される以外のイソシアナト基を有する化合物(以下、「イソシアネート」と略記する場合がある)としては、特に限定されず、任意のイソシアネートを用いることができる。
イソシアネートの例としては、モノイソシアネート類、ジイソシアネート類、トリイソシアネート類等が挙げられる。
前記モノイソシアネート類の具体例としては、イソシアナトメタン、イソシアナトエタン、1−イソシアナトプロパン、1−イソシアナトブタン、1−イソシアナトペンタン、1−イソシアナトヘキサン、1−イソシアナトヘプタン、1−イソシアナトオクタン、1−イソシアナトノナン、1−イソシアナトデカン、イソシアナトシクロヘキサン、メトキシカルボニルイソシアネート、エトキシカルボニルイソシアネート、プロポキシカルボニルイソシアネート、ブトキシカルボニルイソシアネート、メトキシスルホニルイソシアネート、エトキシスルホニルイソシアネート、プロポキシスルホニルイソシアネート、ブトキシスルホニルイソシアネート、フルオロスルホニルイソシアネート等が挙げられる。
前記ジイソシアネート類の具体例としては、1,4−ジイソシアナトブタン、1,5−ジイソシアナトペンタン、1,6−ジイソシアナトヘキサン、1,7−ジイソシアナトヘプタン、1,8−ジイソシアナトオクタン、1,9−ジイソシアナトノナン、1,10−ジイソシアナトデカン、1,3−ジイソシアナトプロペン、1,4−ジイソシアナト−2−ブテン、1,4−ジイソシアナト−2−フルオロブタン、1,4−ジイソシアナト−2,3−ジフルオロブタン、1,5−ジイソシアナト−2−ペンテン、1,5−ジイソシアナト−2−メチルペンタン、1,6−ジイソシアナト−2−ヘキセン、1,6−ジイソシアナト−3−ヘキセン、1,6−ジイソシアナト−3−フルオロヘキサン、1,6−ジイソシアナト−3,4−ジフルオロヘキサン、トルエンジイソシアネート、キシレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、1,2−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、1,3−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、1,4−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、1,2−ジイソシアナトシクロヘキサン、1,3−ジイソシアナトシクロヘキサン、1,4−ジイソシアナトシクロヘキサン、ジシクロヘキシルメタン−1,1’−ジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン−2,2’−ジイソシアネー
ト、ジシクロヘキシルメタン−3,3’−ジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン−
4,4’−ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ビシクロ[2.2.1]ヘ
プタン−2,5−ジイルビス(メチル=イソシアネート)、ビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2,6−ジイルビス(メチル=イソシアネート)、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアナート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアナート等が挙げられる。
前記トリイソシアネート類の具体例としては、1,6,11−トリイソシアナトウンデカン、4−イソシアナトメチル−1,8−オクタメチレンジイソシアネート、1,3,5−トリイソシアネートメチルベンゼン、1,3,5−トリス(6−イソシアナトヘキサ−1−イル)−1,3,5−トリアジン−2,4,6(1H,3H,5H)−トリオン、4−(イソシアナトメチル)オクタメチレン=ジイソシアネート等が挙げられる。
以上に挙げた中でも、1,6−ジイソシアナトヘキサン、1,3−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、1,3,5−トリス(6−イソシアナトヘキサ−1−イル)−1,3,5−トリアジン−2,4,6(1H,3H,5H)−トリオン、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアナート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアナートが、工業的に入手し易いものであり、本発明の非水系電解液の製造コストが低く抑えられる点で好ましい。また技術的な観点からも安定な被膜状の構造物の形成に寄与することができるため、これらのイソシアネートがより好適に用いられる。
イソシアネートの含有量は、特に限定されず、本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、本発明の非水系電解液100質量%中、好ましくは0.001質量%以上、1.0質量%以下である。
イソシアネートの含有量がこの下限以上であると、非水系電解液二次電池に、十分なサイクル特性向上効果をもたらすことができる。また、この上限以下であると、非水系電解液二次電池の初期の抵抗増加を避けることができる。イソシアネートの含有量は、より好ましくは0.01質量%以上、更に好ましくは0.1質量%以上、特に好ましくは0.2質量%以上、最も好ましくは0.3質量%以上、また、より好ましくは0.8質量%以下、更に好ましくは0.7質量%以下、特に好ましくは0.6質量%以下、最も好ましくは0.5質量%以下である。
<1−4−1−6.シアノ基を有する化合物>
特定添加剤のうち、シアノ基を有する化合物(以下、「ニトリル」と略記する場合がある)としては、特に限定されず、任意のニトリルを用いることができる。
ニトリルの例としては、モノニトリル類、ジニトリル類等が挙げられる。
前記モノニトリル類の具体例としては、アセトニトリル、プロピオニトリル、ブチロニトリル、イソブチロニトリル、バレロニトリル、イソバレロニトリル、ラウロニトリル、2−メチルブチロニトリル、トリメチルアセトニトリル、ヘキサンニトリル、シクロペンタンカルボニトリル、シクロヘキサンカルボニトリル、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、クロトノニトリル、3−メチルクロトノニトリル、2−メチル−2−ブテン二トリル、2−ペンテンニトリル、2−メチル−2−ペンテンニトリル、3−メチル−2−ペンテンニトリル、2−ヘキセンニトリル、フルオロアセトニトリル、ジフルオロアセトニトリル、トリフルオロアセトニトリル、2−フルオロプロピオニトリル、3−フルオロプロピオニトリル、2 ,2−ジフルオロプロピオニトリル、2,3−ジフルオロプロピオニ
トリル、3 ,3−ジフルオロプロピオニトリル、2 ,2 ,3−トリフルオロプロピオニトリル、3 ,3 ,3−トリフルオロプロピオニトリル、3,3’−オキシジプロピオニトリル、3,3’−チオジプロピオニトリル、1,2,3−プロパントリカルボニトリル、1,3,5−ペンタントリカルボニトリル、ペンタフルオロプロピオニトリル等が挙げられる。
前記ジニトリル類の具体例としては、マロノニトリル、サクシノニトリル、グルタロニトリル、アジポニトリル、ピメロニトリル、スベロニトリル、アゼラニトリル、セバコニトリル、ウンデカンジニトリル、ドデカンジニトリル、メチルマロノニトリル、エチルマロノニトリル、イソプロピルマロノニトリル、tert−ブチルマロノニトリル、メチルサクシノニトリル、2,2−ジメチルサクシノニトリル、2,3−ジメチルサクシノニトリル、2,3,3−トリメチルサクシノニトリル、2,2,3,3−テトラメチルサクシノニトリル、2,3−ジエチル−2,3−ジメチルサクシノニトリル、2,2−ジエチル−3,3−ジメチルサクシノニトリル、ビシクロヘキシル−1,1−ジカルボニトリル、ビシクロヘキシル−2,2−ジカルボニトリル、ビシクロヘキシル−3,3−ジカルボニトリル、2,5−ジメチル−2,5−ヘキサンジカルボニトリル、2,3−ジイソブチル−2,3−ジメチルサクシノニトリル、2,2−ジイソブチル−3,3−ジメチルサクシノニトリル、2−メチルグルタロニトリル、2,3−ジメチルグルタロニトリル、2,4−ジメチルグルタロニトリル、2,2,3,3−テトラメチルグルタロニトリル、2,2,4,4−テトラメチルグルタロニトリル、2,2,3,4−テトラメチルグルタロニトリル、2,3,3,4−テトラメチルグルタロニトリル、マレオニトリル、フマロニトリル、1,4−ジシアノペンタン、2,6−ジシアノヘプタン、2,7−ジシアノオクタン、2,8−ジシアノノナン、1,6−ジシアノデカン、1,2−ジジアノベンゼン、1,3−ジシアノベンゼン、1,4−ジシアノベンゼン、3,3’−(エチレンジオキシ)ジプロピオニトリル、3,3’−(エチレンジチオ)ジプロピオニトリル等が挙げられる。
以上に挙げた中でも、マロノニトリル、スクシノニトリル、グルタロニトリル、アジポニトリル、ピメロニトリル、スベロニトリル、アゼラニトリル、セバコニトリル、ウンデカンジニトリル、ドデカンジニトリル等のジニトリル類が安定な被膜状の構造物の形成に寄与することができるため、より好適に用いられる。
ニトリルの含有量は、特に限定されず、本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、本発明の非水系電解液100質量%中、好ましくは0.001質量%以上、5.0質量%以下である。
ニトリルの含有量がこの下限以上であると、非水系電解液二次電池に、十分なサイクル特性向上効果をもたらすことができる。また、この上限以下であると、非水系電解液二次電池の初期の抵抗増加を避け、レート特性の悪化を抑制することができる。ニトリルの含有量は、より好ましくは0.01質量%以上、更に好ましくは0.1質量%以上、特に好ましくは0.2質量%以上、また、より好ましくは4.0質量%以下、更に好ましくは3.0質量%以下、特に好ましくは2.5質量%以下である。
<1−4−1−7.環状スルホン酸エステル>
特定添加剤のうち、環状スルホン酸エステルとしては、特に限定されず、任意の環状スルホン酸エステルを用いることができる。
環状スルホン酸エステルの例としては、飽和環状スルホン酸エステル、不飽和環状スルホン酸エステル等が挙げられる。
前記飽和環状スルホン酸エステルの具体例としては、1,3−プロパンスルトン、1−フルオロ−1,3−プロパンスルトン、2−フルオロ−1,3−プロパンスルトン、3−フルオロ−1,3−プロパンスルトン、1−メチル−1,3−プロパンスルトン、2−メチル−1,3−プロパンスルトン、3−メチル−1,3−プロパンスルトン、1,4−ブタンスルトン、1−フルオロ−1,4−ブタンスルトン、2−フルオロ−1,4−ブタンスルトン、3−フルオロ−1,4−ブタンスルトン、4−フルオロ−1,4−ブタンスルトン、1−メチル−1,4−ブタンスルトン、2−メチル−1,4−ブタンスルトン、3−メチル−1,4−ブタンスルトン、4−メチル−1,4−ブタンスルトン等が挙げられ
る。
前記不飽和環状スルホン酸エステルの具体例としては、1−プロペン−1,3−スルトン、2−プロペン−1,3−スルトン、1−フルオロ−1−プロペン−1,3−スルトン、2−フルオロ−1−プロペン−1,3−スルトン、3−フルオロ−1−プロペン−1,3−スルトン、1−フルオロ−2−プロペン−1,3−スルトン、2−フルオロ−2−プロペン−1,3−スルトン、3−フルオロ−2−プロペン−1,3−スルトン、1−メチル−1−プロペン−1,3−スルトン、2−メチル−1−プロペン−1,3−スルトン、3−メチル−1−プロペン−1,3−スルトン、1−メチル−2−プロペン−1,3−スルトン、2−メチル−2−プロペン−1,3−スルトン、3−メチル−2−プロペン−1,3−スルトン、1−ブテン−1,4−スルトン、2−ブテン−1,4−スルトン、3−ブテン−1,4−スルトン、1−フルオロ−1−ブテン−1,4−スルトン、2−フルオロ−1−ブテン−1,4−スルトン、3−フルオロ−1−ブテン−1,4−スルトン、4−フルオロ−1−ブテン−1,4−スルトン、1−フルオロ−2−ブテン−1,4−スルトン、2−フルオロ−2−ブテン−1,4−スルトン、3−フルオロ−2−ブテン−1,4−スルトン、4−フルオロ−2−ブテン−1,4−スルトン、1−フルオロ−3−ブテン−1,4−スルトン、2−フルオロ−3−ブテン−1,4−スルトン、3−フルオロ−3−ブテン−1,4−スルトン、4−フルオロ−3−ブテン−1,4−スルトン、1−メチル−1−ブテン−1,4−スルトン、2−メチル−1−ブテン−1,4−スルトン、3−メチル−1−ブテン−1,4−スルトン、4−メチル−1−ブテン−1,4−スルトン、1−メチル−2−ブテン−1,4−スルトン、2−メチル−2−ブテン−1,4−スルトン、3−メチル−2−ブテン−1,4−スルトン、4−メチル−2−ブテン−1,4−スルトン、1−メチル−3−ブテン−1,4−スルトン、2−メチル−3−ブテン−1,4−スルトン、3−メチル−3−ブテン−1,4−スルトン、4−メチル−3−ブテン−1,4−スルトン等が挙げられる。
以上に挙げた中でも、1,3−プロパンスルトン、1−フルオロ−1,3−プロパンスルトン、2−フルオロ−1,3−プロパンスルトン、3−フルオロ−1,3−プロパンスルトン、1−プロペン−1,3−スルトンが、入手の容易さや安定な被膜状の構造物の形成に寄与することができる点から、より好適に用いられる。
環状スルホン酸エステルの含有量は、特に限定されず、本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、本発明の非水系電解液100質量%中、好ましくは0.001質量%以上、3.0質量%以下である。
環状スルホン酸エステルの含有量がこの下限以上であると、非水系電解液二次電池に、十分なサイクル特性向上効果をもたらすことができる。また、この上限以下であると、非水系電解液二次電池の製造コストの増加を避けることができる。環状スルホン酸エステルの含有量は、より好ましくは0.01質量%以上、更に好ましくは0.1質量%以上、特に好ましくは0.2質量%以上、最も好ましくは0.5質量%以上、また、より好ましくは2.5質量%以下、更に好ましくは2.0質量%以下、特に好ましくは1.8質量%以下、最も好ましくは1.5質量%以下である。
<1−4−1−8.ジカルボン酸錯体塩>
特定添加剤のうち、ジカルボン酸錯体塩としては、特に限定されず、任意のジカルボン酸錯体塩を用いることができる。
ジカルボン酸錯体塩の例としては、錯体中心元素がホウ素であるジカルボン酸錯体塩、錯体中心元素がリンであるジカルボン酸錯体塩等が挙げられる。
錯体中心元素がホウ素であるジカルボン酸錯体塩の具体例としては、リチウムビス(オキサラト)ボレート、リチウムジフルオロ(オキサラト)ボレート、リチウムビス(マロ
ナト)ボレート、リチウムジフルオロ(マロナト)ボレート、リチウムビス(メチルマロナト)ボレート、リチウムジフルオロ(メチルマロナト)ボレート、リチウムビス(ジメチルマロナト)ボレート、リチウムジフルオロ(ジメチルマロナト)ボレート等が挙げられる。
錯体中心元素がリンであるジカルボン酸錯体塩の具体例としては、リチウムトリス(オキサラト)ホスフェート、リチウムジフルオロビス(オキサラト)ホスフェート、リチウムテトラフルオロ(オキサラト)ホスフェート、リチウムトリス(マロナト)ホスフェート、リチウムジフルオロビス(マロナト)ホスフェート、リチウムテトラフルオロ(マロナト)ホスフェート、リチウムトリス(メチルマロナト)ホスフェート、リチウムジフルオロビス(メチルマロナト)ホスフェート、リチウムテトラフルオロ(メチルマロナト)ホスフェート、リチウムトリス(ジメチルマロナト)ホスフェート、リチウムジフルオロビス(ジメチルマロナト)ホスフェート、リチウムテトラフルオロ(ジメチルマロナト)ホスフェート等が挙げられる。
以上に挙げた中でも、リチウムビス(オキサラト)ボレート、リチウムジフルオロ(オキサラト)ボレート、リチウムトリス(オキサラト)ホスフェート、リチウムジフルオロビス(オキサラト)ホスフェート、リチウムテトラフルオロ(オキサラト)ホスフェートが入手の容易さや安定な被膜状の構造物の形成に寄与することができる点から、より好適に用いられる。
ジカルボン酸錯体塩の含有量は、特に限定されず、本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、本発明の非水系電解液100質量%中、好ましくは0.001質量%以上、2.5質量%以下である。
ジカルボン酸錯体塩の含有量がこの下限以上であると、非水系電解液二次電池に、十分なサイクル特性向上効果をもたらすことができる。また、この上限以下であると、非水系電解液二次電池の製造コストの増加を避けることができ、また、ガス発生による非水系電解液二次電池の体積膨張を避けることができる。ジカルボン酸錯体塩の含有量は、より好ましくは0.01質量%以上、更に好ましくは0.1質量%以上、特に好ましくは0.2質量%以上、最も好ましくは0.5質量%以上、また、より好ましくは2.0質量%以下、更に好ましくは1.5質量%以下、特に好ましくは1.2質量%以下、最も好ましくは1.0以下である。
<1−4−2.その他添加剤>
特定添加剤以外の添加剤としては、過充電防止剤、高温保存後の容量維持特性やサイクル特性を改善するための助剤等が挙げられる。
<1−4−2−1.過充電防止剤>
過充電防止剤の具体例としては、トルエン、キシレン等のトルエン誘導体;ビフェニル、2−メチルビフェニル、3−メチルビフェニル、4−メチルビフェニル等の無置換又はアルキル基で置換されたビフェニル誘導体;o−ターフェニル、m−ターフェニル、p−ターフェニル等の無置換又はアルキル基で置換されたターフェニル誘導体;無置換又はアルキル基で置換されたターフェニル誘導体の部分水素化物;シクロペンチルベンゼン、シクロヘキシルベンゼン等のシクロアルキルベンゼン誘導体;クメン、1,3−ジイソプロピルベンゼン、1,4−ジイソプロピルベンゼン等のベンゼン環に直接結合する第3級炭素を有するアルキルベンゼン誘導体;t−ブチルベンゼン、t−アミルベンゼン、t−ヘキシルベンゼン等のベンゼン環に直接結合する第4級炭素を有するアルキルベンゼン誘導体;ジフェニルエーテル、ジベンゾフラン等の酸素原子を有する芳香族化合物;等の芳香族化合物が挙げられる。
更に、他の過充電防止剤の具体例としては、フルオロベンゼン、フルオロトルエン、ベンゾトリフルオリド、2−フルオロビフェニル、o−シクロヘキシルフルオロベンゼン、p−シクロヘキシルフルオロベンゼン等の前記芳香族化合物の部分フッ素化物;2,4−ジフルオロアニソール、2,5−ジフルオロアニソール、1,6−ジフルオロアニソール等の含フッ素アニソール化合物;等も挙げられる。
なお、これらの過充電防止剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。また、任意の組合せで併用する場合にも上記に例示し同一の分類の化合物で併用してもよく、異なる分類の化合物で併用してもよい。
過充電防止剤を配合する場合、過充電防止剤の配合量は、本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、非水系電解液全体(100質量%)に対して、好ましくは0.001質量%以上、10質量%以下の範囲である。
本発明の非水系電解液に過充電防止剤を、本発明の効果を著しく損なわない範囲で含有させることは、万が一、誤った使用法や充電装置の異常等の過充電保護回路が正常に動作しない状況になり過充電されたとしても問題ないように、非水系電解液二次電池の安全性を向上させることができるので好ましい。
<1−4−2−2.助剤>
一方、高温保存後の容量維持特性やサイクル特性を改善するための助剤の具体例としては、次のようなものが挙げられる。
コハク酸、マレイン酸、フタル酸等のジカルボン酸の無水物;
エリスリタンカーボネート、スピロ−ビス−ジメチレンカーボネート等の不飽和結合を有するカーボネートに該当するもの以外のカーボネート化合物;
エチレンサルファイト等の環状サルファイト;
メタンスルホン酸メチル、ブスルファン等の鎖状スルホン酸エステル;
スルホラン、スルホレン等の環状スルホン;
ジメチルスルホン、ジフェニルスルホン、メチルフェニルスルホン等の鎖状スルホン;
ジブチルジスルフィド、ジシクロヘキシルジスルフィド、テトラメチルチウラムモノスルフィド等のスルフィド類;
N,N−ジメチルメタンスルホンアミド、N,N−ジエチルメタンスルホンアミド等のスルホンアミド類等の含硫黄化合物;
1−メチル−2−ピロリジノン、1−メチル−2−ピペリドン、3−メチル−2−オキサゾリジノン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン等の含窒素化合物;
ヘプタン、オクタン、シクロヘプタン等の炭化水素化合物;
フルオロベンゼン、ジフルオロベンゼン、ベンゾトリフルオライド等の含フッ素芳香族化合物
等が挙げられる。
なお、これらの助剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
また、本発明の非水系電解液がこれらの助剤を含有する場合、その含有量は本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、非水系電解液全体(100質量%)に対して、好ましくは0.001質量%以上、10質量%以下の範囲である。
<1−5.非水系電解液の製造方法>
本発明の非水系電解液は、前述の非水溶媒に、電解質と、特定NCO化合物と、必要に応じて前述の「特定添加剤」や「その他添加剤」を溶解することにより調製することができる。
非水系電解液を調製するに際しては、非水系電解液の各原料、すなわち、リチウム塩等
の電解質、特定NCO化合物、非水溶媒、特定添加剤、その他添加剤等は、予め脱水しておくことが好ましい。脱水の程度としては、通常50ppm以下、好ましくは30ppm以下となるまで脱水することが望ましい。
非水系電解液中の水分を除去することで、水の電気分解、水とリチウム金属との反応、リチウム塩の加水分解等が生じ難くなる。脱水の手段としては特に制限はないが、例えば、脱水する対象が非水溶媒等の液体の場合は、モレキュラーシーブ等の乾燥剤を用いればよい。また脱水する対象が電解質等の固体の場合は、分解が起きる温度未満で加熱して乾燥させればよい。
[2.非水系電解液二次電池]
本発明の非水系電解液二次電池は、金属イオンを吸蔵及び放出可能な正極と、金属イオンを吸蔵及び放出可能な負極と、非水溶媒と該非水溶媒に溶解される電解質とを含む非水系電解液とを備えた非水系電解液二次電池であって、該負極の負極活物質が炭素質材料であり、該非水系電解液が前記の本発明の非水系電解液である非水系電解液二次電池である。
<2−1.電池構成>
本発明の非水系電解液二次電池は、負極および非水系電解液以外の構成については、従来公知の非水系電解液二次電池と同様であり、通常は、本発明の非水系電解液が含浸されている多孔膜(セパレータ)を介して正極と負極とが積層され、これらがケース(外装体)に収納された形態を有する。従って、本発明の非水系電解液二次電池の形状は特に制限されるものではなく、円筒型、角形、ラミネート型、コイン型、大型等の何れであってもよい。
<2−2.非水系電解液>
非水系電解液としては、上述の本発明の非水系電解液を用いる。なお、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、本発明の非水系電解液に対し、その他の非水系電解液を混合して用いることも可能である。
<2−3.負極>
本発明の負極に使用される負極活物質は、以下に説明する炭素質材料からなる。
<2−3−1.炭素質材料>
負極活物質として用いられる炭素質材料としては、特に限定されないが、下記(ア)〜(エ)から選ばれるものが、初期不可逆容量、高電流密度充放電特性のバランスがよい二次電池を与えるので好ましい。
(ア)天然黒鉛
(イ)人造炭素質物質並びに人造黒鉛質物質を400℃から3200℃の範囲で1回以上熱処理して得られた炭素質材料
(ウ)負極活物質層が少なくとも2種類の異なる結晶性を有する炭素質から成り立ち、かつ/又はその異なる結晶性の炭素質が接する界面を有している炭素質材料
(エ)負極活物質層が少なくとも2種類の異なる配向性を有する炭素質から成り立ち、かつ/又はその異なる配向性の炭素質が接する界面を有している炭素質材料
(ア)〜(エ)の炭素質材料は1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
上記(イ)における人造炭素質物質又は人造黒鉛質物質の具体例としては、天然黒鉛、石炭系コークス、石油系コークス、石炭系ピッチ、石油系ピッチ及びこれらピッチを酸化処理したもの;
ニードルコークス、ピッチコークス及びこれらを一部黒鉛化した炭素材;
ファーネスブラック、アセチレンブラック、ピッチ系炭素繊維等の有機物の熱分解物;
炭化可能な有機物及びこれらの炭化物;並びに、
炭化可能な有機物をベンゼン、トルエン、キシレン、キノリン、n−へキサン等の低分子有機溶媒に溶解させた溶液状の炭化物;
等が挙げられる。
その他、上記(ア)〜(エ)の炭素質材料はいずれも従来公知であり、その製造方法は当業者によく知られており、またこれらの市販品を購入することもできる。そして、以上具体的に説明したものも含めて、負極活物質としての炭素質材料は、次に示す(1)〜(8)の何れか1項目又は複数の項目を同時に満たしていることが望ましい。
(1)X線パラメータ
炭素質材料の学振法によるX線回折で求めた格子面(002面)のd値(層間距離)は、0.335nm以上であることが好ましく、また、通常0.360nm以下であり、0.350nm以下が好ましく、0.345nm以下がより好ましい。また、学振法によるX線回折で求めた炭素質材料の結晶子サイズ(Lc)は、好ましくは1.0nm以上であり、より好ましくは1.5nm以上、更に好ましくは2nm以上である。
(2)体積基準平均粒径
炭素質材料の体積基準平均粒径は、レーザー回折・散乱法により求めた体積基準の平均粒径(メジアン径)で、通常1μm以上であり、3μm以上がより好ましく、5μm以上が更に好ましく、7μm以上が特に好ましく、また、好ましくは100μm以下であり、50μm以下がより好ましく、40μm以下が更に好ましく、30μm以下が特に好ましく、25μm以下がとりわけ好ましい。体積基準平均粒径が上記範囲内であると、二次電池の不可逆容量が増大しすぎることもなく、初期の電池容量の損失を招くことを回避しやすくなる。また、後述する通り、塗布により負極を作製する際に、均一に塗面しやすく、電池製作工程上望ましい。
体積基準平均粒径の測定は、界面活性剤であるポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノラウレートの0.2質量%水溶液(約10mL)に炭素質材料粉末を分散させて、レーザー回折・散乱式粒度分布計(堀場製作所社製LA−700)を用いて行なう。該測定で求められるメジアン径を、炭素質材料の体積基準平均粒径と定義する。
(3)ラマンR値、ラマン半値幅
炭素質材料のラマンR値は、アルゴンイオンレーザーラマンスペクトル法を用いて測定した値として、好ましくは0.01以上であり、0.03以上がより好ましく、0.1以上が更に好ましく、また、好ましくは1.5以下であり、1.2以下がより好ましく、1以下が更に好ましく、0.5以下が特に好ましい。
ラマンR値が上記範囲にあると、粒子表面の結晶性が適度な範囲となり、充放電に伴ってLiが層間に入るサイトの減少を抑制でき、充電受入性が低下し難くなる。また、集電体に、後述する負極形成材料(スラリー)を塗布した後、プレスすることによって負極を高密度化した場合にも、二次電池の負荷特性の低下を招き難くなる。更に、効率の低下やガス発生の増加を招き難くなる。
また、炭素質材料の1580cm-1付近のラマン半値幅は、特に限定されないが、10cm-1以上であり、15cm-1以上が好ましく、また、通常100cm-1以下であり、80cm-1以下が好ましく、60cm-1以下がより好ましく、40cm-1以下が特に好ましい。
ラマン半値幅が上記範囲にあると、粒子表面の結晶性が適度な範囲となり、充放電に伴
ってLiが層間に入るサイトの減少を抑制でき、充電受入性が低下し難くなる。また、集電体に負極形成材料を塗布した後、プレスすることによって負極を高密度化した場合にも、二次電池の負荷特性の低下を招き難くなる。更に、効率の低下やガス発生の増加を招き難くなる。
ラマンスペクトルの測定は、ラマン分光器(日本分光社製ラマン分光器)を用いて、試料を測定セル内へ自然落下させて充填し、セル内のサンプル表面にアルゴンイオンレーザー光を照射しながら、セルをレーザー光と垂直な面内で回転させることにより行なう。得られるラマンスペクトルについて、1580cm-1付近のピークPAの強度IAと、1360cm-1付近のピークPBの強度IBとを測定し、その強度比R(R=IB/IA)を算出する。該測定で算出されるラマンR値を、本発明における炭素質材料のラマンR値と定義する。また、得られるラマンスペクトルの1580cm-1付近のピークPAの半値幅を測定
し、これを本発明における炭素質材料のラマン半値幅と定義する。
また、上記のラマン測定条件は、次の通りである。
・アルゴンイオンレーザー波長 :514.5nm
・試料上のレーザーパワー :15〜25mW
・分解能 :10〜20cm-1
・測定範囲 :1100cm-1〜1730cm-1・ラマンR値、ラマン半値幅解析:バックグラウンド処理
・スムージング処理 :単純平均、コンボリューション5ポイント
(4)BET比表面積
炭素質材料のBET比表面積は、BET法を用いて測定した比表面積の値として、好ましくは0.1m2・g-1以上であり、0.7m2・g-1以上がより好ましく、1.0m2
-1以上が更に好ましく、1.5m2・g-1以上が特に好ましく、また、好ましくは10
0m2・g-1以下であり、25m2・g-1以下がより好ましく、15m2・g-1以下が更に
好ましく、10m2・g-1以下が特に好ましい。
BET比表面積の値が上記範囲内にあると、炭素質材料を負極形成材料として用いた場合の充電時にリチウム等のカチオンの受け入れ性がよく、リチウム等が電極表面で析出し難くなり、二次電池の安定性低下を回避しやすい。更に。非水系電解液との反応性が抑制でき、ガス発生が少なく、好ましい二次電池が得られ易い。
BET法による比表面積の測定は、表面積計(大倉理研製全自動表面積測定装置)を用いて、試料に対して窒素流通下350℃で15分間、予備乾燥を行なった後、大気圧に対する窒素の相対圧の値が0.3となるように正確に調整した窒素ヘリウム混合ガスを用いて、ガス流動法による窒素吸着BET1点法によって行なう。該測定で求められる比表面積を、本発明における炭素質材料のBET比表面積と定義する。
(5)円形度
炭素質材料の球形の程度として円形度を測定した場合、以下の範囲に収まることが好ましい。なお、円形度は、「円形度=(粒子投影形状と同じ面積を持つ相当円の周囲長)/(粒子投影形状の実際の周囲長)」で定義され、円形度が1のときに理論的真球となる。
炭素質材料の粒径が3〜40μmの範囲にある粒子の円形度は1に近いほど望ましい。好ましくは0.1以上であり、0.5以上がより好ましく、0.8以上が更に好ましく、0.85以上が特に好ましく、0.9以上がとりわけ好ましい。
二次電池の高電流密度充放電特性は、一般に円形度が大きいほど向上する。従って、円形度が上記範囲を下回ると、負極活物質の充填性が低下し、粒子間の抵抗が増大して、二次電池の短時間高電流密度充放電特性が低下する場合がある。
炭素質材料の円形度の測定は、フロー式粒子像分析装置(シスメックス社製FPIA)を用いて行う。具体的には試料約0.2gを、界面活性剤であるポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノラウレートの0.2質量%水溶液(約50mL)に分散させ、28kHzの超音波を出力60Wで1分間照射した後、検出範囲を0.6〜400μmに指定し、粒径が3〜40μmの範囲の粒子について測定する。該測定で求められる円形度を、本発明における炭素質材料の円形度と定義する。
円形度を向上させる方法は、特に限定されないが、球形化処理を施して球形にしたものが、電極体にしたときの粒子間空隙の形状が整うので好ましい。球形化処理の例としては、せん断力、圧縮力を与えることによって機械的に球形に近づける方法、複数の微粒子をバインダー若しくは、粒子自身の有する付着力によって造粒する機械的・物理的処理方法等が挙げられる。
(6)タップ密度
炭素質材料のタップ密度は、好ましくは0.1g・cm-3以上であり、0.5g・cm-3以上がより好ましく、0.7g・cm-3以上が更に好ましく、1g・cm-3以上が特に好ましい。また、2g・cm-3以下が好ましく、1.8g・cm-3以下がより好ましく、1.6g・cm-3以下が特に好ましい。
タップ密度が、上記範囲内であると、負極として用いた場合に充填密度を十分確保でき、高容量の二次電池を得ることができる。更に、電極中の粒子間の空隙が少なくなり過ぎず、粒子間の導電性が確保され、好ましい電池特性が得易くなる。
タップ密度の測定は、以下の通り行う。試料を目開き300μmの篩を通過させて、20cm3のタッピングセルに試料を落下させてセルの上端面まで試料を満たした後、粉体
密度測定器(例えば、セイシン企業社製タップデンサー)を用いて、ストローク長10mmのタッピングを1000回行なって、その時の体積と試料の質量からタップ密度を算出する。該測定で算出されるタップ密度を、本発明における炭素質材料のタップ密度として定義する。
(7)配向比
炭素質材料の配向比は、好ましくは0.005以上であり、0.01以上がより好ましく、0.015以上が更に好ましく、また、好ましくは0.67以下である。配向比が、上記範囲を下回ると、二次電池の高密度充放電特性が低下する場合がある。なお、上記範囲の上限は、炭素質材料の配向比の理論上限値である。
炭素質材料の配向比は、試料を加圧成型してからX線回折により測定することにより求める。具体的には、試料0.47gを直径17mmの成型機に充填し、58.8MN・m-2で圧縮して得た成型体を、粘土を用いて測定用試料ホルダーの面と同一面になるようにセットしてX線回折を測定する。得られた炭素質材料の(110)回折と(004)回折のピーク強度から、(110)回折ピーク強度/(004)回折ピーク強度で表される比を算出する。該測定で算出される配向比を、本発明における炭素質材料の配向比と定義する。
このときのX線回折測定条件は次の通りである。なお、「2θ」は回折角を示す。
・ターゲット:Cu(Kα線)グラファイトモノクロメーター
・スリット :
発散スリット=0.5度
受光スリット=0.15mm
散乱スリット=0.5度
・測定範囲及びステップ角度/計測時間:
(110)面:75度≦2θ≦80度 1度/60秒
(004)面:52度≦2θ≦57度 1度/60秒
(8)アスペクト比(粉)
炭素質材料のアスペクト比は、通常1以上、また、通常10以下であり、8以下が好ましく、5以下がより好ましい。アスペクト比が、上記範囲を外れると、極板化時に負極形成材料のスジ引きが起きたりし、均一な塗布面が得られず、二次電池の高電流密度充放電特性が低下する場合がある。なお、上記範囲の下限は、炭素質材料のアスペクト比の理論下限値である。
炭素質材料のアスペクト比の測定は、炭素質材料の粒子を走査型電子顕微鏡で拡大観察して行う。具体的には厚さ50ミクロン以下の金属の端面に固定した任意の50個の炭素質材料粒子を選択し、それぞれについて試料が固定されているステージを回転、傾斜させて、3次元的に観察した時の炭素質材料粒子の最長となる径Aと、それと直交する最短となる径Bを測定し、A/Bの平均値を求める。該測定で求められるアスペクト比(A/B)を、本発明における炭素質材料のアスペクト比と定義する。
<2−3−2.負極の構成、物性、調製方法>
上記活物質材料を含有する負極及び電極化手法、集電体については、公知の技術構成を採用することができるが、次に示す(i)〜(vi)の何れか1項目又は複数の項目を同時に満たしていることが望ましい。
(i)負極作製
負極の製造は、本発明の効果を著しく制限しない限り、公知の何れの方法をも用いることができる。例えば、負極活物質に、バインダー、溶媒、必要に応じて、増粘剤、導電材、充填材等を加えてスラリー状の負極形成材料とし、これを集電体に塗布、乾燥した後にプレスすることによって、負極活物質層を形成することができる。
(ii)集電体
負極活物質を保持させる集電体としては、公知のものを任意に用いることができる。負極の集電体としては、例えば、アルミニウム、銅、ニッケル、ステンレス鋼、ニッケルメッキ鋼等の金属材料が挙げられるが、加工し易さとコストの点から特に銅が好ましい。
また、集電体の形状は、集電体が金属材料の場合は、例えば、金属箔、金属円柱、金属コイル、金属板、金属薄膜、エキスパンドメタル、パンチメタル、発泡メタル等が挙げられる。中でも、好ましくは金属薄膜、より好ましくは銅箔であり、更に好ましくは圧延法による圧延銅箔と、電解法による電解銅箔である。
(iii)集電体と負極活物質層の厚さの比
集電体と負極活物質層の厚さの比は特には限定されないが、「(非水系電解液の注液工程の直前の片面の負極活物質層厚さ)/(集電体の厚さ)」の値が、150以下が好ましく、20以下がより好ましく、10以下が特に好ましく、また、0.1以上が好ましく、0.4以上がより好ましく、1以上が特に好ましい。
集電体と負極活物質層の厚さの比が、上記範囲を上回ると、二次電池の高電流密度充放電時に集電体がジュール熱による発熱を生じる場合がある。また、上記範囲を下回ると、負極活物質に対する集電体の体積比が増加し、二次電池の容量が減少する場合がある。
(iv)電極密度
負極活物質を電極化した際の電極構造は、特には限定されず、集電体上に存在している負極活物質の密度は、1g・cm-3以上が好ましく、1.2g・cm-3以上がより好ましく、1.3g・cm-3以上が更に好ましく、また、4g・cm-3以下が好ましく、3g・cm-3以下がより好ましく、2.5g・cm-3以下が更に好ましく、1.7g・cm-3以下が特に好ましい。集電体上に存在している負極活物質の密度が、上記範囲内であると、負極活物質粒子が破壊されにくく、二次電池の初期不可逆容量の増加や、集電体/負極活物質界面付近への非水電解液の浸透性低下による高電流密度充放電特性悪化を防ぎ易くなる。更に、負極活物質間の導電性を確保することができ、電池抵抗が増大することなく、単位容積当たりの容量を稼ぐことができる。
(v)バインダー・溶媒等
負極活物質層を形成するためのスラリーは、通常、負極活物質に対して、溶媒にバインダー(結着材)、増粘剤等を混合したものを加えて調製される。
負極活物質を結着するバインダーとしては、非水系電解液や電極製造時に用いる溶媒に対して安定な材料であれば、特に制限されない。
その具体例としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリメチルメタクリレート、芳香族ポリアミド、セルロース、ニトロセルロース等の樹脂系高分子;SBR(スチレン・ブタジエンゴム)、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、フッ素ゴム、NBR(アクリロニトリル・ブタジエンゴム)、エチレン・プロピレンゴム等のゴム状高分子;スチレン・ブタジエン・スチレンブロック共重合体又はその水素添加物
;EPDM(エチレン・プロピレン・ジエン三元共重合体)、スチレン・エチレン・ブタジエン・スチレン共重合体、スチレン・イソプレン・スチレンブロック共重合体又はその水素添加物等の熱可塑性エラストマー状高分子;シンジオタクチック−1,2−ポリブタジエン、ポリ酢酸ビニル、エチレン・酢酸ビニル共重合体、プロピレン・α−オレフィン共重合体等の軟質樹脂状高分子;ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、フッ素化ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン・エチレン共重合体等のフッ素系高分子;アルカリ金属イオン(特にリチウムイオン)のイオン伝導性を有する高分子組成物等が挙げられる。これらは、1種を単独で用いても、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
スラリーを形成するための溶媒としては、負極活物質、バインダー、並びに必要に応じて使用される増粘剤及び導電材を溶解又は分散することが可能な溶媒であれば、その種類に特に制限はなく、水系溶媒と有機系溶媒のどちらを用いてもよい。
前記水系溶媒の例としては水、アルコール等が挙げられ、前記有機系溶媒の例としてはN−メチルピロリドン(NMP)、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、酢酸メチル、アクリル酸メチル、ジエチルトリアミン、N,N−ジメチルアミノプロピルアミン、テトラヒドロフラン(THF)、トルエン、アセトン、ジエチルエーテル、ジメチルアセトアミド、ヘキサメチルホスファルアミド、ジメチルスルフォキシド、ベンゼン、キシレン、キノリン、ピリジン、メチルナフタレン、ヘキサン等が挙げられる。
特に水系溶媒を用いる場合、増粘剤に併せて分散剤等を含有させ、SBR等のラテックスを用いてスラリー化することが好ましい。
なお、これらの溶媒は、1種を単独で用いても、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
負極活物質100質量部に対するバインダーの割合は、0.1質量部以上が好ましく、0.5質量部以上がより好ましく、0.6質量部以上が更に好ましく、また、20質量部以下が好ましく、15質量部以下がより好ましく、10質量部以下が更に好ましく、8質量部以下が特に好ましい。負極活物質に対するバインダーの割合が、上記範囲内であると、電池容量に寄与しないバインダーの割合が多くならないので、電池容量の低下を招き難くなる。更に、負極の強度低下も招き難くなる。
特に、負極形成材料であるスラリーがSBRに代表されるゴム状高分子を主要成分として含有する場合には、負極活物質100質量部に対するバインダーの割合は、0.1質量部以上が好ましく、0.5質量部以上がより好ましく、0.6質量部以上が更に好ましく、また、5質量部以下が好ましく、3質量部以下がより好ましく、2質量部以下が更に好ましい。
また、スラリーがポリフッ化ビニリデンに代表されるフッ素系高分子を主要成分として含有する場合には、負極活物質100質量部に対するバインダーの割合は、1質量部以上が好ましく、2質量部以上がより好ましく、3質量部以上が更に好ましく、また、15質量部以下が好ましく、10質量部以下がより好ましく、8質量部以下が更に好ましい。
増粘剤は、通常、スラリーの粘度を調整するために使用される。増粘剤としては、特に制限はないが、具体的には、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、エチルセルロース、ポリビニルアルコール、酸化スターチ、燐酸化スターチ、カゼイン及びこれらの塩等が挙げられる。これらは、1種を単独で用いても、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
増粘剤を用いる場合、負極活物質100質量部に対する増粘剤の割合は、通常0.1質量部以上であり、0.5質量部以上が好ましく、0.6質量部以上がより好ましい。また
、前記割合は通常5質量部以下であり、3質量部以下が好ましく、2質量部以下がより好ましい。負極活物質に対する増粘剤の割合が、上記範囲内にあると、スラリーの塗布性が良好となる。更に、負極活物質層に占める負極活物質の割合も適度なものとなり、電池容量が低下する問題や負極活物質間の抵抗が増大する問題が生じ難くなる。
(vi)負極板の面積
負極板の面積は、特に限定されないが、対向する正極板よりもわずかに大きくして、正極板が負極板から外にはみ出すことがないように設計することが好ましい。また、二次電池の充放電を繰り返したときのサイクル寿命や高温保存による劣化を抑制する観点から、できる限り正極に等しい面積に近づけることが、より均一かつ有効に働く電極割合を高めて特性が向上するので好ましい。特に、二次電池が大電流で使用される場合には、この負極板の面積の設計が重要である。
<2−4.正極>
以下に本発明の非水系電解液二次電池に使用される正極について説明する。
<2−4−1.正極活物質>
以下に正極に使用される正極活物質について説明する。
(1)組成
正極活物質としては、電気化学的に金属イオンを吸蔵・放出可能なものであれば特に制限はないが、例えば、電気化学的にリチウムイオンを吸蔵・放出可能なものが好ましく、リチウムと少なくとも1種の遷移金属を含有する物質が好ましい。具体例としては、リチウム遷移金属複合酸化物、リチウム含有遷移金属燐酸化合物、リチウム含有遷移金属ケイ酸化合物、リチウム含有遷移金属ホウ酸化合物が挙げられる。
前記リチウム遷移金属複合酸化物の遷移金属としてはV、Ti、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu等が好ましく、前記複合酸化物の具体例としては、LiCoO2等のリチ
ウム・コバルト複合酸化物、LiNiO2等のリチウムニッケル複合酸化物、LiMnO2、LiMn24、Li2MnO4等のリチウムマンガン複合酸化物、これらのリチウム遷移金属複合酸化物の主体となる遷移金属原子の一部をAl、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Li、Ni、Cu、Zn、Mg、Ga、Zr、Si、Nb、Mo、Sn、W等の他の金属で置換したもの等が挙げられる。
置換されたものの具体例としては、例えば、LiNi0.5Mn0.52、LiNi0.85
0.10Al0.052、LiNi0.33Co0.33Mn0.332、LiMn1.9Al0.14、L
iMn1.8Al0.24、LiMn1.5Ni0.54等が挙げられる。
中でも、リチウムとマンガンを含有する複合酸化物がより好ましい。コバルト又はニッケルは、資源量も少なく高価な金属であり、自動車用途等の高容量が必要とされる大型電池では活物質の使用量が大きくなることから、コストの点で好ましくないため、より安価な遷移金属としてマンガンを主成分に用いることが望ましい。すなわち、上記の具体例のうち、LiNi0.5Mn0.52、LiNi0.33Co0.33Mn0.332、LiMn1.9Al0.14、LiMn1.8Al0.24、LiMn1.5Ni0.54等をより好ましい具体例として
挙げることができる。
中でも、スピネル型構造を有するリチウムマンガン複合酸化物が最も好ましい。リチウムマンガン複合酸化物の中で最も構造が安定であり、非水系電解液二次電池の異常時にも酸素放出しにくく、安全性に優れるためである。すなわち、上記の具体例のうちLiMn、LiMn1.8Al0.2、Li1.1Mn1.9Al0.1、LiMn1.5Ni0.5等を特に好ましい具体例として挙げることができる。
前記リチウム含有遷移金属燐酸化合物の遷移金属としては、V、Ti、Cr、Mn、F
e、Co、Ni、Cu等が好ましく、前記燐酸化合物の具体例としては、例えば、LiFePO4、Li3Fe2(PO43、LiFeP27等の燐酸鉄類、LiCoPO4等の燐酸コバルト類、LiMnPO4等の燐酸マンガン類、これらのリチウム遷移金属燐酸化合物
の主体となる遷移金属原子の一部をAl、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Li、Ni、Cu、Zn、Mg、Ga、Zr、Si、Nb、Mo、Sn、W等の他の金属で置換したもの等が挙げられる。
中でも、リチウム鉄燐酸化合物が好ましい、鉄は資源量も豊富で極めて安価な金属であり、かつ有害性も少ないためである。すなわち、上記の具体例のうち、LiFePO4
より好ましい具体例として挙げることができる。
前記リチウム含有遷移金属ケイ酸化合物の遷移金属としては、V、Ti、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu等が好ましく、前記ケイ酸化合物の具体例としては、例えば、LiFeSiO等のケイ酸鉄類、LiCoSiO等のケイ酸コバルト類、これらのリチウム遷移金属ケイ酸化合物の主体となる遷移金属原子の一部をAl、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Li、Ni、Cu、Zn、Mg、Ga、Zr、Si、Nb、Mo、Sn、W等の他の金属で置換したもの等が挙げられる。
前記リチウム含有遷移金属ホウ酸化合物の遷移金属としては、V、Ti、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu等が好ましく、前記ホウ酸化合物の具体例としては、例えば、LiFeBO3等のホウ酸鉄類、LiCoBO3等のホウ酸コバルト類、これらのリチウム遷移金属ホウ酸化合物の主体となる遷移金属原子の一部をAl、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Li、Ni、Cu、Zn、Mg、Ga、Zr、Si、Nb、Mo、Sn、W等の他の金属で置換したもの等が挙げられる。
また、リチウム遷移金属複合酸化物、リチウム含有遷移金属燐酸化合物、リチウム含有遷移金属ケイ酸化合物、リチウム含有遷移金属ホウ酸化合物の中では、リチウム遷移金属複合酸化物かリチウム含有遷移金属燐酸化合物が好ましい。製造が比較的容易であるためである。電池の性能という観点から特に好ましいのはリチウム遷移金属複合酸化物である。リチウムの吸蔵および放出の電位が十分に貴であるため、非水系電解液二次電池の電圧を高くすることができるためである。一方で、技術の持続可能性という観点から特に好ましいのはリチウム含有遷移金属燐酸化合物である。上述の通り、鉄は資源量も豊富で極めて安価な金属であり、かつ有害性も少ないためである。
(2)表面被覆
上記の正極活物質の表面に、主体となる正極活物質を構成する物質とは異なる組成の物質(以後、適宜「表面付着物質」という)が付着したものを、本発明における正極活物質として用いることもできる。前記表面付着物質の例としては酸化アルミニウム、酸化ケイ素、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化ホウ素、酸化アンチモン、酸化ビスマス等の酸化物、硫酸リチウム、硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、硫酸マグネシウム、硫酸カルシウム、硫酸アルミニウム等の硫酸塩、炭酸リチウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム等の炭酸塩、炭素等が挙げられる。
これら表面付着物質は、例えば、溶媒に溶解又は懸濁させて正極活物質に含浸添加させた後に乾燥する方法、表面付着物質前駆体を溶媒に溶解又は懸濁させて正極活物質に含浸添加させた後に加熱等により反応させる方法、正極活物質前駆体に添加して同時に焼成する方法等により、正極活物質表面に付着させることができる。なお、炭素を付着させる場合には、炭素質を、例えば、活性炭等の形で後から機械的に付着させる方法も用いることができる。
正極活物質の表面に付着している表面付着物質の質量は、正極活物質の質量と表面付着物質の質量の合計に対して、好ましくは0.1ppm以上であり、1ppm以上がより好ましく、10ppm以上が更に好ましい。また、好ましくは20%以下であり、10%以下がより好ましく、5%以下が更に好ましい。
表面付着物質により、正極活物質表面での非水系電解液の酸化反応を抑制することができ、電池寿命を向上させることができる。また、付着量が上記範囲内にあると、その効果を十分に発現することができ、リチウムイオンの出入りを阻害することなく二次電池の抵抗も増加し難くなる。
(3)形状
正極活物質粒子の形状は、従来用いられるような、塊状、多面体状、球状、楕円球状、板状、針状、柱状等が可能である。また、一次粒子が凝集して二次粒子を形成しており、その二次粒子の形状が球状又は楕円球状であってもよい。
(4)タップ密度
正極活物質のタップ密度は、好ましくは0.5g・cm-3以上であり、1.0g・cm-3以上がより好ましく、1.5g・cm-3以上が更に好ましい。また、好ましくは4.0g・cm-3以下であり、3.7g・cm-3以下がより好ましい。
タップ密度の高い正極活物質粉体を用いることにより、高密度の正極活物質層を形成することができる。正極活物質のタップ密度が上記範囲内にあると、正極活物質層形成時に必要な分散媒の量が適度なものとなるため、導電材やバインダーの量も適量となる。このため、正極活物質層への正極活物質の充填率が制約されることなく、電池容量への影響も少なくなる。
正極活物質のタップ密度の測定は、以下のように行う。試料を目開き300μmの篩を通過させて、20cm3のタッピングセルに試料を落下させてセル容積を満たした後、粉
体密度測定器(例えば、セイシン企業社製タップデンサー)を用いて、ストローク長10mmのタッピングを1000回行なって、その時の体積と試料の質量から密度を算出する。該測定で算出されるタップ密度を、本発明における正極活物質のタップ密度として定義する。
(5)メジアン径d50
正極活物質の粒子のメジアン径d50(一次粒子が凝集して二次粒子を形成している場合には二次粒子径)は、レーザー回折/散乱式粒度分布測定装置を用いて測定することができる。
メジアン径d50は、好ましくは0.1μm以上であり、0.5μm以上がより好ましく、1μm以上が更に好ましく、3μm以上が特に好ましく、また、好ましくは30μm以下であり、20μm以下がより好ましく、16μm以下が更に好ましく、15μm以下が特に好ましい。メジアン径d50が上記範囲内であると、高嵩密度品を得易くなくなり、更に、粒子内のリチウムの拡散に時間がかかるらないため、電池特性が低下し難くなる。また、二次電池の正極作製すなわち活物質と導電材やバインダー等を溶媒でスラリー化し、薄膜状に塗布する際には、スジ引き等も生じ難くなる。
なお、異なるメジアン径d50をもつ正極活物質を2種類以上、任意の比率で混合することで、正極作製時の充填性を更に向上させることもできる。
正極活物質のメジアン径d50は、0.1質量%ヘキサメタ燐酸ナトリウム水溶液を分散媒として用い、粒度分布計(例えば、堀場製作所社製LA−920)を用いて、正極活物質の分散液に対して5分間の超音波分散後に測定屈折率1.24に設定して測定する。
(6)平均一次粒子径
一次粒子が凝集して二次粒子を形成している場合、正極活物質の平均一次粒子径は、好ましくは0.01μm以上であり、0.05μm以上がより好ましく、0.08μm以上が更に好ましく、0.1μm以上が特に好ましく、また、好ましくは3μm以下であり、2μm以下がより好ましく、1μm以下が更に好ましく、0.6μm以下が特に好ましい。上記範囲内であると、球状の二次粒子を形成し易くなり、粉体充填性が適度なものとなり、比表面積を十分確保できるため、出力特性等の電池性能の低下を抑制することができる。
なお、正極活物質の平均一次粒子径は、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いた観察により測定される。具体的には、10000倍の倍率の写真で、水平方向の直線に対する一次粒子の左右の境界線による切片の最長の値を、任意の50個の一次粒子について求め、その平均値をとることにより求められる。
(7)BET比表面積
正極活物質のBET比表面積は、BET法を用いて測定した比表面積の値が、好ましくは0.2m2・g-1以上であり、0.3m2・g-1以上がより好ましく、0.4m2・g-1
以上が更に好ましく、また、好ましくは4.0m2・g-1以下であり、2.5m2・g-1以下がより好ましく、1.5m2・g-1以下が更に好ましい。BET比表面積の値が、上記
範囲内であると、電池性能の低下を防ぎ易い。更に、十分なタップ密度を確保でき、正極活物質層形成時の塗布性が良好となる。
正極活物質のBET比表面積は、表面積計(例えば、大倉理研製全自動表面積測定装置)を用いて測定する。具体的には、試料に対して窒素流通下150℃で30分間、予備乾燥を行なった後、大気圧に対する窒素の相対圧の値が0.3となるように正確に調整した窒素ヘリウム混合ガスを用いて、ガス流動法による窒素吸着BET1点法によって比表面積を測定する。該測定で求められる比表面積を、本発明における正極活物質のBET比表面積と定義する。
(8)正極活物質の製造法
正極活物質の製造法としては、本発明の要旨を超えない範囲で特には制限されないが、いくつかの方法が挙げられ、無機化合物の製造法として一般的な方法が用いられる。
特に球状ないし楕円球状の活物質を作製するには種々の方法が考えられるが、例えばその1例として、遷移金属硝酸塩、硫酸塩等の遷移金属原料物質と、必要に応じ他の元素の原料物質を水等の溶媒中に溶解ないし粉砕分散して、攪拌をしながらpHを調節して球状の前駆体を作製回収し、これを必要に応じて乾燥した後、LiOH、Li2CO3、LiNO3等のLi源を加えて高温で焼成して活物質を得る方法が挙げられる。
また、別の方法の例として、遷移金属硝酸塩、硫酸塩、水酸化物、酸化物等の遷移金属原料物質と、必要に応じ他の元素の原料物質を水等の溶媒中に溶解ないし粉砕分散して、それをスプレードライヤー等で乾燥成型して球状ないし楕円球状の前駆体とし、これにLiOH、Li2CO3、LiNO3等のLi源を加えて高温で焼成して活物質を得る方法が
挙げられる。
更に別の方法の例として、遷移金属硝酸塩、硫酸塩、水酸化物、酸化物等の遷移金属原料物質と、LiOH、Li2CO3、LiNO3等のLi源と、必要に応じ他の元素の原料
物質とを水等の溶媒中に溶解ないし粉砕分散して、それをスプレードライヤー等で乾燥成型して球状ないし楕円球状の前駆体とし、これを高温で焼成して活物質を得る方法が挙げられる。
<2−4−2.正極構造と作製法>
以下に、本発明に使用される正極の構成及びその作製法について説明する。
(正極の作製法)
正極は、正極活物質粒子とバインダーとを含有する正極活物質層を、集電体上に形成して作製される。正極活物質を用いる正極の製造は、公知の何れの方法で作製することができる。例えば、正極活物質とバインダー、並びに必要に応じて導電材及び増粘剤等を乾式で混合してシート状にしたものを正極集電体に圧着するか、又はこれらの材料を液体媒体に溶解又は分散させてスラリーとして、これを正極集電体に塗布し、乾燥することにより、正極活物質層を集電体上に形成させることにより正極を得ることができる。
正極活物質の正極活物質層中の含有量は、好ましくは60質量%以上であり、70質量%以上がより好ましく、80質量%以上が更に好ましく、また、好ましくは99.9質量%以下であり、99質量%以下がより好ましい。正極活物質の含有量が、上記範囲内であると、電気容量を十分確保できる。更に、正極の強度も十分なものとなる。なお、本発明における正極活物質粉体は、1種を単独で用いてもよく、異なる組成又は異なる粉体物性の2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよいが、2種以上の活物質を組み合わせて用いることが好ましい。中でも、前記リチウムマンガン複合酸化物を粉体の成分として用いることが好ましい。前記の通り、コバルト又はニッケルは、資源量も少なく高価な金属であり、自動車用途等の高容量が必要とされる大型電池では活物質の使用量が大きくなることから、コストの点で好ましくないため、より安価な遷移金属としてマンガンを主成分に用いることが望ましいためである。
中でもスピネル型構造を有するリチウムマンガン複合酸化物と層状構造を有するリチウムニッケル複合酸化物とを同時に含有することが好ましい。リチウムマンガン複合酸化物の中で最も安全性に優れるスピネル型構造を有するリチウムマンガン複合酸化物とリチウム遷移金属複合酸化物の中で最もエネルギー密度に優れる層状構造を有するリチウムニッケル複合酸化物の組み合わせにより、安全性とエネルギー密度の両立を果たせるからである。
(導電材)
導電材としては、公知の導電材を任意に用いることができる。具体例としては、銅、ニッケル等の金属材料;天然黒鉛、人造黒鉛等の黒鉛(グラファイト);アセチレンブラック等のカーボンブラック;ニードルコークス等の無定形炭素等の炭素質材料等が挙げられる。なお、これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
正極活物質層中の導電材の含有量は、好ましくは0.01質量%以上であり、0.1質量%以上がより好ましく、1質量%以上が更に好ましく、また、好ましくは50質量%以下であり、30質量%以下がより好ましく、15質量%以下が更に好ましい。含有量が上記範囲内であると、導電性を十分確保できる。更に、電池容量の低下も防ぎやすい。
(バインダー)
正極活物質層の製造に用いるバインダーは、非水系電解液や電極製造時に用いる溶媒に対して安定な材料であれば、特に限定されない。
塗布法で正極を製造する場合は、バインダーは電極製造時に用いる液体媒体に対して溶解又は分散される材料であれば特に限定されないが、その具体例としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリメチルメタクリレート、芳香族ポリアミド、セルロース、ニトロセルロース等の樹脂系高分子;SBR(スチレン・ブタジエンゴム)、NBR(アクリロニトリル・ブタジエンゴム)、フッ素ゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、エチレン・プロピレンゴム等のゴム状高分子;スチレン・ブタジエン・スチレンブロック共重合体又はその水素添加物、EPDM(エチレン・プロピレン・
ジエン三元共重合体)、スチレン・エチレン・ブタジエン・エチレン共重合体、スチレン・イソプレン・スチレンブロック共重合体又はその水素添加物等の熱可塑性エラストマー状高分子;シンジオタクチック−1,2−ポリブタジエン、ポリ酢酸ビニル、エチレン・酢酸ビニル共重合体、プロピレン・α−オレフィン共重合体等の軟質樹脂状高分子;ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、ポリテトラフルオロエチレン、フッ素化ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン・エチレン共重合体等のフッ素系高分子;アルカリ金属イオン(特にリチウムイオン)のイオン伝導性を有する高分子組成物等が挙げられる。なお、これらの物質は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
正極活物質層中のバインダーの含有量は、好ましくは0.1質量%以上であり、1質量%以上がより好ましく、3質量%以上が更に好ましく、また、好ましくは80質量%以下であり、60質量%以下がより好ましく、40質量%以下が更に好ましく、10質量%以下が特に好ましい。バインダーの割合が、上記範囲内であると、正極活物質を十分保持でき、正極の機械的強度を確保できるため、サイクル特性等の電池性能が良好となる。更に、電池容量や導電性の低下を回避することにもつながる。
(液体媒体)
正極活物質層を形成するためのスラリーの調製に用いる液体媒体としては、正極活物質、導電材、バインダー、並びに必要に応じて使用される増粘剤を溶解又は分散することが可能な溶媒であれば、その種類に特に制限はなく、水系溶媒と有機系溶媒のどちらを用いてもよい。
前記水系媒体の例としては、例えば、水、アルコールと水との混合媒等が挙げられる。前記有機系媒体の例としては、ヘキサン等の脂肪族炭化水素類;ベンゼン、トルエン、キシレン、メチルナフタレン等の芳香族炭化水素類;キノリン、ピリジン等の複素環化合物;アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;酢酸メチル、アクリル酸メチル等のエステル類;ジエチレントリアミン、N,N−ジメチルアミノプロピルアミン等のアミン類;ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン(THF)等のエーテル類;N−メチルピロリドン(NMP)、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等のアミド類;ヘキサメチルホスファルアミド、ジメチルスルフォキシド等の非プロトン性極性溶媒等を挙げることができる。なお、これらは、1種を単独で用いてもよく、また2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
(増粘剤)
スラリーを形成するための液体媒体として水系媒体を用いる場合、増粘剤と、スチレンブタジエンゴム(SBR)等のラテックスとを用いてスラリー化するのが好ましい。増粘剤は、通常、スラリーの粘度を調製するために使用される。
増粘剤としては、本発明の効果を著しく制限しない限り制限はないが、具体的には、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、エチルセルロース、ポリビニルアルコール、酸化スターチ、燐酸化スターチ、カゼイン及びこれらの塩等が挙げられる。これらは、1種を単独で用いても、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
増粘剤を使用する場合には、正極活物質と増粘剤の質量の合計に対する増粘剤の割合は、好ましくは0.1質量%以上であり、0.5質量%以上がより好ましく、0.6質量%以上が更に好ましく、また、好ましくは5質量%以下であり、3質量%以下がより好ましく、2質量%以下が更に好ましい。上記範囲内であると、スラリーの塗布性が良好となり、更に、正極活物質層に占める活物質の割合が十分なものとなるため、二次電池の容量が低下する問題や正極活物質間の抵抗が増大する問題を回避し易くなる。
(圧密化)
集電体への上記スラリーの塗布、乾燥によって得られた正極活物質層は、正極活物質の充填密度を上げるために、ハンドプレス、ローラープレス等により圧密化することが好ましい。正極活物質層の密度は、1g・cm-3以上が好ましく、1.5g・cm-3以上が更に好ましく、2g・cm-3以上が特に好ましく、また、4g・cm-3以下が好ましく、3.5g・cm-3以下が更に好ましく、3g・cm-3以下が特に好ましい。
正極活物質層の密度が、上記範囲内であると、集電体/活物質界面付近への非水系電解液の浸透性が低下することなく、特に二次電池の高電流密度での充放電特性が良好となる。更に、活物質間の導電性が低下し難くなり、電池抵抗が増大し難くなる。
(集電体)
正極集電体の材質としては特に制限は無く、公知のものを任意に用いることができる。具体例としては、アルミニウム、ステンレス鋼、ニッケルメッキ、チタン、タンタル等の金属材料;カーボンクロス、カーボンペーパー等の炭素質材料が挙げられる。中でも金属材料、特にアルミニウムが好ましい。
集電体の形状としては、金属材料の場合、金属箔、金属円柱、金属コイル、金属板、金属薄膜、エキスパンドメタル、パンチメタル、発泡メタル等が挙げられ、炭素質材料の場合、炭素板、炭素薄膜、炭素円柱等が挙げられる。これらのうち、金属薄膜が好ましい。なお、薄膜は適宜メッシュ状に形成してもよい。
集電体の厚さは任意であるが、好ましくは1μm以上であり、3μm以上がより好ましく、5μm以上が更に好ましく、また、好ましくは1mm以下であり、100μm以下がより好ましく、50μm以下が更に好ましい。集電体の厚さが、上記範囲内であると、集電体として必要な強度を十分確保することができる。更に、取り扱い性も良好となる。
集電体と正極活物質層の厚さの比は特には限定されないが、(非水系電解液注液直前の片面の活物質層厚さ)/(集電体の厚さ)が、好ましくは150以下であり、20以下がより好ましく、10以下が特に好ましく、また、好ましくは0.1以上であり、0.4以上がより好ましく、1以上が特に好ましい。
集電体と正極活物質層の厚さの比が、上記範囲内であると、二次電池の高電流密度充放電時に集電体がジュール熱による発熱を生じ難くなる。更に、正極活物質に対する集電体の体積比が増加し難くなり、電池容量の低下を防ぐことができる。
(電極面積)
高出力かつ高温時の安定性を高める観点から、正極活物質層の面積は、電池外装ケースの外表面積に対して大きくすることが好ましい。具体的には、非水系電解液二次電池の外装の表面積に対する前記正極の電極面積の総和を、面積比で20倍以上とすることが好ましく、40倍以上とすることがより好ましい。外装ケースの外表面積とは、有底角型形状の場合には、端子の突起部分を除いた発電要素が充填されたケース部分の縦と横と厚さの寸法から計算で求める総面積をいう。有底円筒形状の場合には、端子の突起部分を除いた発電要素が充填されたケース部分を円筒として近似する幾何表面積である。正極の電極面積の総和とは、負極活物質を含む合材層に対向する正極合材層の幾何表面積であり、集電体箔を介して両面に正極合材層を形成してなる構造では、それぞれの面を別々に算出する面積の総和をいう。
(放電容量)
本発明の非水系電解液を用いる場合、非水系電解液二次電池の1個の電池外装に収納される電池要素のもつ電気容量(電池を満充電状態から放電状態まで放電したときの電気容量)が、1アンペアーアワー(Ah)以上であると、低温放電特性の向上効果が大きくな
るため好ましい。そのため、正極板は、放電容量が満充電で、好ましくは3Ah(アンペアアワー)であり、より好ましくは4Ah以上、また、好ましくは20Ah以下であり、より好ましくは10Ah以下になるように設計する。
上記範囲内であると、大電流の取り出し時に電極反応抵抗による電圧低下が大きくなり過ぎず、電力効率の悪化を防ぐことができる。更に、パルス充放電時の電池内部発熱による温度分布が大きくなり過ぎず、充放電繰り返しの耐久性が劣り、また、過充電や内部短絡等の異常時の急激な発熱に対して放熱効率も悪くなるといった現象を回避することができる。
(正極板の厚さ)
正極板の厚さは、特に限定されないが、高容量かつ高出力、高レート特性の観点から、集電体の厚さを差し引いた正極活物質層の厚さは、集電体の片面に対して、10μm以上が好ましく、20μm以上がより好ましく、また、200μm以下が好ましく、100μm以下がより好ましい。
<2−5.セパレータ>
本発明の非水系電解液二次電池において、正極と負極との間には、短絡を防止するために、通常はセパレータを介在させる。この場合、本発明の非水系電解液は、通常はこのセパレータに含浸させて用いる。
セパレータの材料や形状については特に制限は無く、本発明の効果を著しく損なわない限り、公知のものを任意に採用することができる。中でも、本発明の非水系電解液に対し安定な材料で形成された、樹脂、ガラス繊維、無機物等が用いられ、保液性に優れた多孔性シート又は不織布状の形態の物等を用いるのが好ましい。
樹脂、ガラス繊維セパレータの材料としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、アラミド樹脂、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエーテルスルホン、ガラスフィルター等を用いることができる。中でも好ましくはガラスフィルター、ポリオレフィンであり、更に好ましくはポリオレフィンである。これらの材料は1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
上記セパレータの厚さは任意であるが、好ましくは1μm以上であり、5μm以上がより好ましく、10μm以上が更に好ましく、また、好ましくは50μm以下であり、40μm以下がより好ましく、30μm以下が更に好ましい。セパレータの厚さが、上記範囲内であると、絶縁性や機械的強度が良好なものとなる。更に、レート特性等の電池性能の低下を防ぐことができ、非水系電解液二次電池全体としてのエネルギー密度の低下も防ぐことができる。
更に、セパレータとして多孔性シートや不織布等の多孔質のものを用いる場合、セパレータの空孔率は任意であるが、好ましくは20%以上であり、35%以上がより好ましく、45%以上が更に好ましく、また、好ましくは90%以下であり、85%以下がより好ましく、75%以下が更に好ましい。空孔率が、上記範囲内であると、膜抵抗が大きくなり過ぎず、二次電池のレート特性の悪化を抑制できる。更に、セパレータの機械的強度も適度なものなり、絶縁性の低下も抑制できる。
また、セパレータの平均孔径も任意であるが、好ましくは0.5μm以下であり、0.2μm以下がより好ましく、また、好ましくは0.05μm以上である。平均孔径が、上記範囲内であると、短絡が生じ難くなる。更に、膜抵抗も大きくなり過ぎず、二次電池のレート特性の低下を防ぐことができる。
一方、無機物の材料としては、例えば、アルミナや二酸化ケイ素等の酸化物類、窒化ア
ルミや窒化ケイ素等の窒化物類、硫酸バリウムや硫酸カルシウム等の硫酸塩類が用いられ、粒子形状若しくは繊維形状のものが用いられる。
セパレータの形態としては、不織布、織布、微多孔性フィルム等の薄膜形状のものが用いられる。薄膜形状のセパレータでは、孔径が0.01〜1μm、厚さが5〜50μmのものが好適に用いられる。前記の独立した薄膜形状以外に、樹脂製のバインダーを用いて前記無機物の粒子を含有する複合多孔層を正極及び/又は負極の表層に形成させてなるセパレータを用いることができる。例えば、正極の両面に90%粒径が1μm未満のアルミナ粒子を使用し、かつフッ素樹脂をバインダーとして使用して多孔層を形成させることが挙げられる。
<2−6.電池設計>
(電極群)
電極群は、前述の正極板と負極板とを前述のセパレータを介してなる積層構造のもの、及び前述の正極板と負極板とを前述のセパレータを介して渦巻き状に捲回した構造のものの何れでもよい。電極群の体積が電池内容積に占める割合(以下、電極群占有率と称する)は、好ましくは40%以上であり、50%以上がより好ましく、また、好ましくは95%以下であり、90%以下がより好ましい。電極群占有率が、上記範囲内であると、電池容量が小さくなり難くなる。また、適度な空隙スペースを確保できるため、電池が高温になることによって部材が膨張したり非水系電解液の液成分の蒸気圧が高くなったりして内部圧力が上昇し、二次電池としての充放電繰り返し性能や高温保存特性等の諸特性を低下させたり、更には、内部圧力を外に逃がすガス放出弁が作動する場合を回避することができる。
(集電構造)
集電構造は特に限定されるものではないが、本発明の非水系電解液による放電特性の向上をより効果的に実現するには、配線部分や接合部分の抵抗を低減する構造にすることが好ましい。この様に内部抵抗を低減させた場合、本発明の非水系電解液を使用した効果は特に良好に発揮される。
電極群が前述の積層構造のものでは、各電極層の金属芯部分を束ねて端子に溶接して形成される構造が好適に用いられる。1枚の電極面積が大きくなる場合には、内部抵抗が大きくなるので、電極内に複数の端子を設けて抵抗を低減することも好適に用いられる。電極群が前述の捲回構造のものでは、正極及び負極にそれぞれ複数のリード構造を設け、端子に束ねることにより、内部抵抗を低くすることができる。
(保護素子)
保護素子として、異常発熱や過大電流が流れた時に抵抗が増大するPTC(Positive Temperature Coefficient)サーミスタ、温度ヒューズ、異常発熱時に電池内部圧力や内部温度の急激な上昇により回路に流れる電流を遮断する弁(電流遮断弁)等が挙げられる。前記保護素子は高電流の通常使用で作動しない条件のものを選択することが好ましく、保護素子がなくても異常発熱や熱暴走に至らない電池設計にすることがより好ましい。
(外装体)
本発明の非水系電解液二次電池は、通常、上記の非水系電解液、負極、正極、セパレータ等を外装体(外装ケース)内に収納して構成される。この外装体に制限は無く、本発明の効果を著しく損なわない限り公知のものを任意に採用することができる。
外装ケースの材質は用いられる非水系電解液に対して安定な物質であれば特に限定されるものではない。具体的には、ニッケルめっき鋼板、ステンレス、アルミニウム又はアル
ミニウム合金、マグネシウム合金、ニッケル、チタン等の金属類、又は、樹脂とアルミ箔との積層フィルム(ラミネートフィルム)が用いられる。軽量化の観点から、アルミニウム又はアルミニウム合金の金属、ラミネートフィルムが好適に用いられる。
上記金属類を用いる外装ケースでは、レーザー溶接、抵抗溶接、超音波溶接により金属同士を溶着して封止密閉構造とするもの、又は、樹脂製ガスケットを介して上記金属類を用いてかしめ構造とするものが挙げられる。上記ラミネートフィルムを用いる外装ケースでは、樹脂層同士を熱融着することにより封止密閉構造とするもの等が挙げられる。シール性を上げるために、上記樹脂層の間にラミネートフィルムに用いられる樹脂と異なる樹脂を介在させてもよい。特に、集電端子を介して樹脂層を熱融着して密閉構造とする場合には、金属と樹脂との接合になるので、介在する樹脂として極性基を有する樹脂や極性基を導入した変成樹脂が好適に用いられる。
また、外装ケースの形状も任意であり、例えば円筒型、角形、ラミネート型、コイン型、大型等の何れであってもよい。
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、本発明は、その要旨を超えない限り、これらの実施例に限定されるものではない。
なお、実施例及び比較例にて非水系電解液の構成成分として使用した化合物は以下の化合物である。
Figure 0006459695
<<実施例1−1〜1−4、比較例1−1〜1−3>>
[非水系電解液二次電池の作製]
<非水系電解液の調製>
[実施例1−1]
乾燥アルゴン雰囲気下、エチレンカーボネートとジエチルカーボネートとの混合物(体積比3:7)に、十分に乾燥させたLiPF6を1mol/L(非水系電解液中の濃度と
して)の濃度で溶解させ、更に、表1に示す化合物(a)を0.34質量%(非水系電解液中の濃度として)の量で溶解させ、非水系電解液を調製した。この非水系電解液を用いて下記の方法で非水系電解液二次電池を作製し、下記評価を実施した。
[実施例1−2]
化合物(a)の濃度を0.68質量%としたこと以外は実施例1−1と同様に非水系電
解液二次電池を作製し、下記評価を実施した。
[実施例1−3]
非水系電解液に化合物(a)を溶解させず、非水系電解液中に表1に示す化合物(b)を0.50質量%(非水系電解液中の濃度として)溶解させたこと以外は実施例1−1と同様に非水系電解液二次電池を作製し、下記評価を実施した。
[実施例1−4]
化合物(b)の濃度を1.00質量%としたこと以外は実施例1−3と同様に非水系電解液二次電池を作製し、下記評価を実施した。
[比較例1−1]
非水系電解液中に化合物(a)を溶解させなかったこと以外は実施例1−1と同様に非水系電解液二次電池を作製し、下記評価を実施した。
[比較例1−2]
非水系電解液中に化合物(a)を溶解させず、非水系電解液中に表1に示す化合物(c)を0.32質量%(非水系電解液中の濃度として)の濃度で溶解させたこと以外は実施例1−1と同様に非水系電解液二次電池を作製し、下記評価を実施した。
[比較例1−3]
化合物(c)の濃度を0.64質量%としたこと以外は比較例1−2と同様に非水系電解液二次電池を作製し、下記評価を実施した。
<正極の作製>
第一の正極活物質としてのアルミニウム置換マンガン酸リチウム(Li1.1Mn1.9Al0.14)72質量部、第二の正極活物質としてのリチウムニッケルマンガンコバルト複合酸化物(Li1.15
Ni0.45Mn0.45Co0.102)18質量部、導電材としてのカーボンブラックを5質量
部、結着材としてのポリフッ化ビニリデン(PVdF)を5質量部とを、N−メチル−2−ピロリドン中で混合・スラリー化し、これを厚さ15μmのアルミニウム箔に均一に塗布、乾燥した後、ロールプレスを行い正極とした。
<負極の作製>
活物質としてのグラファイト粉末93質量部、導電材としてのカーボンブラックを1質量部、結着材としてのKFポリマーL#9305(フッ化ビニリデン系重合体の濃度5質量%)を120質量部とを、N−メチル−2−ピロリドン中で混合・スラリー化し、得られたスラリーを厚さ10μmの銅箔に均一に塗布して乾燥し、ロールプレスして負極とした。
<非水系電解液二次電池の製造>
上記の正極、負極、及びポリオレフィン製セパレータを、負極、セパレータ、正極の順に積層した。こうして得られた電池要素をアルミニウムラミネートフィルムで包み込み、前述の各実施例及び比較例の非水系電解液を注入した後で真空封止し、シート状の非水系電解液二次電池を作製した。
[非水系電解液二次電池の評価]
・初期充放電
25℃の恒温槽中、シート状の非水系電解液二次電池を0.1C(1時間率の放電容量による定格容量を1時間で放電する電流値を1Cとする。以下同様。)で4.2Vまで定電流−定電圧充電した後、0.1Cで2.7Vまで放電した。続いて0.3Cで4.2Vまで定電流−定電圧充電した後、0.3Cで2.7Vまで放電した。これを2サイクル、合計3サイクル行って非水系電解液二次電池を安定させた。その後電池を60℃に24時間保持しエージングを実施した。その後、0.3Cで充放電を行って、その放電容量を測
定し、初期容量とした。
・高負荷放電試験
高負荷放電試験は、電気自動車での実使用上限の高負荷と目される2Cにて実施した。0.3Cで4.2Vまで定電流−定電圧充電した電池を、2Cに相当する定電流値で2.7Vまで放電し、その放電容量と前述の初期容量を用いて、
(高負荷容量損失)=(2C放電容量)−(初期容量)
で表される、高負荷容量損失を算出した。
下記表2に、高負荷容量損失を、比較例1−1を100%とした時の相対値で表す。即ち、表2に記載の高負荷容量損失は、値が小さいほど、高負荷条件下でも容量が減少せず好ましいと言える。なお、表1に示した分子量からわかるように、
・実施例1−1、実施例1−3、及び比較例1−2
・実施例1−2、実施例1−4、及び比較例1−3
は、それぞれ同質量モル濃度での比較になっている。
Figure 0006459695
表2から明らかなように、特定NCO化合物でない化合物を含有する非水系電解液を用いると高負荷容量損失が増大してしまうのに対し、非水系電解液中に特定NCO化合物を含有する本発明の非水系電解液を用いることで、化合物を含有しない非水系電解液を用いるよりも高負荷容量損失が減少し、高負荷放電特性に優れる非水系二次電池を提供できることが示されている。
<<実施例2−1〜2−6、比較例2−1〜2−5>>
[非水系電解液二次電池の作製]
<非水系電解液の調製>
[実施例2−1]
乾燥アルゴン雰囲気下、エチレンカーボネートとジエチルカーボネートとエチルメチルカーボネートとの混合物(体積比3:6:1、以下「カーボネート溶媒」と記述)に、十分に乾燥させたLiPF6を0.9mol/L(非水系電解液中の濃度として)の濃度で
溶解させ、更に、表1に示す化合物(a)を1.2質量%(非水系電解液中の濃度として)の量で溶解させ、非水系電解液を調製した。この非水系電解液を用いて下記の方法で非水系電解液二次電池を作製し、下記評価を実施した。
[実施例2−2]
化合物(a)の濃度を1.3質量%としたこと以外は実施例2−1と同様に非水系電解液二次電池を作製し、下記評価を実施した。
[実施例2−3]
化合物(a)の濃度を1.4質量%としたこと以外は実施例2−1と同様に非水系電解液二次電池を作製し、下記評価を実施した。
[実施例2−4]
化合物(a)の濃度を1.5質量%としたこと以外は実施例2−1と同様に非水系電解液二次電池を作製し、下記評価を実施した。
[実施例2−5]
化合物(a)の濃度を2.5質量%としたこと以外は実施例2−1と同様に非水系電解液二次電池を作製し、下記評価を実施した。
[実施例2−6]
化合物(a)の濃度を3.0質量%としたこと以外は実施例2−1と同様に非水系電解液二次電池を作製し、下記評価を実施した。
[比較例2−1]
非水系電解液中に化合物(a)を溶解させなかったこと以外は実施例2−1と同様に非水系電解液二次電池を作製し、下記評価を実施した。
[比較例2−2]
非水系電解液中に化合物(a)を溶解させず、非水系電解液中に表1に示す化合物(d)を0.5質量%(非水系電解液中の濃度として)溶解させたこと以外は実施例2−1と同様に非水系電解液二次電池を作製し、下記評価を実施した。
[比較例2−3]
化合物(d)の濃度を1.0質量%としたこと以外は比較例2−2と同様に非水系電解液二次電池を作製し、下記評価を実施した。
[比較例2−4]
非水系電解液にカーボネート溶媒を用いず、テトラメチレンスルホン(以下、「TMS溶媒」と記述)に、十分に乾燥させたLiPF6を0.9mol/L(非水系電解液中の
濃度として)の濃度で溶解させ、更に、表1に示す化合物(a)を1.2質量%(非水系電解液中の濃度として)の量で溶解させ、非水系電解液を調製した。この非水系電解液を用いたこと以外は実施例2−1と同様に非水系電解液二次電池を作製し、下記評価を実施した。
[比較例2−5]
化合物(a)の濃度を1.5質量%としたこと以外は比較例2−4と同様に非水系電解液二次電池を作製し、下記評価を実施した。
<正極の作製>
第一の正極活物質としてのアルミニウム置換マンガン酸リチウム(Li1.1Mn1.9Al0.1)67.5質量部、第二の正極活物質としてのリチウムニッケルマンガンコバルト複合酸化物(Li1.05Ni0.33Mn0.33Co0.33)22.5質量部、導電材としてのカーボンブラックを5質量部、結着材としてのポリフッ化ビニリデン(PVdF)を5質量部とを、N−メチル−2−ピロリドン中で混合・スラリー化し、これを厚さ15μmのアルミニウム箔に均一に塗布、乾燥した後、ロールプレスを行い正極とした。
<負極の作製>
グラファイト粉末97.5質量部に、増粘剤としてカルボキシメチルセルロースナトリウムの水性ディスパージョン(カルボキシメチルセルロースナトリウムの濃度1質量%)150質量部と、バインダーとしてスチレン−ブタジエンゴムの水性ディスパージョン(スチレン−ブタジエンゴムの濃度50質量%)2質量部を加え、ディスパーザーで混合してスラリー化した。得られたスラリーを厚さ10μmの銅箔に均一に塗布して乾燥し、ロールプレスして負極とした。
<非水系電解液二次電池の製造>
上記の正極、負極、及びポリオレフィン製セパレータを、負極、セパレータ、正極の順に積層した。こうして得られた電池要素をアルミニウムラミネートフィルムで包み込み、前述の各実施例及び比較例の非水系電解液を注入した後で真空封止し、シート状の非水系電解液二次電池を作製した。
[非水系電解液二次電池の評価]
・初期充放電
25℃の恒温槽中、シート状の非水系電解液二次電池を0.1Cで4.2Vまで定電流−定電圧充電した後、0.1Cで2.7Vまで放電した。試験電池数のうち、この充放電ができなかった電池の割合を不良セル割合として表3に記した。
続いて0.3Cで4.2Vまで定電流−定電圧充電した後、0.3Cで2.7Vまで放電した。これを2サイクル、合計3サイクル行って非水系電解液二次電池を安定させた。その後電池を60℃に24時間保持しエージングを実施した。その後、0.3Cで4.2Vまで充電、2.7Vまで放電を行って、その放電容量を測定し、初期容量とした。さらに、この初期容量のちょうど半分の容量まで充電して、充電状態50%の電池を得た。
・初期インピーダンス測定
初期充放電を実施した後、充電状態50%に調整した非水系電解液二次電池について、−10℃において交流インピーダンス測定を行った。0.01Hzの時のインピーダンスの絶対値を電池の初期インピーダンスとした。
表3に、初期インピーダンスを、比較例2−1の値を100%としたときの相対値で示す。初期インピーダンスは小さいほど、電池の容量を無駄なく用いることができるため、好ましい。
・高温サイクル試験
高温サイクル試験は、非水系電解液二次電池の実使用上限温度と目される55℃の高温環境下にて実施した。55℃の恒温槽中、1Cで4.2Vまで定電流−定電圧充電した後、1Cの定電流で2.7Vまで放電する過程を1サイクルとして、99サイクル実施した。99サイクル目の容量を「サイクル残存容量」とした。
表3に、サイクル残存容量を、比較例2−1の初期容量を100%としたときの相対値で示す。サイクル残存容量は大きな値が好ましい。
Figure 0006459695
表3から明らかなように、非水系電解液の溶媒として環状カーボネートまたは鎖状カーボネートを含有していることで、通常の充放電が可能となる。また、非水系電解液中に、特定NCO化合物を含有する本発明の非水系電解液を用いることで、化合物を含有しない非水系電解液、特定NCO化合物でない化合物を含有する非水系電解液を用いるのとは異なり、初期インピーダンスの増加を抑制し、かつ、高温下において繰り返し充放電されても残存容量が大きな電池を提供することができる。
<<実施例3−1、比較例3−1〜3−3>>
[非水系電解液二次電池の作製]
<非水系電解液の調製>
[実施例3−1]
乾燥アルゴン雰囲気下、エチレンカーボネートとジエチルカーボネートとの混合物(体積比3:7)に、十分に乾燥させたLiPF6を1mol/L(非水系電解液中の濃度と
して)の濃度で溶解させ、更に、表1に示す化合物(a)を0.7質量%(非水系電解液中の濃度として)の量で溶解させ、非水系電解液を調製した。この非水系電解液を用いて下記の方法で非水系電解液二次電池を作製し、下記評価を実施した。
[比較例3−1]
非水系電解液中に化合物(a)を溶解させなかったこと以外は実施例3−1と同様に非水系電解液二次電池を作製し、下記評価を実施した。
[比較例3−2]
非水系電解液中に化合物(a)を溶解させず、非水系電解液中に表1に示す化合物(e)を0.7質量%(非水系電解液中の濃度として)の量で溶解させたこと以外は実施例3−1と同様に非水系電解液二次電池を作製し、下記評価を実施した。
[比較例3−3]
非水系電解液中に化合物(a)を溶解させず、非水系電解液中に表1に示す化合物(f)を0.5質量%(非水系電解液中の濃度として)の量で溶解させたこと以外は実施例3
−1と同様に非水系電解液二次電池を作製し、下記評価を実施した。
<正極の作製>
第一の正極活物質としてのアルミニウム置換マンガン酸リチウム(Li1.1Mn1.9Al0.1)67.5質量部、第二の正極活物質としてのリチウムニッケルマンガンコバルト複合酸化物(Li1.05Ni0.33Mn0.33Co0.33)22.5質量部、導電材としてのカーボンブラックを5質量部、結着材としてのポリフッ化ビニリデン(PVdF)を5質量部とを、N−メチル−2−ピロリドン中で混合・スラリー化し、これを厚さ15μmのアルミニウム箔に均一に塗布、乾燥した後、ロールプレスを行い正極とした。
<負極の作製>
グラファイト粉末97.5質量部に、増粘剤としてカルボキシメチルセルロースナトリウムの水性ディスパージョン(カルボキシメチルセルロースナトリウムの濃度1質量%)150質量部と、バインダーとしてスチレン−ブタジエンゴムの水性ディスパージョン(スチレン−ブタジエンゴムの濃度50質量%)2質量部を加え、ディスパーザーで混合してスラリー化した。得られたスラリーを厚さ10μmの銅箔に均一に塗布して乾燥し、ロールプレスして負極とした。
<非水系電解液二次電池の製造>
上記の正極、負極、及びポリオレフィン製セパレータを、負極、セパレータ、正極の順に積層した。こうして得られた電池要素をアルミニウムラミネートフィルムで包み込み、前述の各実施例及び比較例の非水系電解液を注入した後で真空封止し、シート状の非水系電解液二次電池を作製した。
[非水系電解液二次電池の評価]
・初期充放電
25℃の恒温槽中、シート状の非水系電解液二次電池を0.1Cで4.2Vまで定電流−定電圧充電した後、0.1Cで2.7Vまで放電した。続いて0.3Cで4.2Vまで定電流−定電圧充電した後、0.3Cで2.7Vまで放電した。これを2サイクル、合計3サイクル行って非水系電解液二次電池を安定させた。その後電池を60℃に24時間保持しエージングを実施した。
・高温サイクル試験
高温サイクル試験は、非水系電解液二次電池の実使用上限温度と目される55℃の高温環境下にて実施した。55℃の恒温槽中、1Cで4.2Vまで定電流−定電圧充電した後、1Cの定電流で2.7Vまで放電する過程を1サイクルとして、100サイクル実施した。
・耐久後インピーダンス測定
高温サイクル試験を実施した後、充電状態50%に調整した非水系電解液二次電池について、−10℃において交流インピーダンス測定を行った。0.01Hzの時のインピーダンスの絶対値を電池の耐久後インピーダンスとした。
表4に、耐久後インピーダンスを、比較例3−1の値を100%としたときの相対値で示す。耐久後インピーダンスは、値が小さいほど、電池の電圧や容量を損なわずに用いることができるため、好ましい。
Figure 0006459695
表4から明らかなように、特定NCO化合物でない化合物を含有する非水系電解液(比較例3−2、比較例3−3)は、化合物を含有しない非水系電解液(比較例3−1)よりも、耐久後インピーダンスが増大してしまう。一方、特定NCO化合物を含有する本発明の非水系電解液(実施例3−1)は、化合物を含有しない非水系電解液(比較例3−1)よりも、耐久後インピーダンスが減少し、耐久特性に優れる非水系二次電池を提供できることが示されている。
<<実施例4−1〜4−3、比較例4−1〜4−5>>
<負極の作製>
グラファイト粉末97.5質量部に、増粘剤としてカルボキシメチルセルロースナトリウムの水性ディスパージョン(カルボキシメチルセルロースナトリウムの濃度1質量%)150質量部と、バインダーとしてスチレン−ブタジエンゴムの水性ディスパージョン(スチレン−ブタジエンゴムの濃度50質量%)2質量部を加え、ディスパーザーで混合してスラリー化した。得られたスラリーを厚さ10μmの銅箔に均一に塗布して乾燥し、ロールプレスして負極とした。
<非水系電解液二次電池の製造>
後述する正極、上記の負極、及びポリオレフィン製セパレータを、負極、セパレータ、正極の順に積層した。こうして得られた電池要素をアルミニウムラミネートフィルムで包み込み、後述する各実施例及び比較例の非水系電解液を注入した後で真空封止し、シート状の非水系電解液二次電池を作製した。このようにして得られた非水系電解液二次電池を後述のように評価した。
[実施例4−1]
<正極の作製>
正極活物質としてのリン酸鉄リチウム(LiFePO)83.5質量部、導電材としてのカーボンブラックを10質量部、結着材としてのポリフッ化ビニリデン(PVdF)を6.5質量部とを、N−メチル−2−ピロリドン中で混合・スラリー化し、これを厚さ15μmのアルミニウム箔に均一に塗布、乾燥した後、ロールプレスを行い正極とした。(以下、当該正極をLFPと記述)
<非水系電解液の調製>
続いて、乾燥アルゴン雰囲気下、エチレンカーボネートとジエチルカーボネートとの混合物(体積比3:7)に、十分に乾燥させたLiPF6を1mol/L(非水系電解液中
の濃度として)の濃度で溶解させ、更に、表1に示す化合物(a)を0.35質量%(非水系電解液中の濃度として)の量で溶解させ、非水系電解液を調製した。
<非水系電解液二次電池の高温サイクル評価>
・初期充放電
この正極および非水系電解液を用いて上記の方法で作製した電池を25℃の恒温槽中において0.2Cで3.8Vまで定電流−定電圧充電した後、0.3Cで2.5Vまで放電した。続いて0.3Cで3.8Vまで定電流−定電圧充電した後、0.3Cで2.5Vまで放電した。これを2サイクル、合計3サイクル行って非水系電解液二次電池を安定させた。その後電池を60℃に12時間保持しエージングを実施した。
・高温サイクル評価
上記エージング後の電池を55℃の恒温槽中において1Cで3.8Vまで定電流−定電圧充電した後、1Cの定電流で2.5Vまで放電する過程を1サイクルとして、20サイクル実施した。
[実施例4−2]
化合物(a)の濃度を0.70質量%としたこと以外は実施例4−1と同様に非水系電解液二次電池を作製し、評価を実施した。
[実施例4−3]
<正極の作製>
第一の正極活物質としてのアルミニウム置換マンガン酸リチウム(Li1.1Mn1.9Al0.1)67.5質量部、第二の正極活物質としてのリチウムニッケルマンガンコバルト複合酸化物(Li1.05Ni0.33Mn0.33Co0.33)22.5質量部、導電材としてのカーボンブラックを5質量部、結着材としてのポリフッ化ビニリデン(PVdF)を5質量部とを、N−メチル−2−ピロリドン中で混合・スラリー化し、これを厚さ15μmのアルミニウム箔に均一に塗布、乾燥した後、ロールプレスを行い正極とした。(以下、当該正極をLMO+NMCと記述)
<非水系電解液の調製>
続いて、乾燥アルゴン雰囲気下、エチレンカーボネートとジエチルカーボネートとの混合物(体積比3:7)に、十分に乾燥させたLiPF6を1mol/L(非水系電解液中
の濃度として)の濃度で溶解させ、更に、表1に示す化合物(a)を0.70質量%(非水系電解液中の濃度として)の量で溶解させ、非水系電解液を調製した。
<非水系電解液二次電池の高温サイクル評価>
・初期充放電
この正極および非水系電解液を用いて上記の方法で作製した電池を25℃の恒温槽中において0.1Cで4.2Vまで定電流充電した後、0.1Cで2.7Vまで放電した。続いて0.3Cで4.2Vまで定電流−定電圧充電した後、0.3Cで2.7Vまで放電した。これを2サイクル、合計3サイクル行って非水系電解液二次電池を安定させた。その後電池を60℃に24時間保持しエージングを実施した。
・高温サイクル評価
上記エージング後の電池を55℃の恒温槽中において1Cで4.2Vまで定電流−定電圧充電した後、1Cの定電流で2.7Vまで放電する過程を1サイクルとして、20サイクル実施した。
[実施例4−4]
<正極の作製>
正極活物質としてのリチウムニッケルマンガンコバルト複合酸化物(Li1.05Ni0.33Mn0.33Co0.33)90質量部、導電材としてのカーボンブラックを7質量部、結着材としてのポリフッ化ビニリデン(PVdF)を3質量部とを、N−メチル−2−ピロリドン中で混合・スラリー化し、これを厚さ15μmのアルミニウム箔に均一に塗布、乾燥した後、ロールプレスを行い正極とした。(以下、当該正極をNMCと
記述)
<非水系電解液の調製>
続いて、乾燥アルゴン雰囲気下、エチレンカーボネートとジエチルカーボネートとの混合物(体積比3:7)に、十分に乾燥させたLiPF6を1mol/L(非水系電解液中
の濃度として)の濃度で溶解させ、更に、表1に示す化合物(a)を0.35質量%(非水系電解液中の濃度として)の量で溶解させ、非水系電解液を調製した。
<非水系電解液二次電池の高温サイクル評価>
・初期充放電
この正極および非水系電解液を用いて上記の方法で作製した二次電池を25℃の恒温槽中において0.2Cで4.1Vまで定電流−定電圧充電した後、0.3Cで3Vまで放電した。続いて0.3Cで4.1Vまで定電流−定電圧充電した後、0.3Cで3Vまで放電した。これを2サイクル、合計3サイクル行って非水系電解液二次電池を安定させた。その後電池を60℃に12時間保持しエージングを実施した。
・高温サイクル評価
上記エージング後の電池を55℃の恒温槽中において1Cで4.2Vまで定電流−定電圧充電した後、1Cの定電流で2.7Vまで放電する過程を1サイクルとして、20サイクル実施した。
[実施例4−5]
非水系電解液中に化合物(a)を0.70質量%(非水系電解液中の濃度として)溶解させたこと以外は実施例4−4と同様に非水系電解液二次電池を作製し、下記評価を実施した。
[比較例4−1]
非水系電解液中に化合物(a)を溶解させなかったこと以外は実施例4−1と同様に非水系電解液二次電池を作製し、評価を実施した。
[比較例4−2]
非水系電解液中に化合物(a)を溶解させなかったこと以外は実施例4−3と同様に非水系電解液二次電池を作製し、下記評価を実施した。
[比較例4−3]
非水系電解液中に化合物(a)を溶解させなかったこと以外は実施例4−4と同様に非水系電解液二次電池を作製し、下記評価を実施した。
表5に、20サイクル目の容量の1サイクル目の容量に対する比率を容量維持率として示す。また、化合物(a)を含有させたことによる容量維持率の向上度合についても合わせて示す。
Figure 0006459695
表5から明らかなように、特定NCO化合物を含有する非水系電解液を用いると高温サイクル特性が向上することが示されているが、中でも特定の正極を用いた非水系電解液二次電池において、顕著な特性の向上が見られることが示されている。
<<実施例5−1〜5−2、比較例5−1〜5−5>>
<負極の作製>
グラファイト粉末97.5質量部に、増粘剤としてカルボキシメチルセルロースナトリウムの水性ディスパージョン(カルボキシメチルセルロースナトリウムの濃度1質量%)150質量部と、バインダーとしてスチレン−ブタジエンゴムの水性ディスパージョン(スチレン−ブタジエンゴムの濃度50質量%)2質量部を加え、ディスパーザーで混合してスラリー化した。得られたスラリーを厚さ10μmの銅箔に均一に塗布して乾燥し、ロールプレスして負極とした。
<非水系電解液二次電池の製造>
後述する正極、上記の負極、及びポリオレフィン製セパレータを、負極、セパレータ、正極の順に積層した。こうして得られた電池要素をアルミニウムラミネートフィルムで包み込み、後述する実施例及び比較例の非水系電解液を注入した後で真空封止し、シート状の非水系電解液二次電池を作製した。このようにして得られた非水系電解液二次電池を後述のように評価した。
[実施例5−1]
<正極の作製>
正極活物質としてのリン酸鉄リチウム(LiFePO)83.5質量部、導電材としてのカーボンブラックを10質量部、結着材としてのポリフッ化ビニリデン(PVdF)を6.5質量部とを、N−メチル−2−ピロリドン中で混合・スラリー化し、これを厚さ15μmのアルミニウム箔に均一に塗布、乾燥した後、ロールプレスを行い正極とした。(以下、当該正極をLFPと記述)
<非水系電解液の調製>
続いて、乾燥アルゴン雰囲気下、エチレンカーボネートとジエチルカーボネートとの混合物(体積比3:7)に、十分に乾燥させたLiPF6を1mol/L(非水系電解液中
の濃度として)の濃度で溶解させ、更に、表1に示す化合物(a)を0.35質量%(非
水系電解液中の濃度として)の量で溶解させ、非水系電解液を調製した。
<非水系電解液二次電池の高温耐性評価>
・初期充放電
この正極および非水系電解液を用いて上記の方法で作製した電池を25℃の恒温槽中において0.2Cで3.8Vまで定電流−定電圧充電した後、0.3Cで2.5Vまで放電した。続いて0.3Cで3.8Vまで定電流−定電圧充電した後、0.3Cで2.5Vまで放電した。これを2サイクル、合計3サイクル行って非水系電解液二次電池を安定させた。
・高温耐性評価
上記の電池を25℃の恒温槽中において1Cで3.8Vまで定電流−定電圧充電した後、60℃の恒温槽にて12時間放置した。
[実施例5−2]
化合物(a)の濃度を0.70質量%としたこと以外は実施例5−1と同様に非水系電解液二次電池を作製し、評価を実施した。
[実施例5−3]
<正極の作製>
正極活物質としてのリチウムニッケルマンガンコバルト複合酸化物(Li1.05Ni0.33Mn0.33Co0.33)90質量部、導電材としてのカーボンブラックを7質量部、結着材としてのポリフッ化ビニリデン(PVdF)を3質量部とを、N−メチル−2−ピロリドン中で混合・スラリー化し、これを厚さ15μmのアルミニウム箔に均一に塗布、乾燥した後、ロールプレスを行い正極とした。(以下、当該正極をNMCと記述)
<非水系電解液の調製>
続いて、乾燥アルゴン雰囲気下、エチレンカーボネートとジエチルカーボネートとの混合物(体積比3:7)に、十分に乾燥させたLiPF6を1mol/L(非水系電解液中
の濃度として)の濃度で溶解させ、更に、表1に示す化合物(a)を0.35質量%(非水系電解液中の濃度として)の量で溶解させ、非水系電解液を調製した。
<非水系電解液二次電池の高温耐性評価>
・初期充放電
この正極および非水系電解液を用いて上記の方法で作製した電池を25℃の恒温槽中において0.2Cで4.1Vまで定電流−定電圧充電した後、0.3Cで3Vまで放電した。続いて0.3Cで4.1Vまで定電流−定電圧充電した後、0.3Cで3Vまで放電した。これを2サイクル、合計3サイクル行って非水系電解液二次電池を安定させた。
・高温耐性評価
上記の電池を25℃の恒温槽中において1Cで4.1Vまで定電流−定電圧充電した後、60℃の恒温槽にて12時間放置した。
[実施例5−4]
化合物(a)の濃度を0.70質量%としたこと以外は実施例5−3と同様に非水系電解液二次電池を作製し、評価を実施した。
[比較例5−1]
非水系電解液中に化合物(a)を溶解させなかったこと以外は実施例5−1と同様に非水系電解液二次電池を作製し、評価を実施した。
[比較例5−2]
非水系電解液中に化合物(a)を溶解させなかったこと以外は実施例5−3と同様に非水系電解液二次電池を作製し、評価を実施した。
表6に、放置直前の電池の25℃でのOCVと放置直後の電池の25℃でのOCVとの差すなわち放置時OCV低下について、正極種毎に化合物(a)の含有量0質量%のとき(比較例5−1、比較例5−2)を100として規格化した数値を示す。
Figure 0006459695
表6から明らかなように、同様に特定NCO化合物を含有する非水系電解液を用いた評価において、正極がLFP正極である非水系電解液二次電池では、放置時OCV低下への影響を抑制することができる。
<<実施例6−1、比較例6−1〜6−4>>
<正極の作製>
正極活物質としてのリチウムニッケルマンガンコバルト複合酸化物(Li1.05Ni0.33Mn0.33Co0.33)85質量部、導電材としてのカーボンブラックを10質量部、結着材としてのポリフッ化ビニリデン(PVdF)を5質量部とを、N−メチル−2−ピロリドン中で混合・スラリー化し、これを厚さ15μmのアルミニウム箔に均一に塗布、乾燥した後、ロールプレスを行い正極とした。
<負極の作製>
(Si含有負極の作製)
平均粒子径0.2μmのSi微粒子50gを平均粒径35μmの鱗片状黒鉛2000g中に分散させ、ハイブリダイゼーションシステム(奈良機械製作所製)に投入し、ローター回転数7000rpm、180秒装置内を循環又は滞留させて処理し、Siと黒鉛粒子の複合体を得た。得られた複合体に、焼成後の被覆率が7.5%になるように炭素質物となる有機化合物としてのコールタールピッチを混合し、2軸混練機により混練・分散させた。得られた分散物を、焼成炉に導入し、窒素雰囲気下1000℃、3時間焼成した。得られた焼成物は、更にハンマーミルで粉砕後、篩(45μm)を実施し、負極活物質を作製した。前記測定法で測定した、珪素元素の含有量、平均粒径(d50)、タップ密度、比表面積はそれぞれ、2.0質量%、20μm、1.0g cm−3、7.2m−1であった。
上述の負極活物質、および増粘材、結着材としてそれぞれ、カルボキシメチルセルロースナトリウムの水性ディスパージョン(カルボキシメチルセルロースナトリウムの濃度1質量%)、スチレン−ブタジエンゴムの水性ディスパージョン(スチレン−ブタジエンゴムの濃度50質量%)を使用し、ディスパーザーで混合してスラリー化した。このスラリ
ーを厚さ10μmの銅箔の片面に均一に塗布、乾燥した後、プレスして負極とした。なお、乾燥後の負極において、負極活物質:カルボキシメチルセルロースナトリウム:スチレンブタジエンゴム=97.5:1:1.5の質量比となるように作製した。
上記と同様の方法によって、表7に表される炭素質材料含有量の負極活物質1〜4を作製した。炭素質材料含有量は、Si微粒子と黒鉛粒子との合計(100質量%)に対するSi微粒子の分析結果による質量濃度(質量%)より算出したものである。
Figure 0006459695
(グラファイト負極の作製)
グラファイト粉末、および増粘材、結着材としてそれぞれ、カルボキシメチルセルロースナトリウムの水性ディスパージョン(カルボキシメチルセルロースナトリウムの濃度1質量%)、スチレン−ブタジエンゴムの水性ディスパージョン(スチレン−ブタジエンゴムの濃度50質量%)を使用し、ディスパーザーで混合してスラリー化した。このスラリーを厚さ10μmの銅箔の片面に均一に塗布、乾燥した後、プレスして負極とした。なお、乾燥後の負極において、負極活物質:カルボキシメチルセルロースナトリウム:スチレンブタジエンゴム=97.5:1:1.5の質量比となるように作製した。
<非水系電解液の調製>
続いて、乾燥アルゴン雰囲気下、エチレンカーボネートとジエチルカーボネートとの混合物(体積比3:7)に、十分に乾燥させたLiPF6を1mol/L(非水系電解液中
の濃度として)の濃度で溶解させ、更に、ビニレンカーボネート(VC)とフルオロエチレンカーボネートをそれぞれ2.0質量%(非水系電解液中の濃度として)の量で添加した(これを基準電解液と呼ぶ)。基準電解液全体に対して、表1に示す化合物(a)を2.0質量%(非水系電解液中の濃度として)の量で溶解させ、非水系電解液を調製した。
<非水系電解液二次電池の製造>
上記の正極、負極、及びポリオレフィン製セパレータを、負極、セパレータ、正極の順に積層した。こうして得られた電池要素をアルミニウムラミネートフィルムで包み込み、上述の非水系電解液を注入した後で真空封止し、シート状の非水系電解液二次電池を作製した。このようにして得られた非水系電解液二次電池を後述のように評価した。
<非水系電解液二次電池の45℃サイクル評価>
・初期充放電
25℃の恒温槽中、ラミネート型セルの非水系電解液二次電池を0.05Cに相当する電流で4.0Vまで定電流−定電圧充電を行った。その後、0.05Cで2.5Vまで定電流放電した。続いて0.2Cで4.0Vまで定電流−定電圧充電した後、0.2Cで2
.5Vまで定電流放電し、0.2Cで4.2Vまで定電流−定電圧充電した後、0.2Cで2.5Vまで定電流放電し非水系電解液二次電池を安定させた。その後、0.2Cで4.3Vまで定電流−定電圧充電を行った後、0.2Cで2.5Vまで定電流放電させた。
続いて非水系電解液二次電池を45℃の恒温槽中、0.5Cで4.2Vまで定電流−定電圧充電した後、0.5Cの定電流で2.5Vまで放電する過程を1サイクルとして、10サイクル実施し、初期のコンディショニングを行った。
・45℃サイクル評価
上記の電池を45℃の恒温槽中において0.5Cで4.2Vまで定電流−定電圧充電した後、0.5Cの定電流で2.5Vまで放電する過程を1サイクルとして、50サイクル実施した。
50サイクル目の容量の1サイクル目の容量に対する比率を容量維持率として示す。
Figure 0006459695
表8から明らかなように、負極中のSi含有量を所定の量とした二次電池において、特定NCO化合物を含有する非水系電解液を用いることで、高温サイクル容量維持率を高く保つことが可能となる。
本発明の非水系電解液によれば、インピーダンスが小さく、かつ、高温下において繰り返し充放電されても、容量減少の小さい等の特徴を持つ電池を提供することができるので、非水系電解液二次電池が用いられる電子機器等のあらゆる分野において好適に利用できる。また、非水系電解液を用いるリチウムイオンキャパシタ等の電解コンデンサにおいても好適に利用できる。
本発明の非水系電解液及び非水系電解液二次電池の用途は特に限定されず、公知の各種の用途に用いることが可能である。その用途の具体例としては、ラップトップコンピュータ、電子ブックプレーヤー、携帯電話、携帯ファックス、携帯コピー、携帯プリンタ、携帯オーディオプレーヤー、小型ビデオカメラ、液晶テレビ、ハンディクリーナー、トランシーバ、電子手帳、電卓、メモリーカード、携帯テープレコーダー、ラジオ、バックアップ電源、自動車、バイク、原動機付自転車、自転車、照明器具、玩具、ゲーム機器、時計、電動工具、ストロボ、カメラ等を挙げることができる。

Claims (9)

  1. 金属イオンを吸蔵及び放出可能な正極と、金属イオンを吸蔵及び放出可能な負極と、非
    水溶媒と該非水溶媒に溶解される電解質とを含む非水系電解液とを備えた非水系電解液二
    次電池であって、
    該負極の負極活物質が炭素質材料からなり、
    該非水系電解液が、環状カーボネート及び鎖状カーボネートのうち少なくとも一方を含
    有し、
    さらに下記一般式(1)で表される化合物を含有していることを特徴とする非水系電解
    液二次電池。
    Figure 0006459695
    (式(1)中、R〜Rはそれぞれ独立して、水素原子、フッ素原子またはフッ素置換
    されていてもよい炭化水素基であり、R〜Rのうち少なくとも一つはフッ素原子また
    はフッ素置換されていてもよい炭化水素基である。R〜Rにフッ素原子を含む場合、
    〜Rのうち少なくとも4つ以上にフッ素原子を含む。nは0または1である。n=
    0の場合、芳香環とSが直接結合することを意味する。)
  2. 前記非水系電解液が、前記一般式(1)で表される化合物を、非水系電解液全量に対し
    て0.01質量%以上2質量%以下の含有率で含有していることを特徴とする請求項1に
    記載の非水系電解液二次電池。
  3. 前記正極が、スピネル型構造を有するリチウムマンガン複合酸化物またはリチウム鉄燐
    酸化合物のうち少なくとも一方を含有することを特徴とする請求項1または2に記載の非
    水系電解液二次電池。
  4. 前記正極が、リチウム鉄燐酸化合物を含有することを特徴とする請求項3に記載の非水
    系電解液二次電池。
  5. 前記一般式(1)中のR〜Rのうち少なくとも一つはフッ素原子またはアルキル基
    であることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか一項に記載の非水系電解液二次電池
  6. 前記非水溶媒として環状カーボネート及び鎖状カーボネートを含有することを特徴とす
    る請求項1ないし5のいずれか一項に記載の非水系電解液二次電池。
  7. 前記非水溶媒の組成に関して、環状カーボネート及び鎖状カーボネートの合計に対する
    環状カーボネートの割合が25体積%以上であることを特徴とする請求項6に記載の非水
    系電解液二次電池。
  8. 前記鎖状カーボネートとして、非対称鎖状カーボネートを含有することを特徴とする請
    求項1ないし7のいずれか一項に記載の非水系電解液二次電池。
  9. 前記非水系電解液が、フッ素原子を有する環状カーボネート、炭素―炭素不飽和結合を
    有する環状カーボネート、ジフルオロリン酸塩、フルオロ硫酸塩、一般式(1)で示され
    る以外のイソシアナト基を有する化合物、シアノ基を有する化合物、環状スルホン酸エス
    テル、及びジカルボン酸錯体塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物を含有す
    ることを特徴とする請求項1ないし8のいずれか一項に記載の非水系電解液二次電池。
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